(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】リソソーム蓄積性疾患と関連する症状および障害を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/439 20060101AFI20240628BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240628BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240628BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240628BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240628BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
A61K31/439
A61P17/00
A61P25/04
A61P29/00
A61P1/00
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2021545383
(86)(22)【出願日】2020-02-03
(86)【国際出願番号】 US2020016440
(87)【国際公開番号】W WO2020163244
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-02-02
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ナイジェル・パトリック・ソマーヴィル・クロフォード
(72)【発明者】
【氏名】ターニャ・ザレンバ・フィッシャー
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-517808(JP,A)
【文献】A. MEHTA et al,Fabry disease: a review of current management strategies,QJM: An International Journal of Medicine,2010年07月21日,Vol.103 Issue 9,641-659
【文献】Karen M Ashe et al,Efficacy of Enzyme and Substrate Reduction Therapy with a Novel Antagonist of Glucosylceramide Synthase for Fabry Disease,Molecular Medicine,2015年04月30日,Vol.21,389-399
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00/33/44
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)それを必要とする
ヒト対象
であって、ファブリー病を有する対象における、
被角血管腫、発汗減少症、無汗症、多汗症、リンパ浮腫、および先端異常感覚症の1つまたはそれ以上から選択される、GL-3蓄積によって引き起こされる皮膚障害;または
(b)それを必要とする
ヒト対象
であって、ファブリー病を有する対象における、神経障害性疼痛、胃腸の痛み(例えば、腹痛)、
または全身的な疼痛;
を処置または阻止するための方法で使用するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、有効量の式(I)
【化1】
(式中:
R
1は、水素、ハロゲン(例えば、フッ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、チオ、アミ
ノ、C
1~
6-アルキル(例えば、メチルまたはエチル)、C
2~
6-アルケニル、C
2~
6-アルキニル、C
1~
6-アルキルオキシ、C
2~
6-アルケニルオキシ、およびC
2~
6-アルキニルオキシから選択され、ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルオキシ、アルケニルオキシ、またはアルキニルオキシは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、チオまたはアミノから選択される1つまたはそれ以上(例えば、1、2または3つ)の基で場合により置換されており;
R
2およびR
3は、1つもしくはそれ以上(例えば1、2もしくは3つ)のハロゲンによって場合により置換されたC
1~
3-アルキルから独立して選択されるか、またはR
2および
R
3は、1つもしくはそれ以上(例えば1もしくは2つ)のハロゲンによって場合により
置換されたシクロプロピルもしくはシクロブチル基を一緒に形成し;
R
4、R
5およびR
6は、水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、チオ、アミノ、C
1~
6-アルキル、およびC
1~
6-アルキルオキシからそれぞれ独立して選択され、ここで、前記アルキルまたはアルキルオキシは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、およびC
1~
6-アルキルオキシから選択される1つまたはそれ以上(例えば1、2または3つ)の基によって場合により置換されており;
Aは、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ、アミノ、ニトロ、C
1~
6アルコキシおよびC
1~
6アルキルから独立して選択される1、2または3つの基で場合により置換された5または6員アリールまたはヘテロアリール基(例えば、フェニルまたはチアゾリル)である)
の化合物またはその薬学的に許容される
塩を含む、
前記医薬組成物。
【請求項2】
(i)R
1は、水素、フッ素、メチルおよびエチルから選択され、前記メチルまたはエチルは、ハロゲン、ヒドロキシ、チオまたはアミノから選択される1または2つの基によって場合により置換されている;
(ii)R
2およびR
3は、1つまたはそれ以上のフッ素で場合により置換されたメチルおよびエチル基からそれぞれ独立して選択される;
(iii)R
4は、ハロゲン(例えば、フッ素)、C
1~
3-アルキル(例えば、メチル)およびC
1~
3-アルキルオキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)から選択され、ここで、前記アルキルまたはアルキルオキシは、ハロゲンおよびC
1~
3-アルキルオキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)から選択される1つまたはそれ以上(例えば、1、2または3つ)の基によって場合により置換されている;
(iv)R
5およびR
6はそれぞれ水素である;ならびに/または
(v)Aは、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ、アミノ、ニトロ、C
1~
6アルコキシおよびC
1~
6アルキル(例えば、メチル)から独立して選択される1、2または3つの基で場合により置換されたフェニルである;または、Aは、NおよびSから選択される1または2つのヘテロ原子を含む5員ヘテロアリール基である、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
R
4は、フッ素または2-メトキシエトキシであり、R
5およびR
6は水素である、ならびに/または、R
4は、それが結合しているフェニル環の4位に(すなわち、A置換基に対してパラで)位置する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
Aは、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ、アミノ、ニトロ、C
1~
6アルコキシおよびC
1~
6アルキル(例えば、メチル)から独立して選択される1、2または3つの基で場合により置換されたフェニルである、ならびに、A置換基に結合している2つの基
(すなわち、フェニル環(-(C
6
H
2
R
4
R
5
R
6
))および-C(R
2
R
3
)-基)は、互いに1,3または1,4の関係で(すなわち、メタまたはパラで)位置する、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
Aは、NおよびSから選択される1または2つのヘテロ原子を含む5員ヘテロアリール基である、ならびに、A置換基に結合している2つの基
(すなわち、フェニル環(-(C
6
H
2
R
4
R
5
R
6
))および-C(R
2
R
3
)-基)は、互いに1,3の関係で(すなわち、メタで)位置する、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記化合物は、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)または(XI)の化合物またはその薬学的に許容される
塩である、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【化2】
【化3】
【請求項7】
前記化合物は、式(IX)または(XI)の化合物またはその薬学的に許容される
塩であり、R
4はフッ素である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記化合物は、キヌクリジン-3-イル(2-(4’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)プロパン-2-イル)カルバメート;(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート;(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート;およびこれらの薬学的に許容される
塩、ならびに、リンゴ酸塩の形態の(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメートから選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記使用は、疼痛を処置または阻止するための方法においてであって、前記疼痛は、胃腸の痛み(例えば、腹痛)であり、前記方法は、第2の活性薬剤、例えば、それを必要とする患者の疼痛を処置又は阻止することができる第2の化合物を同時に投与することを更に含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記使用は、GL-3蓄積によって引き起こされる皮膚障害を処置または阻止するための方法においてであって、前記対象は、皮膚および/または血漿においてGL-3の顕著な蓄積を有する
、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記使用は、疼痛を処置または阻止するための方法においてであって、前記対象は、組織において(例えば、皮膚毛細管内皮細胞または血漿において)GL-3の顕著な蓄積を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記使用は、GL-3蓄積によって引き起こされる皮膚障害を処置または阻止するための方法においてであって、皮膚におけるGL-3蓄積は、表在皮膚血管の内皮細胞、深部皮膚血管の内皮細胞、深部皮膚血管の平滑筋細胞、および神経周膜細胞のうちの1つまたはそれ以上におけるものである、請求項
10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記使用は、GL-3蓄積によって引き起こされる皮膚障害を処置または阻止するための方法においてであって、皮膚GL-3レベル(例えば、GL-3封入体)における減少が、表在皮膚血管の内皮細胞、深部皮膚血管の内皮細胞、深部皮膚血管の平滑筋細胞、および神経周膜細胞のうちの1つまたはそれ以上において、26週または52週または156週以内に認められる
、請求項10または12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記使用は、疼痛を処置または阻止するための方法においてであって、前記方法は、26週または52週または156週以内に、疼痛(例えば、身体の痛みおよび/または胃腸の痛み(例えば、腹痛))の重症度における減少をもたらす、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記使用は、GL-3蓄積によって引き起こされる皮膚障害を処置または阻止するための方法においてであって:i)対象は、処置前に2またはそれを超えるGL-3皮膚スコア(例に記載される0から4のスケールで測定される)を有し、前記方法は、スケールで少なくとも1ポイントの減少、例えば、1ポイントまたは2ポイントの低下をもたらす;および/または、ii)対象は、皮膚細胞(例えば内皮細胞)においてGL-3封入体を有し、処置前に少なくとも0.25(例えば、少なくとも0.27または0.3)のGL-3封入体の細胞質体積割合を示し、前記方法は、GL-3封入体の細胞質体積割合の0.25未満(例えば、0.23未満または0.20未満、または0.19未満)の低下をもたらす、請求項
10、12または13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
対象は、酵素補充療法薬(ERT)を用いて、例えば、アガルシダーゼアルファまたはアガルシダーゼベータを用いて、または、グルコセレブロシダーゼ(例えば、イミグルセ
ラーゼ、ベラグルセラーゼ、またはタリグルセラーゼ)、もしくはアルファ-ガラクトシダーゼ阻害剤(例えば、ミガラスタット)を用いて、同時処置を受けている、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
方法は、血漿におけるGL-3濃度において、処置してから2週または4週または8週後に少なくとも20%、例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%の減少をもたらす;および/または、血漿におけるGL-3濃度において、26週または52週または104週後に少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%の減少をもたらす、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記化合物またはその薬学的に許容される
塩は、全身投与によって、例えば、非-非経口経路を介して、または経口(経腸)で投与される;および/または、前記対象は、前記化合物の約1mgから約150mg、例えば、5から50mg、もしくは10から40mg、もしくは10から30mg、もしくは10から20mg、もしくは20から30mg、もしくは30から40mg、もしくは40から50mg、もしくは5から25mg、もしくは20から50mg、もしくは5から15mg、もしくは15から30mg、もしくは約15mgの、1日用量を投与される、請求項1~17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月4日に出願された米国特許仮出願第62/800,996号、2019年5月22日に出願された同第62/851,433号、2019年8月30日に出願された同第62/894,167号、2019年11月19日に出願された同第62/937,618号、および2020年1月17日に出願された同第62/962,647号の優先権および利点を主張する国際出願であり、これらの内容はそれぞれ、その全体が本明細書によって組み入られるものとする。
【0002】
本発明は、特にリソソーム蓄積性疾患と関連する症状および障害を処置または阻止するための方法であって、式(I)のキヌクリジン化合物を、酵素補充療法薬と場合により組み合わせて使用する、方法に関する。疾患、例えばファブリー病を有する患者における疼痛、例えば腹痛、および皮膚障害、例えば被角血管腫も含む。
【背景技術】
【0003】
リソソーム蓄積性疾患
リソソーム蓄積性疾患(LSD)は、リソソーム機能における欠陥によって引き起こされる約50種類の稀な遺伝性の代謝疾患のグループである。一般的に、LSDを呈する患者は、基質の代謝を担う酵素の欠乏もしくは欠陥に起因して、または適切な酵素機能に必須の酵素活性化因子の欠乏に起因して有害なレベルの基質(すなわち、貯蔵材料)をリソソーム中に蓄積する。大部分のLSDは、単一の酵素、通常は脂質または糖タンパク質の代謝に関与する酵素に関する欠陥または欠乏によって引き起こされる。より一般的なLSDの一部としては、ゴーシェ病、ファブリー病およびニーマンピック病(C型)がある。ゴーシェ、ファブリーおよびニーマンピックはスフィンゴリピドースの例である。これらの疾患はそれぞれ、基本的な遺伝的欠陥によって直接的にまたは間接的に引き起こされる一連の症状と関連する。結果的に、これらと関連する症状または障害が、異なる処置方法で効果的に処置することができるかどうかを予測することは困難なことが多い。いくつかのLSDに共通する症状としては、サッケード眼球運動における変化、認知的機能障害、および歩行障害、例えば運動失調がある。これらの症状は、ゴーシェ病(例えば、3型)およびニーマンピック病(C型)において特に一般的である。
【0004】
ファブリー病および皮膚障害
ファブリー病は、酵素アルファ-ガラクトシダーゼにおける欠陥によって引き起こされ、グロボトリアオシルセラミド(GL-3、Gb3としても知られる)の蓄積をもたらす。GL-3は、血漿、組織および一部の臓器に蓄積する。疾患は、X連鎖性劣性突然変異によって引き起こされ、その結果、男性は、重度の症状を有する場合があり、同時に女性は、無症状から中等度または重度の範囲で影響を受ける場合がある。ファブリーの一般的な症状は、全身的な疼痛または局在的な疼痛である。慢性腎臓疾患および腎不全を含む腎臓合併症を特徴とする末梢神経障害も一般的である。心筋におけるスフィンゴ脂質の蓄積は、心肥大または拘束型心筋症、ならびに心拍リズム異常、例えば頻脈および徐脈(完全心ブロックを含む)をもたらす場合がある。皮膚併発としては、被角血管腫(小さく疼痛がない丘疹)の形成があり、眼の併発としては、角膜混濁(渦状角膜症)ならびに結膜および網膜血管異常ならびに白内障があり得る。
【0005】
皮膚および軟組織においてGL-3が蓄積すると、皮膚病変(例えば、被角血管腫)、先端異常感覚症、および発汗減少症を含むファブリー病の初期症状がもたらされる。NCBI Bookshelf、National Library of Medicineを介してオンラインで利用可能な非特許文献1を参照されたい。これらの症状は、疾患後期の特性である重度の臓器損傷を発症する何年も前の小児期で発症することが多い。皮膚はいくつかの層:表皮、真皮および皮下組織を含み、それぞれ多くの細胞タイプを有する。ファブリー病は、主に内皮血管に影響を与える。非血管表皮のすぐ下にある表在真皮(superficial dermis)における内皮細胞は疾患の主な標的である。神経周膜における神経の脈管内皮細胞も影響を受ける。更に、GL-3は、血管周皮細胞、エクリン腺細胞および皮膚線維芽細胞のリソソームにおいて蓄積する場合がある。
【0006】
被角血管腫は、真皮上部における拡張血管の増殖によって特徴付けられる良性の血管皮膚病変である。これは皮膚内皮細胞においてGL-3が蓄積した場合に起こり、血管の膨らみおよび血管壁の機能不全、続いて二次的な拡張をもたらす。これはファブリー病を呈する患者において認められる主な皮膚病変であり、5歳から15歳の間の年齢(平均年齢、13.5歳)の小児に出現し始める場合がある。これはファブリー病を呈する83%の男性および80%の女性において認められる。被角血管腫は年齢とともに広がって、口唇、手および足指において認められるようになる。これは、孤立しているかまたは密集している場合があり、小さな赤色から黒色の丘疹として出現し、滑らかな表皮表面を伴う。疾患が進行するにつれて病変は拡大し、直径10mmに達し、暗赤色から黒色になり、疣贅状の表面を伴う。電子顕微鏡研究によって、血管内皮細胞、血管周皮細胞、エクリン腺細胞、皮膚線維芽細胞および神経周膜において電子密度が高いリソソーム封入体が示される。
【0007】
ファブリーは、被角血管腫に加えて特定の多発神経障害および汗腺浸潤とも関連しており、ファブリー病における発汗異常につながることが多い。古典的な症状は、発汗減少症(発汗の減少)および無汗症(発汗の欠如)である。これらの症状は、生活の質に重大な影響を及ぼす場合があり、発熱、ならびに高熱および運動の不耐症をもたらす。発汗減少症は、高熱および運動の不耐性を患うことによって先端異常感覚症の原因となる。涙腺による涙液産生の低下および唾液産生の低下は、ファブリー病を呈する患者における発汗減少症と関連する場合がある。
【0008】
ファブリー病を呈する患者における多汗症は発汗減少症よりもはるかに一般的ではなく、男性よりも女性に一般的であると思われる。多汗症はファブリー病において生じる末梢神経障害の兆候である可能性がある。皮膚および粘膜腺が罹患した場合、患者は、暖かい環境で過ごす時間または身体活動を行うことを制限することが必要な場合がある。
【0009】
ファブリー病を呈する患者において、リンパ浮腫は、リンパ管における糖脂質の蓄積と関連すると思われている。治療を行わない場合、ファブリー病におけるリンパ浮腫は丹毒を合併する場合があり、全身性感染症のリスクを伴う。リンパ浮腫を引き起こす重度のリンパ微小管(microangiopathy)は、ファブリー病患者において記載している。しかし、研究によって、皮膚の初期リンパ管における顕著な構造的および機能的変化は、リンパ浮腫が顕在化しているかどうかにかかわらず、ファブリー病を呈する男性患者と女性患者の両方において起こることが示された。
【0010】
先端異常感覚症もファブリー病の初期症状のうちの1つである。内皮神経周膜細胞の異常続発する末梢神経の虚血に起因すると考えられており、手足のヒリヒリ感、慢性的な灼熱感または長引く(nagging)疼痛によって特徴付けられる。数分から数日持続し普通に生活できなくなる疼痛の急性エピソードが発症する場合がある。これは自然発生的に起こる場合があるが、高熱、病気、ストレスまたは運動によって誘発される場合もある。疲労、中等度発熱および関節痛がこれらの急性疼痛クライシスと関連する場合がある。
【0011】
ファブリー病および疼痛
疼痛は、日常生活の通常活動に携わる患者の能力に関連するファブリーの消耗性の症状である。ファブリーの一般的な症状は、全身的な疼痛、四肢に局在する疼痛、または胃腸の痛み(例えば、腹痛)であり、これは末梢神経終末の損傷に起因するおよび/または毛細血管系における脂質蓄積が痛みを伴う血流閉塞をもたらすことに起因すると考えられている。
【0012】
半合成酵素アガルシダーゼベータ(アルファ-ガラクトシダーゼ)を用いた酵素補充療法薬(ERT)は、現在のところ米国においてファブリー病のために承認されている唯一の処置のうちの1つである。別の酵素のアガルシダーゼアルファは、米国において承認されていないがヨーロッパでは承認されている。ヨーロッパでは、小分子アルファ-ガラクトシダーゼ阻害剤のミガラスタット(1-デオキシガラクトノジリマイシン)もファブリー患者の一部を処置するために承認されている。一部の患者において、アルファ-ガラクトシダーゼにおける欠陥は、アミノ酸配列におけるエラーではなくタンパク質のミスフォールディングによって引き起こされる。そのような患者のうちの一部に関しては、ミガラスタットがミスフォールディングされたタンパク質に結合し、適切なコンフォメーションに再構築することが認められているが-ある程度のミスフォールディングエラーのみがこの修正に適している。
【0013】
本明細書において記載するキヌクリジン化合物は、酵素グルコシルセラミドシンターゼ(GCS)の阻害剤としての活性を有する。これらの化合物は、リソソーム蓄積性疾患、例えば、ファブリー病、ゴーシェ病およびニーマンピック病の処置において全般的に有用であるとして開示されている。例えば、特許文献1および特許文献2を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】WO2012/129084
【文献】US2016/0361301
【非特許文献】
【0015】
【文献】Lidove,O.et al.,Dermatological and Soft-Tissue Manifestations of Fabry Disease:Characteristics and Response to Enzyme Replacement Therapy,Chap.24 in FABRY DISEASE:PERSPECTIVES FROM 5 YEARS OF FOS (Mehta,A.et al.eds.,Oxford PharmaGenesis 2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、ERTは依然としてファブリー病処置の主力のままである。ERTはファブリー病と関連する疼痛の軽減においてあまり効果的ではなく、鎮痛薬、抗けいれん薬、および非ステロイド性抗炎症剤を用いた追加の処置が通常必要とされている。その結果、ファブリー病の疼痛も効果的に管理するファブリー病のための処置に対する必要性は十分に満たされていないままである。
【0017】
ファブリー病と関連する疼痛および皮膚障害の軽減または管理において有効な治療法を開発することが当技術分野において真に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、式(I)によるキヌクリジン化合物(化合物1)またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグに関する
【化1】
(式中:
R
1は、水素、ハロゲン(例えば、フッ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、チオ、アミノ、C
1~6-アルキル(例えば、メチルまたはエチル)、C
2~6-アルケニル、C
2~6-アルキニル、C
1~6-アルキルオキシ、C
2~6-アルケニルオキシ、およびC
2~6-アルキニルオキシから選択され、ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルオキシ、アルケニルオキシ、またはアルキニルオキシは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、チオまたはアミノから選択される1つまたはそれ以上(例えば、1、2または3つ)の基で場合により置換されており;
R
2およびR
3は、1つもしくはそれ以上(例えば1、2もしくは3つ)のハロゲンによって場合により置換されたC
1~3-アルキルから独立して選択されるか、またはR
2およびR
3は、1つもしくはそれ以上(例えば1もしくは2つの)のハロゲンによって場合により置換されたシクロプロピルもしくはシクロブチル基を一緒に形成しており;
R
4、R
5およびR
6は、水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、チオ、アミノ、C
1~6-アルキル、およびC
1-6-アルキルオキシからそれぞれ独立して選択され、ここで、前記アルキルまたはアルキルオキシは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、およびC
1~6-アルキルオキシから選択される1つまたはそれ以上(例えば1、2または3つ)の基によって場合により置換されており;
Aは、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ、アミノ、ニトロ、C
1~6アルコキシまたはC
1~6アルキルから独立して選択される1、2または3つの基で場合により置換された5または6員アリールまたはヘテロアリール基である)。
【0019】
第1の態様において、本出願は、それを必要とする対象において、神経障害性疼痛、胃腸の痛み(例えば、腹痛)、および末梢神経障害を含む疼痛を処置または阻止するための方法であって、有効量の本明細書において記載するキヌクリジン化合物、例えば、式Iによる化合物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0020】
他の態様では、本出願は、神経障害性疼痛、胃腸の痛み(例えば、腹痛)、末梢神経障害、および皮膚障害(例えば、被角血管腫、先端異常感覚症、発汗減少症、無汗症、多汗症、リンパ浮腫、および先端異常感覚症)を含む疼痛を処置または阻止するための本明細書において記載するキヌクリジン化合物の使用を更に提供する。これらの態様のいずれかのいくつかの実施形態において、それを必要とする対象は、ファブリー病、ゴーシェ病、例えば3型、またはニーマンピック病C型を有する対象である。
【0021】
本明細書において開示する化合物、組成物および方法の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここで本開示の具体的な実施形態を調製物およびスキームを参照しながら記載することになるが、そのような実施形態はほんの一例であり、例示の本開示の原理の適用を表すことができる多くの可能な具体的な実施形態のうちの少数にすぎないことを理解するべきである。さまざまな変更および修正が本開示の利点を考慮すると当業者であれば自明であり、添付の特許請求の範囲において更に定義される本開示の趣旨および範囲の範囲内であるとみなされる。
【0023】
定義
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術および科学用語は、本開示が属する技術の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において記載するものと同様のまたは同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用してもよいが、例示的な方法、デバイス、および材料をここで記載する。本明細書において引用する全ての技術および特許刊行物は、その全体を参照によって本明細書に組み入れるものとする。本明細書におけるいかなるものも、本発明が先行する発明を理由にそのような開示に先行する権利はないことを認めるものと解釈するべきではない。
【0024】
本開示の実施は、別段指示がない限り、組織培養、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNAの従来技術を用いることになり、これらは当技術分野の範囲内である。
【0025】
範囲を含む全ての数値表示、例えば、pH、温度、時間、濃度、分子量は、必要に応じて0.1または1.0の増分で(+)または(-)に変化する近似値である。必ずしも明確に規定されているとは限らないが、全ての数値表示には「約」という用語が先行することを理解されたい。必ずしも明確に規定されているとは限らないが、本明細書において記載する試薬は例示にすぎず、そのような等価物は当技術分野において既知であることも理解されたい。
【0026】
本明細書において使用する場合、「場合により置換された」という用語は、「置換されていないかまたは~によって置換された」という句と同等であることを意味する。
【0027】
本明細書において使用する場合、「処置または阻止する方法において」という句(例えば、「疼痛を処置または阻止する方法において」という句)は、「~の処置または阻止において」という句(例えば、「疼痛の処置または阻止において」という句)と同等であることを意味する。
【0028】
明細書および特許請求の範囲において使用する場合、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形の言及を含む。例えば、「細胞(a cell)」という用語は、これらの混合物を含む複数の細胞(cells)を含む。特に述べられるかまたは文脈から自明ではない限り、本明細書において使用する場合、「または」という用語は包含的であると理解される。「~としては、~がある(including)」という用語は、「~としては、これらに限定されないが、~がある」という句を意味するために本明細書において使用され、区別せずに使用される。
【0029】
本明細書において使用する場合、「含むこと(comprising)」または「含む(は、を含む)」という用語は、組成物および方法が列挙された要素を含むが、他を除外するものではないことを意味することを意図する。「から実質的になる」は、組成物および方法を定義する場合、記載した目的のために組合せにとって任意の本質的に重要な他の要素を除外することを意味するものとする。したがって、本明細書において定義される要素から実質的になる組成物は、単離および精製方法からの微量混入物質、ならびに薬学的に許容される担体、例えばリン酸緩衝生理食塩水、防腐剤などは除外しないことになる。「からなる」は、他の成分の微量元素だけではなく、本発明の組成物を投与するための実質的な方法工程または組成物を生成するかもしくは意図する結果を達成するための方法工程を除外することを意味するものとする。これらの各転換用語によって定義される実施形態は本発明の範囲内である。本明細書において「含むこと(comprising)」という用語の使用は、「から実質的になる」および「からなる」を包含することを意図する。
【0030】
「対象」、「個体」または「患者」は本明細書において区別せずに使用され、脊椎動物、例えば哺乳動物を指す。哺乳動物としては、これらに限定されるものではないが、ネズミ、ラット、ウサギ、サル、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、家畜、スポーツ動物、ペット、ウマ、霊長類、およびヒトがある。1つの実施形態において、哺乳動物としては、馬、犬、および猫がある。いくつかの実施形態において、哺乳動物はヒト、例えば、特定の疾患または障害、例えばゴーシェ病(例えば、GD-3)またはニーマンピック病C型に罹患したヒトである。
【0031】
「投与すること」は、薬剤が対象の身体内部に存在することをもたらす様式で、薬剤または薬剤を含む組成物を対象に提供する手段として本明細書において定義する。そのような投与は、限定するものではないが、経口、経皮(例えば膣、直腸、経口粘膜)を含む任意の経路によるもの、注射(例えば皮下、静脈内、非経口、腹腔内、CNS内)によるもの、または吸入(例えば、経口または経鼻)によるものであってもよい。医薬調製物は無論、各投与経路に好適な形態によって与えられる。
【0032】
疾患を「処置すること」またはその「処置」は、(1)疾患を阻害すること、すなわち、疾患またはその臨床症状の発症を停止または減少させること;および/または(2)疾患を軽減すること、すなわち、疾患またはその臨床症状の退行をもたらすことを一般的に含む。
【0033】
疾患を「阻止すること」またはその「阻止」は、疾患に罹りやすい場合があるが、疾患の症状をまだ経験していないかまたは示していない患者において疾患の臨床症状を発症させないことを一般的に含む。
【0034】
「罹患している」という用語は、「処置」という用語に関連する場合、疾患と診断された患者または個体を指す。「罹患している」という用語は、「阻止」という用語に関連する場合、疾患に罹りやすい患者または個体を指す。患者は、その家系における病歴のためまたは疾患と関連する遺伝的突然変異の存在のため疾患に「罹患するリスクがある」ものを指す場合もある。疾患のリスクがある患者は、疾患の特徴的な病状のうちの全てまたは一部をまだ発症していない。
【0035】
「有効量」または「治療有効量」は、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回またはそれ以上の回数の投与、適用または投薬で投与してもよい。そのような送達は、個々の投薬単位を使用する期間、治療剤のバイオアベイラビリティ、および投与経路を含む多くの変数に依存する。しかし、任意の特定の対象のための本発明の治療剤のその特定の用量レベルは、例えば、用いられる特定の化合物の活性、対象の年齢、体重、全般的な健康、性別、および食事、投与時期、排泄速度、薬物の組合せ、ならびに処置される特定の障害の重症度ならびに投与形態を含むさまざまな因子に依存することが理解される。処置投薬量は、一般的には、安全性および有効性を最適化するために漸増させてもよい。典型的には、in vitroおよび/またはin vivo試験からの投薬量-効果の関係は、患者に投与するための適切な用量に関する有用なガイダンスを最初に提供することができる。一般的に、in vitroで効果的であることが認められた濃度に見合った血清レベルに達成するために効果的な量の化合物を投与することが望まれることになる。これらのパラメータの判定は当技術分野の十分な範囲内である。これらの考察、ならびに効果的な製剤および投与手順は当技術分野において周知であり、標準的な教科書に記載されている。この定義を維持しながら、本明細書において使用する場合、「治療有効量」という用語は、ex vivo、in vitroまたはin vivoで、本明細書において記載する(例えば、方法2以降または方法3以降のいずれかにおいて)疾患または障害と関連する1つまたはそれ以上の症状を処置する(例えば改善する)のに十分な量である。
【0036】
本明細書において使用する場合、「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、担体、例えば、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、およびエマルション、例えば油/水または水/油エマルション、ならびにさまざまな種類の湿潤剤を含む標準的な医薬賦形剤のいずれかを包含する。医薬組成物はまた、安定化剤および防腐剤を含む。例えば、担体、安定化剤およびアジュバントの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(20th ed.,Mack Publishing Co.2000)を参照されたい。
【0037】
本明細書において使用する場合、「プロドラッグ」という用語は、生物内で自発的にまたは酵素的に生体内変換されて活性薬物を放出することを必要とする、親薬物分子の薬理学的誘導体を意味する。例えば、プロドラッグは、ある特定の代謝条件下で切断可能な基を有する、本明細書において記載するキヌクリジン化合物の変形形態または誘導体であり、これは開裂した場合、本明細書において記載するキヌクリジン化合物、例えば式Iの化合物になる。次いで、そのようなプロドラッグは、これらが生理学的条件下で加溶媒分解を受けたかまたは酵素分解を受けた場合、in vivoで薬学的に活性である。本明細書においてプロドラッグ化合物は、シングル、ダブル、トリプルなどと呼ばれる場合があり、生物内で活性薬物を放出するために必要な生体内変換工程の数、および前駆体型形態に存在する官能基の数に依存する。プロドラッグ形態は、哺乳動物生物において溶解性、組織適合性、または遅延放出の利点を提供することが多い。
【0038】
通常当技術分野において既知のプロドラッグとしては、例えば、酸化合物と好適なアルコールとの反応によって調製されたエステル、酸化合物と、アシル化塩基誘導体を形成するために反応させる塩基性基であるアミンとの反応によって調製されたアミドのような周知の酸誘導体がある。他のプロドラッグ誘導体は、バイオアベイラビリティを強化するために、本明細書において開示する他の特徴と組み合わせてもよい。したがって、当業者であれば、例えば、遊離アミノまたはヒドロキシ基を有するここで開示される化合物のうちのいくつかはプロドラッグに変換することができることを理解するであろう。プロドラッグとしては、アミノ酸残基、または2つ以上(例えば2つ、3つまたは4つ)のアミノ酸残基のポリペプチド鎖を有する化合物があり、これらの残基は、ここで開示される化合物の遊離アミノ、ヒドロキシまたはカルボン酸基にペプチド結合を介して共有結合している。アミノ酸残基としては、20個の天然に存在するアミノ酸があり、3文字の記号によって通常示され、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、デスモシン、イソデスモシン、3-メチルヒスチジン、ノルバリン、ベータ-アラニン、ガンマ-アミノ酪酸、シトルリン、ホモシステイン、ホモセリン、オルニチンおよびメチオニンスルホンも含む。プロドラッグとしてはまた、本明細書において開示する上記の置換基のいずれかに共有結合した、カルボネート、カルバメート、アミドまたはアルキルエステル部分を有する化合物がある。
【0039】
本明細書において使用する場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、それが含まれていてもよい医薬組成物のその他の構成成分との結果として生じる任意の実質的に不所望の生物学的効果または結果として生じる任意の有害な相互作用なしで投与してもよい現在開示されている化合物の薬学的に許容される酸付加物塩または薬学的に許容される塩基付加塩を意味する。
【0040】
本明細書において使用する場合、「C1~6-アルキル」という用語は、1から6個の炭素原子および対応する数の水素原子から実質的になる飽和直鎖状または分岐状フリーラジカルを意味する。例示的なC1-6-アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、およびイソブチルがある。他のC1~6-アルキル基は、本開示の利点を考慮すれば当業者であれば容易に明らかであろう。「C1~3-アルキル」、「C1~4-アルキル」という用語などは、同等の意味を有し、すなわち、1から3個(または4個)の炭素原子および対応する数の水素原子から実質的になる飽和直鎖状または分岐状フリーラジカルの意味を有する。
【0041】
本明細書において使用する場合、「C2~6-アルケニル」という用語は、2から6個の炭素原子および対応する数の水素原子から実質的になる不飽和直鎖状または分岐状のフリーラジカルであって、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含むフリーラジカルを意味する。例示的なC2~6-アルケニル基としては、エテニル、プロパ-1-エニル、プロパ-2-エニル、イソプロペニル、ブタ-1-エニル、2-メチル-プロパ-1-エニル、および2-メチル-プロパ-2-エニルがある。他のC2~6-アルケニル基は、本開示の利点を考慮すれば当業者であれば容易に明らかであろう。
【0042】
本明細書において使用する場合、「C2~6-アルキニル」という用語は、2から6個の炭素原子および対応する数の水素原子から実質的になる不飽和直鎖状または分岐状のフリーラジカルであって、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含むフリーラジカルを意味する。例示的なC2~6-アルキニル基としては、エチニル、プロパ-1-イニル、プロパ-2-イニル、ブタ-1-イニル、および3-メチル-ブタ-1-イニルがある。他のC2~6-アルキニル基は、本開示の利点を考慮すれば当業者であれば容易に明らかであろう。
【0043】
本明細書において使用する場合、「C1~6-アルキルオキシ」という用語は、1から6個の炭素原子(および対応する数の水素原子)および酸素原子から実質的になる飽和直鎖状または分岐状フリーラジカルを意味する。C1~6-アルキルオキシ基は、酸素原子を介して結合している。例示的なC1~6-アルキルオキシ基としては、メチルオキシ、エチルオキシ、n-プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n-ブチルオキシ、およびイソブチルオキシがある。他のC1~6-アルキルオキシ基は、本開示の利点を考慮すれば当業者であれば容易に明らかであろう。「C1~3-アルキルオキシ」、「C1~4-アルキルオキシ」という用語などは、同等の意味を有し、すなわち、1から3個(または4個)の炭素原子(および対応する数の水素原子)および酸素原子から実質的になり、基が、酸素原子を介して結合している飽和直鎖状または分岐状フリーラジカルの意味を有する。
【0044】
本明細書において使用する場合、「C2~6-アルケニルオキシ」という用語は、2から6個の炭素原子(および対応する数の水素原子)および酸素原子から実質的になる不飽和直鎖状または分岐状のフリーラジカルであって、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含むフリーラジカルを意味する。C2~6-アルケニルオキシ基は、酸素原子を介して結合している。例示的なC2~6-アルケニルオキシ基はエテニルオキシであり;他のものは、本開示の利点を考慮すれば当業者であれば容易に明らかであろう。
【0045】
本明細書において使用する場合、「C2~6-アルキニルオキシ」という用語は、2から6個の炭素原子(および対応する数の水素原子)および酸素原子から実質的になる不飽和直鎖状または分岐状のフリーラジカルであって、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含むフリーラジカルを意味する。C2~6-アルケニルオキシ基は、酸素原子を介して結合している。例示的なC2~6-アルケニルオキシ基はエチニルオキシであり;他のものは、本開示の利点を考慮すれば当業者であれば容易に明らかであろう。
【0046】
本明細書において使用する場合、「ヘテロアリール」という用語は、環を形成する5または6個の原子(すなわち、環原子)を有し、1から5個の環原子は炭素であり、残りの1から5個の環原子(すなわち、ヘテロ環原子)は、窒素、硫黄、および酸素からなる群から独立して選択される芳香族フリーラジカルを意味する。例示的な5員ヘテロアリール基としては、フリル、チエニル、チアゾリル(例えば、チアゾール-2-イル)、ピラゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピロリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリルおよびチアジアゾリルがある。例示的な6員ヘテロアリール基としては、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、1,2,4-トリアジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、およびベンゾイミダゾリルがある。他のヘテロアリール基は、本開示の利点を考慮すれば当業者であれば容易に明らかであろう。一般的に、ヘテロアリール基は、炭素原子を介して主構造に典型的には結合している。しかし、当業者であれば、ある特定の他の原子、例えばヘテロ環原子を主構造に結合させることができることを理解するであろう。
【0047】
本明細書において使用する場合、「アリール」という用語は、環を形成する5または6個の原子(すなわち、環原子)を有し、環原子の全ては炭素である芳香族フリーラジカルを意味する。例示的なアリール基はフェニル基である。
【0048】
本明細書において使用する場合、「脂肪族」という用語は、炭素および水素原子を含む、例えば1から9個の炭素原子を含む非芳香族化合物を意味する。脂肪族化合物は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてもよく、1つまたはそれ以上の炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい(ただし、化合物は、芳香族特性を有する不飽和環構造を含んでいない)。脂肪族化合物の例としては、エタン、プロピレン、シクロブタン、およびシクロヘキサジエンがある。
【0049】
本明細書において使用する場合、「ハロ」および「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。これらの用語は区別せずに使用され、ハロゲンフリーラジカル基またはハロゲン原子自体を指していてもよい。当業者であれば、本開示においてこの用語が使用される文脈を考慮して同定を容易に確認することができるであろう。
【0050】
本明細書において使用する場合、「シアノ」という用語は、三重結合を介して窒素原子に連結している炭素原子を有するフリーラジカルを意味する。シアノラジカルは、その炭素原子を介して結合している。
【0051】
本明細書において使用する場合、「ニトロ」という用語は、その窒素原子を介して結合している-NO2ラジカルを意味する。
【0052】
本明細書において使用する場合、「ヒドロキシ」および「ヒドロキシル」という用語は、その酸素原子を介して結合している-OHラジカルを意味する。「チオ」という用語は、その硫黄原子を介して結合している-SHラジカルを意味する。
【0053】
本明細書において使用する場合、「アミノ」という用語は、窒素原子および1または2つの水素原子を有するフリーラジカルを意味する。したがって、「アミノ」という用語は、第一級および第二級アミンを一般的に指す。その点で、本明細書において使用する場合、第三級アミンは、一般式RR’N-によって表される(式中、RおよびR’は同一であっても同一でなくてもよい炭素ラジカルである)。それにもかかわらず、「アミノ」という用語は、第一級、第二級、または第三級アミンを記載するために本明細書において全般的に使用する場合があり、当業者であれば、本開示においてこの用語が使用される文脈を考慮して同定を容易に確認することができるであろう。
【0054】
本明細書において使用する場合、「オキソ」という用語は、二重結合を介して連結している酸素ラジカルを意味する。この酸素に結合している原子が炭素原子である場合、結合は、炭素-酸素二重結合であり、これは-(C=O)-と表記してもよく、ケトンと称してもよい。
【0055】
本明細書における可変基の任意の定義における化学基のリストの記載は、任意の単一の基としてのまたは挙げられた基の組合せとしての可変基の定義を含む。本明細書における可変基または態様に関する実施形態の記載は、その実施形態を、任意の単一の実施形態としてまたはその他の実施形態もしくはその一部と組み合わせて含む。
【0056】
本明細書において提供する任意の組成物または方法は、本明細書において提供する他の組成物および方法のいずれか1つまたはそれ以上と組み合わせてもよい。
【0057】
以下の略語を本明細書において使用する:
br ブロードなシグナル
CDI カルボニルジイミダゾール
CNS 中枢神経系
d ダブレット
DAPI 4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール
dd ダブレットのダブレット
DME ジメトキシエタン
DMEM ダルベッコ改変イーグル培地
DMSO-d6 ジメチルスルホキシド-d6
DMF ジメチルホルムアミド
DNA デオキシリボ核酸
DTBZ 炭素-11ジヒドロテトラベナジン
EDTA エチレンジアミン四酢酸
ELISA 酸素結合免疫吸着アッセイ
Et2O ジエチルエーテル
EtMgBr 臭化エチルマグネシウム
EtOAc 酢酸エチル
GL1 グルコシルセラミド(GlcCer)
GM1 モノシアロテトラヘキソシルガングリオシド
GM3 モノシアロジヘキソシルガングリオシド
GSL スフィンゴ糖脂質
H&E ヘマトキシリンおよびエオシン染色
HPLC 高圧/性能液体クロマトグラフィー
HAS ヒト血清アルブミン
IPA イソプロピルアルコール
J カップリング定数
LCMS 液体クロマトグラフィー質量分析
m マルチプレット
ppm 100万分の1
rHA 組換えヒトアルブミン
s シングレット
TBME Tert-ブチルメチルエーテル
THF テトラヒドロフラン
Tris トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
TWEEN20 ポリソルベート20
TWEEN80 ポリソルベート80
WT 野生型
UPLCMS 超高性能液体クロマトグラフィー質量分析
【0058】
化合物
本開示は、本明細書において論じる疾患および障害の処置または阻止と関連する治療法において使用するためのキヌクリジン化合物に関する。そのさまざまな態様の全てにおいて、本発明は、式(I)によるキヌクリジン化合物(化合物1)またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグに関する
【化2】
(式中:
R
1は、水素、ハロゲン(例えば、フッ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、チオ、アミノ、C
1~6-アルキル(例えば、メチルまたはエチル)、C
2~6-アルケニル、C
2~6-アルキニル、C
1~6-アルキルオキシ、C
2~6-アルケニルオキシ、およびC
2~6-アルキニルオキシから選択され、ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルオキシ、アルケニルオキシ、またはアルキニルオキシは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、チオまたはアミノから選択される1つまたはそれ以上(例えば、1、2または3つ)の基で場合により置換されており;
R
2およびR
3は、1つもしくはそれ以上(例えば1、2もしくは3つ)のハロゲンによって場合により置換されたC
1~3-アルキルから独立して選択されるか、またはR
2およびR
3は、1つもしくはそれ以上(例えば1もしくは2つの)のハロゲンによって場合により置換されたシクロプロピルもしくはシクロブチル基を一緒に形成し;
R
4、R
5およびR
6は、水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、チオ、アミノ、C
1~6-アルキル、およびC
1~6-アルキルオキシからそれぞれ独立して選択され、ここで、前記アルキルまたはアルキルオキシは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、およびC
1~6-アルキルオキシから選択される1つまたはそれ以上(例えば1、2または3つ)の基によって場合により置換されており;
Aは、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ、アミノ、ニトロ、C
1~6アルコキシおよびC
1~6アルキルから独立して選択される1、2または3つの基で場合により置換された5または6員アリールまたはヘテロアリール基(例えば、フェニルまたはチアゾリル)である)。
【0059】
本開示の任意の態様の更なる実施形態において、本開示は更に、以下のような化合物に関する:
1.1 化合物1(式中、R1は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、チオ、アミノ、C1~6-アルキル、C1~6-アルキルオキシから選択され、ここで、前記アルキルまたはアルキルオキシは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、チオまたはアミノから選択される1つまたはそれ以上(例えば、1、2または3つ)の基で場合により置換されている);
1.2 化合物1(式中、R1は、水素、ハロゲン、C1~6-アルキル、C1~6-アルキルオキシから選択され、ここで、前記アルキルまたはアルキルオキシは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、チオまたはアミノから選択される1つまたはそれ以上(例えば、1、2または3つ)の基で場合により置換されている);
1.3 化合物1(式中、R1は、水素、ハロゲン、C1~4-アルキル、C1~4-アルキルオキシから選択され、ここで、前記アルキルまたはアルキルオキシは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、チオまたはアミノから選択される1つまたはそれ以上(例えば、1、2または3つ)の基で場合により置換されている);
1.4 化合物1(式中、R1は、水素、ハロゲン、C1~4-アルキル、C1~4-アルキルオキシから選択され、ここで、前記アルキルまたはアルキルオキシは、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、チオまたはアミノから選択される1つまたはそれ以上(例えば、1、2もしくは3つ、または1もしくは2つ)の基で場合により置換されている);
1.5 化合物1(式中、R1は、水素、ハロゲン、およびC1~4-アルキルから選択され、ここで、前記アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、チオまたはアミノから選択される1つまたはそれ以上(例えば、1または2つ)の基で場合により置換されている);
1.6 化合物1(式中、R1は、水素、フッ素、メチルおよびエチルから選択され、ここで、前記メチルまたはエチルは、ハロゲン、ヒドロキシ、チオまたはアミノから選択される1または2つの基で場合により置換されている);
1.7 化合物1(式中、R1は、水素およびメチルから選択され、ここで、前記メチルは、1または2つのハロゲンで場合により置換されている);
1.8 化合物1(式中、R1は水素である);
1.9 化合物1、または1.1~1.8のいずれか(式中、R1は、キヌクリジン部分の窒素原子に結合していない);
1.10 化合物1、または1.1~1.9のいずれか(式中、R2およびR3は、それぞれ独立して、1つまたはそれ以上(例えば1、2または3つ)のハロゲンによって場合により置換されたC1~3-アルキルである);
1.11 化合物1.11(式中、R2およびR3は、それぞれ独立して、1または2つのハロゲンによって場合により置換されたメチルまたはエチルである);
1.12 化合物1.11(式中、R2およびR3は、1つまたはそれ以上のフッ素、例えば、1、2または4つのフッ素によって場合により置換されたメチルおよびエチルからそれぞれ独立して選択される);
1.13 化合物1.11(式中、R2およびR3は、それぞれ独立して、0、1、2または3つのフッ素で置換されたメチルである);
1.14 化合物1.11(式中、R2およびR3はそれぞれ、メチルまたはトリフルオロメチルである);
1.15 化合物1.11(R2およびR3はそれぞれメチルである);
1.16 化合物1、または1.1~1.9のいずれか(式中、R2およびR3は、1つまたはそれ以上(例えば1または2つ)のハロゲンによって場合により置換されたシクロプロピルまたはシクロブチル基を一緒に形成している);
1.17 化合物1.16(式中、R2およびR3は、シクロプロピル基を一緒に形成している);
1.18 化合物1または1.1~1.9のいずれか(式中、R2およびR3はそれぞれメチルであるか、またはR2およびR3は、シクロプロピル基を一緒に形成している);
1.19 化合物1、または1.1~1.9のいずれか(式中、R4、R5およびR6は、水素、ハロゲン、C1~6-アルキル、およびC1~6-アルキルオキシからそれぞれ独立して選択され、ここで、前記アルキルまたはアルキルオキシは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、およびC1~6-アルキルオキシから選択される1つまたはそれ以上(例えば1、2または3つ)の基によって場合により置換されている);
1.20 化合物1、または1.1~1.9のいずれか(式中、R4、R5およびR6は、水素、ハロゲン、C1~3-アルキル、およびC1~3-アルキルオキシからそれぞれ独立して選択され、ここで、前記アルキルまたはアルキルオキシは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、およびC1~3-アルキルオキシから選択される1つまたはそれ以上(例えば1、2または3つ)の基によって場合により置換されている);
1.21 化合物1.19(式中、R4、R5およびR6は、水素、ハロゲン、C1~3-アルキル、およびC1~3-アルキルオキシからそれぞれ独立して選択され、ここで、前記アルキルまたはアルキルオキシは、ハロゲン、シアノ、およびC1~3-アルキルオキシから選択される1つまたはそれ以上(例えば1、2または3つ)の基によって場合により置換されている);
1.22 化合物1.19(式中、R4、R5およびR6は、水素、ハロゲン、C1~3-アルキル、およびC1~3-アルキルオキシからそれぞれ独立して選択され、ここで、前記アルキルまたはアルキルオキシは、ハロゲンおよびC1~3-アルキルオキシから選択される1つまたはそれ以上(例えば1、2または3つ)の基によって場合により置換されている);
1.23 化合物1.19(式中、R4、R5およびR6は、ハロゲン、C1~3-アルキル、およびC1~3-アルキルオキシからそれぞれ独立して選択され、ここで、前記アルキルまたはアルキルオキシは、ハロゲンおよびC1~3-アルキルオキシから選択される1つまたはそれ以上(例えば1、2または3つ)の基によって場合により置換されている)
1.24 化合物1、または1.19~1.23のいずれか(R4は、水素、ハロゲン、C1~3-アルキル、およびC1~3-アルキルオキシから選択され、ここで、前記アルキルまたはアルキルオキシは、ハロゲンおよびC1~3-アルキルオキシから選択される1つまたはそれ以上(例えば1、2または3つ)の基によって場合により置換されている);
1.25 化合物1.24(R4は、ハロゲン(例えば、フッ素)、C1~3-アルキル(例えば、メチル)、およびC1~3-アルキルオキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)から選択され、ここで、前記アルキルまたはアルキルオキシは、ハロゲンおよびC1~3-アルキルオキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)から選択される1つまたはそれ以上(例えば1、2または3つ)の基によって場合により置換されている);
1.26 化合物1.26(R4は、ハロゲン(例えば、フッ素)およびC1~3-アルキルオキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)から選択され、ここで、前記アルキルオキシは、ハロゲンおよびC1~3-アルキルオキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)から選択される1つまたはそれ以上(例えば1、2または3つ)の基によって場合により置換されている);
1.27 化合物1.26(R4は、フッ素、またはハロゲンおよびC1~3-アルキルオキシ(例えば、メトキシ)から選択される1つもしくはそれ以上(例えば1、2もしくは3つ)の基によって場合により置換されたC1~3-アルキルオキシ(例えば、エトキシ)である);
1.28 化合物1.26(式中、R4は、フッ素、または1つもしくはそれ以上(例えば1、2もしくは3つ)のC1~3-アルキルオキシ(例えば、メトキシ)によって場合により置換されたエトキシである);
1.29 化合物1、または1.19~1.28のいずれか(式中、R6は水素である);
1.30 化合物1、または1.19~1.28のいずれか(式中、R5およびR6はそれぞれ水素である);
1.31 化合物1、または1.19~1.28のいずれか(R5およびR6はそれぞれ、水素であり、R4は、フッ素、またはハロゲンおよびC1~3-アルキルオキシ(例えば、メトキシ)から選択される1つもしくはそれ以上(例えば1、2もしくは3つ)の基によって場合により置換されたC1~3-アルキルオキシ(例えば、エトキシ)である);
1.32 化合物1.31(式中、R5およびR6はそれぞれ水素であり、R4は、フッ素、または1つもしくはそれ以上(例えば1、2もしくは3つ)のC1~3-アルキルオキシ(例えば、メトキシ)によって場合により置換されたエトキシである);
1.33 化合物1.32(式中、R5およびR6はそれぞれ水素であり、R4は、フッ素、またはメトキシ(例えば、2-メトキシエトキシ)で置換されたエトキシである);
1.34 化合物1.32(式中、R4は、フッ素または2-メトキシエトキシである);
1.35 化合物1、または1.1から1.34のいずれか(式中、R4、R5およびR6のうち少なくとも1つは水素ではない);
1.36 化合物1、または1.1~1.35のいずれか(式中、R6は水素であり、R4およびR5は、それらが結合しているフェニル環の2、4または6位に(すなわち、A置換基に対してオルトまたはパラで)位置する);
1.37 化合物1、または1.1~1.35のいずれか(式中、R6は水素であり、R4およびR5は、それらが結合しているフェニル環の、2および3位に(すなわち、隣接するオルトおよびメタで)、3および4位に(すなわち、隣接するメタおよびパラで)、または3および5位に(すなわち、メタで)独立して位置する(A置換基に対して));
1.38 化合物1、または1.1~1.35のいずれか(式中、R6は水素であり、R4およびR5は、それらが結合しているフェニル環の3および5位に(すなわち、メタで)位置する(A置換基に対して));
1.39 化合物1、または1.1~1.35のいずれか(式中、R5およびR6は水素であり、R4は、それが結合しているフェニル環の2、3または4位に(例えば、A置換基に対してオルト、メタまたはパラで)位置する);
1.40 化合物1、または1.1~1.35のいずれか(式中、R5およびR6は水素であり、R4は、それが結合しているフェニル環の2または4位に(例えば、A置換基に対してオルトまたはパラで)位置する);
1.41 化合物1、または1.1~1.35のいずれか(式中、R5およびR6は水素であり、R4は、それが結合しているフェニル環の4位に(例えば、A置換基に対してパラで)位置する);
1.42 化合物1、または1.1~1.35のいずれか(式中、R4、R5およびR6はいずれも水素ではなく、各R4、R5およびR6は、それらが結合しているフェニル環の2、4または6位に(すなわち、A置換基に対してオルトまたはパラで)独立して位置する);
1.43 化合物1、または1.1~1.42のいずれか(式中、R4は、それが結合しているフェニル環の4位に(すなわち、A置換基に対してパラで)位置する);
1.44 化合物1、または1.1~1.43のいずれか(式中、Aは、6員アリール基、5員ヘテロアリール基(例えば、N、OおよびSから選択されるヘテロアリール環に1、2または3つのヘテロ原子を含む)、または6員ヘテロアリール基(例えば、ヘテロアリール環に1、2または3つの窒素原子を含む)である);
1.45 化合物1.44(式中、Aは、6員アリール基または5員ヘテロアリール基(例えば、N、OおよびSから選択されるヘテロアリール環に1、2または3つのヘテロ原子を含む)であり、場合により、5員ヘテロアリール基は、NおよびSから選択される1または2つのヘテロ原子(例えば、1つのNおよび/または1つのS)を含む);
1.46 化合物1.44または1.45(式中、Aは、フェニル、フリル、チエニル、チアゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピロリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリルおよびチアジアゾリルからなる群から選択される);
1.47 化合物1.46(式中、Aは、フェニル、チエニル、チアゾリル、ピロリル、およびイミダゾリルからなる群から選択される);
1.48 化合物1.46(式中、Aは、フェニルおよびチアゾリル、例えば、2-チアゾール-4-イルまたは4-チアゾール-2-イルからなる群から選択される);
1.49 化合物1、または1.1~1.48のいずれか(式中、Aは置換されていない)
1.50 化合物1、または1.1~1.48のいずれか(式中、Aは、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ、アミノ、ニトロ、C1~6アルコキシおよびC1~6アルキル(例えば、メチル)から独立して選択される1つまたはそれ以上(例えば、1、2または3つ)の基で置換されている);
1.51 化合物1.50(式中、Aは、1つのハロゲン(例えば、フッ素)、またはC1~6アルキル(例えば、メチル)で置換されたチアゾリルである);
1.52 化合物1.50(式中、Aは、ハロゲン(例えば、フッ素)およびC1~6アルキル(例えば、メチル)から独立して選択される1、2または3つの基で置換されたフェニルである);
1.53 化合物1.52(式中、Aは、1または2つのフッ素またはメチル基で置換されたフェニルである);
1.54 化合物1、または1.1~1.53のいずれか(式中、A置換基に結合している2つの基(すなわち、フェニル環(-(C6H2R4R5R6))および-C(R2R3)-基)は、互いに1,2、1,3または1,4の関係で(すなわち、オルト、メタ、またはパラで)位置する);
1.55 化合物1.54(式中、A置換基に結合している2つの基は、互いに1,3の関係で(すなわち、メタで)位置する);
1.56 化合物1.54(式中、A置換基に結合している2つの基は、互いに1,4の関係で(すなわち、パラで)位置する);
1.57 化合物1.54から1.56のいずれか(式中、A置換基は、5員ヘテロアリール基であり、A置換基に結合している2つの基(すなわち、フェニル環(-(C6H2R4R5R6))またはthe-C(R2R3)-基)のうちの少なくとも1つは、ヘテロアリール環の炭素原子に結合しており、場合によりそのような基の両方は、ヘテロアリール環の炭素原子に結合している);
【0060】
1.58 化合物1、または1.1~1.57のいずれか(式中、式Iの化合物は、以下の構造のうちのいずれかまたはそれ以上によって表してもよい):
【化3】
【化4】
【化5】
【0061】
1.59 化合物1、または1.1~1.58のいずれか(式中、式Iの化合物、または式IIからXIIのいずれかは、(S)立体配置を有する);
1.60 化合物1、または1.1~1.58のいずれか(式中、式Iの化合物、または式IIからXIIのいずれかは、(R)立体配置を有する);
1.61 化合物1、または1.1~1.60のいずれか(式中、式Iの化合物、または式IIからXIIのいずれかは、少なくとも90%、例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%のエナンチオマー過剰(例えば、(S)立体配置の)を有する);
1.62 化合物1、または1.1~1.58のいずれか(式中、式Iの化合物、または式IIからXIIのいずれかは、ラセミ体(すなわち、およそ50:50比率のエナンチオマー)であるか、またはいくつかの他の比率(例えば、50:50未満または50:50超)のエナンチオマー混合物である);
【0062】
1.63 化合物1、または1.1~1.62のいずれか(式中、式Iの化合物は、以下の表からなる群から選択される):
【表1-1】
【表1-2】
【0063】
1.64 化合物1、または1.1~1.63のいずれか(式中、化合物は、キヌクリジン-3-イル(2-(4’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)プロパン-2-イル)カルバメート、(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート、および(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメートから選択される);
1.65 化合物1、または1.1~1.63のいずれか(式中、化合物はキヌクリジン-3-イル(2-(4’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)プロパン-2-イル)カルバメートである);
1.66 化合物1または1.1~1.63のいずれか(式中、化合物は、キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート、例えば、(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメートである);
1.67 化合物1、または1.1~1.66のいずれか(式中、式Iの化合物、またはIIからXIIのいずれかは、遊離塩基の形態である);
1.68 化合物1、または1.1~1.66のいずれか(式中、式Iの化合物、またはIIからXIIのいずれかは、薬学的に許容される塩の形態である);
1.69 化合物1.68(式中、前記塩の形態は酸付加塩の形態である);
1.70 化合物1.69(式中、前記酸付加塩の形態は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、重酒石酸塩、コハク酸、ヒドロキシコハク酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、サッカリン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、およびパモ酸塩から選択される塩である);
1.71 化合物1.70(式中、酸付加塩の形態は、塩酸塩、ヒドロキシコハク酸塩(例えば、2-ヒドロキシコハク酸塩)、およびリンゴ酸塩から選択される);
1.72 化合物1.68(式中、前記塩の形態は、塩基付加塩の形態である);
1.73 化合物1、または1.1~1.72のいずれか(式中、化合物は、リンゴ酸塩の形態の(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメートである);
1.74 化合物1、または1.1~1.73のいずれか(式中、式Iの化合物、またはIIからXIIのいずれかは、本明細書において記載するプロドラッグの形態である);
1.75 化合物1、または1.1~1.74のいずれか(式中、式Iの化合物、またはIIからXIIのいずれかは、水和物、溶媒和物および/または多形の形態である)。
【0064】
塩
ここで開示される化合物、例えば、化合物1または1.1から1.75のいずれかは本質的に塩基性であり、さまざまな無機および/または有機酸とさまざまな異なる塩を一般的に形成することができる。そのような塩は、動物およびヒトに投与するために一般的に薬学的に許容されるが、薬学的に許容されない塩として化合物を反応混合物から最初に単離し、次いで、アルカリ試薬で処置することによって後者を遊離塩基化合物に変換して単に戻し、その後、遊離塩基を薬学的に許容される酸付加物塩に変換することが実際に望ましいことが多い。塩基化合物の酸付加塩は、従来技術を使用して、例えば、塩基化合物と実質的に等量の選択された無機または有機酸とを、水性溶媒媒体中で、または例えば、メタノールもしくはエタノールのような好適な有機溶媒中で処置することによって容易に調製してもよい。溶媒を注意深く蒸発させた場合、所望の固体塩が得られる。ここで開示される化合物は正電荷であり、例えば第四級アンモニウムを含み、さまざまな無機および/または有機酸の陰イオン性構成成分とも塩を形成することができる。
【0065】
キヌクリジン化合物の薬学的に許容される塩を調製するために使用してもよい酸は、非毒性酸付加塩、例えば薬理学的に許容されるアニオンを含む塩、例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩または重硫酸塩、リン酸塩または酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩または酸性クエン酸塩、酒石酸塩または重酒石酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、サッカリン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩およびパモ酸塩[すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート)]塩を形成することができるものである。
【0066】
本質的に酸性であるここで開示する化合物、例えば、チオール部分を含む化合物は、さまざまな無機および/または有機塩基とさまざまな異なる塩を一般的に形成することができる。そのような塩は、動物およびヒトに投与するために一般的に薬学的に許容されるが、化合物を反応混合物から薬学的に許容されない塩として最初に単離し、次いで酸性試薬で処置することによって後者を遊離酸化合物に変換して単に戻し、その後遊離酸を薬学的に許容される塩基付加塩に変換することが実際に望ましいことが多い。これらの塩基付加塩は、従来技術を使用して、例えば、対応する酸性化合物を、所望の薬理学的に許容されるカチオンを含む水溶液で処置し、次いで、得られた溶液を、例えば減圧下で乾燥するまで蒸発させることによって容易に調製してもよい。あるいは、これらは、酸性化合物の低級アルカノール溶液と、所望のアルカリ金属アルコキシドとを一緒に混合し、次いで前述と同じ様式で得られた溶液を蒸発乾固させることによっても調製してもよい。いずれの場合も、化学量論の量の試薬を、反応を完全に行い、所望の固体塩の生成物の収率を最大にすることを確実にするために用いてもよい。
【0067】
キヌクリジン化合物の薬学的に許容される塩基付加塩を調製するために使用してもよい塩基は、非毒性塩基付加塩、例えば、薬理学的に許容されるカチオン、例えば、アルカリ金属カチオン(例えばカリウムおよびナトリウム)、アルカリ土類金属カチオン(例えばカルシウムおよびマグネシウム)を含む塩、アンモニウムまたは他の水溶性アミン、例えば、N-メチルグルカミン(メグルミン)、低級アルカノールアンモニウム、および他の有機アミン塩基の付加塩を形成することができるものである。
【0068】
1つの実施形態において、薬学的に許容される塩はコハク酸塩である。別の実施形態において、薬学的に許容される塩は2-ヒドロキシコハク酸塩、例えば(S)-2-ヒドロキシコハク酸塩である。別の実施形態において、薬学的に許容される塩は塩酸塩(すなわち、HClとの塩)である。別の実施形態において、薬学的に許容される塩はリンゴ酸塩である。
【0069】
プロドラッグ
本開示は、化合物1および1.1から1.75のプロドラッグを更に包含する。本明細書において開示する薬学的に許容されるプロドラッグは、本明細書において記載するキヌクリジン化合物にin vivoで変換することができる、キヌクリジン化合物の誘導体である。プロドラッグは、それ自体がいくつかの活性を有する場合があり、例えば、生理学的条件下で加溶媒分解をまたは酵素分解を受けた場合に、in vivoで薬学的に活性になる。本明細書において記載する化合物のプロドラッグを調製するための方法は、本開示に基づいて当業者であれば明らかであろう。
【0070】
1つの実施形態において、キヌクリジン化合物のカルバメート部分は改変されている。例えば、キヌクリジン化合物のカルバメート部分は、水および/または1つまたは2つの脂肪族アルコールを添加することによって改変してもよい。この場合、カルバメート部分の炭素-酸素二重結合は、ヘミアセタールまたはアセタール官能性と考えられ得るものを採用する。1つの実施形態において、キヌクリジン化合物のカルバメート部分は、脂肪族ジオール、例えば1,2-エタンジオールを添加することによって改変してもよい。
【0071】
1つの実施形態において、キヌクリジン化合物におけるヒドロキシ、チオまたはアミノ基のうちの1つまたはそれ以上は改変されている。例えば、キヌクリジン化合物におけるヒドロキシ、チオおよび/またはアミノ基のうちの1つまたはそれ以上は、酸誘導体、例えばエステル、チオエステル(またはチオールエステル)および/またはアミドを形成するために改変してもよい。酸誘導体は、例えば、1つまたはそれ以上のヒドロキシ、チオまたはアミノ基を含むキヌクリジン化合物とセチル化剤とを反応させることによって形成してもよい。アセチル化剤の例としては、無水物、例えば無水酢酸、酸塩化物、例えば塩化ベンジル、およびビカルボネート、例えばジ-tert-ブチルジカルボネートがある。
【0072】
立体化学
本開示は、化合物1および1.1から1.75の立体異性体および立体異性体の混合物を更に包含する。立体異性体(例えば、シスおよびトランス異性体)およびここで開示する化合物の全ての光学異性体(例えば、R-およびS-エナンチオマー)、ならびにそのような異性体のラセミ、ジアステレオマーおよび他の混合物は本開示の範囲内である。
【0073】
1つの実施形態において、本明細書において定義するキヌクリジン化合物のキヌクリジン-3-イル基はR-立体配置を有する。したがって、キヌクリジン化合物は、式(Ia)から(XIIa)の化合物、ならびにこれらの薬学的に許容される塩およびプロドラッグからなる群から選択してもよい:
【0074】
【0075】
別の実施形態において、本明細書において定義するキヌクリジン化合物のキヌクリジン-3-イル基はS-立体配置を有する。したがって、キヌクリジン化合物は、式(Ib)から(XIIb)の化合物、ならびにこれらの薬学的に許容される塩およびプロドラッグからなる群から選択してもよい:
【0076】
【0077】
1つの実施形態において、キヌクリジン化合物は、式(Xb)の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである。別の実施形態において、キヌクリジン化合物は、式(XIIb)の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである。
【0078】
1つの実施形態において、本明細書において定義するキヌクリジン化合物のキヌクリジン-3-イル基は、R-およびS-立体配置を有する異性体の混合物で存在する。例えば、キヌクリジン化合物は、式(Ia)および(Ib)、(IIa)および(IIb)、(IIIa)および(IIIb)、(IVa)および(IVb)、(Va)および(Vb)、(VIa)および(VIb)、(VIIa)および(VIIb)、(VIIIa)および(VIIIb)、(IXa)および(IXb)、(Xa)および(Xb)、(XIa)および(XIb)、ならびに(XIIa)および(XIIb)の化合物、ならびにこれらの薬学的に許容される塩およびプロドラッグからなる群から選択される化合物の混合物であってもよい。1つの実施形態において、キヌクリジン化合物はラセミ混合物として存在し、例えば、キヌクリジン-3-イル基のR-およびS-異性体はほぼ等量で存在する。別の実施形態において、キヌクリジン化合物は、R-およびS-立体配置を有する異性体の混合物として存在し、R-およびS-異性体は異なる量で存在する。1つの実施形態において、S-異性体は、少なくとも約5%、10%、25%、40%、70%、80%、90%、95%、97%、98%または99%、例えば、約100%のエナンチオマー過剰で存在する。別の実施形態において、R-異性体は、少なくとも約5%、10%、25%、40%、70%、80%、90%、95%、97%、98%または99%、例えば、約100%のエナンチオマー過剰で存在する。
【0079】
エナンチオ富化および/またはエナンチオ純粋キヌクリジン化合物を調製するための方法は、本開示に基づいて当業者であれば明らかであろう。
【0080】
ここで開示する化合物は、エノールおよびイミン形態ならびにケトおよびエナミン形態を含むいくつかの互変異性体、ならびに幾何異性体、ならびにこれらの混合物で存在してもよい。互変異性体は、溶液中で互変異性体のセットの混合物として存在する。固体形態では、通常1つの互変異生体が優勢である。1つの互変異生体を記載する場合があるにしても、全ての互変異性体が本開示の範囲内である。
【0081】
アトロプ異性体も本開示の範囲内である。アトロプ異性体は、回転が制限された異性体に分解することができる化合物を指す。
【0082】
他の形態
本開示は、化合物1および1.1から1.75の水和物、溶媒和物および多形を更に包含する。本明細書において記載するキヌクリジン化合物の薬学的に許容される水和物、溶媒和物、および多形は本開示の範囲内である。本明細書において記載するキヌクリジン化合物は、非結晶質形態および/または1つもしくはそれ以上の結晶形態であってもよい。
【0083】
同位体標識化合物も本開示の範囲内である。本明細書において使用する場合、「同位体標識化合物」は、本明細書においてそれぞれ記載する医薬塩およびそのプロドラッグを含むここで開示する化合物であって、1つまたはそれ以上の原子は、自然界で認められる原子質量または質量数と通常異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられている化合物を指す。ここで開示する化合物に組み込んでもよい同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体、例えばそれぞれ、2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、および36Clがある。
【0084】
医学的適応
本明細書において記載するキヌクリジン化合物およびそれを含む医薬組成物は、疾患、例えば、ファブリー病を有する患者における治療法において、特に神経障害性疼痛、胃腸の痛み(例えば、腹痛)、および末梢神経障害を含む疼痛、ならびに皮膚障害、例えば被角血管腫の治療的処置において有用である。本明細書において記載する方法に従って処置することになる対象としては脊椎動物がある。
【0085】
第1の態様において、本発明は、それを必要とする対象において、神経障害性疼痛、胃腸の痛み(例えば、腹痛)、および末梢神経障害を含む疼痛を処置または阻止するための方法(方法2)であって、有効量の本明細書において記載するキヌクリジン化合物、例えば、式IまたはII~XII、Ia~XIIaもしくはIb~XIIbのいずれか、または化合物1または1.1から1.75のいずれかによる化合物を対象に投与することを含む方法を提供する。それを必要とする対象において、神経障害性疼痛、胃腸の痛み(例えば、腹痛)、および末梢神経障害を含む疼痛を処置または阻止する方法において使用するための、例えば、方法2または2.1~2.51のいずれかにおいて使用するための、本明細書において記載するキヌクリジン化合物、例えば、式Iによる化合物またはII~XII、Ia~XIIaもしくはIb~XIIbのいずれか、または化合物1または1.1から1.75のいずれかも提供する。それを必要とする対象において、神経障害性疼痛、胃腸の痛み(例えば、腹痛)、および末梢神経障害を含む疼痛を処置または阻止する方法において使用するための医薬の製造における、例えば、方法2または2.1~2.51のいずれかにおいて使用するための医薬の製造における、本明細書において記載するキヌクリジン化合物、例えば、式Iによる化合物またはII~XII、Ia~XIIaもしくはIb~XIIbのいずれか、または化合物1または1.1から1.75のいずれかの使用を更に提供する。
【0086】
方法2の特定の更なる実施形態において、本開示は以下を提供する:
2.1.有効量の式IまたはII~XII、Ia~XIIaもしくはIb~XIIbのいずれか、または化合物1のいずれかまたは1.1から1.75のいずれかによる化合物を対象に投与することを含む、方法2;
2.2. 有効量の化合物1または化合物1.1から1.75のうちのいずれか1つもしくはそれ以上を対象に投与することを含む、方法2;
2.3. 式IまたはII~XII、Ia~XIIaもしくはIb~XIIbのいずれか、または化合物1のいずれかまたは1.1から1.75のいずれかによる化合物を含む有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法2または2.1~2.2のいずれか;
2.4. 化合物1または化合物1.1から1.75のいずれか1つもしくはそれ以上を含む有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法2または2.1~2.2のいずれか;
2.5. 医薬組成物は、本明細書において記載する少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を更に含む、方法2.3または2.4;
2.6. 有効量の化合物または有効量の医薬組成物を含む医薬投薬形態を投与することを含む、方法2または2.1~2.5のいずれか;
2.7. 投薬形態は、経口投薬形態(例えば、丸剤、カプセル剤、カプレット剤、錠剤、糖衣錠剤、散剤、顆粒剤、フィルム剤、トローチ剤、または液剤)である、方法2.6;
2.8. 投薬形態はチュアブル錠剤である、方法2.7;
2.9. 投薬形態は、非経口(例えば、医薬組成物が注射用に製剤化された)投薬形態である、方法2.6;
2.10. 注射は、静脈内、筋肉内、髄腔内または皮下注射であり、場合により無菌注射である、方法2.9;
2.11. 投薬形態は、局所または直腸投薬形態である、方法2.6;
2.12. 投薬形態は、鼻腔内投薬形態(例えば、エアロゾル)である、方法2.6;
2.13. 本明細書において記載する第2の活性薬剤、例えば、それを必要とする患者において疼痛を処置または阻止することができる第2の化合物を同時に投与することを更に含む、方法2または2.1から2.12のいずれか;
2.14. 第2の活性薬剤は、キヌクリジン化合物と同じ医薬組成物または投薬形態で投与される、方法2.13;
2.15. 第2の活性薬剤は、ガラクトシダーゼ阻害剤(例えば、アルファ-ガラクトシダーゼ阻害剤、例えば、ミガラスタット)である、方法2.13または2.14;
2.16. 対象は哺乳動物である、方法2、または2.1~2.15のいずれか;
2.17. 対象は霊長類動物である、方法2.16;
2.18. 対象はヒトである、方法2.17;
2.19. 疼痛は、末梢の疼痛、例えば、末梢神経障害である、方法2または2.1~2.18のいずれか;
2.20. 疼痛は胃腸の痛み(例えば、腹痛)である、方法2または2.1~2.18のいずれか;
2.21. 疼痛は全身的な疼痛である、方法2、または2.1~2.18のいずれか;
2.22. 疼痛は、鎮痛薬を用いた処置に耐性があるかまたはそれによって完全には軽減されない、方法2、または2.1~2.21のいずれか;
2.23. 疼痛は、非ステロイド性抗炎症剤を用いた処置に耐性があるかまたはそれによって完全には軽減されない、方法2、または2.1~2.21のいずれか;
2.24. 対象はファブリー病を有する、方法2、または2.1~2.23のいずれか;
2.25. ファブリー病はミガラスタットを用いた処置に適していない、方法2.24;
2.26. 対象は、アルファ-ガラクトシダーゼ活性が大幅に欠損しているかまたは欠如している(例えば、循環白血球において測定した場合、例えば、正常の1%未満である)、方法2、または2.1~2.25のいずれか;
2.27. 対象は、遺伝子GLA(例えば、ヘミ接合性男性、ホモ接合性女性またはヘテロ接合性女性)における突然変異と診断されており、場合により突然変異は、ナンセンスコドンGLA遺伝子である、方法2、または2.1~2.25のいずれか;
2.28. 対象は、組織において(例えば、皮膚毛細血管内皮細胞においてまたは血漿において)GL-3の顕著な蓄積を有する、方法2、または2.1~2.27のいずれか;
2.29. 対象は、酵素補充療法薬(ERT)を用いた、例えば、アガルシダーゼアルファまたはアガルシダーゼベータを使用した同時処置を受けている、方法2、または2.1~2.28のいずれか;
2.30. 対象は、アルファ-ガラクトシダーゼ阻害剤(例えば、ミガラスタット)を用いた同時処置を受けている、方法2、または2.1~2.28のいずれか;
2.31. 対象の血漿におけるグルコシルセラミド(GL1)濃度は、血漿において少なくとも2μg/mL、例えば、少なくとも3μg/mL、または少なくとも4μg/mLである、方法2、または2.1~2.30のいずれか;
2.32. 対象の血漿におけるグルコシルスフィンゴシン(lyso-GL1)濃度は、血漿において少なくとも65ng/mL、例えば、少なくとも70ng/mL、または少なくとも80ng/mLである、方法2、または2.1~2.31のいずれか;
2.33. 対象の血漿におけるGL3濃度は、血漿において少なくとも4μg/mL、例えば、少なくとも6μg/mL、または少なくとも8μg/mLである、方法2、または2.1~2.32のいずれか;
2.34. 対象に、1日用量である約1mgから約150mg、例えば、5から50mg、もしくは10から40mg、もしくは10から30mg、もしくは10から20mg、もしくは20から30mg、もしくは30から40mg、もしくは40から50mg、もしくは5から25mg、もしくは20から50mg、もしくは5から15mg、もしくは15から30mg、もしくは約15mgの、または2、5、15、25、50、100、もしくは150mgから選択される、式I(またはII~XII、Ia~XIIaもしくはIb~XIIbのいずれか、または化合物1または1.1から1.75のいずれか)による化合物を投与する、方法2、または2.1~2.33のいずれか;
2.35. 対象は、例えば、18から80歳、例えば、18から60歳、または18から40歳、または18から30歳、または18から25歳のヒト成人患者である、方法2、または2.1~2.34のいずれか;
2.36. 対象は、例えば、0から18歳、例えば、1から15歳、または1から5歳、または5から10歳、または10から15歳、または10から18歳のヒト小児患者である、方法2、または2.1~2.34のいずれか;
2.37. 方法によって、血漿におけるGL-1濃度において、処置してから2週または4週または8週後に少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%の減少がもたらされる、方法2、または2.1~2.36のいずれか;
2.38. 方法によって、血漿におけるGL-3濃度において、処置してから2週または4週または8週後に少なくとも20%、例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%の減少がもたらされる、方法2、または2.1~2.37のいずれか;
2.39. 方法によって、血漿におけるGL-3濃度において、26週または52週または104週後に少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%の減少がもたらされる、方法2、または2.1~2.38のいずれか;
2.40. 方法によって、血漿におけるlyso-GL-3濃度において、18週または26週または52週後に少なくとも25%、例えば、少なくとも35%、少なくとも45%または少なくとも50%の減少がもたらされる、方法2、または2.1~2.39のいずれか;
2.41. 方法によって、血漿におけるGM3濃度において、2週または4週または8週後に少なくとも25%、例えば、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%の減少がもたらされる、方法2、または2.1~2.39のいずれか;
2.42. 方法によって、26週または52週または156週以内に疼痛の重症度における(例えば、身体の痛みおよび/または胃腸の痛み(例えば、腹痛)における)減少がもたらされる、方法2、または2.1~2.39のいずれか;
2.43. 方法によって、26週または52週または156週以内に、例えば、GL-3封入体の程度によって示されるように、皮膚(例えば、皮膚毛細血管内皮細胞)におけるGL-3レベルにおいて減少がもたらされる、方法2、または2.1~2.39のいずれか;
2.44. 式Iによる化合物(またはII~XII、Ia~XIIaもしくはIb~XIIbのいずれか、または化合物1または1.1から1.75のいずれか)、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、全身投与によって、例えば、非経口経路または非経口ではない経路を介して投与される、方法2、または2.1~2.43のいずれか;
2.45. 投与経路は経口(経腸)である、方法2.44;
2.46. 投与経路は、例えば注射による、例えば静脈内注射による非経口である、方法2.44;
2.47. 式Iによる化合物(またはII~XII、Ia~XIIaもしくはIb~XIIbのいずれか、または化合物1または1.1から1.75のいずれか)、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、局在投与によって、例えば、局所投与によって投与される、方法2、または2.1~2.46のいずれか;
2.48. 化合物は、(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート、またはキヌクリジン-3-イル(2-(4’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)プロパン-2-イル)カルバメートである、方法2、または2.1~2.49のいずれか;
2.49. 化合物の投薬量は、経口投与で15mg/日である、方法2.48;
2.50. 化合物の投薬量は、単回経口用量で15mg/日である、方法2.49;
2.51. 対象に、化合物、例えば、(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメートの5mg、10mg、15mg、または20mgの単回1日用量を、場合によりリンゴ酸塩の酸付加塩の形態で投与する、方法2、または2.1~2.50のいずれか。
【0087】
第2の態様において、本発明は、それを必要とする対象において、被角血管腫、発汗減少症、無汗症、多汗症、リンパ浮腫、および/または先端異常感覚症を含むGL-3蓄積によって引き起こされる皮膚障害を処置または阻止するための方法(方法3)であって、本明細書において記載する有効量のキヌクリジン化合物、例えば、式IまたはII~XII、Ia~XIIaもしくはIb~XIIbのいずれか、または化合物1または1.1から1.75のいずれかによる化合物を対象に投与することを含む方法を提供する。それを必要とする対象において、被角血管腫、発汗減少症、無汗症、多汗症、リンパ浮腫、および/または先端異常感覚症を含むGL-3蓄積によって引き起こされる皮膚障害を処置または阻止する方法において使用するための、例えば、方法3または3.1~3.53のいずれかにおいて使用するための、本明細書において記載するキヌクリジン化合物、例えば、式Iによる化合物またはII~XII、Ia~XIIaもしくはIb~XIIbのいずれか、または化合物1または1.1から1.75のいずれかも提供する。それを必要とする対象において、被角血管腫、発汗減少症、無汗症、多汗症、リンパ浮腫、および/または先端異常感覚症を含むGL-3蓄積によって引き起こされる皮膚障害を処置または阻止する方法において使用するための医薬の製造における、例えば、方法3または3.1から3.53のいずれかにおいて使用するための医薬の製造における、本明細書において記載するキヌクリジン化合物、例えば、式Iによる化合物またはII~XII、Ia~XIIaもしくはIb~XIIbのいずれか、または化合物1または1.1から1.75のいずれかの使用を更に提供する。
【0088】
方法3の特定の更なる実施形態において、本開示は以下を提供する:
3.1. 有効量の式IまたはII~XII、Ia~XIIaもしくはIb~XIIbのいずれか、または化合物1のいずれかまたは1.1から1.75のいずれかによる化合物を対象に投与することを含む、方法3;
3.2. 有効量の化合物1または化合物1.1から1.75のうちのいずれか1つもしくはそれ以上を対象に投与することを含む、方法3;
3.3. 式IまたはII~XII、Ia~XIIaもしくはIb~XIIbのいずれか、または化合物1のいずれかまたは1.1から1.75のいずれかによる化合物を含む有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法3または3.1~3.2のいずれか;
3.4. 化合物1または化合物1.1から1.75のうちのいずれか1つもしくはそれ以上を含む有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法3または3.1~3.2のいずれか;
3.5. 医薬組成物は、本明細書において記載する少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を更に含む、方法3.3または3.4;
3.6. 有効量の化合物または有効量の医薬組成物を含む医薬投薬形態を投与することを含む、方法3または3.1~3.5のいずれか;
3.7. 投薬形態は、経口投薬形態(例えば、丸剤、カプセル剤、カプレット剤、錠剤、糖衣錠剤、散剤、顆粒剤、フィルム剤、トローチ剤、または液剤)である、方法3.6;
3.8. 投薬形態はチュアブル錠剤である、方法3.7;
3.9. 投薬形態は、非経口投薬(例えば、医薬組成物が注射用に製剤化された)形態である、方法3.6;
3.10. 注射は、静脈内、筋肉内、髄腔内または皮下注射であり、場合により無菌注射である、方法3.9;
3.11. 投薬形態は、局所または直腸投薬形態である、方法3.6;
3.12. 投薬形態は、鼻腔内投薬形態(例えば、エアロゾル)である、方法3.6;
3.13. それを必要とする患者において、本明細書において記載する第2の活性薬剤、例えば、疼痛を処置または阻止することができる第2の化合物を同時に投与することを更に含む、方法3または3.1から3.12のいずれか;
3.14. 第2の活性薬剤は、キヌクリジン化合物と同じ医薬組成物または投薬形態で投与される、方法3.13;
3.15. 第2の活性薬剤は、ガラクトシダーゼ阻害剤(例えば、アルファ-ガラクトシダーゼ阻害剤、例えば、ミガラスタット)である、方法3.13または3.14;
3.16. 対象は哺乳動物である、方法3、または3.1~3.15のいずれか;
3.17. 対象は霊長類動物である、方法3.16;
3.18. 対象はヒトである、方法3.17;
3.19. 皮膚障害は被角血管腫である、方法3または3.1~3.18のいずれか;
3.20. 皮膚障害は、発汗減少症および/または無汗症である、方法3または3.1~3.18のいずれか;
3.21. 皮膚障害はリンパ浮腫である、方法3、または3.1~3.18のいずれか;
3.22. 皮膚障害は先端異常感覚症である、方法3、または3.1~3.21のいずれか;
3.23. 先端異常感覚症の疼痛は、鎮痛薬を用いたまたは非ステロイド性抗炎症剤を用いた処置に耐性があるかまたはそれによって完全には軽減されない、方法3.22;
3.24. 対象はファブリー病を有する、方法3、または3.1~3.23のいずれか;
3.25. ファブリー病はミガラスタットを用いた処置に適していない、方法3.24;
3.26. 対象は、アルファ-ガラクトシダーゼ活性が大幅に欠損しているかまたは欠如している(例えば、循環白血球において測定した場合、例えば、正常の1%未満である)、方法3、または3.1~3.25のいずれか;
3.27. 対象は、遺伝子GLA(例えば、ヘミ接合性男性、ホモ接合性女性またはヘテロ接合性女性)における突然変異と診断されており、場合により突然変異はナンセンスコドンGLA遺伝子である、方法3、または3.1~3.25のいずれか;
3.28. 対象は、皮膚においておよび/または血漿においてGL-3の顕著な蓄積を有する、方法3、または3.1~3.27のいずれか;
3.29. 対象は、表在皮膚血管の内皮細胞、深部皮膚血管の内皮細胞、深部皮膚血管の平滑筋細胞、および神経周膜細胞のうちの1つまたはそれ以上においてGL-3の顕著な蓄積を有する、方法3.28;
3.30. 対象は、酵素補充療法薬(ERT)を用いた、例えば、アガルシダーゼアルファまたはアガルシダーゼベータを使用した同時処置を受けている、方法3、または3.1~3.29のいずれか;
3.31. 対象は、アルファ-ガラクトシダーゼ阻害剤(例えば、ミガラスタット)を用いた同時処置を受けている、方法3、または3.1~3.29のいずれか;
3.32. 対象の血漿におけるグルコシルセラミド(GL1)濃度は、血漿において少なくとも2μg/mL、例えば、少なくとも3μg/mL、または少なくとも4μg/mLである、方法3、または3.1~3.31のいずれか;
3.33. 対象の血漿におけるグルコシルスフィンゴシン(lyso-GL1)濃度は、血漿において少なくとも65ng/mL、例えば、少なくとも70ng/mL、または少なくとも80ng/mLである、方法3、または3.1~3.32のいずれか;
3.34. 対象の血漿におけるGL3濃度は、血漿において少なくとも4μg/mL、例えば、少なくとも6μg/mL、または少なくとも8μg/mLである、方法3、または3.1~3.32のいずれか;
3.35. 対象に、1日用量である約1mgから約150mg、例えば、5から50mg、もしくは10から40mg、もしくは10から30mg、もしくは10から20mg、もしくは20から30mg、もしくは30から40mg、もしくは40から50mg、もしくは5から25mg、もしくは20から50mg、もしくは5から15mg、もしくは15から30mg、もしくは約15mgの、または2、5、15、25、50、100、もしくは150mgから選択される、式I(またはII~XII、Ia~XIIaもしくはIb~XIIbのいずれか、または化合物1または1.1から1.75のいずれか)による化合物を投与する、方法3、または3.1~3.34のいずれか;
3.36. 対象は、例えば、18から80歳、例えば、18から60歳、または18から40歳、または18から30歳、または18から25歳のヒト成人患者である、方法3、または3.1~3.35のいずれか;
3.37. 対象は、例えば、0から18歳、例えば、1から15歳、または1から5歳、または5から10歳、または10から15歳、または10から18歳のヒト小児患者である、方法3、または3.1~3.35のいずれか;
3.38. 方法によって、血漿におけるGL-1濃度において、処置してから2週または4週または8週後に少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%の減少がもたらされる、方法3、または3.1から3.36のいずれか;
3.39. 方法によって、血漿におけるGL-3濃度において、処置してから2週または4週または8週後に少なくとも20%、例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%の減少がもたらされる、方法3、または3.1~3.38のいずれか;
3.40. 方法によって、血漿におけるGL-3濃度において、26週または52週または104週後に少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%の減少がもたらされる、方法3、または3.1~3.39のいずれか;
3.41. 方法によって、血漿におけるlyso-GL-3濃度において、18週または26週または52週後に少なくとも25%、例えば、少なくとも35%、少なくとも45%または少なくとも50%の減少がもたらされる、方法3、または3.1~3.40のいずれか;
3.42. 方法によって、血漿におけるGM3濃度において、2週または4週または8週後に少なくとも25%、例えば、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%の減少がもたらされる、方法3、または3.1~3.40のいずれか;
3.43. 方法によって、26週または52週または156週以内に、例えば、GL-3封入体の程度によって示されるように、皮膚(例えば、皮膚毛細血管内皮細胞)におけるレベルにおいて減少がもたらされる、方法3、または3.1~3.40のいずれか;
3.44. 皮膚GL-3レベル(例えば、GL-3封入体)における減少は、表在皮膚血管の内皮細胞、深部皮膚血管の内皮細胞、深部皮膚血管の平滑筋細胞、および神経周膜細胞のうちの1つまたはそれ以上において、26週または52週または156週以内に認められる、方法3.43;
3.45. 対象は、処置前に2またはそれを超えるGL-3皮膚スコア(例に記載される0から4のスケールで測定される)を有し、方法によって、スケールで少なくとも1ポイントの減少、例えば、1ポイントまたは2ポイントの低下がもたらされ;および/または対象は、皮膚細胞(例えば内皮細胞)においてGL-3封入体を有し、処置前に少なくとも0.25(例えば、少なくとも0.27または0.3)のGL-3封入体の細胞質体積割合を示し、方法によって、GL-3封入体の細胞質体積割合は0.25未満(例えば、0.23未満または0.20未満、または0.19未満)に低下する、方法3、または3.1~3.44のいずれか。
3.46. 式Iによる化合物(またはII~XII、Ia~XIIaもしくはIb~XIIbのいずれか、または化合物1または1.1から1.75のいずれか)、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、全身投与によって、例えば、非経口経路または非経口ではない経路を介して投与される、方法3または3.1~3.45のいずれか;
3.47. 投与経路は経口(経腸)である、方法3.46;
3.48. 投与経路は、例えば注射による、例えば静脈内注射による非経口である、方法3.46;
3.49. 式Iによる化合物(またはII~XII、Ia~XIIaもしくはIb~XIIbのいずれか、または化合物1または1.1から1.75のいずれか)、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグは、局在投与によって、例えば、局所投与によって投与される、方法3または3.1~3.48のいずれか;
3.50. 化合物は、(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメートであるか、またはキヌクリジン-3-イル(2-(4’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)プロパン-2-イル)カルバメートである、方法3または3.1~3.49のいずれか;
3.51. 化合物の投薬量は、経口投与で15mg/日である、方法3.50;
3.52. 化合物の投薬量は、単回経口用量で15mg/日である、方法3.51;
3.53. 対象に、化合物、例えば、(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメートの5mg、10mg、15mg、または20mgの単回1日用量を、場合によりリンゴ酸塩の酸付加塩の形態で投与する、方法3または3.1~3.52のいずれか。
【0089】
本開示のいくつかの実施形態において、対象、すなわち患者は、特定の疾患または障害を有すると診断されており、特定の遺伝的突然変異、例えば、問題の疾患または障害をもたらすことが既知であるものを有するとも診断されているが、特定の患者の疾患または障害は、その人が有すると診断された特定の突然変異によって引き起こされることを立証することはできないことが多い。このように使用する場合、「特定の遺伝的突然変異を有することが診断された」という用語は、対象または患者は、例えば、DNAまたはRNAシークエンシング、タンパク質プロファイリング、または他の好適な手段によって試験されており、問題の突然変異を有することが認められていることを意味する。しかし、以下で更に説明するように、多くの遺伝的疾患および障害は、複数の遺伝的原因(例えば、突然変異)を有することがあり、患者は、いくつかの環境下で疾患または障害をそれぞれもたらすのに十分であり得る複数の突然変異を有する場合があり、特定の突然変異が特定の患者において特定の疾患または障害をもたらすことを裏付けるための対象とはならない。
【0090】
上記で検討したように、グリコーゲン蓄積性疾患の特徴のうちの1つは、身体の細胞におけるさまざまな糖脂質またはスフィンゴ糖脂質の異常蓄積である。この蓄積は、疾患の観察可能な症状と兆候の両方の原因、ならびに疾患の存在および/または進行を証明する診断マーカーである。本明細書において使用する場合、血漿、皮膚または他の軟組織におけるGL-3、GL-1および他のバイオマーカーの測定に関連する「顕著な蓄積」という句は、前記化合物の最大正常濃度の25%を超える蓄積を意味する。いくつかの実施形態において、「顕著な蓄積」は、前記化合物の最大正常濃度の50%を超えることを意味する。
【0091】
方法2以降および方法3以降による方法は、リソソーム蓄積性疾患、特にファブリー病と診断されているが、病態と関連する疼痛症状をまだ経験していないか、または疾患の初期の皮膚科学的症状を呈したに過ぎない対象にとって有益な場合がある。方法2以降および方法3以降による方法は、例えば、そのような疾患をもたらすことが既知の対象または対象の家系における突然変異のためにリソソーム蓄積性疾患、例えばファブリー病を発症するリスクがある対象にとっても有益な場合がある。その結果、本明細書において記載する方法のいくつかの実施形態において、対象は、前記疾患または障害を発症するリスクがあると診断されており、方法は、対象における疾患または障害の疼痛症状の発病および/または発症を阻止するかまたは遅延させる。いくつかの実施形態において、対象は、本明細書において記載する遺伝子における突然変異を有するという理由で前記疾患または障害を発症するリスクがあると診断されている。
【0092】
医薬組成物
本開示はまた、例えば、本明細書において開示する方法による使用のための、本明細書において記載する少なくとも1つのキヌクリジン化合物および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。薬学的に許容される賦形剤は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro edit.1985)に記載されているものを含む当技術分野において既知の任意の賦形剤であってもよい。ここで開示する化合物の医薬組成物は、当技術分野において既知の従来の手段、例えば、少なくとも1つのここで開示する化合物と薬学的に許容される賦形剤とを混合することによって調製してもよい。
【0093】
したがって、1つの態様において、本開示は、本明細書において記載するキヌクリジン化合物および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬投薬形態であって、投薬形態は、投与する場合に(例えば、経口投与する場合に)、本明細書において(例えば、方法2以降、または方法3以降のいずれかにおいて)記載する疾患または障害を処置するのに十分な量の前記化合物を提供するように製剤化されている医薬投薬形態を提供する。
【0094】
本発明の医薬組成物または投薬形態は、薬剤および別の担体、例えば、不活性なまたは活性を有する化合物または組成物、例えば、検出可能な薬剤、標識、アジュバント、希釈剤、結合剤、安定化剤、緩衝液、塩、親油性溶媒、保存剤、アジュバントなどを含んでいてもよい。担体としては、医薬賦形剤および添加剤、例えば、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、および炭水化物(例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、およびオリゴ糖を含む糖;誘導体化糖、例えばアルジトール、アルドン酸、エステル化糖など;および多糖または糖ポリマー)もあり、これらは、単独または1から99.99重量または体積%の組合せを含む、単独でまたは組合せで存在していてもよい。例示的なタンパク質賦形剤としては、血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼインなどがある。緩衝能力においても機能することができる代表的なアミノ酸/抗体構成成分としては、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどがある。炭水化物賦形剤も本発明の範囲内で対象とし、その例としては、これらに限定されるものではないが、単糖類、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなど;二糖類、例えば、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなど;多糖、例えば、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなど;およびアルジトール、例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)およびミオイノシトールがある。
【0095】
使用してもよい担体としては、緩衝液またはpH調整剤があり;典型的には、緩衝液は有機酸または塩基から調製された塩である。代表的な緩衝液としては、有機酸塩、例えば、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、またはフタル酸の塩;トリス、塩酸トロメタミン、またはリン酸緩衝液がある。追加の担体としては、ポリマー賦形剤/添加剤、例えば、ポリビニルピロリドン、フィコール(ポリマー糖)、デキストレート(例えば、シクロデキストリン、例えば2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、香味剤、抗菌剤、甘味料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、ポリソルベート、例えば、「TWEEN20」および「TWEEN80」)、脂質(例えば、リン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えばコレステロール)、およびキレート化剤(例えばEDTA)がある。
【0096】
本開示はまた、本明細書において記載する少なくとも1つのキヌクリジン化合物および少なくとも1つの更なる薬学的活性薬剤を含む、医薬組成物および前記組成物を含むキットを提供する。これらの医薬組成物およびキットは、キヌクリジン化合物および更なる活性薬剤を、同時に、続けておよび/または個別に投与することを可能にするように適合させてもよい。例えば、キヌクリジン化合物および更なる活性薬剤は、個別の剤型に、例えば、個別の錠剤、カプセル剤、凍結乾燥剤または液剤に製剤化しても、同じ投薬形態に、例えば、同じ錠剤、カプセル剤、凍結乾燥剤または液剤に製剤化してもよい。キヌクリジン化合物および更なる活性薬剤が同じ投薬形態に製剤化された場合、キヌクリジン化合物および更なる活性薬剤は、添加混合物中に、例えば、錠剤のコア内に実質的に存在していても、投薬形態の個別の領域中に、例えば、同じ錠剤の個別の層中に実質的に存在していてもよい。1つの実施形態において、医薬投薬形態は、本明細書において記載する、例えば、リソソーム蓄積性疾患、例えば、ゴーシェ3型もしくはニーマンピックC型と診断されているかもしくはそれに罹りやすい患者における核上性注視軽症麻痺、または例えば、リソソーム蓄積性疾患、例えばファブリー病と診断されているかもしくはそれに罹りやすい患者における疼痛を処置または阻止することができる更なる薬剤を含む。
【0097】
更なる態様において、本開示は、(i)本明細書において記載するキヌクリジン化合物;(ii)更なる活性薬剤;および(iii)薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。別の実施形態において、本明細書において記載する更なる活性薬剤は、例えば、対象に経口投与する場合に、例えば、リソソーム蓄積性疾患、例えばファブリー病と診断されているかまたはそれに罹りやすい患者において疼痛、または皮膚障害(例えば、被角血管腫)を処置または阻止することができる薬剤である。
【0098】
ここで開示されるキヌクリジン化合物および医薬組成物は、動物またはヒトにおいて使用してもよい。したがって、ここで開示する化合物は、経口、頬側、非経口(例えば、静脈内、筋肉内または皮下)、局所、直腸もしくは鼻腔内投与用の医薬組成物として、または吸入もしくは吹入による投与に好適な形態で製剤化してもよい。特定の実施形態において、キヌクリジン化合物または医薬組成物は、例えば、非経口ではない経路を介して全身投与用に製剤化される。1つの実施形態において、キヌクリジン化合物または医薬組成物は、例えば、固体形態で経口投与用に製剤化される。適切な医薬組成物を調製するためのそのような投与様式および方法は、例えば、Gibaldi’s Drug Delivery Systems in Pharmaceutical Care (1st ed.,American Society of Health-System Pharmacists 2007)に記載されている。
【0099】
医薬組成物は、例えば、所望の放出プロファイルを提供するためのさまざまな比率のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはマイクロスフェアを使用して、その中の活性成分の放出を遅延させるか、延長させるか、または制御するように製剤化してもよい。医薬組成物は、乳白剤も場合により含んでいてもよく、場合により、例えば、腸溶性コーティングを使用することによって遅延様式で胃腸管のある特定の部分において活性成分のみを放出するかまたは優先的に放出する組成物であってもよい。埋込組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスがある。活性成分はまた、適切な場合、当技術分野において周知の1つまたはそれ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤(例えば、Remington’sを参照のこと)とともにマイクロカプセル化された形態であってもよい。ここで開示する化合物は、当業者に周知の方法に従って持続送達用に製剤化してもよい。そのような製剤の例は、米国特許第3,119,742号;同第3,492,397号;同第3,538,214;4,060,598号;および同第4,173,626号で見出すことができる。
【0100】
経口投与用の固体投薬形態(例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠剤、散剤、顆粒剤など)では、活性成分は、1つまたはそれ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤、例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、および/または以下のいずれか:(1)フィラーまたは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、微結晶性セルロース、リン酸カルシウムおよび/またはケイ酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクロースおよび/またはアカシア;(3)保湿剤、例えばグリセロール;(4)崩壊剤、例えば、アガー-アガー、炭酸カルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のシリケート、および炭酸ナトリウム;(5)溶解遅延剤、例えばパラフィン;(6)吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物;(7)湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、アセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール;(8)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土;(9)滑沢剤、例えば、タルク、シリカ、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物;ならびに(10)着色剤と混合されている。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、医薬組成物は緩衝剤も含んでいてもよい。類似のタイプの固体組成物はまた、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中にフィラー、ならびに賦形剤、例えば、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して調製してもよい。
【0101】
錠剤は、場合により1つまたはそれ以上の補助成分とともに、圧縮または成形することによって作製してもよい。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性化剤、および/または分散剤を使用して調製してもよい。成形錠剤は、不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末化活性成分の混合物を好適な機械で成形することによって作製してもよい。錠剤および他の固体投薬形態、例えば、糖衣錠剤、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤は、場合により、刻み目を入れてもよいし、またはコーティングおよびシェル、例えば、当技術分野において周知の腸溶性コーティングおよび他のコーティングを用いて調製してもよい。
【0102】
実施形態において、医薬組成物は、液体形態で経口投与される。活性成分の経口投与用の液体投薬形態としては、薬学的に許容されるエマルション剤、マイクロエマルション剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤がある。経口投与用の液体調製物は、使用前に水または他の好適なビヒクルを用いて構成するための乾燥製品として存在していてもよい。活性成分に加えて、液体投薬形態は、当技術分野において通常使用される不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(例えば綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含んでいてもよい。不活性希釈剤に加えて、液体医薬組成物は、アジュバント、例えば湿潤剤、乳化および懸濁化剤、甘味料、香味料、着色剤、香料および保存剤などを含んでいてもよい。活性成分に加えて、懸濁剤は、懸濁化剤、例えば、これらに限定されないが、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、アガー-アガーならびにトラガカント、ならびにこれらの混合物を含んでいてもよい。好適な液体調製物は、薬学的に許容される添加物、例えば、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロースまたは水素化食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステルまたはエチルアルコール);および/または保存剤(例えばメチルまたはプロピルp-ヒドロキシ安息香酸またはソルビン酸)を用いて従来の手段によって調製してもよい。活性成分はまた、ボーラス剤、舐剤、またはペースト剤として投与してもよい。
【0103】
頬側投与に関しては、組成物は、従来の様式で製剤化された錠剤またはトローチ剤の形態をとっていてもよい。
【0104】
実施形態において、医薬組成物は、非経口手段によって、例えば、局所適用、経皮適用、注射などによって投与される。関連する実施形態において、医薬組成物は、注射、注入、または埋込(例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、皮下など)によって非経口で投与される。
【0105】
ここで開示する化合物は、従来のカテーテル技術または注入を使用することを含む注射によって非経口投与用に製剤化してもよい。注射用製剤は、保存剤が添加された単位投薬形態で、例えば、アンプルでまたは複数回用量容器で存在していてもよい。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁剤、溶液剤またはエマルション剤のような形態をとっていてもよく、当業者によって認識されている製剤化剤、例えば、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤を含んでいてもよい。あるいは、活性成分は、使用前に好適なビヒクル、例えば無菌発熱因子不含水を用いて復元するための粉末形態であってもよい。
【0106】
医薬組成物は、中枢神経系に直接投与してもよい。したがって、ある特定の実施形態において、組成物は中枢神経系に直接投与され、その結果、血液脳関門を回避する。いくつかの実施形態において、組成物は、直接脊髄注射を介して投与してもよい。実施形態において、組成物は髄腔内注射によって投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、脳室内注射を介して投与される。実施形態において、組成物は、側脳室に投与される。実施形態において、組成物は、両方の側脳室に投与される。追加の実施形態において、組成物は、海馬内注射を介して投与される。組成物は、1回の注射または複数回の注射で投与してもよい。他の実施形態において、組成物は、1か所を超える位置に(例えば、中枢神経系において2か所の位置に)投与される。
【0107】
医薬組成物は、無菌注射の形態であってもよい。医薬組成物は、例えば、細菌保持フィルターに通してろ過することによって、または使用直前に水、もしくはいくつかの他の無菌注射可能媒体中に溶解することができる無菌固体組成物の形態の無菌化剤を組み込むことによって無菌としてもよい。そのような組成物を調製するために、活性成分は、非経口で許容される液体ビヒクル中に溶解または懸濁される。例示的なビヒクルおよび溶媒としては、これらに限定されるものではないが、水、適切な量の塩酸、水酸化ナトリウムまたは好適な緩衝液を添加することによって好適なpHに調整される水、1,3-ブタンジオール、リンゲル溶液および等張塩化ナトリウム溶液がある。医薬組成物は、1つまたはそれ以上の防腐剤、例えば、メチル、エチルまたはn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエートも含んでいてもよい。溶解性を改善させるために、溶解促進剤または可溶化剤を添加してもよく、または溶媒は10~60%w/wのプロピレングリコールまたは類似のものを含んでいてもよい。
【0108】
医薬組成物は、1つまたはそれ以上の薬学的に許容される無菌等張水性または非水溶液剤、分散剤、懸濁剤もしくはエマルション剤、または使用直前に無菌注射用溶液または分散体に復元することができる無菌粉末剤を含んでいてもよい。そのような医薬組成物は、抗酸化剤;緩衝液;静菌剤;製剤を対象とされるレシピエントの血液と等張にする溶質;懸濁化剤;増粘剤;防腐剤;などを含んでいてもよい。
【0109】
本発明の医薬組成物において用いてもよい好適な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの好適な混合物、植物油、例えばオリーブ油、ならびに注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルがある。適切な流動性は、例えば、コーティング材料、例えばレシチンを使用することによって、分散体の場合は必要な粒子サイズを維持することによって、かつ界面活性剤を使用することによって維持してもよい。いくつかの実施形態において、活性成分の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射からの化合物の吸収を遅延させることが望ましい。これは、難水溶性の結晶質または非結晶質材料の液体懸濁液を使用することによって達成してもよい。そして、活性成分の吸収速度はその溶解速度に依存し、溶解速度は、結晶サイズおよび結晶形態に依存する場合がある。あるいは、非経口投与される活性成分の遅延性の吸収は、油ビヒクル中に化合物を溶解または懸濁することによって達成される。更に、注射可能な医薬形態の持続吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含むことによって行ってもよい。
【0110】
制御放出非経口組成物は、水性懸濁剤、マイクロスフェア剤、マイクロカプセル剤、磁性マイクロスフェア剤、油溶液剤、油性懸濁剤、エマルション剤の形態であってもよく、または活性成分は、生体適合性担体、リポソーム、ナノ粒子、埋め込み体または注入デバイス中に組み込んでもよい。マイクロスフェアおよび/またはマイクロカプセルの調製において使用するための材料としては、これらに限定されるものではないが、生分解性/生体内分解性ポリマー、例えばポリグラクチン、ポリ-(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-L-グルタミン)およびポリ(乳酸)がある。制御放出非経口製剤を製剤化する場合に使用してもよい生体適合性担体としては、炭水化物、例えば、デキストラン、タンパク質、例えば、アルブミン、リポタンパク質または抗体がある。埋め込み体において使用するための材料は、非生分解性、例えば、ポリジメチルシロキサン、または生分解性、例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)またはポリ(オルトエステル)であってもよい。
【0111】
局所投与に関しては、ここで開示する化合物は、軟膏剤またはクリーム剤として製剤化してもよい。ここで開示する化合物はまた、直腸組成物、例えば、例えば、従来の坐剤基剤、例えばココアバターまたは他のグリセリドを含む坐剤または停留浣腸に製剤化してもよい。
【0112】
鼻腔内投与または吸入による投与に関しては、ここで開示する化合物は、患者によって押されるかまたはポンプで送られるポンプ噴霧剤容器からの溶液もしくは懸濁液の形態で、または好適な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、もしくは他の好適なガスを使用した加圧型容器またはネブライザーから提示されるエアロゾル噴霧剤として都合よく送達してもよい。加圧型エアロゾルの場合、投薬単位は、定量を送達するためのバルブを提供することによって判定してもよい。加圧型容器またはネブライザーは、ここで開示する化合物の溶液または懸濁液を含んでいてもよい。カプセルおよびカートリッジ(例えば、ゼラチンから作製される)において使用するための吸入器または吹送器は、ここで開示する化合物および好適な粉末ベース、例えばラクトースまたはデンプンの粉末ミックスを含むように製剤化してもよい。
【0113】
一般的に、本明細書において記載する試薬および組成物は、それを必要とする対象において核上性注視軽症麻痺を処置または阻止するのに十分な有効量または量で投与される。典型的には、用量は、例えば、年齢、身体状態、体重、性別、食事、投与時間、および他の臨床的因子に基づいてこの範囲内で調整してもよい。有効量の判定は、当業者の能力の十分範囲内である。
【0114】
本明細書において全般的に記載してきたが、本発明を更に例示するために、以下の非限定的な例を提供する。
【実施例】
【0115】
化学的合成のための一般手順
一般手順A:トリホスゲンを用いたカルバメート形成
室温のTHF(濃度約0.2M)中のアミン塩酸塩(1当量)およびトリエチルアミン(3~4当量)の懸濁液に、トリホスゲン(0.35当量)を添加した。反応混合物を10分間撹拌し、少量のエーテル(1~2mL)を添加した。トリエチルアンモニウム塩をろ過除去して、THF/エーテル中のイソシアネートの透明溶液を得た。
【0116】
室温のTHF(濃度約0.2M)中のアルコール(1.5当量)の溶液へ、NaH[60%、油](1.5当量)を添加した。反応混合物を15分間撹拌し、上記溶液(THF/エーテル中のイソシアネート)を滴加した。標準的な後処理では、反応物を食塩水でクエンチした。溶液をEtOAcで抽出し、有機層をNa2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮した。粗製材料をコンビフラッシュ(SiO2カートリッジ、MeOH中のCHCl3および2N NH3)で精製して、対応するカルバメートを得た。
【0117】
一般手順B:有機セリウムを用いたアルキル化
THF(濃度約0.2M)中のCeCl3(4当量)の懸濁液を、室温で1時間撹拌した。懸濁液を-78℃に冷却し、MeLi/エーテル[1.6M](4当量)を滴加した。有機セリウム錯体を1時間形成させ、THF(濃度2.0M)中のニトリル(1当量)の溶液を滴加した。反応混合物を室温に加温し、18時間撹拌した。溶液を0℃に冷却し、水(約1mL)でクエンチし、続いて、水酸化アンモニウム50%水溶液(約3mL)を、沈殿が形成され、フラスコの底に沈むまで添加した。混合物を、セライトパッドに通してろ過し、濃縮した。粗製材料をHCl/ジオキサン[4.0M]溶液で処置した。中間体アリールプロパン-2-アミン塩酸塩をエーテル中で破砕し、次の工程にそのまま使用した。あるいは、粗製遊離塩基アミンをコンビフラッシュ(SiO2カートリッジ、MeOH中のCHCl3および2N NH3)で精製して、対応するアリールプロピルアミンを得た。
【0118】
一般手順C:鈴木カップリング
DME/水[4:1]の混合物(濃度約0.2M)中のアリールハロゲン化物(1当量)の溶液へ、ボロン酸(2当量)、パラジウム触媒(0.1~0.25当量)および炭酸ナトリウム(2当量)を添加した。反応混合物を、150°Cで25分マイクロ波処理した。セライトプラグに通してろ過し、濃縮した後、粗製製品をコンビフラッシュ(SiO2カートリッジ、MeOH中のCHCl3および2N NH3)で精製して、対応するカップリング付加物を得た。
【0119】
代替法:トルエン/水[20:1]の混合物(濃度約0.2M)中の、アリールハロゲン化物(1当量)の溶液へ、ボロン酸(1.3~2.5当量)、パラジウム触媒(0.05~0.15当量)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.15~0.45当量)およびリン酸カリウム(5当量)を添加した。反応混合物を、150℃で25分マイクロ波処理した。セライトプラグに通してろ過し、濃縮した後、粗製製品をコンビフラッシュ(SiO2カートリッジ、MeOH中のCHCl3および2N NH3)で精製して、対応するカップリング付加物を得た。
【0120】
一般手順D:シクロプロパン化
-70℃で撹拌したアリールニトリル(1当量)およびTi(Oi-Pr)4(1.7当量)の混合物に、EtMgBr[3.0M、エーテル中](1.1当量)を滴加した。反応混合物を25℃に加温し、1時間撹拌した。上記混合物にBF3・Et2O(3当量)を25℃で滴加した。添加後、混合物を更に2時間撹拌し、次いで水性HCI[2M]でクエンチした。次いで得られた溶液を、NaOH水溶液[2M]を添加することによって塩基性化した。有機材料をエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮した。粗製材料をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc:10/1から1/1で溶出)によって精製して、対応する1-アリール-シクロプロパンアミンを得た。
【0121】
一般手順E:鈴木条件を使用したビアリールカップリング
5:1(v/v)のジオキサン/水(約0.15M)または5:1(v/v)のN,N-ジメチルホルムアミド(約0.15M)中のアリールハロゲン化物構成成分(1当量)の撹拌溶液に、アリールボロネートまたはアリールボロン酸構成成分(1~1.5当量)、炭酸ナトリウム(2~3当量)および[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(0.05当量)を添加した。混合物を一晩加熱し(90℃)、次いでセライトプラグに通してろ過した。セライトを酢酸エチルですすぎ、合わせたろ液を食塩水で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濃縮した。残渣をシリカフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0122】
一般手順F:混合無水物/クルチウス転位経路を介して生成されたイソシアネートを使用したカルバメート形成
テトラヒドロフラン(約0.1M)中のカルボン酸構成成分(1当量)の撹拌溶液に、トリエチルアミン(2当量)を添加した。反応物を冷却し(0℃)、クロロギ酸イソブチル(1.5当量)で処置した。0℃で1時間後、水(約1M)中のアジ化ナトリウム(2当量)の溶液を添加し、反応物を室温に加温した。一晩撹拌後、反応物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた抽出物を、重炭酸ナトリウム水溶液および食塩水で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濃縮した。粗製アシルアジドを、トルエンとの共蒸発を介して更に乾燥し、次いでトルエン(約0.1M)に入れた。撹拌溶液を2~2.5時間還流し、冷却し、アルコール構成成分(1.25~2当量)で処置した。反応物を一晩加熱還流し、次いで濃縮した。残渣を酢酸エチルまたはクロロホルムのいずれかに入れ、炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濃縮した。粗製製品を、クロロホルム/メタノール(極性の低いカルバメート)またはクロロホルム/メタノール/アンモニア(極性の高いカルバメート)溶媒勾配を使用した、シリカフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【実施例1】
【0123】
キヌクリジン化合物の合成
1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル[2-(4’-フルオロビフェニル-3-イル)プロパン-2-イル]カルバメート(化合物1)
一般手順Cを使用して、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル[2-(3-ブロモフェニル)プロパン-2-イル]カルバメート(600mg、1.63mmol)、4-フルオロフェニルボロン酸(457mg、3.27mmol)および酢酸パラジウム(II)により、表題化合物を白色固形物(373mg;60%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.56 (s, 1H), 7.52 (dd, J = 5.4, 8.4 Hz, 2H), 7.42-7.38 (m, 3H), 7.12 (m, 2H), 5.18 (5, 1H), 4.62 (s, 1H), 2.66 (m, 6H), 1.72 (s, 6H), 2.01-0.83 (m, 5H) ppm. 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 125.0, 124.0, 123.8, 116.0, 116.0, 71.3, 55.9, 55.5, 47.6, 46.7, 29.6, 25.6, 24.8, 19.8 ppm. Purity: 98.0% UPLCMS (210 nm); retention time 0.95 min; (M+1) 382.9. Anal. Calcd. for C23H27FN2O2・0.37(CHCl3): C, 65.86; H, 6.47; N, 6.57. Found: C, 65.85; H, 6.69; N, 6.49.
【0124】
(S)-キヌクリジン-3-イル2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イルカルバメート(化合物2)
エタノール(70mL)中の4-フルオロチオベンズアミド(8.94g、57.6mmol)の撹拌溶液に、エチル4-クロロアセテート(7.8mL、58mmol)を添加した。反応物を4時間加熱還流し、エチル4-クロロアセトアセテートのアリコート(1.0mL、7.4mmol)を添加して処置し、更に3.5時間還流した。次いで、反応物を濃縮し、残渣を、酢酸エチル(200mL)と水性NaHCO3(200mL)との間で分割した。有機層を、水性層(酢酸エチル、1×75mL)の逆抽出物と合わせ、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。得られた琥珀色油状物を、ヘキサン/酢酸エチル勾配を使用したフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、エチル2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)アセテートを、低融点のほぼ無色の固形物(13.58g、89%)として得た。
【0125】
DMF(50mL)中のエチル2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)アセテート(6.28g、23.7mmol)の撹拌溶液に、水素化ナトリウム[鉱油中の60%分散体](2.84g、71.0mmol)を添加した。泡状混合物を15分間撹拌してから、氷浴中で冷却し、ヨードメタン(4.4mL、71mmol)を添加した。反応物を一晩撹拌し、冷却浴槽を室温にゆっくりと加温した。次いで、混合物を濃縮し、残渣を、酢酸エチル(80mL)と水(200mL)との間で分割した。有機層を第2の一部の水(1×200mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濃縮した。得られた琥珀色油状物を、ヘキサン/酢酸エチル勾配を使用したフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、エチル2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパノエートを無色油状物(4.57g、66%)として得た。
【0126】
1:1:1のTHF/エタノール/水(45mL)中のエチル2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパノエート(4.56g、15.5mmol)の撹拌溶液に、水酸化リチウム一水和物(2.93g、69.8mmol)を添加した。反応物を一晩撹拌し、濃縮し、水(175mL)中に再溶解した。溶液をエーテル(1×100mL)で洗浄し、1.0N HCl(80mL)を添加することによって酸性化し、酢酸エチル(2×70mL)で抽出した。合わせた抽出物を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して、2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパン酸を白色固形物(4.04g、98%)として得た。この材料を精製せずに次の工程で使用した。
【0127】
THF(100mL)中の2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパン酸(4.02g、15.2mmol)の撹拌し、冷却した(0℃)溶液に、トリメチルアミン(4.2mL、30mmol)、続いてクロロギ酸イソブチル(3.0mL、23mmol)を添加した。反応物を更に1時間冷却撹拌してから、水(20mL)中のアジ化ナトリウム(1.98g、30.5mmol)の溶液を添加した。反応物を一晩撹拌し、冷却浴槽を室温にゆっくりと加温した。次いで、混合物を水で希釈し(100mL)、酢酸エチル(2×60mL)で抽出した。合わせた抽出物を水性NaHCO3(1×150mL)および食塩水(1×100mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。トルエン(2×50mL)と共蒸発させた後、得られた白色固形物をトルエン(100mL)に入れ、4時間還流した。次いで、(S)-3-キヌクリジノール(3.87g、30.4mmol)を添加し、還流を一晩継続した。反応物を濃縮し、残渣を酢酸エチル(100mL)と水性NaHCO3(150mL)との間で分割した。有機層を水(1×150mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。得られたオフホワイト色固形物を、クロロホルム/メタノール/アンモニア勾配を使用したフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色固形物(4.34g、73%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.96-7.88 (m, 2H), 7.16-7.04 (m, 3H), 5.55 (br s, 1H), 4.69-4.62 (m, 1H), 3.24-3.11 (m, 1H), 3.00-2.50 (m, 5H), 2.01-1.26 (m, 11H) ppm. 13C NMR (400 MHz, CDCl3) δ 166.4, 165.1, 163.8 (d, J=250.3 Hz), 162.9, 155.0, 130.1 (d, J=3.3 Hz), 128.4 (d, J= 8.5 Hz), 115.9 (d, J= 22.3 Hz), 112.5, 71.2, 55.7, 54.2, 47.5, 46.5, 28.0, 25.5, 24.7, 19.6 ppm. Purity: 100 % UPLCMS (210 nm & 254 nm); retention time 0.83 min; (M+1) 390.
【0128】
(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物3)
一般手順Eを使用し、反応にエチル2-(4-ブロモフェニル)-2-メチルプロパノエートおよび4-(2-メトキシエトキシ)フェニルボロン酸を用い(input)、エチル2-(4’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチルプロパノエートを、オフホワイト色固形物として調製した。1:1:1(v/v/v)のテトラヒドロフラン/エタノール/水(45mL)中のこの化合物(3.01g、8.78mmol)の撹拌溶液に、水酸化リチウム一水和物(1.47g、61.4mmol)を添加した。混合物を一晩加熱還流し、次いで濃縮した。残渣を水中に溶解し、1N塩酸(65mL)で処置し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して、2-(4’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチルプロパン酸を白色固形物(2.75g、100%)として得た。この中間体および(S)-キヌクリジン-3-オールを一般手順Fに従って反応させて、表題化合物を無色のガラス状固形物として生成した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.62-7.29 (m, 7H), 7.01 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 4.47-4.37 (m, 1H), 4.17-4.08 (m, 2H), 3.72-3.62 (m, 2H), 3.32 (s, 3H), 3.09-2.25 (m, 6H), 2.05-1.18 (m, 11H) ppm. 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 157.9, 154.5, 146.7, 137.4, 132.5, 127.5, 125.7, 125.2, 114.8, 70.4, 70.0, 66.9, 58.2, 55.4, 54.2, 46.9, 45.9, 29.4, 25.3, 24.2, 19.2 ppm. Purity: 100%, 100% (210 & 254 nm) UPLCMS; retention time: 0.87 min; (M+H+) 439.5.
【0129】
1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル[2-(ビフェニル-3-イル)プロパン-2-イル]カルバメート(化合物4)
一般手順Cを使用して、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル[2-(3-ブロモフェニル)プロパン-2-イル]カルバメート(600mg、1.63mmol)、フェニルボロン酸(398mg、3.27mmol)および酢酸パラジウム(II)により、表題化合物を白色固形物(379mg、64%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.61 (s, 1H), 7.56 (d, J= 7.4 Hz, 2H), 7.50-7.38 (m, 4H), 7.34 (m, 2H), 5.16 (s, 1H), 4.63 (s, 1H), 3.39-2.09 (m, 6H), 1.72 (s, 6H), 2.02-0.73 (m, 5H) ppm. 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 154.8, 147.8, 141.6, 129.0, 129.0, 128.6, 127.5, 125.8, 125.0, 124.0, 71.6, 71.3, 55.9, 55.5, 47.6, 46.8, 31.5, 30.2, 30.0, 29.5, 25.6, 24.8, 19.8 ppm. Purity: 99% UPLCMS (210 nm); retention time 0.84 min; (M+1) 365.0. Anal. Calcd. for C23H28N2O2・0.29(CHCl3): C, 70.02; H, 7.14; N, 7.01. Found: C, 70.02; H, 7.37; N, 6.84.
【0130】
(S)-キヌクリジン-3-イル2-(ビフェニル-4-イル)プロパン-2-イルカルバメート(化合物5)
一般手順Bを使用して、ブロモベンゾニトリル(2.00g、11.0mmol)を、対応する2-(4-ブロモフェニル)プロパン-2-アミン(1.20g、51%)へ茶色油状物として変換した。
【0131】
一般手順Aを使用して、2-(4-ブロモフェニル)プロパン-2-アミン(1.0g、4.7mmol)および(S)-キヌクリジン-3-オールにより、(S)-キヌクリジン-3-イル2-(4-ブロモフェニル)プロパン-2-イルカルバメート(1.0g、58%)を茶色油状物として得た。
【0132】
一般手順Cを使用して、上記臭化物(200mg、0.540mmol)、フェニルボロン酸(133mg、1.10mmol)および[PdCl2(pddf)]CH2Cl2により、表題化合物を白色固形物(70mg、35%)として得た。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.60-7.53 (m, 4H), 7.47 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.42 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 7.33 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 5.26 (br s, 1H), 4.64 (m, 1H), 3.33-3.15 (m, 1H), 3.10-2.45 (m, 5H), 2.40-1.80 (m, 2H), 1.78-1.58 (m, 7H), 1.55-1.33 (m, 2H) ppm. 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ154.5, 146.1, 140.8, 139.5, 128.7, 127.2, 127.1, 127.1, 125.2, 70.9, 55.5, 55.1, 47.4, 46.4, 31.1, 29.5, 25.3, 24.5, 19.5 ppm. Purity: 100 % LCMS (214 nm & 254 nm); retention time 1.56 min; (M+1) 365.
【0133】
キヌクリジン-3-イル1-(ビフェニル-4-イル)シクロプロピルカルバメート(化合物6)
一般手順Dを使用して、ブロモベンゾニトリル(3.00g、16.5mmol)を、対応する1-(4-ブロモフェニル)シクロプロパンアミン(1.80g、51%)へ黄色固形物として変換した。
【0134】
一般手順Aを使用して、1-(4-ブロモフェニル)シクロプロパンアミン(1.0g、4.7mmol)およびキヌクリジン-3-オールにより、キヌクリジン-3-イル1-(4-ブロモフェニル)シクロプロピル-カルバメート(1.3g、75%)を白色半固形物として得た。
【0135】
一般手順Cを使用して、上記カルバメート(400mg、1.12mmol)、フェニルボロン酸(267mg、2.22mmol)および[PdCl2(pddf)]CH2Cl2により、表題化合物を粘性油状物として得た(100mg、25%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.47 (d, J= 7.5 Hz, 2H), 7.43 (d, J= 8.0 Hz, 2H), 7.33 (t, J= 7.5 Hz, 2H), 7.26-7.15 (m, 3H), 5.93 (br s, 0.6H), 5.89 (br s, 0.4H), 4.67 (m, 1H), 3.20-3.06 (m, 1H), 2.88-2.42 (m, 5H), 1.98-1.08 (m, 9H) ppm. 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 155.0, 141.0, 139.7, 138.2, 127.7, 126.1, 126.0, 124.8, 124.1, 70.0, 54.5, 46.3, 45.4, 34.1, 24.3, 23.2, 18.3, 17.0 ppm. Purity: 100 % LCMC (214 nm & 254 nm); retention time 1.52 min; (M+1) 363.
【0136】
(S)-キヌクリジン-3-イル1-(4’-フルオロビフェニル-4-イル)シクロプロピルカルバメート(化合物7)
一般手順Cを使用して、(S)-キヌクリジン-3-イル1-(4-ブロモフェニル)シクロプロピルカルバメート、4-F-フェニルボロン酸および[PdCl2(pddf)]CH2Cl2により、表題化合物を白色固形物(45%)として得た。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.06-7.83 (d, 1H), 7.69-7.66 (m, 2H), 7.59-7.55 (m, 2H), 7.29-7.22 (m, 4H), 4.56-4.54 (m, 1H), 3.13-2.32 (m, 6H), 1.91-1.19 (m, 9H) ppm. 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6) δ 163.2, 161.2, 156.4, 143.7, 136.9, 128.9, 128.8, 126.8, 125.6, 116.2, 116.0, 70.7, 55.8, 47.4, 46.4, 34.8, 25.7, 24.6, 19.6, 18.7, 18.6 ppm. Purity: > 97 % LCMS (214 nm & 254 nm); retention time 1.96 min; (M+1) 381.2.
【0137】
(S)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル[1-(2’,4’-ジフルオロビフェニル-4-イル)シクロプロピル]カルバメート(化合物8)
一般手順Cを使用して、(S)-キヌクリジン-3-イル1-(4-ブロモフェニル)シクロプロピルカルバメート(0.446g、1.22mmol)、2,4-ジフルオロフェニルボロン酸(0.386g、2.44mmol)およびPd(OAc)2(0.015g、0.067mmol)により、表題化合物を黄褐色固形物(0.111g、23%)として得た。1H NMR (CDCl3) δ 7.43 (dd, J = 8.4, 1.6 Hz, 2H), 7.40-7.33 (m, 1H), 7.31 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 6.99-6.81 (m, 2H), 5.54 (d, J = 48.0 Hz, 1H), 4.82-4.65 (m, 1H), 3.30-3.07 (m, 1H), 2.98-2.44 (m, 5H), 1.97 (d, J = 32.7 Hz, 1H), 1.83 (d, J = 10.3 Hz, 1H), 1.64 (s, 1H), 1.52 (s, 1H), 1.39 (s, 1H), 1.31 (d, J = 6.8 Hz, 4H) ppm. 13C NMR major rotomer (CDCl3) δ 162.2 (dd, J = 12.8, 249.1 Hz), 159.8 (dd, J = 11.8, 251.0 Hz), 156.9, 156.0, 142.6, 133.1, 131.3 (m), 128.9, 125.6, 124.9, 111.5 (dd, J = 3.9, 21.2 Hz) 104.4 (dd, J = 25.2, 29.4 Hz), 72.1, 71.6, 55.7, 47.4, 46.5, 35.7, 35.3, 25.5, 24.6, 24.4, 19.5, 18.1 ppm. Purity: LCMS > 99.3 % (214 nm & 254 nm); retention time 0.90 min; (M+1) 399.0.
【0138】
1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル[1-(4’-メトキシビフェニル-4-イル)シクロプロピル]カルバメート(化合物9)
一般手順Cを使用して、キヌクリジン-3-イル1-(4-ブロモフェニル)シクロプロピルカルバメート(0.485g、1.33mmol)、4-メトキシフェニルボロン酸(0.404g、2.66mmol)およびPd(OAc)2(0.016g、0.071mmol)により、表題化合物を灰色固形物(0.337mg、65%)として得た。1H NMR (CDCl3) δ 7.48 (dd, J = 8.6, 5.5 Hz, 4H), 7.29 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 6.96 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 5.58 (d, J = 48.7 Hz, 1H), 4.83-4.63 (m, 1H), 3.84 (s, 3H), 3.20 (dd, J = 24.0, 15.5 Hz, 1H), 2.97-2.42 (m, 5H), 1.97 (d, J = 30.9 Hz, 1H), 1.81 (s, 1H), 1.75-1.33 (m, 3H), 1.28 (d, J = 6.8 Hz, 4H) ppm. 13C NMR major rotomer (CDCl3) δ 159.1, 156.0, 141.4, 139.0, 133.4, 128.0, 126.7, 125.9, 114.2, 71.5, 55.7, 55.3, 47.4, 46.5, 35.3, 25.5, 24.6, 19.6, 17.8 ppm. Purity: LCMS >97.1 % (214 nm & 254 nm); retention time 0.88 min; (M+1) 393.4.
【0139】
キヌクリジン-3-イル2-(5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-3-イル)プロパン-2-イルカルバメート(化合物10)
THF(100mL)中のエチル5-ブロモチオフェン-3-カルボキシレート(13.30g、56.57mmol)の撹拌し、冷却した(0℃)溶液に、ジエチルエーテル[3.0M](55.0mL、165mmol)中の臭化メチルマグネシウムの溶液を20分にわたって滴加した。2時間後、反応溶液を濃縮した。残渣を水性NH4Cl(200mL)に入れ、酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。合わせた抽出物を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。得られた琥珀色油状物を、ヘキサン/酢酸エチル勾配を使用したフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、2-(5-ブロモチオフェン-3-イル)プロパン-2-オールを淡琥珀色油状物(8.05g、64%)として得た。
【0140】
塩化メチレン(80mL)中の2-(5-ブロモチオフェン-3-イル)プロパン-2-オール(8.03g、36.3mmol)の撹拌溶液に、アジ化ナトリウム(7.08g、109mmol)、続いてトリフルオロ酢酸(8.0mL;5~6分にわたって滴下する)を添加した。増粘懸濁液を1.5時間撹拌してから、水(350mL)で希釈し、酢酸エチル(1×200mL)で抽出した。有機層を水性NaHCO3(1×250mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して、粗製アジド生成物を得た。THF(160mL)中のこの材料の撹拌溶液に、水(11mL)、続いてトリフェニルホスフィン(23.8g、90.7mmol)を添加した。反応物を2日間撹拌してから濃縮した。得られた残渣を酢酸エチル(250mL)中に溶解し、1N HCl水溶液(4×75mL)で抽出した。合わせた抽出物を濃NH4OHで塩基性化し、酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。これらの抽出物を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。得られた琥珀色油状物を、塩化メチレン/メタノール/アンモニア勾配を使用したフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、2-(5-ブロモチオフェン-3-イル)プロパン-2-アミンおよびトリフェニルホスフィン酸化物(約70/30比率)の混合物を粘性琥珀色油状物(1.32g、17%)として得た。
【0141】
THF(100mL)中の3-キヌクリジノール(3.00g、23.6mmol)の撹拌溶液に、4-ニトロフェニルクロロホルメート(5.94g、29.5)を添加した。4時間撹拌した後、沈殿物をろ過除去し、THFですすぎ、ハウス真空下フリット上で風乾した。ろ過物を酢酸エチル(150mL)中に溶解し、NaHCO3水溶液(1×150mL)、水(2×150mL)で洗浄した。有機層を乾燥し(Na2SO4)、濃縮して、粗製4-ニトロフェニルキヌクリジン-3-イルカルボネート生成物を得、これを精製せずに次の工程で使用した。
【0142】
THF(10mL)中の2-(5-ブロモチオフェン-3-イル)プロパン-2-アミン(0.366g、1.66mmol)の撹拌溶液に、4-ニトロフェニルキヌクリジン-3-イルカルボネート(0.571g、1.95mmol)および少量の顆粒の4-(ジメチルアミノ)ピリジンを添加した。混合物を一晩還流し、濃縮し、酢酸エチル(50mL)とNaHCO3水溶液(50mL)との間で分割した。有機層をNaHCO3水溶液(1×50mL)で再び洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。得られたくすんだ黄色ゴム状物を、クロロホルム/メタノール/アンモニア勾配を使用したフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、キヌクリジン-3-イル(1-(5-ブロモチオフェン-3-イル)シクロプロピル)カルバメートをオフホワイト色固形物(0.305g、49%)として得た。
【0143】
一般手順Cを使用して、キヌクリジン-3-イル(1-(5-ブロモチオフェン-3-イル)シクロプロピル)カルバメート(0.227g、0.742mmol)、4-フルオロフェニルボロン酸(0.208g、1.49mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.021g、0.075mmol)、リン酸カリウム(0.866、4.08mmol)および酢酸パラジウム(8.0mg、36μmol)により、表題化合物を灰色固形物(0.142g、49%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.60-7.45 (m, 2H), 7.24-7.19 (m, 1H), 7.10-6.97 (m, 3H), 5.23 (br s, 1H), 4.72-4.61 (m, 1H), 3.30-3.04 (m, 1H), 3.03-2.25 (m, 5H), 2.09-1.02 (m, 11H) ppm. 13C NMR (400 MHz, CDCl3) δ 162.3 (d, J = 247.1 Hz), 154.5, 149.8, 143.6, 130.7, 127.4 (d, J = 8.1 Hz), 121.8, 118.9, 115.8 (d, J = 21.6 Hz), 70.8, 55.5, 53.4, 47.3, 46.4, 29.0, 25.4, 24.4, 19.4 ppm. Purity: 95.8 % UPLCMS (210 nm & 254 nm); retention time 0.90 min; (M+1) 389.
【0144】
(S)-キヌクリジン-3-イル2-(3-(4-フルオロフェニル)イソチアゾール-5-イル)プロパン-2-イルカルバメート(化合物11)
トルエン中の2-(3-(4-フルオロフェニル)イソチアゾール-5-イル)プロパン-2-アミン(1.21g、5.12mmol)の撹拌溶液に、トルエン[約1.9M](10.8mL、20.5mmol)中のホスゲン溶液を添加した。反応物を2時間加熱還流し、次いで濃縮した。残渣をトルエン(2×15mL)と共蒸発させて、粗製イソシアネート中間体を金色油状物として得た。この材料をトルエン(10mL)に入れ、(S)-3-キヌクリジノール(0.749g、5.89mmol)で処置した。反応物を一晩加熱還流し、濃縮した。残渣を、クロロホルム/メタノール/アンモニア勾配を使用したフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色固形物(0.971g、49%)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.09-8.00 (m, 2H), 7.87 (br s, 1H), 7.75 (s, 1H), 7.35-7.25 (m, 2H), 4.54-4.45 (m, 1H), 3.14-2.92 (m, 1H), 2.87-2.17 (m, 5H), 1.98-0.98 (m, 11H) ppm. 13C NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 180.1, 165.6, 162.6 (d, J = 246.4 Hz), 154.7, 131.2 (d, J = 3.0 Hz), 128.7 (d, J = 8.4 Hz), 118.2, 115.7 (d, J = 21.8 Hz), 70.6, 55.3, 52.8, 46.9, 45.9, 29.9, 25.2, 24.2, 19.2 ppm. Purity: 100 % UPLCMS (210 nm & 254 nm); retention time 0.82 min; (M+1) 390.
【0145】
(S)-キヌクリジン-3-イル2-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)プロパン-2-イルカルバメート(化合物12)
エタノール(120mL)中のエチル3-アミノ-3-チオキソプロパノエート(20.00g、135.9mmol)の撹拌溶液に、2-ブロモ-4’-フルオロアセトフェノン(29.49g、135.9mmol)を添加した。混合物を1時間還流し、濃縮し、酢酸エチル(300mL)とNaHCO3水溶液(400mL)との間で分割した。有機層を水性層(酢酸エチル、1×100mL)の逆抽出物と合わせ、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。得られた薄茶色固形物を、ヘキサン/酢酸エチル勾配を使用したフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、エチル2-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)アセテートをオフホワイト色固形物(29.92g、83%)として得た。
【0146】
THF(250mL)中のエチル2-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)アセテート(10.00g、37.69mmol)の撹拌し、冷却した(-78°C)溶液を、THF[1.0M](136mL、136mmol)中のカリウムt-ブトキシドの溶液、続いて18-クラウン-6(1.6mL、7.5mmol)に15分にわたって滴加した。-78℃で更に30分後、ヨードメタン(8.5mL)を5分にわたって滴加した。反応物を更に2時間冷却撹拌してから、水(450mL)に注ぎ入れ、酢酸エチル(2×150mL)で抽出した。合わせた抽出物を食塩水で洗浄し(1×200mL)、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。得られた茶色油状物を、ヘキサン/酢酸エチル勾配を使用したフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、エチル2-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)-2-メチルプロパノエートを淡琥珀色油状物(8.64g、78%)として得た。
【0147】
1:1:1のTHF/エタノール/水(15mL)中のエチル2-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)-2-メチルプロパノエート(0.900g、3.07mmol)の撹拌溶液に、水酸化リチウム一水和物(0.451g、10.7mmol)を添加した。一晩撹拌後、反応物を濃縮し、水(80mL)中に再溶解した。溶液をエーテル(1×50mL)で洗浄し、1N HCl(15mL)を添加して酸性化し、酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。合わせた抽出物を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して、2-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)-2-メチルプロパン酸を淡金色固形物(0.808g、99%)として得た。
【0148】
THF(25mL)中の2-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)-2-メチルプロパン酸(0.784g、2.96mmol)の撹拌し、冷却した(0℃)溶液に、トリエチルアミン(0.82mL、5.9mmol)、続いてクロロギ酸イソブチル(0.58mL、4.4mmol)を添加した。反応物を更に1時間冷却撹拌してから、水(7mL)中のアジ化ナトリウム(0.385g、5.92mmol)の溶液を添加した。反応物を一晩撹拌し、冷却浴槽を室温にゆっくりと加温した。次いで、混合物を水で希釈し(100mL)、酢酸エチル(2×60mL)で抽出した。合わせた抽出物をNaHCO3水溶液(1×150mL)および食塩水(1×100mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。トルエン(2×30mL)と共蒸発させた後、得られたオフホワイト色固形物をトルエン(25mL)に入れ、4時間還流した。次いで、(S)-3-キヌクリジノール(0.753g、5.92mmol)を添加し、還流を3時間継続した。反応物を濃縮し、残渣を、クロロホルム/メタノール/アンモニア勾配を使用したフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色固形物(0.793g、69%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.90-7.81 (m, 2H), 7.32 (s, 1H), 7.14-7.05 (m, 2H), 5.76 (br s, 1H), 4.72-4.65 (m, 1H), 3.26-3.10 (m, 1H), 3.03-2.37 (m, 5H), 2.05-1.23 (m, 11H) ppm. 13C NMR (400 MHz, CDCl3) δ 177.6, 162.6 (d, J = 248.4 Hz), 154.8, 153.6, 130.8 (d, J = 3.2 Hz), 128.1 (d, J = 8.1 Hz), 115.9 (d, J = 21.7 Hz), 112.2, 71.6, 55.7, 47.4, 46.5, 29.1, 25.4, 24.7, 19.6 ppm. Purity: 100 % UPLCMS (210 nm & 254 nm); retention time 0.82 min; (M+1) 390.
【0149】
キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物13)
一般手順Fを使用し、反応に2-(4’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチルプロパン酸(実施例3に記載するとおりに調製した)およびキヌクリジン-3-オールを用い、表題化合物を無色ガラス状固形物(23%)として生成した。NMRデータは、例3のものと一致した。純度:100%、99.1%(210および254nm)UPLCMS;保持時間:0.87分;(M+H+)439.0。
【0150】
(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(3’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物14)
4-(2-メトキシエトキシ)フェニルボロン酸を3-(2-メトキシエトキシ)フェニルボロン酸に交換し、例3で概説する反応順序を使用して、2-(3’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチルプロパン酸を調製した。この中間体およびキヌクリジン-3-オールを一般手順Fに従って反応させて、表題化合物をガラス状無色固形物として生成した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.63-7.31 (m, 6H), 7.24-7.10 (m, 2H), 6.92 (dd, J = 8.2, 1.9 Hz, 1H), 4.51-4.34 (m, 1H), 4.21-4.08 (m, 2H), 3.72-3.64 (m, 2H), 3.32 (s, 3H), 3.09-2.26 (m, 5H), 2.04-1.22 (m, 9H) ppm. 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 158.9, 154.6, 147.6, 141.5, 137.6, 129.9, 126.3, 125.2, 118.9, 113.2, 112.5, 70.4, 70.0, 66.9, 58.2, 55.4, 54.2, 46.9, 45.9, 29.4, 25.3, 24.2, 19.2 ppm. Purity: 100%, 100% (210 & 254 nm) UPLCMS; retention time: 0.91 min; 15 (M+H+) 439.4.
【0151】
キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物15)
エチル2-(4-ブロモフェニル)-2-メチルプロパノエートをエチル2-(3-ブロモフェニル)-2-メチルプロパノエートに交換し、例3で概説する反応順序を使用して、2-(4’-(2-メトキシエトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-2-メチルプロパン酸を調製した。この中間体およびキヌクリジン-3-オールを一般手順Fに従って反応させて、表題化合物を黄色固形物として生成した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.62-7.20 (m, 7H), 7.03 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 4.48-4.35 (m, 2H), 4.18-4.08 (m, 2H), 3.72-3.62 (m, 2H), 3.32 (s, 3H), 3.10-2.19 (m, 6H), 2.10-1.10 (m, 11H) ppm. 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 158.0, 154.6, 148.8, 139.5, 133.1, 128.5, 127.7, 123.8, 123.2, 122.7, 114.8, 70.4, 69.9, 67.0, 58.2, 55.3, 54.5, 47.0, 45.9, 29.4, 25.3, 24.2, 19.2 ppm. Purity: 97.4%, 94.6% (210 & 254 nm) UPLCMS; retention time: 0.88 min; (M+H+) 439.3.
【0152】
キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(3-メトキシプロポキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物16)
アセトニトリル(100mL)中の4-ヨードフェノール(10.05g、45.68mmol)の撹拌溶液に、炭酸カリウム(6.95g、50.2mmol)および1-クロロ-3-メトキシプロパン(6.4mL、57.1mmol)を添加した。混合物を一晩加熱還流し、次いで濃縮した。残渣を水に入れ、酢酸エチルで抽出した。合わせた抽出物を重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。粗製材料を、ヘキサン/酢酸エチル溶出液を使用したシリカフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、1-ヨード-4-(3-メトキシプロポキシ)ベンゼンを無色油状物として(4.39g、33%)得た。この中間体およびエチル2-メチル-2-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)プロパノエートを一般手順Eに従って反応させて、エチル2-(4’-(3-メトキシプロポキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチルプロパノエートを生成した。1:1:1(v/v/v)のテトラヒドロフラン/エタノール/水(10mL)中のこの化合物(0.693g、1.94mmol)の撹拌溶液に、水酸化リチウム一水和物(0.326g、7.77mmol)を添加した。混合物を一晩加熱還流し、次いで濃縮した。残渣を水中に溶解し、1N塩酸(10mL)で処置し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して、2-(4’-(3-メトキシプロポキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチルプロパン酸をワックス状オフホワイト色固形物(0.630g、99%)として得た。この中間体およびキヌクリジン-3-オールを一般手順Fに従って反応させて、表題化合物をガラス状無色固形物(62%)として生成した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.61-7.29 (m, 7H), 7.00 (d, J= 8.8 Hz, 2H), 4.47-4.36 (m, 1H), 4.05 (t, J= 6.4 Hz, 2H), 3.48 (t, J=6.3 Hz, 2H), 3.26 (s, 3H), 3.10-2.25 (m, 6H), 2.04-1.74 (m, 4H), 1.65-1.23 (m, 9H) ppm.13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 158.0, 154.5, 146.7, 137.4, 132.4, 127.5, 125.7, 125.2, 114.8, 69.9, 68.5, 64.6, 57.9, 55.4, 54.2, 46.9, 46.0, 29.4, 29.0, 25.2, 24.1, 19.2 ppm. Purity: 97.7%, 98.2% (210 & 254 nm) UPLCMS; retention time: 0.96 min; (M+H+) 453.5.
【0153】
キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(ヒドロキシメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物17)
一般手順Eを使用し、反応にエチル2-(4-ブロモフェニル)-2-メチルプロパノエートおよび4-ホルミルフェニルボロン酸を用い、エチル2-(4’-ホルミル-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチルプロパノエートを淡琥珀色固形物として調製した。この中間体およびキヌクリジン-3-オールを一般手順Fに従って反応させて、キヌクリジン-3-イル(2-(4’-ホルミル-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメートを泡沫状黄色固形物として生成した。2:1(v/v)のテトラヒドロフラン/エタノール(15mL)中のこの材料(0.755g、1.92mmol)の撹拌溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(0.073g、1.93mmol)を添加した。45分後、反応物を水で希釈し、クロロホルムで抽出した。合わせた抽出物を乾燥させ(Na2SO4)、シリカ上で濃縮した。クロロホルム/メタノール/アンモニア溶出液を使用したシリカフラッシュクロマトグラフィーによって、表題化合物を白色固形物(0.323g、43%)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.66-7.29 (m, 9H), 5.18 (t, J= 5.7 Hz, 1H), 4.53 (d, J= 5.7 Hz, 2H), 4.46-4.37 (m, 1H), 3.11-2.19 (m, 6H), 2.11-1.10 (m, 11H) ppm. 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 154.7, 147.3, 141.5, 138.4, 137.7, 127.0, 126.2, 126.1, 125.3, 70.0, 62.6, 55.4, 54.2, 46.9, 45.9, 29.4, 25.3, 24.2, 19.2 ppm. Purity: 97.5%, 99.1 % (210 & 254 nm) UPLCMS; retention time: 0.73 min; (M+H+) 395.
【0154】
キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(2-ヒドロキシエチル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物18)
一般手順Eを使用し、反応に1-(2-(ベンジルオキシ)エチル)-4-ブロモベンゼンおよびエチル2-メチル-2-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)プロパノエートを用い、エチル2-(4’-(2-(ベンジルオキシ)エチル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチルプロパノエートを無色ゴム状物として調製した。1:1:1(v/v/v)のテトラヒドロフラン/エタノール/水(18mL)中のこの化合物(1.34g、3.33mmol)の撹拌溶液に、水酸化リチウム一水和物(0.698g、16.6mmol)を添加した。一晩加熱還流後、反応物を濃縮し、水とジエチルエーテルとの間で分割した。得られたエマルションを0.2N水酸化ナトリウム水溶液(5×50mL)で繰り返し抽出した。水性層の透明部分を毎回除去した。次いで、合わせた水性層を1.0N塩酸(80mL)で処置し、得られた白色固形物の懸濁液を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して、2-(4’-(2-(ベンジルオキシ)エチル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチルプロパン酸を白色固形物(1.20g、96%)として得た。この化合物およびキヌクリジン-3-オールを一般手順Fに従って反応させて、キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(2-ベンジルオキシエチル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメートを生成した。メタノール中のこの材料(0.435g、0.806mmol)の撹拌溶液に、1.0N塩酸(1mL)および10%炭素上パラジウム(50%水;0.087g)を添加した。混合物を真空と窒素パージとの間で数回循環させ、最後に排気した後に水素を再充填した。1.25時間後、反応物をセライトろ過し、濃縮した。残渣を炭酸ナトリウム水溶液に入れ、4:1(v/v)のクロロホルム/イソプロパノールで抽出した。合わせた抽出物を乾燥させ(Na2SO4)、シリカ上で濃縮した。クロロホルム/メタノール/アンモニア勾配を使用したシリカフラッシュクロマトグラフィーによって、精製した表題化合物を無色固形物として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.85-7.63 (m, 1H), 7.63-7.19 (m, 8H), 4.78-4.62 (m, 2H), 3.71-2.78 (m, 8H), 2.76 (t, J= 6.8 Hz, 2H), 2.26-1.96 (m, 2H), 1.96-1.40 (m, 9H) ppm. 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 153.8, 146.8, 138.7, 137.9, 137.6, 129.4, 126.3, 126.1, 125.3, 66.2, 62.1, 54.4, 52.8, 45.4, 44.5, 38.6, 29.5, 29.2, 24.0, 19.9, 16.6 ppm. Purity: 100%, 100% (210 & 254 nm) UPLCMS; retention time: 0.75 min; (M+H+) 409.
【0155】
キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-(3-メトキシプロポキシ)フェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物19)
エタノール(75mL)中の4-メトキシチオベンズアミド(9.99g、59.7mmol)の撹拌懸濁液に、4-クロロアセト酢酸エチル(8.1mL、60mmol)を添加した。混合物を4時間加熱還流してから、冷却し、追加のエチル4-クロロアセト酢酸エチル(0.81mL、6.0mmol)を追加し、還流に戻した。更に4時間加熱した後、反応物を濃縮し、酢酸エチルと重炭酸ナトリウム水溶液との間で分割した。有機層を追加の酢酸エチル抽出物と合わせ、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。粗製生成物を、ヘキサン/酢酸エチル勾配を使用したシリカフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、エチル2-(2-(4-メトキシフェニル)チアゾール-4-イル)アセテートを淡琥珀色油状物(14.51g、87%)として得た。N,N-ジメチルホルムアミド(125mL)中のこの化合物(14.48g、52.2mmol)の撹拌溶液に、水素化ナトリウム(鉱油中の60%分散体;6.27g、157mmol)を15分にわたって少しずつ添加した。得られた赤色懸濁液を冷却し(0℃)、ヨードメタン(9.80mL、157mmol)を10分にわたって滴下処置した。冷却浴槽を除去し、反応物を4時間撹拌してから濃縮し、残渣を酢酸エチルと水との間で分割した。有機層を水で更に2回洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。残渣をヘキサン/酢酸エチル勾配を使用したシリカフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、エチル2-(2-(4-メトキシフェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパノエートを淡琥珀色油状物(14.12g、89%)として得た。塩化メチレン(250mL)中のこの中間体(14.12g、46.24mmol)の撹拌溶液に、三臭化ホウ素(11.0mL、116mmol)を5分にわたって滴加した。一晩撹拌後、反応物を、メタノール(約20mL)をゆっくり添加することによりクエンチし、次いで濃縮した。残渣を、メタノール(250mL)および濃硫酸(7.0mL)に入れた。撹拌溶液を2時間加熱還流し、濃縮し、酢酸エチルと重炭酸ナトリウム水溶液との間で分割した。有機層を水性層の第2の酢酸エチル抽出物と合わせ、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して、メチル2-(2-(4-ヒドロキシフェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパノエートを白色固形物(12.56g、98%)として得た。アセトン(30mL)中の1-ブロモ-3-メトキシプロパン(1.66g、10.8mmol)の撹拌溶液に、フェノール中間体(2.00g、7.21mmol)および炭酸カリウム(1.25g、9.04mmol)を添加した。混合物を一晩加熱還流し、ろ過し、濃縮した。残渣を、ヘキサン/酢酸エチル勾配を使用したシリカフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、メチル2-(2-(4-(3-メトキシプロポキシ)フェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパノエートをかすかに琥珀色のゴム状物(2.47g、98%)として得た。1:1:1(v/v/v)のテトラヒドロフラン/エタノール/水(45mL)中のこの化合物(2.45g、7.01mmol)の撹拌溶液に、水酸化リチウム一水和物(1.47g、35.0mmol)を添加した。一晩撹拌後、反応物を濃縮し、水とジエチルエーテルとの間で分割した。水性層を1.0N塩酸(40mL)で処置し、酢酸エチルで抽出した。合わせた抽出物を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して、2-(2-(4-(3-メトキシプロポキシ)フェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパン酸を白色固形物(2.19g、4093%)として得た。この化合物およびキヌクリジン-3-オールを一般手順Fに従って反応させて、表題化合物を軟らかくかすかに琥珀色の固形物として生成した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.82 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 7.36 (br s, 1H), 7.24 (br s, 1H), 7.03 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 4.49-4.41 (m, 1H), 4.07 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.48 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.26 (s, 3H), 3.09-2.26 (m, 6H), 2.02-1.91 (m, 2H), 1.91-1.03 (m, 11H) ppm. 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ165.8, 162.4, 160.0, 154.6, 127.5, 126.1, 114.9, 112.1, 70.1, 68.4, 64.8, 57.9, 55.4, 53.5, 46.9, 45.9, 28.9, 28.3, 25.2, 24.2, 19.2 ppm. Purity: 100%, 100% (210 & 254 nm) UPLCMS; retention time: 0.87 min; (M+H+) 460.
【0156】
キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物20)
アセトン中の2-ブロモエチルメチルエーテル(1.88g、13.5mmol)の撹拌溶液に、メチル2-(2-(4-ヒドロキシフェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパノエート(実施例19に記載するとおりに調製した、2.00g、7.21mmol)および炭酸カリウム(1.56g、11.3mmol)を添加した。一晩加熱還流後、混合物を、追加の2-ブロモエチルメチルエーテル(1.88g、13.5mmol)および炭酸カリウム(1.56g、11.3mmol)で処置した。反応物を2晩加熱還流し、ろ過し、濃縮した。残渣を、ヘキサン/酢酸エチル勾配を使用したシリカフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、メチル2-(2-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパノエートを白色固形物(2.71g、90%)として得た。1:1:1(v/v/v)のテトラヒドロフラン/エタノール/水(50mL)中のこの化合物(2.71g、8.08mmol)の撹拌溶液に、水酸化リチウム一水和物(1.70g、40.5mmol)を添加した。一晩撹拌後、反応物を濃縮し、水とジエチルエーテルとの間で分割した。水性層を1.0N塩酸(41mL)で処置し、酢酸エチルで抽出した。合わせた抽出物を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して、2-(2-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)チアゾール-4-イル)-2-メチルプロパン酸を白色固形物(2.57g、99%)として得た。この化合物およびキヌクリジン-3-オールを一般手順Fに従って反応させて、表題化合物を淡琥珀色固形物として生成した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.82 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.36 (br s, 1H), 7.24 (br s, 1H), 7.04 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 4.49-4.41 (m, 1H), 4.19-4.12 (m, 2H), 3.71-3.65 (m, 2H), 3.32 (s, 3H), 3.11-2.87 (m, 1H), 2.86-2.19 (m, 5H), 1.92-1.16 (m, 11H) ppm. 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 165.7, 162.9, 159.9, 154.6, 127.5, 126.2, 114.9, 112.2, 70.3, 70.1, 67.1, 58.2, 55.4, 53.5, 46.9, 45.9, 28.3, 25.2, 24.3, 19.2 ppm. Purity: 100%, 100% (210 & 254 nm) UPLCMS; retention time: 0.85 min; (M+H+) 446.
【0157】
キヌクリジン-3-イル2-(5-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)ピリジン-2-イル)プロパン-2-イルカルバメート(化合物21)
一般手順Eを使用し、反応に5-ブロモピコリノニトリルおよび2-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランを用い、5-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)ピコリノニトリルを調製した。三塩化セリウム(8.05g、21.6mmol)をフラスコに入れ、真空下で3時間加熱することによって(170℃)乾燥させた。固形物をテトラヒドロフラン(20mL)に入れ、30分間激しく撹拌した。懸濁液を-78℃に冷却し、ジエチルエーテル(7.2mL、21.6mmol)中のメチルリチウムの3.0M溶液で滴下処置した。添加後、反応物を-78℃で1時間撹拌してから、テトラヒドロフラン(20mL)中の上記アリールボレート(1.83g、7.20mmol)溶液を添加した。混合物を-78℃で2時間維持し、次いで室温に加温した。この時点で、反応物を、水酸化アンモニウム水溶液(10mL)を添加することによってクエンチし、セライトプラグに通してろ過した。ろ液を酢酸エチルで抽出し、合わせた抽出物を食塩水で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。残渣を、酢酸エチル溶出液を使用したシリカフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、2-(5-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)ピリジン-2-イル)プロパン-2-アミンを黄色固形物(0.800g、39%)として得た。水(10mL)および濃塩酸(0.44mL)中のこの中間体(0.500g、1.75mmol)の撹拌懸濁液に、トルエン(10mL)を添加した。混合物を冷却し(0℃)、同時にトルエン(10mL)中のトリホスゲン(0.776g、2.62mmol)および水(20mL)中の重炭酸ナトリウム(2.2g、26mmol)の溶液で1時間にわたって処置した。添加後、反応物を更に30分間撹拌してから、上部のトルエン層を除去し、乾燥させた(Na2SO4)。同時に、テトラヒドロフラン(10mL)中のキヌクリジン-3-オール(0.445g、3.64mmol)の撹拌溶液を、水素化ナトリウム(鉱油中の60%分散体;0.154g、3.85mmol)で処置した。この混合物を5分間撹拌し、次いでトルエン中の粗製イソシアネート溶液に添加した。反応物を10分間撹拌し、食塩水(5mL)を添加してクエンチし、酢酸エチルで抽出した。合わせた抽出物を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。残渣を逆相シリカフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を淡黄色固形物(0.100g、13%)として得た。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.70-8.70 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.83-7.81 (m, 1H), 7.49-7.47 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.45-7.43 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.03-7.01 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 6.63 (br s, 1H), 4.68-4.66 (m, 1H), 4.16 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 3.77 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 3.45 (s, 3H), 3.19-2.70 (m, 6H), 2.15-1.89 (m, 2H), 1.76 (s, 6H), 1.73-1.36 (m, 3H) ppm. 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 162.7, 158.9, 154.9, 145.9, 134.8, 134.3, 130.1, 128.1, 119.2, 115.2, 71.0, 70.8, 67.4, 59.2, 55.9, 55.7, 47.4, 46.5, 46.4, 27.9, 25.4, 24.6, 19.5 ppm. Purity: >99% (214 & 254 nm) LCMS; retention time: 1.32 min; (M+H+) 440.2.
【0158】
キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(3-シアノプロポキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物22)
アセトニトリル(150mL)中の4-ブロモフェノール(17.1g、98.8mmol)の撹拌溶液に、1-ブロモブチルニトリル(12.3mL、124mmol)および炭酸カリウム(15.0g、109mmol)を添加した。混合物を一晩加熱還流し、冷却し、濃縮した。残渣を水に入れ、酢酸エチルで抽出した。合わせた抽出物を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮し、粗製材料を、ヘキサン/酢酸エチル溶出液を使用したシリカフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、4-(4-ブロモフェノキシ)ブタンニトリルを白色固形物(20.8g、88%)として得た。N,N-ジメチルホルムアミド(100mL)中のこの生成物の撹拌溶液に、ビス(ピナコラト)ジボロン(4.60g、18.1mmol)、酢酸カリウム(7.41g、75.5mmol)および[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]-ジクロロパラジウム(II)とジクロロメタンとの錯体(0.616g、1.04mmol)を添加した。混合物を一晩加熱還流し、次いで濃縮した。残渣を酢酸エチルに入れ、水および食塩水で洗浄した。有機層を乾燥し(Na2SO4)、濃縮し、粗製生成物を、ヘキサン/酢酸エチル溶出液を使用したシリカフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、4-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ)ブタンニトリルを白色固形物(3.43g、79%)として得た。この生成物およびキヌクリジン-3-イル(2-(4-ブロモフェニル)プロパン-2-イル)カルバメート(一般手順Fを使用してキヌクリジン-3-オールおよび2-(4-ブロモフェニル)プロパン-2-アミンを反応させることによって調製した)を一般手順Eに従って反応させて、表題化合物を白色固形物として生成した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.67-7.26 (m, 7H), 7.02 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 4.50-4.33 (m, 1H), 4.08 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.14-2.18 (m, 8H), 2.04 (quin, J = 6.7 Hz, 2H), 1.94-1.70 (m, 11H) ppm. 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 157.7, 154.5, 146.8, 137.4, 132.7, 127.6, 125.7, 125.2, 120.2, 114.9, 70.0, 65.8, 55.4, 54.2, 46.9, 45.9, 29.4, 25.3, 24.7, 24.2, 19.2, 13.4 ppm. Purity: 100%, 98.9% (210 & 254 nm) UPLCMS; retention time: 0.88 min; (M+H+) 448.6.
【0159】
キヌクリジン-3-イル(2-(4’-(シアノメトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(化合物23)
一般手順Eを使用し、反応にキヌクリジン-3-イル(2-(4-ブロモフェニル)プロパン-2-イル)カルバメート(一般手順Fを使用してキヌクリジン-3-オールおよび2-(4-ブロモフェニル)プロパン-2-アミンを反応させることによって調製した)および4-(シアノメトキシ)フェニルボロン酸を用い、表題化合物を淡琥珀色固形物として調製した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.65 (d, J= 8.2 Hz, 2H), 7.60-7.31 (m, 5H), 7.15 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 5.21 (s, 2H), 4.53-4.30 (m, 1H), 3.18-2.19 (m, 6H), 2.05-1.18 (m, 11H) ppm. 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ155.8, 154.6, 147.2, 137.2, 134.4, 127.8, 126.0, 125.3, 116.7, 115.3, 70.0, 55.4, 54.2, 53.5, 46.9, 45.9, 29.4, 25.2, 24.2, 19.2 ppm. Purity: 100%, 100% (210 & 254 nm) UPLCMS; retention time: 0.85 min; (M+H+) 420.3.
【実施例2】
【0160】
(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート遊離塩基の調製
工程1:ヨウ化メチルを用いたジメチル化
【化12】
3N RBフラスコは、サーモメーター、添加漏斗および窒素入口を備えていた。フラスコに窒素を流し、カリウムtert-ブトキシド(MW112.21、75.4mmol、8.46g、4.0当量、白色粉末)を秤量し、粉末漏斗を介してフラスコに添加し、続いてTHF(60mL)を添加した。大部分のカリウムtert-ブトキシドが溶解すると、濁った溶液が得られた。この混合物を氷水浴槽中で0~2℃(内部温度)に冷却した。別のフラスコ中で、出発エステル(MW265.3、18.85mmol、5.0g、1.0当量)をTHF(18mL+すすぎとして2mL)中に溶解し、添加漏斗に移した。この溶液を冷却した混合物に25~30分にわたって滴加し、添加中は内部温度を5℃未満に維持した。反応混合物を冷却し、0~2℃に戻した。別のフラスコ中に、THF(6mL)中のヨウ化メチル(MW141.94、47.13mmol、6.7g、2.5当量)の溶液を調製し、添加漏斗に移した。次いで、ヨウ化メチル溶液を含むフラスコをTHF(1.5mL)ですすぎ、次いで、THF中のヨウ化メチルの透明無色溶液をすでに含む添加漏斗に移した。この溶液を暗褐色の反応混合物に30~40分にわたって慎重に滴加し、添加中は常に内部温度を10℃未満に維持した。添加が完了した後、わずかに濁った混合物を更に1時間撹拌し、その間に内部温度は0~5℃に低下した。0~5℃で1時間撹拌後、反応混合物を、5.0M HCl水溶液(8mL)をゆっくりと滴加しながら5~7分にわたってクエンチした。この添加の間、内部温度を20℃未満に維持した。添加後、水(14mL)を添加し、混合物を2~3分間撹拌した。撹拌を停止し、2つの層を分離した。次いで、2つの層を250mLの1N RBフラスコに移し、THFを可能な限り真空中で蒸発させて、THF/生成物および水の二相性層を得た。2つの層を分離した。工程1の生成物のTHF溶液を次の反応において使用した。
【0161】
工程2:LiOH一水和物を用いたエチルエステルの加水分解
【化13】
THF中の粗製エステルを反応フラスコに添加した。個別に、LiOH.H
2O(MW41.96、75.0mmol、3.15グラム、2.2当量)を、撹拌子が添加された100mLのビーカー中に秤量した。水(40mL)を添加し、混合物を、全ての固形物が溶解するまで撹拌して、透明無色溶液を得た。次いで、この水溶液を、テトラヒドロフラン(THF)中のエステル溶液を含む250mLのRBフラスコに添加した。コンデンサーをフラスコの首に取り付け、窒素入口をコンデンサーの上部に取り付けた。混合物を16時間加熱還流した。16時間後、加熱を中止し、混合物を室温に冷却した。THFを真空中で蒸発させて、茶色溶液を得た。茶色水溶液のアリコートをHPLCおよびLC/MSによって分析して、エチルエステルの加水分解を完了させた。水(15mL)を添加し、この水性塩基性溶液をTBME(2×40mL)で抽出して、t-ブチルエステルを除去した。水性塩基性層を、氷水浴槽中で0~10℃に冷却し、濃HClを滴加し、撹拌しながら酸性化してpHを約1とした。水性酸性溶液中のこの粘着性の固形物にTBME(60mL)を添加し、混合物を振とうし、次いで激しく撹拌して、全ての酸をTBME層に溶解させた。2つの層を分液漏斗に移し、TBME層を分離した。淡黄色水性酸性溶液をTBME(40mL)で再抽出し、TBME層を分離し、前述のTBME層と合わせた。水性酸性層を廃棄した。合わせたTBME層を無水Na
2SO
4で乾燥させ、ろ過し、真空中で蒸発させて、TBMEを除去し、粗製酸をオレンジ/暗黄色油状物として得、これを高真空下で固形化して、くすんだ黄色固形物とした。粗製酸を秤量し、ヘプタン/TBME(3:1、5mL/g粗製物)中でそれを加熱することによって結晶化して、酸を黄色固形物として得た。
【0162】
工程3:NH
2OH.HClを用いたヒドロキサム酸の形成
【化14】
カルボン酸(MW265.3、18.85mmol、5.0g、1.0当量)を秤量し、25mLの1N RBフラスコに窒素下で移した。THF(5.0mL)を添加すると酸は容易に溶解して、透明暗黄色から茶色の溶液を得た。溶液を、氷浴槽中で0~2℃(浴槽温度)に冷却し、N、N’-カルボニルジイミダゾール(CDI;MW162.15、20.74mmol、3.36g、1.1当量)を、10~15分にわたって少量ずつゆっくりと添加した。氷浴槽を除去し、溶液を室温で1時間撹拌した。1時間撹拌した後、溶液を氷水浴槽中で0~2℃(浴槽温度)に再び冷却した。ヒドロキシルアミン塩酸塩(NH
2OH.HCl;MW69.49、37.7mmol、2.62g、2.0当量)を、この添加が発熱性であったため、少量ずつ3~5分にわたって固形物のままゆっくりと添加した。添加が完了した後、水(1.0mL)を不均質な混合物へ2分にわたって滴加し、反応混合物を氷水浴槽中、0~10℃で5分間撹拌した。冷却浴槽を除去し、反応混合物を窒素下、室温で一晩20~22時間撹拌した。全てのNH
2OH.HClが溶解するにつれて、溶液は透明になった。20~22時間後、反応混合物のアリコートを、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析した。次いで、THFを真空中で蒸発させ、残渣をジクロロメタン(120mL)および水(60mL)に入れた。混合物を分液漏斗に移し、それを振とうし、2つの層に分離させた。水層を廃棄し、ジクロロメタン層を1N塩酸塩(HCl;60mL)で洗浄した。酸層を廃棄した。ジクロロメタン層を無水Na
2SO
4で乾燥し、ろ過し、溶媒を真空中で蒸発させて、粗製ヒドロキサム酸を淡黄色固形物として得、それを高真空下で一晩乾燥させた。
【0163】
工程3の続き:ヒドロキサム酸の環式中間体への変換(単離なし)
【化15】
粗製ヒドロキサム酸(MW280.32、5.1g)を、窒素入口を備えた250mLの1N RBフラスコに移した。撹拌子を添加し、続いてアセトニトリル(50mL)を添加した。固形物はアセトニトリル中で不溶性であった。黄色の不均質な混合物を、窒素下で2~3分間撹拌し、CDI(MW162.15、20.74mmol、3.36g、1.1当量)を、室温で一度に添加した。発熱は観察されなかった。固形物をただちに溶解し、透明黄色溶液を室温で2~2.5時間撹拌した。2~2.5時間後、アリコートをHPLCおよびLC/MSによって分析し、それによってヒドロキサム酸の所望の環式中間体への変換が示された。
【0164】
次いで、アセトニトリルを真空中で蒸発させて、粗製環式中間体を赤みがかった濃厚な油状物として得た。油状物をトルエン(60mL)に入れ、赤みがかった混合物を2時間加熱還流すると、その間に環式中間体がCO
2を放出し、イソシアネートに転位した(以下を参照のこと)。
【化16】
【0165】
工程3の続き:イソシアネートの遊離塩基への変換
【化17】
反応混合物を50~60°Cに冷却し、(S)-(+)-キヌクリジノール(MW127.18、28.28mmol、3.6g、1.5当量)を、混合物へ固形物のまま一度に添加した。混合物を18時間再び加熱還流した。18時間後、アリコートをHPLCおよびLC/MSによって分析し、それによって、イソシアネートの所望の生成物への変換が完了したことが示された。反応混合物を分液漏斗に移し、トルエン(25mL)を添加した。混合物を水(2×40mL)で洗浄し、水層を分離した。合わせた水層をトルエン(30mL)で再抽出し、水層を廃棄した。合わせたトルエン層を1N HCl(2×60mL)で抽出し、トルエン層(O-アシル不純物を含む)を廃棄した。合わせたHCl層を、撹拌子を備えた500mLの三角フラスコに移した。この撹拌されている透明な黄色/赤みがかったオレンジ色溶液を、50%w/w NaOH水溶液を滴加することによってpH10~12に塩基性化した。所望の遊離塩基が、くすんだ黄色粘着性固形物として溶液から析出し、これは撹拌子で捕捉することができた。この混合物に酢酸イソプロピル(100mL)を添加し、粘着性固形物が酢酸イソプロピルに移行した場合、混合物を5分間激しく撹拌した。撹拌を停止し、2つの層を分離した。黄色の酢酸イソプロピル層を分離し、塩基性水性層を酢酸イソプロピル(30mL)で再抽出した。塩基性水性層を廃棄し、合わせた酢酸イソプロピル層を無水Na
2SO
4で乾燥させ、あらかじめ秤量されたRBフラスコ中にろ過し、溶媒を真空中で蒸発させて、粗製遊離塩基をベージュ色から黄褐色固形物として得、それを高真空下で一晩乾燥させた。
【0166】
工程3の続き:粗製遊離塩基の再結晶
ベージュ色から黄褐色の粗製遊離塩基を秤量し、ヘプタン/酢酸イソプロピル(3:1、溶媒9.0mL/粗製遊離塩基1g)から再結晶化した。適切な量のヘプタン/酢酸イソプロピルを、粗製遊離塩基および撹拌子へ添加し、混合物を10分間加熱還流した(遊離塩基は最初に部分的に溶解したが、加熱還流した場合、溶解し、透明な赤みがかったオレンジ色溶液が得られた)。白色沈殿物が形成された場合、熱源を除去し、混合物を撹拌しながら室温に冷却した。室温で3~4時間撹拌した後、沈殿物を、真空ホースでブフナー漏斗を使用してろ過除去し、ヘプタン(20mL)で洗浄し、ブフナー漏斗上、真空ホースで一晩乾燥させた。沈殿物を結晶皿に移し、真空オーブン中、55℃で一晩乾燥させた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.04 - 7.83 (m, 2H), 7.20 - 6.99 (m, 3H), 5.53 (s, 1H), 4.73 - 4.55 (m, 1H), 3.18 (dd, J = 14.5, 8.4 Hz, 1H), 3.05 - 2.19 (m, 5H), 2.0 - 1.76 (m, 11H) ppm. 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 166.38, 165.02, 162.54, 162.8-155.0 (d, C-F), 130.06, 128.43, 128.34, 116.01, 115.79, 112.46, 71.18, 55.70, 54.13, 47.42, 46.52, 27.94, 25.41, 24.67, 19.58 ppm.
【実施例3】
【0167】
(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート塩の結晶形態の調製
(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメートの結晶質の塩は、実施例23に記載するとおりに調製した遊離塩基から形成してもよい。
【0168】
例えば、(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメートの遊離塩基(約50mmol)を、IPA(140ml)中に室温で溶解し、ろ過する。ろ液を、オーバーヘッド撹拌機および窒素入口/出口を備えた1Lのr.b.フラスコに添加する。L-リンゴ酸(約50mmol)をIPA(100+30ml)中に室温で溶解し、ろ過する。ろ液を、上記1リットルのフラスコに添加する。得られた溶液を、窒素下、室温で4から24時間撹拌する(播種の有無にかかわらず)。この時間内に結晶が形成される。生成物をろ過収集し、少量のIPA(30ml)で洗浄する。結晶質の固形物を真空オーブン中、55℃で72時間乾燥させて、所望のリンゴ酸塩を得る。
【0169】
他の塩の結晶形態、例えばコハク酸またはHClとの酸付加塩は、同様の様式で調製してもよい。
【実施例4】
【0170】
In-vitroでのGCS阻害(化合物2および類似体)
グルコシルセラミドシンターゼ活性の阻害は、1つまたはそれ以上のアッセイを用いて測定してもよい。第1のアッセイは、ミクロソームアッセイであり、これは、HPLCによってセラミドからグルコシルセラミドへの変換を直接測定する。ミクロソームは、ミクロソームアッセイにおけるグルコシルセラミドシンターゼ活性の原料である。第2のアッセイは細胞ベースの表現型アッセイであり、これは抗体介在性免疫蛍光法によって下流の脂質GM3の細胞表面発現をモニターする。特定のプロトコールを以下に提供する。
【0171】
グルコシルセラミドシンターゼ活性のミクロソームアッセイ:
グルコシルセラミドシンターゼ活性の原料としてミクロソームを使用した酵素アッセイ。蛍光セラミド基質は、アルブミンとの複合体として膜結合酵素に送達される。反応後、セラミドおよびグルコシルセラミドは、蛍光検出を備えた逆相HPLCによって分離し、定量化される。酵素活性は、蛍光標識された基質とグルコシルセラミドシンターゼの原料としてのミクロソームとを使用して評価する。C6-NBD-セラミドは、アルブミンと複合体を形成して、以下に記載する手順に従って単離したミクロソームに送達される。原液中のC6-NBD-セラミドの最終濃度は0.5mMであり;BSAの最終濃度は0.5mMである。基質および生成物(グルコシルセラミド)の分離および定量は、蛍光検出を備えた逆相HPLCによって達成される。
【0172】
A375ヒト黒色腫細胞からのミクロソームの調製;
ミクロソームをA375ヒト黒色腫細胞から単離する。800から1000万個の細胞をトリプシン処理によって採取し、氷冷PBSで洗浄する。細胞を、プロテアーゼ阻害剤を含む氷冷溶解緩衝液中に再懸濁する。細胞溶解物を、プローブソニケーターを使用して氷上で超音波処理する。超音波処理後、細胞溶解物を、遠心分離によって10,000g、4℃で10分間破片から分離する。上澄みを除去し、追加の遠心分離によって100,000g、4℃で1時間清浄化する。次いで、ペレットを溶解緩衝液中に再懸濁し、分割し、-80℃で貯蔵してから使用する。
【0173】
グルコシルセラミドシンターゼアッセイ
グルコシルセラミドシンターゼ阻害を判定するために、そのKmの2倍の基質(蛍光セラミドおよびUDP-グルコース、それぞれ3μΜおよび4μΜ)とミクロソーム(1:50希釈)とを1:1で合わせ、暗室中、プレートシェーカーで、室温で1時間インキュベートする。反応を、50%イソプロパノール水溶液中の100μΜ C8-セラミド150μLを添加することによって停止させ;最終ミックス10μLをHPLC(蛍光検出器を備えた)で分析する。移動相は、1%ギ酸を81%メタノール/19%水に添加したものであり、流速は0.5mL/分である。蛍光は、λex=470nmおよびλem=530nmで検出する。これらの条件下、NBD-C6-GluCerの保持時間は約1.7分であり、NBD-C6-Cerは、約2.1分後にカラムから溶出する。両方のピークが、互いにかつベースラインから分離し、HPLCソフトウェアによって自動的に積分された。基質から生成物への変換率を阻害剤試験に関する読み取り値として使用する。
【0174】
GM3蛍光性連結免疫吸着アッセイ(FLISA):
これは、被検化合物で処置した後のB16マウス黒色腫またはC32ヒト黒色腫細胞におけるGM3発現を測定する表現型アッセイである。細胞表面のGM3発現は、抗体が介在する蛍光によって判定される。
【0175】
化合物を媒体で希釈し、384ウェルプレートのDMSO中にプレーティングする。B16およびC32細胞をそれぞれ、1ウェルあたり20,000細胞/mlおよび62,500細胞/mlの密度でアッセイする。各滴定曲線は10点を含み、これらは各試験ランにおいて2回繰り返してアッセイされている。プレートを、5%CO2、37℃で48時間インキュベートし、次いでTBSで1回洗浄する。抗GM3抗体を各ウェルに添加し、次いで、プレートを室温で更に1時間インキュベートする。その後、プレートを2回洗浄し、標識された二次抗体とともに更に1時間インキュベートする。最後のインキュベート後、プレートを2回洗浄し、λex=D640/20nmおよびλem=657nmにおける蛍光を、蛍光リーダーで検出する。
【0176】
アッセイ結果
これらのアッセイにおけるある特定の例示された化合物の個々のアッセイ結果を以下の表に示す。ミクロソームアッセイの結果を「GCS IC50」として示し、これは、グルコシルセラミドシンターゼ活性の50%阻害をもたらす化合物の濃度を表す。細胞ベースアッセイの結果はそれぞれ、B16アッセイおよびC32アッセイに関して「GM3B16IC50」または「GM3C32IC50」として示す。これらの値は、細胞表面においてGM3発現の50%阻害をもたらす化合物の濃度を表す。
【0177】
【0178】
これらの比較結果は、本開示による化合物がGCS阻害剤と同等のin-vitro活性を有することを実証し、結果的に同様のin-vivo利点を実証することが予想される。
【実施例5】
【0179】
GD-3患者における化合物2の臨床研究
イミグルセラーゼで安定化されたゴーシェ病3型を呈する成人患者においてイミグルセラーゼと組み合わせた化合物2の安全性、耐容性、薬物動態、薬力学、および探索的有効性の156週のマルチパート(multi-part)非盲検多国籍研究を開始した。
【0180】
登録より前に、少なくとも3年間のERTと、安定な月1回の用量で少なくとも6カ月間のイミグルセラーゼ(Cerezyme)との処置を受けたことがある、GD3の臨床診断を有し、酸ベータ-グルコシダーゼ活性欠乏症が実証された18歳またはそれ以上の患者が研究に含まれていた。患者は、次のGD治療目標に達している必要がある:女性に関しては11.0g/dL以上および男性に関しては12.0g/dL以上のヘモグロビンレベル;100000/mm3以上の血小板数;正常の10倍(10MN)未満の脾臓体積、または全脾臓摘出(無作為化より3年以上前に脾臓摘出が行われたという条件で);1.5MN未満の肝臓体積;ならびに骨クリーゼがなく、症候性骨疾患、例えば、昨年以内に骨壊死および/または病理学的骨折に起因する骨疼痛がない。患者は、水平サッケード異常によって特徴付けられる動眼失行症(核上性注視軽症麻痺)を特徴とするGD3を有していなければならない。
【0181】
(A)26週中間分析
(1)各患者の確立されたレジメン下でのイミグルセラーゼ(Cerezyme Sanofi Genzyme製)、および(2)単回用量、15mg/日で経口投与される化合物2を用いた26週の同時処置が完了した場合、5名の患者の中間分析を行った。研究中、患者を、安全性および耐容性、CSFおよび血漿バイオマーカー(グルコシルセラミド、GL-1;グルコシルスフィンゴシン、lyso-GL1)、薬物動態、全身性疾患に関するマーカー(磁気共鳴イメージング(MRI)によって測定された脾臓および肝臓体積、血小板数、ヘモグロビンレベル)、間質性肺疾患の徴候(肺の高分解能コンピューター断層撮影法(CT))、および水平サッケード眼球運動に関して評価した。
【0182】
ベースラインにおいて、改変重症度スコアリングツール(mSST;Davies,et al.,2011)を使用して測定した場合、4名の患者は軽度の神経学的関与を有し、1名は中等度の神経学的関与を有していた。全ての患者が、胸部CTに基づいて間質性肺疾患のエビデンスを示した。1名の患者は、血漿ヘモグロビンレベル10.6g/dLによって立証されるように貧血を有していた。
【0183】
全ての患者で、重篤または持続的な処置創発有害事象は報告されなかった。最も頻繁に報告された事象は頭痛および背部痛であり、これらは軽度から中等度であり、持続は一過性であるにすぎないと考えられた(CSF試験のために行われた腰椎穿刺と関連する可能性がある)。
【0184】
化合物2は、以下の表において実証されるように、全ての患者において血液脳関門を効果的に通過することが認められた:
【0185】
【0186】
26週で認められた化合物2のCSF濃度の高い変動は、12から26週における患者のうちの1名(患者5)の曝露における減少に起因し、この理由は未知である。患者1は、サンプル収集におけるエラーのため、26週のCSF判定から除外した。
【0187】
26週において、血漿およびGD-3に関するCSFバイオマーカーにおいて有意な改善が認められた。ベースラインにおいて、CSFにおける平均(±SD)GL-1濃度は7.1±2.8ng/mL(4.4~11.1ng/mLの範囲)であり、同時にCSFにおける平均(±SD)lyso-GL-1濃度は39.3±22.9pg/mL(20.1~67.6pg/mLの範囲)であった。比較するために、CSFにおける健常GL-1の濃度は4.5~5.9ng/mLであり、CSFにおけるlyso-GL-1の健常レベルは5.0pg/mL未満である。4週および26週において、CSFバイオマーカーにおける個々の減少は、以下のとおりであった(ベースラインCSF濃度からの減少パーセントとして示される):
【0188】
【0189】
間質性肺疾患の重症度は、4つの肺領域(大動脈弓、気管分岐部、下部ゾーンL3、下部ゾーンL4)において高解像度CTによって測定した場合、ILDによって影響を受けた肺体積パーセントによって特徴付けた。患者は、重度のILD(肺体積の51~100%が罹患)、中等度のILD(肺体積の26~50%が罹患)、軽度のILD(肺体積の1~25%が罹患)または正常(肺体積の0%がILDを示す)を有するとして格付けされた。全ての患者は、ベースラインにおいてILDを示し、5名のうち4名の患者が、26週の処置後にILDの退行を示した(患者5名はILDのわずかな進行を示した):
【0190】
【0191】
全ての患者が、全身性の悪化を示さなかった。2名の患者は、10%またはそれを超える脾臓体積において減少を示した。ヘモグロビンレベルにおける臨床的に重要な変化はなかった。平均では、血小板数はベースラインから26週まで17%増加し、最も少ないベースライン血小板数を呈する3名の患者は、26週において23~42%の増加を個々に示した。血小板数に関する個々の患者のデータを以下の表に示す(109血小板/Lとして示す):
【0192】
【0193】
水平および垂直サッケード眼球運動(それぞれHSEMおよびVSEM)の定量化を、5名全ての患者において行った。5名の患者において、水平右側15°のサッケードの平均ピーク速度(PV)は、ベースラインにおいて50.8°/秒(+/-8.1°/秒)、26週において47.5°/分(+/-12.6°/秒)であり;水平左側15°のサッケードの平均PVは、ベースラインにおいて44.7°/秒(+/-17.9°/秒)、26週において32.3°/秒(+/-15.9°/秒)であった。速度が遅いことは神経学的傷害の程度がより顕著であることを示唆する。水平右側30°サッケードの平均PVは、ベースラインにおいて77.7°/秒(+/-16.4°/秒)、26週において68.1°/分(+/-24.7°/秒)であり;水平左側30°サッケードの平均PVは、ベースラインにおいて58.7°/秒(+/-21.5°/秒)であり、26週において49.9°/秒(+/-8.5°/秒)であった。15°および30°の水平サッケードに関する正常範囲は、200°/秒超および400°/秒超として以前に報告されている(Bremova-Ertl et al,2018)。要約すると、HSEMにおける臨床的に重要な変化は26週の処置期間にわたって観察されなかった。HSEMと同様、VSEM測定値は、ベースラインと26週との間で安定していた。
【0194】
4つの探索的バイオマーカーを、4週および26週におけるGD3患者の血漿、血清および/またはCSFにおいて定量化し:キトトリオシダーゼ(CHITO;GD患者において上昇することが既知の酵素)をCSFおよび血清において測定し;GM3(GD患者において上昇することが既知のスフィンゴ糖脂質マーカー)をCSFおよび血漿において測定し;糖タンパク質非転移性黒色腫タンパク質B(GPNMB;報告によれば神経障害性GD3のバイオマーカー)をCSFにおいて測定した。結果を、各パラメータに関する4週および26週におけるベースラインからのパーセント変化として以下の表に示す:
【0195】
【0196】
(B)52週中間分析
最初の6名の患者が52週の処置に達した場合、上述の項(A)のように、第2の中間分析を行った。この分析には、項(A)において記載する患者1~5名、ならびに新規患者6名が含まれていた。6名全ての患者が、L444P(1448T/C)ホモ接合性ゴーシェ表現型を有していた。
【0197】
52週において、全ての患者が研究に登録されたままであった。6名の患者の間で、合計で30種類の処置創発有害事象が報告され、これら全ては重症度において軽度または中等度であり、これらはいずれも化合物2またはイミグルセラーゼを用いた処置と関連すると考えられなかった。事象は、最初に頭痛および背部痛であり、腰椎穿刺と関連する可能性があった。
【0198】
化合物2の血漿およびCSF濃度の分析によって、26週において得られた値とほぼ同等の値が示される。しかし、患者5は、26週の血漿およびCSFにおいて化合物2の濃度が約50%低く、52週において濃度は未検出であったことが認められている。これはコンプライアンスまたは投薬エラーのいずれかに起因すると考えられ、その結果、分析は、患者5の26週および52週のデータを含めずに繰り返している。データは、化合物2の定常状態濃度は、4週にまたはそれより前に血漿およびCSFにおいて到達するという結論を支持する:
【0199】
【0200】
【0201】
52週において、データによって、GD-3に関しては血漿およびCSFバイオマーカーにおいて持続的で有意な改善が更に示される。結果は、26週において得られたものと同様である。6名全てのGD3患者にわたって、血漿およびCSFGL-1およびlyso-GL-1濃度は以下のとおりであった:
【0202】
【0203】
したがって、52週において、ベースラインと比較して、血漿およびCSF濃度の変化は以下のとおりであった:
【0204】
【0205】
更に、次の探索的バイオマーカーをGD3患者のCSFにおいて定量化した:セラミド(GL-1の前駆体)、キトトリオシダーゼ(CHITO)、GM3、およびGPNMB。52週の処置後、セラミド、CHITOまたはGPNMBのCSF濃度において有意な変化は観察されなかった。6名のうち4名の患者は、ベースライン時のCSFにおいてGM3の濃度が測定可能であり、これらの各患者は、4週、26週および52週にCSFにおいてGM3が未検出であることが認められた。
【0206】
52週において、水平および垂直サッケード眼球運動の定量化を、項(A)において記載したのと同様の様式で6名全ての患者において行った。しかし、ノイズ(例えば、まばたきまたは頭部の動きによって引き起こされる)が原因となり、使用した方法論では結果にバイアスが導入された場合があることが判定された。その結果、ノイズに関する計算方法を改変し、一連の制御基準を開発し、眼球運動リーダーによって得られたデータセットの有効性を評価した。26週のサッケード眼球運動データの再評価、および52週データの評価において、レベルノイズがあまりにも高すぎて、データから結論を引き出すことは一切できないことが認められた。
【0207】
更に、52週において、6名のうち5名の患者は、運動失調において改善を示した。ベースラインにおけるかつ研究全体にわたる運動失調の程度を、0~40のスケールで小脳性運動失調の8つの異なる属性を評価する、運動失調の評価および格付けのためのスケール(SARA;Schmitz-Hubsch et al.[2006])によって評価した。8つの属性は、歩行、姿勢、座位、言語障害(speech disturbance)、手指追跡、鼻-手指試験、素早い交互の手の動き、およびかかと-すねスライドであった。6名全ての患者に関して得られたSARA運動失調スコアリングを以下のチャートに示す:
【0208】
【0209】
表で示すように、6名のうち5名の患者はベースラインにおいて軽度の失調であり、平均累積SARAスコアは2.8(SD=1.2)であった。ベースラインにおいて最も一般的な欠損は歩行障害であった。この患者における化合物2への曝露が低レベルであり、患者のベースライン運動失調スコアが実質的に正常である(わずか0.5)ために患者5を除外すると、5名のうち4名の患者が、52週で運動失調において改善を示した(平均改善=-0.9;SD=3.2)。患者4は運動失調スコアリングにおいて増加を示し、ベースラインにおけるスコアは3で、52週では7.5であった。この明らかな悪化は、ほぼ完全に「姿勢」スコアリングパラメータにおける変化によるものであり(ベースラインおよび26週における姿勢スコア=1;52週におけるスコア=5)、患者は検査時に左膝の疼痛を訴えていた点に留意するべきである。更に、対象は、検査前に左足親指を損傷しており;この損傷は、検査の11日後に解決したと考えられた。患者4のこれらの外れ値効果を除外すると、化合物2を用いた処置によって、26週までの平均SARAスコアに有意な減少がもたらされ、これは52週までに更にわずかに改善された。
【0210】
トレイルメイキング試験(TMT)を使用して、患者における認知機能を評価した。TMTは最も広範囲に使用される神経心理学的試験のうちの1つであり、大部分の一連の試験に含まれている。TMTは、一般的な知能および認知機能障害を評価するための診断ツールである(Tombaugh et al.[2004];Cavaco et al.[2013])。TMTのパートAにおいて、対象は、昇順で数字の群を繋げるように求められる。この課題は、視力探索ならびに一般的な視力および運動処理スピードの組合せである。パートBは、数字と文字との間を行ったり来たりする配列を表す。昇り順であるが交互の順でこれらを繋げる場合、対象は両カテゴリー間を活発に切り替える必要がある。したがって、対象は、カテゴリー間を積極的に切り替え、同時に記号を繋げる必要があるため、この課題は、実行機能構成要素を含むと考えられる(MacPherson et al.[2017])。
【0211】
TMT-Aは主に知覚および心理運動スピードを評価する。TMT-Bは、より具体的には精神的柔軟性およびシフト能力を評価する。TMT BからTMT Aスコアを引いたものは、TMT Aの書字運動および視力走査構成要素に起因する差異を除去するために使用される。これが導入されたスコアは、TMT Bの特有の課題要件を反映する。
【0212】
地域在住の個人18~89歳(n=911)におけるTMT AおよびTMT Bに関する模範データの研究において、18~24歳の年齢層(n=155)における平均(SD)値は、TMT Aに関しては22.9秒(6.9)であり、TMT Bに関しては49秒(12.7)であった(Tombauch et al.[2004])。対照的に、研究において患者に関するトレイルAおよびトレイルBを完了するのにかかった平均時間はそれぞれ67.8秒(SD=60.3秒)および193.8秒(SD=197.0)であった。ベースラインにおいて、トレイルBからトレイルAを引いたものを完了するためにかかる時間平均差は126.0秒(SD=142.9秒)であった。これは、本研究においてGD-3患者によって、ベースラインにおけるある程度の認知機能障害が実証されたことを示す。
【0213】
52週において、トレイルAを完了するためにかかる平均時間は56.5秒(SD=55.2秒)であり、トレイルBは122.7秒(SD=91.8秒)であった。6名のうち4名の患者は、トレイルAを完了するためにかかる時間において減少を示し、6名のうち6名はトレイルBを完了するためにかかる時間において減少を示した。この患者における化合物2への曝露は低レベルであるために患者5を除外すると、5名のうち4名の患者はTMT-Aの減少を示し、5名のうち5名の患者はTMT-Bの減少を示した。
【0214】
52週において、6名のうち5名の患者は、(TMT B-TMT A)時間において減少を示した。個々の結果を以下の表に示す。
【0215】
【0216】
52週において、トレイルBからトレイルAを引いたものを完了するためにかかる時間における平均差は66.2秒(SD=54.3)であった。患者5を除外すると、5名のうち4名の患者はトレイルBからトライアルAを引いたものにおいて改善を示し、52週において、平均改善は-71.4秒(-31.6%)(SD 99.3秒(37.6%))であった。
【0217】
神経学的機能を、機能的磁気共鳴イメージング(fMRI)を使用して更に評価した。患者2は、52週セッションにおいてfMRIデータを収集しなかったため、除外した。安静状態のfMRIスクリーニングセッションを、ベースラインスクリーニング、26週、および52週の訪問時に行った。4名の対象(患者1、3、4および5)からのコネクティビティ評価を、「遵守した」群として第2レベルの分析へ入力した。患者5は、上述のように、研究医薬の服薬不履行の可能性があるために隔離した。分析は、他の箇所で記載するように行った(Smith et al.[2009])。
【0218】
遵守した対象は、服薬不履行の対象よりも、より広範に分布した一連の脳領域間でコネクティビティが強化され、最も顕著な特徴として後側と前側との間の強度が増加したことが認められた点が実証された。解剖学的レベルでは、遵守した対象は、後頭-頭頂構造と前頭、側頭および辺縁系の標的との間のコネクションの広範で頑強な強化が実証される。患者5におけるコネクティビティの変化は、更にわずかであり、空間的に近位の構造内に制限された。機能レベルでは、患者5を除外した全ての対象において、デフォルトモードと内側前頭ネットワークとの間の強化されたコネクティビティが認められる。これは、これらの異なるネットワーク内のシグナルがよりコヒーレントになり、その結果、脳活性が、認知的予備力(後側)と高次実行機能(前側)との間でより効果的に伝達することができることを示唆する。安静状態ネットワーク(RSN)2および3(「認知-言語-正字法」および「認知-空間」)からRSN8および9(実行および左前頭頭頂)への一貫した逆空間マッピングも明白である。コネクティビティ変化の空間分布は、患者5に関して更にいっそう焦点が当てられ、内側-前頭と前頭頭頂ネットワークとの間のオーバーラップを主に反映している。両方の観点が、処置プロトコールを完全に順守した患者は、脳の後ろ側と前側との間に優れたコヒーレンスを発達させ、その結果、脳全体が効率的な情報伝達の影響を受けやすくなったことを示唆する。明らかな場合、患者5に関するコネクティビティの変化は、より狭い一連の前側脳領域内に出現し、治療的利点の全体的なエビデンスが少ないことを表す。
【0219】
結果を以下の表に要約する。脳の異なる解剖学的領域間のコネクティビティの空間分析を行って、回帰されたボクセルワイズ平均強度に関する相関係数を定義する。結果によって、デフォルトモード(安静)ネットワークと実行機能ネットワークとの間のコネクティビティは、患者1、3、4および6において増加したが、患者5において減少したことが示された。
【0220】
【0221】
2名の患者が、52週において脾臓体積の減少を経験し、平均血小板濃度は平均で9.3%(範囲-8.2%から+45.3%)増加し、全ての患者が治療的目標の120×109/Lを超える血小板数を維持していたことが更に認められた。平均血小板濃度における増加は、6名のうち3名の患者における増加によって主に生じた。ヘモグロビンレベルにおける臨床的に重要な変化はなかった。
【実施例6】
【0222】
健常ヒトボランティアにおける化合物2の薬物動態
2パート第1相臨床研究を行って、食事の存在下および非存在下での健常ヒトボランティアにおける化合物2の薬物動態、薬力学、安全性および耐容性を評価した。化合物2はベングルスタットとしても知られる。
【0223】
研究1
研究1は、健常成人男性ボランティアにおける2パート単一施設トライアルであった。パート1は、安全性、耐容性、およびPKに関する化合物2の二重盲検無作為化プラセボ対照漸増単回用量研究であった。パート2は、高脂肪食を伴うPKおよび伴わないPKに関する化合物2の非盲検単一コホート無作為化2順序2期2処置クロスオーバー研究であった。
【0224】
研究のパート1では、55名の健常男性(プラセボ、n=14;2、5、15、25、50、および100mg用量、各n=6;150mg用量、n=5)が登録され、無作為化された。8名の健常男性がパート2に参加した。
【0225】
パート1において、対象は、少なくとも10時間の絶食後の初日の朝に、2、5、15、25、50、100、または150mgの化合物2(L-リンゴ酸塩の形態)または匹敵するプラセボが与えられるように無作為化された。パート2において、対象は、5mgの単回経口用量の化合物2が、空腹時(投与してから少なくとも10時間前および4時間後)にまたは規格化された高脂肪朝食(約815kcal)から30分後に同時に与えられるように無作為化された。7日間のウォッシュアウト期間後、参加者は他の条件にクロスオーバーされた。
【0226】
研究1、パート1において、血液を、被験薬物投与時(0時間)および投薬から0.5、1、2、3、4、5、6、8、10、12、16、24、48、72、および96時間後における化合物2の血漿濃度のためにサンプリングした。尿試料を収集して、被験薬物を投与する2時間前から始まり48時間後までの化合物2の濃度を分析した。
【0227】
研究1、パート2において、血液を、投薬から0、0.5、1、2、3、4、5、6、8、10、12、16、24、および48時間後における化合物2の血漿濃度のためにサンプリングした。
【0228】
パート1から、化合物2の2から150mgの用量の単回経口投薬後、最大血漿濃度(Cmax)は、血漿濃度が指数関数的に低下し始める前の3~5.5時間の時間の中央値において発生し、幾何平均t1/2は28.9時間であることが認められた。曝露は、用量範囲全体にわたってほぼ用量比例的に増加し:75倍の用量増加によって、幾何平均Cmax、AUClast、およびAUCinf値においてそれぞれ97.3、89.2、および85.9倍増加した。PKの結果を以下の表に示す(AUC=測定可能な濃度が持続するかまたは無限大に外挿された時間濃度曲線下面積;t1/2=終末半減期;CL/F=血漿からの見かけの総クリアランス;CV=変動係数;SD=標準偏差;tmax=Cmaxまでの時間;Vss/F=定常状態における見かけの分布体積):
【0229】
【0230】
パート2から、高脂肪食とともに5mgの用量を投与すると、絶食条件と比較して化合物2への曝露に対する影響はないことが認められた。中央値tmaxは、摂食したか空腹かどうかにかかわらず6.00時間であった。摂食/絶食の幾何平均比はCmaxおよびAUClastに関してそれぞれ0.92および0.91であった。対象内変動(すなわち、摂食対絶食)は、対象変動全体の半分未満を占めていた。
【0231】
研究2
研究2は、健常成人男性および女性ボランティアにおける化合物2の安全性、耐容性、PK、および薬力学の単一施設二重盲検無作為化プラセボ対照漸増反復用量研究であった。
【0232】
研究では、36名の健常成人(19名男性および17名女性)(n=9各群)が登録され、無作為化された。対象は、少なくとも10時間の絶食後、1日1回投薬する化合物2を5、10、または20mg(L-リンゴ酸塩の5-mgカプセル剤の形態として提供された)でまたはプラセボで14日間与えられるように無作為化された。
【0233】
血液を、以下のとおり化合物2の血漿濃度のためにサンプリングした:1日目、投薬から0、0.5、1、2、3、4、5、6、8、10、12、および16時間後;2~5、8、11、および13日目、0時間目;14日目、投薬から0.5、1、2、3、4、5、6、8、10、12時間後;15~17日目、14日目の投薬からそれぞれ24、48、および72時間目。尿試料を収集して、化合物2の濃度を、1日目(投薬から0時間後)および14日目に連続的に投薬から0~24時間後に分析した。薬力学的エンドポイント(血漿GL-1、GL-3、およびGM3濃度)を、1~5、8、11、13、および14日目の投薬から0時間後;および15日目の14日目の投薬から24時間後に評価した。
【0234】
5、10、または20mgの化合物2を1日1回14日間受けた対象において、血漿Cmaxは、1日目および14日目の投薬から2~5時間後の時間の中央値において発生したことが認められた。Ctrough値は、5日後にプラトーに達した。化合物2の曝露は、5~20mgの用量範囲にわたってほぼ用量比例的に増加し:この4倍の用量増加によって、14日目に幾何平均CmaxおよびAUC0-24値においてそれぞれ3.76および3.69倍の増加が生じた。研究2からのPKの結果を以下の表に要約する:
【0235】
【0236】
化合物2を1日1回投薬してから14日後、その24時間未変化体尿中排泄割合(平均fe0-24)は、26.3%から33.1%の間の範囲であり、明らかな用量関連性は一切なかった。平均CLR(0-24)は、1.49L/時間から2.07L/時間の間の範囲であり、観察された血漿CL/Fよりもおよそ3.18~3.86倍低かった。
【0237】
プラセボレシピエントにおける血漿GL-1、GL-3、およびGM3は、ベースライン全体にわたって依然として同様のままであり、一方、3つの化合物2の用量群全体では、血漿GL-1およびGM3レベルは、以下の表で示すようにベースラインから時間および用量依存的に減少した(反復漸増用量研究の15日目においてグルコシルセラミド(GL-1)、グロボトリアオシルセラミド(GL-3)、およびGM3ガングリオシド(GM3)に関する処置比率の点推定):
【0238】
【0239】
GL-1に関する最大持続効果は、5および10mgの群において11日目に、20mgの群において8日目までに発生した。15日目におけるベースラインからのGL-1減少の平均計算値は、5、10および20mgの群においてそれぞれ41.9%、69.6%、および74.6%であった。GL-1値は、1名の5mgの化合物2レシピエントにおいてベースラインで、3名、5名、および9名の対象においてそれぞれ5、10、および20mgの群において15日目に下限値定量化(LLOQ)を下回っていた。
【0240】
最大の持続的なGM3の減少は、化合物2の全ての用量群にわたって発生し、13日目から始まった。15日目の平均血漿GM3レベルは、5、10、および20mgの用量群に関してそれぞれベースラインの42.7%、49.4%、および57.8%であった。GM3は、1名および2名の対象においてそれぞれ10および20mgの用量群で15日目にLLOQを下回った。
【0241】
血漿GL-3も化合物2の全ての用量群において経時的に減少したが、LLOQと比較してベースラインGL-3値は変動し、低く、計算されたGL-3の減少平均値は制限された。プラセボ、5、10、および20mgの用量群において、GL-3値は、ベースラインにおいてそれぞれ1名、3名、1名、および6名の対象が、15日目においてそれぞれ4名、9名、7名、および9名の対象がLLOQを下回った。
【0242】
5、10、および20mgの用量群における化合物2のCtroughに起因するベースラインからの平均推定血漿GL-1の減少(それぞれ19.0、47.5、および69.9ng/mL)(90%CI)は、それぞれ67.0%(54.4~79.7%)、74.4%(63.7~85.2%)、および76.3%(64.8~87.8%)であった。
【0243】
結論
これらの研究において、健常対象における化合物2への曝露(CmaxおよびAUC)は、単回用量として2~150mgの範囲でまたは1日1回反復用量として5~20mgの範囲で14日間投与した場合、ほぼ用量に比例していた。空腹時と比較して、高脂肪食は、単回5mgの用量を受けた対象における曝露に対する影響は有さなかった。5~20mgの1日1回の反復用量では、定常状態は、5日以内に達し;年齢も性別も蓄積に影響を与えなかった。薬力学的に、1日1回の反復用量の化合物2は、GL-1およびGM3の血漿濃度が時間および用量依存的様式で減少し、化合物2介在性GCS阻害と一致したが、GL-3のベースラインレベルはあまりにも低すぎて薬力学的バイオマーカーとしては有用ではなかった。用量依存的なGL-1の減少は、化合物2の作用の意図する機序:GCSによるセラミドからのGL-1形成の阻害を裏付けた。
【0244】
全ての研究において、重篤な有害事象[SAE])、ECGモニタリング、臨床検査値、および身体検査を含む安全性プロファイルを、研究医薬の最後の投薬後10日にわたって処置創発有害事象(TEAE)モニタリングによって評価した。いずれの研究においても、死亡、SAE、重度のTEAE、または研究中断につながるTEAEはなかった。
【0245】
臨床的に適切な血液または生化学的異常はいずれの研究においても報告されなかった。バイタルサインは、いずれの研究においてもベースラインからの関連する変化を示さなかった。ECGパラメータは、漸増単回用量および食品の影響の研究において関連する変化を示さず;複数の漸増用量研究では、ECGパラメータは、いずれの用量においても化合物2のレシピエントにおいて平均ベースライン対プラセボから統計的に有意に変化しなかった。本発明は上記実施形態と併記してきたが、前述の説明および例は例示を意図し、発明の範囲を限定するものではないことは理解されるべきである。発明の範囲内の他の態様、利点および変更は、本発明が関連する当業者であれば明らかであろう。
【実施例7】
【0246】
ファブリー病患者における化合物2の臨床研究
方法
若齢の古典型ファブリー病患者における化合物2の3年間の非盲検調査を行って、成人男性ファブリー患者における化合物2の長期安全性、薬力学および探索的有効性を評価した。11名の対象が研究に登録され、7名の対象が研究の全ての側面を完了させた。全ての対象は、遺伝子型と検出レベルを下回る残留アルファ-ガラクトシダーゼ活性とによって確認される古典型ファブリー病と診断された男性であった(11名のうち9名はGLA遺伝子にナンセンス突然変異を有していた)。全ての対象の血漿におけるlyso-GL3レベルは少なくとも65ng/mLであり、ファブリー病特有の処置歴は有さなかった。対象の年齢中央値は24歳(19~37歳の範囲)であった。
【0247】
患者に15mgの化合物2の1日経口用量を投与した。皮膚におけるGL-3沈着物のクリアランスを12、26、52および156週目に生検を行うことによってモニターし、これらは、光学顕微鏡によって(皮膚毛細血管内皮細胞に焦点を当てる)半定量的に評価した。各サンプルを、4ポイントスケールでGL-3封入体の存在に関して3名の病理学者によって独立してスコア化し、Eng et al.,N.Engl.J. Med.345:9-16(2001)に従って、0(なし/わずか)、1(軽度)、2(中等度)、または3(重度)として格付けした。3名の病理学者の過半数によって格付けしたスコアを取得することによって、1時点あたりの患者1名あたりの単一のスコアが導き出された。過半数のスコアを導き出すことができなかった場合、スコアの中央値を使用した(いくつかの分数のスコアが得られた)。血漿試料も、ベースラインおよび12、26、52および156週目において、GL-3、lyso-GL-3、GL-1およびGM3に関して分析した。疼痛スコアおよび腹部症状を、SF-36スコアリングプロトコールを使用して、ベースラインおよび12、26、52、104および156週において分析した。
【0248】
患者を、ベースラインから156週目の多数の訪問時にShort Form-36(SF-36)質問票を使用して評価した。これは、健康の8つのさまざまな側面(活力、身体機能、身体の痛み、全体的健康感、身体の日常役割機能、精神の役割機能、社会的役割機能および心の健康)を測定するために使用される36項目の質問票である。各8つの態様に関するスコアは、0(最大の能力障害)から100(能力障害なし)の範囲であり、したがって、スコアが高いほど良好な健康状態を示す。更に、腹痛、腹部膨満、および腸の動きを含む胃腸症状を、炎症性腸重症度スコア化システムの改変版を使用して評価した。これらの評価の一部として受けた特定の質問としては:(1)過去10日以内に腹痛を患った患者かどうか、(2)0(疼痛なし)から100(極めて重度の疼痛)スケールを使用して、過去10日に患った腹痛の重症度はどのくらいだったか、および(3)過去10日以内に患者が腹痛を有していたのは何日かがある。
【0249】
結果
156週まで、5名の患者は、皮膚GL-3スコアにおいて1ポイントの減少を示し、2名の患者は、GL-3封入体の完全なクリアランスを有し、1名の患者は変化がなく、1名の患者は試料がなかった。156週の研究の過程にわたって、平均血漿GL-1レベルは69%低下し、平均血漿GM3レベルは60%低下し、平均血漿GL-3レベルは77%低下し、平均血漿lyso-GL3レベルは52%低下した。血漿GL-1およびGM3は、処置の最初の2~4週以内に極めて急速な低下を示した。4つの全ての測定は、血漿負荷の減少の持続的な維持を示し、これは52週までにほぼ安定した。
【0250】
血漿および尿データを以下の表に要約する:
【0251】
【0252】
これらの結果は、15mg/日で投与された化合物2は、全般的に漸進的な様式で身体のGL-1、lyso-GL-1およびGM3のレベルを一貫して減少させたことを実証する。
【0253】
更に、以前に完了しているアガルシダーゼベータ(Fabrazyme)のプラセボ対照第3相トライアルからのデータを分析して比較した(Eng et al.,N.Eng.J.Med.,345:9(2001)を参照のこと)。アガルシダーゼベータとの比較に関しては、過去の対照群は、第3相トライアルにおいてアガルシダーゼベータで処置した患者であり、血漿GL-3における変化を3年までの複数の時点で比較した。組み入れ基準およびベースライン特性は、2つの研究間で同様であった。比較を強化するために、化合物2を受けた患者を、年齢、血漿GL-3、性別、UPCR(500mg/g未満対500~1000mg/g対1000mg/g超)、およびeGFR(80mL/分/1.73m2未満対80mL/分/1.73m2以上)のベースライン変数を使用した傾向スコアに基づいて第3相研究の患者と照合した。11名の化合物2を受けた患者を、プラセボ比較のために19名の患者と、アガルシダーゼベータ比較のために28名の患者と照合した。3群全てにおいて、全ての患者は男性であり、血漿GL-3の上昇、500mg/g未満のUPCR、および80mL/分/1.73m2以上のeGFRが実証された。平均年齢は3群にわたって同様であった。比較によって、化合物2を用いて26週間処置すると、プラセボと比較して血漿GL-3において有意な減少が生じ、-3.62μg/mL対-1.06μg/mL(P<0.0001)であったことが示される。化合物2を用いて処置すると、アガルシダーゼベータと比較して52週において血漿GL-3における同様の減少が生じたが、104週および156週において、化合物処置からの血漿GL-3の減少は有意に大きかった(104週においてp=0.0351;156週においてp=0.0081)。156週後の血漿GL-3レベルは、化合物2で処置した患者に関しては1.90μg/mLであり、アガルシダーゼベータで処置した患者に関しては4.44μg/mLであった。
【0254】
皮膚GL-3封入体スコアに関する詳細な結果を以下の表に示す(スコア0はGL-3封入体がないことを示す):
【0255】
【0256】
【0257】
【0258】
【0259】
光学顕微鏡によるGL-3皮膚封入体のスコアリングに加えて、GL-3封入体が占める内皮細胞細胞質の体積の割合を、マスクをつけた読み取り者によって電子顕微鏡画像のポイント集計法を使用して評価した。少なくとも50個の表在内皮細胞毛細血管からの画像を、電子顕微鏡を使用して7500倍の倍率で得た。両側t検定を使用して、各時点におけるベースライン値と処置後の値との間の差を評価した。結果を以下の表に示す:
【0260】
【0261】
これらの結果は、15mg/日で投与された化合物2が、全般的に漸進的な様式で皮膚におけるGL-3封入体のレベルを一貫して減少させたことを実証する。結果は、深部血管内皮細胞および他の皮膚組織と比較して、表在血管内皮細胞に関して全般的に顕著であった。
【0262】
9名のうち7名の患者は、26週で全体的な身体の痛みのスコア(SF-36)が改善され、同時に6名のうち3名の患者は、156週で全体的な身体の痛みのスコア(SF-36)が改善された。ベースラインにおいて胃腸の痛みを呈する患者のうち、痛み(腹痛)の重症度は、26週において5名中4名、156週において4名中4名が減少した。胃腸の痛みを伴う日数は、26週において5名のうち5名の患者、156週において4名のうち3名の患者において減少した。
【0263】
腹痛の測定に関する詳細な結果を以下の表に示す。
【0264】
【0265】
これらの結果によって、15mg/日で投与された化合物2は、全般的に漸進的な様式で、身体の腹痛および不快感を一貫して減少させたことが実証される。
【0266】
更に、本発明の特徴または態様がマルクーシュグループによって記載する場合、当業者であれば、本発明がマルクーシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関しても記載していることを認識するであろう。
【0267】
本明細書において記載する全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それぞれが参照によって個々に組み入れたのと同程度にその全体が参照によって明示的に組み入れるものとする。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が優先されることになる。