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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】キーボード装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/02 20060101AFI20240628BHJP
   H01H 13/52 20060101ALI20240628BHJP
   H01H 9/16 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H01H13/02 A
H01H13/52 E
H01H9/16 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022065122
(22)【出願日】2022-04-11
(65)【公開番号】P2023155663
(43)【公開日】2023-10-23
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】311012169
【氏名又は名称】NECパーソナルコンピュータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正人
(72)【発明者】
【氏名】舟山 高弘
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-68743(JP,A)
【文献】実開平5-31042(JP,U)
【文献】特開2012-89099(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0025858(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部から、下側シート、スペーサシート、上側シート及び光源実装シートが順次積層された4層のメンブレンシートを有し、
前記下側シートの上面には、固定接点を接続する第1のマトリクス配線パターンが形成され、
前記上側シートの下面には、可動接点を接続する第2のマトリクス配線パターンが形成され、
前記スペーサシートは、前記固定接点と前記可動接点との接触を可能にする貫通孔の空隙部を形成し、
前記光源実装シートの上面には、光源及び前記光源を接続する光源配線パターンが形成され
前記光源実装シートは、キートップによって押下される領域に貫通孔を設けたキーボード装置。
【請求項2】
下部から、下側シート、スペーサシート、上側シート及び光源実装シートが順次積層された4層のメンブレンシートを有し、
前記下側シートの上面には、固定接点を接続する第1のマトリクス配線パターンが形成され、
前記上側シートの下面には、可動接点を接続する第2のマトリクス配線パターンが形成され、
前記スペーサシートは、前記固定接点と前記可動接点との接触を可能にする貫通孔の空隙部を形成し、
前記光源実装シートの上面には、光源及び前記光源を接続する光源配線パターンが形成され
前記光源配線パターンは、キートップによって押下される領域外に形成されるキーボード装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のキーボード装置であって、
筐体を形成するフレーム及び/又は前記キートップは、前記光源に対応する位置に透光部が形成されるキーボード装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のキーボード装置が搭載あるいは接続される電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンブレンシート上の光源配線パターンとキースイッチのマトリクス配線パターンとの干渉を簡易な構成で抑止し、配線強度も維持することができるキーボード装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノートPCなどの電子機器に搭載されるキーボード装置やパソコンなどに外部接続されるキーボード装置では、キートップの下に膜状のメンブレンスイッチを配置してキー入力を検出する構成が知られている(例えば特許文献1)。メンブレンスイッチは、キー構造の直下に配置されキー入力を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-157589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなキーボード装置では、LED光源を用いてキーボード装置上に動作状態を示す各種のインジケーターが設けられる。この各種のインジケーターは、キーボード装置の四方に分散して表示される場合がある。特に、電子機器に外部接続されるワイヤレスのキーボード装置では、キー自体に限らず、独立したバッテリ表示や接続状態表示などが必要となる。このため、LED光源を接続する光源配線パターンは広範囲にわたる。一方、メンブレンスイッチの接点に接続されるマトリクス配線パターンも広範囲にわたる。
【0005】
ここで、メンブレンスイッチを有するメンブレンシートは、スペーサシートを挟んで上側シートと下側シートとを有し、メンブレンスイッチの接点は、スペーサシートの空隙部で向かい合って形成される。そして、各接点を接続するマトリクス配線パターンは、上側シート及び下側シートにそれぞれ形成される。一方、光源配線パターンは、上側シートあるいは下側シートに形成される。下側シートに光源配線パターンが形成される場合、下側シートには光源配線パターンとマトリクス配線パターンとが広範囲に形成されるため、干渉する場合がある。この場合、下側シートには光源配線パターンとマトリクス配線パターンとの干渉部分には、絶縁膜などのジャンパを形成する必要があり、パターン印刷が複雑になるとともに、干渉部分のパターン形成が難しく、配線強度の維持も困難な場合が発生する。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、メンブレンシート上の光源配線パターンとキースイッチのマトリクス配線パターンとの干渉を簡易な構成で抑止し、配線強度も維持することができるキーボード装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係るキーボード装置は、下部から、下側シート、スペーサシート、上側シート及び光源実装シートが順次積層された4層のメンブレンシートを有し、前記下側シートの上面には、固定接点を接続する第1のマトリクス配線パターンが形成され、前記上側シートの下面には、可動接点を接続する第2のマトリクス配線パターンが形成され、前記スペーサシートは、前記固定接点と前記可動接点との接触を可能にする貫通孔の空隙部を形成し、前記光源実装シートの上面には、光源及び前記光源を接続する光源配線パターンが形成されている。
【0008】
このような構成によれば、光源配線パターンと、第1のマトリクス配線パターンと、第2のマトリクス配線パターンとは、それぞれ異なるシート上に印刷される。これにより、メンブレンシート上の光源配線パターンと第1のマトリクス配線パターンと第2のマトリクス配線パターンとの干渉を簡易な構成で抑止することができるとともに、配線強度も維持することができる。
【0009】
さらに、前記空隙部の径は、前記光源実装シートの弾性係数に応じて拡幅されるようにしてもよい。これにより、前記光源実装シートを設けない場合と同様なキータッチを実現できる。
【0010】
また、前記光源実装シートは、キートップによって押下される領域に貫通孔を設けるようにしてもよい。これにより、前記光源実装シートを設けない場合と同様なキータッチを実現できる。
【0011】
さらに、前記光源配線パターンは、キートップによって押下される領域外に形成するとよい。これにより、光源配線パターンの配線強度が劣化することがない。
【0012】
また、筐体を形成するフレーム及び/又はキートップは、前記光源に対応する位置に透光部が形成されるようにしてもよい。これにより、透光部がインジケーターとして機能する。
【0013】
さらに、上記のキーボード装置が搭載あるいは接続される電子機器であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記態様によれば、メンブレンシート上の光源配線パターンとキースイッチのマトリクス配線パターンとの干渉を簡易な構成で抑止し、配線強度も維持することができるキーボード装置及び電子機器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態に係るキーボード装置の平面図である。
図2図2は、キーボード装置の内部構造を模式的に示す要部拡大側面断面図である。
図3図3は、メンブレンシートの分解斜視図である。
図4図4は、メンブレンシートの内部構造を模式的に示す要部拡大側面断面図である。
図5図5は、従来のメンブレンシートの分解斜視図である。
図6図6は、従来のメンブレンシートの内部構造を模式的に示す要部拡大側面断面図である。
図7図7は、変形例によるメンブレンシート31の内部構造を模式的に示す要部拡大側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るキーボード装置及び電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
<キーボード装置の構造>
図1は、一実施形態に係るキーボード装置12の平面図である。なお、キーボード装置12を使用するユーザから見た方向を基準とし、手前側を前、奥側を後、厚み方向を上下、幅方向を左右と呼んで説明する。
【0018】
キーボード装置12は、複数のキースイッチ24を有する。キーボード装置12は、各キースイッチ24の操作面となるキートップ24aの周囲をフレーム26で仕切っている。
【0019】
フレーム26は、樹脂や金属等で形成されている。フレーム26は、網目状の枠体である。本実施形態のフレーム26は、キーボード装置12のカバー部材として機能する。フレーム26は、各キートップ24aが上下動可能に挿入された複数の孔部26aを有する。
【0020】
フレーム26上には、前後左右にわたって広範囲にインジケーターとして機能する透光部27(27a~27g)が配置される。なお、後述するように、透光部27の下側にLED光源が配置される。透光部27a,27bは、キーボード装置12の左端側のキーに配置される。透光部27aは、CapsLockキーの右上に配置されてCapsLockロックの状態を表示する。透光部27bは、FnLockキーの右下に配置されてFnLock状態を表示する。
【0021】
透光部27c~27fは、キーボード装置12の右後端側のキーに配置される。透光部27cは、無線LANによる本体接続キーの右上に配置されて無線LANを介した本体との接続状態を表示する。透光部27d,27eは、それぞれBluetooth(登録商標)機器接続キーの右上に配置されてBluetooth(登録商標)機器接続の状態を表示する。透光部27fは、NumLockキーの右上に配置されてNumLock状態を表示する。さらに、透光部27gは、キーボード装置12の右前端側に配置される。透光部27gは、バッテリの状態を表示する。なお、キーボード装置12はワイヤレスキーボード装置として説明する。また、各透光部27a~27gの近くには、各透光部27a~27gの表示内容を示す標識が描かれている。
【0022】
図2は、キーボード装置12の内部構造を模式的に示す要部拡大側面断面図である。図2に示すように、キーボード装置12は、底面を形成する底板32とフレーム26との間にメンブレンシート31とベースプレート30とが収容される。メンブレンシート31は、ベースプレート30を介して底板32上に配置される。
【0023】
各キースイッチ24は、キートップ24aと、ガイド機構24bと、ラバードーム24cとを有する。ガイド機構24bは、キートップ24aをベースプレート30の上面側で上下動可能に支持するものである。ガイド機構24bは、キートップ24aの下面とベースプレート30の上面との間を連結するシザー機構である。ラバードーム24cは、シリコーンゴム等の可撓性を有する弾性材料で形成されたドーム形状部材である。ラバードーム24cは、メンブレンシート31とキートップ24aとの間に配設される。ラバードーム24cは、キートップ24aが押下された場合にメンブレンシート31を押圧すると共に、キートップ24aの押下操作が解除された際にキートップ24aを元の位置に復帰させる弾性部材である。
【0024】
ベースプレート30は、各キースイッチ24などを取り付けるものであり、薄いステンレス板やアルミニウム板等、金属製の板状部材に切り起こし成形や打ち抜き成形を施したものである。
【0025】
<メンブレンシートの構造>
図3は、メンブレンシート31の分解斜視図である。また、図4は、メンブレンシート31の内部構造を模式的に示す要部拡大側面断面図である。図3及び図4に示すように、メンブレンシート31は、下部から、下側シート4、スペーサシート3、上側シート2、光源実装シート1が順次積層される。下側シート4の上面と上側シート2の下面とには、それぞれ対向配置される固定接点S4と可動接点S2が形成されている。この固定接点S4及び可動接点S2が配置される領域においてスペーサシート3は、空隙部3aとしての円形の貫通孔を形成している。
【0026】
そして、キートップ24aが押下されることによってラバードーム24cが下降すると、上側シート2の可動接点S2は光源実装シート1とともに下降し、下側シート4の固定接点S4に密着して接点を閉じる。
【0027】
下側シート4の上面には、固定接点S4を接続するためのマトリクス配線パターンL4が印刷されている。また、上側シート2の下面には、可動接点S2を接続するためのマトリクス配線パターンL2が印刷されている。
【0028】
一方、光源実装シート1の上面には、インジケーターとして機能する透光部27に対応した位置にLED光源40が配置され、このLED光源を接続するための光源配線パターンL40が印刷されている。したがって、光源配線パターンL40、マトリクス配線パターンL2、マトリクス配線パターンL4は、それぞれ異なるシート上に形成されることになる。
【0029】
この結果、光源配線パターンL40と、マトリクス配線パターンL4,L2とが重なっても、干渉防止のための絶縁パターンを形成する必要もなく、断線や短絡も生じにくく、それぞれ独立した配線パターンを形成するため、配線強度も維持されることになる。
【0030】
<従来のメンブレンシートとの比較>
図5は、従来のメンブレンシートの分解斜視図である。また、図6は、従来のメンブレンシートの内部構造を模式的に示す要部拡大側面断面図である。図5及び図6に示すように、従来のメンブレンシートは、上側シート2、スペーサシート3、下側シート4の3層構造であった。そして、上側シート2の下面には可動接点S2とマトリクス配線パターンL2とが形成されていた。さらに、下側シート4の上面には、固定接点S4とマトリクス配線パターンL4、及び、LED光源40と光源配線パターンL40が配置されていた。
【0031】
このため、従来のメンブレンシートでは、図6に示すように、下側シート4にマトリクス配線パターンL4と光源配線パターンL40とが交差する干渉領域E1~E3が発生していた。この干渉領域E1~E3では、例えば、マトリクス配線パターンL4と光源配線パターンL40との間に絶縁層を新たに形成する必要がある。このため、マトリクス配線パターンL4と光源配線パターンL40との形成工程が複雑になるとともに、配線強度を高く維持することができない。また、上側シート2及びスペーサシート3には、LED光源40を配置するための貫通孔を形成する必要があった。
【0032】
なお、上側シート2の上面にLED光源40を配置し、光源配線パターンL40を形成する両面印刷も考えられるが、上側シート2の薄さ及び両面印刷の位置決めの難しさがあり、困難である。
【0033】
また、キートップ24aの押下に伴うラバードーム24cの下降の際、光源実装シート1も同時に下降することになるため、可動接点S2と固定接点S4とのスイッチングに余分な荷重が必要となる場合、空隙部3aの径を大きくすればよい。すなわち、空隙部3aの径は、光源実装シート1の弾性係数に応じて拡幅される。
【0034】
これに対し、本実施形態では、上側シート2の上層に、光源配線パターンL40とLED光源40を配置して、光源配線パターンL40とマトリクス配線パターンL4とを同一平面上に形成しないようにしているので、メンブレンシート31上の光源配線パターンL40とマトリクス配線パターンL2,L4との干渉を簡易な構成で抑止し、配線強度も維持することができる。
【0035】
<変形例>
図7は、変形例によるメンブレンシート31の内部構造を模式的に示す要部拡大側面断面図である。図7に示すように、この変形例では、光源実装シート1においてラバードーム24cが当接する領域に貫通孔1aを形成している。これにより、ラバードーム24cの下端は、直接、上側シート2を押圧することになり、光源実装シート1を設けない従来のメンブレンシートと同様の設計を行うことができる。この場合、光源実装シート1上の光源配線パターンL40は、ラバードーム24cが当接するラバードーム当接領域を除いて形成されることになる。なお、上記の実施形態においても、ラバードーム当接領域には、ラバードーム24cの荷重がかかるため、光源配線パターンL40は形成しない。
【0036】
なお、上記の実施形態及び変形例では、キートップ24aの下部にLED光源40を配置するものと配置しないものとが混在していたが、キートップ24aの下部にLED光源40を配置する場合、キートップ24aの下部であってラバードーム当接領域外にLED光源40を配置するとよい。この場合、キートップ24aに透光部を設け、キートップ24aの下部に配置されたLED光源40によってキートップ24aの透光部を照射する。
【0037】
また、上記の実施形態及び変形例では、独立して外部接続するワイヤレスのキーボード装置として説明したが、有線接続のキーボード装置であってもよい。また、ノートPCなどの電子機器に搭載されたキーボード装置であってもよい。
【0038】
さらに、LED光源40の光照射を側面に向けるとともに、透光部をキーボード装置12の側面に設けてもよい。
【0039】
なお、上記の実施の形態及び変形例で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置及び構成要素の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 光源実装シート
1a 貫通孔
2 上側シート
3 スペーサシート
3a 空隙部
4 下側シート
12 キーボード装置
24 キースイッチ
24a キートップ
24b ガイド機構
24c ラバードーム
26 フレーム
26a 孔部
27,27a~27g 透光部
30 ベースプレート
31 メンブレンシート
32 底板
40 LED光源
E1~E3 干渉領域
L2,L4 マトリクス配線パターン
L40 光源配線パターン
S2 可動接点
S4 固定接点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7