(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】通信装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 76/20 20180101AFI20240628BHJP
H04W 16/14 20090101ALI20240628BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20240628BHJP
【FI】
H04W76/20
H04W16/14
H04W84/12
(21)【出願番号】P 2022143930
(22)【出願日】2022-09-09
(62)【分割の表示】P 2020192666の分割
【原出願日】2016-07-29
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 仁志
【審査官】石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-183378(JP,A)
【文献】特開2014-216956(JP,A)
【文献】特開2015-089057(JP,A)
【文献】特開2009-100382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷手段を有する通信装置であって、
他の通信装置が構築した第1の無線ネットワークに参加する第1のモードと第2の無線ネットワークを構築する第2のモードとを実行することが可能な通信手段と、
前記通信手段によって参加している前記第1の無線ネットワークが5GHz帯の第1の無線チャネルを使用する場合、2.4GHz帯の第2の無線チャネルで前記第2の無線ネットワークを構築するように制御し、前記通信手段によって参加している前記第1の無線ネットワークが2.4GHz帯の第3の無線チャネルを使用する場合、2.4GHz帯の前記第3の無線チャネルとは異なる第4の無線チャネルで前記第2の無線ネットワークを構築するように制御する制御手段と、
を有
し、
前記通信手段に前記第1のモードを実行させて前記第1の無線ネットワークに参加させつつ、かつ、前記通信手段に前記第2のモードを実行させて前記第2の無線ネットワークも構築させる場合、前記制御手段は前記通信手段が前記第1のモードのための制御と前記第2のモードのための制御とを時分割技術を用いて切り替えながら実行するように前記通信手段を制御することにより、前記通信装置を前記第1の無線ネットワークに参加させつつ、かつ、前記第2の無線ネットワークが構築された状態を維持させることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記通信装置はさらに無線チップを1つのみ有し、
前記通信手段は1つの前記無線チップを用いて前記第1のモード及び前記第2のモードを実行し、
前記第1のモードと前記第2のモードは、IEEE802.11規格に準拠した無線通信のモードであることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第1のモードは、アクセスポイントとして動作する前記他の通信装置が構築した前記第1の無線ネットワークに参加するモードであり、前記第2のモードは、前記通信装置がアクセスポイントとして動作して前記第2の無線ネットワークを構築するモードであ
って、
前記通信手段に前記第1のモードを実行させて前記第1の無線ネットワークに参加させつつ、かつ、前記通信手段に前記第2のモードを実行させて前記第2の無線ネットワークも構築させる場合、前記通信手段は前記第1の無線ネットワークを構築する前記アクセスポイントに前記通信装置が前記第1のモードにおいてPower Saveで動作することを通知する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
印刷手段を有する通信装置によって実行される制御方法であって、
他の通信装置が構築した第1の無線ネットワークに参加する第1のモードで通信装置を動作させる第1の通信制御工程と、
第2の無線ネットワークを構築する第2のモードで通信装置を動作させる第2の通信制御工程と、
を含み、
前記通信装置が参加している前記第1の無線ネットワークが5GHz帯の第1の無線チャネルを使用する場合、2.4GHz帯の第2の無線チャネルで前記第2の無線ネットワークを構築するように制御し、前記通信装置が参加している前記第1の無線ネットワークが2.4GHz帯の第3の無線チャネルを使用する場合、2.4GHz帯の前記第3の無線チャネルとは異なる第4の無線チャネルで前記第2の無線ネットワークを構築するように制御
し、
前記第1の通信制御工程において前記第1のモードを実行させて前記第1の無線ネットワークに参加させつつ、かつ、前記第2の通信制御工程において前記第2のモードを実行させて前記第2の無線ネットワークも構築させる場合、前記第1のモードのための制御と前記第2のモードのための制御とを時分割技術を用いて切り替えながら実行するように制御することにより、前記通信装置を前記第1の無線ネットワークに参加させつつも、且つ、前記第2の無線ネットワークが構築された状態を維持させる、
ことを特徴とする通信装置の制御方法。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置として動作させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信における通信制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE802.11規格シリーズに代表される無線LANシステムが、多くの機器によって用いられるようになっている。無線LANでは、1つ以上の無線端末を収容可能な基地局として動作するアクセスポイント(以下、「AP」と呼ぶ。)によって、ネットワークが制御される。無線LANによるネットワークは、APと、そのAPが放射した電波の到達範囲内に存在し、そのAPと無線接続を確立した状態の無線端末であるステーション(以下、「STA」と呼ぶ。)によって構成される。近年、このような従来型のAPとSTAとによる単純な無線ネットワーク構成のみならず、様々な形態の無線LANによるネットワークを実現する製品および仕様規格が登場している。
【0003】
複数の無線ネットワークに参加するために、基地局として通信を行うAP機能(以下、「APモード」と呼ぶ。)と、基地局として動作する他の装置に接続して通信を行うSTA機能(以下、「STAモード」と呼ぶ。)とを並行して実行可能な通信装置が存在する。このような通信装置は、STAとして動作して他のAPに接続しながら、APとして動作して別のネットワークを構築することができる(特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-259033号公報
【文献】特開2013-172275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通信装置がSTAモードとAPモードとを並行して実行する場合、その通信装置が通信に使用可能な無線チャネルに制約が生じる場合があり、このような制約によって、ユーザの利便性が損なわれる場合がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、複数の通信モードを並行して実行可能な通信装置において、使用可能な通信チャネルの制限によってユーザの利便性が損なわれることを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の通信装置は、印刷手段を有する通信装置であって、他の通信装置が構築した第1の無線ネットワークに参加する第1のモードと第2の無線ネットワークを構築する第2のモードとを実行することが可能な通信手段と、前記通信手段によって参加している前記第1の無線ネットワークが5GHz帯の第1の無線チャネルを使用する場合、2.4GHz帯の第2の無線チャネルで前記第2の無線ネットワークを構築するように制御し、前記通信手段によって参加している前記第1の無線ネットワークが2.4GHz帯の第3の無線チャネルを使用する場合、2.4GHz帯の前記第3の無線チャネルとは異なる第4の無線チャネルで前記第2の無線ネットワークを構築するように制御する制御手段と、を有し、前記通信手段に前記第1のモードを実行させて前記第1の無線ネットワークに参加させつつ、かつ、前記通信手段に前記第2のモードを実行させて前記第2の無線ネットワークも構築させる場合、前記制御手段は前記通信手段が前記第1のモードのための制御と前記第2のモードのための制御とを時分割技術を用いて切り替えながら実行するように前記通信手段を制御することにより、前記通信装置を前記第1の無線ネットワークに参加させつつ、かつ、前記第2の無線ネットワークが構築された状態を維持させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の通信モードを並行して実行可能な通信装置において、使用可能な通信チャネルの制限によってユーザの利便性が損なわれることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】STA-AP101のハードウェア構成例を示すブロック図。
【
図3】STA-AP101の機能構成例を示すブロック図。
【
図4】STAモード接続処理の流れの例を示すフローチャート。
【
図5】APモード起動処理の流れの例を示すフローチャート。
【
図6】無線通信システムにおける処理の流れの例を示すシーケンス図。
【
図7】STAモード接続処理の流れの例を示すフローチャート。
【
図8】APモード起動処理の流れの例を示すフローチャート。
【
図10】無線通信システムにおける処理の流れの例を示すシーケンス図。
【
図11】無線通信システムにおける処理の流れの例を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。以下では、各実施形態において共通の、無線通信システムの構成、無線通信システムに含まれる通信装置(後述するSTA-AP101)の構成について説明した後に、各実施形態に係る処理の流れについて説明する。
【0011】
(無線通信システムの構成)
図1に、各実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。本無線通信システムは、IEEE802.11規格シリーズに準拠した無線LANによる通信システムであり、複数の通信装置(STA-AP101、AP102、STA103、及びSTA104)を含んで構成される。
【0012】
STA-AP101は、IEEE802.11規格に準拠した、STA(ステーション)モードとAP(アクセスポイント)モードの両方の機能を有する通信装置であり、STAモードとAPモードとを並行して実行可能な通信装置である。一方、AP102は、IEEE802.11規格に準拠したアクセスポイントとして機能する通信装置であり、STA103及びSTA104は、IEEE802.11規格に準拠したステーションとして機能する通信装置である。
【0013】
STA-AP101は、STAモードにおいて他のAP機能を有する通信装置が構築した第1の無線ネットワークに参加することができる。さらに、STA-AP101は、APモードにおいて、自身がSTAモードにおいて参加している第1の無線ネットワークとは異なる第2の無線ネットワークを構築することができる。
図1は、STA-AP101が、STAモードにおいてAP102が構築した無線ネットワーク105に参加しながら、APモードにおいて無線ネットワーク106を構築することができることを示している。なお、
図1は、さらに、STA103がAP102の構築した無線ネットワーク105に参加することができ、STA-AP101がAPモードで構築した無線ネットワーク106にSTA104が参加することができる状態を示している。
【0014】
STA-AP101のような、STAモードとAPモードとを並行して実行することができる通信装置では、上述のように、その通信装置が通信に使用可能な無線チャネルに制約が生じる場合がある。例えば、ハードウェアの制約から、1つの無線チャネルでのみ通信できる通信装置は、STAモードとAPモードとで同じ無線チャネルを使用する必要がある。すなわち、このような通信装置は、STAモードで2.4GHz帯の1ch(2412MHz)の無線ネットワークに参加した場合、APモードにおいても2.4GHz帯の1chで無線ネットワークを構築する必要がある。
【0015】
なお、複数のRF制御モジュールおよび複数のアンテナを有することによって、それぞれ異なる無線チャネルの無線ネットワークに参加することができる通信装置も存在する。しかしながら、複数のRF制御モジュールおよびアンテナを有することで、回路やアンテナの配置が複雑になりコストが上がったり、装置のサイズが大きくなってしまったりすることがあり得る。このため、APモードとSTAモードとを並行して実行することができる通信装置のすべてが、このような複数のRF制御モジュールおよびアンテナを有することは必ずしも現実的ではない。
【0016】
このため、本実施形態に係るSTA-AP101は、RF制御回路を1つ有し、1つの時点において1つの無線チャネルでのみ動作できるものとする。このため、STA-AP101がSTAモードとAPモードとを並行して実行する場合、無線ネットワーク105と無線ネットワーク106とが同一の無線チャネルで構築されている必要がある。
【0017】
なお、無線チャネルによっては様々な利用制約が存在しうる。例えば、無線LAN機能を有する通信装置の多くは2.4GHz帯で通信することができるが、そのような通信装置であっても5GHz帯での通信には対応していない場合がありうる。このため、5GHz帯で無線ネットワークが構築されている場合、その無線ネットワークでは一部の通信装置と通信ができない場合があり得る。
【0018】
また、5GHz帯のW53(ch52~60:5260MHz~5320MHz)、W56(ch100~140:5500MHz~5700MHz)と呼ばれる無線チャネルは、一部の国や地域では、他のシステムとの干渉を防ぐための制限が課されている。例えば、通信装置は、これらの無線チャネルを用いるために、DFS(Dynamic Frequency Selection)やTPC(Transmit Power Control)等の機構を有することが義務付けられている。特に、W53/W56の無線ネットワークを構築するAPは、レーダを検知するためのハードウェアを有する必要が有るため、製造/運用コストが上昇し、制御が複雑になってしまいうる。また、このようなAPは、無線ネットワークを構築するために一定期間レーダを検知する必要があるため、その期間は無線通信を行うことができず、結果としてユーザの利便性が低下しうる。また、このようなAPは、レーダを検知した場合には使用チャネルを他の無線チャネルに切り替える必要があり、その際に再びレーダ検知が必要になりうる。
【0019】
本実施形態に係るSTA-AP101は、このような制限が存在することを前提とした通信制御を行う。具体的には、STA-AP101は、周囲に存在するAPとSTAモードで接続する際の無線チャネルが、例えば5GHz帯の無線チャネルである場合やW53/W56に含まれる無線チャネルである場合に、例えばAPモードを起動させない又は停止する。また、STA-AP101は、周囲に存在するAPとSTAモードで接続する際の無線チャネルが上述の所定の無線チャネルである場合に、例えばAPモードを2.4GHz帯で起動して、APモードとSTAモードとを時分割で切り替えて起動する。これらの制御により、STAモードで使用する無線チャネルでAPモードを起動することでSTAモードとAPモードとを並行して実行すると、APモードで構築した無線ネットワークに他の装置が接続できない等の問題が生じるのを防ぐことができる。なお、STA-AP101は、周囲に存在するAPとSTAモードで接続する際の無線チャネルが上述の所定の無線チャネルではない場合は、STAモードで使用する無線チャネルと同じ無線チャネルを用いてAPモードを起動/再起動する。これにより、STA-AP101は、APモードで構築した無線ネットワークに他の装置が接続できない等の問題が生じない無線チャネルにおいては、STAモードとAPモードとを並行して実行することができる。
【0020】
(STA-AP101の構成)
図2に、STA-AP101のハードウェア構成例を示す。STA-AP101は、そのハードウェア構成として、例えば、記憶部201、制御部202、機能部203、入力部204、出力部205、通信部206及びアンテナ207を含む。
【0021】
記憶部201は、例えば、ROM、RAMの両方、または、それらのいずれか一方により構成され、後述する各種動作を行うためのプログラムや、無線通信のための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。ここで、ROMは、Read Only Memoryの頭字語であり、RAMは、Random Access Memoryの頭字語である。なお、記憶部201として、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体が用いられてもよい。
【0022】
制御部202は、少なくとも1つのCPU、または、MPUにより構成され、記憶部201に記憶されたプログラムを実行することによりSTA-AP101全体を制御する。ここで、CPUはCentral Processing Unitの頭字語であり、MPUはMicro Processing Unitの頭字語である。なお、制御部202は、記憶部201に記憶されたプログラムとOSとの協働によりSTA-AP101全体を制御するようにしてもよい。ここで、OSはOperating Systemの頭字語である。また、制御部202は、機能部203を制御して、撮像や印刷、投影等の所定の処理を実行する。
【0023】
機能部203は、STA-AP101が所定の処理を実行するためのハードウェアである。例えば、STA-AP101がカメラである場合、機能部203は撮像部であり、撮像処理を行う。また、例えば、STA-AP101がプリンタである場合、機能部203は印刷部であり、印刷処理を行う。また、例えば、STA-AP101がプロジェクタである場合、機能部203は投影部であり、投影処理を行う。機能部203が処理するデータは、記憶部201に記憶されているデータであってもよいし、後述する通信部206を介して他の通信装置と通信したデータであってもよい。なお、本実施形態では、STA-AP101は、プリンタであり、所定の処理として印刷処理を実行するものとするが、スマートフォン等のモバイル装置、PC、デジタルカメラ、スキャナ、複写機等の、任意の機能を有する装置でありうる。
【0024】
入力部204は、ユーザからの各種操作の受付を行う。出力部205は、ユーザに対して各種出力を行う。ここで、出力部205による出力とは、画面上への表示や、スピーカーによる音声出力、振動出力等の少なくとも1つを含む。なお、タッチパネルのように入力部204と出力部205の両方を1つのモジュールで実現するようにしてもよい。
【0025】
通信部206は、IEEE802.11規格シリーズに準拠した無線通信の制御や、IP通信の制御を行う。IPはInternet Protocolの頭字語である。また、通信部206はアンテナ207を制御して、無線通信のための無線信号の送受信を行う。STA-AP101は通信部206を介して、画像データや文書データ、映像データ等のコンテンツを他の通信装置と通信する。なお、本実施形態に係るSTA-AP101の通信部206は、1つのRF制御モジュール(いわゆる無線チップ)及び1つのアンテナを融資、ある時点において1つの無線チャネルでのみ通信を行うことができる。
【0026】
図3に、STA-AP101の機能構成例を示す。STA-AP101は、機能構成として、例えば、無線LAN制御部301、STA制御部302、AP制御部303、印刷制御部304、及び操作制御部305を有する。
【0027】
無線LAN制御部301は、他の無線LANによる通信を行うことができる通信装置との間で、対応する無線LANの信号フォーマットに従って無線信号の送受信を行うための制御を行う。また、無線LAN制御部301は、IEEE802.11規格シリーズに従って、無線LANに係る各種制御を実行する。STA制御部302は、STAモードでの制御を行う制御部であり、自身と異なるAPとして機能する通信装置に接続するための制御を行う。AP制御部303は、APモードでの制御を行う制御部であり、自身をAPとして機能させて無線ネットワークを構成するための制御を行う。
【0028】
印刷制御部304は、無線LAN制御部301を介して他の通信装置から印刷ジョブを受信すると、その印刷ジョブに従って印刷を実行する。なお、本実施形態では、STA-AP101がプリンタである場合について説明しているが、これに限られない。例えば、STA-AP101は、自身がカメラである場合は撮影制御部を有してもよいし、スキャナである場合は読取制御部を有してもよいなど、装置の種類に応じて様々な機能部を有しうる。操作制御部305は、STA-AP101のユーザからの操作を受け付けて管理し、その操作に応じて、無線LAN制御部301、STA制御部302、AP制御部303、及び印刷制御部304の各々へ、適時に適切な信号を伝達する。
【0029】
なお、これらの制御部301~305は、一例において、記憶部201に記憶されたプログラムが制御部202によって実行されることにより、その機能が実現される。このとき、制御部202は、制御プログラムにしたがって、各ハードウェアの制御、および、情報の演算や加工を行うことで各機能を実現する。なお、
図3の機能構成に含まれる一部または全部がハードウェア化されていてもよい。この場合、各制御部301~305に含まれる一部または全部は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成される。
【0030】
(処理の流れ)
続いて、上述のSTA-AP101が実行する処理のいくつかの実施形態について説明する。
【0031】
<実施形態1>
図4は、STA-AP101がSTAモードで無線ネットワーク105に参加する際の処理の流れの例を示している。本処理は、STA-AP101のユーザが、STA-AP101を無線LANのネットワークに参加させるための設定を完了したことに応じて実行される。無線LANのネットワークに参加をさせるための設定は、そのネットワークを識別するためのSSID、セキュリティ方式、パスフレーズなどの設定を含む。また、ユーザが本設定を一度実行した後は、STA-AP101は、STAモードでネットワークに参加していない場合や電源が投入された場合に、本処理を実行する。なお、ここでは、STA104は、2.4GHz帯でのみ通信でき、5GHz帯には対応していないものとする。このため、本実施形態のSTA-AP101は、STAモードで5GHz帯を使用する場合は、APモードを停止させ又は起動させず、STAモードで2.4GHz帯を使用する場合はSTAモードと同じ無線チャネルでAPモードを起動する。
【0032】
なお、
図4に示すフローチャートは、STA-AP101の制御部202が記憶部201に記憶されている制御プログラムを実行し、情報の演算および加工並びに各ハードウェアの制御を実行することにより実現されうる。
【0033】
まず、STA-AP101は、ユーザが入力部204を介して入力した設定に従って、APを探索する(S401)。STA-AP101は、例えば、ユーザが指定したSSID、セキュリティ方式に一致したAPを、IEEE802.11規格シリーズで規定されているProbe Requestを送信することにより探索する。STA-AP101は、APを発見できない間(S402でNO)はAPの探索を継続し、APを発見した場合(S402でYES)は、処理をS403へと進める。なお、ここでは、事前にユーザが無線設定を済ませてからAPを探索する場合について説明したが、これに限られない。例えば、STA-AP101は、周囲のAPを探索した後に、例えば出力部205を介して接続候補のAPをユーザに通知し、その中からユーザが望む接続先のAPの選択を受け付けるような制御を行ってもよい。
【0034】
S403では、STA-AP101は、自身がAPモードを実行している否かを判定する。すなわち、STA-AP101は、AP制御部303によって無線ネットワーク105を構築しているか否かを判定する。STA-AP101は、APモードを実行中であると判定した場合(S403でYES)は、S401で発見したAPが5GHz帯で動作しているか否か、すなわち、5GHzの周波数帯で無線ネットワークを構築しているか否かを判定する(S404)。STA-AP101は、発見したAPが5GHz帯で動作していると判定した場合(S404でYES)、続いて、現在、自身が実行中のAPモードで印刷ジョブ待ちであるか否かを判定する(S405)。これは、STA-AP101が、APモードで構築した無線ネットワーク106に参加している他の通信装置から、現に、印刷ジョブを受信しており印刷中である状態か否かの判定とも言える。すなわち、STA-AP101は、印刷中の場合は印刷ジョブ待ち状態ではないと判定し(S405でNO)、一方で、印刷中ではない場合には印刷ジョブ待ち状態であると判定する(S405でYES)。なお、印刷中でなくても、他の通信装置から受信した印刷ジョブが記憶部201に記憶されている状態、すなわち、印刷待ちのジョブを保持している状態の時も、印刷ジョブ待ち状態ではない(S405でNO)と判定してもよい。例えば、印刷中に用紙無しやインク切れ等のエラーが発生し、印刷を中断している状態も、印刷ジョブ待ち状態ではない(S405でNO)と判定してもよい。STA-AP101は、印刷中であり、印刷ジョブ待ち状態ではないと判定した場合(S405でNO)は、印刷ジョブ待ちの状態となるまで待機する。STA-AP101は、APモードで印刷ジョブ待ちの状態であると判定した場合(S405でYES)は、APモードを停止する(S406)。すなわち、STA-AP101は、その時点において印刷処理を実行していない状態となるまでAPモードを停止せずに、APモードでの通信を維持し、印刷処理を実行していない状態となった後にAPモードを停止する。これにより、APモードで構築したネットワークに参加中の他の通信装置から受信した印刷ジョブに基づいて印刷を実行中である場合にAPモードを停止することを防ぎ、他の通信装置からの印刷要求が正常に終了してからネットワークを解消することができる。
【0035】
なお、STA-AP101は、APモードを停止した際に、APモードでの動作を停止したことをユーザに通知してもよい。これにより、例えばSTA104のユーザは、STA-AP101で印刷を実行するために、STA104を直接STA-AP101と接続させるのではなく、STA-AP101がSTAモードで接続中のAPに接続させる必要があることを知ることができる。また、STA-AP101は、S406でAPモードを停止する前に、停止してもよいか否かについてのユーザの選択を受け付けるようにしてもよい。例えば、STA-AP101は、出力部205に選択画面を表示し、ユーザによってAPモードの停止が許可された場合にのみ処理をS407へ進めるようにしてもよい。
【0036】
その後、STA-AP101は、S401で発見した(5GHz帯で動作中の)APに接続する(S407)。STA-AP101は、STAモードにおいて5GHzで動作中に、さらにAPモードで同時に動作する場合、APモードでも5GHz帯で動作することとなる。STA-AP101がAPモードにおいて5GHz帯で無線ネットワーク106の起動をした場合には、2.4GHz帯でのみ動作する他の通信装置は、無線ネットワーク106に参加することができない。そのため、STA-AP101がAPモードを実行しているにもかかわらず、そのAPモードで構築された無線ネットワークへ通信装置が参加できないという事象が発生してしまい、ユーザが混乱してしまう可能性がある。これに対して、本実施形態に係るSTA-AP101は、STAモードにおいて5GHz帯で動作する場合は、APモードでの動作を停止する。これにより、STA-AP101は、STAモードにおいて5GHz帯で動作すると同時にAPモードにおいても5GHz帯で動作することを抑制することができ、必要に応じてその旨をユーザに通知することで、上述のようなユーザの混乱を防ぐことができる。
【0037】
また、AP機能のみを有するAP102は、2.4GHz帯および5GHz帯の両方のRF制御機能を有することも少なくない。このため、AP102は、5GHz帯でSTA-AP101を収容するネットワーク105を構築しながら、2.4GHz帯で別のネットワーク(不図示)を構築することができる場合がある。このような場合、2.4GHz帯の無線LAN機能を有するSTA104は、AP102を経由してSTA-AP101と通信することができる場合がある。このため、STA-AP101が5GHz帯でAPモードを実行するのではなくAPモードを停止し、その旨をユーザに通知することで、ユーザは、STA104を、AP102を介してSTA-AP101に接続させるための操作を行うことができる。
【0038】
S403に戻り、STA-AP101は、APモードを実行中でないと判定した場合(S403でNO)は、即座にS401で発見したAPに接続する(S407)。STAモードとAPモードとが並行して実行されうる環境でなければ、無線チャネルの制約を考慮する必要がないからである。また、STA-AP101は、S404において、発見したAPの動作周波数が5GHz帯でなかった場合(S404でNO)は、発見したAPの無線チャネルと、自身がAPモードで用いている無線チャネルとが異なっているか否かを判定する(S408)。STA-AP101は、これらの無線チャネルが互いに同じである場合(S408でNO)、そのまま発見したAPに接続する(S407)。一方、STA-AP101は、これらの無線チャネルが互いに異なる場合(S408でYES)は、自身のAPモードで使用する無線チャネルを発見したAPと同じ無線チャネルとなるように変更して、APモードを再起動する(S409)。そして、STA-AP101は、APモードを再起動した後に、S401で発見したAPに接続する(S407)。これにより、同時に1つの無線チャネルでのみSTAモード及びAPモードを実行することができるSTA-AP101において、同時動作を実現することができる。なお、S409では、S405と同様に、APモードで用いる無線チャネルを変更する前に印刷ジョブがある場合には、印刷が終わるのを待機してもよい。これにより、印刷が途中で途切れてしまうことを防ぐことができる。一方で、印刷ジョブが終わる前に無線チャネルを変更した場合には、印刷ジョブを送っている通信装置がすぐに再接続を試みることにより、印刷が途切れずに正常に印刷することができる。また、この場合、STA-AP101は、素早くS401で発見したAPに接続することができる。
【0039】
次に、
図5を用いて、STA-AP101がAPモードを起動する際の処理の流れについて説明する。本処理は、STA-AP101のユーザが、STA-AP101に無線LANのネットワークを構成させるための設定を完了したことに応じて実行される。無線LANのネットワークを構成させるための設定は、そのネットワークを識別するためのSSID、セキュリティ方式、パスフレーズなどの設定を含む。また、ユーザが本設定を一度実行した後は、STA-AP101は、電源が入れられたことに応じて、本処理を実行する。また、STA-AP101は、
図4のフローチャートに従って一度APモードを停止した場合において、STAモードで接続先のAPが変わったり、無線ネットワークから離脱したりした場合に、本処理を再度実行してもよい。なお、
図5に示すフローチャートは、STA-AP101の制御部202が記憶部201に記憶されている制御プログラムを実行し、情報の演算および加工並びに各ハードウェアの制御を実行することにより実現されうる。
【0040】
まず、STA-AP101は、自身がSTAモードで他のAPに接続中であるか否かを判定する(S501)。そして、STA-AP101は、STAモードでAPに接続していると判定した場合(S501でYES)は、次に、そのSTAモードにおける使用周波数帯が5GHz帯であるか否かを判定する(S502)。STA-AP101は、STAモードにおける使用周波数帯が5GHz帯である場合には、APモードが起動できないことをユーザに通知する(S503)。このとき、本処理が、ユーザの明示的な指示によって開始されたわけではない場合は、STA-AP101は、出力部205として有するディスプレイ上にアイコン等を表示させることにより、APモードを起動することができないことを通知してもよい。
【0041】
STA-AP101は、STAモードにおける使用周波数帯が5GHz帯ではなく2.4GHz帯である場合(S503でNO)は、STAモードで使用されている無線チャネルと同じ無線チャネルでAPモードを起動する(S504)。これにより、1つの無線チャネルでのみ無線通信が可能なSTA-AP101が、STAモードとAPモードとで同時に無線通信をすることができる。
【0042】
一方、STA-AP101は、自身がSTAモードでAPに接続していないと判定した場合(S501でNO)は、2.4GHz帯の空きチャネルを探索し(S505)、空いていると判断された無線チャネルを用いてAPモードを起動する(S506)。
【0043】
続いて、
図6を用いて、本実施形態における無線通信システムで実行される処理の流れについて説明する。まず、STA-AP101は、起動したことに応じて、STAモード接続処理を開始する(S601)。この処理は、
図4のフローチャートに従って実行される。STA-AP101は、ユーザが事前に設定した無線設定に従って、AP102を探索するためにProbe Requestを送信する(S602)。このとき、AP102は、電源が入っていない、または、STA-AP101から離れた位置にある等の理由により、Probe Responseを送信せず、STA-AP101は、この時点ではAP102を発見できないものとする。
【0044】
次に、ユーザが入力部204を操作し、STA-AP101に対して、APモードの起動を指示したものとする(S603)。STA-AP101は、APモードの起動の指示を受けると、
図5に従って、APモード起動処理を実行する(S604)。このとき、STA-AP101は、STAモードでAPに接続していないため、2.4GHz帯で空いている無線チャネルを探索する(S605)。ここでは、STA-AP101は、探索の結果、1chが空いていると判定したものとする。STA-AP101は、この判定結果に応じて、1chでAPモードを起動し、無線ネットワーク106を構築する(S606)。
【0045】
ここで、STA104が、STA-AP101に対して印刷を要求するために、接続処理を実行したものとする(S607)。接続処理はIEEE802.11規格に従って行われ、Authentication、Association、鍵交換が行われたうえで接続が確立される。STA104は、無線ネットワーク106に参加すると、STA-AP101に印刷を要求する(S608)。STA-AP101は、印刷要求を受けると、STA104から印刷のためのデータを継続的に受信する。なお、このときの印刷のためのデータの送受信は図示していないが、後述するS611の印刷完了まで続くものとする。
【0046】
ここで、STA-AP101は、印刷要求中に、Probe Requestを送信して、AP102からProbe Responseを受信することにより、AP102を発見できたものとする(S609、S610)。また、このとき、AP102が使用している無線チャネルは、5GHz帯である36chであるものとする。STA-AP101は、AP102を発見したことに応じてAP102にSTAモードで接続することになるが、この時点では、APモードで印刷中であるため、印刷が完了するまで、接続処理を行わない。
【0047】
その後、STA-AP101は、APモードでの印刷が完了すると、STA104に印刷完了通知を送信する(S611)。そして、STA-AP101は、印刷完了通知を送信すると、次に無線ネットワーク106に参加しているSTA104との間の接続を切断する切断処理を実行する(S612)。例えば、STA-AP101は、IEEE802.11規格に従って、Deauthenticationメッセージを送信することにより、確立されている接続を切断する。そして、STA-AP101は、切断処理を完了すると、APモードでの動作を停止する(S613)。そして、STA-AP101は、APモードでの動作を停止した後に、AP102との間での接続を確立するための接続処理を実行する(S614)。STA-AP101は、これ以降、無線ネットワーク105に参加している通信装置(例えばSTA103)からの印刷要求等を受け付けることができる。
【0048】
以上のようにして、STA-AP101は、STAモードとAPモードの同時動作中には、5GHz帯の無線チャネルを使用せずに、2.4GHz帯の同一の無線チャネルを使用するように制御することができる。また、STAモードで単独動作中においては5GHz帯の動作も可能となる。
【0049】
なお、上述の説明では、2.4GHz帯でのみ動作する通信装置(例えばSTA104)にAPモードで対応するために、STA-AP101は、STAモードで接続する対象となるAPが5GHz帯で動作する場合に、APモードを停止するようにした。しかしながら、STA-AP101は、もともとAPモードにおいて5GHz帯でSTA104と通信している場合もありうる。この場合、STA-AP101は、S404において、発見したAPが2.4GHz帯で動作しているか否かを判定してもよい。すなわち、STA-AP101は、現在動作中のAPモードで使用している周波数帯と、STAモードでの接続対象のAPで使用している周波数帯とが互いに異なる場合に、APモードを停止するようにしてもよい。なお、ここでの周波数帯とは、2.4GHz帯、5GHz帯等の、複数の無線チャネルを含んだ1つの周波数帯を指し、無線チャネルとは、それらの周波数帯に含まれる1つ以上の部分帯域のことを指す。すなわち、STA-AP101は、S404で使用周波数帯が一致しているか否かを判定し、一致している場合(S404でNO)は、その周波数帯の中で使用無線チャネルが一致しているかを判定する(S408)こととなる。また、STA-AP101は、APモードで接続しているSTA104が、発見したAPが使用している周波数帯に対応している場合は、APモードを停止しなくてもよい。このため、STA-AP101は、APモードで接続しているSTA104が対応する周波数帯を確認するための通信を行ってもよい。
【0050】
また、STA104が5GHz帯のみ使用できる場合等、APモードで動作する場合に5GHz帯を使用すべき状態である場合は、STA-AP101は、STAモードでの使用周波数帯が2.4GHz帯である場合に、APモードを起動することができない。したがって、この場合、STA-AP101は、S502において、STAモードの使用周波数帯が2.4GHz帯である場合に、APモードを起動することができないと判定しうる。また、この場合、STA-AP101は、S505では、5GHz帯において空きチャネルを探索しうる。
【0051】
<実施形態2>
実施形態1では、5GHz帯でSTAモードとAPモードとを並行して実行することを制限したが、本実施形態では、レーダ検知をする必要があるW53/W56の無線チャネルを使ってSTAモードとAPモードとを並行して実行することを制限する。STA-AP101は、W53/W56の無線チャネルでAPモードを起動する場合、気象レーダなどに対して干渉しないことを確認するために、その起動前に一定期間にわたってレーダ検知処理を実行する必要があり、その期間は無線通信を行うことができない。また、STA-AP101は、一定期間レーダの電波を検知せずに無線ネットワーク106を構築したとしても、その後も継続的にレーダ検知処理を実行する必要がある。また、STA-AP101は、レーダの電波を検知した場合は、その無線チャネルでの無線通信を一定期間停止し、他の無線チャネルに切り替える必要がある。さらに、STA-AP101は、この切り替えの際に再びレーダ検知をする必要がある場合もあるため、通信できない期間が長期間にわたって、ユーザの利便性が落ちてしまう場合がある。例えば、STA-AP101は、STAモードで印刷中にも関わらず、APモードでレーダの電波を検知したために他の無線チャネルへ切り替えを行い、さらにその切り替え先の無線チャネルで一定期間レーダ検知処理を実行しなければならないことがあり得る。この場合、STA-AP101は、STAモードでの印刷中のジョブが途中で受信できなくなってしまうため、印刷が正常に終了できないことがありうる。
【0052】
このため、本実施形態では、STA-AP101は、
図4のS404において、発見したAPの使用周波数帯が5GHz帯であるか否かを判断するのではなく、発見したAPが使用している無線チャネルがW53/W56に含まれているか否かを判断する。また、STA-AP101は、
図5のS502において、STAモードでの使用周波数帯が5GHz帯であるか否かを判断するのではなく、使用している無線チャネルがW53/W56に含まれているか否かを確認する。そして、STA-AP101は、STAモードで使用している無線チャネルがW53/W56に含まれている場合には、APモードを起動できないと判定する。また、STA-AP101は、STAモードで使用している無線チャネルがW53/W56に含まれていない場合には、STAモードで使用している無線チャネルと同じ無線チャネルでAPモードを起動する。
【0053】
さらに、STA-AP101は、S505及びS506において、2.4GHz帯の空いている無線チャネルでAPモードを起動することで、様々な通信装置と接続できる可能性を高めることができる。すなわち、STA-AP101は、STAモードを起動していない場合には、5GHz帯でAPモードを起動するのではなく2.4GHz帯でAPモードを起動する。これにより、より多くの通信装置がAPモードのSTA-AP101と接続できるようになる。
【0054】
<実施形態3>
ハードウェアの制約により一度に1つの無線チャネルでしか通信できないものの、時分割で使用チャネルを動的に切り替えることによって、それぞれ異なる無線チャネルを用いる複数の無線ネットワークに並行して参加することができる通信装置が存在する。このような通信装置は、STAモードで1chの無線ネットワークに参加している場合でも、APモードで、6ch等の1chと異なる無線ネットワークに参加することができる。このとき、通信装置は、IEEE802.11規格で定められたPower Saveに入ることで、Beaconが送信される前後以外のタイミングではパケットを受信できないことを、STAモードで参加している無線ネットワークのAPに通知しておく。そして、通信装置は、Beaconが送信される前後以外のタイミングではAPモードの無線チャネルで動作する。そして、通信装置は、STAモードで参加中の無線ネットワークでBeaconが送信されるタイミングで、APモードで参加中の無線ネットワークの無線チャネルにおいてRTS/CTSを送信し、他の通信装置がパケットを送信することを抑制する。そして、通信装置は、STAモードで参加中の無線ネットワークでBeaconが送信されるタイミングで、その無線ネットワークの無線チャネルに切り替えてその無線ネットワーク内の通信装置と通信をすることができる。
【0055】
本実施形態では、STA-AP101は、このようにして、複数の無線チャネルを動的に切り替えることによって時分割的に(擬似的に)並行して複数の無線チャネルで通信できるものとする。そして、STA-AP101は、STAモードとAPモードとを並行して実行するときに、STAモード起動時に発見したAPの使用周波数帯が5GHz帯の場合にはAPモードは2.4GHz帯で動作させる。
【0056】
以下、本実施形態において実施形態1と異なる点について説明する。なお、後述する
図7~
図9に示すフローチャートは、STA-AP101の制御部202が記憶部201に記憶されている制御プログラムを実行し、情報の演算および加工並びに各ハードウェアの制御を実行することにより実現されうる。
【0057】
図7は、STA-AP101がSTAモードで無線ネットワーク105に参加する際の処理の流れの例を示している。S701~S704、S707、及びS708は、
図4のS401~S404、S408及びS409とそれぞれ同様であるため、説明を省略する。STA-AP101は、発見したAPの使用周波数帯が5GHz帯である場合、APモードで2.4GHz帯を用いながらそのAPに接続するために、自身の動作モードを動的チャネル変更モードに設定する(S705)。STA-AP101は、動的チャネル変更モードにおいては、時分割で、動的に使用する無線チャネルを変更することができる。STA-AP101は、動的チャネル変更モードへの設定を行うと、S702で発見したAPに5GHz帯で接続する(S706)。
【0058】
図8は、STA-AP101がAPモードを起動する際の処理の流れを示している。S801、S805、及びS806は、
図5のS501、S505、及びS506とそれぞれ同様であるため、説明を省略する。STA-AP101は、S801で、STAモードにおいてAPに接続中であると判定すると、STAモードで使用している周波数帯が2.4GHz帯であるか否かを判定する(S802)。STA-AP101は、STAモードで使用している周波数帯が2.4GHz帯であると判定した場合(S802でYES)は、STAモードで使用されている無線チャネルと同じ無線チャネルでAPモードを起動する(S803)。一方、STA-AP101は、STAモードで使用している周波数帯が5GHz帯であると判定した場合(S802でNO)は、自身の動作モードを動的チャネル変更モードに設定する(S804)。そして、STA-AP101は、S805及びS806において、2.4GHz帯の中で空いている無線チャネルを探索して、空きチャネルでAPモードを起動する。
【0059】
以上により、STA-AP101は、STAモードでの使用周波数帯が5GHz帯であっても、APモードはより多くの通信装置が対応している2.4GHz帯で動作させることにより、他の通信装置との接続性を上げることができる。また、STA-AP101は、STAモードの使用周波数帯が2.4GHz帯である場合には、APモードはSTAモードの使用無線チャネルと同じ無線チャネルで動作させる。これにより、時分割で動的に無線チャネルが切り替えられる必要がなくなるため、無線通信を安定化させることができる。
【0060】
次に、
図9を用いて、印刷処理の流れについて説明する。本処理は、STA-AP101が、APモード又はSTAモードのいずれかで他の通信装置から印刷ジョブを受信したことに応じて実行される。STA-AP101は、印刷ジョブを受信すると、まず、自身の動作モードが動的チャネル変更モードである否かを判定する(S901)。そして、STA-AP101は、自身の動作モードが動的チャネル変更モードでないと判定した場合(S901でNO)は、受信した印刷ジョブに基づいて印刷処理を開始する(S902)。一方、STA-AP101は、自身の動作モードが動的チャネル変更モードであると判定した場合(S901でYES)は、安定して印刷を実行できるようにするために、印刷ジョブを受信していない方のモードの無線通信を一時的に停止する(S903)。例えば、STA-AP101は、無線ネットワーク105に参加している通信装置から印刷ジョブを受信した場合にはAPモードを一時的に停止する。すなわち、STA-AP101は、無線ネットワーク106での通信を停止する。一方で、STA-AP101は、無線ネットワーク106に参加している通信装置から印刷ジョブを受信した場合には、STAモードを一時的に停止し、無線ネットワーク105から離脱する。STA-AP101は、印刷ジョブを受信していない方の無線通信を停止すると、印刷ジョブを受信した方の無線ネットワークに参加している通信装置からの印刷処理を実行する(S904)。そして、STA-AP101は、印刷を完了すると、S903で停止した方のモードでの無線通信を再開する(S905)。すなわち、STA-AP101は、S903においてAPモードを停止していた場合には無線ネットワーク106を再び構築し、S903においてSTAモードを停止していた場合には無線ネットワーク105に再び参加する。
【0061】
続いて、
図10及び
図11を用いて、本実施形態に係る無線通信システムにおける処理の流れについて説明する。
図10は、AP102が5GHz帯を用いて動作している場合の処理の流れの例を示しており、
図11は、AP102が2.4GHz帯を用いて動作している場合の処理の流れの例を示している。
【0062】
図10において、S1001~S1007は、
図6のS601~S607と同様であるため、説明を省略する。STA-AP101は、S1007のあとにAP102を発見したものとする(S1008、S1009)。この場合、STA-AP101は、
図7に従って、APモードを起動中であり、発見したAPが5GHz帯を用いて動作しているため、自身の動作モードを動的チャネル変更モードに設定する(S1010)。そして、STA-AP101は、AP102に接続して、無線ネットワーク105に参加する(S1011)。ここで、STA-AP101は、無線ネットワーク106に参加しているSTA104から印刷要求を受けたとする(S1012)。すると、STA-AP101は、
図9に従って、自身の動作モードが動的チャネル変更モードであるため、印刷要求を受信していない方の無線ネットワーク105から、一旦離脱する(S1013)。そして、STA-AP101は、印刷が完了すると印刷完了通知をSTA104に送信し(S1014)、再び無線ネットワーク105に参加する(S1015)。
【0063】
次に
図11について説明する。
図11において、S1101~1109までは
図10のS1001~S1009と同様であるため、説明を省略する。STA-AP101は、APモードを起動中であり、AP102が2.4GHz帯の6chを使用しているため、
図7に従って、6chでAPモードを再起動する(S1110)。そして、STA-AP101は、6chでAP102に接続する(S1111)と共に、さらに、使用無線チャネルを6chに切り替えた無線ネットワーク106において、STA104と再接続する(S1112)。その後、STA-AP101は、STA104から印刷要求を受ける(S1113)と、この場合の自身の動作モードが動的チャネル変更モードではないため、
図9に従って、STAモードを停止することなく印刷を実行する。そして、STA-AP101は、印刷処理を完了すると、印刷完了通知をSTA104に通知する(S1114)。同様に、STA-AP101は、STA103から(例えばAP102を通じて)印刷要求を受けても(S1115)、
図9に従って、APモードを停止することなく印刷を実行し、印刷を完了すると印刷完了通知をSTA103に通知する(S1115)。
【0064】
以上のように、本実施形態では、STA-AP101は、STAモードの使用周波数帯が2.4GHz帯である場合には、APモードはSTAモードと同一の無線チャネルを用いて通信を安定させ、多くの通信装置が接続できる状態とすることができる。一方で、STA-AP101は、STAモードの使用周波数帯が5GHz帯である場合であっても、APモードは2.4GHz帯で動作させることで、多くの通信装置が接続できる状態とすることができる。さらに、STA-AP101は、STAモードとAPモードとが異なるチャネルで動作する場合、アプリケーション通信が開始された際に、その通信で用いられる方のモードの無線通信を有効にして他の無線通信を停止することで、通信を安定化することができる。
【0065】
<実施形態4>
実施形態3では、5GHz帯でのSTAモードとAPモードとの同時動作を制限したが、本実施形態では、レーダ検知をする必要があるW53/W56の無線チャネルでのSTAモードとAPモードとの同時動作を制限する。
【0066】
本実施形態では、STA-AP101は、
図7のS704において、発見したAPの使用周波数帯が5GHz帯であるか否かを判断するのではなく、発見したAPが使用している無線チャネルがW53/W56に含まれているか否かを判断する。また、STA-AP101は、
図8のS802において、STAモードでの使用周波数帯が5GHz帯であるか否かを判断するのではなく、使用している無線チャネルがW53/W56に含まれているか否かを確認する。そして、STA-AP101は、STAモードで使用している無線チャネルがW53/W56に含まれている場合には、APモードでは、W53/W56に含まれない無線チャネルを使用するようにする。これにより、STA-AP101は、レーダ検知処理を実行する必要がなくなるため、処理負荷を軽減することができる。また、STA-AP101は、レーダの電波を検知したことに応じて接続を切断するという事態が生じるのを防ぐことができる。また、STA-AP101は、レーダ検知機能を有していなくても、STAモードとAPモードとを同時動作させることが可能となる。また、STA-AP101は、STAモードにおいてW53/W56に含まれる無線チャネルを使用していない場合には、APモードで使用する無線チャネルをSTAモードと同一にする。これにより、1つの時点において1つの無線チャネルでのみ無線通信できるSTA-AP101が、STAモードとAPモードとを同時に動作させることができる。
【0067】
さらに、STA-AP101は、S805及びS806において、2.4GHz帯の空いている無線チャネルでAPモードを起動することで、様々な通信装置と接続できる可能性を高めることができる。すなわち、STA-AP101は、STAモードを起動していない場合には、5GHz帯でAPモードを起動するのではなく2.4GHz帯でAPモードを起動する。これにより、より多くの通信装置がAPモードのSTA-AP101と接続できるようになる。
【0068】
<その他の実施形態>
実施形態1及び3において、STA-AP101は、接続先のAPの候補として2.4GHz帯を用いるAPと5GHz帯を用いるAPとを発見した場合には、2.4GHz帯を用いるAPを優先的に接続先として選択するようにしてもよい。これにより、STA-AP101は、APモードを停止する必要がなくなったり、自身の動作モードを動的チャネル変更モードに設定したりする必要がなくなる。このため、STA-AP101は、APモードが使用できなくなることを防ぎ、ユーザの利便性を向上させることができる。また、STA-AP101は、2.4GHz帯を用いるAPと5GHz帯を用いるAPの両方が見つかった場合、5GHz帯を用いるAPの方が高速に通信できる場合のみ、5GHz帯を用いるAPを、接続先のAPとして優先的に選択するようにしてもよい。例えば、2.4GHz帯を用いる第1のAPがIEEE802.11nの通信規格に対応し、5GHz帯を用いる第2のAPがIEEE802.11acの通信規格に対応している場合について検討する。この場合、STA-AP101は、第2のAPの方が高速に通信することができるため、接続先のAPとして第2のAPを選択しうる。一方で、2.4GHz帯を用いる第1のAPと5GHz帯を用いる第2のAPが共にIEEE802.11nの通信規格に対応し、同じ通信レートで通信できることが見込まれる場合について検討する。この場合、STA-AP101は、第1のAPと第2のAPとが共に同程度の速度でしか通信ができないため、APモードを起動した場合でも制限なく通信することができる2.4GHz帯のAPを、接続先のAPとして選択しうる。
【0069】
STA-AP101は、S401及びS701でAPを探索する処理を継続すると説明したが、APモードで印刷中の場合は、APを発見した場合でも印刷が完了するまでは接続処理をしない場合があるため、印刷中はこの探索処理を停止してもよい。STA-AP101は、印刷中のAP探索処理を停止することにより、印刷を高速に完了させることができ、また、探索処理に関する消電力や無線帯域の占有を低減することもできる。
【0070】
実施形態3では、STA-AP101が、APモードを起動する場合に常に2.4GHz帯を用いるものとして説明した。しかしながら、STA-AP101は、無線ネットワーク106に参加する通信装置が5GHz帯を使用できることが予めわかっている場合で、STAモードの使用周波数帯が5GHz帯の場合には、APモードを5GHz帯で起動してもよい。例えば、STA-AP101のUI上などで、APモードの使用周波数帯として5GHz帯を許容できる設定項目を用意し、ユーザが意図的に5GHz帯を選択できるようにしてもよい。ただし、この場合でも、無線に関する知識が豊富でないユーザのために、STA-AP101のデフォルトの設定として、APモードは常に2.4GHz帯を使用するようにしておくこともできる。
【0071】
また、STA-AP101は、APモードをWi-Fi DirectのGroup Owner Negotiation(以下、「Go Nego」と呼ぶ。)を経て起動することがありうる。この場合、STA-AP101は、APモードを起動する前に、無線ネットワーク106に参加する通信装置が通信に使用可能な無線チャネルを知ることができる。なお、ここでのAPモードは、Wi-Fi Direct規格でGroup Ownerとして定められた役割に対応し、無線ネットワーク106に参加するSTAとしての通信装置は、Wi-Fi Direct規格におけるClientに対応する。このような場合、STA-AP101は、STAモードで5GHz帯の特定の無線チャネルを使用し、かつ、Clientがその5GHz帯の無線チャネルをサポートしているような場合は、APモードを5GHz帯で起動しうる。これにより、STA-AP101は、動的に無線チャネルを切り替える必要がなくなり、かつ、APモードで通信を行いたい相手装置と通信することができる。ただし、STA-AP101は、GO Negoを経てAPモードを起動する場合であっても、GO Negoを実行した通信装置以外ともAPモードで構築した無線ネットワーク106において通信する可能性がある場合が考えられる。このような場合には、STA-AP101は、2.4GHz帯でAPモードを起動するようにしてもよい。また、STA-AP101は、GO Negoを実行した通信装置以外とも通信できるか否かを、STA-AP101のユーザによる事前操作を受け付けることによって、設定してもよい。例えば、STA-AP101は、自身によるダイレクト通信を占有できるモードと、複数の通信装置からダイレクトモードで通信できるモードとを用意しておき、ユーザがSTA-AP101のUIからそれを切り替えられるように構成されてもよい。
【0072】
また、STA-AP101は、無線ネットワーク106に参加する通信装置が使用可能な無線チャネルを事前に知るために、Wi-Fi Direct規格におけるInvitationなど他の方法を用いてもよい。
【0073】
なお、上述の各実施形態では2.4GHz帯域と5GHz帯域を例に説明したが、これらの周波数帯域に限定されるものではない。一方の周波数帯域に対して他方の周波数帯域の方が、使用するにあたっての制約が多い場合に、それらの周波数帯域で並行して無線通信可能な装置に上述の各実施形態を適用可能である。
【0074】
また、実施形態2及び4では、STAモードにおける使用無線チャネルが、W53/W56に含まれる無線チャネルなどのレーダ検知が必要な無線チャネルである場合にSTAモードとAPモードとを並行して実行することを制限したが、これに限られない。すなわち、STAモードにおける使用無線チャネルをAPモードで使用する際に所定の機能を有することが条件として課される無線チャネルであれば、W53/W56に含まれない無線チャネルであっても、同様の制限がなされてもよい。
【0075】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0076】
201:記憶部、202:制御部、206:通信部、301:無線LAN制御部、302:STA制御部、303:AP制御部、304:印刷制御部、305:操作制御部