(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】回路板のクリーニングシステム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240628BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20240628BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20240628BHJP
B01J 41/04 20170101ALI20240628BHJP
B01J 41/05 20170101ALI20240628BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H01L21/304 647B
H01L21/304 648F
H01L21/304 642A
H01L21/304 642E
C11D7/26
C11D17/08
B01J41/04
B01J41/05
B08B3/08 Z
(21)【出願番号】P 2022196961
(22)【出願日】2022-12-09
【審査請求日】2022-12-09
(32)【優先日】2022-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】廖 徳超
(72)【発明者】
【氏名】鄭 維昇
(72)【発明者】
【氏名】呉 朝棟
【審査官】金田 孝之
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-161882(JP,A)
【文献】特開平07-331287(JP,A)
【文献】国際公開第2020/116534(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188296(WO,A1)
【文献】米国特許第05932021(US,A)
【文献】中国特許出願公開第104845768(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 3/08
B01J 41/04
B01J 41/05
C11D 7/26
C11D 17/08
H05K 3/10 - 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄プロセスにおいて回路板が洗浄液に浸されるための洗浄タンクと、前記洗浄タンクの一つの側に設置されたイオン交換樹脂カラムと、前記洗浄タンクと前記イオン交換樹脂カラムとの間に設置されたポンプユニットと、
前記イオン交換樹脂カラムの出口端に設置されたpHモニタリングユニットと、前記ポンプユニットに設置された流速制御ユニットと、を備える回路板のクリーニングシステムであって、
前記洗浄タンクは、液体水及び炭化水素
系界面活性剤を含む洗浄液を収容し、
前記イオン交換樹脂カラムに充填されたイオン交換樹脂は、塩基性イオン交換樹脂であり、
前記ポンプユニットは、第1の流体通路を介して前記洗浄液を前記イオン交換樹脂カラムに送り込むように設置され、
前記洗浄液が前記イオン交換樹脂カラムを通過する時に、前記洗浄液のpHが8~11に向上されるように、前記塩基性イオン交換樹脂による前記炭化水素系界面活性剤の脱プロトン化を行い、
前記洗浄液が前記イオン交換樹脂カラムを通過した後に、脱プロトン化の前記炭化水素系界面活性剤で前記回路板の表面に残留した酸性物を除去するように、前記回路板のクリーニングシステムで前記洗浄液が第2の流体通路を介して前記洗浄タンクに回流され
、
前記pHモニタリングユニットは、前記イオン交換樹脂カラムを通過した、脱プロトン化の前記洗浄液の前記pHをモニターするように設置され、
前記流速制御ユニットは、前記pHモニタリングユニットでモニターする前記pHに基づいて、前記洗浄液の前記第1の流体通路での流速を制御するように、前記ポンプユニットを用いて前記洗浄液の前記イオン交換樹脂カラムでの留まる時間を調整することを特徴とする、回路板のクリーニングシステム。
【請求項2】
前記洗浄液において、前記炭化水素系界面活性剤は非イオン性界面活性剤に属し、前記炭化水素系界面活性剤の化学構造式は、R
1-O-[(CH
2CH(R
2)-O)
x(CH
2CH
2O)
y]
z-Hであり、xは独立に0又は約1~約5の実数であり、(CH
2CH(R
2)-O)が少なくとも一回に現る場合、xが0を超え、yは独立に0又は約1~約11の実数であり、(CH
2CH
2O)が少なくとも一回に現る場合、yが0を超え、zが1~50の整数であり、R
1がC1~C12分岐または直鎖アルキル基であり、R
2が独立にCH
3又はCH
2CH
3である、請求項1に記載の回路板のクリーニングシステム。
【請求項3】
前記洗浄液において、前記炭化水素系界面活性剤はジエチレングリコールブチルエーテルであり、前記炭化水素系界面活性剤の化学構造式は、HO(CH
2)
2O(CH
2)
2O(CH
2)
3CH
3である、請求項1に記載の回路板のクリーニングシステム。
【請求項4】
前記洗浄液において、前記炭化水素系界面活性剤の含有量は80%(V/V)~95%(V/V)であり、前記液体水の含有量は5%(V/V)~20%(V/V)である、請求項1に記載の回路板のクリーニングシステム。
【請求項5】
前記イオン交換樹脂カラムに充填された前記イオン交換樹脂は、OH型強塩基性陰イオン交換樹脂である、請求項1に記載の回路板のクリーニングシステム。
【請求項6】
前記洗浄タンクに収容された前記洗浄液を振動するための、前記洗浄タンクに設置された超音波振動ユニットを更に備える、請求項1に記載の回路板のクリーニングシステム。
【請求項7】
前記回路板の前記表面のC=O官能基の吸収ピークを検出するための、検出ユニットを更に備え、
前記検出ユニットで検出した前記回路板の前記表面の前記C=O官能基の前記吸収ピークが完全に消えるか、若しくはほとんど消える時に、前記回路板のクリーニングシステムの前記回路板の前記表面に残留した前記酸性物の洗浄プロセスが完成すると判定する、請求項1に記載の回路板のクリーニングシステム。
【請求項8】
前記洗浄タンクと前記イオン交換樹脂カラムとの間に連接する前記第1の流体通路に設置された、ろ過ユニットを更に備え、
前記ろ過ユニットは、前記洗浄液に含まれた不純物を除去するように、前記洗浄液をろ過する、請求項1に記載の回路板のクリーニングシステム。
【請求項9】
前記イオン交換樹脂カラムの樹脂充填量が120cm
3~180cm
3であるカラムにおいて、50g~150gの前記イオン交換樹脂が充填され、前記洗浄液の前記イオン交換樹脂カラムを通過した流速は、0.5cm
3/min~3cm
3/minである、請求項1に記載の回路板のクリーニングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングシステムに関し、特に、回路板の製造過程において回路板に残留した酸性物を洗浄するための回路板のクリーニングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、はんだ付けプロセス後のプリント回路板(printed circuit board,PCB)の表面にさまざまなフラックス残留物やその他の種類の汚染物(例えば、酸性物)が存在するため、回路板表面のクリーニングは、前記回路板の電子製品の信頼性にとって重要の役割を果たせる。
【0003】
従来の技術において、アミン化合物及び界面活性剤は、回路板に残留した酸性物を洗浄することとして用いられるが、洗浄工程を行った後でも、アミン化合物が回路板の表面に残留することが容易であるため、その後のプロセスでは、積層密着の強度が不足である問題を起こす。
【0004】
なお、アミン化合物を用いて回路板の異なる処理層を処理する際に、異なる配合を用いる必要である。でなければ、洗浄工程が完全でないか、若しくは、処理層がエッチングされることなどの異常状態が起こすことがある。即ち、従来の技術において、単一の洗浄の組成は、全面的に回路板の異なる処理層に応用されることができない。
【0005】
そこで、本発明者は、上述した問題が改善可能であることに鑑みて、鋭意研究を行い、学理を併せて運用した結果、設計が合理的で且つ前記問題を効果的に改善することができる方法として本発明に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、回路板に残留した酸性物を洗浄するための回路板のクリーニングシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、洗浄プロセスにおいて回路板が洗浄液に浸されるための洗浄タンクと、前記洗浄タンクの一つの側に設置されたイオン交換樹脂カラムと、前記洗浄タンクと前記イオン交換樹脂カラムとの間に設置されたポンプユニットと、を備える回路板のクリーニングシステムを提供する。前記洗浄タンクは、液体水及び炭化水素界面活性剤を含む洗浄液を収容する。前記イオン交換樹脂カラムに充填されたイオン交換樹脂は、塩基性イオン交換樹脂である。前記ポンプユニットは、第1の流体通路を介して前記洗浄液を前記イオン交換樹脂カラムに送り込むように設置される。前記洗浄液が前記イオン交換樹脂カラムを通過する時に、前記洗浄液のpHが8~11に向上されるように、前記塩基性イオン交換樹脂による前記炭化水素系界面活性剤の脱プロトン化を行う。前記洗浄液が前記イオン交換樹脂カラムを通過した後に、脱プロトン化の前記炭化水素系界面活性剤で前記回路板の表面に残留した酸性物を除去するように、前記回路板のクリーニングシステムで前記洗浄液が第2の流体通路を介して洗浄タンクに回流される。
【0008】
好ましくは、前記洗浄液において、前記炭化水素系界面活性剤は非イオン性界面活性剤に属し、前記炭化水素系界面活性剤の化学構造式は、R1-O-[(CH2CH(R2)-O)x(CH2CH2O)y]z-Hである。xは独立に0又は約1~約5の実数であり、(CH2CH(R2)-O)が少なくとも一回に現る場合、xが0を超え、yは独立に0又は約1~約11の実数であり、(CH2CH2O)が少なくとも一回に現る場合、yが0を超え、zが1~50の整数であり、R1がC1~C12分岐または直鎖アルキル基であり、R2が独立にCH3又はCH2CH3である。
【0009】
好ましくは、前記洗浄液において、前記炭化水素系界面活性剤はジエチレングリコールブチルエーテルであり、炭化水素系界面活性剤の化学構造式は、HO(CH2)2O(CH2)2O(CH2)3CH3である。
【0010】
好ましくは、前記洗浄液において、前記炭化水素系界面活性剤の含有量は80%(V/V)~95%(V/V)であり、前記液体水の含有量は5%(V/V)~20%(V/V)である。
【0011】
好ましくは、前記イオン交換樹脂カラムに充填されたイオン交換樹脂は、OH型強塩基性陰イオン交換樹脂である。
【0012】
好ましくは、前記回路板のクリーニングシステムは、前記イオン交換樹脂カラムの出口端に設置されたpHモニタリングユニットと、前記ポンプユニットに設置された流速制御ユニットと、を更に備える。前記pHモニタリングユニットは、前記イオン交換樹脂カラムを通過した、脱プロトン化の前記洗浄液の前記pHをモニターするように設置され、前記流速制御ユニットは、前記pHモニタリングユニットでモニターする前記pHに基づいて、前記洗浄液の前記第1の流体通路での流速を制御するように、前記ポンプユニットを用いて前記洗浄液の前記イオン交換樹脂カラムでの留まる時間を調整する。
【0013】
好ましくは、前記回路板のクリーニングシステムは、前記洗浄タンクに収容された前記洗浄液を振動するための、前記洗浄タンクに設置された超音波振動ユニットを更に備える。
【0014】
好ましくは、前記回路板のクリーニングシステムは、前記回路板の前記表面のC=O官能基の吸収ピークを検出するための、検出ユニットを更に備え、前記検出ユニットで検出した前記回路板の前記表面の前記C=O官能基の前記吸収ピークが完全に消えるか、若しくはほとんど消える時に、前記回路板のクリーニングシステムの前記回路板の前記表面に残留した前記酸性物の洗浄作業が完成すると判定する。
【0015】
好ましくは、前記回路板のクリーニングシステムは、前記洗浄タンクと前記イオン交換樹脂カラムとの間に連接する前記第1の流体通路に設置された、ろ過ユニットを更に備え、前記ろ過ユニットは、前記洗浄液に含まれた不純物を除去するように、前記洗浄液をろ過する。
【0016】
好ましくは、前記イオン交換樹脂カラムの樹脂充填量が120cm3~180cm3であるカラムにおいて、50g~150gの前記イオン交換樹脂が充填され、前記洗浄液の前記イオン交換樹脂カラムを通過した流速は、0.5cm3/min~3cm3/minである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る回路板のクリーニングシステムは、塩基性イオン交換樹脂、炭化水素系界面活性剤、液体水を主に用いた新規なシステムである。本発明に係る回路板のクリーニングシステムは、塩基性イオン交換樹脂で炭化水素系界面活性剤に対して脱プロトン化することで、洗浄力を調整して、回路板の表面に残留した酸性物を洗浄することができる。本発明に係る回路板のクリーニングシステムの洗浄液においてアミン化合物を用いていないため、洗浄の過程でアミン化合物が回路板の表面に残留することでその後のプロセスでは積層密着の強度が不足である問題を起こさない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る回路板のクリーニングシステムの模式図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係る回路板のクリーニングシステムの模式図である。
【
図3】本発明の第三実施形態に係る回路板のクリーニングシステムの模式図である。
【
図4】本発明の第四実施形態に係る回路板のクリーニングシステムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0020】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明の実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。
【0021】
理解すべきことは、本明細書では、「第1」、「第2」、「第3」といった用語を用いて各種の素子又は信号を叙述することがあるが、これらの素子又は信号は、これらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は主に、1つの素子ともう1つの素子、又は1つの信号ともう1つの信号を区別するためのものである。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことがある。
【0022】
[第一実施形態]
図1に示すように、本発明に係る第一実施形態において、洗浄タンク1と、イオン交換樹脂カラム2と、ポンプユニット3と、ろ過ユニット4と、第1の流体通路5と、第2の流体通路6とを備える、回路板のクリーニングシステム100Aを提供する。
【0023】
前記洗浄タンク1は、洗浄液Lを収容するように配置されると共に、洗浄プロセスにおいて回路板Bが前記洗浄液Lに浸かって、回路板Bに対する洗浄を行う。
【0024】
前記洗浄液Lは液体水及び界面活性剤を含む。液体水は超純水(高純度の水であり、即ち、水素イオン及び水酸化物イオン以外に、他の電解質がほとんど存在しない水である)であることが好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0025】
また、前記界面活性劑は、化学構造の一端に炭化水素基(アルキル基)を有し、他端に水酸基を有する、炭化水素系界面活性剤であることが好ましい。
【0026】
本発明に係る一つの実施形態において、前記炭化水素系界面活性剤が非イオン性界面活性剤に属すると共に、その化学構造式は下式(I)で示す。
【0027】
R1-O-[(CH2CH(R2)-O)x(CH2CH2O)y]z-H (I)
【0028】
xは独立に0又は約1~約5の実数であり、(CH2CH(R2)が少なくとも一回に現る場合、xが0を超える。yは独立に0又は約1~約11の実数であり、(CH2CH2O)が少なくとも一回に現る場合、yが0を超え、zが1~50の整数であり、R1がC1~C12分岐または直鎖アルキル基であり、R2が独立にCH3又はCH2CH3である。
【0029】
理解すべきことは、「x」は、プロポキシル化及び/又はブトキシル化(R2の種類による)の平均程度を示す。「y」は、エトキシル化の平均程度を示す。このように、x及びyは整数でなくでもよいため、ここで「約」との用語で説明する。xとyとを併せてオリゴマー分布におけるアルコキシル化の程度を確定する。
【0030】
理解すべきことは、x及びyの順は、ブロック又はランダムであってよく、なかでも、xは第1のブロック及び/又は最後のブロックである。好ましくは、PO又はBO部分、及びEO部分は、ブロックで供給する結果である。同様に、「z」は、当該式の反復オペランドの数を示すために、整数である。
【0031】
本発明に係る実施形態において、前記界面活性剤はジエチレングリコールブチルエーテルであり、ジエチレングリコールブチルエーテルの化学式は、HO(CH2)2O(CH2)2O(CH2)3CH3である。また、ジエチレングリコールブチルエーテルは、前記式(I)の一つの具体例であるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0032】
更に説明すると、前記洗浄液Lにおいて、前記界面活性剤(特に、炭化水素系界面活性剤)の含有量は80%(V/V)~95%(V/V)であることが好ましく、85%(V/V)~95%(V/V)であることが特に好ましい。前記洗浄液Lにおいて、前記液体水の含有量は5%(V/V)~20%(V/V)であることが好ましく、5%(V/V)~15%(V/V)であることが特に好ましい。特筆すべきことは、前記界面活性剤は、後述のイオン交換樹脂カラム2を通過した後に、脱プロトン化されると共に、回路板の表面に残留した酸性物に対する洗浄力を発揮することができる。また、液体水は、界面活性剤の脱プロトン化の過程を安定するためのものである。
【0033】
続いて、
図1を示すように、前記イオン交換樹脂カラム2は、洗浄タンク1の片側に設置される。前記イオン交換樹脂カラム2は、第1の流体通路5を介して洗浄タンク1に連通すると共に、第1の流体通路5を介して洗浄タンク1からの洗浄液Lが注入される。
【0034】
換言すると、前記第1の流体通路5は、洗浄タンク1からの洗浄液Lがイオン交換樹脂カラム2に流れるように、洗浄タンク1の出口端及びイオン交換樹脂カラム2の入り口端に連通する。
【0035】
本発明の一つの実施形態において、前記イオン交換樹脂カラム2に充填されたイオン交換樹脂は塩基性イオン交換樹脂であり、塩基性陰イオン交換樹脂であることが好ましい。
【0036】
特筆すべきことは、前記塩基性陰イオン交換樹脂は、アミノ活性基が導入されるイオン交換樹脂であると共に、塩素イオン(Cl-)や硫酸イオン(SO4
2-)などのアニオンと交換することができる。前記塩基性陰イオン交換樹脂は、アミノ活性基のアルカリの強さによって、強塩基性陰イオン交換樹脂及び弱塩基性陰イオン交換樹脂に分けることができる。第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、又は第四級アミンを含むイオン交換樹脂は、NaOH、KOHなどの強塩基と解離して強アルカリ性を示し、強塩基性陰イオン交換樹脂と呼ばれる。
【0037】
本発明の一つの実施形態において、前記塩基性陰イオン交換樹脂は、強塩基性陰イオン交換樹脂であることが好ましく、OH型(OH-)強塩基性陰イオン交換樹脂であることが特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0038】
本発明の一つの実施形態において、前記塩基性陰イオン交換樹脂は、架橋したスチレン-ジビニルベンゼン骨格に第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、又は第四級アミンを少なくとも一つ有する陰イオン交換樹脂である。また、前記塩基性陰イオン交換樹脂はハロゲンを含まないが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0039】
更に説明すると、本発明に係る実施形態におけるイオン交換樹脂カラム2の樹脂充填量が120cm3~180cm3(150cm3であることが好ましい)であるカラムにおいて、50g~150g(100gであることが好ましい)の前記イオン交換樹脂が充填される。
【0040】
前記イオン交換樹脂カラム2は、第1の流体通路5を介してからの洗浄液Lを受けるように配置されると共に、前記洗浄液Lは、前記洗浄液Lのイオン交換を行うように、前記イオン交換樹脂カラム2を通過する。
【0041】
本発明の一つの実施形態において、前記洗浄液Lの前記イオン交換樹脂カラム2を通過した流速は、0.5cm3/min~3cm3/minであることが好ましく、0.8cm3/min~1.2cm3/minであることが特に好ましい。
【0042】
前記ポンプユニット3は、洗浄タンク1とイオン交換樹脂カラム2との間に連接する第1の流体通路5に設置される。前記ポンプユニット3によって、洗浄タンク1に含まれる洗浄液Lを前記第1の流体通路5を介して前記イオン交換樹脂カラム2に送り込む。
【0043】
次に、前記イオン交換樹脂カラム2に充填された塩基性イオン交換樹脂は、前記洗浄液LのpH(pH value)を8~11(好ましくは、pH8~9)に向上するように、洗浄液Lに含まれた炭化水素系界面活性剤における水酸基に対して脱プロトン化することができる。
【0044】
前記第2の流体通路6は、脱プロトン化の界面活性剤をイオン交換樹脂カラム2から洗浄タンク1に回流するように、イオン交換樹脂カラム2の出口端と洗浄タンク1の入り口端との間に連接する。それによって、回路板の表面に残留した酸性物を除去する。
【0045】
即ち、脱プロトン化の界面活性剤は、洗浄タンク1とイオン交換樹脂カラム2との間に連接する第2の流体通路6を介して、洗浄タンク1に回流される。それによって、脱プロトン化の界面活性剤は、回路板の表面に残留した酸性物に対する洗浄力を有する。また、液体水を添加することによって、界面活性剤の脱プロトン化の過程を安定することを果たせると共に、洗浄液LのpHを制御することに役に立つ。
【0046】
前記ろ過ユニット4は、洗浄タンク1とイオン交換樹脂カラム2との間に連接する第1の流体通路5に設置される。即ち、前記ろ過ユニット4及び前記ポンプユニット3はいずれも、流体通路5に設置される。前記ろ過ユニット4は、前記洗浄液Lに含まれる不純物を除去するように、洗浄タンク1からの洗浄液Lをろ過する。
【0047】
本実施形態において、前記ろ過ユニット4は、イオン交換樹脂カラム2とポンプユニット3との間に設置されるが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、前記ろ過ユニット4は、洗浄タンク1とポンプユニット3との間に設置されてもよい。
【0048】
従来の技術の配合では、アミン化合物を採用して回路板の表面に残留した酸性物に対する洗浄力を提供するため、アミン化合物が回路板の表面に残留する問題を起こす。従来の技術に比べて、本発明に係る回路板のクリーニングシステムは、主に塩基性イオン交換樹脂、炭化水素系界面活性剤及び液体水からなる新規なシステムであると共に、塩基性イオン交換樹脂が炭化水素系界面活性剤に対する脱プロトン化を行うことによって、洗浄力を調整して、回路板の表面に残留した酸性物を洗浄する。本発明に係る回路板のクリーニングシステムの洗浄液においてアミン化合物を用いていないため、洗浄の過程でアミン化合物が回路板の表面に残留することでその後のプロセスでは積層密着の強度が不足である問題を起こさない。
【0049】
[第二実施形態]
図2に示すように、本発明の第二実施形態は、回路板のクリーニングシステム100Bを提供する。本実施形態に係る回路板のクリーニングシステム100Bは、上述の第一実施形態とほとんど同様である。それらの相違点について、本実施形態に係る回路板のクリーニングシステム100Bは、イオン交換樹脂カラム2の出口端に設置されたpHモニタリングユニット7と、ポンプユニット3に設置された流速制御ユニット8と、を更に備える。
【0050】
前記pHモニタリングユニット7は、イオン交換樹脂カラム2を通過した脱プロトン化の洗浄液LのpHをモニターするように配置される。また、前記流速制御ユニット8は、前記pHモニタリングユニット7でモニターする前記pHに基づいて、ポンプユニット3を用いて洗浄液Lの第1の流体通路5での流速を制御するように、前記洗浄液Lの前記イオン交換樹脂カラム2での留まる時間を調整する。それによって、洗浄液Lの回路板Bに残留した酸性物に対する良好な洗浄力を維持することができる。
【0051】
例えば、前記洗浄液LのpHが低減すると洗浄力が弱くなる場合、前記洗浄液Lのイオン交換樹脂カラム2での留まる時間を長くするように、前記洗浄液Lの流速を低減する必要がある。それによって、イオン交換樹脂カラム2を通過した、脱プロトン化の洗浄液Lに理想なpHを得ることで、電路板Bの表面に残留した酸性物に対する良好な洗浄力を維持することができる。
【0052】
若しくは、異なる回路板の洗浄界面に必要の洗浄力が異なるため、本発明の実施形態に係る回路板のクリーニングシステム100Bは、ポンプユニット3による流速の調整により、異なる回路板の洗浄界面によって、界面を傷つけずに回路板の表面に残留した酸性物を除去するように、前記洗浄液Lの洗浄力を制御することが可能である。
【0053】
また、特筆すべきことは、本発明の実施形態に係る回路板のクリーニングシステム100Bの、回路板Bの表面に残留した酸性物に対する洗浄力が長くなることができる。前記洗浄液Lの洗浄力が低くなると、イオン交換樹脂を簡単に交換すればよく、洗浄タンク1における洗浄液Lを全て交換する必要がないため、洗浄プロセスが簡単である利点を有する。
【0054】
[第三実施形態]
図3に示すように、本発明の第三実施形態は、回路板のクリーニングシステム100Cを提供する。本実施形態に係る回路板のクリーニングシステム100Cは、上述の第一実施形態とほとんど同様である。それらの相違点について、本実施形態に係る回路板のクリーニングシステム100Cは、洗浄タンク1に設置された超音波振動ユニット9を更に備える。前記超音波振動ユニット9は、洗浄タンク1に含まれた洗浄液Lを振動することによって、洗浄液Lの回路板の表面に残留した酸性物に対する洗浄力を向上することができる。
【0055】
[第四実施形態]
図4に示すように、本発明の第四実施形態は、回路板のクリーニングシステム100Dを提供する。本実施形態に係る回路板のクリーニングシステム100Dは、上述の第一実施形態とほとんど同様である。それらの相違点について、本実施形態に係る回路板のクリーニングシステム100Dは、検出ユニット10を更に備える。
【0056】
前記検出ユニット10は、顕微赤外分光計(FTIR-Microscope,Micro-FTIR)である。前記洗浄液Lの回路板Bの表面に対する洗浄が完了した後に、前記検出ユニット10は、回路板Bの表面のC=O官能基の吸収ピークを検出するように配置される。前記C=O官能基の吸収ピークは、約1680cm-1~1735cm-1である。
【0057】
本実施形態において、前記検出ユニット10で検出した回路板Bの表面の前記C=O官能基の前記吸収ピークが完全に消えるか、若しくはほとんど消える時に、前記回路板のクリーニングシステム100Dの回路板の表面に残留した前記酸性物の洗浄作業が完成すると認められる。
【0058】
説明すべきことは、本実施形態において、検出ユニット10で検出した回路板Bの表面のC=O官能基の吸収ピークの検出方法は、洗浄前又は洗浄後の回路板Bを、減衰全反射分光計(ATR)の光ファイバープローブの箇所に放置されて分析を行った。検出過程において、回路板Bのサンプルを、なんの前処理をしないままATRに置き、分析が開始した後に、分光計から基板の表面の赤外分光スペクトルを読み取り・記録すると共に、検証と分析を行った。
【0059】
[実験データの測定]
以下にて、実施例1~実施例4及び比較例1~比較例2を参酌しながら、本発明を詳細に説明する。ただし、後述の実施例1~4は本発明を理解するためのものであって、本発明の保護の範囲は、これらの実施例に限られない。
【0060】
実施例1:洗浄タンクにおいて、ジエチレングリコールブチルエーテル93wt%と、超純水7wt%とを含む洗浄液を調製した。陰イオン交換樹脂は、OH型(OH-)強塩基性陰イオン交換樹脂であった。洗浄プロセスの条件として、洗浄タンクの洗浄液を加熱する温度が80℃であり、洗浄液のイオン交換樹脂カラムを通過する流速が1cc/minであった。洗浄液のイオン交換樹脂カラムを通過する前のpHが5.4であった。洗浄液のイオン交換樹脂カラムを通過する後のpHが8.9であった。実施例1において、洗浄条件は、回路板を洗浄タンクに入れて洗浄液に3分間浸して、FT-IR分析で回路板の表面CO基の除去率(%)(即ち、1680cm-1~1735cm-1の除去率)を分析した結果、100%であった。
【0061】
実施例2:洗浄タンクにおいて、ジエチレングリコールブチルエーテル93wt%と、超純水7wt%とを含む洗浄液を調製した。陰イオン交換樹脂は、OH型(OH-)強塩基性陰イオン交換樹脂であった。洗浄プロセスの条件として、洗浄タンクの洗浄液を加熱する温度が80℃であり、洗浄液のイオン交換樹脂カラムを通過する流速が1.5cc/minであった。洗浄液のイオン交換樹脂カラムを通過する前のpHが5.4であった。洗浄液のイオン交換樹脂カラムを通過する後のpHが9.8であった。実施例2において、洗浄条件は、回路板を洗浄タンクに入れて洗浄液に3分間浸して、FT-IR分析で回路板の表面CO基の除去率(%)(即ち、1680cm-1~1735cm-1の除去率)を分析した結果、100%であった。
【0062】
実施例3:洗浄タンクにおいて、ジエチレングリコールブチルエーテル93wt%と、超純水7wt%とを含む洗浄液を調製した。陰イオン交換樹脂は、OH型(OH-)強塩基性陰イオン交換樹脂であった。洗浄プロセスの条件として、洗浄タンクの洗浄液を加熱する温度が50℃であり、洗浄液のイオン交換樹脂カラムを通過する流速が3.0cc/minであった。洗浄液のイオン交換樹脂カラムを通過する前のpHが5.4であった。洗浄液のイオン交換樹脂カラムを通過する後のpHが9.8であった。実施例3において、洗浄条件は、回路板を洗浄タンクに入れて洗浄液に3分間浸して、FT-IR分析で回路板の表面CO基の除去率(%)(即ち、1680cm-1~1735cm-1の除去率)を分析した結果、100%であった。
【0063】
実施例4:洗浄タンクにおいて、ジエチレングリコールブチルエーテル93wt%と、超純水7wt%とを含む洗浄液を調製した。陰イオン交換樹脂は、OH型(OH-)強塩基性陰イオン交換樹脂であった。洗浄プロセスの条件として、洗浄タンクの洗浄液を加熱する温度が50℃であり、洗浄液のイオン交換樹脂カラムを通過する流速が2.0cc/minであった。洗浄液のイオン交換樹脂カラムを通過する前のpHが5.4であった。洗浄液のイオン交換樹脂カラムを通過する後のpHが8.0であった。実施例4において、洗浄条件は、回路板を洗浄タンクに入れて洗浄液に3分間浸して、FT-IR分析で回路板の表面CO基の除去率(%)(即ち、1680cm-1~1735cm-1の除去率)を分析した結果、74%であった。
【0064】
比較例1:洗浄タンクにおいて、ジエチレングリコールブチルエーテル90wt%と、超純水10wt%とを含む洗浄液を調製した。陰イオン交換樹脂は、弱塩基性陰イオン交換樹脂であった。洗浄プロセスの条件として、洗浄タンクの洗浄液を加熱する温度が80℃であり、洗浄液のイオン交換樹脂カラムを通過する流速が1.0cc/minであった。洗浄液のイオン交換樹脂カラムを通過する前のpHが5.5であった。洗浄液のイオン交換樹脂カラムを通過する後のpHが7.3であった。比較例1において、洗浄条件は、回路板を洗浄タンクに入れて洗浄液に3分間浸して、FT-IR分析で回路板の表面CO基の除去率(%)(即ち、1680cm-1~1735cm-1の除去率)を分析した結果、27%のみであった。
【0065】
比較例2:洗浄タンクにおいて、ジエチレングリコールブチルエーテル90wt%と、超純水10wt%とを含む洗浄液を調製した。陰イオン交換樹脂は、弱塩基性陰イオン交換樹脂であった。洗浄プロセスの条件として、洗浄タンクの洗浄液を加熱する温度が80℃であり、洗浄液のイオン交換樹脂カラムを通過する流速が0.5cc/minであった。洗浄液のイオン交換樹脂カラムを通過する前のpHが5.5であった。洗浄液のイオン交換樹脂カラムを通過する後のpHが7.7であった。比較例2において、洗浄条件は、回路板基板を洗浄タンクに入れて洗浄液に3分間浸して、FT-IR分析で回路板の表面CO基の除去率(%)(即ち、1680cm-1~1735cm-1の除去率)を分析した結果、33%のみであった。
【0066】
実験データによれば、実施例1~4の洗浄条件は、回路板に対するCO基(酸性物)の除去率がより優れた。
【0067】
【0068】
[実施形態による有利な効果]
本発明に係る回路板のクリーニングシステムは、塩基性イオン交換樹脂、炭化水素系界面活性剤、液体水を含む新規なシステムである。本発明に係る回路板のクリーニングシステムは、塩基性イオン交換樹脂で炭化水素系界面活性剤に対して脱プロトン化することで、洗浄力を調整して、回路板の表面に残留した酸性物を洗浄することができる。本発明に係る回路板のクリーニングシステムの洗浄液においてアミン化合物を用いていないため、洗浄の過程でアミン化合物が回路板の表面に残留することでその後のプロセスでは、積層密着の強度が不足である問題を起こさない。
【0069】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
100A,100B,100C,100D…クリーニングシステム
1…洗浄タンク
2…イオン交換樹脂カラム
3…ポンプユニット
4…ろ過ユニット
5…第1の流体通路
6…第2の流体通路
7…pHモニタリングユニット
8…流速制御ユニット
9…超音波振動ユニット
10…検出ユニット
L…洗浄液
B…回路板