(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240628BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H01L21/304 643Z
H01L21/304 643A
H01L21/304 648G
H01L21/304 651B
H01L21/304 651L
H01L21/306 E
(21)【出願番号】P 2022208238
(22)【出願日】2022-12-26
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2022014140
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼北(埀野) 陽子
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-86116(JP,A)
【文献】特開2015-170637(JP,A)
【文献】特開2015-167161(JP,A)
【文献】特開2019-12791(JP,A)
【文献】特開2010-56218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持して回転させる回転部と、
前記回転部により回転する前記基板の被処理面に対して、吐出部から処理液を供給することにより前記基板を処理する処理液供給部と、
上部が開口した容器を有し、前記容器が前記吐出部から前記基板への前記処理液の供給を遮断する遮断位置と、前記容器が前記吐出部から前記基板への前記処理液の供給を許容する許容位置との間で、前記吐出部に対して相対移動可能な受容部と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
基板を保持して回転させる回転部と、
前記回転部により回転する前記基板の被処理面に対して、吐出部から処理液を供給することにより前記基板を処理する処理液供給部と、
上部が開口した容器を有し、前記容器が前記吐出部から前記基板への前記処理液の供給を遮断する遮断位置と、前記容器が前記吐出部から前記基板への前記処理液の供給を許容する許容位置との間で、前記吐出部に対して相対移動可能な受容部と、
前記回転部に接離する方向に移動可能に設けられ、前記基板に非接触で対向する遮蔽部と、を有し、
前記遮蔽部には、前記基板に対向する面と前記基板との間に気体を供給する給気部が設けられている基板処理装置。
【請求項3】
前記吐出部は、前記遮蔽部に設けられている請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記吐出部は、前記基板の前記被処理面上に前記処理液を吐出する吐出位置と、前記基板の前記被処理面の上方から外れた待機位置との間を移動可能に設けられ、
前記容器は、前記遮断位置を維持した状態で、前記吐出位置から前記待機位置へ移動可能に設けられている請求項1または請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記容器は、前記遮断位置を維持した状態で、前記吐出部とともに前記吐出位置へ移動可能に設けられている請求項4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記容器が前記遮断位置から前記許容位置へ相対移動する場合に、前記吐出部の下方を通過する前記容器の外側面が、前記遮断位置側が下方になるように傾斜した傾斜面である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記容器が前記遮断位置から前記許容位置へ相対移動する場合に、前記吐出部の下方を通過する前記容器の外側面に、前記外側面を流れる前記処理液の前記被処理面への落下を遮断する副受容部を有する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記容器の上縁は、前記副受容部の上縁よりも前記許容位置側にある請求項7記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記容器には、前記吐出部が対向する貫通孔が設けられている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記容器が前記遮断位置と前記許容位置との間で相対移動する場合に、前記吐出部の下方を通過する前記容器の上縁に、前記吐出部が通過する溝が設けられている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項11】
回転部により回転する基板の被処理面に対して、処理液供給部の吐出部から処理液を供給することにより前記基板を処理する基板処理方法において、
上部が開口した容器を有する受容部が遮断位置に移動し、
前記吐出部から前記処理液を吐出し、
前記容器が前記吐出部から吐出される前記処理液の前記基板への供給を遮断し、
流量調整部及び温度調整部が、前記吐出部から吐出される前記処理液の流量及び温度を調整し、
前記容器が許容位置に相対移動することにより、前記吐出部から前記基板の前記被処理面に前記処理液を供給する基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶パネルなどを製造する製造工程では、半導体ウェーハや液晶基板などの基板の被処理面に、処理液を供給することにより被処理面を処理する基板処理装置が用いられている。
【0003】
例えば、チャンバ内で回転テーブルに保持された基板を回転させながら、基板の回転中心付近にエッチング用の処理液を供給して、基板の表面に処理液を広げることにより、基板を一枚ずつ処理する枚葉式のエッチング装置が使用されている。また、エッチング処理後、別のチャンバ内において、回転テーブルに保持された基板を回転させながら、基板の回転中心付近に洗浄用の処理液を供給することにより、基板を洗浄する洗浄装置が使用されている。
【0004】
このような基板処理装置には、基板上に処理液を供給する機構として、例えば、処理液を吐出するノズルが先端に設けられた揺動アームが設けられている。揺動アームは、ノズルが基板上から外れる待機位置と、ノズルが基板の中央の上方に来る吐出位置との間を揺動可能に設けられ、吐出位置において、回転する基板に処理液を供給することにより、基板を処理する。
【0005】
ここで、所望の処理レートを得るために、基板に供給する処理液は、適切な流量、温度に調整する必要がある。このため、処理液を供給するノズルから、予め処理液を吐出させた状態で、流量及び温度を調整してから、基板に供給することが行われている。このように、製品となる基板に処理液を吐出する本吐出の前に、処理液を吐出した状態とすることをダミー吐出と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ダミー吐出を行う際には、処理液が滴下する箇所に基板が存在しないと、回転テーブルの周囲に処理液が飛散してパーティクルの発生源となる。このため、ダミー吐出の際には、製品とならない基板を、回転テーブルに保持しておく必要がある。このようなダミー吐出のための基板を、ダミー基板と呼ぶ。ダミー吐出を行う際には、ダミー基板が必要となるため、処理液を吐出させる前後にダミー基板を搬入、搬出する作業を行わなければならず、処理時間が長くなり、スループットが低下する。
【0008】
また、ダミー吐出中に流量、温度を調整した後、ダミー基板を搬出して、製品となる基板を搬入して本吐出が行われるまでに、ノズルに処理液を供給する配管内の処理液の温度が下がってしまう。すると、本吐出のために処理液を供給する際には、低い温度の処理液が吐出されてしまうため、所望の処理レートが得られない。さらに、一旦、ダミー吐出を止めてから本吐出までに時間がかかると、ノズルへ処理液の供給を再開する際の流量の変動が大きくなるため、適切な流量を維持できない場合が生じる。
【0009】
これに対処するため、処理液を吐出するノズルが待機位置にある状態で、待機位置に設けられたダミーディスペンス用のポットに対して、予め処理液を供給しながら流量及び温度を調整することが行われている(特許文献1参照)。しかし、この場合、待機位置においてノズルから処理液を吐出するとしても、本吐出を行うときには、一旦、処理液の吐出を止めてから、ノズルを揺動させて、基板の回転中心上となる吐出位置に移動させる必要がある。このため、上記と同様に、ノズルから再度処理液を吐出する際の温度低下、流量変動の問題が生じる。
【0010】
本発明の実施形態は、ダミー吐出から本吐出へ短時間で移行でき、処理液を所望の流量及び温度に維持しやすい基板処理装置及び基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態の基板処理装置は、基板を保持して回転させる回転部と、前記回転部により回転する前記基板の被処理面に対して、吐出部から処理液を供給することにより前記基板を処理する処理液供給部と、上部が開口した容器を有し、前記容器が前記吐出部から前記基板への前記処理液の供給を遮断する遮断位置と、前記容器が前記吐出部から前記基板への前記処理液の供給を許容する許容位置との間で、前記吐出部に対して相対移動可能な受容部と、を有する。
【0012】
本発明の実施形態の基板処理方法は、回転部により回転する基板の被処理面に対して、処理液供給部の吐出部から処理液を供給することにより前記基板を処理する基板処理方法において、上部が開口した容器を有する受容体が遮断位置に移動し、前記吐出部から前記処理液を吐出し、前記容器が前記吐出部から吐出される前記処理液の前記基板への供給を遮断し、流量調整部及び温度調整部が、前記吐出部から吐出される前記処理液の流量及び温度を調整し、前記容器が許容位置に相対移動することにより、前記吐出部から前記基板の前記被処理面に前記処理液を供給する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態は、ダミー吐出から本吐出へ短時間で移行でき、処理液を所望の流量及び温度に維持しやすい基板処理装置及び基板処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態の基板処理装置を示す簡略構成図である。
【
図2】
図1の基板処理装置において、吐出部及び容器が待機位置にある状態(A)、遮断位置を維持しつつ移動している状態(B)、許容位置にある状態(C)を示す簡略構成図である。
【
図3】遮断位置と許容位置との間で変位する吐出部と容器を示す説明図である。
【
図4】容器の傾斜面に処理液が付着した状態(A)、容器の鉛直方向の側面に処理液が付着した状態(B)、容器の変形例(C)を示す説明図である。
【
図5】第2の実施形態の基板処理装置の容器が待機位置にある状態(A)、遮断位置にある状態(B)を示す簡略構成図である。
【
図6】第2の実施形態の基板処理装置において吐出部がダミー吐出している状態(A)、本吐出している状態(B)を示す簡略構成図である。
【
図7】容器に副受容部を設けた変形例を示す斜視図である。
【
図9】容器に貫通孔を設けた変形例を示す説明図である。
【
図10】容器に溝を設けた変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1に示すように、第1の実施形態の基板処理装置1は、箱状の容器であるチャンバ1aを備え、前工程でカセット(FOUP)に複数枚収容されて搬送されてきた基板Wに対して、チャンバ1a内で1枚ずつ処理を行う枚葉処理の装置である。基板Wは、カセットから搬送ロボットによって1枚ずつ取り出され、バッファユニットに一時的に載置された後、チャンバ1aへの搬送及び処理が行われる。なお、本実施形態により処理される基板Wは、例えば、半導体ウェーハである。以下、基板Wのパターン等が形成された面を被処理面とする。
【0016】
基板処理装置1は、例えば、回転する基板Wに処理液Lを供給することによって、不要な膜を除去して回路パターンを残すエッチング装置である。本実施形態では、処理液Lとして、リン酸(H3PO4)を含む水溶液(以下、リン酸溶液とする)を使用する。リン酸溶液は、処理レートを確保するために高温とすることが必要であり、温度低下を防ぐ必要性が高い。但し、使用する処理液Lは、これには限定されず、例えば、フッ酸及び硝酸の混合液、酢酸、硫酸及び過酸化水素水の混合液(SPM:Sulfuric acid-hydrogen Peroxide Mixture)等、酸系の液体を広く用いることができる。
【0017】
基板処理装置1は、
図1~
図3に示すように、回転部10、処理液供給部20、受容部30、制御部50を有する。
【0018】
(回転部)
回転部10は、基板Wを保持して回転する。回転部10は、回転体11、駆動源12、保持部13を有する。回転体11は、基板Wに間隔を空けて対向する対向面11aを有する。回転体11は、一端が対向面11aによって塞がれた円筒形状である。対向面11aは、基板Wよりも大きな径の円形の面である。回転体11は、処理液Lに対して耐性を有する材料で形成されている。例えば、PTFE、PCTFEなどのフッ素系の樹脂により、回転体11を構成することが好ましい。
【0019】
駆動源12は、回転体11を回転させる。駆動源12はモータであり、図示しない設置面又は設置面に設置された架台に固定されたベース上に設けられている。なお、チャンバ1a内の回転体11の周囲には、回転する基板Wから飛散する処理液Lを、基板Wの周囲から受けるカバー1bが設けられている。つまり、カバー1bは、回転体11及び基板Wを囲う円筒形状であって、その円筒形状の上方は、回転体11及び基板W側に向かうように傾斜している。
【0020】
保持部13は、基板Wを回転体11に保持する。保持部13は、基板Wの周縁に複数設けられ、図示しない開閉機構によって、基板Wの縁部に接する閉位置と、基板Wの縁部から離れる開位置との間を移動可能に設けられている。保持部13は、対向面11aと平行に且つ間隔を空けて、基板Wを保持する。基板Wの対向面11a側の面と反対側の面が被処理面となる。
【0021】
(処理液供給部)
処理液供給部20は、
図2(C)に示すように、回転体11により回転する基板Wの被処理面に対して、吐出部21から処理液Lを供給することにより、基板Wを処理する。本実施形態では、処理液供給部20は、保持部13に保持された基板Wの被処理面に、リン酸溶液である処理液Lを供給することによりエッチング処理を行う。
【0022】
処理液供給部20は、吐出部21、揺動アーム22、揺動機構23を有する。吐出部21は、基板Wの被処理面の中心付近に向けて処理液Lを供給するノズルである。吐出部21には、チャンバ1a外のタンクTから配管24を介して処理液Lであるリン酸溶液が供給される。処理液Lの供給経路である配管24には、マスフローコントローラ(MFC)25、ヒータ26が設けられている。処理液Lの流量は、流量調整部であるMFC25によって調整され、処理液Lの温度は温度調整部であるヒータ26によって調整される。MFC25は、流量センサが内蔵されており、流量センサにより検出される流量と、設定された流量とのフィードバックによって、流量バルブを制御する。配管24には図示しない温度センサが設けられ、この温度センサの検出温度に基づいて、ヒータ26の温度、処理液Lの吐出の有無等が制御される。また、タンクTには、処理液Lの排液経路Zが接続され、バルブV1の開閉によって排液の有無を切り替えることができる。
【0023】
揺動アーム22は、先端に吐出部21が設けられている。この吐出部21は、所謂ノズルである。揺動アーム22は、吐出部21が基板Wの被処理面上に処理液Lを吐出する吐出位置(
図1、
図2(C)参照)と、基板Wの被処理面の上方から外れた待機位置(
図2(A))との間を揺動可能に設けられている。本実施形態の吐出位置は、回転体11上の基板Wの被処理面の回転中心に対応する位置の直上である。待機位置は、吐出位置から退避して基板Wの搬入や搬出を可能とする位置である。なお、待機位置は、基板Wの被処理面の上方から外れていれば良いが、好ましくはカバー1bの外方である。
【0024】
揺動機構23は、吐出部21が吐出位置と待機位置との間を移動するように、揺動アーム22を揺動させる機構である。また、揺動機構23は、上下に移動することにより、吐出部21を基板Wに接離する方向に移動させる。
【0025】
(受容部)
受容部30は、上部が開口した容器31と、揺動アーム32と、揺動機構33と、回収経路34とを有する。容器31は、揺動アーム32と、揺動機構33によって、吐出部21から基板Wへの処理液Lの供給を遮断する遮断位置(
図1、
図2(A)、(B)、
図3(A)参照)と、吐出部21から基板Wへの処理液Lの供給を許容する許容位置(
図2(C)、
図3(D)参照)との間で、吐出部21に対して相対移動可能である。また、容器31は、基板Wの被処理面の上方から外れた待機位置へも移動可能である。待機位置は、好ましくはカバー1bの外方である。
【0026】
遮断位置は、受容部30の容器31が吐出部21の下方(直下)に位置し、処理液Lを受ける位置である。また、遮断位置は、基板処理装置1における絶対的な位置ではなく、吐出部21が移動すると、遮断位置も移動する。つまり、遮断位置は、吐出部21の位置に対する相対的な位置となる。
【0027】
許容位置は、受容部30の容器31が吐出部21の下方(直下)から外れ、処理液Lを受けることができない位置である。つまり、容器31が許容位置にあるとき、吐出部21が容器31の最外端(縁部)から外側にいるために、処理液Lの吐出を妨げることがない。許容位置も、基板処理装置1における絶対的な位置ではなく、吐出部21の位置に対して相対的に決まる位置である。また、許容位置は、容器31が吐出部21から外れていて、処理液Lの吐出の妨げにならない位置であれば、どこであっても良い。吐出部21の位置に対して予め決められた位置であっても良いし、1か所としても、複数個所としても良い。例えば、吐出部21から処理液Lを吐出している間、容器31が待機位置に戻っている場合には、待機位置が許容位置となる。
【0028】
但し、本実施形態では、
図2(C)に示すように、吐出部21から基板Wの被処理面に向けて処理液Lを吐出している間、許容位置にある容器31は、吐出部21の近傍に位置づけられている。このように許容位置が吐出部21の近傍にあると、吐出部21からの処理液Lの吐出を終了した後に、容器31を短時間で遮断位置に位置づけることができる。これにより、吐出終了時に吐出部21から処理液Lが垂れ落ちたとしても、基板W上に落ちることを防止することができる。このため、吐出部21から基板Wの被処理面に向けて処理液Lを吐出している間は、容器31を吐出部21の近傍に位置づけることが好ましい。なお、これに限らずに、上述したように、吐出部21から吐出している間は、容器31を待機位置に位置づけてもよい。この場合は、吐出部21から吐出を停止した際、又は吐出停止直前には、容器31を吐出部21の近傍に位置づけると良い。
【0029】
容器31は、上部が開口した逆円錐形状の部材である。このため、容器31が遮断位置から許容位置へ相対移動する場合に、吐出部21の下方を通過する容器31の外側面は、
図3に示すように、遮断位置側が下方になるように傾斜した傾斜面31aとなっている。さらに、容器31の下部には、回収口31bが設けられている。容器31は、処理液Lに対して耐性を有する材料で形成されている。例えば、PTFE、PCTFEなどのフッ素系の樹脂により、容器31を構成することが好ましい。
【0030】
揺動アーム32は、
図1及び
図2に示すように、先端に容器31が設けられている。容器31は、揺動アーム32によって、遮断位置と許容位置との間を移動可能に設けられている。
【0031】
揺動機構33は、容器31が遮断位置と許容位置との間を移動するように、揺動アーム32を揺動させる機構である。また、揺動機構33は、容器31を待機位置に移動させる。さらに、揺動機構33は、上下に移動することにより、容器31を基板Wに接離する方向に移動させる。揺動アーム32及び揺動機構33には、回収口31bに接続された回収経路34が設けられている。回収経路34は、揺動アーム32に沿って配置され、チャンバ1a外のタンクTまで延びている。これにより、容器31で回収した処理液Lが、回収経路34を通じてタンクTへ戻る経路が構成されている。また、回収経路34はバルブV2が設けられた配管に分岐しており、排液経路Zに接続されている。これにより、容器31で回収した処理液Lが、回収経路34、排液経路Zを介して排出される経路が構成されている。
【0032】
なお、
図1及び
図2においては、揺動アーム22と揺動アーム32について、分かり易くするために、便宜的に揺動する軸の位置をずらして、両者の水平方向の長さが相違するように描かれている。但し、受容部30の容器31は遮断位置を保ったまま、吐出部21と一緒に移動するため、実際には揺動アーム22と揺動アーム32の揺動軸は同軸上にあって、水平方向の長さが同じである。また、揺動アーム32の長さを伸縮可能に構成してもよい。これにより、揺動アーム22の揺動軌跡上を、揺動アーム32が揺動及び伸縮移動することにより、容器31と吐出部21が一緒に移動することが可能となる。
【0033】
なお、図示はしないが、基板処理装置1には、洗浄液としての炭酸水、温純水(DIW)、アンモニア水-過酸化水素水混合液(APM:Ammonia-hydrogen peroxide mixture)を供給するための洗浄液供給ノズルが、揺動機構によって基板Wの回転中心に移動可能に設けられている。例えば、リン酸溶液によるエッチングの前に、洗浄液供給ノズルから基板Wの被処理面に対して炭酸水を供給することにより、基板Wの洗浄が行われる。エッチングの後に、洗浄液供給ノズルから基板Wの被処理面にAPMを供給することにより、残留有機物を除去する。さらに、洗浄液供給ノズルから基板Wの被処理面にDIWを供給することによって、APMがDIWに置換される。
【0034】
(制御部)
制御部50は、基板処理装置1の各部を制御する。制御部50は、基板処理装置1の各種の機能を実現するべく、プログラムを実行するプロセッサ、プログラムや動作条件などの各種情報を記憶するメモリ、各要素を駆動する駆動回路を有する。なお、制御部50は、情報を入力する入力装置、情報を表示する表示装置を有している。本実施形態の制御部50は、駆動源12、保持部13、揺動機構23、33、MFC25、ヒータ26などを制御する。特に、制御部50は、上記の流量センサ、温度センサの検出値に基づいて、MFC25、ヒータ26を制御することにより、以下に説明するように、処理液Lの流量及び温度を制御する。
【0035】
[動作]
以上のような本実施形態の基板処理装置1の動作を、
図1~
図3を参照して説明する。なお、以下のような手順により基板Wを処理する基板処理方法も、本実施形態の一態様である。
【0036】
まず、処理対象となる基板Wは、搬送ロボットによって回転体11上に搬入され、保持部13によって保持される。回転体11が、比較的高速な所定速度(例えば、200~300rpm程度)で回転することにより基板Wが回転し、その基板Wの被処理面に、洗浄液供給ノズルから炭酸水を供給することにより、被処理面を洗浄する。そして、回転体11が、比較的低速な所定速度(例えば、50rpm程度)で回転することにより、基板Wが当該速度で回転する。
【0037】
一方、
図2(A)に示すように、処理液供給部20の吐出部21は、基板Wの被処理面の上方から外れた待機位置にある。また、受容部30の容器31も、基板Wの被処理面の上方から外れた待機位置にあるとともに、吐出部21から基板Wへの処理液Lの供給を遮断する遮断位置にある。つまり、容器31は、その上部の開口が吐出部21の下方にあることにより、吐出部21から吐出された処理液Lが容器31内に落下する位置にある。
【0038】
このように、吐出部21及び容器31が待機位置にある状態から、
図2(B)に示すように、容器31が遮断位置にある状態を維持しながら、揺動アーム22及び揺動アーム32がそれぞれ一緒に又は同時に揺動することにより、
図1に示すように、吐出部21及び容器31が一緒又は同時に吐出位置に移動する。つまり、基板Wの回転中心に対応する位置の直上に、吐出部21が位置付けられる。このように吐出部21及び容器31の移動中においても、吐出部21に残留した処理液Lの落下が、容器31によって防止される。
【0039】
そして、タンクTからの処理液Lの供給が開始されると、
図1、
図3(A)に示すように、吐出部21の吐出口から容器31内に処理液Lが継続的に吐出される。つまり、吐出部21から吐出される処理液Lが、容器31によって基板Wへ落下することが防止された状態でダミー吐出が行われる。このように吐出部21から処理液Lを吐出しながら、MFC25によって流量が調整されるとともに、ヒータ26によって温度が調整される。例えば、リン酸溶液の場合、150℃~160℃になるように調整される。容器31内に吐出された処理液Lは、回収口31b及び回収経路34を介して回収される。
【0040】
処理液Lが所望の温度に達したか否かは、上記のように、配管24に設けられた温度センサの検出温度に基づいて判断される。つまり、温度センサの検出温度が所望の温度になったら、吐出部21からのダミー吐出を停止する。また、吐出を開始してから、MFC25の流量センサにより検出される流量が、設定された流量に達して安定するまでにはある程度の時間がかかるが、所望の温度に達するまで処理液Lの吐出を継続することによって所望の流量に達するので、温度調整と同時に流量調整もできる。
【0041】
なお、温度センサは、容器31内に設けられていてもよい。つまり、容器31において、処理液Lが吐出される位置に温度センサが張り出していて、その温度センサによって温度を検知して、所望の温度に達した場合、処理液Lの吐出を一時停止するという制御を行ってもよい。さらに、温度センサを設けずに、予め決められた時間に達するまで処理液Lを吐出してもよい。つまり、予め実験等で、所望の温度に達する時間を求めておいて、その時間が経過すれば、所望の温度の処理液Lが吐出されているとして吐出を停止してもよい。
【0042】
処理液Lが所望の流量、温度となった場合には、
図3(B)に示すように、吐出部21からの処理液Lの吐出を停止する。そして、
図3(C)に示すように、容器31を許容位置に移動させ、
図2(C)、
図3(D)に示すように、吐出部21から、上記のように流量と温度が調整された処理液Lの吐出を再開し、基板Wへ処理液Lを供給する。この遮断位置から許容位置に変位する際の吐出の停止時間は、例えば、5秒以内、好ましくは3秒以内である。このように処理液Lの吐出停止から吐出再開までの時間は非常に短いため、処理液Lの流動が停止して配管内に滞留する時間を短くすることができ、基板Wへ処理液Lを供給開始する際の流量変動及び温度低下が抑制される。なお、吐出再開時は、許容位置とされる位置まで容器31が移動し終わらなくても、容器31が吐出部21の下から外れていれば良い。
【0043】
吐出部21から所望の流量及び温度で吐出された処理液Lが、基板Wに供給されることにより、基板Wの被処理面が処理される。つまり、基板Wの被処理面を処理するための本吐出が行われる。例えば、吐出部21からのリン酸溶液が、基板Wの被処理面の中心に連続的に供給されると、リン酸溶液が回転する基板Wの外周に向けて順次移動することにより、被処理面の炭酸水がリン酸溶液によって置換されつつ、窒化膜の一部がエッチングされて除去される。所定の処理時間が経過すると、
図3(E)に示すように、処理液供給部20は処理液Lの供給を停止する。
【0044】
その後、
図1、
図3(F)に示すように、揺動アーム32を揺動させて容器31を遮断位置に移動させてから、
図2(B)に示すように、遮断位置を維持した状態で、揺動アーム22及び揺動アーム32が揺動することにより、
図2(A)に示すように、吐出部21とともに容器31を待機位置に移動させる。吐出部21及び容器31の移動中においても、吐出部21に残留した処理液Lの落下が、容器31によって防止される。
【0045】
エッチング処理が終了すると、回転体11が、比較的高速な所定速度(例えば、200~300rpm程度)にて回転し、洗浄液供給部が基板Wの被処理面に温純水を供給することにより、基板W上のリン酸溶液を温純水に置換する。その後、基板Wが回転を停止して、保持部13による保持が解放された基板Wを、搬送ロボットがチャンバ1aから搬出する。
【0046】
なお、処理液Lを吐出せずに経過した時間が長ければ長いほど、配管24は温度が低下する。それに起因して、吐出時の処理液Lの温度も低下する。さらに、基板Wへ処理液Lを供給し終えて、吐出停止した場合にも、配管24内で残留している処理液Lは、時間経過とともに温度低下する。このため、例えば、最初に基板Wを処理する際や、基板Wの処理が完了し、その次の基板Wが搬入されるまでの時間が所定時間以上経過した場合に、ダミー吐出を行うことが好ましい。
【0047】
また、所定時間以内に、次の基板Wが搬入されるか否かを判断して、そのタイミングでダミー吐出するか否かを判断してもよい。例えば、所定時間以内に、基板Wが搬入されないと判断されれば、次の基板Wを処理するときまで待って、ダミー吐出を行う。これにより、基板Wを処理する度にダミー吐出をする必要がなくなる。所定時間以内に、次の基板Wが搬入されるか否かは、作業者が判断してもよいし、制御部50が、前工程の装置から基板Wが搬送されて来ることを通知する信号を受信せずに所定時間経過したか否かによって判断してもよい。また、制御部50が、前工程の装置から送信された信号に基づいて、基板処理装置1に基板Wが搬送されて来る時間を算出し、これに基づいてダミー吐出するか否かを判断してもよい。
【0048】
[効果]
(1)本実施形態の基板処理装置1は、基板Wを保持して回転させる回転部10と、回転部10により回転する基板Wの被処理面に対して、吐出部21から処理液Lを供給することにより基板Wを処理する処理液供給部20と、上部が開口した容器31を有し、吐出部21からの処理液Lの供給を遮断する遮断位置と、吐出部21からの処理液Lの供給を許容する許容位置との間で、吐出部21に対して相対移動可能な受容部30と、を有する。
【0049】
本実施形態の基板処理方法は、回転部10により回転する基板Wの被処理面に対して、処理液供給部20の吐出部21から処理液Lを供給することにより基板Wを処理する基板処理方法において、上部が開口した容器31を有する受容部30が遮断位置に移動し、吐出部21から処理液Lを吐出し、容器31が吐出部21から吐出される処理液Lの基板Wへの供給を遮断し、流量調整部であるMFC25及び温度調整部であるヒータ26が、吐出部21から吐出される処理液Lの流量及び温度を調整し、容器31が許容位置に相対移動することにより、吐出部21から基板Wの被処理面に処理液Lを供給する。
【0050】
このため、製品となる基板Wの上方でダミー吐出を行った後、短時間で本吐出へ移行することができるので、調整後の処理液Lの流量及び温度を維持しやすい。このため、処理レートの低下を抑制しつつ、ダミー基板を用いて、処理液Lの流量及び温度を調整する必要が無いため、ダミー基板を搬入、搬出する時間を不要として、スループットを向上させることができる。また、容器31と吐出部21は、基板Wの上方で相対移動することによりダミー吐出から本吐出へと切り替えるので、移動距離が短く、切り替えを短時間で行うことができる。
【0051】
また、吐出部21からの吐出終了後、短時間で、受容部30を許容位置から遮断位置へ移動させることが可能なため、吐出終了後のノズルから垂れ落ちる処理液Lを受けることができ、基板Wへ処理液Lが落下することを防止できる。
【0052】
(2)吐出部21は、基板Wの被処理面上に処理液Lを吐出する吐出位置と、基板Wの被処理面の上方から外れる待機位置との間を移動可能に設けられ、受容部30は、遮断位置を維持した状態で、吐出位置から待機位置へ移動可能に設けられている。このため、基板Wへ処理液Lを供給した後に、吐出部21から処理液Lが落下して基板Wに付着することが防止されるので、基板Wの被処理面の処理の均一性が維持される。
【0053】
(3)受容部30は、遮断位置を維持した状態で吐出部21とともに吐出位置へ移動可能に設けられている。このため、吐出位置へ移動する際にも、吐出部21から処理液Lの基板Wの被処理面への落下が防止され、処理前の基板Wが部分的に処理されることによる品質の低下を防止できる。
【0054】
(4)容器31が遮断位置から許容位置へ相対移動する場合に、吐出部21の下方を通過する容器31の外側面が、遮断位置側が下方になるように傾斜した傾斜面31aである。このため、
図4(A)に示すように、吐出部21から容器31の上縁に処理液Lが滴下した場合であっても、
図4(B)に示す鉛直方向の面である場合に比べて付着量を低減できるので、容器31の側面が汚れることを低減でき、処理液Lが流れ落ち難くなる。また、
図4(C)に示すように、容器31の外側面の一部が傾斜面31aであってもよい。
【0055】
[第2の実施形態]
[構成]
本発明の第2の実施形態を、
図5及び
図6を参照して説明する。なお、本実施形態の構成は、基本的には上記の第1の実施形態と同様であり、同一の部材は同一の符号を付して説明は省略する。但し、本実施形態の基板処理装置6は、基板Wの被処理面を洗浄後に、揮発性の処理液Lを供給して乾燥させる乾燥装置であり、処理液Lの供給側に遮蔽部40が設けられている。遮蔽部40は、回転部10に接離する方向に移動可能に設けられ、基板Wに非接触で対向する。
【0056】
遮蔽部40は、遮蔽板41、基体部42を有する。遮蔽板41は、基板Wよりも大きな径を有する円盤形状の部材である。遮蔽板41の中心には、開口41aが設けられている。基体部42は、円柱形状の部材であり、図示しない昇降機構によって、上下動可能に設けられている。基体部42の底部に、遮蔽板41が同軸に設けられている。
【0057】
基体部42には、ガスGが流通するガス流路42aが設けられている。ガス流路42aの一端は、基体部42の側面に達し、図示しないガス供給源に接続された配管43に接続されている。ガスGは、基板Wの表面の空気をパージすることにより、基板Wの表面の水と空気中の酸素が結びついてウォーターマークが生じることを防ぐために用いられる。本実施形態のガスGとしては、例えば、N2などの希ガスを用いる。ガス流路42aの他端は径が拡張されて、遮蔽板41の開口41aに達して給気部42bとなっている。これにより、ガス供給源からのガスGは、ガス流路42aを介して、遮蔽板41の中央から基板Wの被処理面に供給可能に設けられている。
【0058】
また、基体部42には、処理液Lが流通する処理液供給部44が設けられている。処理液供給部44は、基体部42の上部に達し、図示しない処理液Lの液供給源の配管45に接続されている。なお、処理液Lの流量、温度は、MFC25、ヒータ26によって調整されることは、上記の第1の実施形態と同様である。
【0059】
本実施形態の処理液供給部44を流れる処理液Lとしては、例えば、IPA(isopropyl alcohol)などの揮発性溶剤を用いる。IPAは表面張力が小さいため、蒸発する際に、表面張力による基板Wのパターン倒壊が生じにくい。処理液供給部44の他端は、ガス流路42aに気密に貫通して、遮蔽板41の開口41aに達して、ノズルである吐出部44aとなっている。これにより、液供給源からの処理液Lは、処理液供給部44を介して、遮蔽板41の中央の吐出部44aから、基板Wの被処理面に供給可能に設けられている。
【0060】
なお、図示はしないが、基板処理装置6には、洗浄液としての温純水(DIW)を供給するための洗浄液供給ノズル、塩酸-過酸化水素水混合液(HPM:Hydrochloric acid-hydrogen peroxide mixture)を供給するための処理液供給ノズル、アンモニア-過酸化水素水混合液(APM)を供給するための処理液供給ノズルが、揺動機構によって、基板Wの回転中心に移動可能に設けられている。
【0061】
[動作]
以上のような本実施形態の基板処理装置6の動作を、
図5及び
図6を参照して説明する。なお、以下のような手順により基板Wを処理する基板処理方法も、本実施形態の一態様である。
【0062】
まず、処理対象となる基板Wは、搬送ロボットによって、回転体11上に搬入され、保持部13によって保持される。そして、回転体11を、比較的高速な所定速度(例えば、200~300rpm程度)にて回転させながら、回転する基板Wの被処理面に、ガス流路42aを介して、遮蔽板41の中央から基板Wの被処理面にガスGとしてのN2ガスを供給するとともに、洗浄液供給ノズル、処理液供給ノズルから、DIW、HPM、DIW、APM、DIWの順でこれらの液を供給する。これにより、基板Wの被処理面が洗浄されて、DIWで液盛りされる。
【0063】
次に、
図5(A)に示すように、容器31が基板Wの被処理面の上方及び遮蔽板41の下方から外れた待機位置にある状態から、揺動アーム32が揺動することにより、
図5(B)に示すように、遮断位置に移動する。遮断位置は、容器31が吐出部44aの下方(直下)に位置し、処理液Lを受ける位置である。これにより、容器31は、基板Wの回転中心に対応する位置の直上に移動する。なお、本実施形態において、待機位置は、容器31が吐出部44aの下方(直下)から外れ、処理液Lを受けることができない許容位置でもある。
【0064】
そして、タンクTからの処理液Lの供給が開始されると、
図6(A)に示すように、吐出部44aの吐出口から容器31内に処理液Lが継続的に吐出される。つまり、吐出部44aから吐出される処理液Lが、容器31によって基板Wへ落下することが防止された状態でダミー吐出が行われる。このように吐出部44aから処理液Lを吐出しながら、MFC25によって流量が調整されるとともに、ヒータ26によって温度が調整される。例えば、IPAの場合、50℃程度の温度に調整される。容器31内に吐出された処理液Lは、回収口31b及び回収経路34を介して回収される。
【0065】
処理液Lが所望の流量、温度となった場合には、吐出部44aからの処理液Lの吐出を停止する。そして、
図5(A)に示すように、容器31が待機位置に移動する。次に、
図6(B)に示すように、遮蔽部40を下降させることにより、遮蔽板41が基板Wの被処理面に対して、数mm程度の距離まで接近して停止する。ガス流路42aには、N
2ガスが供給されているので、給気部42bから噴き出すN
2ガスが、基板Wの被処理面と遮蔽板41の間の狭い領域に流れて、酸素を含む空気をパージする。
【0066】
これとともに、再度、吐出部44aからの処理液Lの吐出を開始し、基板Wへ処理液Lを供給する。この間の吐出停止時間は、上記の実施形態と同様である。本実施形態では、容器31が遮蔽板41の下方から外れる待機位置まで移動して、遮蔽板41を下降させる動作を必要とするが、この場合であっても、供給停止時間を5秒以内に収めることが可能である。このように吐出部44aから吐出された処理液Lは、所望の流量及び温度によって、基板Wに供給されることにより、温純水が処理液Lによって置換される。つまり、基板Wの被処理面を処理するための本吐出が行われる。
【0067】
例えば、吐出部44aからのIPAが、基板Wの被処理面の中心に連続的に供給されると、IPAが回転する基板Wの外周に向けて順次移動することにより、被処理面上の温純水がIPAによって置換される。所定の処理時間が経過すると、処理液供給部20は、処理液Lの供給を停止する。回転する基板W上のIPAは蒸発して消失するので、基板Wの被処理面が乾燥する。
【0068】
基板Wの被処理面が乾燥すると、遮蔽部40が上昇して、ガスGの供給を停止するとともに、基板Wが回転を停止する。その後、搬送ロボットが、保持部13による保持が解放された基板Wを、チャンバ1aから搬出する。
【0069】
[効果]
本実施形態の基板処理装置6は、回転部10に接離する方向に移動可能に設けられ、基板Wに非接触で対向する遮蔽部40を有し、遮蔽部40には、基板Wの被処理面に対して処理液Lを吐出する吐出部44aと、遮蔽部40の基板Wに対向する面と基板Wとの間に気体を供給する給気部42bと、が設けられている。さらに、本実施形態の基板処理装置6には、上部が開口した容器31を有し、吐出部44aからの処理液Lの供給を遮断する遮断位置と、吐出部44aからの処理液Lの供給を許容する許容位置との間で、吐出部21に対して相対移動可能な受容部30も設けられている。
【0070】
このように、遮蔽部40を有する基板処理装置6の場合、吐出部44aは上下に移動するが、揺動できる構成にはなっていない。このため、従来は、ダミー吐出を行うには、ダミー基板を用いて行う必要があるため、ダミー基板を搬入搬出する工程が必要となるとともに、処理液Lの流量、温度を調整した後に、ダミー基板の搬出、製品基板の搬入を行ってから、本吐出を行う必要があり、本吐出を行うまでに時間がかかるので、調整した流量、温度が変化してしまうことがあった。また、遮蔽部40を水平移動可能に構成し、遮蔽部40を含む処理液Lを吐出する吐出部44aが待機位置にある状態で、待機位置に設けられたダミーディスペンス用のポットに対して、予め処理液Lを供給しながら流量及び温度を調整することも考えられる。しかし、遮蔽部40を水平移動させて待機位置に退避させたときに必要となるスペースが過大で、チャンバ1a自体が大きくなり、基板処理装置6が大型化してしまう。
【0071】
本実施形態では、吐出部44aの吐出位置においてダミー吐出を行うことができるので、ダミー基板の搬入搬出工程が不要となるとともに、処理液Lの流量、温度を調整した直後に、本吐出を行うことができる。つまり、容器31が退避して遮蔽板41が下りるまでの時間は、ダミー基板から処理基板へ切替えるための所要時間に比べて、直後と言える程度に短い時間である。このため、スループットを向上させることができるとともに、流量、温度の変化を抑制して、処理レートの低下を抑制できる。
【0072】
[変形例]
上記の実施形態は、以下のような変形例も構成可能である。
(1)第2の実施形態の遮蔽部40と吐出部44aとは、別体としてもよい。つまり、遮蔽部40とは別に、第1の実施形態のような吐出部21が設けられていてもよい。これにより、吐出部21と容器31とが、遮断位置を維持した状態で待機位置へ移動することができ、処理液Lの基板Wへの落下を防止できる。
【0073】
(2)吐出位置にある吐出部21、44aから、遮断位置にある容器31に対してダミー吐出をしながら、容器31を許容位置に移動させることにより、本吐出に移行することもできる。この場合、ダミー吐出後に吐出を一時停止して、本吐出時に再度吐出することなく、所望の流量及び温度となった処理液Lを、連続して吐出し続ける。このため、流量及び温度の変化をより一層抑えることができる。なお、以下に述べる変形例も、ダミー吐出のための吐出を停止してから本吐出を開始する場合にも、吐出を継続して行いながら、ダミー吐出から本吐出へと切り替える場合にも有効である。
【0074】
(3)
図7及び
図8に示すように、容器31が遮断位置から許容位置へ相対移動する場合に、吐出部21の下方を通過する容器31の外側面に、外側面を流れる処理液Lの被処理面への落下を遮断する副受容部35を設けてもよい。副受容部35は、容器31の外側面の一部を覆うように、ポケット状に形成されている。容器31の上縁は、副受容部35の上縁よりも許容位置側にある。つまり、
図8(A)に示すように、容器31の水平方向の最外縁の端部αよりも、副受容部35の水平方向の最外縁の端部βが内側にある。副受容部35の下部には、処理液Lの排出流路36が設けられ、容器31の回収経路34に合流している。
【0075】
これにより、容器31が許容位置に移動する際に、
図8(B)に示すように、吐出部21から落下した処理液Lが、容器31の開口の上縁に付着して外側面を流れても、
図8(C)に示すように副受容部35に入るので、基板Wの被処理面への落下が防止される。つまり、容器31の最外縁の端部αに処理液Lが流れ落ちて、容器31の側面を伝ったとしても、基板Wには落下しない。このため、被処理面に処理液Lが落下した部分で反応が進んでしまい、品質が劣化することが防止される。なお、このような変形例は、上記の第1の実施形態のみならず、第2の実施形態にも適用可能である。つまり、上記の吐出部44aの下方に位置付けられる容器31に、副受容部35が設けられていてもよい。
【0076】
(4)
図9(A)に示すように、容器31に、吐出部21が対向する貫通孔31dが設けられていてもよい。貫通孔31dは容器31の側面(傾斜面31a)の一部に設けられている。また、貫通孔31dの径は、吐出部21の外径よりも大きい。このため、吐出部21が容器31の上にあっても、
図9(C)に示すように、容器31内の貫通孔31dに対向する位置にある場合には、吐出部21からの処理液Lが基板Wに落下する許容位置となる。そして、
図9(B)に示すように、容器31の上にある吐出部21が、貫通孔31dから外れた位置にある場合には、基板Wへの処理液Lの落下が遮断される遮断位置となる。
【0077】
これにより、
図9(B)に示すように、容器31が遮断位置にある場合には、吐出部21の吐出位置の高さを、容器31の上縁よりも低くしておき、許容位置とする場合には、吐出部21を水平方向の短い距離を移動させればよい。このため、遮断位置にある場合に、吐出部21から吐出した処理液Lが容器31から撥ねて、基板Wに落下することが抑制される。なお、許容位置にある吐出部21は、貫通孔31dに挿通されてもよいし、貫通孔31dの上方で対向してもよい。
【0078】
(5)
図10(A)に示すように、容器31が遮断位置と許容位置との間で移動する場合に、吐出部21の下方を通過する容器31の上縁に、吐出部21が通過する溝31e(図中、黒く塗り潰した部分)が設けられていてもよい。これにより、
図10(B)に示すように、容器31が遮断位置にある場合には、吐出部21の吐出位置の高さを容器31の上縁よりも低くしておき、
図10(C)に示すように、許容位置とする場合には、吐出部21に溝31eを通過させることができる。このため、遮断位置にある場合に、吐出部21から吐出した処理液Lが容器31から撥ねて、基板Wに落下することが抑制される。
【0079】
(6)容器31及び吐出部21が遮断位置及び許容位置との間で変位する場合には、両者が相対移動すればよい。つまり、容器31が移動してもよいし、吐出部21が移動してもよいし、容器31及び吐出部21の双方が移動してもよい。
【0080】
(7)遮断位置でダミー吐出する場合には、吐出部21の吐出位置は、基板Wの中心の上方でなくてもよい。
【0081】
(8)容器31の形状は、逆円錐形状には限定されない。処理液Lを遮断する効果がある形状であればよい。例えば、上記の
図4(B)、
図4(C)で例示した形状も、処理液Lを遮断することができる実施形態の変形例である。
【0082】
(9)DIW等の上記で例示した各種の処理液の供給ノズルに対しても、上記の受容部30を用いることによって、ダミー吐出と本吐出とを短時間で切り替えることができる。また、下面に対して液を供給する機構を設けてもよい。例えば、上面から流れ落ちるエッチング液から保護するための、DIW等を下面に対して供給するための吐出部を設けても良い。
【0083】
(10)本実施形態の処理対象となる基板Wは、半導体ウェーハには限定されず、各種ディスプレイ用の基板等、種々の対象に適用可能である。処理液の種類も、上記で例示したものには限定されず、処理対象、処理内容に応じて適宜変更可能である。
【0084】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。前述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1、6 基板処理装置
1a チャンバ
1b カバー
10 回転部
11 回転体
11a 対向面
12 駆動源
13 保持部
20 処理液供給部
21 吐出部
22 揺動アーム
23 揺動機構
24 配管
26 ヒータ
30 受容部
31 容器
31a 傾斜面
31b 回収口
31d 貫通孔
31e 溝
32 揺動アーム
33 揺動機構
34 回収経路
35 副受容部
36 排出流路
40 遮蔽部
41 遮蔽板
41a 開口
42 基体部
42a ガス流路
42b 給気部
43 配管
44 処理液供給部
44a 吐出部
45 配管
50 制御部