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特許7511634塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスの製造方法
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  • 特許-塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 214/06 20060101AFI20240628BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20240628BHJP
   C08F 2/24 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C08F214/06
C08F2/00 A
C08F2/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022517913
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 KR2020009425
(87)【国際公開番号】W WO2021054593
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】10-2019-0115256
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ソ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】グン・チャン・リュ
(72)【発明者】
【氏名】チュルウン・イ
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-188334(JP,A)
【文献】特開2018-2845(JP,A)
【文献】特開2020-7388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 214/06
C08F 2/00- 2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器に水性分散媒、乳化剤、酢酸ビニル単量体および塩化ビニル単量体を供給して、重合反応を準備する段階;s
前記準備された反応器に開始剤を供給して、重合反応を開始する段階;および
前記重合反応が開始された反応器に前記塩化ビニル単量体および前記乳化剤をそれぞれ連続的に追加供給する段階;を含み、
反応させようとする塩化ビニル単量体の全量(100重量%)中、20~30重量%は前記重合反応を準備する段階で一括供給し、残部は重合反応開始後に時間当り供給量を増加させながら連続的に供給し、
前記塩化ビニル単量体および前記乳化剤の追加供給時、それぞれ独立して時間当り供給量を増加させ、
前記塩化ビニル単量体の追加供給時、前記塩化ビニル単量体の追加供給を開始した時点から、23分までは、時間当り供給量を2ml~3mlに制御しながら1次追加供給し、1次追加供給完了時点から、135分までは、時間当り供給量を4ml~5mlに制御しながら2次追加供給し、2次追加供給完了時点から、68分までは、時間当り供給量を5ml~6mlに制御しながら3次追加供給し、
前記乳化剤の追加供給時、前記乳化剤の追加供給を開始した時点から、107分までは、時間当り供給量を0.4ml~0.8mlに制御しながら1次追加供給し、1次追加供給完了時点から、161分までは、時間当り供給量を0.7ml~1.1mlに制御しながら2次追加供給し、
全体重合反応時間が300分~400分である、
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスの製造方法。
【請求項2】
反応させようとする塩化ビニル単量体および酢酸ビニル単量体の重量比は、
60:40~80:20(塩化ビニル単量体の全量:酢酸ビニル単量体の全量)である、
請求項1に記載の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスの製造方法。
【請求項3】
前記準備された反応器の内部温度が40~80℃に到達した後、
前記開始剤を供給の供給を開始する、
請求項1に記載の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスの製造方法。
【請求項4】
前記塩化ビニル単量体の追加供給は、
全体重合反応時間の1/8以上1/6以下である時点に開始する、
請求項1に記載の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスの製造方法。
【請求項5】
前記乳化剤の追加供給は、
全体重合反応時間の1/7以上1/5以下である時点に開始する、
請求項4に記載の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスの製造方法。
【請求項6】
前記重合反応の開始時点から終了時点に至るまで、時間当り供給量を一定に維持しながら前記開始剤を連続供給する、
請求項1に記載の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスの製造方法。
【請求項7】
前記重合反応の終了時点は、前記塩化ビニル単量体および前記乳化剤の追加供給後に到達した前記反応器の最高圧力に対比して、前記反応器の内部圧力が2~4kgf/cmだけ低くなる時点である、
請求項1に記載の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2019年9月19日付韓国特許出願第10-2019-0115256号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
本発明は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は、全世界的に生活および産業用素材として広く使用される汎用樹脂であり、特に、インク、ペイント、コーティング、接着剤などの顔料分散および接着性能を向上させることに優れる。
【0003】
塩化ビニル系樹脂の製造時、単量体として塩化ビニル単量体のみ単独で使用するよりは、可塑性、流動性、溶解性などの性能を改善するために、塩化ビニル単量体と異種の単量体を使用して共重合体に製造することが一般的である。
【0004】
これは油性または水性分散媒内で製造されて、塩化ビニル系樹脂粒子が分散媒に分散したラテックスの状態で得られる。これによる収得物を乾燥した後に粉砕することによって粉末状の塩化ビニル系樹脂を得ることができるが、ラテックス状態そのままでインク、ペイント、コーティング、接着剤などの製品に適用することも可能である。
【0005】
具体的に、塩化ビニル系樹脂粒子が分散媒に分散したラテックス状態そのままで製品に適用する場合、粉末状の塩化ビニル系樹脂を得るための工程(即ち、乾燥工程および粉砕工程)が省略されることによって、工程費用が節減される利点がある。
【0006】
また、インク、ペイント、コーティング、接着剤などの分野で既存の油性製品を環境に優しい水性製品で代替することが当業界のトレンドであり、これに合わせて水性分散媒を用いて製造したラテックスをそのまま水性製品に適用することも可能である。
【0007】
但し、水性分散媒中で塩化ビニル単量体および異種の単量体を重合させる時、各単量体の反応性が互いに異なって、重合度と分子量の低い共重合体粒子を含むラテックスが生成されるという点は当業界で克服しなければならない課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一実施形態は、重合度と分子量が高く粒子の組成が均一な塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体粒子が含まれているラテックスを製造する方法を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態では、水性分散媒および乳化剤の存在下で塩化ビニル単量体および酢酸ビニル単量体を乳化重合させ、前記塩化ビニル単量体および前記乳化剤の供給方式を最適化することによって、前記課題を解決しようとする。
【0010】
具体的に、本発明の一実施形態では、開始剤および乳化剤の存在下で反応させようとする酢酸ビニル単量体と塩化ビニル単量体を一部反応させた後、開始剤、塩化ビニル単量体および乳化剤を連続的に追加供給する半連続式(semi-continuous)反応を用いる。
【発明の効果】
【0011】
前記一実施形態によれば、酢酸ビニル単量体と塩化ビニル単量体の反応が開始された状態で、開始剤、塩化ビニル単量体および乳化剤を連続的に追加供給する過程中に反応熱および反応速度が容易に制御されて、重合度と分子量が高く粒子の組成が均一な塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体粒子が含まれているラテックスを得ることができる。
【0012】
このように重合度と分子量が高く粒子の組成が均一な塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体粒子が含まれているラテックスは、インク、ペイント、コーティング、接着剤などの製品に適用されてその製品の機械的強度を向上させることに寄与できる。
【0013】
また、前記一実施形態は水性分散媒を使用するので、ラテックス状態の最終収得物を別途に処理せずにそのまま水性製品に適用することが可能で、環境に優しい製品開発にも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態で使用可能な反応器を例示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は多様な変換を加えることができ、様々な実施形態を有することができるところ、特定実施形態を例示し詳細に説明しようとする。しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変換、均等物乃至代替物を含むと理解されなければならない。本発明を説明することにおいて、関連公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不分明にする可能性があると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0016】
また、以下で使用される第1、第2などのように序数を含む用語は多様な構成要素を説明することに使用できるが、前記構成要素は前記用語によって限定されない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しないながら第1構成要素は第2構成要素と命名することができ、同様に、第2構成要素も第1構成要素と命名することができる。
【0017】
単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本出願で、“含む”または“有する”などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在するのを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解されなければならない。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を詳しく説明する。
【0018】
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスの製造方法
本発明の一実施形態では、水性分散媒および乳化剤の存在下で塩化ビニル単量体および酢酸ビニル単量体を乳化重合させ、前記塩化ビニル単量体および前記乳化剤の供給方法を最適化することによって、重合度と分子量の高い塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体粒子が含まれているラテックスを得る方法を提供する。
【0019】
一般にラテックスの製造時、単量体の供給方式としては、回分式(batch)、半連続式(semi-continuous)、または連続式(continuous)供給方式をとることができる。
【0020】
ここで、回分式は一度原料を入れると目的を達成するまで反応を継続する方式であり、連続式(continuous)は続けて原料を供給する方式であり、半連続式は最初に原料を入れて反応が進められるにつれて他の原料を添加する方法であり、このうちのいずれの方式を用いるかはラテックス製造反応の性質、生産量などの様々な要因を考慮して決定することができる。
【0021】
具体的に、塩化ビニル単量体を使用してラテックスを製造する場合、重合反応の温度が高まるほど重合度と分子量の低い重合体が製造される傾向があるという点を考慮する必要がある。
【0022】
これに関連して、一度原料を入れて目的を達成するまで反応させる回分式(batch)は、塩化ビニル単量体を使用する重合反応中に発生する重合熱と反応速度の制御が難しいという点から、不適なことがある。
【0023】
一方、反応中に原料を継続的に供給する連続式は、回分式に比べては重合熱が抑制されるが、塩化ビニル単量体を使用する重合反応を開始した後、終結するまで継続して原料を供給する過程中に依然として重合熱と反応速度を望み通りに制御しにくいという短所がある。
【0024】
その反面、原料のうちの一部のみ入れて反応させ、反応中に原料を継続的に追加供給する半連続式(semi-continuous)反応を用いれば、塩化ビニル単量体を使用する重合反応中に過度に高い反応熱が発生することを抑制し、反応速度を制御することができる。
【0025】
実際に、後述の実験例で、塩化ビニル単量体と酢酸ビニル単量体を使用して塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスを製造する時、回分式反応を用いる場合より、半連続式(semi-continuous)反応を用いる場合、相対的に重合度と分子量が高く粒子の組成が均一な塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体粒子が含まれているラテックスが得られると確認された。
【0026】
但し、後述の実験例で、塩化ビニル単量体と酢酸ビニル単量体を使用して塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスを製造することにおいて半連続式(semi-continuous)反応を用いても、物性評価が不可能な程度に安定性が劣勢なラテックスが得られる場合があった。ここで物性評価が不可能な程度は、水性分散媒に粒子が安定な状態で分散せず安定性が壊れて沈殿したことを意味する。
【0027】
より具体的に、開始剤および乳化剤の存在下で酢酸ビニル単量体と塩化ビニル単量体を一部反応させた後、乳化剤の追加供給なく開始剤と塩化ビニル単量体のみ追加的に供給する場合には、物性評価が不可能な程度に安定性が良くないラテックスが得られると確認された。
【0028】
このような結果から、塩化ビニル単量体と異種の単量体を重合させながら最終収得物の物性を一定範囲内で統制しようとする場合、各単量体の反応性が互いに異なる点をさらに考慮して、重合反応開始後に追加的に供給する物質とその供給順序などを最適化しなければならないという点を認識することができる。
【0029】
これに関連して、本発明の一実施形態では、反応器に水性分散媒、乳化剤、酢酸ビニル単量体および塩化ビニル単量体を供給して、前記単量体の重合反応を準備する段階;前記準備された反応器に開始剤を供給して、前記単量体の重合反応を開始する段階;および前記単量体の重合反応が開始された反応器に前記塩化ビニル単量体および前記乳化剤をそれぞれ連続的に追加供給する段階;を含む。
【0030】
前記一実施形態によれば、開始剤および乳化剤の存在下で反応させようとする酢酸ビニル単量体と塩化ビニル単量体が一部反応した状態で開始剤、塩化ビニル単量体および乳化剤が連続的に追加供給され、この過程で反応熱および反応速度が容易に制御されて、重合度と分子量が高く粒子の組成が均一な塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体粒子が含まれているラテックスを得ることができる。
【0031】
このように重合度と分子量が高く粒子の組成が均一な塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体粒子が含まれているラテックスは、インク、ペイント、コーティング、接着剤などの製品に適用されてその製品の機械的強度を向上させるのに寄与できる。
【0032】
また、前記一実施形態は水性分散媒を使用するので、ラテックス状態の最終収得物を別途に処理せずそのまま水性製品に適用することが可能で、環境に優しい製品の開発にも寄与できる。
以下、前記一実施形態をより詳しく説明する。
【0033】
前記一実施形態で、反応させようとする塩化ビニル単量体および酢酸ビニル単量体の重量比は、60:40~80:20(塩化ビニル単量体の全量:酢酸ビニル単量体の全量)であって、この範囲で製造された共重合体ラテックスの可塑性、流動性、溶解性などの性能が優れるように発現できる。但し、これは例示に過ぎず、当業界技術常識により前記塩化ビニル単量体の全量および前記酢酸ビニル単量体の重量比を調節することができる。
【0034】
一方、前記重合反応開始前後に供給する塩化ビニル単量体の全量を100重量%とする時、そのうちの20~30重量%は前記重合反応開始前準備段階で一括供給し、残部は前記重合反応開始後に時間当り供給量を増加させながら連続的に供給することができる。
【0035】
このように、重合反応開始前の前記塩化ビニル単量体の供給量を相対的に少なくし、開始後に追加供給される量を相対的にさらに多くすることによって、重合初期に発生する反応熱を最大限抑制することができる。また、追加供給時に供給速度(時間当り供給量)を増加させながら連続的に供給することによって、続けられた反応において反応熱を抑制し、反応速度制御によって生成される共重合体の重合度および分子量の制御が容易になる。
【0036】
前記塩化ビニル単量体の一部および前記酢酸ビニル単量体の全量が供給された状態で、前記反応器の内部温度が反応温度に到達した以後、前記開始剤を供給して前記単量体の重合反応を開始することができる。
【0037】
前記反応温度は、前記塩化ビニル単量体および前記酢酸ビニル単量体が反応可能な温度範囲である40~80℃範囲内で調節することができ、例えば、前記反応温度の下限は40、45、50、55、または60℃とし、上限は80、75、または70℃とすることができる。
【0038】
また、前記塩化ビニル単量体の追加供給の開始と同時に前記乳化剤の追加供給を開始することもできるが、前記塩化ビニル単量体の追加供給の開始後一定時間が経過した後に前記乳化剤の追加供給を開始することもできる。前者に対比して後者の場合、相対的に狭い粒度分布を有することができ安定性がさらに良いラテックスを得ることができる利点があり得る。
【0039】
例えば、前記開始剤の供給による乳化重合の開始時点から40~50分後に前記塩化ビニル単量体の追加供給を開始し、前記塩化ビニル単量体の追加供給開始時点から10~20分後に前記乳化剤の追加供給を開始することができる。
【0040】
但し、これは例示であり、前記各物質の追加供給開始時間は、全体重合反応時間に依存して相対的に決定することもできる。具体的に、全体重合反応時間が300分~400分である時、この全体重合反応時間の1/8以上1/6以下である時点に前記塩化ビニル単量体の追加供給を開始し、また全体重合反応時間の1/7以上1/5以下である時点に前記乳化剤の追加供給を開始することができる。
【0041】
一方、前記塩化ビニル単量体および前記乳化剤の追加供給時、それぞれ独立して時間当り供給量(即ち、供給速度)を増加させることができる。この場合、供給速度を一定にし、前記塩化ビニル単量体および前記乳化剤を追加供給する場合に対比して、反応熱制御容易性、重合時間短縮などの利点をとることができる。
【0042】
この時、前記塩化ビニル単量体の追加供給速度は3段階に増加させ、前記乳化剤の追加供給速度は2段階に増加させることができる。
【0043】
例えば、前記塩化ビニル単量体の場合、追加供給を開始した時点から全体重合反応時間の1/8以上2/9以下である時点までは、時間当り供給量を2ml~3mlに制御しながら1次追加供給し;前記1次追加供給完了時点から、全体重合反応時間の2/9以上3/5以下である時点までは、時間当り供給量を4ml~5mlに制御しながら2次追加供給し;前記2次追加供給完了時点から、全体重合反応時間の3/5以上4/5以下である時点までは、時間当り供給量を5ml~6mlに制御しながら3次追加供給することができる。
【0044】
また、前記乳化剤の場合、前記乳化剤の追加供給を開始した時点から、全体重合反応時間の1/7以上1/2以下である時点までは、時間当り供給量を0.4ml~0.8mlに制御しながら1次追加供給し;前記1次追加供給完了時点から、全体重合反応時間の1/2以上19/20以下である時点までは、時間当り供給量を0.7ml~1.1mlに制御しながら2次追加供給することができる。
【0045】
このように前記塩化ビニル単量体および前記乳化剤の各供給速度変化を異なるようにすることによって、反応熱制御効果が向上できる。但し、前記各数値範囲は例示であり、各数値範囲内で上限および下限を調節することも可能である。
【0046】
前記開始剤の場合、前記重合反応の開始時点から終了時点に至るまで、時間当り供給量を一定に維持しながら連続供給することができ、その時間当り供給量は0.7ml~1.1ml範囲内で一定に維持することができる。この範囲で重合時間の遅延がなく分子量が小さくならない効果があるが、この範囲内で上限および下限を調節することも可能である。
【0047】
前記重合反応の終了時点は、前記塩化ビニル単量体および前記乳化剤の追加供給後到達した前記反応器の最高圧力に対比して、前記反応器の内部圧力が2~4kgf/cmだけ低くなる時点にすることができる。但し、これは例示に過ぎず、この範囲内で上限および下限を調節することも可能である。
【0048】
前述の説明以外の事項は、一般に当業界に知られたところに従って行うことができる。以下、当業界に知られた事項を簡単に説明するが、前記一実施形態はこれに制限されなくてもよい。
【0049】
非制限的な例として、前記水溶性開始剤としては、ポタシウムペルスルフェート、アンモニウムペルスルフェート、ナトリウムペルスルフェート、ナトリウムビスルフェート、およびナトリウムハイドロサルファイトからなる群より選択された1種以上の化合物を使用することができる。
【0050】
また、前記乳化剤としては、陰イオン性乳化剤、非イオン性乳化剤またはこれらの混合物を使用することができる。
【0051】
前記陰イオン性乳化剤としては、具体的に、炭素数6~20脂肪酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、炭素数6~20アルキルスルホン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、炭素数6~20アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、炭素数6~20アルキルスルフェートのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、炭素数6~20アルキルジスルホン酸ジフェニルオキシドのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、またはこれらの混合物を使用することができる。
【0052】
前記非イオン性乳化剤としては、炭素数6~20のアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンモノラウレート(sorbitan monolaurate)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、またはこれらの混合物を使用することができる。
【0053】
前記乳化剤は、前記単量体混合物100重量部に対して0.005~1.0重量部、あるいは0.01~0.5重量部、あるいは0.01~0.1重量部で添加することができる。前記乳化剤が前記含量範囲内に使用される場合、塩化ビニル系単量体に比べて水溶性の高いエチレン性不飽和単量体とヒドロキシル系単量体の重合転換および粒子安定性を向上させることができる。
【0054】
前記陰イオン性乳化剤と非イオン性乳化剤が混合されて使用される場合、前記乳化剤の含量範囲内で、前記陰イオン性乳化剤および前記非イオン性乳化剤は、1:0.5~1:200、あるいは20:1~1:50、あるいは50:1~1:20の重量比で混合できる。
【0055】
前記陰イオン性乳化剤および前記非イオン性乳化剤が前記重量比範囲内に混合される場合、スラリーの安定性を確保することができ、前記エチレン性不飽和化合物の反応転換率を最大限増加させることができ、重合された塩化ビニル系樹脂の表面から樹脂内部への熱伝達を最大限防止することができる。
【0056】
前記添加剤として前記乳化剤が使用され、開始剤として水溶性開始剤が使用される場合、前記乳化剤および前記水溶性開始剤は1:10~10:1、あるいは1:20~20:1、あるいは1:1~20:1、あるいは2:1~15:1の重量比で混合使用できる。
【0057】
前記乳化剤や水溶性開始剤は重合された塩化ビニル系樹脂の表面に位置して、樹脂内部への熱伝達を遮断し、樹脂の変性を最少化することができる。具体的に、エチレン性不飽和単量体は塩化ビニルに比べて相対的に水に対する溶解度が高くて、水性分散媒を使用した乳化重合において塩化ビニルの液滴内部よりは塩化ビニルの液滴外部または水相に分布する確率が高い。この時、塩化ビニルの液滴外部と水相に分布されているエチレン性不飽和単量体を捕集して重合に参加するように誘導することによって、化合物の反応転換率を高めることができる。前記水溶性開始剤も同様にエチレン性不飽和単量体の反応転換率を高めることができる。また、前記乳化剤および水溶性開始剤は重合された塩化ビニル系樹脂の表面に分布する粒子モルフォロジー形成を誘導して熱による分子構造変性を最少化することができる。これにより、乳化剤と水溶性開始剤を前記比率範囲内に混合使用する場合、乳化剤使用による接着性低下を最少化するラテックスを得ることができる。
【0058】
一方、前記重合反応は、図1の装置100を用いて行うことができる。
具体的に、図1の装置100は、攪拌機111およびマグネチックドライブ(Magnetic drive)112を有する反応器110に、原料供給ポンプ121~123が連結されたものであってもよい。
【0059】
ここで、原料供給ポンプ121~123はそれぞれ連結管を通じて互いに異なる原料が収容された容器(図示せず)と連結されており、供給ポンプに望む流量値を入力すればその値に該当する流量の原料を前記反応器110に供給することができるシステムが備えられている。
【0060】
具体的に、いずれか一つの原料供給ポンプ(例えば、121)は塩化ビニル単量体が収容された容器と連結され、他の一つの原料供給ポンプ(例えば、122)は開始剤が収容された容器と連結され、また他の一つの原料供給ポンプ(例えば、123)は乳化剤が収容された容器と連結されてもよい。
【0061】
前記原料供給ポンプ121~123はそれぞれ連結管を通じて前記反応器110の上部に連結され、各連結管中間にはバルブが位置して原料の供給有無を制御することができる。
【0062】
例えば、酢酸ビニル単量体全量とその他添加剤を前記反応器110に供給した後、真空ポンプ(図示せず)を用いて前記反応器110内の残存酸素を除去することができる。その後、前記原料供給ポンプ121から、反応させようとする塩化ビニル単量体の一部のみ前記反応器110に供給した後、前記攪拌機111を用いて攪拌を開始して重合が終了する時点まで一定の速度で攪拌することができる。具体的に、前記攪拌は100~300rpmで行うことができる。また、この過程で前記マグネチックドライブ112は前記攪拌機111を回転させる役割を果たす。
【0063】
前記攪拌を続けながら、前記反応器の内部温度が反応温度に到達するまで昇温させた後、前記原料供給ポンプ122から前記反応器110に一定の速度で開始剤を供給することができる。
【0064】
前記開始剤の連続的供給が開始された時点から一定時間経過後、前記原料供給ポンプ121から、反応させようとする塩化ビニル単量体の残部を前記反応器110に連続的に追加供給し、この過程で前記塩化ビニル単量体の追加供給量は3段階で増加するようにすることができる。
【0065】
また、前記塩化ビニル単量体の追加供給が開始された時点から一定時間経過後、前記原料供給ポンプ123から、乳化剤も前記反応器110に連続的に追加供給し、この過程で前記乳化剤の追加供給量は2段階で増加するようにすることができる。
【0066】
一方、前記開始剤の連続的供給は、前記塩化ビニル単量体および前記乳化剤の追加供給中にも一定の速度で維持することができる。但し、前記乳化剤供給終了後、前記反応器内圧が塩化ビニル単量体(Vinyl Chloride Monomer)連続供給中最高圧力に対比して2~4kg/cm降下すると、前記開始剤の連続的供給を終了することができる。
【0067】
最終的に、前記反応器内ガス(Gas)状で残っている未反応塩化ビニル単量体(Vinyl Chloride)を回収した後、反応器下端バルブを開けて重合体ラテックス(Latex)を回収することができる。
【0068】
但し、図1の装置100を用いる方法は一例示に過ぎず、一般に当業界で半連続式(semi-continuous)反応に用いる装置であれば特に制限なく本発明を実現するのに使用できる。
【0069】
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックス
本発明の他の一実施形態では、前述の一実施形態の製造方法によって製造されて、水性分散媒;および前記水性分散媒に分散したビニルクロライド-ビニルアセテート共重合体粒子;を含む、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスを提供する。
【0070】
前記ビニルクロライド-ビニルアセテート共重合体ラテックスは、体積平均大きさD[4,3]が0.160~0.175μmであってもよく、その大きさの分布度が1.900~2.300である共重合体粒子を含むことができる。これは、回分式反応を用いてビニルクロライド-ビニルアセテート共重合体ラテックスを製造した場合に対比して、その大きさが小さく、その大きさ分布度が狭い粒子が含まれていることを意味する。
【0071】
ここで、粒子の体積平均大きさD[4,3]とその大きさの分布度は、市販されるレーザ回折粒度測定装置を使用して求めることができる。具体的に、前記ビニルクロライド-ビニルアセテート共重合体ラテックスをレーザ回折粒度測定装置(例えば、Mastersizerなど)に導入し、レーザビームを照射して前記ラテックスを通過するようにすれば、前記ラテックス内共重合体粒子の大きさによって回折パターンの差が発生することがある。
【0072】
前記レーザ回折粒度測定装置は、その装置内で発生した回折パターンの差を分析して、実際共重合体粒子と同一な表面積を有する球体の平均直径を算出してD[4,3]値として出力し、共重合体粒子大きさの分布度も分析して出力することができる。
【0073】
一方、粒子組成の均一性はガラス転移温度から間接的に把握できる。前述の一実施形態によって半連続式で製造されたビニルクロライド-ビニルアセテート共重合体ラテックスは一つ(1 point)のガラス転移温度を有する反面、回分式で製造されたビニルクロライド-ビニルアセテート共重合体ラテックスは二つ(2 points)のガラス転移温度を有することができる。
【0074】
具体的に、前記前述の一実施形態によって半連続式で製造されたビニルクロライド-ビニルアセテート共重合体ラテックスは、ガラス転移温度が60~70℃であってもよい。
【0075】
前記ビニルクロライド-ビニルアセテート共重合体ラテックスの重量平均分子量は、80,000~85,000g/moleであってもよく、これは回分式で製造されたビニルクロライド-ビニルアセテート共重合体ラテックスに対比して増加された範囲であり得る。
【0076】
このように重合度と分子量の高い共重合体粒子は、インク、ペイント、コーティング、接着剤などの製品に適用してコーティングフィルムを形成する時、機械的強度を向上させるのに寄与できる。
【0077】
また、前記一実施形態は水性分散媒を使用するので、ラテックス状態の最終収得物を別途に処理せず、そのまま水性製品に適用することが可能である。
前記水性製品の範囲は、インク、ペイント、コーティング剤、接着剤などを含む生活および産業用素材であれば特に制限されない。
【0078】
前記塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスの粒子大きさおよび大きさの分布度、ガラス転移温度、重量平均分子量などは、前述の一実施形態の製造方法によって原料の供給条件を調節することにより前記各範囲内で望み通りに制御することができる。
【0079】
前記原料の供給条件を調節する方法は、先に詳しく説明した通りであり、それ以上の説明を省略する。
【0080】
前記塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体ラテックスは、可塑剤;およびエチレンビニル酢酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリブタジエン、シリコン、熱可塑性エラストマーまたはこれらの共重合体のうちから選択された樹脂;をさらに添加して、樹脂組成物に製造できる。
【0081】
前記可塑剤は、当業界に一般に知られた可塑剤を使用することができる。例えば、フタレートあるいはテレフタレート化合物を含む可塑剤を使用することもでき、前記フタレートあるいはテレフタレート化合物を水素化して前記可塑剤として使用することも可能である。
【0082】
前記樹脂組成物は多様な製品に使用できる。例えば、安定剤、塗料、インク、液状発泡剤(Masterbatch類)、接着剤などの製品に使用できる。また、食品包装用フィルム(例えば、ラップ)、工業用フィルム、コンパウンド、デコシート、デコタイル、軟質シート、硬質シート、電線およびケーブル、壁紙、発泡マット、レザー、床材、ターポリン、手袋、シーラント、冷蔵庫などのガスケット、ホース、医療機器、ジオグリッド、メッシュターポリン、玩具用品、文具用品、絶縁テープ、衣類コーティング剤、衣類または文具用などに使用されるPVCラベル、栓ライナー、工業用またはその他用途の栓、人工餌、電子機器内部品(例えば、sleeve)、自動車内装材、接着剤、コーティング剤などの製造に使用できるが、これに制限されるわけではない。
【0083】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述することにする。但し、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が決められるのではない。
【実施例
【0084】
実施例1(Semi-continuous System)
(1)攪拌機を有する5L容量のオートクレーブ(Autoclave)反応器に、反応させようとする酢酸ビニル単量体の全量を供給して反応を準備した。この工程で、乳化剤も一部供給した。
【0085】
具体的に、酢酸ビニル単量体(Vinyl Acetate Monomer)462g、蒸留水(Distilled Water)1290g、還元剤であるメタ重亜硫酸ナトリウム(Sodium Metabisulfite)1.41g、乳化剤であるラウリル硫酸ナトリウム(Sodium Lauryl Sulfate、100%固相)1.21gおよびグリセリルモノステアレート(Glyceryl Monostearate)0.62g、緩衝剤である炭酸水素ナトリウム(Sodium Bicarbonate)1.3g、助触媒である0.001%硫酸銅(Cupper Sulfate)6gを供給し、真空ポンプ(Vacuum Pump)を用いて反応器内残存酸素を除去した。
【0086】
(2)その後、反応させようとする塩化ビニル単量体の一部を供給し、開始剤を連続的に供給しながら重合反応を開始した。
【0087】
具体的に、反応させようとする塩化ビニル単量体の全量は1078gであり、そのうちの20重量%に該当する量(216g)を前記反応器に供給し、前記反応器の内部温度が65℃に到達するまで昇温させた。
【0088】
前記反応器内部温度が65℃に到達した後、開始剤を0.87ml/minの速度で連続的に供給しながら重合反応を開始した。前記開始剤は0.055%過硫酸カリウム(Potassium Persulfate)溶液であり、この溶液の溶媒は蒸留水(Distilled Water)であり、前記含量(%)基準は前記溶液全体重量(100重量%)に対する溶質の含量である。
【0089】
(3)前記重合反応開始時点(即ち、前記開始剤の供給開始時点)から一定時間経過後、反応させようとする塩化ビニル単量体の残部を供給し、乳化剤を追加供給した。この過程で、開始剤を依然として連続的に供給しながら、前記塩化ビニル単量体の残部は3段階に分けて次第に増加する流量で供給し、前記乳化剤は2段階に分けて次第に増加する流量で追加供給した。
【0090】
具体的に、前記重合反応開始時点から40~50分後、前記反応させようとする塩化ビニル単量体の残部(全量の中の80%、862g)の連続供給を開始した。但し、前記塩化ビニル単量体の残部供給開始後23分までは2.54ml/minの流量で連続供給し(1段階)、1段階供給完了時点から135分までは4.42ml/minの流量で連続供給し(2段階)、2段階供給完了時点から68分までは5.74ml/minの流量で連続供給した(3段階)。
【0091】
一方、前記塩化ビニル単量体の残部供給開始時点から10~20分後、乳化剤の連続的追加供給を開始した。ここで、乳化剤は4%ラウリル硫酸ナトリウム(Sodium Lauryl Sulfate)溶液であり、この溶液の溶媒は蒸留水(Distilled Water)であり、前記含量(%)基準は前記溶液全体重量(100重量%)に対する溶質の含量である。
【0092】
但し、前記乳化剤の追加供給開始後、107分までは0.74ml/minの流量で連続供給し(1段階)、1段階供給完了時点から161分までは1.08ml/minの流量で連続供給した(2段階)。
【0093】
前記塩化ビニル単量体の残部および前記乳化剤の追加供給過程で、前記開始剤は連続的供給を持続した。
前記乳化剤供給終了後、前記反応器内圧が塩化ビニル単量体(Vinyl Chloride Monomer)連続供給中最高圧力に対比して2~4kg/cm降下すると、前記開始剤の供給を終了した。
【0094】
その後、前記反応器内ガス(Gas)状で残っている未反応塩化ビニル単量体(Vinyl Chloride)を回収した後、反応器下端バルブを開けて重合体ラテックス(Latex)を回収した。
【0095】
実施例2
実施例1の(1)および(2)と同一な過程で、反応器に酢酸ビニル単量体の全量およびこれと反応させようとする塩化ビニル単量体の一部を供給し、乳化剤の存在下で開始剤を連続的に供給して重合反応を開始した。
【0096】
また、前記実施例1の(3)と同一な時点に、塩化ビニル単量体の残部および乳化剤の追加供給を開始した。但し、各物質の追加供給速度を前記実施例1と異なるようにした。
【0097】
具体的に、前記重合反応開始時点から40~50分後、前記反応させようとする塩化ビニル単量体の残部(全量中の80%、862g)の供給を開始して、この供給開始時点から20分までは2.94ml/minの流量で連続供給し(1段階)、1段階供給完了時点から117分までは5.10ml/minの流量で連続供給し(2段階)、2段階供給完了時点から59分までは6.62ml/minの流量で連続供給した(3段階)。
【0098】
また、前記塩化ビニル単量体の残部供給開始時点から10~20分後、乳化剤(4%ラウリル硫酸ナトリウム溶液)の連続的追加供給を開始して、この追加供給開始時点から95分までは0.84ml/minの流量で連続供給し(1段階)、1段階供給完了時点から143分までは1.22ml/minの流量で連続供給した(2段階)。
【0099】
この他残りは前記実施例1と同一にした。具体的に、前記塩化ビニル単量体の残部および前記乳化剤の追加供給過程で、前記開始剤は0.87ml/min流量で連続的供給を持続した。また、前記乳化剤供給終了後、前記反応器内圧が塩化ビニル単量体(Vinyl Chloride Monomer)連続供給中最高圧力に対比して2~4kg/cm降下すると、前記開始剤の供給を終了した。最終的に、前記反応器内ガス(Gas)状で残っている未反応塩化ビニル単量体(Vinyl Chloride)を回収した後、反応器下端バルブを開けて重合体ラテックス(Latex)を回収した。
【0100】
実施例3
実施例1の(1)および(2)と同一な過程で、反応器に酢酸ビニル単量体の全量およびこれと反応させようとする塩化ビニル単量体の一部を供給し、乳化剤の存在下で開始剤を連続的に供給して重合反応を開始した。
【0101】
一方、前記実施例1の(3)と異なる時点に、塩化ビニル単量体の残部および乳化剤の追加供給を開始した。但し、各物質の追加供給速度は前記実施例1と同一にした。
【0102】
具体的に、前記重合反応開始時点から20~30分後、前記反応させようとする塩化ビニル単量体の残部(全量中の80%、862g)の連続供給を開始して、この供給開始時点から23分までは2。54ml/minの流量で連続供給し(1段階)、1段階供給完了時点から135分までは4.42ml/minの流量で連続供給し(2段階)、2段階供給完了時点から68分までは5.74ml/minの流量で連続供給した(3段階)。
【0103】
一方、前記塩化ビニル単量体の残部供給開始時点から10~20分後、乳化剤(4%ラウリル硫酸ナトリウム溶液)の連続的追加供給を開始して、この追加供給開始時点から107分までは0.74ml/minの流量で連続供給し(1段階)、1段階供給完了時点から161分までは1.08ml/minの流量で連続供給した(2段階)。
【0104】
この他残りは前記実施例1と同一にした。具体的に、前記塩化ビニル単量体の残部および前記乳化剤の追加供給過程で、前記開始剤は0.87ml/min流量で連続的供給を持続した。また、前記乳化剤供給終了後、前記反応器内圧が塩化ビニル単量体(Vinyl Chloride Monomer)連続供給中最高圧力に対比して2~4kg/cm降下すると、前記開始剤の供給を終了した。最終的に、前記反応器内ガス(Gas)状で残っている未反応塩化ビニル単量体(Vinyl Chloride)を回収した後、反応器下端バルブを開けて重合体ラテックス(Latex)を回収した。
【0105】
比較例1(Batch System)
攪拌機を有する5L容量のオートクレーブ(Autoclave)反応器に、乳化剤および開始剤の存在下で、酢酸ビニル単量体の全量および塩化ビニル単量体の全量を供給して重合反応させた。
【0106】
(1)具体的に、酢酸ビニル単量体(Vinyl Acetate Monomer)462g、蒸留水(Distilled Water)1290g、還元剤であるメタ重亜硫酸ナトリウム(Sodium Metabisulfite)1.41g、開始剤である過硫酸カリウム(Potassium Persulfate、100%固相)0.17g、乳化剤であるラウリル硫酸ナトリウム(Sodium Lauryl Sulfate、100%固相)11.37gおよびグリセリルモノステアレート(Glyceryl Monostearate)0.62g、緩衝剤である炭酸水素ナトリウム(Sodium Bicarbonate)1.3g、および助触媒である0.001%硫酸銅(Copper Sulfate)6gを供給し、真空ポンプ(Vacuum Pump)を用いて反応器内残存酸素を除去した。
【0107】
(2)その後、反応させようとする塩化ビニル単量体の全量(1,078g)を一括供給し、昇温を開始して重合温度を65℃で維持して反応を行った。この過程で開始剤と乳化剤は追加供給しなかった。
【0108】
前記反応器内圧が反応中最高圧力に対比して2~4kg/cm降下すると、反応を終了させ、前記反応器内ガス(Gas)状で残っている未反応塩化ビニル単量体(Vinyl Chloride)を回収した後、反応器下端バルブを開けて重合体ラテックス(Latex)を回収した。
【0109】
比較例2
実施例1の(1)および(2)と同一な過程で、反応器に酢酸ビニル単量体の全量およびこれと反応させようとする塩化ビニル単量体の一部を供給し、乳化剤の存在下で開始剤を連続的に供給して重合反応を開始した。
【0110】
また、前記実施例1の(3)と同一な時点に、塩化ビニル単量体の残部を追加供給し始めた。但し、前記実施例1の(3)と異なり、乳化剤の追加供給はなく、塩化ビニル単量体の供給速度を変化させず一定にした。
【0111】
具体的に、前記重合反応開始時点から40~50分後、前記反応させようとする塩化ビニル単量体の残部(全量中80%、862g)を供給し始めて、この供給開始時点から225分間4.21ml/minの流量で一定に連続供給した。
【0112】
この他残りは前記実施例1と同一にした。具体的に、前記塩化ビニル単量体の残部を追加供給する過程で、前記開始剤に対して0.87ml/minの流量で連続的供給を持続した。その後、前記反応器内圧が塩化ビニル単量体(Vinyl Chloride Monomer)連続供給中最高圧力に対比して2~4kg/cm降下すると、前記開始剤の供給を終了した。最終的に、前記反応器内ガス(Gas)状で残っている未反応塩化ビニル単量体(Vinyl Chloride)を回収した後、反応器下端バルブを開けて重合体ラテックス(Latex)を回収した。
【0113】
実験例
前記実施例および比較例からそれぞれ製造されたラテックスを次のような方法で評価し、その評価結果を表1に記録した。
【0114】
粒子大きさD[4,3]および粒子大きさの分布度:各ラテックスを10~20%の濃度になるように蒸留水で希釈してレーザ回折粒度測定装置(製造会社:Malvern Panalytical、機器名:Mastersizer 3000)に導入し、レーザビームを照射してラテックスを通過するようにする時、粒子大きさによって回折パターンの差が発生することから、ラテックス内共重合体粒子の体積平均大きさD[4,3]値を得て、その大きさの分布度を得ることができた。
【0115】
ガラス転移温度:示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、DSC、装置名:DSC2920、製造会社:TA instrument)を用いて、0℃から140℃まで温度を変化させながらラテックスを乾燥させて粉末を収得し、各粉末のエネルギーグラフ(Energy Graph)を得て、グラフに示される変曲点値をガラス転移温度にした。
【0116】
重量平均分子量:各ラテックスを乾燥した後、粉砕して粉末を収得し、各粉末をテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)に溶解させた後、ゲルクロマトグラフィ(Gel Permeation Chromatography、GPC)を用いて常温で重量平均分子量値を得た。
【0117】
【表1】
【0118】
上記表1によれば、前記実施例1のラテックスには、前記比較例1のラテックスに対比して重合度と分子量が高く粒子の組成が均一な塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体粒子が含まれていると確認される。
【0119】
参考として、粒子組成の均一性はガラス転移温度から間接的に把握できる。均一な前記実施例1のラテックスは一つ(1 point)のガラス転移温度を有する反面、粒子組成が不均一な前記比較例1のラテックスは二つ(2 points)のガラス転移温度を有する。
【0120】
前記実施例1のラテックスと前記比較例1のラテックスの物性差は、反応器操作方式の差に起因する。塩化ビニル単量体を使用する重合反応では、反応温度が高まるほど、重合度と分子量の低い重合体が製造される傾向があるためである。
【0121】
具体的に、前記比較例1の場合、一度原料(ここで、単量体、開始剤、および乳化剤)を入れて目的を達成するまで反応を続ける回分式(batch)反応を用いることによって、反応中に発生する重合熱と反応速度の制御が難しい。
【0122】
その反面、前記実施例1の場合、開始剤および乳化剤の存在下で酢酸ビニル単量体と塩化ビニル単量体を一部反応させた後、開始剤、塩化ビニル単量体および乳化剤を連続的に追加供給する半連続式(semi-continuous)反応を用いる。
【0123】
前記実施例1で開始剤、塩化ビニル単量体および乳化剤を連続的に追加供給する過程で、これらの供給速度(時間当り供給量)を調節することによって、過度に高い反応熱が発生することを抑制し反応速度を適正範囲で制御することが可能である。
【0124】
したがって、前記実施例1のように開始剤および乳化剤の存在下で反応させようとする酢酸ビニル単量体と塩化ビニル単量体を一部反応させた後、開始剤、塩化ビニル単量体および乳化剤を連続的に追加供給する半連続式(semi-continuous)反応を用いると、前記比較例1のように回分式(batch)反応を用いる場合に対比して、相対的に重合度と分子量が高く粒子の組成が均一な塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体粒子が含まれているラテックスを得ることができる。
【0125】
但し、半連続式(semi-continuous)工程を採択する場合において、開始剤と塩化ビニル単量体のみ追加的に供給し、乳化剤の追加供給がなければ、前記実施例1のような物性のラテックスは得ることができないはずである。
【0126】
追加的に供給される乳化剤が存在しない限り、追加的に供給される塩化ビニル単量体は重合反応に参加できないためである。実際に、この場合に対応する比較例2は最終収得物の物性評価が不可能な程度であった。
【0127】
一方、前記実施例1のように半連続式(semi-continuous)工程を採択しながら、塩化ビニル単量体、開始剤および乳化剤それぞれの追加供給速度を前記実施例1と異なるようにするか、追加供給時点を前記実施例1と異なるようにすることはいくらでも可能である。
【0128】
具体的に、前者は前記実施例2に対応し、後者は前記実施例3に対応するが、これらは全て塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体粒子の大きさD[4,3]、粒子大きさの分布度、ガラス転移温度、分子量などの面から前記実施例1と大同小異な水準のラテックスを得ることができた。
【0129】
これに関連して、先に説明された一実施形態の範囲内で、前記各物質の追加供給速度、追加供給時点などを調節し、最終収得物の分布度、ガラス転移温度、分子量などを制御することができる。
【符号の説明】
【0130】
100:重合装置
111:攪拌機
112:マグネチックドライブ
121~123:原料供給ポンプ
図1