(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】画像データ管理方法及び自動車用照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 41/153 20180101AFI20240628BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20240628BHJP
B60Q 1/14 20060101ALI20240628BHJP
F21S 41/663 20180101ALI20240628BHJP
H05B 45/10 20200101ALI20240628BHJP
H05B 47/105 20200101ALI20240628BHJP
F21W 102/20 20180101ALN20240628BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240628BHJP
【FI】
F21S41/153
B60Q1/04 E
B60Q1/14 H
F21S41/663
H05B45/10
H05B47/105
F21W102:20
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2022535734
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2020084182
(87)【国際公開番号】W WO2021115853
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-04
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ヤセール、アルメイオ
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-511383(JP,A)
【文献】特開2011-253222(JP,A)
【文献】国際公開第2018/225710(WO,A1)
【文献】特開2017-140947(JP,A)
【文献】特開2016-215692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04
F21S 41/153
F21S 41/663
B60Q 1/14
H05B 47/105
H05B 45/10
F21W 102/20
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用照明装置(10)において画像データを管理するための方法であって、
- 複数の画素(11)を備えた画像パターン(1)であって、各画素が当該画素(11)の光度に関連する数値によって特徴付けられている前記画像パターン(1)を提供するステップと、
- 前記画像パターン(1)を、各々が複数の画素を含む複数の行に分割して複数の行パターン(2)を作成す
るステップと、
- 複数の線形セグメントであって、各々が画素のグループに対して線形近似を提供する前記複数の線形セグメントを、各行パターン(2
)に対して提供するステップと、
- 各行パターン(2
)に対して、少なくとも1つの切断画素を提供するステップと、
- 切断画素を含む、開始画素および終了画素を含む線形セグメントを特定するステップと、
- この線形セグメントを2つの線形セグメント、すなわち、開始画素から切断画素までの最初の線形セグメントと、切断画素から終了画素までのもう一つの線形セグメントに分割するステップと、
- 線形セグメントのデータを圧縮するステップと、
- 圧縮されたデータを光モジュールに送信するステップと、
を備えた方法。
【請求項2】
前記画像パターン(1)の画素(11)はグレイスケール画素であり、より詳細には、各画素(11)の光度は0から255までのスケールによる数値によって特徴付けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
切断画素を提供するステップは、各行パター
ンに対して複数の切断画素を提供することを含む、請求項1から2のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記切断画素は、前記数値が第1の閾値より高い線形セグメント内に位置する、請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ある画素の数値とそれに隣接する画素の数値との間の差が第2の閾値よりも大きい線形セグメント内に前記切断画素が位置する、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記切断画素は、元の数値と前記線形近似との間の差が第3の閾値よりも大きい線形セグメント内に位置する、請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記圧縮されたデータを解凍するステップをさらに含む、請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
- 複数の光源(5)を含む光モジュール(4)と、
- 請求項1から7のうちのいずれか一項に記載の方法のステップを実行するための制御ユニット(6)と、
を備えた自動車用照明装置(10)。
【請求項9】
前記光モジュール(4)は、プロセッサユニット(7)をさらに備え、前記プロセッサユニット(7)は、圧縮データを解凍するように構成されている、請求項8に記載の自動車用照明装置(10)。
【請求項10】
前記光源(5)は、LEDなどのソリッドステート光源である、請求項8に記載の自動車用照明装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用照明装置の分野に関し、より詳細には、照明光源の制御に由来する電子データの管理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在の照明装置は、光源の数が増えており、それらを制御して照明の機能を適応させる必要がある。
【0003】
このような光源の数は、制御ユニットが管理しなければならない膨大な量のデータを含んでいる。PCMと光モジュール間のデータ転送には、CANプロトコル(CAN-FDは最もよく使われるものの1つ)がよく使用される。しかし、自動車メーカーによっては、CANプロトコルの帯域幅を制限することを決定し、このことは通常5Mbps程度を必要とする管理動作に影響を及ぼしている。
【0004】
現在の圧縮方式はハイビームパターンに対してはあまり効率が良くなく、このことにより自動車メーカーが要求する帯域幅の縮小に対する妥協を余儀なくされている。
【0005】
この問題は、最近の高解像度モジュールではさらに深刻であり、そこでは情報量ははるかに多いのに、帯域の限界は上がらない。
【0006】
この問題の解決策が求められている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、自動車用照明装置において画像データを管理するための方法によってこれらの問題の解決策を提供する。この方法は、
- 複数の画素を備えた画像パターンであって、各画素が当該画素の光度に関連する数値によって特徴付けられている前記画像パターンを提供するステップと、
- 前記画像パターンを、各々が複数の画素を含む複数の行に分割して複数の行パターン(2)を作成するステップと、
- 複数の線形セグメントであって、各々が画素のグループに対して線形近似を提供する前記複数の線形セグメントを、各行パターン(2)に対して提供するステップと、
- 各行パターン(2)に対して、少なくとも1つの切断画素を提供するステップと、
- 切断画素を含む、開始画素および終了画素を含む線形セグメントを特定するステップと、
- この線形セグメントを2つの線形セグメント、すなわち、開始画素から切断画素までの最初の線形セグメントと、切断画素から終了画素までのもう一つの線形セグメントに分割するステップと、
- 線形セグメントのデータを圧縮するステップと、
- 圧縮されたデータを光モジュールに送信するステップと、
を含む。
【0008】
本方法は、制御装置と光モジュールとの間でやり取りされる画像データを管理することを目的とする。制御ユニットは、画像パターンおよび圧縮データの計算を担当し、照明装置の内部(物理的に)に限らず、自動車内の任意の位置に配置することができる。光モジュールは、照明または信号のいずれかの光パターンを提供することを目的としており、照明装置の内部に配置されている。
【0009】
この方法の主な利点は、誤差の制御(抑制)にあり、圧縮率の高い方法を選択した場合、誤差が大きくなりすぎて許容できないことがある。誤差が大きくなる可能性のある戦略的なポイントに切断画素を選択し、このゾーンでのセグメント数を増やして誤差を減らすのである。
【0010】
いくつかの特定の実施形態では、画像パターンの光画素はグレイスケール画素であり、より詳細には、各画素の光度は0から255までのスケールに従っている。
【0011】
光モジュールは、通常、光度を0から255のグレイスケールで表現する。これは、光のパターンを数値化して光のデータに変換し、車両の制御装置で伝送および管理できるようにするための方法である。
【0012】
いくつかの特定の実施形態では、切断画素を提供するステップは、各行パターンに対して1つ以上の切断画素を提供することを含む。
【0013】
切断画素の数が多ければ多いほど誤差を減らせるが、その分圧縮率も低下する。そのため、切断画素の数は慎重に選択する必要がある。
【0014】
いくつかの特定の実施形態では、切断画素は、(複数の)数値が第1の閾値より高いセグメント内に位置する。いくつかの特定の実施形態では、切断画素は、ある画素の数値とこれに隣接する画素の数値との間の差が第2の閾値よりも大きいセグメント内に位置する。いくつかの特定の実施形態では、切断画素は、元の(複数の)数値と線形近似との間の差が第3の閾値より高いセグメント内に位置する。
【0015】
切断画素の位置は戦略的に定義される。光度の値が高いほど、より正確な近似が必要であり、これが切断画素をこれらの位置に配置すべき理由の一つである。もう一つの基準は、隣接する2つの画素間の勾配である。勾配が大きいと誤差を減らすために、より高い精度が必要になるからである。さらに、より直接的な基準として、元のデータのセットと線形近似との間の誤差に関連する。これらの基準のいずれか、あるいは他の適切な基準が、切断画素の位置を選択する際に使用されるであろう。
【0016】
いくつかの特定の実施形態において、本方法は、圧縮されたデータを解凍するステップをさらに含む。
【0017】
このステップは、光モジュールで元の画像を投影する場合に便利である。
【0018】
いくつかの特定の実施形態では、圧縮されたデータは、画像パターンの特定の部分のみに関連している。
【0019】
このクロップ(切り出し)は、画像の大部分が真っ暗な場合に有用であり、圧縮ステージは代表的値を含む部分のみにフォーカスして行うことができる。
【0020】
第2の発明の側面では、本発明は、
- 複数の光源を備えた光モジュールと、
- 第1の発明の態様に係る方法のステップを実行するための制御ユニットと、
を備えた照明装置を提供する。
【0021】
この照明装置は、従来のものより低い帯域で動作させることができる。
【0022】
いくつかの特定の実施形態において、光モジュールは、プロセッサユニットをさらに備え、プロセッサユニットは、圧縮されたデータを解凍するように構成される。
【0023】
適切な光モジュールに解凍ステージを設けることで、モジュールそれ自体に至るまで帯域を狭めることができる。
【0024】
いくつかの特定の実施形態では、光源は、LEDなどのソリッドステート光源である。
【0025】
「ソリッドステート」という用語は、半導体を用いて電気を光に変換するソリッドステートエレクトロルミネッセンスによって発せられる光を指す。白熱灯に比べ、ソリッドステート発光は、少ない発熱およびエネルギー散逸で可視光線を発生させることができる。また、ソリッドステート電子照明装置は質量が小さいため、もろいガラス管や電球、細長いフィラメント線に比べ、衝撃や振動に強い。また、フィラメントの蒸発がなく、照明装置の寿命が延びる可能性がある。このような照明には、電気フィラメント、プラズマ、ガスではなく、半導体発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、高分子発光ダイオード(PLED)を光源とするものがある。
【0026】
特に別様に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、当該技術分野における慣用の意味に解釈される。さらに、一般的に使用される用語も、本明細書で明示的に定義されない限り、関連する技術分野において慣用の意味に解釈されるべきであり、理想化されるかあるいは過度に形式的な意味において解釈されるべきではないと理解されるであろう。
【0027】
本文中では、用語「comprise(備える、含む)」およびその派生語(「comprising(備えている、含んでいる)」など)は、排他的な意味に理解されるべきではなく、すなわち、これらの用語は、記載されかつ定義されているものがさらなる要素、ステップなどを含む可能性を排除するものとして解釈されるべきではない。
【0028】
説明を完結させるため、および本発明のより良い理解を提供するために、一組の図面が提供される。前記図面は、本明細書と一体の部分を形成するものであり、本発明の実施形態を示すものであり、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきものではなく、単に本発明がどのように実施し得るかの例として解釈されるべきである。図面は、以下の図を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明による自動車用照明装置によって投射されるハイビームモジュールの測光を示す第1の画像である。
【
図2】
図2は、
図1の測光を表す画素マトリックスの一部を示したものである。
【
図3】
図3は、本発明による方法の行パターンを示すグラフィック表示である。
【
図4】
図4は、本発明による方法に従った画像パターンのエラーマップの特定の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明による自動車用照明装置を示す図である。
【0030】
これらの図では、以下の参照番号を使用している。
【符号の説明】
【0031】
1 画像パターン
2 行パターン
3 画像パターンの画素
4 光モジュール
5 LED
6 制御ユニット
7 プロセッサユニット
8 オリジナル(元の)数値のグラフィック
9 線形セグメント
10 自動車用照明装置
11 切断画素
100 自動車両
【発明を実施するための形態】
【0032】
例示的な実施形態は、当業者が本明細書に記載されたシステム及びプロセスを具現化し、実施することを可能にするために十分詳細に記載されている。実施形態は、多くの代替形態で提供することができ、本明細書に記載された例に限定されると解釈されるべきではないことを理解することが重要である。
【0033】
したがって、実施形態は様々な方法で変更され、様々な代替形態をとることができるが、その特定の実施形態は、例として図面に示され、以下に詳細に説明される。開示された特定の形態に限定する意図はない。それどころか、添付の特許請求の範囲の範囲に入るすべての変更、等価物、および代替物が含まれるべきである。
【0034】
図1は、本発明による自動車用照明装置によって投影されることになるハイビームモジュールの測光(光度計測)を示す第1の画像である。
【0035】
この最初の画像は(複数の)画素(ピクセル)に分割され、各画素は、黒に相当する0から白に相当する255までのスケールで、その光度によって特徴付けることができる。
【0036】
図2は、このような画素マトリックスの一部を示すもので、画像パターン1と呼ばれる。この画像パターン1の各画素3は、前述のスケールに従った番号によって特徴付けられる。この画像パターン1を市販のソフトウェア製品によって圧縮すると50%より低い圧縮率が得られるが、これは一部の自動車メーカーにとって受け入れ難いものである。
【0037】
この画像では、画素は(複数の)行パターン2に分割されている。各パターンは、関連する画素の輝度に応じて0から255の数値を持つ一連のデータを備えている。
【0038】
本発明の理解のために、これらの数値は単なる例示であり、
図1の測光の光度に対応するものではない。
【0039】
図3は、これらの行パターンの1つのグラフィック表示8を示している。横軸は画素番号、縦軸は光度を表し、0から255のスケールで表されている。さらに、互いに異なるグループの(複数の)画素についての近似を提供しようとする線形セグメント9がある。
【0040】
最初のセグメントは、画素1から4のデータをカバーし、75から186までの直線近似となる。2番目のセグメントは、画素4から7までのデータをカバーし、186から210までの直線近似となる。3番目のセグメントは、画素7から10までのデータをカバーし、210から120までの直線近似となる。
【0041】
画素の元のデータ8は、線形セグメント9のデータに置き換えられ、光モジュールに送信される。
【0042】
しかし、1番目と2番目のセグメントは元のデータによく適合しているが、3番目のセグメントの誤差は特に大きい。そこで、この区間には切断画素が定義されている。
【0043】
図4は、本発明による補正方法を適用した結果を示している。画素番号7から画素番号10までの区間は誤差が大きいため、画素番号8を切断画素として選択した。画素7の勾配が10であるのに対し、画素8の勾配が30と、前の画素よりはるかに高い勾配を提供しているからである。さらに、画素8における元の光度とその線形近似値との差は20である。よって、画素番号7から画素番号10までの元のセグメントは、画素番号7から画素番号8までのセグメントと、画素番号8から画素番号10までのセグメントの2つの新しいセグメントに分割される。
【0044】
この結果は、切断画素の存在により、
図4に示したグラフィックよりもはるかに正確なものとなっている。
【0045】
図5は、本発明による自動車用照明装置を示し、この照明装置は、
- 複数のLED5を備えた光モジュール4と、
- これまでに示した図で説明した圧縮ステップを実行し、圧縮データを生成するための制御ユニット6と、
- プロセッサユニット7であって、当該プロセッサユニット7が圧縮されたデータを解凍(伸長)するように構成されており、当該プロセッサユニットが光モジュール4に配置されている、前記プロセッサユニット7と、
を備えている。
【0046】
この光モジュールにより、伝送帯域幅を改善した良質な投影を実現することができる。