(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】電動式に制御可能なユニット
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
G01D5/245 110M
(21)【出願番号】P 2022553131
(86)(22)【出願日】2021-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2021050926
(87)【国際公開番号】W WO2021180384
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】102020203273.4
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヘーベルコルン,コンスタンティン
(72)【発明者】
【氏名】ブダカー,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】チョティ,ヤーノス タマス
(72)【発明者】
【氏名】クルーガー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】デーテルス,ローター
(72)【発明者】
【氏名】レルヒェンミュラー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ハウフェ,ベンジャミン
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0072864(US,A1)
【文献】特開2002-202150(JP,A)
【文献】特開2019-2816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/245
G01B 7/30-7/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式に制御可能なユニットであって、回転運動を実施する回転子(10)および該回転子(10)に相対回動不能に結合された機械軸(18)を有する電気機
械と、前記回転子(1)の回転角度を検出するための、前記回転子(10)と共に回転するセンサ装置の信号発信器(16)とを備えており、前記信号発信器(16)に第1の領域(32)と第2の領域(34)とが形成されていて、これらの第1の領域(32)と第2領域(34)とが、前記信号発信器(16)の周方向で交互に入れ替わって連続して配置されていて、これら第1の領域(32)および第2の領域(34)の導電率が互いに異なっている形式のものにおいて、
前記信号発信器(16)が薄鋼板成形部分を含有しており、該薄鋼板成形部分が
前記回転子(10)に密着し、かつ前記機械軸(18)に相対回動不能に固定されて
おり、
前記信号発信器(16)と前記機械軸(18)との相対回動不能な固定が、プレス接続部(24)として構成されていることを特徴とする、電動式に制御可能なユニット。
【請求項2】
前記プレス接続部(24)がノッチ歯を有しており、前記機械軸(18)の周面に、前記機械軸(18)の縦軸線の方向に延在しかつ半径方向に突き出す少なくとも1つのノッチ歯(40)が設けられており、該ノッチ歯(40)は、前記信号発信器(16)を前記機械軸(18)に固定する際に前記信号発信器(16)の軸貫通部(30)の壁部の材料を押し退けるように構成されていることを特徴とする、請求項1記載のユニット。
【請求項3】
前記信号発信器(16)が、前記機械軸(18)との相対回動不能な固定に加えて、前記回転子(10)に摩擦締結式および/または形状締結式に固定されていることを特徴とする、請求項1または2記載のユニット。
【請求項4】
信号発信器(16)と回転子(10)との摩擦締結が、弾性的な付勢手段(50)によって生ぜしめられ、該付勢手段(50)が、前記信号発信器(16)の、前記回転子(10)とは反対側で前記機械軸(18)に配置されていて、前記信号発信器(16)を前記機械軸(18)の縦軸線Lの方向に作用する付勢力によって前記回転子(10)に向かって押しやることを特徴とする、請求項3記載のユニット。
【請求項5】
前記信号発信器(16)と前記回転子(10)との間の前記形状締結が、前記信号発信器(16)の薄鋼板成形部分に構成された、前記機械軸(18)の縦軸線Lの方向に突き出す舌片(60)を有しており、該舌片(60)が前記回転子(10)の対応配設された受け開口(64)内に突入することを特徴とする、請求項3記載のユニット。
【請求項6】
前記受け開口(64)内に突入する、前記舌片(60)の端部が塑性変形されていることを特徴とする、請求項5記載のユニット。
【請求項7】
前記受け開口(64)内に突入する、前記舌片(60)の端部が折り返されていることを特徴とする、請求項5記載のユニット。
【請求項8】
前記信号発信器(16)と前記回転子(10)との間の前記形状締結が、前記信号発信器(16)の前記薄鋼板成形部分に形成された、前記機械軸(18)の縦軸線Lの方向に突き出す突起(62)を有しており、該突起(62)が前記回転子(10)の対応配設された受け開口(64)内に突入することを特徴とする、請求項
3記載のユニット。
【請求項9】
前記受け開口(64)内に突入する、前記突起(62)の端部が塑性変形され
ていることを特徴とする、請求項8記載のユニット。
【請求項10】
前記受け開口(64)内に突入する、前記突起(62)の端部が軸方向でカシメられていることを特徴とする、請求項8記載のユニット。
【請求項11】
前記ユニットは、電子式にスリップ制御可能な車両ブレーキ装置の圧力発生器を操作するためのユニットである、請求項1から10のいずれか一項記載のユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の特徴に記載した電動式に制御可能なユニットに関する。
【0002】
このような形式のユニットは、例えば圧力発生器を操作するための、自動車の電子式にスリップ制御可能なブレーキ装置に使用される。圧送された圧力媒体によって、このブレーキ装置のホイールブレーキ内にブレーキ圧が形成され、このブレーキ圧の高さは圧力媒体の圧送された体積に比例して生じる。圧力媒体の押し退けられた体積を算出するためにセンサ装置が設けられており、このセンサ装置は、ユニットの電動機の回転子の回転角度を検出し、検出された回転角度信号を、さらに評価するために車両ブレーキ装置の電子制御ユニットに供給する。
【0003】
さらにこの制御ユニットは、ブレーキ圧を、車両のそれぞれ対応配設されたホイールにおいて瞬間的に支配しているホイール個々のスリップ状態に合わせるために適している。これにより、車両の空転するホイールを阻止することができ、車両の走行安定性を改善し、最終的に、運転者のその時点の制動要求とは無関係に、その時点の交通状況に対応してブレーキ操作が実行される。
【背景技術】
【0004】
請求項1の前提部の特徴に記載した電動式に制御可能なユニットは、例えば特許文献1としての旧特許出願に開示されている。
【0005】
この公知のユニットは、回転子並びにこの回転子に相対回動不能に結合された電動機軸を備えた電気的に整流された電動機を含有している。回転子は、従来形式で構成されていて、回転子積層鉄心を有しており、この回転子積層鉄心は、この回転子積層鉄心の周方向に隣り合って配置された複数の磁石を有している。これらの磁石は、公知の形式およびやり方で、回転子が電動機軸と共に回転運動で駆動されるように、電動機の固定子の磁石と協働する。このために、固定子は電動機ハウジング内に収容されていて、電動機ハウジング内に回転子が電動機軸を介して回転可能に軸受けされている。
【0006】
回転子の回転運動を量的に検出するためにセンサ装置が設けられており、このセンサ装置は、回転子と共に回転する信号発信器と、この信号発信器に対応配設されかつ電動機ハウジングに定置に固定された信号受信器とから構成されている。信号発信器は、機械的な結合手段、例えばリベットによって回転子に固定されている。
【0007】
信号受信器と信号発信器とは、誘導式の測定原理に従って作業する。このために、信号受信器は、励磁コイルおよび検出コイルを有しており、これらの励磁コイルおよび検出コイルは、信号発信器の回転時に様々な導電率の領域によって交互に掠められる。導電率が変化すると、検出コイル内に、信号発信器若しくは回転子構造群の回転運動を特徴付ける、変化する電圧が誘導される。
【0008】
好適な形式で、信号発信器を回転子に直に配置することによって、電動機軸の縦軸線方向でユニットの短い構造形式が得られる。また、回転子の実際の回転角度を比較的精確に検出することができる。何故ならば、信号発信器と回転子との間に、回転子に作用する加速度力または減速力に基づいて電動機軸の慣性に起因するねじれが発生しないからである。
【0009】
また、翼状のコーティングを備えたプリント配線板は、製造が比較的高価であり、しかもプリント配線板を回転子に固定するための追加的な作業工程が必要である。結合手段としてリベットまたはねじが使用されると、部品点数並びに重量が増大し、ひいては回転子の慣性モーメントが高くなる。最終的に、プリント配線板を回転子に取り付ける際に、回転角度検出の精度を損なわないようにするために、電動機軸の縦軸線に対するプリント配線板の同心性に関する比較的高い要求を維持する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】ドイツ連邦共和国特許出願第102018222842号明細書
【発明の概要】
【発明の効果】
【0011】
これに対して、請求項1の特徴による電動式に制御可能なユニットは、信号発信器が前記従来技術におけるよりも安価に製造可能である、という利点を有している。信号発信器を機械軸に相対回動不能に固定することは、僅かな技術的費用で実現可能である。信号発信器を回転子に固定するための追加的な固定手段および作業段階は省かれる。本発明によれば、信号発信器は薄鋼板成形部分を有していて、この薄鋼板成形部分は回転子に同一平面的に密着していて、機械軸に相対回動不能に固定されている。信号発信器を回転子に同一平面的に密着させることによって、信号発信器は電気機械の取り付けスペース内に収容することができ、機械軸の縦軸線方向でのユニットの構造長さをコンパクトに維持することができる。
【0012】
本発明のその他の利点および好適な実施態様は、従属請求項および/または以下の説明から得られる。
【0013】
本発明の好適な実施態様によれば、機械軸と信号発信器との相対回動不能な固定は、プレス接続部として構成されている。これによって、ねじまたはリベット等の別個の固定手段は省くことができ、固定作業は自動的に実施されかつ監視され得る。
【0014】
プレス接続部がノッチ歯として構成されていれば、特に好適であることが分かった。この場合、機械軸の周面に、機械軸の縦軸線の方向に延在しかつ半径方向に突き出す少なくとも1つのノッチ歯が設けられており、このノッチ歯は、信号発信器を機械軸に固定する際に信号発信器のハブの材料を押し退けるように構成されている。その結果、両構成部分間で、特に信号発信器のハブ領域内での信号発信器と回転子との間の不都合な相対運動を特に効果的に阻止する、摩擦締結式と同時に形状締結式の結合が得られる。
【0015】
本発明の特に好適な実施態様によれば、信号発信器は、機械軸と相対回動不能に固定されているのに加えて、回転子に固定されている。これによって、信号発信器の周方向での相対運動または変形、およびひいては機械軸の縦軸線方向での相対運動または変形を阻止することができる。場合によっては、変形は、そうでなければ回転角度が運転に基づいて変化するときに生じた慣性力に基づいて発生し得る。
【0016】
信号発信器と回転子との間に例えば摩擦締結が設けられていてよい。摩擦締結は弾性的な付勢手段によって生ぜしめられ、この付勢手段は、信号発信器の、回転子とは反対側で機械軸に配置されていて、信号発信器を機械軸の縦軸線の方向に作用する付勢力によって回転子に向かって押しやる。付勢手段は、信号発信器を回転子に確実に同一平面的に密着させ、両構成部分間に摩擦力を生ぜしめる。
【0017】
周方向での相対運動を避けるために、摩擦締結の代わりに、信号発信器と回転子との間に形状締結が設けられていてもよい。形状締結は、好適には信号発信器の薄鋼板成形部分に形成された、機械軸の縦軸線の方向に突き出す舌片または突起によって得られ、この舌片または突起は回転子の対応配設された開口内に突入する。
【0018】
開口内に突入する舌片または突起の端部の塑性変形を介して、信号発信器および回転子はカシメまたはリベット留めによって好適な形式で互いに堅固に結合され得る。堅固な結合によって、周方向での相対運動それと同時に機械軸の縦軸線の方向での相対運動がほぼ排除され、測定結果の精度がさらに改善される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】図面は全部で6つの図面を含んでおり、そのうちの
図1は、本発明に基づく回転子構造群を三次元で示す図である。
【
図2】一般的なプレス接続によって互いに接続された機械軸および信号発信器を示す図である。
【
図3】ノッチ歯が形成されている機械軸の斜視図である。
【
図4】信号発信器を回転子に向かって押しやる付勢手段の横断面図である。
【
図5】信号発信器の横断面から突き出す舌片または突起のための受け開口を備えた回転子を示す図である。
【
図6】信号発信器の横断面から突き出し、回転子の開口内に突入する舌片を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施例を図面に示し、以下に詳しく説明する。
【0021】
個々の図面中、互いに対応する構成要素には同じ符号が付けられている。
【0022】
図1に示された電気機械の回転子10は、それぞれ1つの回転子積層鉄心12と、外周面に沿って隣り合って回転子積層鉄心12に配置された複数の磁石14と、回転子積層鉄心12の端面側に同一平面的に密着する、回転子10の回転角度を検出するためのセンサ装置の信号発信器16と、機械軸18とを有しており、この機械軸18は、磁石14を有する回転子積層鉄心12を支持し、かつ信号発信器16に対応配設された軸開口30を貫通して突き出す。機械軸18と回転子10とは互いに相対回動不能に結合されている。
【0023】
回転子積層鉄心12は、互いに積層されかつ互いに固定された多数の回転子薄鋼板20より構成されている。これらの回転子薄鋼板20は、弱磁性材料より成る概ね平らでほぼ円形に構成された成形部分、いわゆる電気薄鋼板である。個別の回転子薄鋼板20は、互いに固定されていて、完全に一致する外側輪郭を有していて、貫通する切欠22を備えており、これらの切欠22内に回転子10の磁石14が受けられている。
【0024】
図1に示した信号発信器16は、本発明に従って同様に薄鋼板成形部分として構成されている。この信号発信器16は、金属材料、特に回転子10の回転子薄鋼板20と同じ材料より成っていて、その外周面に沿った領域に複数の切欠32を有しており、これらの切欠32は、周方向でそれぞれ翼状のセクション34によって互いに間隔を保っている。切欠32が信号発信器16の非導電性の領域を形成し、翼状のセクション34が導電性の領域を形成する。切欠32は例えば薄鋼板成形部分の周囲に向かって開放していて、その幾何学的な形状は、同様に例えば翼状のセクション34の幾何学的な形状にほぼ相当する。
【0025】
信号発信器16の翼状のセクション34若しくは切欠32に、周方向で互いに並列配置された間隙26を備えた環状領域が、半径方向内側に続いている。これらの間隙26は、ハブ領域28の中心に形成された軸貫通部30を有する、信号発信器16のハブ領域28を取り囲んでおり、軸貫通部30を貫通して機械軸18が差し込まれている。
【0026】
本発明によれば、信号発信器16は同一平面的に回転子10に密着していて、しかも機械軸18に相対回動不能に固定されている。相対回動不能な固定は、具体的には通常のプレス接続部24として構成されていてよい。このようなプレス接続部24の、
図2に示した第1実施例では、信号発信器16のハブ領域28内の軸貫通部30並びに機械軸18は、それぞれ円柱形の横断面を有している。この場合、機械軸18の外径は信号発信器16の軸貫通部30の内径よりも大きく寸法設計されているので、2つの構成部分間に存在する過剰部分は、これらの構成部分を互いにつなぎ合わせる際に半径方向の付勢力が作用し、この付勢力によって、信号発信器16は機械軸18に相対回動不能に固定される。
【0027】
信号発信器16と機械軸18との間のプレス接続部の第2の選択的な実施例によれば、ノッチ歯が設けられる。
図3に示されているように、このために、例えば機械軸18の円周方向に沿って、互いに均一な間隔を保って半径方向に突き出し、かつ機械軸18の縦軸線Lの方向に延在する複数のノッチ歯40が形成されている。ノッチ歯40は、機械軸18の一方の端部から機械軸18に配置された回転子10まで達しており、信号発信器16は機械軸18のノッチ歯40の領域内に配置されている。ノッチ歯40は、回転子10とは反対側の端部に接合斜面42を有しており、この接合斜面42を介して、信号発信器16は機械軸18に接合する際にその軸貫通部30を介してセンタリングされる。ノッチ歯40の最大隆起部の領域に例えば先端が尖っている歯先44が形成されており、これによって、各ノッチ歯40は接合過程で信号発信器16の軸貫通部30の材料を押し退け、この際に切粉が発生することはない。ノッチ歯40の横断面形状は、用途に応じて決定することができる。
【0028】
信号発信器16を機械軸18に被せ嵌める段階中に、これらの構成部分は、摩擦締結による結合と形状締結による結合との組み合わせによって比較的堅固に互いに結合されている。このような形式の結合は、環境条件が変化しても、機械軸18の円周方向での相対運動に対して著しく頑丈に作用する。
【0029】
信号発信器16は、本発明の好適な実施態様では、機械軸18に対して前記のように相対回動不能に固定されていることに加えて、回転子10に堅固に固定されている。これによって、測定結果に不都合な影響を与える円周方向での望ましくない相対運動をさらに阻止することができる。回転子10における信号発信器16の固定は、摩擦締結および/または形状締結を含んでいてよい。
【0030】
信号発信器16と回転子10との間の摩擦締結のための一例は、
図4に具体的に示されている。この摩擦締結は、信号発信器16の、回転子10とは反対側で機械軸18に配置された弾性的な付勢手段50を用いて生ぜしめられる。好適な形式で、付勢手段50として皿ばねが用いられており、この皿ばねは、一方側では信号発信器16に支えられていて、他方側では機械ハウジング内で機械軸18を軸受けする転がり軸受52に支えられている。この場合、転がり軸受52と信号発信器16との間の間隔は、封入されている付勢手段50が機械軸18の縦軸線Lの方向に作用する軸方向力によって信号発信器16を回転子10の回転子薄鋼板20に向かって付勢する程度に、寸法設計されている。この軸方向力は、一方では、信号発信器16が運転条件下で回転子10に確実に同一平面的に密着保持されることを保証し、他方では信号発信器16と回転子10との間で、周方向で得られるこれらの構成部分間の可能な相対運動に対抗して作用する摩擦力を生ぜしめることを保証する。図示の実施例では、信号発信器16は例えばキー状若しくはソケット状の横断面を有する三次元構造物として構成されている。しかしながら信号発信器16の平らな若しくはほぼ二次元的な構成を排除するものではない。
【0031】
図5および
図6は、信号発信器16と回転子10とが形状締結によって互いに結合されている変化例を示す。このために、信号発信器16に舌片60が形成されており、この舌片60は信号発信器16の横断面に対して直角に突き出していて、しかも機械軸18の縦軸線Lに対して同軸的に整列されている。舌片60は、信号発信器16の、回転子10に面した側に位置していて、具体的には信号発信器16の薄鋼板成形部分のu字形の打ち出し成形部並びにそれに続く、この打ち出し成形部の内側部分の折り返しによって構成されてよい。
【0032】
回転子10には、受け開口64が形成されていて、この受け開口64は舌片60に対応配設されており、若しくは信号発信器16が同一平面的に回転子10に密着すると、受け開口64内に舌片60が突入する。信号発信器16がいずれにしても機械軸18上に相対回動不能に配置されると、舌片60は連動部材を形成し、この連動部材によって回転子10の回転運動が信号発信器16に伝達可能である。もちろん、複数のこのような舌片60が信号発信器16の横断面に亘って分配配置されていてよい。舌片60を受けるための複数のこのような開口64を備えた回転子10は
図5に示されている。
【0033】
舌片60の代わりに、信号発信器に代替的な複数の突起62が一体成形されてもよく、これらの突起62は同様に横断面に対して直角に突き出している。このような突起は、例えば打ち出し成形技術的に父型および母型を用いて信号発信器16に成形技術的に設けることができる。これらの接続技術は、専門家の間で“Clinchen”(クリンチ)または“Toxen”(トックス)の用語で公知である。
【0034】
冒頭に説明した請求項1の特徴による本発明の基本的な考え方から逸脱することなしに、前記実施例の変更または補足が考えられることは明らかである。
【0035】
これに関連して、回転子10の開口64内に突入する、舌片60若しくは突起62の端部は、信号発信器16が同一平面的に回転子10に密着した後で塑性変形され得るように構成されている。このために、例えば信号発信器16とは反対側から父型が回転子10の受け開口64内に挿入される。回転子10の内部で、この父型によって舌片60の自由端部が折り返されるか若しくは突起62が軸方向でカシメられる。このような形式で、信号発信器16と回転子10の少なくとも1つの回転子薄鋼板20との間の堅固な結合が形成され得る。この堅固な結合は、半径方向に向けられた、つまり機械軸18の周方向で行われる相対運動も、また軸方向に向けられた、つまり機械軸18の縦軸線Lの方向で行われる信号発信器16と回転子10との間の相対運動も、少なくともほぼ阻止することができ、その結果、回転子10の回転角度に関するさらに精確な測定結果を得ることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 回転子
12 回転子積層鉄心
14 磁石
16 信号発信器
18 機械軸
20 回転子薄鋼板
22 切欠
24 プレス接続部
26 間隙
28 ハブ領域
30 軸開口、軸貫通部
32 切欠、第1の領域
34 翼状のセクション、第2の領域
40 ノッチ歯
42 接合斜面
44 歯先
50 付勢手段
52 転がり軸受
60 舌片
62 突起
64 受け開口
L 機械軸18の縦軸線