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特許7511662抵抗フィールドプレートを有するトランジスタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】抵抗フィールドプレートを有するトランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20240628BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20240628BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20240628BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20240628BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240628BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20240628BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20240628BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H01L29/80 F
H01L29/44 Y
H01L29/50 J
H01L27/04 P
H01L29/80 H
H01L29/06 301F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022555074
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 US2021013146
(87)【国際公開番号】W WO2021188189
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】16/819,728
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】アップルトン,ブライアン,トーマス,ジュニア.
(72)【発明者】
【氏名】ハウサー,ケイシー,アラン
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0144957(US,A1)
【文献】国際公開第2013/027722(WO,A1)
【文献】特開2012-178416(JP,A)
【文献】特開2012-248752(JP,A)
【文献】特表2016-524817(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0220089(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102651393(CN,A)
【文献】米国特許第08797088(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0203877(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103765565(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/812
H01L 29/778
H01L 27/04
H01L 21/338
H01L 29/41
H01L 29/417
H01L 21/822
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタであって、
半導体と、
前記半導体と接触した第1電極と、
前記半導体と接触した第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間の前記半導体内のチャネルにおけるキャリアの流れを制御するための、前記第1電極と前記第2電極との間に配置された制御電極であり、前記第1電極と前記第2電極との間に印加される電圧に応答して前記チャネル内に第1の電界が生成される、制御電極と、
前記制御電極と前記第2電極との間の領域内で前記チャネルの上に配置された、抵抗材料を有するフィールドプレートであり、当該フィールドプレートは、一端で前記第2電極に電気的に接続され、他端は、当該トランジスタのフィールドプレート制御端子を提供する、フィールドプレートと、
時間変化する電圧を生成するように構成された電圧源であり、当該電圧源は、前記抵抗材料の前記他端に接続されて、前記抵抗材料にわたる第2の電界を生成、該第2の電界が前記チャネルに結合されて前記チャネル内の前記第1の電界を変更する、電圧源と、
を有するトランジスタ。
【請求項2】
前記フィールドプレートと前記チャネルとの間に配置された誘電体層、を含む請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項3】
前記誘電体層は、前記フィールドプレートと前記チャネルとの間をDC電流が通るのを防止するように選択されている、請求項2に記載のトランジスタ。
【請求項4】
前記フィールドプレートの材料は、前記フィールドプレートによって消費される電力を最小化するのに十分な高さの電気抵抗のものであるように選択されている、請求項3に記載のトランジスタ。
【請求項5】
トランジスタであって、
半導体構造と、
前記半導体構造と接触したソース電極と、
前記半導体構造と接触したドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の前記半導体構造内のチャネルにおけるキャリアの流れを制御するための、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に配置されたゲート電極であり、前記ソース電極、前記ドレイン電極、及び前記ゲート電極に印加される電圧に応答して前記チャネル内に電界プロファイルが生成され、該電界プロファイルは1つ以上のピーク値を持つ、制御電極と、
前記ゲート電極と前記ドレイン電極の間の領域内で前記チャネルの上に配置された、抵抗材料を有するフィールドプレートであり、当該フィールドプレートは、一端で前記ドレイン電極に電気的に接続され、他端は、当該トランジスタのフィールドプレート制御端子を提供する、フィールドプレートと、
時間変化する電圧を生成するように構成された電圧源であり、当該電圧源は、前記フィールドプレートの前記他端に電気的に接続され、当該電圧源は、前記フィールドプレートに沿って徐々に変化する電位降下を作り出し、該徐々に変化する電位降下が、当該トランジスタの前記チャネルに結合されて、前記チャネル内の1つ以上の電界ピークの大きさを変更する、電圧源と、
を有するトランジスタ。
【請求項6】
前記フィールドプレートと前記チャネルとの間に配置された誘電体層、を含む請求項5に記載のトランジスタ。
【請求項7】
前記誘電体層は、前記フィールドプレートと前記チャネルとの間をDC電流が通るのを防止するように選択されている、請求項6に記載のトランジスタ。
【請求項8】
前記フィールドプレートの材料は、前記フィールドプレートによって消費される電力を最小化するのに十分な高さの電気抵抗のものであるように選択されている、請求項7に記載のトランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、概してトランジスタに関し、より具体的には、そのようなトランジスタで使用されるフィールドプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
技術的に知られているように、数多くのトランジスタが、高電圧が印加されたときに電界ピークを低下させるようにトランジスタ内に電界分布を形成するために、フィールドプレートを使用している。例えば、窒化ガリウム(GaN)系の電界効果トランジスタ(FET)、特にGaN高電子移動度トランジスタ(HEMT)は、無線周波数(RF)コンポーネント及びシステムにとってのブレイクスルーテクノロジである。GaNトランジスタによって電力供給されるモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)は、歴史上存在したがガリウム砒素(GaAs)又はシリコン(Si)テクノロジと比較して、2倍から3倍の電力密度をサポートする。RF用途及び電力用途向けのGaN系トランジスタの性能を最大化する努力は、変わることなく、動作電圧を高めることを追い求めている。より高い動作電圧を可能にするために、単一又は複数のフィールドプレートがFETに統合されている。最適化された(1つ以上の)フィールドプレート構造は、デバイス内のピーク電界を低下させ、それにより、絶縁破壊電圧を伸ばし、リーク電流を低減させ、信頼性を向上させる。フィールドプレート幾何学構成のバリエーション、複数のフィールドプレートの統合、及びバイアス方式(例えば、ソース接続、ゲート接続、及びフローティング)を含め、多様なフィールドプレート設計が特許及び文献で提案されてきた。
【0003】
1つのそのような構造を図1に示す。トランジスタとして示すように、ここでは、窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT)を、基板上にGaN層を持つ半導体構造を含むように示している。GaN層上に、図示のように、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層があり、GaN層内に二次元電子ガス(2DEG)チャネルを作り出す。GaN層はトランジスタのチャネル内で電荷を運ぶように作用する。図示のように、従来からのSiN誘電体パッシベーション層が設けられる。当該トランジスタは、当該トランジスタのAlGaN層とオーミックコンタクトする第1電極(“ソース”、S)と、当該トランジスタのAlGaNとオーミックコンタクトする第2電極(“ドレイン”、D)と、ここでは第1電極Sと第2電極Dとの間の半導体構造の2DEGチャネルであるチャネル内のキャリアの流れを制御するための、AlGaN層とショットキーコンタクトして第1電極Sと第2電極Dとの間に配置された制御電極(“ゲート”、G)とを含む。これら3つの電極S、D、Gに印加される電圧に応答して、2DEGチャネル内に電界プロファイルが作り出され、この電界プロファイルは特定の(1つ以上の)ピーク値を持つ。ここで、当該HEMTは、ゲート電極(G)とドレイン電極(D)との間に配置された、ここでは導電体であるフィールドプレートを含む。該フィールドプレートは、ソース電極(S)に接続されることがあり、その場合、ソース接続フィールドプレート(source connected field plate、SCFP)であると見なされ、あるいは、独立した電圧源に接続されることもある。
【発明の概要】
【0004】
本開示によれば、半導体と、前記半導体と接触した第1電極と、前記半導体と接触した第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間の前記半導体内のチャネルにおけるキャリアの流れを制御するための、前記第1電極と前記第2電極との間に配置された制御電極と、を有するトランジスタが提供される。前記第1電極と前記第2電極との間に印加される電圧に応答して前記チャネル内に第1の電界が生成される。前記チャネルの上に、抵抗材料を有するフィールドプレートが配置される。前記抵抗材料の部分にまたがって電圧源が接続されて、前記抵抗材料の前記部分にわたる第2の電界を生成し、該第2の電界が前記チャネルに結合されて前記チャネル内の前記第1の電界を変更する。
【0005】
一実施形態において、半導体構造と、前記半導体構造と接触したソース電極と、前記半導体構造と接触したドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の前記半導体構造内のチャネルにおけるキャリアの流れを制御するための、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に配置されたゲート電極と、を有するトランジスタが提供される。前記ソース電極、前記ドレイン電極、及び前記ゲート電極に印加される電圧に応答して前記チャネル内に電界プロファイルが生成され、該電界プロファイルはピーク値又は複数のピーク値を持つ。前記ゲート電極と前記ドレイン電極の間の領域内で前記チャネルの上に、抵抗材料を有するフィールドプレートが配置され、当該フィールドプレートは、一端で前記ドレイン電極に電気的に接続され、他端は、当該トランジスタのフィールドプレート制御端子を提供する。前記フィールドプレート制御端子に電圧源が電気的に接続され、当該電圧源は、前記フィールドプレートに沿って漸進的な電位降下を作り出し、該漸進的な電位降下が、トランジスタチャネルに結合されて、前記チャネル内の電界のピーク又は複数のピークの大きさを変更する。
【0006】
一実施形態において、当該トランジスタは、前記フィールドプレートと前記チャネルとの間に配置された誘電体層を含む。
【0007】
一実施形態において、前記誘電体層は、前記フィールドプレートと前記チャネルとの間をDC電流が通るのを防止するように選択されている。
【0008】
一実施形態において、前記フィールドプレートの材料は、前記フィールドプレートによって消費される電力を最小化するのに十分な高さの電気抵抗のものであるように選択されている。
【0009】
このような構成では、例えば線形傾斜などで傾斜したフィールドプレート電位を提供する例えば薄膜抵抗などの抵抗(レジスティブ)フィールドプレートを有し、フィールドプレート効果の大きさを、トランジスタのソース、ゲート、及びドレインに印加されるバイアス電圧とは独立に、電圧源によって生成される電圧を変えることによって調節することができる。従って、GaN HEMTのドレインアクセス領域の誘電体層の上に、薄膜抵抗で構成されるフィールドプレートが配置される。フィールドプレートの一端がトランジスタのドレイン端子に電気的に接続される。ゲート端子と重ならない他端は、外部電圧源に接続され、これが、トランジスタのソース、ゲート、ドレインに印加されるバイアス電圧とは独立したフィールドプレートの制御を可能にする。従って、当該トランジスタは、ゲート、ドレイン、ソース、及びフィールドプレートの4端子デバイスであり、ソースとドレインとの間且つゲートの下にキャリアチャネルが形成される。フィールドプレートは、当該フィールドプレートが上に座する誘電体層の上に線形傾斜した静電ポテンシャルを強いることによって、ピーク電界低下という目標を達成する。この誘電体層が十分に薄ければ、抵抗フィールドプレートにわたるフィールドプレート電位がトランジスタのキャリアチャネルに結合して、チャネル内の(1つ以上の)ピーク電界を低下させることになる。トランジスタのソース、ゲート、及びドレインに印加されるバイアス電圧とは独立したフィールドプレートの制御は、動的性能要求、動作電圧、環境条件、及び信頼性要求に適合するためにフィールドプレート効果をリアルタイムに変化させることを可能にする。
【0010】
その長さ方向に沿って、抵抗フィールドプレートは、誘電体(SiN層)の表面において線形な電位降下を強制する。SiN層が十分に薄ければ、この線形電位降下がトランジスタチャネル(2DEG)に結合して、ドレイン端子とゲート端子との間の電位に漸進的な低下を可能にする。外部電圧源Vfpを調節することで、フィールドプレート効果を、無視できるほどの効果(~0V)から相当な効果(≧V)まで変化させることができ、ここで、Vは、例えば一般的な又はグランドソース用途においてのような通常動作においてドレインに印加される電圧であるドレイン電圧である。
【0011】
抵抗フィールドプレートは、その両端間に大きい抵抗(低いコンダクタンス)を示し、それ故に、外部電圧源には小さい電流(1mA以下)のみが流れる。
【0012】
本開示の1つ以上の実施形態の細部が、添付の図面及び以下の記載にて説明される。本開示のその他の特徴、目的及び利点が、これらの記載及び図面並びに請求項から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来技術に従った導電性のフィールドプレートを有するトランジスタの概略断面図である。
図2】本開示に従った抵抗フィールドプレートを有するトランジスタの概略断面図である。
図3図2の実施形態についての、異なるVfp値での、高電圧(HV)-GaNトランジスタの2DEGチャネルの長さ方向に沿った静電ポテンシャルのシミュレーション結果を示している。
図4図2の実施形態についての、異なるVfp値での、HV-GaNトランジスタの2DEGチャネルの長さ方向に沿った電界シミュレーション結果を示している。
図5図1のデバイスについての、ソース接続フィールドプレート(SCFP)構成で接続された伝統的なメタルフィールドプレートによって生成される2DEGチャネルの長さ方向に沿った電界のシミュレーション結果を示している。
【0014】
様々な図中の似通った参照符号は同様の要素を指し示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に図2を参照するに、ここでは、窒化ガリウム高電子移動度トランジスタ(GaN HEMT)であるトランジスタ10が、基板11上に配置されたGaN層12を持つ半導体構造を含むように示されており、図示のように、GaN層12上にAlGaN層14が配置されて、GaN層12内に二次元電子ガス(2DEG)チャネル15を作り出す。GaN層12はトランジスタ10のチャネル内で電荷を運ぶように作用する。図示のように、従来からのSiN誘電体パッシベーション層17が設けられる。トランジスタ10は、当該トランジスタ10の2DEGチャネル15とオーミックコンタクトする第1電極(“ソース”、S)と、当該トランジスタの2DEGチャネル15とオーミックコンタクトする第2電極(“ドレイン”、D)と、ここでは第1電極Sと第2電極Dとの間の半導体構造の2DEGチャネル15であるチャネル内のキャリアの流れを制御するための、AlGaN層14とショットキーコンタクトして第1電極Sと第2電極Dとの間に配置された制御電極(“ゲート”、G)とを含む。これら3つの電極S、D、Gに印加される電圧に応答して、2DEGチャネル15内に電界プロファイルが作り出され、この電界プロファイルは特定の(1つ以上の)ピーク値を持つ。制御電極Gと第2電極Dとの間の領域内の2DEGチャネル15の上の誘電体パッシベーション層17上に、ここでは例えば反応性スパッタリングされた窒化タンタル(TaN)である抵抗材料からなるフィールドプレート20が配置される。フィールドプレート20は、一端E1で第2電極Dに電気的に接続され、他端E2でトランジスタ10の第4端子22を提供する。第4端子22に電圧源Vfpが電気的に接続される。電圧源の値Vfpは、漸進的な電位降下がフィールドプレート20に沿って発生してトランジスタ10の2DEGチャネル15に結合されるように設定され、このような結合が、2DEGチャネル15内の(1つ以上の)電界ピークの大きさの低減を供する。なお、電圧源Vfpは、トランジスタのソース、ゲート、及びドレインに印加されるバイアス電圧とは独立である。SiN層17は、抵抗フィールドプレート20にわたるこの線形な電位降下がトランジスタ10の2DEGチャネル15に結合することになる一方で、フィールドプレート20とチャネル15との間をDC電流が通るのを防ぐように、十分に薄くあるべきである。
【0016】
より具体的には、抵抗フィールドプレート20の長さ方向に沿った電位降下は、2DEGチャネル15に近接していることによって、2DEGチャネル15に結合される。誘電体層17(ここではフィールドプレート20とトランジスタ2DEGチャネル15との間のSiN層)の厚さが、フィールドプレート20に関連する閾値電圧及びその静電容量を決定する。チャネル15にいっそう近いフィールドプレート20は、2DEGチャネルの電位に対していっそう強い効果(及びいっそう大きい静電容量)を持つことになり、2DEGチャネル15からいっそう離れたフィールドプレート20は、2DEGチャネルの電位に対していっそう弱い効果(及びいっそう小さい静電容量)を持つことになる。これはトランジスタのゲートGに似ており、ゲートGがチャネル15に近いほど、その静電容量は大きく、且つチャネル15の電位及びチャネル15内のキャリアの流れを変調する能力は良くなる。フィールドプレート20に沿った電位がチャネル15に結合されることになるのは、静電学の法則が、フィールドプレート20と窒化シリコン誘電体層17との間での、そして同様に、窒化シリコン層17とAlGaN層14、AlGaN層14とGaNチャネル15との間での静電ポテンシャル(電圧)の連続性を要求するからである。フィールドプレート20上の電位は、先ず窒化シリコン層17に結合され、次いでAlGaN層14に結合され、そして2DEG GaNチャネル15に結合される。この結合の強さは、誘電体層17の誘電率及び誘電体層17の厚さに依存する。なお、フィールドプレート20のうちドレイン電極Dに最も近い側が、ドレイン電極Dに接続される。一方側の端部E1で、フィールドプレート20の電圧はトランジスタ10のドレイン電極Dの電圧Vと同じである。フィールドプレート20の反対側(端部E2)(ゲートに近い側)の電圧は外部電圧源Vfpによって設定される。2DEGチャネル15の電位に対する効果(及びゲートGの周りのピーク電界の所望の低下)をフィールドプレート20が持つために、外部電圧源Vfpは、ドレイン電圧Vよりも低く、より負側の電圧に設定される必要があり、実質的なピーク電界低下のために、外部電圧源Vfpは、ゲート電極Gの電圧と同等の又はそれより低い電圧を有するべきであり、その結果、フィールドプレート20にわたって印加される電位は、ほぼ、静止ドレイン-ゲート間電圧ほどになる。如何なるフィールドプレートもないと、ドレイン-ゲート間電圧の大部分がちょうどゲートGのエッジで降下し、その位置の近くのチャネル15内に大きいピーク電界をもたらす。抵抗フィールドプレート20があると、ゲート-ドレイン間の領域全体にわたって分散されるようにしてドレイン-ゲート間電圧が降下する。定義上、より大きい距離にわたっての電位降下は、小さい距離にわたっての電位降下よりも、小さい電界に相当する。フィールドプレート電圧を実験的に設定する最も簡単な方法は、1つ以上の性能基準に基づいて、全自動(“セット・アンド・フォゲット”)で、最適な電圧を決定するものである。認知されていることには、フィールドプレート電圧Vfpはトランジスタ性能(例えば、オン抵抗、最大電流)に幾らかの影響を与えることになる可能性が高く、ピーク電界低下とトランジスタ性能との間にトレードオフが生じることになる可能性が高い。より具体的には、フィールドプレート20に印加される電圧は、ここでは、例えば、一端でドレイン電圧Vによって決定され、他端ではソースVfpを介して印加される電圧によって決定される。抵抗率(抵抗)と印加電圧の両方が、抵抗フィールドプレート20を流れる電流の量を決定する。抵抗を流れる電流が大きすぎるのは、熱として放散される無駄なエネルギーであるため望ましくない。フィールドプレート20の抵抗が、電位プロファイルを構築し、窒化シリコン誘電体層17ひいては2DEGチャネル15に結合される電界を構築する。従って、抵抗材料の使用は、該抵抗材料が自身にわたる電圧降下を生み出すことを可能にし、その結果、電圧降下によって作り出される電界が2DEGチャネル15に結合する。トランジスタ10のゲートGとドレインDとの間の当該トランジスタの2DEGチャネル15には、線形の電位降下(この電位降下の傾きが電界である)が望ましい。何故なら、線形プロファイルはゲートGのエッジにおける電界ピークを最小化するためである。
【0017】
図3は、抵抗フィールドプレート20の一実施形態を有する高電圧(HV)GaNトランジスタ10における静電ポテンシャルのシミュレーション結果を示している。デバイスがAB級レジーム(ドレイン電圧V=90V;ソース電圧V=0V;ドレイン電流I=90mA/mm)にてバイアスされ、フィールドプレート電圧(Vfp)が0V(最小効果)から90V(実質的効果)までスイープされている。図4は、これらの同じシミュレーション結果を少し異なる方法で示すプロットである。トランジスタの2DEGチャネル15の長さ方向に沿ったスライスについて、図3のプロットは電位を示し、図4のプロットは電界プロファイルを示している。これらの結果は、フィールドプレートとしてのこの開示の有用性と、Vfpを変化させることによってチャネル内の電位プロファイルを動的に操作する能力とを確立するものである。
【0018】
図5は、つまりは薄膜抵抗フィールドプレート20が存在しないものである、例えば図1に示したSCFPなどの伝統的なメタルソース接続フィールドプレート(SCFP)によって作り出される電界プロファイルを示しており、バイアス条件及び他の幾何学構成は一定に保っている。伝統的なSCFPによってでは、ピーク電界が約1MV/cmまでに限られるところ、抵抗フィールドプレート20について図4の結果を調べるに、十分に大きい値のVfpで、ゲート周辺のピーク電界が、伝統的なメタルSCFPによって可能なものと同等又はそれよりも小さいことが見てとれる。図5の結果は、図4と比較することを意図したものである。図5のデバイスが、図2に示したような抵抗フィールドプレートの代わりに、伝統的なSCFPを有することを除いて、シミュレーションしたトランジスタ幾何学構成及びバイアス条件は同じである。理解されるべきことには、チャネル位置は、ソースコンタクトのエッジとドレインコンタクトのエッジとの間の、チャネルの長さ方向に沿った横方向位置である。0のチャネル位置は、ソースの位置、ドレインの位置、チャネルの中央など、どこに定義されてもよいので、その値自体は幾分恣意的なものであり、重要なのは、それらの相対的な位置である。図3図4、及び図5では、プロットの左限がソースのエッジのチャネル位置に対応し、プロットの右限がドレインのエッジのチャネル位置に対応する。
【0019】
これらのシミュレーション結果は、トランジスタ内のピーク電界及び電位降下を制御するこの開示の動的能力を明らかにしている。本開示を用いて、特定の環境、動作条件(様々なドレイン電圧を含む)、及び性能要求に適合するように(外部電圧制御Vfpを介して)トランジスタの静電特性をリアルタイムに変更することができる。
【0020】
2つの例:
(I) ピークチャネル温度(Tch)低下: 理解されるべきことには、フィールドプレート電圧Vfpを時間と共に変化させることで、2DEGチャネルに沿った電界の分布を変えることができる(図4)。デバイス内の電力消費プロファイルは、一次的には、この電界プロファイルにチャネル電流密度(A/mm)を乗じたものであるので、チャネルに沿った電力消費のプロファイルもVfpによって操作することができる。より小さいVfp値はゲート付近に集中した電力消費のピークをもたらすが、より大きいVfp値はより良く電力消費を分布させて、ピークチャネル温度Tchを低下させる。例えば、ある特定の公称温度範囲の周辺環境において一定のピークチャネル温度を維持するように設計されたトランジスタが、温度上昇した周辺環境に一時的にさらされ、それ故に、望まれる限界を超えてトランジスタのピークチャネル温度を上昇させてしまうことがあり、フィールドプレート電圧Vfpを変化させることにより、場合によって最適性能を犠牲にして、ピークチャネル温度を下げることができる。このような機能を実装するために、システムに温度センサを備え、その出力をアナログ又はデジタル制御ロジックと結合し、そして、該制御ロジックが、例えばVfp電圧を生成する可変電圧レギュレータを使用することによって、温度センサからの読み取りに基づいてVfpを制御することができるようにし得る。
【0021】
(II) 高温環境における電界低下: 信頼性は、ピーク電界及び温度の両方に依存し、高温では定格が下がることが多い。高温条件において、この開示は、デバイスの劣化及び経年劣化効果を軽減するために、(Vfpを高めることによって)(1つ以上の)ピーク電界を動的に低下させることを可能にする。例えば、ある特定の公称温度範囲の周辺環境において特定の(1つ以上の)ピーク電界値と結合された特定のピークチャネル温度を維持するように設計されたトランジスタが、温度上昇した周辺環境に一時的にさらされ、それ故に、トランジスタのピークチャネル温度を上昇させ、(1つ以上の)ピーク電界値と相まって信頼性及び/又は生存に害をもたらすことがあり、信頼性及び生存を維持するために、フィールドプレート電圧Vfpを変化させることにより、場合によって最適性能を犠牲にして、ピーク電界を更に低下させることができる。このような機能を実装するために、システムに温度センサを備え、その出力をアナログ又はデジタル制御ロジックと結合し、そして、該制御ロジックが、例えばVfp電圧を生成する可変電圧レギュレータを使用することによって、温度センサからの読み取りに基づいてVfpを制御することができるようにし得る。このような機能は、ピーク電界及び温度を従属変数として含むトランジスタの信頼性モデルの先験的な構築を必要とする。このような信頼性モデルを用いて、十分なデバイス信頼性と適合する電界と温度の組み合わせを定量的に予測することができる。従って、理解されるべきことには、トランジスタ内の電界及びチャネル温度を変更するように電圧Vfpをリアルタイムに変化させることができ、それによって、動的な性能要求、動作電圧、環境条件、及び信頼性要求に適するように、例えば、温度センサの使用によりこれらの環境条件をセンシングし、温度センサ出力をVfp電圧源に送り、それによってVfpを然るべく変化させることによって、あるいは、経時劣化効果情報を格納し、Vfp電圧源への適切な制御信号を生成するようにプログラムされたマイクロプロセッサを用い、それによってVfpを然るべく変化させることによってなどで、これらの環境条件をセンシングすることにより、フィールドプレート効果をリアルタイムに変化させることを可能にする。このような適用において、理解されるべきことには、Vfp電圧源は固定電圧源に代えて可変電圧源となる。
【0022】
(チャネルの長さ方向に沿った)抵抗フィールドプレート材料の長さは、チャネル内の電界プロファイルを最適化するように選定される。抵抗フィールドプレートの幅は、2DEGチャネルの幅全体に及ぶ。フィールドプレート20の抵抗体の長さ及び幅は、その抵抗値を決定する役割を果たし、これらのパラメータは先行検討に基づいて決められる。フィールドプレート20の抵抗体の抵抗値を決定することができる残りの自由なパラメータは、抵抗体材料の抵抗率及びその厚さである。高い抵抗率及び薄い厚さはどちらも、全体の抵抗を増加させる。点E1とE2との間の抵抗フィールドプレートの全体抵抗Rは、抵抗体内での電力消費(Vfp /Rに等しい)がトランジスタチャネルそれ自体内で消費される静止電力に対して無視できるように選ばれるべきである。例えば、高電圧GaNトランジスタでは、100Vのドレイン電圧を使用し、電圧源Vfpを介してフィールドプレート20に0Vを印加することがあり、Vfp=100Vとなる。100kΩの抵抗Rは、100mWという抵抗体内での電力消費につながることになり、これはAB級レジームにてバイアスされるトランジスタのチャネル15内で消費される静止電力に対する許容可能な消費電力の妥当な上限である。抵抗値を高くすると、浪費する電力が少なくなるが、非常に高い抵抗値を達成することは、例えば高い抵抗率を持つ材料を用意したり非常に薄い層を作製したりするなどの実際上の制約によって制限され得る。
【0023】
SiN誘電体の厚さは500Åから5000Åの範囲内とすべきである。それを厚くしすぎると、フィールドプレート20の有効性(ピーク電界を低下させる能力)を減じることになり、それを薄くしすぎると、過剰な静電容量負荷が追加したり誘電体層17それ自体を横切る過大な電界につながったりすることがあり、SiN誘電体及び/又はAlGaN層の早すぎる絶縁破壊につながってしまい得る。層17それ自体の誘電体材料は窒化シリコン(SiN)である必要はない。選択された具体的な誘電体の材料特性(例えば、誘電率及び絶縁破壊電圧)が、誘電体の最適な厚さを決定する役割を果たす。抵抗体にかかる電圧の値は、一次的には、トランジスタのドレイン-ゲート間電圧又はドレイン-ソース間電圧とほぼ同じにされるべきである。
【0024】
もはや理解されるはずのことには、本開示に従ったトランジスタは、半導体と、前記半導体と接触した第1電極と、前記半導体と接触した第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間の前記半導体内のチャネルにおけるキャリアの流れを制御するための、前記第1電極と前記第2電極との間に配置された制御電極であり、前記第1電極と前記第2電極との間に印加される電圧に応答して前記チャネル内に第1の電界が生成される、制御電極と、前記チャネルの上に配置された、抵抗材料を有するフィールドプレートと、前記抵抗材料の部分にまたがって接続されて、前記抵抗材料の前記部分にわたる第2の電界を生成する電圧源であり、該第2の電界が前記チャネルに結合されて前記チャネル内の前記第1の電界を変更する、電圧源と、を含む。当該トランジスタは、以下の特徴のうちの1つ以上を個別に又は組み合わせてのいずれかで含み得る:前記フィールドプレートと前記チャネルとの間に配置された誘電体層;前記誘電体層は、前記フィールドプレートと前記チャネルとの間をDC電流が通るのを防止するように選択されている;前記フィールドプレートの材料は、前記フィールドプレートによって消費される電力を最小化するのに十分な高さの電気抵抗のものであるように選択されている;又は、前記電圧源は、時間変化する電圧として前記電圧を生成する。
【0025】
これまたもはや理解されるはずのことには、本開示に従ったトランジスタは、半導体構造と、前記半導体構造と接触したソース電極と、前記半導体構造と接触したドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の前記半導体構造内のチャネルにおけるキャリアの流れを制御するための、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に配置されたゲート電極であり、前記ソース電極、前記ドレイン電極、及び前記ゲート電極に印加される電圧に応答して前記チャネル内に電界プロファイルが生成され、該電界プロファイルは1つ以上のピーク値を持つ、制御電極と、前記ゲート電極と前記ドレイン電極の間の領域内で前記チャネルの上に配置された、抵抗材料を有するフィールドプレートであり、当該フィールドプレートは、一端で前記ドレイン電極に電気的に接続され、他端は、当該トランジスタのフィールドプレート制御端子を提供する、フィールドプレートと、前記フィールドプレートに電気的に接続された電圧源であり、当該電圧源は、前記フィールドプレートに沿って徐々に変化する電位降下を作り出す電圧を生成し、該徐々に変化する電位降下が、当該トランジスタの前記チャネルに結合されて、前記チャネル内の1つ以上の電界ピークの大きさを変更する、電圧源と、を含む。当該トランジスタは、以下の特徴のうちの1つ以上を個別に又は組み合わせてのいずれかで含み得る:前記フィールドプレートと前記チャネルとの間に配置された誘電体層;前記誘電体層は、前記フィールドプレートと前記チャネルとの間をDC電流が通るのを防止するように選択されている;前記フィールドプレートの材料は、前記フィールドプレートによって消費される電力を最小化するのに十分な高さの電気抵抗のものであるように選択されている;前記電圧源は、時間変化する電圧として前記電圧を生成する。
【0026】
本開示の多数の実施形態を説明してきた。そうとはいえ、理解されることには、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更がなされ得る。例えば、抵抗フィールドプレート20に印加される電圧は一定であってもよく、あるいは、リアルタイム性能要求に基づいてフィールドプレート電圧Vfpを調節する能力をシステムに与えてもよい。また、抵抗フィールドプレート20の抵抗率又は厚さが、フィールドプレート20の長さにわたって変化するように設計されてもよい。さらには、ゲートはショットキーコンタクトである必要はなく、抵抗フィールドプレートと共に金属-絶縁体-半導体(MIS)ゲートが用いられてもよい。従って、他の実施形態が以下のクレームの範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5