(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用分離膜、その製造方法、及びそれによって製造された分離膜
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20240628BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20240628BHJP
B32B 5/32 20060101ALI20240628BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240628BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20240628BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240628BHJP
C08F 210/02 20060101ALI20240628BHJP
C08F 218/08 20060101ALI20240628BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20240628BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240628BHJP
H01M 50/411 20210101ALI20240628BHJP
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H01M 50/42 20210101ALI20240628BHJP
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H01M 50/437 20210101ALI20240628BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240628BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240628BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20240628BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240628BHJP
【FI】
H01M50/451
B32B5/18
B32B5/32
B32B27/20 Z
B32B27/28 101
B32B27/30 D
C08F210/02
C08F218/08
C08F220/10
H01M50/403 D
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H01M50/437
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/46
H01M50/489
(21)【出願番号】P 2022565910
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 KR2021008297
(87)【国際公開番号】W WO2022005211
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0080604
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ダ-キュン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ミ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キュン-アン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ミン-ジ・キム
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特許第6334071(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/093146(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/240500(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/136813(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104468(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/451
B32B 5/18
B32B 5/32
B32B 27/20
B32B 27/28
B32B 27/30
C08F 210/02
C08F 218/08
C08F 220/10
H01M 50/403
H01M 50/411
H01M 50/414
H01M 50/42
H01M 50/426
H01M 50/434
H01M 50/437
H01M 50/443
H01M 50/446
H01M 50/46
H01M 50/489
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性高分子基材と、
前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に形成され、無機物粒子、フッ素系バインダー高分子(A)、及びエチレン単量体由来繰り返し単位(a)とビニルアセテート単量体由来繰り返し単位(b)を備えたエチレン系共重合体(B)を含む多孔性コーティング層と、を備え、
前記エチレン系共重合体の含量は、前記多孔性コーティング層100重量部を基準にして
4重量部以下であり、
前記エチレン系共重合体の重量平均分子量は、400,000以下である、リチウム二次電池用分離膜。
【請求項2】
前記エチレン単量体由来繰り返し単位(a)の含量が、前記エチレン系共重合体の総100重量部を基準にして20重量部以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池用分離膜。
【請求項3】
前記エチレン系共重合体の重量平均分子量が、100,000~400,000である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用分離膜。
【請求項4】
前記エチレン系共重合体が、共単量体由来繰り返し単位(c)をさらに含み、
前記共単量体由来繰り返し単位は、アクリレート系単量体、カルボキシル基を含む炭素数1~10の単量体、またはこれらのうちの二つ以上の単量体から由来した繰り返し単位を含み、
前記エチレン単量体由来繰り返し単位(a)の含量は、前記エチレン系共重合体100重量部を基準にして13重量部以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜。
【請求項5】
前記エチレン系共重合体が、350,000以下の重量平均分子量を有する、請求項4に記載のリチウム二次電池用分離膜。
【請求項6】
前記多孔性コーティング層が、分散剤をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜。
【請求項7】
前記分散剤が、脂肪酸化合物、アルキルアンモニウム系化合物、チタネート系化合物、シラン系化合物、フェノール系化合物、またはこれらのうちの二つ以上を含む、請求項6に記載のリチウム二次電池用分離膜。
【請求項8】
前記フッ素系バインダー高分子が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、またはこれらのうちの二つ以上を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜。
【請求項9】
前記フッ素系バインダー高分子の重量平均分子量が、100,000~1,500,000である、請求項1から8のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜。
【請求項10】
前記分離膜は、前記多孔性高分子基材と前記多孔性コーティング層との間の接着力が70gf/15mm以上であり、
前記分離膜と電極との接着力が50gf/25mm以上である、請求項1から9のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜。
【請求項11】
有機溶媒に溶解されているフッ素系バインダー高分子(A)、及びエチレン単量体由来繰り返し単位(a)とビニルアセテート単量体由来繰り返し単位(b)を備えたエチレン系共重合体(B)に、無機物粒子を混入して分散させて多孔性コーティング層形成用スラリーを用意する段階と、
前記多孔性コーティング層形成用スラリーを、多数の気孔を有する多孔性高分子基材の少なくとも一面上に塗布及び乾燥して、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に多孔性コーティング層を形成する段階と、を含み、
前記エチレン系共重合体の含量は、前記多孔性コーティング層100重量部を基準にして
4重量部以下であり、
前記エチレン系共重合体の重量平均分子量は、400,000以下である、リチウム二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項12】
前記エチレン単量体由来繰り返し単位(a)の含量が、前記エチレン系共重合体の総100重量部を基準にして20重量部以下である、請求項11に記載のリチウム二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項13】
前記有機溶媒が、ケトン系溶媒である、請求項11または12に記載のリチウム二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項14】
前記ケトン系溶媒が、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルイソブチルケトン、またはこれらのうちの二つ以上を含む、請求項13に記載のリチウム二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項15】
前記乾燥段階が、相対湿度30~80%で行われる、請求項11から14のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項16】
前記無機物粒子と、前記フッ素系バインダー高分子(A)及び前記エチレン系共重合体(B)の全体との重量比が、50:50~90:10である、請求項11から15のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項17】
正極、負極、及び前記正極と負極との間に介在された分離膜を含み、
前記分離膜は、請求項1から10のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜である、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池などの電気化学素子に適用可能な分離膜の製造方法、及びそれによって製造された分離膜に関する。
【0002】
本出願は、2020年6月30日付け出願の韓国特許出願第10-2020-0080604号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる
【背景技術】
【0003】
近年、エネルギー貯蔵技術に対する関心が益々高まっている。携帯電話、カムコーダー及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡がるとともに、電気化学素子の研究と開発に対する努力が益々具体化されている。電気化学素子はこのような面から最も注目されている分野であり、なかでも充放電可能な二次電池の開発には関心が集まっている。近年はこのような電池の開発において、容量密度及び比エネルギーを向上させるために新たな電極と電池の設計に関連する研究開発が行われている。
【0004】
現在適用されている二次電池のうち1990年代初に開発されたリチウム二次電池は、水溶液電解液を使用するNi-MH、Ni-Cd、硫酸-鉛電池などの従来の電池に比べて、作動電圧が高くてエネルギー密度が格段に高いという長所から脚光を浴びている。
【0005】
リチウム二次電池などの電気化学素子は多くのメーカーで生産されているが、それらの安全特性はそれぞれ異なる様相を呈する。このような電気化学素子の安全性を評価及び確保することは非常に重要である。例えば、分離膜は、正極と負極との間の短絡を防止するとともにリチウムイオンの移動通路を提供する。したがって、分離膜は電池の安全性及び出力特性に影響を及ぼす重要な因子である。
【0006】
このような分離膜としては、ポリオレフィン系多孔性高分子基材を主に使用するが、多孔性高分子基材の熱収縮を防止し、電極との接着力を高めるため、多孔性高分子基材の少なくとも一面上に無機物粒子及びバインダー高分子を含む多孔性コーティング層を備えた分離膜を主に使用する。
【0007】
前記多孔性コーティング層を形成するためのスラリーを製造するときは、無機物粒子を分散させるために分散剤を投入する。しかし、このような分散剤は、多孔性高分子基材と多孔性コーティング層との間の接着力(peel strength)を減少させて熱収縮率を増加させる問題がある。
【0008】
本発明は、分散剤を使用しても、多孔性高分子基材と多孔性コーティング層との間の接着力が向上し、熱収縮率が減少する分離膜の提供を図る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、多孔性高分子基材と多孔性コーティング層との間の接着力(peel strength)が改善された分離膜及びその製造方法を提供することである。
【0010】
本発明は、上記の課題と同時に、熱収縮率が減少された分離膜及びその製造方法を提供することを他の課題とする。
【0011】
本発明は、上記の課題と同時に、電極との接着力(Lami strength)が改善された分離膜及びその製造方法を提供することをさらに他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、下記具現例による分離膜を提供する。
【0013】
第1具現例は、
多孔性高分子基材と、
前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に形成され、無機物粒子、フッ素系バインダー高分子(A)、及びエチレン単量体由来繰り返し単位(a)とビニルアセテート単量体由来繰り返し単位(b)を備えたエチレン系共重合体(B)を含む多孔性コーティング層と、を備え、
前記エチレン系共重合体の含量は、前記多孔性コーティング層100重量部を基準にして5重量部以下であり、
前記エチレン系共重合体の重量平均分子量は、400,000以下であることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜に関する。
【0014】
第2具現例は、第1具現例において、
前記エチレン単量体由来繰り返し単位(a)の含量が、前記エチレン系共重合体の総100重量部を基準にして20重量部以下であることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜に関する。
【0015】
第3具現例は、第1具現例または第2具現例において、
前記エチレン系共重合体の重量平均分子量が、100,000~400,000であることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜に関する。
【0016】
第4具現例は、上述した具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記エチレン系共重合体が、共単量体由来繰り返し単位(c)をさらに含み、
前記共単量体由来繰り返し単位は、アクリレート系単量体、カルボキシル基を含む炭素数1~10の単量体、またはこれらのうちの二つ以上の単量体から由来した繰り返し単位を含み、
このとき、前記エチレン単量体由来繰り返し単位(a)の含量は、前記エチレン系共重合体100重量部を基準にして13重量部以下であることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜に関する。
【0017】
第5具現例は、第4具現例において、
前記エチレン系共重合体が、350,000以下の重量平均分子量を有することを特徴とするリチウム二次電池用分離膜に関する。
【0018】
第6具現例は、上述した具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記多孔性コーティング層が、分散剤をさらに含むことを特徴とするリチウム二次電池用分離膜に関する。
【0019】
第7具現例は、第6具現例において、
前記分散剤が、脂肪酸化合物、アルキルアンモニウム系化合物、チタネート系化合物、シラン系化合物、フェノール系化合物、またはこれらのうちの二つ以上を含むことを特徴とするリチウム二次電池用分離膜に関する。
【0020】
第8具現例は、上述した具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記フッ素系バインダー高分子が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、またはこれらのうちの二つ以上を含むことを特徴とするリチウム二次電池用分離膜に関する。
【0021】
第9具現例は、上述した具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記フッ素系バインダー高分子の重量平均分子量が100,000~1,500,000であることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜に関する。
【0022】
第10具現例は、上述した具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記分離膜は、前記多孔性高分子基材と前記多孔性コーティング層との間の接着力(peel strength)が70gf/15mm以上であり、
前記分離膜と電極との接着力(Lami strength)が50gf/25mm以上であることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜に関する。
【0023】
本発明の他の一態様は、下記具現例によるリチウム二次電池用分離膜の製造方法を提供する。
【0024】
第11具現例は、
有機溶媒に溶解されているフッ素系バインダー高分子(A)、及びエチレン単量体由来繰り返し単位(a)とビニルアセテート単量体由来繰り返し単位(b)を備えたエチレン系共重合体(B)に、無機物粒子を混入して分散させて多孔性コーティング層形成用スラリーを用意する段階と、
前記多孔性コーティング層形成用スラリーを、多数の気孔を有する多孔性高分子基材の少なくとも一面上に塗布及び乾燥して、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面上に多孔性コーティング層を形成する段階と、を含み、
前記エチレン系共重合体の含量は、前記多孔性コーティング層100重量部を基準にして5重量部以下であり、
前記エチレン系共重合体の重量平均分子量は、400,000以下であることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造方法に関する。
【0025】
第12具現例は、第11具現例において、
前記エチレン単量体由来繰り返し単位(a)の含量が前記エチレン系共重合体の総100重量部を基準にして20重量部以下であることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造方法に関する。
【0026】
第13具現例は、第11具現例または第12具現例において、
前記有機溶媒がケトン系溶媒であることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造方法に関する。
【0027】
第14具現例は、第13具現例において、
前記ケトン系溶媒が、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルイソブチルケトン、またはこれらのうちの二つ以上を含むことを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造方法に関する。
【0028】
第15具現例は、上述した具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記乾燥段階が、相対湿度30~80%で行われることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造方法に関する。
【0029】
第16具現例は、上述した具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記無機物粒子と、前記フッ素系バインダー高分子(A)及び前記エチレン系共重合体(B)の全体との重量比が、50:50~90:10であることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造方法に関する。
【0030】
本発明のさらに他の一態様は、下記具現例によるリチウム二次電池を提供する。
【0031】
第17具現例は、
正極、負極、及び前記正極と負極との間に介在された分離膜を含み、
前記分離膜は、上述した具現例のうちの一具現例によるリチウム二次電池用分離膜であることを特徴とするリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一態様によれば、所定の特性を有するエチレン系共重合体を使用することで、多孔性コーティング層と多孔性高分子基材との間の接着力(peel strength)と、分離膜と電極との接着力(Lami strength)とが同時に改善された分離膜、及びその製造方法を提供することができる。
【0033】
また、本発明の一態様によれば、熱収縮率が改善された分離膜、及びその製造方法を提供することができる。
【0034】
本明細書に添付される図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。一方、本明細書に添付される図面における要素の形状、大きさ、縮尺または比率などはより明確な説明を強調するため誇張されることもある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の具現例を詳しく説明する。本明細書及び特許請求の範囲において使用された用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0037】
本明細書の全体において、ある部分が他の構成要素を「含む」とは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0038】
また、本明細書の全体で使われる用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値でまたはその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を助けるために正確又は絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に用いることを防止するために使われる。
【0039】
リチウム二次電池などの電気化学素子において、通常、分離膜として多孔性の高分子基材を使用するため、熱収縮挙動を示すという問題がある。そこで、分離膜の熱収縮率を下げることを意図して多孔性コーティング層が導入された。
【0040】
このような多孔性コーティング層は、溶媒内に無機物粒子を分散させて多孔性高分子基材上に塗布及び乾燥して形成する。このとき、前記無機物粒子の分散性を高めるため分散剤を投入する。本発明者等は、分散剤の投入過程で、従来使用する分散剤の重量平均分子量(Mw)が約5000以下と小さいことから、無機物粒子の分散には作用し易いが、多孔性高分子基材と多孔性コーティング層との間の接着力が減少するか又は熱収縮率が増加する問題があることを見出した。
【0041】
本発明は、上記の問題を解決するため、分散剤の使用時にも多孔性高分子基材と多孔性コーティング層との間の接着力が向上し、熱収縮率が減少した分離膜を提供する。
【0042】
本発明の一態様によるリチウム二次電池用分離膜は、
多孔性高分子基材と、
前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に形成され、無機物粒子、フッ素系バインダー高分子(A)、及びエチレン単量体由来繰り返し単位(a)とビニルアセテート単量体由来繰り返し単位(b)を備えたエチレン系共重合体(B)を含む多孔性コーティング層と、を備え、
前記エチレン系共重合体の含量が、前記多孔性コーティング層100重量部を基準にして5重量部以下であり、
前記エチレン系共重合体の重量平均分子量が400,000以下である。
【0043】
以下、本発明の一態様によるリチウム二次電池用セパレータについて具体的に説明する。
【0044】
本発明の一態様によるリチウム二次電池用分離膜は、多孔性コーティング層内にフッ素系バインダー高分子(A)及びエチレン系共重合体(B)を含む。
【0045】
従来はフッ素系バインダー高分子を用いて多孔性コーティング層を形成した。このような多孔性コーティング層は、多孔性高分子基材上にスラリーを塗布した後、加湿条件下で溶媒を乾燥して多孔性コーティング層内に気孔を形成すると同時に、多孔性コーティング層の表面部に接着層を形成する。これはフッ素系バインダー高分子が溶媒に溶解されるためであると見られる。しかし、このようにフッ素系バインダー高分子のみを用いて多孔性コーティング層を形成する場合は、
図1のように、フッ素系バインダー高分子が多孔性コーティング層の表面部のみに位置するようになる。結果的に、多孔性コーティング層と多孔性高分子基材との間の接着力が相対的に低下する問題が発生する。
【0046】
一方、本発明者等は、エチレン系共重合体(B)を追加することで、多孔性コーティング層と多孔性高分子基材との間の接着力を高めようとした。本発明者らは、エチレン系共重合体(B)のみを用いて多孔性コーティング層を形成する場合、エチレン系共重合体が加湿相分離されず、多孔性高分子基材の表面にフィルム形態でコーティングされることを見出した。これは
図2から分かる。
【0047】
そこで、本発明者等は、上述したフッ素系バインダー高分子とエチレン系共重合体とを同時に使用して、前記多孔性コーティング層を、フッ素系バインダー高分子/前記エチレン系共重合体の含量比(A/B)が前記多孔性コーティング層の表面部に行くほど大きくなるように制御した。これにより、多孔性コーティング層と多孔性高分子基材との間の接着力(peel strength)と、分離膜と電極との接着力(Lami strength)とを同時に改善させようとした。
【0048】
前記フッ素系バインダー高分子(A)は、半結晶性(semi-crystalline)高分子であって、加湿条件下で相分離して多孔性(porous)構造を形成可能である。このような理由から、フッ素系バインダー高分子は、無機物粒子とともに多孔性高分子基材上に塗布される場合、多孔性高分子基材と無機物粒子との間よりは多孔性コーティング層の表面に主に位置する。コーティング層形成の際、基材と無機物との間よりは多孔性コーティング層の表面上に位置するようになる。これにより、結果的に電極とセパレータとの間の接着力を向上させることができる。
【0049】
前記フッ素系バインダー高分子は、接着特性を有するものであって、前記多孔性高分子基材と多孔性コーティング層との間の結着力を提供するか又は前記多孔性コーティング層と電極との間の結着力を提供する。また、多孔性コーティング層内の無機物粒子が脱離しないように固定する役割を果たす。
【0050】
本発明の具体的な一実施形態において、前記フッ素系バインダー高分子は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。例えば、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体を含み得る。
【0051】
本発明の具体的な一実施形態において、前記フッ素系バインダー高分子の重量平均分子量は、100,000以上、200,000以上、または300,000以上であり得、1,500,000以下、1,000,000以下、または800,000以下であり得る。例えば、耐熱性及び接着性を確保するとともに工程性が確保されるという面で300,000~800,000であり得る。
【0052】
このとき、フッ素系バインダー高分子の重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography、PL GPC220、アジレント・テクノロジー社製)を用いて測定可能である。
【0053】
具体的には、下記の分析条件で測定可能である。
-カラム:PL MiniMixed Bx2
-溶媒:DMF
-流速:0.3ml/分
-試料濃度:2.0mg/ml
-注入量:10μl
-カラム温度:40℃
-検出器:アジレント製のRI検出器
-スタンダード:ポリスチレン(3次関数で補正)
-データ処理:ChemStation
【0054】
前記エチレン系共重合体(B)は、エチレン単量体由来繰り返し単位(a)及びビニルアセテート単量体由来繰り返し単位(b)を備えたエチレン系共重合体(B)を含む。
【0055】
このとき、前記エチレン系共重合体は、無機物粒子を分散させる分散剤として役割する。同時に、本発明者らは、前記エチレン系共重合体を多孔性高分子基材と多孔性コーティング層との間の接着力(peel strength)を高めるバインダー高分子として用いた。
【0056】
このとき、前記エチレン単量体由来繰り返し単位(a)の含量は、前記エチレン系共重合体の総100重量部を基準にして20重量部以下であることが望ましい。例えば、前記エチレン単量体由来繰り返し単位の割合は、20重量部以下、18重量部以下、16重量部以下、14重量部以下、12重量部以下、または10重量部以下、または1重量部~20重量部、または4重量部~20重量部であり得る。本発明の一態様による分離膜は、有機溶媒に前記エチレン系共重合体を溶解させて使用する。このとき、前記エチレン単量体由来繰り返し単位の含量が20重量部以下であると、本発明で使用する有機溶媒に前記エチレン系共重合体が溶解され易く、多孔性コーティング層の形成に有利である。
【0057】
本発明の一態様において、前記エチレン系共重合体の含量は、前記多孔性コーティング層100重量部を基準にして5重量部以下である。具体的には、前記エチレン系共重合体の含量は、前記多孔性コーティング層100重量部を基準にして4重量部以下、3重量部以下、または2重量部以下、または1~5重量部、または1~3重量部であり得る。前記エチレン系共重合体の含量が5重量部を超えると、電極との接着力(Lami strength)を確保することができない。
【0058】
本発明の一態様において、前記エチレン系共重合体の重量平均分子量は、400,000以下である。エチレン系共重合体の重量平均分子量が400,000を超えると、基材に塗布する多孔性コーティング層形成用スラリーの分散性が劣り、塗布自体が不可能である。具体的には、スラリー内の無機物粒子の粒度が大きくスラリーの沈降速度が速過ぎて、コーティングが不可能である。本発明の具体的な一実施形態において、前記エチレン系共重合体の重量平均分子量は400,000以下、350,000以下、または300,000以下であり得、50,000以上、100,000以上、または150,000以上であり得る。例えば、耐熱性及び接着性を確保するとともに工程性が確保されるという面で100,000~400,000、より具体的には、280,000~380,000であり得る。
【0059】
このとき、エチレン系共重合体の重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC、PL GPC220、アジレント・テクノロジー社製)を用いて測定可能である。
【0060】
具体的には、下記の分析条件で測定可能である。
-カラム:PL MiniMixed Bx2
-溶媒:DMF
-流速:0.3ml/分
-試料濃度:2.0mg/ml
-注入量:10μl
-カラム温度:40℃
-検出器:アジレント製のRI検出器
-スタンダード:ポリスチレン(3次関数で補正)
-データ処理:ChemStation
【0061】
本発明の具体的な一実施形態において、前記エチレン系共重合体は、共単量体由来繰り返し単位(c)をさらに含み、前記共単量体由来繰り返し単位は、アクリレート系単量体、カルボキシル基を含む炭素数1~10の単量体、またはこれらのうちの二つ以上の単量体から由来した繰り返し単位を含み得る。このとき、前記エチレン単量体由来繰り返し単位(a)の含量は、前記エチレン系共重合体100重量部を基準にして13重量部以下であることが望ましい。また、このとき、前記エチレン系共重合体は、350,000以下の重量平均分子量を有することが望ましい。上述した範囲内であれば、本発明で使用する溶媒に特に溶解され易い。特に、ケトン類有機溶媒にさらに溶解され易い。
【0062】
本発明の具体的な一実施形態において、前記アクリレート系単量体は、ビニルアクリレート、2-ブトキシエチルアクリレート、2-ブトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、2-エチル-2-アダマンチルアクリレート、2-エチル-2-アダマンチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート、ジ(エチレングリコール)エチルエーテルメタクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、メチルアダマンチルアクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエートアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、イソボニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルアダマンチルメタクリレート、メチルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、イソブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、アルキルアクリレート、2-ヒドロキシアクリレート、トリメトキシブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、3-フルオロエチルアクリレート、4-フルオロプロピルアクリレート、及びトリエチルシロキシルエチルアクリレートからなる群より選択された1種以上を含み得る。
【0063】
本発明の具体的な一実施形態において、カルボキシル基を含む炭素数1~10の単量体は、ビニル酸単量体であり得る。
【0064】
本発明の具体的な一実施形態において、カルボキシル基を含む炭素数1~10の単量体は、ビニル酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0065】
一方、本発明の他の一態様による分離膜において、前記多孔性コーティング層は、フッ素系バインダー高分子/前記エチレン系共重合体の含量比(A/B)が前記多孔性コーティング層の表面部に行くほど大きくなるものであり得る。
【0066】
これは、フッ素系バインダー高分子がエチレン系共重合体に比べて結晶性を有する高分子であるためである。本発明の一態様で使用するエチレン系共重合体は無定形高分子であるため、加湿条件下で多孔性高分子基材上に塗布する場合、相分離せず、フッ素系バインダー高分子に比べて多孔性高分子基材側に位置し得る。
【0067】
本発明の具体的な一実施形態において、前記多孔性コーティング層は、分散剤をさらに含み得る。前記分散剤は、無機物粒子を分散させることで、多孔性コーティング層形成の際、固形分が凝集する現象を防止するために投入される。
【0068】
例えば、前記分散剤は、脂肪酸化合物、アルキルアンモニウム系化合物、チタネート系化合物、シラン系化合物、フェノール系化合物、またはこれらのうちの2以上であり得る。
【0069】
例えば、前記脂肪酸化合物は、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸のように炭素数10以上の酸からなる群より選択されたいずれか一つまたはこれらのうちの2種以上の混合物であり得る。
【0070】
例えば、前記アルキルアンモニウム系化合物は、下記化学式1で表される化合物を含み得る。
【0071】
【化1】
(化学式1において、nは0~15の整数である。)
【0072】
例えば、前記チタネート系化合物は、モノアルコキシチタネート、ネオアルコキシチタネート、イソプロピルトリジオクチルホスフェートチタネート、イソプロピルトリジオクチルピロホスフェートチタネート、オレイルチタネート、イソプロピルトリオレイルチタネート、イソプロピルトリステアリルチタネート、及びイソプロピルトリイソステアリルチタネートからなる群より選択されたいずれか一つまたはこれらのうちの2種以上の混合物であり得る。
【0073】
例えば、シラン系化合物は、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基、スチリル基、イソシアヌレート基、及びイソシアネート基からなる群より選択された2種以上の官能基を含むシラン系化合物であり得る。
【0074】
これにより、本発明の一態様による分離膜は、前記多孔性高分子基材と前記多孔性コーティング層との間の接着力(peel strength)が70gf/15mm以上であり、前記分離膜と電極との接着力(Lami strength)が50gf/25mm以上であり得る。
【0075】
本発明の他の一態様は、リチウム二次電池用分離膜の製造方法を提供する。
【0076】
具体的には、有機溶媒に溶解されているフッ素系バインダー高分子(A)、及びエチレン単量体由来繰り返し単位(a)とビニルアセテート単量体由来繰り返し単位(b)を備えたエチレン系共重合体(B)に、無機物粒子を混入して分散させて多孔性コーティング層形成用スラリーを用意する段階と、
前記多孔性コーティング層形成用スラリーを、多数の気孔を有する多孔性高分子基材の少なくとも一面上に塗布及び乾燥して、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に多孔性コーティング層を形成する段階と、を含み、
前記エチレン系共重合体の含量は、前記多孔性コーティング層100重量部を基準にして5重量部以下であり、
前記エチレン系共重合体の重量平均分子量は、400,000以下であることを特徴とする。
【0077】
まず、フッ素系バインダー高分子(A)、及びエチレン単量体由来繰り返し単位(a)とビニルアセテート単量体由来繰り返し単位(b)を備えたエチレン系共重合体(B)が溶解されている有機溶媒に、無機物粒子が混入されて分散している多孔性コーティング層形成用スラリーを用意する(S1)。
【0078】
前記フッ素系バインダー高分子(A)とエチレン系共重合体(B)は有機溶媒に溶解されている。前記フッ素系バインダー高分子(A)と前記エチレン系共重合体(B)については上述した記載を援用できる。
【0079】
前記有機溶媒は、ケトン系溶媒であり得る。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルイソブチルケトン、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0080】
本発明において、前記無機物粒子は、電気化学的に安定さえすれば特に制限されない。すなわち、本発明で使用可能な無機物粒子は、適用される電気化学素子の作動電圧範囲(例えば、Li/Li+基準で0~5V)で酸化反応及び/または還元反応が起きないものであれば特に制限されない。特に、無機物粒子として誘電率の高い無機物粒子を使用すると、液体電解質内の電解質塩、例えばリチウム塩の解離度増加に寄与して電解液のイオン伝導度を向上させることができる。
【0081】
上述した理由から、前記無機物粒子は、誘電率定数が5以上の無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子、またはこれらの混合物であり得る。
【0082】
前記誘電率定数が5以上である無機物粒子は、Al2O3、SiO2、ZrO2、AlO(OH)、Al(OH)3、TiO2、BaTiO3、Pb(ZrxTi1-x)O3(PZT、ここで0<x<1)、Pb1-xLaxZr1-yTiyO3(PLZT、ここで、0<x<1、0<y<1)、(1-x)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-xPbTiO3(PMN-PT、ここで0<x<1)、ハフニア(HfO2)、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、NiO、CaO、ZnO、及びSiCからなる群より選択された1種または2種以上の混合物であり得る。
【0083】
前記リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子は、リチウムホスフェート(Li3PO4)、リチウムチタンホスフェート(LixTiy(PO4)3、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LixAlyTiz(PO4)3、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、(LiAlTiP)xOy系ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LixLayTiO3、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(LixGeyPzSw、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムナイトライド(LixNy、0<x<4、0<y<2)、SiS2系ガラス(LixSiySz、0<x<3、0<y<2、0<z<4)及びP2S5系ガラス(LixPySz、0<x<3、0<y<3、0<z<7)からなる群より選択された1種または2種以上の混合物であり得る。
【0084】
前記無機物粒子の平均粒径は、特に制限されないが、均一な厚さの多孔性コーティング層の形成及び適切な孔隙率のため、0.001~10μmの範囲であることが望ましく、より望ましくは100nm~2μm、さらに望ましくは150nm~1μmであり得る。
【0085】
前記無機物粒子は、予め所定の直径を有するように破砕された状態で添加されてもよく、または前記バインダー高分子溶液に前記無機物粒子を添加した後、ボールミル法などを用いて所定の直径を有するように制御しながら破砕して分散させてもよい。
【0086】
前記無機物粒子とバインダー高分子との重量比は、90:10~50:50であり得る。バインダー高分子の総含量に対する無機物粒子の重量比が上記の範囲を満足すると、バインダー高分子の含量が多くなることによって生じる、形成される多孔性コーティング層の気孔サイズ及び気孔度が減少する問題を防止でき、バインダー高分子の含量が少なくて形成されるコーティング層の耐剥離性が弱化する問題も解消することができる。
【0087】
無機物粒子を分散させる方法としては、当業界で周知の通常の方法が用いられ、例えば超音波分散機、ボールミル、ビーズミル、ディスパーサー(disperser)、ミキサー(mixer)などが挙げられ、特にボールミル法またはビーズミルが望ましい。このとき、処理時間は容量によって変わり得るが、1~20時間が適切であり、破砕された無機物粒子の粒度はボールミルまたはビーズミルに使われたビーズのサイズ及びボールミル(またはビーズミル)時間によって制御可能である
【0088】
その後、多孔性コーティング層形成用スラリーを、多数の気孔を有する多孔性高分子基材上に塗布及び乾燥して、前記多孔性高分子基材上に多孔性コーティング層を形成する(S2)。
【0089】
本発明において、前記多孔性高分子基材は、多孔性膜であり、アノードとカソードとを電気的に絶縁させて短絡を防止するとともに、リチウムイオンの移動経路を提供するものであって、通常電気化学素子のセパレータ素材として使用可能なものであれば、特に制限なく使用可能である。
【0090】
前記多孔性高分子基材は、具体的には、多孔性高分子フィルム基材または多孔性高分子不織布基材であり得る。
【0091】
前記多孔性高分子フィルム基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンからなる多孔性高分子フィルムであり得、このようなポリオレフィン多孔性高分子フィルム基材は、例えば80℃~150℃の温度でシャットダウン機能を発現する。
【0092】
このとき、ポリオレフィン多孔性高分子フィルムは、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独でまたはこれらの2種以上を混合した高分子から形成し得る。
【0093】
また、前記多孔性高分子フィルム基材は、ポリオレフィンの他にポリエステルなどの多様な高分子を用いてフィルム状に成形して製造してもよい。また、前記多孔性高分子フィルム基材は、2層以上のフィルム層が積層された構造で形成され得、それぞれのフィルム層は上述したポリオレフィン、ポリエステルなどの高分子を単独でまたはこれらを2種以上混合した高分子から形成され得る。
【0094】
また、前記多孔性高分子フィルム基材及び多孔性不織布基材は、上述したポリオレフィン系の他に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレートなどをそれぞれ単独でまたはこれらを混合した高分子から形成され得る。
【0095】
前記多孔性高分子基材の厚さは、特に制限されないが、詳しくは1~100μm、より詳しくは5~50μmであり、近年電池の高出力化/高容量化が進行しているため、多孔性高分子基材は薄膜を用いることが有利である。前記多孔性高分子基材に存在する気孔の直径は10nm~100nm、10nm~70nm、10nm~50nm、または10nm~35nmであり、気孔度は5%~90%、望ましくは20%~80%であり得る。ただし、本発明において、このような数値範囲は具体的な実施形態または必要に応じて容易に変形され得る。
【0096】
前記多孔性高分子基材の気孔は、多様な形態の気孔構造があり、ポロシメーター(porosimeter)を用いて測定されたか又はFE-SEM上で観察された気孔の平均サイズのうちのいずれか一つでも上述した条件を満足すれば、本発明に含まれる。
【0097】
ここで、一般に知られている一軸延伸乾式セパレータの場合は、FE-SEM上でMD(machine direction)方向の気孔サイズではなく、TD(transverse direction)方向の気孔サイズで中央の気孔サイズを基準にし、その他に網構造を有する多孔性高分子基材(例えば、湿式PEセパレータ)はポロシメーターで測定した気孔径を基準にし得る。
【0098】
前記多孔性コーティング層の厚さは、特に制限されないが、詳しくは1~10μm、より詳しくは1.5~8μmであり、前記多孔性コーティング層の気孔度も特に制限されないが、35~65%であることが望ましい。
【0099】
本発明の一態様によるセパレータは、多孔性コーティング層の成分として、上述した無機物粒子及びバインダー高分子の外に、その他の添加剤をさらに含み得る。
【0100】
前記多孔性コーティング層形成用スラリーを前記多孔性高分子基材に塗布する方法は、特に限定しないが、スロットコーティングやディップコーティング方法を使用することが望ましい。スロットコーティングは、スロットダイを通じて供給された組成物が基材の全面に塗布される方式であって、定量ポンプから供給される流量によってコーティング層の厚さの調節が可能である。また、ディップコーティングは、組成物で満たされたタンクに基材を浸漬してコーティングする方法であって、組成物の濃度及び組成物タンクから基材を引き上げる速度によってコーティング層の厚さを調節可能である。より正確にコーティング厚さを制御するため、浸漬した後、マイヤーバー(Mayer bar)などを用いて後計量してもよい。
【0101】
このように多孔性コーティング層形成用スラリーがコーティングされた多孔性高分子基材をオーブンのような乾燥器を用いて乾燥することで、多孔性高分子基材の少なくとも一面上に形成された多孔性コーティング層を形成する。
【0102】
前記多孔性コーティング層では、無機物粒子が充填されて互いに接触した状態で前記バインダー高分子によって互いに結着し、これにより無機物粒子同士の間にインタースティシャル・ボリューム(interstitial volume)が形成され、前記無機物粒子同士の間のインタースティシャル・ボリュームは空き空間になって気孔を形成し得る。
【0103】
すなわち、バインダー高分子は、無機物粒子同士が互いに結着した状態を維持できるようにこれらを互いに付着して無機物粒子同士の間を連結及び固定し得る。また、前記多孔性コーティング層の気孔は無機物粒子同士の間のインタースティシャル・ボリュームが空き空間になって形成された気孔であり、これは無機物粒子による充填構造(closely packed or densely packed)で実質的に接触する無機物粒子によって限定される空間であり得る。
【0104】
前記乾燥は、乾燥チャンバ(drying chamber)で行われ得、このとき、非溶媒の塗布によって乾燥チャンバの条件は特に制限されない。
【0105】
ただし、本発明の場合、加湿条件で乾燥するため、前記フッ素系バインダー高分子が多孔性コーティング層の表面に主に分布することができる。前記乾燥段階は、相対湿度30%以上、35%以上、または40%以上であり得、80%以下、75%以下、または70%以下で行われ得る。例えば40%~80%の範囲で行われ得る。また、前記乾燥段階は、20℃~70℃の温度範囲で0.1分~2分間行われ得る。
【0106】
本発明の一態様による電気化学素子は、正極、負極、及び前記正極と負極との間に介在された分離膜を含み、前記分離膜が上述した本発明の一実施形態による分離膜である。
【0107】
このような電気化学素子は、電気化学反応を行うあらゆる素子を含み、具体的には、すべての種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはスーパーキャパシタ素子のようなキャパシタなどが挙げられる。特に、前記二次電池のうちリチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池またはリチウムイオンポリマー二次電池などを含むリチウム二次電池が望ましい。
【0108】
本発明の分離膜とともに適用される正極と負極の両電極としては、特に制限されず、当業界で周知の通常の方法で電極活物質を電極集電体に結着した形態で製造し得る。前記電極活物質のうち正極活物質の非制限的な例としては、従来の電気化学素子の正極に使用される通常の正極活物質を使用可能であり、特にリチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物、またはこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物を使用することが望ましい。負極活物質の非制限的な例としては、従来の電気化学素子の負極に使用される通常の負極活物質を使用可能であり、特にリチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コークス(petroleum coke)、活性化炭素、グラファイト、またはその他の炭素類などのようなリチウム吸着物質などが望ましい。正極集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがあり、負極集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケルまたは銅合金、またはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがある。
【0109】
本発明の電気化学素子で使用される電解液は、A+B-のような構造の塩であり、A+はLi+、Na+、K+のようなアルカリ金属陽イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含み、B-はPF6
-、BF4
-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、AsF6
-、CH3CO2
-、CF3SO3
-、N(CF3SO2)2
-、C(CF2SO2)3
-のような陰イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含む塩を、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ-ブチロラクトンまたはこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解または解離したものであるが、これらに限定されることはない。
【0110】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び求められる物性に応じて、電池製造工程のうち適切な段階において行えばよい。すなわち、電池組み立ての前または電池組み立ての最終段階などにおいて注入すればよい。
【0111】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0112】
比較例1
アセトン溶媒に、フッ素系バインダー高分子として重量平均分子量が約400,000であるポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、重量平均分子量が約400,000であるポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVdF-CTFE)を投入し、50℃で約4時間溶解させてバインダー高分子溶液を製造した。前記バインダー高分子溶液に、無機物粒子として水酸化アルミニウム(Al(OH)3、粒子サイズ:900nm)を投入した。その後、分散剤として液体脂肪酸(BYK社製、P104)を投入した。このとき、無機物粒子:フッ素系バインダー高分子:分散剤の重量比を75:23:2に制御して多孔性コーティング層形成用スラリーを製造した。このとき、無機物粒子:ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP):ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVdF-CTFE):分散剤の重量比は75:18:5:2に制御した。このとき、固形分(スラリーから溶媒を除去)の含量はスラリー100重量部を基準にして15重量部であった。
【0113】
前記多孔性コーティング層形成用スラリーを、ディップコーティング方式で23℃、相対湿度45%の条件で、厚さ9μmのポリエチレン多孔性フィルム(気孔度:45%)の両面に塗布及び乾燥し、それぞれ厚さ6μmの多孔性コーティング層が形成された分離膜を製造した。その結果を表1に示した。
【0114】
比較例2
分散剤として、液体脂肪酸(BYK社製、P104)の代わりに、シラン系化合物(BYK社製、C8002)を投入したことを除き、比較例1と同じ方法で分離膜を製造した。その結果を表1に示した。
【0115】
実施例1
アセトン溶媒に、フッ素系バインダー高分子(A)として重量平均分子量が約400,000であるポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、重量平均分子量が約400,000であるポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVdF-CTFE)を投入し、50℃で約4時間溶解させてバインダー高分子溶液を製造した。前記バインダー高分子溶液に、無機物粒子として水酸化アルミニウム(Al(OH)3、粒子サイズ:900nm)を投入した。その後、エチレン系共重合体(B、エチレン単量体由来繰り返し単位の含量がエチレン系共重合体100重量部を基準にして6重量部であり、重量平均分子量が280,000)、分散剤として液体脂肪酸(BYK社製、P104)を投入した。このとき、無機物粒子:フッ素系バインダー高分子:エチレン系共重合体:分散剤の重量比を75:23:1:1に制御して多孔性コーティング層形成用スラリーを製造した。このとき、無機物粒子:ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP):ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVdF-CTFE):エチレン系共重合体:分散剤の重量比は75:18:5:1:1に制御した。このとき、固形分(スラリーから溶媒を除去)の含量はスラリー100重量部を基準にして15重量部であった。
【0116】
前記多孔性コーティング層形成用スラリーを、ディップコーティング方式で23℃、相対湿度45%の条件で、厚さ9μmのポリエチレン多孔性フィルム(気孔度:45%)の両面に塗布及び乾燥し、それぞれ厚さ6μmの多孔性コーティング層が形成された分離膜を製造した。その結果を表1に示した。
【0117】
実施例2
分散剤として、液体脂肪酸(BYK社製、P104)の代わりに、シラン系化合物(BYK社製、C8002)を使用したことを除き、実施例1と同じ方法で分離膜を製造した。その結果を表1に示した。
【0118】
実施例3
エチレン系共重合体(B)と液体脂肪酸の代わりに、エチレン系共重合体(B)のみを使用したことを除き、実施例1と同じ方法で分離膜を製造した。その結果を表1に示した。
【0119】
【0120】
実施例4及び5
エチレン系共重合体(B)の含量を表2のように制御したことを除き、実施例3と同じ方法で分離膜を製造した。結果を表2に示した。
【0121】
比較例3
エチレン系共重合体(B)の含量を表2のように制御したことを除き、実施例3と同じ方法で分離膜を製造した。結果を表2に示した。
【0122】
【0123】
比較例4
アセトン溶媒に、フッ素系バインダー高分子(A)として重量平均分子量が約400,000であるポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)を投入し、50℃で約4時間溶解させて固形分5重量部のバインダー高分子溶液を製造した。このとき、バインダー高分子溶液内の固形分の含量は、((フッ素系バインダー高分子)/(フッ素系バインダー高分子+溶媒))×100で算定した。
【0124】
前記バインダー高分子溶液を、ディップコーティング方式で23℃、相対湿度45%の条件で、厚さ9μmのポリエチレン多孔性フィルム(気孔度:45%)の両面に塗布及び乾燥し、それぞれ厚さ2μmの多孔性コーティング層が形成された分離膜を製造した。結果を
図1に示した。
【0125】
比較例5
アセトン溶媒にエチレン系共重合体(B)を投入し、50℃で約4時間溶解させて固形分5重量部のバインダー高分子溶液を製造した。このとき、バインダー高分子溶液内の固形分の含量は、((フッ素系バインダー高分子)/(フッ素系バインダー高分子+溶媒))×100で算定した。
【0126】
前記バインダー高分子溶液を、ディップコーティング方式で23℃、相対湿度45%の条件で、厚さ9μmのポリエチレン多孔性フィルム(気孔度:45%)の両面に塗布及び乾燥し、それぞれ厚さ2μmの多孔性コーティング層が形成された分離膜を製造した。結果を
図2に示した。
【0127】
実施例6~7
エチレン系共重合体(B)の含量を表3のように制御したことを除き、実施例3と同じ方法で分離膜を製造した。結果を表3に示した。
【0128】
比較例6
エチレン系共重合体(B)の含量を表3のように制御したことを除き、実施例3と同じ方法で分離膜を製造した。結果を表3に示した。
【0129】
【0130】
評価方法
1)厚さ測定
セパレータの厚さは、厚さ測定器(ミツトヨ社製、VL-50S-B)を用いて測定した。
【0131】
2)熱収縮率の測定
熱収縮率は、MD及びTD方向のそれぞれに対し、(最初長さ-150℃/30分間熱収縮処理した後の長さ)/(最初長さ)×100で算定した。
【0132】
3)多孔性高分子基材と多孔性コーティング層との間の接着力(peel strength)の測定
実施例及び比較例で製造されたセパレータを15mm×100mmの大きさで裁断した。ガラス板上に両面接着テープを貼り付け、用意したセパレータの多孔性コーティング層の表面を接着テープに接着させた。その後、接着されたセパレータの末端部をUTM装置(LLOYD Instrument社製のLFPlus)に取り付けた後、測定速度300mm/分、180゜で力を加えて、多孔性コーティング層と多孔性高分子基材との剥離に必要な力を測定した。
【0133】
4)電極とセパレータとの間の接着力(Lami strength)の測定
電極とセパレータとの間の接着力を測定するために、以下のようにアノードを用意した。
【0134】
まず、人造黒鉛、カーボンブラック、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)を96:1:2:2の重量比で水と混合してアノードスラリーを製造した。前記アノードスラリーを3.5mAh/cm2の量で銅ホイル上にコーティングして薄い極板状にした後、135℃で3時間以上乾燥した後、圧延(pressing)してアノードを製造した。
【0135】
製造されたアノードを25mm×100mmの大きさで裁断して用意した。実施例及び比較例で製造されたセパレータを25mm×100mmの大きさで裁断して用意した。用意したセパレータとアノードとを重ねた後、100μmのPETフィルムの間に挟んで平板プレスを用いて接着した。このとき、平板プレスは、60℃、6.5MPaの圧力で1秒間加熱及び加圧して行った。接着されたセパレータとアノードは両面テープを用いてスライドガラスに貼り付けた。セパレータ接着面の末端部(接着面の終端から10mm以下)を引き離して、25mm×100mmのPETフィルムと単面接着テープを用いて長手方向が連結されるように貼り付けた。その後、UTM装置(LLOYD Instrument社製のLFPlus)の下側ホルダーにスライドガラスを取り付け、UTM装置の上側ホルダーにはセパレータと貼り付いているPETフィルムを取り付け、測定速度300mm/分、180゜で力を加え、アノードとアノードに対向した多孔性コーティング層との剥離に必要な力を測定した。
【0136】
5)スラリー含まれた無機物粒子の平均粒径(D50)
スラリー含まれた無機物粒子の平均粒径は、粒子径測定装置(マルバーン社製のMASTERSIZER 3000)を用いて測定した。
【0137】
6)多孔性コーティング層形成用スラリーの沈降速度(μm/s)
多孔性コーティング層形成用スラリーの沈降速度は、製造されたスラリーを分散性分析装置(LΜM社製のLumisizer)に投入して1,000rpmの速度で回転させて遠心力を加えた後、経時的な沈降速度を測定した。
【0138】
7)重量平均分子量の測定
実施例及び比較例のエチレン系共重合体及びフッ素系バインダー高分子の重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC、PL GPC220、アジレント・テクノロジー社製)を用いて下記の分析条件下で測定した。
-カラム:PL MiniMixed Bx2
-溶媒:DMF
-流速:0.3ml/分
-試料濃度:2.0mg/ml
-注入量:10μl
-カラム温度:40℃
-検出器:アジレント製のRI検出器
-スタンダード:ポリスチレン(3次関数で補正)
-データ処理:ChemStation
【0139】
表1から分かるように、エチレン系共重合体を使用しない比較例1及び比較例2の場合は、多孔性コーティング層と多孔性高分子基材との間の接着力(peel strength)が実施例に比べて格段に低下し、熱収縮率も劣っている。
【0140】
表2から分かるように、エチレン系共重合体内のエチレン単量体由来繰り返し単位の含量が7重量部である場合は、分離膜と電極との接着力(Lami strength)が実施例に比べて著しく低い。
【0141】
表3から分かるように、エチレン系共重合体の重量平均分子量が400,000を超える場合は、スラリー分散性が劣り、コーティング層を形成し難い。
【0142】
一方、実施例1~7から分かるように、本発明の一態様による実施例によれば、所定の特性を有するエチレン系共重合体を使用することで、多孔性コーティング層と多孔性高分子基材との間の接着力(peel strength)と、分離膜と電極との接着力(Lami strength)とを同時に改善させた分離膜及びその製造方法を提供することができる。