(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/22 20060101AFI20240628BHJP
F28F 9/013 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
F28F9/22
F28F9/013 C
F28F9/013 B
F28F9/013 G
F28F9/013 J
(21)【出願番号】P 2022578502
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2022003221
(87)【国際公開番号】W WO2022163792
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2021013819
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】原 伸英
(72)【発明者】
【氏名】岡安 晋平
(72)【発明者】
【氏名】平岡 賢
(72)【発明者】
【氏名】桐原 健治
(72)【発明者】
【氏名】長井 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】西浦 健介
(72)【発明者】
【氏名】石黒 達男
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第210180231(CN,U)
【文献】特開2019-105418(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102735093(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1370974(CN,A)
【文献】実開昭49-067245(JP,U)
【文献】実開平04-138575(JP,U)
【文献】中国実用新案第209310560(CN,U)
【文献】中国実用新案第206094996(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/22
F28F 9/013
F28D 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する流路を形成する熱交換器本体と、
前記流路内で、該流路の延在方向に延びるように複数が並設された伝熱管と、
前記流路内でそれぞれ前記伝熱管を支持しながら、前記流路の延在方向に間隔をあけて設けられた複数のバッフル板を有するバッフル板群と、
を備え、
各前記バッフル板は、前記流路の延在方向から見た際に、それぞれ流路断面の一部のみを占めるように設けられ
、
前記複数のバッフル板のうち前記流路の最も外周側に位置している前記バッフル板の外周側の端縁は、前記流路の内壁面に接しており、
前記バッフル板群の複数の前記バッフル板は、前記流路の延在方向から見て、互いの占有領域が重ならないように、かつ、互いの占有領域を合わせて前記流路断面の全域を占めるように設けられている熱交換器。
【請求項2】
前記バッフル板群の複数の前記バッフル板では、前記流路の延在方向の上流側から下流側に向かうに従って、
前記熱交換器本体の外周側から内周側に向かうようにそれぞれの前記占有領域が段階的に遷移している、または、前記熱交換器本体の内周側から外周側に向かうようにそれぞれの前記占有領域が段階的に遷移している請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
流体が流通する流路を形成する熱交換器本体と、
前記流路を上側領域と下側領域に区画する仕切板と、
前記上側領域と前記下側領域を連通させるために前記仕切板に形成された開口部であって、前記上側領域の下流側の端部近傍に形成された前記開口部と、
前記流路内で、該流路の延在方向に延びるように複数が並設された伝熱管と、
前記流路内でそれぞれ前記伝熱管を支持しながら、前記流路の延在方向に間隔をあけて設けられた複数のバッフル板を有するバッフル板群と、
を備え、
各前記バッフル板は、前記流路の延在方向から見た際に、それぞれ流路断面の一部のみを占めるように設けられ、
前記バッフル板群の複数の前記バッフル板は、前記流路の延在方向から見て、互いの占有領域の少なくとも一部が重ならないように、かつ、互いの占有領域を合わせて前記流路断面の全域を占めるように設けられており、
前記上側領域の前記バッフル板群の複数の前記バッフル板は、前記流路の延在方向の上流側から下流側に向かうに従って、前記熱交換器本体の外周側から内周側に向かうようにそれぞれの前記占有領域が段階的に遷移し、
前記下側領域の前記バッフル板群の複数の前記バッフル板は、前記流路の延在方向の上流側から下流側に向かうに従って、前記熱交換器本体の内周側から外周側に向かうようにそれぞれの前記占有領域が段階的に遷移している熱交換器。
【請求項4】
流体が流通する流路を形成する熱交換器本体と、
前記流路内で、該流路の延在方向に延びるように複数が並設された伝熱管と、
前記流路内でそれぞれ前記伝熱管を支持しながら、前記流路の延在方向に間隔をあけて設けられた複数のバッフル板を有するバッフル板群と、
を備え、
各前記バッフル板は、前記流路の延在方向から見た際に、それぞれ流路断面の一部のみを占めるように設けられ、
前記バッフル板群の複数の前記バッフル板は、前記流路の延在方向から見て、互いの占有領域の少なくとも一部が重ならないように、かつ、互いの占有領域を合わせて前記流路断面の全域を占めるように設けられており、
前記伝熱管は、
前記
流路の延在方向に延びる直線部と、
該直線部の下流側の端部同士を接続するベンド部と、
を有し、
前記ベンド部に隣接する最も下流側の前記バッフル板群では、上流側に位置する他の前記バッフル板群よりも前記バッフル板の数が少な
い熱交換器。
【請求項5】
前記バッフル板における前記伝熱管の周囲の少なくとも一部には、該バッフル板を前記
流路の延在方向に貫通する貫通孔が形成されている請求項1から4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記バッフル板は、
前記伝熱管の周囲を囲う周縁部と、
複数の前記周縁部同士を接続し、互いの間に間隙を形成する支持部と、
を有する請求項1から4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記周縁部の少なくとも一部には切り欠きが形成されている請求項6に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記バッフル板は、
前記伝熱管から突出するとともに前記
流路の延在方向における上流側から下流側にかけて延びる流線形の断面形状を有する基端部と、
互いに隣接する前記基端部同士を接続する接続部と、
を有する請求項1から4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器に関する。
本願は、2021年1月29日に日本に出願された特願2021-013819号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
例えばガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)では、ガスタービンから排出された空気と水とを熱交換させることで水を加熱する熱交換器が用いられている。熱交換器として従来はシェルアンドチューブ型と呼ばれる形式のものが一般的である。この種の熱交換器は、水が流通する複数の伝熱管と、これら伝熱管を収容するともに空気が流通する流路を形成する熱交換器本体と、流路の延在方向に間隔をあけて配列された複数のバッフル板と、を主に備えている。それぞれのバッフル板は流路の一部を閉塞している。互いに隣接するバッフル板同士の間で閉塞する領域が異なっている。これにより、流路を流通する空気の流れがバッフル板に沿って蛇行するため、熱交換の効率を向上させることができるとされている(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような熱交換器では、バッフル板によって流れが急激に蛇行することから、空気の流れに対する圧力損失が増大してしまう虞がある。圧力損失を下げるためには伝熱管同士の間の間隔(ピッチ)を大きくする方法も考えられる。しかしながら、この場合、熱交換器全体の寸法体格が大型化してしまう。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、圧力損失が低減され、かつ小型化された熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る熱交換器は、流体が流通する流路を形成する熱交換器本体と、前記流路内で、該流路の延在方向に延びるように複数が並設された伝熱管と、前記流路内でそれぞれ前記伝熱管を支持しながら、前記流路の延在方向に間隔をあけて設けられた複数のバッフル板を有するバッフル板群と、を備え、各前記バッフル板は、前記流路の延在方向から見た際に、それぞれ流路断面の一部のみを占めるように設けられ、前記複数のバッフル板のうち前記流路の最も外周側に位置している前記バッフル板の外周側の端縁は、前記流路の内壁面に接しており、前記バッフル板群の複数の前記バッフル板は、前記流路の延在方向から見て、互いの占有領域が重ならないように、かつ、互いの占有領域を合わせて前記流路断面の全域を占めるように設けられている。
また、本開示に係る熱交換器は、流体が流通する流路を形成する熱交換器本体と、前記流路を上側領域と下側領域に区画する仕切板と、前記上側領域と前記下側領域を連通させるために前記仕切板に形成された開口部であって、前記上側領域の下流側の端部近傍に形成された前記開口部と、前記流路内で、該流路の延在方向に延びるように複数が並設された伝熱管と、前記流路内でそれぞれ前記伝熱管を支持しながら、前記流路の延在方向に間隔をあけて設けられた複数のバッフル板を有するバッフル板群と、を備え、各前記バッフル板は、前記流路の延在方向から見た際に、それぞれ流路断面の一部のみを占めるように設けられ、前記バッフル板群の複数の前記バッフル板は、前記流路の延在方向から見て、互いの占有領域の少なくとも一部が重ならないように、かつ、互いの占有領域を合わせて前記流路断面の全域を占めるように設けられており、前記上側領域の前記バッフル板群の複数の前記バッフル板は、前記流路の延在方向の上流側から下流側に向かうに従って、前記熱交換器本体の外周側から内周側に向かうようにそれぞれの前記占有領域が段階的に遷移し、前記下側領域の前記バッフル板群の複数の前記バッフル板は、前記流路の延在方向の上流側から下流側に向かうに従って、前記熱交換器本体の内周側から外周側に向かうようにそれぞれの前記占有領域が段階的に遷移している。
また、本開示に係る熱交換器は、流体が流通する流路を形成する熱交換器本体と、前記流路内で、該流路の延在方向に延びるように複数が並設された伝熱管と、前記流路内でそれぞれ前記伝熱管を支持しながら、前記流路の延在方向に間隔をあけて設けられた複数のバッフル板を有するバッフル板群と、を備え、各前記バッフル板は、前記流路の延在方向から見た際に、それぞれ流路断面の一部のみを占めるように設けられ、前記バッフル板群の複数の前記バッフル板は、前記流路の延在方向から見て、互いの占有領域の少なくとも一部が重ならないように、かつ、互いの占有領域を合わせて前記流路断面の全域を占めるように設けられており、前記伝熱管は、前記流路の延在方向に延びる直線部と、該直線部の下流側の端部同士を接続するベンド部と、を有し、前記ベンド部に隣接する最も下流側の前記バッフル板群では、上流側に位置する他の前記バッフル板群よりも前記バッフル板の数が少ない。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、圧力損失が低減され、かつ小型化された熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る熱交換器の構成を示す模式断面図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係るバッフル板群を流路の延在方向から見た投影図である。
【
図3】本開示の第一実施形態の第一変形例に係る熱交換器の構成を示す模式断面図である。
【
図4】本開示の第二実施形態に係るバッフル板の要部拡大図である。
【
図5】本開示の第三実施形態に係るバッフル板の要部拡大図である。
【
図6】本開示の第三実施形態に係るバッフル板の変形例を示す要部拡大図である。
【
図7】本開示の第四実施形態に係るバッフル板の構成を示す二面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
(熱交換器の構成)
以下、本開示の第一実施形態に係る熱交換器100について、
図1と
図2を参照して説明する。この熱交換器100は、例えばガスタービンコンバインドサイクルの中途に設けられる。熱交換器100は、ガスタービン圧縮機から抽気された空気と水とを熱交換させることで水を加熱し、空気を冷却するために用いられる。
【0010】
図1に示すように、熱交換器100は、熱交換器本体1と、伝熱管2と、バッフル板群G1,G2と、を備えている。熱交換器本体1は内部に流体(空気)が流通する流路Fを形成している。この流路F中に伝熱管2とバッフル板群G1,G2が収容されている。
【0011】
(熱交換器本体の構成)
熱交換器本体1は、胴部10と、底部11と、仕切板12と、ガス入口13と、ガス出口14と、閉止部3と、を有している。胴部10は円筒状をなしている。胴部10内の流路Fの延びる方向を以下では単に「延在方向」と呼ぶ。胴部10の延在方向における一方側にはガス入口13とガス出口14とが設けられている。ガス入口13は胴部10から上方に向かって延びている。ガス出口14は胴部10から下方に向かって延びている。ガス入口13を通じて外部から空気が流路F内に導かれる。また、流路Fを流通した後の空気はガス出口14を通じて外部に排出される。以下の説明では、延在方向における一方側を上流側と呼び、他方側を下流側と呼ぶ。
【0012】
胴部10の延在方向における下流側の端部は底部11によって閉塞されている。底部11は半球状をなしており、胴部10の端部から下流側に向かって曲面的に突出している。さらに、胴部10の内部には、流路Fを上下方向に区画する仕切板12が設けられている。仕切板12の下流側の端部に近い部分には開口部Hが形成されている。つまり、流路Fの上側の領域と下側の領域とはこの開口部Hによって連通している。閉止部3は、胴部10の下流側の端部に設けられた円形の板である。閉止部3は胴部10と底部11との間を区画している。これにより、流路Fを流れる空気は底部11の内部には流入しない。
【0013】
(伝熱管の構成)
伝熱管2は、流路F中で互いに間隔をあけて複数配置されている。それぞれの伝熱管2は、延在方向に延びる直線部20と、直線部20の下流側の端部同士を接続するベンド部21と、を有している。具体的には、仕切板12よりも上側に位置する伝熱管2の直線部20と、仕切板12よりも下側に位置する伝熱管2の直線部20とがベンド部21によって接続されている。つまり、ベンド部21は、下流側に向かうに従って上方から下方に向かって湾曲している。流路F中では、このような伝熱管2が三次元的に間隔をあけて複数配列されている。伝熱管2の内部には外部から導かれた水が流通している。また、伝熱管2は熱伝導性の良好な銅合金等の金属材料で形成されていることが望ましい。
【0014】
(バッフル板群の構成)
上述の伝熱管2は、熱交換器本体1に対してバッフル板群G1,G2によって支持固定されている。バッフル板群G1は、流路Fの上流側から延在方向に複数(一例として3つ)配列されている。バッフル板群G2は、最も下流側のバッフル板群G1に隣接して下流側に向かって2つ配列されている。
【0015】
バッフル板群G1は、4つのバッフル板B1,B2,B3,B4を有している。これらバッフル板B1,B2,B3,B4は、延在方向に間隔をあけて配列されている。
図2に示すように、それぞれのバッフル板B1,B2,B3,B4は、延在方向から見た際に、流路Fの流路断面の一部のみを占めるようにその面積がそれぞれ設定されている。さらに、同一のバッフル板群G1に属するバッフル板B1,B2,B3,B4は、延在方向から見て互いの占有領域の少なくとも一部が重ならないようにその面積・形状が設定されている。また、これらバッフル板B1,B2,B3,B4の占有領域を合わせると流路Fの流路断面の全域を占めるようにその面積が設定されている。
【0016】
具体的には、バッフル板B1は流路Fの最も外周側に位置している。バッフル板B1の外周側の端縁は胴部10の内面に固定されている。バッフル板B1の外周側の端縁は円弧状である。バッフル板B1の内周側の端縁は長さの等しい3つの直線によって構成されている。互いに隣接する直線がなす角度は120°である。
【0017】
バッフル板B2は、バッフル板B1の内周側に位置している。延在方向から見た場合、バッフル板B1の内周側の端縁とバッフル板B2の外周側の端縁とは互いに接している。つまり、バッフル板B2の外周側の端縁は上述のような3つの直線で構成されている。バッフル板B2の内周側の端縁もこのような3つの直線で構成されている。また、バッフル板B2は上方に突出する固定部Sによって熱交換器本体1に固定されている。
【0018】
バッフル板B3,B4は、面積・寸法が異なるのみで、バッフル板B1,B2と同様の構成を有している。つまり、バッフル板B3はバッフル板B2よりも小さく、バッフル板B4はバッフル板B3よりも小さい。このように、バッフル板群G1内では、延在方向の上流側から下流側に向かうに従って、外周側から内周側に向かうようにそれぞれの占有領域が段階的に遷移している。なお、バッフル板群G1内では、延在方向の上流側から下流側に向かうに従って、内周側から外周側に向かうようにそれぞれの占有領域が段階的に遷移していてもよい。
【0019】
バッフル板群G2は、2つのバッフル板B5,B6を有している。これらバッフル板B5,B6は、延在方向に間隔をあけて配列されている。また、上述のバッフル板群G1と同様に、それぞれのバッフル板B5,B6は、延在方向から見た際に、流路Fの流路断面の一部のみを占めるようにその面積がそれぞれ設定されている。さらに、同一のバッフル板群G2に属するバッフル板B5,B6は、延在方向から見て互いの占有領域の少なくとも一部が重ならないようにその面積・形状が設定されている。また、これらバッフル板B5,B6の占有領域を合わせると流路Fの流路断面の全域を占めるようにその面積が設定されている。このように、ガス入口13、及びガス出口14に近い部分、及びベンド部21を除く部分を占めるバッフル板群G1では、バッフル板B1~B4の数が4枚以上とされている。また、バッフル板B1~B4同士の間の間隔は、胴部10の内径の50%以上とされることが望ましい。さらに望ましくは、バッフル板B1~B4同士の間の間隔は、バッフル板B1~B4の幅の2倍以上とされる。
【0020】
(作用効果)
次に、熱交換器100の動作について説明する。熱交換器100を動作させるに当たっては、まずガス入口13を通じて流路Fに高温の空気を導入する。同時に伝熱管2に水を流通させる。空気は
図1中の矢印で示すように、複数のバッフル板群G1,G2によって案内されながら上側の流路F中を緩やかに蛇行しながら流れる。その後、仕切板12に形成された開口部Hを通じて下側の流路Fに流入する。下側の流路F中でも同様にバッフル板群G1,G2によって案内されながらガス出口14に向かって空気が蛇行しながら流れる。
【0021】
このように空気が流路F中を流通する中途で、伝熱管2内を流通する水と熱交換する。これにより、空気の熱によって水は加熱されて高温となる。一方で熱を奪われた空気は冷却されて低温となる。その後、水は外部に取り出されて種々の利用に供される。空気は外部に放出される。
【0022】
ここで、近年では熱交換器における空気の圧力損失の低減が強く要請されている。このような要請に応じるためには、例えば伝熱管2同士の間の間隔(ピッチ)を大きくすることが一例として考えられる。しかしながら、この場合装置全体の寸法体格が大きくなり、設置や運搬に支障を来たす虞がある。そこで、本実施形態に係る熱交換器100では上述の構成を採っている。
【0023】
上記構成によれば、4つのバッフル板B1,B2,B3,B4を有するバッフル板群G1と、2つのバッフル板B5,B6を有するバッフル板群G2とが流路F内に設けられている。これにより、空気の流れが複数のバッフル板群G1,G2を通過する間に、それぞれのバッフル板群G1,G2を避けるように蛇行する。複数のバッフル板B1,B2,B3,B4、又はバッフル板B5,B6は互いの占有領域が重ならないように構成されていることから、これらバッフル板に衝突した際に生じる空気の流れの偏向量は比較的に小さくなる。つまり、これらバッフル板群G1,G2は空気の流れを大きく妨げることがない。このため、バッフル板群G1,G2による流れの圧力損失を小さく抑えることができる。その結果、熱交換器100の性能(処理量)をさらに向上させることができる。また、伝熱管2のピッチを従来と同等に維持することができるため、熱交換器100の大型化を回避することもできる。
【0024】
さらに、上記構成によれば、複数のバッフル板B1,B2,B3,B4、又はバッフル板B5,B6の占有領域が外周側から内周側に向かって段階的に遷移していることから、互いに隣接するバッフル板同士の間における流れの偏向量がより小さくなる。これにより、上流側から下流側にかけて流体をより円滑に流通させることができる。その結果、バッフル板による圧力損失をさらに小さく抑えることができる。
【0025】
ここで、伝熱管2のベンド部21の近傍では、開口部Hを通じて空気の流れの向きが変わるため、流体の流速を減速させることが望ましい。上記構成によれば、ベンド部21に隣接するバッフル板群G2ではバッフル板B5,B6の数が上流側のバッフル板群G1よりも少ない。つまり、このバッフル板群G2では流路断面に対する各バッフル板B5,B6の占める割合が大きい。バッフル板群G2では、振動対策として伝熱管群を安定的に支持するために振動流路断面に対する各バッフル板B5,B6の占める割合を大きくしている。
【0026】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上述したバッフル板群G1,G2の数は一例であり、設計や仕様に応じて適宜変更することが可能である。バッフル板群G1,G2に属するバッフル板の数も同様である。
また、上述した流路Fの延在方向が上下方向と交差するような、熱交換器本体1の横置きの設置は一例である。熱交換器本体1は、流路Fが上下方向に延在するように縦置きとすることが可能である。熱交換器本体1を縦置きにすると、熱交換器100の設置面積を小さくすることができる。
【0027】
<第一実施形態の変形例>
以下、第一実施形態の変形例について、
図3を参照して説明する。
図3に示すように、熱交換器100は、外部から伝熱管2に水を供給する供給部60と、伝熱管2から外部に水を排出する排出部61と、を備えていてもよい。供給部60及び排出部61は、胴部10の延在方向における底部11とは反対側の端部に設けられている。
【0028】
供給部60は、胴部10のうち仕切板12を基準としてガス出口14側(胴部10の下半分)に設けられている。仕切板12よりも上側に位置する伝熱管2の直線部20は、胴部10を貫通し、供給部60と連通している。
排出部61は、胴部10のうち仕切板12を基準としてガス入口13側(胴部10の上半分)に設けられている。仕切板12よりも下側に位置する伝熱管2の直線部20は、胴部10を貫通し、排出部61と連通している。
【0029】
本変形例では、
図3中の太い矢印で示すように、外部から供給部60を通じて伝熱管2内に水が導かれる。続いて、水は、伝熱管2内を流れて流路F内の空気と熱交換する。その後、水は、伝熱管2内から排出部61を通じて外部に流出する。
【0030】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態について、
図4を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、
図4では、バッフル板B1,B2,B3,B4,B5,B6のうち、代表的に1つのバッフル板B1のみを図示している。同図に示すように、本実施形態では、バッフル板B1における伝熱管2が挿通される部分に貫通孔hが形成されている。貫通孔hは、伝熱管2の周囲の少なくとも一部を外周側から囲むように形成されている。
図4の例では貫通孔hは半円弧状をなしている。つまり、伝熱管2の周囲180°の領域に貫通孔hが形成されている。
【0031】
上記構成によれば、貫通孔hを通じて流体(空気)が下流側に流通することから、バッフル板B1を設けたことによる圧力損失の増大をさらに小さく抑えることができる。その結果、熱交換器100の性能(処理量)をさらに向上させることが可能となる。
【0032】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0033】
<第三実施形態>
続いて、本開示の第三実施形態について、
図5を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、第二実施形態と同様に、バッフル板B1のみを代表的に図示して説明する。
図5に示すように、バッフル板B1は、周縁部41と、支持部42と、を有している。周縁部41は、伝熱管2の周囲を囲う円環状をなしている。支持部42は、互いに隣接する周縁部41同士を接続する棒状をなしている。また、互いに交差する支持部42同士は重なり合っている。これにより、支持部42の間にはメッシュのような間隙が形成されている。
【0034】
上記構成によれば、支持部42同士の間に形成される間隙を通じて空気が流通することから、バッフル板B1を設けたことによる圧力損失の増大をさらに小さく抑えることができる。
【0035】
以上、本開示の第三実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、変形例として
図6に示すように、周縁部41の一部に切り欠きCを形成することも可能である。切り欠きCは周縁部41のうち、互いに対向する90°の角度範囲で2つ形成されている。この構成によれば、支持部42同士の間の間隙に加えて、周縁部41の切り欠きCを通じて流体が流通することから、バッフル板B1を設けたことによる圧力損失をより一層小さく抑えることができる。
【0036】
<第四実施形態>
続いて、本開示の第四実施形態について、
図7を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、第二実施形態と同様に、バッフル板B1のみを代表的に図示して説明する。
図7に示すように、本実施形態に係るバッフル板B1は、伝熱管2同士を接続する接続部52と、接続部52の両端部にそれぞれ設けられた基端部51と、を有する。基端部51は、伝熱管2から外周側に向かって突出するとともに、延在方向の上流側から下流側にかけて流線形の断面形状を有している。また、延在方向から見て、基端部51、及び接続部52は中央部がくびれた形状を有している。
【0037】
この構成によれば、基端部51が流線形の断面形状を有していることにより、当該基端部51の周囲を空気が流通する際の抵抗が小さくなる。これにより、バッフル板B1を設けたことによる圧力損失の増大をさらに小さく抑えることができる。その結果、熱交換器100の性能(処理量)をさらに向上させることができる。
【0038】
以上、本開示の第四実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0039】
<付記>
各実施形態に記載の熱交換器100は、例えば以下のように把握される。
【0040】
(1)第1の態様に係る熱交換器100は、流体が流通する流路Fを形成する熱交換器本体1と、前記流路F内で、該流路Fの延在方向に延びるように複数が並設された伝熱管2と、前記流路F内でそれぞれ前記伝熱管2を支持しながら、前記流路Fの延在方向に間隔をあけて設けられた複数のバッフル板を有するバッフル板群G1,G2と、を備え、各前記バッフル板は、前記流路Fの延在方向から見た際に、それぞれ流路断面の一部のみを占めるように設けられており、前記バッフル板群G1,G2の複数の前記バッフル板は、前記流路Fの延在方向から見て、互いの占有領域の少なくとも一部が重ならないように、かつ、互いの占有領域を合わせて前記流路断面の全域を占めるように設けられている。
【0041】
上記構成によれば、流体の流れが複数のバッフル板群G1,G2を通過する間に、それぞれのバッフル板を避けるように蛇行する。複数のバッフル板は互いの占有領域が重ならないように構成されていることから、流れを大きく妨げることがない。このため、バッフル板による流れの圧力損失を小さく抑えることができる。
【0042】
(2)第2の態様に係る熱交換器100において、前記バッフル板群G1,G2の複数の前記バッフル板では、前記流路Fの延在方向の上流側から下流側に向かうに従って、前記熱交換器本体1の外周側から内周側に向かうようにそれぞれの前記占有領域が段階的に遷移している。
【0043】
上記構成によれば、複数のバッフル板の占有領域が外周側から内周側に向かって段階的に遷移していることから、上流側から下流側にかけて流体をより円滑に流通させることができる。これにより、バッフル板による圧力損失をさらに小さく抑えることができる。
【0044】
(3)第3の態様に係る熱交換器100において、前記バッフル板群G1,G2の複数の前記バッフル板では、前記流路Fの延在方向の上流側から下流側に向かうに従って、前記熱交換器本体の内周側から外周側に向かうようにそれぞれの前記占有領域が段階的に遷移している。
【0045】
上記構成によれば、複数のバッフル板の占有領域が内周側から外周側に向かって段階的に遷移していることから、上流側から下流側にかけて流体をより円滑に流通させることができる。これにより、バッフル板による圧力損失をさらに小さく抑えることができる。
【0046】
(4)第4の態様に係る熱交換器100では、前記伝熱管2は、前記延在方向に延びる直線部20と、該直線部20の下流側の端部同士を接続するベンド部21と、を有し、前記ベンド部21に隣接する最も下流側の前記バッフル板群G2では、上流側に位置する他の前記バッフル板群G1よりも前記バッフル板の数が少ない。
【0047】
ここで、ベンド部21の近傍では流れの向きが変わるため、流体の流速を減速させることが望ましい。上記構成によれば、ベンド部21に隣接するバッフル板群G2ではバッフル板の数が上流側のバッフル板群G1よりも少ない。つまり、このバッフル板群G2では流路断面に対する各バッフル板の占める割合が大きい。このため、より急激に流れの向きが変化し、流体を減速させることができる。その結果、伝熱管2と流体との間の熱交換をより効率的に行うことができる。
【0048】
(5)第5の態様に係る熱交換器100では、前記バッフル板における前記伝熱管2の周囲の少なくとも一部には、該バッフル板を前記延在方向に貫通する貫通孔hが形成されている。
【0049】
上記構成によれば、貫通孔hを通じて流体が流通することから、バッフル板による圧力損失の増大をさらに小さく抑えることができる。
【0050】
(6)第6の態様に係る熱交換器100では、前記バッフル板は、前記伝熱管2の周囲を囲う周縁部41と、複数の前記周縁部41同士を接続し、互いの間に間隙を形成する支持部42と、を有する。
【0051】
上記構成によれば、支持部42同士の間に形成される間隙を通じて流体が流通することから、バッフル板による圧力損失の増大を小さく抑えることができる。
【0052】
(7)第7の態様に係る熱交換器100では、前記周縁部41の少なくとも一部には切り欠きCが形成されている。
【0053】
上記構成によれば、支持部42同士の間の間隙に加えて、周縁部41の切り欠きCを通じて流体が流通することから、バッフル板による圧力損失をより一層小さく抑えることができる。
【0054】
(8)第8の態様に係る熱交換器100では、前記バッフル板は、前記伝熱管2から突出するとともに前記延在方向における上流側から下流側にかけて延びる流線形の断面形状を有する基端部51と、互いに隣接する前記基端部51同士を接続する接続部52と、を有する。
【0055】
上記構成によれば、基端部51が流線形の断面形状を有していることにより、当該基端部51の周囲を空気が流通する際の抵抗が小さくなる。これにより、バッフル板B1を設けたことによる圧力損失の増大をさらに小さく抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示によれば、圧力損失が低減され、かつ小型化された熱交換器を提供することができる。
【符号の説明】
【0057】
100 熱交換器
1 熱交換器本体
2 伝熱管
3 閉止部
10 胴部
11 底部
12 仕切板
13 ガス入口
14 ガス出口
20 直線部
21 ベンド部
41 周縁部
42 支持部
51 基端部
52 接続部
60 供給部
61 排出部
B1,B2,B3,B4,B5,B6 バッフル板
C 切り欠き
F 流路
G1,G2 バッフル板群
H 開口部
h 貫通孔
S 固定部