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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】分散型光ファイバセンサの配置方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/353 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
G01D5/353 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022578600
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 US2021046779
(87)【国際公開番号】W WO2022040474
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】63/067,393
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/406,022
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ジ、 フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、 ティン
(72)【発明者】
【氏名】イェ、 ジロン
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0249078(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0366723(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0010047(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0068701(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26-5/38
G01B 11/00-11/30
G02B 6/00
H04W 4/00-99/00
H04B 7/24-7/26
H04B 10/00-10/90
G01V 1/00-1/52
G01H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型光ファイバセンサの配置方法であって、
Gを光ファイバネットワーク、Vをノードの集合、Eをリンクの集合として、G(V,E)によって定義されるノードの集合と光ファイバリンクの集合とを含む光ファイバネットワークを提供し、
G(V,E)の各ノードについて、距離制限されたルート探索の手順を実行して、前記ネットワークGの各ノードnにおけるすべての可能なセンサの配置の割り当て、ルーティングの割り当て、およびセンシングの割り当てを含む集合Sを生成し、
前記距離制限されたルート探索によって生成された配置位置に前記センサを配置することを含む方法。
【請求項2】
前記光ファイバネットワーク内の各ノードについて、可能な全てのセンシングルート(all_route_set)の集合を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光ファイバネットワーク内のすべての前記リンクを完全にカバーするセンシングルートの最小集合を決定することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記光ファイバネットワーク内の所与のノードについて、該所与のノードに定義された既存のセンシングルートがない場合は、可能なセンシングルートの集合を決定することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記光ファイバネットワーク内の所与のノードについて、該所与のノードに定義された既存のセンシングルートがある場合は、可能なセンシングルートの集合を決定することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
ルートが同時にループを含まず、かつ、前記ルートの距離が配置されている前記センサのセンシング範囲制限未満である場合にのみ、前記ルートがall_route_setに追加される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
センサの配置が、所与の光ファイバネットワーク内のすべてのリンクをカバーするalt_route_setに含まれる最小集合被覆内にあるセンシングルートの2つの端部のいずれか1つに位置する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記光ファイバネットワークは、前記方法を実行するように構成されたネットワーク制御部と、センサをノードに光学的に接続するユーザ設定可能な光ファイバコネクタスイッチとを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ネットワーク制御部は、前記光ファイバネットワークに含まれる前記ノードにネットワーク構成の指示を通信する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ノードは、前記ネットワーク構成の指示を受信し、それに応答して、センサの配置および/または前記光ファイバコネクタスイッチを介した光ファイバリンクを含むローカル構成を行う、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記センサは、前記ネットワーク構成の情報を受信し、それぞれのセンシング設定およびデータ報告を構成する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
配置されるセンサの数は、ネットワークインフラストラクチャ
【数1】
について、
【数2】
によって定義され、ここで、
【数3】
は前記ノードの集合であり、
【数4】
は前記リンクの集合であり、
【数5】
は所与のセンサのセンシング範囲制限であり、
【数6】
はリンク(i,j)の距離であり、
【数7】
は、
【数8】
によって得られる、リンク(i,j)の重みの距離であり、
以下のブール変数
【数9】
(センサがノードsに配置され、終端点をノードdとし、
【数10】
である場合に1であり、それ以外の場合には0である)と
【数11】
(Sとdとの間のセンシングファイバルートがリンク(i,j)を通過し、
【数12】
である場合に1であり、それ以外の場合には0である)
が決定され、
以下の制約
【数13】
が考慮される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、分散型光ファイバセンシング(DFOS)システム、方法、および構造に関する。より具体的には、本開示は、分散型光ファイバセンサの配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分散型光ファイバセンシング(DFOS)システム、方法、および構造は、従来の技術に勝るその本質的な利点により、多くの独自のセンシング用途において大きな有用性を示している。これらは、通常はアクセスできない領域に組み込むことができ、非常に過酷な環境でも機能することができる。無線周波数干渉や電磁干渉に影響されず、光ファイバケーブルの全長にわたって連続的にリアルタイムで測定することができる。
【0003】
近年のDFOS技術の進歩により、既存の通信ネットワーク上で連続的な長距離センシングが可能となり、通信事業者は、通信サービスだけでなく、交通/道路状況監視、インフラストラクチャ監視、侵入検知などを含むがこれらに限定されない様々なセンシングサービスを、同じネットワークで提供できるようになった。このように使用すると、通信ネットワーク全体が大規模なセンサとして機能するようになり、これを「Network-as-a-Sensor」または「NaaSr」と呼んでいる。同様に、光ファイバをその一部として有する他のインフラストラクチャ(例えば、配電網や高速道路システムなど)を大規模な分散型センサとして使用して、追加のサービスと価値を提供し、運用効率を向上させることができる。これは、「Infrastructure as-a-Sensor」または「IaaSr」と呼んでいる。
【0004】
NaaSrまたはIaaSrの重要な課題は、DFOSセンサをどこに配置するか、および、所与のネットワークインフラストラクチャで必要な全てのファイバリンクをカバーしてNaaSrおよび/またはlaaSrサービスを提供することができるように、センシングファイバルートをどのように決定するかである。
【発明の概要】
【0005】
分散型光ファイバセンシングシステム(DFOS)、方法および構造のためのセンサ配置方法に向けられた本開示の態様により、上記の問題は解決され、当技術分野における進歩がなされる。
【0006】
従来技術とは大きく異なり、本開示による方法は、センサを光ファイバネットワークに配置し、配置されるセンサの数は、ネットワークインフラストラクチャ
【数1】
について、
【数2】
によって定義され、ここで、
【数3】
はノードの集合であり、
【数4】
はリンクの集合であり、
【数5】
は所与のセンサのセンシング範囲の制限であり、
【数6】
はリンク(i,j)の距離であり、
【数7】
は、
【数8】
によって得られる、リンク(i,j)の重みの距離であり、
以下のブール変数
【数9】
(センサがノードsに配置され、終端点をノードdとし、
【数10】
である場合に1であり、それ以外の場合には0である)と
【数11】
(Sとdとの間のセンシングファイバルートがリンク(i,j)を通過し、
【数12】
である場合に1であり、それ以外の場合には0である)
が決定され、
以下の制約
【数13】
が考慮される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示のより完全な理解は、添付の図面を参照することによって実現され得る。
【0008】
図1】当技術分野で一般的に知られている例示的な分散型光ファイバセンシングシステムおよび動作の概略図である。
【0009】
図2】本開示の態様による分散型光ファイバセンサの配置を示す概略図である。
【0010】
図3】本開示の態様による全体的な分散型光ファイバセンサの配置方法を示すフロー図である。
【0011】
図4(A)】本開示の態様による分散型光ファイバセンサの配置方法の第1のサブ手順をまとめて示すフロー図である。
図4(B)】本開示の態様による分散型光ファイバセンサの配置方法の第1のサブ手順をまとめて示すフロー図である。
図4(C)】本開示の態様による分散型光ファイバセンサの配置方法の第1のサブ手順をまとめて示すフロー図である。
【0012】
図5】本開示の態様による分散型光ファイバセンサの配置方法の第2のサブ手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下は、単に本開示の原理を例示するものである。したがって、当業者は、本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本開示の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。
【0014】
さらに、本明細書に記載されているすべての実施例および条件付き用語は、本開示の原理および技術を促進するために発明者によって寄与された概念を読者が理解するのを助けるための教育目的のためだけのものであることを意図しており、そのような具体的に列挙された実施例および条件に限定されないと解釈されるべきである。
【0015】
さらに、本開示の原理、態様、および実施形態を記載する本明細書のすべての記述、ならびにその具体例は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような等価物は、現在知られている等価物と、将来開発される等価物、すなわち、構造に関係なく同じ機能を実行する開発された要素との両方を含むことが意図されている。
【0016】
したがって、たとえば、本明細書の任意のブロック図が、本開示の原理を実施する例示的な回路の概念図を表すことは、当業者には理解されるであろう。
【0017】
本明細書で特に明記しない限り、図面を構成する図は、縮尺通りに描かれていない。
【0018】
いくつかの追加の背景として、また、当技術分野で一般に知られている例示的な分散型光ファイバセンシングシステムの概略図である図1を参照して、分散型光ファイバセンシング(DFOS)は、インタロゲータに順に接続される光ファイバケーブルに沿った任意の場所で環境条件(温度、振動、伸縮レベルなど)を検出するために重要かつ広く使用されている技術であることをはじめに指摘する。知られているように、現代のインタロゲータは、ファイバへの入力信号を生成し、反射/散乱され、その後受信された信号を検出/分析するシステムである。信号が分析され、ファイバの長さに沿って遭遇する環境条件を示す出力が生成される。そのように受信された信号は、ラマン後方散乱、レイリー後方散乱、およびブリリオン後方散乱などのファイバ内の反射から生じ得る。また、複数のモードの速度差を利用した順方向の信号であってもよい。一般性を失うことなく、以下の説明は反射信号を想定しているが、同じアプローチを転送信号にも適用することができる。
【0019】
理解されるように、現代のDFOSシステムは、周期的に光パルス(または任意の符号化信号)を生成し、それらを光ファイバに注入するインタロゲータを含む。注入された光パルス信号は、光ファイバに沿って伝達される。
【0020】
ファイバの長さに沿った位置で、信号のごく一部が反射され、インタロゲータに戻される。反射信号は、例えば、機械的振動を示す電力レベルの変化など、インタロゲータが検出するために使用する情報を搬送する。
【0021】
反射信号は、電気ドメインに変換され、インタロゲータの内部で処理される。パルス注入時間と信号が検出された時間とに基づいて、インタロゲータは、信号がファイバに沿ったどの位置から来ているかを判断し、ファイバに沿った各位置の活動を感知することができる。
【0022】
先に述べたように、IaaSrまたはNaaSrの実装/配置のための重要な課題は、DFOSセンサを具体的にどこに配置するか、および、IaaSrサービスを提供するために、所与のネットワークインフラストラクチャに必要な全ての光ファイバリンクをカバーできるように、どのようにセンシングファイバルートを決定するかである。この問題を便宜上、DFOSの配置問題と名付けた。
【0023】
図2は、本開示の態様による分散型光ファイバセンサの配置を示す概略図である。図2に示されるように、IaaSrネットワークは、一般に、1つまたは複数のDFOSセンサによって監視される(または感知される)光ファイバリンクの集合によって接続されるノードの集合を含む。
【0024】
有利なことに、ネットワークキャリアおよび/またはサービスプロバイダは、1つまたは複数のDFOSセンサハードウェア要素をネットワークノードに配置し、それらを1つまたは複数の光ファイバリンクに接続してセンシングファイバルートを形成することができる。当業者は、そのようなルートは線形であってもよいが、必ずしも直線的ではないことを理解するのであろう。
【0025】
センシングファイバルートの総距離は、既存のセンシング技術を使用して、センシング範囲の制限(例えば、80km)内にある必要があることに留意されたい。
【0026】
図2では、センシングファイバルートのA-G-Hは、ノードAに配置されたDFOSセンサを有し、2つのホップを通過してノードHで終端する。動作上、センシングファイバルートからの測定データは、ローカルに保存して処理することも、分析のために遠隔の集中型コントローラに送信することもできる。
【0027】
ネットワーク内の全ての必要なリンクが動作し、連続的にセンシング機能を提供しているとき、IaaSr動作/機能が実現される。ハードウェアコストおよび運用コストのために、DFOSセンサの配置の1つの目的は、必要な全ての光ファイバリンクを十分に/完全に監視/感知するために使用されるDFOSセンサの数を最小限に抑えることである。
【0028】
ここで、当業者には容易に理解され、認識されるように、記載されたDFOSセンサの配置問題は、新規かつ困難なものであることに留意されたい。より具体的には、無線センサネットワークで発生する被覆問題とは異なり、後者は円形の領域に関して被覆を考慮するが、DFOSセンサの配置はネットワークトポロジに関してセンサ被覆を必ず考慮しなければならないからである。また、再生器の配置では、確立された光路の到達可能性を確保するために再生器の配置を考慮するのに対して、DFOSセンサの配置では、必要な全ての物理的光ファイバリンクの監視を考慮しなければならないため、再生器の配置問題とは異なる。
【0029】
おそらく最も類似する問題は古典的な頂点被覆問題であるが、頂点被覆の評価では、選択されたノードはその接続リンクのみをカバーすることができるが、DFOSセンサの配置では、センサは複数のホップにわたって1つまたは複数の光ファイバリンクをカバーすることができる。したがって、従来技術は、本開示の主題であるDFOSセンサの配置に対する包括的な解決策を提供しない。
【0030】
これから説明するように、センサのコストを最小限に抑える整数線形計画法(ILP)ベースの最適解を採用する本発明の解決策をさらに記載する。ILP解は、ネットワークの規模が大きいと扱い難い場合があるため、大幅な性能向上と最適に近い性能を実現する、Explore-and-Pick(EnP)と呼ばれる高速ヒューリスティックアルゴリズムについて説明する。これらの解決策の性能を包括的なシミュレーションにより評価する。
問題の説明
【0031】
本発明の解決策の開示を開始するにあたり、DFOSセンサの配置問題(DFOSの配置問題とも呼ばれる)の定義を提供する。
【0032】
DFOSの配置問題は、ネットワークインフラストラクチャが与えられた場合に、(1)センサをどこに配置するか、および(2)光ファイバルートをどのように検知するか、を決定するとこを目標とするように定義することができ、所与のネットワークインフラストラクチャ内の必要とする(required)/必要な(necessary)全ての光ファイバリンクをカバー/検知/監視しながら、使用されるセンサの数を最小限に抑えることを目的としている。
【0033】
DFOSの配置問題を解決するために、以下の条件を考慮する。第1に、各センサには、制限されたセンシング範囲で単一の方向にデータを感知する能力(ability)/性能(capability)が必要である。第2に、各センシングファイバルートは、線形ルートとし、分岐(例えば、ツリー状のルート)は認められない。最後に、各センサは、1つのセンシングファイバルートのみと結合され、同時に複数のルートをセンシングすることは考慮されない。
【0034】
整数線形計画法(ILP)の解法
【0035】
これから示し、説明するように、ILPを使用してDFOSの問題を定式化し、最適解を求めやすくする。したがって、以下のパラメータが与えられる。
【数14】
ネットワークインフラストラクチャ、
ここで、
【数15】
はノードの集合であり、
【数16】
はリンクの集合である。
【数17】
センシング範囲の制限。
【数18】
リンク(i,j)の距離。
【数19】
【数20】
によって得られる、リンク(i,j)の重みの距離。
【0036】
以下のブール変数が決定される。
【数21】
センサがノードsに配置され、終端点をノードdとし、
【数22】
である場合に1であり、それ以外の場合には0である。
【数23】
Sとdとの間のセンシングファイバルートがリンク(i,j)を通過し、
【数24】
である場合に1であり、それ以外の場合には0である。
【0037】
目的は、以下のように定義される、使用されるセンサの数を最小化することである。
【数25】
【0038】
以下の制約が考慮される。
【数26】
【0039】
ここで、式(2)は、任意のセンシングファイバルートの距離がセンシング範囲制限R未満でなければならないというセンシング範囲制限の制約を表す。式(3)は、各リンク(i,j)がどちらの方向からでも少なくとも1回は感知できることを保証する。式(4)は、各センシングファイバルートが線形ルートであることを保証する。
【0040】
高速で効率的なヒューリスティック解決策
【0041】
ここで、本開示の態様によるセンサ配置方法において有利に使用される2つの高速ヒューリスティック、すなわちRandom-FitおよびExplore-and-Pick(EnP)を開示する。
【0042】
Random-Fit。この手順は、本開示の態様によるDFOSセンサの配置に対処するためのベースラインヒューリスティック解決策を提供する。動作上、この手順では、最初に、センサを配置するためのカバーされていないリンクが接続されているノードをランダムに選択する。次に、センシングファイバルートは、選択されたノードから開始し、残りのカバーされていないリンクの1つを通ってその隣接ノードに移動し、センシング範囲制限に達するまで次のホップを探索し続けるように設定される。これらの2つの手順は、すべてのリンクがカバー済みとしてマークされるまで繰り返される。Random-Fitの詳細な手順は、以下の通りである。
【0043】
Random-Fitの手順
【0044】
ステップ0:最短経路アルゴリズムを実行して、所与のネットワーク内の各ノードペア間の距離を求める。
【0045】
ステップ1:リストassignmentを初期化して、DFOSセンサの配置の割り当てと対応するセンシングファイバルートを保存する。ネットワーク内のすべてのファイバリンクを含むセットuncoveredを初期化する。
【0046】
ステップ2:カバーされていないファイバリンクに接続されているノードsをuncoverからランダムに選択してセンサを配置する。
【0047】
ステップ3:sのセンシング範囲制限内にある全ての隣接ノードの中から、1つを終端点dとしてランダムに選択する。sとdの間の最短経路は、センシングファイバルートrとして機能する。以上がassignmentに保存される。
【0048】
ステップ4: rが移動したすべてのリンクを、uncoveredから削除する。
【0049】
ステップ5:uncoveredが空になるまで、ステップ2からステップ4を繰り返す。assignmentを返して終了する。
【0050】
Explore-and-Pick(EnP)。Random-Fit手順は、DFOSセンサの配置に有効な様々な解を生成することができるが、特に費用対効果が高いとは言えない。したがって、最適に近い性能を達成することができる別の高速ヒューリスティックであるEnPについて説明する。
【0051】
本開示の態様によれば、EnPは2つの手順を含む。第1の手順は、深さ優先探索に基づく新しい距離制限されたルート探索を通じて、所与のネットワークインフラストラクチャに対して可能なすべてのセンシングファイバルートを探索する。第2の手順では、すべての可能なセンシングファイバルートSを入力とし、所与のネットワークインフラストラクチャ内のすべてのファイバリンクをユニバース集合Uとみなす。次いで、和集合がUと等しいSからのセンシングファイバルートMの最小部分集合を見つける。これは、実際には古典的な最小集合被覆問題に変換され、センサの配置を考慮できるように変更を加えた貪欲法によって解決できる。EnPの詳細な手順は以下の通りである。
【0052】
EnP(Explore-and-Pick)の手順
【0053】
ステップ0:リストassignmentを初期化して、DFOSセンサの配置の割り当てと対応するセンシングファイバルートを保存する。所与のネットワーク内のすべてのファイバリンクを含む集合uncoveredを初期化する。所与のネットワーク内の各ノードからのすべての可能なセンシングファイバルートを保存するために集合all_routes_setを初期化する。
【0054】
ステップ1:まだ探索されていない各ノードnについて、ステップ2~ステップ9を繰り返す。すべてのノードが探索されたら、ステップ10に進む。
【0055】
ステップ2:3つのデータ構造を以下のように初期化する。最初に、nから始まるセンシングファイバルートの次ホップのすべての候補ノードを保存するために、スタックnext_hopが作成される。スタックはnで初期化される。次に、訪問したノードを追跡するために、リストvisitedが作成される。これにより、センシングファイバルートに重複するリンクが存在しないことが保証される。このリストは、nで初期化される。最後に、集合route_setを作成し、nから始まるすべての可能なセンシングファイバルートを保存する。最初は空である。
【0056】
ステップ3:next_hopが空でない間は、ステップ4からステップ8を繰り返す。それ以外の場合には、ステップ9に進む。
【0057】
ステップ4:next_hopから後入れノード(last-in node)をポップし、currentとして表示する。
【0058】
ステップ5:route_set内の各センシングファイバルートrについて、rの最後のホップがcurrentある場合、またはroute_setが空である場合は、ステップ6からステップ8を繰り返す。すべてのセンシングファイバルートがチェックされている場合は、ステップ3に戻る。
【0059】
ステップ6:currentの隣接ノードnnごとに、既存のルートrをその最後のホップcurrentからnnまで拡張することによって、新しいセンシングファイバルートr_newを生成する(route_setが空である場合、r_newは、currentからnnまでの1つのホップのみを有するルートで初期化される)。currentのすべての隣接ノードが処理されるまでステップ7とステップ8を繰り返し、ステップ5に戻る。
【0060】
ステップ7:r_newが線形ルートであり、その間にr_newが通過する距離がセンシング制限範囲より小さい場合は、r_newをroute_setに追加して、ステップ8に進む。それ以外の場合には、ステップ6に戻り、次の隣接ノードをチェックする。
【0061】
ステップ8:nnがvisitedに無い場合、next_hopにnnを追加し、visitedにnnを追加する。それ以外の場合は、ステップ6に戻り、次の隣接ノードをチェックする。
【0062】
ステップ9:all_routes setにroute_setを追加する。
【0063】
ステップ10:uncoveredが空でない場合は、ステップ11に進む。それ以外の場合は、ステップ12に進む。
【0064】
ステップ11:all_routes setから、uncoveredとの重複リンク数が最大となるセンシングファイバルートr_maxを選択する。r_maxのソースノードを選択してセンサを配置し、もう一方の端を終端点dとして選択する。r_maxが移動したファイバリンクをuncoveredから削除する。assignmentにr_maxを追加する。ステップ10に戻る。
【0065】
ステップ12:assignmentを返して、終了する。
【0066】
数値結果
【0067】
本開示の態様による本発明の解決策を検証するために、包括的なシミュレーションを行った。これらのシミュレーションでは、既存の光ファイバセンシング技術を考慮して、光ファイバセンシング範囲の制限を80kmに設定される。この制約により、評価用に選択されるネットワークインフラストラクチャは、実世界のデータセットを使用する地域またはメトロ光ファイバネットワークである。主要なネットワークパラメータを表1に示す。なお、センシング範囲の制限を超えるリンクは、DFOSセンサによってカバーすることができるように、80kmにクリップする前処理を行った。
【0068】
Random-Fit、EnP、およびILPの解法を、使用されるセンサの数で比較する。結果を表2に示す。ILPの解法が下限を提供することが分かる。しかし、ネットワークの規模が大きくなると、妥当な時間で結果を得ることができない。加えて、EnPは、ILPの解法によって設定された下限に近い性能を達成できることが分かる。EnPは、Random-Fitより平均で13%、最高で25%上回っている。EnPは、DFOSの配置問題に対処するための高速で費用対効果の高い解決策であると結論付けることができる。
【表1】
【表2】
【0069】
図3は、本開示の態様による、全体的な分散型光ファイバセンサの配置方法を示すフロー図である。
【0070】
図4(A)、図4(B)、および図4(C)は、本開示の態様による、分散型光ファイバセンサの配置方法の第1のサブ手順をまとめて示すフロー図である。
【0071】
図5は、本開示の態様による、分散型光ファイバセンサの配置方法の第2のサブ手順を示すフロー図である。
【0072】
これらの図を同時に参照して、2つの主要な手順のステップ、すなわち、図3に例示的に示すようなステップ100およびステップ200の概要を示すフロー図の検討を開始することができる。
【0073】
ステップ100は、本発明の方法における第1の例示的なサブ手順のステップであり、深さが制限されたルート探索によって示される。この第1のサブ手順における全ての詳細なステップは、図4(A)、図4(B)および図4(C)のステップ101からステップ116まで詳術されていることに留意されたい。
【0074】
概要として、このステップ100は、所与のネットワークインフラストラクチャ
【数27】
内の各ノードnについて、ノードnについての(route_setによって示される)すべての可能なセンシングルートを得るために(その上にセンサを配置する場合)、深さ制限ルート探索のサブ手順に対して呼び出される反復を含む。
【0075】
反復的に、各ノードのroute_setが取得され、センサの配置、センシングルート、およびセンシング範囲のためのすべての可能な割り当てを含むall_route_setと呼ばれる集合に追加される。すべてのノードがチェックされ、それらの対応するroute_setsがall_route_setに追加されると、動作はステップ200に進む。集合all_route_setは、ステップ200への入力として使用されることに留意されたい。
【0076】
ステップ200は、本発明の方法における第2のサブ手順であり、これは、貪欲集合被覆によって示される。この第2のサブ手順における全ての詳細なステップは、図5に例示的に示されるように、ステップ201からステップ205まで詳述されていることに留意されたい。
【0077】
すべてのroute_setをルーティングする可能性のあるすべてのセンスから、この第2のサブ手順は貪欲集合被覆方法を採用し、所与のネットワークインフラストラクチャ
【数28】
内の各リンクを少なくとも1回カバーすることができることを保証する、最小に近い部分集合を見つける。
【0078】
ステップ101は、深さ制限ルート探索のサブ手順の初期化ステップである。動作上、少なくとも3つのデータ構造が作成され、初期化される。最初に、スタックsが作成され、所与のノードnについて訪問する必要があるすべてのノードが保存される。スタックは、所与のノードnで初期化され、追加のノードが特定の条件を満たすと、追加のノードとともに追加される(ステップ106および108、ならびにステップ112および114を参照)。
【0079】
次に、深さ制限ルート探索プロセス中に訪問されたノードを追跡するために、リストvisitedが初期化される。これにより、最終的なDFOS割り当てにおいて重複したセンシングルートが存在しないことが保証される。リストは、所与のノードnを含むように初期化される。最後に、集合route_setは空として初期化される。この集合には、所与のノードnにセンサを配置する場合のすべての可能なセンシングルートが含まれる。
【0080】
ステップ102は、反復ループ、例えば「while」ループのエントリポイントである。スタックsが空かどうかをチェックする。スタックが空でない場合、whileループに入り、ステップ103に進む。スタックが空の場合、whileループを終了し、ステップ116に進み、所与のノードnのroute_setを返す。ここで、スタックが空の場合、所与のノードnのセンシング制限R内にあるすべての隣接ノードがチェックされたことを意味するので、route_setは、所与のノードnのすべての可能なセンシングルートを含む。
【0081】
ステップ103は、ノードcurrentとして示されるスタックsから後入れノード(last-in node)をポップアップするように動作する。このcurrentのノードは、現在の探索の位置を識別する。今後のステップでは、route_setにおいて可能なセンシングルートとしてcurrentとその近傍を追加するかどうかを決定する。
【0082】
ステップ104は、集合route_setが空であるか否かをチェックする。空の場合、ノードcurrentは、センシングルートの元のノードと見なされ、任意の他のセンシング可能なルートが探索され、プロセスはステップ105に進む。route_setが空でない場合、route_setからのルート(その先行するルートはcurrentである)がチェックされ、任意の他の可能なセンシングルートが探索され、プロセスはステップ110に進む。
【0083】
ステップ105は、制御ループ、すなわち「for-loop」のエントリポイントである。currentの各隣接ノードnnがチェックされ、currentからnnへのルートrが生成される。続いて、このルートは、ステップ106でチェックされ、route_setに追加されるか否かを決定する。
【0084】
ステップ106は、currentからnnに拡張されたルートrの状態をチェックする。チェック条件は、ルートrがループを含まない線形ルートでなければならず、その間に、rの移動距離がセンシング範囲制限Rより小さいことである。ルートrが上記の条件を満たす場合、ステップ107に示すように、rがroute_setに追加される。条件を満たさない場合は、手順はステップ105に戻り、次の隣接ノードおよびその対応する新たに生成されたルートがチェックされる。
【0085】
ステップ107は、ルートrをroute_setの集合に追加する。
【0086】
ステップ108は、隣接ノードnnが訪問されたか否かをチェックする。nnが以前に訪問された場合、手順はステップ105に戻り、次の隣接ノードをチェックする。nnが訪問されていない場合は、手順はステップ109に進む。
【0087】
ステップ109は、隣接ノードnnをスタックsに追加するように動作し、これにより、このノードから拡張された任意の他の可能なセンシングルートのさらなる探索が可能になる。このステップでは、nnも訪問したノードのリストに追加される。
【0088】
ステップ110は、ステップ104の条件が満たされない場合に実行される。例示的な実装では、それは2重のfor-loopの外側ループのエントリポイントである。ここで、手順は、route_setの集合内の各既存のセンシングルートrをチェックし、ノードcurrentを起点とする任意のルートを処理する。
【0089】
ステップ111は、例示的には、2重のfor-loopの内側ループのエントリポイントである。currentの各隣接ノードnnをチェックし、ノードnnを既存のセンシングルートrに追加することによって構築される新しいルートr_newを生成する。
【0090】
ステップ112は、ルートr_newがループのない線形ルートであるかどうか、およびr_newが移動した距離がセンシング制限R未満であるかどうかをチェックする。上記の条件が真である場合、手順はステップ113に進み、r_newがroute_setに追加される。条件が満たされない場合、手順はステップ111に戻り、次の隣接ノードおよびその対応する新たに生成されたルートをチェックする。
【0091】
ステップ113は、ルートr_newをroute_setの集合に追加する。
【0092】
ステップ114は、隣接ノードnnが訪問されたかどうかをチェックする。nnが以前に訪問された場合、手順はステップ111に戻り、次の隣接ノードをチェックする。nnが訪問されていない場合、手順はステップ115に進む。
【0093】
ステップ115は、隣接ノードnnをスタックsに追加し、これにより、このノードから拡張された任意の他の可能なセンシングルートのさらなる探索が可能になる。このステップでは、nnが訪問したノードのリストに追加される。
【0094】
ステップ116は、ステップ102の条件が真である場合に実行される。ステップ100の第1のサブ手順において手順が呼び出された手順内のその位置に集合route_setを返す。
【0095】
ステップ201は、第2のサブ手順の初期化段階である。動作上、2つのデータ構造が作成される。
【0096】
まず、この手順では、dfosというリストを空として初期化する。このリストには、センサの配置の割り当て、センシングルートの割り当て、およびセンシング範囲の割り当てを含む、分散型光ファイバセンサの配置の割当てを保存する。次に、手順は、
【数29】
内の各リンクを、カバーされていない状態になるように初期化する。
【0097】
ステップ202は、(例示的にはwhileループの)エントリポイントであり、
【数30】
内に未だカバーされていないとしてマークされているリンクが存在するか否かをチェックする。条件が真であれば、手順はステップ203に進み、そうでなければ、ステップ205に進み、dfosを返す。ここで、
【数31】
内にカバーされていないリンクがまだ存在する場合、それらのカバーされていないリンクをカバーするために、より多くのセンサを配置する必要があり、これが、ステップ203で動作がwhileループ本体を進行させる理由である。これにより、ネットワークインフラストラクチャ全体が分散型光ファイバセンサによって完全にカバーされたときに、手順が終了することが保証される。
【0098】
ステップ203は、all_route_setから
【数32】
内の残りのカバーされていないリンクと最大の重複リンクまたは共通リンクを有するルートr_maxを選択する。これは、all_route_setからの最小部分集合で
【数33】
内のすべてのリンクをカバーすることを目的とした貪欲法である。
【0099】
ステップ204は、選択された最も重複するルートr_maxをdfosのリストに追加する。また、ルートr_max上の2つの終端ノードのうちの1つが、センサを配置する場所として選択される。最後に、このステップでは、
【数34】
上でカバーされているものとして、r_maxが通過するリンクをマークする。
【0100】
ステップ205は、ステップ202のwhileループ条件が偽である場合に実行される。言い換えれば、
【数35】
内の全てのリンクがdfosの分散型光ファイバセンサの割り当てによってカバーされたとき、手順は終了し、dfosを返す。なお、分散型光ファイバセンサの割り当て結果は、dfosに保存される。
【0101】
本発明のDFOSの配置方法の適用
【0102】
再び図2に注目すると、本発明のDFOSの配置方法の光ファイバネットワークへの適用が示されている。この図から分かるように、図示の光ファイバネットワークには複数のノードが存在し、いくつかのノードの間には複数の光ファイバリンクが存在する。光ファイバリンクは、DFOSセンサで監視(感知)する必要があるリンクである。監視する光ファイバリンクの集合は、ネットワーク内の全ての光ファイバリンクである可能性があることに留意されたい。
【0103】
動作上、光ノードは、ネットワーク制御部によって制御され、ネットワーク制御部は、ノードの1つに配置することができ、遠隔位置もしくは複数の位置に配置することができる。ネットワークトポロジ、各ノードの情報、各リンクの情報(両端ノード、リンク距離、このリンク上でセンシングが必要かどうかなど)などを含むネットワーク情報は、ネットワーク制御部によって収集される。この情報に基づいて、ネットワーク制御部は、本開示の態様による本発明のDFODの配置方法を使用して、ネットワークセンシング構成を決定する。その後、構成設定は個々のノードに送信される。
【0104】
光ノードは、それぞれのネットワーク構成および/または命令を受信すると、その命令を実行する。この命令には、そのノードに1つまたは複数のDFOSセンサハードウェア要素を配置/起動し、それらをそれぞれのファイバに接続すること、および/または2つのリンクから2つのファイバを一緒に接続してパススルー経路を形成すること(これは、ファイバパッチパネルまたは光スイッチを介して行うことができる)、および/または終端点の端面での大きな反射を防止するためにファイバを終端することを含むことができる。
【0105】
また、配置された各DFOSセンサは、ネットワーク制御部からの命令を使用して、センシング距離および関連パラメータを構成し、進行中のセンシング/測定を開始する。センサのセンシング範囲が複数のホップにまたがる場合、収集されたデータは個々のリンクに分割される。各ファイバリンクの測定データは、ローカルに保存および処理することも、遠隔または中央のプロセッサに送信して分析または保存することができる。
【0106】
DFOSの配置方法のリソース最適化の利点により、ネットワーク内のDFSOセンサの数を低く抑えることができ、ハードウェア費用を節約しながら、特に現代の方法と比較して、ネットワーク計画時間を大幅に短縮する速度および効率を提供する。したがって、キャリアの運用コストも同様に削減される。
【0107】
なお、光ファイバネットワーク内の必要な全てのリンクが継続的にセンシング機能を実行しているので、IaaSr(NaaSr)機能が実現され、ネットワーク運用効率(ケーブル切断の防止、ケーブルの状態の監視、運用環境の監視など)が向上し、ネットワーク所有者に新しいサービスと収益をもたらす(例えば、地方自治体への交通情報の提供、高速道路事業者の道路状況の監視、電力会社の電柱の状態の監視、事故検出のための都市騒音の監視など)。
【0108】
この時点で、いくつかの特定の例を使用して本開示を提示したが、当業者は本教示がそのように限定されないことを認識するのであろう。したがって、本開示は、本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1
図2
図3
図4(A)】
図4(B)】
図4(C)】
図5