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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】斜板式コンプレッサー
(51)【国際特許分類】
   F04B 27/18 20060101AFI20240628BHJP
   F04B 27/12 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
F04B27/18 B
F04B27/12 H
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023060761
(22)【出願日】2023-04-04
(62)【分割の表示】P 2021525873の分割
【原出願日】2019-12-02
(65)【公開番号】P2023076593
(43)【公開日】2023-06-01
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】10-2018-0159838
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516011246
【氏名又は名称】ハンオン システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ユ チョル
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ウン ギ
(72)【発明者】
【氏名】アン,ヒュ ナム
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ジュン ハ
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ジェ ス
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0095457(KR,A)
【文献】特開2015-203346(JP,A)
【文献】特開2003-013848(JP,A)
【文献】特開2011-064240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/18
F04B 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮するピストンが収容されるシリンダーブロック、前記シリンダーブロックの前方に結合され、クランク室が備えられるフロントハウジング、前記フロントハウジングに回転可能に設置される駆動軸、前記駆動軸及び前記ピストンと結合される斜板、吸入室及び吐出室が備えられ、前記シリンダーブロックの後方に結合されるリアハウジング、前記シリンダーブロック側に挿入されるガスケット、及びバルブプレートと前記シリンダーブロックとの間に挿入されるサクションリードプレートを備えて前記クランク室の圧力を調節して前記斜板の傾斜角度を調節することで冷媒の吐出量を調節する斜板式コンプレッサーであって、
前記クランク室内の前記冷媒が通過するように前記ガスケットを貫通するガスケットホール、
前記ガスケットホールと連通される第1オリフィスホール、
前記吸入室と連通して前記第1オリフィスホールを通過した前記冷媒を前記吸入室に吐出する第2オリフィスホール、
前記第1オリフィスホールと前記第2オリフィスホールとの間を連結する中間流路、
前記シリンダーブロックと前記リアハウジングとの間に挿入され、前記吸入室と連結され、前記吸入室の圧力と同じ圧力で維持される吸入室圧力維持空間を設ける前記バルブプレート、及び
前記第1オリフィスホールに収容されて、前記クランク室の圧力と前記吸入室圧力維持空間の圧力の差圧によって作動されて前記ガスケットホールと前記第1オリフィスホール間連通面積を調節するように一端が前記サクションリードプレートと連結され、他端が自由端に形成される可変リードを含み、
前記バルブプレートは、前記バルブプレートを貫通して前記吸入室圧力維持空間と前記吸入室を連通させて前記吸入室圧力維持空間の圧力を前記吸入室と同様にする前記バルブプレートの第1貫通ホール、及び前記バルブプレートの第1貫通ホールに離隔される位置で前記バルブプレートを貫通して前記吸入室圧力維持空間と前記吸入室を連通させて前記第2オリフィスホールを形成する前記バルブプレートの第2貫通ホールを含み、
前記バルブプレート第1貫通ホールは前記可変リードに対向される位置に形成され、前記バルブプレート第2貫通ホールは前記可変リードに対向されない位置に形成され、前記可変リードの開放時に前記可変リードの末端が前記第1貫通ホールと前記第2貫通ホールの間に接触する、ことを特徴とする斜板式コンプレッサー。
【請求項2】
前記吸入室圧力維持空間は、前記バルブプレートに凹状に形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の斜板式コンプレッサー。
【請求項3】
前記可変リードは、前記吸入室圧力維持空間の内部にて変位するように形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の斜板式コンプレッサー。
【請求項4】
前記バルブプレートの第1貫通ホールは、前記可変リードが前記吸入室圧力維持空間の内部にて変位する場合、前記バルブプレート第1貫通ホールの少なくとも一部が遮蔽されるように設けられる、ことを特徴とする請求項3に記載の斜板式コンプレッサー。
【請求項5】
前記可変リードは、前記ガスケットホールを閉鎖することができるように形成され、前記ガスケットホールと対向するように貫通形成される可変リードホールを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の斜板式コンプレッサー。
【請求項6】
前記可変リードホールは、前記ガスケットホールの直径よりも小さい直径を備え、前記ガスケットホールの中心軸と同じ中心軸を共有するように前記ガスケットホールの前記中心軸の方向に沿って配置される、ことを特徴とする請求項5に記載の斜板式コンプレッサー。
【請求項7】
前記可変リードホールは、前記バルブプレートの第1貫通ホールの軸方向に沿って、前記バルブプレートの第1貫通ホールと前記吸入室圧力維持空間を間に置いて離隔し、前記可変リードホールの前記吸入室圧力維持空間側の一部が前記バルブプレートの前記第1貫通ホールの前記吸入室圧力維持空間側と重畳される、ことを特徴とする請求項5に記載の斜板式コンプレッサー。
【請求項8】
前記可変リードは、前記ガスケットホールの少なくとも一部が開放されるように形成される、ことを特徴とする請求項7に記載の斜板式コンプレッサー。
【請求項9】
前記シリンダーブロック上には前記クランク室と前記第1オリフィスホールの間で延長される貫通部が形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の斜板式コンプレッサー。
【請求項10】
前記第1オリフィスホールは、前記サクションリードプレート上に形成される、ことを特徴とする請求項9に記載の斜板式コンプレッサー。
【請求項11】
前記第1オリフィスホールは、前記可変リードの外周部の一部に沿って形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の斜板式コンプレッサー。
【請求項12】
前記中間流路は、前記吸入室圧力維持空間と連通する緩衝空間を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の斜板式コンプレッサー。
【請求項13】
前記緩衝空間は、前記シリンダーブロックの一側端部及び前記ガスケットの間に配置される、ことを特徴とする請求項12に記載の斜板式コンプレッサー。
【請求項14】
前記緩衝空間は、前記第2オリフィスホールと連通する、ことを特徴とする請求項13に記載の斜板式コンプレッサー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜板式コンプレッサーに係り、より詳細には、不要な冷媒ガスの損失を防止し、コンプレッサーの効率を向上させることができる斜板式コンプレッサーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に空調システムに適用されるコンプレッサーは、蒸発器を経た冷媒ガスを吸入して高温高圧の冷媒ガス状態で圧縮して凝縮器に吐出する機能を持ち、往復動式、回転式、スクロール式、斜板式等の様々なタイプのコンプレッサーが使用されている。
【0003】
これらのコンプレッサーのうち、動力源として電動モータを使用するコンプレッサーを通常電動式コンプレッサーといい、コンプレッサーの種類のうち、斜板式コンプレッサーは、車両用空調装置に多く使用されている。
【0004】
斜板式コンプレッサーは、エンジンの動力が伝達されて回転する駆動軸にディスク形状の斜板(swash plate)が傾斜して設置され、駆動軸によって回転し、斜板の回転によって複数のピストンがシリンダー内部で直線往復運動をすることにより、冷媒ガスを吸入または圧縮して排出する原理である。特に、韓国特許公開2012-0100189号に開示されたような容量可変型斜板式コンプレッサーは、斜板の傾斜角が可変することで、ピストンの往復移動量が変化して冷媒吐出量が調節される。
【0005】
前述した斜板の傾斜角は、制御室(クランク室)の圧力である制御圧(Pc)を利用して制御することができる。具体的には、吐出室に排出された圧縮冷媒の一部を制御室に流入させることにより、制御室内の圧力を調整することができ、斜板の傾斜角は、制御室の圧力である制御圧(Pc)に応じて変更される。
【0006】
ここで、制御室には吐出室に排出された圧縮冷媒だけでなく、ピストンとシリンダーとの間から漏れた冷媒も流入するので、適正圧力を維持するためには、流入した冷媒を吸入室に排出する必要がある。このため、容量可変型斜板式コンプレッサーでは、制御室と吸入室を連通するオリフィスホールが形成され、オリフィスホールを介して制御室内の冷媒が吸入室に再流入することができる。
【0007】
ただし、オリフィスホールを介して排出される冷媒の量が多いほど、コンプレッサーの効率が低下する問題が発生し得る。したがって、オリフィスホールを介して排出される冷媒の量を最小化する必要がある。
【0008】
ただし、従来の容量可変型斜板式コンプレッサーは、制御圧と吸入圧の差圧が一定に維持されている状況でも、冷媒ガスがオリフィスホールを介して失われる現象で、オリフィスホールを介して排出される冷媒の量が増加してコンプレッサーの効率が低下する問題が発生することがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする技術的課題は、不要な冷媒ガスの損失を防止し、コンプレッサーの効率を向上させることができる斜板式コンプレッサーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によると、冷媒を圧縮するピストンが収容されるシリンダーブロック、前記シリンダーブロックの前方に結合され、クランク室が備えられるフロントハウジング、前記フロントハウジングに回転可能に設置される駆動軸、前記駆動軸及び前記ピストンと結合される斜板、吸入室及び吐出室が備えられ、前記シリンダーブロックの後方に結合されるリアハウジング、前記シリンダーブロック側に挿入されるガスケット、及びバルブプレートと前記シリンダーブロックとの間に挿入されるサクションリードプレートを備えて前記クランク室の圧力を調節して前記斜板の傾斜角度を調節することで冷媒の吐出量を調節する斜板式コンプレッサーであって、前記クランク室内の前記冷媒が通過するように前記ガスケットを貫通するガスケットホール、前記ガスケットホールと連通される第1オリフィスホール、前記吸入室と連通して前記第1オリフィスホールを通過した前記冷媒を前記吸入室に吐出する第2オリフィスホール、前記第1オリフィスホールと前記第2オリフィスホールとの間を連結する中間流路、前記シリンダーブロックと前記リアハウジングとの間に挿入され、前記吸入室と連結され、前記吸入室の圧力と同じ圧力で維持される吸入室圧力維持空間を設ける前記バルブプレート、及び前記第1オリフィスホールに収容されて、前記クランク室の圧力と前記吸入室圧力維持空間の圧力の差圧によって作動されて前記ガスケットホールと前記第1オリフィスホール間連通面積を調節するように一端が前記サクションリードプレートと連結され、他端が自由端に形成される可変リードを含み、
前記バルブプレートは、前記バルブプレートを貫通して前記吸入室圧力維持空間と前記吸入室を連通させて前記吸入室圧力維持空間の圧力を前記吸入室と同様にするバルブプレートの第1貫通ホール、及び前記バルブプレートの第1貫通ホールに離隔される位置で前記バルブプレートを貫通して前記吸入室圧力維持空間と前記吸入室を連通させて前記第2オリフィスホールを形成する前記バルブプレートの第2貫通ホールを含み、
前記バルブプレート第1貫通ホールは前記可変リードに対向される位置に形成され、前記可変リードの開放時に前記可変リードの末端が前記第1貫通ホールと前記第2貫通ホールの間に接触する、ことを特徴とする斜板式コンプレッサーを提供することができる。
【0011】
前記吸入室圧力維持空間は、前記バルブプレートに凹状に形成することができる。
【0012】
前記可変リードは、前記吸入室圧力維持空間の内部にて変位するように形成することができる。
【0013】
前記バルブプレートの第1貫通ホールは、前記可変リードが前記吸入室圧力維持空間の内部にて変位した場合、前記バルブプレート第1貫通ホールの少なくとも一部が遮蔽されるように設けることができる。
【0014】
前記可変リードは、前記ガスケットホールを閉鎖できるように形成され、前記ガスケットホールと対向するように貫通形成される可変リードホールを含むことができる。
【0015】
前記可変リードホールは、前記ガスケットホールの直径よりも小さい直径を備え、前記ガスケットホールの中心軸と同じ中心軸を共有するように前記ガスケットホールの前記中心軸の方向に沿って配置される。
【0016】
前記可変リードホールは、前記バルブプレートの第1貫通ホールの軸方向に沿って、前記バルブプレートの第1貫通ホールと前記吸入室圧力維持空間を間に置いて離隔し、前記可変リードホールの前記吸入室圧力維持空間側の一部が前記バルブプレートの第1貫通ホールの前記吸入室圧力維持空間側に重畳することができる。
【0017】
前記可変リードは、前記ガスケットホールの少なくとも一部が開放されるように形成することができる。
【0018】
前記シリンダーブロック上には、前記クランク室と前記第1オリフィスホールとの間で延長される貫通部を形成することができる。
【0019】
前記第1オリフィスホールは、前記サクションリードプレート上に形成することができる。
【0020】
前記第1オリフィスホールは、前記可変リードの外周部の一部に沿って形成することができる。
【0021】
前記中間流路は、前記吸入室圧力維持空間と連通する緩衝空間を含むことができる。
【0022】
前記緩衝空間は、前記シリンダーブロックの一側端部及び前記ガスケットの間に配置することができる。
【0023】
前記緩衝空間は、前記第2オリフィスホールと連通することができる。
【発明の効果】
【0024】
前述したような特徴を有する本発明の側面によると、可変リードの開きが制御圧と吸入圧の差によって行われる場合には、吸入圧と吸入圧の可変リードに対する加圧力との間の差圧が発生しないようにし、吸入圧と吸入圧の可変リードに対する加圧力の差によって発生する可変リードの開き遅延現象を防止して、斜板式コンプレッサーの制御性を改善することができる。したがって、冷媒ガスの損失量が減少するので、コンプレッサーの効率が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】斜板式コンプレッサーの一例を示す断面図である。
図2図1による斜板式コンプレッサーの圧力の流れを示す模式図である。
図3】本発明の第1実施例による斜板式コンプレッサーの冷媒流路の分解斜視図である。
図4図3の斜板式コンプレッサーの主要部分を示す断面図である。
図5】第2実施例による斜板式コンプレッサーの主要部分を示す断面図である。
図6図5による斜板式コンプレッサーに適用される可変リードを示す図面である。
図7】本発明の第3実施例の可変リードを示す図面である。
図8】本発明の第4実施例の可変リードを示す図面である。
図9】本発明の第1実施例の可変リードの作動方式を示す図面である。
図10】本発明の第1実施例の可変リードの作動方式を示す図面である。
図11】本発明の第2実施例の可変リードの作動方式を示す図面である。
図12】本発明の第2実施例の可変リードの作動方式を示す図面である。
図13】本発明の第1実施例の可変リードが設けられた部分を拡大して示す図面である。
図14】本発明の第2実施例の可変リードが設けられた部分を拡大して示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明と本発明の動作上の利点、及び本発明の実施によって達成される目的を十分に理解するには、本発明の好ましい実施例を例示する添付図面、及び添付図面に記載された内容を参照しなければならない。
【0027】
本明細書に開示される本発明の概念による実施例について、特定の構造的又は機能的説明は、単に本発明の概念による実施例を説明するための目的として例示するものであり、本発明の概念による実施例は、様々な形態で実施することができ、本明細書に説明する実施例に限定されない。
【0028】
本発明の概念による実施例は、多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるので、実施例を図面に例示し詳細に説明する。しかし、これは本発明の概念による実施例を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物、又は代替物を含む。
【0029】
第1又は第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために使用することができるが、前記構成要素は、前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別するものであり、例えば、本発明の概念に基づく権利の範囲から逸脱せずに、第1構成要素は第2構成要素と命名することができ、同様に、第2構成要素は第1構成要素と命名することもできる。
【0030】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いるとか、「接続されて」いると言及されたときには、そのほかの構成要素に直接的に連結されているか、又は接続されていることもあるが、中間に他の構成要素が存在するかもしれないと理解されるべきである。一方、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いるとか、「直接接続されて」いると言及されたときには、中間に他の構成要素が存在しないと理解されるべきである。構成要素間の関係を説明する他の表現、すなわち、「~の間に」と「すぐ~の間に」または「~に隣接する」と「~に直接隣接する」なども同様に解釈されるべきである。
【0031】
本明細書で用いる用語は、単に特定の実施例を説明するために用いるものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味がない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」又は「有する」などの用語は、本明細書に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品、又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品、又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加の可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0032】
別途定義されない限り、技術的又は科学的な用語を含め、ここで使用するすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同一の意味を表す。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上に持つ意味と一致する意味を持つと解釈されるべきであり、本明細書で明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味として解釈されない。
【0033】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施例を説明することにより、本発明を詳細に説明する。各図面に提示した同一の参照符号は、同一の部材を示す。
【0034】
図1は、斜板式コンプレッサーの一例を示す断面図であり、図2は、図1による斜板式コンプレッサーの圧力の流れを示す模式図である。
【0035】
図1及び図2に示すように、斜板式コンプレッサー(10)は、外観を形成するシリンダーブロック(100)と、シリンダーブロック(100)の前方に結合されるフロントハウジング(200)と、シリンダーブロック(100)の後方に結合されるリアハウジング(300)と、これらの内部に備えられる駆動部で構成される。
【0036】
言い換えれば、本発明の一実施例に係る斜板式コンプレッサー(10)は、冷媒を圧縮するピストン(112)が収容されるシリンダーブロック(100)と、シリンダーブロック(100)の前方に結合され、クランク室(250)が備えられるフロントハウジング(200)と、吸入室(310)及び吐出室(330)が備えられ、シリンダーブロック(100)の後方に結合されるリアハウジング(300)と、シリンダーブロック(100)側に挿入されるガスケット(730)及びバルブプレート(710)とシリンダーブロック(100)の間に挿入されるサクションリードプレート(750)と、これらの内部に備えられる駆動部を備える。
【0037】
駆動部は、エンジンの動力が伝達されるプーリ(210)、フロントハウジング(200)の中心に回転可能に設置されてプーリ(210)と結合される駆動軸(230)、駆動軸(230)上に結合されるローター(400)、及び斜板(500)で構成される。
【0038】
ピストン(112)は、連結部(130)に連結され、連結部(130)の内部には一対の半球状のシュー(140)が備えられる。斜板(500)は、外周の一部がシュー(140)の間に挿入される形で設置され、斜板(500)が回転しながら外周がシュー(140)を通るようになる。斜板(500)は、駆動軸(230)に対して傾斜を持って駆動されるので、斜板(500)の傾斜によりシュー(140)及び連結部(130)がシリンダーブロック(100)内で直線往復運動をするようになる。連結部(130)の運動に応じてピストン(112)もシリンダーボアの内部で長さ方向に沿って前後に移動する直線往復運動をするようになり、ピストン(112)の往復運動によって冷媒ガスが圧縮される。
【0039】
斜板(500)は、駆動軸(230)に挿入された状態で、ヒンジ(600)によってローター(400)に回動可能に結合され、斜板(500)とローター(400)との間には、スプリング(符号表示せず)が備えられて斜板(500)を弾性支持する。斜板(500)がローター(400)に回転可能に結合されるので、駆動軸(230)及びローター(400)の回転によって斜板(500)も回転することになる。
【0040】
一方、リアハウジング(300)には、制御バルブ(図示せず)、冷媒が吸入される吸入室(310)、冷媒が吐出される吐出室(330)が備えられ、リアハウジング(300)とクランク室(250)との間にバルブアセンブリ(700)が設置される。そして、バルブアセンブリ(700)の後端に吐出アセンブリ(800)が備えられる。
【0041】
吸入室(310)内の冷媒ガスは、シリンダーボアに吸入され、ピストン(112)によって圧縮された冷媒ガスは、吐出室(330)に吐出される。バルブアセンブリ(700)は、冷媒が排出される吐出室(330)とフロントハウジング(200)に形成されたクランク室(250)を連通させ、シリンダーボア内の冷媒吸入圧とクランク室(250)内のガス圧の差圧を可変させることで、斜板(500)の傾斜角度を調節して冷媒吐出量及び圧力を調節する。
【0042】
クランク室(250)の制御圧(Pc)と吸入室(310)の吸入圧(Ps)の差圧が一定に維持されるとき、不要な冷媒の流出を防止するための可変オリフィスモジュールが斜板式コンプレッサーに備えられ、これに関しては詳しく後述することにする。
【0043】
冷媒負荷が大きい場合、制御バルブによってクランク室(250)の圧力が減少するように制御され、斜板(500)の傾斜角も増加する。斜板(500)の傾斜角が増加すると、ピストンスト行程も増加して冷媒の吐出量が増加することになる。
【0044】
逆に、冷房負荷が小さい場合、制御バルブによってクランク室(250)の圧力が増加するように制御され、斜板(500)の傾斜角も減少して駆動軸(230)と垂直に近くなる。斜板(500)の傾斜角が減少すると、ピストンスト行程も減少して冷媒の吐出量が減少することになる。
【0045】
コンプレッサーの初期作動時または斜板(500)の傾斜角を大きくして、行程の長さを最大化するためには、クランク室(250)の圧力を下げなければならないが、そのために一般的な斜板式コンプレッサーはクランク室(250)内部の高圧冷媒が吸入室に抜け出すことができるようにオリフィスホールが備えられる。オリフィスホールの大きさが大きくなると、冷媒が迅速に吸入室に抜け出すことができるが、不要な場合にも冷媒の消失が発生する可能性がある。
【0046】
すなわち、クランク室(250)の圧力である制御圧(Pc)と吸入室の圧力である吸入圧(Ps)の差(以下、クランク室と吸入室の差圧)が大きくなると、クランク室(250)の冷媒が吸入室(310)に流入する。ところで、図2に示すように、クランク室(250)と吸入室(310)の差圧が一定に維持されるとき、クランク室(250)から冷媒がオリフィスホールを介して吸入室に抜け出す問題が発生することがある。したがって、コンプレッサーの効率を向上させるためには、クランク室(250)と吸入室(310)の差圧が一定に維持されるとき、冷媒がオリフィスホールを介して吸入室に抜け出す量を最小限に減らす必要がある。
【0047】
可変オリフィスモジュールはまた、クランク室(250)の圧力が特定の圧力以上に上昇すると、その圧力により開放されてクランク室(250)の冷媒が吸入室(310)に移動するようにし、クランク室(250)の圧力を下げる役割もする。
【0048】
本発明の可変オリフィスモジュールは、二つのオリフィスホール、すなわち、第1及び第2オリフィスホールと、第1及び第2オリフィスホールを連通させる中間流路を含む。第1オリフィスホールは、可変リードを含み、冷媒の圧力に応じて開放程度を異にするように構成される。さらに、中間流路は吸入室圧力維持空間及び緩衝空間として構成することができ(第1実施例)、一つの吸入室圧力維持空間として構成することもできる(第2実施例)。また、それぞれの実施例において、可変リードも様々な形のものを採用することができる。そして、クランク室内の冷媒は、シリンダーブロックに形成された貫通部を介して第1オリフィスホールに流入することができ、別の方法では、駆動軸を貫通して形成される中空流路を介して流入することができる。ここで、中空流路には緩衝空間と連結することができる。
【0049】
図3は、本発明の第1実施例による斜板式コンプレッサーの冷媒流路の分解斜視図であり、図4は、図3の斜板式コンプレッサーの主要部分を示す断面図であり、図5は、第2実施例による斜板式コンプレッサーの主要部分を示す断面図である。
【0050】
図3乃至図5に示すように、バルブアセンブリ(700)は、リアハウジング(300)側に挿入されるバルブプレート(710)と、シリンダーブロック(100)側に挿入されるガスケット(730)と、これらの間に挿入されるサクションリードプレート(750)を含んで構成される。そして、吐出アセンブリ(800)は、シリンダー内で圧縮された冷媒が所定の圧力よりも高い場合にのみ、吐出室(330)に案内する吐出バルブとして機能する複数個の吐出リードプレート(812)が備えられる吐出リード(810)と、吐出リードプレート(812)の移動量を規制するリテーナー(822)が形成される吐出ガスケット(820)を含む。
【0051】
ここで、吐出リード(810)に備えられる吐出リードプレート(812)は、バルブプレート(710)に備えられる複数個の吐出孔(711)と対向するように配置され、シリンダー内の冷媒の圧力が十分に高くなると開放され、吐出孔(711)を介して冷媒が吐出室に吐出されるようにする。
【0052】
冷媒の流れを基準に説明すると、シリンダーブロック(100)上には駆動軸(230)の長さ方向に沿って貫通部(100a)が貫通形成される。貫通部(100a)の位置に対応してガスケット(730)上にガスケットホール(732)が形成され、ガスケットホール(732)の位置に対応してサクションリードプレート(750)上に可変リード(752)が形成される。可変リード(752)の位置に対応してバルブプレート(710)に吸入室圧力維持空間(712)が形成される。
【0053】
また、バルブプレート(710)には、バルブプレート(710)を貫通して吸入室圧力維持空間(712)と吸入室(310)を連通させて吸入室圧力維持空間(712)の圧力を吸入室(310)と同じようにするバルブプレートの第1貫通ホール(715)と、バルブプレートの第1貫通ホール(715)に離隔された位置で、バルブプレート(710)を貫通して前記吸入室圧力維持空間(712)と前記吸入室(310)を連通させて前記第2オリフィスホールを形成するバルブプレートの第2貫通ホール(716)が含まれる。
【0054】
このように、バルブプレート第1貫通ホール(715)を介して吸入室(310)の圧力である吸入圧(Ps)と吸入室圧力維持空間(712)の圧力(Ps)が同一に維持され、吸入室圧力維持空間(712)の圧力(Ps)より制御圧(Pc)が大きくなると、制御圧(Pc)が可変リード(752)を加圧して可変リード(752)が、図9乃至図14に詳しく図示するように、下方に可変しながら前記ガスケットホール(732)と前記第1オリフィスホール(751)間連通面積を増加させて制御室の冷媒が吐出されるように設けられる。すなわち、吸入室圧力維持空間(712)の圧力を吸入室(310)と同様に維持して、可変リード(752)の反応性を向上させ、可変リード(752)の開きを改善させ、可変リード(752)の開き遅延現象を防止して、可変リードを通じて不要な冷媒ガスの流出を最小化することができる。したがって、冷媒ガスの損失量が減少するので、効率が向上する効果がある。
【0055】
ガスケットホール(732)は、可変リード(752)の形状に対応する形状で形成されるが、ガスケット(730)上に貫通形成される。ガスケットホール(732)は、クランク室から流入した冷媒が一次的に通る通路として機能する。ただし、ガスケットホール(732)の形状は、冷媒が可変リード(752)側に伝達されるようにする任意の形状を有することができる。
【0056】
吸入室圧力維持空間(712)は、冷媒の移動時に可変リード(752)が冷媒圧によって変形され、ガスケットホール(732)を開放するとき、可変リード(752)の流動空間になる一種の収容空間である。吸入室圧力維持空間(712)は、バルブプレート(710)の表面から凹状に形成され、サクションリードプレート(750)に向かう板面上に形成される。また、吸入室圧力維持空間(712)は、冷媒を第2オリフィスホールに供給する中間流路の一部を形成する一方、可変リード(752)の変位量を制限するリテーナーとしても機能することになる。したがって、吸入室圧力維持空間(712)は、可変リード(752)が十分に収容できるほどの形状を有する必要があり、その深さは可変リード(752)の厚さ及び供給される冷媒の種類、動作圧力及び流量に応じて適切に選択される。すなわち、可変リード(752)上に第1オリフィスホール(751)は、可変リード(752)が配置される空間として定義される。
【0057】
第1オリフィスホール(751)は、サクションリードプレート(750)の一部を切開して形成され、その内部に可変リード(752)が配置される。第1オリフィスホール(751)は、可変リード(752)より大きく形成されるので、可変リード(752)の開閉にかかわらず、常に一定量の冷媒は第1オリフィスホール(751)を通過するように構成される。
【0058】
図3乃至図5に詳しく図示するように、冷媒はクランク室(250)からシリンダーブロック(100)に形成された貫通部(100a)を経て、可変オリフィスモジュールを経て吸入室(310)に送られる。
【0059】
クランク室(250)に流入した冷媒は、バルブアセンブリ(700)のガスケット(730)に形成されたガスケットホール(732)を通過して、サクションリードプレート(750)に形成された第1オリフィスホール(751)を介して、バルブプレート(710)の吸入室圧力維持空間(712)に向かって移動する。この時、第1オリフィスホール(751)に配置される可変リード(752)は、サクションリードプレートの表面と平衡した状態にあるので、第1オリフィスホール(751)は、可変リード(752)の外周部の一部に沿って形成される。
【0060】
吸入室圧力維持空間(712)の内部に流入した冷媒は、吸入室圧力維持空間(712)に沿って、バルブプレートの中心方向に流れた後、前記第2オリフィスホールである前記バルブプレートの第2貫通ホール(716)を通じて前記吸入室(301)に流入する。
【0061】
もし、クランク(250)室内の圧力が事前に設定された値以上に上昇する場合には、冷媒の圧力により可変リード(752)が吸入室圧力維持空間(712)の内部にて変位することになる。
【0062】
冷媒が排出され、冷媒の圧力が低くなると、それに応じて可変リードが再び元の位置に復帰し、第1オリフィスホール(751)の開度が再び減少することになる。結果的に、オリフィスホールを介して吸入室に排出される冷媒の流量を減らすことができるようになり、その分コンプレッサーの効率も上昇することになる。ここで、常時最小開放面積と最大開放面積との間の比は、コンプレッサーの作動条件によって任意に設定することができる。
【0063】
図6は、図5による斜板式コンプレッサーに適用される可変リードを示す図面であり、図7は、本発明の第3実施例の可変リードを示す図面であり、図8は、本発明の第4実施例の可変リードを示す図面である。
【0064】
前述した可変リード(752)は、事前に設定された圧力以上で吸入室圧力維持空間(712)に向かって開放され、設定圧力以下では、貫通部(100a)と連通する第1オリフィスホール(751)の一部を閉鎖して、クランク室(250)と吸入室(310)に連通するオリフィス流路を縮小させる。可変リード(752)は、クランク室(250)の圧力が上昇すると開放され、可変リード(752)上に可変リードホール(752a)が形成されるか、又は可変リード(752)が流路を一部開放する形で形成される。
【0065】
図6に示すように、可変リード(752)の一端は、サクションリードプレート(750)と一体に形成され、他端は延長されて自由端を形成し、自由端の形状は、一般的に部分円形である。ここで、前記自由端は、固定端の幅に比べて大きな直径を有するように形成されるが、吸入室圧力維持空間(712)の内部にて変位できるように、リード溝の幅よりは小さく形成される。図6に、可変リード(752)の自由端側に可変リードホール(752a)が貫通形成されており、ガスケットホール(732)は、可変リード(752)の面積よりも小さい。したがって、可変リードホール(752a)がない場合、ガスケットホール(732)は可変リード(752)によって完全に閉鎖されるので、一部の冷媒が常に流れるようにするために、可変リードホール(752a)が形成される。また、可変リードホール(752a)は、ガスケットホール(732)の直径よりも小さく設けられる。言い換えれば、可変リードホール(752a)は、ガスケットホール(732)内径よりも小さい内径を備え、ガスケットホール(732)の内径を流れる冷媒の流れを調節することができる。そして、可変リードホール(752a)は、ガスケットホール(732)の中心軸と同じ中心軸を共有するようにガスケットホール(732)の中心軸方向に沿って配置することができる。したがって、可変リードホール(752a)は、可変リード(752)に加わる圧力が適用される受圧面積を縮小させる役割をするので、可変リード(752)の応答性に影響を与えることができる。したがって、可変リードホール(752a)の位置、数、及び面積を可変リード(752)の寸法及び材質を考慮して調節することにより、可変リード(752)の応答性を調節することができる。
【0066】
一方、場合によっては、可変リードホール(752a)を省略することも可能であり、この場合には、可変リード(752)がガスケットホール(732)を完全に覆わないように可変リードの位置にかかわらず、一部のガスケットホールは常に開放されていることにする。例えば、可変リード(752)は、一端がサクションリードプレート(750)上に一体に形成され、他端は延長されて自由端を形成するが、自由端の形状が部分円形であることができる。併せて、自由端の先端部は直線の形態になるようにして、ガスケットホール(732)の一部分が可変リードの位置にかかわらず、常に開放された状態を維持するようにする。
【0067】
または、可変リード(752)の一端がサクションリードプレート(750)上に一体に形成され、他端はバー(bar)形状で延長された自由端であることができる。この時には、可変リード(752)の幅がガスケットホール(732)よりも小さく形成されて、可変リードの左右側を介して冷媒が第1オリフィスホール(751)側に移動できるように形成される。
【0068】
図9図10は、本発明の第1実施例の可変リードの作動方式を示す図面であり、図11図12は、本発明の第2実施例の可変リードの作動方式を示す図面であり、図13は、本発明の第1実施例の可変リードが設けられた部分を拡大して示す図面であり、図14は、本発明の第2実施例の可変リードが設けられた部分を拡大して示す図面である。
【0069】
これらの図面に示すように、バルブアセンブリ(700)は、リアハウジング(300)側に挿入されるバルブプレート(710)と、シリンダーブロック(100)側に挿入されるガスケット(730)と、これらの間に挿入されるサクションリードプレート(750)を含んで構成される。そして、前述した吐出アセンブリ(800)は、シリンダー内で圧縮された冷媒が所定の圧力よりも高い場合にのみ、吐出室(330)に案内する吐出バルブとして機能する複数個の吐出リードプレート(812)が備えられる吐出リード(810)と、吐出リードプレート(812)の移動量を規制するリテーナー(822)が形成される吐出ガスケット(820)を含む。
【0070】
冷媒の流れを基準に説明すると、シリンダーブロック(100)上には、駆動軸(230)の長さ方向に沿って貫通部(100a)が形成される。また、貫通部(100a)から駆動軸(230)側に連通するように連通溝(100b)が形成され、駆動軸(230)の周りを介して移動する冷媒が流入するようにする。貫通部(100a)の位置に対応してガスケット(730)上にガスケットホール(732)が形成され、ガスケットホール(732)の位置に対応してサクションリードプレート(750)上に可変リード(752)が形成される。可変リード(752)の位置に対応してバルブプレート(710)に可変リードホール(752a)を形成することができる。
【0071】
ガスケットホール(732)は、貫通部(100a)の位置に対応する位置に円形に形成されるが、ガスケット(730)上に貫通形成される。ただし、ガスケットホール(732)の形状は、冷媒が可変リード(752)側に伝達されるようにする任意の形態を有することができる。
【0072】
吸入室圧力維持空間(712)は、冷媒の移動時に可変リード(752)が冷媒圧によって変形され、ガスケットホール(732)を開放したときに可変リード(752)の流動空間になる一種の収容空間である。吸入室圧力維持空間(712)は、バルブプレート(710)の表面から凹状に形成され、サクションリードプレート(750)に向かう板面上に形成される。また、吸入室圧力維持空間(712)は、冷媒を第2オリフィスホールに供給する中間流路の一部を形成する一方、可変リード(752)の変位量を制限するリテーナーとしても機能することになる。したがって、吸入室圧力維持空間(712)は、可変リード(752)が十分に収容できるほどの形状を有する必要があり、その深さは可変リードの厚さ及び供給される冷媒の種類、作動圧力及び流量に応じて適切に選択することができる。
【0073】
第1オリフィスホール(751)は、可変リード(752)が配置される空間として定義される。第1オリフィスホール(751)は、サクションリードプレート(750)の一部を切開して形成され、その内部に可変リード(752)が配置される。上述したように、可変リード(752)は、ガスケットホール(732)より大きく形成されるので、冷媒は可変リードが閉じた状態では、可変リードホール(752a)を介して流れるようになり、可変リードが開放された状態では、第1オリフィスホール(751)全体を通して流れるようになる。
【0074】
第2オリフィスホールであるバルブプレートの第2貫通ホール(716)は吸入室(310)と連通することができる位置に形成される。これによって、第1オリフィスホール(751)→吸入室圧力維持空間(712)→第2オリフィスホールであるバルブプレートの第2貫通ホール(716)→吸入室につながる冷媒排出流路が定義される。
【0075】
本発明の第1実施例の可変リード(752)の作動方式は、制御室の圧力である制御圧(Pc)が吸入圧(Ps)よりも小さい場合には、図9のように、可変リード(752)が閉じている。この時、本発明の第1実施例の可変リード(752)には、可変リードホール(752a)が形成されていないように設けることができる。一方、制御圧(Pc)が吸入圧(Ps)よりも大きい場合、図10に詳しく示したように、可変リード(752)が矢印の方向に開放されて冷媒が排出される。本発明は、可変リード(752)が、図9図10に図示した形態のほか、可変リードホール(752a)を備えるように設けられることは、前述した通りである。
【0076】
本実施例で前述した流路のほか、他の形態の冷媒流路を有することができる。駆動軸(230)の内部に中空流路(232)が形成される。中空流路(232)は、クランク室内に流入したオイルを排出するためのオイル排出流路の一部であることができ、したがって、クランク室内の冷媒が中空流路(232)の内部に流入することができる。このように流入した中空流路(232)は、第1実施例と同一の緩衝空間(110)内に流入する。
【0077】
緩衝空間(110)内に流入した冷媒は、シリンダーブロック(100)の端部に形成される連通溝(100b)を介して、ガスケットホール(732)に流入した後、上述したような冷媒排出流路を介して吸入室に流入することができる。
【0078】
一方、貫通部(100a)と中空流路(232)の両方が形成され、クランク室内の冷媒の一部は貫通部(100a)に沿って、他の一部は中空流路(232)及び連通溝(100b)に沿って、それぞれ第1オリフィスホール(751)に流入することができる。
【0079】
前述した流路の場合、いずれも冷媒の流路上に緩衝空間(110)が配置されている。前記緩衝空間(110)は前記シリンダーブロック(100)の一側端部と前記バルブアセンブリ(700)によって定義される空間として吸入室圧力維持空間(712)の内部容積に比べて相当大きい容積を有するように形成される。従って、緩衝空間に移動した冷媒は膨張するようになり、冷媒の圧力を低くすることができる、それと共に、吸入室に過度に冷媒が排出されれば、吸入圧が上昇するようになり、これはもう1つの効率低下の原因になり得るが、前記緩衝空間を備えることによって吸入室の過度な圧力上昇も軽減できるようになる。特に、予め存在するオイル分離流路を冷媒排出流路の一部として利用することができるので、製造工程をより節減することができ、冷媒が供給される流路がさらに拡張されるように設けることができるので、クランク室の冷媒がより円滑に第1オリフィスホール(751)に流入することができる。
【0080】
ここで、可変リード(752)は、上述した図4乃至図8に示されたもののうち、任意のものを活用することができる。
【0081】
以上で説明したような特徴を有する本発明の側面によると、可変リードの開きが制御圧と吸入圧の差によって行われる場合、吸入圧と吸入圧の可変リードに対する加圧力の間の差圧が発生しないようにして、吸入圧と吸入圧の可変リードに対する加圧力の差によって発生する可変リードの開き遅延現象を防止して、不要な冷媒ガスの流出を最小化することができる。したがって、冷媒ガスの損失量が減少するので、コンプレッサーの効率が向上する効果がある。
【0082】
このように、本発明は、記載された実施例に限定されるものではなく、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく様々な修正及び変形が可能であることは、この技術の分野における通常の知識を有する者にとって自明である。したがって、そのような修正例又は変形例は、本発明の請求の範囲に属するというべきである。
【符号の説明】
【0083】
10 斜板式コンプレッサー
100 シリンダーブロック
100a 貫通部
100b 連通溝
110 緩衝空間
112 ピストン
130 連結部
140 シュー
200 フロントハウジング
210 プーリ
230 駆動軸
232 中空流路
250 クランク室
300 リアハウジング
310 吸入室
330 吐出室
400 ローター
500 斜板
600 ヒンジ
700 バルブアセンブリ
710 バルブプレート
711 吐出孔
712 吸入室圧力維持空間
715 第1貫通ホール
716 第2貫通ホール
730 ガスケット
732 ガスケットホール
750 サクションリードプレート
751 第1オリフィスホール
752 可変リード
752a 可変リードホール
754 冷媒ホール
800 吐出アセンブリ
810 吐出リード
812 吐出リードプレート
820 吐出ガスケット
822 リテーナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14