(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】電動弁、および、それを備える冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240628BHJP
F16K 47/02 20060101ALI20240628BHJP
F16K 27/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F16K47/02 D
F16K27/02
(21)【出願番号】P 2023093869
(22)【出願日】2023-06-07
(62)【分割の表示】P 2019147593の分割
【原出願日】2019-08-09
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 一也
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】松尾 拓也
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/230159(WO,A1)
【文献】特開平11-325658(JP,A)
【文献】特開2007-107623(JP,A)
【文献】特開2019-23484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/05
F16K 27/02,47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通路に接続される第1のポートと、第2の通路に接続される第2のポートとを有し、該第1のポートおよび該第2のポートに連通する弁ポートを有し、
前記弁ポートは円筒からなるオリフィスにより形成され、該弁ポートに近接または離間し、開口面積を制御する弁体を含んでなる弁体ユニットを移動可能に収容する収容部を備える弁本体部と、
前記弁体ユニットに、前記弁体の先端部と前記弁ポートの周縁との間を通過する流体の流量を調整するように、前記弁ポートの開口面積を制御する動作を行わせる弁駆動部と、を備え、
弁座には、前記弁ポートおよび該弁ポートの前記弁体の中心軸線方向の弁駆動部と反対側に、弁ポートに連通する拡大部が形成され、さらに該弁座とは別体に、該弁座の前記弁体の中心軸線方向の弁駆動部とは反対側には、整流用段付
流路を有する整流部材を備え、
前記整流部材の整流用段付
流路は、前記弁座の拡大部に向き合って
円筒からなる拡大
孔が形成され、前記整流用段付
流路の拡大
孔の弁
ポート方向とは反対側に前記整流用段付
流路の拡大部の内径より小さな内径の縮小
孔が形成され、
前記縮小孔の中心軸方向に沿った長さは前記弁ポートのオリフィスの中心軸方向の長さよりも大なる値に設定されたことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記弁座の拡大部の前記弁ポートとは反対側の開口に、前記弁ポートとは反対側に広がる形状のテーパ部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記弁座の前記弁駆動部と反対側の端部において、前記弁座の上面と平行な平面にて構成されるとともに、前記テーパ部と接続する平面部が形成されることを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記弁座の拡大部は、円筒からなるとともに前記弁ポートのオリフィスとテーパ面で接続し、前記弁座の拡大部の中心軸線方向の長さが前記テーパ面の中心軸線方向の長さより大きいことを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項5】
前記弁体の最下降時において、前記弁座の弁ポートの上面から弁駆動部とは反対側への弁体の先端までの弁座への差込長さが、前記整流部材の整流用段付
流路の拡大
孔における前記弁体の中心軸線に沿った長さと、前記弁座の弁ポートの上面から前記弁座の拡大部の弁駆動部とは反対側の開口端面までの長さとの和の値以下に設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれかに記載の電動弁。
【請求項6】
前記弁体の最下降時において、前記弁座の弁ポートの上面から駆動部側とは反対側への弁体の先端までの弁座への差込長さが、前記弁座の弁ポートの上面から前記弁座の拡大部の駆動部側とは反対側の開口端面までの長さ以下に設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれかに記載の電動弁。
【請求項7】
前記整流部材の整流用段付
流路の縮小部の
流路面積は、弁ポートの内
側の面積以上の値に設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項
6のうちいずれかに記載の電動弁。
【請求項8】
前記整流部材は、前記弁座の拡大部が開口する端面に当接されるフランジ部と、該フランジ部に連なる円筒部とを有し、前記第2のポートを形成する管路の内周面と該円筒部の外周面との間に隙間が形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項7のうちいずれかに記載の電動弁。
【請求項9】
蒸発器と、圧縮機、および、凝縮器とを備え、
請求項1乃至請求項
8のうちのいずれかに記載の電動弁が、前記凝縮器の出口と前記蒸発器の入口との間に配される配管に設けられることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁、および、それを備える冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルシステムにおいては、膨張弁として電動弁が、凝縮器と蒸発器との間に配されている。近年、冷凍サイクルシステムにおいてコンプレッサおよびファンの騒音が低減されるにつれて配管内および電動弁内を通過する冷媒の流体通過音が顕著となり、冷媒の通過速度が比較的速い電動弁の静粛性が要望されている。そのような電動弁は、例えば、特許文献1における
図11に示されるように、冷媒の通過音の音圧レベルを低減させるべく、整流部が、弁本体の弁ポートに隣接して第2管継手内に設けられるものが提案されている。そのような弁本体の弁ポートは、第1ポートと、第1テ―パー部と、第2ポートとにより形成されている。その際、第2ポートの内径は、第1ポートの内径よりも大に設定されている。また、第2ポートの内径は、円筒状の整流部の内径よりも大に設定されている。
【0003】
斯かる構成において、電動弁の弁本体に接続される第1管継手から第1ポートに流入された冷媒の流速は、第2ポートの内径が第1ポートの内径よりも大に設定されているので減速され、その冷媒が整流部を介して第2管継手内に排出される。その際、冷媒の通過音の音圧レベルが低減される。
【0004】
一方、第2管継手内の整流部を通過し弁本体の弁ポートに向けて流入した冷媒は、先ず、整流部の内径が第2管継手の内径よりも小なので整流部により整流化され、次に、弁本体の第2ポートに流入した冷媒の流速は、第2ポートの内径が円筒状の整流部の内径よりも大に設定されているので減速される。その際、第2ポートを通過する冷媒の通過音の音圧レベルがさらに低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、冷媒が第1管継手から弁本体の第1ポートを通じて第2ポートに流入される場合、第2ポートから整流部までの間で冷媒の流速が十分に減速されない場合がある。このような場合、弁本体の第2ポートにおける冷媒の流れ方向に沿う長さを比較的大きく設定することも考えられる。しかし、このような対策は、弁本体の第2ポートの加工難度が高くなるので得策ではない。
【0007】
以上の問題点を考慮し、本発明は、電動弁、および、それを備える冷凍サイクルシステムであって、電動弁内で発生する流体通過音の音圧レベルを抑制することができる電動弁、および、それを備える冷凍サイクルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明に係る電動弁は、第1の通路に接続される第1のポートと、第2の通路に接続される第2のポートとを有し、第1のポートおよび第2のポートに連通する弁ポートを有し、弁ポートに近接または離間し、開口面積を制御する弁体を含んでなる弁体ユニットを移動可能に収容する収容部を備える弁本体部と、弁体ユニットに、弁体の先端部と弁ポートの周縁との間を通過する流体の流量を調整するように、弁ポートの開口面積を制御する動作を行わせる弁体ユニット駆動機構と、を備え、弁体の先端部に向き合う第2ポートに隣接した弁座には、弁ポートおよび弁ポートの第2のポート側に弁ポートに連通する拡大部が形成され、さらに弁座とは別体に、 弁座の第2のポート側には、弁座の拡大部に向き合い、第2のポートに向かうほど内径が小さくなる整流用段付孔を有する整流部材と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
整流部材の整流用段付孔は、弁座の拡大部に向き合って内径の大きい拡大部が形成され、第2のポートに向き合って整流用段付孔の拡大部の内径より小さな内径の縮小部が形成され、整流部材の整流用段付孔の拡大部の内径が、弁座の拡大部の内径以上の値に設定されてもよい。
【0010】
整流部材の整流用段付孔は、弁座側から第2のポート側へ向けて内径が縮小する2段以上の内径の異なる孔が共通の中心軸線上に形成されてもよい。
【0011】
弁体の最下降時において、弁座の弁ポートの上面から第2のポート側への弁体の先端までの弁座への差込長さが、整流部材の整流用段付孔の拡大部における第2のポートの中心軸線に沿った長さと、弁座の弁ポートの上面から弁座の拡大部の第2のポート側の開口端面までの長さとの和の値以下に設定されてもよい。
【0012】
整流部材の整流用段付孔の縮小部の最小内径は、弁ポートの内径以上の値に設定されてもよい。
【0013】
また、整流部材の整流用段付孔の拡大部と縮小部との境界部分には、テーパ面が形成されてもよい。
【0014】
整流部材は、弁座の拡大部が開口する端面に当接されるフランジ部と、フランジ部に連なる円筒部とを有し、第2のポートを形成する管路の内周面と円筒部の外周面との間に隙間が形成されてもよい。
【0015】
そして、本発明に係る冷凍サイクルシステムは、蒸発器と、圧縮機、および、凝縮器とを備え、上述の電動弁が、凝縮器の出口と蒸発器の入口との間に配される配管に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電動弁、および、それを備える冷凍サイクルシステムによれば、弁体の先端部に向き合う第2のポートに隣接した弁座には、弁ポートおよび弁ポートの第2のポート側に弁ポートに連通する拡大部が形成され、さらに弁座と別体に、弁座の第2のポート側に整流部材を設け、この整流部材には、弁座の拡大部に向き合って、内径の大きな拡大部が形成され、第2のポートに向かうほど内径が小さくなる整流用段付孔を有する。このように弁座の拡大部に向き合うように整流部材の拡大部を弁座と別体に整流部材を備えることで、加工の難易度を高くせずに、拡大部の長さを長くすることができ、この長くした拡大部により流体の流速を十分に低下させることが可能となる。さらに整流部材が第2のポートに向かうほど内径が小さくなる整流用段付孔を有することで、これらにより電動弁内で発生する流体通過音の音圧レベルを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本発明に係る電動弁の一例の構成を示す断面図である。
【
図3】本発明に係る電動弁の一例が適用される冷凍サイクルシステムの一例の構成を概略的に示す図である。
【
図4】
図1に示される整流部材における動作説明に供される部分断面図である。
【
図5】(A)、(B)、および、(C)は、それぞれ、本発明に係る電動弁の一例に用いられる整流部材の他の一例を示す部分断面図である。
【
図6】(A)、(B)、および、(C)は、それぞれ、本発明に係る電動弁の一例に用いられる整流部材のさらなる他の一例を示す部分断面図である。
【
図7】(A)、および、(B)は、それぞれ、本発明に係る電動弁の一例に用いられる整流部材のさらなる他の一例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図2は、本発明に係る電動弁の一例の構成を、配管用パイプとともに示す。
【0019】
本発明に係る電動弁の一例としての電動弁3は、例えば、
図3に示されるように、冷凍サイクルシステムの配管における後述する冷房運転時における室外熱交換器6の出口と室内熱交換器2の入口との間に配置されている。電動弁3は、冷房運転時、後述する接続用パイプ32で、一次側配管Du1に接合されており、接続用パイプ34で二次側配管Du2に接合されている。一次側配管Du1は、室外熱交換器6の出口と電動弁3とを接続し、二次側配管Du2は、室内熱交換器2の入口と電動弁3とを接続するものとされる。室内熱交換器2の出口と室外熱交換器6の入口との間には、室内熱交換器2の出口に接合される配管Du3と、流路切換弁8と、室外熱交換器6の入口に接合される配管Du6とが配されている。また、配管Du4、および、配管Du5により、圧縮機4が、流路切換弁8に接合されている。配管Du3の他端は、流路切換弁8のポート8bに接合されている。配管Du6の他端は、流路切換弁8のポート8dに接合されている。配管Du4の一端は、流路切換弁8のポート8cに接合され、配管Du4の他端は、圧縮機4の吸入口に接合されている。配管Du5の一端は、流路切換弁8のポート8aに接合され、配管Du5の他端は、圧縮機4の吐出口に接合されている。冷房運転時、ポート8aとポート8dとが連通し、ポート8bとポート8cとが連通している。これにより、冷房運転時、冷凍サイクルシステムにおける冷媒が、例えば、
図3に示される矢印Rの示す方向に沿って循環され、室外熱交換器6が凝縮器として、室内熱交換器2が蒸発器として機能することとなる。なお、冷房運転時、電動弁3は、接続用パイプ32で、一次側配管Du1に接合されており、接続用パイプ34で二次側配管Du2に接合されている形態について説明したが、斯かる例に限られることなく、例えば、冷房運転時、電動弁3は、接続用パイプ34で、一次側配管Du1に接合され、接続用パイプ32で二次側配管Du2に接合されていてもよい。
【0020】
一方、暖房運転時、流路切換弁8のポート8aとポート8bとが連通し、ポート8cとポート8dとが連通するように、流路切換弁8が切り換えられる。これにより、暖房運転時、冷凍サイクルシステムにおける冷媒が、例えば、
図3に示される矢印Fの示す方向に沿って循環され、室内熱交換器2が凝縮器として、室外熱交換器6が蒸発器として機能することとなる。なお、図示が省略される制御部により、圧縮機4および電動弁3は、駆動制御され、流路切換弁8は、切り換え制御される。
【0021】
電動弁は、
図2に示されるように、円筒状のローターケース20内に配され後述する弁体ユニットを駆動する弁駆動部と、ローターケース20の端部に連結され弁体23の先端部が近接または離間される弁ポートを有する弁座31Vを備えた弁本体部31と、弁本体部31内に配され弁座31Vの弁ポートに近接または離間する弁体23を含んでなる弁体ユニットと、を含んで構成されている。
【0022】
弁駆動部は、後述する弁体ユニットを昇降動させる雄ねじ軸14と、雄ねじ軸14と嵌め合わされる雌ねじ12FMSが形成された雌ねじ部12Bを有し、弁本体部31に固定され弁体ユニットを昇降動可能に案内する案内支持部12と、雄ねじ軸14のガイド軸部14Aに固定され回転可能に支持され着磁されたロータ10と、ローターケース20の外周部に配されロータ10を回転させるステータコイル40と、を主な要素として含んで構成されている。
【0023】
案内支持部12は、弁体ユニットの一部を構成する円筒状の弁体ケース19を昇降動可能に案内する案内面を内周部に有している。
【0024】
雄ねじ軸14は、雌ねじ部12Bの雌ねじ12FMSに嵌め合わされる雄ねじ部14Bと、雄ねじ部14Bの下端に形成され弁体ケース19の貫通孔19a周縁にワッシャ(不図示)を介して係合される連結部14Cと、雄ねじ部14Bの上端に形成されるガイド軸部14Aとから構成される。ガイド軸部14Aは、ローターケース20内の頂部から中心軸線に沿って案内支持部12に向けて突出する円筒部20C内に回動可能に支持される。
【0025】
円筒部20Cの外周部には、可動ストッパ片11Bを回転させながら円筒部20Cの中心軸線方向に移動するように案内する螺旋ガイド部11が形成されている。可動ストッパ片11Bの一端は、ロータ10の突起部に係止されている。また、円筒部20Cの最上端部および最下端部には、それぞれ、可動ストッパ片11Bの回転止め20USおよび20LSが設けられている。これにより、可動ストッパ片11Bが、回転止め20USおよび20LSに当接されるとき、可動ストッパ片11Bが、後述する弁体23の所定の弁閉位置、および、所定の弁開(全開)位置に対応した所定の回転角度で停止される。
【0026】
なお、上述の弁駆動部は、図示が省略される駆動制御部により、ステータコイル40へ供給される駆動パルス信号に基づいて制御される。
【0027】
弁体ユニットは、後述する弁座31Vの弁ポート31Vaに近接または離間するニードル状の弁体23と、雄ねじ軸14の連結部14Cの張出部14Fを、ワッシャ(不図示)と協働して弁体ケース19の開口端部19Tの内周縁に係合させる円柱状の樹脂製のばね受け部材24と、ばね受け部材24の張出部24Tと弁体23の一端部のばね受け用平坦部との間に配され、双方を互いに離隔する方向に付勢するコイルスプリング22と、ばね受け部材24、コイルスプリング22、および、弁体23の一端部を収容する円筒状の弁体ケース19と、を主な要素として含んで構成されている。
【0028】
円筒状の弁体ケース19の弁座31Vに近い一端は、弁体23の一端の外周部を固着することにより、閉塞されている。円筒状の弁体ケース19の他方は、雄ねじ軸14の連結部14Cにおけるワッシャを位置決めする縮径部が通過する孔19aを有する開口端部19Tとなっている。従って、ワッシャは、弁体ケース19の開口端部19Tの内周縁と張出部14Fの一方の端面との間に配されることとなる。
【0029】
円筒状の弁体ケース19の外周部は、上述の案内支持部12の案内面に摺接され昇降動可能に支持されている。これにより、弁体23の他端の最先端(ニードル部)が、弁座31Vの弁ポート31Vaに挿入されるとともに、弁体23のニードル部の外周面が弁ポート31Vaの開口部周縁に当接した後、引き続き雄ねじ軸14が下降せしめられるとき、コイルスプリング22が所定量、圧縮される。それによって、コイルスプリング22のばね力により弁体23のニードル部23Eの外周面が弁ポート31Vaの開口部周縁に押し付けられる。これにより、弁座31Vの弁ポート31Vaが、閉塞される。尚、弁体の最下降状態時に、弁体が弁ポートの開口周縁に当接させないことで、弁体の最下降状態時においても微小な流量を得るようにしてもよい。
【0030】
弁本体部31は、金属材料、例えば、真鍮、ステンレス鋼、アルミニウム合金、または、樹脂材料等により作られ、案内支持部12における雌ねじ部12Bの下方となる下端、弁体23の他端および円筒状の弁体ケース19を収容する弁体収容部31Aを内側に有している。弁体収容部31Aには、弁体23の他端が弁ポート31Vaに向けて突出している。また、弁体収容部31Aには、弁体23の中心軸線に対し略直交する軸線上に第1の通路としての接続用パイプ32の一端が接続される第1のポート32Pと、弁体23の中心軸線と共通の軸線上に第2の通路としての接続用パイプ34の一端が接続される、第2のポート34Pに隣接した弁座31Vとが形成されている。
【0031】
弁座31Vは、
図1に部分的に拡大されて示されるように、弁体23の中心軸線と共通の軸線上に弁ポート31Vaと、弁ポート31Vaの第2のポート34P側に弁ポート31Vaに連通する拡大部31Vbとを有している。弁ポート31Vaの内周縁と隣接する拡大部31Vbの内周縁とは、環状のテーパ面31Vtにより結合されている。
【0032】
弁座31Vの拡大部31Vbが開口する端面には、接続用パイプ34の第2のポート34Pに挿入された金属製の整流部材36の上端面が当接されている。整流部材36の外周面は、接続用パイプ34の内周面に固定されている。
【0033】
円筒状の整流部材36は、
図1に拡大されて示されるように、弁体23の中心軸線と共通の軸線上に整流用段付孔36Hを有している。整流用段付孔36Hは、整流部材36の中心軸線と同心上に形成される上述の拡大部31Vbに対向する拡大部36Aと、拡大部36Aの第2のポート34P側に、拡大部36A に連通する縮小部36Bとから構成される。拡大部36Aの内径D3は、例えば、弁ポート31Vaの内径D1および縮小部36Bの内径D4よりも大であって拡大部31Vbの内径D2以上の値に設定されている。また、縮小部36Bの内径D4は、弁ポート31Vaの内径D1以上の値に設定されている。拡大部36Aにおける中心軸線に沿った長さL3は、中心軸線に沿ったテーパ面31Vtから拡大部31Vbの端面までの長さL2よりも大となる値に設定されている。縮小部36Bの中心軸線に沿った長さL6は、弁ポート31Vaのオリフィス長さL1よりも大なる値に設定されている。なお、
図1に示されるように、弁座31Vの弁ポート上面から整流部材36の拡大部36Aと縮小部36Bとの境界までの距離Laは、例えば、弁座31Vの弁ポート上面から整流部材36の端面までの距離Lbに対し約91%以下となるように設定されている。この比率は、例えば、冷媒を実際に弁ポート31Va、拡大部31Vb、整流用段付孔36Hを通じて流し、その冷媒の通過音を検出しながらその通過音の音圧レベルが最も小さくなるように設定されている。
【0034】
斯かる構成において、弁駆動部のステータコイル40が駆動制御部からの駆動パルス信号により制御され、弁体23が昇降動せしめられることにより、接続用パイプ32または接続用パイプ34を通じて供給される流体としての冷媒が、矢印Fまたは矢印Rの示す方向に沿って弁座31Vの弁ポート31Vaを形成する内周面と弁体23のニードル部23Eとの間に形成される隙間流路を通じて所定の流量で通過することとなる。
【0035】
このように整流部材36における拡大部36Aの内径D3が拡大部31Vbの内径D2以上の値に設定され、拡大部36Aにおける中心軸線に沿った長さL3は、中心軸線に沿ったテーパ面31Vtから拡大部31Vbの端面までの長さL2よりも大となる値に設定されることにより、拡大部31Vbにおける減速の領域が拡大されるのでキャビテーションの破裂が抑制されるとともに冷媒の通過音の音圧レベルが抑制される。その結果、
図4に示されるように、例えば、弁ポート31Vaを通じて流入された流れST1は、拡大部31Vbにより減速された流れST2となり、さらに、弁座31V側で減速しきれない流れST3が、整流部材36側の流路(拡大部36A)によって減速し、キャビテーションの破裂は発生するが流速が減速する距離が長い為、その影響が整流部材36の縮小部36Bまで到達しづらくなる。そして、流れST4は、整流された後、その放出された流れST5は、第2のポート34P内に排出される。
【0036】
縮小部36Bの内径D4が、弁ポート31Vaの内径D1以上の値であって、拡大部36Aの内径D3よりも小に設定されることにより、縮小部36Bにおける乱れた冷媒の流れが整流化されるので冷媒の通過音の音圧レベルが抑制される。また、縮小部36Bの中心軸線に沿った長さL6は、弁ポート31Vaのオリフィス長さL1よりも大なる値に設定されることにより、冷媒の流れが安定的に整流される。
【0037】
さらに、弁座31Vの弁ポート上面から拡大部31Vbの開口端面までの長さL4と拡大部36Aにおける長さL3との和の値が、弁座31Vの弁ポート上面から弁体23のニードル部23Eの下端までの長さ、即ち、弁座31内へのニードル部23Eの差込長さL5の値以上に設定されているので微少流量制御時でも、ニードル部23Eの先端よりも先に(下側)整流部材36の拡大部36Aが形成されているのでニードル部23Eの位置によらず、冷媒の通過音の音圧レベルが抑制される。
【0038】
図5(A),(B)、および、(C)は、それぞれ、本発明に係る電動弁の一例に用いられる整流部材の他の一例を示す。なお、
図5(A),(B)、および、(C)、ならびに、後述する
図6(A)、(B),および、(C)、
図7(A)および(B)において、
図1に示される例における構成要素と同一の構成要素について同一の符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0039】
図5(A)において、円筒状の金属製の整流部材46は、弁体23の中心軸線と共通の軸線上に整流用段付孔46Hを有している。整流用段付孔46Hは、整流部材46の中心軸線と同心上に形成される拡大部31Vbに対向する拡大部46Aと、拡大部46Aに連通する縮小部46Bとから構成される。拡大部46Aと縮小部46Bとの境界部分には、テーパ面46tが形成されている。拡大部46Aの内径と拡大部31Vbの内径とは同一の値に設定されている。拡大部46Aの内径は、縮小部46Bの内径よりも大に設定されている。なお、拡大部46Aおよび縮小部46Bの中心軸線に沿った長さは、それぞれ、
図1に示される例と同様に設定されている。
【0040】
図5(B)において、円筒状の金属製の整流部材48は、弁体23の中心軸線と共通の軸線上に整流用段付孔48Hを有している。整流用段付孔48Hは、整流部材48の中心軸線と同心上に形成される拡大部31Vbに対向する拡大部48Aと、拡大部48Aに連通する縮小部48Bとから構成される。拡大部46Aと縮小部46Bとの境界部分には、
図5(A)に示されるような、テーパ面が形成されていない。拡大部48Aの内径と拡大部31Vbの内径とは同一の値に設定されている。拡大部48Aの内径は、縮小部48Bの内径よりも大に設定されている。なお、拡大部48Aおよび縮小部48Bの中心軸線に沿った長さは、それぞれ、
図1に示される例と同様に設定されている。
【0041】
図5(C)において、円筒状の金属製の整流部材50は、弁体23の中心軸線と共通の軸線上に整流用段付孔50Hを有している。整流用段付孔50Hは、整流部材50の中心軸線と同心上に形成される拡大部31Vbに対向する拡大部50A1と、第2のポート34P内に開口する開口端を有する縮小部50Bと、拡大部50Aと縮小部50Bとを連結するテーパ部50A2とから構成される。拡大部50A1の内径と拡大部31Vbの内径とは同一の値に設定されている。拡大部50A1の内径は、縮小部50Bの内径よりも大に設定されている。なお、拡大部50A1および縮小部50Bの中心軸線に沿った長さは、それぞれ、
図1に示される例と同様に設定されている。
【0042】
図6(A)、(B)、および、(C)は、それぞれ、本発明に係る電動弁の一例に用いられる整流部材のさらなる他の一例を示す。
図6(A)、(B)、および、(C)に示される整流部材52、54、および、56は、それぞれ、複数段の整流用段付孔を有している。これは、整流部材内において冷媒の流れの剥離点を増やすことにより渦の発生を起こし、それによって、整流部材内の冷媒の通過音の音圧レベルを低減させるものとされる。
【0043】
図6(A)において、円筒状の金属製の整流部材52は、弁体23の中心軸線と共通の軸線上に2段の整流用段付孔52Hを有している。整流用段付孔52Hは、整流部材52の中心軸線と同心上に形成される拡大部31Vbに対向する第1の拡大部52A1と、第1の拡大部52A1に連通する第2の拡大部52A2と、拡大部52A2に連通する縮小部52Bとから構成される。第1の拡大部52A1の内径は、拡大部31Vb、第2の拡大部52A2および縮小部52Bの内径よりも大に設定されている。第2の拡大部52A2の内径は、縮小部52Bの内径よりも大に設定されている。
【0044】
図6(B)において、円筒状の金属製の整流部材54は、弁体23の中心軸線と共通の軸線上に3段の整流用段付孔54Hを有している。整流用段付孔54Hは、整流部材54の中心軸線と同心上に形成される拡大部31Vbに対向する第1の拡大部54A1と、第1の拡大部54A1に連通する第2の拡大部54A2と、拡大部52A2に連通する第3の拡大部54A3と、第3の拡大部54A3に連通する縮小部54Bとから構成される。第1の拡大部54A1の内径は、拡大部31Vb、第2の拡大部54A2、第3の拡大部54A3、および縮小部54Bの内径よりも大に設定されている。第2の拡大部54A2および第3の拡大部54A3の内径は、縮小部54Bの内径よりも大に設定されている。
【0045】
図6(C)において、円筒状の金属製の整流部材56は、弁体23の中心軸線と共通の軸線上に整流用段付孔56Hを有している。整流用段付孔56Hは、整流部材56の中心軸線と同心上に形成される拡大部31´Vbに対向する第1の拡大部56A1と、第1の拡大部56A1に連通する第2の拡大部56A2と、第2の拡大部56A2に連通する縮小部56Bとから構成される。第1の拡大部56A1の内径は、拡大部31´Vbの内径と同一に設定されている。その際、弁ポート31´Vaに連通する弁座31´の拡大部31´Vbの開口端周縁には、面取りが施されている。第1の拡大部56A1の内径は、第2の拡大部56A2および縮小部56Bの内径よりも大に設定されている。第2の拡大部52A2の内径は、縮小部56Bの内径よりも大に設定されている。第1の拡大部56A1と第2の拡大部56A2との境界部分、および、第2の拡大部56A2と縮小部56Bとの境界部分には、それぞれ、環状のテーパ面が形成されている。
【0046】
図7(A)および(B)は、それぞれ、本発明に係る電動弁の一例に用いられる整流部材のさらなる他の一例を示す。
図7(A)および(B)に示される整流部材58および60は、それぞれ、接続用パイプ34の開口端部に炉中ろう付により、固定されるものとされる。
【0047】
図7(A)において、円筒状の金属製の整流部材58は、弁座31Vの拡大部31Vbが開口する端面と接続用パイプ34の開口端面とにより挟持されるフランジ部58Fと、フランジ部58Fに連なる円筒部58Cとを有する。整流部材58は、弁体23の中心軸線と共通の軸線上に整流用段付孔58Hを内側に有している。円筒部58Cの外周面と接続用パイプ34の内周面との間には、所定の隙間CLが形成されている。これにより、炉中ろう付によって整流部材58が接続用パイプ34の開口端部に固定される場合、ろうが、弁ポート31Vaおよび整流部材58の整流用段付孔58H内に浸入する虞がない。
【0048】
整流用段付孔58Hは、整流部材58の中心軸線と同心上に形成される拡大部31Vbに対向する拡大部58Aと、拡大部58Aに連通する縮小部58Bとから構成される。拡大部58Aと縮小部58Bとの境界部分には、テーパ面58tが形成されている。拡大部58Aの内径と拡大部31Vbの内径とは同一の値に設定されている。拡大部58Aの内径は、縮小部58Bの内径よりも大に設定されている。なお、拡大部58Aおよび縮小部58Bの中心軸線に沿った長さは、それぞれ、
図1に示される例と同様に設定されている。
【0049】
図7(B)において、円筒状の金属製の整流部材60は、弁座31Vの拡大部31Vbが開口する端面と接続用パイプ34の開口端面とにより挟持されるフランジ部60Fと、フランジ部60Fに連なる円筒部60Cとを有する。整流部材60は、弁体23の中心軸線と共通の軸線上に整流用段付孔60Hを内側に有している。円筒部60Cの外周面と接続用パイプ34の内周面との間には、所定の隙間CLが形成されている。これにより、炉中ろう付によって整流部材60が接続用パイプ34の開口端部に固定される場合、ろうが、弁ポート31Vaおよび整流部材60の整流用段付孔60H内に浸入する虞がない。
【0050】
3段の整流用段付孔60Hは、整流部材60の中心軸線と同心上に形成される拡大部31Vbに対向する第1の拡大部60A1と、第1の拡大部60A1に連通する第2の拡大部60A2と、拡大部60A2に連通する第3の拡大部60A3と、第3の拡大部60A3に連通する縮小部60Bとから構成される。第1の拡大部60A1の内径は、拡大部31Vb、第2の拡大部60A2、第3の拡大部60A3、および縮小部60Bの内径よりも大に設定されている。第2の拡大部60A2および第3の拡大部60A3の内径は、縮小部60Bの内径よりも大に設定されている。
【符号の説明】
【0051】
23 弁体
23E ニードル部
31 弁本体部
31A 弁体収容部
31V、31´V 弁座
31Vb 拡大部
32 接続用パイプ
32P 第1のポート
34 接続用パイプ
34P 第2のポート
36、46、48、50、52、54、56、58、60 整流部材
36A 拡大部
36B 縮小部
36H,46H,48H、50H、52H、54H、56H、58H、60H 整流用段付孔