(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】圃場水管理システム及び給水栓制御装置
(51)【国際特許分類】
A01G 25/00 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
A01G25/00 501Z
(21)【出願番号】P 2023104796
(22)【出願日】2023-06-27
(62)【分割の表示】P 2019232248の分割
【原出願日】2019-12-24
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2018243423
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【氏名又は名称】河崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】森田 仁
(72)【発明者】
【氏名】末吉 康則
(72)【発明者】
【氏名】陳 巨壹
(72)【発明者】
【氏名】藤本 好宏
(72)【発明者】
【氏名】武内 利樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 雅司
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-178940(JP,A)
【文献】特開2012-080622(JP,A)
【文献】特開2018-074459(JP,A)
【文献】特開2013-096636(JP,A)
【文献】特開平05-102900(JP,A)
【文献】特開2015-005954(JP,A)
【文献】特開2017-193914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/00-29/00
E02B 9/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水栓と、
前記給水栓を作動させるアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する給水制御部と圃場水管理サーバと交信する通信部とを有する電子制御回路と、前記電子制御回路及び前記アクチュエータに給電する蓄電池とを備え、前記給水栓から灌漑用水を圃場に給水する給水栓制御装置と、
前記給水栓制御装置に対する遠隔操作情報が圃場管理者により設定入力される遠隔操作端末と、
前記遠隔操作端末と通信可能に接続され、前記遠隔操作端末から送信された前記遠隔操作情報を受信して、対応する給水栓制御装置を遠隔制御する圃場水管理サーバと、
を備えている圃場水管理システムであって、
前記電子制御回路は、前記蓄電池の電力消費を制限する省電力状態と、前記省電力状態から周期的にウェイクアップして前記圃場水管理サーバとの交信を含む制御動作を実行可能な動作状態との間で動作モードを切り替える給水栓電力管理部を備え、
前記給水栓電力管理部は、前記圃場水管理サーバから送信されたウェイクアップ周期に従って、前記電子制御回路のウェイクアップ周期を可変に設定するように構成され、
前記圃場水管理サーバは、前記電子制御回路のウェイクアップ周期を管理し、前記電子制御回路が前記省電力状態でなく前記動作状態であるときに、前記給水栓制御装置に給水栓開閉要求またはウェイクアップ周期更新要求を含む制御信号を発信するように構成されている圃場水管理システム。
【請求項2】
前記圃場水管理サーバは、前記給水栓制御装置から送信された前記蓄電池の残容量に基づいて前記給水栓電力管理部の前記ウェイクアップ周期の設定情報を更新するように構成されている請求項1記載の圃場水管理システム。
【請求項3】
前記給水栓制御装置は前記蓄電池を充電するソーラーセルをさらに備え、
前記圃場水管理サーバは、前記蓄電池の残容量情報に加えて日照情報、時刻情報の何れかの情報に基づいて前記給水栓電力管理部に設定された前記ウェイクアップ周期の設定情報を更新するように構成されている請求項1または2記載の圃場水管理システム。
【請求項4】
前記圃場水管理サーバは、前記遠隔操作端末から計画外の遠隔操作情報を受信した場合に、前記蓄電池の残容量にかかわらず前記給水栓電力管理部に設定された前記ウェイクアップ周期の設定情報をより短い値に更新するように構成されている請求項1から3の何れかに記載の圃場水管理システム。
【請求項5】
前記計画外の遠隔操作情報に、給水栓開閉要求またはウェイクアップ周期更新要求が含まれる請求項4記載の圃場水管理システム。
【請求項6】
前記圃場水管理サーバは、前記ウェイクアップ周期の設定情報をより短い値に更新した後に、前記遠隔操作端末から計画外の遠隔操作情報を所定時間受信しない場合に、前記ウェイクアップ周期の設定情報を更新前に戻す請求項4または5記載の圃場水管理システム。
【請求項7】
前記圃場水管理サーバは前記給水栓制御装置に時刻情報を送信し、前記給水栓電力管理部は前記時刻情報に基づいて前記ウェイクアップ周期及び時刻を設定する請求項1から6の何れかに記載の圃場水管理システム。
【請求項8】
前記給水栓電力管理部は、前記圃場水管理サーバから送信された前記ウェイクアップ周期の設定情報にかかわらず、前記蓄電池の残容量に基づいて前記ウェイクアップ周期を自動設定する自動設定部を備えている請求項1から5の何れかに記載の圃場水管理システム。
【請求項9】
請求項1から8の何れかに記載の圃場水管理システムに用いられ、前記給水栓を作動させるアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する給水制御部と圃場水管理サーバと交信する通信部とを有する電子制御回路と、前記電子制御回路及び前記アクチュエータに給電する蓄電池とを備え、前記給水栓から灌漑用水を圃場に給水する給水栓制御装置であって、
前記電子制御回路は、前記蓄電池の電力消費を制限する省電力状態と、前記省電力状態から周期的にウェイクアップして前記圃場水管理サーバとの交信を含む制御動作を実行可能な動作状態との間で動作モードを切り替える給水栓電力管理部を備え、
前記給水栓電力管理部は、前記圃場水管理サーバから送信されたウェイクアップ周期に従って、前記電子制御回路のウェイクアップ周期を可変に設定するように構成され、
前記給水栓電力管理部は、前記動作状態に移行した後の所定時間内に前記圃場水管理サーバからのアクセスが無い場合に、前記省電力状態に移行するように構成されている給水栓制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場水管理システム及び給水栓制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圃場への給水または圃場からの排水を制御するための変位機構を作動させる圃場用電動アクチュエータを備えた給水栓や排水栓が開示されている。これらの給水栓や排水栓を用いることにより、圃場水管理サーバを介して圃場への給水や圃場からの排水を遠隔制御することが可能になる。
【0003】
当該圃場用電動アクチュエータは、給水栓や排水栓を制御する制御装置であり、給水栓または排水栓を作動させる電動モータを備えたアクチュエータと、アクチュエータを制御するとともに圃場水管理サーバと交信する電子制御回路を備えた制御部を備えている。
【0004】
そして、商用電源設備から離隔した圃場では商用電源を利用するのが困難なため、制御部及びアクチュエータに給電する蓄電池と、蓄電池の充電状態の低下を回避するため充電用のソーラーセルを備えている。
【0005】
さらに、蓄電池の電力を無駄に消費することがないように、制御部は蓄電池の消費電力を制限する省電力状態と、省電力状態から周期的にウェイクアップして圃場水管理サーバとの交信を含む制御動作を実行可能な動作状態との間で動作モードを切り替えるように構成され、制御部は動作状態に切り替わった時に圃場水管理サーバとの交信、給水栓に対するアクチュエータの制御、水位の計測などを行なうように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、蓄電池の消耗を回避するために省電力状態と動作状態とを切り替える周期を長くすると、圃場水管理サーバから制御装置に対して緊急を要する指令を送信する際に少なくとも1周期分の遅延が生じることになる。
【0008】
また、省電力状態と動作状態とを切り替える周期を短くすると、圃場水管理サーバからの指令を受信する遅延時間が短くなるが、蓄電池の消耗が早まるという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、上述した問題に鑑み、蓄電池の消耗を回避しつつ、通信の遅延を緩和することができる圃場水管理システム及び給水栓制御装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明による圃場水管理システムの第一の特徴構成は、給水栓と、前記給水栓を作動させるアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する給水制御部と圃場水管理サーバと交信する通信部とを有する電子制御回路と、前記電子制御回路及び前記アクチュエータに給電する蓄電池とを備え、前記給水栓から灌漑用水を圃場に給水する給水栓制御装置と、前記給水栓制御装置に対する遠隔操作情報が圃場管理者により設定入力される遠隔操作端末と、前記遠隔操作端末と通信可能に接続され、前記遠隔操作端末から送信された前記遠隔操作情報を受信して、対応する給水栓制御装置を遠隔制御する圃場水管理サーバと、を備えている圃場水管理システムであって、前記電子制御回路は、前記蓄電池の電力消費を制限する省電力状態と、前記省電力状態から周期的にウェイクアップして前記圃場水管理サーバとの交信を含む制御動作を実行可能な動作状態との間で動作モードを切り替える給水栓電力管理部を備え、前記給水栓電力管理部は、前記圃場水管理サーバから送信されたウェイクアップ周期に従って、前記電子制御回路のウェイクアップ周期を可変に設定するように構成され、前記圃場水管理サーバは、前記電子制御回路のウェイクアップ周期を管理し、前記電子制御回路が前記省電力状態でなく前記動作状態であるときに、前記給水栓制御装置に発信するように構成されている点にある。
【0011】
蓄電池の残容量に基づいて電子制御回路のウェイクアップ周期が可変に設定されるため、蓄電池の消耗を回避しつつ、通信の遅延を緩和することができる。例えば、蓄電池の残容量が充分であればウェイクアップ周期を短い値に設定して遅延を短くし、蓄電池の残容量が低下すればウェイクアップ周期を長い値に設定して蓄電池の残容量の低下を抑制することができる。圃場水管理サーバが電子制御回路のウェイクアップ周期を管理できるため、電子制御回路が前記省電力状態であるときに給水栓制御装置に発信するような無駄な処理が回避される。
【0012】
同第二の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記圃場水管理サーバは、前記給水栓制御装置から送信された前記蓄電池の残容量に基づいて前記給水栓電力管理部の前記ウェイクアップ周期の設定情報を更新するように構成されている点にある。
【0013】
圃場水管理サーバが各給水栓制御装置から送信された蓄電池の残容量を管理し、各残容量に基づいてウェイクアップ周期の設定情報を更新することにより、各給水栓制御装置のウェイクアップ周期に基づいて効率的に制御部の管理ができるようになる。
【0014】
同第三の特徴構成は、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記給水栓制御装置は前記蓄電池を充電するソーラーセルをさらに備え、前記圃場水管理サーバは、前記蓄電池の残容量情報に加えて日照情報、時刻情報の何れかの情報に基づいて前記給水栓電力管理部に設定された前記ウェイクアップ周期の設定情報を更新するように構成されている点にある。
【0015】
蓄電池の残容量に加えて、日照情報からソーラーセルによる発電能力及び蓄電池へ充電能力を評価でき、時刻情報により例えばソーラーセルによる充電が可能な昼間であるのか、充電ができない夜間であるのかを判断できるため、より適切なウェイクアップ周期を設定できる。
【0016】
同第四の特徴構成は、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記圃場水管理サーバは、前記遠隔操作端末から計画外の遠隔操作情報を受信した場合に、前記蓄電池の残容量にかかわらず前記給水栓電力管理部に設定された前記ウェイクアップ周期の設定情報をより短い値に更新するように構成されている点にある。
【0017】
圃場水管理サーバが遠隔操作端末から計画外の何らかの遠隔操作情報を受信した場合に、蓄電池の残容量にかかわらずウェイクアップ周期の設定情報をより短い値に更新することにより、ウェイクアップ周期に起因する応答遅延を回避することができる。
【0018】
同第五の特徴構成は、上述の第四の特徴構成に加えて、前記計画外の遠隔操作情報に、給水栓開閉要求またはウェイクアップ周期更新要求が含まれる点にある。
【0019】
圃場水管理サーバが遠隔操作端末から給水栓開閉要求またはウェイクアップ周期更新要求があった場合に、ウェイクアップ周期の設定情報を更新することで、その後、圃場水管理サーバから送信される指令に対して大きな遅延を招くことなく給水栓の開閉制御などの適切な応答が可能になる。
【0020】
同第六の特徴構成は、上述の第四または第五の特徴構成に加えて、前記圃場水管理サーバは、前記ウェイクアップ周期の設定情報をより短い値に更新した後に、前記遠隔操作端末から計画外の遠隔操作情報を所定時間受信しない場合に、前記ウェイクアップ周期の設定情報を更新前に戻す点にある。
【0021】
不要な電力損失を回避することができる。
【0022】
同第七の特徴構成は、上述の第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記圃場水管理サーバは前記給水栓制御装置に時刻情報を送信し、前記給水栓電力管理部は前記時刻情報に基づいて前記ウェイクアップ周期及び時刻を設定する点にある。
【0023】
圃場水管理サーバから送信された時刻情報に基づいてウェイクアップ周期が設定されるので、圃場水管理サーバと電子制御回路との間で時間同期が図られ、圃場水管理サーバから各電子制御回路に適切に無駄なく通信することができるようになる。
【0024】
同第八の特徴構成は、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記給水栓電力管理部は、前記圃場水管理サーバから送信された前記ウェイクアップ周期の設定情報にかかわらず、前記蓄電池の残容量に基づいて前記ウェイクアップ周期を自動設定する自動設定部を備えている点にある。
【0025】
圃場水管理サーバから送信されたウェイクアップ周期の設定情報が蓄電池の残容量にそぐわないような異常な場合に、自動設定部によりウェイクアップ周期を設定することにより蓄電池の残容量を効率的に使用できるようになる。
【0026】
本発明による給水栓制御装置の第一の特徴構成は、上述の第一から第八の何れかの特徴構成を備えた圃場水管理システムに用いられ、前記給水栓を作動させるアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する給水制御部と圃場水管理サーバと交信する通信部とを有する電子制御回路と、前記電子制御回路及び前記アクチュエータに給電する蓄電池とを備え、前記給水栓から灌漑用水を圃場に給水する給水栓制御装置であって、前記電子制御回路は、前記蓄電池の電力消費を制限する省電力状態と、前記省電力状態から周期的にウェイクアップして前記圃場水管理サーバとの交信を含む制御動作を実行可能な動作状態との間で動作モードを切り替える給水栓電力管理部を備え、前記給水栓電力管理部は、前記圃場水管理サーバから送信されたウェイクアップ周期に従って、前記電子制御回路のウェイクアップ周期を可変に設定するように構成され、前記給水栓電力管理部は、前記動作状態に移行した後の所定時間内に前記圃場水管理サーバからのアクセスが無い場合に、前記省電力状態に移行するように構成されている点にある。
【発明の効果】
【0027】
以上説明した通り、本発明によれば、蓄電池の消耗を回避しつつ、通信の遅延を緩和することができる圃場水管理システム及び給水栓制御装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】給水栓制御装置及び排水栓制御装置の機能ブロックの説明図
【
図5】給水栓制御装置により実行される圃場の給水制御の手順を示すフローチャート
【
図6】圃場水管理サーバにより実行される圃場の給水制御の手順を示すフローチャート
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明による圃場水管理システム及び給水栓制御装置を説明する。
[圃場水管理システムの構成]
図1に示すように、稲作が行なわれている各圃場1には、給水管10に流れる
灌漑用水を、導水路11を介して圃場1に導く給水栓装置12と、放水路21を介して圃場1の水を排水路20に排水する排水栓装置22が設けられ、給水栓装置12には圃場1の水位を計測する静電容量式の水位センサ2が設けられている。
【0030】
各給水栓装置12及び排水栓装置22がインターネット30を介して圃場水管理サーバ34と接続可能に構成され、圃場1の管理者が所有するスマートフォンなどの携帯端末36が遠隔操作端末としてインターネット30を介して圃場水管理サーバ34と接続可能に構成されている。即ち、各給水栓装置12及び排水栓装置22、携帯端末36、圃場水管理サーバ34と、それらを通信可能に接続するインターネット30により圃場水管理システム100が構成されている。
【0031】
稲作を例に説明すると、稲作の各工程、例えば、代掻き、田植え、活着期、分げつ期(前期、後期)、幼穂形成期~出穂開花期、登熟期など、各時期に応じて圃場の貯水水位を調整する必要がある。特に代掻き時期には複数の圃場が一斉に導水することになるため、湛水のために効率的に給水管理する必要がある。
【0032】
そのため、圃場水管理サーバ34は、各管理者により携帯端末36を介して要求された各圃場1に対する給水要求に基づいて各圃場1に対する給水スケジュールを生成するように構成されている。即ち、携帯端末36が遠隔操作端末として機能する。
【0033】
携帯端末36から送信される給水要求には、給水対象となる圃場を特定する圃場ID、給水日時、給水水位が含まれる。圃場水管理サーバ34は、予め登録された圃場マップに従って、給水要求があった各圃場に対する給水スケジュールを生成して圃場水管理サーバ34に備えた記憶部に記憶するように構成されている。
【0034】
圃場水管理サーバ34は、記憶部に記憶された給水スケジュールに定められた給水日時に、該当する圃場1の排水栓装置22に対して排水水位調整指令を出力するとともに、該当する圃場1の給水栓装置12に給水指令を出力する。排水水位とは目標とする圃場の貯水水位を意味する。
【0035】
排水水位調整指令を受信した排水栓装置22はアクチュエータを介して堰体である排水筒を上下移動させて排水水位を調整し、給水指令を受信した給水栓装置12はアクチュエータを介して給水弁を開放して圃場1に用水を導く。水位センサ2の信号線が接続された給水栓装置12は、水位センサ2により検出された圃場水位が所定の貯水水位に達したと判断すると、アクチュエータを介して給水弁を閉止して給水を停止する。
【0036】
また、圃場水管理サーバ34が各圃場1の貯水水位を把握できるように、給水栓装置12は水位センサ2により検出された圃場水位を圃場水管理サーバ34に送信してもよい。この場合、圃場水管理サーバ34は受信した水位情報から貯水水位が目標水位に達したと判断すると、給水栓装置12に対して給水停止指令を送信し、給水停止指令を受信した給水栓装置12がアクチュエータを介して給水弁を閉止して給水を停止するように構成してもよい。
【0037】
図2に示すように、排水栓装置22は、排水栓22Aと、排水栓22Aに着脱自在に構成された排水栓制御装置22Bで構成されている。
排水栓制御装置22Bは、排水栓22Aを作動させるアクチュエータ240と、アクチュエータ240を制御する排水水位制御部236と、圃場水管理サーバ34と交信する通信部237と、排水栓電力管理部239と、を備えている。また、アクチュエータ240に備えたモータ、排水水位制御部236、通信部237などに給電する蓄電池233、蓄電池233を充電するソーラーセル232を備えている。
【0038】
排水水位制御部236及び通信部237はCPU、メモリ、入出力回路や通信回路などの周辺回路を備えて構成され、メモリに格納された制御プログラムがCPUで実行されることにより所定の機能、ここでは排水栓22Aに備えた堰体に対する昇降制御機能が実現される。即ち、制御盤235が電子制御回路となる。
【0039】
給水栓装置12は、給水栓12Aと、給水栓12Aに着脱自在に構成された給水栓制御装置12Bで構成されている。
給水栓制御装置12Bは、給水栓12Aを作動させるアクチュエータ140と、アクチュエータ140を制御する給水制御部136と、圃場水管理サーバ34と交信する通信部137と、給水栓電力管理部139と、を備えている。また、アクチュエータ140に備えたモータ、給水制御部136、通信部137などに給電する蓄電池133、蓄電池133を充電するソーラーセル132を備えている。
【0040】
[給水栓装置の構成]
図3に示すように、給水栓制御装置12Bは、圃場に設けられた給水桝101(
図1参照。)に収容される給水栓12Aの上面に着脱自在に取り付けられる。
【0041】
給水栓12Aは、円筒状の弁箱120と、弁箱120の上下方向中央部に内周側に突出形成された弁座121と、弁座121に対向配置され、下面にゴム製のシール部材123が取り付けられた円盤状の弁体124を備えている。弁箱120の下端が給水管10から分岐した導水路11に接続されている。
【0042】
弁箱120の上端部には、内周面に雌ネジが形成された軸受126が取り付けられ、軸受126には外周面に雄ネジが形成された弁軸125が螺合されている。そして弁軸125の下端が弁体124に固定されている。
【0043】
弁座121の中央部には通水孔122が形成され、弁箱120の側壁上部には、複数の出水窓127が周方向に並ぶように形成されている。弁軸125に回転力が付与されると、軸受126に沿って弁軸125が上下移動し、弁軸125の上下移動に伴って弁体124が上下する。即ち、弁座121と弁体124と弁座121と弁体124との間に設けられたシール部材123などで弁機構が構成されている。
【0044】
給水栓制御装置12Bは、水密性のケーシング131と、ケーシング131の天面に太陽を臨むように傾斜姿勢で取り付けられたソーラーセル132と、ケーシング131に収容された駆動機構140と、蓄電池133と、アンテナ134と、制御盤135などを備えて構成されている。制御盤135には、弁機構を制御する給水制御部136と通信部137などが組み込まれている。
【0045】
給水制御部136及び通信部137はCPU、メモリ、入出力回路や通信回路などの周辺回路を備えて構成され、メモリに格納された制御プログラムがCPUで実行されることにより所定の機能、ここでは給水栓12Aに備えた弁機構に対する開閉制御機能が実現される。即ち、制御盤135が本発明の電子制御回路となる。
【0046】
給水制御部136は、通信部137を介して圃場水管理サーバ34から給水指示されると予め設定された弁開度まで開弁するべく駆動機構140を介して弁機構を制御し、圃場水管理サーバ34から圃場の貯水水位が目標水位となったことが送信されると弁機構を閉止する。
【0047】
ソーラーセル132による発電電力が蓄電池133に充電され、蓄電池133の充電電力が給水制御部136及び通信部137の制御電力として消費される。
【0048】
駆動機構140は、エンコーダが内蔵されたDCモータ141と、DCモータ141の出力軸に設けられたギア142と噛合する中空のメインギア143と、メインギア143の中空部に挿通された駆動軸146などを備えて構成され、弁体124を昇降駆動するアクチュエータとして機能する。
【0049】
メインギア143は、上下方向に延びる円筒状のボス部144と、ボス部144の上下方向中央部に延出形成された円盤状のギア部145とを備えた両ボス型のギアで、ボス部144の上下が軸受で回転可能に支持されている。ボス部144の内周面に形成されたキー溝に駆動軸146の外周面に突出形成されたキーが勘合して、メインギア143と駆動軸146とが一体回転するように構成されている。
【0050】
駆動軸146の下端と弁軸125の上端がカップリング147を介して駆動連結され、DCモータ141が一方向に回転駆動すると弁体124が上昇して給水状態となり、DCモータ141が反対方向に回転駆動すると弁体124が降下して止水状態になる。
【0051】
[排水栓装置の構成]
図4に示すように、排水栓制御装置22Bは、圃場に設けられた排水桝201(
図1参照。)に収容される排水栓22Aの上面に着脱自在に取り付けられる。
【0052】
排水栓22Aは、排水桝201の底部に設置された受枠部材211と、受枠部材211によって上下移動可能に支持される円筒状の排水筒である堰体212と、堰体212を上下移動する昇降機構220を備えている。堰体212の上端開口が排水口212aとして機能し、圃場1に給水された余剰の用水が当該排水口212aから溢流して放水路21に流出する。
【0053】
堰体212の上端開口に側面視コの字状の支持部213が固定され、当該支持部213に昇降機構220が取り付けられている。昇降機構220は、支持部213の上面に固定され、内周面に雌ネジが形成された円筒状の可動部221と、外周面に雄ネジが形成され、可動部221の雌ネジと螺合する回転軸222と、可動部221が回転軸222と連れ回りすることを防止する一対の棒状体223を備えている。
【0054】
つまり、回転軸222が一方向に回転することにより、支持部213を介して可動部221に取付けられた堰体212が可動部221とともに上昇し、回転軸222が反対方向に回転することにより、支持部213を介して可動部221に取付けられた堰体212が可動部221とともに降下する。上述した堰体212と昇降機構220によって排水水位調節部210が構成されている。
排水栓制御装置22Bは、基本的構造が上述した給水栓制御装置12Bと同様である。
【0055】
[給水栓制御装置と圃場水管理サーバとの通信の同期]
給水栓制御装置12Bは、蓄電池133の電力消費を制限する省電力状態と、省電力状態から周期的にウェイクアップして圃場水管理サーバとの交信を含む制御動作を実行可能な動作状態との間で動作モードを切り替える給水栓電力管理部139を備えている。省電力状態ではCPUの動作の基準となる内部クロックの周期が通常の動作状態より低周期となり、一部のタイマ回路や割込み回路などを除いて動作が停止される。
【0056】
後に詳述するが、給水栓制御装置12Bは、蓄電池133の残容量に基づいて設定されるウェイクアップ周期で省電力状態から動作状態に切り替わり、動作状態で給水栓12Aに対する開閉制御を行ない、圃場水管理サーバとの通信を行なうように構成されている。
【0057】
圃場水管理サーバ34は、給水栓制御装置12Bが動作状態にある期間に当該給水栓制御装置12Bに対して発信を行ない、給水栓制御装置12Bが省電力状態にある期間に発信を回避するように制御する。給水栓制御装置12Bが省電力状態にある期間に発信しても給水栓制御装置12Bが応答できないためである。
【0058】
圃場水管理サーバ34は、各給水栓制御装置12Bが動作状態にある期間に適切に発信できるように、各給水栓制御装置12Bに対して基準時間情報として時刻情報を送信するとともに、各給水栓制御装置12Bから送信された蓄電池の残容量に基づいてウェイクアップ周期の設定情報を送信するように構成されている。ウェイクアップ周期を規定する蓄電池の残容量は少なくとも直近の過去複数回の平均値を用いることが好ましい。
【0059】
各給水栓制御装置12Bは、圃場水管理サーバ34から送信された時刻情報に同期するように基準となる内部タイマを設定し、圃場水管理サーバ34から送信されたウェイクアップ周期でウェイクアップするようにウェイクアップタイマを設定するように構成されている。
【0060】
[給水栓制御装置の給電管理]
給水栓電力管理部139は、蓄電池133の電圧を検出する電圧検出回路と、ウェイクアップタイマ回路と、ウェイクアップ割込み回路で構成されている。給水栓電力管理部139は電圧検出回路で検出された蓄電池133の電圧に基づいて蓄電池133の残容量を把握し、残容量に基づいてウェイクアップタイマ回路のタイマ値を設定するように構成されている。
【0061】
給水栓電力管理部139がウェイクアップタイマ回路にタイマ値を設定してスリープコマンドを実行することによりCPUは省電力状態に移行する。省電力状態に移行した後にタイマ回路に設定されたタイマ値がカウントダウンされる。タイマ値が零になるとタイマ回路からウェイクアップ割込み回路に割込み信号が入力されてCPUはスリープ状態からウェイクアップして通常動作状態に移行する。当該タイマ値によりウェイクアップ周期が規定される。
【0062】
給水栓電力管理部139は、蓄電池133の残容量に基づいて電子制御回路のウェイクアップ周期を可変に設定するように構成され、蓄電池133の電圧が十分高い場合にウェイクアップタイマ回路のタイマ値は短い値に設定され、蓄電池133の電圧が低い場合にウェイクアップタイマ回路のタイマ値は長い値に設定され電力消費が抑制される。
【0063】
上述したように電圧検出回路で検出された蓄電池133の電圧は、通信部137を介して圃場水管理サーバ34に送信され、圃場水管理サーバ34によって各給水栓装置12に備えた蓄電池の残容量が管理され、各蓄電池の残容量に基づいて各給水栓制御装置12Bのウェイクアップタイマ回路のタイマ値が更新されるように管理されることが好ましい。
【0064】
さらに、圃場水管理サーバ34は、蓄電池133の残容量情報に加えて日照情報、時刻情報の何れかの情報に基づいて給水栓電力管理部に設定されたウェイクアップ周期の設定情報を更新するように構成されていることが好ましい。
【0065】
蓄電池133の残容量に加えて、日照情報からソーラーセル132による発電能力及び蓄電池へ充電能力を評価でき、時刻情報により例えばソーラーセル132による充電が可能な昼間であるのか、充電ができない夜間であるのかを判断できるため、より適切なウェイクアップ周期を設定できる。
【0066】
例えば、蓄電池133の残容量が同じであっても、日照条件が悪い曇天や夜間であればソーラーセル132による充電が期待できないため、ウェイクアップ周期を長く設定し、日照条件が良い晴天や昼間であればソーラーセル132による充電が期待できるのでウェイクアップ周期を短く設定することが可能となる。
【0067】
日照情報として当日の天候及び時刻情報に季節情報を加味することも可能である。同じ天候及び時刻であっても例えば夏と冬ではソーラーセル132の発電能力が相違するため、残容量及び日照情報に基づいて一律にウェイクアップ周期を設定するよりも季節情報を加味した方がより適切なウェイクアップ周期に設定できる。
【0068】
そのような複数の変動因子の影響を加味して適切なウェイクアップ周期を求めるために機械学習装置を用いることができる。例えば、蓄電池の残容量、時刻情報、その時点の日照情報、季節情報、給水栓装置や排水栓装置の稼働状態を其々正規化した値を入力値とし、入力値に対する最適なウェイクアップ周期を出力値とする機械学習装置を用いればよい。
【0069】
蓄電池の残容量を0~100%、時刻情報を0~100%(例えば正午を100%、午後6時から午前6時を0%、その間を滑らかな曲線で表す)、日照情報を0~100%(例えば、夜間0%、昼間快晴100%、晴天80%、曇天60%、雨天30%)、季節情報を40~100%(例えば、夏至100%、冬至40%、春分及び秋分70%、その間を滑らかな曲線で表す)、給水栓装置や排水栓装置の稼働状態を0~100%(例えば、代掻き、田植え、活着期、分げつ期(前期、後期)、幼穂形成期~出穂開花期、登熟期など稲作の各工程に対して水位管理の重要度の高い時期の順に100%から農閑期の0%の間で設定する)に正規化することができる。
【0070】
機械学習装置に用いられるアルゴリズムとして、予め上述の入力値に対する最適な出力値の組み合せを教師信号に用いて学習したニューラルネットワークを好適に採用することができる。
【0071】
また、グラフ探索アルゴリズムを用いた動的計画法を採用することも可能であり、確率分布関数を用いた統計的アルゴリズムを用いることも可能である。
【0072】
圃場水管理サーバ34は、遠隔操作端末36から計画外の遠隔操作情報を受信した場合に、蓄電池133の残容量にかかわらず給水栓電力管理部139に設定されたウェイクアップ周期の設定情報を更新するように構成されている。
【0073】
蓄電池の残容量が低く長いウェイクアップ周期に設定されている場合に、より短いウェイクアップ周期に設定することにより、ウェイクアップ周期に起因する給水栓制御装置12Bの応答遅延を回避することができる。
【0074】
例えば、予定された給水スケジュールとは異なる計画外の遠隔操作情報として、給水栓開閉要求が遠隔操作端末36から圃場水管理サーバ34に送信されるような場合に、事前にウェイクアップ周期を短くすることにより給水栓開閉要求に対する応答遅れが回避できる。計画外の遠隔操作情報は、圃場に湛水するための給水栓開閉要求に限るものではなく、給水栓装置12の試運転などが含まれる。
【0075】
また、計画外の遠隔操作情報として蓄電池133を交換した場合や蓄電池133を急速充電した場合に、遠隔操作端末36から圃場水管理サーバ34にウェイクアップ周期再設定要求を送信し、圃場水管理サーバ34がその後に給水栓制御装置12Bから受信した残容量に基づいて直ちに対応するウェイクアップ周期に設定するようにしてもよい。直近に受信した過去の残容量の平均値に基づく場合には直ちにウェイクアップ周期が交信されない虞があるためである。
【0076】
なお、遠隔操作端末36から圃場水管理サーバ34に対して給水栓開閉要求が発生する予備要求が行なわれ、当該予備要求に応答して圃場水管理サーバ34から給水栓制御装置12Bにウェイクアップ周期の設定情報が送られることが好ましい。この様な予備要求としてウェイクアップ周期更新要求が含まれる。圃場水管理サーバ34が遠隔操作端末36からウェイクアップ周期更新要求を受信したときに給水栓制御装置12Bにウェイクアップ周期の設定情報が送られ、短いウェイクアップ周期に設定されると、その後に発生する給水栓開閉要求に迅速に応答できるようになる。
【0077】
圃場水管理サーバ34は、このようにして蓄電池133の残容量にかかわらず短いウェイクアップ周期に設定した場合に、遠隔操作端末36から計画外の遠隔操作情報が所定時間受信されない場合には蓄電池133の残容量に対応したウェイクアップ周期に再設定するように構成されている。
【0078】
給水栓電力管理部139は、圃場水管理サーバ34から送信されたウェイクアップ周期の設定情報にかかわらず、蓄電池の残容量に基づいてウェイクアップ周期を自動設定する自動設定部を備えていることが好ましい。
【0079】
圃場水管理サーバ34から送信されたウェイクアップ周期の設定情報が蓄電池133の残容量に対応しない異常な状態が続く場合に、自動設定部によりウェイクアップ周期を適正値に設定することにより適切な動作が可能になる。この場合には、給水栓制御装置12Bから自発的に圃場水管理サーバ34にその旨の送信を行なうことで、以後の圃場水管理サーバ34からの発信タイミングを適正化できるようになる。
【0080】
以上説明した給水栓電力管理部139の構成と同様、排水栓電力管理部239は、蓄電池233の電圧を検出する電圧検出回路と、ウェイクアップタイマ回路と、ウェイクアップ割込み回路で構成されている。排水栓電力管理部239は電圧検出回路で検出された蓄電池233の電圧に基づいて蓄電池233の残容量を把握し、残容量に基づいてウェイクアップタイマ回路のタイマ値を設定するように構成されている。
【0081】
そして、詳しい説明は省略するが、ウェイクアップ周期の設定に関する圃場水管理サーバ34と給水栓制御装置12Bの遣り取りと同様のやり取りが、圃場水管理サーバ34と排水栓制御装置22Bの間でも行われる。
【0082】
少なくとも同じ圃場に設置された給水栓制御装置12Bと排水栓制御装置22Bに対しては、蓄電池の残容量が少ない方のウェイクアップ周期に統一することが好ましい。排水水位の双方がウェイクアップした後に圃場水管理サーバ34が交信できるような環境を整えることができる。
【0083】
図5には給水栓制御装置12Bにより実行される圃場1の給水制御の手順が示されている。
給水栓制御装置12Bは、省電力状態から通常動作モードに切り替わると(SA1)、水位及び蓄電池133の電圧を計測した後に(SA2)、湛水制御状態であるか否かを判断し、湛水制御状態であれば(SA3,Y)、目標水位に到ったか否かを判断し、目標水位に達していれば(SA4,Y)、給水栓12Aを閉止する(SA5)。なお、ステップSA3で湛水制御状態でないと判断した場合にはステップSA6に進む。
【0084】
次に、圃場水管理サーバ34との接続処理を行ない(SA6)、ステップSA2で計測した水位情報や蓄電池の電圧、さらには給水栓12Aの開閉状態などの制御情報を圃場水管理サーバ34に送信する(SA7)。さらに、圃場水管理サーバ34から基準時刻情報、ウェイクアップ周期、制御指令(給水栓の開放または閉止)、設定水位(一定湛水制御用の水位)を受信すると、基準時刻情報に基づいて基準タイマの時刻を更新し、ウェイクアップタイマを設定するとともに制御指令を実行する(SA8)。
【0085】
圃場水管理サーバ34との送受信処理が完了すると(SA9,Y)、ウェイクアップタイマをスタートさせた後に(SA10)、スリープコマンドを実行して省電力状態に移行する(SA11)。送受信処理が完了していないのであれば(SA9,N)、制御情報の送信処理に戻る(SA7)。
【0086】
図6には圃場水管理サーバにより実行される圃場の給水制御の手順が示されている。
圃場水管理サーバ34は、各給水栓制御装置12Bから接続要求があれば(SB0,Y)、水位情報や蓄電池の電圧、さらには給水栓12Aの開閉状態などの制御情報を受信する(SB1)。次に、給水スケジュールを確認して、給水スケジュールがある場合には(SB2,Y)、圃場水位が目標水位に達しているか否かを判断し、目標水位に達していなければ(SB3,NG)、排水栓制御装置22Bに対して目標水位設定情報を送信し(SB4)、給水栓制御装置12Bに対して給水指令を送信する(SB5)。ステップSB3で目標水位に達していると判定すると(SB3,OK)、給水栓制御装置12Bに対して止水指令を送信する(SB6)。なお、ステップSB4は対応する排水栓制御装置22Bに対する指令であり、給水栓制御装置12Bに対する指令ではないので、参考ステップとして破線で示している。
【0087】
さらに、該当する蓄電池の残容量を評価して現在のウェイクアップ周期が適正でなければ(SB7、NG)、適正なウェイクアップ周期への更新要求を送信する(SB8)。
【0088】
ステップSB2で給水スケジュールが無く、計画外の操作指令が発生していれば(SB9,Y)、現在のウェイクアップ周期よりも短い所定のウェイクアップ周期への更新要求を送信する(SB10)。なお、蓄電池の残容量が十分で最短のウェイクアップ周期に設定されている場合にはその状態が維持される。
【0089】
各給水栓装置12及び排水栓装置22は、圃場水管理サーバ34との接続は、低消費電力で通信コストが安価な通信媒体であれば特に制限されるものではない。例えば、低消費電力で広域通信が可能なセルラーLPWA(LTE-M)などが好適に利用することができる。また、圃場の近傍に無線ルータなどの中継器を設置し、中継器を介してインターネットに接続することも可能である。複数の通信媒体を介在させる場合にはゲートウェイを介装すればよい。
【0090】
上述した実施形態では、圃場1に給水栓装置12及び排水栓装置22が設置された場合を説明したが、圃場1に給水栓制御装置12Bのみが設置され、排水栓22Aの堰体を手動で上下操作して排水水位(貯水水位)を調整するような態様の場合には、給水栓制御装置12Bのみがウェイクアップ周期の設定対象となる。
【0091】
上述した実施形態では、圃場水管理サーバ34によってウェイクアップタイマ回路のタイマ値が更新される態様を説明したが、給水栓制御装置12Bが蓄電池の残容量に基づいて自らウェイクアップタイマ回路のタイマ値を設定するように構成してもよい。この場合には、ウェイクアップ後に自発的に圃場水管理サーバ34と交信するように構成すればよい。その際にウェイクアップ周期を圃場水管理サーバ34に送信すれば、その後、圃場水管理サーバ34からウェイクアップ後の給水栓制御装置12Bに交信を開始することができる。
【0092】
上述した実施形態では蓄電池を充電するソーラーセルを備えた各給水栓装置12及び排水栓装置22Bを説明したが、ソーラーセルを備えることなく蓄電池のみを備えた場合にも本発明を適用することができることは言うまでもない。
【0093】
ウェイクアップ回路の具体的構成は特に限定されるものではなく、公知の技術を用いればよい。CPUに内蔵されていてもよいし、CPUの外部に設けられていてもよい。
【0094】
上述した実施形態のように、各給水栓制御装置12Bが圃場水管理サーバ34から送信された時刻情報に同期するように基準となる内部タイマを設定する場合には、予め給水開始時刻を含む給水指令を各給水栓制御装置12Bに送信しておけば、各給水栓制御装置12Bが該当時刻に自発的に給水を開始することができる。この場合は、動作確認のために、その後の圃場水管理サーバ34との交信時に給水を開始した旨の情報を送信することが好ましい。
【0095】
以上説明した実施形態は本発明の一例に過ぎず、該記載により本発明の技術的範囲が限定されることを意図するものではなく、給水栓装置、排水栓装置、圃場水管理サーバなどの具体的構成は本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0096】
100:圃場水管理システム
1:圃場
2:水位センサ
10:給水管
12:給水栓装置
12A:給水栓
12B:給水栓制御装置
20:排水路
22:排水栓装置
22A:排水栓
22B:排水栓制御装置
34:圃場水管理サーバ
132:ソーラーセル
133:蓄電池
135:電子制御回路(制御盤)
136:給水制御部
137:通信部
139:給水栓電力管理部
140:アクチュエータ