(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】真のワイヤレスイヤホンのためのシームレスな役割の切り替え
(51)【国際特許分類】
H04W 84/20 20090101AFI20240628BHJP
H04W 72/044 20230101ALI20240628BHJP
H04W 84/10 20090101ALI20240628BHJP
H04W 88/04 20090101ALI20240628BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H04W84/20
H04W72/044 110
H04W84/10 110
H04W88/04
H04R1/10 104E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023115209
(22)【出願日】2023-07-13
(62)【分割の表示】P 2021558608の分割
【原出願日】2019-06-20
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オウヤン,シュエメイ
(72)【発明者】
【氏名】クラモト,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】シエン,シジン
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,ジアン
【審査官】篠田 享佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-333666(JP,A)
【文献】特開2018-160945(JP,A)
【文献】特表2018-526914(JP,A)
【文献】米国特許第9462109(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0316642(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレスアクセサリーデバイスであって、
ホストデバイスと第2のワイヤレスアクセサリーデバイスとの通信に適合したワイヤレス通信インターフェイスと、
メモリーと、
前記メモリーと通信する1つまたは複数のプロセッサであって、スレーブモードからマスターモードに役割を切り替えるための第1の動作セットを実行するように構成された前記1つまたは複数のプロセッサとを備え、
前記第1の動作セットは、
前記役割切り替えのための第1のアンカーポイントをネゴシエートするステップと、
前記第2のワイヤレスアクセサリーデバイスから前記ワイヤレス通信インターフェイスを介して、前記ホストデバイスと通信するための論理リンク情報を受信するステップと、
前記第2のワイヤレスアクセサリーデバイスから前記ワイヤレス通信インターフェイスを介して、デコーダの状態を含むビット処理情報を受信するステップとを含み、前記ビット処理情報を受信するステップは、前記第2のワイヤレスアクセサリーデバイスとの間で、巡回冗長チェックおよびヘッダーエラーチェックの状態を交換するステップを含み、前記第1の動作セットはさらに、
前記第1のアンカーポイントで前記マスターモードになるステップと、
前記第1のアンカーポイントの後、前記ホストデバイスから直接パケットを受信するステップと、
前記受信したパケットを前記第2のワイヤレスアクセサリーデバイスに中継するステップとを含む、ワイヤレスアクセサリーデバイス。
【請求項2】
前記1つまたは複数のプロセッサはさらに、適応型周波数ホッピング(AFH)チャンネルマップを受信する、請求項1に記載のワイヤレスアクセサリーデバイス。
【請求項3】
前記ビット処理情報を受信するステップは、前記第2のワイヤレスアクセサリーデバイスと巡回冗長チェックおよびヘッダーエラーチェックの状態を交換するステップを含む、請求項1または2に記載のワイヤレスアクセサリーデバイス。
【請求項4】
前記ビット処理情報はさらに、デコーダの状態を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のワイヤレスアクセサリーデバイス。
【請求項5】
前記第1の動作セットはさらに、適応型周波数ホッピング(AFH)チャンネルマップを受信するステップを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のワイヤレスアクセサリーデバイス。
【請求項6】
前記第1のアンカーポイントは、未来における予め定められた長さの時点であり、前記予め定められた長さは、前記論理リンク情報の受信および前記ビット処理情報の受信に必要な時間量に対応する、請求項1~5のいずれか1項に記載のワイヤレスアクセサリーデバイス。
【請求項7】
前記第1のアンカーポイントは、特定のイベントに対応する、請求項1~6のいずれか1項に記載のワイヤレスアクセサリーデバイス。
【請求項8】
前記第1の動作セットはさらに、前記ワイヤレスアクセサリーデバイスの1つまたは複数の第1の基準を測定するステップを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のワイヤレスアクセサリーデバイス。
【請求項9】
前記第1の動作セットはさらに、前記ワイヤレス通信インターフェイスを介して、前記1つまたは複数の第1の基準を前記第2のワイヤレスアクセサリーデバイスに送信するステップを含む、請求項8に記載のワイヤレスアクセサリーデバイス。
【請求項10】
前記第1の動作セットはさらに、前記ワイヤレス通信インターフェイスを介して、1つまたは複数の第2の基準を前記第2のワイヤレスアクセサリーデバイスから受信するステップを含む、請求項9に記載のワイヤレスアクセサリーデバイス。
【請求項11】
前記1つまたは複数の第1の基準および前記1つまたは複数の第2の基準は、受信信号強度表示(RSSI)、平均信号強度、またはバッテリー寿命を含む、請求項10に記載のワイヤレスアクセサリーデバイス。
【請求項12】
前記第1の動作セットはさらに、前記第2のワイヤレスアクセサリーデバイスから前記ワイヤレス通信インターフェイスを介して、前記第1のアンカーポイントで前記マスターモードになるという決定を受信するステップを含み、前記決定は、前記1つまたは複数の第1の基準または前記1つまたは複数の第2の基準のうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づく、請求項10または11に記載のワイヤレスアクセサリーデバイス。
【請求項13】
前記ワイヤレスアクセサリーデバイスは、一対のワイヤレスイヤホンの第1のイヤホンであり、前記第2のワイヤレスアクセサリーデバイスは、前記一対のワイヤレスイヤホンの第2のイヤホンである、請求項1~12のいずれか1項に記載のワイヤレスアクセサリーデバイス。
【請求項14】
1つまたは複数のセンサーをさらに備え、前記第1の動作セットはさらに、前記1つまたは複数のセンサーからのセンサーデータに基づいて前記役割切り替えを開始することを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載のワイヤレスアクセサリーデバイス。
【請求項15】
前記1つまたは複数のセンサーは、加速度計、ジャイロスコープ、スイッチ、光センサー、気圧計、音声センサー、振動センサー、熱センサー、または無線周波(RF)センサーのうちの1つまたは複数である、請求項14に記載のワイヤレスアクセサリーデバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
フルワイヤレスイヤホンは、2つのイヤホンをワイヤレスで接続したものである。典型的には、このようなフルワイヤレスイヤホンは、リレー形式またはスニフ形式に準拠する。リレー形式では、一方のイヤホンはマスターの役割を果たし、他方のイヤホンはスレーブの役割を果たす。マスターイヤホンは、携帯電話またはその他のオーディオ再生デバイス等のホストからオーディオを受信し、そのオーディオをスレーブイヤホンに中継する。スニフ形式では、一方のイヤホンがプライマリイヤホン、もう一方のイヤホンがセカンダリイヤホンとなる。プライマリイヤホンは、ホストからオーディオパケットを受信して応答するが、セカンダリイヤホンは、ホストへの確認なしにオーディオを受信するだけ、もしくは「スニフ」する。セカンダリイヤホンは、パケットを失った場合、プライマリイヤホンにパケットの再送信を依頼する。
【0002】
2つのイヤホンの間での役割切り替えは、イヤホンの役割が変化するときに発生する。例えば、リレー形式のイヤホンの場合、マスターがスレーブになり、スレーブがマスターになる。スニフ形式のイヤホンの場合、プライマリイヤホンがセカンダリーになり、セカンダリイヤホンがプライマリーになる。
【0003】
リレー形式のワイヤレスイヤホンは、典型的には、ホストデバイスおよびマスターイヤホンの間に第1の非同期コネクションレス(ACL:asynchronous connection-less)
リンクが存在し、マスターイヤホンはこのACLリンクにおけるBluetooth(登録商標)スレーブである。マスターイヤホンおよびスレーブイヤホンの間には第2のACLリンクが存在する。この第2のACLリンクにおいて、マスターイヤホンはBluetoothマスターであり、スレーブイヤホンはBluetoothスレーブとなる。
【0004】
この形式では、シームレスな役割の切り替えを実現することは非常に困難である。例えば、役割の切り替え後に新しいマスターイヤホンがオーディオパケットを受信し続けることができるように、マスターイヤホンおよびホストデバイスの間のACLリンクのプロファイルは、全てではないにしても、そのほとんどがスレーブイヤホンに静かに転送される必要がある。さらに、古いマスターイヤホンが新しいスレーブイヤホンになり、また、古いスレーブイヤホンが新しいマスターイヤホンになるように、Bluetoothの役割の切り替えも要求される。なぜならば、マスターイヤホンは、Bluetoothの伝送を効率的に行うために、Bluetoothマスターでもあるべきだからである。実際には、マスターおよびスレーブの役割の切り替えには、まずマスターイヤホンがホストデバイス(スマートフォン等)に、オーディオ再生を中断して、さらに、その後にホストから切断するように依頼する必要がある。その後、スレーブイヤホンは、ホストデバイスとの接続を確立し、新しいマスターイヤホンとなる。そして、新しいマスターは、新しいスレーブとの接続を確立し、電話のオーディオコンテンツを新しいスレーブに中継する。この時点で、役割の切り替えが完了したと見なされ、オーディオの再開が可能となる。しかし、オーディオは、このプロセス中にユーザーの介入なしに停止される必要があるため、ユーザーはオーディオのグリッチを聞くことになり、イヤホンのオーディオ品質が悪いと考えるであろう。このことは、役割の切り替えがより頻繁に起こる状況において、特に顕著となり得る。
【発明の概要】
【0005】
役割の切り替えは、例えば、スレーブのイヤホンがより良い受信信号強度を有する場合、マスターイヤホンがスレーブよりも少ないバッテリー残量で動作している場合、マスターイヤホンがユーザーの耳から取り出されたり、ケースに入れられたりした場合等に望ま
しいと考えられる。本開示は、イヤホンなどのペアリングされたアクセサリー間の役割の切り替えを、オーディオグリッチを回避するためにシームレスな方法で提供する。アクセサリー間の役割の切り替えは、ホストデバイスには知らされなくてもよい。
【0006】
ある開示の形態によると、ホストデバイスと第2のワイヤレスアクセサリーデバイスとの通信に適合したワイヤレス通信インターフェイスと、メモリーと、メモリーと通信する1つまたは複数のプロセッサとを含む、ワイヤレスアクセサリーデバイスが提供される。1つまたは複数のプロセッサは、マスターモードからスレーブモードに役割を切り替えるための第1の動作セットを実行するように構成されてもよく、第1の動作セットは、役割の切り替えのためのアンカーポイントをネゴシエートすることと、ホストデバイスと通信するための論理リンク情報を第2のワイヤレスデバイスに送信することと、ビット処理情報を第2のワイヤレスデバイスに送信することと、ネゴシエートされたアンカーポイントで役割切り替えを実行することと、アンカーポイントの後に第2のワイヤレスデバイスを介して中継されたパケットを受信することとを含む。
【0007】
アンカーポイントは、未来の予め定められた長さの時点であってもよく、予め定められた長さは、論理リンク情報の送信およびビット処理情報の送信に必要な時間量に対応する。他の例において、アンカーポイントは、特定のステータスの取得またはパケットの送信等の特定のイベントに対応していてもよい。いくつかの例によると、ビット処理情報を送信することは、第2のワイヤレスデバイスと、巡回冗長チェックおよびヘッダーエラーチェック状態を交換することを含んでもよい。ビット処理情報は、例えば、デコーダの状態を含んでもよい。1つまたは複数のプロセッサは、適応型周波数ホッピング(AFH:adaptive frequency hopping)チャンネルマップをさらに送信してもよい。
【0008】
いくつかの例によると、1つまたは複数のプロセッサは、スレーブモードからマスターモードに役割を切り替えるための第2の動作セットを実行するようにさらに構成されてもよい。このような第2の動作セットは、役割切り替えのための第2のアンカーポイントをネゴシエートすることと、ホストデバイスと通信するための論理リンク情報を第2のデバイスから受信することと、ビット処理情報を第2のワイヤレスデバイスから受信することと、ネゴシエートされたアンカーポイントでマスターモードになることと、切り替えアンカーポイントの後にホストデバイスから直接パケットを受信することと、受信したパケットを第2のデバイスに中継することとを含んでもよい。
【0009】
本開示の別の態様に従うと、スレーブからマスターに役割を切り替える方法が提供される。本方法は、1つまたは複数のプロセッサを使用して、役割の切り替えのためのアンカーポイントをネゴシエートすることと、マスターの役割のワイヤレスペアリングされたデバイスからホストデバイスと通信するための論理リンク情報を受信することと、マスターの役割のワイヤレスペアリングされたデバイスからビット処理情報を受信することと、アンカーポイントの時点またはアンカーポイントの後で、受信した論理リンク情報を用いてホストデバイスとの直接通信を確立することと、切り替えアンカーポイントの後に、ホストデバイスからパケットを直接受信することとを含んでもよい。
【0010】
本開示のさらに別の態様は、マスターモードからスレーブモードに役割を切り替えるための方法を提供し、当該方法は、マスターモードで動作する第1のデバイスの1つまたは複数のプロセッサによって、役割切り替えのためのアンカーポイントをネゴシエートすることと、1つまたは複数のプロセッサによって、ホストデバイスと通信するための論理リンク情報をスレーブモードで動作する第2のデバイスに送信することと、1つまたは複数のプロセッサによって、第2のデバイスにビット処理情報を送信することと、ネゴシエートされたアンカーポイントでスレーブモードへの役割切り替えを実行することと、アンカーポイント後に第2のデバイスを介して中継されたパケットを受信することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の態様に従うシステムの例を示すブロック図である。
【
図3A】本開示の態様に従う役割の切り替えを示す絵図である。
【
図3B】本開示の態様に従う役割の切り替えを示す絵図である。
【
図3C】本開示の態様に従う役割の切り替えを示す絵図である。
【
図3D】本開示の態様に従う役割の切り替えを示す絵図である。
【
図3E】本開示の態様に従う役割の切り替えを示す絵図である。
【
図3F】本開示の態様に従う役割の切り替えを示す絵図である。
【
図4】本開示の態様に従うパケットヘッダーの例を示すブロック図である。
【
図5】本開示の態様に従うビット処理手順の例を示すフロー図である。
【
図6A】本開示の態様に従うHEC状態を生成するためのレジスタの例示的な回路図である。
【
図6B】本開示の態様に従うCRC状態を生成するためのレジスタの例示的な回路図である。
【
図7】本開示の態様に従うデータホワイトニングのためのレジスタの例示的な回路図である。
【
図8】本開示の態様に従う役割の切り替えを示す例示的なシーケンス図である。
【
図9】本開示の態様に従うシステムの例を示す機能ブロック図である。
【
図10】本開示の態様に従う例示的な方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、マスター/スレーブの役割を持つイヤホン、または他のペアリングされたワイヤレスアクセサリー間の役割の切り替えを、ホストデバイスに対して透過的な方法で提供する。切り替えプロセス中のオーディオの一時停止または切断は必要とされない。したがって、切り替えは、オーディオストリーミングの継続を感知できる状態で実行され得る。
【0013】
マスターの役割にある第1のイヤホン等の第1のワイヤレスアクセサリーデバイスは、ホストデバイスおよびスレーブの役割にある第2のデバイスの両方に対して、マスターとしての役割を果たすことを要求する。この点において、第1のデバイスは、第1のデバイスとホストとの間のホスト接続、および第1のデバイスと第2のデバイスとの間のデバイス接続の両方のマスタークロックとなることができる。第1デバイスおよび第2デバイスの両方は、ホストをリッスンする。マスター役の第1のデバイスは、ホストからオーディオコンテンツを受信し、スレーブ役の第2のデバイスにオーディオコンテンツを中継する。スレーブ役の第2のデバイスは、マスターから中継されたオーディオを受信する間に、ホストデバイスをリッスンし、第2の(スレーブ)デバイスおよびホストの間の信号強度を監視する。第2の(スレーブ)デバイスは、ホストからオーディオコンテンツを直接受信する必要はない。
【0014】
マスターの役割にある第1のデバイスは、その信号強度が予め設定された閾値を下回ったことを観測すると、第2のデバイスにメッセージを送信し、第2のデバイスの信号強度を要求する。スレーブの役割にある第2のデバイスが、予め定められた期間、第1のデバイスよりも良い信号強度を有する場合、第1のデバイスは、第2のデバイスとの役割の切り替えを要求してもよい。
【0015】
役割の切り替え手順が開始されたとき、マスターの役割にある第1のデバイスは、ホストデバイスに、オーディオの中断またはホストデバイスとの接続の解除を求める必要はない。むしろ、第1および第2のデバイスは情報を伝達する。特に、第1および第2のデバ
イスは、役割の切り替えを実行するための時点等、予め定められた切り替えアンカーポイントに合意する。マスターの役割にある第1のデバイスは、さらに、スレーブの役割にある第2のデバイスに、ホストデバイスと通信するためのオーディオリンクヘッダーを提供する。この点において、第2のデバイスは、切り替えアンカーポイントから始まるホストデバイスとの通信を行うために、オーディオリンクヘッダーを使用することができる。第1および第2のデバイスは、さらに、異なるランダム化カーネル(Randomization Kernels)からのCRC(Cyclic Redundancy Check)およびHEC(Header Error Check
)状態を交換する。これにより、ビット処理の連続性が確保される。第1のデバイスは、さらに、その代替周波数ホッピング(AFH)チャンネルマップを第2のデバイスに提供する。これは、AFHチャンネルマップが変更された任意のときに実行されてもよく、このような場合、第2のデバイスは、ホストに対するその更新された信号強度を決定するためにホストをリッスンすることができる。役割切り替えの後、第2のデバイスが新しいマスターになったとき、オーディオデコーダの状態は、第1のデバイス(古いマスター)から第2のデバイス(新しいマスター)に送信されてもよい。これにより、新しいマスターの役割にある第2のデバイス上で、オーディオパケットを継続的にデコードし得る。
【0016】
図1は、第1のアクセサリーデバイス110に通信可能に接続されたホストデバイス105を含む例示的なシステム100を示している。第1のアクセサリーデバイス110は、イヤホン、ワイヤレススピーカーなどの一対のアクセサリーデバイスのうちの1つであってもよい。第1のデバイス110は、マスターの役割で動作していてもよい。このように、第1のデバイス110は、ホストデバイスに接続されていることに加えて、スレーブの役割で動作している第2のアクセサリーデバイス120にさらに通信可能に接続されている。
【0017】
デバイス105、110、120の間の接続は、例えば、Bluetooth等の短距離ワイヤレスペアリングであってもよい。例えば、ホストデバイス105は、第1の非同期コネクションレス(ACL)リンク、同期コネクションオリエンテッド(SCO:Synchronous Connection-oriented)リンク等のホスト通信リンク152を介して第1のデバイス110に接続されてもよい。また、第1のデバイス110は、第2のACLリンク等の中継通信リンク154を介して、第2のデバイス120に接続されてもよい。
【0018】
図2は、
図1のシステムの一例を示しており、ホストデバイスは携帯電話205であり、プライマリーの役割で動作する第1のデバイスは第1のイヤホン210であり、セカンダリーの役割で動作する第2のデバイスは第2のイヤホン220である。ホスト通信リンク252は、携帯電話205および第1のイヤホン210の間に存在し、中継通信リンク254は、第1のイヤホン210および第2のイヤホン220の間に存在する。
【0019】
本例では、ホストデバイスを携帯電話として説明しているが、ホストデバイスは、オーディオ信号を送信することに適した任意の様々なタイプのデバイスであってもよいと理解されるべきである。例えば、ホストデバイスは、タブレット、スマートウォッチ、ゲームシステム、音楽プレーヤー、ラップトップ、パーソナルデジタルアシスタントデバイス、またはその他のコンピューティングデバイスであってもよい。同様に、第1および第2のアクセサリーは、ここではイヤホン210、220として示されているが、他の例では、スピーカーまたは他のオーディオデバイス、ビデオ出力ディスプレイ等の任意の組み合わせであってもよい。第1および第2のアクセサリーは、製造時にペアリングされていてもよいし、別々に販売されて後にユーザーによりペアリングされてもよい。
【0020】
いくつかの例において、第1および第2のアクセサリーは役割を切り替えることが望ましい場合がある。例えば、プライマリーの役割を提供するイヤホンは、ホストおよびセカンダリーの役割のデバイスの間の可能な接続と比べて、より低い質のホストへの信号強度
接続を有する場合がある。
図2の配置では、第1のイヤホン210は、ホストデバイス105がユーザーの体の反対側に保持されているため、ホストデバイス105に関して体を通過する経路の損失を受ける。これに対して、第2のイヤホン220は、ホストデバイス105とユーザーの体の同じ側にある。したがって、第2のイヤホン220は、第1のイヤホン210よりも、体を通過する経路の損失を受ける量は少ない。
【0021】
図3A~Eは、役割の切り替えの一例を示す図である。
図3Aにおいて、スレーブモードで動作する第2のデバイス220は、ホスト205および第2のデバイス220の間の潜在的な接続356を評価している。例えば、第2のデバイス220は、ホスト通信リンク252を介して、ホスト205および第1のイヤホン210の間の伝送をリッスンしてもよい。各送信について、第2のイヤホン220は、潜在的な接続356の信号品質基準を特定し、中継リンク256を介してそのような基準を第1のイヤホン210に転送してもよい。このような基準の例は、RSSI、平均信号強度等を含んでいてもよい。第1のイヤホン210は、同様に、ホストリンク252を介したその通信についてこのような基準を決定してもよい。第1のイヤホン210は、決定した基準を第2のイヤホン220に転送してもよい。したがって、イヤホン210、220は、信号品質基準の比較に基づいて、役割を切り替えるか否かをネゴシエートすることができる。いくつかの例によると、役割を切り替えるか否かの決定は、第1および第2のデバイスのバッテリーレベル等の他の条件にさらに基づいてもよい。例えば、マスターの役割を務めるデバイスは、スレーブの役割を務めるデバイスよりも多くの電力を消費する場合がある。したがって、例えば、マスターデバイスのバッテリーが予め定められたレベルまで消耗した場合には、スレーブデバイスと役割を切り替えることが望ましい場合がある。
【0022】
いくつかの例では、役割を交換するか否かの決定は、第1および第2のデバイス210、220の両方によって行われてもよいが、他の例では、決定は、デバイスの1つまたはサブセットのみによって行われてもよい。例えば、第2のイヤホン220は、潜在的な接続356の信号品質基準を第1のイヤホン210に転送してもよく、第1のイヤホン210は、それを自身の基準と比較し、役割交換を開始するか否かを決定する。あるいは、第1のイヤホン210は、その決定した基準を、第2のイヤホン220に転送してもよく、第2のイヤホン220は、比較を実行し、役割の切り替えを開始するか否かを決定する。
【0023】
さらに
図3Aに示されるように、第1および/または第2のデバイス210、220が役割を交換することを決定すると、第1および第2のデバイスは情報を通信する。特に、第1および第2のデバイス210、220は、予め定義された切り替えアンカーポイントを決定するために通信する。予め定義された切り替えアンカーポイントは、デバイスが役割を切り替える将来の時点であってもよい。将来の時点は、第1および第2のデバイスが切り替えの準備を完了した時点、切り替えがオーディオ品質に最も少ない影響を与える時点、または、これらもしくは他の要件の任意の組み合わせであってもよい。
【0024】
図3Bに示されるように、マスターの役割の第1のデバイス210は、ホストデバイス205と通信するためのオーディオリンクヘッダーを、スレーブの役割の第2のデバイス220にさらに提供する。これに関して、第2のデバイス220は、切り替えアンカーポイントで始まるホストデバイス205との通信を行うために、オーディオリンクヘッダーを使用することができる。
【0025】
図3Cに示されるように、第1および第2のデバイスは、異なるランダム化カーネルからのCRC(Cyclic Redundancy Check)およびHEC(Header Error Check)の状
態をさらに交換する。これにより、ビット処理の連続性が確保される。これについては、
図5~7に関連してさらに後述する。
【0026】
図3Dに示されるように、第1のデバイスは、さらに、その代替周波数ホッピング(AFH)チャンネルマップを第2のデバイスに提供する。これは、第2のデバイスがホストに関してその更新された信号強度を決定するためにホストをリッスンすることができるように、AFHチャンネルマップが変化するときにいつでも実行されてもよい。
【0027】
図3Eにおいて、第1および第2のデバイス210、220は、第2のデバイス220がマスターの役割を務めるように、役割を切り替えている。例えば、第1および第2のデバイス210、220は、切り替えアンカーポイントに到達していてもよい。このように、第2のデバイス220は、
図3Bで得られたオーディオリンクヘッダーを使用して、ホストデバイス205との通信を開始する。第2のデバイス220は、第1のデバイス210からのパケットヘッダーからの同じ論理リンクアドレスを使用しているため、ホストデバイス205は、異なるデバイスとの通信を開始したことに気づかない可能性がある。
【0028】
図3Fにおいて、第2のデバイスが新しいマスターになったとき、オーディオデコーダの状態は、第1のデバイス210(古いマスター)から第2のデバイス220(新しいマスター)に送信されてもよい。これにより、新しいマスターの役割を務める第2のデバイス220において、オーディオパケットを連続的にデコードすることができるであろう。
【0029】
図4は、Bluetooth等の短距離ワイヤレス通信のパケットヘッダー400の例を示す図である。パケットヘッダー400は、複数の異なるフィールドに複数のビットを含んでいてもよい。例えば、このようなフィールドは、論理トランスポート(LT_ADDR)フィールド410、タイプフィールド420、フローフィールド430、自動リピート要求番号(ARQN)フィールド440、シーケンス番号フィールド450、およびヘッダーエラーチェック(HEC)フィールド460を含んでもよい。これらは、パケットヘッダー400に含まれるフィールドの単なる例であり、他の例では、追加の、より少ない、または異なるフィールドがパケットヘッダーに含まれてもよいことが理解されるべきである。
【0030】
LT_ADDRフィールド410は、ホストデバイスおよびマスターアクセサリーデバイス間のホスト通信リンクを参照する。例えば、各アクセサリーデバイスは、ホストデバイスとペアリングされるときに、デフォルトの論理トランスポートを受け取ってもよい。各論理トランスポートは、例えば、論理リンク識別子によって区別される1つまたは複数の論理リンクを含んでいてもよい。
【0031】
マスターの役割にある第1のデバイスは、ホストデバイスと通信するためのヘッダー400のようなオーディオリンクヘッダーを、スレーブの役割にある第2のデバイスに渡す。このようなリンクヘッダーは、ホストデバイスからマスターイヤホンへの最後のパケットの時刻と、切り替えアンカーポイントの時刻との間で渡されてもよい。第2のデバイスは、LT_ADDRフィールド410を使用して、論理トランスポート上で通信してもよい。このようにして、第2のデバイスは、切り替えアンカーポイントを起点として、マスターになり、マスターとして動作することができる。例えば、第1のデバイスおよび第2のデバイスは、いずれかのデバイスがマスターの役割を務めているときに、パケットヘッダーからのLT_ADDRを使用して、論理トランスポート上の通信を引き受けるという点で、論理トランスポートを共有してもよい。ホストデバイスは、ある時点において、第1のデバイスおよび第2のデバイスのどちらが論理トランスポート上で通信しているかを知らず、切り替えに気づかなくてもよい。
【0032】
図5は、パケットのビットストリーム形成処理を示す図である。ビット処理を継続するために、第1のデバイスおよび第2のデバイスの間で、異なるランダム化カーネルからの巡回冗長チェック(CRC)およびヘッダーエラーチェック(HEC)の状態が交換され
る。各ヘッダーは、ヘッダーの整合性をチェックするために、HECを有していてもよい。HECは、例えば、以下の
図6Aに示されるようなHEC生成器によって生成された8ビットのワードであってもよい。HECを生成する前に、HEC生成器は、第1のデバイス、第2のデバイス、またはそれらの間で送信されるパケットに関連するアドレスまたは他の情報を使用する等して、8ビットの値で初期化される。生成されたHECはチェックされ、HECがチェックされない場合は、パケット全体が廃棄されてもよい。
【0033】
パケットのビットストリームは、
図5に示されるように、CRCおよびHECを用いて形成され得る。例えば、パケットのペイロードが入力され、ペイロードのCRCが付加された後に、ペイロードの前にヘッダーが付加される。ヘッダーの内容はHECにより保護される。パケットの送信の際には、パケットは暗号化されてからホワイトニングされてもよい。暗号化は、AES―CCMなどの様々な形式の暗号化のいずれかであってもよい。ホワイトニングは、例えば、ビット列をランダム化し、そのスペクトルをほぼホワイトノイズのようにすることであってもよい。その結果は、符号化され、無線周波数(RF:Radio Frequency)インターフェイスに送信されてもよい。例えば、ペイロードが処理されて、ヘッダーが物理層(PHY:Physical Layer)パケットに追加された後に、デジタ
ル変調とRFキャリア変調を行って予め定められた周波数で送信できるように、PHYパケットはRFチェーンに送られてもよい。パケットを受信する際には、パケットは、CRCチェックのために、デコード、デホワイトニング(de-whitened)、復号化(decrypt)されてもよい。
【0034】
CRCおよびHECの状態は、パケットが入ってくるたびに変化する。例えば、CRCおよびHECは、更新されたCRCを生成するための第1のリニアフィードバックシフトレジスタ(LFSR:Linear Feedback Shift Register)およびHECを生成するた
めの第2のLFSR等の1つまたは複数のシード制御レジスタに、受信したパケットからの情報を入力することで、生成されてもよい。
【0035】
図6Aは、HECを生成する第1のLFSR回路の一例を示す図である。ヘッダービット等のデータは、例えば最下位ビットを先頭にしてLFSRに入力される。全てのヘッダービットがLFSRを通過した後、LFSRから読み出されるのはHECである。
【0036】
図6Bは、CRCを生成する第2のLFSR回路の一例を示す図である。パケットペイロードビット等のデータは、例えば最下位ビットを先頭にしてLFSRに入力される。例えば、CRC用の16ビットのLFSRは、HEC用のLFSRと同様に構成され得る。いくつかの例によると、左端の8ビットには8ビットのUAPが最初にロードされ、右端の8ビットはゼロにリセットされていてもよい。データがシフトインされている(shifted in)間、スイッチSはポジション1に設定される。最後のビットがLFSRに入力さ
れた後、スイッチはポジション2に設定され、レジスタの内容が右から左に送信される。レジスタから読み出されるのはCRCである。
【0037】
CRCおよびHECは、最初のリンク確立開始時に異なる初期値を持っていてもよい。CRC/HECの最新の状態をシードコントロールレジスタに書き込むことができれば、処理は、ホストデバイスに知られることなく、役割を切り替えたマスターおよびスレーブイヤホンにより実行され得る。
【0038】
図7は、データホワイトニングのためのLFSRの例を示している。ホワイトニングの元となるシード値は、マスタークロックから取得され得る。マスターイヤホン、スレーブイヤホン、およびホストデバイスの全ては、マスタークロックに同期しているので、ホワイトニング処理は、マスターイヤホンとスレーブイヤホンに追加の状態情報の交換を要求しない。
【0039】
暗号化は、マスターイヤホンおよびスレーブイヤホンの間で情報が交換されることを必要とするかもしれない。これを避けるために、イヤホン間の役割切り替えの前に、マスターイヤホンは、暗号化を停止するための役割の切り替えをホストデバイスに求めることができる。このマスターイヤホンおよびホストの役割切り替えは、暗号化を停止するための追加の時間消費を避けるために、マスターイヤホンおよびスレーブイヤホンの役割切り替え時間と同時に設定されてもよい。役割切り替えの後、新しいマスターイヤホンは、ホストデバイスに暗号化の再開を求めることができる。このようにして、マスターイヤホンおよびスレーブイヤホンが暗号化エンジンの状態を交換する必要がないように、全ての暗号化シードが初期状態からスタートすることができる。役割切り替え手順が、ホストからイヤホンへの2つのオーディオパケット配信の間のおおよその時間間隔よりも長くかかる場合、マスターデバイスは、ホストデバイスに対して否定的な確認応答(NACK:Negative Acknowledgement)を行うことができる。これは、マスターデバイスが既にパケット
を受信しているが、暗号化の開始または停止の完了までの時間を確保したい場合でも同様である。
【0040】
第2のデバイスがホストデバイスに対して正しいチャンネルで通信できるようにするために、第1のデバイスは、AFHチャンネルマップが変更されるたびに、その代替周波数ホッピング(AFH)チャンネルマップを第2のデバイスに送信する。第2のデバイスは、マスターになる前にAFHチャンネルマップを使用してホストデバイスをリッスンしてもよく、例えば、ホストデバイスに関する測定された信号強度を更新し得る。切り替えアンカーポイントの前に、第1のデバイスでAFHチャンネルマップが再び変わった場合、第1のデバイスは、第2のデバイスがホストデバイスに通信するために正しいチャンネルにジャンプできるように、切り替えアンカーポイントの前に、新しいAFHチャンネルマップを第2のデバイスに送信する。他の例では、第1のデバイスは、アンカーポイントの後に、更新されたAFHチャンネルマップを第2のデバイスに送信してもよい。更新されたチャンネルマップがアンカーの前に送信されるか後に送信されるかのタイミングは、例えば、ホストがアンカーポイントでまたはアンカーポイントのすぐ後に、マスターにパケットを送信するかに依存してもよい。
【0041】
役割の切り替えの後、オーディオパケットは、その新しいマスターの役割にある第2のデバイスで継続的にデコードされるべきである。したがって、オーディオデコーダの状態は、第1のデバイス(旧マスター)から第2のデバイス(新マスター)に送信されてもよい。使用されるコーデックに応じて、転送されるデータ量が異なってもよい。例えば、異なるコーデックは、エンコーダ状態の異なる複雑さのエンコーダ状態を有してもよい。例を挙げると、アドバンスドオーディオコーディング(AAC:Advanced Audio Coding
)コーデックは、複雑性の低いサブバンド(SBC:Sub-Band)コーデックと比較して複雑である場合がある。したがって、コーデックの状態の転送は、コーデックによって異なる量のデータを必要とし得る。簡易版としては、第2のデバイス(新マスター)のデコーダを初期状態にしておく。最初のパケットが新しいマスターの役割を務める第2のデバイスに入ってくると、デコーダが新たに開始したかのように、そのパケットはでコードされる。デコーダは、フルスケールパルスコードモジュレーション(PCM:Pulse-Code Modulation)ストリームをランプアップ(ramp up)して与えるために、フレームを必要とする。オーディオストリームの途中でランプアップすると、オーディオストリームが短時間無音になる。しかし、第1および第2のデバイスは、その短時間の無音状態がデコーダの初期化のためであることを理解できる。したがって、一部の種類のトラフィックでは、新しいマスターである第2のデバイスは、パケットロスコンシールメント(PLC:Packet Loss Concealment)アルゴリズムをオンにして、ホストデバイスから第2のデバイ
ス(新しいマスター)に入ってくる最初のフレームのデコーダの出力の最初にあるデータを平滑化することができる。
【0042】
図8は、第1のデバイスおよび第2のデバイスの間の役割切り替えに至るまで、その間、およびその後のイベントのシーケンスを例示するシーケンス図である。これは単なる例示であり、他の例ではイベントの順序が異なったり、イベントが同時に発生したりしてもよいことは理解されるべきである。
【0043】
図示されているように、ホストデバイス105は、マスターの役割を務める第1のデバイス110にパケットを送信し、第1のデバイス110は、受信したパケットをスレーブの役割を務める第2のデバイス120に中継する。第1および第2のデバイス110、120は、ホストデバイスに対する信号強度、バッテリー寿命等の基準を測定および交換する。基準に応じて、第1および第2のデバイスは、役割の切り替えを行うか否かをネゴシエートし、役割の切り替えを行う場合は、さらに切り替えアンカーポイントをネゴシエートする。
【0044】
第1および第2のデバイス110、120は、アンカーポイントの前に役割切り替えの準備をする際に、ホスト105からパケットを受信して中継し続けてもよい。役割切り替えの準備として、第1のデバイス110は、ホストデバイスと通信するための論理リンク情報を含むパケットヘッダーを送信してもよい。例えば、パケットヘッダーは、ホストデバイスから中継されるオーディオデータパケットに先立って送信されてもよい。論理リンク情報は、例えば、LT_ADDRフィールドであってもよい。
【0045】
第1および第2のデバイス110、120は、HECおよびCRCの状態情報を交換する。さらに、第1のデバイス110は、そのAFHチャンネルマップを送信する。マップはアンカーポイントの前に送信されるように図示されているが、他の例ではアンカーポイントの後に送信されてもよい。さらに、HEC/CRC情報およびAFHチャンネルマップは、それらが更新されるたび等の複数のタイミングで送信されてもよいことが理解されるべきである。
【0046】
アンカーポイントでは、第1および第2のデバイス111、120は、第2のデバイス120が第1のデバイス110に対してマスターとなり、第1のデバイス110がスレーブとなるように、役割の切り替えを行う。したがって、第2のデバイス120は、パケットヘッダー内の受信した論理リンク情報を用いて、ホスト105との直接通信を開始してもよい。
【0047】
第1のデバイス110は、第2のデバイス120で受信したホスト105からのパケットをデコードするために、デコード情報を第2のデバイス120に送信してもよい。したがって、第2のデバイス120は、マスターの役割を務め、ホスト105からパケットを受信し、そのパケットを第1のデバイス110に中継してもよい。
【0048】
図9は、第1のデバイス110および第2のデバイス120の内部構成要素の一例を示す。多数の内部構成要素が示されているが、追加のまたはより少ない構成要素が含まれてもよいことが理解されるべきである。例示に過ぎないが、デバイスは、スピーカー、マイクロフォン等の再生デバイスに典型的に見られる構成要素を含んでもよい。また、デバイスは、例えば、イヤホン、スピーカー、ディスプレイなどのワイヤレスアクセサリーであってもよい。デバイスは、第1のデバイス110に関して主に以下のように説明される。第2のデバイス120は、いくつかの例では、第1のデバイス110と類似または同一であってもよいが、他の例では、第2のデバイス120は、異なるタイプのデバイスであってもよい。さらにまたは代替的に、第2のデバイス120は、異なる内部構成要素を有していてもよい。
【0049】
第1のデバイス110は、1つまたは複数のプロセッサ916、1つまたは複数のメモリー912のほか、他の構成要素を含んでいてもよい。例えば、コンピューティングデバイス110は、1つまたは複数のセンサー918、ワイヤレスペアリングインターフェイス919、およびバッテリー917を含んでいてもよい。
【0050】
メモリー912は、1つまたは複数のプロセッサ916によってアクセス可能な、1つまたは複数のプロセッサ916によって実行またはその他の方法で使用され得るデータ914、命令915を含む情報を格納してもよい。例えば、メモリー912は、コンピューティングデバイス読み取り可能な媒体、または、揮発性メモリー、不揮発性だけでなく、他の書き込み可能なメモリーおよび読み取り専用のメモリー等の電子デバイスの助けを借りて読み取ることができるデータを格納する他の媒体を含む、プロセッサ(複数可)によってアクセス可能な情報を格納することができる任意のタイプのものであってもよい。例示に過ぎないが、メモリー912は、高速ルックアップを提供するように構成されたスタティック・ランダム・アクセス・メモリー(SRAM:Static Random-access Memory
)であってもよい。システムおよび方法は、前述したものの異なる組み合わせを含んでもよく、それにより、命令およびデータの異なる部分が異なるタイプの媒体に格納される。
【0051】
データ914は、命令915に従って、1つまたは複数のプロセッサ916によって、検索、格納、または修正されてもよい。例えば、データ914は、Bluetoothプロファイルのような短距離ワイヤレス通信プロファイルを含んでもよい。データ914は、ホストデバイスから受信したパケットを格納するオーディオバッファ等、バッファリングされたパケットをさらに含んでもよい。請求項にかかる主題は、いかなる特定のデータ構造によっても限定されないが、データは、コンピューティングデバイスのレジスタに、複数の異なるフィールドおよびレコードを有するテーブルとしてのリレーショナルデータベースに、XMLドキュメントまたはフラットファイルに格納されてもよい。また、データは、任意のコンピューティングデバイス読み取り可能なフォーマットでフォーマットされてもよい。
【0052】
命令915は、1つまたは複数のプロセッサ916によって直接(マシンコード等)または間接的(スクリプト等)に実行される命令の任意のセットであってもよい。例えば、命令は、コンピューティングデバイス読取可能媒体上に、コンピューティングデバイスコードとして格納されてもよい。これに関連して、「命令」および「プログラム」という用語は、本明細書において互換的に使用されてもよい。命令は、プロセッサによる直接処理のためのオブジェクトコード形式で、または、オンデマンドで解釈されるか事前にコンパイルされるスクリプトまたは独立したソースコードモジュールのコレクションを含む任意の他のコンピューティングデバイス言語で格納されてもよい。命令の機能、方法、およびルーチンは、以下でより詳細に説明される。
【0053】
1つまたは複数のプロセッサ916は、マイクロプロセッサ、デバイス110自体にハードワイヤードされた論理回路(例えば、論理ゲート、フリップフロップ等)であってもよく、または、専用のASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよい。1つまたは複数のプロセッサ916は、ハードワイヤードの論理回路に限定されず、任意の市販の処理デバイス、またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)等の任意のハードウェアベースのプロセッサを含んでもよいことが理解されるべきである。いくつかの例では、1つまたは複数のプロセッサ916は、ステートマシンを含んでいてもよい。プロセッサ916は、命令915を実行して、例えば、
図10に関連して以下に説明するような方法を実行するように構成されてもよい。
【0054】
1つまたは複数のセンサー918は、役割切り替えに関連する条件を検出するための様
々な機械的または電気機械的センサーのいずれかを含んでもよい。このようなセンサーは、例えば、加速度計、ジャイロスコープ、スイッチ、光センサー、気圧計、音声センサー(例えば、マイクロフォン)、振動センサー、熱センサー、無線周波(RF:Radio Frequency)センサー等を含んでもよい。これに関連して、デバイス110は、デバイスがそのペアリングされたデバイスと役割を切り替えるべきであることを示す条件を検出してもよい。一例として、センサーは、受信した信号強度を検出してもよく、受信した信号強度をペアリングされたデバイスの信号強度と比較してもよい。このように、デバイス110とそのペアリングされたデバイスは、役割を切り替えるか否かをネゴシエートすることができる。他の例として、センサーは、バッテリー寿命、信号品質、動き等の他のパラメータを検出してもよい。
【0055】
短距離ワイヤレスペアリングインターフェイス919は、ペアリングされた第2のデバイス120またはオーディオパケットを提供する携帯電話等のホストデバイス等の他のデバイスとの接続を形成するために使用されてもよい。接続は、例えば、Bluetooth接続または他のタイプのワイヤレスペアリングであってもよい。例示に過ぎないが、各接続は、ACLリンクを含んでいてもよい。
【0056】
図9は、デバイス110のプロセッサ、メモリー、および他の要素を同じブロック内にあるものとして機能的に図示しているが、プロセッサおよびメモリーは、実際には、同じ物理的ハウジング内に格納されていてもいなくてもよい複数のプロセッサおよびメモリーを含んでいてもよいことは、当業者には理解されるであろう。例えば、メモリー912は、コンピューティングデバイス110のものとは異なる囲い(casing)に配置された揮発性メモリーまたは他のタイプのメモリーであってもよい。さらに、上述した様々な構成要素は、1つまたは複数の電子デバイスの一部であってもよい。
【0057】
この例では、第2のデバイス120は、デバイス110のアーキテクチャと同様の内部アーキテクチャを有する。例えば、第2のデバイス120は、データ924と、1つまたは複数のプロセッサ926によって実行され得る命令925とを格納するメモリー922を含む。第2のデバイス120は、バッテリー927、センサー928、Bluetoothインターフェイス等の通信インターフェイス929をさらに含む。第2のデバイス120は、第1のデバイス110の命令915とは異なる命令925のセットを実行するものとして示されているが、両方のデバイス110、120は、プライマリーからセカンダリーへ、およびセカンダリーからプライマリーへの役割切り替えを実行するようにプログラムされてもよいことが理解されるべきである。
【0058】
上述したように、命令915および925は、シームレスな役割切り替えを行うために実行され得る。役割切り替えは、ネゴシエートされたアンカーポイントで実行されてもよく、また、ホストデバイスへの通知、更新、またはその他の方法による関与なしに実行されてもよい。
【0059】
図10は、第1のワイヤレスアクセサリーと第2のワイヤレスアクセサリーとの間で役割の切り替えを実行する例示的な方法1000を示すフロー図である。上述したように、第1および第2のデバイスは、多数のタイプのデバイスのいずれかであってもよい。例えば、第1および第2のデバイスは、一対のイヤホン、サラウンド・サウンド・スピーカー等であってもよい。動作は特定の順序で図示および説明されているが、順序は変更されてもよく、動作は追加または省略されてもよいことが理解されるべきである。
【0060】
ブロック1005、1010において、第1および第2のデバイスは、役割を切り替えるか否かをネゴシエートする。例えば、一方または両方のデバイスは、第1および第2のデバイスによって測定された信号強度または他の条件を比較してもよい。デバイスが役割
の切り替えを行うべきと判断した場合、デバイスはさらに切り替え時間のアンカーポイントをネゴシエートする。アンカーポイントは、例えば、役割切り替えの準備のための十分な時間を可能にする予め定められた遅延、ランダムな時間、役割切り替えによる信号品質への影響が最も少ない時間、または他の様々な要因のいずれかに基づいて選択され得る。
【0061】
ブロック1015において、第1のデバイスが論理リンク情報を送信し、ブロック1020において、これが第2のデバイスにより受信される。論理リンク情報は、例えば、パケットヘッダーで送信されてもよい。例えば、論理インク情報は、パケットヘッダーのLT_ADDRフィールドに含まれていてもよい。論理リンク情報は、第1のデバイスがホストデバイスと通信するために用いる情報であってもよい。第2のデバイスと情報を共有することにより、第1のデバイスは、役割切り替え後のホストデバイスとの通信に論理リンク情報を使用することを第2のデバイスに許可する。
【0062】
ブロック1025、1030において、第1および第2のデバイスは、HEC/CRCの状態を交換し、それによって役割切り替え後の継続的なビットエラー処理を可能にする。
【0063】
ブロック1035において、第1のデバイスは、AFHチャンネルマップを送信し、ブロック1040において、これは第2のデバイスによって受信される。ブロック1045において、第1のデバイスはデコーダ状態を送信し、ブロック1050において、これは第2のデバイスによって受信される。このようなデコーダ状態は、ホストデバイスから受信したパケットをデコードするために、役割切り替え後の第2のデバイスによって使用されてもよい。
【0064】
デバイスが予め定められた切り替えアンカーポイントに到達すると、デバイスは役割を切り替えることができる。したがって、ブロック1060において、第2のデバイスは、ブロック1020で受信した論理リンク情報を用いて、ホストデバイスとの直接通信を開始する。第1のデバイスは、スレーブの役割に移行する。 そのため、第2のデバイスが
受信したホストからのパケットは、第1のデバイスに中継される。ホストデバイスは、役割の切り替えが発生したことを気づかないかもしれない。
【0065】
上述のシステムおよび方法は、オーディオの知覚可能なグリッチなしに役割の切り替えを提供するという点で有利である。このように、ペアリングされたデバイス間のマスター/スレーブの役割は、オーディオ品質を損なうことなく、有益になるだけ頻繁に切り替えられることができる。このような切り替えは、バッテリー寿命を維持し、オーディオ品質(例えば、信号強度の向上の結果)等を向上させることであろう。
【0066】
特に明記しない限り、前述の代替例は相互に排他的なものではなく、独自の利点を達成するために、様々な組み合わせで実現され得る。上述した特徴のこれらおよび他の変形および組み合わせは、特許請求の範囲によって定義された主題から逸脱することなく利用することができるので、実施形態の前述の説明は、特許請求の範囲によって定義された主題を限定するものではなく、例示として取られるべきである。さらに、本明細書に記載された例や、「~等」、「~を含む」などと表現された句の提供は、特許請求の範囲の主題を特定の例に限定するものと解釈されるべきではなく、むしろ、例は、多くの可能な実施形態のうちの1つだけを説明することを意図したものである。さらに、異なる図面における同じ参照符号は、同一または類似の要素を識別することができる。