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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/66 20230101AFI20240628BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20240628BHJP
   B64U 20/87 20230101ALI20240628BHJP
   G05D 1/222 20240101ALI20240628BHJP
   G05D 1/224 20240101ALI20240628BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20240628BHJP
   H04N 23/695 20230101ALI20240628BHJP
【FI】
H04N23/66
B64U10/13
B64U20/87
G05D1/222
G05D1/224
H04N23/60 300
H04N23/60 500
H04N23/695
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023185741
(22)【出願日】2023-10-30
(62)【分割の表示】P 2019159699の分割
【原出願日】2019-09-02
(65)【公開番号】P2024016114
(43)【公開日】2024-02-06
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 進
(72)【発明者】
【氏名】長尾 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】徳田 靖之
【審査官】佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-160228(JP,A)
【文献】国際公開第2015/163106(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/073878(WO,A1)
【文献】特開2018-186375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/66
B64U 10/13
B64U 20/87
G05D 1/222
G05D 1/224
H04N 23/60
H04N 23/695
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像機能を備えた無人飛翔装置を制御する端末に、
対象を撮像するように前記無人飛翔装置の第1動作を設定するための情報を取得する機能と、
前記無人飛翔装置が前記第1動作を行った結果得られた画像を前記無人飛翔装置から取得する機能と、
前記画像を用いてユーザから前記対象の一部の指定を受け付ける機能と、
前記第1動作において得られた前記対象の指定された一部の画像よりも詳しい前記対象の指定された一部の画像を取得するように、前記無人飛翔装置の第2動作を設定する機能と、
前記対象の指定された一部を特定する特定情報と、当該一部を撮像するために決定された飛行経路と、を保持手段に登録する機能と、
前記特定情報に対応する前記対象の指定された一部を再度撮像するための要求を受けると、前記保持手段に保持されている、当該一部を撮像するための飛行経路を再度設定する機能と、を実現させ、
前記画像を用いて前記ユーザから前記対象の一部の指定を受け付ける機能は、前記ユーザから受け付けた前記対象の一部の指定を示す領域を前記画像上に着色した態様で表示することを含む、
ためのコンピュータプログラム。
【請求項2】
前記対象の一部の指定を受け付ける際に用いられた画像と、前記無人飛翔装置の撮像機能により取得される現在の画像と、を比較することにより、前記対象の指定された一部を撮像するための位置または姿勢を調整するように、前記無人飛翔装置を制御する機能をさらに前記端末に実現させる請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項3】
異なる時点の前記第2動作において得られた前記対象の指定された一部の画像または当該画像により生成された三次元モデルを、比較可能な態様でディスプレイに表示させる機能をさらに前記端末に実現させる請求項1又は2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項4】
前記第1動作において取得された前記対象の指定された一部の画像よりも詳しい前記対象の指定された一部の画像である第1画像を取得したときの前記無人飛翔装置の位置と、前記第1画像のファイルとを互いに関連付けて保持する機能をさらに前記端末に実現させる、請求項1から3のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
前記第1動作の間に取得され、前記無人飛翔装置から逐次送信される、前記対象の指定された一部の画像である第2画像と、当該第2画像が取得された時刻と、当該第2画像が取得された位置とを受け付けて保持する機能をさらに前記端末に実現させる、請求項1から4のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像機能を備えた無人飛翔装置を制御するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電池の小型軽量化、ジャイロセンサや加速度センサなどのセンサの高度化により、ドローンと呼ばれる無人小型飛行装置の操作安定性が向上し、そのようなドローンが安価で供給されるようになってきた。我が国の経済産業省は「空の産業革命」を提唱し、ドローンの安全な利活用のための技術開発と環境整備を推進している(例えば、非特許文献4参照)。
【0003】
特許文献1には、ドローンで空撮を行い対象の三次元モデルを生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2018/0218533号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】https://www.dji.com/jp/mavic、令和1年8月21日検索
【文献】https://dronebank.jp/dronedeploy/index.html、令和1年8月21日検索
【文献】https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2018/20181107_01/、令和1年8月22日検索
【文献】https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/robot/drone.html、令和1年8月22日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ドローンのカメラで撮影した画像から三次元モデルを生成する場合、ドローンとその制御端末との通信速度がボトルネックとなる可能性がある。特に対象の詳細な三次元モデルを生成するためには、解像度の高いすなわちサイズの大きい画像を数多く取得し、ドローンから処理端末へ送信する必要がある。しかしながら、ドローンと処理端末との通信は無線であり、短期間に大量のデータを送受信するには不向きである。または、そのような送受信を実現するような高速・大容量の無線通信モジュールを搭載しようとすると、ドローンのコストが増大する。
【0007】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、コストの増大を抑制しつつ、ドローンを用いた対象の詳細な検査を可能とする支援技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、コンピュータプログラムに関する。このコンピュータプログラムは、撮像機能を備えた無人飛翔装置を制御する端末に、対象を撮像するように前記無人飛翔装置の第1動作を設定するための情報を取得する機能と、前記無人飛翔装置が前記第1動作を行った結果得られた画像を前記無人飛翔装置から取得する機能と、前記画像を用いてユーザから前記対象の一部の指定を受け付ける機能と、前記第1動作において得られた前記対象の指定された一部の画像よりも詳しい前記対象の指定された一部の画像を取得するように、前記無人飛翔装置の第2動作を設定する機能と、前記対象の指定された一部を特定する特定情報と、当該一部を撮像するために決定された飛行経路と、を保持手段に登録する機能と、前記特定情報に対応する前記対象の指定された一部を再度撮像するための要求を受けると、前記保持手段に保持されている、当該一部を撮像するための飛行経路を再度設定する機能と、を実現させ、前記画像を用いて前記ユーザから前記対象の一部の指定を受け付ける機能は、前記ユーザから受け付けた前記対象の一部の指定を示す領域を前記画像上に着色した態様で表示することを含む。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コストの増大を抑制しつつ、ドローンを用いた対象の詳細な検査を可能とする支援技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る検査支援システムを説明するための模式図である。
図2】基地局装置に対応して設定された概要飛行経路に従いドローンが飛行し、基地局装置を撮像する様子を示す模式図である。
図3】生成された概要三次元モデルにおいてユーザから詳細を確認する部位の指定を受け付ける様子を示す模式図である。
図4】基地局装置の指定部位に対応して設定された詳細飛行経路に従いドローンが飛行し、指定部位を撮像する様子を示す模式図である。
図5】生成された詳細三次元モデルをユーザが確認している様子を示す模式図である。
図6図1の携帯端末のハードウエア構成図である。
図7図1の携帯端末の機能および構成を示すブロック図である。
図8図7の概要画像情報保持部の一例を示すデータ構造図である。
図9図7の詳細画像情報保持部の一例を示すデータ構造図である。
図10図7の詳細飛行履歴保持部の一例を示すデータ構造図である。
図11図1の携帯端末における一連の処理の流れを示すフローチャートである。
図12】携帯端末のディスプレイに表示される詳細撮像履歴選択画面の代表画面図である。
図13】携帯端末のディスプレイに表示される指定部位確認画面の代表画面図である。
図14】携帯端末のディスプレイに表示される指定部位変遷画面の代表画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面において説明上重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
図1は、実施の形態に係る検査支援システム2を説明するための模式図である。検査支援システム2は、作業者(ユーザ4)が行う検査対象の検査を、ドローン8などの無人飛翔装置を用いて支援する。本実施の形態では、検査対象として携帯電話網の基地局装置6を想定するが、検査対象は基地局装置6に限られず、他の実施の形態では例えば送電線などの電力関連のインフラ設備や、ビル、橋梁、ダムなどの建築物を検査対象としてもよい。
【0014】
検査支援システム2は、ユーザ4の携帯端末10と、ドローン8と、を備える。携帯端末10とドローン8とは通信可能に構成され、この通信は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)などの直接的な無線通信手段により実現されてもよいし、携帯電話網やインターネットなどのネットワークを介して実現されてもよい。携帯端末10はドローン8を制御する端末である。
【0015】
携帯端末10は、スマートフォンやタブレット型端末やノートPCや専用のコントローラなどの携帯端末である。ユーザ4は、ダウンロードサイトからネットワークを介して検査支援アプリケーションプログラム(以下、検査支援アプリという)を携帯端末10にダウンロードし、インストールする。あるいはまた、検査支援アプリは携帯端末10にプリインストールされていてもよい。さらにまた、検査支援アプリはASP型やSaaS型で構成されてもよい。検査支援アプリが携帯端末10により実行されることにより、携帯端末10はドローン8と通信し、各種機能を実現する。以下、携帯端末10(のCPU(Central Processing Unit)等の処理ユニット)が検査支援アプリを実行することにより実現する機能を携帯端末10の機能として説明することがあるが、それらの機能は実際は検査支援アプリが携帯端末10に実現させる機能である。
【0016】
ドローン8は、無人で飛行する比較的小型の装置であり、無線通信を介した遠隔操作により飛行してもよいし、自律飛行してもよい。本実施の形態では、ドローン8として、カメラなどの撮像機能と、GPS(Global Positioning System)などの測位機能と、携帯端末10との通信機能と、を備える汎用のドローン、例えばDJI Mavic Pro(非特許文献1参照)等、を想定している。
【0017】
図1を参照すると、まずユーザ4は携帯端末10のディスプレイ102上で、ドローン8により撮像する領域(以下、撮像領域12と称す)を指定する。特にユーザ4は、ディスプレイ102に表示される電子地図上で、検査対象である基地局装置6を指定した上で、当該基地局装置6が撮像領域12に入るように、撮像領域12を設定する。基地局装置6などの検査対象は、電子地図上で指定可能なオブジェクトとして表示されてもよい。撮像領域12は、ユーザ4がディスプレイ102上でタップした点14を結ぶ多角形により指定されてもよい。あるいはまた、撮像領域12は、基地局装置6に対応するオブジェクトが電子地図上で選択されると自動的に設定されてもよい。例えば、撮像領域12は、基地局装置6の位置を中心とする所定の半径の円領域に設定されてもよい。
【0018】
図2は、基地局装置6に対応して設定された概要飛行経路16に従いドローン8が飛行し、基地局装置6を撮像する様子を示す模式図である。ユーザ4により基地局装置6およびそれに関連する撮像領域12が指定されると、携帯端末10は指定された基地局装置6の概要的なまたは粗い三次元モデル(以下、概要三次元モデルと称す)を生成するために必要な画像を取得できるように、ドローン8の概要飛行経路16を設定する。
【0019】
図2を参照すると、ドローン8は概要飛行経路16に従って飛行しながら、基地局装置6を撮像し、得られた画像を携帯端末10に送信する。携帯端末10は、取得した画像を用いて基地局装置6の概要三次元モデルを生成する。ドローン8の概要飛行経路16の設定およびドローン8から取得された画像を用いた概要三次元モデルの生成は、公知のDrone 3D Mappping技術(例えば、非特許文献2参照)を用いて実現されてもよい。
【0020】
図3は、生成された概要三次元モデル18においてユーザ4から詳細を確認する部位の指定を受け付ける様子を示す模式図である。携帯端末10は、生成された基地局装置6の概要三次元モデル18をディスプレイ102に表示させる。ユーザ4は、基地局装置6の部位のうち詳細を確認したい部位を、ディスプレイ102に表示された概要三次元モデル18に対して矩形20を描くことで指定する。携帯端末10は、矩形20内の部位を指定部位として特定する。携帯端末10は、概要飛行経路16において指定部位を撮像したときの測位情報などに基づいて、指定部位の詳細なまたは精細な三次元モデル(以下、詳細三次元モデルと称す)を生成するために必要な画像を取得できるように、ドローン8の詳細飛行経路22を設定する。詳細三次元モデルは概要三次元モデルよりも粒度が小さい、および/または、解像度が高い、および/または、オブジェクトごとのデータ量が大きい。
【0021】
なお、色や線種や形状の異なる複数の種類の矩形20が使用可能であってもよく、その場合、異なる種類の矩形は異なる指示内容に対応してもよい。例えば、赤枠の矩形で指定した場合、携帯端末10はそれを当該矩形の面のみを詳細に撮像する指示として解釈してもよい。青枠の矩形で指定した場合、携帯端末10はそれを当該矩形内の部位を全方位で詳細に撮像する指示として解釈してもよい。また、矩形だけでなく、円、三角等の形状でもよく、領域を指定できるものであればよい。領域ではなく、ユーザは点のみを指定し、その点の周りを対象領域とするものであってもよい。
【0022】
図4は、基地局装置6の指定部位に対応して設定された詳細飛行経路22に従いドローン8が飛行し、指定部位を撮像する様子を示す模式図である。ドローン8は詳細飛行経路22に従って飛行しながら、基地局装置6の指定部位を撮像し、得られた画像を携帯端末10に送信する。携帯端末10は、取得した画像を用いて指定部位の詳細三次元モデル24を生成する。
【0023】
図5は、生成された詳細三次元モデル24をユーザ4が確認している様子を示す模式図である。携帯端末10は、生成された指定部位の詳細三次元モデル24をディスプレイ102に表示させる。ユーザ4は、表示されている指定部位の詳細な画像から、指定部位の状態(ひび、われ、変色、劣化、脱落、異物付着等)を確認する。
【0024】
インフラや建築物の検査では、通常、1mm~数mmオーダーのひびなどの異常を見つけることが要求される。このレベルの異常を見つけるためには、比較的詳細な画像を取得する必要があるが、検査対象の全体の三次元モデルを生成する際にそのレベルの画像を取得することは、時間的にも処理負荷的にも現実的でない。そこで、本実施の形態に係る支援システム2では、まず検査対象の概要三次元モデル18を生成し、当該概要三次元モデル18を用いてユーザ4から、検査したい部位の指定を受け付ける。次いでユーザ4が指定した部位を詳細に撮像するようドローン8をもう一度飛ばし、詳細三次元モデル24を生成するようにしている。これにより、ユーザ4は検査において、検査対象の全体を概要的に把握した上で、必要な部位の状態を詳細に確認することができる。加えて、検査対象全体の詳細な三次元モデルを生成する必要はないので、検査にかかる時間も短縮することができる。さらに、ドローン8により高い通信性能が要求されることもないので、コストを抑制することができる。
【0025】
図6は、図1の携帯端末10のハードウエア構成図である。携帯端末10は、メモリ104と、プロセッサ106と、通信インタフェース108と、ディスプレイ102と、入力インタフェース110と、を含む。これらの要素はそれぞれバス112に接続され、バス112を介して互いに通信する。
【0026】
メモリ104は、データやプログラムを記憶するための記憶領域である。データやプログラムは、メモリ104に恒久的に記憶されてもよいし、一時的に記憶されてもよい。特にメモリ104は検査支援アプリを記憶する。プロセッサ106は、メモリ104に記憶されているプログラム、特に検査支援アプリを実行することにより、携帯端末10における各種機能を実現する。通信インタフェース108は、携帯端末10の外部との間でデータの送受信を行うためのインタフェースである。例えば、通信インタフェース108は、ネットワークにアクセスするためのインタフェースや、ドローン8と直接無線通信するためのインタフェースを含む。ディスプレイ102は、各種情報を表示するためのデバイスであり、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどである。入力インタフェース110は、ユーザからの入力を受け付けるためのデバイスである。入力インタフェース110は、例えば、ディスプレイ102上に設けられたタッチパネルや、各種入力キー等を含む。
【0027】
図7は、図1の携帯端末10の機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0028】
携帯端末10は、概要処理部114と、詳細処理部116と、モデル利用部118と、概要画像情報保持部120と、三次元モデル保持部122と、詳細画像情報保持部124と、詳細飛行履歴保持部126と、を備える。概要処理部114は概要三次元モデル18の生成に関する処理を行う。詳細処理部116は詳細三次元モデル24の生成に関する処理を行う。モデル利用部118は生成された詳細三次元モデル24の利用に関する処理を行う。
【0029】
図8は、図7の概要画像情報保持部120の一例を示すデータ構造図である。概要画像情報保持部120は、ドローン8が概要飛行経路16に従って飛行しながら取得した概要的なまたは粗い画像(以下、概要画像と称す)および概要画像を取得したときの状況を保持する。概要画像情報保持部120は、概要飛行経路16に従うドローン8の飛行を特定する概要飛行IDと、ドローン8が概要画像を取得したときの時刻と、ドローン8が概要画像を取得したときのドローン8の位置と、概要画像のファイルと、を対応付けて保持する。ドローン8が概要画像を取得したときのドローン8の位置は、ドローン8の測位機能により与えられてもよい。概要画像のファイルのサイズは比較的小さくてもよい。
【0030】
図9は、図7の詳細画像情報保持部124の一例を示すデータ構造図である。詳細画像情報保持部124は、ドローン8が詳細飛行経路22に従って飛行しながら取得した詳細なまたは精細な画像(以下、詳細画像と称す)および詳細画像を取得したときの状況を保持する。詳細画像情報保持部124は、詳細飛行経路22に従うドローン8の飛行(以下、詳細飛行と称す)を特定する詳細飛行IDと、ユーザ4によって指定された部位を特定する指定部位IDと、ドローン8が詳細画像を取得したときの時刻と、ドローン8が詳細画像を取得したときのドローン8の位置と、詳細画像のファイルと、を対応付けて保持する。詳細画像のファイルのサイズは比較的大きくてもよく、例えば概要画像のファイルのサイズよりも大きくてもよい。
【0031】
図10は、図7の詳細飛行履歴保持部126の一例を示すデータ構造図である。詳細飛行履歴保持部126は、詳細飛行の履歴を保持する。詳細飛行履歴保持部126は、詳細飛行IDと、検査対象を特定する対象IDと、指定部位IDと、指定矩形画像ファイルと、詳細飛行が行われた時刻と、詳細飛行における詳細飛行経路22の情報と、指定部位の詳細画像のファイルと、を対応付けて保持する。指定矩形画像ファイルは、ユーザ4から指定部位の指定を受け付けるときに、ユーザ4が概要三次元モデル18に対して描いた矩形20を含む画像のファイルである。例えば、指定矩形画像ファイルは、図3に示されるディスプレイ102の画面キャプチャであってもよい。指定部位の詳細画像のファイルは後述の指定詳細画像のファイルであってもよい。
【0032】
図7に戻り、概要処理部114は、撮像領域取得部128と、概要飛行経路設定部130と、概要画像取得部132と、概要モデル生成部134と、を含む。撮像領域取得部128は、基地局装置6を撮像するようにドローン8の動作を設定するための情報を取得する。撮像領域取得部128は、携帯端末10のディスプレイ102に電子地図を表示させ、当該電子地図を介してユーザ4から検査対象としての基地局装置6の指定と、撮像領域12の指定と、を受け付ける。
【0033】
概要飛行経路設定部130は、撮像領域取得部128によって取得された情報に基づいて、基地局装置6を撮像するようにドローン8の動作すなわち概要飛行経路16を生成する。概要飛行経路設定部130は、生成された概要飛行経路16をドローン8に送信することで、ドローン8に概要飛行経路16を設定する。
【0034】
概要画像取得部132は、ドローン8が概要飛行経路16に従う飛行(以下、概要飛行と称す)を行った結果得られた概要画像をドローン8から取得する。概要画像取得部132は、ドローン8の概要飛行中にドローン8から逐次送られてくる概要画像および当該概要画像の取得時刻および取得位置を受け付け、概要画像情報保持部120に格納する。
【0035】
概要モデル生成部134は、概要画像情報保持部120に保持される概要画像を読み出し、読み出された概要画像に基づいて基地局装置6の概要三次元モデル18を生成する。概要モデル生成部134は、生成された概要三次元モデル18を三次元モデル保持部122に登録する。
【0036】
詳細処理部116は、指定受付部136と、詳細飛行経路設定部138と、位置姿勢制御部140と、詳細画像取得部142と、詳細モデル生成部144と、を含む。指定受付部136は、概要画像から生成された概要三次元モデル18を用いて、ユーザ4から基地局装置6の部位の指定を受け付ける。指定受付部136は、ユーザ4から基地局装置6の詳細確認要求を受け付けると、三次元モデル保持部122に保持される基地局装置6の概要三次元モデル18を読み出し、ディスプレイ102に表示させる。指定受付部136は、表示された概要三次元モデル18に対してユーザ4が描いた矩形20の中に表示されている基地局装置6の部位を指定部位として特定する。指定受付部136の再指定時の機能については後述する。
【0037】
詳細飛行経路設定部138は、概要飛行において得られた指定部位の概要画像よりも詳しい指定部位の詳細画像を取得するように、ドローン8の動作すなわち詳細飛行経路22を生成する。詳細飛行経路設定部138は、生成された詳細飛行経路22をドローン8に送信することで、ドローン8に詳細飛行経路22を設定する。
【0038】
詳細飛行経路設定部138は、詳細飛行経路22を生成する際、概要飛行において得られた測位情報を用いる。具体的には、詳細飛行経路設定部138は、まず指定部位が写っている概要画像を特定する。これは、例えば、概要三次元モデル18における指定部位を構成する元となった概要画像を特定することにより実現されてもよいし、概要画像情報保持部120に保持される概要画像のなかから部位の指定時にユーザ4が描いた矩形20に対応する概要画像を特定することにより実現されてもよい。詳細飛行経路設定部138は、概要画像情報保持部120を参照し、特定された概要画像に対応付けられた位置を取得する。詳細飛行経路設定部138は、取得された位置に基づいて、詳細飛行経路22の最初の目的地の位置を設定する。詳細飛行経路設定部138は、指定部位を複数の異なる視点から撮像するように、最初の目的地に到着した後のドローン8の飛行経路を設定する。スタート地点から最初の目的地までの詳細飛行経路22の形状は、途中に障害物があればそれを避けるような指定部位(または最初の目的地の位置)への最短経路となるように設定されてもよい。
【0039】
位置姿勢制御部140は、詳細飛行経路設定部138により特定された指定部位が写っている概要画像と、ドローン8の撮像機能により取得される現在の画像と、を比較することにより、指定部位を撮像するための位置または姿勢を調整するように、ドローン8を制御する。位置姿勢制御部140は、詳細飛行経路設定部138により特定された指定部位が写っている概要画像をドローン8に送信する。ドローン8は、詳細飛行経路22に従い飛行して最初の目的地付近に到達すると、受信した概要画像と、ドローン8の撮像機能により得られる現在の指定部位の画像と、を比較する。ドローン8は両画像の差分が小さくなるように、ドローン8の位置・姿勢および/またはドローン8のカメラの視線方向および焦点距離を調整する。このように位置・姿勢が調整されたドローン8により撮像された指定部位の詳細画像を指定詳細画像と称す。
【0040】
なお、他の方法によるドローン8の位置・姿勢の調整も可能である。例えば、位置姿勢制御部140は、ユーザ4による部位の指定時にディスプレイ102に表示されている概要三次元モデル18の表示向きおよび描かれた矩形20に対応する位置を用いて、詳細飛行経路設定部138により生成された詳細飛行経路22を調整してもよい。あるいはまた、概要三次元モデル18の各オブジェクトに比較的詳細な測位情報が付与されている場合(例えば、非特許文献3参照)、位置姿勢制御部140は、矩形20で指定された部位に対応するオブジェクトの測位情報に基づいて、詳細飛行経路22を生成または調整してもよい。
【0041】
以下に詳細飛行経路22の具体例を示す。
(1)スタート地点から最初の目的地まで直線飛行→画像比較による位置・姿勢調整→指定詳細画像の撮像→指定部位の周りを飛行しながら複数の角度から撮像→帰投
(2)スタート地点から最初の目的地まで円弧飛行(障害物を避けるため)→最初の目的地でホバリングしながらPTZ(パン・チルト・ズーム)を制御してカメラを指定された向き、焦点距離に合わせる→指定詳細画像の撮像→指定部位の周りを飛行しながら複数の角度から撮像→帰投
【0042】
詳細画像取得部142は、ドローン8が詳細飛行を行った結果得られた詳細画像をドローン8から取得する。詳細画像取得部142は、ドローン8の詳細飛行中にドローン8から逐次送られてくる詳細画像および当該詳細画像の取得時刻および取得位置を受け付け、詳細画像情報保持部124に格納する。
【0043】
詳細モデル生成部144は、詳細画像情報保持部124に保持される詳細画像を読み出し、読み出された詳細画像に基づいて指定部位の詳細三次元モデル24を生成する。詳細モデル生成部144は、生成された詳細三次元モデル24を三次元モデル保持部122に登録する。
【0044】
詳細処理部116は、ひとつの詳細飛行が完了し、対応する詳細三次元モデル24が三次元モデル保持部122に格納されると、当該詳細飛行に関する情報を詳細飛行履歴保持部126に登録する。
【0045】
モデル利用部118は、詳細画像提供部146と、対比画像提供部148と、を含む。詳細画像提供部146は、三次元モデル保持部122に保持される指定部位の詳細三次元モデル24を読み出し、ディスプレイ102に表示させる。あるいはまた、詳細画像提供部146は、詳細三次元モデル24の代わりに、指定詳細画像をディスプレイ102に表示させてもよい。対比画像提供部148の機能については後述する。
【0046】
以上の構成による携帯端末10の動作を説明する。
図11は、図1の携帯端末10における一連の処理の流れを示すフローチャートである。携帯端末10は、ユーザ4による撮像領域12の指定を受け付ける(S202)。携帯端末10は、受け付けた撮像領域12に基づいて概要飛行経路16を設定する(S204)。携帯端末10は、ドローン8から概要画像を取得する(S206)。携帯端末10は、取得した概要画像を用いて概要三次元モデル18を生成する(S208)。携帯端末10は、概要三次元モデル18の表示を介してユーザ4から、詳細検査の対象とする部位の指定を受け付ける(S210)。携帯端末10は、指定部位の詳細画像を取得するように詳細飛行経路22を設定する(S212)。携帯端末10は、ドローン8から詳細画像を取得する(S214)。携帯端末10は、取得した詳細画像を用いて詳細三次元モデル24を生成する(S216)。携帯端末10は、指定部位の詳細三次元モデル24または指定詳細画像をユーザ4に提示する(S218)。携帯端末10は、指定部位IDと詳細飛行経路22と指定詳細画像とを詳細飛行履歴保持部126に登録する(S220)。
【0047】
図12は、携帯端末10のディスプレイ102に表示される詳細撮像履歴選択画面150の代表画面図である。詳細撮像履歴選択画面150は、過去の詳細飛行ごとに、過去の詳細飛行を特定する情報152と、画像で確認ボタン154と、を表示する。過去の詳細飛行を特定する情報152は、当該詳細飛行が行われた日付と、検査対象の名称と、指定部位の名称と、を含む。指定受付部136は、ユーザ4から撮像履歴の表示要求を受け付けると、詳細飛行履歴保持部126を参照することで詳細撮像履歴選択画面150を生成し、ディスプレイ102に表示させる。詳細撮像履歴選択画面150の日付は詳細飛行履歴保持部126の詳細飛行が行われた時刻に対応し、詳細撮像履歴選択画面150の検査対象の名称は詳細飛行履歴保持部126の対象IDに対応し、詳細撮像履歴選択画面150の指定部位の名称は詳細飛行履歴保持部126の指定部位IDに対応する。
【0048】
図13は、携帯端末10のディスプレイ102に表示される指定部位確認画面156の代表画面図である。詳細撮像履歴選択画面150においてユーザ4が所望の詳細飛行の確認ボタン154をタップすると、指定受付部136は詳細飛行履歴保持部126からタップされた確認ボタン154の詳細飛行に対応する指定矩形画像ファイルを読み出し、指定部位確認画面156を生成する。指定部位確認画面156は、タップされた確認ボタン154の詳細飛行に関してユーザ4から指定部位の指定を受け付けたときに、ユーザ4が概要三次元モデル18に対して描いた矩形20を含む画像と、再指定ボタン158と、を有する。例えば、ユーザ4が、図12の詳細撮像履歴選択画面150に示される詳細飛行の履歴のうち、「8/15、BS#1000、1番アンテナ下端」で特定される過去の詳細飛行の確認ボタンをタップすると、画面が遷移して指定部位確認画面156が表示され、当該指定部位確認画面156には、ユーザ4が8/15(過去の時点)にBS#1000(基地局装置6の名称)の概要三次元モデルが表示されているディスプレイ102上で、1番アンテナ下端(指定部位)を指定するために描いた矩形が、当該概要三次元モデルと共に表示される。
【0049】
ユーザ4は、指定部位確認画面156において指定部位を確認し、問題なければ再指定ボタン158をタップする。すると、指定受付部136は、当該タップを指定部位を再度撮像するための要求として受け付ける。詳細飛行経路設定部138は、指定部位確認画面156の生成の際に読み出された指定矩形画像ファイルに対応する詳細飛行経路を詳細飛行履歴保持部126から読み出してドローン8に送信することで、過去の詳細飛行経路と同じ詳細飛行経路をドローン8に再度設定する。
【0050】
なお、他の実施の形態では、指定受付部136は、指定部位確認画面156の代わりに過去に取得された指定詳細画像または詳細三次元モデルを表示する画面をディスプレイ102に表示させてもよい。この場合、ユーザ4が再指定を要求すると、指定受付部136は表示されている指定詳細画像または詳細三次元モデルに対応する詳細飛行経路を詳細飛行履歴保持部126から読み出してドローン8に再度設定する。
【0051】
基地局装置などのインフラ設備や建築物の検査では、経験的に、優先して検査すべき箇所や毎回必ず検査すべき箇所が分かっている。基地局装置の例では、アンテナの先端部から劣化が始まるので、当該先端部は毎回の検査で必ず確認する部位である。本実施の形態では、そのように繰り返し検査する必要がある指定部位について、最初の検査で概要三次元モデルから特定してしまえば、次回以降の検査では詳細飛行の履歴から選択するだけで簡便にドローン8への詳細飛行経路の設定が完了する。これによりユーザ利便性が向上する。
【0052】
図14は、携帯端末10のディスプレイ102に表示される指定部位変遷画面160の代表画面図である。対比画像提供部148は、異なる時点の詳細飛行経路22において得られた同じ指定部位の詳細画像または詳細三次元モデルを比較可能な態様で表示する指定部位変遷画面160を、ディスプレイ102に表示させる。対比画像提供部148は、ユーザ4から検査対象および指定部位の指定を伴う対比要求を受け付けると、指定された検査対象(対象ID)および指定された指定部位(指定部位ID)に対応する指定詳細画像のファイルを詳細飛行履歴保持部126から取得する。対比画像提供部148は、取得された指定詳細画像を時系列で並べることで指定部位変遷画面160を生成する。なお、指定詳細画像に代えてまたは加えて、三次元モデル保持部122から取得可能な詳細三次元モデルを指定部位変遷画面160に表示してもよい。
【0053】
指定部位変遷画面160に表示される指定詳細画像において、同画面に表示される一つ前の指定詳細画像との差分は強調して表示される。例えば、図14の指定部位変遷画面160の「8/17」に対応する指定詳細画像において、その一つ前の「8/15」の指定詳細画像との差分である新たなひび162は、他のひびとは異なる態様で、例えば太く表示するなど強調された態様で、表示される。
【0054】
このように、指定された指定部位の指定詳細画像を時系列で表示することで、ユーザ4は劣化箇所や劣化の進み具合を一目でより的確に確認することができる。
【0055】
上述の実施の形態において、保持部の例は、ハードディスクや半導体メモリである。また、本明細書の記載に基づき、各部を、図示しないCPUや、インストールされたアプリケーションプログラムのモジュールや、システムプログラムのモジュールや、ハードディスクから読み出したデータの内容を一時的に記憶する半導体メモリなどにより実現できることは本明細書に触れた当業者には理解される。
【0056】
本実施の形態に係る検査支援システム2によると、ドローン8の空撮による三次元モデルの生成を概要、詳細の二段階としたことで、検査対象のうち所望の/必要な部位以外の詳細三次元モデルを生成する必要がなくなる。これにより、所望の/必要な部位の詳細な確認を実現しつつ、処理負荷および処理時間を軽減することができる。また、ドローン8に求められる通信性能もそれほど高くないので、比較的廉価なドローンを用いることでコストの増大を抑制することができる。
【0057】
以上、実施の形態に係る検査支援システム2の構成と動作について説明した。この実施の形態は例示であり、各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解される。
【0058】
実施の形態では、ユーザ4が基地局装置6の付近に赴いて携帯端末10を操作することにより検査を行う場合を説明したが、これに限られない。例えば、検査対象としての基地局装置6の指定、撮像領域12の指定、得られた概要三次元モデル18を用いた指定部位の指定、指定詳細画像の確認は、基地局装置6から離れた位置にあるセンタ施設のオペレータにより行われてもよい。作業者はドローン8を基地局装置6の付近に運搬するだけでよい。この場合の処理は、実施の形態の携帯端末10を、オペレータのデスクトップ端末で置き換えることで理解される。
【0059】
あるいはまた、オペレータのデスクトップ端末に予め基地局装置6の各部品の三次元モデルを格納しておき、オペレータに当該三次元モデルから指定部位を選択させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
2 検査支援システム、 4 ユーザ、 6 基地局装置、 8 ドローン、 10 携帯端末。
図1
図2
図3
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図9
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図14