(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】グランドピアノの鍵盤支持構造
(51)【国際特許分類】
G10C 3/12 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
G10C3/12 150
(21)【出願番号】P 2023197443
(22)【出願日】2023-11-21
【審査請求日】2023-11-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】713008371
【氏名又は名称】星 雅人
(72)【発明者】
【氏名】星 雅人
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-196748(JP,A)
【文献】特開2011-100147(JP,A)
【文献】特開平08-044345(JP,A)
【文献】特開平07-271346(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0096425(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0188810(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10C 3/00-3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の位置に複数の穴部が設けられたシート状の第一の緩衝部材と、前記穴部に一端部が挿入保持された圧縮コイルバネと、該圧縮コイルバネの各々の他端部に独立して固定された第二の緩衝部材とからなるグランドピアノ用鍵盤支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グランドピアノ用の鍵盤支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鍵盤を含むグランドピアノの一部断面構造を
図5に示す。
図5において、筬1の上面には鍵盤2が支点0により揺動可能に支持され、ブラケット3にはシャンクレール4、ウィッペンレール5が固設されている。シャンクレール4にはハンマー6を装着したハンマーシャンク7が回動可能に支持され、ウィッペンレール5にはウィッペン8が回動可能に支持されている。更に、ハンマー6が打つ弦9が張架されている。また、鍵盤2の先端側には複数個の鉛10が埋め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来の鍵盤2では、鍵盤の打鍵力を軽減するために、先端部に加工が容易な鉛10を埋め込むことにより、打鍵力の調整を行っているのだが、長期に亘る使用のため、鍵盤2に埋め込まれた鉛10の経年劣化や、鉛の酸化膨張による隣接する鍵盤同士の接触により、白い粉状の酸化腐蝕物が筬1の上面に蓄積し、空気中に紛れて人体に吸収された場合に健康不安が考えらえる。
【0005】
また、鉛10はその重量により鍵盤2の押下げ時には機能するが押下げ状態からの復帰時には機能しないため、演奏者のタッチによる微妙な鍵盤の上下運動を効果的に伝えることが難しい。
【0006】
さらに、鍵盤2の側部に鉛埋め込み用の10ミリ径程度の穴を複数開けるため、鍵盤素材である木材本来のしなり効果や演奏者による強靭なタッチと柔軟なタッチの反応効果を削いでしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のグランドピアノの鍵盤支持構造は、支点で揺動可能に支持された均一な材質からなる鍵盤の前記支点より奥側の下面と筬との間に緩衝部材が配設され、該緩衝部材は第一の緩衝部材と第二の緩衝部材とからなり、前記第一の緩衝部材には圧縮コイルバネの下端部が固定され、前記第二の緩衝部材には前記圧縮コイルバネの上端部が固定されており、前記鍵盤の静鍵時には前記圧縮コイルバネは最大限圧縮された状態を保持し、前記鍵盤の押鍵時には前記圧縮コイルバネは前記鍵盤の押鍵力に応じて伸長する。また、所定の位置に複数の穴部が設けられたシート状の第一の緩衝部材と、前記穴部に一端部が挿入保持された圧縮コイルバネと、該圧縮コイルバネの各々の他端部に独立して固定された第二の緩衝部材とからなるグランドピアノ用鍵盤支持具を提供する。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、鍵盤の上下運動に俊敏に反応でき超高速連続打鍵が従来より可能になり、演奏表現のバリエーションの選択幅が広くなる。また、鉛による健康不安が解消され安心してピアノ演奏を長時間を楽しめる。さらに、鍵盤の素材本来の持つ強靭さとしなり効果が犠牲にされず、演奏者の微妙なタッチの反応を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の鍵盤を含むグランドピアノの静鍵時における一部断面構造である。
【
図3】本発明の鍵盤を含むグランドピアノの押鍵時における一部断面構造のA部の拡大断面図である。
【
図4】(a)は本発明のグランドピアノ用鍵盤支持具の斜視図であり、(b)は側断面図である。
【
図5】従来の鍵盤を含むグランドピアノの静鍵時における一部断面構造である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明の鍵盤を含むグランドピアノの静鍵時における一部断面構造であり、
図2は
図1のA部の拡大断面図である。これらの図において、
図5と同じ構成要件については同番号を付し、詳細な説明は省略する。
図1及び
図2に示すように、筬1の鍵盤奥側にはゴム板11aが敷設されており、該ゴム板11a上にはフェルト11bが載置され、これらゴム板11aとフェルト11bとで緩衝部材11を形成している。そして、この緩衝部材11には挿入孔11cが穿孔されており、該挿入孔11c内には圧縮コイルバネ12が前記筬1側で固定された状態で挿入されている。なお、鍵盤2は均一な木製であり、鉛等の錘を内部に埋設されていないものとする。
【0011】
図3は本発明の鍵盤を含むグランドピアノの押鍵時における一部断面構造のA部の拡大断面図である。
図3においても、
図1乃至
図2と同じ構成要件については同番号を付し、詳細な説明は省略する。
図3に示すように、鍵盤2を押鍵すると、圧縮コイルバネ12の反発力が鍵盤奥側を持ち上げるのを助ける作用を行う。その際、圧縮コイルバネの伸長に応じてゴム板11a上のフェルト11bもゴム板11aから離隔して持ち上がり、鍵盤2の奥側底部2aに当接する。上記動作により演奏者にとっては従来より鍵盤への軽いタッチで押鍵することができるとともに、演奏者の微妙なタッチ反応を得ることができ、演奏の幅が広がる。また、鉛等の錘も使用しないため、鍵盤自体の製作が簡単であり、鉛使用時の健康不安もなくなる。
【0012】
図4(a)は本発明のグランドピアノ用鍵盤支持具の斜視図であり、(b)は側断面図である。
図4において、ゴム板11aは所定の位置に複数の穴部11cが設けられたシート状の緩衝部材であり、前記複数の穴部11cにはそれぞれ圧縮コイルバネ12の一端部が篏合状態で挿入保持されている。また前記圧縮コイルバネ12の各々の他端部にはフェルトからなる緩衝部材が固定されている。このような構成を有するグランドピアノ用鍵盤支持具は上記構成のシート状のゴム板11aをグランドピアノの筬1上に敷設するだけで簡単に装着できる。よって、圧縮コイルバネ12を土台となるゴム板11aとともに前後に移動できるため、低音部側、中音部、次高音部の3セクションごとにタッチ感を音響レベルや演奏者の好みに応じて調整可能である。また、グランドピアノの鍵盤長さの短い中小型サイズの短所をより補足できるよう鍵盤土台の筬と鍵盤奥を延長し演奏者に弾きやすいタッチを提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、演奏者の鍵盤の打鍵力の軽減を可能にしたグランドピアノ用の鍵盤支持構造として有用である。
【符号の説明】
【0014】
0・・・支点、1・・・筬、2・・・鍵盤、2a・・・奥側底部、3・・・ブラケット、4・・・シャンクレール、5・・・ウィッペンレール、6・・・ハンマー、7・・・ハンマーシャンク、8・・・ウィッペン、9・・・弦、10・・・鉛、11・・・緩衝部材、11a・・・ゴム板、11b・・・フェルト、11c・・・穴部、12…圧縮コイルバネ
【要約】
【課題】鍵盤に埋め込まれた鉛の重量により、演奏者のタッチによる微妙な鍵盤の上下運動を効果的に伝えることが難しい。
【解決手段】鍵盤奥側に配設された緩衝部材と圧縮コイルバネの作用により、演奏者は微妙なタッチ反応を得ることができる。
【選択図】
図4