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特許7511737薬剤添加量調整方法及び薬剤添加量調整装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】薬剤添加量調整方法及び薬剤添加量調整装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 5/00 20230101AFI20240628BHJP
   C02F 5/08 20230101ALI20240628BHJP
【FI】
C02F5/00 610G
C02F5/00 620B
C02F5/08 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023215915
(22)【出願日】2023-12-21
【審査請求日】2024-03-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】滝本 太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】添田 祐二
(72)【発明者】
【氏名】葛谷 佳広
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-104042(JP,A)
【文献】特開2000-288585(JP,A)
【文献】特開2001-129561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 5/00- 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中に含まれるカルシウム成分を不溶化するカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整する薬剤添加量調整方法であって、
被処理水にカルシウム不溶化薬剤を添加してカルシウム成分を不溶化させる反応工程と、
前記反応工程後の被処理水を沈降分離させる沈降分離工程と、
前記沈降分離工程後の上澄み液の一部に対してカルシウム不溶化薬剤を混合して濁度を測定する濁度測定工程と、
前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいて、前記反応工程において添加するカルシウム不溶化薬剤の添加量をフィードバック制御する添加量制御工程と、を含む薬剤添加量調整方法。
【請求項2】
前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいて、前記上澄み液中のカルシウム濃度を算出する濃度算出工程をさらに含み、前記添加量制御工程が、前記濃度算出工程において算出されたカルシウム濃度に基づいて、前記反応工程において添加するカルシウム不溶化薬剤の添加量をフィードバック制御する請求項1に記載の薬剤添加量調整方法。
【請求項3】
被処理水中に含まれるカルシウム成分を不溶化するカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整する薬剤添加量調整装置であって、
被処理水にカルシウム不溶化薬剤を添加してカルシウム成分を不溶化させる反応槽と、
被処理水中に生じたカルシウム不溶化物を沈降分離させる沈殿槽と、
前記沈殿槽における上澄み液の一部に対してカルシウム不溶化薬剤を混合して濁度を測定する測定装置と、
前記測定装置によって測定された濁度に基づいて前記上澄み液中のカルシウム濃度を算出して、算出されたカルシウム濃度に基づいて、前記反応槽に添加するカルシウム不溶化薬剤の添加量をフィードバック制御する制御装置と、を備える薬剤添加量調整装置。
【請求項4】
前記測定装置が、前記沈殿槽の内側に設けられている請求項3に記載の薬剤添加量調整装置。
【請求項5】
前記測定装置が、前記沈殿槽の液中に浸漬されて一定量の上澄み液を採取可能な筒状部材を備える請求項4に記載の薬剤添加量調整装置。
【請求項6】
前記測定装置が、前記沈殿槽の外側に設けられている請求項3に記載の薬剤添加量調整装置。
【請求項7】
前記測定装置が、前記沈殿槽の外側に設置される第二反応槽と、一定量の上澄み液を前記沈殿槽から採取して前記第二反応槽に送り出す移送装置とを備える請求項6に記載の薬剤添加量調整装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水中に含まれるカルシウム成分を不溶化するカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整する薬剤添加量調整方法及び薬剤添加量調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最終処分場の浸出水には高濃度のカルシウム成分が溶存しているため、浸出水を処理する水処理設備の配管や設備内の機器にスケールが生じ、管の詰りなどの不都合な事態が生じる場合がある。これを防ぐため、例えば、特開2020-104042号公報(特許文献1)などに示されているように、浸出水にカルシウム不溶化薬剤となる炭酸ソーダを添加して炭酸カルシウムとして沈殿分離させることにより、浸出水のカルシウム成分を除去する前処理が行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-104042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業員が手分析で浸出水の溶存カルシウム濃度を測定して、炭酸ソーダの添加量を設定する場合、浸出水の溶存カルシウム濃度の変化に対応するべく、理論的な必要量以上の過剰な量の炭酸ソーダを添加せざるを得ず、薬品コストが嵩むという問題があった。そこで、市販のイオン電極式のカルシウム濃度計を使用して溶存カルシウム濃度を測定する方法も開発されているが、そのようなカルシウム濃度計は共存イオンの影響を受けて正確な値を求めることが困難であり、しかも浸出水に浸漬する電極部にスケールが付着し易いため、被処理水中のカルシウム成分の濃度が変動しうる場合に正確にリアルタイムで測定することが困難な場合があった。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、カルシウム成分の濃度が変動しうる場合であっても、カルシウム成分とカルシウム不溶化薬剤との物質量比を適正な範囲に維持しうる薬剤添加量調整方法及び薬剤添加量調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る薬剤添加量調整方法の特徴は、
被処理水中に含まれるカルシウム成分を不溶化するカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整する薬剤添加量調整方法であって、
被処理水にカルシウム不溶化薬剤を添加してカルシウム成分を不溶化させる反応工程と、
前記反応工程後の被処理水を沈降分離させる沈降分離工程と、
前記沈降分離工程後の上澄み液の一部に対してカルシウム不溶化薬剤を混合して濁度を測定する濁度測定工程と、
前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいて、前記反応工程において添加するカルシウム不溶化薬剤の添加量をフィードバック制御する添加量制御工程と、を含む点にある。
【0007】
本発明に係る薬剤添加量調整方法においては、前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいて、前記上澄み液中のカルシウム濃度を算出する濃度算出工程をさらに含み、前記添加量制御工程が、前記濃度算出工程において算出されたカルシウム濃度に基づいて、前記反応工程において添加するカルシウム不溶化薬剤の添加量をフィードバック制御すると好適である。
【0008】
本発明に係る薬剤添加量調整装置の特徴は、
被処理水中に含まれるカルシウム成分を不溶化するカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整する薬剤添加量調整装置であって、
被処理水にカルシウム不溶化薬剤を添加してカルシウム成分を不溶化させる反応槽と、
被処理水中に生じたカルシウム不溶化物を凝集沈殿させる沈殿槽と、
前記沈殿槽における上澄み液の一部に対してカルシウム不溶化薬剤を混合して濁度を測定する測定装置と、
前記測定装置によって測定された濁度に基づいて前記上澄み液中のカルシウム濃度を算出して、算出されたカルシウム濃度に基づいて、前記反応槽に添加するカルシウム不溶化薬剤の添加量をフィードバック制御する制御装置と、を備える点にある。
【0009】
本発明に係る薬剤添加量調整装置においては、前記測定装置が、前記沈殿槽の内側に設けられていると好適である。
【0010】
本発明に係る薬剤添加量調整装置においては、前記測定装置が、前記沈殿槽の液中に浸漬されて一定量の上澄み液を採取可能な筒状部材を備えると好適である。
【0011】
本発明に係る薬剤添加量調整装置においては、前記測定装置が、前記沈殿槽の外側に設けられていると好適である。
【0012】
本発明に係る薬剤添加量調整装置においては、前記測定装置が、前記沈殿槽の外側に設置される第二反応槽と、一定量の上澄み液を前記沈殿槽から採取して前記第二反応槽に送り出す移送装置とを備えると好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、沈殿槽の上澄み液に残存するカルシウムに基づいて反応槽に添加するカルシウム不溶化薬剤の添加量をフィードバック制御するため、カルシウムを析出させるために添加される炭酸ナトリウムの量をさらなる適正に維持して、カルシウムをより確実に除去しうる。また、過剰な炭酸ナトリウムの使用もより回避し易くなるため、本発明を備える例えばカルシウム除去装置の運転コストの削減により一層寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係るカルシウム除去装置の構成を示す模式図である。
図2】実施形態に係るカルシウム除去装置及び薬剤添加量調整装置の制御に関与する構成要素を示すブロック図である。
図3】薬剤添加量調整装置の第1実施形態の構成を示す模式図である。
図4】薬剤添加量調整装置の第2実施形態の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る薬剤添加量調整装置および薬剤添加量調整方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
(第1実施形態)
以下では、本発明に係る薬剤添加量調整装置を、廃棄物の最終処分場から排出される浸出水(被処理水の一例)からカルシウム成分を除去するカルシウム除去装置1(以下、単に除去装置1と称する)に適用した形態を例として、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
〔カルシウム除去装置の構成〕
本実施形態に係る除去装置1は、汚水計量槽2、反応槽3、第一調製槽4、および第二調製槽5、ならびに、上記の各構成要素の動作の制御に係る演算処理を行う制御装置6、を備える(図1図2)。また、除去装置1は、反応槽3より下流に、混和槽11、沈殿槽12、および中和槽13を備える。なお、各槽には撹拌装置などの付帯装置が適宜設けられうるが、簡単のため図示および説明を省略する。
【0018】
反応槽3では、浸出水にカルシウム不溶化薬剤を添加してカルシウム成分を不溶化させる。除去装置1において、浸出水は汚水計量槽2を経て反応槽3に流入し、反応槽3において、第一調製槽4から供給される炭酸ナトリウム水溶液(薬液の一例である。)および第二調製槽5から供給される水酸化ナトリウム水溶液と混合される。このとき、浸出水中のカルシウムイオンCa2+と炭酸ナトリウムNaCOとにより、以下の式(1)で表される反応が生じ、炭酸カルシウムCaCOが析出する。なお、水酸化ナトリウム水溶液は浸出水を塩基性に調整して式(1)の反応が進行しやすくする役割を果たす。
Ca2++NaCO→CaCO↓+2Na (1)
【0019】
式(1)の反応により生じた炭酸カルシウムが析出した浸出水に対して、混和槽11において凝集剤が混合されて、炭酸カルシウム析出物の凝集が進む。かかる凝集剤としては、たとえば、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、硫酸バンドなどが例示されるが、これらに限定されない。また、混和槽11においてポリマーなどの凝集助剤が加えられてもよい。
【0020】
沈殿槽12は、浸出水中に生じた炭酸カルシウム析出物を凝集沈殿させる。凝集した炭酸カルシウム析出物を含む浸出水は、沈殿槽12において固液分離され、沈殿した固体部分(炭酸カルシウム析出物)は汚泥として排出される。一方、固体部分が取り除かれた後の液体部分は、中和槽13において酸と混合されて中和されたのちに、後工程(不図示)に送られる。
【0021】
汚水計量槽2は、除去装置1に流入した浸出水を最初に受け入れる槽であり、電気伝導度計21と、流量計22と、を有する。電気伝導度計21は汚水計量槽に流入した浸出水の電気伝導度を測定する装置であり、公知の電気伝導度計でありうる。電気伝導度は、浸出水中のカルシウムの濃度と相関がある物性値である。流量計22は汚水計量槽2から流出して反応槽3に流入する浸出水の流量を測定する装置であり、公知の流量計でありうる。電気伝導度計21および流量計22はいずれも制御装置6と通信可能であり、電気伝導度および流量の測定値が制御装置6に送られる。
【0022】
反応槽3は、pH計31を有する。pH計31は反応槽3に貯留されている液体のpHを測定する装置であり、公知のpH計でありうる。pHの測定値は、浸出水を塩基性に調整する指標として用いられる。pH計31は制御装置6と通信可能であり、pHの測定値が制御装置6に送られる。
【0023】
第一調製槽4は、炭酸ナトリウム供給部41、給水部42、電気伝導度計43、および送液ポンプ44を有する。第一調製槽4に貯留される炭酸ナトリウム水溶液は第一調製槽4において調製されるものであり、炭酸ナトリウム供給部41から供給される粉体状の炭酸ナトリウム(カルシウム不溶化薬剤の一例である。)を給水部42から供給される水に溶解して調製される。炭酸ナトリウム供給部41は粉体を搬送できる公知の装置であり、たとえばスクリューコンベアなどでありうる。給水部42は炭酸ナトリウムを溶解する水を供給するものであり、市水や工水などの水源に接続された配管と、水の供給および停止を制御するためのバルブと、を有する。
【0024】
電気伝導度計43は、第一調製槽4に貯留される炭酸ナトリウム水溶液の電気伝導度を測定する装置であり、公知の電気伝導度計でありうる。電気伝導度は、炭酸ナトリウム水溶液の濃度と相関がある物性値である。電気伝導度計43は制御装置6と通信可能であり、電気伝導度の測定値が制御装置6に送られる。送液ポンプ44は、第一調製槽4と反応槽3とを接続する配管に設けられたポンプであり、炭酸ナトリウム水溶液を第一調製槽4から反応槽3に送液する。送液ポンプ44は制御装置6と通信可能であり、送液ポンプ44の運転および停止が制御装置6によって制御される。
【0025】
第二調製槽5は、水酸化ナトリウム供給部51、給水部52、および送液ポンプ53を有する。第二調製槽5に貯留される水酸化ナトリウム水溶液は第二調製槽5において調製されるものであり、水酸化ナトリウム供給部51から供給される濃水酸化ナトリウム水溶液を給水部52から供給される水で希釈して調製される。水酸化ナトリウム供給部51は液体を搬送できる公知の装置であり、タンクローリー等から濃水酸化ナトリウム水溶液を受け入れる受入口と、当該受入口と第二調製槽5とを接続する配管と、濃水酸化ナトリウム水溶液の供給および停止を制御するためのバルブと、を有する。給水部52は濃水酸化ナトリウムを希釈する水を供給するものであり、市水や工水などの水源に接続された配管と、水の供給および停止を制御するためのバルブと、を有する。なお、第二調製槽5に替えて、水酸化ナトリウム水溶液の貯留および供給のみを行う槽(水酸化ナトリウム水溶液の濃度を調整する機能を有さない槽)を設けてもよい。この場合は当該槽に、反応槽3に供給されるべき濃度の水酸化ナトリウム水溶液が貯留される。
【0026】
送液ポンプ53は、第二調製槽5と反応槽3とを接続する配管に設けられたポンプであり、水酸化ナトリウム水溶液を第二調製槽5から反応槽3に送液する。送液ポンプ53は制御装置6と通信可能であり、送液ポンプ53の運転および停止が制御装置6によって制御される。
【0027】
制御装置6は、除去装置1の各部に設けられた計器の測定値に基づいて、除去装置1の各部の動作を制御する装置であり、公知の演算装置を用いることができる。なお、制御装置6は、各種のデータを保存するための記憶装置、使用者が用いる入力装置、使用者に情報を提示する出力装置、などを有しうる。制御装置6は、少なくとも、電気伝導度計21、流量計22、pH計31、電気伝導度計43、濁度計、撹拌装置、送液ポンプ44、53、P1~P5と通信可能である(図2)。
【0028】
〔薬剤添加量調整装置の構成〕
図1図3に示すように、本実施形態に係る薬剤添加量調整装置10は、反応槽3、第三調製槽14、沈殿槽12、沈殿槽12の内側に設けられている測定装置、及び制御装置6、を備える。
【0029】
測定装置は、沈殿槽12における上澄み液の一部に対してカルシウム不溶化薬剤を添加・混合して濁度を測定する。本実施形態に係る測定装置は、沈殿槽12の液中に浸漬されて一定量の上澄み液を採取可能な筒状部材7と、筒状部材7の内部に配置される濁度計9とを備える。筒状部材7の下端部分には蓋部材8が設けられており、制御装置6により制御される図示しない所定のアクチュエータによって、蓋部材8を開閉できるように構成されている。蓋部材8が開くことによって、沈殿槽12の上澄み液が筒状部材7の内側に流入可能となり、蓋部材8が閉じることによって、沈殿槽12の上澄み液が筒状部材7の内側に流入できなくなる。また、図示しないが、濁度安定化のために、測定装置は、筒状部材7内の上澄み液を撹拌するための撹拌装置を備える。
【0030】
濁度計9は、カルシウム成分とカルシウム不溶化薬剤とが反応してカルシウム不溶化物が生じると被処理水の濁度が上昇することを利用して、当該濁度を測定することによってカルシウム成分の濃度を算出することを可能にするものである。濁度計9としては、例えば、測定対象液に測定光を照射して表面で散乱される散乱光の光量から濁度を求める表面散乱形濁度計が好適に用いられる。
【0031】
第三調製槽14は、所定濃度のカルシウム不溶化薬剤を貯留可能に構成されている。第三調製槽14は、送液ポンプP1を有する。送液ポンプP1は、第三調製槽14と筒状部材7とを接続する配管に設けられたポンプであり、カルシウム不溶化薬剤を第三調製槽14から筒状部材7に送液する。送液ポンプP1は制御装置6と通信可能であり、送液ポンプP1の運転および停止が制御装置6によって制御される。
【0032】
制御装置6は、上述の機能に加えて、測定装置の濁度計9によって測定された濁度に基づいて沈殿槽12の上澄み液中のカルシウム濃度を算出して、算出されたカルシウム濃度に基づいて、反応槽3に添加するカルシウム不溶化薬剤の添加量をフィードバック制御するように構成されている。
【0033】
本実施形態に係る薬剤添加量調整装置においては、測定装置が、沈殿槽12の内側に設けられており、尚且つ沈殿槽12の液中に浸漬されて一定量の上澄み液を採取可能な筒状部材を備えるものとして構成されているため、その構成が簡素であり、取り扱いが容易で、且つ取付ける際のコストも低廉で済む。
【0034】
〔除去装置の運転方法〕
次に、除去装置1の運転方法について説明する。本実施形態に係る運転方法は、カルシウムを除去するための浸出水の処理に直接関係する工程群である第一工程群、炭酸カルシウム水溶液を調製するとともにその濃度を特定するための工程群である第二工程群、および、第一工程群で用いる回帰線(相関関係の一例である。)の妥当性検証および補正のための工程群である第三工程群、を含む。
【0035】
(1)第一工程群
第一工程群は、除去装置1の通常の運用において実施される工程群であり、浸出水中のカルシウムの濃度を特定し、その濃度に鑑みて適切な量の炭酸カルシウム水溶液を浸出水と混合して、浸出水中のカルシウムを除去するための工程群である。第一工程群は、被処理水測定工程、管理量特定工程、反応工程、および凝集沈殿工程を含む。
【0036】
なお、除去装置1のうち汚水計量槽2および制御装置6を、浸出水中のカルシウム濃度を測定するカルシウム濃度測定装置として捉えることができる。したがって以下の実施形態は、当該測定装置の運転方法の実施形態でもある。
【0037】
(1-1)被処理水測定工程
被処理水測定工程は浸出水の電気伝導度を測定する工程である。被処理水測定工程は、制御装置6が電気伝導度計21の測定値を取得することによって実現される。
【0038】
(1-2)管理量特定工程
管理量特定工程は、あらかじめ用意されている回帰線(相関関係)に基づいて、測定工程で測定した電気伝導度から浸出水中のカルシウム成分の濃度(管理量の一例である。)を特定する工程である。ここで用いられる回帰線は、浸出水の電気伝導度と、浸出水中のカルシウムの濃度との相関関係を表す。たとえば、試料として複数点の浸出水を用意し、それぞれの試料について電気伝導度およびカルシウムの濃度を測定し、電気伝導度とカルシウムの濃度との対応関係をプロットすることによって回帰線が得られる。このときカルシウムの濃度は、たとえばドロップテストやICP発光分光分析などの公知の方法で測定されうる。あらかじめ用意されている回帰線は、制御装置6の記憶装置に記憶されている。
【0039】
(1-3)反応工程
反応工程は、管理量特定工程で特定した浸出水中のカルシウムの濃度に基づいて決定される量の炭酸カルシウム水溶液を、浸出水と混合する工程である。まず、管理量特定工程において特定された浸出水中のカルシウムの濃度と、流量計22の測定値と、に基づいて、反応槽3に流入するカルシウムの単位時間当たりの量を特定する。次に、反応槽3に流入するカルシウムの単位時間当たりの量と、反応槽3に流入する炭酸ナトリウムの単位時間当たりの量と、の割合が所定の範囲になるように、送液ポンプ44の運転を制御する。除去装置1によるカルシウムの除去において利用する反応はカルシウムイオンと炭酸ナトリウムとの当モル反応(式(1))であるから、ここでいう所定の範囲は典型的には当モルであるが、除去装置1を運用する事業者の指定等によって適宜決定されてもよい。なお、送液ポンプ44の制御において、後述する第二工程群において特定される炭酸ナトリウム水溶液の濃度を考慮する。
【0040】
(1-4)凝集沈殿工程
凝集沈殿工程(沈降分離工程の一例)は、浸出水と凝集剤とを混合して炭酸カルシウム析出物(カルシウム不溶化物の一例である。)を沈殿させる工程である。混和槽11および沈殿槽12において行われる一連の工程が、凝集沈殿工程にあたる。なお、凝集沈殿工程において凝集助剤などの薬剤がさらに混合されることは妨げられない。
【0041】
(2)第二工程群
第二工程群は、炭酸カルシウム水溶液を調製および濃度特定に関する工程群である。第二工程群は、薬液調製工程、薬液測定工程、および薬液濃度特定工程を含む。
【0042】
(2―1)薬液調製工程
薬液調製工程は、炭酸ナトリウムと水とを混合して、炭酸ナトリウム水溶液を調製する工程である。具体的には、薬液調製工程は、第一調製槽4において炭酸ナトリウム供給部41から供給される炭酸ナトリウム粉体を給水部42から供給される水に溶解する工程として実施される。ここで供給される炭酸ナトリウムが粉体であることから、炭酸ナトリウム供給部41の装置内に付着したり、ブリッジングなどの搬送不良が生じたりして、意図された量の炭酸ナトリウム粉体が第一調製槽4に投入されない場合がある。そのため、第一調製槽4において調製される炭酸ナトリウム水溶液の濃度は変動しうる。
【0043】
(2―2)薬液測定工程
薬液測定工程は、炭酸ナトリウム水溶液の電気伝導度を測定する工程である。薬液測定工程は、制御装置6が電気伝導度計43の測定値を取得することによって実現される。
【0044】
(2-3)薬液濃度特定工程
薬液濃度特定工程は、薬液測定工程で測定した電気伝導度に基づいて炭酸ナトリウム水溶液の濃度を特定する工程である。制御装置6は、炭酸ナトリウム水溶液の電気伝導度と濃度との相関関係を示す回帰線をあらかじめ記憶しており、当該回帰線を用いて、電気伝導度から濃度を特定する。
【0045】
(3)第三工程群
第三工程群は、第一工程群(管理量特定工程)で用いる回帰線の妥当性検証および補正のための工程群である。第一工程群および第二工程群が、除去装置1の通常の運転において行われる工程群であるのに対し、第三工程群は、通常は実施されず所定の条件が満たされるときにのみ行われる工程群である。ここでは一例として、第三工程群が検証工程および補正工程を含む場合について説明する。
【0046】
浸出水の電気伝導度は、浸出水中のカルシウムの濃度と強い相関を有する物理量であり、本実施形態ではこの相関関係を利用して、電気伝導度の測定を通じて浸出水中のカルシウム濃度を特定する。しかしこの相関関係は、浸出水の出自によって変動しうる。相関関係の変動要因としては、浸出水を排出した最終処分場で処理された廃棄物の質および量、廃棄物が埋め立てられた位置、埋立地における降雨条件(降雨強度、総降雨量など)といった種々の要素が存在する。そのため、管理量特定工程で用いる回帰線について検証を行うとともに、必要に応じて回帰線を補正することで、管理量特定工程の正確性を維持する。
【0047】
(3-1)検証工程
検証工程は、回帰線(相関関係)の妥当性を検証する工程である。本実施形態では、検証工程が定期的に行われる。検証工程を実行する間隔は特に限定されず、除去装置1の運転状況や気象条件等を考慮して決定されうるが、たとえば一か月ごとでありうる。検証工程において回帰線が妥当であると判断したときは、補正工程を行わずに第三工程群を終了し、通常の運転(第一工程群および第二工程群)に戻る。一方、検証工程において回帰線が妥当ではないと判断したときは、補正工程を行う。
【0048】
第一の例は、反応工程の後の浸出水について測定したカルシウムの濃度に基づいて回帰線の妥当性を検証する方法である。たとえば中和槽13で採取される浸出水(反応工程の後の浸出水である。)は、沈殿槽12において炭酸カルシウムと固液分離された後の上澄液であるので、カルシウムが除去されているはずのものである。しかし、回帰線にずれがあり、管理量特定工程において特定されたカルシウムの濃度が実際の濃度より低い値であると、反応工程において当該濃度に基づいて投入される炭酸ナトリウムの量が不足し、浸出水中のカルシウムの一部が析出せず液中に残存することになる。そのため、この現象が生じている場合に中和槽13で採取される浸出水のカルシウム濃度は、回帰線が妥当である場合に中和槽13で採取される浸出水のカルシウム濃度に比べて高くなる。したがって、中和槽13等で採取される浸出水中のカルシウムの濃度を測定し、測定値が所定の閾値より高い場合は、回帰線が妥当ではないと判断できる。なお、カルシウムの濃度は、たとえばキレート滴定、ドロップテスト、ICP発光分光分析などの公知の方法で測定されうる。
【0049】
第二の例は、所定の試料について回帰線から算出されるカルシウムの濃度と実際に測定したカルシウムの濃度とを比較して回帰線の妥当性を検証する方法である。同一の試料について、管理量特定工程を実施して特定されるカルシウムの濃度の算出値と、ドロップテストやICP発光分光分析などの公知の方法で測定されるカルシウムの濃度の実測値と、を比較すれば、回帰線の妥当性を判断できる。たとえば、算出値と実測値とのずれが所定の閾値より高い場合に、回帰線が妥当ではないと判断できる。
【0050】
上記のいずれの例においても、カルシウム濃度の測定は、作業員によって人為的に行われてもよいし、除去装置1に組み込まれた濃度測定装置(不図示)を用いて自動的に行われてもよい。カルシウム濃度の測定が人為的に行われる場合は、カルシウムの濃度の測定値が制御装置6に入力されうる。また、カルシウムの濃度の入力に替えて、または加えて、回帰線の妥当性を人為的に判断した結果が制御装置6に入力されてもよい。
【0051】
(3-2)補正工程
補正工程は、回帰線を補正する工程であり、前述の通り検証工程において回帰線が妥当ではないと判断したときに行われる。回帰線を補正する方法は限定されず、たとえば、検証工程において回帰線が妥当ではないと判断したときに、浸出水を採取し、回帰線を構成するデータセットに当該浸出水の電気伝導度の測定値とカルシウムの濃度の測定値との組を加える方法が例示される。なおこの例において、回帰線を構成するデータセットのうち最も古い測定値の組を取り除くことが好ましい。この例では、最新から所定の数の測定値の組を回帰線の根拠としており、経時的に変化する挙動に追随する回帰線が得られうる。
【0052】
補正工程についても、カルシウム濃度の測定は、作業員によって人為的に行われてもよいし、除去装置1に組み込まれた濃度測定装置(不図示)を用いて自動的に行われてもよい。ここでも、カルシウム濃度の測定が人為的に行われる場合は、カルシウムの濃度の測定値が制御装置6に入力されうる。また、カルシウムの濃度の入力に替えて、または加えて、回帰線を人為的に補正した結果が制御装置6に入力されてもよい。
【0053】
〔薬剤添加量調整装置の運転方法〕
次に、薬剤添加量調整装置の運転方法について説明する。薬剤添加量調整装置の運転方法は、被処理水にカルシウム不溶化薬剤を添加してカルシウム成分を不溶化させる反応工程と、反応工程後の被処理水を凝集沈殿(沈降分離の一例)させる凝集沈殿工程(沈降分離工程の一例)と、凝集沈殿工程後の上澄み液の一部に対してカルシウム不溶化薬剤を混合して濁度を測定する濁度測定工程と、濁度測定工程で測定された濁度に基づいて前記上澄み液中のカルシウム濃度を算出する濃度算出工程と、濃度算出工程において算出されたカルシウム濃度に基づいて、反応工程において添加するカルシウム不溶化薬剤の添加量をフィードバック制御する添加量制御工程と、を含む。
【0054】
反応工程は、上記(1-3)反応工程に相当し、凝集沈殿工程は、上記(1-4)凝集沈殿工程に相当する。また濁度測定工程、濃度算出工程、及び添加量制御工程は、上記(3-1)検証工程及び(3-2)補正工程をより具体的に例示した工程であると解釈して良い。
【0055】
濁度測定工程においては、制御装置6の制御により筒状部材7の蓋部材8が開いて、沈殿槽12の上澄み液を筒状部材7の内側に流入させた後、蓋部材8を閉じて上澄み液を筒状部材7にサンプリングする。尚、上澄み液のサンプリング量は、筒状部材7の容量によって規定されており、常に一定の量の上澄み液がサンプリングされる。次いで、制御装置6の制御により送液ポンプP1を介してカルシウム不溶化薬剤を第三調製槽14から筒状部材7に所定量送液する。このとき、図示しない撹拌装置によって筒状部材7内の上澄み液が撹拌される。そして、上澄み液にカルシウム成分が残存している場合、カルシウム成分とカルシウム不溶化薬剤とが反応してカルシウム不溶化物が生じると上澄み液の濁度が上昇するため、濁度計9によって上澄み液の濁度が測定される。
【0056】
濁度とカルシウム濃度との間には正の相関があるため、濃度算出工程において、制御装置6は、濁度測定工程で測定された濁度に基づいて上澄み液中のカルシウム濃度を算出する。次いで、添加量制御工程において、制御装置6は、濃度算出工程において算出されたカルシウム濃度に基づいて、反応工程において添加するカルシウム不溶化薬剤の添加量をフィードバック制御する。
【0057】
沈殿槽12の上澄み液は、カルシウム不溶化物と固液分離された後のものであるため、カルシウム成分の多くが除去されているはずである。しかし、上澄み液中のカルシウム濃度を測定し、当該測定値が所定の閾値より高い場合は、制御装置6が、反応工程において添加するカルシウム不溶化薬剤の添加量が不足していると判断してカルシウム不溶化薬剤の添加量が増加するように送液ポンプ44の運転を制御するフィードバック制御、及び/または、上記回帰線が妥当ではないと判断して回帰線を補正するフィードバック制御を実施する。
【0058】
(第2実施形態)
以下、本発明に係る薬剤添加量調整装置の第2実施形態について、上述の第1実施形態と同様に、廃棄物の最終処分場から排出される浸出水からカルシウム成分を除去するカルシウム除去装置に適用した形態を例として説明するが、上述の第1実施形態と異なる構成を主として説明し、共通する構成については説明を省略する。
【0059】
〔薬剤添加量調整装置の構成〕
図1図2図4に示すように、本実施形態に係る薬剤添加量調整装置10は、反応槽3、第三調製槽14、第四調製槽15、沈殿槽12、沈殿槽12の外側に設けられている測定装置、及び制御装置6、を備える。
【0060】
測定装置は、沈殿槽12における上澄み液の一部に対してカルシウム不溶化薬剤を混合して濁度を測定する。本実施形態に係る測定装置は、沈殿槽12の外側に設置される第二反応槽16と、一定量の上澄み液を沈殿槽12から採取して第二反応槽16に送り出す移送装置と、採取した上澄み液を循環させる循環流路18と、循環流路18に配置される濁度計9と、第二反応槽16内の上澄み液を撹拌する撹拌装置17とを備える。
【0061】
移送装置は、送液ポンプP4を有する。送液ポンプP4は、沈殿槽12と第二反応槽16とを接続する配管に設けられたポンプであり、一定量の上澄み液を沈殿槽12から採取して第二反応槽16に送液する。送液ポンプP4は制御装置6と通信可能であり、送液ポンプP4の運転および停止が制御装置6によって制御される。
【0062】
第三調製槽14は、所定濃度のカルシウム不溶化薬剤を貯留可能に構成されている。第三調製槽14は、送液ポンプP2を有する。送液ポンプP2は、第三調製槽14と第二反応槽16とを接続する配管に設けられたポンプであり、カルシウム不溶化薬剤を第三調製槽14から第二反応槽16に送液する。送液ポンプP2は制御装置6と通信可能であり、送液ポンプP2の運転および停止が制御装置6によって制御される。
【0063】
第四調製槽15は、中和用の酸性溶液を貯留可能に構成されている。第四調製槽15は、送液ポンプP3を有する。送液ポンプP3は、第四調製槽15と第二反応槽16とを接続する配管に設けられたポンプであり、酸性溶液を第四調製槽15から第二反応槽16に送液する。送液ポンプP3は制御装置6と通信可能であり、送液ポンプP3の運転および停止が制御装置6によって制御される。
【0064】
循環流路18は、第二反応槽16の底部から上部へ向けて上澄み液を循環させる流路である。循環流路18は、送液ポンプP5と濁度計9とを備える。送液ポンプP5は制御装置6と通信可能であり、送液ポンプP5の運転および停止が制御装置6によって制御される。
【0065】
本実施形態に係る薬剤添加量調整装置においては、測定装置が、沈殿槽の外側に設けられており、沈殿槽の外側に設置される第二反応槽と、一定量の上澄み液を沈殿槽から採取して第二反応槽に送り出す移送装置とを備えるものとして構成されている。このため、装置構成が多少複雑化するものの、沈殿槽から完全に分離されうる状態となるため、沈殿槽の上澄み液のカルシウム濃度をより正確に測定することができる。
【0066】
〔薬剤添加量調整装置の運転方法〕
次に、第2実施形態に係る薬剤添加量調整装置の運転方法について説明する。薬剤添加量調整装置の運転方法は、上記第1実施形態と同様に、被処理水にカルシウム不溶化薬剤を添加してカルシウム成分を不溶化させる反応工程と、反応工程後の被処理水を凝集沈殿(沈降分離の一例)させる凝集沈殿工程(沈降分離工程の一例)と、凝集沈殿工程後の上澄み液の一部に対してカルシウム不溶化薬剤を混合して濁度を測定する濁度測定工程と、濁度測定工程で測定された濁度に基づいて前記上澄み液中のカルシウム濃度を算出する濃度算出工程と、濃度算出工程において算出されたカルシウム濃度に基づいて、反応工程において添加するカルシウム不溶化薬剤の添加量をフィードバック制御する添加量制御工程と、を含む。
【0067】
反応工程は、上記(1-3)反応工程に相当し、凝集沈殿工程は、上記(1-4)凝集沈殿工程に相当する。また濁度測定工程、濃度算出工程、及び添加量制御工程は、上記(3-1)検証工程及び(3-2)補正工程をより具体的に例示した工程であると解釈して良い。
【0068】
濁度測定工程においては、制御装置6の制御により送液ポンプを駆動させて、沈殿槽12の上澄み液の所定量を第二反応槽16に流入させてサンプリングする。次いで、制御装置6の制御により送液ポンプを介してカルシウム不溶化薬剤を第三調製槽14から第二反応槽16に所定量送液する。そして、制御装置6によって撹拌装置17を駆動させて上澄み液とカルシウム不溶化薬剤を撹拌・混合させる。さらに、制御装置6によって循環流路18の送液ポンプを駆動させて上澄み液とカルシウム不溶化薬剤の混合液を循環させる。上澄み液にカルシウム成分が残存している場合、カルシウム成分とカルシウム不溶化薬剤とが反応してカルシウム不溶化物が生じると上澄み液の濁度が上昇するため、循環流路18の濁度計9によって上澄み液の濁度が測定される。
【0069】
濃度算出工程において、制御装置6は、濁度測定工程で測定された濁度に基づいて上澄み液中のカルシウム濃度を算出する。次いで、添加量制御工程において、制御装置6は、濃度算出工程において算出されたカルシウム濃度に基づいて、反応工程において添加するカルシウム不溶化薬剤の添加量をフィードバック制御する。尚、濃度算出工程については、必要に応じて実施する構成としても良い。すなわち、制御装置6は、濃度算出工程を行なわずに、濁度測定工程で測定された濁度に基づいて、反応工程において添加するカルシウム不溶化薬剤の添加量をフィードバック制御するように構成しても良い。
【0070】
沈殿槽12の上澄み液は、カルシウム不溶化物と固液分離された後のものであるため、カルシウム成分の多くが除去されているはずである。しかし、上澄み液中のカルシウム濃度を測定し、当該測定値が所定の閾値より高い場合は、制御装置6が、反応工程において添加するカルシウム不溶化薬剤の添加量が不足していると判断してカルシウム不溶化薬剤の添加量が増加するように送液ポンプ44の運転を制御するフィードバック制御、及び/または、上記回帰線が妥当ではないと判断して回帰線を補正するフィードバック制御を実施する。一方、上澄み液中のカルシウム濃度を測定し、カルシウムがほとんど検出されない場合は、制御装置6が、反応工程において添加するカルシウム不溶化薬剤の添加量が過剰であると判断してカルシウム不溶化薬剤の添加量を減らすように送液ポンプ44の運転を制御するフィードバック制御、及び/または、上記回帰線が妥当ではないと判断して回帰線を補正するフィードバック制御を実施する。
【0071】
尚、濁度測定工程後の上澄み液については、制御装置6の制御により送液ポンプP3を駆動させて、第四調製槽15の酸性溶液の所定量を第二反応槽16に流入させて中和した後、後工程(不図示)に送られる。
【0072】
〔作用効果〕
上記の実施形態によれば、定期的に相関関係(回帰線)の検証を行い、相関関係が妥当ではないと判断したときに相関関係の補正を行うため、浸出水の電気伝導度とカルシウムの濃度との相関関係の変動要因の影響を相殺して、管理量特定工程において特定されるカルシウムの濃度の正確性を維持できる。そのため、カルシウムを析出させるために添加される炭酸ナトリウムの量を適正に維持できるため、カルシウムを確実に除去しうる。また、過剰な炭酸ナトリウムの使用を避けやすいため、除去装置1の運転コストの削減に資する。
【0073】
上記の実施形態によれば、沈殿槽12の上澄み液のカルシウムの濃度に基づいて反応槽に添加するカルシウム不溶化薬剤の添加量をフィードバック制御するため、カルシウムを析出させるために添加される炭酸ナトリウムの量をさらなる適正に維持して、カルシウムをより確実に除去しうる。また、過剰な炭酸ナトリウムの使用もより回避し易くなるため、除去装置1の運転コストの削減により一層寄与する。
【0074】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る運転方法および除去装置のその他の実施形態について説明する。
なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0075】
上記の実施形態では、浸出水の電気伝導度と、浸出水中のカルシウムの濃度との相関関係を表す回帰線を用いて除去装置1の制御を行う構成を例として説明した。しかし本発明において利用する電気伝導度と管理量との相関関係は、回帰線の形に限定されない。かかる相関関係は、たとえば回帰式や検量線などの形で表されうる。また、相関関係として、機械学習により生成された学習済みモデルを用いてもよい。
【0076】
上記の実施形態では、浸出水の電気伝導度の測定値からカルシウムの濃度を特定し、特定されたカルシウムの濃度に見合った領の炭酸ナトリウムを浸出水に加える、という考え方で除去装置1の制御を行う。すなわち、電気伝導度計21の測定値が二段階の演算処理を経て送液ポンプ44の運転条件に反映されることになる。ここで、管理量特定工程において用いる相関関係として、浸出水中のカルシウムの濃度に替えて、浸出水中のカルシウムを除去するために当該浸出水に添加すべき炭酸ナトリウムの量が関与するものを用いれば、相関関係を用いて電気伝導度から炭酸ナトリウムの量を直接特定することができる。このように、管理量特定工程は浸出水中のカルシウムの濃度を特定する態様に限定されない。
【0077】
上記の実施形態では、浸出水に添加される薬剤が炭酸ナトリウムである構成を例として説明した。しかし、本発明において浸出水に添加される薬剤は、浸出水中のカルシウムと反応してこれを除去できる薬剤である限りにおいて限定されず、他にも例えば、炭酸カリウムを用いるようにしても良い。さらにいえば、カルシウムを不溶化させる薬剤であれば、炭酸根を供給する薬剤に限らず、いずれの薬剤を用いてもよい。
【0078】
上記の実施形態では、第一調製槽4において炭酸ナトリウム粉体を水に溶解して炭酸ナトリウム水溶液を調製する構成を例として説明し、調製される炭酸ナトリウム水溶液の濃度が粉体の性質に起因して変動しうることを説明した。しかし本発明において、薬剤の態様が粉体ではない場合も薬液の濃度が変動する可能性がある。たとえば、薬剤がペレットである場合は、溶媒と混合された薬剤の一部が溶け残る場合があり、これが薬液の濃度の変動要因となる。また、薬剤が液体である場合は、溶媒と混合されるべき薬剤の一部が配管に付着する場合があり、これが薬液の濃度の変動要因となる。この問題は、薬液の粘度が高いほど生じやすい。このように、薬剤の態様にかかわらず、薬液の濃度が変動する可能性がある。したがって本発明において、薬剤の態様は限定されない。ただし、薬液の濃度の変動は薬剤が固体である場合に比較的生じやすいため、薬剤が固体である場合は、本発明を実施する利益が特に大きいといえる。
【0079】
上記の実施形態では第一調製槽4において炭酸ナトリウム粉体を水に溶解して炭酸ナトリウム水溶液を調製する構成を例として説明した。しかし本発明において、薬液を調整するために用いる装置は当該構成に限定されない。
【0080】
上記の実施形態では、電気伝導度に基づいて薬剤の濃度を特定する構成を例として説明した。しかし、本発明において測定されて薬剤の濃度を特定する根拠として使用される物理量は電気伝導度に限定されず、たとえば近赤外分光法による吸光度などでありうる。
【0081】
上記の実施形態では、電気伝導度に基づいて浸出水中のカルシウムの濃度を特定する構成を例として説明した。しかし、本発明において測定されて被処理水の管理量を特定する根拠として使用される測定値は電気伝導度に限定されず、たとえば近赤外分光法による吸光度、ならびに、キレート滴定、ドロップテスト、およびICP発行分光分析などの方法で特定されるカルシウムの濃度、などでありうる。また、上記の実施形態のように被処理水の測定を都度行う構成に限定されず、たとえば、被処理水中の特定成分の濃度があらかじめ特定されている場合には、当該特定成分の濃度と薬液における薬剤の濃度とに基いて薬液の量を決定してもよい。
【0082】
上記の実施形態では、汚水計量槽2において浸出水の電気伝導度を測定する構成を例として説明した。しかし本発明において、被処理水測定工程が行われる場所は限定されない。たとえば、被処理水と薬液とを混合する槽において薬液を添加する前の被処理水の測定値を測定する方法や、被処理水が流通する配管中で測定値を測定する方法などが例示される。
【0083】
上記の実施形態では、被処理水が浸出水であり、特定成分がカルシウムである構成を例として説明した。しかし本発明において、被処理水および除去対象の特定成分はいずれも限定されない。すなわち、特定成分を含む被処理水に対して、特定成分と反応する薬剤を添加して、特定成分と薬剤との反応を利用して特定成分を除去する除去装置の運転について、上記の実施形態と同様に本発明を適用できる。
【0084】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、たとえば廃棄物の最終処分場から排出される浸出水からカルシウムを除去するカルシウム除去装置に利用できる。
【符号の説明】
【0086】
1 :カルシウム除去装置
2 :汚水計量槽
21 :電気伝導度計
22 :流量計
3 :反応槽
31 :pH計
4 :第一調製槽
41 :炭酸ナトリウム供給部
42 :給水部
43 :電気伝導度計
44 :送液ポンプ
5 :第二調製槽
51 :水酸化ナトリウム供給部
52 :給水部
53 :送液ポンプ
6 :制御装置
7 :筒状部材
8 :蓋部材
9 :濁度計
10 :薬剤添加量調整装置
11 :混和槽
12 :沈殿槽
13 :中和槽
14 :第三調製槽
15 :第四調製槽
16 :第二反応槽
17 :撹拌装置
18 :循環流路
P1~P5 :送液ポンプ

【要約】
【課題】カルシウム成分の濃度が変動しうる場合であっても、カルシウム成分とカルシウム不溶化薬剤との物質量比を適正な範囲に維持しうる薬剤添加量調整方法を提供すること。
【解決手段】被処理水中に含まれるカルシウム成分を不溶化するカルシウム不溶化薬剤の添加量を調整する薬剤添加量調整方法であって、被処理水にカルシウム不溶化薬剤を添加してカルシウム成分を不溶化させる反応工程と、前記反応工程後の被処理水を沈降分離させる沈降分離工程と、前記沈降分離工程後の上澄み液の一部に対してカルシウム不溶化薬剤を混合して濁度を測定する濁度測定工程と、前記濁度測定工程で測定された濁度に基づいて、前記反応工程において添加するカルシウム不溶化薬剤の添加量をフィードバック制御する添加量制御工程と、を含む。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4