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特許7511740リチウム-硫黄電池用電解液及びこれを含むリチウム-硫黄電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】リチウム-硫黄電池用電解液及びこれを含むリチウム-硫黄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20240628BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240628BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240628BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240628BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/052
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023504611
(86)(22)【出願日】2022-01-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 KR2022000234
(87)【国際公開番号】W WO2022149877
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0001823
(32)【優先日】2021-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ソンヒョ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チャンフン・パク
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/105981(WO,A1)
【文献】特表2017-504155(JP,A)
【文献】特表2013-508927(JP,A)
【文献】特開2002-075446(JP,A)
【文献】特表2018-519620(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0114631(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052 - 10/0569
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の二重結合を含むと共に酸素原子及び硫黄原子のいずれかを含むヘテロ環化合物を含む第1の溶媒;
エーテル系化合物、エステル系化合物、アミド系化合物及びカーボネート系化合物のいずれか1つ以上を含む第2の溶媒;
リチウム塩(ただし、硝酸リチウム、ボレート系リチウム塩及び亜硝酸リチウムでない)
硝酸リチウム;及び
ボレート系リチウム塩;を含み、
前記第1の溶媒と前記第2の溶媒の体積比が1:2.5~1:6である、リチウム-硫黄電池用電解液。
【請求項2】
前記ボレート系リチウム塩がリチウムテトラフルオロボレート(LiBF、lithium tetrafluoroborate)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB、lithium bis(oxalate)borate)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiFOB、lithium difluoro(oxlato)borate)及びリチウムビス(2-メチル-2-フルオロ-マロナト)ボレート(Lithium bis(2-methyl-2-fluoro-malonato)borate)からなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用電解液。
【請求項3】
前記ボレート系リチウム塩の含有量が、前記リチウム-硫黄電池用電解液の総重量に対して0.01重量%~5.0重量%である、請求項1又は2に記載のリチウム-硫黄電池用電解液。
【請求項4】
前記ボレート系リチウム塩と前記硝酸リチウムの重量比が1:1~1:30である、請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用電解液。
【請求項5】
前記リチウム塩が、LiCl、LiBr、LiI、LiClO LiPF、LiCFSOLiCF CO LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CSONLi、(SOF)NLi、(CFSOCLi及び炭素数4以下の低級脂肪族カルボン酸リチウムからなる群より選択される1種以上である、請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用電解液。
【請求項6】
前記リチウム塩の濃度が0.2M~2.0Mであることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用電解液。
【請求項7】
前記ヘテロ環化合物が、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~8の環状アルキル基、炭素数6~10のアリール基、ハロゲン基、ニトロ基、アミン基、及びスルホニル基からなる群より選択される1種以上で置換若しくは非置換の3~15員のヘテロ環化合物であるか、または炭素数3~8の環状アルキル基及び炭素数6~10のアリール基のうち1種以上とヘテロ環化合物の多環化合物である、請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用電解液。
【請求項8】
前記ヘテロ環化合物が、フラン、2-メチルフラン、3-メチルフラン、2-エチルフラン、2-プロピルフラン、2-ブチルフラン、2,3-ジメチルフラン、2,4-ジメチルフラン、2,5-ジメチルフラン、ピラン、2-メチルピラン、3-メチルピラン、4-メチルピラン、ベンゾフラン、2-(2-ニトロビニル)フラン、チオフェン、2-メチルチオフェン、2-エチルチオフェン、2-プロピルチオフェン、2-ブチルチオフェン、2,3-ジメチルチオフェン、2,4-ジメチルチオフェン、及び2,5-ジメチルチオフェンからなる群より選択されることである、請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用電解液。
【請求項9】
前記第2の溶媒のエーテル系化合物が、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、及びポリエチレングリコールメチルエチルエーテルからなる群より選択される1種以上である、請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用電解液。
【請求項10】
前記リチウム-硫黄電池用電解液が、硝酸ランタン、硝酸カリウム、硝酸セシウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸カリウム及び亜硝酸セシウムからなる群より選択される1種以上をさらに含むことである、請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用電解液。
【請求項11】
前記リチウム-硫黄電池用電解液が、第1の溶媒である2-メチルフラン、第2の溶媒であるジメトキシエタン、リチウム塩であるLiFSI((SOF) NLi)、ボレート系リチウム塩であるリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiFOB、lithium difluoro(oxlato)borate)及び硝酸リチウムを含むことである、請求項1~10のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用電解液。
【請求項12】
正極;
負極;
前記正極と負極との間に介在する分離膜;及び
請求項1~11のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用電解液を含むリチウム-硫黄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム-硫黄電池用電解液及びこれを含むリチウム-硫黄電池に関し、より詳細には、リチウム-硫黄電池の電解液に含まれる溶媒、リチウム塩及び添加剤を適宜組み合わせることによりリチウム-硫黄電池の寿命特性及びリチウムサイクル効率を向上させることができる、リチウム-硫黄電池用電解液及びこれを含むリチウム-硫黄電池に関する。
【0002】
本出願は、2021年1月7日付け韓国特許出願第10-2021-0001823号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容を本明細書の一部として含む。
【背景技術】
【0003】
二次電池の応用領域が電気自動車(EV)やエネルギー貯蔵装置(ESS)などに拡大されるにつれて、相対的に低い重量対比エネルギー貯蔵密度(~250Wh/kg)を有するリチウム-イオン二次電池は、このような製品に対する適用の限界がある。これとは異なり、リチウム-硫黄二次電池は、理論上で高い重量対比エネルギー貯蔵密度(~2,600Wh/kg)を具現できるので、次世代二次電池の技術として脚光を浴びている。
【0004】
リチウム-硫黄二次電池は、S-S結合(Sulfur-Sulfur Bond)を有する硫黄系物質を正極活物質として用い、リチウム金属を負極活物質として用いた電池システムを意味する。前記正極活物質の主材料である硫黄は、世界的に資源量が豊富で、毒性がなく、低い原子当たりの重量を有している利点がある。
【0005】
リチウム-硫黄二次電池は、放電時に負極活物質であるリチウムが電子を失ってイオン化しながら酸化され、正極活物質である硫黄系物質が電子を受け取って還元される。ここで、リチウムの酸化反応は、リチウム金属が電子を失ってリチウムカチオン形態に変換される過程である。また、硫黄の還元反応は、S-S結合が2つの電子を受け取って硫黄アニオン形態に変換される過程である。リチウムの酸化反応によって生成されたリチウムカチオンは電解質を介して正極に伝達され、硫黄の還元反応によって生成された硫黄アニオンと結合して塩を形成する。具体的に、放電前の硫黄は環状のS構造を有し、これは還元反応によりリチウムポリスルフィド(Lithium polysulfide、LiS)に変換される。リチウムポリスルフィドが完全に還元される場合には、リチウムスルフィド(LiS)が生成されるようになる。
【0006】
正極活物質である硫黄は低い電気伝導度の特性により、固相形態では電子及びリチウムイオンとの反応性を確保することが難しい。既存のリチウム-硫黄電池はこのような硫黄の反応性を改善するために、Li形態の中間ポリスルフィド(intermediate polysulfide)を生成して液相反応を誘導し、反応性を改善する。この場合、電解液の溶媒としてリチウムポリスルフィドに対して溶解性の高いジオキソラン(dioxolane)、ジメトキシエタン(dimethoxyethane)などのエーテル系溶媒が用いられる。
【0007】
しかし、このようなエーテル系溶媒を用いる場合、様々な原因によってリチウム-硫黄二次電池の寿命特性が低下する問題点が存在する。例えば、正極からのリチウムポリスルフィドの溶出、リチウム負極上にデンドライトの成長によるショート(short)の発生、電解液の分解による副産物の堆積などによりリチウム-硫黄二次電池の寿命特性が低下することができる。
【0008】
特に、このようなエーテル系溶媒を用いる場合、リチウムポリスルフィドを多量に溶解させることができるため反応性が高いが、電解液内に溶けるリチウムポリスルフィドの特性のため、電解液の含有量によって硫黄の反応性及び寿命特性が影響を受けるようになる。
【0009】
近年、航空機及び次世代電気自動車などに要求される500Wh/kg以上の高エネルギー密度のリチウム-硫黄二次電池を開発するために、電極中の硫黄のローディング量が大きく、電解液の含有量が最小化されることが要求される。
【0010】
しかし、前記エーテル系溶媒の特性上、電解液の含有量が低くなるほど充放電中に急速に粘度が増加し、それにより、過電圧が発生して退化することがある問題がある。
【0011】
そこで、電解液の分解を防止し、優れた寿命特性を確保するために電解液に別途の添加剤を添加する研究が持続的に行われている。それにもかかわらず、寿命特性及びリチウムサイクル効率を向上させることができる、電解液の成分及び組成については明確に明らかにされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】韓国公開特許公報第10-2007-0027512(2007年3月9日)、「リチウム-硫黄電気化学電池用電解質」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明では、リチウム-硫黄電池の寿命特性及びリチウムサイクル効率を向上させるために、1つ以上の二重結合を含むと共に酸素原子及び硫黄原子のいずれかを含むヘテロ環化合物を含む第1の溶媒、 エーテル系化合物、エステル系化合物、アミド系化合物及びカーボネート系化合物のいずれか1つ以上を含む第2の溶媒、リチウム塩、硝酸リチウム及びボレート系リチウム塩を含むことにより、前記問題を解決してリチウム-硫黄電池の性能を向上させることができることを確認し、本発明を完成した。
【0014】
したがって、本発明の目的は、リチウム-硫黄電池の寿命特性及びリチウムサイクル効率を向上させることができるリチウム-硫黄電池用電解液を提供することにある。また、本発明の他の目的は、前記電解液を備え、電池の性能が向上したリチウム-硫黄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、1つ以上の二重結合を含むと共に酸素原子及び硫黄原子のいずれかを含むヘテロ環化合物を含む第1の溶媒;エーテル系化合物、エステル系化合物、アミド系化合物及びカーボネート系化合物のいずれか1つ以上を含む第2の溶媒;リチウム塩;硝酸リチウム;及びボレート系リチウム塩;を含むリチウム-硫黄電池用電解液を提供する。
【0016】
また、本発明は、正極;負極;前記正極と負極との間に介在する分離膜;及び前記リチウム-硫黄電池用電解液;を含むリチウム-硫黄電池用電解液を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るリチウム-硫黄電池用電解液及びこれを含むリチウム-硫黄電池によれば、リチウム-硫黄電池の電解液に1つ以上の二重結合を含むと共に酸素原子及び硫黄原子のいずれかを含むヘテロ環化合物を含む第1の溶媒、エーテル系化合物、エステル系化合物、アミド系化合物及びカーボネート系化合物のいずれか1つ以上を含む第2の溶媒、リチウム塩、硝酸リチウム及びボレート系リチウム塩を含むことにより、前記電解液を備えるリチウム-硫黄電池の寿命特性及びリチウムサイクル効率を向上させる効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1~3及び比較例1~2のリチウム-硫黄電池用電解液を適用したリチウム-硫黄電池の寿命特性を示すグラフである。
図2】本発明の実施例1、4~8及び比較例1のリチウム-硫黄電池用電解液を適用したリチウム-硫黄電池の寿命特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0020】
本発明により提供される具体例は、以下の説明によりすべて達成されることができる。以下の説明は本発明の好ましい具体例を記述すると理解されなければならず、本発明が必ずしもこれに限定されるものではないことを理解しなければならない。
【0021】
本発明は、A)1つ以上の二重結合を含むと共に酸素原子及び硫黄原子のいずれかを含むヘテロ環化合物を含む第1の溶媒;B)エーテル系化合物、エステル系化合物、アミド系化合物及びカーボネート系化合物のいずれか1つ以上を含む第2の溶媒;C)リチウム塩;D)硝酸リチウム;及びE)ボレート系リチウム塩;を含むリチウム-硫黄電池用電解液を提供する。
【0022】
以下、本発明のリチウム-硫黄電池用電解液に含まれるA)第1の溶媒、B)第2の溶媒、C)リチウム塩、D)硝酸リチウム及びE)ボレート系リチウム塩のそれぞれについて具体的に説明する。
【0023】
A)第1の溶媒
本発明に係るリチウム-硫黄電池用電解液は、1つ以上の二重結合を含むと共に酸素原子及び硫黄原子のいずれかを含むヘテロ環化合物を含む第1の溶媒を含むことができる。
【0024】
前記第1の溶媒は、1つ以上の二重結合を含むと共に酸素原子及び硫黄原子のいずれかを含むヘテロ環化合物を含むことができる。前記ヘテロ環化合物は、ヘテロ原子(酸素原子または硫黄原子)の孤立電子対(lone pair electrons)の非偏在化(delocalization)により塩(salt)を溶解させにくい特性を有する。
【0025】
リチウム系金属を負極として用いるリチウム-硫黄電池において、電池の初期放電段階で前記ヘテロ環化合物の開環重合反応(ring opening reaction)によりリチウム系金属(負極)の表面に高分子保護膜(solid electrolyte interface、SEI層)を形成することができ、これによって、リチウムデンドライトの生成を抑制させることができ、さらにリチウム系金属表面での電解液分解及びそれによる副反応を減少させることにより、リチウム-硫黄電池の寿命特性を向上させることができる。
【0026】
したがって、本発明のヘテロ環化合物は、リチウム系金属の表面に高分子保護膜を形成するために、1つ以上の二重結合が存在することが必須に要求される。また、本発明のヘテロ環化合物は、酸素または硫黄を含めて極性を帯びるようにすることによって、電解液の他の有機溶媒とも親和度を高めて電解液の成分としての活用を容易にするので、前記ヘテロ原子(酸素原子または硫黄原子)も必ず含まなければならない。
【0027】
前記ヘテロ環化合物は、3~15員、好ましくは3~7員、さらに好ましくは5~6員のヘテロ環化合物であってもよい。また、このような前記ヘテロ環化合物は、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~8の環状アルキル基、炭素数6~10のアリール基、ハロゲン基、ニトロ基(-NO)、アミン基(-NH)及びスルホニル基(-SO)からなる群より選択される1種以上で置換若しくは非置換のヘテロ環化合物であってもよい。また、前記ヘテロ環化合物は、炭素数3~8の環状アルキル基及び炭素数6~10のアリール基のうち1種以上とヘテロ環化合物の多環化合物であってもよい。
【0028】
前記ヘテロ環化合物が炭素数1~4のアルキル基で置換された場合、ラジカルが安定化して電解液間の副反応を抑制させることができ、好ましい。また、ハロゲン基またはニトロ基で置換された場合、リチウム系金属表面に機能性保護膜を形成することができ、好ましく、このとき、前記形成された機能性保護膜は圧縮(compact)された形態の保護膜として安定し、リチウム系金属の均一な蒸着(deposition)が可能となるようにし、ポリスルフィドとリチウム系金属との副反応を抑制させることができる利点がある。
【0029】
前記ヘテロ環化合物の具体例としては、フラン(furan)、2-メチルフラン(2-methylfuran)、3-メチルフラン(3-methylfuran)、2-エチルフラン(2-ethylfuran)、2-プロピルフラン(2-propylfuran)、2-ブチルフラン(2-butylfuran)、2,3-ジメチルフラン(2,3-dimethylfuran)、2,4-ジメチルフラン(2,4-dimethylfuran)、2,5-ジメチルフラン(2,5-dimethylfuran)、ピラン(pyran)、2-メチルピラン(2-methylpyran)、3-メチルピラン(3-methylpyran)、4-メチルピラン(4-methylpyran)、ベンゾフラン(benzofuran)、2-(2-ニトロビニル)フラン(2-(2-Nitrovinyl)furan)、チオフェン(thiophene)、2-メチルチオフェン(2-methylthiophene)、2-エチルチオフェン(2-ethylthiophene)、2-プロピルチオフェン(2-propylthiophene)、2-ブチルチオフェン(2-butylthiophene)、2,3-ジメチルチオフェン(2,3-dimethylthiophene)、2,4-ジメチルチオフェン(2,4-dimethylthiophene)、及び2,5-ジメチルチオフェン(2,5-dimethylthiophene)などが挙げられ、好ましくは2-メチルフランであってもよい。
【0030】
このようなヘテロ環化合物を含む第1の溶媒の含有量は、本発明のリチウム-硫黄電池用電解液に含まれる有機溶媒(すなわち、第1の溶媒+第2の溶媒)の全体積に対して5体積%~50体積%であってもよく、好ましくは10体積%~30体積%であってもよく、より好ましくは15体積%~20体積%であってもよい(残りは前記第2の溶媒に該当する)。前記第1の溶媒の含有量が前記範囲未満の場合、ポリスルフィドの溶出量を減少させる能力が低下して電解液の抵抗増加を抑制できなくなるか、またはリチウム系金属表面に保護膜が完璧に形成されないという問題が発生することがある。また、前記第1の溶媒の含有量が前記範囲を超える場合には、電解液及びリチウム系金属の表面抵抗の増加により電池の容量及び寿命が減少する問題が生じるおそれがある。したがって、前記第1の溶媒の含有量は前記範囲を満たすことが好ましい。
【0031】
B)第2の溶媒
本発明に係るリチウム-硫黄電池用電解液は、エーテル系化合物、エステル系化合物、アミド系化合物及びカーボネート系化合物のいずれか1つ以上を含む第2の溶媒を含むことができる。
【0032】
前記第2の溶媒は、エーテル系化合物、エステル系化合物、アミド系化合物及びカーボネート系化合物のいずれか1つ以上を含むことができる。前記第2の溶媒は、リチウム塩を溶解して電解液にリチウムイオン伝導度を有するようにするだけでなく、正極活物質である硫黄を溶出させてリチウムと電気化学的反応を円滑に進行できるようにする役割を果たす。前記カーボネート系化合物の場合、線状カーボネート系化合物または環状カーボネート系化合物であってもよい。
【0033】
前記エーテル系化合物の具体例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、及びポリエチレングリコールメチルエチルエーテルからなる群より選択される1種以上が挙げられるが、これに限定されるものではなく、好ましくはジメトキシエタンであってもよい。
【0034】
また、前記エステル系化合物としては、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、及びε-カプロラクトンからなる群より選択される1種以上が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、前記アミド系化合物は、当業界において使用中である通常のアミド系化合物であってもよい。
【0035】
また、前記線状カーボネート系化合物としては、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート(dipropyl carbonate、DPC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate、EMC)、メチルプロピルカーボネート(methylpropyl carbonate、MPC)、及びエチルプロピルカーボネート(ethylpropyl carbonate、EPC)からなる群より選択される1種以上が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0036】
また、前記環状カーボネート系化合物としては、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート及びこれらのハロゲン化物(フルオロエチレンカーボネート(fluroethylene carbonate、FEC)など)からなる群より選択される1種以上が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0037】
一方、前記第2の溶媒が適正量未満で含まれると、リチウム塩を十分に溶解できず、リチウムイオン伝導度が低下する問題及び活物質である硫黄が溶解し得る濃度を超えて析出する問題が発生するおそれがあり、過量に含まれる場合には、正極活物質である硫黄が過多に溶出してリチウムポリスルフィドとリチウム負極のシャトル現象がひどくなり、寿命が減少する問題が発生することがある。
【0038】
一方、前記第1の溶媒及び第2の溶媒を含む有機溶媒は、本発明のリチウム-硫黄電池用電解液の総重量に対して70~97重量%、好ましくは75~96重量%、さらに好ましくは90~ 96重量%で含まれてもよい。もし、前記有機溶媒がリチウム-硫黄電池用電解液の総重量に対して70重量%未満で含まれると、電解液粘度が高くなり、イオン伝導度が低下する問題、またはリチウム塩や添加剤が電解液に完全に溶解しない問題が発生することがあり、97重量%を超える含有量で含まれる場合には、電解液内のリチウム塩濃度が低くなり、イオン伝導度が減少する問題が発生することがあるため、前記第1の溶媒及び第2の溶媒の含有量は前記範囲を満たすことが好ましい。
【0039】
また、前記第1の溶媒と前記第2の溶媒の体積比は1:2.5~1:6であってもよく、好ましくは1:4~1:6であってもよく、より好ましくは1:4~1:5.5であってもよい。前記第1の溶媒と前記第2の溶媒の体積比が前記範囲未満の場合、リチウム塩を十分に溶解できず、リチウムイオン伝導度が低下する問題及び活物質である硫黄が溶解し得る濃度を超えて析出する問題が発生するおそれがあり、前記第1の溶媒と前記第2の溶媒の体積比が前記範囲を超える場合には、正極活物質である硫黄が過多に溶出してリチウムポリスルフィドとリチウム負極のシャトル現象がひどくなり、寿命が減少する問題が発生することがあるため、前記第1の溶媒と前記第2の溶媒の体積比は前記範囲を満たすことが好ましい。
【0040】
C)リチウム塩
本発明に係るリチウム-硫黄電池用電解液は、イオン伝導性を増加させるために用いられる電解質塩としてリチウム塩を含むことができる。
【0041】
前記リチウム塩の例としては、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiB(Ph)、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiCBO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CSONLi、(SOF)NLi、(CFSOCLi及び炭素数4以下の低級脂肪族カルボン酸リチウムからなる群より選択される1種以上が挙げられるが、これに限定されるものではなく、好ましくはLiFSI((SOF)NLi)を必須成分として含むことができる。
【0042】
前記リチウム塩の濃度は、イオン伝導度などを考慮して決定することができ、例えば0.2M~2M、好ましくは0.5M~1Mであってもよい。前記リチウム塩の濃度が前記範囲未満の場合、電池駆動に適合したイオン伝導度の確保が難しくなり、前記範囲を超える場合には、電解液の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が低下するか、またはリチウム塩自体の分解反応が増加して電池の性能が低下することがあるため、前記リチウム塩の濃度は前記範囲を満たすことが好ましい。
【0043】
D)硝酸リチウム
また、本発明に係るリチウム-硫黄電池用電解液は、硝酸リチウム(LiNO)を含むことができる。ただし、必要に応じて硝酸ランタン(La(NO)、硝酸カリウム(KNO)、硝酸セシウム(CsNO)、硝酸マグネシウム(Mg(NO)、硝酸バリウム(Ba(NO)、亜硝酸リチウム(LiNO)、亜硝酸カリウム(KNO)、及び亜硝酸セシウム(CsNO)からなる群より選択される1種以上をさらに含むことができる。
【0044】
前記硝酸リチウムは、リチウム-硫黄電池用電解液の総重量に対して1~7重量%、好ましくは2~6重量%、さらに好ましくは3~5重量%の含有量で含まれてもよい。前記硝酸リチウムの含有量がリチウム-硫黄電池用電解液の総重量に対して1重量%未満の場合、クーロン効率が急激に低くなることがあり、7重量%を超える場合には、電解液の粘度が高くなり駆動が困難になり得る。したがって、前記硝酸リチウムの含有量は前記範囲を満たすことが好ましい。
【0045】
E)ボレート系リチウム塩
本発明に係るリチウム-硫黄電池用電解液は、ボレート系リチウム塩を添加剤として含むことができる。前記ボレート系リチウム塩は、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF、lithium tetrafluoroborate)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB、lithium bis(oxalate)borate)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiFOB、lithium difluoro(oxlato)borate)及びリチウムビス(2-メチル-2-フルオロ-マロナト)ボレート(Lithium bis(2-methyl-2-fluoro-malonato)borate)からなる群より選択された1種以上であってよく、好ましくは、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiFOB、lithium difluoro(oxlato)borate、LiDFOB)であってもよい。
【0046】
前記ボレート系リチウム塩の含有量は、リチウム-硫黄電池用電解液の総重量に対して0.01重量%~5.0重量%であってよく、好ましくは0.05重量%~4.0重量%であってよく、より好ましくは0.1重量%~3.0重量%であってもよい。前記ボレート系リチウム塩の含有量が前記範囲未満の場合、リチウム系金属表面に保護膜を十分に形成できない問題が発生することがあり、前記ボレート系リチウム塩の含有量が前記範囲を超える場合、リチウム系金属の表面抵抗の増大により電池の容量及び寿命が減少する問題が発生することがあるため、前記ボレート系リチウム塩の含有量は前記範囲を満たすことが好ましい。
【0047】
また、前記ボレート系リチウム塩と前記硝酸リチウムの重量比は、1:1~1:30であってもよく、好ましくは1:2~1:30であってもよく、より好ましくは1:3~1:30であってもよい。前記ボレート系リチウム塩と前記硝酸リチウムの重量比が前記範囲未満の場合、クーロン効率が急激に低くなることがあり、前記ボレート系リチウム塩と前記硝酸リチウムの重量比が前記範囲を超える場合には、リチウム系金属表面に保護膜を十分に形成できない問題が発生することがあるため、前記ボレート系リチウム塩と前記硝酸リチウムの重量比は前記範囲を満たすことが好ましい。
【0048】
一方、前記ボレート系リチウム塩と前記硝酸リチウムの総含有量は、リチウム-硫黄電池用電解液の総重量に対して2重量%~8重量%であってもよく、好ましくは3重量%~7重量%であってもよく、より好ましくは3重量%~5重量%であってもよい。前記ボレート系リチウム塩と前記硝酸リチウムの総含有量が前記範囲未満の場合、リチウム系金属表面に保護膜を十分に形成できず、電池のクーロン効率が急激に低くなる問題が発生することがあり、前記ボレート系リチウム塩と前記硝酸リチウムの総含有量が前記範囲を超える場合には、電解液の粘度が高くなり駆動に困難があり得る。したがって、前記ボレート系リチウム塩と前記硝酸リチウムの総含有量は前記範囲を満たすことが好ましい。
【0049】
次に、本発明に係るリチウム-硫黄電池について説明する。前記リチウム-硫黄電池は、正極、負極、前記正極と負極との間に介在する分離膜、及び前記リチウム-硫黄電池用電解液を含む。
【0050】
前記リチウム-硫黄電池用電解液は、前述のように、A)第1の溶媒、B)第2の溶媒、C)リチウム塩及びD)硝酸リチウム及びE)ボレート系リチウム塩を含むもので、具体的な内容は前述のことを準用する。また、前記リチウム-硫黄電池は、当業界において通常用いられるすべてのリチウム-硫黄電池であってもよく、そのうちリチウム-硫黄電池が最も好ましい。
【0051】
以下、本発明に係るリチウム-硫黄電池において、正極、負極及び分離膜についてより具体的な説明をする。
【0052】
前述のように、本発明のリチウム硫黄電池に含まれる正極は、正極活物質、バインダー、導電材などを含む。前記正極活物質としては、通常のリチウム-硫黄電池に適用されるものであってもよく、例えば、硫黄元素(Elemental sulfur、S)、硫黄系化合物またはこれらの混合物を含むことができ、前記硫黄系化合物は具体的に、Li(n≧1)、有機硫黄化合物または炭素-硫黄複合体((C:x=2.5~50、n≧2)などであってもよい。また、前記正極活物質は、硫黄-炭素複合体を含むことができ、硫黄物質は単独では電気伝導性がないため、導電材と複合して用いることができる。前記硫黄-炭素複合体を構成する炭素材(または、炭素源)は多孔性構造であるか、または比表面積が高いもので、当業界において通常用いられるものであればいずれでも構わない。例えば、前記多孔性炭素材としては、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラックなどのカーボンブラック;単一壁炭素ナノチューブ(SWCNT)、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNT)などの炭素ナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化炭素ファイバー(ACF)などの炭素繊維;及び活性炭素からなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されず、その形態は、球状、棒状、針状、板状、チューブ状またはバルク状でリチウム-二次電池に適用可能なものであれば特に制限はない。
【0053】
また、前記炭素材には気孔が形成されており、前記気孔の空隙率は40~90%、好ましくは60~80%であり、前記気孔の空隙率が40%未満であれば、リチウムイオン伝達が正常に行われず、抵抗成分として作用して問題が発生することがあり、90%を超える場合には、機械的強度が低下する問題が発生することがある。また、前記炭素材の気孔の大きさは10nm~5μm、好ましくは50nm~5μmであり、前記気孔の大きさが10nm未満であるとリチウムイオン透過が不可能な問題が発生することがあり、5μmを超える場合には、電極間の接触による電池短絡及び安全性の問題が発生することがある。
【0054】
前記バインダーは、正極活物質と導電材などの結合及び集電体への結合に助力する成分であり、例えば、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、ポリビニリデンフルオライド-ポリヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF/HFP)、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、アルキル化ポリエチレンオキシド、ポリプロピレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルクロライド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、スチレン-ブチレンゴム、フッ素ゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、及びこれらの混合物からなる群より選択される1種以上を用いることができるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0055】
前記バインダーは、通常、正極の総重量100重量部を基準として1~50重量部、好ましくは3~15重量部添加される。前記バインダーの含有量が1重量部未満であると、正極活物質と集電体との接着力が不十分となり、50重量部を超えると接着力は向上するが、それだけ正極活物質の含有量が減少して電池容量が低くなることがある。
【0056】
前記正極に含まれる導電材は、リチウム-二次電池の内部環境で副反応を誘発せず、当該電池に化学的変化を誘発することなくかつ優れた電気伝導性を有するものであれば特に制限されず、代表的には黒鉛または導電性炭素を用いることができ、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラックなどのカーボンブラック;結晶構造がグラフェンやグラファイトである炭素系物質;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム粉末、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスキー;酸化チタンなどの導電性酸化物;及びポリフェニレン誘導体などの導電性高分子;を単独でまたは2種以上混合して用いることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0057】
前記導電材は、通常、正極の全重量100重量部を基準として0.5~50重量部、好ましくは1~30重量部で添加される。導電材の含有量が0.5重量部未満と小さすぎると、電気伝導性の向上効果が期待できず、電池の電気化学的特性が低下することがあり、導電材の含有量が50重量部を超えて多すぎると相対的に正極活物質の量が小さくなり、容量及びエネルギー密度が低下することがある。正極に導電材を含ませる方法は大きく制限されず、正極活物質へのコーティングなど当分野において公知の常法を用いることができる。また、必要に応じて、正極活物質に導電性の第2の被覆層が付加されることにより、前記のような導電材の添加に代わることもできる。
【0058】
また、本発明の正極には、その膨張を抑制する成分として充填剤を選択的に添加することができる。このような充填剤は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、かつ電極の膨張を抑制できるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオリフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質;などを用いることができる。
【0059】
前記正極は、正極活物質、バインダー及び導電材などを分散媒(溶媒)に分散、混合させてスラリーを作り、これを正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することによって製造することができる。前記分散媒としては、NMP(N-methyl-2-pyrrolidone)、DMF(Dimethyl formamide)、DMSO(Dimethyl sulfoxide)、エタノール、イソプロパノール、水及びこれらの混合物を用いることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0060】
前記正極集電体としては、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、ステンレススチール(STS)、アルミニウム(Al)、モリブデニウム(Mo)、クロム(Cr)、カーボン(C)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ITO(In doped SnO)、FTO(F doped SnO)、及びこれらの合金と、アルミニウム(Al)またはステンレススチールの表面にカーボン(C)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)または銀(Ag)を表面処理したものなどを用いることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。正極集電体の形態は、ホイル、フィルム、シート、パンチングされたもの、多孔質体、発泡体などの形態であってもよい。
【0061】
前記負極はリチウム系金属であり、リチウム系金属の一側に集電体をさらに含むことができる。前記集電体は負極集電体を用いることができる。前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく、かつ高い導電性を有するものであれば特に制限されず、銅、アルミニウム、ステンレススチール、亜鉛、チタン、銀、パラジウム、ニッケル、鉄、クロム、これらの合金及びこれらの組み合わせからなる群より選択することができる。前記ステンレススチールはカーボン、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理されることができ、前記合金としてはアルミニウム-カドミウム合金を用いることができ、その他にも焼成炭素、導電材で表面処理された非伝導性高分子または伝導性高分子などを含むこともできる。一般的に、負極集電体としては銅薄板を適用する。
【0062】
また、その形態は、表面に微細な凹凸が形成された/未形成のフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態を用いることができる。また、前記負極集電体は、3~500μmの厚さ範囲であるものを適用する。前記負極集電体の厚さが3μm未満であると集電効果が落ち、一方、厚さが500μmを超えるとセルをフォールディング(folding)して組み立てる場合、加工性が低下する問題点がある。
【0063】
前記リチウム系金属は、リチウムまたはリチウム合金であってもよい。このとき、リチウム合金はリチウムと合金化が可能な元素を含み、具体的にリチウムとSi、Sn、C、Pt、Ir、Ni、Cu、Ti、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge及びAlからなる群より選択される1種以上との合金であってもよい。
【0064】
前記リチウム系金属はシートまたはホイルの形態であってもよく、場合によっては集電体上にリチウムまたはリチウム合金が乾式工程により蒸着またはコーティングされた形態であるか、または粒子上の金属及び合金が湿式工程などにより蒸着またはコーティングされた形態であってもよい。
【0065】
前記正極と負極との間は通常の分離膜を介在することができる。前記分離膜は、電極を物理的に分離する機能を有する物理的な分離膜であり、通常の分離膜として用いられるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解液のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液含湿能力に優れることが好ましい。また、前記分離膜は、正極と負極を互いに分離または絶縁させながら、正極と負極との間でリチウムイオンの輸送を可能にする。このような分離膜は多孔性であり、非伝導性または絶縁性である物質からなってもよい。前記分離膜は、フィルムのような独立した部材であってもよく、正極及び/又は負極に付加されたコーティング層であってもよい。
【0066】
前記分離膜として用いることができるポリオレフィン系多孔性膜の例としては、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独で又はこれらを混合した高分子で形成した膜が挙げられる。前記分離膜として用いることができる不織布の例としては、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリイミド(polyimide)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリエチレンナフタレネート(polyethylenenaphthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエステル(polyester)などをそれぞれ単独で又はこれらを混合した高分子で形成した不織布が可能であり、このような不織布は多孔性ウェブ(web)を形成する繊維形態で、長繊維で構成されたスパンボンド(spunbond)またはメルトブローン(meltblown)形態を含む。
【0067】
前記分離膜の厚さは特に制限されないが、1~100μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは5~50μmの範囲である。前記分離膜の厚さが1μm未満の場合には、機械的物性を維持することができず、100μmを超える場合には、前記分離膜が抵抗層として作用するようになって電池の性能が低下する。前記分離膜の気孔の大きさ及び気孔度は特に制限されないが、気孔の大きさは0.1~50μmであり、気孔度は10~95%であることが好ましい。前記分離膜の気孔の大きさが0.1μm未満であるか、気孔度が10%未満であると、分離膜が抵抗層として作用するようになり、気孔の大きさが50μmを超えるか、気孔度が95%を超える場合には、機械的物性を維持することができない。
【0068】
以上のような正極、負極、分離膜及び電解液を含む本発明のリチウム-硫黄電池は、正極を負極と対面させ、その間に分離膜を介在した後、本発明に係るリチウム-硫黄電池用電解液を注入する工程により製造することができる。
【0069】
一方、本発明に係るリチウム-硫黄電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに適用されることはもちろん、中大型デバイスの電源である電池モジュールの単位電池として特に好適に用いることができる。このような側面から、本発明はまた、2つ以上がリチウム-硫黄電池が電気的に連結(直列または並列)されて含まれた電池モジュールを提供する。前記電池モジュールに含まれるリチウム-硫黄電池の数量は、電池モジュールの用途や容量などを考慮して多様に調節することができることは言うまでもない。さらに、本発明は、当分野の通常の技術により前記電池モジュールを電気的に連結した電池パックを提供する。前記電池モジュール及び電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、及びプラグ-インハイブリッド電気車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;電気トラック;電気商用車;または電力貯蔵用システムのいずれか1つ以上の中大型デバイス電源として利用可能であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0070】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は本発明を例示するに過ぎず、本発明の範囲及び技術思想の範囲内で種々の変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0071】
実施例
リチウム-硫黄二次電池用電解液の製造
実施例1
2-メチルフラン(第1の溶媒)と1,2-ジメトキシエタン(第2の溶媒)を1:4の体積比(v/v)で混合した有機溶媒に、電解液の総重量を基準として3.0重量%の硝酸リチウム(LiNO)と0.1重量%のリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)を入れ、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の濃度が0.75M(mol/L)となるように溶解させ、リチウム-硫黄電池用電解液を製造した。
【0072】
実施例2
0.5重量%のリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池用電解液を製造した。
【0073】
実施例3
1.0重量%のリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池用電解液を製造した。
【0074】
実施例4
有機溶媒として2-メチルフラン(第1の溶媒)と1,2-ジメトキシエタン(第2の溶媒)を1:4.5の体積比(v/v)で混合した有機溶媒を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム硫黄電池用電解液を製造した。
【0075】
実施例5
有機溶媒として2-メチルフラン(第1の溶媒)と1,2-ジメトキシエタン(第2の溶媒)を1:5の体積比(v/v)で混合した有機溶媒を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム硫黄電池用電解液を製造した。
【0076】
実施例6
有機溶媒として2-メチルフラン(第1の溶媒)と1,2-ジメトキシエタン(第2の溶媒)を1:5.5の体積比(v/v)で混合した有機溶媒を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム硫黄電池用電解液を製造した。
【0077】
実施例7
有機溶媒として2-メチルフラン(第1の溶媒)と1,2-ジメトキシエタン(第2の溶媒)を1:6の体積比(v/v)で混合した有機溶媒を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム硫黄電池用電解液を製造した。
【0078】
実施例8
2-メチルフラン(第1の溶媒)と1,2-ジメトキシエタン(第2の溶媒)を1:2.5の体積比(v/v)で混合した有機溶媒を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池用電解液を製造した。
【0079】
比較例1
リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)を添加していないことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池用電解液を製造した。
【0080】
比較例2
有機溶媒としてジオキソラン(第1の溶媒)と1,2-ジメトキシエタン(第2の溶媒)を1:2の体積比(v/v)で混合した有機溶媒を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池用電解液を製造した。
【0081】
前記実施例1~8及び比較例1~2のリチウム-硫黄電池用電解液のうち第1の溶媒、第2の溶媒及びボレート系リチウム塩の含有量は、下記表1に示す通りである。
【0082】
【表1】
【0083】
実験例1:リチウム-硫黄電池の寿命特性
硫黄をアセトニトリルの中で導電材及びバインダーと共にボールミルを用いてミッシングして正極活物質スラリーを製造した。このとき、導電材としてはカーボンブラックを、バインダーとしてはSBRとCMCの混合形態のバインダーをそれぞれ用い、混合比率は重量比で硫黄:導電材:バインダーが72:24:4となるようにした。前記正極活物質スラリーをアルミニウム集電体にローディング量が4.1mAh/cmとなるように塗布した後、乾燥して空隙率が70%である正極を製造した。また、厚さ45μmのリチウム金属を負極とした。
【0084】
前述の方法で製造した正極と負極とを対面するように位置させた後、厚さ20μm、気孔度45%のポリエチレン分離膜を前記正極と負極との間に介在した。
【0085】
その後、ケース内部に前記実施例1~8及び比較例1~2に係る電解液を注入し、リチウム-硫黄電池を製造した。
【0086】
前記方法で製造されたリチウム-硫黄電池を25℃でCCモードでOCV(open circuit voltage)で1.8Vになるまで0.1Cに放電し、再び2.5Vになるまで0.1Cに充電するプロトコルで2.5サイクル(cycle)進行し、電池安定化サイクル後に0.3C充電/0.5C放電サイクルを1.8V~2.5Vの間の電圧区間で行い、高率初期容量80%維持基準サイクルの寿命を評価し、その結果を下記表2及び図1図2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
図1図2は、本発明の実施例及び比較例に係る電解液を含むリチウム-硫黄電池の寿命特性を示すグラフであり、図1図2及び前記表2に示すように、本発明に係る1つ以上の二重結合を含むと共に酸素原子及び硫黄原子のいずれかを含むヘテロ環化合物を含む第1の溶媒(2-メチルフラン)及びボレート系リチウム塩(LiDFOB)を含むリチウム-硫黄電池用電解液を用いたリチウム-硫黄電池は、ボレート系リチウム塩を含めていない電解液を用いた場合(比較例1)及び第1の溶媒であって、二重結合を含めていないヘテロ環化合物を用いた場合(比較例2)に比べて、電池の80%容量維持率基準サイクル数が著しく高く、寿命特性に優れることが確認できた。
【0089】
実験例2:リチウム-硫黄電池のリチウムサイクル効率の評価
20μm厚さのリチウム金属電極(作業電極及び対電極)、厚さ20μm、気孔度45%のポリエチレン分離膜及び前記実施例1~8及び比較例1~2に係る電解液を用いて、2032コインセル(CR 2032)で対称セルを作製した。
【0090】
前記方法で製造された対称セル形態のリチウム-硫黄電池に対して、1C DOD(Depth of Discharge)83%でリチウムサイクル効率(cyclic efficiency)を測定し、下記表3に記載した。
【0091】
前記1C DOD83%は、Li20μmのうち83%に該当する16.6μmの量を充放電させることを意味し、この容量を1時間充電あるいは放電させることができるrateである3.7mA/cmの電流密度を意味する。
【0092】
【表3】
【0093】
前記表3に示すように、本発明に係る1つ以上の二重結合を含むと共に酸素原子及び硫黄原子のいずれかを含むヘテロ環化合物を含む第1の溶媒(2-メチルフラン)及びボレート系リチウム塩(LiDFOB)を含むリチウム-硫黄電池用電解液を用いたリチウム-硫黄電池は、ボレート系リチウム塩を含めていない電解液を用いた場合(比較例1)及び第1の溶媒であって、二重結合を含めていないヘテロ環化合物を用いた場合(比較例2)に比べて、リチウム-硫黄電池電解液とリチウム負極との間に安定性が改善され、リチウムサイクル効率に優れることが確認できた。
【0094】
本発明の単純な変形ないし変更はすべて本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲により明らかになるであろう。
図1
図2