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特許7511747リチウム‐硫黄電池用電解液及びこれを含むリチウム‐硫黄電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】リチウム‐硫黄電池用電解液及びこれを含むリチウム‐硫黄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20240628BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240628BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240628BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240628BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M10/0569
H01M10/0568
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023514129
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 KR2022000876
(87)【国際公開番号】W WO2022164107
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0012072
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ソンヒョ・パク
(72)【発明者】
【氏名】センフン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ジェギル・イ
(72)【発明者】
【氏名】チャンフン・パク
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/105981(WO,A1)
【文献】特表2007-522638(JP,A)
【文献】特開昭62-160671(JP,A)
【文献】特開昭62-100949(JP,A)
【文献】特開2002-075446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587;10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩、有機溶媒及び添加剤を含むリチウム‐硫黄電池用電解液において、
前記添加剤は一つ以上の二重結合を含む開環重合反応が可能なヘテロ環化合物を含み、
前記ヘテロ環化合物の環内に含まれたヘテロ原子は酸素原子または硫黄原子で、
前記有機溶媒は環形エーテル系溶媒を含み、
前記有機溶媒100体積比に対してヘテロ環化合物は1体積比ないし24体積比で含まれ、
前記ヘテロ環化合物は3員ないし15員のヘテロ環化合物であり、
前記環形エーテル系溶媒は、ジオキソラン、メチルジオキソラン、ジメチルジオキソラン、ビニルジオキソラン、メトキシジオキソラン、エチルメチルジオキソラン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものではない、リチウム‐硫黄電池用電解液。
【請求項2】
前記ヘテロ環化合物は3員ないし員のヘテロ環化合物である、請求項1に記載のリチウム‐硫黄電池用電解液。
【請求項3】
前記ヘテロ環化合物は、炭素数1ないし4のアルキル基、炭素数3ないし8の環形アルキル基、炭素数6ないし10のアリール基、ハロゲン基、ニトロ基、アミン基、スルホニル基及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるもので置換または非置換されたヘテロ環化合物;または
炭素数3ないし8の環形アルキル基、炭素数6ないし10のアリール基及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものと、ヘテロ環化合物の多重環化合物;を含む、請求項2に記載のリチウム‐硫黄電池用電解液。
【請求項4】
前記ヘテロ環化合物は、フラン、2‐メチルフラン、3‐メチルフラン、2‐エチルフラン、2‐プロピルフラン、2‐ブチルフラン、2,3‐ジメチルフラン、2,4‐ジメチルフラン、2,5‐ジメチルフラン、ピラン、2‐メチルピラン、3‐メチルピラン、4‐メチルピラン、ベンゾフラン、2‐(2‐ニトロビニル)フラン、チオフェン、2‐メチルチオフェン、2‐エチルチオフェン、2‐プロピルチオフェン、2‐ブチルチオフェン、2,3‐ジメチルチオフェン、2,4‐ジメチルチオフェン、2,5‐ジメチルチオフェン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項3に記載のリチウム‐硫黄電池用電解液。
【請求項5】
前記有機溶媒は線形エーテル系溶媒を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池用電解液。
【請求項6】
前記線形エーテル系溶媒は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、エチルメチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチル‐t‐ブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチレンエーテル、ブチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコール‐t‐ブチルエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項に記載のリチウム‐硫黄電池用電解液。
【請求項7】
前記環形エーテル系溶媒は、ジオキサン、トリオキサン、テトラハイドロフラン、メチルテトラハイドロフラン、ジメチルテトラハイドロフラン、ジメトキシテトラハイドロフラン、エトキシテトラハイドロフラン、テトラハイドロピラン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池用電解液。
【請求項8】
前記有機溶媒100体積比に対してヘテロ環化合物は15体積比ないし24体積比で含まれるものである、請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池用電解液。
【請求項9】
前記ヘテロ環化合物は2‐メチルフランで、
前記有機溶媒はジメトキシエタンである、請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池用電解液。
【請求項10】
前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiCBO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、(CSONLi、(SOF)NLi、(CFSOCLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4‐フェニルホウ酸リチウム、リチウムイミド及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項1~のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池用電解液。
【請求項11】
正極;
負極;
前記正極と負極との間に介在される分離膜;及び
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の電解液;を含む、リチウム‐硫黄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2021年01月28日付韓国特許出願第10‐2021‐0012072号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明はリチウム‐硫黄電池用電解液及びこれを含むリチウム‐硫黄電池に関する。
【背景技術】
【0003】
二次電池が活用される範囲が小型の携帯型電子機器から中大型の電気自動車(Electric vehicle;EV)、エネルギー貯蔵装置(Energy Storage System、ESS)、電気船舶などに拡大され、高容量、高エネルギー密度及び長い寿命を持つリチウム二次電池に対する需要が急増している。
【0004】
その中でもリチウム‐硫黄二次電池は「S‐S結合(Sulfur‐Sulfur Bond)」を持つ硫黄系列物質を正極活物質で、リチウム金属を負極活物質で使用する電池システムを意味する。前記正極活物質の主材料である硫黄は単位原子当たり低い重さを持ちながら、資源が豊かで、需給が容易であり、安価で、電池の製造単価を下げることができ、毒性がなく、環境にやさしいという点で特性を持つ。
【0005】
特に、リチウム‐硫黄二次電池は理論放電容量が1,675mAh/g‐sulfurで、理論上では重さ対比2,600Wh/kgの高いエネルギー貯蔵密度を具現することができるので、現在研究されている他の電池システム(Ni‐MH電池:450Wh/kg、Li‐FeS電池:480Wh/kg、Li‐MnO電池:1,000Wh/kg、Na‐S電池:800Wh/kg)及びリチウムイオン電池(250Wh/kg)の理論エネルギー密度に比べて非常に高い数値を持つので、現在まで開発されている中大型二次電池市場で大きい注目を浴びている。
【0006】
前記リチウム‐硫黄二次電池は、放電の際に負極でリチウムが電子を出してリチウム陽イオンになる酸化反応が起きるし、正極では硫黄系列物質が電子を受け入れて硫黄陰イオンを形成する還元反応が起きる。前記酸化‐還元反応を通じて、硫黄は放電前の環形S構造で線形構造のリチウムポリスルフィド(Lithium polysulfide、Li、x=8、6、4、2)に変換され、完全に還元される場合は、最終的にリチウムスルフィド(Lithium Sulfide、LiS)が生成されるようになる。
【0007】
特に、硫黄の酸化数が高いリチウムポリスルフィド(Li、x>4)は有機電解液に容易にとけて、濃度差によってリチウムポリスルフィドが生成された正極から遠い方へ徐々に拡散するようになる。これによって正極で湧出されたリチウムポリスルフィドが正極反応領域の外に徐々に流失されることによって正極で電気化学反応に参加する硫黄物質の量を減少させ、結果的にリチウム‐硫黄二次電池の充電容量の減少をもたらす。
【0008】
また、リチウムポリスルフィドの湧出は電解液の粘度を増加させてイオン伝導性を低下させ、持続的な充放電反応によってリチウムポリスルフィドがリチウム金属負極と直接反応してリチウム金属の表面にリチウムスルフィド(LiS)が固着されることによって反応活性度が低くなって、電位特性が悪くなる問題点がある。
【0009】
このような問題点を持つリチウム‐硫黄二次電池は、電解液の副反応、リチウム金属の不安定性及び正極での副産物堆積などによって電池の充電及び放電の繰り返しを通じて、次第に充・放電効率が低下しながら寿命が退化する点が短所として指摘されてきた。
【0010】
前記リチウム‐硫黄二次電池の寿命退化の問題点を改善するために、電解液に含まれる有機溶媒及びリチウム塩の多様な組み合わせを通じて電池の容量及び寿命を増加させる多様な研究が進められてきた。ただし、通常使用する有機溶媒及びリチウム塩の使用だけではリチウム‐硫黄二次電池の寿命を向上させるに限界があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは前記問題を解決するために、ジオキソラン系有機溶媒を使用せずに、ヘテロ環化合物を添加剤として含む電解液を使用し、リチウム‐硫黄電池の寿命特性を向上させるリチウム‐硫黄電池を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1側面によると、
リチウム塩、有機溶媒及び添加剤を含むリチウム‐硫黄電池用電解液において、前記添加剤は一つ以上の二重結合を含むヘテロ環化合物を含み、前記ヘテロ環化合物の環内に含まれたヘテロ原子は酸素原子または硫黄原子で、前記有機溶媒は線形エーテル系溶媒、環形エーテル系溶媒及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、リチウム‐硫黄電池用電解液を提供する。
【0013】
本発明の一具体例において、前記ヘテロ環化合物は3ないし15員ヘテロ環化合物であってもよい。
【0014】
本発明の一具体例において、前記ヘテロ環化合物は炭素数1ないし4のアルキル基、炭素数3ないし8の環形アルキル基、炭素数6ないし10のアリール基、ハロゲン基、ニトロ基、アミン基、スルホニル基及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるもので、置換または非置換されたヘテロ環化合物;または炭素数3ないし8の環形アルキル基、炭素数6ないし10のアリール基及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものと、ヘテロ環化合物の多重環化合物;を含むことができる。
【0015】
本発明の一具体例において、前記ヘテロ環化合物は、フラン、2‐メチルフラン、3‐メチルフラン、2‐エチルフラン、2‐プロピルフラン、2‐ブチルフラン、2,3‐ジメチルフラン、2,4‐ジメチルフラン、2,5‐ジメチルフラン、ピラン、2‐メチルピラン、3‐メチルピラン、4‐メチルピラン、ベンゾフラン、2‐(2‐ニトロビニル)フラン、チオフェン、2‐メチルチオフェン、2‐エチルチオフェン、2‐プロピルチオフェン、2‐ブチルチオフェン、2,3‐ジメチルチオフェン、2,4‐ジメチルチオフェン、2,5‐ジメチルチオフェン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよい。
【0016】
本発明の一具体例において、前記有機溶媒は線形エーテル系溶媒からなることができる。
【0017】
本発明の一具体例において、前記線形エーテル系溶媒は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、エチルメチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチル‐t‐ブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチレンエーテル、ブチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコール‐t‐ブチルエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよい。
【0018】
本発明の一具体例において、前記環形エーテル系溶媒は、ジオキソラン、メチルジオキソラン、ジメチルジオキソラン、ビニルジオキソラン、メトキシジオキソラン、エチルメチルジオキソラン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものではないことがある。
【0019】
本発明の一具体例において、前記環形エーテル系溶媒は、ジオキサン、トリオキサン、テトラハイドロフラン、メチルテトラハイドロフラン、ジメチルテトラハイドロフラン、ジメトキシテトラハイドロフラン、エトキシテトラハイドロフラン、テトラハイドロピラン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよい。
【0020】
本発明の一具体例において、前記有機溶媒100体積比に対してヘテロ環化合物は1ないし24体積比で含まれるものであってもよい。
【0021】
本発明の一具体例において、前記有機溶媒100体積比に対してヘテロ環化合物は15ないし24体積比で含まれるものであってもよい。
【0022】
本発明の一具体例において、前記ヘテロ環化合物は2‐メチルフランで、
前記有機溶媒はジメトキシエタンであってもよい。
【0023】
本発明の一具体例において、前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiCBO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、(CSONLi、(SOF)NLi、(CFSOCLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム、リチウムイミド及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよい。
【0024】
本発明の第2側面によると、
正極;負極;前記正極と負極との間に介在される分離膜;及び前記電解液;を含む、リチウム‐硫黄電池を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によるリチウム‐硫黄電池は電解液内のヘテロ環化合物の添加によってリチウム系金属である負極表面に保護膜を形成し、リチウムデンドライト形成を抑制してリチウム系金属表面での電解液分解及び副反応を減少させることができる。
【0026】
また、電解液内の有機溶媒として通常使用されるジオキソラン系有機溶媒を使わないことで、電解液の内部でポリスルフィドが湧出されることを減少させる効果を通じてクーロン効率(Coulombic Efficiency、C.E)及びリチウム‐硫黄電池の寿命特性が向上される優れる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施例1ないし4及び比較例1ないし7のリチウム‐硫黄電池の寿命特性を示すグラフである。
図2】本発明の実施例1ないし4及び比較例1ないし7のリチウム‐硫黄電池のクーロン効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明によって提供される具体例は、下記の説明によっていずれも達成することができる。下記の説明は本発明の好ましい具体例を記述するものとして理解されるべきであり、本発明が必ずこれに限定されるものではないことを理解しなければならない。
【0029】
本明細書で使われている用語「ポリスルフィド」は、「ポリスルフィドイオン(S 2‐、x=8、6、4、2))」及び「リチウムポリスルフィド(LiまたはLiS 、x=8、6、4、2)」をいずれも含む概念である。
【0030】
リチウム‐硫黄電池用電解液
本発明によるリチウム塩、有機溶媒及び添加剤を含むリチウム‐硫黄電池用電解液において、前記添加剤は一つ以上の二重結合を含むヘテロ環化合物を含み、前記ヘテロ環化合物の環内で含まれたヘテロ原子は酸素原子または硫黄原子であり、前記有機溶媒は線形エーテル系溶媒、環形エーテル系溶媒及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものである。
【0031】
前記添加剤は一つ以上の二重結合を含むヘテロ環化合物を含み、前記ヘテロ環化合物の環内で含まれたヘテロ原子は酸素原子または硫黄原子である。
【0032】
前記リチウム‐硫黄電池用電解液に対して添加剤として前記ヘテロ環化合物が含まれることで、リチウムデンドライトの生成が抑制され、リチウム系金属表面での電解液分解及び副反応を減少させることができる高分子保護膜が負極であるリチウム系金属表面に形成され、電池の優れる寿命特性が表れることができる。
【0033】
前記ヘテロ環化合物は3ないし15員ヘテロ環化合物であってもよく、好ましくは3ないし7員ヘテロ環化合物、より好ましくは5ないし6員のヘテロ環化合物である。
【0034】
前記ヘテロ環化合物は、炭素数1ないし4のアルキル基、炭素数3ないし8の環形アルキル基、炭素数6ないし10のアリール基、ハロゲン基、ニトロ基(‐NO)、アミン基(‐NH)、スルホニル基(‐SO)及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるもので、置換または非置換されたヘテロ環化合物;または炭素数3ないし8の環形アルキル基、炭素数6ないし10のアリール基及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものと、ヘテロ環化合物の多重環化合物;を含むことができる。
【0035】
前記ヘテロ環化合物が炭素数1ないし4のアルキル基に置換されたヘテロ環化合物の場合、ラジカルが安定化されて添加剤と電解液との間の副反応を抑制させることができる。また、ハロゲン基やニトロ基に置換されたヘテロ環化合物は、リチウム系金属表面に機能性保護膜を形成することができる。前記機能性保護膜は安定していて、圧縮(Compact)された形態の保護膜であって、リチウム系金属の均一な蒸着(deposition)を可能とし、ポリスルフィドとリチウム系金属間の副反応を抑制させることができる。
【0036】
前記ヘテロ環化合物は、フラン、2‐メチルフラン、3‐メチルフラン、2‐エチルフラン、2‐プロピルフラン、2‐ブチルフラン、2,3‐ジメチルフラン、2,4‐ジメチルフラン、2,5‐ジメチルフラン、ピラン、2‐メチルピラン、3‐メチルピラン、4‐メチルピラン、ベンゾフラン、2‐(2‐ニトロビニル)フラン、チオフェン、2‐メチルチオフェン、2‐エチルチオフェン、2‐プロピルチオフェン、2‐ブチルチオフェン、2,3‐ジメチルチオフェン、2,4‐ジメチルチオフェン、2,5‐ジメチルチオフェン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよく、好ましくは2‐メチルフラン、2‐メチルチオフェン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよく、より好ましくは2‐メチルフランであってもよい。
【0037】
リチウム系金属を負極で使用するリチウム‐硫黄電池において、添加剤である本発明のヘテロ環化合物をリチウム‐硫黄電池用電解液に含めて使用すれば、電池の初期放電段階でヘテロ環化合物の開環重合反応(Ring Opening Polymerization)によってリチウム系金属の表面に保護膜(Solid Electrolyte Interface、SEI層)が形成されることでリチウムデンドライトの生成を抑制させることができ、リチウム系金属表面での電解液分解及びそれによる副反応を減少させることでリチウム‐硫黄電池の寿命特性を向上させることができる。したがって、前記保護膜を形成するためにヘテロ環化合物は一つ以上の二重結合が必要であり、前記ヘテロ環化合物の環内に含まれたヘテロ原子に酸素または硫黄を含めて極性を帯びるようにすることで、電解液の有機溶媒と親和度を高めて電解液添加剤への活用を容易にし、前記高分子保護膜を形成することができる。
【0038】
ただし、前記ヘテロ環化合物の環内に含まれたヘテロ原子に窒素原子を含む場合は、セルの抵抗が増加してリチウム‐硫黄電池の寿命が減少することがある。
【0039】
前記ヘテロ環化合物は、有機溶媒100体積比に対してヘテロ環化合物は1体積比以上、2体積比以上、3体積比以上、4体積比以上、5体積比以上、6体積比以上、7体積比以上、8体積比以上、9体積比以上、10体積比以上、11体積比以上、12体積比以上、13体積比以上、14体積比以上、15体積比以上、16体積比以上、17体積比以上、18体積比以上、19体積比以上、20体積比以上または21体積比以上であってもよく、24体積比以下または23体積比以下であってもよい。前記ヘテロ環化合物が有機溶媒100体積比に対して1体積比未満で含まれると、リチウム系金属の表面上に保護膜が形成されにくく、過量のリチウムポリスルフィドが電解液に溶解される問題点が発生することがある。一方、前記ヘテロ環化合物が有機溶媒100体積比に対して24体積比を超える場合、高い粘度と低いイオン伝導度によって過電圧が増加する問題点が発生することがある。
【0040】
前記ヘテロ環化合物は、環内のヘテロ原子の孤立電子対(Lone pair electron)の非局在化(delocalization)によって塩(salt)を溶解させにくい特性があって、これを通じてポリスルフィドを溶媒化(solvation)させようとする能力を低下させ、電解液内のポリスルフィドの湧出量を減少させることができる。その結果、リチウム‐硫黄電池の電解液の抵抗増加が抑制され、寿命特性が向上されることができる。
【0041】
前記有機溶媒は、線形エーテル系溶媒、環形エーテル系溶媒及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよい。
【0042】
前記有機溶媒は線形エーテル系溶媒からなるものであってもよい。
【0043】
前記線形エーテル系溶媒は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、エチルメチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチル‐t‐ブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチレンエーテル、ブチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコール‐t‐ブチルエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよく、好ましくはジメトキシエタンであってもよい。
【0044】
前記環形エーテル系溶媒は、ジオキソラン、メチルジオキソラン、ジメチルジオキソラン、ビニルジオキソラン、メトキシジオキソラン、エチルメチルジオキソラン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものではないことがある。前記有機溶媒に含まれた環形エーテル系溶媒として、ジオキソラン系有機溶媒を含む場合は、電解液の内部にポリスルフィドが湧出される量が増加するという点でクーロン効率の急激な低下で電池寿命特性も低下することがある。
【0045】
前記環形エーテル系溶媒は、ジオキサン、トリオキサン、テトラハイドロフラン、メチルテトラハイドロフラン、ジメチルテトラハイドロフラン、ジメトキシテトラハイドロフラン、エトキシテトラハイドロフラン、テトラハイドロピラン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよい。
【0046】
前記リチウム‐硫黄電池用電解液で好ましくは、前記ヘテロ環化合物は2‐メチルフランで、前記有機溶媒はジメトキシエタンであってもよい。有機溶媒ジメトキシエタンに添加剤で2‐メチルフランを添加する電解液は、リチウム‐硫黄電池において正極で生成されたポリスルフィドが電解液の内部に湧出されて出る悪影響を減少させるだけでなく、リチウムメタルの表面を安定化するという点で寿命特性を向上させることができる好ましい組み合わせであってもよい。
【0047】
前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiCBO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、(CSONLi、(SOF)NLi、(CFSOCLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4‐フェニルホウ酸リチウム、リチウムイミド及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよく、好ましくは前記リチウム塩は(SOF)NLi(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、LiFSI)であってもよい。
【0048】
前記リチウム塩の濃度はイオン伝導度などを考慮して決まることがあって、例えば、0.1ないし4M、好ましくは0.5ないし2Mである。前記リチウム塩の濃度が前記範囲未満の場合、電池駆動に適したイオン伝導度の確保が難しく、これと逆に前記範囲を超える場合、電解液の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が低下され、リチウム塩自体の分解反応が増加して電池の性能が低下されることがあるので、前記範囲内で適切に調節することができる。
【0049】
本発明によるリチウム‐硫黄電池用電解液の製造方法は、本発明で特に限定せず、当業界で公知された通常の方法によって製造されることができる。
【0050】
リチウム‐硫黄電池
本発明によるリチウム‐硫黄電池は、正極;負極;前記正極と負極との間に介在される分離膜;及び電解液;を含み、前記電解液として上述した本発明によるリチウム‐硫黄電池用電解液を含む。
【0051】
本発明のリチウム‐硫黄電池の電解液は、上述した本発明のリチウム‐硫黄電池用電解液である。
【0052】
前記正極は正極集電体と前記正極集電体の一面または両面に塗布された正極活物質層を含むことができる。
【0053】
前記正極集電体は正極活物質を支持し、当該電池に化学的変化を引き起こさずに高い導電性を持つものであれば特に制限されるものではない。例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などが使用されることができる。
【0054】
前記正極集電体はその表面に微細な凹凸を形成して正極活物質との結合力を強化させることができ、フィルム、シート、ホイル、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態を使用することができる。
【0055】
前記正極活物質層は、正極活物質、バインダー及び導電材を含むことができる。
【0056】
前記正極活物質は、硫黄元素(Elemental sulfur、S)、有機硫黄化合物Li(n≧1)及び炭素‐硫黄ポリマー((C:x=2.5~50、n≧2)からなる群から選択された1種以上である。
【0057】
前記正極活物質に含まれる硫黄の場合、単独では電気伝導性がないため、炭素材のような伝導性素材と複合化して使用される。これによって、前記硫黄は硫黄‐炭素複合体の形態で含まれ、好ましくは、前記正極活物質は硫黄‐炭素複合体であってもよい。
【0058】
前記硫黄‐炭素複合体に含まれる炭素は多孔性炭素材で前記硫黄が均一で安定的に固定されることができる骨格を提供し、硫黄の低い電気伝導度を補完して電気化学的反応が円滑に進められるようにする。
【0059】
前記多孔性炭素材は多孔性構造であるか、比表面積が高いもので、当業界で通常使用されるものであれば、いずれもかまわない。例えば、前記多孔性炭素材としては、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;単一壁炭素ナノチューブ(SWCNT)、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNT)などの炭素ナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化炭素ファイバー(ACF)などの炭素繊維;天然黒鉛、人造黒鉛、膨脹黒鉛などの黒鉛及び活性炭素からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは炭素ナノチューブ(CNT)であってもよいが、これに制限されない。
【0060】
前記硫黄‐炭素複合体の製造方法は本発明で特に限定せず、当業界で通常使用される方法が利用されることができる。
【0061】
前記正極は前記正極活物質以外に遷移金属元素、IIIA族元素、IVA族元素、これらの元素の硫黄化合物、及びこれらの元素と硫黄の合金の中で選択される一つ以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0062】
前記遷移金属元素としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、AuまたはHgなどが含まれ、前記IIIA族元素としてはAl、Ga、In、Tiなどが含まれ、前記IVA族元素としてはGe、Sn、Pbなどが含まれることができる。
【0063】
前記導電材は電解液と正極活物質を電気的に連結させて集電体(current collector)から電子が正極活物質まで移動する経路の役目をする物質であって、導電性を持つものであれば、制限されずに使用することができる。
【0064】
例えば、前記導電材では、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;スーパーP(Super‐P)、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素ナノチューブ、フラーレンなどの炭素誘導体;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末またはポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールなどの伝導性高分子を単独または混合して使用することができる。
【0065】
前記バインダーは正極活物質を正極集電体に維持させ、正極活物質の間を有機的に連結させてこれらの間の結着力をより高めるもので、当該業界で公知された全てのバインダーを使用することができる。
【0066】
例えば、前記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVdF)またはポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン‐ブタジエンゴム(styrene butadiene rubber、SBR)、アクリロニトリル‐ブチジエンゴム、スチレン‐イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose、CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリアルコール系バインダー;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー;ポリエステル系バインダー;及びシラン系バインダー;からなる群から選択された1種、2種以上の混合物または共重合体を使用することができる。
【0067】
前記正極の製造方法は本発明で特に限定せず、当業界で通常用いられる方法が利用されることができる。一例として、前記正極は正極スラリー組成物を製造した後、これを前記正極集電体の少なくとも一面に塗布することで製造されたものであってもよい。
【0068】
前記正極スラリー組成物は、前述した正極活物質、導電材及びバインダーを含み、これ以外の溶媒をさらに含むことができる。
【0069】
前記溶媒としては、正極活物質、導電材及びバインダーを均一に分散させることができるものを使用する。このような溶媒としては、水系溶媒として水が最も好ましく、この時、水は蒸溜水(distilled water)、脱イオン水(deionzied water)である。ただし、必ずこれに限定するものではなく、必要な場合、水と容易に混合可能な低級アルコールが使用されることができる。前記低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールなどがあり、好ましくは、これらは水とともに混合して使用されることができる。
【0070】
前記正極で硫黄のローディング量は1ないし10mAh/cm、好ましくは3ないし6mAh/cmである。
【0071】
前記負極は負極集電体及び前記負極集全体の一面または両面に塗布された負極活物質層を含むことができる。または、前記負極はリチウム板金であってもよい。
【0072】
前記負極集電体は負極活物質層の支持のためのもので、電池に化学的変化を引き起こさずに高い導電性を持つものであれば特に制限せず、銅、アルミニウム、ステンレススチール、亜鉛、チタン、銀、パラジウム、ニッケル、鉄、クロム、これらの合金及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることができる。前記ステンレススチールは、カーボン、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理されることができ、前記合金としては、アルミニウム‐カドミウム合金を使用することができ、その他にも焼成炭素、導電材で表面処理された非伝導性高分子、または伝導性高分子などを使用することもできる。
【0073】
また、その形態は表面に微細な凹凸が形成された/未形成されたフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が使用されることができる。
【0074】
前記負極活物質層は負極活物質以外に導電材、バインダーなどを含むことができる。この時、前記導電材及びバインダーは前述した内容にしたがう。
【0075】
前記負極活物質は、リチウム(Li)を可逆的に挿入(intercalation)または脱挿入(deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を含むことができる。
【0076】
前記リチウムイオン(Li)を可逆的に挿入または脱挿入することができる物質は、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であってもよい。前記リチウムイオン(Li)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化スズ、窒化チタンまたはシリコーンであってもよい。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及びスズ(Sn)からなる群から選択される金属の合金であってもよい。
【0077】
好ましくは、前記負極活物質はリチウム金属であってもよく、具体的に、リチウム金属薄膜またはリチウム金属粉末の形態であってもよい。
【0078】
前記負極活物質の形成方法は特に制限されず、当業界で通常使用される層または膜の形成方法を利用することができる。例えば、圧搾、コーティング、蒸着などの方法を利用することができる。また、集電体にリチウム薄膜がない状態で電池を組立てた後、初期充電によって板金上に金属リチウム薄膜が形成される場合も本発明の負極に含まれる。
【0079】
前記正極と負極との間は通常の分離膜が介在されることができる。
【0080】
前記分離膜は電極を物理的に分離する機能を持つ物理的な分離膜とであって、通常の分離膜で使用されるものであれば、特に制限されずに利用可能であり、特に電解液のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液含湿能力に優れるものが好ましい。
【0081】
また、前記分離膜は前記正極と負極とを互いに分離または絶縁させ、正極と負極の間にリチウムイオンの輸送ができるようにするもので、多孔性非伝導性または絶縁性物質からなることができる。前記分離膜は通常リチウム‐硫黄電池で分離膜として使用されるものであれば、特に制限されずに使用可能である。前記分離膜はフィルムのような独立的な部材であってもよく、正極及び/または負極に付け加えられたコーティング層であってもよい。
【0082】
前記分離膜は多孔性基材からなることができるが、前記多孔性基材は通常リチウム‐硫黄電池に使用される多孔性基材であれば、いずれも使用可能であり、多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して使用することができ、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布またはポリオレフィン系多孔性膜を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0083】
前記多孔性基材の材質では本発明で特に限定せず、通常的にリチウム‐硫黄電池に使用される多孔性基材であれば、いずれも使用可能である。例えば、前記多孔性基材は、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)などのポリオレフィン(polyolefin)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)などのポリエステル(polyester)、ポリアミド(polyamide)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキサイド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalate)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、セルロース(cellulose)、ナイロン(nylon)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(poly(p‐phenylene benzobisoxazole)及びポリアリレート(polyarylate)からなる群から選択された1種以上の材質を含むことができる。
【0084】
前記多孔性基材の厚さは特に制限されないが、1ないし100μm、好ましくは5ないし50μmであってもよい。前記多孔性基材の厚さ範囲が前述した範囲に限定されるものではないが、厚さが前述した下限より薄すぎる場合は機械的物性が低下されて電池使用中に分離膜が容易に損傷される。
【0085】
前記多孔性基材に存在する気孔の平均直径及び気孔率も特に制限されないが、それぞれ0.1ないし50μm及び10ないし95%である。
【0086】
前記電解液はこれを媒介にして前記正極と負極で電気化学的酸化または還元反応を起こすためのもので、前述した内容にしたがう。
【0087】
前記電解液の注入は最終製品の製造工程及び要求物性に応じて、リチウム‐硫黄電池の製造工程中に適切な段階で行われることができる。すなわち、リチウム‐硫黄電池の組み立て前または組み立て最終段階などで適用されることができる。
【0088】
本発明によるリチウム‐硫黄電池は、一般的な工程である巻取(winding)以外も分離膜と電極の積層(lamination、stack)及びフォールディング(folding)工程が可能である。
【0089】
前記リチウム‐硫黄電池の形状は特に制限されず、円筒状、積層型、コイン型など多様な形状にすることができる。
【0090】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明がこれに限定されるものではない。
【0091】
実施例:リチウム‐硫黄電池の製造
リチウム‐硫黄電池用電解液の製造:製造例1ないし11
[製造例1]
有機溶媒である1,2‐ジメトキシエタンと添加剤である2‐メチルフランをそれぞれ4.5:1の体積比で混合し、0.75Mのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)と5重量%のLiNOを溶解させてリチウム‐硫黄電池用電解液を製造した。
【0092】
[製造例2ないし7]
有機溶媒である1,2‐ジメトキシエタンと添加剤である2‐メチルフランの混合体積比を下記表1のように異にしたことを除いては、前記製造例1と同様の方法でリチウム‐硫黄電池用電解液を製造した。
【0093】
[製造例8及び9]
有機溶媒として1,2‐ジメトキシエタンだけでなく1,3‐ジオキソランをさらに含んで添加剤である2‐メチルフランと下記表1の体積比で混合したことを除いては、前記製造例1と同様の方法でリチウム‐硫黄電池用電解液を製造した。
【0094】
[製造例10及び11]
添加剤である2‐メチルフランを使用せず、有機溶媒である1,2‐ジメトキシエタン及び1,3‐ジオキソランを下記表1の体積比で混合したことを除いては、前記製造例1と同様の方法でリチウム‐硫黄電池用電解液を製造した。
【0095】
【表1】
【0096】
リチウム‐硫黄電池の製造:実施例1ないし4及び比較例1ないし7
[実施例1]
水を溶媒にし、正極活物質で硫黄‐炭素複合体、導電材及びバインダーを90:5:5の割合で混合して正極活物質スラリーを製造した。この時、硫黄‐炭素複合体は、硫黄と炭素ナノチューブ(CNT)を70:30の重量比で混合して製造した。また、導電材ではデンカブラックを、バインダーではスチレン‐ブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロース(SBR:CMC=7:3、重量比)を使用した。
【0097】
前記正極活物質スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、乾燥して気孔率70%及びローディング量4.1mAh/cmの正極を製造した。
【0098】
また、負極では厚さ45μmのリチウム金属を使用した。
【0099】
前記製造された正極と負極を対面するように位置させた後、厚さ20μm及び気孔率45%のポリエチレン分離膜を正極と負極との間に介在した。以後、ケース内部に前記製造例1のリチウム‐硫黄電池用電解液を注入してリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0100】
[実施例2ないし4]
リチウム‐硫黄電池用電解液で前記製造例2ないし4の電解液を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0101】
[比較例1ないし7]
リチウム‐硫黄電池用電解液として前記製造例5ないし11の電解液を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0102】
【表2】
【0103】
実験例1:電池の寿命特性評価
前記実施例1ないし4及び比較例1ないし7によって製造されたリチウム‐硫黄電池に対して、充/放電サイクルの繰り返しを通じて電池の寿命特性を評価した。評価結果は下記表3及び図1に示す。
【0104】
具体的に、電圧範囲1.8ないし2.5V及び25℃の電池駆動温度条件で0.1C初期放電後0.1C充電/0.1C放電を3サイクル進行した後、0.2C充電/0.3C放電を繰り返しながら電池寿命特性を評価した。
【0105】
【表3】
【0106】
前記表3及び図1の結果を通じて、1,3‐ジオキソランを含まない電解液を含む実施例1ないし4のリチウム‐硫黄電池は、1,3‐ジオキソランを電解液に含む比較例4ないし7に比べて、サイクルが繰り返されても高い容量維持率を持つことで電池寿命特性に優れることを確認することができた。
【0107】
特に、有機溶媒100体積比に対して添加剤でヘテロ環化合物を19ないし24体積比で混合した電解液を含む実施例1ないし2のリチウム‐硫黄電池は、145サイクル以後80% retentionに到逹する結果を通じて電池寿命特性が最も優れることが分かった。
【0108】
一方、有機溶媒100体積比に対して添加剤であるヘテロ環化合物を25体積比以上含む電解液を含む比較例1ないし3のリチウム‐硫黄電池は、1,3‐ジオキソランを含まないにもかかわらず、混合される添加剤の量の過度な増加によって110サイクル以前に80% retentionに到逹する結果が表れることを通じて電池寿命特性が落ちることを確認することができた。
【0109】
実験例2:電池のクーロン効率(Coulombic Efficiency)評価
前記実施例1ないし4及び比較例1ないし7によって製造されたリチウム‐硫黄電池に対して、電池のクーロン効率評価を実施し、80% retentionに到逹するサイクル数までのその結果を図2のように示す。
【0110】
図2によると、1,3‐ジオキソランを使用していない実施例1ないし4の場合は、120サイクルが繰り返されてもクーロン効率がさほど低下されないことを確認することができた。
【0111】
ただし、有機溶媒として1,3‐ジオキソランを含む比較例4ないし7は80%retentionに到逹する50サイクル以前にはクーロン効率が維持されることができるが、その後は電池が退化されてサイクルが繰り返されるほど電池のクーロン効率が急減して電池の寿命効率特性が低下されることを予想することができた。
【0112】
したがって、1,3‐ジオキソランを有機溶媒で含まずに、添加剤でヘテロ環化合物を使用した電解液を含む場合、優れるクーロン効率及び改善された電池寿命特性を持つことが分かった。
【0113】
特に、1,3‐ジオキソランを使わない有機溶媒100体積比対比添加剤であるヘテロ環化合物が1ないし24体積比で含まれた電解液を含む場合、クーロン効率の改善を通じて電池寿命特性も向上されたことを確認することができた。
【0114】
本発明の単純な変形ないし変更は、いずれも本発明の領域に属することであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求範囲によって明確になる。
図1
図2