(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】液体洗浄剤組成物およびその液体洗浄剤組成物を用いた洗浄方法
(51)【国際特許分類】
C11D 7/42 20060101AFI20240628BHJP
C11D 7/32 20060101ALI20240628BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C11D7/42
C11D7/32
C11D17/08
(21)【出願番号】P 2024038367
(22)【出願日】2024-03-12
【審査請求日】2024-03-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591225132
【氏名又は名称】株式会社アルボース
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】三輪 真之
(72)【発明者】
【氏名】立岩 雅大
(72)【発明者】
【氏名】藤井 豊
(72)【発明者】
【氏名】南 真人
(72)【発明者】
【氏名】中尾 彩香
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-513007(JP,A)
【文献】特開2017-110174(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113617230(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113930298(CN,A)
【文献】特開2009-019130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
A61K 8/00- 8/99
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)プロテアーゼおよび(B)ジヒドロキシエチルグリシン又はその塩を含有
し、pHが、6.0~11.0の範囲である、
食器又は医療器具洗浄用液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
(A)プロテアーゼおよび(B)ジヒドロキシエチルグリシン又はその塩を含有し、pHが、6.0~11.0の範囲である、自動洗浄機用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらに、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン界面活性剤、水溶性溶剤、高分子分散剤、及び防錆剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1
又は2に記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
自動洗浄機用である、請求項1に記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
食器又は医療器具洗浄用である、請求項2に記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項6】
請求項1
又は2に記載の液体洗浄剤組成物を用いて食器又は医療器具を洗浄する、食器又は医療器具の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗浄剤組成物およびその液体洗浄剤組成物を用いた洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動洗浄機は、専用の洗浄剤を希釈した洗浄剤希釈液(洗浄液)を、汚れの付着した被洗浄物(例えば食器や医療器具)の表面に高圧水流で噴射することで、被洗浄物に付着した汚れを落としている。このとき、主に業務用の自動洗浄機では、噴射洗浄による汚れの除去を効果的なものとするために、従来、アルカリ剤を含む強アルカリ性液体洗浄剤が使用されてきた。これは、強アルカリによるタンパク質汚れに対する分解作用や可溶化作用により、スピーディで効率的な洗浄を可能とするためである。
【0003】
一方で近年、SDGsやECOの観点から、強アルカリ性の液体洗浄剤を中性~弱アルカリ性の液体洗浄剤に変更することへのニーズが高まっている。ここで、洗浄剤を中性化(中性~弱アルカリ性領域)すると、強アルカリによるタンパク質汚れに対する分解作用や可溶化作用が失われてしまうことから、代わりに液体洗浄剤にプロテアーゼを配合することで、タンパク質汚れに対する洗浄力を付与することができる(例えば特許文献1)。しかしながら、酵素であるプロテアーゼは、長期保管によってプロテアーゼ活性の低下が問題となることもあり、液体洗浄剤にプロテアーゼを配合する場合、プロテアーゼの保存安定性の向上へのニーズが存在する(なお、このニーズは自動洗浄機用液体洗浄剤に限られない)。また、通常、液体洗浄剤には外観安定性も求められる。
【0004】
ところで、業務用の自動洗浄機のセットアップにおいては、当該自動洗浄機に備わる自動洗浄剤希釈機構の初期調整が必要である。このため、自動洗浄機用の洗浄剤には、洗浄剤希釈液(洗浄液)中の洗浄剤濃度を簡便に測定する方法が必要である。従来、アルカリ剤を含む強アルカリ性の液体洗浄剤を使用する場合には、アルカリ剤の濃度を指標として、フェノールフタレインを用いた濃度滴定を行うことで、洗浄剤希釈液(洗浄液)中の洗浄剤濃度を測定することが、簡便であり、一般的であった。しかしながら、中性~弱アルカリ性の洗浄剤の場合、指示薬としてフェノールフタレインを用いることは必ずしも好適とはいえない。そして、現在、中性~弱アルカリ性洗浄剤の濃度測定のために、一般的に広く使用されている方法は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、プロテアーゼを含有する液体洗浄剤において、プロテアーゼの保存安定性を高めることができ、かつ外観安定性も有する配合を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題の解決を見出すべく鋭意研究した結果、意外にも、プロテアーゼを含有する液体洗浄剤において、ジヒドロキシエチルグリシンを配合することで、プロテアーゼの保存安定性を高めることができ、しかも外観安定性も有していることを見出した。本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0008】
なお、本発明者らは、上記の発見にくわえ、意外にも、プロテアーゼとジヒドロキシエチルグリシンとの組み合わせは、血液汚れに対して優れた洗浄力を有していることを見出した。また、意外にも、ジヒドロキシエチルグリシンを含有する液体洗浄剤は、中性~弱アルカリ性領域において、ブロモクレゾールグリーン(BCG)を使用することで濃度滴定を有効に行うことができ、これにより簡便に洗浄剤の濃度管理ができることを見出した。本発明の一態様は、上記の知見にも基づいてなされたものである。
【0009】
[1](A)プロテアーゼおよび(B)ジヒドロキシエチルグリシン又はその塩を含有する、液体洗浄剤組成物。
[2]pHが、6.0~11.0の範囲である、[1]に記載の液体洗浄剤組成物。
[3]さらに、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン界面活性剤、水溶性溶剤、高分子分散剤、及び防錆剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、[1]または[2]に記載の液体洗浄剤組成物。
[4]食器又は医療器具洗浄用である、[1]~[3]のいずれかに記載の液体洗浄剤組成物。
[5]自動洗浄機用である、[1]~[4]のいずれかに記載の液体洗浄剤組成物。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の液体洗浄剤組成物を用いて食器又は医療器具を洗浄する、食器又は医療器具の洗浄方法。
[7]液体洗浄剤希釈液中の液体洗浄剤の濃度を測定する方法であって、
前記液体洗浄剤はジヒドロキシエチルグリシン又はその塩を含有する液体洗浄剤であり、
液体洗浄剤希釈液に対し、ブロモクレゾールグリーンを用いて中和滴定を行うことを含む
方法。
【0010】
なお、前記[1]から[7]の各構成は、任意に2つ以上を選択して組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、プロテアーゼに加えてジヒドロキシエチルグリシンを含有することで、プロテアーゼの保存安定性に優れ、かつ外観安定性を有する液体洗浄剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書中で使用される用語は、特に言及しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味で解釈される。
【0013】
<液体洗浄剤組成物>
本発明の液体洗浄剤組成物は、(A)プロテアーゼおよび(B)ジヒドロキシエチルグリシン又はその塩を含有する。本発明の液体洗浄剤組成物は、プロテアーゼに加えてジヒドロキシエチルグリシンを含有することで、プロテアーゼの保存安定性に優れており、しかも外観安定性も有している。また、例えば、本発明の液体洗浄剤組成物は、プロテアーゼとジヒドロキシエチルグリシンとを組み合わせて含有することで、血液汚れに対して優れた洗浄力を有している。また、例えば、本発明の液体洗浄剤組成物は、ジヒドロキシエチルグリシンを含有することで、中性~弱アルカリ性領域であっても簡便に洗浄剤濃度を測定することが可能である。
【0014】
[(A)プロテアーゼ]
本発明の液体洗浄剤組成物は、(A)プロテアーゼを含有する。プロテアーゼはタンパク質分解活性を有している酵素であり、タンパク質汚れに対する洗浄力を付与するために、本発明の液体洗浄剤組成物にはプロテアーゼを含有させる。さらに、本発明におけるプロテアーゼとジヒドロキシエチルグリシンとの組み合わせは、血液汚れに対して優れた洗浄力を発揮する。
【0015】
本発明において、プロテアーゼは、当該技術分野において公知のものを、特に制限なく、広く使用することができ、例えば、一般的に市販されるプロテアーゼを使用できる。また、本発明においては、中性から弱アルカリ側(例えばpH6.0~11.0)に至適pHが存在するプロテアーゼを好適に使用できる。
【0016】
市販のプロテアーゼとしては、例えば、Alcalase(登録商標)シリーズ、Savinase(登録商標)シリーズ、Everlase(登録商標)シリーズ、Liquanase(登録商標)シリーズ、Progress(登録商標)シリーズ(ノボネシス社製);PREFERENZ(登録商標)シリーズ、EXCELLENZ(登録商標)シリーズ(ダニスコ社製);Lavergy(登録商標)シリーズ(BASF社製);サモアーゼ(登録商標)シリーズ(天野エンザイム社製)等の製品名のプロテアーゼが挙げられる。
【0017】
なお、本発明の液体洗浄剤組成物において、プロテアーゼは、1種単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本発明の液体洗浄剤組成物における(A)プロテアーゼの含有量は、本発明の効果が奏される範囲であれば特に制限なく、適量配合できる。(A)プロテアーゼの含有量の下限としては、洗浄力の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましい。また、(A)プロテアーゼの含有量の上限としては、洗浄剤の配合安定性の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。(A)プロテアーゼの含有量の数値範囲としては、0.001質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。なお、本発明において、プロテアーゼは、例えばプロテアーゼ液(プロテアーゼ製剤)を使用することができるが、本発明においてプロテアーゼの含有量はプロテアーゼの純分に基づく。
【0019】
[(B)ジヒドロキシエチルグリシン又はその塩]
本発明の液体洗浄剤組成物は、(B)ジヒドロキシエチルグリシン又はその塩を含有する。ジヒドロキシエチルグリシンはグリシン系のキレート剤として知られるが、本発明では、プロテアーゼと組み合わせて液体洗浄剤組成物中に含有されることで、プロテアーゼの保存安定性を向上させる。また、本発明におけるプロテアーゼとジヒドロキシエチルグリシンとの組み合わせは、血液汚れに対して優れた洗浄力を発揮する。さらに、本発明では、液体洗浄剤組成物中のジヒドロキシエチルグリシンにより、中性~弱アルカリ性領域でのブロモクレゾールグリーン(BCG)を使用した濃度滴定において滴定量(滴下数)を増やすことができ、中性~弱アルカリ性領域において簡便な濃度管理を可能とする。
【0020】
本発明におけるジヒドロキシエチルグリシンは、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)グリシンである。
【0021】
本発明におけるジヒドロキシエチルグリシンの塩としては、例えば、ナトリウム塩(ジヒドロキシエチルグリシンナトリウム)、カリウム塩(ジヒドロキシエチルグリシンカリウム)等が挙げられる。
【0022】
本発明におけるジヒドロキシエチルグリシン又はその塩として、具体的に、例えば、キレスト社のキレストG―50(ジヒドロキシエチルグリシンナトリウム)等の市販品を使用できる。
【0023】
なお、本発明の液体洗浄剤組成物において、ジヒドロキシエチルグリシン又はその塩は、1種単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本発明の液体洗浄剤組成物における(B)ジヒドロキシエチルグリシン又はその塩の含有量は、本発明の効果が奏される範囲であれば特に制限なく、適量配合できる。(B)ジヒドロキシエチルグリシン又はその塩の含有量の下限としては、酵素の保存安定性の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。また、(B)ジヒドロキシエチルグリシン又はその塩の含有量の上限としては、洗浄剤の配合安定性の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。(B)ジヒドロキシエチルグリシン又はその塩の含有量の数値範囲としては、0.01質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。なお、(B)ジヒドロキシエチルグリシン又はその塩の含有量はナトリウム塩に換算した値を用いる。
【0025】
本発明の液体洗浄剤組成物中の(A)プロテアーゼと(B)ジヒドロキシエチルグリシン又はその塩との質量比[(A)/(B)]は、特に制限されず適宜調整することができるが、保存安定性の観点から、例えば、0.0001~1000であることが好ましく、0.0005~100であることがより好ましく、0.001~50であることが更に好ましく、0.005~10であることが特に好ましい。
【0026】
本発明の液体洗浄剤組成物には、上記成分の他、本発明の効果が奏される範囲であれば、必要に応じて、界面活性剤(例えば、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤)、高分子分散剤、キレート剤、酵素、色素、殺菌剤、水溶性溶剤、消泡剤、漂白剤、漂白活性化剤、酸化防止剤、除菌剤、香料、防錆剤(金属腐食防止剤ともいう)、防腐剤、pH調整剤等を含有させることができる。中でも、本発明の液体洗浄剤組成物は、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン界面活性剤、水溶性溶剤、高分子分散剤、及び防錆剤からなる群より選択される少なくとも1種を好ましく含有できる。
【0027】
本発明の液体洗浄剤組成物は、例えば、上記成分以外の残部として水を含有する。本発明の液体洗浄剤組成物が含有する水としては、特に限定されず、例えば水道水、イオン交換水、精製水、蒸留水、純水、軟水、硬水等が挙げられる。
【0028】
本発明の液体洗浄剤組成物は、上述の各成分を常法により混合することで製造することができる。
【0029】
[pH]
本発明の液体洗浄剤組成物のpHは、特に制限されるものではないが、例えば、25℃でのpHが6.0~11.0であり、好ましくは7.0~10.0であり、より好ましくは7.5~9.5である。
【0030】
[洗浄対象]
本発明の液体洗浄剤組成物は、例えば、食器又は医療器具を洗浄するのに好ましく用いられる(すなわち食器又は医療器具洗浄用である)。ここで、本発明の液体洗浄剤組成物の洗浄対象(被洗浄物)としての食器は、例えば、いわゆる自動食器洗浄機により洗浄され得るものをいい、例えば、飲食器、調理器具、トレイ、瓶、缶等が挙げられる。また、洗浄対象(被洗浄物)としての医療器具は、例えば、剪刀、鉗子、鑷子等の鋼製器具、カテーテル、チューブ、バイトブロック等の樹脂製器具、硬性もしくは軟性内視鏡等を含む。本発明の液体洗浄剤組成物は、血液汚れに対して優れた洗浄力を有していることから、医療器具の洗浄に好適に用いることができる。
【0031】
[自動洗浄機用用途]
本発明の液体洗浄剤組成物は、例えば、業務用又は家庭用の自動洗浄機用として好ましく用いられる。すなわち、本発明の液体洗浄剤組成物は、簡便に濃度測定ができるため、洗浄液中の洗浄剤濃度を測定し、調整、管理等する必要がある自動洗浄機用(例えば業務用の自動洗浄機用)に好適に用いることができる。なお、本発明の液体洗浄剤組成物を使用することができる自動洗浄機に、特に制限はなく、例えば、業務用又は家庭用の自動食器洗浄機や、ウォッシャーディスインフェクターなどに使用できる。
【0032】
ただし、本発明の液体洗浄剤組成物は、上記自動洗浄機用用途に限られるものではなく、例えば手洗い用の液体洗浄剤としても使用できる。すなわち、本発明の液体洗浄剤組成物を水で所定の倍率に希釈することで洗浄剤希釈液とし、当該洗浄剤希釈液を用いて被洗浄物を手洗い洗浄することができる。ここで、手洗い洗浄には、液体洗浄剤を付着させたスポンジ等の洗浄具で被洗浄物を擦り洗いした後に水ですすぐ洗浄方法や、液体洗浄剤を水に分散させて浸漬液とし、この浸漬液に被洗浄物を漬け置き、一定時間放置した後に水ですすぐ洗浄方法があるが、被洗浄物に応じて、これら擦り洗い、漬け置き洗いを適宜行うことができる。
【0033】
なお、本発明の液体洗浄剤組成物は、例えば、曝気洗浄、浸漬洗浄、減圧沸騰式洗浄等にも使用できる。
【0034】
<洗浄方法>
本発明の液体洗浄剤組成物を用いた洗浄方法(以下、単に洗浄方法ということがある)は、本発明の液体洗浄剤組成物を用いて被洗浄物を洗浄することを特徴とし、その他の工程、条件等は制限されない。なお、この洗浄方法の説明には、前述の本発明の液体洗浄剤組成物の記載を援用することができる。
【0035】
本発明の洗浄方法において、本発明の液体洗浄剤組成物は、通常、水(例えば水道水)で希釈されて、洗浄剤希釈液として使用される。
【0036】
本発明の洗浄方法において、使用時の液体洗浄剤組成物の希釈倍率は、例えば、2~100000倍であり、好ましくは10~20000倍であり、より好ましくは50~10000倍であり、さらに好ましくは100~5000倍である。また、洗浄剤希釈液中の本発明の液体洗浄剤組成物の濃度は、例えば、0.001質量%以上50質量%以下であり、好ましくは0.005質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以上2質量%以下であり、さらに好ましくは0.02質量%以上1質量%以下である。
【0037】
本発明の洗浄方法は、例えば自動洗浄機を用いた洗浄方法であることができ、この場合、本発明の洗浄方法は、例えば、本発明の液体洗浄剤組成物の希釈液を、自動洗浄機庫内に収容された被洗浄物に対し噴射する噴射洗浄工程を含む。
【0038】
本発明の洗浄方法において、洗浄時の温度は、適宜設定可能であるが、例えば、1~100℃である。
【0039】
本発明の洗浄方法において、洗浄による洗浄時間は、適宜設定可能であるが、例えば、1秒~96時間である。
【0040】
<希釈液中の液体洗浄剤濃度の測定方法>
本発明の希釈液中の液体洗浄剤濃度の測定方法(以下、単に測定方法ということがある)は、液体洗浄剤がジヒドロキシエチルグリシン又はその塩を含有する液体洗浄剤であるとき、液体洗浄剤希釈液に対し、ブロモクレゾールグリーンを用いて中和滴定を行うことにより、液体洗浄剤希釈液中の液体洗浄剤の濃度を測定することを特徴とし、その他の工程、条件等は制限されない。なお、この測定方法の説明には、前述の本発明の液体洗浄剤組成物の記載を援用することができる(ただし、この測定方法においては、液体洗浄剤(液体洗浄剤組成物)の成分としてプロテアーゼは任意成分である)。
【0041】
本発明の測定方法は、液体洗浄剤希釈液中の液体洗浄剤(すなわち液体洗浄剤原液)の濃度を測定することができる。したがって、本発明の測定方法によれば、例えば、液体洗浄剤原液の希釈倍率を測定できるということもできる。
【0042】
本発明の測定方法は、液体洗浄剤希釈液中の液体洗浄剤原液由来のジヒドロキシエチルグリシン又はその塩の濃度を中和滴定により測定している。ジヒドロキシエチルグリシン又はその塩を含有する水溶液は、後述の実施例に示されるとおり、ブロモクレゾールグリーンを指示薬とし、希塩酸により中和滴定を行った場合、滴定量(滴下数)を増やすことができる。このため、ジヒドロキシエチルグリシン又はその塩を含有する液体洗浄剤の希釈液は、ブロモクレゾールグリーンを用いた中和滴定により有効に濃度測定ができる。
【0043】
本発明の測定方法において、中和滴定の指示薬として、ブロモクレゾールグリーンが使用される。ここで、指示薬は、ブロモクレゾールグリーンに限られず、ブロモクレゾールグリーン系の指示薬を広く使用することができ、例えばブロモクレゾールグリーン/メチルレッド等の混合指示薬を好適に使用できる。
【0044】
本発明の測定方法において、滴定試薬は、通常中和滴定に用いられる滴定試薬であれば特に制限なく使用できる。例えば、酸(強酸、弱酸)を使用でき、好ましくは希塩酸、希硫酸などを使用できる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0046】
下記表1に示す組成を有する、プロテアーゼ含有液体洗浄剤組成物を調製し、以下の試験を行った。配合に用いた各成分を以下に示す。なお、以下において「%」は特に記載がない限り質量%を表す。また、表1における括弧内の数値は純分換算値である。
【0047】
[配合成分]
<プロテアーゼ>
・プロテアーゼ液:商品名「Liquanase everis900L」(プロテアーゼ量5~7.5%)、ノボネシス社製
<キレート剤>
・50%ジヒドロキシエチルグリシンナトリウム液:商品名「キレストG-50」、キレスト社製
・20%ヒドロキシエチルイミノ二酢酸二ナトリウム液:商品名「キレストE-20」、キレスト社製
・ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩:商品名「キレスト700」、キレスト社製
・エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩:商品名「キレスト2D」、キレスト社製
・40%メチルグリシン二酢酸三ナトリウム液:商品名「Disolvine M-40」、ヌーリオン社製
・47%グルタミン酸二酢酸四ナトリウム液:商品名「Disolvine GL-47-S」、ヌーリオン社製
<アルカノールアミン>
・トリエタノールアミン:オクサリスケミカルズ社製
・2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール:アンガス ケミカル社製
<グリシン派生物>
・トリメチルグリシン:ダニスコ社製
<アミノ酸>
・グリシン:レゾナック社製
【0048】
[濃度滴定試験]
まず、各液体洗浄剤組成物を、水道水で希釈することで0.04質量%の洗浄剤希釈液を調製した。つぎに、洗浄剤希釈液20mLに対しブロモクレゾールグリーン(BCG)/メチルレッド液を5滴加えた。洗浄剤希釈液に対し、0.02M塩酸をオールプラスチックシリンジ5mL(ヘンケ社製)を使用して1滴ずつ滴下することで中和滴定を行い、液色が緑色から赤色に変化する所で滴定を終了した。他方、液体洗浄剤組成物を含まない水道水に対しても同様の方法で中和滴定を行った。洗浄剤希釈液に対しての滴定量(滴下数)と水道水に対しての滴定量(滴下数)との差を滴定差とした。
○:滴定差が11滴以上。
×:滴定差が10滴以下。
【0049】
[外観安定性試験]
各液体洗浄剤組成物を、前述のとおり調製した後、50℃で6日間保存した。保存後、外観を目視で観察し、外観安定性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:変色が生じていなかった。
×:変色が生じていた。
【0050】
[酵素保存安定性試験]
各液体洗浄剤組成物を、前述のとおり調製した後、50℃で6日間保存した。保存後、液体洗浄剤組成物中のプロテアーゼの残存活性を、Protazyme AK(Megazyme社製)を使用して測定した。他方、プロテアーゼ液(Liquanase everis900L)の10%水溶液を調製し、調整直後のプロテアーゼ活性を同様にProtazyme AKを使用して測定した。調製直後のプロテアーゼ水溶液のプロテアーゼ活性値に対する、保存後液体洗浄剤組成物のプロテアーゼ活性値の割合を以下の式により算出し、これを活性残存率(%)とした。
残存活性率(%)={(保存後のプロテアーゼ活性値)/(調製直後のプロテアーゼ活性値)}×100
各液体洗浄剤組成物のプロテアーゼ残存活性率を以下のとおり評価した。
○:残存活性率が90%以上。
×:残存活性率が90%未満。
【0051】
[血液洗浄速度試験]
各液体洗浄剤組成物を水道水で200倍に希釈した洗浄液(0.5%希釈液)について、PEREG GmbH社製のTOSI洗浄評価インジケータ(モデル汚れ:牛血)を用いて血液洗浄速度を評価した。具体的には、インジケータを40℃の各洗浄液(0.5%希釈液)に浸漬し、液温を40℃で維持した。インジケータの血液汚れが完全に除去されるまでの時間を測定し、下記の基準で評価した。
◎:40分以内に汚れが完全に除去された。
○:40分超60分以内に汚れが完全に除去された。
×:60分以内には汚れが完全に除去されなかった。
【0052】
【0053】
濃度滴定試験、外観安定性試験、酵素保存安定性試験、及び血液洗浄速度試験に関する結果を表1に示す。
【0054】
表1に示されるとおり、実施例1は、プロテアーゼ及びジヒドロキシエチルグリシンを含有する液体洗浄剤組成物であるが、外観安定性、酵素保存安定性のいずれにおいても優れていた。これに対し、ジヒドロキシエチルグリシンに代えて他のキレート剤やアルカノールアミンなどを含有する液体洗浄剤組成物は、外観安定性、酵素保存安定性のいずれかが劣っていた。ここで、一般にキレート剤は、酵素保存安定性を低下させるとされていることから、キレート剤であるジヒドロキシエチルグリシンの酵素保存安定性の向上効果は意外であった。
【0055】
さらに、実施例1は、血液洗浄速度が最も速く、血液汚れに対して優れた洗浄力を有していた。また、実施例1は、濃度滴定試験において示されるとおり、ブロモクレゾールグリーンを用いた中和滴定において適定量(滴下数)を増やすことができた。
【0056】
以上から、プロテアーゼ及びジヒドロキシエチルグリシンを含有する液体洗浄剤組成物は、外観安定性を有し、プロテアーゼの保存安定性にも優れていることがわかった。さらに、この液体洗浄剤組成物は、血液汚れに対して優れた洗浄力を有していることがわかった。さらに、この液体洗浄剤組成物は、ブロモクレゾールグリーン(BCG)を使用した濃度滴定に適していることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、プロテアーゼの保存安定性に優れ、かつ外観安定性を有する液体洗浄剤組成物を提供できる。
【要約】
【課題】本発明は、プロテアーゼを含有する液体洗浄剤において、プロテアーゼの保存安定性を高めることができ、かつ外観安定性も有する配合を見出すことを目的とする。
【解決手段】本発明は、(A)プロテアーゼおよび(B)ジヒドロキシエチルグリシン又はその塩を含有する、液体洗浄剤組成物である。
【選択図】なし