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特許7511801樹脂ブロック製造装置、樹脂製品製造方法および樹脂ブロック製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】樹脂ブロック製造装置、樹脂製品製造方法および樹脂ブロック製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/53 20060101AFI20240701BHJP
   B29C 45/22 20060101ALI20240701BHJP
   B29C 45/37 20060101ALI20240701BHJP
   B29C 45/57 20060101ALI20240701BHJP
   B29C 45/80 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B29C45/53
B29C45/22
B29C45/37
B29C45/57
B29C45/80
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020097970
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021187142
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】597042478
【氏名又は名称】株式会社エイ・ティ・エル
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉永 直央
(72)【発明者】
【氏名】木村 頼大
(72)【発明者】
【氏名】藤森 大成
(72)【発明者】
【氏名】前島 直生
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-058650(JP,A)
【文献】特開2004-216724(JP,A)
【文献】特開2019-010854(JP,A)
【文献】特公昭33-003723(JP,B1)
【文献】特開2018-183938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される樹脂材料を収容する材料室と、
複数の孔が形成され、前記材料室の端面に配置されたゲート部と、
前記ゲート部を加熱する加熱手段と、
前記材料室に供給された前記樹脂材料を、前記加熱された前記ゲート部に押圧し、溶融した前記樹脂材料を前記孔から押し出す押出部と、
前記押し出される前記樹脂材料を収容する樹脂ブロック成形空間を有し、前記押し出される前記樹脂材料に前記ゲート部方向の圧力を加えながら徐々に前記樹脂ブロック成形空間の容積を拡大し、前記押し出される前記樹脂材料を前記樹脂ブロック成形空間内で一体化する型部と
を有する樹脂ブロック製造装置。
【請求項2】
前記樹脂材料を前記孔から押し出す圧力と、前記押し出される前記樹脂材料に前記ゲート部方向へ加える圧力と、を調整する圧力調整手段をさらに有する請求項1に記載の樹脂ブロック製造装置。
【請求項3】
前記ゲート部および前記型部を冷却する冷却手段をさらに有する請求項1または2に記載の樹脂ブロック製造装置。
【請求項4】
前記型部は、
前記樹脂ブロック成形空間の側面を規定し、一方の端部側に前記ゲート部が配置される側面型板と、
前記ゲート部に平行な押さえ面を有し、前記側面型板に囲まれる空間内を前記ゲート部に垂直な方向に移動可能な押さえ板とを有し、
前記押さえ板を移動させることにより、前記押し出される前記樹脂材料に前記圧力を加えながら、前記樹脂ブロック成形空間の容積を徐々に拡大する請求項1~3のいずれかに記載の樹脂ブロック製造装置。
【請求項5】
前記側面型板を、前記ゲート部に垂直な方向に移動させる型部移動手段と、
前記側面型板が前記ゲート部から離れた位置に移動された状態で、前記側面型板の内部に形成された樹脂ブロックと前記ゲート部との間に配置される押出ブロックとをさらに有し、
前記押出ブロックが前記樹脂ブロックと前記ゲート部との間に配置された状態で、前記型部移動手段により前記側面型板を前記ゲート部に近づく方向に移動させることにより、前記樹脂ブロックを前記側面型板から離型させる請求項4に記載のブロック製造装置。
【請求項6】
前記複数の孔の各々は、前記樹脂ブロック成形空間側の開口径が、前記材料室側の開口径より大径な円錐台形状である請求項1~5のいずれかに記載のブロック製造装置。
【請求項7】
所望の樹脂成型品の形状に対応するキャビティと、前記キャビティと前記樹脂ブロック成形空間とを連通する樹脂流れ込み通路とを有する試作型部をさらに有する請求項1~6のいずれかに記載のブロック製造装置。
【請求項8】
前記型部の前記樹脂ブロック成形空間の内周面には、前記樹脂流れ込み通路に連通する試作型用孔が形成されており、
前記試作型用孔を開閉することにより、前記キャビティと前記樹脂ブロック成形空間との連通状態を制御する試作用ゲート開閉ピンをさらに有する
請求項7に記載のブロック製造装置。
【請求項9】
前記樹脂材料は、樹脂ペレットまたは粉砕した樹脂である請求項1~8のいずれかに記載の樹脂ブロック製造装置。
【請求項10】
請求項7または8に記載の樹脂ブロック製造装置において前記樹脂ブロック成形空間に収容された溶融された前記樹脂材料に圧力を加えることにより、当該樹脂材料を所望の形状のキャビティを有する試作型部の当該キャビティに充填し、当該キャビティの形状に対応する樹脂製品を製造する樹脂製品製造方法。
【請求項11】
複数の孔が形成され加熱されたゲート部に樹脂材料を押圧することにより、溶融した前記樹脂材料を前記孔から押し出す工程と、
前記押し出される前記樹脂材料に前記ゲート部方向の圧力を加えながら、前記押し出される前記樹脂材料を収容する樹脂ブロック成形空間の容積を徐々に拡大することにより、前記押し出される前記樹脂材料を前記樹脂ブロック成形空間内で一体化する工程と
を有する樹脂ブロック製造方法。
【請求項12】
前記押し出される前記樹脂材料に前記ゲート部方向へ加える圧力は、溶融した前記樹脂材料を前記孔から押し出す圧力より小さい請求項11に記載の樹脂ブロック製造方法。
【請求項13】
前記樹脂ブロック成形空間内で一体化された前記樹脂材料を冷却する工程をさらに有し、前記冷却は、前記樹脂材料に前記ゲート部方向へ圧力を加えて行う請求項10または12に記載の樹脂ブロック製造方法。
【請求項14】
前記樹脂材料は、樹脂ペレットまたは粉砕した樹脂である請求項11~13のいずれかに記載の樹脂ブロック製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ブロックの製造に関し、特に、効率よく所望のサイズ(厚み)の樹脂ブロックを製造することのできる樹脂ブロック製造装置、樹脂製品製造方法および樹脂ブロック製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製品の試作は、樹脂ブロックを削り出すか、3-Dプリンタを用いて行うのが通常であるが、どちらの場合も使用できる材料が限定されており、量産で使用したい材料の評価が適切にできない場合がある。また、3-Dプリンタを使用する方法には、寸法精度や反りの問題、あるいは、材料が高価でコストがかかるという問題もある。そのため、量産化・商品化したときの樹脂成形物の特性を正しく評価したい場合は、量産時と同じ装置および工程により試作品を製作する必要がある。すなわち、例えば量産時と同様の金型を製作し、使用予定の樹脂材料を用い、実際に射出成形機を稼働させて射出成形することにより試作品を成形する必要がある。その結果、試作に期間、コスト、手間等がかかることが避けられない。
【0003】
そこで、本願発明者らは、所望の材質や色等の樹脂材料を用いて樹脂ブロックを製造することができる装置および方法を既に開示しているところ(特許文献1参照)、より一層効率よく所望のサイズ(厚み)の樹脂ブロックを製造したいとの要望がある。また、試作自体を、より一層効率よく、すなわち短期間に低コストで簡単に行いたいという要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-151009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、そのような状況に鑑みてなされたものであって、本願発明の目的は、所望の材質や色等の樹脂を用いた樹脂ブロックを一層効率よく製造することができる、すなわち、任意の樹脂材料の樹脂ブロックを一層効率よく製造することができる樹脂ブロック製造装置および樹脂ブロック製造方法を提供することにある。また、本願発明の目的は、試作自体をも一層効率よく行うことのできる、すなわち、短期間に低コストで簡単に樹脂製品の試作品を製造することのできる樹脂ブロック製造装置および樹脂製品製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の樹脂ブロック製造装置は、
供給される樹脂材料を収容する材料室と、
複数の孔が形成され、前記材料室の端面に配置されたゲート部と、
前記ゲート部を加熱する加熱手段と、
前記材料室に供給された前記樹脂材料を、前記加熱された前記ゲート部に押圧し、溶融した前記樹脂材料を前記孔から押し出す押出部と、
前記押し出される前記樹脂材料を収容する樹脂ブロック成形空間を有し、前記押し出される前記樹脂材料に前記ゲート部方向の圧力を加えながら徐々に前記樹脂ブロック成形空間の容積を拡大し、前記押し出される前記樹脂材料を前記樹脂ブロック成形空間内で一体化する型部とを有することを特徴とする。
【0007】
好ましくは、本願発明の樹脂ブロック製造装置は、前記樹脂材料を前記孔から押し出す圧力と、前記押し出される前記樹脂材料に前記ゲート部方向へ加える圧力とを調整する圧力調整手段をさらに有することを特徴とする。
【0008】
また、好ましくは、本願発明の樹脂ブロック製造装置は、前記ゲート部および前記型部を冷却する冷却手段をさらに有することを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記型部は、前記樹脂ブロック成形空間の側面を規定し、一方の端部側に前記ゲート部が配置される側面型板と、前記ゲート部に平行な押さえ面を有し、前記側面型板に囲まれる空間内を前記ゲート部に垂直な方向に移動可能な押さえ板とを有し、前記ゲート部に平行な押さえ面を有し、前記側面型板に囲まれる空間内を前記ゲート部に垂直な方向に移動可能な押さえ板とを有し、前記押さえ板を移動させることにより、前記押し出される前記樹脂材料に前記圧力を加えながら、前記樹脂ブロック成形空間の容積を徐々に拡大することを特徴とする。
【0010】
好ましくは、本願発明の樹脂ブロック製造装置は、前記側面型板を、前記ゲート部に垂直な方向に移動させる型部移動手段と、前記側面型板が前記ゲート部から離れた位置に移動された状態で、前記側面型板の内部に形成された樹脂ブロックと前記ゲート部との間に配置される押出ブロックとをさらに有し、前記押出ブロックが前記樹脂ブロックと前記ゲート部との間に配置された状態で、前記型部移動手段により前記側面型板を前記ゲート部に近づく方向に移動させることにより、前記樹脂ブロックを前記側面型板から離型させることを特徴とする。
【0011】
また、好ましくは、前記複数の孔の各々は、前記樹脂ブロック成形空間側の開口径が、前記材料室側の開口径より大径な円錐台形状であることを特徴とする。
【0012】
また、本願発明の樹脂ブロック製造装置は、所望の樹脂成型品の形状に対応するキャビティと、前記キャビティと前記樹脂ブロック成形空間とを連通する樹脂流れ込み通路とを有する試作型部をさらに有してもよい。
【0013】
好ましくは、前記型部の前記樹脂ブロック成形空間の内周面には、前記樹脂流れ込み通路に連通する試作型用孔が形成されており、本願発明の樹脂ブロック製造装置は、前記試作型用孔を開閉することにより、前記キャビティと前記樹脂ブロック成形空間との連通状態を制御する試作用ゲート開閉ピンをさらに有することを特徴とする。
【0014】
また、本願発明の樹脂製品製造方法は、前記試作型部を有する樹脂ブロック製造装置において前記樹脂ブロック成形空間に収容された溶融された前記樹脂材料に圧力を加えることにより、当該樹脂材料を所望の形状のキャビティを有する試作型部の当該キャビティに充填し、当該キャビティの形状に対応する樹脂製品を製造することを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記樹脂材料は、樹脂ペレットまたは粉砕した樹脂であることを特徴とする。
【0016】
また、本願発明の樹脂ブロック製造方法は、
複数の孔が形成され加熱されたゲート部に樹脂材料を押圧することにより、溶融した前記樹脂材料を前記孔から押し出す工程と、
前記押し出される前記樹脂材料に前記ゲート部方向の圧力を加えながら、前記押し出される前記樹脂材料を収容する樹脂ブロック成形空間の容積を徐々に拡大することにより、前記押し出される前記樹脂材料を前記樹脂ブロック成形空間内で一体化する工程と
を有することを特徴とする。
【0017】
好ましくは、本願発明の樹脂ブロック製造方法において、前記押し出される前記樹脂材料に前記ゲート部方向へ加える圧力は、溶融した前記樹脂材料を前記孔から押し出す圧力より小さい。
【0018】
好ましくは、本願発明の樹脂ブロック製造方法は、前記樹脂ブロック成形空間内で一体化された前記樹脂材料を冷却する工程をさらに有し、前記冷却は、前記樹脂材料に前記ゲート部方向へ圧力を加えて行うことを特徴とする。
【0019】
好ましくは、前記樹脂材料は、樹脂ペレットまたは粉砕した樹脂であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本願発明によれば、所望の材質や色等の樹脂を用いた樹脂ブロックを一層効率よく製造することができる、すなわち、任意の樹脂材料の樹脂ブロックを一層効率よく製造することができる樹脂ブロック製造装置および樹脂ブロック製造方法を提供することができる。また、本願発明によれば、試作自体をも一層効率よく行うことのできる、すなわち、短期間に低コストで簡単に樹脂製品の試作品を製造することのできる樹脂ブロック製造装置および樹脂製品製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の第1実施形態の樹脂ブロック製造装置の全体構成を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す樹脂ブロック製造装置のII-IIにおける断面図である。
図3図3は、図1に示す樹脂ブロック製造装置の材料室およびゲート部の構成および動作を示す第1の断面斜視図である。
図4図4は、図1に示す樹脂ブロック製造装置の材料室およびゲート部の構成および動作を示す第2の断面斜視図である。
図5図5は、図1に示す樹脂ブロック製造装置のゲート部の構成を示す図であり、図5(A)は斜視図、図5(B)は図5AのVの箇所における断面図である。
図6図6は、図1に示す樹脂ブロック製造装置における樹脂ブロックの成形過程を説明するための模式的な図である。
図7図7は、図1に示す樹脂ブロック製造装置における冷却工程を説明するための模式的な図である。
図8図8は、図1に示す樹脂ブロック製造装置における離型工程を説明するための第1の模式的な図である。
図9図9は、図1に示す樹脂ブロック製造装置における離型工程を説明するための第2の模式的な図である。
図10図10は、本発明の第2実施形態の樹脂ブロック製造装置の構成を示す斜視図である。
図11図11は、図10に示す樹脂ブロック製造装置の試作型部の構成および動作を示す第1の断面斜視図である。
図12図12は、図10に示す樹脂ブロック製造装置の試作型部の構成および動作を示す第2の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1実施形態
本発明の第1実施形態について、図1図9を参照して説明する。
本実施形態においては、樹脂ペレット(単にペレットと称する場合もある)から樹脂ブロックを製造する樹脂ブロック製造装置1を例示し本発明を説明する。本実施形態の樹脂ブロック製造装置1は、ペレットを加熱溶融した後冷却硬化させることにより、所望の厚みの樹脂ブロックを製造することのできる装置である。
【0023】
図1および図2に示すように、樹脂ブロック製造装置1は、材料室100、ゲート部200、ヒーター(加熱手段)250、冷却部(冷却手段)270、押出部300、型部500、および制御部630を有する。樹脂ブロック製造装置1は、例えばアングル材を連結して構成したフレームを有し、そこに後述する種々の機構やユニットを搭載したものである。
【0024】
まず、樹脂ブロック製造装置1の各部の構成および機能について説明する。
【0025】
材料室100は、供給される樹脂材料を収容する。材料室100は、図1および図2に示すように、矩形筒状部材が水平方向(X軸報告)を筒軸方向として配置されたような構成(矩形筒状部と称する)110を有し、矩形筒状部110の一方の端部に、後述するゲート部200が設置されている。また、矩形筒状部110の内部には、後述する押出部300の材料押出板320が、筒軸方向に移動可能に配設されている。これら、矩形筒状部110の内周面112、ゲート部200、および押出部300の材料押出板320で囲まれた空間が、原材料たるペレットを収容する材料収容空間102である。材料収容空間102の上面には、ペレットを材料収容空間102に供給するための材料投入口120が形成されている。
【0026】
なお、材料室100は、任意の金属材料で構成されてよいが、本実施形態においては、アルミニウム製の板材で構成されている。
【0027】
ゲート部200は、材料室100の材料収容空間102に供給されたペレットを溶融するとともに、溶融された樹脂材料を、型部500の樹脂ブロック成形空間502に流出させるための部材である。
ゲート部200は、材料室100と型部500との間に設置されており、材料室側表面201は材料収容空間102の一方の端面を形成し、型部側表面203は、樹脂ブロック成形空間502の一方の端面を形成する。
【0028】
図5Aに示すように、ゲート部200には、材料室側表面201と型部側表面203との間を貫通する多数の孔210が形成されている。孔210は、溶融した樹脂材料を材料収容空間102から樹脂ブロック成形空間502に流出させるための孔である。各孔210は、図5Bに示すように、内周面が、材料室側開口(樹脂流入口)221から樹脂ブロック成形空間側開口(樹脂流出口)222に向かって所定の角度αで傾斜して拡径する円錐台形状の孔である。すなわち、各孔210は、樹脂ブロック成形空間側開口222の開口径が、材料室側開口221の開口径より大径な円錐台形状である。孔210をこのようなテーパ状の周面を有する円錐台形状としておくことにより、樹脂ブロック成形空間502で成形された樹脂ブロックの離型が容易になる。
【0029】
本実施形態において、孔210は、材料室側開口(樹脂流入口)221から樹脂ブロック成形空間側開口(樹脂流出口)222に向かって、内周面がテーパ面をなして傾斜し拡径する円錐台形状の孔である。材料室側開口(樹脂流入口)221のサイズは、原材料として使用するペレットが孔210に入らないサイズ、すなわち、使用するペレットの直径より小さいサイズであって(最大値)、溶融した樹脂材料が流入可能なサイズ(最小値)であれば任意のサイズでよい。ただし、孔210の径が大きい(太い)と、成形された樹脂ブロックの離型が難しくなるため、孔210は細径の方が好ましく、具体的には、例えば、樹脂流入口221の直径φは1.0mm~5.0mmであり、好ましくは0.5mm~3.0mmである。また、孔210の内周テーパ面の傾斜角度αは、例えば0°より大きく15°以下の角度であり、好ましくは1°~5°である。
【0030】
また、孔210の数、孔210の配置は、孔210同士が干渉せず独立に形成可能であれば任意の数、任意の配置でよい。孔210の数が多いほど、材料収容空間102から樹脂ブロック成形空間502に流れる樹脂材料の量が多くなり樹脂ブロックを速く成形できるが、一方で、孔210の数が多いほど、成形された樹脂ブロックの離型が難しくなる。また、孔210の配置は、ゲート部200の全体にわたって均一な配置が好ましい。具体的には、例えば縦横(Y方向およびZ方向)それぞれ、5mm~15mmのピッチで格子状あるいはジグザグ状に孔210が形成されているのが好ましい。
【0031】
なお、ゲート部200は、任意の金属材料で構成されてよいが、本実施形態においては、アルミニウム製である。
【0032】
図6に示すように、ゲート部200の孔210の近傍には、ゲート部200の温度を検出する温度センサー230が設置されている。本実施形態において、温度センサー230は熱電対である。温度センサー230は、直接あるいは間接に制御部630に接続されており、制御部630は、ゲート部200の孔210近傍の温度が検出可能となっている。
【0033】
ヒーター(加熱手段)250は、材料室100の材料収容空間102に収容されたペレットを溶融するために、ゲート部200を加熱する。ヒーター250は、ゲート部200に埋設されている。ヒーター250は、ゲート部200の多数の孔210が形成されている範囲を含み、ゲート部200材料収容空間102の一方の端面を形成している範囲の全体を、略均一に加熱する。ヒーター250は、制御部630に制御されて、ゲート部200を、原材料として使用するペレットの種類に応じた所定の温度に加熱する。具体的には、ヒーター250は、原材料として使用する樹脂材料(ペレット)の溶融温度程度まで、あるいは、経験的に樹脂材料が柔らかくなり溶け始める温度の30°~40°高い温度まで、ゲート部200を加熱し昇温させる。
【0034】
ゲート部200の材料室側表面201には、材料室100の材料収容空間102に収容されたペレットが、後述する押出部300の作動により押し付けられる。前述したようにゲート部200がヒーター250により加熱昇温されることにより、押し付けられたペレットは溶融し、孔210の各々を通り、樹脂ブロック成形空間502に流れ込む。
【0035】
冷却部270は、樹脂ブロックの成形が終了したとき、ゲート部200、および後述する型部500を冷却する。冷却部270は、図7に示すように、図示せぬ冷却装置により冷却される冷却板271、および図示せぬ冷却気流送風装置により発生する冷却気流273により、ゲート部200、および樹脂ブロック成形空間502に存在する成形された樹脂ブロックRBを冷却する。
【0036】
冷却板271は、ゲート部200に隣接して、あるいは、ゲート部200に一体に形成されており、図示せぬ冷却装置により冷却され、ゲート部200を冷却する。冷却板271を冷却する冷却装置としては、冷却媒体としてオイルを用いて冷却板271を冷却する油冷式、空気(風)等の気体を冷却媒体として用いる空冷式、あるいは水を冷却媒体として用いる水冷式等、任意の冷却方式の装置であってよい。
【0037】
冷却気流273は、図示せぬ冷却気流送風装置により、型部500の型板510に対して下方から吹き付けられる冷却用の圧縮空気である。冷却気流273により型板510が冷却されることにより、型板510の内部の樹脂ブロック成形空間502に存在する成形された樹脂ブロックを冷却し、硬化させる。なお、冷却気流273は、型板510の下方のみならず、さらに上方からも型板510に吹き付けてよい。また、さらに型板510の横から型板510に吹き付けてもよい。
【0038】
押出部300は、材料室100の材料収容空間102に供給され収容されたペレットを、加熱されたゲート部200に押圧して溶融させ、溶融した樹脂材料を、ゲート部200の孔210を介して、型部500の樹脂ブロック成形空間502に送出する。押出部300は、材料押出板320、押出板移動ユニット324、押出板駆動部326、および図示せぬ押出板制御部を有する。
【0039】
材料押出板320は、材料室100の矩形筒状部110の内部に、矩形筒状構成の内周面110に内接するとともに筒軸方向に移動可能に配設されている。材料押出板320は、材料室100の矩形筒状部110の内部において、ゲート部200に対向する材料収容空間102の他方の端面を形成する。材料押出板320は、押出板移動ユニット324により押出板駆動部326に接続されている。押出板駆動部326は、本実施形態においては、サーボを使ったボールねじによるアクチュエータ機構であるが、その他の駆動装置であってもよい。押出板駆動部326は、制御部630内に備わる図示せぬ押出板制御部により駆動される。すなわち、材料押出板320は、制御部630内に備わる図示せぬ押出板制御部により移動される。
【0040】
型部500は、ゲート部200の各孔210から押し出される樹脂材料を収容する樹脂ブロック成形空間502を有し、押し出される樹脂材料にゲート部200方向の圧力を加えながら徐々に樹脂ブロック成形空間502の容積を拡大し、押し出される樹脂材料を樹脂ブロック成形空間502内で一体化する。
【0041】
型部500は、矩形筒状部材が水平方向(X軸報告)を筒軸方向として配置されたような構成を有し、樹脂ブロック成形空間502の側面を規定する側面型板510を有する。側面型板510の一方の端部には、前述したゲート部200が設置されている。側面型板510は、他方の端部に接続された側面型板支持ロッド514を介して、型引張板540に固定設置されている。側面型板510は、任意の金属材料で構成されてよいが、本実施形態においてはアルミニウム製である。
【0042】
型部500は、側面型板510に囲まれる空間内をゲート部200に垂直な方向に移動可能な押さえ板520を有する。また、押さえ板520は、ゲート部200に平行に対向する押さえ面521を有する。これら、側面型板510の内周面、ゲート部200、および押さえ板520で囲まれた空間が、樹脂ブロック成形空間502である。押さえ板520は、押さえ板駆動ロッド524により押さえ板駆動部526に接続されている。押さえ板520は、任意の金属材料で構成されてよいが、本実施形態においてはアルミニウム製である。
【0043】
押さえ板駆動部526は、本実施形態においては、サーボを使ったボールねじによるアクチュエータ機構であるが、その他の駆動装置であってもよい。押さえ板駆動部526は、制御部630内に備わる図示せぬ押さえ板制御部により駆動される。すなわち、押さえ板520は、制御部630内に備わる図示せぬ押さえ板制御部により移動される。
【0044】
押さえ板520は、ゲート部200の型部側表面203に当接させた状態から、ゲート部200において押し出される樹脂材料に応じて、徐々にゲート部200から離れる方向に移動される。これにより、押さえ板520は、ゲート部200から樹脂ブロック成形空間502に押し出される樹脂材料に圧力を加えながら、樹脂ブロック成形空間の容積を徐々に拡大するように機能する。
【0045】
また、側面型板510が側面型板支持ロッド514を介して設置されている型引張板540は、型引張板駆動ロッド544により型引張板駆動部546に接続されており、水平方向(X軸方向、ゲート部200に垂直な方向)に移動可能になっている。型引張板540がゲート部200から離れる方向に移動することにより、側面型板510は、樹脂ブロック成形空間502に形成された樹脂ブロックとともに一体的にゲート部200から離れる方向に移動する。その結果、側面型板510とゲート部200との間に、離型用押出ブロック580を配置可能なスペースが生じる。
【0046】
離型用押出ブロック580は、図9に示すように、対向配置される2枚の板材581,582を、ロッド583により接続した部材である。離型用押出ブロック580は、押出ブロック移動部584により、垂直方向に移動可能に構成されており、例えば図7に示すように側面型板510がゲート部200に当接されているときは、側面型板510の上部に退避されている。また、図8に示すように、成形された樹脂ブロックを離型するために、型引張板540がゲート部200から離れる方向に移動して側面型板510とゲート部200との間にスペースが確保されたときは、離型用押出ブロック580は下方に移動され、側面型板510とゲート部200との間に配置される。
【0047】
離型用押出ブロック580は、側面型板510の内部の樹脂ブロック成形空間502に入り込むことが可能な形状およびサイズとなっている。離型用押出ブロック580が側面型板510の内周面に内接する必要はない。型引張板540が移動して側面型板510がゲート部200方向に移動した場合、少なくともゲート部200から遠い側の板材581が、ある程度の面積を有してある程度の深さまで側面型板510の内部に入り込める形態であればよい。
【0048】
このような構成においては、樹脂ブロック成形空間502に樹脂ブロックRBが形成された後、離型用押出ブロック580を側面型板510とゲート部200との間に配置し、型引張板540をゲート部200の方向に移動させると、側面型板510は離型用押出ブロック580の周囲をゲート部200方向に移動可能であるが、側面型板510の内部に形成された樹脂ブロックRBは、離型用押出ブロック580に当接してゲート部200の方向への移動が停止される。その結果、樹脂ブロックRBが側面型板510の内周面に貼りついていたとしても、樹脂ブロックは側面型板510から離型される。
【0049】
なおこのとき、押さえ板520を樹脂ブロックRBのゲート部200とは反対側の端面に当接させて、押さえ板520と離型用押出ブロック580との間で樹脂ブロックを挟持するようにしておけば、樹脂ブロックが離型され側面型板510から完全に分離した場合も、樹脂ブロックを適切に保持することができる。
【0050】
制御部630は、樹脂ブロック製造装置1の各部の動作を制御する。具体的には、制御部630は、温度センサー230を介してゲート部200の温度を検出しながら、ヒーター250を駆動してゲート部200を昇温させるとともに、冷却部270を駆動してゲート部200を冷却し、ゲート部200を所望の温度状態に制御する。また、制御部630は、形成された樹脂ブロックが適切に離型され取り出されるように、押さえ板駆動部526、型引張板駆動部546および押出ブロック移動部584を制御する。
【0051】
また、制御部630は、材料押出板320による材料収容空間102内のペレットをゲート部200に押圧する力が、押さえ板520による樹脂ブロック成形空間502に流入する樹脂材料を押圧する力よりも若干大きくなるように、押出板駆動部326および押さえ板駆動部526を制御し、これらの圧力を調整する。このような相対的な圧力関係とすることで、後述する作用により、気泡の無い高品質な樹脂ブロックを製造することができる。
【0052】
次に、このような構成の樹脂ブロック製造装置1を用いた樹脂ブロックの製造方法について説明する。
まず、初期状態として、図3に示すように、材料投入口120よりもゲート部200から離れた方向に材料押出板320を退避させて材料を投入可能かつ十分な容積の材料収容空間102を確保するとともに、押さえ板520をゲート部200に密着した状態、すなわち、樹脂ブロック成形空間502の容積がゼロの状態としておく。
この状態で、材料投入口120から、原材料となるペレットを材料室100の材料収容空間102に投入する。(材料投入工程)
【0053】
次に、ヒーター250を制御して、ゲート部200を、ペレットの種類に応じた所定の温度、すなわち、ペレットが溶融状態となる温度に上昇させる。(加熱工程)
【0054】
次に、押出板駆動部326を駆動し、材料押出板320を所定の圧力で、換言すれば所定の速度でゲート部200の方向に移動させ、材料室100内のペレットをゲート部200の方向に移動、集積し、ゲート部200に密着させる。また、押さえ板駆動部526を駆動し、押さえ板520を所定の圧力でゲート部200の方向に押圧する。
その結果、ペレットはゲート部200の材料室側表面201の全体に配置され、ゲート部200に近接するペレットは溶融し、孔210から型部500の樹脂ブロック成形空間502に押し出される。(押し出し工程)
【0055】
押し出し工程においては、サーボ制御による圧力管理により、材料押出板320と押さえ板520とが樹脂ブロックを成形するのに適正な圧力を発揮するように調整する。押さえ板520の押圧力を、材料押出板320の押圧力よりも若干小さくしておくことにより、押さえ板520とゲート部200との間に溶融した樹脂材料が入り込み、樹脂ブロック成形空間502の形状に樹脂ブロックが成形される。また、樹脂ブロックの成形に伴って押さえ板520は押し負けた状態となり、押さえ板520はゲート部200から離れる方向に徐々に移動し、樹脂ブロック成形空間の容積が徐々に拡大される、樹脂ブロックは徐々に大きくなる。
【0056】
ここで、押し出し工程において気泡が除去される過程について、図6を参照して説明する。
材料押出板320により材料室100内のペレットをゲート部200の方向に移動、集積し、ゲート部200に密着させると、ペレットは、材料押出板320からゲート部200に近づくにつれて、ペレットの形態を維持している状態(ペレット状態)、半溶融状態、溶融状態となっていく。このとき、ペレットの状態ではペレット間に気泡が含まれているが、半溶融状態では気泡が抜けつつ溶融状態となっていく。そして、溶融状態では、圧力が印加されていることにより、気泡は、密度が低く、気泡の流路が残存している、あるいは気泡の流動性が高い、半溶融状態およびペレット状態側に逃がされていく。このような作用により、型部500の樹脂ブロック成形空間502には、気泡が存在しない樹脂材料のみが流れ込む。その結果、樹脂ブロック成形空間502において、気泡が無い樹脂ブロックが成形される。
【0057】
樹脂ブロックが所望の厚みに成長したら、樹脂ブロック成形空間502内で樹脂ブロックとして一体化された樹脂材料を冷却する。(冷却工程)
冷却は、図7に示すように、冷却板271を介してゲート部200を冷却するとともに、樹脂ブロック成形空間502の周囲の側面型板510に冷却気流273を吹き付けることにより行う。またこのとき、押さえ板520により樹脂ブロックRBに対してゲート部200方向に強く圧力(背圧FB)をかけておく。
【0058】
このような背圧FBをかけておくことにより、冷却時の収縮により樹脂ブロックRBにいわゆるヒケが生じたり、ゲート部200付近の樹脂の引き込みが生じることを防ぐことができる。
また、このような冷却方法とすることにより、まずゲート部200が冷却され、冷却が開始されると直ちにゲート部200付近の樹脂が硬化するため、ゲート部200からの樹脂の引き込みが無くなり、ゲート部200の孔210に蓋をした状態となる。その結果、樹脂ブロックに対して背圧FBが十分にかかった状態とすることができ、ヒケや樹脂の引き込みを適切に防止できる。
【0059】
冷却が終了したら、成形された樹脂ブロックRBを側面型板510から離型し取り出す。成形された樹脂ブロックRBは、側面型板510に貼りついているので、これを引き剥がす。(離型工程)
離型工程においては、まず、図8に示すように、型引張板540(図2参照)をゲート部200から離れる方向に後退させることにより、側面型板510および成形された樹脂ブロックRBを、ゲート部200から離れる方向に移動させる。このとき、押さえ板520も、樹脂ブロックRBの端面に当接した状態を維持しつつ、樹脂ブロックRBとともに移動する。
次に、これにより生じた側面型板510とゲート部200との間に、離型用押出ブロック580を下降し配置する。離型用押出ブロック580のゲート部200側の面は、ゲート部200に密着するように配置する。
【0060】
次に、型引張板540をゲート部200方向に移動させ、側面型板510および樹脂ブロックRBをゲート部200方向に移動させる。樹脂ブロックRBが離型用押出ブロック580に当接するまでは、側面型板510および樹脂ブロックRBは一体に移動するが、樹脂ブロックRBが離型用押出ブロック580に当接すると、樹脂ブロックRBの移動が阻止されるため、側面型板510のみがゲート部200方向に移動する。その結果、樹脂ブロックRBは側面型板510から引き剥がされる。さらに側面型板510をゲート部200方向に移動させることにより、樹脂ブロックRBは側面型板510から完全に離れた状態となり、樹脂ブロックRBの離型が完了する。
【0061】
樹脂ブロックRBが離型用押出ブロック580に当接するまでは、押さえ板520も、樹脂ブロックRBの端面に当接した状態を維持しつつ、樹脂ブロックRBとともに移動させる。樹脂ブロックRBが離型用押出ブロック580に当接したら、押さえ板520はこの位置で停止し、離型用押出ブロック580との間で樹脂ブロックRBを挟持した状態を維持する。その結果、樹脂ブロックの離型が完了した状態において、樹脂ブロックは、押さえ板520と離型用押出ブロック580との間に保持された状態となり、図示せぬ取り出し手段を介して樹脂ブロック製造装置1から取り出される。
本実施形態の樹脂ブロック製造装置1においては、このようにして所望のサイズの樹脂ブロックを製造する。
【0062】
このように、本実施形態の樹脂ブロック製造装置においては、成形機を使うことなく、種々の種類や色が販売されている樹脂ペレットを溶融し樹脂層を順次積層して樹脂ブロックを形成しているので、所望の材質や色等の樹脂を用いた樹脂ブロック、換言すれば任意の樹脂材料の樹脂ブロックを製造することができる。また、側面型板510(樹脂ブロック成形空間502)の長さの範囲内で、所望のサイズの樹脂ブロックを製造することができる。その結果、試作品を削り出しにより製造するために必要な所望の樹脂材料の所望のサイズの樹脂ブロックを製造することができ、試作等において量産化・商品化のための特性の評価が適切に行うことができる。
【0063】
また、本実施形態の樹脂ブロック製造装置1においては、多数の孔210が形成されてゲート部200を加熱し、これにペレットを押圧させることにより溶融させ、孔210を介して樹脂ブロック成形空間502に流出させている。そのため、完成した樹脂ブロックに気泡が入りにくく、極めて質のよい樹脂ブロックを製造することができる。
【0064】
また、本実施形態の樹脂ブロック製造装置1においては、樹脂ブロックRBを加圧しながら冷却するとともに、ゲート部200が最初に冷却されるように冷却をしているので、いわゆるヒケや樹脂の引き込みを防ぐことができ、高い寸法精度の高品質な樹脂ブロックを製造することができる。
【0065】
第2実施形態
本発明の第2実施形態について、図1図9に加え、さらに図10図12を参照して説明する。
第2実施形態の樹脂ブロック製造装置2は、樹脂ペレットから樹脂ブロックを製造するという第1実施形態の樹脂ブロック製造装置1の機能に加えて、樹脂製品の試作を行うことができる、すなわち、樹脂製品の試作品を成形するという機能を有する装置である。以下の説明において、第1実施形態の樹脂ブロック製造装置1と同一の構成、機能、動作、工程および方法においては、図面において第1実施形態と同一の符号を付するとともに、その説明を省略する。
【0066】
第2実施形態の樹脂ブロック製造装置2は、図1図2および図10に示すように、材料室100、ゲート部200、ヒーター(加熱手段)250、冷却部(冷却手段)270、押出部300、試作型部400、型部501、および制御部640を有する。このうち、材料室100、ゲート部200、ヒーター250、冷却部270、押出部300の構成、機能および動作は、第1実施形態の樹脂ブロック製造装置1の対応する各部の機能等と同一である。また、樹脂ブロック製造装置2において樹脂ブロックを製造する工程および方法も、第1実施形態の樹脂ブロック製造装置1における工程および方法と同じである。
【0067】
第2実施形態の樹脂ブロック製造装置2は、新たな構成として試作型部400を有する。また、第2実施形態の樹脂ブロック製造装置2の型部501および制御部640は、第1実施形態の樹脂ブロック製造装置1の型部500および制御部630と同一の構成および機能を有するとともに、さらに、樹脂ブロック製造装置2が試作型部400を有することに対応した新たな構成および機能を有する。以下、試作型部400、および、試作型部400に対応して新たに具備された型部501および制御部640の構成、機能等について説明する。
【0068】
図10に示すように、樹脂ブロック製造装置2においては、試作型部400が、型部501の型板511の一方の側面に設置されている。試作型部400は、型板511の鉛直方向(Z軸方向)に平行な側板の1つの外側に設置されている。試作型部400は、第1実施形態において説明した樹脂ブロックとは異なり、所望の形状の樹脂成型品を作成するための構成である。図11に示すように、試作型部400は、内部に所望の形状のキャビティ420を有しており、樹脂ブロック成形空間502から溶融した樹脂材料が流れ込むことにより、キャビティ420の形状に応じた形状の成形品が製造される。
【0069】
試作型部400は、試作型基部411、試作型第1部413および試作型第2部415を有する。試作型基部411は、試作型部400を型板511の側面に設置するとともに、試作型(試作型第1部413および試作型第2部415を含む)が設置される部材である。試作型基部411は、図示せぬねじにより型板511に設置される。なお、試作型基部411の型板511への設置方法は、ねじ以外の方法、例えばボルト/ナット、リベット、溶接等の方法でもよい。
【0070】
試作型第1部413および試作型第2部415は、製造する樹脂成型品の形状に対応したキャビティが内部に形成された部材である。試作型第1部413は、例えば図示せぬねじにより試作型基部411に対して設置される。また、試作型第2部415も、例えば図示せぬねじにより、試作型第1部413に対して、あるいは試作型基部411に対して設置される。
【0071】
試作型部400は、溶融した樹脂材料をキャビティ420に流し込むための樹脂流れ込み通路425を有する。樹脂流れ込み通路425の一方の端部は、型板511のゲート部200側の端部に形成された試作用横穴516に連通しており、樹脂流れ込み通路425の他方の端部は、試作型部400のキャビティ420に連通している。ゲート部200から型部501側に溶融した樹脂材料が流れこみ、型部501の押さえ板520とゲート部200との間に樹脂ブロック成形空間502が形成されたとき、試作用横穴516は樹脂ブロック成形空間502に対して開口することになる。これにより、樹脂ブロック成形空間502内の溶融した樹脂材料は、試作用横穴516および樹脂流れ込み通路425を介してキャビティ420に送り込まれ、キャビティ420に樹脂材料が充填される。
【0072】
図11および図12に示すように、樹脂流れ込み通路425の一方の端部であって、試作用横穴516につながる側の端部は、型板511の側面に略垂直(Z軸方向)に形成されている試作用ゲート開閉ピン430の摺動孔435の一部として形成されている。試作用ゲート開閉ピン430は、この摺動孔435に沿ってZ軸方向に移動し、先端部が試作用横穴516に嵌合して試作用横穴516を閉塞する閉塞位置、または、試作用横穴516を開放する開放位置に配置される。
【0073】
試作用ゲート開閉ピン430が閉塞位置にあるとき、試作用横穴516は閉塞され、樹脂ブロック成形空間502の樹脂材料は樹脂流れ込み通路425に流れ込まない。この状態において試作用ゲート開閉ピン430の先端面は、樹脂ブロック成形空間502を形成する空間において、型板511の内周面と同一平面をなすように、すなわち、いわゆるツライチの状態をなすように構成されている。この状態の樹脂ブロック製造装置2は、第1実施形態の樹脂ブロック製造装置1と同様に作動されることにより、樹脂ブロック製造装置1と同様に樹脂ブロックを製造することができる。
【0074】
試作用ゲート開閉ピン430が開放位置にあるとき、試作用横穴516は開放され、樹脂ブロック成形空間502からキャビティ420までの樹脂流れ込み通路425が連通される。この状態において、ゲート部200から樹脂ブロック成形空間502に溶融した樹脂材料が送り込まれ、押さえ板520により樹脂ブロック成形空間502内の溶融樹脂材料に圧力が作用することにより、樹脂ブロック成形空間502内の樹脂材料は、試作用横穴516および樹脂流れ込み通路425を介してキャビティ420に送り込まれる。その結果、キャビティ420に樹脂材料が充填され、キャビティ420の形状に応じた樹脂成型品が成形される。
【0075】
樹脂流れ込み通路425および試作用横穴516の断面形状は、本実施形態においては、樹脂流れ込み通路425の全域および試作用横穴516において同一の矩形断面形状であるとし、その幅は、例えば数mm~数cm(1.0mm~10.0mm)であり、その高さも、例えば数mm~数cm(1.0mm~10.0mm)である。
【0076】
なお、樹脂流れ込み通路425および試作用横穴516の断面形状は、キャビティ420の大きさ(製造する樹脂成型品の大きさ)、使用する樹脂材料の特性(粘度等)、樹脂ブロック製造装置2の制御条件(押出部300の材料押出板320の押圧力、ヒーター250によるゲート部200の加熱条件、型部501の押さえ板520の押圧力等)等に応じて、任意の形状としてよく、例えば、断面円形の孔であってもよい。
【0077】
また、樹脂流れ込み通路425および試作用横穴516の断面形状は、高さ方向に十分な高さの通路であってもよい。例えば、樹脂流れ込み通路425および試作用横穴516の断面の幅が1.0mm~10.0mmのとき、その高さは、10.0mm~200.0mm程度あってもよい。あるいは、その高さは、樹脂ブロック成形空間502の高さに対して、その10%、30%、50%あるいは100%というように規定、設計してよい。
【0078】
また、孔(通路、穴)の形状やサイズは、場所(位置)によって異なっていてもよい。
【0079】
また、試作用ゲート開閉ピン430の形状は、先端部が試作用横穴516を閉塞可能であり、全体が摺動孔435内を閉塞位置と開放位置との間を移動可能であれば、任意の形状でよい。
【0080】
このような構成の樹脂ブロック製造装置2においては、樹脂ブロックと、樹脂製品の試作品の両方を製造することができる。
【0081】
樹脂ブロックを製造する場合は、上述したように、試作用ゲート開閉ピン430を閉塞位置に配置し、樹脂ブロック製造装置2を第1実施形態の樹脂ブロック製造装置1と同様に作動させればよい。このとき、試作型部400は、型部501の型板511に対して設置されているので、型板511とともに移動等するが、樹脂ブロックの製造には何ら影響はなく、第1実施形態の樹脂ブロック製造装置1と同様に、所望のサイズの樹脂ブロックを製造することができる。
【0082】
樹脂ブロック製造装置2を用いて、樹脂製品の試作品を製造する場合も、初期状態としては、試作用ゲート開閉ピン430は閉塞位置に配置しておく。そして、樹脂ブロックを製造する場合と同様の工程を実施する。すなわち、型部501の押さえ板520をゲート部200に密着した状態とし、原材料となるペレットを材料室100の材料収容空間102に投入し、ヒーター250によりゲート部200をペレットが溶融状態となる温度に上昇させ、材料押出板320を所定の圧力でゲート部200の方向に移動、押圧することにより、ゲート部200の孔210から型部501の樹脂ブロック成形空間502に溶融した樹脂材料を押し出す。
【0083】
この状態で、型部501の押さえ板520の押圧力を、材料押出板320の押圧力よりも若干小さくしておくことにより、押さえ板520とゲート部200との間に溶融した樹脂材料が入り込み、樹脂ブロック成形空間502の形状に樹脂ブロックが成形される。そして、樹脂ブロックの成形に伴って押さえ板520が押し負けた状態となり、押さえ板520がゲート部200から離れる方向に徐々に移動し、樹脂ブロック成形空間502の容積が徐々に拡大される。
【0084】
樹脂製品の試作品を製造する場合は、この後の工程が樹脂ブロックを製造する場合と異なる。
樹脂ブロック成形空間502に所定の厚みの樹脂材料が送り込まれたら、試作用ゲート開閉ピン430を開放状態とするとともに、型部501の押さえ板520の押圧力を強くし、ゲート部200を介した樹脂材料の供給、あるいは、押出部300の材料押出板320による加圧に対して、押さえ板520が押し負けない状態とする。これにより、樹脂ブロック成形空間502内の樹脂材料は、試作用横穴516および樹脂流れ込み通路425を介して試作型部400のキャビティ420に送り込まれ、キャビティ420に樹脂材料が充填され、キャビティ420の形状に応じた樹脂成型品が成形される。
【0085】
試作型部400のキャビティ420に樹脂材料が充填されたら、ゲート部200、型部501とともに試作型部400を冷却し、冷却が終了したら、試作型410の試作型第2部415と試作型第1部413とを分離する(型を開く)ことにより、成形された試作品を離型し取り出す。これにより、所望の樹脂成型品を得ることができる。
【0086】
このように、第2実施形態の樹脂ブロック製造装置2を用いることにより、樹脂製品の試作品を効率よく製造することができる。樹脂ブロック製造装置2は、樹脂ブロックを製造するための圧力制御手段を備えているため、これを用いて試作型部400により樹脂製品の試作品を製造することにより、低コストで簡単かつ高精度に所望の形状の樹脂製品の試作品を製造することができる。
【0087】
また、樹脂ブロック製造装置2で使用する金型は、キャビティ420と樹脂流れ込み通路425が形成されていればよく、通常の射出成型機で使用する金型と比較して簡単かつ安価に製作できる。したがって、射出成型機を用いて量産時と同様の方法により試作品を製作する場合と比較して、簡単に、低コストで、短期間に、すなわち極めて効率よく試作品を製造することができる。
【0088】
なお、本実施形態においては、型部500の型板511の1つの側面に1つの試作型部400を設置し、1つの樹脂製品の試作品を製造する構成および方法について説明した。しかしながら、新たな試作型部400は、反対側の側面に設置すれば、2つの試作品を同時に製造することができ、そのような形態で樹脂ブロック製造装置2を実施してもよい。
【0089】
さらに、試作型部400を設置する箇所は型板511の側面(Y軸方向に対向する面)に限られず、上下に対向する側面に設置してもよい。また、1つの側面に設置する試作型部400の数も、1つに限られず、2つ以上を設置してもよい。製造する試作品のサイズ(試作型部400のサイズ)等に応じて、任意の数の試作型部400を型板511に対して設置してよい。
【0090】
また、試作用ゲート開閉ピン430の駆動方法、制御部640における樹脂ブロック製造装置2の各部の制御方法なども、任意の方法でよい。
【0091】
変形例
なお、本発明は、上記した第1実施形態および第2実施形態に限られるものではなく、任意好適な種々の改変が可能である。
たとえば、本発明の樹脂ブロック製造装置は、主たる作動方向が水平方向である水平型の装置であったが、本発明は、垂直型の装置としても何ら問題なく適用可能である。
【0092】
また、本発明の樹脂ブロック製造装置あるいは製造方法において使用する原材料としての樹脂材料は、樹脂ペレットに限られるものではない。例えば、任意の形状の樹脂部材を粉砕して大きさを小さくしたような樹脂材料でもよく、樹脂ブロック製造装置が溶融・溶解可能な範囲の大きさ、形状等であれば、任煮の樹脂材料を原材料として用いることができる。
【0093】
また、前述した実施形態では、一種類の樹脂ペレット(樹脂材料)から樹脂ブロックあるいは樹脂製品試作品を製造する例を説明した。しかし、樹脂ブロックあるいは樹脂製品試作品の原材料は、このような形態に限られるものではない。例えば、種類の異なる樹脂材料や、色の異なる樹脂材料等、複数の種類の樹脂材料を原材料として1の樹脂ブロックあるいは樹脂製品試作品を製造してもよい。その場合は、材料室に原材料を投入する工程において、その複数種類の樹脂材料を適宜所望の量ずつ投入すればよい。その状態で前述したように樹脂ブロック製造装置を作動させることにより、所定の材料が所定の割合で含有された、あるいは所望の組成の樹脂ブロックあるいは樹脂製品試作品が製造できる。
【0094】
また、同様に、樹脂材料に所望の添加剤あるいは強化材や金属等を混合して樹脂ブロックあるいは樹脂製品試作品を製造するようにしてもよい。所望の添加剤や強化剤等を樹脂材料(樹脂ペレット)とともに材料室にに所定量投入し、樹脂ブロック製造装置を作動させることにより、所定の添加剤あるいは強化剤等を含有する樹脂ブロックあるいは樹脂製品試作品を製造することができる。本発明の樹脂ブロック製造装置及び製造方法では、例えば、酸化防止剤等の安定剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤等の任意の添加剤を樹脂に添加した樹脂ブロックあるいは樹脂製品試作品を製造できる。また、本発明の樹脂ブロック製造装置及び製造方法では、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、金属繊維等の任意の繊維状強化材、マイカ、タルク、ガラスフレーク、金属板等の任意の板状強化材、シリカ、珪酸カルシウム、ガラスビーズ、カーボンブラック、金属片、金属小球等の任意の粒状強化材等、任意の強化材や金属製の物を樹脂に複合した樹脂ブロックあるいは樹脂製品試作品を製造できる。なお、本発明の製造方法により製造されたこのような添加剤や強化材等を含む樹脂ブロックおよび樹脂製品試作品も、本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0095】
1,2…樹脂ブロック製造装置
100…材料室
102…材料収容空間
110…矩形筒状部110
112…内周面
120…材料投入口
200…ゲート部
201…材料室側表面(材料室端面)
203…型部側表面(型部ゲート板側端面)
210…孔
221…樹脂流入口(材料室側開口)
222…樹脂流出口(樹脂ブロック成形空間側開口)
230…温度センサー
250…ヒーター(加熱手段)
270…冷却部(冷却手段)
271…冷却板
273…冷却気流
300…押出部
320…材料押出板
324…押出板移動ユニット
326…押出板駆動部
400…試作型部
410…試作型
411…試作型基部
413…試作型第1部
415…試作型第2部
420…キャビティ(試作成形品成長空間)
425…樹脂流れ込み通路
430…試作用ゲート開閉ピン
435…試作用ゲート開閉ピン摺動孔
500,501…型部
502…樹脂ブロック成形空間
510,511…型板(側面型板)
514…側面型板支持ロッド
516…試作用横穴
520…押さえ板
521…押さえ面
524…押さえ板駆動ロッド
526…押さえ板駆動部
540…型引張板(型部移動手段)
544…型引張板駆動ロッド(型部移動手段)
546…型引張板駆動部(型部移動手段)
580…離型用押出ブロック
581,582…板材
583…ロッド
584…押出ブロック移動部
630,640…制御部(圧力調整手段)
RM…樹脂材料
RB…樹脂ブロック
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