(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 27/04 20060101AFI20240701BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C03C27/04 B
H01L23/02 Z
H01L23/02 D
(21)【出願番号】P 2020163630
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】白神 徹
【審査官】安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-226978(JP,A)
【文献】特開2012-169068(JP,A)
【文献】特開2011-246320(JP,A)
【文献】特開2012-096930(JP,A)
【文献】特開2015-216322(JP,A)
【文献】特開2020-040863(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0047285(US,A1)
【文献】特開2018-199600(JP,A)
【文献】特開2021-62983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/04
H01L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板と、第二基板と、前記第一基板と前記第二基板とを接合する複数の封着層と、を備える接合体を製造する方法であって、
前記第一基板と前記第二基板との間に複数の封着材料を介在させるとともに、前記第一基板と前記第二基板とを重ね合わせることにより積層体を形成する積層工程と、前記積層体における前記複数の前記封着材料にレーザ光を照射することにより前記複数の前記封着層を形成する接合工程と、を備え、
前記積層体における前記複数の前記封着材料は、所定の配列パターンによって前記第一基板と前記第二基板との間に介在しており、
前記配列パターンは、前記複数の前記封着材料のうち、最も外側に位置する前記封着材料が属する外側グループと、前記外側グループに属する前記封着材料よりも内側に位置する前記封着材料が属する内側グループと、を含み、
前記内側グループは、第一内側グループと、第二内側グループと、第三内側グループと、を含み、
前記第一内側グループは、前記配列パターンの中心に重なるように配置される前記封着材料を含み、
前記第二内側グループは、前記第一内側グループに属する前記封着材料を囲むように外側に配置される複数の前記封着材料を含み、
前記第三内側グループは、前記第二内側グループに属する前記封着材料を囲むように外側に配置される複数の前記封着材料を含み、
前記接合工程は、前記内側グループに属する前記封着材料に前記レーザ光を照射して前記封着層を形成する第一接合工程と、前記第一接合工程後に、前記外側グループに属する前記封着材料に前記レーザ光を照射して前記封着層を形成する第二接合工程と、を含
み、
前記第一接合工程では、前記第三内側グループに属する前記封着材料に前記レーザ光を照射する場合に、前記第二内側グループにおいて最後に前記レーザ光を照射した前記封着材料と隣り合うことなく離れて位置する前記第三内側グループの前記封着材料に対して最初に前記レーザ光を照射することを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項2】
第一基板と、第二基板と、前記第一基板と前記第二基板とを接合する複数の封着層と、を備える接合体を製造する方法であって、
前記第一基板と前記第二基板との間に複数の封着材料を介在させるとともに、前記第一基板と前記第二基板とを重ね合わせることにより積層体を形成する積層工程と、前記積層体における前記複数の前記封着材料にレーザ光を照射することにより前記複数の前記封着層を形成する接合工程と、を備え、
前記積層体における前記複数の前記封着材料は、所定の配列パターンによって前記第一基板と前記第二基板との間に介在しており、
前記配列パターンは、前記複数の前記封着材料のうち、最も外側に位置する前記封着材料が属する外側グループと、前記外側グループに属する前記封着材料よりも内側に位置する前記封着材料が属する内側グループと、を含み、
前記内側グループは、第一内側グループと、第二内側グループと、第三内側グループと、第四内側グループと、を含み、
前記接合工程は、前記内側グループに属する前記封着材料に前記レーザ光を照射して前記封着層を形成する第一接合工程と、前記第一接合工程後に、前記外側グループに属する前記封着材料に前記レーザ光を照射して前記封着層を形成する第二接合工程と、を含み、
前記第一接合工程では、複数のレーザ照射装置を使用することにより、前記第一内側グループ乃至前記第四内側グループに属する前記封着材料に対して前記レーザ光を同時に照射することを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項3】
前記第一接合工程では、前記内側グループに属する前記封着材料のうち、前記配列パターンの中心に最も近い位置にある前記封着材料に対して最初に前記レーザ光を照射する請求項1
又は2に記載の接合体の製造方法。
【請求項4】
前記第二基板は、ガラス基板である請求項1から3のいずれか一項に記載の接合体の製造方法。
【請求項5】
前記接合工程では、前記積層体は、前記第一基板と前記第二基板とを押圧する支持装置によって支持され
ており、
前記支持装置は、前記第一基板を前記第二基板に押し付ける複数の押圧部材と、前記第一基板と前記押圧部材との間に配置される一枚の支持プレートと、を備え、
前記複数の前記押圧部材によって前記一枚の前記支持プレートを押圧することで、前記一枚の前記支持プレートは、前記第一基板を前記第二基板に押し付ける請求項1から4のいずれか一項に記載の接合体の製造方法。
【請求項6】
第一基板と、第二基板と、前記第一基板と前記第二基板とを接合する複数の封着層と、を備える接合体を製造する方法であって、
前記第一基板と前記第二基板との間に複数の封着材料を介在させるとともに、前記第一基板と前記第二基板とを重ね合わせることにより積層体を形成する積層工程と、前記積層体における前記複数の前記封着材料にレーザ光を照射することにより前記複数の前記封着層を形成する接合工程と、を備え、
前記積層体における前記複数の前記封着材料は、所定の配列パターンによって前記第一基板と前記第二基板との間に介在しており、
前記配列パターンは、前記複数の前記封着材料のうち、最も外側に位置する前記封着材料が属する外側グループと、前記外側グループに属する前記封着材料よりも内側に位置する前記封着材料が属する内側グループと、を含み、
前記接合工程は、前記内側グループに属する前記封着材料に前記レーザ光を照射して前記封着層を形成する第一接合工程と、前記第一接合工程後に、前記外側グループに属する前記封着材料に前記レーザ光を照射して前記封着層を形成する第二接合工程と、を含み、
前記接合工程では、前記積層体は、前記第一基板と前記第二基板とを押圧する支持装置によって支持されており、
前記支持装置は、前記第一基板を前記第二基板に押し付ける
複数の押圧部材と、前記第一基板と前記押圧部材との間に配置される
一枚の支持プレートと、を備え
、
前記複数の前記押圧部材によって前記一枚の前記支持プレートを押圧することで、前記一枚の前記支持プレートは、前記第一基板を前記第二基板に押し付けることを特徴とする接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を接合することによって接合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、LED素子その他の電子素子は、劣化防止のために気密パーケージ内に収容される。気密パッケージは、例えば第一基板(基材)に第二基板(ガラス基板)を接合することによる接合体として構成される。
【0003】
例えば特許文献1には、第一基板としての複数の容器と、第二基板としての複数のガラス蓋とを用意し、容器とガラス蓋との間に封着材料としてのガラスフリットを介在させ、このガラスフリットにレーザ光を照射することで封着層を形成し、容器とガラス蓋とを接合する気密パッケージの製造方法が開示されている。
【0004】
この製造方法では、まず、容器とガラス蓋とを重ね合わせ、第一の治具と第二の治具とによってこれらを保持する。第二の治具は、容器をガラス蓋に押し付けるプランジャを備えている。第二の治具のプランジャによって容器をガラス蓋に押し付けた状態で、その間に介在するガラスフリットにレーザ光を照射することで、容器とガラス蓋とを気密に封止する気密パッケージが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の製造方法では、複数の容器と複数のガラス蓋とを重ねてなる複数の積層体を第一の治具及び第二の治具により保持し、各積層体を個別に接合しているが、気密パッケージを効率良く量産するには、例えば、多数の容器を切り出すことが可能な第一基板と、多数のガラス蓋を切り出すことが可能な第二基板とを用意し、第一基板と第二基板とを接合した後に、その接合体を気密パッケージごとに切断する方法が考えられる。
【0007】
この場合、第一基板と第二基板との間には、多数の封着材料が介在することとなり、各封着材料に対して順番にレーザ光を照射する。
図12は、積層体LMにおいて、所定の配列パターンによって配列された封着材料6を、符号Bで示す矢印の順番で加熱する例を示す。
【0008】
積層体LMは、九行(M1~M9)九列(N1~N9)に配列された封着材料6を有する。この例では、複数の封着材料6のうち、最も外側に位置する封着材料6からレーザ光による加熱を開始する。すなわち、
図12において、第一行M1、第一列N1に位置する封着材料6を加熱した後、第一行M1に配列される他の封着材料6を第二列N2から第九列N9まで順次加熱する。その後、第二行M2に配列された封着材料6を、最も外側(第一列N1)に位置するものから順番に加熱する。第三行M3から第九行M9に配列される封着材料6についても同様に加熱する。全ての封着材料6を加熱することで接合体が完成する。
【0009】
封着材料は、レーザ光によって加熱されることで収縮する。本発明者は、上記のように接合体を製造する場合において、複数の封着材料を加熱していく間に、この収縮によって、既に接合している部分における第一基板と第二基板との間隔と、まだ接合していない部分における第一基板と第二基板との間隔とに違いが生じ、封着材料と各基板との間に位置ずれが生じることを見出した。この位置ずれが大きくなると、封着材料による接合部分に不良が発生することが判明した。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みて為されたものであり、接合体の接合部分における不良の発生を低減することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、第一基板と、第二基板と、前記第一基板と前記第二基板とを接合する複数の封着層と、を備える接合体を製造する方法であって、前記第一基板と前記第二基板との間に複数の封着材料を介在させるとともに、前記第一基板と前記第二基板とを重ね合わせることにより積層体を形成する積層工程と、前記積層体における前記複数の前記封着材料にレーザ光を照射することにより前記複数の前記封着層を形成する接合工程と、を備え、前記積層体における前記複数の前記封着材料は、所定の配列パターンによって前記第一基板と前記第二基板との間に介在しており、前記配列パターンは、前記複数の前記封着材料のうち、最も外側に位置する前記封着材料が属する外側グループと、前記外側グループに属する前記封着材料よりも内側に位置する前記封着材料が属する内側グループと、を含み、前記接合工程は、前記内側グループに属する前記封着材料に前記レーザ光を照射して前記封着層を形成する第一接合工程と、前記第一接合工程後に、前記外側グループに属する前記封着材料に前記レーザ光を照射して前記封着層を形成する第二接合工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
本方法によれば、第一接合工程において、外側グループに属する封着材料よりも先に、内側グループに属する封着材料にレーザ光を照射することで、この第一接合工程の実行中における封着材料の収縮による各基板の位置ずれを低減することができる。さらに、第一接合工程後の第二接合工程において、内側グループにおいて形成された封着層の収縮の影響を受けることなく、外側グループに属する封着材料を加熱することができる。これにより、内側グループに属する封着層及び外側グループに属する封着層のいずれにおいても、接合不良の発生を低減することが可能となる。
【0013】
本方法において、前記第一接合工程では、前記内側グループに属する前記封着材料のうち、前記配列パターンの中心に最も近い位置にある前記封着材料に対して最初に前記レーザ光を照射することが好ましい。
【0014】
このように、配列パターンの中心に最も近い封着材料から第一接合工程(レーザ光の照射)を開始することで、その後に行われる他の封着材料の加熱時においても、各基板の位置ずれの発生を好適に低減することができる。
【0015】
本方法において、前記配列パターンは、前記複数の封着材料を三行以上かつ三列以上で配列するものであってもよい。
【0016】
本方法において、前記第二基板は、ガラス基板であってもよい。
【0017】
本方法における前記接合工程では、前記積層体は、前記第一基板と前記第二基板とを押圧する支持装置によって支持されてもよい。これにより、封着材料を第一基板と第二基板とに密着させることができ、封着層における接合不良の発生をより効果的に低減することが可能となる。
【0018】
更に、前記支持装置は、前記第一基板を前記第二基板に押し付ける押圧部材と、前記第一基板と前記押圧部材との間に配置される支持プレートと、を備えてもよい。
【0019】
かかる構成によれば、支持装置は、押圧部材及び支持プレートによって第一基板を均等な力で押圧することができる。これにより第一基板及び第二基板の位置ずれによる封着層の接合不良の発生をより効果的に低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、接合体の接合部分における不良の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】
図1のII-II矢視線に係る断面図である。
【
図4】接合体の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図5】接合体の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図6】接合体の製造方法の一工程を示す平面図である。
【
図7】接合体の製造方法の他の例を示す平面図である。
【
図8】接合体の製造方法の他の例を示す平面図である。
【
図9】接合体の製造方法の他の例を示す平面図である。
【
図10】接合体の製造方法の他の例を示す平面図である。
【
図11】接合体の製造方法に使用される支持装置の他の例を示す断面図である。
【
図12】比較例に係る接合体の製造方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図11は、本発明に係る接合体の製造方法の一実施形態を示す。
【0023】
図1及び
図2は、本発明によって製造される接合体として、気密パッケージを例示する。接合体1は、基材となる第一基板2と、第一基板2に重ねられる第二基板3と、第一基板2と第二基板3とを接合する複数の封着層4と、第一基板2と第二基板3との間に収容される素子5と、を備える。
【0024】
第一基板2は、矩形状に構成されるが、この形状に限定されるものではない。第一基板2の他の形状としては、例えば多角形、円状などがあり得る。第一基板2は、素子5が設置される第一主面2aと、第一主面2aの反対側に位置する第二主面2bとを有する。第一主面2aは、素子5を収容可能な凹部を有していてもよい。
【0025】
第一基板2は、高熱伝導性基板、例えばシリコン基板により構成されるが、これらに限定されず、他の金属基板、セラミックス基板、半導体基板その他の各種基板により構成されてもよい。なお、第一基板2の厚みは、0.1~5.0mmの範囲内であるが、この範囲に限定されない。
【0026】
第一基板2の熱伝導率は、第二基板3の熱伝導率よりも高くてもよい。第一基板2の20℃における熱伝導率は、好ましくは10~500W/m・K、より好ましくは30~300W/m・K、更に好ましくは70~250W/m・K、特に好ましくは100~200W/m・Kであるが、この範囲に限定されるものではない。
【0027】
第二基板3は、例えば矩形状の透明なガラス基板により構成されるが、この形状に限定されるものではない。第二基板3の他の形状としては、例えば、多角形、円状などがあり得る。第二基板3は、第一主面3aと、第一主面3aの反対側に位置する第二主面3bとを有する。
【0028】
第二基板3を構成するガラスとしては、例えば、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス、低熱膨張係数を有する結晶化ガラスなどを用いることができる。第二基板3の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば0.01~2.0mmの範囲内のものが用いられる。第二基板3の20℃における熱伝導率は、好ましくは0.5~5W/m・Kであるが、この範囲に限定されない。
【0029】
複数の封着層4は、所定の配列パターンによって接合体1に形成されている。本実施形態では、三行三列の配列パターンにより、合計九個の封着層4が形成された接合体1を例示するが、封着層4の数及び配列パターンは、本実施形態に限定されない。
図1において、封着層4の配列パターン(行列配置)に関し、行番号M1~M3及び列番号N1~N3を記している。
【0030】
図1に示すように、封着層4の配列パターンは、複数の封着層4のうち、最も外側に位置する封着層4が属する外側グループOGと、この外側グループOGに属する封着層4よりも内側に位置する封着層4が属する内側グループIGとに分けられる。
【0031】
封着層4は、複数の封着材料を第一基板2と第二基板3との間に介在させ、当該封着材料にレーザ光を照射し、加熱により軟化流動させることによって形成される。
【0032】
封着材料として、種々の材料が使用可能である。その中でも、封着強度を高める観点から、ビスマス系ガラス粉末と耐火性フィラー粉末を含む複合材料(ガラスフリット)を用いることが好ましい。一般的に、ビスマス系ガラスの熱膨張係数は大きいため、耐火性フィラー粉末と混合すれば、封着層4の熱膨張係数が、第一基板2と第二基板3との熱膨張係数に整合し易くなる。その結果、第一基板2と第二基板3とを接合した後に、封着層4の領域に不当な応力が残留する事態が発生し難くなる。
【0033】
複合材料に占める耐火性フィラー粉末の含有割合が少なすぎると、前述の通り、封着層4の熱膨張係数が、第一基板2と第二基板3との熱膨張係数に整合し難くなることに加え、接合の際にガラスフリットの粘度が顕著に低くなり、既に接合している第一基板と第二基板との間隔と、まだ接合していない第一基板と第二基板との間隔に違いを生じさせ、封着材料と各基板との間に位置ずれが生じ得る原因となる。一方、複合材料に占める耐火性フィラー粉末の含有割合が多過ぎると、ビスマス系ガラス粉末の含有量が相対的に少なくなるため、レーザ封着前の封着材料の表面平滑性が低下して、接合精度が低下し易くなる。従って、複合材料として、55~100体積%のビスマス系ガラス粉末と0~45体積%の耐火性フィラー粉末を含有する複合材料を用いることが好ましく、60~99体積%のビスマス系ガラス粉末と1~40体積%の耐火性フィラー粉末を含有する複合材料を用いることがより好ましく、60~95体積%のビスマス系ガラス粉末と5~40体積%の耐火性フィラー粉末を含有する複合材料を用いることが更に好ましく、60~85体積%のビスマス系ガラス粉末と15~40体積%の耐火性フィラー粉末を含有する複合材料を用いることが特に好ましい。
【0034】
ビスマス系ガラスは、ガラス組成として、モル%で、Bi2O3 28~60%、B2O3 15~37%、ZnO 0~30%、CuO+MnO(CuOとMnOの合量) 1~40%を含有することが好ましい。各成分の含有範囲を上記のように限定した理由を以下に説明する。なお、ガラス組成範囲の説明において、%表示はモル%を指す。
【0035】
Bi2O3は、ガラスの軟化点を低下させるための主要成分であり、レーザ光を複合材料に照射することで、ガラスが軟化流動する際の粘度を調整する成分でもある。Bi2O3の含有量は、好ましくは28~60%、33~55%、特に35~45%である。Bi2O3の含有量が少な過ぎると、軟化点が高くなり過ぎて、ガラスの軟化流動性が低下し易くなる。一方、Bi2O3の含有量が多過ぎると、接合の際のガラスの粘度が顕著に低くなり、既に接合している第一基板と第二基板との間隔と、まだ接合していない第一基板と第二基板との間隔に違いを生じさせ、封着材料と各基板との間に位置ずれが生じ得る原因となる。また、接合の際にガラスが失透し易くなり、この失透に起因して、軟化流動性が低下し易くなる。
【0036】
B2O3は、ガラス形成成分として必須の成分である。B2O3の含有量は、好ましくは15~37%、19~33%、特に22~30%である。B2O3の含有量が少な過ぎると、ガラスネットワークが形成され難くなるため、ガラスが失透し易くなる。また、接合の際のガラスの粘度が低くなり、既に接合している第一基板と第二基板との間隔と、まだ接合していない第一基板と第二基板との間隔に違いを生じさせ、封着材料と各基板との間に位置ずれが生じ得る原因となる。一方、B2O3の含有量が多過ぎると、ガラスの粘性が高くなり、軟化流動性が低下し易くなる。
【0037】
ZnOは、ガラスの耐失透性を高める成分である。ZnOの含有量は、好ましくは0~30%、3~25%、5~22%、特に5~20%である。ZnOの含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスが崩れて、かえって耐失透性が低下し易くなる。
【0038】
CuOとMnOは、ガラスのレーザ吸収能を大幅に高める成分である。CuOとMnOの合量は、好ましくは1~40%、3~35%、10~30%、特に15~30%である。CuOとMnOの合量が少な過ぎると、レーザ吸収能が低下し易くなる。一方、CuOとMnOの合量が多過ぎると、軟化点が高くなり過ぎて、レーザ光を照射しても、ガラスが軟化流動し難くなる。またガラスが熱的に不安定になり、ガラスが失透し易くなる。なお、CuOの含有量は、好ましくは1~30%、特に10~25%である。MnOの含有量は、好ましくは0~25%、1~25%、特に3~15%である。
【0039】
また、ビスマス系ガラスだけでなく、銀リン酸系ガラス、テルル系ガラス等のガラス粉末を封着材料として使用することもできる。銀リン酸系ガラスとテルル系ガラスは、ビスマス系ガラスと比較して、低温で軟化流動し易く、レーザ光による加熱後に生じる熱歪みを低減することができる。更に、銀リン酸系ガラスとテルル系ガラスは、ビスマス系ガラスと同様に、耐火性フィラー粉末と混合すると、封着層4の機械的強度を高めることができ、且つ封着層4の熱膨張係数を低下させることができる。
【0040】
銀リン酸系ガラスは、ガラス組成として、モル%で、Ag2O 10~50%、P2O5 10~35%、ZnO 3~25%、遷移金属酸化物 0~30%を含有することが好ましい。
【0041】
テルル系ガラスは、ガラス組成として、モル%で、TeO2 30~80%、MoO3 5~50%、P2O5 0~15%、遷移金属酸化物(但し、MoO3を除く) 0~40%を含有することが好ましい。
【0042】
耐火性フィラー粉末としては、種々の材料が使用可能であるが、その中でも、コーディライト、ジルコン、酸化錫、酸化ニオブ、リン酸ジルコニウム系セラミック、ウイレマイト、β-ユークリプタイト、β-石英固溶体から選ばれる一種又は二種以上の材料により構成されることが好ましい。
【0043】
耐火性フィラー粉末の平均粒径D50は、好ましくは2μm未満、特に0.1μm以上、且つ1.5μm未満である。耐火性フィラー粉末の平均粒径D50が大き過ぎると、封着層4の表面平滑性が低下し易くなると共に、封着層4の平均厚みが大きくなり易く、結果として、接合の精度が低下し易くなる。ここで、平均粒径D50は、レーザ回折法で測定した値であって、レーザ回折法により測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して50%である粒径を意味する。
【0044】
耐火性フィラー粉末の99%粒径D99は、好ましくは5μm未満、4μm以下、特に0.3μm以上、且つ3μm以下である。耐火性フィラー粉末の99%粒径D99が大き過ぎると、封着層4の表面平滑性が低下し易くなると共に、封着層4の平均厚みが大きくなり易く、結果として、レーザ接合精度が低下し易くなる。ここで、99%粒径D99は、レーザ回折法で測定した値であって、レーザ回折法により測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して99%である粒径を意味する。
【0045】
封着材料の軟化点は、300℃以上550℃以下であることが好ましい。封着材料の軟化点は、マクロ型DTA装置で測定した際の第四変曲点に相当する。
【0046】
図1に示すように、封着層4は、素子5を収容する空間を接合するように、閉曲線状に構成されている。本発明において、「閉曲線」の用語は、曲線のみによって構成される形状のみならず、曲線と直線との組み合わせにより構成される形状、直線のみによって構成される形状(例えば四角形状その他の多角形状)を含む。
【0047】
封着層4の厚さは、1μm~20μmであることが好ましく、より好ましくは、3~8μmである。封着層4の幅寸法W1は、50~2000μmであることが好ましく、より好ましく100~1000μmである。
【0048】
素子5は、第一基板2の第一主面2aに搭載される。また、素子5は、第一基板2の第一主面2a、第二基板3の第一主面3a及び封着層4によって区画される空間(キャビティ)に配置される。素子5としては、深紫外LED(Light Emitting Diode)等の発光素子、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子、CCD(Charge Coupled Device)素子などの各種素子が使用され得る。
【0049】
以下、上記構成の接合体1を製造する方法について、
図3乃至
図6を参照しながら説明する。本方法は、第一基板2と第二基板3とを重ね合わせて積層体を形成する準備工程と、準備工程後に積層体における封着材料を加熱して第一基板2と第二基板3とを接合する接合工程と、を備える。
【0050】
準備工程において、複数の封着層4を形成するための複数の封着材料は、封着層4の配列パターンに対応するように、外側グループOG及び内側グループIGを含む配列パターンによって第二基板3の第一主面3aに形成される。
【0051】
図3において、第二基板3に形成される九個の封着材料6a~6iの配列パターンに関し、行番号M1~M3、列番号N1~N3を記している。以下の説明では、特定の封着材料6(6a~6i)の位置を、この行番号及び列番号を用いて説明する場合がある。
【0052】
準備工程は、第二基板3の第一主面3aに封着材料6a~6iを固定する固定工程と、固定工程後に第一基板2と第二基板3とを重ね合わせて積層体を形成する積層工程と、を備える。
【0053】
固定工程は、封着材料を第二基板3の第一主面3aに塗布する工程(塗布工程)と、塗布工程後に、封着材料を加熱する工程(加熱工程)とを備える。
【0054】
塗布工程では、例えばスクリーン印刷、ディスペンサ等により、ペースト状の封着材料を例えば四角形状の閉曲線を構成するように、第二基板3の第一主面3aに塗布する。封着材料は、通常、三本ローラー等により、上記の複合材料とビークルを混練することによりペースト状に構成される。ビークルは、通常、有機樹脂と溶剤を含む。有機樹脂は、ペーストの粘性を調整する目的で添加される。
【0055】
加熱工程では、電気炉等によって、第二基板3に塗布された封着材料を軟化温度以上に加熱する。この加熱工程により、有機樹脂を分解し、かつ封着材料に含まれるガラス粉末を軟化流動させることで、封着材料を第二基板3の第一主面3aに固着させることができる。この加熱工程では、電気炉等を使用することなく、レーザ光によって封着材料を加熱(焼成)してもよい。これにより、
図3に示すように、九個の封着材料6a~6iが第二基板3の第一主面3aに固定される。
【0056】
積層工程では、
図4に示す支持装置8を使用し、第一基板2と第二基板3とを重ね合わせることで積層体LMを構成する。
【0057】
支持装置8は、第一基板2及び第二基板3を保持する枠体9と、第一基板2を支持する第一支持具10と、第二基板3を支持する第二支持具11と、第一支持具10と第一基板2との間に介在する支持プレート12と、第一支持具10と第二支持具11との間に介在する中間部材13と、を主に備える。
【0058】
枠体9は、所定の厚さを有する矩形状の板部材により構成されるが、この形状に限定されるものではない。枠体9は、第一基板2及び第二基板3を収容することが可能な開口部9aを有する。
【0059】
第一支持具10は、支持プレート12を介して第一基板2を押圧する押圧部材14と、押圧部材14を保持する保持プレート15と、保持プレート15を支持する支持部材(以下「第一支持部材」という)16と、を備える。
【0060】
押圧部材14は、例えば複数のプランジャにより構成されるが、この構成に限定されるものではない。プランジャは、ばね部材を有するが、この構成に限定されない。押圧部材14は、例えば、空圧式のプランジャであってもよい。押圧部材14は、ばね部材により付勢されるロッド部14aと、ロッド部14a及びばね部材を支持する本体部14bと、を備える。
【0061】
保持プレート15は、押圧部材14の本体部14bを保持する保持孔15aと、ねじ部材等の固定部材17を挿通する孔15bとを有する。第一支持部材16は、開口部16aと、固定部材17を挿入するためのねじ孔16bと、第一支持部材16に中間部材13を固定するための固定部材18を挿通するための孔16cと、を備える。保持プレート15は、孔15bと、第一支持部材16のねじ孔16bとを一致させ、これらの孔15b,16bに固定部材17を挿入することにより、第一支持部材16に固定されている。
【0062】
支持プレート12は、第一基板2と押圧部材14のロッド部14aとの間に介在することで、第一基板2を支持する。支持プレート12は、第一基板2の第二主面2bに接触するように、この第二主面2bよりも大きな面積を有することが好ましい。支持プレート12は、ステンレス鋼その他の金属プレートにより構成されるが、支持プレート12の材質は、本実施形態に限定されない。
【0063】
第二支持具11は、第二基板3及び枠体9を支持する支持基板19と、支持基板19を支持する支持部材(以下「第二支持部材」という)20と、を備える。
【0064】
支持基板19は、接合工程においてレーザ光を透過させるために、例えば透明なガラス基板により構成される。第二支持部材20は、支持基板19を収容する凹部20aと、レーザ光を通過させるための開口部20bと、固定部材21を挿通するための孔20cと、を有する。
【0065】
中間部材13は、所定の厚さを有する矩形状の板部材により構成されるが、この形状に限定されない。中間部材13は、第二支持具11の支持基板19及び枠体9を収容可能な開口部13aと、固定部材18,21と係合するねじ孔13bと、を有する。開口部13aは、中間部材13の厚さ方向に貫通している。また、ねじ孔13bは、中間部材13の厚さ方向に貫通している。
【0066】
図4に示すように、積層工程では、まず、第一基板2の第一主面2aと、第二基板3の第一主面3aとが対向するように、第一基板2と第二基板3とを重ね合わせる。なお、第一基板2の第一主面2aには、予め素子5が設置されている。
【0067】
その後、第一基板2及び第二基板3を枠体9の開口部9aに挿入する。これにより、枠体9は、第一基板2及び第二基板3を保持する。なお、中間部材13は、固定部材21によって第二支持具11の第二支持部材20に固定されている。
【0068】
次に、第二支持具11に係る第二支持部材20の凹部20aに枠体9を挿入する。これにより、枠体9及び第二基板3は、支持基板19によって支持される。その後、支持プレート12を第二支持部材20の凹部20aに挿入する。これにより、支持プレート12は、枠体9に保持されている第一基板2の第二主面2bに接触する。
【0069】
その後、第一支持具10を第二支持具11に重ね合わせ、固定部材18によって第一支持部材16の孔16cと中間部材13のねじ孔13bとに挿入し、第一支持具10と中間部材13とを連結する。
【0070】
この場合において、押圧部材14のロッド部14aが支持プレート12に接触する。これにより、支持プレート12はロッド部14aによって押圧される。支持プレート12は、押圧部材14の押圧力によって第一基板2の第二主面2bを押圧し、第一基板2を第二基板3に押し付ける。
【0071】
このように、積層工程では、支持装置8の第一支持具10及び第二支持具11によって、第一基板2及び第二基板3を重ねてなる積層体LMを挟んだ状態となる。しかも、支持装置8は、押圧部材14の押圧力によって、第一基板2と第二基板3との間に介在する封着材料6a~6iを第一基板2及び第二基板3に密着させた状態で、積層体LMを支持することなる。
【0072】
図5に示すように、接合工程では、レーザ照射装置7からレーザ光Lを積層体LMの封着材料6a~6iに照射することにより、この封着材料6a~6iを加熱する(加熱工程)。レーザ光Lは、第二支持具11の支持基板19及び第二基板3を透過して封着材料6a~6iに照射される。接合工程では、レーザ光Lの照射により封着材料6a~6iの軟化点以上の温度又は封着材料6a~6iが軟化流動する温度で封着材料6a~6iを加熱する。
【0073】
レーザ光Lの波長は、600~1600nmであることが好ましい。使用されるレーザとしては、半導体レーザが好適に使用されるが、これに限らず、YAGレーザ、グリーンレーザ、超短パルスレーザ等の各種レーザを使用してもよい。
【0074】
接合工程は、内側グループIGに属する封着材料6aにレーザ光Lを照射して封着層4を形成する第一接合工程と、第一接合工程後に外側グループOGに属する封着材料6b~6iにレーザ光Lを照射して封着層を形成する第二接合工程と、を含む。
【0075】
第一接合工程では、配列パターンの内側グループIGにおいて、中心Oと重なる位置(第二行M2、第二列N2の位置)にある封着材料6aに対してレーザ光Lを照射する。
図6において矢印Aで示すように、レーザ光Lは、封着材料6aの閉曲線形状の周方向に沿って周回するように走査される。この場合におけるレーザ光Lの周回数は、2~500であることが好ましい。
【0076】
第一接合工程においてレーザ光Lによって加熱されることで、封着材料6aは、そのガラス成分が軟化流動し、第一基板2に融着する。レーザ光Lの照射が終了し、冷却される過程で、封着材料6aが固着することで、第一基板2と第二基板3とを接合するとともに、素子5を気密に封着する閉曲線状の封着層4が形成される。
【0077】
封着材料6aに係る封着層4が形成されると、
図6において矢印Bによって示す順番で、第二接合工程が実行される。
【0078】
すなわち、第二接合工程では、配列パターンの外側グループOGにおいて、内側グループIGに属していた封着材料6aと隣り合う(直近の)位置(第一行M1、第二列N2の位置)にある封着材料6bに対してレーザ光Lが照射される。この封着材料6bの加熱が終了すると、次に、この封着材料6bと隣り合う位置(第一行M1、第三列N3の位置)にある封着材料6cにレーザ光Lが照射される。その後、残りの封着材料6d~6iに対して順番に、レーザ光Lが照射される。外側グループOGに属する全ての封着材料6b~6iを加熱し、封着層4を形成することで、第二接合工程が終了する。以上により、複数の封着層4を有する接合体1が製造される。
【0079】
図7乃至
図10は、接合工程の他の例を示す。
図6に示した例では、九個の封着材料6a~6iを三行三列で配列した積層体LMを示したが、封着材料6の数は、この例より多くてもよい。
【0080】
図7では、七行(M1~M7)七列(N1~N7)に配列された合計四十九個の封着材料6の配列パターンを示している。この場合において、外側グループOGには二十四個の封着材料6が属し、内側グループIG1~IG3には二十五個の封着材料6が属している。本例において、内側グループIG1~IG3は、配列パターンの中心Oに重なるように配置される封着材料6aが属する第一内側グループIG1と、第一内側グループIG1を囲むように外側に設定される第二内側グループIG2と、第二内側グループIG2を囲むように外側に設定される第三内側グループIG3と、を含む。
【0081】
この例において接合体1を製造する場合、第一接合工程では、第一内側グループIG1において、配列パターンの中心Oに重なる位置(第四行M4、第四列N4の位置)にある一個の封着材料6aに対して最初にレーザ光Lを照射する。この封着材料6aの加熱が終了すると、第二内側グループIG2に属し、かつ第一内側グループIG1の封着材料6aと隣り合う位置(第三行M3、第四列N4の位置)にある封着材料6にレーザ光Lが照射される。その後、この封着材料6と隣り合う位置(第三行M3、第五列N5の位置)にある封着材料6にレーザ光Lが照射される。その後、第二内側グループIG2に属する残りの封着材料6に対して順番にレーザ光Lが照射される。
【0082】
第二内側グループIG2に属する封着材料6の加熱が終了すると、第三内側グループIG3に属する封着材料6が加熱される。この場合において、第三内側グループIG3において最初に加熱される封着材料6(第二行M2、第三列N3に位置する封着材料)は、第二内側グループIG2において最後に加熱された封着材料6(第三行M3、第三列N3に位置する封着材料)と隣り合う位置にある。
【0083】
第三内側グループIG3に属する封着材料6の加熱が終了すると、第二接合工程が実行される。この場合において、第二接合工程で最初に加熱される封着材料6(第一行M1、第二列N2の位置にある封着材料)は、第三内側グループIG3において最後に加熱された封着材料6(第二行M2、第二列N2に位置する封着材料)と隣り合う位置にある。外側グループOGに属する封着材料6を順番に加熱し、全ての封着材料6の加熱が終了すると、第二接合工程が終了する。
【0084】
図8に示す例では、第一接合工程において、配列パターンの中心Oに重なる位置(第四行M4、第四列N4)にある一個の封着材料6a(第一内側グループIG1に属する封着材料)に対して最初にレーザ光Lを照射した後、この封着材料6aを囲むように外側に配置されている八個の封着材料6(第二内側グループIG2に属する封着材料)をレーザ光Lによって順番に加熱する。
【0085】
その後、この八個の封着材料6の囲むように外側に配置されている十六個の封着材料6(第三内側グループIG3に属する封着材料)をレーザ光Lによって順番に加熱する。
【0086】
この場合において、第三内側グループIG3において最初に加熱される封着材料6x(第六行M6、第六列N6の位置にある封着材料)は、第二内側グループIG2において最後に加熱された封着材料6i(第三行M3、第三列N3の位置にある封着材料)と隣り合っておらず、離れた位置にある。このことにより、第一基板2と第二基板3の間隔の違いが発生することを緩和することができる。
【0087】
また、第三内側グループIG3において最後に加熱される封着材料6y(第五行M5、第六列N6の位置にある封着材料)は、第二接合工程の実行時に外側グループOGにおいて最初に加熱される封着材料6z(第一行M1、第一列N1の位置にある封着材料)と隣り合っておらず、離れた位置にある。このことにより、第一基板2と第二基板3の間隔の違いが発生することを緩和することができる。
【0088】
図9に示す配列パターンは、八行(M1~M8)八列(N1~N8)で、合計六十四個の封着材料6が配列されたものである。上記の
図7の例では、配列パターンは、その中心Oに重なる一個の封着材料6aを有していたが、本例に係る配列パターンは、その中心Oに最も近い位置に四個の封着材料6j~6mを有する。
【0089】
配列パターンは、これら四個の封着材料6j~6mが属する第一内側グループIG1と、この第一内側グループIG1を囲むように外側に配置される十二個の封着材料6が属する第二内側グループIG2と、第二内側グループIG2を囲むように外側に配置される二十個の封着材料6が属する第三内側グループIG3と、二十八個の封着材料6が属する外側グループOGと、を含む。
【0090】
本例のように、配列パターンの中心Oに最も近い位置にある封着材料6j~6mが複数存在する場合には、そのうちの任意の一個の封着材料6jに、第一接合工程において最初にレーザ光Lを照射すればよい。
【0091】
図10に示す配列パターンの例(八行八列の行列配置)では、内側グループを、四つのグループ(第一内側グループ乃至第四内側グループ)IG1~IG4に区分けしている。各内側グループIG1~IG4は、配列パターンの中心Oに対して対称となるように設定されている。各内側グループIG1~IG4は、それぞれ九個の封着材料6を含む。
【0092】
この場合において、第一接合工程では、各内側グループIG1~IG4に属する任意の一個の封着材料6に対して最初にレーザ光Lを照射すればよい。あるいは、複数のレーザ照射装置7を使用することにより、各内側グループIG1~IG4に属する封着材料6に対して同時にレーザ光Lを照射してもよい。
【0093】
図11は、支持装置の他の例を示す。この例における支持装置8は、支持プレート12の構成が
図4及び
図5に例示したものと異なる。
図4及び
図5に示した支持装置8は、一枚の支持プレート12を備えていたが、本実施形態に係る支持装置8は、複数の支持プレート12a~12cを備えている。
【0094】
このように複数の支持プレート12a~12cによって第一基板2を押圧することにより、各封着材料6の加熱時の収縮による基板2,3の位置ずれを効果的に低減することができる。
【0095】
以上説明した本実施形態に係る接合体1の製造方法によれば、第一接合工程において、外側グループOGに属する封着材料6よりも先に、内側グループIG(IG1~IG4)に属する封着材料6にレーザ光Lを照射することで、この第一接合工程中における封着材料6の収縮による各基板2,3の位置ずれを低減することができる。
【0096】
さらに、第一接合工程後の第二接合工程において、外側グループOGに属する封着材料6にレーザ光Lを照射することで、内側グループIG(IG1~IG4)において形成された封着層4の収縮の影響を受けることなく、外側グループOGに属する封着材料6を加熱することができる。これにより、内側グループIG(IG1~IG4)に属する封着層4及び外側グループOGに属する封着層4のいずれにおいても接合不良の発生を低減することが可能となる。
【0097】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0098】
上記の実施形態において、三行以上、三列以上で配列された複数の封着層4を含む接合体1を例示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば二行であり、かつ三列以上に配列された封着層4を接合体1に形成する場合にも本発明を適用できる。
【0099】
この場合において、最も外側の列に位置する封着材料6を外側グループOGに配属し、この外側グループOGよりも内側に位置する封着材料6を内側グループIGに配属することで、接合不良のない接合体1を製造することが可能である。同様に、三行以上であり、かつ二列に配列された封着層4を接合体1に形成する場合にも、本発明を適用することができる。
【0100】
上記の実施形態では、接合体1の一例として素子5を含む気密パッケージを例示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。本発明は、例えば第一基板2と第二基板3との間に機能性膜等を有する接合体や、第二基板3がダイヤフラムとして機能するマイクロポンプ等を製造する場合にも適用可能である。
【0101】
上記の実施形態では、第一基板2として高熱伝導性基板を例示したが、本発明はこの構成に限定されない。第一基板2は、ガラス基板その他の基板により構成されてもよい。
【実施例】
【0102】
以下、本発明に係る実施例について説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0103】
本発明者は、本発明の効果を確認するための試験を行った。この試験では、第一基板と第二基板との間に複数の封着材料を介在させ、複数の積層体(実施例及び比較例)を用意し、各封着材料をレーザ光によって加熱することで、第一基板と第二基板とを接合した。
【0104】
実施例及び比較例に使用された第一基板は、矩形状のシリコン基板である。この第一基板の厚さは、0.4mmである。実施例及び比較例に使用された第二基板は、ホウケイ酸ガラスにより構成される矩形状のガラス基板である。この第二基板の厚さは、0.2mmである。
【0105】
実施例及び比較例に使用された封着材料は、ビスマス系ガラス粉末と耐火性フィラー粉末とを含む複合材料(ガラスフリット)である。なお、実施例及び比較例に使用した封着材料は同一である。封着材料の構成と特性を表1に示す。
【表1】
【0106】
封着材料は、以下のようにして第二基板に形成した。まず、封着材料とビークル(樹脂はエチルセルロース、溶剤はターピネオール、により構成されたもの)を、重量比60%対40%で混合し、三本ローラーを用いて混錬し、ペーストを得た。その後、スクリーン印刷法により、実施例及び比較例に係る四角形の閉曲線状のペーストを塗布した第二基板を得た。なお、実施例及び比較例で第二基板上に塗布したペーストの形状(幅、厚み)は同一であった。
【0107】
その後、ペーストを塗布した第二基板を、電気炉で480℃20分間加熱して、ガラス基板上に四角形の閉曲線状の封着材料を形成した。実施例及び比較例に係る第二基板には、九行九列の配列パターンで、合計八十一個の封着材料を形成した。その後、封着材料が形成された第二基板を第一基板の所定の位置に被せて積層体を構成し、この積層体を上記の支持装置に取り付けた。なお、実施例及び比較例で第二基板上に形成した封着材料の形状(幅、厚み)は同一であった。
【0108】
その後、支持装置に支持されている積層体の封着材料に対し、波長808nmの近赤外線半導体レーザによるレーザ光を封着材料の周方向に沿って2回周回(走査)させて当該封着材料を加熱することで封着層を形成し、第一基板と第二基板とを接合した。
【0109】
実施例に係る封着材料へのレーザ光の照射の順番は、
図7の例と同じ態様とした。
【0110】
比較例に係る封着材料については、
図12に示す矢印Bの順番でレーザ光を照射した。すなわち、比較例に係る積層体LMに配列される九行九列の封着材料6のうち、最も外側の位置、すなわち第一行M1、第一列N1の位置にある封着材料6に対して最初にレーザ光を照射し、加熱を行った。その後、第一行M1に配列されている封着材料6を第二列N2から第九列N9まで順番に加熱した。第一行M1に位置する封着材料6の加熱が終了すると、第二行M2、第一列N1の位置にある封着材料6にレーザ光を照射して加熱した。その後、第二行M2に位置する封着材料6に対して、第二列N2から第九列N9まで順番にレーザ光を照射した。同様に、第三行M3から第九行M9に配列される封着材料6についても、第一列N1から第九列N9に向かって順番にレーザ光を照射した。全ての封着材料6を加熱し、比較例に係る接合体を作製した。
【0111】
作製した実施例及び比較例の接合体の気密信頼性を、PCT(Pressure Cooker Test)による加速劣化試験で評価した。具体的には、上記で製造した接合体を、121℃、2気圧、相対湿度100%の環境下で24時間保持した後、光学顕微鏡(100倍)を用いて接合体の封着層の近傍を観察した。この観察により、封着層による接合不良の有無についての評価を行った。
【0112】
試験の結果、実施例に係る接合体では、全ての封着層について、接合不良は発生していなかった。一方、比較例に係る接合体については、約30%の封着層に接合不良が発生した。
【符号の説明】
【0113】
1 接合体
2 第一基板
3 第二基板
4 封着層
6 封着材料
6a 配列パターン中心に最も近い位置にある封着材料
6j 配列パターン中心に最も近い位置にある封着材料
6k 配列パターン中心に最も近い位置にある封着材料
6l 配列パターン中心に最も近い位置にある封着材料
6m 配列パターン中心に最も近い位置にある封着材料
8 支持装置
11 支持プレート
IG 内側グループ
IG1 第一内側グループ
IG2 第二内側グループ
IG3 第三内側グループ
IG4 第四内側グループ
L レーザ光
LM 積層体
O 配列パターンの中心
OG 外側グループ