IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

特許7511816圧電振動子、圧電発振器及び圧電振動子の製造方法
<>
  • 特許-圧電振動子、圧電発振器及び圧電振動子の製造方法 図1
  • 特許-圧電振動子、圧電発振器及び圧電振動子の製造方法 図2
  • 特許-圧電振動子、圧電発振器及び圧電振動子の製造方法 図3
  • 特許-圧電振動子、圧電発振器及び圧電振動子の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】圧電振動子、圧電発振器及び圧電振動子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/02 20060101AFI20240701BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20240701BHJP
   H01L 23/20 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H03H3/02 B
H01L23/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021131528
(22)【出願日】2021-08-12
(65)【公開番号】P2023025995
(43)【公開日】2023-02-24
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕之
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-137025(JP,A)
【文献】特開昭56-083048(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110727(WO,A1)
【文献】特開2009-100213(JP,A)
【文献】特開2014-197732(JP,A)
【文献】特開2016-225738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B5/30-H03B5/42
H03H3/007-H03H3/10,H03H9/00-H03H9/76
H01L21/54-H01L23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電片と、前記圧電片における互いに対向する主面に設けられた励振電極とを有する圧電振動素子と、
第1ベース部材と、前記第1ベース部材に第1接合材を介在して接合された第1蓋部材とを有し、前記第1ベース部材と前記第1蓋部材との間の第1内部空間に、前記圧電振動素子が収容された第1パッケージ部材と、
第2ベース部材と、前記第2ベース部材に第2接合材を介在して接合された第2蓋部材とを有し、前記第2ベース部材と前記第2蓋部材との間の第2内部空間に、前記第1パッケージ部材が収容された第2パッケージ部材と、
を備え、
前記第2内部空間における前記第2蓋部材と前記第1蓋部材との間には、不活性ガスが設けられ、
前記第2パッケージ部材の外部の空気の気圧Pexと、前記第2内部空間における前記第2蓋部材と前記第1蓋部材との間の気圧P2とは、
Pex<P2
の関係を有
前記第1接合材及び前記第2接合材は、いずれも樹脂接合材である、
圧電振動子。
【請求項2】
前記気圧P2と、前記第1内部空間における気圧P1とは、
P2≧P1
の関係を有する、請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項3】
前記不活性ガスは窒素である、請求項1又は2に記載の圧電振動子。
【請求項4】
前記第2内部空間において、前記第2ベース部材の上に電子部品が搭載されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の圧電振動子。
【請求項5】
前記圧電片は、水晶片であり、
前記圧電振動素子は、水晶振動素子である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の圧電振動子。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の圧電振動子と、
前記第2内部空間における前記第2蓋部材と前記第1蓋部材との間に収容された周辺回路と
を備える、圧電発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子、圧電発振器及び圧電振動子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発振装置や帯域フィルタなどに用いられる圧電振動子が知られている。この圧電振動子は、ベース部材と、ベース部材に搭載された圧電振動素子と、ベース部材に接合されて圧電振動素子を内部空間に封止する蓋部材とを備えている。一般に、圧電振動素子が封止された内部空間に水蒸気が侵入すると、圧電振動素子が劣化することから、圧電振動子には耐湿性が求められる。
【0003】
また、例えば、引用文献1のような有機発光素子の技術分野においては、有機発光素子が形成された基板と、基板と接着することによって気密性を得るための第1と第2の封止キャップとを備え、第1の封止キャップを覆うように第2の封止キャップが配置され、第1の封止キャップの接着部と第2の封止キャップの接着部とが互いに接していない構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-8854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、圧電振動子において引用文献1に記載の構造を採用したとしても、外気からの水蒸気の侵入を十分に抑制することができず、経時的に圧電振動素子が劣化していく可能性がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、耐湿性の向上を図ることができる圧電振動子、圧電発振器及び圧電振動子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る圧電振動子は、圧電片と、圧電片における互いに対向する主面に設けられた励振電極とを有する圧電振動素子と、第1ベース部材と、第1ベース部材に第1接合材を介在して接合された第1蓋部材とを有し、第1ベース部材と第1蓋部材との間の第1内部空間に、圧電振動素子が収容された第1パッケージ部材と、第2ベース部材と、第2ベース部材に第2接合材を介在して接合された第2蓋部材とを有し、第2ベース部材と第2蓋部材との間の第2内部空間に、第1パッケージ部材が収容された第2パッケージ部材と、を備え、第2内部空間における第2蓋部材と第1蓋部材との間には、不活性ガスが設けられ、第2パッケージ部材の外部の気圧Pexと、第2内部空間における第2蓋部材と第1蓋部材との間の気圧P2とは、Pex<P2の関係を有する。
【0008】
本発明の他の一態様に係る圧電振動子の製造方法は、圧電片と、圧電片における互いに対向する主面に設けられた励振電極とを有する圧電振動素子を用意することと、記圧電振動素子を第1ベース部材に搭載することと、第1ベース部材に第1接合材を介在して第1蓋部材を接合して、第1ベース部材と第1蓋部材との間の第1内部空間に圧電振動素子が収容された第1パッケージ部材を形成することと、第2ベース部材に第2接合材を介在して第2蓋部材を接合して、第2ベース部材と第2蓋部材との間の第2内部空間に第1パッケージ部材が収容された第2パッケージ部材を形成することと、を含み、第2内部空間における第2蓋部材と第1蓋部材との間に、不活性ガスが設けられ、第2パッケージ部材の外部の気圧Pexと、第2内部空間における第2蓋部材と第1蓋部材との間の気圧P2とは、Pex<P2の関係を有する。
【0009】
本発明によれば、耐湿性の向上を図ることができる圧電振動子、圧電発振器及び圧電振動子の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る圧電振動子の分解斜視図である。
図2図2は、図1に示した圧電振動子のII-II線に沿った断面図である。
図3図3は、第1パッケージ部材の分解斜視図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る圧電振動子の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施の形態に限定して解するべきではない。
【0012】
図1図2及び図3を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る圧電振動子を説明する。この圧電振動子は、後述の本発明の一実施形態に係る圧電振動子の製造方法を適用して製造されたものである。ここで、図1は、本発明の一実施形態に係る圧電振動子の分解斜視図であり、図2図1に示した圧電振動子のII-II線に沿った断面図であり、図3は第1パッケージ部材の分解斜視図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る圧電振動子1において、圧電振動素子102は、第1ベース部材151及び第1蓋部材140を含む第1パッケージ部材100に収容される。さらに、圧電振動子1において、第1パッケージ部材100は、第2蓋部材210及び第2ベース部材220を含む第2パッケージ部材200に収容される。すなわち、圧電振動子1は、圧電振動素子102を2つのパッケージで封止する二重封止構造となっている。第2パッケージ部材200には電子部品230も収容されている。
【0014】
図2に示すように、第1パッケージ部材100は、第1蓋部材140と第1ベース部材151との間の第1内部空間101に、圧電振動素子102を収容する。図1及び図2に示した例では、第1ベース部材151が平板状を成しており、第1蓋部材140の凹部に圧電振動素子102が収容されている。但し、圧電振動素子102のうち少なくとも励振される部分が第1パッケージ部材100に収容されれば、第1ベース部材151及び第1蓋部材140の形状は上記に限定されるものではない。例えば、第1ベース部材151は、第1蓋部材140の側に、圧電振動素子102の少なくとも一部を収容する凹部を有してもよい。
【0015】
圧電振動素子102は、圧電効果により電気エネルギーと機械エネルギーとを変換可能な電気機械エネルギー変換素子である。圧電振動素子102は、圧電片110と、圧電片110に形成された第1励振電極120及び第2励振電極130とを含む。
【0016】
圧電振動素子102の材料は特に限定されるものではない。例えば、圧電振動素子102は、ATカットの水晶基板(水晶片)である圧電片110を有する水晶振動素子である。ATカットの水晶基板は、水晶結晶の結晶軸であるX軸、Y軸、Z軸のうち、Y軸及びZ軸をX軸の周りにY軸からZ軸の方向に35度15分±1分30秒回転させた軸をそれぞれY’軸及びZ’軸とした場合、X軸及びZ’軸によって特定される面(以下、「XZ’面」と呼ぶ。他の軸によって特定される面についても同様である。)と平行な面を主面として切り出されたものである。図3に示す例では、ATカットの水晶基板である圧電片110は、X軸方向に平行な長手方向と、Z’軸方向に平行な短手方向と、Y’軸方向に平行な厚さ方向とを有しており、XZ’面において略矩形形状をなしている。ATカットの水晶基板を用いた水晶振動素子は、広い温度範囲で高い周波数安定性を有する。また、ATカットの水晶基板を用いた水晶振動素子の主要振動は、厚みすべり振動モード(Thickness Shear Vibration Mode)である。
【0017】
なお、本実施形態に係る圧電片110はX軸方向に平行な長手方向を有するATカット水晶基板に限定されるものではない。圧電片110は、例えば、X軸方向に平行な短手方向と、Z’軸方向に平行な長手方向とを有するATカット水晶基板を適用してもよいし、ATカット以外の異なるカットの水晶基板であってもよいし、水晶以外のセラミックなどの圧電材料であってもよい。
【0018】
第1励振電極120は、圧電片110の第1面112(Y’軸正方向側のXZ’面)に形成され、第2励振電極130は、圧電片110の第1面112とは反対の第2面114(すなわち、Y’軸負方向側のXZ’面)に形成されている。第1及び第2励振電極120,130は一対の電極であり、Y’軸方向において互いに重なっている。
【0019】
圧電片110には、第1励振電極120に引出電極122を介して電気的に接続された接続電極124と、第2励振電極130に引出電極132を介して電気的に接続された接続電極134とが形成されている。具体的には、引出電極122は、圧電片110の第1面112において第1励振電極120から、圧電片110のZ’軸負方向側端部に向かって引き出され、圧電片110のZ’軸負方向側の側面上を引き回されて、圧電片110の第2面114に形成された接続電極124に接続されている。他方、引出電極132は、圧電片110の第2面114において第2励振電極130から、圧電片110のZ’軸負方向側端部に向かって引き出され、圧電片110の第2面114に形成された接続電極134に接続されている。接続電極124,134は、圧電片110のZ’軸負方向側の端部に沿って配置される。なお、本実施形態において、接続電極124,134及び引出電極122,132の配置やパターン形状は限定されるものではなく、他の部材との干渉を考慮して適宜変更することができる。
【0020】
第1及び第2励振電極120,130を含む上記各電極の材料は限定されるものではない。例えば、上記各電極は、下地層としてクロム(Cr)層を有し、表面層として金(Au)層を有してもよい。
【0021】
第1ベース部材151は、Y’軸方向において互いに対向する第1面152及び第2面154を有する板状の絶縁体である。第1ベース部材151は、例えば絶縁性セラミック(アルミナなど)の焼結材である。リフロー等の熱履歴によって第1ベース部材151から圧電振動素子102に作用する熱応力を抑制する観点から、第1ベース部材151は耐熱性材料によって構成されることが好ましい。第1ベース部材151は、圧電片110に近い熱膨張率を有する材料によって設けられてもよい。第1ベース部材151の第1面152には、圧電振動素子102が搭載される。図3に示す例では、第1ベース部材151は、X軸方向に平行な長手方向と、Z’軸方向に平行な短手方向と、Y’軸方向に平行な厚さ方向を有しており、XZ’面において略矩形形状をなしている。第1ベース部材151は、例えば単層の絶縁性セラミックグリーンシートを焼成することによって形成されてもよく、例えば複数の絶縁性セラミックグリーンシートを積層して焼成することによって形成されてもよい。あるいは、第1ベース部材151は、ガラス材料又は水晶材料で形成されてもよい。第1ベース部材151は、単層であっても複数層であってもよく、複数層である場合、第1ベース部材151の第1面152側の最表層には、絶縁層が形成される。また、第1ベース部材151は、平板な板状をなしてもよく、第1蓋部材140に対向する向きに開口した凹状をなしてもよい。第1ベース部材151の第1面112及び第2面114は、本発明に係る「圧電片における互いに対向する主面」の一例に相当する。
【0022】
第1蓋部材140は、天壁部141と、天壁部141の外縁部から第1ベース部材151に向かって延出する側壁部142とを有している。天壁部141は圧電振動素子102を挟んで第1ベース部材151と対向し、側壁部142はXZ’面において圧電振動素子102を囲んでいる。第1蓋部材140の材質は、望ましくは導電材料であり、さらに望ましくは気密性の高い金属材料である。第1蓋部材140が導電材料で構成されることによって、第1内部空間101への電磁波の出入りを低減する電磁シールド機能が第1蓋部材140に付与される。熱応力の発生を抑制する観点から、第1蓋部材140の材質は、第1ベース部材151に近い熱膨張率を有する材料であることが望ましく、例えば常温付近での熱膨張率がガラスやセラミックと広い温度範囲で一致するFe-Ni-Co系合金である。
【0023】
樹脂接合材190は、第1ベース部材151と第1蓋部材140とを接合し、第1内部空間101を封止する。樹脂接合材190は、第1ベース部材151の外縁部の全周に亘って枠状に設けられており、第1蓋部材140の側壁部142の先端部と第1ベース部材151の第1面152との間に介在している。樹脂接合材190は、例えば、エポキシ系、ビニル系、アクリル系、ウレタン系又はシリコーン系の有機系接着剤によって設けられる。樹脂接合材190は、本発明に係る「第1接合材」の一例に相当する。第1接合材は、有機系接着剤によって設けられた樹脂接合材に限定されるものではなく、水ガラスなどを含むケイ素系接着剤や、セメントなどを含むカルシウム系接着剤などの無機系接着剤によって設けられてもよい。第1接合材は、低融点ガラス(例えば鉛ホウ酸系や錫リン酸系等)であってもよい。
【0024】
図2に示す例では、圧電振動素子102は、その長手方向における一方端(導電性保持部材180,182側の端部)が固定端であり、その長手方向における他方端が自由端となっている。なお、変形例として、圧電振動素子102は、長手方向の両端において第1ベース部材151に固定されていてもよい。導電性保持部材180,182は、第1ベース部材151と圧電振動素子102とを電気的に接続するとともに、圧電振動素子102を機械的に保持している。
【0025】
導電性保持部材180,182は、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂等を含む導電性接着剤の硬化物である。導電性保持部材180,182の主成分は、例えばシリコーン樹脂である。導電性保持部材180,182は導電性粒子を含んでおり、当該導電性粒子としては例えば銀(Ag)を含む金属粒子が用いられる。
【0026】
導電性保持部材180,182の主成分は、硬化性樹脂であればシリコーン樹脂に限定されるものではなく、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂などであってもよい。また、導電性保持部材180,182の導電性は、銀粒子による付与に限定されるものではなく、その他の金属、導電性セラミック、導電性有機材料などによって付与されてもよい。導電性保持部材180,182の主成分が導電性高分子であってもよい。
【0027】
図3に示すように、第1ベース部材151は、第1面152に形成された接続電極160,162と、接続電極160,162から第1面(第1ベース部材)152の外縁に向かって引き出される引出電極164,166とを含む。接続電極160,162は、圧電振動素子102が第1ベース部材151の第1面152の略中央に配置することができるように、第1ベース部材151の外縁よりも内側に配置されている。
【0028】
接続電極160には、導電性保持部材180を介して、圧電振動素子102の接続電極124が接続される。接続電極162には、導電性保持部材182を介して、圧電振動素子102の接続電極134が接続される。
【0029】
引出電極164は、接続電極160から第1ベース部材151のいずれか1つのコーナー部に向かって引き出され、引出電極166は、接続電極162から第1ベース部材151の他の1つのコーナー部に向かって引き出されている。第1ベース部材151の各コーナー部には、複数の外部電極170,172,174,176が形成されている。図3に示す例において、引出電極164は、第1ベース部材151のX軸負方向且つZ’軸正方向側のコーナー部に形成された外部電極170に接続されている。引出電極166は、第1ベース部材151のX軸正方向且つZ’軸負方向側のコーナー部に形成された外部電極172に接続されている。第1ベース部材151の残りのコーナー部に形成された外部電極174,176は、圧電振動素子102とは電気的に接続されないダミー電極又は第1蓋部材140を接地する接地電極であってもよい。
【0030】
図3に示す例では、第1ベース部材151のコーナー部は、その一部が円筒曲面状(キャスタレーション形状とも呼ばれる。)に切断して形成された切り欠き側面を有しており、外部電極170,172,174,176は、このような切り欠き側面から第2面154にかけて連続的に形成されている。なお、第1ベース部材151のコーナー部の形状はこれに限定されるものではなく、切り欠きの形状は平面状であってもよいし、切り欠きがなく、略直角のコーナー部が残っていてもよい。
【0031】
なお、第1ベース部材151の接続電極、引出電極及び外部電極の各構成は上述の例に限定されるものではなく、様々に変形して適用することができる。例えば、接続電極160,162は、一方が第1ベース部材151のZ’軸正方向側に形成され、他方が第1ベース部材151のZ’軸負方向側に形成されるなど、第1ベース部材151の第1面152上において互いに異なる側に配置されていてもよい。このような構成においては、圧電振動素子102が、長手方向の一方端及び他方端の両方において第1ベース部材151に支持されることになる。また、外部電極の個数は4つに限るものではなく、例えば対角上に配置された2つであってもよい。また、外部電極はコーナー部に配置されたものに限らず、コーナー部を除く第1ベース部材151のいずれかの側面に形成されてもよい。この場合、既に説明したとおり、側面の一部を円筒曲面状に切断した切り欠き側面を形成し、コーナー部を除く当該側面に外部電極を形成してもよい。さらに、外部電極174,176は省略されてもよい。また、第1ベース部材151の第1面152から第2面154へ貫通するスルーホールによって、第1ベース部材151の第1面152側に形成された接続電極は、第1ベース部材151の第2面154側に形成された電極と電気的に接続されてもよい。
【0032】
図3に示すような圧電振動子1においては、外部電極170,172を介して、圧電振動素子102において対を成す第1励振電極120と第2励振電極130との間に交流電圧が印加される。これにより、圧電片110が励振される。
【0033】
図2に示すように、第2パッケージ部材200は、第2ベース部材220と第2蓋部材210との間の第2内部空間201に、第1パッケージ部材100を収容する。図1及び図2に示した例では、第2ベース部材220が平板状を成しており、第2蓋部材210の凹部に圧電振動素子102が収容されている。但し、第1パッケージ部材100が第2パッケージ部材200に収容されれば、第2ベース部材220及び第2蓋部材210の形状は上記に限定されるものではない。例えば、第2ベース部材220は、第2蓋部材210の側に、第1パッケージ部材100の少なくとも一部を収容する凹部を有してもよい。
【0034】
第2ベース部材220は、Y’軸方向において互いに対向する主面に相当する第1面222及び第2面224を有する板状の絶縁体である。図1に示す例では、第2ベース部材220は、X軸方向に平行な長手方向と、Z’軸方向に平行な短手方向と、Y’軸方向に平行な厚さ方向を有しており、XZ’面において略矩形形状をなしている。第2ベース部材220は、例えば単層の絶縁性セラミックグリーンシートを焼成することによって形成されてもよく、例えば複数の絶縁性セラミックグリーンシートを積層して焼成することによって形成されてもよい。あるいは、第2ベース部材220は、ガラス材料又は水晶材料で形成してもよい。第2ベース部材220は、単層であっても複数層であってもよく、複数層である場合、第2ベース部材220の第1面222の最表層に形成された絶縁層を含んでもよい。また、第2ベース部材220は、平板な板状をなしてもよいし、あるいは、第2蓋部材210に対向する向きに開口した凹状をなしてもよい。
【0035】
第2蓋部材210は、天壁部211と、天壁部211の外縁部から第2ベース部材220に向かって延出する側壁部212とを有している。天壁部211は第1パッケージ部材100を挟んで第2ベース部材220と対向し、側壁部212はXZ’面において第1パッケージ部材100を囲んでいる。第2蓋部材210の材質は、望ましくは導電材料であり、さらに望ましくは気密性の高い金属材料である。第2蓋部材210が導電材料で構成されることによって、第2内部空間201への電磁波の出入りを低減する電磁シールド機能が第2蓋部材210に付与される。熱応力の発生を抑制する観点から、第2蓋部材210の材質は、第2ベース部材220に近い熱膨張率を有する材料であることが望ましく、例えば常温付近での熱膨張率がガラスやセラミックと広い温度範囲で一致するFe-Ni-Co系合金である。
【0036】
樹脂接合材240は、第2ベース部材220と第2蓋部材210とを接合し、第2内部空間201を封止する。樹脂接合材240は、第2ベース部材220の外縁部の全周に亘って枠状に設けられており、第2蓋部材210の側壁部212の先端部と第2ベース部材220の第1面222との間に介在している。樹脂接合材240は、例えば、エポキシ系、ビニル系、アクリル系、ウレタン系又はシリコーン系の有機系接着剤によって設けられる。樹脂接合材240は、本発明に係る「第2接合材」の一例に相当する。第2接合材は、有機系接着剤によって設けられた樹脂接合材に限定されるものではなく、水ガラスなどを含むケイ素系接着剤や、セメントなどを含むカルシウム系接着剤などの無機系接着剤によって設けられてもよい。第2接合材は、低融点ガラス(例えば鉛ホウ酸系や錫リン酸系等)であってもよい。平面視したとき、樹脂接合材240は、所定の間隔を空けて樹脂接合材190から離間しており、第1パッケージ部材100を囲んでいる。
【0037】
第2パッケージ部材200の第2内部空間201には、電子部品230も収容されている。電子部品230は、第2内部空間201の第2蓋部材210と第1蓋部材140との間の空間(以下、「緩衝空間」とする。)に収容され、例えば、第2ベース部材220の上に搭載されている。電子部品230は、第1蓋部材140又は第2蓋部材210の上に搭載されてもよい。電子部品230は、例えば、温度センサ、ヒータ、補償回路、発振回路、等の周辺回路、又はその一部であってもよい。この場合、図1に示した二重封止構造は、圧電発振器の構造に相当する。
【0038】
第2内部空間201のうち緩衝空間には不活性ガスが設けられている。緩衝空間に設けられた不活性ガスは、第1内部空間101への水蒸気の侵入を抑制することができるため、圧電振動素子102の劣化が抑制できる。すなわち、耐湿性の向上を図ることができる。不活性ガスは、例えば窒素でもよい。
【0039】
また、第2内部空間201のうち緩衝空間の気圧P2と、第2パッケージ部材200の外部空間301の気圧Pexとは、Pex<P2の関係を有する。これにより、外部空間から緩衝空間への水蒸気の侵入が抑制できる。したがって、緩衝空間から第1内部空間101への水蒸気の侵入を抑制することができるため、第1内部空間101に収容された圧電振動素子102の水蒸気による劣化が抑制される。また、外部空間から緩衝空間への水蒸気の侵入を抑制することで、緩衝空間に収容された電子部品230の水蒸気による劣化が抑制される。さらに、緩衝空間の気圧P2と、第1パッケージ部材100の第1内部空間101の気圧P1とは、P2≧P1の関係を有する。
【0040】
次に、図4のフローチャートに基づいて本発明の一実施形態に係る圧電振動デバイスの製造方法を説明する。本実施形態では、一例として、図1図2及び図3に示す圧電振動デバイスを製造する方法を説明する。
【0041】
まず、圧電振動素子102を用意する(S10)。
【0042】
圧電振動素子102が水晶振動素子である場合、水晶材料を人工水晶又は天然水晶の原石から所定のカット角でウエハ状に切り出し、ダイシング又はエッチングすることによって所定の矩形の外形形状に形成し、その後、スパッタ法又は真空蒸着法等によって第1励振電極120及び第2励振電極130をはじめとする各種電極を形成する。
【0043】
次に、圧電振動素子102を第1ベース部材151に搭載する(S11)。
【0044】
第1ベース部材151の所定領域にペースト状の導電材料を塗布し、塗布した導電材料を焼成することによって、第1ベース部材151の接続電極、引出電極及び外部電極を含む電極パターンを形成する。これらの電極パターンは、スパッタ法、真空蒸着法又はメッキ法を用いて形成してもよい。
【0045】
なお、圧電振動素子102は、複数のベース部材となる領域を有する集合基板を個片化し、個片化されたそれぞれの第1ベース部材151に搭載されてもよいし、あるいは、複数のベース部材となる領域を有する集合基板のそれぞれのベース部材となる領域に搭載されてもよい。ベース部材の集合基板に圧電振動素子102を搭載する場合は、その搭載工程の後に、集合基板を個片化する。
【0046】
次に、第1ベース部材151に搭載された圧電振動素子102を高温及び高湿の環境に静置する。
【0047】
具体的には、第1ベース部材151に搭載された圧電振動素子102を恒温恒湿器などの処理装置の密閉空間に収容する。この密閉空間は、圧電振動子の標準的な製造環境や使用環境とは異なる温度条件及び湿度条件を設定可能となっている。
【0048】
この密閉空間で、第1ベース部材151に搭載された圧電振動素子102を、標準的な製造環境よりも高温且つ高湿の環境に所定時間静置することによって、導電性保持部材180,182を構成する導電性接着剤の湿度による物性変化を敢えて引き起こし、封止した後における導電性接着剤の湿度による物性変化を抑制させることができる。また導電性保持部材180,182に残存する熱応力を緩和させることができる。
【0049】
次に、所望の周波数特性を得るための圧電振動素子102の周波数調整を行う。
【0050】
具体的には、真空下においてプラズマを形成し、プラズマ中のArイオンに高電圧を印加することによってArイオンによるイオンビームを形成し、このイオンビームを、圧電振動素子102の第1励振電極120(すなわち第1ベース部材151を向く側とは反対側の励振電極)に照射する。圧電振動素子102の第1励振電極120は、イオンビームによるエッチングによってトリミングされ、その厚さが徐々に薄くなり、圧電振動素子102の周波数は、所望の目標値に向かって徐々に高くなる方向に調整される。イオンビームの照射量は、イオンビームの照射源と圧電振動子1との間に設けたシャッタ(図示しない)を開閉動作させることによって制御することができる。このようなイオンビームによる照射工程は、例えば、周波数調整前の測定値と目標値との差分に応じて1回又は複数回行うことができ、複数回行う場合は照射ごとに周波数を測定し、かかる測定値と目標値に基づいて繰り返し行ってもよい。
【0051】
その後、第1ベース部材151に第1接合材(樹脂接合材190)を介して第1蓋部材140を接合する(S12)。
【0052】
まず、第1蓋部材140を準備する。第1蓋部材140は、例えば、金属板のプレス加工によって形成される。一例として、Fe-Ni-Co系合金からなる金属板を用意する。次に、金属板をパンチで押し込んで凹状に変形させ、形状を形成する。
【0053】
第1蓋部材140は、セラミック基板や水晶基板等にエッチング加工によって凹部を設けることで形成されてもよい
【0054】
例えば、樹脂接合材190が樹脂接着剤である場合、ディッピング法などによってペースト状の樹脂接着剤を第1蓋部材140の側壁部142の先端部に設け、その後、第1蓋部材140と第1ベース部材151とで樹脂接着剤を挟み込む。樹脂接着剤を例えば150℃以上180℃以下の温度範囲で加熱し硬化させることによって、第1蓋部材140と第1ベース部材151とを接合する。あるいは、樹脂接合材190の代わりに低融点ガラスを用いてもよく、この場合、低融点ガラスを例えば300℃以上360℃以下の温度範囲で加熱し焼成させることによって、第1蓋部材140と第1ベース部材151とを接合する。樹脂接着剤は、ガラス材料よりも湿気を第1内部空間101に取り込みやすいが、本実施形態によればこのような樹脂接着剤による湿気の影響を抑制することができるため、樹脂接合材190として樹脂接着剤を用いた場合にも十分な耐湿性が得られる。
【0055】
その後、第1内部空間101を減圧するように第1内部空間101を加熱する(S13)。
【0056】
例えば、第1パッケージ部材100を真空環境下で加熱することにより、樹脂接合材190を通して第1内部空間101の空気が排出され、第1内部空間101を減圧することができる。なお、真空環境下で第1ベース部材151と第1蓋部材140とを接合することで、第1内部空間101を減圧してもよい。また、減圧した
第1内部空間101に不活性ガスを加圧注入してもよく、不活性ガス環境下で第1ベース部材151と第1蓋部材140とを接合してもよい。
【0057】
その後、第1パッケージ部材100を第2ベース部材220に搭載する。
【0058】
その後、第2ベース部材220に樹脂接合材240を介在して第2蓋部材210を接合する(S14)。
【0059】
その後、第2内部空間に不活性ガスを加圧注入する(S15)。
【0060】
例えば、第2パッケージ部材200を真空環境下で加熱することにより、樹脂接合材240を通して第2内部空間201のうち緩衝空間の空気を排出する。その後に、第2パッケージ部材200を不活性ガス環境下で加圧することで、緩衝空間に不活性ガスを注入する。これにより、外部の気圧Pexと緩衝空間の気圧P2とがPex<P2の関係を有し、かつ緩衝空間が不活性ガスで満たされた圧電振動子1が形成される。なお、不活性ガス環境下で第2ベース部材220と第2蓋部材210とを接合することで、緩衝空間を不活性ガスで満たしてもよい。
【0061】
本実施形態に係る圧電振動子の製造方法によれば、第2内部空間201における緩衝空間の気圧P2と、第2パッケージ部材200の外部空間301の気圧PexはPex<P2の関係を有する。さらに、第2内部空間201を不活性ガスで満たすことができる。これにより、外部空間301からの水分侵入を防ぎ、耐湿性の向上を図ることができる。したがって、高い耐湿性を備えた圧電振動子製造することができる。
【0062】
以下に、本発明の実施形態の一部又は全部を付記する。なお、本発明は以下の付記に限定されるものではない。
【0063】
本発明の一態様によれば、圧電片と、圧電片における互いに対向する主面に設けられた励振電極とを有する圧電振動素子と、第1ベース部材と、第1ベース部材に第1接合材を介在して接合された第1蓋部材とを有し、第1ベース部材と第1蓋部材との間の第1内部空間に、圧電振動素子が収容された第1パッケージ部材と、第2ベース部材と、第2ベース部材に第2接合材を介在して接合された第2蓋部材とを有し、第2ベース部材と第2蓋部材との間の第2内部空間に、第1パッケージ部材が収容された第2パッケージ部材と、を備え、第2内部空間における第2蓋部材と第1蓋部材との間には、不活性ガスが設けられ、第2パッケージ部材の外部の気圧Pexと、第2内部空間における第2蓋部材と第1蓋部材との間の気圧P2とは、Pex<P2の関係を有する、水晶振動子が提供される。
【0064】
一態様として、気圧P2と、第1内部空間における気圧P1とは、P2≧P1の関係を有する。
【0065】
一態様として、不活性ガスには窒素が用いられる。
【0066】
一態様として、第2内部空間において、第2ベース部材の上に電子部品が搭載されている。
【0067】
一態様として、圧電片は、水晶片であり、圧電振動素子は、水晶振動素子である。
【0068】
一態様として、第1接合材及び第2接合材は、いずれも樹脂接合材である。
【0069】
上記のいずれかの態様の圧電振動子と、第2内部空間における第2蓋部材と第1蓋部材との間に収容された周辺回路とを備える、圧電発振器が提供される。
【0070】
本発明の他の一態様によれば、圧電片と、圧電片における互いに対向する主面に設けられた励振電極とを有する圧電振動素子を用意することと、圧電振動素子を第1ベース部材に搭載することと、第1ベース部材に第1接合材を介在して第1蓋部材を接合して、第1ベース部材と第1蓋部材との間の第1内部空間に圧電振動素子が収容された第1パッケージ部材を形成することと、第2ベース部材に第2接合材を介在して第2蓋部材を接合して、第2ベース部材と第2蓋部材との間の第2内部空間に第1パッケージ部材が収容された第2パッケージ部材を形成することと、を含み、第2内部空間における第2蓋部材と第1蓋部材との間には、不活性ガスが設けられ、第2パッケージ部材の外部の気圧Pexと、第2内部空間における第2蓋部材と第1蓋部材との間の気圧P2とは、Pex<P2の関係を有する、圧電振動子の製造方法が提供される。
【0071】
一態様として、第1パッケージ部材を形成することは、大気圧環境下において第1蓋部材を第1ベース部材に接合することと、第1内部空間を減圧するように第1内部空間を加熱することとを含む。
【0072】
第2パッケージ部材を形成することは、第2蓋部材を第2ベース部材に接合した後、不活性ガスを第2内部空間における第2蓋部材と第1蓋部材との間に加圧注入すること、を含む。
【0073】
なお、以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0074】
1…圧電振動子、
100…第1パッケージ部材、
101…第1内部空間、
102…圧電振動素子、
110…圧電片、
112…第1面、
114…第2面、
120…第1励振電極、
122…引出電極、
124…接続電極、
130…第2励振電極、
132…引出電極、
134…接続電極、
140…第1蓋部材、
151…第1ベース部材、
152…第1面、
154…第2面、
160,162…接続電極、
164,166…引出電極、
170,172,174,176…外部電極、
180,182…導電性保持部材、
190,240…樹脂接合材、
200…第2パッケージ部材、
201…第2内部空間、
210…第2蓋部材、
220…第2ベース部材、
222…第1面、
224…第2面、
230…電子部品、
240…樹脂接合材、
301…外部空間。
図1
図2
図3
図4