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特許7511861設計モデル表示システム、方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】設計モデル表示システム、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20240701BHJP
   G01C 11/04 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G01C15/00 104Z
G01C11/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2024035904
(22)【出願日】2024-03-08
【審査請求日】2024-03-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520064610
【氏名又は名称】株式会社connect
(74)【代理人】
【識別番号】100141346
【弁理士】
【氏名又は名称】潮崎 宗
(74)【代理人】
【識別番号】100212082
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 貴康
(72)【発明者】
【氏名】清野 大輔
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特許第6174199(JP,B1)
【文献】特開2008-020427(JP,A)
【文献】特開2019-027817(JP,A)
【文献】特開2022-096672(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0014212(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00- 1/14
G01C 5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置座標を取得する現在位置座標取得手段と、
少なくともカメラ、プロセッサ、及びディスプレイを内蔵する端末装置と、
を互いに一体になるように備え、
前記端末装置のプロセッサは、
前記カメラによって現場の映像を現場映像として撮影し前記ディスプレイに表示する現場映像撮影部と、
前記現在位置座標と、前記現在位置座標取得手段及び前記カメラの視点の位置関係とに基づいて、前記カメラの視点の現場座標系での座標をカメラ座標として算出するカメラ座標算出部と、
前記カメラの光軸の方向角を設定する方向角設定部と、
設定された前記方向角で前記現場映像撮影部によって前記現場を撮影しながら、前記現場で施工される対象物に対応し、前記現場座標系での位置を示す設計モデル座標を含む設計モデルデータにより描画される設計モデルを、前記方向角と前記設計モデル座標と前記カメラ座標とに基づいて前記カメラの投影面上で前記現場の映像に重畳させ、前記ディスプレイに表示する設計モデル重畳表示部と、
の機能を実行する、
設計モデル表示システム。
【請求項2】
前記現在位置座標取得手段は、
測位衛星からの電波を受信することにより地球上の位置を測位する汎地球航法衛星システム受信機と、
前記端末装置のプロセッサが実行する機能であって、
前記汎地球航法衛星システム受信機が測位した前記地球上の位置を汎地球航法衛星システムデータとして受信する汎地球航法衛星システムデータ受信部と、
前記現場座標系である平面直角座標系を選択する座標系選択部と、
前記汎地球航法衛星システムデータ受信部で受信された前記汎地球航法衛星システムデータと、前記座標系選択部で選択された前記平面直角座標系とに基づいて、前記現在位置座標を前記現場座標系における座標として算出する現場座標系現在位置座標算出部と、
を含む機能と、
を備える請求項1に記載の設計モデル表示システム。
【請求項3】
前記現在位置座標取得手段は、
前記現場において前記現場座標系での座標が既知の任意点に設置されるトータルステーション装置からの光波を受光して前記トータルステーション装置に向けて反射するプリズム装置と、
前記端末装置のプロセッサが実行する機能であって、前記トータルステーション装置が測量した前記プリズム装置までの距離及び角度に基づいて前記トータルステーション装置によって算出された前記現場座標系における前記プリズム装置の座標を、前記現在位置座標として受信又は設定する現場座標系現在位置座標算出部を含む機能と、
を備える請求項1に記載の設計モデル表示システム。
【請求項4】
前記端末装置及び前記現在位置座標取得手段のハードウェア部分は一体として固定的に設置される、請求項1に記載の設計モデル表示システム。
【請求項5】
前記方向角設定部は、前記ディスプレイの画面の左右中央に地面に鉛直な方向の中心線を表示し、前記現場において基準杭の位置に前記地面に鉛直な方向に立てた方向基準ポールが前記ディスプレイの画面の表示において前記中心線に重なるように前記端末装置の向きが調整されたときの、前記カメラ座標算出部が算出する前記カメラ座標から前記方向基準ポールを立てる前記基準杭の前記現場座標系での位置を示す基準杭座標に向かう線分の方向を、前記方向角として設定する、請求項1に記載の設計モデル表示システム。
【請求項6】
前記設計モデル重畳表示部は、前記カメラの投影面上で前記現場の映像に重畳表示される前記設計モデルの、地面に鉛直な方向の高さ位置を補正する高さ補正部の機能を更に含む、請求項1に記載の設計モデル表示システム。
【請求項7】
前記対象物は3次元形状を有し、
前記設計モデルデータは、前記3次元形状の前記設計モデルを描画するための3次元形状モデルデータと、前記対象物を前記現場に設置したときの前記3次元形状の少なくとも3点の前記現場座標系での座標を、該少なくとも3点の夫々に対応する前記3次元形状の前記設計モデル上の少なくとも3点を前記現場の映像に重畳させるための各座標とする前記設計モデル座標とを含み、
前記設計モデル重畳表示部は、前記3次元形状モデルデータに基づいて描画される前記3次元形状の前記設計モデルを、前記方向角と前記少なくとも3点の前記設計モデル座標と前記カメラ座標とに基づいて前記カメラの投影面上で前記現場の映像に重畳させる、
請求項1に記載の設計モデル表示システム。
【請求項8】
前記対象物は杭の3次元形状を有し、
前記設計モデルデータは、前記杭の3次元形状の前記設計モデルを描画するための、前記杭の長さである杭長、前記杭の直径である杭径、地面に垂直な線に対する前記杭の傾きを示す傾斜角、及び前記杭の打設の地面に水平な方角を示す打設方向角を含む杭の3次元形状モデルデータと、前記対象物である前記杭を前記現場で打設したときの前記杭の上端である打止め高さにおける前記杭の断面中央により定義される杭中心の前記現場座標系での座標を、該杭中心に対応する前記杭の3次元形状の前記設計モデル上の杭の上端である設計打止め高さにおける該杭の設計断面中央により定義される設計杭中心を前記現場の映像に重畳させるための座標とする前記設計モデル座標とを含み、
前記設計モデル重畳表示部は、前記杭の3次元形状モデルデータである前記杭長及び前記杭径に基づいて描画される前記杭の本体の設計線の形状と、前記杭長方向の前記杭の本体の設計線を前記設計モデル上の前記杭の本体の上端である設計打止め高さから前記杭長の上方向に延長させることにより描画される延長の設計線の形状とを含む前記杭の3次元形状の前記設計モデルを、前記カメラの投影面上で前記杭長の方向が前記地面に垂直な方向に対して前記方向角と前記傾斜角と前記打設方向角とによって定まる傾斜を有するように、前記方向角と前記設計杭中心の前記設計モデル座標と前記カメラ座標とに基づいて前記カメラの投影面上で前記現場の映像に重畳させる、
請求項1に記載に設計モデル表示システム。
【請求項9】
前記設計モデル重畳表示部は、前記設計モデルデータに基づいて描画される前記設計モデルにおける前記杭長の方向の前記設計線に対して夫々平行でかつ前記投影面上で該設計線を挟んだ左右両側に夫々第1の許容値だけずれた補助線の対と、前記設計打止め高さにおける前記杭の3次元形状の設計断面に対して平行でかつ前記投影面上で該設計断面を挟んだ上下両側に夫々第2の許容値だけずれた補助線の対を、前記カメラの投影面に投影される前記現場の映像に重畳させる、請求項8に記載の設計モデル表示システム。
【請求項10】
互いに略直交する2つの前記方向角の夫々に対応させて前記設計モデル表示システムを設置し、夫々、前記設計モデル重畳表示部に前記杭の3次元形状に対応する前記設計モデルを前記現場の映像に重ねて前記投影面に投影して表示させることにより、2つの前記方向角の夫々について、夫々表示される前記杭の3次元形状に対応する前記設計モデルに合わせて前記対象物を打設する、請求項8又は9に記載の設計モデル表示システム。
【請求項11】
前記端末装置は、ネットワークに遠隔接続されたコンピュータと通信を実行するためのモバイル通信インタフェースを備え、
前記プロセッサは、前記カメラの投影面における前記現場及び前記設計モデルの重畳映像を、前記モバイル通信インタフェース装置を介して遠隔接続された前記コンピュータに送信して共有させる映像遠隔送信部の機能を更に実行する、請求項1に記載の設計モデル表示システム。
【請求項12】
前記対象物は複数であり、
前記設計モデル重畳表示部は、複数の前記対象物に夫々対応する複数の前記設計モデルを、前記カメラの投影面上で前記現場の映像に同時に重畳させ、前記ディスプレイに表示する、
請求項1に記載の設計モデル表示システム。
【請求項13】
端末装置のプロセッサにおいて、
前記端末装置が内蔵するカメラによって現場の映像を現場映像として撮影し前記端末装置が内蔵するディスプレイに表示する現場映像撮影処理と、
前記カメラの光軸の方向角を設定する方向角設定処理と、
現在位置座標取得手段が取得する現在位置座標と、前記現在位置座標取得手段及び前記カメラの視点の位置関係とに基づいて、前記カメラの視点の現場座標系での座標をカメラ座標として算出するカメラ座標算出処理と、
設定された前記方向角で前記現場映像撮影処理によって前記現場を撮影しながら、前記現場で施工される対象物に対応し、前記現場座標系での位置を示す設計モデル座標を含む設計モデルデータにより描画される設計モデルを、前記方向角と前記設計モデル座標と前記カメラ座標とに基づいて前記カメラの投影面上で前記現場の映像に重畳させ、前記ディスプレイに表示する設計モデル重畳表示処理と、
を実行する設計モデル表示方法。
【請求項14】
端末装置のコンピュータに、
前記端末装置が内蔵するカメラによって現場の映像を現場映像として撮影し前記端末装置が内蔵するディスプレイに表示する現場映像撮影処理と、
前記カメラの光軸の方向角を設定する方向角設定処理と、
現在位置座標取得手段が取得する現在位置座標と、前記現在位置座標取得手段及び前記カメラの視点の位置関係とに基づいて、前記カメラの視点の現場座標系での座標をカメラ座標として算出するカメラ座標算出処理と、
設定された前記方向角で前記現場映像撮影処理によって前記現場を撮影しながら、前記現場で施工される対象物に対応し、前記現場座標系での位置を示す設計モデル座標を含む設計モデルデータにより描画される設計モデルを、前記方向角と前記設計モデル座標と前記カメラ座標とに基づいて前記カメラの投影面上で前記現場の映像に重畳させ、前記ディスプレイに表示する設計モデル重畳表示処理と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設、工事等の現場における対象物の施工を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建設、工事等の現場(以下単に「現場」と記載)において、現場で施工される対象物(以下単に「対象物」と記載)の仮想的な3次元画像を生成し、それを現場で撮像される画像に合成して表示することにより、現場での対象物の施工を支援する技術が知られている。
【0003】
例えば、現場において対象物を目標位置に精度よく誘導するための3次元画像を取得する画像表示システムに関する従来技術として、次のような技術が知られている(例えば特許文献1)。この画像表示システムは、測量装置とコントローラとを備える。
上述の測量装置は、測量情報出力手段と、駆動手段と、測量情報送信手段と、撮像手段と、画像合成手段とを備える。
上記測量情報出力手段は、視準点を視準する光軸方向の角度を計測して測量情報として出力する。
また、上記駆動手段は、光軸方法を変更する。測量情報送信手段は、測量情報出力手段にて得られた測量情報をコントローラへ送信する。
また、上記撮像手段は、光軸方向の視準点を含む画像を撮像して出力し、コントローラから送信された制御信号に基づいて撮像倍率を変更する。
更に、上記画像合成手段は、目標位置に配置された対象物の位置及び姿勢を示す仮想的な3次元画像を撮像手段を視点とし撮像倍率に応じて倍率を調整して生成し、生成した3次元画像と、撮像手段により撮像された撮像画像とを合成する。
一方、前述のコントローラは、通信手段、及び表示手段を備える。
上記通信手段は、測量装置に撮像倍率を指定する制御信号を送信する。
また、上記表示手段は、測量装置から送信された3次元画像の合成された撮像画像を表示する。
【0004】
例えば特許文献1の記載によれば、上述の測量装置は、測量対象の視準点を視準するための望遠鏡、望遠鏡の視界に視準点を導くための回転ツマミ、回転ツマミ駆動装置、及び駆動装置を含み視準点を視準する光軸方向の角度を計測する器械(国土地理院の定義によるところの経緯儀)と、レーザ光や赤外光などを照射して視準点からの反射光を受光し、照射光と反射光との位相差から、測距部と視準点との距離を計測する測距部(国土地理院の定義によるところの測距儀)とを備えた、いわゆるトータルステーション装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6174199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術の構成要素である測量装置は、一般的に価格が数百万円のオーダーになる高価な器械であり、このような測量装置を備える画像表示システムの製造、販売コストは高価なものになってしまうという課題があった。
【0007】
また、上記測量装置は、それを据え付ける三脚と合わせて10キログラム前後の重量となり、現場において場所を気軽に移動して画像表示を行うことが難しいという課題があった。
【0008】
更に、例えば特許文献1の記載によれば、仮想的な3次元画像を生成するための設計データとして、CAD(Computer‐Aided Design)データと、測量装置の設置位置や建込み完了時の杭等の対象物の位置及び姿勢などを示す、測量の基準点を原点とした3次元直交座標系で表された3次元位置情報とが必要となる。上記CADデータは、CADソフトウェアを使って対象物を正確に設計したものでなければならず、データの準備が容易ではないという課題があった。また、測量装置の設置位置や対象物の位置及び姿勢などを示す3次元位置情報は、別途測量しなければならないという課題があった。
【0009】
そこで、本発明は、小型・軽量かつ低コストで取り回しが容易で、重畳表示する3次元画像の設計モデルを簡易な3次元画像作成ソフトウェアで用意に生成でき、自身の設置座標や設計モデル座標を容易に設定可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
態様の一例の設計モデル表示システムは、現在位置座標を取得する現在位置座標取得手段と、少なくともカメラ、プロセッサ、及びディスプレイを内蔵する端末装置と、を互いに一体になるように備え、端末装置のプロセッサは、カメラによって現場の映像を現場映像として撮影しディスプレイに表示する現場映像撮影部と、現在位置座標と、現在位置座標取得手段及びカメラの視点の位置関係とに基づいて、カメラの視点の現場座標系での座標をカメラ座標として算出するカメラ座標算出部と、カメラの光軸の方向角を設定する方向角設定部と、設定された方向角で現場映像撮影部によって現場を撮影しながら、現場で施工される対象物に対応し、現場座標系での位置を示す設計モデル座標を含む設計モデルデータにより描画される設計モデルを、方向角と設計モデル座標とカメラ座標とに基づいてカメラの投影面上で現場の映像に重畳させ、ディスプレイに表示する設計モデル重畳表示部と、の機能を実行する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型・軽量かつ低コストで取り回しが容易で、重畳表示する3次元画像の設計モデルを簡易な3次元画像作成ソフトウェアで用意に生成でき、自身の設置座標や設計モデル座標を容易に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】設計モデル表示システムの第1の実施形態の外観図である。
図2】第1又は第2の実施形態のタブレット端末装置のハードウェアブロック図である。
図3】第1の実施形態の機能ブロック図である。
図4】系番号の説明図である。
図5】カメラ座標オフセットの説明図である。
図6】方向角設定処理の説明図である。
図7】杭の3次元形状の設計モデルの現場映像への重畳表示の例を示す図である。
図8】杭設計モデルの現場映像への重畳表示の例を示す図である。
図9】第1の実施形態の処理を示すフローチャートである。
図10】設計モデル表示システムの第2の実施形態の外観図である。
図11】第2の実施形態の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、設計モデル表示システムの第1の実施形態の外観図である。図1(a)は矢印Iの方向から見た場合の正面図、図1(b)は矢印IIの方向から見た場合の側面図である。
【0014】
第1の実施形態では、測位衛星からの電波を受信することにより地球上の現在位置を測位する汎地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System、以下「GNSS」と記載)受信機101(以下「GNSS受信機101」と記載)と、端末装置102とが、一対のポール(以下「システムポール」と記載)103に一体に接続されている。
【0015】
上部システムポール103aの上端には、GNSS受信機101が特には図示しない留め具によって固定接続されている。
端末装置102は、留め具106a及び106bによって端末装置102を挟み込むように固定された後、留め具106a、106bがGNSS受信機101の下側で上部システムポール103aを挟み込み、クランプ107a107bが締め付けられる。これにより、端末装置102が上部システムポール103aに固定される。
【0016】
一方、下部システムポール103bには、正立脚109a、109bが広げて接続される。そして、下部システムポール103bの下端のシステムポール石突き110と、2本の正立脚109a、109bの各下端の正立脚石突き111a、111bとを地面に挿す(又は置く)ことにより、下部システムポール103bと広げられた2本の正立脚109a、109bとを、地面に正立させることができる。
【0017】
その後、GNSS受信機101と端末装置102が一体に設置された上部システムポール103aが、下部システムポール103bに差し込まれて、適当な位置でシステムポール伸縮ノブ108によって締め付けられる。
【0018】
端末装置102は、少なくともカメラ104、プロセッサ201(後述する図2参照)、及びタッチパネルディスプレイ105を内蔵する。端末装置102としては、例えば一般的な民生用のタブレット端末を採用することができる。
【0019】
図1(a)及び(b)に示されるように、端末装置102が内蔵するカメラ104は、その光軸方向Cが、背面のタッチパネルディスプレイ105とは逆方向を向くように設置される。また、カメラ104は、端末装置102の四隅の一つ付近に内蔵されるため、その光軸方向Cは上部システムポール103aに遮られることはない。
【0020】
端末装置102下側の留め具106bの上部付近には、水平を取るための例えば気泡式の水準器112が設置されている。この水準器112を見ながら、例えば気泡がセンターに来るように正立脚109a、109bを調整することにより、設計モデル表示システムの全体の水平を取ることができる。
【0021】
上述したように、端末装置102としては民生用のタブレット端末を利用できるため、重量が軽く、価格も手頃である。
また、GNSS受信機101も、トータルステーション装置に比較して、数分の一から十分の一程度の価格であり、重量も1キログラム前後である。
更に、設計モデル表示システムは、測量機器ではないため、高い精度は要求されない。従って、システムポール103や正立脚109a、109bとしては、GNSS受信機101と端末装置102を支えられる程度の強度があればよく、強度が高く重量も重く高価なものは要求されない。
このように、設計モデル表示システムの第1の実施形態は、従来技術とは異なり、小型・軽量かつ低コストで取り回しが容易である。
また、後述するようにGNSS受信機101によって自身の現在位置座標を容易に取得できる。
更に、後述する現場に設置される対象物や基準杭の位置に本システムを一人で簡単に持ち運んで、後述する設計モデル座標や基準杭の座標を容易に取得することが可能である。
【0022】
図2は、図1の端末装置102のハードウェアブロック図である。これは、例えば民生用のタブレット端末の一般的なコンピュータ構成であり、プロセッサ201、ROM202、RAM203、SSD(Solid State Drive)記憶装置204、タッチパネルディスプレイインタフェース205、カメラインタフェース206、近距離無線通信インタフェース207、及びモバイル通信インタフェース208などが、システムバス209によって相互に接続されている。
【0023】
プロセッサ201は、ROM202に記憶されている設計モデル表示処理プログラムをRAM203にロードして実行することにより、後述する設計モデル表示処理を実行する。
【0024】
SSD記憶装置204は、半導体メモリにより構成される外部記憶装置であり、後述するGNSS受信機101からのGNSSデータ351や、後述する設計モデル357が重畳された現場映像データなどを記憶する。
【0025】
タッチパネルディスプレイインタフェース205は、図1のタッチパネルディスプレイ105に対するデータの入出力を制御する回路である。
【0026】
カメラインタフェース206は、図1のカメラ104が撮像した映像を取り込む制御回路である。
【0027】
近距離無線通信インタフェース207は、例えばGNSS受信機101との間のBluetooth近距離無線通信規格(「Bluetooth」はアメリカ合衆国 ブルートゥース エスアイジー,インコーポレイテッドの登録商標)による無線通信を制御する回路である。
【0028】
モバイル通信インタフェース208は、特には図示しないインターネット又はローカルエリアネットワークとの間の例えば5G(第5世代移動通信システム)や4G(第4世代移動通信システム)の通信規格によるIP(インターネットプロトコル)通信を制御する回路である。
【0029】
図3は、本発明による設計モデル表示システムの第1の実施形態の機能ブロック図である。図3に示される301から315の各ブロックで示される各機能は、図2のプロセッサ201がROM202に記憶されている設計モデル表示処理プログラムをRAM203に読み出すことにより実行する、後述する図9のフローチャートで示される処理機能を示している。
【0030】
まず、プロセッサ201は、現場映像撮影部301の機能を実行することにより、図1のカメラ104によって建設、工事等の現場の映像を現場映像350として撮影して図2のRAM203に取り込み、図2のタッチパネルディスプレイインタフェース205を介して図1のタッチパネルディスプレイ105にその現場映像350を動画像として表示する。
現場映像撮影部301の処理は、後述する図9のフローチャートの処理には依存せずに、ユーザが端末装置102の電源をオンした後、オフするまで、プロセッサ201によって自動的に起動された状態となる。この結果、端末装置102のタッチパネルディスプレイ105には、端末装置102の電源がオンの間、他の処理を何もしなければ、常に現場映像350が表示される。
【0031】
次に、プロセッサ201が実行するGNSSデータ受信部302と、座標系選択部303と、現場座標系現在位置座標算出部304は、図1のGNSS受信機101と共に、現在位置座標を取得する現在位置座標取得手段を構成する。
【0032】
前述したように、GNSS受信機101は、測位衛星からの電波を受信することにより地球上の現在位置(緯度、経度、高度)を測位し、GNSSデータ351を出力する。
これに対して、端末装置102のプロセッサ201が実行するGNSSデータ受信部302は、図2の近距離無線通信インタフェース207を介して図1のGNSS受信機101が出力する現在位置のGNSSデータ351を受信する。
【0033】
建設、工事などの現場は、地球の大きさに比較して十分に狭い範囲であるため、地球上の位置(緯度、経度、高度)によって表されるGNSSデータが示す位置・方向・距離等を、現場に対応する平面直角座標系の平面上に投影して位置計算を行うほうが演算処理等において取り扱い易い。例えば、日本国内では、日本国測量法第11条第1項第1号に従って、全国を19に区分した地域毎に座標系原点が異なる平面直角座標系を選択してGNSSデータからの変換を行うように規定されている。
【0034】
そこで、プロセッサ201が実行する座標系選択部303は、例えば図1のタッチパネルディスプレイ105に、図4に例示されるような19の平面直角座標系の系番号のリストを表示し、ユーザに、そのリストからユーザが設計モデルの表示を行いたい現場に対応する1つの系番号を選択させる。
【0035】
次に、プロセッサ201が実行する現場座標系現在位置座標算出部304は、GNSSデータ受信部302が出力する現在位置のGNSSデータ351を、座標系選択部303においてユーザにより選択された系番号に対応する平面直角座標系(以下「現場座標系」と記載)上の現在位置座標353に変換する。
具体的には、現場座標系現在位置座標算出部304において、GNSSデータ351の経緯度座標を所定の系番号に対応する平面直角座標系352上のXY座標に変換するための計算プログラムとして例えば、ガウス・クリューゲルの等角投影法を用いた下記の非特許文献1に記載のプログラムを利用することができる。
<非特許文献1>
河瀬和重 (2011):
投影における経緯度座標及び平面直角座標相互間の座標換算についてのより簡明な計算方法国土地理院時報,121,109‐124.
【0036】
この現場座標系現在位置座標算出部304が出力する現在位置座標353は、GNSS受信機101の現在位置に対応する現場座標系上の座標を示している。つまり、GNSS受信機101が設置されているシステムポール103を現場座標系内の任意の位置に立てることにより、その位置の現場座標系上の座標を、現在位置座標353としていつでも簡単に取得することができる。この機能は、後述する設計モデル選択部308による設計モデル座標355の取得及び基準杭設定部307による基準杭の座標356の取得に用いることができる。
【0037】
次に、プロセッサ201が実行するカメラ座標算出部310は、現場座標系現在位置座標算出部304(現在位置座標取得手段)が出力する現在位置座標353と、GNSS受信機101及び端末装置102が内蔵するカメラ104の視点の位置関係とに基づいて、カメラ104の視点の現場座標系での座標をカメラ座標360として算出する。
【0038】
図5は、GNSS受信機101及びカメラ104の視点の位置関係を示すカメラ座標オフセットの説明図である。GNSS受信機101(後述する第2の実施形態における図10のプリズム装置1001についても同様)と端末装置102が内蔵するカメラ104の視点(カメラ104の特には図示しない撮像センサの中央部)とは、GNSS受信機101及び端末装置102がシステムポール103a、103bに設置された状態で、図5のA、B、C、D、及びEのオフセット値の関係にある。
なお、オフセット値Eは、システムポール石突き110が、オフセット値Eの分だけ地面に埋没している条件を示している。
カメラ座標算出部310は、GNSS受信機101に対応する現場座標系の現在位置座標353に対して、図5に示されるオフセット値A、B、C、D、及びEの分だけずらして得られる座標を、カメラ座標360として算出する。
【0039】
ここで、端末装置102のシステムポール103への組み付け状態によって、上記オフセット値A、B、C、D、及びEは変化し得る。
そこで、ユーザが端末装置102をシステムポール103に組み付ける毎に、プロセッサ201は、ユーザの指示に従って、図3のカメラ座標オフセット設定部305を起動する。カメラ座標オフセット設定部305は、例えば端末装置102のタッチパネルディスプレイ105に、図5に示されるオフセット値A、B、C、D、及びEの各値をユーザに登録させる登録フォームを表示し、ユーザにこれらの値をカメラ座標オフセット359として設定させる。
カメラ座標算出部310は、カメラ座標オフセット設定部305が出力するカメラ座標オフセット359を使って、カメラ座標360を算出する。
【0040】
上述したGNSSデータ受信部302、現場座標系現在位置座標算出部304、及びカメラ座標算出部310の各処理は、後述する図9のフローチャートの処理には依存せずに、ユーザが端末装置102の電源をオンした後、オフするまで、プロセッサ201によって自動的に起動された状態となる。この結果、GNSS受信機101が取得するGNSSデータ351の値が変化する毎に、GNSSデータ受信部302がGNSSデータ351の受信を継続し、現場座標系現在位置座標算出部304が、新たに入力するGNSSデータ351に対応する現場座標系の現在位置座標353の算出、出力を継続し、カメラ座標算出部310が、現場座標系現在位置座標算出部304から出力される現在位置座標353に対応するカメラ座標360の算出、出力を継続する。
【0041】
次に、プロセッサ201が実行する方向角設定部309は、カメラ104の光軸(図1の光軸C)の方向角358を設定する。
【0042】
具体的には、ユーザはまず、図6に例示されるように、現場605で設計モデルの表示を行いたい対象物604が施工される位置付近の任意の位置に、地面に方向基準ポール601を立てる。この方向基準ポール601の構造は、図1に示したシステムポール103(103a、103b)及び正立脚109a、109bからなる構造と同じでよい。このときユーザは、ポールに付属している水準器(図1の水準器112と同様のもの)を使って、方向基準ポール601のポールが地面に対して鉛直になるように調整する。
なお、図6は、対象物604が杭(例えば鋼管杭)である場合の例であるが、例えば図7に示されるように、対象物604が3次元形状のもの(例えばケーソン)である場合も、対象物604が異なるだけで、システムポール103と方向基準ポール601に対する操作は同じである。
【0043】
続いて、ユーザは、端末装置102のカメラ104が概ね上記方向基準ポール601と対象物604がタッチパネルディスプレイ105の画角に入る方向を向くように、図1のシステムポール103と正立脚109a、109bと水準器112を調整した後、方向角設定部309の機能を起動する。
この結果、方向角設定部309は、図6に示されるように、現場映像撮影部301によってタッチパネルディスプレイ105に表示されている、方向基準ポール601と対象物604が映り込んだ現場映像350に重ねて、タッチパネルディスプレイ105の左右中央に、方向角ガイド用の中心線602を表示する。
【0044】
ユーザは、タッチパネルディスプレイ105の表示を見ながら、画面に表示されている方向基準ポール601が、タッチパネルディスプレイ105の中央に表示される地面に鉛直な方向の中心線602に重なるように、例えば端末装置102の左右両端を両手で持って、図1のシステムポール103を中心に端末装置102を、例えば図6の矢印606の方向に回転させる(振る)。なお、矢印606は説明のためのものであって、実際には、タッチパネルディスプレイ105には表示されていない。
方向基準ポール601が中心線602に重なったタイミングで、ユーザが、端末装置102の動きを固定すると共に、タッチパネルディスプレイ105上の方向角確定ボタン603をタップすると、方向角設定部309が、カメラ座標算出部310が算出するカメラ座標360から、方向基準ポール601を立てる基準杭の現場座標系での位置を示す基準杭座標356に向かう線分の方向を、方向角358として設定する。
【0045】
プロセッサ201が実行する設計モデル選択部308は、後述する設計モデル設定部306により設定された複数の設計モデルデータ354から1つを選択し、その選択した設計モデルデータ354を設計モデル重畳表示部311に入力する。
【0046】
プロセッサ201が実行する設計モデル重畳表示部311は、図6で説明したように、方向角設定部309で設定された方向角358で現場映像撮影部301によって現場605を撮影しながら、図7又は図8に例示されるように、現場605で施工される対象物604に対応し、現場座標系での位置を示す設計モデル座標355を含む設計モデルデータ354により描画される設計モデル357を、方向角358と設計モデル座標355とカメラ座標360とに基づいてカメラ104の投影面(特には図示しない撮像センサの撮像面)上で現場映像350に重畳させ、タッチパネルディスプレイ105に表示する。
ここで、GNSSデータ受信部302が算出する高さ方向の座標値は正確でない場合があり得る。この場合には、現場座標系現在位置座標算出部304及びカメラ座標算出部310を介して設計モデル重畳表示部311が重畳表示させる設計モデル357表示位置が、高さ方向でずれる場合が起こり得る。
そこで、ユーザは、ディスプレイ105に表示される現場映像350に重畳表示される設計モデル357の映像を見ながら、設計モデル重畳表示部311が備える高さ補正部316の機能である、例えばディスプレイ105上に表示される特には図示しない高さ補正用スライダ等を指でスライドさせる、又はディスプレイ105上に表示される特には図示しない数値入力ボックスに補正値を直接入力すること等により、重畳表示される設計モデル357の、地面に鉛直な方向の高さ表示位置を補正することができる。
これにより、ユーザは、現場映像350内の対象物604が設置されるべき場所に、その対象物604に対応する設計モデル357を適切に重畳表示させることが可能となる。
【0047】
図7は、現場605が例えば港湾工事のケーソン設置現場であり、対象物604が、例えばケーソンに対応する3次元形状である場合の例である。この場合、対象物604に対応する設計モデル357としては、対象物604の3次元形状モデルが設定される。
【0048】
設計モデルデータ354は、対象物604であるケーソン等の3次元形状の設計モデル357を描画するための3次元形状モデルデータと、対象物604であるケーソン等を現場605に設置したときの3次元形状の少なくとも3点の現場座標系での座標を、それら少なくとも3点の夫々に対応する3次元形状の設計モデル357上の少なくとも3点を現場映像350に重畳させるための各座標とする設計モデル座標355とを含む。
そして、設計モデル重畳表示部311は、3次元形状モデルデータに基づいて描画される3次元形状の設計モデル357を、方向角設定部309で設定される方向角358と、設計モデルデータ354に含まれる少なくとも3点の現場座標系での設計モデル座標355と、カメラ座標算出部310で算出されているカメラ座標360とに基づいてディスプレイ105(カメラ104の投影面)上で現場映像350に重畳表示させる。
【0049】
図7の例では、端末装置102のタッチパネルディスプレイ105には、これから設置されようとするクレーンからワイヤで吊り下げられた対象物604であるケーソンの例えばリアルタイム動画である現場映像350が表示されている。そして、その現場映像350に、設置される対象物604に対応する設計モデル357が、これから設置される位置に重畳表示される。
【0050】
これにより、設計モデル表示システムの操作者は、例えば、端末装置102のタッチパネルディスプレイ105における現場映像350に設計モデル357が重畳表示された映像を見ながら、トランシーバ等によってクレーンの運転手に、対象物604の設置位置が設計モデル357の表示位置に正確に重なるように指示を出すことが可能となる。
【0051】
或いは、現場映像350に設計モデル357が重畳表示された映像を、後述する図3の映像遠隔送信部315によってクレーンの運転席に設置されたコンピュータ(タブレット端末等)に直接送信することにより、クレーンの運転手はその映像を見ながら、対象物604の設置位置が設計モデル357の表示位置に正確に重なるように、クレーンを操作することが可能となる。
【0052】
図8は、対象物604が杭の3次元形状である場合の例である。図8において、図1のカメラ104の投影面に対応する端末装置102のタッチパネルディスプレイ105には、これから設置されようとする杭打ち機によって打設されようとしている対象物604である杭(例えば鋼管杭)の、例えばリアルタイム動画である現場映像350が表示されている。
設計モデルデータ354は、対象物604である杭の3次元形状の設計モデル357を描画するための、杭の長さである杭長、杭の直径である杭径、地面に垂直な線に対する杭の傾きを示す傾斜角、及び杭の打設の地面に水平な方角を示す打設方向角を含む杭の3次元形状モデルデータと、対象物604である杭を現場605で打設したときの杭の上端である打止め高さにおける杭の断面中央により定義される杭中心の現場座標系での座標を、その杭中心に対応する杭の3次元形状の設計モデル357上の杭の上端である設計打止め高さにおけるその杭の設計断面中央により定義される設計杭中心を現場映像350に重畳させるための座標とする設計モデル座標355とを含む。
設計モデル357は、杭の3次元形状モデルデータである杭長及び杭径に基づいて描画される杭の本体の設計線801a、801b、801c、及び801d等の形状と、杭長の方向の杭の本体の設計線801a及び801bを設計モデル357上の杭の本体の上端である設計打止め高さ804から杭長の上方向に延長させることにより描画される延長の設計線802a及び802b等の形状とを含むように描画される。
そして、設計モデル重畳表示部311は、上記設計モデル357を、ディスプレイ105(カメラ104の投影面)上で上記杭長の方向が地面に垂直な方向に対して方向角設定部309で設定された方向角358と夫々前述した傾斜角と打設方向角とによって定まる傾斜を有するように、方向角358と、設計モデルデータ354に含まれる設計杭中心の設計モデル座標355と、カメラ座標算出部310で算出されているカメラ座標360とに基づいて、ディスプレイ105(カメラ104の投影面)上で現場映像350に重畳表示させる。
ディスプレイ106上で、杭の設計モデル357として、杭本体の設計線形状801a、801b、801c、及び801d等だけでなく、杭長の方向に延長された延長の設計線形状802a及び802b等も表示されることにより、杭が地中に打設された以後も正確な傾斜で杭の打設を続行することが可能となる。
【0053】
ここで、設計モデル重畳表示部311は、設計モデルデータ354に基づいて描画される設計モデル357における杭長の方向の設計線801a/802a、801b/802b等に対して夫々平行でかつディスプレイ105(カメラ104の投影面)上で当該設計線を挟んだ左右両側に夫々第1の許容値だけずれた補助線803aと803bの対又は803cと803dの対などを、ディスプレイ105(カメラ104の投影面)に投影される現場映像350に重畳表示させるようにしてもよい。
これらの補助線803aと803bの対又は803cと803dの対は、設計モデル357における設計線801a/802a、801b/802b等に対して、対象物604である杭の杭長方向の縁がディスプレイ105(カメラ104の投影面)上でどれだけ左右方向にずれて打設されてもよいかという許容値(第1の許容値)に対応するものである。
【0054】
また、設計モデル重畳表示部311は、設計モデル357に基づいて描画される設計モデル357における杭の上端である設計打止め高さ804における杭の3次元形状の設計断面に対して平行でかつディスプレイ105(カメラ104の投影面)上で設計断面を挟んだ上下両側に夫々第2の許容値だけずれた補助線805aと805bの対などを、ディスプレイ105(カメラ104の投影面)に投影される現場映像350に重畳表示させるようにしてもよい。
これらの補助線805aと805bの対は、設計モデル357における杭の設計打止め高さ804の設計断面に対して、対象物604である杭の打止め高さの断面がディスプレイ105(カメラ104の投影面)上でどれだけ上下方向にずれて打設されてもよいかという許容値(第2の許容値)に対応するものである。
【0055】
左右方向の打設許容値(第1の許容値)の例として、図8の例では、対象物604の現在の設置位置は、補助線803aと803bの対の間又は803cと803dの対の間に入ってはいるが、設計線801a/802a及び801b/802bからはわずかにずれている。
図8には図示しないが、上下方向の打設許容値(第2の許容値)の例である、杭の設計打止め高さ804と補助線805a及び805bの対との関係についても同様である。
工事担当者は、これらの関係を判断しながら、対象物604である杭の施工を行うことが可能となる。
【0056】
ここで、対象物604が杭形状であって、上述のように設計線群801a/802a、801b/802b、801c、及び801d及び補助線群803aと803bの対、803cと803dの対、又は805aと805bの対などによって重畳描画される1つの方向角358に対応する設計モデル357の設計線群及び補助線群の映像だけでは、その方向角358に対応する奥行き方向の対象物604の設置状態を判断できない。
そこで、本実施形態では、1つの方向角358に対して直角の他の方向角358になるように設計モデル表示システムを持って行き、同様にして重畳映像を表示させることにより、対象物604の正確な設置が可能となる。
【0057】
即ち、互いに略直交する2つの方向角358の夫々に対応させて設計モデル表示システムを設置し、夫々、設計モデル重畳表示部311に、図8に例示される設計線群801a/802a、801b/802b、801c、及び801d及び補助線群803aと803bの対、803cと803dの対、又は805aと805bの対を、現場映像350に重ねてディスプレイ105(カメラ104の投影面)に投影して表示させることにより、2つの方向角358の夫々について、夫々表示される上記設計線群及び補助線群に合わせて対象物604である杭を正確に打設することが可能となる。
【0058】
前述したように、本実施形態による設計モデル表示システムは、小型かつ軽量であるため、このような運用を容易に行うことが可能となる。
【0059】
これにより、設計モデル表示システムの操作者は、例えば、端末装置102のタッチパネルディスプレイ105の現場映像350に設計モデル357である設計線群801a/802aと801b/802bの対、及び補助線群803aと803bの対又は803cと803dの対の夫々と対象物604の杭長方向の縁部分との重なり具合を見ながら、或いは、設計モデル357である杭の設計打止め高さ部分804及び補助線群805aと805bの対の夫々と対象物604である杭の打止め高さ部分との重なり具合を見ながら、トランシーバ等によりクレーンの運転手に、対象物604の設置位置が設計モデル357の表示位置に正確に重なるように指示を出すことが可能となる。
【0060】
或いは、図7の場合と同様に、現場映像350に設計モデル357が重畳表示された映像を、後述する図3の映像遠隔送信部315によってクレーンの運転席に設置されたコンピュータ(タブレット端末等)に直接送信することにより、クレーンの運転出力はその映像を見ながら、対象物604の設置位置が設計モデル357の表示位置に正確に重なるように、クレーンを操作することが可能となる。
【0061】
図7に例示したように、対象物604が3次元形状で、それに対応する設計モデル357が3次元形状モデルの場合、図3の設計モデルデータ354は、下記に示されるように、設計モデル357の識別情報と共に、3次元形状モデルを描画する例えばワイヤフレームモデルデータ、サーフェイスモデルデータ、又はソリッドモデルデータ等の3次元形状モデルデータと、対象物604を現場605に設置したときの3次元形状の少なくとも3点の現場座標系での座標を、それら少なくとも3点の夫々に対応する3次元形状の設計モデル357上の少なくとも3点を現場映像350に重畳させるための各座標とする設計モデル座標355とを含む。
・設計モデル名
・3次元形状モデルデータ
・少なくとも3点A、B、Cにおける現場座標系での座標
座標A:X座標値/Y座標値/Z座標値 (単位はメートル)
座標B:X座標値/Y座標値/Z座標値 (単位はメートル)
座標C:X座標値/Y座標値/Z座標値 (単位はメートル)
ここで、少なくとも3点の設計モデル座標355は、設計モデル357に対応する対象物604を現場605に設置したときの3次元形状の現場座標系での任意の3点の座標であってよいが、好適には、例えばある現場605において方向角358から対象物604の3次元形状を見た場合の手前の角、左奥の角、右奥の角の夫々における現場座標系の座標とするのがよい。
【0062】
図3において、プロセッサ201が実行する設計モデル設定部306は、設計モデル357に対応する対象物604が3次元形状である場合に、その3次元形状に対応する3次元形状の設計モデル357を作成し、その作成された3次元形状の設計モデル357を描画する例えばワイヤフレームモデルデータ、サーフェイスモデルデータ、又はソリッドモデルデータ等である設計モデルデータ354を生成する。
設計モデル設定部306としては、高度なCADソフトウェアは必要なく、例えばSketchUpソフトウェア(「SketchUp」はアメリカ合衆国 トリンブル インコーポレイテッドの登録商標)などの3次元デザインソフトウェアであってよい。
【0063】
次に、プロセッサ201が実行する設計モデル設定部306は、前述した少なくとも3点の設計モデル座標355(座標A、B、C)は、例えば端末装置102のタッチパネルディスプレイ105に座標の登録フォームを表示してユーザに入力させて設定してもよいが、好適には、次のように現場605において図1の設計モデル表示システムを使って現地入力するのがよい。
【0064】
即ち、設計モデル設定部306は、設計モデル357に対応する対象物604を現場605に設置したときの3次元形状の少なくとも3点の各位置に、ユーザが図1の設計モデル表示システムのGNSS受信機101を夫々置いたときに、図3の現場座標系現在位置座標算出部304(現在位置座標取得手段)が夫々算出する各現在位置座標353を、少なくとも3点の設計モデル座標355として設定する。
前述したように、本実施形態による設計モデル表示システムは、小型かつ軽量であるため、このような運用を容易に行うことが可能となる。
【0065】
図8に例示したように、対象物604が杭形状で、それに対応する設計モデル357が杭の輪郭線を表す設計線群である場合、図3の設計モデルデータ354は、下記に示されるように、設計モデル357の識別情報と共に、設計モデル357の設計線を生成するための前述した杭長、杭径、傾斜角、及び打設方向角を含む杭の3次元形状モデルデータと、対象物604である杭を現場605で打設したときの前述した杭中心の現場座標系での座標を、その杭中心に対応する杭の3次元形状の設計モデル357上の前述した設計杭中心を現場映像350に重畳させるための座標とする設計モデル座標355とを含む。
・設計モデル名
・杭長 (単位はメートル)
・杭径 (単位はメートル)
・傾斜角 (単位は度)
・打設方向角 (単位は度)
・設計杭中心座標:杭の打止め高さでの杭の断面中央(杭中心)の現場座標系座標
X座標値/Y座標値/Z座標値 (単位はメートル)
即ち、対象物604が杭である場合には、3次元形状作成ソフト等を用いて3次元形状データを生成することなく、上述の設計パラメータを設定するだけで、杭の3次元形状を生成して重畳表示させることができる。
【0066】
図3において、プロセッサ201が実行する設計モデル設定部306は、設計モデル357に対応する対象物604が杭の3次元形状である場合に、前述した杭長、杭径、傾斜角、及び打設方向角を、設計モデルデータ354の一部である杭の3次元形状モデルデータとして設定する。
好適には、設計モデル設定部306は、例えば端末装置102のタッチパネルディスプレイ105に、杭長、杭径、傾斜角、及び打設方向角についての杭の3次元形状モデルデータの登録フォームを表示してユーザに入力させて設定するのがよい。
【0067】
次に、プロセッサ201が実行する設計モデル設定部306は、前述した設計杭中心の座標である設計モデル座標355は、例えば端末装置102のタッチパネルディスプレイ105に座標の登録フォームを表示してユーザに入力させて設定してもよいが、好適には、次のように現場605において図1の設計モデル表示システムを使って現地入力するのがよい。
【0068】
即ち、設計モデル設定部306は、設計モデル357に対応する対象物604である杭を現場605で打設したときの杭中心(杭の上端である打止め高さにおける杭の断面中央の位置)に、ユーザが図1の設計モデル表示システムのGNSS受信機101を置いたときに、図3の現場座標系現在位置座標算出部304(現在位置座標取得手段)が算出する現在位置座標353を、設計モデル座標355(設計杭中心座標)として設定する。
前述したように、本実施形態による設計モデル表示システムは、小型かつ軽量であるため、このような運用を容易に行うことが可能となる。
【0069】
以上のようにして、設計モデル設定部306は、設計モデル座標355を含む設計モデルデータ354を、現場605において施工される複数の対象物604に合わせて予め作成しておき、前述した設計モデル設定部306によってそのうちの1つを選択するようにすることができる。
【0070】
前述した図3の方向角設定部309で使用される方向基準ポール601(図6参照)を立てるための基準杭についても、下記に示されるように、基準杭の識別情報と共に、基準杭座標356として予め複数設定しておくことができる。なお、基準杭座標356は、Z座標値は持たなくてもよい。
基準杭名
基準杭座標:X座標値/Y座標値 (単位はメートル)
【0071】
即ち、プロセッサ201が実行する基準杭設定部307は、前述した基準杭座標356は、例えば端末装置102のタッチパネルディスプレイ105に座標の登録フォームを表示してユーザに入力させて設定してもよいが、好適には、次のように現場605において図1の設計モデル表示システムを使って現地入力するのがよい。
【0072】
即ち、基準杭設定部307は、ユーザが現場605において図1の設計モデル表示システムのシステムポール103を方向基準ポール601(図6参照)を立てる基準杭の位置に立てたときに図3の現場座標系現在位置座標算出部304(現在位置座標取得手段)が算出する現在位置座標353を、方向基準ポール601の基準杭座標356として設定する。
前述したように、本実施形態による設計モデル表示システムは、小型かつ軽量であるため、このような運用を容易に行うことが可能となる。
【0073】
以上のようにして、基準杭設定部307は、方向基準ポール601を立てるための基準杭座標356を、現場605において施工される複数の対象物604に合わせて予め作成しておき、そのうちの1つを選択することにより、任意の方向角358に対応することが可能となる。
【0074】
図3において、プロセッサ201が実行する映像遠隔送信部315は、カメラ104の投影面(特には図示しない撮像センサの撮像面)における現場605と設計モデル357(設計線)及び補助線の重畳映像を、図2のモバイル通信インタフェース208を介して遠隔接続されたコンピュータに送信して共有させる。
これにより、例えば現場605のクレーンの運転席の例えばタブレット端末に現場605の対象物604と設計モデル357(設計線)及び補助線の重畳映像を表示させて施工を支援したり、現場の作業従事者の例えばタブレット端末に映像を表示させて安全や条件等の注意を促したり、本社や顧客先のコンピュータに映像を表示させて例えば現場605の確認やプレゼンテーションに活用したりといった利用用途が可能となる。
【0075】
プロセッサ201が実行する情報挿入表示部312は、例えば端末装置102のタッチパネルディスプレイ105からユーザに任意の情報362を入力させてその情報362をカメラ104の投影面における現場605及び設計モデル357の重畳映像に挿入して表示する。
これにより、映像の利用者は、よりわかり易い情報把握や履歴管理等が可能となる。
【0076】
プロセッサ201が実行する映像記録部313は、カメラ104の投影面に表示される現場605及び設計モデル357の重畳映像を、例えば端末装置102のSSD記憶装置204(図2)に動画像として記録する。
これにより、作業従事者の教育訓練や、画像の履歴管理や、プレゼンテーションでの映像利用が可能となる。
【0077】
プロセッサ201が実行するキャプチャ画像保存部314は、カメラ104の投影面に表示される現場605及び設計モデル357の重畳映像を任意のタイミングでキャプチャして得られるキャプチャ画像363を、例えば端末装置102のSSD記憶装置204(図2)に保存する。
これにより、画像の履歴管理やプレゼンテーションでの画像利用が可能となる。
【0078】
図9は、設計モデル表示システムの第1の実施形態において、図2のプロセッサ201が図3の各機能を実行するための処理を示すフローチャートである。この処理は、図2において、プロセッサ201がROM202に記憶されている設計モデル表示処理プログラムをRAM203に読み出して実行する処理である。
【0079】
まず、プロセッサ201は、図3の座標系選択部303の機能処理を実行することにより、例えば図1のタッチパネルディスプレイ105に、図4に例示されるような19種類の平面直角座標系の系番号のリストを表示し、ユーザに、そのリストからユーザが設計モデルの表示を行いたい現場に対応する1つの系番号を選択させる(図9のステップS901)。
【0080】
次に、プロセッサ201は、図9のステップS902からステップS907の一連の処理を繰り返し実行することにより、ユーザに、1つ以上の設計モデル357の作成又は編集を行わせる。この一連の処理は、図3の設計モデル設定部306の機能に対応する。
【0081】
上記一連の処理において、まずプロセッサ201は、ユーザが例えば端末装置102のタッチパネルディスプレイ105から設計モデル357の新規作成を指示したか、既存の設計モデル357の編集を指示したかを判定する(図9のステップS902)。
【0082】
ユーザが設計モデル357の新規作成を指示したと判定した場合、プロセッサ201は、新規の設計モデルデータ354をユーザに作成させる(図9のステップS903)。
前述したように、設計モデル357に対応する対象物604が3次元形状である場合には、設計モデルデータ354は、設計モデル名、3次元形状モデルデータ、及び座標A、B、Cである。
3次元形状モデルデータは、3次元形状モデルを作成するためのソフトウェアをユーザに別途起動させて作成させ、その結果生成された3次元形状モデルデータを設計モデルデータ354に読み込むようにしてよい。
一方、前述したように、設計モデル357に対応する対象物604が杭形状である場合には、設計モデルデータ354は、設計モデル名、杭長、杭径、傾斜角、打設方向角を含む杭の3次元形状モデルデータと、設計杭中心座標である設計モデル座標355である。プロセッサ101は、ユーザにディスプレイ105からこれらの数値を直接入力させるようにしてよい。
【0083】
ユーザが既存の設計モデル357の編集を指示したと判定した場合、プロセッサ201は、例えばSSD記憶装置204(図2)から、設計モデル357の一覧を読み出し、ユーザにその中の1つの設計モデル357を選択させて編集、更新させる(図9のステップS904)。
【0084】
上記一連の処理において、プロセッサ201は続いて、作成又は選択した設計モデル357において、ユーザが、例えば端末装置102のタッチパネルディスプレイ105から、設計モデル座標355として現在位置座標353を反映させることを指示したか否かを判定する(図9のステップS905)。
【0085】
ユーザが設計モデル座標355として現在位置座標353を反映させることを指示したと判定した場合には、設計モデル設定部306の機能として前述したように、プロセッサ201は、設計モデル357に対応する対象物604が設置されるべき現場605における少なくとも3点の位置(対象物604が3次元形状の場合)又は杭中心(対象物604が杭形状の場合)に、ユーザが図1の設計モデル表示システムのGNSS受信機101を置いたときに図3の現場座標系現在位置座標算出部304が算出する現在位置座標353を、設計モデル座標355として取得し、設計モデルデータ354に反映させる(図9のステップS906)。
【0086】
ユーザが設計モデル座標355として現在位置座標353を反映させることを指示しなかったと判定した場合には、プロセッサ201はステップS906の処理はスキップする。
【0087】
その後、プロセッサ201は、ユーザが、例えば端末装置102のタッチパネルディスプレイ105から、設計モデル357の追加を指示したか否かを判定する(図9のステップS907)。
【0088】
ユーザが設計モデル357の追加を指示したと判定した場合、プロセッサ201は、ステップS902の処理に戻って、ユーザに新たに設計モデル357の作成又は編集を行わせる。
【0089】
ユーザが設計モデル357の追加を指示しなかったと判定した場合、プロセッサ201は、次のステップS908とステップS909の繰返し処理により、図3の基準杭設定部307の機能処理を実行する。
【0090】
まず、プロセッサ201は、ユーザが例えば端末装置102のタッチパネルディスプレイ105から基準杭の追加を指示したか否かを判定する(図9のステップS908)。
【0091】
ユーザが基準杭の追加を指示したと判定した場合、図3の基準杭設定部307の機能の説明において前述したように、プロセッサ201は、ユーザが図1の設計モデル表示システムのシステムポール103を方向基準ポール601(図6参照)を立てる基準杭の位置に立てたときに図3の現場座標系現在位置座標算出部304が算出する現在位置座標353を、方向基準ポール601の基準杭座標356として取得し、基準杭座標356として反映させる(図9のステップS909)。
【0092】
その後、プロセッサ201はステップS908の判定処理に戻る。
【0093】
ユーザが基準杭の追加を指示しなかったと判定した場合、図3の設計モデル設定部306の機能の説明において前述したように、プロセッサ201は、ユーザによる例えば端末装置102のタッチパネルディスプレイ105からの指示に従って、例えばSSD記憶装置204に記憶されている1つ以上の設計モデル357の一覧中から1つを選択する(図9のステップS910)。
【0094】
次に、ユーザが、例えばSSD記憶装置204に記憶されている1つ以上の基準杭の一覧中から1つの基準杭を選択して、基準杭座標356を確認する(図9のステップS911)。
【0095】
次に、ユーザが、ステップS911で選択した基準杭座標356に対応する現場605の位置に方向基準ポール601を立てて水準器(図1の水準器112と同様のもの)により水平を取る。そして、ユーザが、設計モデル表示システムのシステムポール103
を、設計モデル357を重畳表示させたい任意の位置に移動する(以上、図9のステップS912)。
【0096】
次に、ユーザが、水準器112(図1参照)によりシステムポール103の水平を取り、続いて、例えば端末装置102のタッチパネルディスプレイ105上の特には図示しない座標記録ボタンを押下する。この結果、プロセッサ201が、図3のカメラ座標算出部310の機能により随時算出されているカメラ座標360を、例えば図2のRAM203に記録する(以上、図9のステップS913)。
【0097】
更に、プロセッサ201は、図3の方向角設定部309の機能の説明において前述したように、ユーザが、タッチパネルディスプレイ105において、表示されている現場映像350中の方向基準ポール601が中心線602(図6参照)に重なるように、端末装置102をシステムポール103を中心に回転移動させて方向角358を決める(図9のステップS914)。
【0098】
その後、プロセッサ201は、ユーザが例えば端末装置102のタッチパネルディスプレイ105から、方向角確定ボタンを押下したか、又は方向角リセットボタンを押下したかを判定する(図9のステップS915)。
【0099】
ユーザが方向角リセットボタンを押下したと判定した場合、プロセッサ201は、ステップS911の処理に戻って、方向角358の設定をやり直す。
【0100】
ユーザが方向角確定ボタンを押下したと判定した場合、プロセッサ201は、ステップS910で選択された設計モデルデータ354に基づいて設計モデル357を生成し、図3の現場映像撮影部301の機能により取得されディスプレイ105(カメラ104の投影面)に表示されている現場映像350に、ステップS915で確定した方向角358と、その時点で図3のカメラ座標算出部310の機能により算出されているカメラ座標360と、ステップS910で選択された設計モデルデータ354中の設計モデル座標355とから算出される現場座標系内の座標に対応する表示位置に、生成した設計モデル357を重畳表示させる(図9のステップS916)。
【0101】
図10は、設計モデル表示システムの第2の実施形態の外観図である。図1の場合と同様に、図2(a)は矢印Iの方向から見た場合の正面図、図2(b)は矢印IIの方向から見た場合の側面図である。
【0102】
図10の第2の実施形態の構成が図1の第1の実施形態の構成と異なる点は、図1におけるGNSS受信機101が図10のプリズム装置1001に置き換わった点である。
【0103】
第2の実施形態では、現場605でトータルステーション装置が既に測量装置として導入されて利用されている場合に、設計モデル表示システムのシステムポール103の上端に、既存のトータルステーション装置からの光波を受光するためのプリズム装置1001が設置される。
そして、システムポール103が現場605で設置されたときに、現場座標系での座標が既知のトータルステーション装置からプリズム装置1001の位置を測量することにより、プリズム装置1001の現場座標系での座標を現在位置座標353として測量することができる。
第2の実施形態では、設計モデル表示システム自体には、測量装置のような大型かつ重い機器を備える必要はなく、プリズム装置1001を端末装置102と一体に備えるだけなので、小型かつ軽量という、第1の実施形態と同様の効果を備える。
【0104】
図11は、本発明による設計モデル表示システムの第2の実施形態の機能ブロック図である。第1の実施形態における図3の場合と同様に、図11に示される301、305から315、及び1101の各ブロックで示される各機能は、図2のプロセッサ201がROM202に記憶されている設計モデル表示処理プログラムをRAM203に読み出すことにより実行する処理である。
第2の実施形態において、図11の各機能ブロックを実行するハードウェア構成は、第1の実施形態における図2のハードウェア構成と同じである。
【0105】
第2の実施形態における図11の機能ブロックが、第1の実施形態における図3の機能ブロックと異なる点は、第1の実施形態の図2において、GNSS受信機101からのGNSSデータ351を受信して処理するために具備されたGNSSデータ受信部302、座標系選択部303、及び現場座標系現在位置座標算出部304が、第2の実施形態の図11において、現場座標系現在位置座標算出部1101に置き換えられた点である。
【0106】
第2の実施形態において、図2のプロセッサ201が実行する図11の現場座標系現在位置座標算出部1101は、トータルステーション装置が測量したプリズム装置1001までの距離及び角度に基づいてトータルステーション装置によって算出された現場座標系におけるプリズム装置1001の座標を、現在位置座標353として設定する。
トータルステーション装置が例えば近距離無線通信機能を備えている場合には、現場座標系現在位置座標算出部1101は、図2の近距離無線通信インタフェース207を介して、トータルステーション装置から直接、プリズム装置1001の座標を受信することができる。
或いは、トータルステーション装置で測量されたプリズム装置1001の座標を、ユーザが例えば図10端末装置102のタッチパネルディスプレイ105に表示された登録フォームから登録するようにしてもよい。
【0107】
設計モデル表示システムの第2の実施形態において、図2のプロセッサ201が図11の各機能を実行するための処理を示すフローチャートは、第1の実施形態における図9のフローチャートにおいて、ステップS901の系番号の選択処理を削除したものと同じとすることができる。第2の実施形態においては、GNSS受信機101は使用しないので、ステップS901の処理は不要となる。その他の処理は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0108】
以上のように、設計モデル表示システムの第2の実施形態では、小型、軽量という特徴を失わずに、既存のトータルステーション装置を活用して、第1の実施形態の場合と同様の効果を発揮することができる。
【0109】
第1又は第2の実施形態において、GNSS受信機101又はプリズム装置1001は、端末装置102とは上部システムポール103a及び下部システムポール103bによって一体ではるが個別に設置されたが、例えば、GNSS受信機101又はプリズム装置1401が金具又はコネクタ等により端末装置102と直接固定的に接続されることにより、又はGNSS受信機101が端末装置102に内蔵されることにより、一体として固定的に設置されてもよい。
この場合には、GNSS受信機101とカメラ104の位置関係は固定にできるため、図3のカメラ座標オフセット設定部305は不要となる。
【0110】
上述の実施形態において、併行して施工する対象物604を複数とし、設計モデル重畳表示部311の機能は、これら複数の対象物604に夫々対応する複数の設計モデル357を、ディスプレイ105(カメラ104の投影面)上で現場映像350に重畳させて表示するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0111】
101 GNSSセンサ
102 端末装置
103 システムポール
104 カメラ
105 ディスプレイ
106a、106b 留め具
107a107b クランプ
108 システムポール伸縮ノブ
109a、109b 正立脚
110 システムポール石突き
111a、111b 正立脚石突き
112 水準器
201 プロセッサ
202 ROM
203 RAM
204 SSD記憶装置
205 タッチパネルディスプレイインタフェース
206 カメラインタフェース
207 近距離無線通信インタフェース
208 モバイル通信インタフェース
209 システムバス
301 現場映像撮影部
302 GNSSデータ受信部
303 座標系選択部
304、1101 現場座標系現在位置座標算出部
305 カメラ座標オフセット設定部
306 設計モデル設定部
307 基準杭設定部
308 設計モデル選択部
309 方向角設定部
310 カメラ座標算出部
311 設計モデル重畳表示部
312 情報挿入表示部
313 映像記録部
314 キャプチャ画像保存部
315 映像遠隔送信部
316 高さ補正部
350 現場映像
351 GNSSデータ
352 平面直角座標系
353 現在位置座標
354 設計モデルデータ
355 設計モデル座標
356 基準杭座標
357 設計モデル
358 方向角
359 カメラ座標オフセット
360 カメラ座標
361 現場映像・設計モデル重畳映像データ
362 情報
363 キャプチャ画像
601 方向基準ポール
602 中心線
603 方向角確定ボタン
604 対象物
605 現場
801a、801b、801c、801d 杭の本体の設計線
802a、802b 延長の設計線
803a、803b、803c、803d、805a、805b 補助線
804 杭の設計打止め高さ
1001 プリズム装置
【要約】
【課題】建設、工事等の現場における対象物の施工を支援する技術に関し、小型・軽量かつ低コストで取り回しが容易で、重畳表示する3次元画像の設計モデルを簡易な3次元画像作成ソフトウェアで用意に生成でき、自身の設置座標や設計モデル座標を容易に設定可能とする。
【解決手段】GNSS受信機101又はプリズム装置を含む現在位置座標を取得する現在位置座標取得手段と、少なくともカメラ、プロセッサ、及びディスプレイを内蔵する端末装置102とをシステムポール103により互いに一体になるように備える。端末装置102のプロセッサは、設定された方向角でカメラにより現場を撮影しながら、現場で施工される対象物に対応し、現場座標系での位置を示す設計モデル座標を含む設計モデルデータにより描画される設計モデルを、方向角と設計モデル座標とカメラ座標とに基づいてカメラの投影面上で現場の映像に重畳させ、ディスプレイに表示する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11