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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】データ転送装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 13/36 20060101AFI20240701BHJP
   G06F 13/38 20060101ALI20240701BHJP
   G06F 3/00 20060101ALI20240701BHJP
   G06F 13/14 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G06F13/36 310E
G06F13/38 330Z
G06F3/00 P
G06F3/00 R
G06F13/14 320A
G06F13/38 350
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024516764
(86)(22)【出願日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2024005611
【審査請求日】2024-03-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524097687
【氏名又は名称】セレブラシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅弘
【審査官】田名網 忠雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-164786(JP,A)
【文献】特開2010-211582(JP,A)
【文献】特開平01-100649(JP,A)
【文献】特開2016-171470(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0006790(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 13/20-13/42
G06F 13/10-13/14
G06F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信ポートを有する1個のデータ送信部と、
第1受信部から第n受信部(n≧2)のn個の受信部を有するデータ受信群と
を備え、
上記データ送信部の送信ポートが、上記n個の受信部がそれぞれ取り込むデータをシリアルに送信するように構成されており、
上記第1受信部が、入力ポートとデータポートとを有し、上記第1受信部の入力ポートが、上記データ送信部の送信ポートからのデータを受信し、上記第1受信部のデータポートが、上記第1受信部の入力ポートが受信したデータから上記第1受信部の受信すべきデータのみを除いたデータを送信するように構成され、
n≧3の場合、上記第i受信部(2≦i≦n-1)が、入力ポートとデータポートとを有し、上記第i受信部の入力ポートが、上記第(i-1)受信部のデータポートからのデータを受信し、上記第i受信部のデータポートが、上記第i受信部の入力ポートが受信したデータから上記第i受信部のみの受信すべきデータを除いたデータを送信するように構成され、
上記第n受信部が、入力ポートを有し、上記第n受信部の入力ポートが、上記第(n-1)受信部のデータポートからのデータを受信するように構成されており、
上記送信ポートのデータ送信が、一定のデータレートでなされており、
上記第j受信部(1≦j≦n-1)のデータポートにおけるデータ送信のデータレートが、上記第j受信部の入力ポートにおけるデータ受信のデータレートよりも小さいデータ転送装置。
【請求項2】
上記n個の受信部がそれぞれ取り込むデータのデータ長が等しく構成されており、
上記第j受信部のデータポートのデータ送信が、上記送信ポートのデータ送信のデータレートの(n-j)/n倍のレートでなされている請求項1に記載のデータ転送装置。
【請求項3】
上記送信ポートのデータが、上記n個の受信部がそれぞれ取り込むデータを上記受信部の番号iの降順に並べたものである請求項1から請求項2のいずれか1項に記載のデータ転送装置。
【請求項4】
上記n個の受信部が、自己の番号iを認識可能な自動判別機構を有する請求項1から請求項2のいずれか1項に記載のデータ転送装置。
【請求項5】
上記自動判別機構が、
自己への転送の開始を示す転送開始信号と、
受信すべき受信部の番号iを示す番号入力信号と、
転送開始信号が転送開始を示した際に番号入力信号を保持する番号レジスタと、
次段への転送の開始を示す転送出力信号と、
次段が受信すべき受信部の番号(i+1)を示す番号出力信号と
を有し、
上記転送開始信号の受信後に上記転送出力信号が転送開始を示すように制御されている請求項4に記載のデータ転送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、データ転送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、4Kあるいは8Kといった高画質のディスプレイが実用化されている。このようなディスプレイは画素数が多いため、独立して各画素へ直接信号を送信しようとすると、画像を制御する半導体チップとの間での配線数が非常に多くなる。
【0003】
このため、例えば各画素のデータを転送するクロック信号を共通化する(特開2011-128535号公報参照)、データを直列化してデータ信号の本数を減らす(特開平8-10166号公報参照)といった配線数を減らす工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-128535号公報
【文献】特開平8-10166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クロック信号を共通化しても減らせる信号数は限定的であることから、一般にデータを直列化してデータ信号の本数を減らす工夫が単独でもしくは併用して行われる場合が多い。例えば4本の信号配線のデータを直列化したうえで、データの転送速度を維持しようとすると、4倍の周波数でデータを転送する必要が生じる。このような高速のデータ転送を行うと、高速データ転送に伴い、著しく消費電力が増大する傾向にある。
【0006】
本開示は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、データ信号数を低減しつつ、消費電力の増大を抑止したデータ転送装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るデータ転送装置は、送信ポートを有する1個のデータ送信部と、第1受信部から第n受信部(n≧2)のn個の受信部を有するデータ受信群とを備え、上記データ送信部の送信ポートが、上記n個の受信部がそれぞれ取り込むデータをシリアルに送信するように構成されており、上記第1受信部が、入力ポートとデータポートとを有し、上記第1受信部の入力ポートが、上記データ送信部の送信ポートからのデータを受信し、上記第1受信部のデータポートが、上記第1受信部の入力ポートが受信したデータから上記第1受信部のみの受信すべきデータを除いたデータを送信するように構成され、上記第i受信部(2≦i≦n-1)が、入力ポートとデータポートとを有し、上記第i受信部の入力ポートが、上記第(i-1)受信部のデータポートからのデータを受信し、上記第i受信部のデータポートが、上記第i受信部の入力ポートが受信したデータから上記第i受信部のみの受信すべきデータを除いたデータを送信するように構成され、上記第n受信部が、入力ポートを有し、上記第n受信部の入力ポートが、上記第(n-1)受信部のデータポートからのデータを受信するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示のデータ転送装置は、データ信号数を低減しつつ、消費電力の増大を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一態様に係るデータ転送装置のモジュール構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1の受信部のデータの授受の関係を示すブロック図である。
図3図3は、図2のデータの授受のタイミングチャートの一例である。
図4図4は、図1の受信部の自動判別機構の構成を示すブロック図である。
図5図5は、図1のデータ転送装置を用いたデータ転送システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
(1)本開示の一態様に係るデータ転送装置は、送信ポートを有する1個のデータ送信部と、第1受信部から第n受信部(n≧2)のn個の受信部を有するデータ受信群とを備え、上記データ送信部の送信ポートが、上記n個の受信部がそれぞれ取り込むデータをシリアルに送信するように構成されており、上記第1受信部が、入力ポートとデータポートとを有し、上記第1受信部の入力ポートが、上記データ送信部の送信ポートからのデータを受信し、上記第1受信部のデータポートが、上記第1受信部の入力ポートが受信したデータから上記第1受信部のみの受信すべきデータを除いたデータを送信するように構成され、上記第i受信部(2≦i≦n-1)が、入力ポートとデータポートとを有し、上記第i受信部の入力ポートが、上記第(i-1)受信部のデータポートからのデータを受信し、上記第i受信部のデータポートが、上記第i受信部の入力ポートが受信したデータから上記第i受信部のみの受信すべきデータを除いたデータを送信するように構成され、上記第n受信部が、入力ポートを有し、上記第n受信部の入力ポートが、上記第(n-1)受信部のデータポートからのデータを受信するように構成されている。
【0011】
当該データ転送装置は、送信ポートからn個の受信部に送信するデータをシリアルに出力するので、データ送信部とデータ受信群との間のデータ信号数を低減することができる。また、当該データ転送装置は、第i受信部のデータポートが、第i受信部の入力ポートが受信したデータから第i受信部のみの受信すべきデータを除いたデータを送信する。従って、上記データを除かない場合に比べて、第i受信部のデータポートの信号変化を第i受信部の入力ポートの信号変化よりも減らすことができるので、消費電力が増大することを抑止できる。ここで、「第i受信部のみの受信すべきデータ」とは、第i受信部で受信されるデータのうち、第(i+1)受信部に送信する必要がないデータを意味する。
【0012】
(2)上記(1)のデータ転送装置において、上記送信ポートのデータ送信が、一定のデータレートでなされており、上記第j受信部(1≦j≦n-1)のデータポートにおけるデータ送信のデータレートが、上記第j受信部の入力ポートにおけるデータ受信のデータレートよりも小さいとよい。このように第j受信部のデータポートにおけるデータ受信のデータレートを小さくすることで、データの信号変化による消費電力を低減できる。ここで、「データレート」とは、単位時間(例えば1秒)に送受信されるデータのビット数を表す。
【0013】
(3)上記(2)のデータ転送装置において、上記n個の受信部がそれぞれ取り込むデータのデータ長が等しく構成されており、上記第j受信部のデータポートのデータ送信が、上記送信ポートのデータ送信のデータレートの(n-j)/n倍のレートでなされているとよい。このように第j受信部のデータポートのデータ送信を構成することで、安定してデータを取得しつつ、消費電力を低減できる。ここで、(受信部が)「取り込むデータ」とは、該当する受信部のみが受信するデータと同義である。
【0014】
(4)上記(1)から(3)のいずれかのデータ転送装置において、上記送信ポートのデータが、上記n個の受信部がそれぞれ取り込むデータを上記受信部の番号iの降順に並べたものであるとよい。このように構成することで、n個の受信部がそれぞれ取り込むデータのタイミングを揃え易い。
【0015】
(5)上記(1)から(4)のいずれかのデータ転送装置において、上記n個の受信部が、自己の番号iを認識可能な自動判別機構を有するとよい。このようにn個の受信部が、自己の番号iを認識可能な自動判別機構を有することで、容易に初期設定を行うことができる。
【0016】
(6)上記(5)のデータ転送装置において、上記自動判別機構が、自己への転送の開始を示す転送開始信号と、受信すべき受信部の番号iを示す番号入力信号と、転送開始信号41が転送開始を示した際に番号入力信号を保持する番号レジスタと、次段への転送の開始を示す転送出力信号と、次段が受信すべき受信部の番号(i+1)を示す番号出力信号とを有し、上記転送開始信号の受信後に上記転送出力信号が転送開始を示すように制御されているとよい。このように自動判別機構を構成することで、特に高速通信を行う系において早期に安定した通信状態を確保することができる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の一実施形態に係るデータ転送装置について説明する。
【0018】
図1に示すデータ転送装置1は、1個のデータ送信部10と、データ受信群20とを備える。当該データ転送装置1は、例えばLSIなどの回路で構成することができる。
【0019】
<データ送信部>
データ送信部10は、3つの入力ポート11と、1つの送信ポート12とを有する。
【0020】
3つの入力ポート11には、それぞれ後述する3個の受信部30が受信するデータが入力される。
【0021】
データ送信部10は、送信ポート12から上記3個の受信部30がそれぞれ取り込むデータをシリアルに送信するように構成されている。具体的には、3つの入力ポート11から入力される入力データをパラレル-シリアル変換したデータが送信ポート12から送信される。このとき、データの転送レートが低下しないように、入力データのデータレートをpとするとき、送信ポート12のデータレートは3pとすることが好ましい。つまり、データ転送の周波数は逓倍される。
【0022】
特にデータレートが大きい(データ転送の周波数が大きい)場合は、さらにデータ転送の基準となるクロックをデータ信号に組み込んだCDR(Clock Data Recovery)方式の転送を行うとよい。当該データ転送装置1は、CDR方式の信号転送に好適に用いることができる。
【0023】
ここで、パラレル-シリアル変換やデータ転送周波数の逓倍、CDR方式への信号変換を行う回路は公知であるので、詳細説明を省略する。
【0024】
<データ受信群>
データ受信群20は、3個の受信部30(第1受信部31、第2受信部32および第3受信部33)を有する。3個の受信部30は、入力ポート34とデータポート35と出力ポート36とを有する。
【0025】
図2に示すように、第1受信部31の入力ポート34は、データ送信部10の送信ポート12からのデータを受信し、第1受信部31のデータポート35は、第1受信部31の入力ポート34が受信したデータから第1受信部31の受信すべきデータのみを除いたデータを送信するように構成されている。また、第1受信部31の受信すべきデータは、第1受信部31の出力ポート36へ出力される。
【0026】
第2受信部32の入力ポート34は、第1受信部31のデータポート35からのデータを受信し、第2受信部32のデータポート35は、第2受信部32の入力ポート34が受信したデータから第2受信部32の受信すべきデータのみを除いたデータを送信するように構成されている。また、第2受信部32の受信すべきデータは、第2受信部32の出力ポート36へ出力される。
【0027】
第3受信部33の入力ポート34は、第2受信部32のデータポート35からのデータを受信するように構成されている。また、第3受信部33の受信すべきデータは、第3受信部33の出力ポート36へ出力される。
【0028】
ここで、データ受信群20のデータ処理について詳説する。
【0029】
第1受信部31の入力ポート34が受信するデータ送信部10の送信ポート12からのデータ(送信ポート12のデータ)は、上述したように、3個の受信部30(第1受信部31、第2受信部32および第3受信部33)がそれぞれ取り込むデータをシリアル化したものである。3個の受信部30がそれぞれ取り込むデータは、1ビットでもよく多ビットであってもよい。
【0030】
送信ポート12のデータは、そのデータ中にどの受信部30が受け取るべきデータであるか識別子を挿入したデータであってもよい。この場合、各受信部30はこの識別子に基づいて受信すべきデータの判断をすることができる。
【0031】
あるいは、送信ポート12のデータは、予め定められた順序に並べられていてもよい。この場合、各受信部30は、データの並び位置により受信すべきデータの判断をすることができる。この方法では識別子を付加する必要はないため、データ転送を効率的に行うことができる。この場合のデータとしては、3個の受信部30がそれぞれ取り込むデータを受信部30の番号iの降順に並べたものとするとよい。
【0032】
また、送信ポート12のデータ送信は、一定のデータレートでなされているとよく、さらに3個の受信部30がそれぞれ取り込むデータのデータ長が等しく構成されていることが好ましい。以下、図3のR1-IN(DR3)に示すように、送信ポート12のデータ送信のデータレートはP(周期T=1/P)で一定、各受信部30のデータ長が3ビット、データの並びは番号iの降順(第3受信部33のデータ、第2受信部32のデータ、第1受信部31のデータの順)である場合を例にとり説明を続けるが、当該データ転送装置1の送信ポート12のデータがこの条件に限定されることを意味するものではない。
【0033】
当該データ転送装置1では、第j受信部(1≦j≦2)のデータポート35におけるデータ送信のデータレートが、第j受信部の入力ポート34におけるデータ受信のデータレートよりも小さい。このように第j受信部のデータポート35におけるデータ受信のデータレートを小さくすることで、データの信号変化による消費電力を低減できる。また、当該データ転送装置1が回路で構成されている場合、データレートを低くした受信部については、回路面積を小さく設計することが可能となり、その場合、当該データ転送装置1の低コスト化を図ることができる。
【0034】
中でもn個の受信部30を有する場合の第j受信部のデータポート35のデータ送信が、送信ポート12のデータ送信のデータレートPの(n-j)/n倍のレートでなされているとよい。このように第j受信部のデータポート35のデータ送信を構成することで、安定してデータを取得しつつ、消費電力を低減できる。図1に示すデータ転送装置1では、n=3であるので、図3に示すように、第1受信部31(j=1)のデータポート35におけるデータレートは、2/3P(=(3-1)/3×P;周期は1.5T)となり、第2受信部32(j=2)のデータポート35におけるデータレートは、1/3P(=(3-2)/3×P;周期は3T)となる。例えば送信ポート12のデータ送信のデータレートが4.5Gbpsである場合、第1受信部31のデータポート35におけるデータレートは、3.0GBpsであり、第2受信部32(j=2)のデータポート35におけるデータレートは1.5GBpsである。以下、このデータレートの関係がある場合を例にとり説明を続ける。
【0035】
なお、一般にデータレートにより定まるデータの転送周期には遅延やジッターなどの周期の揺れが生じる場合があり、異なるデータレート間の転送は不安定となり易い。異なるデータレート間の転送を安定して行うため、(n-j)/n倍のデータレートに対して、20%以下のマージンを取るとよい。具体的には、(n-j)/n倍のデータレートに対してデータレートを(n-j)/n倍以上(n-j)/n倍×1.2以下にするとよい。
【0036】
上述のように、第1受信部31の入力ポート34は、周期Tに同期して図3に示すR1-INに示すデータを受け取ることとなる。なお、図3において、各信号の()内はデータレートを示すラベルであり、DR3は4.5Gbps(周期T)、DR2は3.0Gbps(周期1.5T)、DR1は1.5Gbps(周期3T)のデータ群である。
【0037】
第1受信部31は、このR1-INから第1受信部31の受信すべきデータR1-OUTを第1受信部31の出力ポート36に出力する。このR1-OUTはDR1の周期3Tに同期して行うことができる。R1-INのうち第1受信部31の受信すべきデータ#1は最後の3周期に受信される。従って、図3に示すようにR1-OUTは、データ#1の受信がなされた後にDR1の周期3Tに同期して出力されることとなる。
【0038】
また、第1受信部31は、第1受信部31の入力ポート34が受信したデータR1-INから第1受信部31のみの受信すべきデータを除いたデータR1-Dをデータポート35に送信する。このR1-Dは、DR2の周期1.5Tに同期して出力される。R1-INのうちデータポート35に送信されるデータは最初の6周期分のデータであるから、R1-Dは、第1受信部31の入力ポート34が受信を開始した直後のDR2の周期1.5Tに同期して出力される。
【0039】
第2受信部32の入力ポート34は、第1受信部31のデータポート35からのデータを受信するから、R2-INは、R1-Dと同一の信号となり、DR2の周期1.5Tに同期する。
【0040】
第2受信部32は、このR2-INから第2受信部32の受信すべきデータR2-OUTを第2受信部32の出力ポート36に出力する。このR2-OUTはDR1の周期3Tに同期して行うことができる。R2-INのうち第2受信部32の受信すべきデータ#2は後半の3周期に受信される。従って図3に示すようにR2-OUTは、データ#2の受信がなされた後にDR1の周期3Tに同期して出力されることとなる。
【0041】
また、第2受信部32は、第2受信部32の入力ポート34が受信したデータR2-INから第2受信部32の受信すべきデータのみを除いたデータR2-Dをデータポート35に送信する。このR2-Dは、DR1の周期3Tに同期して出力される。R2-INのうちデータポート35に送信されるデータは前半の3周期分のデータであるから、R2-Dは、第2受信部32の入力ポート34が受信を開始した直後のDR1の周期3Tに同期して出力される。
【0042】
第3受信部33の入力ポート34は、第2受信部32のデータポート35からのデータを受信するから、R3-INは、R2-Dと同一の信号となり、DR1の周期3Tに同期する。
【0043】
この段階では、R3-INには第3受信部33が受信すべきデータのみであるから、R3-INの信号をそのままDR1の周期3Tに同期してR3-OUTとして出力ポート36に出力すればよい。図3では、第1受信部31や第2受信部32の出力ポート36と出力が同期するように周期を調整するとよい。
【0044】
<自動判別機構>
3個の受信部30が、自己の番号iを認識可能な自動判別機構を有するとよい。このように3個の受信部30が、自己の番号iを認識可能な自動判別機構を有することで、容易に初期設定を行うことができる。
【0045】
例えば上記自動判別機構として、各受信部30にROMを設け、システムの起動時にそのROMに書き込んだデータから自己の番号iを把握する方法や、システムの起動時に各受信部30に設けた番号認識用のポートに番号iを与えることで認識させる方法も取り得る。しかし、特に高速かつクロックを埋め込んでデータを転送するCDR方式にあっては、その処理が困難であったり、当該データ転送装置1を含むLSI等の製造コストが増大したりするおそれがある。
【0046】
また、上述の方法では、製造コストが増大するおそれもある。詳説すると、例えば各受信部30にROMを設ける場合、受信部30の面積が大きくなるおそれがある。ROMを受信部30外の例えばプリント配線基板に実装したとしても、プリント配線基板の大きさの増大を招く。これらの面積増大は製造コストの増大につながる。また、受信部30に設けた番号認識用のポートに番号iを与えるべく、受信部30の外部ピンを固定する場合においても、例えば番号iに固定するパターンにあわせた専用のプリント配線基板を設けることとなり、プリント配線基板の製造コストが増大することとなる。
【0047】
これに対し、例えばCDR方式を採用している場合にあっては、図4に示すように、自動判別機構40が、自己への転送の開始を示す転送開始信号41と、受信すべき受信部30の番号iを示す番号入力信号42と、転送開始信号41が転送開始を示した際に番号入力信号42を保持する番号レジスタ43と、次段への転送の開始を示す転送出力信号44と、次段が受信すべき受信部30の番号(i+1)を示す番号出力信号45とを有し、転送開始信号41の受信後に転送出力信号44が転送開始を示すように制御されている。
【0048】
図4の自動判別機構40の動作を説明すると、まず初期状態において、第1受信部31は、転送出力信号44は非アクティブであり、番号出力信号45は、番号レジスタ43に1を加えた値が出力されている。この状態で、第1受信部31は、外部から転送開始信号41がアクティブであることと、番号入力信号42が1であることを受け取る。なお、外部から受け取る場合、番号入力信号42は常に1である。転送開始信号41は、自動判別機構40を起動することを意味し、1周期の間のみアクティブとなる。
【0049】
転送開始信号41がアクティブとなると、第1受信部31は、番号入力信号42の値を番号レジスタ43に保持する。つまり、番号レジスタ43は1となり、番号出力信号45は、これに1を加えた2となる。その後、転送出力信号44を1周期のみアクティブとする。
【0050】
第2受信部32の転送開始信号41は、第1受信部31の転送出力信号44と接続されており、第2受信部32の番号入力信号42は、第1受信部31の番号出力信号45と接続されている。このとき、第2受信部32は、第1受信部31と同様に動作し、第1受信部31の転送出力信号44がアクティブとなったことを受けて、番号レジスタ43に2を保持した後、自己の番号出力信号45を3としつつ、転送出力信号44をアクティブとする。
【0051】
第3受信部33についても同様に構成されており、その番号レジスタ43には3が保持されることとなる。
【0052】
以上のようにして、各受信部30に自己の番号iを認識させることができる。そして、このように自動判別機構40を構成することで、特に高速通信を行う系において早期に安定した通信状態を確保することができるようになる。また、この自動判別機構40においては、各受信部30を同一の構成とすることを可能とし、この場合、製造コストを抑止することも可能となる。
【0053】
<利点>
当該データ転送装置1は、送信ポート12から3個の受信部30に送信するデータをシリアルに出力するので、データ送信部10とデータ受信群20との間のデータ信号数を低減することができる。また、当該データ転送装置1は、第i受信部30のデータポート35が、第i受信部30の入力ポート34が受信したデータから第i受信部30のみの受信すべきデータを除いたデータを送信する。従って、上記データを除かない場合に比べて、第i受信部30のデータポート35の信号変化を第i受信部30の入力ポート34の信号変化よりも減らすことができるので、消費電力が増大することを抑止できる。
【0054】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本開示の構成を限定するものではない。したがって、上記実施形態は、本明細書の記載および技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換または追加が可能であり、それらは全て本開示の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0055】
上記実施形態では、受信群が3個の受信部を有する場合を説明したが、受信部の数は3個に限定されるものではなく、2個または4個以上であってもよい。受信部の数がn個(n≧2)である場合、上記n個の受信部が、入力ポートとデータポートとを有し、データ送信部が、上記送信ポートから上記n個の受信部がそれぞれ取り込むデータをシリアルに送信するように構成されており、上記第1受信部の入力ポートが、上記送信ポートからのデータを受信し、上記第1受信部のデータポートが、上記第1受信部の入力ポートが受信したデータから上記第1受信部のみの受信すべきデータを除いたデータを送信するように構成され、上記第i受信部(2≦i≦n-1)の入力ポートが、上記第(i-1)受信部のデータポートからのデータを受信し、上記第i受信部のデータポートが、上記第i受信部の入力ポートが受信したデータから上記第i受信部のみの受信すべきデータを除いたデータを送信するように構成され、上記第n受信部の入力ポートが、上記第(n-1)受信部のデータポートからのデータを受信するように構成される。
【0056】
なお、受信部の数は、3個以上8個以下が好ましい。受信部の数が上記下限未満であると、送信部と受信群との間のデータ信号数が十分に削減できないおそれがある。逆に、受信部の数が上記上限を超えると、送信部と受信群との間のデータ転送の周期が小さくなり過ぎ、安定した通信が困難となるおそれがある。
【0057】
上記実施形態では、3個の受信部のうち最終段である第3受信部がデータポートを有する場合を説明したが、最終段のデータポートは省略可能である。一方、第3受信部がデータポートを有している場合、各受信部は同一の構成とできるため、本開示のデータ転送装置の設計や拡張が容易になるという利点を有する。
【0058】
上記実施形態では、3個の受信部がそれぞれ出力ポートを有する場合を説明したが、出力ポートは必須の構成要素ではなく、その一部または全部が省略されたデータ転送装置も本開示の意図するところである。
【0059】
上記実施形態では、送信部の入力ポートの数が受信部の個数と一致する場合を説明したが、送信部の入力ポートの数と受信部の個数とは、必ずしも一致する必要はなく、異なっていてもよい。例えば送信部の入力ポート数が4ポートで、受信部の個数が3個であってもよい。このとき、データレートについては、送信部の各入力ポートにデータレートD1で入力され、送信部の送信ポートからデータレートD2で出力されている場合、例えばD1×4=D2が成り立つようにデータレートを決定することができる。
【0060】
当該データ転送装置は、並列して使用することが可能である。すなわち、並列して配置される複数の当該データ転送装置を備えるデータ転送システムを構築可能である。例えば図5に示すように、図1のデータ転送装置1を2つ並列に配置したデータ転送システム100を構成した場合、2本の信号線で6つのデータを転送できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示のデータ転送装置は、データ信号数を低減しつつ、消費電力の増大を抑止できる。
【符号の説明】
【0062】
1 データ転送装置
10 データ送信部
11 入力ポート
12 送信ポート
20 データ受信群
30 受信部
31 第1受信部
32 第2受信部
33 第3受信部
34 入力ポート
35 データポート
36 出力ポート
40 自動判別機構
41 転送開始信号
42 番号入力信号
43 番号レジスタ
44 転送出力信号
45 番号出力信号
100 データ転送システム
【要約】
本開示の一態様に係るデータ転送装置は、送信ポートを有する1個のデータ送信部と、第1受信部から第n受信部(n≧2)のn個の受信部を有するデータ受信群とを備え、上記データ送信部の送信ポートが、上記n個の受信部がそれぞれ取り込むデータをシリアルに送信するように構成されており、上記第i受信部(2≦i≦n-1)が、入力ポートとデータポートとを有し、上記第i受信部の入力ポートが、上記第(i-1)受信部のデータポートからのデータを受信し、上記第i受信部のデータポートが、上記第i受信部の入力ポートが受信したデータから上記第i受信部のみの受信すべきデータを除いたデータを送信するように構成されている。
図1
図2
図3
図4
図5