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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20240701BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20240701BHJP
   C08K 5/51 20060101ALI20240701BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20240701BHJP
   C08K 5/16 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L25/08
C08K5/51
C08L53/00
C08K5/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019039987
(22)【出願日】2019-03-05
(65)【公開番号】P2020143204
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000157717
【氏名又は名称】丸菱油化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】石川 章
(72)【発明者】
【氏名】上田 承平
(72)【発明者】
【氏名】柴戸 康弘
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-219815(JP,A)
【文献】特開2004-174869(JP,A)
【文献】特許第5914091(JP,B2)
【文献】特開2005-314604(JP,A)
【文献】特開2017-185647(JP,A)
【文献】特開2014-009238(JP,A)
【文献】特開2017-066299(JP,A)
【文献】特開平07-331085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性を有するポリプロピレン系樹脂組成物であって、
(1)ポリプロピレン系樹脂:37.5~90重量%
(2)スチレン含有量が10~40重量%であるポリスチレン-ポリオレフィンブロック共重合体であって、前記ポリスチレン-ポリオレフィンブロック共重合体がA-B-A型(ただし、Aはポリスチレンブロックを示し、Bはポリオレフィンブロックを示す。)であって、前記Bを構成するモノマーユニットが1,4-イソペンタン又は3,4-イソペンタンである共重合体:8~30重量%
(3)融点が200℃以下であるリン系難燃成分:1~10重量%、及び
(4)NOR系ヒンダートアミン化合物:0.25~2.5重量%
を含むことを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
リン系難燃成分がホスホン酸エステル系化合物を含む、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
ポリプロピレン系樹脂のMFRが0.5~30g/10minである、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記リン系難燃成分と前記ポリスチレン-ポリオレフィンブロック共重合体との重量比が1:3~10である、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物の溶融混練物が硬化してなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリプロピレン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば家電、OA機器、自動車、産業資材等において、難燃性・透明性が良好なポリプロピレン(PP)シートが利用されている。特に、採光性を持つ養生シート、工場、倉庫、店舗、作業場等の間仕切りカーテン又は出入口用カーテン、意匠性が要求されるテーブルクロス等にもPPシートが用いられている。
【0003】
ところが、難燃性と透明性とを同時に高めることは技術的に困難とされている。すなわち、難燃性を高めるために、難燃剤を多量に添加すれば、それだけ透明性が著しく低下するだけでなく、添加した難燃剤が経時的にブリードアウトすることによって成型品の外観不良が発生するという問題が生じる。他方、透明性を優先させるべく、難燃剤の添加量を減らせば、当然ながら所望の難燃性が得られなくなるおそれがある。
【0004】
そこで、ポリプロピレンに対して透明性を維持しながら混練可能であり、なおかつ、難燃剤との親和性が高い相溶化樹脂の併用が検討されている。 例えば、(A)ポリプロピレン系樹脂16.0~95.8質量%、(B)酢酸ビニルに由来する構造単位の含有量が10~90質量%であるエチレン酢酸ビニル共重合体1~40質量%、(C)150℃~300℃で液体であるリン系難燃剤3~40質量%及び(D)NOR型ヒンダードアミン系化合物0.2~4.0質量%を含む樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また例えば、(a)ポリオレフィン系樹脂に(b)環式有機化合物を1種類以上含有することを特徴とした透明難燃性組成物が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-66299
【文献】特開2011-241368
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の樹脂組成物では、特定のエチレン酢酸ビニル共重合体が使用されているが、その添加量が少ないと難燃剤等のブリードアウト抑制効果が十分ではなく、また大量に添加した場合は樹脂の軟化温度が低下したり、表面の耐擦性が低下する等の弊害が懸念される。
【0008】
また、特許文献2の難燃性組成物では、環式有機化合物としてシクロオレフィン系樹脂等が使用されているが、これは高価であることに加え、成形温度が高くなるために成形性が低下する等の問題がある。
【0009】
従って、本発明の主な目的は、優れた難燃性及び透明性を有するとともに、難燃剤等のブリードアウトが効果的に抑制されているポリプロピレン系樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、これらの従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の樹脂成分を含む組成を採用することによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記のポリプロピレン系樹脂組成物に係る。
1. 難燃性を有するポリプロピレン系樹脂組成物であって、
(1)ポリプロピレン系樹脂:37.5~95.5重量%、
(2)ポリスチレン-ポリオレフィンブロック共重合体:3~50重量%、
(3)融点が200℃以下であるリン系難燃成分:1~10重量%、及び
(4)NOR系ヒンダートアミン化合物:0.25~2.5重量%
を含むことを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
2. ポリスチレン-ポリオレフィンブロック共重合体中のスチレン含有量が10~40重量%である、前記項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
3. ポリスチレン-ポリオレフィンブロック共重合体中のポリオレフィンが炭素数2~8の直鎖型又は分岐型の脂肪族炭化水素をモノマーユニットとするポリマーである、前記項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
4. リン系難燃成分がホスホン酸エステル系化合物を含む、前記項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
5. ポリプロピレン系樹脂のMFRが0.5~30g/minである、前記項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
6. 前記リン系難燃成分と前記ポリスチレン-ポリオレフィンブロック共重合体との重量比が1:3~10である、前記項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
7. 前記項1~6のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物の溶融混練物が硬化してなる成形体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた難燃性及び透明性を有するとともに、難燃剤等のブリードアウトが効果的に抑制されているポリプロピレン系樹脂組成物を提供することができる。特に、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物においては、特定のリン系難燃成分及びNOR系ヒンダートアミン化合物とともに、特定量のポリスチレン-ポリオレフィンブロック共重合体が含まれているので、ポリプロピレン系樹脂本来の特性を活かしつつ、優れた難燃性及び透明性を発揮するとともに、難燃成分等のブリードアウトを効果的に抑制することができる。
【0013】
このような特性をもつ本発明のポリプロピレン系樹脂組成物(特にその組成物の溶融混練物が硬化してなる成形体)は、家電製品、OA機器、自動車、産業資材等において、難燃性・透明性が要求される部品として有効である。特に、採光性が必要な養生シート、工場、倉庫、店舗、作業場等の間仕切りカーテン又は出入口用カーテン、意匠性が要求されるテーブルクロス等にも有利に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.ポリプロピレン系樹脂組成物
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物(本発明組成物)は、難燃性を有するポリプロピレン系樹脂組成物であって、
(1)ポリプロピレン系樹脂:37.5~95.5重量%、
(2)ポリスチレン-ポリオレフィンブロック共重合体:3~50重量%、
(3)融点が200℃以下であるリン系難燃成分:1~10重量%、及び
(4)NOR系ヒンダートアミン化合物:0.25~2.5重量%
を含むことを特徴とする。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂
ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されず、a)プロピレンのみが重合してなるホモポリマー、b)少量のエチレン(通常1~10重量%程度)とプロピレンとが共重合してなるランダムポリマー、c)ホモポリマー又はランダムポリマーにゴム成分が分散してなるブロックポリマー等のほか、これらの混合物も採用することができる。これらは、公知又は市販のものを使用することもできる。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂のMFR(メルトフローレート)は、特に制限されないが、通常は0.5~30g/10min程度とすれば良く、特に0.5~10g/10minとすることが好ましい。このような範囲内のMFRに設定することによって、シート又はフィルムに要求される適正な物性がより確実に得られる。なお、本発明におけるMFRは、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定される値である。
【0017】
本発明組成物中におけるポリプロピレン系樹脂の含有量は、通常は37.5~95.5重量%とし、好ましくは55~90重量%とし、より好ましくは70~88重量%とする。上記含有量の範囲内に設定することによって、ポリプロピレン本来の特性を効果的に維持しつつ、難燃成分のブリードアウトをより確実に抑制することができる。
【0018】
ポリスチレン-ポリオレフィンブロック共重合体
ポリスチレン-ポリオレフィンブロック共重合体(以下、特にことわりのない限りは「本発明ブロック共重合体」ともいう。)は、ポリスチレンブロック(A)とポリオレフィンブロック(B)を含むコポリマーであり、公知又は市販のものから選択することもできる。また、これらは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0019】
本発明ブロック共重合体の種類は、特に限定されず、例えばA-B型、A-B-A型等のいずれでも良いが、特に透明性向上、ブリード抑制等の見地からA-B-A型が望ましい。
【0020】
また、本発明ブロック共重合体のポリオレフィンブロック(B)を構成するモノマーユニット(オレフィン単量体)は、限定的ではないが、特に炭素数2~8(さらに4~5)の直鎖型又は分岐型の脂肪族炭化水素であることが好ましい。これによりシート又はフィルムに必須の物性である適度な柔軟性を与えることができる。このようなモノマーユニットの具体例としては、1,4-イソペンタン又は3,4-イソペンタンを挙げることができる。
【0021】
本発明ブロック共重合体中のスチレン含有量は、特に制限されないが、透明性の向上とブリード抑制とのバランスをとるという見地より、通常は10~40重量%程度であることが好ましく、特に12~35重量%であることがより好ましい。スチレン含有量が上記範囲内の本発明ブロック共重合体は特にポリプロピレン系樹脂との相溶性が良好であるため、本発明組成物において難燃成分のブリードアウトを効果的に抑制すると同時により高い透明性を得ることができる。もちろん、それほど高い透明性が要求されない用途においては、スチレン含有量が40重量%を超えるポリスチレン-ポリオレフィンブロック共重合体を用いることもできる。
【0022】
本発明組成物中の本発明ブロック共重合体の含有量は、特に限定的されないが、通常は3~50重量%とし、好ましくは5~40重量%とし、より好ましくは8~35重量%とする。上記含有量の範囲内に設定することによって、難燃成分のブリードアウトを効果的に抑制することができる。
【0023】
融点が200℃以下であるリン系難燃成分
融点が200℃以下であるリン系難燃成分としては、限定的ではないが、リン酸エステル系化合物、ホスホン酸エステル系化合物、ホスファゼン系化合物等の少なくとも1種の有機リン系化合物を好適に採用することができる。この中でも、本発明ブロック共重合体による難燃成分のブリードアウトをより効果的に抑制できるという点で、ホスホン酸エステル系化合物の少なくとも1種を好ましく採用することができる。
【0024】
また、融点は200℃以下であり、好ましくは150℃以下である。これにより、樹脂への混錬時に溶融が不十分で透明性を損なうという問題を確実に回避できる。
【0025】
リン系難燃成分としては、例えばトリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート、イソプロピルフェニルホスフェート、tert-ブチルフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート、ナフチルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、1,1,3,3,5,5-ヘキサフェノキシシクロトリフォスファゼン、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フェノキシ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキシド、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、例えばレゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート(式-1)、ビスフェノールA-ビスジフェニルホスフェート(式-2)、1,1,3,3,5,5-ヘキサフェノキシシクロトリフォスファゼン(式-3)、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フェノキシ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキシド(式-4)の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【化1】
【0027】
本発明組成物中のリン系難燃成分の含有量は、通常は1~10重量%程度とし、好ましくは2~8重量%とする。上記含有量の範囲内に設定することによって、優れた難燃性と良好な透明性を維持しつつ、難燃成分のブリードアウトの抑制効果も得ることができる。
【0028】
NOR型ヒンダートアミン化合物
NOR型(N-アルコキシ型)ヒンダートアミン化合物は、限定的ではなく、耐候剤(光安定剤)、難燃剤等として使用されている化合物を1種又は2種以上用いることができる。特に、分子内に2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル骨格を有する化合物を好適に用いることができる。このような化合物の市販品としては、例えば「Flamestab NOR-116FF」(BASF社製)、「アデカスタブLA-81」(ADEKA社製)、「Tinivin123」「Tinivin NOR371FF」(BASF社製)等を挙げることができる。
【0029】
本発明組成物中のNOR型ヒンダートアミン化合物の含有量は、通常は0.25~2.5重量%とし、好ましくは0.8~2.2重量%とする。上記含有量の範囲内に設定することによって、優れた難燃性を維持しつつ、難燃成分のブリードアウトを効果的に抑制することができる。
【0030】
その他の成分
本発明組成物では、本発明の効果を妨げない範囲内で他の成分が含まれていても良い。例えば、ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂成分(特にHDPE、LDPE、LLDPE等のポリエチレン)のほか、酸化防止剤、紫外線吸収剤、浸透剤、保湿剤、消臭加工剤、帯電防止剤、防汚剤、着色剤、柔軟剤、その他の各種添加剤が含まれていても良い。
【0031】
本発明組成物の形態(性状)
本発明組成物は、上記のような必須成分を含む混合物であるが、単なるドライブレンド品(粉末状)の形態であっても良いし、前記混合物の溶融混練物が硬化してなる成形体の形態であっても良い。
【0032】
2.ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法
本発明組成物は、前記のような各成分を均一に混合することによって製造することができる。この場合の添加順序等は特に制限されない。例えば、前記の成形体の形態で製造する場合は、1)ポリプロピレン系樹脂及びポリスチレン-ポリオレフィンブロック共重合体の溶融混合物を調製する第1工程及び2)前記溶融混練物に対して融点が200℃以下であるリン系難燃成分及びNOR系ヒンダートアミン化合物を添加する第2工程を含む方法を好適に採用することができる。
【0033】
第1工程において、上記の溶融混練物を調製する際は、公知又は市販の混練機等を用いて実施することができる。この場合の加熱温度は、用いる成分の種類等に応じて適宜設定することができるが、通常は150~250℃の範囲内とすれば良い。また、必要に応じて、溶融混練に先立って、各成分をドライブレンドすることもできる。
【0034】
第2工程では、溶融混練物を混練しながら上記リン系難燃成分及びNOR系ヒンダートアミン化合物を添加することが好ましい。全ての必須成分が添加された後は、一定の時間をかけて混練することが好ましく、例えば混練時間を1分~1時間と設定できるが、これに限定されない。
【0035】
また、任意成分は、第1工程又は第2工程のいずれの段階で添加しても良い。さらに、第1工程及び第2工程の両工程で任意成分を添加することもできる。
【0036】
本発明では、必要に応じて、第2工程の後又は第2工程と同時に成形することもできる。成形方法は、特に限定されず、例えばプレス成形、押出成形、射出成形、インフレーション成形等のように、溶融樹脂の成形方法をいずれも採用することができる。
【0037】
3.成形体
本発明は、本発明組成物の溶融混練物が硬化してなる成形体も包含する。特に、前記の製造方法で製造された成形体を好適に採用することができる。
【0038】
成形体の形状及び大きさは、特に制限されず、用途、使用形態等に応じて適宜設定することができる。従って、所定の厚み(例えば50~5000μm程度)をもつシート(フィルムも包含する。)の形態も採用することができる。このようなシートの形態であっても、優れた難燃性等を発揮することができる。特に、難燃性においては、UL-94VTMの試験において「VTM-2」ないしは「VTM-0」という特性を発揮することができる。
【0039】
また、透明性は、上記のようなシート形態である場合、厚み100μmのヘイズ値として通常25%以下であり、特に5~12%であることが望ましい。もっとも、高い透明性が要求されない用途においては、ヘイズ値が25%を超えても良い。
【実施例
【0040】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明の内容より具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0041】
実施例1~11及び比較例1~5
表1~3に示す各成分(A)~(D)を配合し、樹脂組成物の成形体を調製した。より具体的には、以下の方法により実施した。表1~3中の各成分の配合量の単位は「重量%」である。
市販の混練装置(東洋精機株式会社製「ラボプラストミルC4150」)を用い、成分(A)及び(B)を200℃で溶融混練した。溶融した混練物を混練しながら酸化防止剤(イルガノックス1010(BASFジャパン株式会社製)とイルガフォス168(BASFジャパン株式会社製)の重量比1:1の混合物)を加えた後、成分(C)と(D)の混合物をゆっくり投入した。投入終了後、さらに温度200℃で5分間混練した。得られた混練物をプレス成型(210℃×100kgf×3分)することにより、所定厚みのシートを得た。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
なお、各表中の略号は、以下のものをそれぞれ示す(表4においても同様である。)。
成分(A)(ポリプロピレン系樹脂)
・「F-704NP」:株式会社プライムポリマー製「プライムポリプロF-704NP」,MFR:7.0g/10min,homo-PP
・「F-113G」:株式会社プライムポリマー製「プライムポリプロF-113G」,MFR:3.0g/10min,homo-PP
・「F-219DA」:株式会社プライムポリマー製「プライムポリプロF-219DA」,MFR:8.0g/10min,random-PP
成分(B)(ポリスチレン-ポリオレフィンブロック共重合体)
・「H7125」:株式会社クラレ製「ハイブラー7125」,タイプ:ビニルSEPS,スチレン含有量:20%
・「S2002」:株式会社クラレ製「セプトン2002」,タイプ:ビニルSEPS,スチレン含有量:30%
・「EV560」:三井・デュポンポリケミカル株式会社製「エバフレックスEV560」,VA率:14%,EVA樹脂
・「H1051」:旭化成株式会社製「タフテックH1051」,タイプ:ビニルSEB,スチレン含有量:42%
成分(C)(リン系難燃成分)
・「PX-200」:大八化学工業株式会社製「PX-200」,融点約100℃, リン酸エステル系化合物
・「CR-741」:大八化学工業株式会社製「CR-741」,常温液体,リン酸エステル系化合物
・「SPS-100」:大塚化学株式会社製「SPS-100」,融点約110℃, ホスファゼン系化合物
・「NN73」:丸菱油化工業株式会社製「ノンネン73」,融点約100℃,ホスホン酸エステル系化合物
成分(D)(NOR系ヒンダートアミン化合物)
・「NOR-116」:BASF社製「Flamestab NOR-116F」
・「LA-81」:ADAKA株式会社製「LA-81」
【0046】
実施例12~16
表4に示す各成分と実施例1と同じ酸化防止剤(0.1重量%)をドライブレンドし、市販の二軸混練機「KTX30型」(株式会社神戸製鋼所製)で200~210℃で押出混練し、ストランドをカットしてペレット状難燃性樹脂組成物を得た。得られたペレットをTダイ(230℃)にて押出成形し、所定厚みのシートを作製した。表4中の各成分の配合量の単位は「重量%」である。
【0047】
【表4】
【0048】
試験例1
各実施例及び比較例で得られたシートについて、以下のようにして難燃性、透明性、ブリード特性について調べた。それらの結果も表1~4に併せて示す。
【0049】
(1)難燃性
(1-1)燃焼試験(酸素指数)
JIS K7201に従い、得られたシートのLOIを測定した。測定は、プレスシートでは3回の平均値、Tダイによる押出成形の場合はMD方向及びTD方向でそれぞれ3回ずつ行い、その平均値を記した。
(1-2)燃焼試験(UL-94VTM)
UL-94VTM垂直燃焼試験法に準拠し、得られたシートの燃焼試験を行った。UL-94VTM垂直燃焼試験の結果は、「VTM-0」、「VTM-1」、「VTM-2」、「Burn(全焼)」の4段階評価を行った。押出成形のシートについて測定は、MD方向及びTD方向でそれぞれ実施した。
【0050】
(2)透明性
透明性の評価は、内部ヘイズ値の測定にて行った。ヘイズの測定はJIS K7136に従い、得られたシートを日本電色工業株式会社製ヘイズメーター「TC-HIII」を用いて行った。
【0051】
(3)ブリード特性
ヤマト科学株式会社製恒温器「IS600」を用い、シートを60℃で48時間処理後、その表面の観察を株式会社キーエンス製マイクロスコープにて行い、ブリードの有無(耐ブリード性)を判定した。また、シートは処理前に刷毛で擦り、刺激を与えることで、非常にブリードアウト(ブルーミング)しやすい状態として評価した。 ブリードが見られない場合を「〇」とし、ブリードが僅かに確認される場合を「△」とし、ブリードが明確に確認される場合を「×」とし、3段階評価を行った。