(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】油分回収装置
(51)【国際特許分類】
C10G 1/10 20060101AFI20240701BHJP
B01D 5/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C10G1/10
B01D5/00 A
(21)【出願番号】P 2020008103
(22)【出願日】2020-01-22
【審査請求日】2022-08-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 物件名1 ▲1▼配布日 令和1年12月26日 ▲2▼配布した対象者 小寺 洋一、花野 敏也、松本 聖心、横山 貢、西畑 英雄、大石 和彦、豊島 紀彦、佐藤 憲司、丸山 幹人、村田 勝英、今度 弘康、吉垣 登史、小野田 尚史、浅見 学、武田 克彦、福本 吉起、鈴木 正英、須藤 修二、塚田 正隆、山口 浩 物件名2 ▲1▼ウェブサイトの掲載日 令和1年12月26日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス https://www.g-a-p.jp 物件名3 ▲1▼提出日 令和1年 6月 4日 ▲2▼提出先 日本商工会議所の、平成30年度第2次補正予算 小規模事業者持続化補助金交付事業 物件名4 ▲1▼配布開始日 令和1年12月26日 ▲2▼配布場所 株式会社 グローバルアライアンスパートナー(愛知県岡崎市上地町字上明寺68番地4)
(73)【特許権者】
【識別番号】519124866
【氏名又は名称】株式会社グローバルアライアンスパートナー
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸一
(72)【発明者】
【氏名】国枝 茂
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-195821(JP,A)
【文献】特開2014-240460(JP,A)
【文献】特開2000-109849(JP,A)
【文献】特開平06-254529(JP,A)
【文献】特開2003-336077(JP,A)
【文献】特開2011-256216(JP,A)
【文献】特開2000-290661(JP,A)
【文献】特開平08-134470(JP,A)
【文献】中国実用新案第203360385(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/10
B01D 5/00
C08J 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを加熱することで蒸発する蒸発成分から軽質分を主とする蒸発成分を分離し、冷却して液体状の油分として回収する油分回収装置において、
原料としてのプラスチックを収容する原料収容部と、
前記原料収容部を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段によって加熱されることで蒸発する蒸発成分から軽質分を主とする蒸発成分を分離する分離手段と、
前記分離手段の下流位置に配置され、分離された軽質分を主とする蒸発成分を冷却する冷却手段と、
前記冷却手段の下流位置に配置され、前記液体状の油分を回収する回収槽と、
前記回収槽内の液化しない蒸発成分を焼却する焼却装置と、を備え、
前記分離手段は複数の孔が散点的に配置形成された
中央から周囲にかけて緩やかに下がった形状をなす金属製プレート体が上下に間隔を空けて配置されて構成されていることを特徴とする油分回収装置。
【請求項2】
前記冷却手段は冷却槽内において冷却媒体中に軽質分を主とする蒸発成分を通過させるための配管が配設された構造を有し、前記配管は前記冷却手段の下方に配置された前記回収槽に連通されていることを特徴とする請求項1に記載の油分回収装置。
【請求項3】
前記冷却媒体は水であって、前記冷却槽内に注水された状態で配管が水中に配置されて冷却手段が構成されていることを特徴とする請求項2に記載の油分回収装置。
【請求項4】
前記焼却装置は前記回収槽内の液化しない蒸発成分を焼却する際に使用する熱源の熱によって生じる上昇気流を用いて吸引することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の油分回収装置。
【請求項5】
前記回収槽内の液化しない蒸発成分は、前記焼却装置の本体下方からに前記本体内に導かれ、その導かれた位置よりも上方に配置された熱源によって焼却されることを特徴とする請求項4に記載の油分回収装置。
【請求項6】
前記加熱手段はジュール熱によって加熱するヒーターであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の油分回収装置。
【請求項7】
前記分離手段は前記原料収容部内の上部位置に配設されていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の油分回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチックを加熱することで蒸発する蒸発成分から軽質分を主とする蒸発成分を分離し、冷却して液体状の油分として回収する油分回収装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からプラスチックを加熱し、熱分解することで蒸発する蒸発成分から軽質分を主とする蒸発成分を分離し、冷却して液体状の油分として回収する油分回収装置に関する技術がある。そのような油分回収装置の一例として特許文献1を挙げる。特許文献1は
図28~
図30とその説明にあるように、熱分解槽218と、蒸留装置198と、回収容器219~222とを備える装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のこの種の油分回収装置は非常に大型化している。例えば上記特許文献1でも熱分解槽218と蒸留装置198とはそれぞれ別個に加熱する構造であり、加熱のための設備が別個に必要となる。また、回収容器219~222も分別領域毎に多数必要とされ設置場所も必要となる。そのため、油分回収装置の構成において共有化して小型化したいという要請があった。また、従来装置では別個に加熱することからコストがかかりすぎていた。
そのため、出願人は平成31年4月5日付けでこのような点を改良した油分回収装置の特許出願をした(特願2019-072445)。本出願はこの先の発明である油分回収装置を更に改良した油分回収装置に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、手段1として、プラスチックを加熱することで蒸発する蒸発成分から軽質分を主とする蒸発成分を分離し、冷却して液体状の油分として回収する油分回収装置において、原料としてのプラスチックを収容する原料収容部と、前記原料収容部を加熱する加熱手段と、前記加熱手段によって加熱されることで蒸発する蒸発成分から軽質分を主とする蒸発成分を分離する分離手段と、前記分離手段の下流位置に配置され、分離された軽質分を主とする蒸発成分を冷却する冷却手段と、前記冷却手段の下流位置に配置され、前記液体状の油分を回収する回収槽と、前記回収槽内の液化しない蒸発成分を焼却する焼却装置とを備えるようにした。
これによって、油分として回収しきれなかった不要な軽質分を主とする蒸発成分を、例えば大気中や水中等にそのまま放出することなく処分することができる。
【0006】
「プラスチック」とは、常温で個体であって加熱することで溶融する性質のプラスチックである。例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の熱可塑性プラスチックがよい。これらは単独でも混合されていてもよい。廃プラスチックを原料とした場合にはプラスチック以外の物質が混在していることが多いが、加熱して一旦蒸発させるため、純粋にプラスチックだけが原料収容部内に収容される必要はない。プラスチックに異物が多少混在していても構わない。
「蒸発成分」は加熱することでプラスチックが沸点に達したり、あるいは熱分解されたりして蒸発したプラスチック由来の気体成分である。蒸発はプラスチックが溶融して発生する場合だけでなく昇華して発生する場合も含む。
「軽質分」は、主として熱分解された常温(18℃~30℃程度)で液体の状態で存在できるプラスチック由来の物質群であり、分離手段の下流側に蒸発成分として上昇していく成分である。温度が十分ではない段階では軽質分の成分が一部重質分側に存在する場合もある。分離手段内の温度設定によって軽質分を構成する物質群の構成も変化することとなる。
「軽質分を主とする蒸発成分」とあるのは、蒸発成分を軽質分とそれ以外の部分とを明確にわけることができないことと、軽質分の定義が一義的ではなく、温度帯によってある分解精製物が軽質分側に含まれる場合も重質分側に含まれる場合もあるからである。そのため、ある温度に設定した分離手段によって蒸発成分から分離されてそれ以上上昇できない部分を残渣として重質分とする。
「原料収容部」は、個体状態のプラスチックを収容するための少なくとも底と壁を備えた容器、例えば大型の釜状の金属製部材を備えることがよい。容器を筐体で囲んだ二重構造がよいが、そうでなくともよい。バーナー装置は容器の外側から容器を加熱することがよい。
【0007】
「加熱手段」は、原料収容部内のプラスチックを溶かして蒸発成分を得ることができる手段であればよい。例えば、ジュール熱を利用したヒーター、ガス、石油、石炭を熱源とするバーナー装置等がよい。
「分離手段」は、蒸発成分から軽質分を主とする蒸発成分を分離するための機能を有した機構部分である。気化した蒸発成分から気化熱が比較的低い重質分の凝縮熱を奪って液化を促進できればよい。例えば、蒸発成分より温度の低い抵抗体を配置して蒸発成分と衝突させることがよい。一例として、実施の形態に開示したような透孔を散点的に形成した金属製の抵抗体がよい。分離手段は原料収容部の上部に原料収容部と連続的に配置してもよく、原料収容部とは分離された状態で筐体に収容して離間した位置に別装置として配置してもよい。
「冷却手段」は分離手段の下流位置に配置され、軽質分を主とする蒸発成分はなるべく長時間冷却媒体によって冷却されることがよい。冷却媒体は安価で安全な水がよいが、特に水に限定されるものではなく、例えば液化窒素やヘリウムのような冷媒を使用してもよい。
「回収槽」は冷却手段によって液化した軽質分を主とする蒸発成分が落下するため、冷却手段の下方位置に配置されることがよい。回収槽は液化した軽質分を主とする蒸発成分の貯留状態を目視できることがよい。例えば、透明なガラスからなる水槽がよい。
【0008】
また、手段2として、前記冷却手段は冷却槽内において冷却媒体中に軽質分を主とする蒸発成分を通過させるための配管が配設された構造を有し、前記配管は前記冷却手段の下方に配置された前記回収槽に連通されているようにした。
配管によって軽質分を主とする蒸発成分を導くことで、液化した軽質分を主とする蒸発成分を誘導しやすくなる。また、液化した軽質分を主とする蒸発成分が直接冷却媒体と接することがないため、液化した軽質分を主とする蒸発成分に冷却媒体が混ざることもない。
また、手段3として、前記冷却媒体は水であって、前記冷却槽内に注水された状態で配管が水中に配置されて冷却手段が構成されているようにした。
水を冷却媒体とすると安価で、万一液化した軽質分を主とする蒸発成分と接しても化学反応を生じることともなく安全である。配管は熱伝導性のよい金属がよく、特に銅製あるいは銅合金製がよい。配管の形状は水との接触面積を大きくするために、一般に「チラー」と呼称されるコイル状に巻かれた冷却管形状とすることがよい。
【0009】
また、手段4として、前記焼却装置は前記回収槽内の液化しない蒸発成分を焼却する際に使用する熱源の熱によって生じる上昇気流を用いて吸引するようにした。
これによって、回収槽内で液化しない蒸発成分が焼却装置に吸引されて焼却されることとなるため、回収槽から焼却装置へ液化しない蒸発成分を送るための装置を回収槽に設ける必要がなくなる。
また、手段5として、前記回収槽内の液化しない蒸発成分は、前記焼却装置の本体下方からに前記本体内に導かれ、その導かれた位置よりも上方に配置された熱源によって焼却されるようにした。
このような配置であると焼却装置の吸引力が増し、液化しない蒸発成分は熱源の下方に導かれるので焼却されやすくなる。
焼却装置の本体は筒状の外形形状、つまり周囲を壁で包囲された形状に構成されることが上昇気流の発生のためによい。
また、手段6として、前記加熱手段はジュール熱によって加熱するヒーターであるようにした。
ジュール熱によって加熱するヒーターであると、例えばガス、石油、石炭を熱源とするバーナー装置と比べて加熱装置が軽量コンパクト化することとなるためである。
【0010】
また、手段7として、前記分離手段は複数の孔が散点的に配置形成された金属製プレート体であるようにした。
分離手段として気化した蒸発成分は例えば、蒸発成分より温度の低い抵抗体を配置して蒸発成分と衝突させることがよい。このような金属製プレート体であれば気化した蒸発成分はプレート体に衝突(接触)して一部は孔から上方に抜け、一部はプレート体に衝突し液状化して落下する。一般に分子量の大きな相対的に重い生成物、あるいは沸点の低目の生成物は気体状態から液体状態へと相転移しプレート体より上方には進みにくい。更に、金属製プレート体に衝突することで液状化して落下する。金属製プレート体は1枚ではなく複数の金属製プレート体が散点的に配置形成された孔が上下方向に重ならないように配置することがよい。
また、手段8として、前記分離手段は前記原料収容部内の上部位置に配設されているようにした。
つまり、分離手段を原料収容部と一体化せずに同じ空間内の上部位置に配置するようにした。これによって分離手段を別途原料収容部の下流側に配置しなくともよくなり、システム全体のコンパクト化に寄与する。但し、この手段の裏返しとして分離手段を原料収容部と別体で構成するようにしてももちろんよい。
上述した手段1~手段8の各発明は、任意に組み合わせることができる。手段1~手段8の各発明の任意の構成要素を抽出し、他の構成要素と組み合わせてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、油分として回収しきれなかった不要な軽質分を主とする蒸発成分を、例えば大気中や水中等にそのまま放出することなく処分することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】同じ実施形態の油分回収装置の蒸留部の正面からの断面図。
【
図3】同じ実施形態の油分回収装置の蒸留部の側面からの断面図。
【
図4】同じ実施形態の油分回収装置の回収・焼却部の側面からの断面図。
【
図6】(a)は第1の分離プレートの平面図、(b)は第2の分離プレートの平面図。
【
図7】同じ実施形態の油分回収装置の分解釜の保温塔のソケットに対するニップルとネジ蓋の螺合関係を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態である油分回収装置について図面に基づいて説明する。尚、油分回収装置1の構造に直接関係のない部材については図示を簡略化あるいは省略する。油分回収装置1は蒸留部2と回収・焼却部3と制御部4から構成されている。
まず、蒸留部2側の説明をする。
図1~
図4に示すように、蒸留部2は筐体5内に保温塔6が設置されており、保温塔6内に分解釜7が収容されている構成である。
筐体5は全体として直方体形状の外観となる金属製(具体的にはステンレス合金製)の板状部材から構成されている。筐体5は高床式に構成された方形の底部5aと、四方から内部を包囲する壁部5bと、上部の蓋部5cとから構成されている。蓋部5cは着脱可能である。蓋部5c中央付近には透孔8が形成されている。壁部5bの油分回収装置のシステムの外方を向いた一側には離間した上下位置に透孔9が形成されている。
【0014】
保温塔6は分解釜7用の金属製(具体的にはステンレス合金製)の収容容器である。保温塔6は有底の上方が開放された円筒形状に構成され、内周面6aに沿って断熱材10が配設されている。断熱材10は保温塔6内に分解釜7が収容された状態で分解釜7との間に閉鎖空間としての空隙Sが生じるような厚みとされている。保温塔6の上端には外壁から内方に張り出したリング部11が形成されている。そのため、保温塔6上部には分解釜7の外形形状に一致する円形の透孔11aが形成される。
図2、
図4等に示すように、保温塔6の側面の離間した上下位置には透孔12が形成され、各透孔12位置には透孔12に一致する径のソケット13が外向きにそれぞれ突出形成されている。
図7に示すように、ソケット13は内周面に雌ネジ13aが形成された円筒状の部材である。ソケット13は筐体5の壁部5bに形成された透孔9に対応する位置に配置されており、ソケット13先端は僅かに透孔9から外方に突出されている。ソケット13には分解釜7側となる基端側にニップル14が螺合されている。ニップル14は外周の一側寄りに雄ネジ14aが形成された円筒状の部材である。ニップル14の分解釜7側となる先端は断熱材10を貫いて分解釜7周囲の空隙S位置に配置されている。ソケット13とニップル14によって構成される通路によって閉鎖された空隙Sは外気に連通される。
【0015】
図2及び
図3に示すように、原料収容容器としての金属製(具体的にはステンレス合金製)の分解釜7は円筒形状の本体壁7aを有する有底の密封容器である。分解釜7は筐体5の底部5aから立設されているボルト24上に載置されており、床側に熱が伝わりにくくなっている。保温塔6に収納された状態で分解釜7は上方寄り領域が保温塔6から上方に露出されている。本体壁7aの上端縁には全周にわたってフランジ15が形成されている。フランジ15の上にはフランジ15と同径の蓋16が配置されている。分解釜7はフランジ15と蓋16間にガスケット17を介在させた状態でアイボルト18によって共締めされることで蓋16が上方開口部を封塞する。蓋16の中央には透孔19が形成されている。透孔19には蒸発成分配送パイプ20が接続されている。蒸発成分配送パイプ20によって軽質分を下流の冷却部4に誘導する。
図3及び
図5に示すように、分解釜7の底板21内には電熱ヒーター22が収容されている。複数の(本実施の形態では4本)の棒状の電熱ヒーター22は相互に間隔を開けて平行かつ同一の高さ位置となるように底板21内の通路21aに嵌挿されている。中央寄りの2本の電熱ヒーター22に挟まれた位置には検出手段としての第1の温度センサー23が通路21aに嵌挿されている。第1の温度センサー23は熱電対からなる温度センサである。電熱ヒーター22及び第1の温度センサー23は筐体5の底部5aに立設されたホルダー25に固定されている。底板21の外周位置は断熱部材26によって包囲されている。
【0016】
分解釜7の上方寄り位置には分離手段としてのリアクター27が配設されている。リアクター27は加熱された分解釜7から蒸発するプラスチック原料由来の、主として熱分解された蒸発成分が上昇する位置に設けられた機構である。
図3に示すように、リアクター27は上下に配置された二枚の分離プレート28、29と分解釜7の本体壁7aで包囲された上部領域とから構成されている。
図3及び
図6(a)(b)に示すように、分離プレート28、29は平面視において円形で中央から周囲にかけて緩やかに下がった笠形状の銅製の板部材である。分離プレート28、29にはそれぞれ表裏に連通する複数の透孔31が形成されている。透孔31は蒸発成分が上昇する際に透過する孔となる。
上側に配置される第1の分離プレート28の透孔31は中心位置に1つとプレート周縁に形成された16個が中心から放射状に放射対称となるように配置されている。下側に配置される第2の分離プレート29の透孔31は中心位置に1つと第1の分離プレート28とは異なるパターンで(つまり、透孔31が上下方向においてなるべく重ならないように)同じ大きさの8個の透孔31が形成されるとともに、その外側に更に同じ大きさの8個の透孔31が形成されており、これら透孔31は中心から放射状に放射対称となるように配置されている。
図3に示すように、上下の分離プレート28、29は2本の屈曲されたロッド32で連結されている。ロッド32外周には図示しない雄ネジが形成されており、分離プレート28、29の対向位置に形成された任意の透孔31に嵌挿され、分離プレート28、29を挟んで上下に配置されたナット33による共締めによって固定されている。ロッド32とナット33によって分離プレート28、29は互いに所定間隔を維持した状態で保持される。分離プレート28、29は分解釜7の本体壁7a内周に形成されたリブ34に下側の分離プレート29が載置されることで支持されている。
図3に示すように、リアクター27内にはリアクター27内の温度を測定するための第2の温度センサー35が配設されている。第2の温度センサー35は熱電対からなる温度センサである。第2の温度センサー35は保温塔6と分解釜7に形成された透孔36、37から検出部が分解釜7内に導入されている。
【0017】
図2及び
図7に示すように、保温塔6のソケット13の先端には油分回収装置1の稼動時に透孔12を塞ぐためのネジ蓋41が配設されている。ネジ蓋41は握り部41aと本体外周の雄ネジ41bを備えている。ネジ蓋41は上下の透孔12位置に配設されたソケット13の雌ネジ13aに対して雄ネジ41bによって螺合される。作業者はネジ蓋41の握り部41aを操作して雄ネジ41bをソケット13側の雌ネジ13aに螺合させて締めることでソケット13、つまり保温塔6に連通する透孔12が塞がれることとなる。
加熱蒸留作業が終了し、次の加熱蒸留作業に入る際には、ネジ蓋41を外し、下側のソケット13(透孔12)から外気を図示しない送風装置によって保温塔6内の空隙Sに導入して分解釜7を冷却する。
【0018】
次に、回収・焼却部3の説明をする。
図1及び
図4に示すように、架台45上には冷却・回収装置46と焼却塔47が設置されている。冷却・回収装置46はラック48に支持された上下二段に配置された透明ガラス製の円筒形状の第1及び第2の水槽49、50を備えている。第1及び第2の水槽49、50はそれら水槽49、50の天板あるいは底板となる三段に配置された合金製のプレート51A~51Cによって支持されている。水槽49、50はプレート51A~51Cに形成された溝52内にOリング52aを介して水密となるように固定されている。
上方側に配置された冷却槽となる第1の水槽49内には冷却水が満たされ、導入配管53と導出配管54が配設されている。導入配管53は蒸発成分配送パイプ20に接続されている。導入配管53は銅製のコイル状に巻かれた冷却管55を備えている。冷却管55は蒸発成分配送パイプ20から送出された蒸発成分が冷却されて液体状の油分となった際に下方に流下するように先下がりの緩やかな傾斜が設けられて複数段に巻回されている。導入配管53下端は(先端)は三段の中間位置に配置されるプレート51Bに形成された流出口56に接続されており、液体状の油分は流出口56から下方に配置された回収槽となる第2の水槽50内に滴下する。
導出配管54はプレート51Bに形成された排出口57に接続され、第1の水槽49の上方のプレート51Aから外方に延出されている。第2の水槽50内の液化しなかった蒸発成分は導出配管54によって第1の水槽49を経由して焼却塔47に排出される。
中間位置に配置されるプレート51Bと下段位置に配置されるプレート51Cには内部の液体を排出するための排出通路58とドレーンコック59が配設されている。
【0019】
図4に示すように、焼却塔47は冷却・回収装置46の背面位置に配置されている。
焼却塔47は筐体61によって包囲されている。筐体61は方形の外形の筒体であり、上部に熱気を排出するための通気部としてのネットが形成された天板62が装着されている。
焼却塔47は筒状のステンレス合金製の本体63を備えている。本体63の下方位置には本体63内に連通するコネクタ64が配設され、冷却・回収装置46から延出される導出配管54の先端が接続されている(
図4では導出配管53の一部が1点鎖線で簡略化して示されている)。本体63上部位置には本体63を取り巻くようにバンドヒーター65が配設されている。
【0020】
次に、制御部4の説明をする。
制御部4は分解釜7内の電熱ヒーター22を制御する第1の加熱制御装置71と焼却塔47内のバンドヒーター65を制御する第2の加熱制御装置72から構成されている。第1の加熱制御装置71と第2の加熱制御装置72に電源を供給するための主電源装置は図示を省略する。
第1の加熱制御装置71には電熱ヒーター22と第1の温度センサー23と第2の温度センサー35がそれぞれ接続されている。第1の加熱制御装置71には第1の操作パネル74と第2の操作パネル75が配設されており、第1の温度センサー23により検出された温度は第1の操作パネル74に表示され、第2の温度センサー35により検出された温度は第2の操作パネル75に表示される。また、第1の操作パネル74及び第2の操作パネル75を操作して目標とする温度を設定することができる。第1の加熱制御装置71は操作パネル74、75に設定した温度に基づいてフィードバック制御を行い、操作パネル74、75に設定した温度に基づいて電熱ヒーター22を入り切りするフィードバック制御を実行する。具体的には、ワーク側(つまりリアクター27側)に設定されたまでは電熱ヒーター22がオンとなり、設定された温度以上になると電熱ヒーター22がオフとなる。ワーク側に設定された温度以下になると再び電熱ヒーター22がオンとなる。また、電熱ヒーター22に設定された温度以上になると過加熱となるため電熱ヒーター22がオフとなる制御である。
第2の加熱制御装置72にはバンドヒーター65が接続されている。第2の加熱制御装置72は温度調節ボタン76を備えている。第2の加熱制御装置7には加熱温度操作パネル77が配設されている。
【0021】
以上のような油分回収装置1の構成において、例えば次のように操作することでプラスチックから油分を回収することができる。
作業者は筐体5の蓋部5cを開放し、更に内部の分解釜7の蓋16を開放して原料プラスチックを投入する。原料プラスチック投入後は再び蓋16と、筐体5の蓋部5cを閉めて
図1の状態とする。
次いで作業者は、制御部4の第1の加熱制御装置71の入力スイッチ73を操作し起動させ同時に作業者は経験則に基づく情報から第1の温度センサー23と第2の温度センサー35によって分解釜7の加熱温度とリアクター27付近の温度を設定する。
電熱ヒーター22がオン状態となり時間の経過とともに温度が上昇すると(およそ100℃以上)徐々に原料プラスチックが溶け出す。更に温度が上昇すると原料プラスチックの熱分解されるようになる(およそ200℃以上)。熱分解によって原料プラスチックから蒸発成分が上昇するようになる。上昇する力は加熱による上昇気流だけでなく、分解釜7内の気圧の上昇による押圧力も加わることとなり、特に蒸発成分が蒸発成分配送パイプ20に至って後は気圧の上昇による押圧力の作用が大きい。
分解釜7が加熱されていくと分解釜7内のリアクター27内の温度も上昇していく。リアクター27付近の温度が常に求める温度(例えば400℃)になるように第1の加熱制御装置71によってフィードバック制御が実行される。
リアクター27に達した蒸発成分は、分離プレート28、29に接触するため分子量の大きな相対的に重いあるいは沸点の高めの生成物は気体状態から液体状態へと相転移しリアクター27より上方には進むことができなくなる。そのため、リアクター27より下流側に進んだ蒸発成分が軽質分として蒸発成分配送パイプ20から冷却・回収装置46側に搬出される。
【0022】
次に、回収・焼却部3の説明をする。
図1及び
図4に示すように、架台45上には冷却・回収装置46と焼却塔47が設置されている。冷却・回収装置46はラック48に支持された上下二段に配置された透明ガラス製の円筒形状の水槽49と油分回収槽50を備えている。水槽49及び油分回収槽50はそれら水槽49及び油分回収槽50の天板あるいは底板となる三段に配置された合金製のプレート51A~51Cによって支持されている。水槽49及び油分回収槽50はプレート51A~51Cに形成された溝52内にOリング52aを介して水密となるように固定されている。
上方側に配置された冷却槽となる水槽49内には冷却水が満たされ、導入配管53と導出配管54が配設されている。導入配管53は蒸発成分配送パイプ20に接続されている。導入配管53は銅製のコイル状に巻かれた冷却管55を備えている。冷却管55は蒸発成分配送パイプ20から送出された蒸発成分が冷却されて液体状の油分となった際に下方に流下するように先下がりの緩やかな傾斜が設けられて複数段に巻回されている。導入配管53下端は(先端)は三段の中間位置に配置されるプレート51Bに形成された流出口56に接続されており、液体状の油分は流出口56から下方に配置された油分回収槽50内に滴下する。
導出配管54はプレート51Bに形成された排出口57に接続され、水槽49の上方のプレート51Aから外方に延出されている。油分回収槽50内の液化しなかった蒸発成分は導出配管54によって水槽49を経由して焼却塔47に排出される。
中間位置に配置されるプレート51Bと下段位置に配置されるプレート51Cには内部の液体を排出するための排出通路58とドレーンコック59が配設されている。
【0023】
以上、本実施の形態のように構成することにより、次のような効果が奏されることとなる。
(1)分解釜7を下方に配置した電熱ヒーター22によって加熱するため、バーナー装置のような外付けの加熱手段が不要となり、非常に小型化、軽量化、低コスト化をすることができる。また、分解釜7内部にリアクター27があるためリアクター27部分を筐体で包囲する必要もなく、この点でも小型化、軽量化、低コスト化に寄与する。
(2)液体状の油分を回収する際に残る液化しない蒸発成分を処理する場合には、水に吸収させるという手段もあるが、その場合には別途水槽を用意しなければならず、その廃液も産業廃棄物として処理しなければならない。ところが、このように焼却塔47で焼却することでそれらの設備や処理等の必要がなくなり、この点でも小型化、軽量化、低コスト化に寄与する。
(3)液化しない蒸発成分を油分回収槽50から焼却塔47に導いて焼却する際に、焼却塔47側から上昇気流によって第油分回収槽50内の空気を引っ張ると同時に、分解釜7からの押圧力によって油分回収槽50内の空気を押すことになるため、特にポンプ等の装置を設けなくとも液化しない蒸発成分は焼却塔47に導くことができる。
(4)分解釜7における液体状の油分を回収する作業において、リアクター27で蒸発成分を軽質分と重質分とに分ける際には、リアクター27付近と電熱ヒーター22付近の両方の温度を確認しながら電熱ヒーター22の温度を調整することができるため、リアクター27の最適な条件を常に正確に定めることができる。
(5)上下二段に水槽49及び油分回収槽50を配置するようにしたため、水槽49で液化した油分は自然に下側の油分回収槽50に溜まることとなり、冷却・回収装置46のコンパクト化に寄与する。
(6)リアクター27は蒸発成分を軽質分と重質分とに分けるだけなので上下方向に長大化することなく、また、2つの成分だけを分別し細かにいくつもの分別域にわける必要がない。
(7)リアクター27内部はロッド32に吊り下げられた二枚の分離プレート28、29だけであるため、取り出しやすくまた洗浄も容易である。
(8)分解釜7を保温塔6によって保温しながら、保温塔6周囲については分解釜7の熱が遮蔽され断熱もされるため、筐体5が熱くなりすぎることがない。
【0024】
上記実施の形態は本発明の原理およびその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・油分回収装置1を構成する例えば分解釜7、冷却・回収装置46、焼却塔47等の具体的構成については上記は一例であって、他の形態でそれらを構成するようにしてもよい。
・材質を上記以外で構成してもよい。例えば分解釜7や保温塔6は上記以外の他の金属で構成するようにしてもよい。例えばリアクター27を構成する分離プレート28、29も上記以外の他の金属で構成するようにしてもよい。
・上記実施の形態では筐体5内に分解釜7が収容された保温塔6が配置された構成であったが、筐体5はなくとも実施可能である。また、筐体5があって逆に保温塔6がなくとも実施可能である。保温塔6がない場合には筐体5内部に断熱部材を配設したり、筐体5自体を不燃性の断熱部材(例えば、軽量気泡コンクリート等)で構築したりすることが可能である。
上記では上下二段の水槽49、油分回収槽50は透明なガラスであった。そのため、内部の液体の状態を目視することができるが、少なくとも水槽49は透明でなくともよい。また、ガラス以外の透明体、例えばアクリル樹脂等で水槽を構成してもよい。
・上記実施の形態では第1の加熱制御装置71によってフィードバック制御をするようにしたが、その他の方法、例えば作業者がセンサで取得した温度を目視して適宜加熱温度を調整するようにしてもよい。第2の加熱制御装置72もフィードバック制御で実行するようにしてもよい。
・本発明の適用においては、例えば特願2019-072445のような加熱部分と分離したリアクター25であってもよい。
【0025】
本願発明は上述した実施の形態に記載の構成には限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
また、意匠出願への変更出願により、全体意匠または部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが、全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと、部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては、装置の一部の部材としてもよいし、その部材の部分としてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1…油分回収装置、7…原料収容部としての分解釜、22…加熱手段としての電熱ヒーター、16…排気ダクト、27…分離手段としてのリアクター、47…焼却装置としての焼却塔、49…冷却手段の一部をなす水槽、50…回収槽としての油分回収水槽、55…冷却手段の一部をなす冷却管。