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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】テーパーTEMホーンアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/02 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
H01Q13/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020055420
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021158467
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】張間 勝茂
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-037969(JP,A)
【文献】張間 勝茂,「EMC測定のための改良TEMホーンアンテナの検討」,2016年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会講演論文集1,2016年,p.244
【文献】Ahmed Abbas H. Ameri et al.,"Study about TEM horn size reduction for ultrawideband radar application",2011 German Microwave Conference,2011年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された一対のアンテナ素子と、前記一対のアンテナ素子の一端部に接続された給電部とを備えるテーパーTEMホーンアンテナであって、
前記アンテナ素子は、前記一端部から前記一端部の反対側に形成された開口部に向けて直線テーパー状で幅方向に広がり、前記開口部の両端側から中央側に幅方向で狭くなる減幅部が形成され、
前記一対のアンテナ素子は、前記一端部から前記開口部まで、指数関数で表される曲線テーパー状で高さ方向に広がることを特徴とするテーパーTEMホーンアンテナ。
【請求項2】
前記アンテナ素子は、前記開口部の両端から所定サイズの領域が除去されていることを特徴とする請求項1に記載のテーパーTEMホーンアンテナ。
【請求項3】
前記領域は、前記開口部の両端から前記開口部の開口幅20%の位置で開口面に対して60°となる境界線までの最小領域以上、かつ、前記開口部の両端から前記開口幅50%の位置で前記開口面に対して60°となる境界線までの最大領域以下であることを特徴とする請求項2に記載のテーパーTEMホーンアンテナ。
【請求項4】
奥行方向における前記一端部からの距離dと、前記一端部から前記開口部までの全長Lと、前記一端部における前記アンテナ素子の幅wと、前記領域を除去する前の前記アンテナ素子の全幅wとが含まれる式(1)及び式(2)を用いて、
【数1】
前記領域を除去する前の前記アンテナ素子の幅w(d)が表されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のテーパーTEMホーンアンテナ。
【請求項5】
前記一端部における入力インピーダンスZと、前記開口部における特性インピーダンスZとが含まれる式(3)~(5)を用いて、
【数2】
前記一対のアンテナ素子の間隔h(d)が表されることを特徴とする請求項4に記載のテーパーTEMホーンアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接放射イミュニティ試験等のEMC試験に用いるテーパーTEMホーンアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
国際規格の近接放射イミュニティ試験では、TEMホーンアンテナの使用を規定している(非特許文献1)。このTEMホーンアンテナは、対向して配置された一対の金属プレートからなり、反射の影響を低減するために、給電部及び開口部の特性インピーダンスの整合を考慮する必要がある。
【0003】
従来、直線状の広がりを有するプレートに抵抗装荷した直線テーパーTEMホーンアンテナが知られている(非特許文献2,3)。また、指数関数テーパー伝送線路をプレート構造に適用することで、抵抗装荷を不要とした指数関数テーパーTEMホーンアンテナも知られている(非特許文献4,5)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】IEC 61000-4-39, Electromagnetic Compatibility (EMC) -Part4-39: Testing and measurement techniques - Radiated fields in close proximity - Immunity test, 2017.
【文献】M. Kanda,“The effects of resistive loading of TEM horns,” IEEE Trans. Electromagn. Compat., EMC-24, pp. 245-255, May 1982.
【文献】C. A. Grosvenor, R. T. Johnk, D. R. Novotny, S. Canales, B. Davis, and J. Veneman,“TEM horn antenna design principles,”NIST Technical Note 1544, Jan. 2007.
【文献】H. Choi and S. Lee,“Design of an exponentially-tapered TEM horn antenna for the wide broadband communication,”Microw. Opt. Technol. Lett., vol. 40, no. 6, pp. 531-534, March 2004.
【文献】K. Harima,“Numerical estimation for TEM horn antennas with transmission line taper shapes,”IEICE Communications Express, vol. 6, no. 9, pp. 560-565, Sep. 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の直線テーパーTEMホーンアンテナは、プレート上に装荷された抵抗のため、放射効率が低下するという問題がある。また、従来の指数関数テーパーTEMホーンアンテナは、最大利得方向とアンテナの正面方向とが一致しない周波数帯が存在するという構造に起因する問題がある。さらに、従来の直線テーパーTEMホーンアンテナ及び指数関数テーパーTEMホーンアンテナは、下限周波数の半波長以上のアンテナ長となるため、300MHz帯以下で大型化してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、広い周波数帯域にわたって放射効率が高く、良好な反射特性及び放射特性を有し、かつ、小型なテーパーTEMホーンアンテナを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係るテーパーTEMホーンアンテナは、対向して配置された一対のアンテナ素子と、一対のアンテナ素子の一端部に接続された給電部とを備えるテーパーTEMホーンアンテナであって、アンテナ素子は、一端部から一端部の反対側に形成された開口部に向けて直線テーパー状で幅方向に広がり、開口部の両端側から中央側に幅方向で狭くなる減幅部が形成され、一対のアンテナ素子は、一端部から開口部まで、指数関数で表される曲線テーパー状で高さ方向に広がる構成とした。
【0008】
かかるテーパーTEMホーンアンテナによれば、特性インピーダンスが連続的に変化するようにテーパー伝送線路の特性インピーダンスに一致させた直線テーパー状及び曲線テーパー状からなるハイブリッド構造を採用し、開口部の両端から所定サイズの領域を除去した。これにより、テーパーTEMホーンアンテナによれば、抵抗装荷によるインピーダンス整合が必要なく、最大利得方向とアンテナの正面方向とを一致させることができる。従って、テーパーTEMホーンアンテナによれば、広い周波数帯域にわたって放射効率が高く、良好な反射特性及び放射特性を有し、かつ、小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、広い周波数帯域にわたって放射効率が高く、良好な反射特性及び放射特性を有し、かつ、小型なテーパーTEMホーンアンテナを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るテーパーTEMホーンアンテナの概略構成図であり、(a)は領域を除去した後を示し、(b)は領域を除去する前を示す。
図2】(a)は実施形態に係るテーパーTEMホーンアンテナの平面図であり、(b)はテーパーTEMホーンアンテナの側面図である。
図3】実施形態において、アンテナ素子から除去する領域を説明する説明図である。
図4】(a)~(c)は、テーパーTEMホーンアンテナの別例を示す平面図である。
図5】(a)は実施例における利得特性を示すグラフであり、(b)は比較例における利得特性を示すグラフである。
図6】(a)は実施例における反射特性を示すグラフであり、(b)は比較例における反射特性を示すグラフである。
図7】(a)~(f)は、実施例においてアンテナの開口面から10cm離れた場所で代表的な試験周波数における電界分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。但し、以下に説明する実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、実施形態において、同一の手段には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0012】
[テーパーTEMホーンアンテナの構成]
以下、実施形態に係るテーパーTEMホーンアンテナ1の構成を説明する。
図1(a)に示すように、テーパーTEMホーンアンテナ1は、対向して配置された一対のアンテナ素子10(10,10)と、一対のアンテナ素子10の一端部に接続された給電部20とを備える。
【0013】
以後、水平方向(幅方向)をX軸、垂直方向(高さ方向)をY軸、及び、奥行方向をD軸とする。すなわち、水平方向、垂直方向及び奥行方向が互いに直交する3次元座標系となる。
また、後記する減幅部14を形成する前のアンテナ素子を「アンテナ素子90」と記載し、減幅部14を形成した後のアンテナ素子を「アンテナ素子10」と記載する。以後、必要に応じて、アンテナ素子10とアンテナ素子90とを区別して説明する。また、図1(a)及び図2(a)では、アンテナ素子90を破線で図示した。
また、2枚のアンテナ素子をまとめて説明する場合、単に「アンテナ素子10」と記載する。
【0014】
一対のアンテナ素子10は、2枚のアンテナ素子10,10が対向するように配置されており、電磁波を放射するものである。つまり、2枚のアンテナ素子10,10の平坦面が、互いに向き合うように配置されている。また、2枚のアンテナ素子10,10は、同一形状及び同一サイズである。例えば、アンテナ素子10は、アルミニウム、銅、黄銅などの金属プレートで形成可能であり、その厚さが0.7mmである。
【0015】
アンテナ素子10は、一端部11に給電部20が接続されており、奥行方向で一端部11の反対側に開口部12が形成されている。以後、開口部12におけるX-Y平面を「開口面」と記載する。
【0016】
ここで、アンテナ素子10は、給電部20から開口部12まで特性インピーダンスが連続的に変化するように、直線テーパー状及び曲線テーパー状からなるハイブリッド構造を有する。具体的には、図2(a)に示すように、テーパーTEMホーンアンテナ1を垂直方向から見た場合、アンテナ素子10は、一端部11から開口部12に向けて、直線テーパー状で水平方向に広がっている。つまり、奥行方向で一端部11から開口部12に近づくほど、アンテナ素子90の幅が直線状に広くなる。また、図2(b)に示すように、テーパーTEMホーンアンテナ1を水平方向から見た場合、アンテナ素子10,10の間隔は、一端部11から開口部12まで、指数関数で表される曲線テーパー状で垂直方向に広くなる。つまり、奥行方向で一端部11から開口部12に近づくほど、アンテナ素子10,10の間隔が曲線状に広くなる。
【0017】
さらに、図1(a)及び図2(a)に示すように、アンテナ素子10は、開口部12の両端側から中央側に幅方向で狭くなる減幅部14が形成されている。つまり、アンテナ素子10は、奥行方向で中央付近から開口部12にかけて、アンテナ素子10の幅が狭くなるように減幅部14が形成されている。ここでは、アンテナ素子90の両端から所定サイズの領域13を除去することで、アンテナ素子10に減幅部14を形成できる。本実施形態では、各アンテナ素子10,10の両端から合計4カ所、三角形状の領域13~13が除去されている。なお、全領域13~13は、同一形状及び同一サイズである。
【0018】
給電部20は、アンテナ素子10の一端部11に接続されており、アンテナ素子10が放射する電磁波の電力を給電するものである。例えば、給電部20としては、アンテナ素子10,10のそれぞれに接続された同軸給電部があげられる。
【0019】
[アンテナ素子の構造]
以下、アンテナ素子10の構造について詳細に説明する。
以後、アンテナ素子10の全長、全幅及び全高をそれぞれL、W、Hとして説明する。なお、アンテナ素子10の全長Lは、奥行方向における一端部11から開口部12まで長さを表す。また、領域13を除去する前のアンテナ素子10の全幅Wは、アンテナ素子90の全幅と等価であり、水平方向における開口部12の幅を表す。また、アンテナ素子10の全高Hは、垂直方向における開口部12の高さを表す。
【0020】
図2(a)に示すように、任意の距離dにおいて、領域13を除去する前のアンテナ素子10の幅w(d)は、アンテナ素子90の幅と等価であり、以下の式(1)及び式(2)で表される。なお、一端部11の幅w=w(0)であり、開口部12の幅W=w=w(L)である。また、距離dは、奥行方向における一端部11から任意位置までの距離を表す。
【0021】
【数1】
【0022】
図2(b)に示すように、任意の距離dにおいて、アンテナ素子10,10の間隔h(d)は、以下の式(3)~式(5)に示すように指数関数(正確には、指数関数と一次関数との積)で表される。なお、一端部11における入力インピーダンスZ=Z(0)であり、開口部12における特性インピーダンスZ=Z(L)である。
【0023】
【数2】
【0024】
すなわち、テーパーTEMホーンアンテナ1は、前記した式(4)に示すように、任意の距離dにおいて、指数関数テーパー伝送線路の特性インピーダンスZ(d)を有する。ここで、微小幅を有する多数の平行平板でアンテナ素子10を構成する場合を考える。この場合、2枚のアンテナ素子10,10の間隔h(d)は、指数関数テーパー伝送線路の特性インピーダンスZ(d)と、直線テーバ状で表される幅w(d)とを用いて、前記した式(3)で表される。
【0025】
このようにして、テーパーTEMホーンアンテナ1では、アンテナの特性インピーダンスがテーパー伝送線路の特性インピーダンスを維持するように、アンテナ素子10の幅w(d)及び間隔h(d)を決定できる。
【0026】
以下、図3を参照し、アンテナ素子10の両端から除去する領域13を説明する。なお、図3では、図面を見やすくするために、アンテナ素子10の左端12から領域13を除去することとして説明する。当然ながら、アンテナ素子10の右端12も左端12と同様に除去することは言うまでもない(図3不図示)。また、図3では、図面を見やすくするために、アンテナ素子10を破線で図示すると共に、給電部20の図示を省略した。
【0027】
図3に示すように、領域13は、最小領域Rmin以上、かつ、最大領域Rmax以下となる領域である。ここで、最小領域Rminは、アンテナ素子10の左端12から開口幅Wの20%の位置wminで、開口面に対してθ=60°となる境界線Lminまでの領域である。また、最大領域Rmaxは、アンテナ素子10の左端12から開口幅Wの50%の位置wmaxで、開口面に対してθ=60°となる境界線Lmaxまでの領域である。すなわち、アンテナ素子10の左端12から、最大領域Rmaxと最小領域Rminとの差分となる範囲内(図3にハッチングで図示した範囲内)で除去すればよい。
【0028】
例えば、図2(a)のアンテナ素子10は、その両端から図3のハッチングで図示した範囲内である開口幅Wの37%の位置wで開口面に対してθ=50°となる境界線までの領域13を除去している。また、図4(a)に示すように、アンテナ素子10は、その両端から開口幅Wの46%の位置で開口面に対してθ=43°となる境界線までの領域13を除去してもよい。このように、アンテナ素子10は、図3のハッチングで図示した範囲内で直線状に除去できる。なお、アンテナ素子10は、位置wが開口幅Wの50%未満の場合に不等辺6角形状となり、位置wが開口幅Wの50%のときに不等辺5角形状となる。
【0029】
また、アンテナ素子10は、図3のハッチングで図示した範囲内であれば、曲線状に除去してもよい。図4(b)に示すように、アンテナ素子10の両端から、凹曲線状の領域13を除去してもよい。この場合、アンテナ素子10は、水平方向に膨らむような減幅部14が形成される。また、図4(c)に示すように、アンテナ素子10の両端から、凸曲線状の領域13を除去してもよい。この場合、アンテナ素子10は、水平方向で縮まるような減幅部14が形成される。
なお、アンテナ素子10の製造方法は、任意である。例えば、図1(b)のアンテナ素子90の両端から領域13を切去すればよい。
【0030】
[作用・効果]
実施形態に係るテーパーTEMホーンアンテナ1によれば、直線テーパー状及び曲線テーパー状からなるハイブリッド構造を採用し、開口部12の両端から所定サイズの領域13を除去したので、特性インピーダンス整合のための抵抗装荷が必要なく、最大利得方向とアンテナの正面方向とを一致させることができる。これにより、テーパーTEMホーンアンテナ1によれば、広い周波数帯域にわたって放射効率が高く、良好な反射特性及び放射特性を有し、かつ、小型化を図ることができる。
【実施例
【0031】
以下、実施例として、図1(a)のテーパーTEMホーンアンテナ1の評価結果について説明する。本実施例では、アンテナ素子10の全長L=全高H=全幅W=24.5cmという条件で、テーパーTEMホーンアンテナ1の特性を最適化した。具体的には、テーパーTEMホーンアンテナ1は、開口幅Wの37%の位置wで開口面に対してθ=50°となる境界線までの領域13を、アンテナ素子10の両端から除去した。また、給電部20の入力インピーダンスを50Ωとして、開口部12の特性インピーダンスを377Ωとする。
【0032】
例えば、従来の指数関数テーパーTEMホーンアンテナでは、アンテナ素子の全長が56cmである。これに対し、テーパーTEMホーンアンテナ1では、アンテナ素子10の全長Lが半分以下となり、従来よりも大幅に小型化できる。
【0033】
ここで、図1(b)に示すように、アンテナ素子90を備えるテーパーTEMホーンアンテナを比較例として説明を続ける。なお、比較例に係るテーパーTEMホーンアンテナは、アンテナ素子90から領域13を除去していない以外、実施例と同一構成である。
【0034】
実施例に係るテーパーTEMホーンアンテナ1の特性(利得特性、反射特性)を図5及び図6に示した。なお、これら利得特性及び反射特性は、有限積分法による計算結果(シミュレーション結果)である。
図5(a)は実施例における利得特性を示すグラフであり、図5(b)は比較例における利得特性を示すグラフである。また、図5では、横軸が周波数であり、縦軸が利得である。また、図5では、各周波数におけるアンテナの正面方向の利得を実線で図示し、各周波数における最大利得を破線で図示した。
【0035】
図5(a)に示すように、実施例では、全周波数帯域において、実線及び破線が重なっており、正面方向で最大利得となっている。このように、実施例に係るテーパーTEMホーンアンテナ1は、ビーム割れのない指向性を有する。一方、図5(b)に示すように、比較例では、約4GHz~6GHzの周波数帯域において、実線及び破線がずれており、アンテナの正面方向で最大利得となっていない。
【0036】
図6(a)は実施例における反射特性を示すグラフであり、図6(b)は比較例における反射特性を示すグラフである。また、図6では、横軸が周波数であり、縦軸が電圧定在波比(VSWR:Voltage Standing Wave Ratio)である。また、図6では、近接放射イミュニティ試験のアンテナに関する規格制限値を破線で図示した。
【0037】
図6(a)に示すように、実施例では、全周波数帯域でVSWRが規格制限値未満であり、近接放射イミュニティ試験の規格を完全に満足している。一方、図6(b)に示すように、比較例では、VSWRが規格制限値を超える周波数帯域が存在している。このように、実施例に係るテーパーTEMホーンアンテナ1は、近接放射イミュニティ試験の規格を完全に満足している。
【0038】
近接放射イミュニティ試験では、照射面の電界均一領域を電界最大値から4dBの範囲と規定している。図7は、アンテナの開口面から10cm離れた場所での代表的な試験周波数における電界分布を示すグラフである。図7では、横軸が水平方向の位置であり、縦軸が垂直方向の位置であり、0cmがアンテナ素子10の開口部12の中心を表す。なお、この電解分布は、シミュレーションによる計算例である。
【0039】
図7(a)~(f)に示すように、実施例では、全周波数帯域でアンテナ近傍において破綻のない良好な電界照射領域を形成できている。図7(f)に示すように、近接放射イミュニティ試験で重要な高周波数帯域において、十分な広さの電界照射領域が確保されている。
【0040】
以上のように、実施例に係るテーパーTEMホーンアンテナ1は、抵抗装荷が不要なので高い放射効率を有し、全試験周波数で近接放射イミュニティ試験の規格を満足する反射特性を有する。さらに、実施例に係るテーパーTEMホーンアンテナ1は、ビーム割れのない指向性を有し、アンテナ近傍において良好な電界照射領域を形成可能となる放射特性を有する。このように、実施例に係るテーパーTEMホーンアンテナ1は、EMC試験用の小型アンテナとして最適であると考えられる。
【符号の説明】
【0041】
1 テーパーTEMホーンアンテナ
10,10,10 アンテナ素子
11 一端部
12 開口部
13 除去領域
14 減幅部
20 給電部
90,90,90 アンテナ素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7