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特許7511883アーチ構造物用の外型枠、及び、その移設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】アーチ構造物用の外型枠、及び、その移設方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
E21D11/10 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020140230
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035720
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501360120
【氏名又は名称】テクノプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥平 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐土原 大輔
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-053574(JP,A)
【文献】特開2004-353230(JP,A)
【文献】特開2005-273378(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02472057(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーチ構造物の延長方向に並べて配置された複数のアーチ状の外型枠ブロックを備え、
前記各外型枠ブロックが、前記アーチ構造物の幅方向の両側に位置する一対の側部ピースと、前記一対の側部ピースの間に位置しかつ前記アーチ構造物の幅方向における端部が前記一対の側部ピースの上端部に連結される頂部ピースとを備え、
前記アーチ構造物の幅方向における前記頂部ピースの端面が、前記側部ピースの上端面よりも前記アーチ構造物の幅方向の中心側に配置されている、アーチ構造物用の外型枠。
【請求項2】
前記アーチ構造物の幅方向における前記頂部ピースの端面が、鉛直方向に沿った面である、請求項1に記載のアーチ構造物用の外型枠。
【請求項3】
前記側部ピースと前記頂部ピースとを連結する連結部材を備え、
前記連結部材が、前記アーチ構造物の幅方向における前記頂部ピースの端面に接触する第1接触面と、前記側部ピースの上端面に接触する第2接触面とを有している、請求項1又は2に記載のアーチ構造物用の外型枠。
【請求項4】
前記連結部材が、前記頂部ピースの外周面と前記側部ピースの外周面とに渡って配置されかつ前記頂部ピース及び前記側部ピースに連結される連結板と、
前記連結板から前記頂部ピースと前記側部ピースとの間に向けて突出し、前記第1接触面及び前記第2接触面を有する当て具とを有している、請求項3に記載のアーチ構造物用の外型枠。
【請求項5】
前記当て具が、正面視において前記第1接触面と前記第2接触面とを2辺とする三角形状である、請求項4に記載のアーチ構造物用の外型枠。
【請求項6】
一対の側部ピースと頂部ピースとを有するアーチ状の第1外型枠ブロックと、一対の側部ピースと頂部ピースとを有するアーチ状の第2外型枠ブロックとを含み、前記第1外型枠ブロックと前記第2外型枠ブロックとがアーチ構造物の延長方向において隣接しかつ連結されているアーチ構造物用の外型枠の移設方法であって、
前記第1外型枠ブロックにおける前記側部ピースを前記第1外型枠ブロックにおける前記頂部ピース及び前記第2外型枠ブロックから取り外す第1ステップ、
前記第1ステップの後に、前記第1外型枠ブロックの前記側部ピースを移設する第2ステップ、
前記第2ステップの後に、前記第1外型枠ブロックの前記頂部ピースを前記第2外型枠ブロックから取り外す第3ステップ、及び
前記第3ステップの後に、前記第1外型枠ブロックの前記頂部ピースを、すでに移設された前記第1外型枠ブロックの前記側部ピースに連結する第4ステップ、を含む、アーチ構造物用の外型枠の移設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル坑門等のアーチ構造物の成形に用いられる外型枠、及び当該外型枠の移設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルの出入り口には、地山からの落石を防止したり景観をよくしたりするために、アーチ状に形成された突出型や竹割り式等の坑門(アーチ構造物)が多用されている。
例えば、特許文献1に記載されているアーチ構造物は、トンネルの坑口に内型枠と外型枠とを設置し、両型枠の間に生コンクリートを流し込んで所定期間養生した後、型枠を撤去することによって形成されている。
【0003】
特許文献1記載の外型枠は、アーチ状に形成された外型枠ブロックをアーチ構造物の延長方向に複数個(例えば4個)並設することにより構成されている。各外型枠ブロックは、アーチ構造物の幅方向の両側に配置される1対の下側外型枠(側部ピース)と、一対の下側外型枠の間に配置される上側外型枠(頂部ピース)とからなる。各外型枠ブロックは、一対の下側外型枠をアーチ構造物の床版に連結した後、各下側外型枠の上端部に上側外型枠の両端部を連結することによって組み立てられる。外型枠は、複数の外型枠ブロックを順番に並べて組み立てつつ隣接する外型枠ブロック同士をボルトで連結することによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-53574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のような外型枠を用いて、当該外型枠の長さ以上に長いアーチ構造物を成形する場合、外型枠の長さに相当する1区間のアーチ構造物を成形した後、当該外型枠を一旦分解し、成形済みのアーチ構造物に隣接する場所(移設先)で外型枠を再び組み立て、2区間目以降のアーチ構造物を成形する作業が行われる。この場合、外型枠の移設作業は、次のような手順で行われる。
(1)アーチ構造物の延長方向の端部に配置された外型枠ブロックの下側外型枠と上側外型枠との連結を解き、上側外型枠をクレーンで吊り上げて取り外し、地面に仮置きする。
(2)上側外型枠が取り外された一対の下側外型枠を所定の移設先に移設する。
(3)移設済みの一対の下側外型枠に、地面に仮置きしていた上側外型枠を連結し、一の外型枠ブロックを組み立てる。
(4)他の外型枠ブロックも同様の手順(1)~(3)で移設する。
【0006】
以上の移設作業においては、各外側型枠ブロックの上側外型枠を地面に仮置きする手順が発生する。そのため、作業工程が多くなるとともに仮置きのためのスペースを別途確保する必要があった。
【0007】
本発明は、少ない作業工程で移設作業を行うことができる、アーチ構造物用の外型枠、及び、外型枠の移設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明のアーチ構造物用の外型枠は、
アーチ構造物の延長方向に並べて配置された複数のアーチ状の外型枠ブロックを備え、
前記各外型枠ブロックが、前記アーチ構造物の幅方向の両側に位置する一対の側部ピースと、前記一対の側部ピースの間に位置しかつ前記アーチ構造物の幅方向における端部が前記一対の側部ピースの上端部に連結される頂部ピースとを備え、
前記アーチ構造物の幅方向における前記頂部ピースの端面が、前記側部ピースの上端面よりも前記アーチ構造物の幅方向の中心側に配置されている。
【0009】
上記構成の外型枠は、アーチ構造物の幅方向における頂部ピースの端面が、側部ピースの上端面よりもアーチ構造物の幅方向における中心側に配置されているので、外型枠を分解して移設する際に、一の外型枠ブロックにおける頂部ピースと側部ピースとの連結を解き、頂部ピースを隣接する他の外型枠ブロックに連結したまま、当該頂部ピースに干渉することなく側部ピースのみをクレーンで吊り上げて取り外し、所定の移設先に移設することができる。そして、頂部ピースを隣接する他の外型枠ブロックから取り外し、すでに移設された側部ピースへ頂部ピースを直接移動させて当該側部ピースに連結することができる。したがって、当該頂部ピースを地面に仮置きする必要がなくなり、少ない作業工程により移設作業を行うことができる。
【0010】
(2) 好ましくは、前記アーチ構造物の幅方向における前記頂部ピースの端面が、鉛直方向に沿った面である。
このような構成によって、一の外型枠ブロックにおける頂部ピースを隣接する他の外型枠ブロックに連結したまま、当該頂部ピースに干渉することなく側部ピースのみをクレーンで吊り上げて取り外すことができる。
【0011】
(3) 頂部ピースと側部ピースとは直接的に連結してもよいが、他の部材を介して間接的に連結してもよい。この場合、外型枠は、前記側部ピースと前記頂部ピースとを連結する連結部材を備え、前記連結部材が、前記アーチ構造物の幅方向における前記頂部ピースの端面に接触する第1接触面と、前記側部ピースの上端面に接触する第2接触面とを有していることが好ましい。
【0012】
このような構成によって、頂部ピースの端面と側部ピースの上端面とを直接接触させることなく連結部材を用いて連結することができ、連結部材を取り外すことで頂部ピースの端面と側部ピースの上端面とを離反させることができるので、側部ピースを吊り上げたときの頂部ピースとの干渉をより少なくすることができる。
【0013】
(4) 好ましくは、前記連結部材が、前記頂部ピースの外周面と前記側部ピースの外周面とに渡って配置されかつ前記頂部ピース及び前記側部ピースに連結される連結板と、
前記連結板から前記頂部ピースと前記側部ピースとの間に向けて突出し、前記第1接触面及び前記第2接触面を有する当て具とを有している。
【0014】
(5) 好ましくは、前記当て具が、正面視において前記第1接触面と前記第2接触面とを2辺とする三角形状である。
このような構成によって、連結部材の当て具を、アーチ構造物の外周面に接触させないようにすることができる。そのため、成形済のアーチ構造物の外周面に連結部材が付着することがなく、連結部材を頂部ピース及び側部ピースから容易に取り外すことができる。
【0015】
(6) 本発明は、一対の側部ピースと頂部ピースとを有するアーチ状の第1外型枠ブロックと、一対の側部ピースと頂部ピースとを有するアーチ状の第2外型枠ブロックとを含み、前記第1外型枠ブロックと前記第2外型枠ブロックとがアーチ構造物の延長方向において隣接しかつ連結されているアーチ構造物用の外型枠の移設方法であって、
前記第1外型枠ブロックにおける前記側部ピースを前記第1外型枠ブロックにおける前記頂部ピース及び前記第2外型枠ブロックから取り外すステップ、
前記第1外型枠ブロックの前記側部ピースを移設するステップ、
前記第1外型枠ブロックの前記頂部ピースを前記第2外型枠ブロックから取り外すステップ、及び
前記第1外型枠ブロックの前記頂部ピースを、すでに移設された前記第1外型枠ブロックの前記側部ピースに連結するステップ、を含む。
【0016】
上記の移設方法によれば、第1外型枠ブロックを構成する頂部ピース及び側部ピースのうち、側部ピースを先に移設し、その後、頂部ピースを移設することによって、頂部スペースを仮置きするための工程が不要になり、移設作業を少ない工程で行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、少ない作業工程で移設作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るアーチ構造物用の型枠の正面図である。
図2】型枠の外型枠の側面図である。
図3】外型枠の斜視図である。
図4】外型枠の外側型枠フレームの斜視図である。
図5】外型枠の外側型枠パネルの斜視図である。
図6】外型枠の下部の固定構造を示す断面説明図である。
図7図1のA部を拡大して示す説明図である。
図8】頂部ピースと側部ピースとの連結を解いた状態を示す説明図である。
図9】(a)は、連結部材の正面図、(b)は、連結部材の平面図である。
図10】アーチ構造物の施工方法を示す説明図である。
図11】アーチ構造物の施工方法を示す説明図である。
図12】アーチ構造物の施工方法を示す説明図である。
図13】外型枠の移設方法を示す説明図である。
図14】外型枠の移設方法を示す説明図である。
図15】連結部材の変形例を示す正面図である。
図16】連結部材の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るアーチ構造物用の型枠10を示す正面図である。図2は、型枠10の外型枠11の側面図である。図3は、外型枠11の斜視図である。
図1に示すように、本実施形態のアーチ構造物用の型枠10は、例えば、アーチ構造物の一例であるトンネル坑門を成形するために用いられる。型枠10は、外型枠11と、内型枠12とを備える。外型枠11は、アーチ構造物の外周面を成形する。内型枠12は、アーチ構造物の内周面を成形する。なお、本実施形態の型枠10は、トンネル坑門を成形する場合、妻側端面がほぼ垂直となっている突出型坑門を成形するものとなる。図1における矢印Xは、型枠10(及びアーチ構造物)の幅方向を示し、図2における矢印Yは、アーチ構造物の内部空間が延びる方向(本明細書では、「アーチ構造物の延長方向」ともいう)を示している。
【0020】
外型枠11は、外側型枠フレーム21と、外側型枠パネル31とを有する。
外側型枠フレーム21は、正面から見てアーチ状に形成されている。外側型枠フレーム21は、複数の鋼材からなるフレーム部材23,24を枠組みすることによって構成されている。外側型枠パネル31は、外側型枠フレーム21の内側に取り付けられている。外側型枠パネル31は、アーチ構造物の外周面に沿う形状に形成されている。
【0021】
本実施形態の外型枠11は、アーチ状に形成された複数の外型枠ブロック20をアーチ構造物の延長方向Yに並べて配置することにより構成されている。言い換えると、本実施形態の外型枠11は、アーチ構造物の延長方向Yに複数に分割されている。本実施形態では、4個の外型枠ブロック20によって外型枠11が構成されている。互いに隣接する外型枠ブロック20は、ボルト、ナット等の締結具によって連結される。各外型枠ブロック20は、それぞれ外側型枠フレーム21と、外側型枠パネル31とを有する。
【0022】
内型枠12は、例えば、トンネル内部の覆工コンクリートを成形するためのスライドセントルが代用される。内型枠12は、内側型枠フレーム12Aと、内側型枠パネル12Bとを有する。内側型枠フレーム12Aは、複数の鋼材からなるフレーム部材を枠組みすることによって形成されている。内側型枠フレーム12Aは、アーチ構造物としてのトンネル内に敷設されたレール14上をアーチ構造物の延長方向Yに移動可能である。内側型枠パネル12Bは、内側型枠フレーム12Aの外側に設けられている。内側型枠パネル12Bは、アーチ構造物の内周面に沿う形状に形成されている。
【0023】
外型枠11の外側型枠パネル31と、内型枠12の内側型枠パネル12Bとの間の空間には、鉄筋13が配設されている。アーチ構造物は、外側型枠パネル31と内側型枠パネル12Bとの間に生コンクリートを流し込み、所定期間養生することによって成形される鉄筋コンクリート構造である。
【0024】
(外型枠の具体的構造)
以下、外型枠11の構造をより具体的に説明する。
図4は、外型枠11の外側型枠フレーム21の斜視図である。図1図4に示すように、外型枠11を構成する各外型枠ブロック20の外側型枠フレーム21は、複数のフレーム部材23,24を格子状に枠組みすることによって構成されている。複数のフレーム部材23,24は、図1に示す正面視でアーチ形状に形成された複数の第1フレーム部材23と、アーチ構造物の延長方向Yに沿って直線状に延びる複数の第2フレーム部材24とを有する。複数の第1フレーム部材23は、アーチ構造物の延長方向Yに間隔をあけて並べて配置されている。複数の第2フレーム部材24は、第1フレーム部材23の外周面に周方向に間隔をあけて配置されている。第1フレーム部材23及び第2フレーム部材24は、H型鋼等の鋼材により構成されている。
【0025】
外側型枠フレーム21は、幅方向X(又は周方向)に3分割されている。外側型枠フレーム21は、幅方向Xの両側に配置される一対の側部ピース21Aと、一対の側部ピース21Aの間に配置される頂部ピース21Bとからなる。
【0026】
図6は、外型枠11の下部の固定構造を示す断面説明図である。
図6に示すように、側部ピース21Aは、アーチ構造物の底部に形成されたインバート15に固定されている。インバート15の側面には、2本の埋込ボルト16が上下に並べて埋設されている。側部ピース21Aの外周面には、アーチ構造物の延長方向Yに延びる複数の押さえ部材17が上下に並べて配置されている。埋込ボルト16には、連結ボルト18の一端部に形成された雌ねじ18aが連結され、この連結ボルト18の他端部が上下の押さえ部材17の間に挿入されている。連結ボルト18の他端部に形成された雄ねじ18bには、座金19とナット18cとが取り付けられ、ナット18cは、座金19を押さえ部材17に押し付けている。以上の構成により、側部ピース21Aがインバート15の側面に固定される。
【0027】
図7(a)は、図1のA部を拡大して示す説明図である。図7に示すように、側部ピース21Aと頂部ピース21Bとは、連結部材26によって連結されている。この連結部材26は、側部ピース21Aにおける第1フレーム部材23と、頂部ピース21Bにおける第1フレーム部材23とに跨って配置されている。
【0028】
図8は、頂部ピース21Bと側部ピース21Aとの連結を解いた状態を示す説明図である。図9(a)は、連結部材26の正面図、(b)は、連結部材26の平面図である。
図7図9に示すように、連結部材26は、連結板26aと、当て具26bとを有する。連結板26aは、第1フレーム部材23の外周面に沿って湾曲している。連結板26aは、側部ピース21A及び頂部ピース21Bに跨って第1フレーム部材23の外周面に接触し、それぞれにボルト及びナットからなる締結具71で側部ピース21A及び頂部ピース21Bに連結されている。連結板26aの外面(上面)には、補強リブ26a1が設けられている。補強リブ26a1は、連結板26aに対して略垂直な姿勢で、第1フレーム部材23の周方向に沿って延びている。連結板26aには、締結具71のボルトを挿通させるための孔26a2が形成されている。側部ピース21A及び頂部ピース21Bにも、当該ボルトを挿通させるための孔が形成されている。
【0029】
当て具26bは、連結板26aの内面(下面)に設けられている。当て具26bは、正面視において三角形状に形成され、その一辺が連結板26aの内面に固定されている。当て具26bの他の2辺は、頂部ピース21Bの端面21B1に接触する第1接触面26b1と、側部ピース21Aの上端面21A1に接触する第2接触面26b2とを構成している。第1接触面26b1と第2接触面26b2との間の角度θは、60°~90°程度に設定されている。
【0030】
頂部ピース21Bの端面21B1は、鉛直方向に沿って配置された平坦面に形成されている。したがって、連結部材26が頂部ピース21B及び側部ピース21Aに取り付けられている状態で、第1接触面26b1も鉛直方向に沿って配置された平坦面に形成されている。また、頂部ピース21Bの端面21B1は、側部ピース21Aの上端面21A1の全体よりもアーチ構造物の幅方向Xの中心CL側(図7における左側)に配置されている。頂部ピース21Bと、当て具26bとは、ボルト及びナットからなる締結具72で締結されている。
【0031】
側部ピース21Aの上端面21A1は、水平、又は、水平に近い姿勢で配置された平坦面に形成されている。したがって、連結部材26が頂部ピース21B及び側部ピース21Aに取り付けられている状態で、第2接触面26b2も水平、又は、水平に近い姿勢で配置された平坦面に形成されている。側部ピース21Aの上端面21A1は、その全体が頂部ピース21Bの端面21B1よりもアーチ構造物の幅方向Xにおける外側(図7における右側)に配置されている。側部ピース21Aと、当て具26bとは、ボルト及びナットからなる締結具73で締結されている。
【0032】
以上の構成により、側部ピース21Aと頂部ピース21Bとが連結部材26を用いて強固に連結される。そのため、頂部ピース21Bが自重や後に詳述する鉄筋13の荷重によって下方に下がってしまうことが抑制される。
【0033】
図5は、外型枠11の外側型枠パネル31の斜視図である。
図1図5に示すように、外型枠11を構成する各外型枠ブロック20の外側型枠パネル31は、外側型枠フレーム21の内側に設けられている。外側型枠パネル31は、アーチ構造物の外周面に沿う湾曲形状に形成されている。外側型枠パネル31は、木製又は金属製の板材で主に構成されている。外側型枠パネル31が金属製である場合、メタルフォームと呼ばれるリブ付きの鋼製型枠を複数組み合わせることによって構成することができる。外側型枠パネル31は、第1パネル33と、第2パネル34とを有する。第1パネル33は、外側型枠フレーム21の幅方向Xの一方側に配置されている。第2パネル34は、外側型枠フレーム21の幅方向Xの他方側に配置されている。
【0034】
第1パネル33及び第2パネル34は、下部側がほぼ鉛直方向に沿って配置され、上部側が湾曲した形状に形成されている。図5に示すように、第1パネル33と第2パネル34とは、同一の形状に形成されている。つまり、第1パネル33と第2パネル34とは、共通の部品で構成されている。第1パネル33と第2パネル34とは、幅方向Xにおいて互いに逆向きに配置されている。図1に示すように、第1パネル33と第2パネル34とは、正面視において、外型枠11の幅方向Xの中心CLを対称軸として線対称の状態で配置されている。
【0035】
図5に示すように、第1パネル33と第2パネル34とには、それぞれ複数の開口35が形成されている。これらの開口35は、外型枠11と内型枠12との間に生コンクリートを流し込むために用いられる。開口35は、取り外し可能な蓋によって閉鎖される。蓋は、開口35が生コンクリートの流し込みに用いられるときに取り外される。
【0036】
第1パネル33と第2パネル34とは、幅方向Xに間隔をあけて配置されている。したがって、幅方向Xにおける第1パネル33と第2パネル34との間には、空所(空間)36が形成される。第1パネル33と第2パネル34との間の空所36の幅方向Xの中心と、中心CLとは一致している。言い換えると、空所36は、中心CLを基準として幅方向X両側に均等に形成されている。
【0037】
第1パネル33と第2パネル34との間の空所36は、アーチ構造物の延長方向Yにおける外型枠11の全体にわたって形成されることになる。この空所36が形成された部分では、外側型枠フレーム21が外側からも内側からも露出されることになるため、格子状の第1フレーム部材23と第2フレーム部材24とに囲まれた領域が、外型枠11を内外に連通させる開口となる。そして、この開口は、外型枠11と内型枠12との間に生コンクリートを流し込むために利用することができる。
【0038】
図1に示すように、空所36の幅Wは、第1パネル33と第2パネル34との対向面の最大の幅Wに対して、W≦W/2の関係を有する。より好ましくは、W≦W/5の関係を有する。さらに好ましくは、W/6≦W≦W/5の関係を有する。
【0039】
空所36の幅Wを、W/6≦W≦W/5の範囲で設定するのは次の理由による。空所36の幅WをW/5以下とするのは、空所36の幅WがW/5を超えると、外側型枠パネル31の存在しない範囲が広くなり、作業者の手作業によってコンクリートの表面を整える(均す)作業が多くなって作業負担が増大するからである。空所36の幅WをW/6以上とするのは、空所36の幅WがW/6未満であると、空所36を利用して生コンクリートを流し込む作業の自由度を高め難くなるからである。
【0040】
第1パネル33及び第2パネル34は、外側型枠フレーム21と同様に複数のピースに分割されている。具体的に、第1パネル33及び第2パネル34は、外側型枠フレーム21の側部ピース21Aに取り付けられる側部ピースと、頂部ピース21Bに取り付けられる頂部ピースとに分割されていている。
【0041】
図1に示すように、外側型枠フレーム21の側部ピース21A及び頂部ピース21Bには、複数のセパレータ(鉄筋取付具)41が取り付けられている。このセパレータ41は、第1フレーム部材23の外周面に固定されている。セパレータ41は、外側型枠パネル31を貫通して、外型枠11と内型枠12との間の空間に突出している。このセパレータ41には、外型枠11と内型枠12との間において組み立てられる鉄筋13が針金などを用いて取り付けられる。したがって、鉄筋13は、セパレータ41を介して外型枠11によって支持される。
【0042】
外型枠11には、鉄筋13の荷重が付与される。そのため、特に外側型枠フレーム21における頂部ピース21Bには下方へ大きな荷重が付与される。外側型枠フレーム21の頂部ピース21Bは、側部ピース21Aに連結部材26を用いて連結され、側部ピース21Aに強固に連結されている。そのため、頂部ピース21Bに鉄筋13の荷重が付与されたとしても、頂部ピース21Bが下方に下がるような変形が抑制される。したがって、アーチ構造物の天端(クラウン部)において外側型枠パネル31と内側型枠パネル12Bとの間隔が適切に設定され、アーチ構造物の巻厚を十分に確保することができる。
【0043】
図1に示すように、第1パネル33と第2パネル34との間の空所36の範囲において、外側型枠フレーム21と内側型枠パネル12Bとの間には、巻厚保持部材42が設けられている。巻厚保持部材42は、伸縮可能な棒材により構成されている。巻厚保持部材42は、外側型枠フレーム21(頂部ピース21B)における第1フレーム部材23に一端が接触し、内側型枠パネル12Bに他端が接触し、外側型枠フレーム21と内側型枠パネル12Bとの間で突っ張っている。本実施形態では、図1の正面視において、第1パネル33の近傍の1箇所と第2パネル34の近傍の1箇所との合計2箇所に巻厚保持部材42が設けられている。また、巻厚保持部材42は、全ての第1フレーム部材23に対して設けられている。
【0044】
巻厚保持部材42は、例えば、雄ねじ部を有する第1棒材と、雌ねじ部を有する第2棒材とを有し、第1棒材の雄ねじ部を第2棒材の雌ねじ部にねじ込むことによって第1棒材と第2棒材とを連結し、雌ねじ部に対する雄ねじ部のねじ込み量を調整することによって巻厚保持部材42を伸縮させる構成を採用することができる。
【0045】
巻厚保持部材42は、第1パネル33と第2パネル34との間の空所36の範囲に配置されるので、図1に示すように、外型枠11と内型枠12とを設置した後に、空所36を利用して簡単に巻厚保持部材42を取り付けることができる。巻厚保持部材42は、外側型枠フレーム21の頂部ピース21Bを内型枠12によって支持し、頂部ピース21Bが下方へ下がるように変形するのを抑制する。これにより、トンネル坑門の天端において外側型枠パネル31と内側型枠パネル12Bとの間隔が適切に設定され、トンネル坑門の巻厚を確保することができる。
【0046】
図1に示すように、本実施形態の外型枠11には、足場51が設けられている。本実施形態では、外型枠11の幅方向Xの両側に、それぞれ2つの足場51が設けられている。各足場は、アーチ構造物の延長方向Yに延びている。各足場51は、土台52と、足場板53と、手摺54とを有する。
【0047】
図2及び図3に示すように、外型枠11には、地面から足場51に移動するために用いられる梯子61が設けられている。この梯子61は、アーチ構造物の延長方向Yにおける外側型枠フレーム21の端部に配置される第1フレーム部材23と、これに隣接する第1フレーム部材23との間に架設された複数の横桟62を有する。複数の横桟62は、地面から少なくとも上段側の足場51の高さに到るまでの範囲で上下方向に間隔をあけて設けられている。作業者は、横桟62に足をかけて上ることによって足場まで移動することができる。梯子61は、第1フレーム部材23を利用して形成されるので、構造を簡素化することができる。
【0048】
なお、図2及び図3に示す例では、外側型枠フレーム21のアーチ構造物の延長方向Yの両側に梯子61が設けられているが、一方側のみに梯子61が設けられていてもよい。
【0049】
(アーチ構造物の施工方法)
図10図12は、アーチ構造物の施工方法を示す説明図である。
以下、型枠10を用いたアーチ構造物の施工方法について説明する。以下の施工方法において、各外型枠ブロック20における外側型枠フレーム21の側部ピース21A及び頂部ピース21Bは、それぞれ外側型枠パネル31の一部(側部ピース及び頂部ピース)が取り付けられた状態で予め工場で製造されたものである。したがって、以下の説明で、単に側部ピース21A、頂部ピース21Bというときは、それぞれ外側型枠パネル31の一部(側部ピース及び頂部ピース)が取り付けられたものをいう。
【0050】
アーチ構造物を施工するには、まず、インバート15用の均しコンクリートの打設を行い、この均しコンクリート上にインバート用型枠を設置し、さらにインバート用鉄筋13aを組み立てる。このインバート用鉄筋13aを組み立てる際に、アーチ構造物の側部に埋設される鉄筋13bも併せて組み立てる。また、図6に示す埋込ボルト16も組み付ける。
【0051】
その後、インバート用型枠に生コンクリートを流し込み、インバート15を成形する(図10(a)参照)。インバート15を成形したあと、図6に示す押さえ部材17を設置する。
次いで、図10(b)に示すように、外型枠11の設置が行われる。具体的に、各外型枠ブロック20の側部ピース21Aをインバート15の側部に移動させ、図6に示すように、インバート15に埋め込まれた埋込ボルト16に連結ボルト18を締結する。側部ピース21Aは、予め足場51の土台52(支持ブラケット55)が取り付けられた状態で設置される。側部ピース21Aを設置したあと、セパレータ41を取り付け、インバート15の上側に組み立てられた鉄筋13bをセパレータ41に固定する。
【0052】
次いで、図11(a)に示すように、図示しないクレーンで外側型枠フレーム21の頂部ピース21Bを吊るし、側部ピース21Aの上方に搬送する。そして、側部ピース21Aの上端に頂部ピース21Bを連結する。具体的に、図7を参照して説明したように、側部ピース21Aと頂部ピース21Bとを締結具25により連結し、連結部材26を側部ピース21A及び頂部ピース21Bに締結具27で連結する。この作業は、側部ピース21Aの近傍に設置された仮設足場を用いて行ってもよい。
【0053】
以上の作業により外型枠11の設置が終了すると、図11(b)に示すように、足場51の土台52に、足場板53及び手摺54を取り付け、足場51を完成させる。作業者は、側部ピース21Aに取り付けた横桟62を有する梯子61により足場51まで上ることができ、足場51を用いて外型枠11上をアーチ構造物の延長方向Yに移動することができる。
【0054】
その後、図1に示すセパレータ41を外型枠11の頂部ピース21Bに取り付け、図11(b)に示すように、頂部ピース21Bの内側に鉄筋13cを組み立ててセパレータ41に固定する。この作業は、外型枠11の内部に移動したシート台車64等を用いて行うことができる。鉄筋13cの荷重(自重)は、セパレータ41を介して頂部ピース21Bに支持されるが、頂部ピース21Bは、連結部材26を用いて側部ピース21Aに強固に連結されているので、頂部ピース21Bで鉄筋13cを確実に支持することができる。
【0055】
次いで、図12(a)に示すように、内型枠12の設置を行う。鉄筋13の組立に用いられたシート台車64等を撤去し、その代わりに、内型枠12としてのセントルを外型枠11の内側に移動させる。そして、外型枠11と内型枠12との間に巻厚保持部材42を取り付け、外側型枠フレーム21を内型枠12で支持するとともに、外側型枠パネル31と内側型枠パネル12Bとの間隔を調整する。
【0056】
内型枠12を設置したあと、外型枠11と内型枠12とのトンネル出口側開放部分を図示しない妻型枠で閉塞し、型枠10の設置作業を完了させる。
次いで、図12(b)に示すように、外型枠11と内型枠12との間に生コンクリートCを流し込む。生コンクリートCを流し込む作業は、外側型枠パネル31に形成された開口35を用いて行われる。
【0057】
高所から生コンクリートCを流し込む場合は、足場51上で作業が行われる。そして、ある程度の高さまで生コンクリートCが流し込まれると、外型枠11の天端部に形成された第1パネル33と第2パネル34との間の空所36を利用して、生コンクリートCが流し込まれる。この空所36は、外型枠11のアーチ構造物の延長方向Yの全体に渡って形成されるので、アーチ構造物の延長方向Yのどの位置からでも生コンクリートを流し込むことができ、作業の自由度が高められ、効率よく作業を行うことができる。
【0058】
第1パネル33と第2パネル34との間に形成される空所36では、作業者がコテなどを用いて生コンクリートCの形状を整える。
その後、所定期間コンクリートを養生し、養生が済んだら、外型枠11及び内型枠12を取り外し、型枠10の長さに対応したアーチ構造物が完成する。
【0059】
以上に説明した施工方法では、アーチ構造物の延長方向Yにおける型枠10の長さに対応した1区間のアーチ構造物が成形されるが、さらにアーチ構造物を延長させる場合には、型枠10を延長方向Yに移設しながら、図10図12で説明した作業を連続して実行する。
【0060】
図13及び図14は、外型枠11の移設方法を示す説明図である。
以下、型枠10のうちの外型枠11をアーチ構造物の延長方向Yに移設させる方法について説明する。なお、内型枠12は、スライドセントルを用いることができるため、外型枠11を移設した後、その内側に内型枠12を移動させることによって移設が可能となる。
【0061】
図13(a)には、すでに1区間のアーチ構造物を成形した後の外型枠11と、当該外型枠11の移設先の領域Rとが示されている。図13(a)に示す状態から、外型枠11を矢印D方向に移設するものとする。まず、複数の外型枠ブロック20のうち矢印D方向の後方側(図13の左側)の端部に配置された外型枠ブロック(第1外型枠ブロック)20Aの側部ピース21Aと頂部ピース21Bとの連結を解く。具体的には、図7に示すように、側部ピース21A及び頂部ピース21Bから連結部材26を取り外す。また、外型枠ブロック20Aの側部ピース21Aと、隣接する他の外型枠ブロック(第2外型枠ブロック)20Bの側部ピース21Aとの連結を解く。さらに、図6に示すように、外型枠ブロック20Aの側部ピース21Aをインバート15から取り外す。このとき、頂部ピース21Bは、隣接する外型枠ブロック20Bに連結されたままとなる。
【0062】
次いで、外型枠ブロック20Aの側部ピース21Aをクレーンで吊り上げ、図13(b)に示すように、移設先の領域RにおけるD方向の最も後方側(図13の左側)の位置に移動させる。そして、当該側部ピース21Aを、隣接する外型枠ブロック20Dの側部ピース21Aとインバート15とに固定し、移設する。このとき、図8に示すように、頂部ピース21Bの端面21B1は、鉛直方向に沿った面に形成されており、側部ピース21Aの上端面21A1よりもアーチ構造物の幅方向Xの中心CL側に配置されているので、側部ピース21Aを吊り上げたとしても頂部ピース21Bに干渉し難くなる。そのため、頂部ピース21Bよりも先に側部ピース21Aを移設先の領域Rに移動させることができる。
【0063】
次いで、外型枠ブロック20Aの頂部ピース21Bを、隣接する外型枠ブロック20Bの頂部ピース21Bから取り外してクレーンで吊り上げ、図13(c)に示すように、すでに移設した側部ピース21A上に移動させ、当該側部ピース21Aに連結部材26によって連結する。また、外型枠ブロック20Aの頂部ピース21Bを、隣接する外型枠ブロック20Dの頂部ピース21Bにも連結する。これにより1つの外型枠ブロック20Aの移設が完了する。
【0064】
続けて、図14(a)に示すように、矢印D方向の最も後方側に位置する外型枠ブロック20Bの側部ピース21Aを上記と同様の手順で移設先の領域Rに移設し、図14(b)に示すように、外型枠ブロック20Bの頂部ピース21Bも同様の手順で移設先の領域Rに移設する。その後、他の外型枠ブロック20C,20Dについても同様に移設先の領域Rに移設することによって、外型枠11全体の移設が完了する。
【0065】
以上のように、各外型枠ブロック20A~20Dにおいて、側部ピース21Aを移設してから頂部ピース21Bを移設することによって、頂部ピース21Bを地面に仮置きすることなく、直接移設することが可能になるので、移設作業の工程を少なくすることができるとともに、頂部ピース21Bを仮置きするスペースも不要となり、広い作業スペースを要することなく移設作業を行うことができる。
【0066】
(連結部材26の変形例)
図15及び図16は、連結部材26の変形例を示す正面図である。
図15(a)に示す連結部材26では、当て具26bが、正面視において台形状に形成されている。そして、当て具26bは、第1接触面26b1及び第2接触面26b2に加えて、アーチ構造物を成形するための成形面26b3を有している。
【0067】
この変形例においても、頂部ピース21Bの端面21B1が鉛直方向に沿った面に形成されるため、頂部ピース21Bに干渉することなく側部ピース21Aをクレーンで吊り上げることができる。ただし、本変形例では、当て具26bの成形面26b3がアーチ構造物に接触することになるため、頂部ピース21B及び側部ピース21Aから連結部材26を取り外すときに当て具26bをアーチ構造物の外周面から引き剥がす必要があり、作業が若干困難となる。したがって、連結部材26の取り外しの観点では、図7に示す連結部材26の方が有利である。
【0068】
図15(b)に示す連結部材26は、図15(a)に示す変形例と同様に、当て具26bが、正面視において台形状に形成されている。ただし、頂部ピース21Bの端面21B1は鉛直方向に沿った面に形成されておらず、上部側ほどアーチ構造物の幅方向Xの外側(図15(b)における右側)に位置するように鉛直方向に対して傾斜している。また、この頂部ピース21Bの端面21B1におけるアーチ構造物の幅方向Xの外側の端部の位置Pは、側部ピース21Aの上端面21A1よりもアーチ構造物の幅方向Xの中心CL側(図15(b)における左側)に配置されている。したがって、このような構成によっても、頂部ピース21Bに干渉することなく側部ピース21Aをクレーンで吊り上げることができる。
【0069】
図16(a)に示す連結部材26は、図7に示す連結部材26と同様に正面視において三角形状に形成された当て具26bを備えている。ただし、本変形例では、頂部ピース21Bの端面21B1が鉛直方向に沿った面ではなく、上部側ほどアーチ構造物の幅方向Xの中心CL側(図16(a)における左側)に位置するように鉛直方向に対して傾斜している。また、この頂部ピース21Bの端面21B1におけるアーチ構造物の幅方向Xの外側の端部の位置Pは、側部ピース21Aの上端面21A1よりもアーチ構造物の幅方向Xの中心CL側に配置されている。したがって、このような構成によっても、頂部ピース21Bに干渉することなく側部ピース21Aをクレーンで吊り上げることができる。
【0070】
図16(b)に示す連結部材26は、図7に示す連結部材26とは異なり、当て具を備えずに連結板26aにより構成されている。そのため、本変形例では、頂部ピース21Bの端面21B1だけでなく、側部ピース21Aの上端面21A1も、鉛直方向に沿った面に形成され、頂部ピース21Bの端面21B1と側部ピース21Aの上端面21A1とがボルト及びナットからなる締結具74で直接連結されている。
【0071】
この変形例においても、頂部ピース21Bの端面21B1は、側部ピース21Aの上端面21A1よりもアーチ構造物の幅方向Xの中心CL側に配置されることになり、頂部ピース21Bに干渉することなく側部ピース21Aをクレーンで吊り上げることができる。ただし、本変形例では、側部ピース21Aを吊り上げるときに、側部ピース21Aの端面21A1と頂部ピース21Bの端面21B1との間で擦れや衝突等が生じやすくなるため、この点では、図7に示す実施形態の方が有利となる。なお、本変形例においては、連結部材26を省略することも可能である。
【0072】
本発明は、上記各実施形態に限定されることものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で適宜変更することができる。
例えば、本発明が適用されるアーチ構造物としては、トンネル坑門に限らず、アーチカルバートやスノーシェルター等を挙げることができる。
【符号の説明】
【0073】
10 :アーチ構造物用の型枠
11 :外型枠
20 :外型枠ブロック
21A :側部ピース
21A1 :上端面
21B :頂部ピース
21B1 :端面
26 :連結部材
26b :当て具
26b1 :第1接触面
26b2 :第2接触面
CL :中心
X :アーチ構造物の幅方向
Y :アーチ構造物の延長方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図16