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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】超音波検査用の樹脂パッド
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020140358
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035799
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】501083643
【氏名又は名称】学校法人慈恵大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤石 渉
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 剛司
(72)【発明者】
【氏名】西村 礼司
(72)【発明者】
【氏名】松浦 愼太郎
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-002245(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0143655(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波検査用の樹脂パッドであって、
前記樹脂パッドを成す複数の外面のうち、少なくとも一つの面で、超音波検査用のプローブ接した状態で当該面に沿って移動することで画像が生成される超音波検査に供される検査面と、
被検体を収容するために、前記検査面から所定の距離を隔てて形成された中空部と、
を備える樹脂パッド。
【請求項2】
前記中空部が、円柱状である請求項1に記載の樹脂パッド。
【請求項3】
前記中空部が、前記樹脂パッドを成す複数の前記外面のうち、前記検査面以外の面に設けられた開口から、他の面に向けて空けられた貫通孔又は未貫通孔である請求項1又は2に記載の樹脂パッド。
【請求項4】
複数のワイヤーが、所定方向に向かうにつれて互いの間隔が徐々に変化するように設けられた請求項1~3の何れか1項に記載の樹脂パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波検査用の樹脂パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波検査は、超音波を被検体に当ててその反響を映像化する検査手法である。超音波検査は、被検体の内部を非侵襲で確認でき、医療分野等において広く実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-176197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波検査を行う場合、検査対象の部位にプローブを押し当て、高周波数の振動(超音波)を与え、この反射波を受信する。この場合、プローブと検査部位との間に空気が存在すると超音波の伝搬が妨げられるため、流動性がある不定形のジェルや、シート状のジェルパッド(樹脂パッド)を介在させて、検査部位とプローブとの密着性を確保していた。
【0005】
例えば、腹部や腕などのように、平坦な部位であれば、ジェルによって密着性を確保できるが、指や鼻のように平坦でない部位では、ジェルでプローブとの隙間を埋めるのは困難であった。例えば、指の周囲に大量のジェルを乗せてプローブとの隙間を埋めることも考えられるが、不定形のジェルでは、プローブを動かした際に空気をはらみ、観察できなくなってしまう。
【0006】
このため、鼻骨の超音波検査では、柔軟なシート状のジェルパッドを鼻骨部分に載せることで、被検体とプローブの密着性を確保しつつプローブの移動を可能にすることが提案されている。
【0007】
しかしながら、鼻骨部分のような形状であればシート状のジェルパッドで凹凸に追従できるが、指のように円柱状の部位では、体表面の曲率が大きくジェルパッドを用いたとしても十分に密着性を確保できないという問題があった。このため、指の超音波検査では、プローブを強く押し当てることで密着性を確保していたが、プローブを強く押し当てることで、検査部位(指)がつぶれ、腱や指神経等の微細な構造を確認しにくいという問題があった。特に血管は、プローブを押し当てた際の圧力によって血液が虚脱し、観察が非常に困難であった。
【0008】
そこで本発明は、指などの細かな部位であっても、正確に超音波検査を行うことができるようにする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の樹脂パッドは、
超音波検査用の樹脂パッドであって、
前記樹脂パッドを成す複数の外面のうち、少なくとも一つの面で、超音波検査用のプローブと接して検査に供される検査面と、
被検体を収容するために、前記検査面から所定の距離を隔てて形成された中空部と、
を備える。
【0010】
前記樹脂パッドは、前記中空部が、円柱状であってもよい。また、前記中空部が、前記樹脂パッドを成す複数の前記外面のうち、前記検査面以外の面に設けられた開口から、他の面に向けて空けられた貫通孔又は未貫通孔であってもよい。
【0011】
前記樹脂パッドは、複数のワイヤーが、所定方向に向かうにつれて互いの間隔が徐々に変化するように設けられてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、指などの細かな部位であっても、正確に超音波検査を行うことができるようにする技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】超音波検査システムの概略構成図である。
図2】樹脂パッドの斜視図である。
図3】樹脂パッドの外観図であり、図3(A)は正面図、図3(B)は側面図、図3(C)は平面図(上面図)である。
図4図3(C)のA-A線における断面図である。
図5図3(C)のB-B線における断面図である。
図6】被検体である指を示す図である。
図7図6のC-C線における断面(短軸断面)を従来手法で検査した場合の画像を示す図である。
図8図6のD-D線における断面(長軸断面)を従来手法で検査した場合の画像を示す図である。
図9】樹脂パッドを用いて、図6のC-C線における断面(短軸断面)を検査した場合の画像を示す図である。
図10】樹脂パッドを用いて、図6のD-D線における断面(長軸断面)を検査した場合の画像を示す図である。
図11】樹脂パッドを用いて検査した症例を示す図であり、図11(A)は図6のC-C線における断面(短軸断面)を示す図、図11(B)は図6のD-D線における断面(長軸断面)を示す図である。
図12】中空部を未貫通孔とした樹脂パッドの例を示す図である。
図13】変形例1に係る樹脂パッドの斜視図である。
図14図12(B)のE-E線における断面図である。
図15】樹脂パッドの変形例を示す図である。
図16】ケースを備えた樹脂パッドの例を示す図である。
図17図13の分解図である。
図18】変形例3に係る樹脂パッドの平面図である。
図19】変形例3に係る樹脂パッドの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)に係る超音波検査システムについて説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。図1は、超音波検査システム1の概略構成図である。
【0015】
〈システム構成〉
超音波検査システム1は、超音波検査装置10と、超音波検査用の樹脂パッド20とを備えている。超音波検査装置10は、プローブ11を検査対象(被検体)に接触させ、高周波数の振動(超音波)を発し、被検体内において、音響的に異なる境界面で反射した反射波を受信し、この反射波に基づいて被検体内の内部構造や血流の分布状態などを映像化して、表示部12へ表示する。超音波検査装置10は、例えば、超音波を発してから反射
波を受信するまでの時間に基づいて反射した箇所(反射点)までの距離を求め、同一の反射点からの反射波を異なる位置で受信した場合の距離の違いに基づいて各受信位置に対して反射点が存在する方向(角度)を求め、この距離と方向から反射点の位置を特定する。そして、超音波検査装置10は、被検体内の所定断面における反射点の位置を夫々求め、二次元座標上にプロットすることで映像化する。映像化の手法は、これに限らず、様々な既知の手法が適用可能である。即ち、既知の超音波検査装置10を任意に用いることができるので、超音波検査装置10の詳しい説明は省略する。なお、本実施形態の超音波検査装置10は、プローブ11の被検体又は樹脂パッド20と接する面(当接面)11Aが、縦横に数cm程度の大きさを有する平面となっている。
【0016】
被検体としての手の指31を超音波診断用ゼリーを充填した樹脂パッド20へ挿入し、樹脂パッド20へ挿入した状態で、超音波検査システム1は、樹脂パッド20を介して指31の超音波検査を行う。なお、被検体は、手の指に限らず、足の指や、乳幼児の四肢など、他の部位であってもよい。また、被検体は、人の部位に限らず、犬や猫の四肢や尾、その他小動物の身体などであってもよい。
【0017】
〈樹脂パッドの構成〉
図2は、樹脂パッド20の斜視図である。図2の例では、X方向を幅方向(左右方向)、Y方向を高さ方向、Z方向を奥行方向としている。図2に示す樹脂パッド20は、外形が直方体で、六つの外面のうち、X-Y面と平行な手前の面を正面21と称し、X-Y面と平行な奥側の面を背面26と称す。また、Y-Z面と平行な面を側面24,25と称し、X-Z面と平行な下側の面を底面23と称し、X-Z面と平行な上側の面を検査面(上面)22と称す。樹脂パッド20は、正面21の中央と背面26の中央に開口を有し、これらを連通する中空部27を備えている。なお、これらの方向や、正面・平面等の呼称は、本実施形態を説明するための便宜上のものであり、樹脂パッド20の構成を限定するものではない。例えば、上面から底面にかけて収容部(中空部)を設け、側面を検査面とする構成であってもよい。このように検査面と中空部を備える構成であれば、その他の位置関係等は任意に形成できる。なお、検査面は、一つに限らず、上面22に加えて、側面24,25や、底面23を検査面としてもよい。
【0018】
図3は、樹脂パッド20の外観図であり、図3(A)は正面図、図3(B)は側面図、図3(C)は平面図(上面図)である。また、図4は、図3(C)のA-A線における断面図、図5は、図3(C)のB-B線における断面図である。
【0019】
図2図5に示すように、本実施形態の樹脂パッド20は、正面21から背面26にかけて貫通した中空部27を備え、これを被検体の収容部としている。中空部27は、円柱状であり、中空部の周囲、即ち図4のハッチング部分は、樹脂部材で構成されている。この樹脂パッド20を構成する材料は、例えば、セグメント化ポリウレタンゲルである。なお、樹脂パッド20の材料は、これに限らず、被検体表面の凹凸を吸収できるように柔軟で、被検体の音響特性に近い材料であればよい。本実施形態に係る樹脂パッド20の物性は、例えば、音速1389(m/s)、密度1,020(kg/m3、音響インピーダンス1.42×106(Pa・s/m)硬度(アスカーF硬度計)53(度)、減衰度 (5MHz時)3.5 (dB/cm)である。
【0020】
図4に示すように、樹脂パッド20の中空部27は、検査面22から所定の距離L1を隔てて形成されている。即ち、樹脂パッド20は、中空部27に収容した被検体と検査面22との間にL1の厚さの樹脂部材を介在させる構成としている。これにより被検体と検査面22との間の樹脂部材が、被検体表面の凹凸を吸収し、プローブ11を検査面22に密着させた状態でスムーズに検査面22上を摺動できるようにしている。なお、距離L1は、検査に耐えられる機械的強度を有し、且つ被検体表面の凹凸を吸収できるものであれば、特に限定されるものではない。距離L1は、例えば、3~30mm、望ましくは5~
15mmであり、本実施形態では、10mmである。なお、本実施形態では、中空部27と底面23との距離L2も距離L1と同じ値としているが、距離L2も任意に設定可能である。
【0021】
また、樹脂パッド20の中空部27は、左右の側面24,25から所定の距離L3を隔てて形成されている。即ち、樹脂パッド20は、中空部27に収容した被検体と検査面22との間にL1の厚さの樹脂部材を介在させる構成としている。これによりプローブ11を検査面22に押し当てた際の圧力を被検体と検査面22との間の樹脂部材が分散させ、被検体がつぶれないようにしている。なお、距離L3は、検査に耐えられる機械的強度をもつものであれば、特に限定されるものではない。距離L3は、例えば、3~50mm、望ましくは5~20mmであり、本実施形態では、15mmである。
【0022】
中空部27の直径及び長さは、被検体に応じて設定される。例えば、被検体の表面と中空部27の内壁との間隔が0.5~2mmとなるように中空部27の直径を被検体よりも大きく設定してもよい。また、被検体の表面と中空部27の内壁との隙間が少なくなるように、中空部27の直径を被検体と同じかやや小さく設定してもよい。中空部の直径は、例えば、5~40mm、望ましくは7~30mmであり、本実施形態では、20mmである。中空部27の長さ、即ち本例では樹脂パッド20の奥行は、例えば、50~150mm、望ましくは60~90mmであり、本実施形態では、70mmである。なお、中空部27の長さは、検査面上でプローブ11を移動させる距離がとれればよく、例えば、被検体が全て収まる長さでなくてもよい。例えば、超音波検査を行う部分が指の一部だけの場合、この部分が検査できる長さがあればよい。
【0023】
樹脂パッド20は、被検体の大きさによって、上記サイズが異なるものを複数用意されてもよい。例えば、母指、中指、小指など指の種類、男性用、女性用、乳児用、幼児用、成人用などに応じて、中空部の直径や長さ等のサイズを設定してもよい。
【0024】
〈検査方法〉
検査に際し、検査者は、中空部27に超音波検査用のジェルを充填する。そして、被検体である指31を中空部27に挿入する。このとき指31とともに空気が中空部27内に侵入しないように、予め指31にジェルを塗布してから指31を中空部27に挿入してもよい。更に、指31を中空部27に挿入する際に指31と中空部27の入り口との間にジェルを補充しつつ指31を中空部27に挿入してもよい。また、指31を挿入する際に、背面26側における中空部27の開口を塞ぐことで、背面26側へのジェルの流出を抑え、指31を中空部27に挿入することでジェルを正面21側に溢れさせながら指31を中空部27内に挿入する。なお、指31にジェルを塗布すること等により、予め中空部27内にジェルを充填するのを省略してもよい。
【0025】
指31を挿入した状態で、検査者が樹脂パッド20の検査面22上に超音波検査用ジェルを載せ、超音波検査装置10のプローブ11と検査面22との間に超音波検査用ジェルを介在させながら、プローブ11を検査面22に押し当てる。これにより超音波検査装置10が、プローブ11から樹脂パッド20を介して指31に超音波を当て、指31内で反射した反射波をプローブ11で受信し、この反射波に基づいて指31内の構造を映像化し、表示部12に表示する。
【0026】
検査者は、プローブ11を検査面22に沿って移動させることで、指(被検体)31内における任意の位置の内部構造を表示部12に表示された画像で確認できる。
【0027】
更に、被検体である指31を中空部27内で長軸回りに回転させ、超音波を当てる向きを変えて検査を行ってもよい。なお、中空部27内で指を回転させずに、上面22以外の
面(側面24,25や、底面23)も検査面とすることで、超音波を当てる向きを変えて検査を行ってもよい。
【0028】
〈具体例〉
図6は、被検体である指31を示す図、図7は、図6のC-C線における断面(短軸断面)を従来手法で検査した場合の画像を示す図、図8は、図6のD-D線における断面(長軸断面)を従来手法で検査した場合の画像を示す図である。また、図9は、本実施形態の樹脂パッド20を用いて、図6のC-C線における断面(短軸断面)を検査した場合の画像を示す図、図10は、本実施形態の樹脂パッド20を用いて、図6のD-D線における断面(長軸断面)を検査した場合の画像を示す図である。
【0029】
図7図8では、樹脂パッド20を用いず、被検体である指31上に多量のジェルを載せ、プローブ11を指31に強く押し当てて検査している。この結果、図7図8に示すように、指31がつぶれた状態となり、指31内の細かな構造が分かりにくくなっている。
【0030】
これに対し、本実施形態に係る樹脂パッド20を用いて超音波検査を行った場合、図9に示すように指31がつぶれずに観察できる。なお、図9(B)は、図9(A)の画像に注釈をつけたものである。図9(B)の例では、指神経や屈筋腱等が正常な位置関係で観察できる。特に、図6では、指動脈が判別できないのに対し、図9では、指動脈が虚脱せずに観察可能となっている。また、図10の長軸断面においても、図7と比べて、指31の内部構造がつぶれずに確認できるようになっている。
【0031】
図11は、本実施形態の樹脂パッド20を用いて検査した症例を示す図であり、図11(A)は図6のC-C線における断面(短軸断面)を示す図、図11(B)は図6のD-D線における断面(長軸断面)を示す図である。
【0032】
図11の例では、矢印で示す位置に3mm大の粘液嚢腫が爪母を圧排している様子が捉えられている。このような病変は、従来手法では、捉えることができなかったものである。
【0033】
〈実施形態の効果〉
上述のように、本実施形態によれば、樹脂パッド20に被検体を収容した状態で、樹脂パッド20の検査面にプローブ11を当てて検査を行うので、プローブ11を押し当てる圧力が樹脂パッド20で分散され、被検体がつぶれることなく自然な状態で検査することができる。
【0034】
また、被検体の表面が曲率の大きい凹凸を有している場合でも樹脂パッド20がこの凹凸を吸収し、検査面22を平面としているため、プローブを検査面上でスムーズに動かすことができ、任意の位置での観察を容易に行うことができる。
【0035】
〈変形例1〉
前述の実施形態では、中空部27を正面21から背面26への貫通孔とした例を示したが、これに限らず、本変形例では、中空部27を未貫通孔としている。なお、この他の構成は、前述の実施形態と略同じであるので、同一の要素に同符号を付す等して再度の説明を省略している。
【0036】
図12は、中空部27を未貫通孔とした樹脂パッド20の例を示す図である。図12(A)は本変形例に係る樹脂パッド20の正面図、図12(B)は本変形例に係る樹脂パッド20の上面図、図12(C)は本変形例に係る樹脂パッド20の側面図である。図13
は、本変形例1に係る樹脂パッド20の斜視図、図14は、図12(B)のE-E線における断面図である。
【0037】
図12図14に示すように、本変形例では、正面21に開口を設け、正面21から背面26側へ向けて空けた未貫通孔を中空部27としている。即ち、本変形例の中空部27は、正面21の開口から被検体としての指31を挿入した場合に、指先側が閉塞されている。このため、超音波検査の際、中空部27に充填した超音波検査用ジェルが背面側から流出してしまうことが無く、安定して検査を行うことができる。
【0038】
また、本変形例の中空部27は、正面側よりも背面側の径が小さく形成され、正面側から見て先細り形状となっている。換言すると、中空部27は、正面21の開口を下底とする円錐台の上底を球面とした形状である。このため、被検体として指31を挿入した場合に、指先側が細く、指31にフィットしやすい形状となっている。また、図13に示すように、中空部27の開口を上に向けて超音波検査用ジェルを充填する際、中空部27内の空気が抜けやすく、超音波検査用ジェルを充填し易い形状となっている。
【0039】
本変形例では、正面21における中空部27の直径を19.6mmとし、正面21から背面側に100mmの位置における直径を18mmとしている。なお、この寸法は、一例であり、この値に限定されるものではない。
【0040】
〈変形例2〉
図15は、樹脂パッド20の変形例を示す図である。前述の実施形態では、直方体の樹脂パッド20を示したが、樹脂パッド20の形状は、これに限らず、中空部を内包し、少なくとも一つの検査面を有する形状であればよい。
【0041】
図15(A)は、正面21及び背面(不図示)を台形とした例である。図15(A)の樹脂パッド20は、側面24,25が夫々内側に傾斜し、底面23から上面22にむかうにつれて、樹脂パッド20の幅が狭くなっている。図15(A)の樹脂パッド20は、側面24,25が斜め上を向いた構成のため、側面24,25を検査面として使用しやすい。
【0042】
図15(B)は、正面21及び背面(不図示)の上部を円弧状とした例である。図15(B)の樹脂パッド20は、検査面22が円柱の側面のように形成されているため、広い範囲に亘って検査を行うことができる。なお、図15(B)の検査面は、曲面となるため、平面であるプローブ11の当接面11Aを密着させるには、或る程度の力で押し当てることになるが、樹脂パッド20は柔軟な材料で形成されているため、それほど強く押さえなくても当接面11Aを密着させることができる。また、プローブ11を検査面22に押し当てたとしても、この圧力は樹脂パッド20内で分散するので、被検体をつぶさずに観察することができる。
【0043】
図15(C)は、正面21及び背面(不図示)を三角形とした例である。図15(C)の樹脂パッド20は、側面24,25が夫々斜め上を向いた構成のため、側面24,25を検査面として使用しやすい。
【0044】
図15(D)は、正面21及び背面(不図示)を正方形とした例である。図15(D)の樹脂パッド20は、上面22以外の面(側面24,25や、底面23)も検査面とした売でも、上面22と同様に検査を行うことができる。
【0045】
〈変形例2〉
図16は、ケース20Bを備えた樹脂パッド200の例を示す図、図17は、図16
分解図である。
【0046】
本例の樹脂パッド200は、前述の図2図5に示した樹脂パッド20に相当するパッド部20Aに加え、ケース20Bを備えている。
【0047】
ケース20Bは、金属や剛性の高い樹脂等によって構成され、底部28と、底部28の側縁に立設された側壁29とを有している。ケース20Bは、正面形状が上向きに開口したコの字型であり、パッド部20Aを収納する。図13に示す収納状態では、底部28の内面がパッド部20Aの底面23と接し、側壁29の内面がパッド部20Aの側面24,25と接している。なお、ケース20Bの側壁29は、パッド部20Aの高さと同じか、やや低く構成され、検査面22にプローブ11を当てる際に邪魔にならない構成となっている。
【0048】
このように本変形例では、ケース20Bがパッド部20Aを収容して樹脂パッド200を構成することにより、パッド部20Aの機械的強度をケース20Bが補うことができるため、パッド部20Aをより柔軟な材料で形成することができる。
【0049】
〈変形例3〉
図18は、変形例3に係る樹脂パッド210の平面図、図19は、変形例3に係る樹脂パッド210の正面図である。
【0050】
本変形例の樹脂パッド210は、前述の樹脂パッド20の構成に加えて、複数のワイヤー211,212が、所定方向(奥行方向)に向かうにつれて互いの間隔が徐々に変化するように設けられたものである。ワイヤー211,212は、超音波の反射率が高い材料で形成されており、例えば、金属、金属を分散させた樹脂又はセラミック等で形成されている。
【0051】
本例では、ワイヤー211,212の間隔LAが、正面側からZ方向への距離に従って徐々に狭くなっている。このため、超音波検査装置10は、X-Y断面の画像を生成した際、画像中のワイヤー211,212の間隔LAに基づいて、当該断面のZ方向の位置を特定できる。従って超音波検査装置10は、Z方向に連続して生成した二次元画像をZ方向の位置に基づいて合成し、三次元モデルを作成できる。
【符号の説明】
【0052】
1 :超音波検査システム
10 :超音波検査装置
11 :プローブ
11A :当接面
12 :表示部
20 :樹脂パッド
20A :パッド部
20B :ケース
21 :正面
22 :上面(検査面)
23 :底面
24 :側面
25 :側面
26 :背面
27 :中空部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19