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特許7511885パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物
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  • 特許-パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/30 20060101AFI20240701BHJP
   C23C 18/20 20060101ALI20240701BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C23C18/30
C23C18/20 A
H05K3/18 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020144330
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039349
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504137554
【氏名又は名称】株式会社イオックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 悠人
(72)【発明者】
【氏名】中辻 達也
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-065909(JP,A)
【文献】特開平06-077626(JP,A)
【文献】特開平05-230663(JP,A)
【文献】特開平06-334308(JP,A)
【文献】特開平08-195544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00-18/54
H05K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン形状の無電解めっき層を有する、めっき物であって、
基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層を有し、
前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層は、前記基材側から、露出した触媒活性が有る下層(a)と触媒活性が無い上層(b)とで構成されており、
前記下層(a)の上に、パターン形状を成す様に前記上層(b)が形成されており、
前記パターン形状の内、前記露出した触媒活性が有る下層(a)の表面に、無電解めっき層を有する、
めっき物。
【請求項2】
前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層は、更に、(iii)バインダーを含有する、請求項1に記載のめっき物。
【請求項3】
前記基材は、基板であり、
前記無電解めっき層は、導体回路であり、
回路基板である、請求項1又は2に記載のめっき物。
【請求項4】
パターン形状の無電解めっき層を有する、めっき物の製造方法であって、
(1)基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層を形成する工程、
(2)前記(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層を形成する工程の後、当該層の表面にUV照射することで、当該層の表面の触媒活性を失活させて、前記基材側から、触媒活性が有る下層(a)と触媒活性が無い上層(b)とを形成する工程、
(3)前記UV照射する工程の後、前記触媒活性が無い上層(b)を、パターン形状にエッチングすることで、除去し、前記触媒活性が有る下層(a)を、パターン形状に露出する工程、及び
(4)前記触媒活性が有る層(a)を露出する工程の後、前記パターン形状に露出した触媒活性が有る層(a)に無電解めっき層を形成し、パターン形状のめっきを形成する工程、
を含む、めっき物の製造方法。
【請求項5】
前記基材は、基板であり
前記無電解めっき層は、導体回路であり、
回路基板である、請求項4に記載のめっき物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板材料中に含まれる微細な非導電性金属化合物を電磁線の使用によって砕くことによって生じる金属核及び続いてこれに施される金属化物よりなる非導電性基板材料上に設けたコンダクタートラック構造物、そのコンダクタートラック構造物は、電磁線によって重金属核を放出させ、次いで化学的に還元して金属化することが開示されている。
【0003】
特許文献2には、基材の表面の一部に、レーザー光を照射することと、前記レーザー光を照射した基材に、重量平均分子量1,000以上の窒素含有ポリマーを含み、表面張力が20mN/m~60mN/mである前処理液を接触させることと、前記前処理液を接触させた基材を洗浄することと、前記洗浄した基材に、金属塩を含むメッキ触媒液を接触させることと、前記メッキ触媒液を接触させた基材に、無電解メッキ液を接触させ、前記レーザー光照射部に無電解メッキ膜を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】公表特許公報(A)特表2004-534408
【文献】特許公報(B1)特許第6666529号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新たに、パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、金属粒子と分散剤との複合体を含有する層において、触媒活性が有る部分(A)(露出した触媒活性が有る下層(a))と触媒活性が無い部分(B)(触媒活性が無い上層(b))とでパターン形状を成すことにより、パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物を開発した。
【0007】
即ち、本発明は、次のめっき物及びめっき物の製造方法を含む。
【0008】
項1.
パターン形状の無電解めっき層を有する、めっき物であって、
基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層を有し、
前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層は、触媒活性が有る部分(A)と触媒活性が無い部分(B)とが、パターン形状を成し、
前記パターン形状の内、前記触媒活性が有る部分(A)の表面に、無電解めっき層を有する、めっき物。
【0009】
項2.
パターン形状の無電解めっき層を有する、めっき物であって、
基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層を有し、
前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層は、前記基材側から、露出した触媒活性が有る下層(a)と触媒活性が無い上層(b)とで構成されており、
前記露出した触媒活性が有る下層(a)と前記触媒活性が無い上層(b)とは、パターン形状を成し、
前記パターン形状の内、前記露出した触媒活性が有る下層(a)の表面に、無電解めっき層を有する、めっき物。
【0010】
項3.
前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層は、更に、(iii)バインダーを含有する、前記項1又は2に記載のめっき物。
【0011】
項4.
前記基材は、基板であり、
前記無電解めっき層は、導体回路であり、
回路基板である、前記項1~3のいずれかに記載のめっき物。
【0012】
項5.
パターン形状の無電解めっき層を有する、めっき物の製造方法であって、
(1)基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層を形成する工程、
(2)前記(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層を形成する工程の後、当該層の表面にUV照射することで、当該層の表面の触媒活性を失活させて、前記基材側から、触媒活性が有る下層(a)と触媒活性が無い上層(b)とを形成する工程、
(3)前記UV照射する工程の後、前記触媒活性が無い上層(b)を、パターン形状にエッチングすることで、除去し、前記触媒活性が有る下層(a)を、パターン形状に露出する工程、及び
(4)前記触媒活性が有る層(a)を露出する工程の後、前記パターン形状に露出した触媒活性が有る層(a)に無電解めっき層を形成し、パターン形状のめっきを形成する工程、を含む、めっき物の製造方法。
【0013】
項6.
前記基材は、基板であり
前記無電解めっき層は、導体回路であり、
回路基板である、前記項5に記載のめっき物の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、新たに、パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のめっき物を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を詳細に説明する。但し、この実施の形態は、発明の趣旨がより良く理解できる説明であり、特に指定のない限り、発明内容を限定するものではない。
【0017】
本発明のめっき物及びめっき物の製造方法
本発明では、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)は、(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(iii)バインダーを含有する触媒組成物から成り、絶縁性である。本発明の技術により、その(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層の内、エッチング処理を施さない部分を除去する工程が不要である、めっき物を提供できる。
【0018】
本発明は、UV照射及びエッチング処理の技術により、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成するめっき物であり、より微細な回路配線を形成することができる。
【0019】
本発明は、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)に対して、UV照射部分は、触媒活性が無い(失活する)部分(触媒活性が無い部分(B)、触媒活性が無い上層(b))となり、無電解めっき層(導体回路)が形成されないこと、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)に対して、UV照射の後、パターン形状にエッチングする部分は、触媒活性が有る(残る)下層が露出する部分(触媒活性が有る部分(A)、露出した触媒活性が有る下層(a))と成る。
【0020】
本発明は、それら触媒活性が有る部分(A)(露出した触媒活性が有る下層(a))と触媒活性が無い部分(B)(触媒活性が無い上層(b))とがパターン形状を成し、触媒活性が有る部分(A)(露出した触媒活性が有る下層(a))に無電解めっき層(導体回路)が形成されることを含む、導体回路のパターン形成を可能とするめっき物を提供できる。
【0021】
本発明は、また、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)は、絶縁性であることから、その(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)の内、エッチング処理を施さない部分を除去すること無く、導体回路のパターン形成を可能とし、その様なエッチング処理を施さない部分が存在しても、それ自体が導電性を表さず、短絡しないめっき物を提供できる。
【0022】
本発明は、好ましくは、触媒層は透明であり、透明なめっき物を提供できる。
【0023】
本発明は、触媒層を形成した後にエッチング処理を施す為、従来の方法に比べ、工程数が少ないめっき物を提供できる。
【0024】
本発明は、パターン形状を有することから、好ましくは、回路のパターン形成に、フォトエッチング、パターン印刷等の工程が不要であるめっき物を提供できる。
【0025】
本発明のめっき物は、好ましくは、前記基材は基板であり、前記無電解めっき層は導体回路である、パターン形状の導体回路を有する回路基板である。
【0026】
(1)めっき物(回路基板)
本発明は、新たな、導体回路のパターン形成を可能とするめっき物(回路基板、プリント配線板)を提供できる。
【0027】
本発明のめっき物は、基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)を有し、前記層の表面に、パターン形状の無電解めっき層を有する。前記層は、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する組成物(触媒組成物)から成なり、前記組成物は、好ましくは、更に、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する。
【0028】
本発明のめっき物は、基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層を有し、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層は、触媒活性が有る部分(A)と触媒活性が無い部分(B)とが、パターン形状を成し、前記パターン形状の内、前記触媒活性が有る部分(A)の表面に、無電解めっき層を有することで、パターン形状の無電解めっき層を成す。
【0029】
本発明のめっき物は、基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層を有し、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層は、前記基材側から、露出した触媒活性が有る下層(a)と触媒活性が無い上層(b)とで構成されており、前記露出した触媒活性が有る下層(a)と前記触媒活性が無い上層(b)とは、パターン形状を成し、前記パターン形状の内、前記露出した触媒活性が有る下層(a)の表面に、無電解めっき層を有することで、パターン形状の無電解めっき層を成す。
【0030】
本発明のめっき物は、好ましくは、前記基材は、基板であり、前記無電解めっき層は、導体回路であり、回路基板である。
【0031】
本発明のめっき物は、好ましくは、触媒層は絶縁性であり、触媒層を除去する工程が不要である。前記触媒層は、好ましくは、透明である。
【0032】
本発明のめっき物は、触媒活性が有る部分(A)(露出した触媒活性が有る下層(a))に無電解めっき層(回路)が形成されるので、回路のパターン形成を可能とする。
【0033】
本発明のめっき物は、回路のパターン形成に、フォトエッチング、パターン印刷等の工程が不要であり、触媒層の除去の工程も不要である、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を有する。
【0034】
(2)基材(基板)
本発明のめっき物は、基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)を有し、前記触媒層の表面にパターン形状の無電解めっき層を有する。
【0035】
前記基材(好ましくは、基板、回路基板)の材料は、好ましくは、絶縁基板であり、プラスチック(樹脂)、ガラス、セラミックス等を用いる。
【0036】
前記基材は、好ましくは、基板であり、回路基板である。
【0037】
前記基材(基板)の材料は、UV照射及びエッチング処理のし易さの点で、好ましくは、均一な厚み(高さ)を有する。
【0038】
前記プラスチックとして、好ましくは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンの共重合樹脂(ABS樹脂)等を用いる。
【0039】
前記プラスチックとして、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸エステル等のポリエステル;ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂;ポリカーボネート(PC);ポリ塩化ビニル;ポリアミド;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアセタール;ポリエーテルエーテルケトン;ノルボルネン骨格を有する環状ポリオレフィン;ポリフェニレンスルファイド;液晶ポリマー;シクロオレフィンポリマー(COP);変性ポリフェニルエーテル;ポリスルホン;フェノール;ポリフタルアミド(PPA);ポリアリレート等を用いる。
【0040】
前記プラスチックとして、好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン等のポリオレフィン等を用いる。
【0041】
前期プラスチックとして、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、フッ化エチレン-フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などのフッ素樹脂を用いる。
【0042】
前記セラミックスとして、好ましくは、ガラス、アルミナ等が挙げられる。また、基材として不織布を使用する場合、木質繊維、ガラス繊維、石綿、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、ポリオレフィン繊維等を用いる。
【0043】
前記基材としてプラスチック、セラミックス等を使用する場合、好ましくは、適宜プライマー等で絶縁性を形成した上で、使用する。
【0044】
前記基材として金属等の導電性物質を使用する場合、好ましくは、プライマー等で絶縁性を形成した上で、基材として用いる。
【0045】
本発明のめっき物は、前記基材は、好ましくは、基板であり、後述する無電解めっき層は、導体回路であり、回路基板である。
【0046】
(3)(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)
本発明のめっき物は、基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)を有し、前記層の表面に、パターン形状の無電解めっき層を有する。前記層は、好ましくは、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する組成物(触媒組成物)から成り、前記組成物は、更に、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する。
【0047】
前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層は、触媒活性が有る部分(A)と触媒活性が無い部分(B)とが、パターン形状を成し、前記パターン形状の内、前記触媒活性が有る部分(A)の表面に、無電解めっき層を有することで、パターン形状の無電解めっき層を成す。
【0048】
前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層は、前記基材側から、露出した触媒活性が有る下層(a)と触媒活性が無い上層(b)とで構成されており、前記露出した触媒活性が有る下層(a)と前記触媒活性が無い上層(b)とは、パターン形状を成し、前記パターン形状の内、前記露出した触媒活性が有る下層(a)の表面に、無電解めっき層を有することで、パターン形状の無電解めっき層を成す。
【0049】
本発明のめっき物は、好ましくは、前記基材の表面に、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)を、全面に有する。
【0050】
(i)金属粒子と分散剤との複合体
本発明のめっき物では、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)は、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する組成物(触媒組成物)から成る。
【0051】
前記金属粒子は、好ましくは、パラジウム粒子、金粒子、銀粒子、又は、白金粒子である。前記金属粒子と分散剤との複合体は、好ましくは、パラジウム粒子(Pd粒子)を含むパラジウム複合体(Pd複合体)である。
【0052】
前記金属粒子と分散剤との複合体は、好ましくは、例えば、ポリカルボン酸系分散剤、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤等の分散剤の存在下、金属粒子として、例えば、塩化パラジウム(塩化Pd)等のパラジウム化合物(Pd化合物)から供給されるパラジウムイオン(Pdイオン)を、ヒドラジンヒドラート等の2級又は3級アミン類で還元することによって得ることができる。
【0053】
前記金属粒子は、無電解めっき触媒として機能するものであり、好ましくは、パラジウム粒子(Pd粒子)、金粒子(Au粒子)、銀粒子(Ag粒子)、白金粒子(Pt粒子)等の貴金属の超微粒子であり、より好ましくは、Pd粒子である。
【0054】
前記Pd粒子は、好ましくは、前記分散剤の存在下、Pd化合物から供給されるPdイオンを、還元剤を用いて還元することによって得ることができる(液相還元法)。
【0055】
前記Pd化合物は、好ましくは、塩化パラジウム(塩化Pd)、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、安息香酸パラジウム、サリチル酸パラジウム、パラトルエンスルホン酸パラジウム、過塩素酸パラジウム、ベンゼンスルホン酸パラジウム等を用いる。Pd化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0056】
前記還元剤は、好ましくは、ヒドラジンヒドラート(ヒドラジン1水和物)、水素化ホウ素ナトリウム、N,Nジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の1級、2級又は3級アミン類、アスコルビン酸、2,3-ジヒドロキシマレイン酸等のエンジオール類を用いる。
【0057】
前記Pdイオンを還元する方法は、好ましくは、溶媒(下記の溶媒)中に分散剤及びPdイオンを存在させた後、還元剤を前記溶媒中に加える方法であり、これによりPdイオンと還元剤とが接触し、Pdイオンを還元することができる。
【0058】
前記Pd複合体中のPd粒子と分散剤との重量比は、好ましくは、Pd粒子:分散剤=50:50~95:5程度であり、より好ましくは、Pd粒子:分散剤=65:35~85:15程度である。
【0059】
前記Pd複合体の平均粒子径は、好ましくは、全体としては平均粒子径20nm~300nm程度の球形状の構造を有している。前記Pd複合体の平均粒子径は、粒径アナライザー(大塚電子株式会社、FPAR-1000)で測定する(重量基準平均径)。
【0060】
前記金属粒は、無電解めっき触媒として機能するものであり、好ましくは、Pd粒子、Au粒子、Ag粒子、Pt粒子等の貴金属の超微粒子である。
【0061】
前記金属粒子として、Pt粒子を用いる時、好ましくは、分散剤の存在下、塩化白金(IV)等の白金化合物(Pt化合物、貴金属化合物)から供給される白金イオン(Ptイオン)を、ヒドラジンヒドラート等の2級又は3級アミン類で還元することによって得る。
【0062】
(ii)溶媒
本発明のめっき物では、前記前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)は、これを形成する組成物(触媒組成物)は、好ましくは、(ii)溶媒を含有する。
【0063】
前記溶媒(分散媒)は、好ましく、金属複合体(Pd複合体等)を分散させることができ、また、下記のバインダーとの親和性に優れているものである。前記溶媒は、好ましくは、触媒組成物の粘度、蒸発速度等の観点で選択し、また、触媒組成物が、基板と良好に密着する点を満足さものである。
【0064】
前記溶媒は、好ましくは、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、1-ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)、シクロヘキサノン等のケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル、サリチル酸メチル等の芳香族カルボン酸エステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n-へキサン、n-へプタン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のグリコールエーテルエステル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のアルカノールエステル類;2-フェノキシエタノール(エチレングリコールフェニルエーテル)等を用いる。
【0065】
前記溶媒は、好ましくは、印刷性及び塗装性、印刷・塗装後のレベリング過程を考慮して、蒸発速度が遅い溶媒を使用する。前記蒸発速度が遅い溶媒として、好ましくは、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、2-フェノキシエタノール等を用いる。
【0066】
前記溶媒は、触媒組成物中の金属複合体(Pd複合体等)を良好に分散させることができるという観点から、好ましくは、水、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等を用いる。
【0067】
前記非プロトン性極性溶媒は、好ましくは、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)等の非プロトン性極性溶媒;ジメチルスルホキシド;γ-ブチロラクトン等を用いる。
【0068】
前記溶媒は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
(iii)バインダー
本発明のめっき物では、前記前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)は、これを形成する組成物(触媒組成物)は、好ましくは、(iii)バインダーを含有する。
【0070】
前記バインダーは、好ましくは、触媒組成物の粘度、触媒組成物と基板(PETフィルム、ABS基材等)との密着性、硬化条件等の観点から、良好に無電解めっきの反応性が得られるものを選択する。前記バインダーは、好ましくは、前記溶媒に分散又は溶解するものである。
【0071】
前記バインダーは、好ましくは、アセタール樹脂(POM)、エポキシ樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂(PA、ポリアミド、ナイロン)、イミド樹脂(ポリイミド)、アミドイミド樹脂(PAI、ポリアミドイミド)、シェラック樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、硝化綿、アルキド樹脂、石油樹脂、ロジン系樹脂、スチレン/マレイン酸樹脂、シリコン樹脂、塩ビ-酢ビ共重合体、アクリルモノマー/オリゴマー及びオレフィン樹脂(ポリオレフィン)等を用いる。
【0072】
前記塩ビ-酢ビ共重合体(塩化ビニル・酢酸ビニル系変性樹脂)は、塩化ビニルと酢酸ビニル等との共重合樹脂である。
【0073】
前記バインダーは、より好ましくは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アミドイミド樹脂、及び塩ビ-酢ビ共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種を用い、2種以上を組み合わせて使用することもできる。前記バインダーは、特に好ましくは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂及びアミドイミド樹脂を使用する。
【0074】
前記バインダーは、必要に応じて、硬化剤を併用する方が好ましい。硬化剤を併用することで、より短時間でUV照射による効果を発現できるため、よりパターンの鮮明化が可能になる。
【0075】
前記硬化剤は、特に限定されず、使用するバインダー樹脂に合わせて適宜選択することが可能である。前記硬化剤は、好ましくは、イソシアネート、アミド樹脂、フェノール樹脂、メルカプタン、イミダゾール、ケティミン、オキサゾリン、カルボジイミド、エポキシ等を用いる。
【0076】
本発明では、前記触媒組成物には、必要に応じて、フィラー、増粘剤等の添加物を使用しても良い。前記フィラーは、好ましくは、シリカ、アルミナ等を用いる。前記増粘剤は、好ましくは、スメクタイト系粘土鉱物等の無機増粘剤、セルロースナノファイバー等の有機系増粘剤等を用いる。
【0077】
前記フィラー、増粘剤等の添加物の粒子径は、特に限定されない。本発明では、導体回路として微細配線を形成する場合では、好ましくは、粒子径がより小さいフィラー、増粘剤等の添加物を用いる。その理由から、フィラー、増粘剤等の添加物の粒子径は、好ましくは、100nm以下であり、より好ましくは、10nm以下である。
【0078】
(iv)(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)の形成方法
本発明のめっき物では、前記組成物(触媒組成物)を、基材(回路基板)上に、好ましくは、バーコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレー塗布、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビアリバースロールコーティング法等の公知の手段により、塗布・乾燥させて、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)を形成する。
【0079】
前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)の形成は、より好ましくは、基材(回路基板)上に、前記組成物(触媒組成物)を、バーコート法、スピンコート法、若しくはグラビアリバースロールコーティング法により塗布し、触媒組成物を乾燥させて、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)を形成する。
【0080】
前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)の厚みは、好ましくは、良好に無電解めっきを行い、無電解めっきの反応性を得ることができ、基材(基板)にめっき皮膜を良好に形成することができる点から、20μm以下程度であり、より好ましくは、0.01μm~10μm程度である。
【0081】
本発明は、(1)基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層を形成し、次いで、(2)前記層の表面にUV照射することで、当該層の表面の触媒活性を失活させて、前記基材側から、触媒活性が有る下層(a)と触媒活性が無い上層(b)とを形成し、次いで、(3)、前記触媒活性が無い上層(b)を、パターン形状にエッチングすることで、除去し、前記触媒活性が有る層(a)を、パターン形状に露出し、次いで、(4)前記パターン形状に露出した触媒活性が有る下層(a)に無電解めっき層を形成し、パターン形状のめっきを形成することで、パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物を製造する。
【0082】
本発明のめっき物では、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層は、触媒活性が有る部分(A)と触媒活性が無い部分(B)とが、パターン形状を成し、前記パターン形状の内、前記触媒活性が有る部分(A)の表面に、無電解めっき層を有することで、パターン形状の無電解めっき層を成す。
【0083】
本発明のめっき物では、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層は、前記基材側から、露出した触媒活性が有る下層(a)と触媒活性が無い上層(b)とで構成されており、前記露出した触媒活性が有る下層(a)と前記触媒活性が無い上層(b)とは、パターン形状を成し、前記パターン形状の内、前記露出した触媒活性が有る下層(a)の表面に、無電解めっき層を有することで、パターン形状の無電解めっき層を成す。
【0084】
本発明のめっき物では、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層に対して、UV照射部分は、触媒活性が失活し、無電解めっき層(導体回路)が形成されないこと(触媒活性が無い部分(B)及び触媒活性が無い上層(b))と、エッチングすることで、触媒活性が残る部分を露出することで、無電解めっき層(導体回路)が形成されること(触媒活性が有る部分(A)及び露出した触媒活性が有る下層(a))とを含み、導体回路のパターン形成を可能とするめっき物を提供できる。
【0085】
本発明のめっき物は、好ましくは、前記基材の表面に、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)を、全面に有する。
【0086】
本発明のめっき物では、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)は絶縁性であることから、この層を除去すること無く、導体回路のパターン形成を可能である。本発明のめっき物では、(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層(触媒層)が存在しても、それ自体が導電性を表さず、短絡しないめっき物と成る。
【0087】
本発明のめっき物は、好ましくは、めっき回路(パターン形状)に応じて、エッチングする。
【0088】
(4)エッチング処理及びパターン形状
本発明のめっき物は、基材の表面に(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)を有し、前記層の表面にパターン形状の無電解めっき層を有する。
【0089】
本発明のめっき物は、前記基材において、前記パターン形状の無電解めっき層では、好ましくは、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)の表面を、UV照射(光照射)し、無電解めっき層が無い部分(触媒活性が無い部分(B)及び触媒活性が無い上層(b))を形成することとを含む。
【0090】
本発明のめっき物は、次に、前記触媒活性が無い上層(b)(触媒活性が無い部分(B))を、パターン形状にエッチングすることで、これを除去し、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)の内、前記触媒活性が有る下層(a)(触媒活性が有る部分(A))を、パターン形状に露出し、無電解めっき層が有る部分を形成することを含む。
【0091】
本発明のめっき物は、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)と成る。
【0092】
UV照射(光照射)
光照射に用いる光として、好ましくは、紫外線光(UV光)、可視光等であり、基材表面に付着させた触媒組成物(触媒処理液)中の触媒を失活させることができる光を用いる。
【0093】
光照射に用いる光は、より好ましくは、紫外線(UV光)であり、波長が10nm~400nm程度、即ち可視光線より短く軟X線より長い不可視光線の電磁波である。光照射に用いる光は、より好ましくは、紫外線(UV光)であり、波長が10nm~300nm程度の電磁波である。
【0094】
紫外線光(UV光)の光源は、好ましくは、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線LEDランプである。
【0095】
また、光源は紫外(UV)レーザーであってもよい。紫外(UV)レーザーは、好ましくは、UV-YAG、DUV-YAGもしくはエキシマである。紫外(UV)レーザーは、より好ましくは、DUV-YAGもしくはエキシマである。
【0096】
紫外線光(UV光)の積算光量は、好ましくは、1mJ/cm2~20,000mJ/cm2、より好ましくは、1mJ/cm2~2,000mJ/cm2、更に好ましくは、1mJ/cm2~1,000mJ/cm2である。
【0097】
本発明のめっき物は、前記基材において、前記パターン形状の無電解めっき層では、好ましくは、触媒金属錯イオンを含有する触媒処理液を付着させ、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)を形成し、次いで、この表面を、UV照射(光照射)し、UV照射(光照射)部分の触媒活性を失活させ、その後、無電解めっき層が無い部分(触媒活性が無い部分(B)及び触媒活性が無い上層(b))を形成することを含む。
【0098】
エッチング処理
前記パターン形状のエッチング処理は、好ましくは、めっき回路に応じて、エッチング処理を行う。
【0099】
エッチング処理は、好ましくは、レーザーエッチング処理、プラズマエッチング処理、ブラストエッチング処理、化学エッチング処理等を採用する。
【0100】
レーザーエッチング処理を採用する時は、好ましくは、赤外線レーザー、可視光レーザー、紫外線レーザーもしくはX線レーザーである。レーザーエッチング処理を採用する時は、より好ましくは、赤外線レーザー、可視光レーザー、若しくは紫外線レーザーである。
【0101】
レーザーエッチング処理、プラズマエッチング処理、ブラストエッチング処理、化学エッチング処理等を採用することで、めっき回路に応じたエッチング処理を行うことができる。
【0102】
本発明のめっき物は、次に、前記触媒活性が無い上層(b)(触媒活性が無い部分(B))を、形成すべき回路に応じて、パターン形状にエッチングすることで、これを除去し、次いで、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)の内、前記触媒活性が有る下層(a)(触媒活性が有る部分(A)、エッチング処理部分)を、パターン形状に露出し、その後、基材を無電解めっきして(浴中に浸漬等)、無電解めっき層が有る部分(めっき回路)を形成することを含む。
【0103】
本発明のめっき物は、触媒金属(パラジウム(Pd)等)錯イオンを含有する触媒処理液((i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する組成物(触媒組成物))を用い、光照射部分(UV照射部分、触媒活性が無い部分(B)、上層(b))は触媒活性を失活させて、光の未照射部分(UV未照射部分、触媒活性が有る部分(A)、下層(a))にめっき回路を形成する。
【0104】
エッチング処理によるパターン形状は、好ましくは、形成しようとするめっき回路に応じて、エッチング処理を行う。
【0105】
前記基材表面に形成された(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)では、光を照射(UV照射)後、形成すべき回路パターンに応じて、エッチング処理した部分は、触媒活性が残る部分が露出し、その部分に無電解めっきが形成されて、めっき回路を形成することができる。前記基材表面の内、エッチング処理しない部分は、その触媒活性が失活されている。
【0106】
(5)無電解めっき層(回路基板)
本発明のめっき物は、前記基材を基板とし、前記無電解めっき層を導体回路として、回路基板とすることが好ましい。
【0107】
本発明は、(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)に対して、UV照射部分は、触媒活性は失活し、無電解めっき層(導体回路)が形成されない。本発明は、(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)の内、エッチング処理する部分は、触媒活性は有り、無電解めっき層(導体回路)が形成される。本発明は、こうして、導体回路のパターン形成を可能とするめっき物を作製する。
【0108】
本発明の回路基板では、好ましくは、触媒活性が有る部分(A)(触媒活性が有る下層(a)、触媒層)に対して、無電解めっきを行うことで、基板の上にパターンめっきを形成することができる。
【0109】
(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する組成物(触媒組成物)によって形成された層(触媒層)は、無電解めっきの反応性が良く、得られた無電解めっき皮膜はムラがなく、密着性及び外観性に優れる。
【0110】
本発明の回路基板では、前記無電解めっき層は、導体回路(導通)であることが好ましい。
【0111】
無電解めっきに用いるめっき液は、好ましくは、導体回路(導通)を形成し、銅、金、銀、ニッケル等を用いる。前記めっき液は、好ましくは、(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層、触媒膜)との関係から、銅又はニッケルを含むめっき液を用いる。
【0112】
前記めっき条件は、好ましくは、(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層、触媒膜)は無電解めっきの反応性が非常に良好である為、めっき液の還元剤濃度やアルカリ成分濃度を高める必要がない。その為、めっき液の寿命が長持ちし、触媒層のパターン通りにめっきが選択的に析出される。即ち、(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する組成物(触媒組成物)から形成される触媒(触媒膜)は、パターン形成能に優れる。
【0113】
前記無電解めっき層(めっき皮膜)の厚みは、好ましくは、0.05μm~10μm程度であり、より好ましくは、0.1μm~6μm程度である。
【0114】
無電解めっき処理で、無電解銅(Cu)めっき浴を用いる時は、その処理温度は、好ましくは、25℃~65℃程度であり、その処理時間は、好ましくは、10分~60分程度である。この無電解めっき処理により、0.3μm~3μm程度の析出膜厚を形成することができる。
【0115】
無電解めっき処理で、無電解ニッケルボロン浴を用いる時は、その処理温度は、好ましくは、55℃~70℃程度であり、その析出速度は、好ましくは、5μm/hr(60℃)程度である。
【0116】
無電解めっき処理で、無電解ニッケルりん浴を用いる時は、その処理温度は、好ましくは、30℃~95℃程度であり、好ましくは、析出速度が浴温30℃では3μm/hr程度であり、浴温90℃では20μm/hr程度である。
【0117】
(6)回路基板
本発明の回路基板では、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する組成物(触媒組成物)は、特にABS等の基板を対象とする時に、無電解めっきの反応性が高く、めっきまでの多層めっきに耐え得る良好な密着性を実現できる。
【0118】
本発明の回路基板では、無電解めっきの反応性は良く、無電解めっきにおける還元剤の濃度を高める必要が無く、また無電解めっきの反応温度を上げる必要もない。更に、また有害な物質によるエッチング工程を必要としない。
【0119】
本発明の回路基板では、好ましくは、電子機器のプリント配線板等の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)を形成し、無電解用めっきを施すための皮膜をパターン形成(露出)する。その無電解めっき用の皮膜(触媒層)が形成された配線板に対して、無電解めっきを行うことで、配線板に電子回路形成用の無電解めっき皮膜を形成する。本発明の回路基板では、好ましくは、電子機器のプリント配線板等で、無電解めっきを行うことにより金属配線回路を形成する。
【0120】
(7)めっき物(回路基板)の製造方法
本発明のめっき物の製造方法は、
パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物を製造することであり、
(1)基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層を形成する工程、
(2)前記(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層を形成する工程の後、当該層の表面にUV照射することで、当該層の表面の触媒活性を失活させて、前記基材側から、触媒活性が有る下層(a)と触媒活性が無い上層(b)とを形成する工程、
(3)前記UV照射する工程の後、前記触媒活性が無い上層(b)を、パターン形状にエッチングすることで、除去し、前記触媒活性が有る下層(a)を、パターン形状に露出する工程、及び
(4)前記触媒活性が有る層(a)を露出する工程の後、前記パターン形状に露出した触媒活性が有る層(a)に無電解めっき層を形成し、パターン形状のめっきを形成する工程、を含む。
【0121】
本発明のめっき物の製造方法は、好ましくは、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)を形成する工程では、前記基材の表面に、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)を、全面に形成する。
【0122】
本発明のめっき物では、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層は、前記基材側から、露出した触媒活性が有る下層(a)と触媒活性が無い上層(b)とで構成されており、前記露出した触媒活性が有る下層(a)と前記触媒活性が無い上層(b)とは、パターン形状を成し、前記パターン形状の内、前記露出した触媒活性が有る下層(a)の表面に、無電解めっき層を有することで、パターン形状の無電解めっき層を成す。
【0123】
本発明のめっき物では、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層に対して、UV照射部分は、触媒活性が失活し、無電解めっき層(導体回路)が形成されないこと(触媒活性が無い部分(B)及び触媒活性が無い上層(b))と、エッチングすることで、触媒活性が残る部分を露出することで、無電解めっき層(導体回路)が形成されること(触媒活性が有る部分(A)及び露出した触媒活性が有る下層(a))とを含み、導体回路のパターン形成を可能とするめっき物を提供できる。
【0124】
本発明のめっき物では、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層は、触媒活性が有る部分(A)と触媒活性が無い部分(B)とが、パターン形状を成し、前記パターン形状の内、前記触媒活性が有る部分(A)の表面に、無電解めっき層を有することで、パターン形状の無電解めっき層を成す。
【0125】
本発明のめっき物の製造方法は、好ましくは、前記基材は、基板であり、前記無電解めっき層は、導体回路であり、回路基板である。
【0126】
(1)基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層を形成する工程
本発明のめっき物では、上記の通り、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する組成物(触媒組成物)を、基材(回路基板)上に、好ましくは、バーコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレー塗布、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビアリバースロールコーティング法等の公知の手段により、塗布・乾燥させて、(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)を形成する。
【0127】
前記(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)は、好ましくは、前記基材の表面の全面に形成する。
【0128】
前記(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)は、より好ましくは、基材(回路基板)上に、前記触媒組成物を、バーコート法、スピンコート法、若しくはグラビアリバースロールコーティング法により塗布し、触媒組成物を乾燥させて、形成する。
【0129】
前記(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)の厚みは、好ましくは、良好に無電解めっきを行い、無電解めっきの反応性を得ることができ、基材(基板)にめっき皮膜を良好に形成することができる点から、20μm以下程度であり、より好ましくは、0.01μm~10μm程度である。
【0130】
(2)前記(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層を形成する工程の後、当該層の表面にUV照射することで、当該層の表面の触媒活性を失活させて、前記基材側から、触媒活性が有る下層(a)と触媒活性が無い上層(b)とを形成する工程
本発明のめっき物では、上記の通り、好ましくは、光照射に用いる光として、好ましくは、紫外線光(UV光)を用い、基材表面に付着させた(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する組成物(触媒組成物、触媒処理液)中の触媒を失活させる。前記光照射に用いる光は、好ましくは、紫外線(UV光)であり、好ましくは、波長が10nm~400nm程度、より好ましくは、波長が10nm~300nm程度、即ち可視光線より短く軟X線より長い不可視光線の電磁波である。
【0131】
前記紫外線光(UV光)の光源は、好ましくは、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線LEDランプである。
【0132】
また、前記光源は紫外(UV)レーザーであってもよい。前記紫外(UV)レーザーは、好ましくは、UV-YAG、DUV-YAGもしくはエキシマである。前記紫外(UV)レーザーは、より好ましくは、DUV-YAGもしくはエキシマである。
【0133】
前記紫外線光(UV光)の積算光量は、好ましくは、1mJ/cm2~20,000mJ/cm2、より好ましくは、1mJ/cm2~2,000mJ/cm2、更に好ましくは、1mJ/cm2~1,000mJ/cm2である。
【0134】
(3)前記UV照射する工程の後、前記触媒活性が無い上層(b)を、パターン形状にエッチングすることで、除去し、前記触媒活性が有る下層(a)を、パターン形状に露出する工程
前記パターン形状のエッチング処理は、好ましくは、めっき回路に応じて、エッチング処理を行う。
【0135】
エッチング処理は、好ましくは、レーザーエッチング処理、プラズマエッチング処理、ブラストエッチング処理、化学エッチング処理等を採用する。
【0136】
レーザーエッチング処理を採用する時は、好ましくは、赤外線レーザー、可視光レーザー、紫外線レーザーもしくはX線レーザーである。レーザーエッチング処理を採用する時は、より好ましくは、赤外線レーザー、可視光レーザー、若しくは紫外線レーザーである。
【0137】
レーザーエッチング処理、プラズマエッチング処理、ブラストエッチング処理、化学エッチング処理等を採用することで、めっき回路に応じたエッチング処理を行うことができる。
【0138】
本発明のめっき物は、次に、前記触媒活性が無い上層(b)(触媒活性が無い部分(B))を、形成すべき回路に応じて、パターン形状にエッチングすることで、これを除去し、次いで、前記(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)の内、前記触媒活性が有る下層(a)(触媒活性が有る部分(A)、エッチング処理部分)を、パターン形状に露出する。
【0139】
(4)前記触媒活性が有る層(a)を露出する工程の後、前記パターン形状に露出した触媒活性が有る層(a)に無電解めっき層を形成し、パターン形状のめっきを形成する工程、を含む。
【0140】
その後、基材を無電解めっきして(浴中に浸漬等)、無電解めっき層が有る部分(めっき回路)を形成することを含む。
【0141】
本発明のめっき物は、触媒金属(パラジウム(Pd)等)錯イオンを含有する触媒処理液((i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する組成物(触媒組成物))を用い、光照射部分(UV照射部分、触媒活性が無い部分(B)、上層(b))は触媒活性を失活させて、光の未照射部分(UV未照射部分、触媒活性が有る部分(A)、下層(a))にめっき回路を形成する。
【0142】
エッチング処理によるパターン形状は、好ましくは、形成しようとするめっき回路に応じて、エッチング処理を行う。
【0143】
前記基材表面に形成された(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)では、光を照射(UV照射)後、形成すべき回路パターンに応じて、エッチング処理した部分は、触媒活性が残る部分が露出し、次いで無電解めっきすることで、その部分(触媒活性が残る部分)に無電解めっきが形成されて、めっき回路を形成することができる。前記基材表面の内、エッチング処理しない部分は、その触媒活性が失活されている。
【0144】
本発明のめっき物は、好ましくは、基材(基板)にパターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成する。
【0145】
前記(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する組成物(触媒組成物)によって形成された層は、無電解めっきの反応性が良く、得られた無電解めっき皮膜はムラがなく、密着性及び外観性に優れる。
【0146】
本発明の回路基板では、前記無電解めっき層は、導体回路(導通)であることが好ましい。
【0147】
前記めっき液は、好ましくは、導体回路(導通)を形成し、銅、金、銀、ニッケル等を用いる。前記めっき液は、好ましくは、触媒層(触媒膜)との関係から、銅又はニッケルを含むめっき液を用いる。
【0148】
前記めっき条件は、好ましくは、触媒層(触媒膜)は無電解めっきの反応性が非常に良好である為、めっき液の還元剤濃度やアルカリ成分濃度を高める必要がない。その為、めっき液の寿命が長持ちし、触媒層のパターン通りにめっきが選択的に析出される。
【0149】
即ち、(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する組成物(触媒組成物)から形成される触媒(触媒膜)は、パターン形成能に優れる。
【0150】
前記無電解めっき層(めっき皮膜)の厚みは、好ましくは、0.05μm~10μm程度であり、より好ましくは、0.1μm~6μm程度である。
【0151】
無電解めっき処理で、無電解銅(Cu)めっき浴を用いる時は、その処理温度は、好ましくは、25℃~65℃程度であり、その処理時間は、好ましくは、10分~60分程度である。この無電解めっき処理により、0.3μm~3μm程度の析出膜厚を形成することができる。
【0152】
無電解めっき処理で、無電解ニッケルボロン浴を用いる時は、その処理温度は、好ましくは、55℃~70℃程度であり、その析出速度は、好ましくは、5μm/hr(60℃)程度である。
【0153】
無電解めっき処理で、無電解ニッケルりん浴を用いる時は、その処理温度は、好ましくは、30℃~95℃程度であり、好ましくは、析出速度が浴温30℃では3μm/hr程度であり、浴温90℃では20μm/hr程度である。
【0154】
本発明では、無電解めっき層を形成する工程において、無電解めっき層を形成する前に、必要に応じて、前処理を行っても良い。前記前処理は、好ましくは、例えば、前工程後の基材に対して、アルカリ脱脂、酸性脱脂、酸活性等の処理を施す。
【0155】
(8)めっき物(回路基板)の利用性
本発明のめっき物(回路基板)では、基材表面に前記(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)を形成し(触媒処理液を付着させ)、その表面に光を照射(UV照射)する。この光照射(UV照射)により、光が当った照射部分(UV照射部分)では、触媒金属イオンがその触媒活性を失活する。次に、パターン形状にエッチング処理して、触媒活性が有る部分を露出する。次に、前記基材を無電解めっき(例えば、浴中に浸漬)する。
【0156】
触媒金属イオンとしてPd2+を例に挙げて説明する。パターン形状にエッチング処理して、露出した触媒活性が有る部分では、Pd金属が存在し、無電解めっきされる。このPd金属、即ち触媒金属の働きによって、基材表面にCu、Ni等のめっき金属が析出し、めっき回路(導体回路)が形成される。
【0157】
パターン形状にエッチング処理して、露出した触媒活性が有る部分(触媒活性が有る部分(A)、下層(a))に、パターン形状のめっき回路が形成される。一方、光が照射された部分(UV照射部分、触媒活性が無い部分(B)、上層(b))は、めっき回路(導体回路)が形成されない。
【0158】
本発明のめっき物は、特定の触媒処理液とパターン形状のエッチング処理と光照射とを用いることによって、触媒活性部分(めっき回路形成部分)と、光照射による不活性部分とに区分し、その後、触媒活性部分にめっき回路用金属を析出させて、めっき回路を形成することかできる。
【0159】
本発明のめっき物は、従来技術と異なり、(i)金属粒子と分散剤との複合体、好ましくは、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する層(触媒層)は絶縁性であることから、その層を除去すること無く、導体回路のパターン形成を可能とし、その層が存在しても、それ自体が導電性を表さず、短絡しないめっき物と成る。
【0160】
本発明のめっき物は、従来技術と異なり、レジストマスクを用いる必要がない。本発明のめっき物は、基材の種類の制限を受けることが無く、電気特性に優れるめっき回路を形成することができる。
【実施例
【0161】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0162】
<実施例1>
めっき物の製造(回路基板)
・本発明の(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する組成物(触媒組成物)から成る層(触媒層)
・UV光処理有り
・レーザーエッチング処理によるパターンの形成
【0163】
(1)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層を形成するインキを調整する工程
金属粒子と分散剤との複合体、有機溶媒及びエポキシ樹脂を混ぜ合わせたインキを調整した。前記のインキに、添加剤として平均粒径10nmのシリカ1.25重量部を加え、分散させた。
【0164】
(2)基材(基板)の表面に、Pd触媒を含有する塗膜(触媒層)を形成する工程
回路基板として、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS)基板を用いた。このABS基板の表面に(1)にて調整したインキをスプレー塗布することにより、Pd触媒を含有する塗膜(触媒層)を形成した。
【0165】
(3)UV照射する工程
前記Pd触媒を含有する塗膜(触媒層)を形成したABS基板に、メタルハライドランプによるUV照射を行った。積算光量は1,250mJ/cm2とした。光照射部分(UV照射部分、触媒活性が無い部分(B)、上層(b))は、触媒活性を失活させた。
【0166】
(4)エッチング処理する工程
前記触媒層が形成されたABS基板の表面をパターン形状にレーザーエッチング処理した。レーザーエッチング処理は、波長が1,064nm、出力が25WのNd:YAGレーザーを用いた。レーザー照射条件は、走査速度は1,500mm/sec~3,000mm/secとし、出力は40%~70%とした。
【0167】
エッチング処理は、エッチングの幅が1mmのパターン形状をもつ。
【0168】
(5)パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成する工程
触媒層の表面で、パターン形状にエッチング処理した部分は、触媒層の内、前記触媒活性が有る下層(a)(触媒活性が有る部分(A))が露出し、無電解めっき層が形成される。触媒層の表面で、パターン形状にエッチング処理しない部分は、光照射部分(UV照射部分、触媒活性が無い部分(B)、上層(b))として残り、触媒活性を失活しており、無電解めっき層が形成されない。こうして、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成する。
【0169】
前記UV光処理及びパターン形状のエッチング処理された触媒層付き基板を、アルカリ脱脂処理を行った後に、無電解Cuめっき液(奥野製薬社製OPCカッパーHFS)に40℃×10分浸漬することで、UV照射されていて、かつレーザーエッチング処理された部分にのみCuめっきを形成した。前記無電解Cu層の厚みは0.5μmとした。これにより、得られたサンプル(ABS基板)は、UV照射されていて、かつレーザーエッチング処理された部分にのみ導電層(無電解めっき層、導体回路)を有する。
【0170】
(6)密着性の確認
前記パターン形成された導体回路に対して、テープ剥離試験を行い、基材に対する導体回路の密着性を評価した。結果、実施例のめっき物では、基材に対して、導体回路部分の剥離は見られなかった。
【0171】
本発明の触媒層を用いると、マスキング技術により、その触媒層は絶縁性と成り、良好に、パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物を提供できる。本発明のマスキング技術により、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成することができ、より微細な回路配線を形成するめっき物(回路部品、回路基板)を作製することができると、評価できる。
【0172】
<実施例2>
めっき物の製造(回路基板)
・本発明の(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する組成物(触媒組成物)から成る層(触媒層)
・UV光処理有り
・化学エッチング処理によるパターンの形成
【0173】
(1)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層を形成するインキを調整する工程
金属粒子と分散剤との複合体、有機溶媒及びエポキシ樹脂を混ぜ合わせたインキを調整した。前記のインキに、添加剤として平均粒径10nmのシリカ1.25重量部を加え、分散させた。
【0174】
(2)基材(基板)の表面に、Pd触媒を含有する塗膜(触媒層)を形成する工程
回路基板として、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS)基板を用いた。このABS基板の表面に(1)にて調整したインキをスプレー塗布することにより、Pd触媒を含有する塗膜(触媒層)を形成した。
【0175】
(3)UV照射する工程
前記Pd触媒を含有する塗膜(触媒層)を形成したABS基板に、メタルハライドランプによるUV照射を行った。積算光量は1,250mJ/cm2とした。光照射部分(UV照射部分、触媒活性が無い部分(B)、上層(b))は、触媒活性を失活させた。
【0176】
(4)エッチング処理する工程
前記Pd触媒を含有する塗膜(触媒層)を形成したABS基板に、開口したパターンを有するメタルマスクを貼り付け、強アルカリ溶液に十分な時間浸漬させ、化学エッチング処理を行った。
【0177】
(5)パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成する工程
触媒層の表面で、パターン形状にエッチング処理した部分は、触媒層の内、前記触媒活性が有る下層(a)(触媒活性が有る部分(A))が露出し、無電解めっき層が形成される。触媒層の表面で、パターン形状にエッチング処理しない部分は、光照射部分(UV照射部分、触媒活性が無い部分(B)、上層(b))として残り、触媒活性を失活しており、無電解めっき層が形成されない。こうして、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成する。
【0178】
前記UV光処理及びパターン形状のエッチング処理された触媒層付き基板を、無電解Cuめっき液(奥野製薬社製OPCカッパーHFS)に40℃×10分浸漬することで、UV照射されていて、かつ化学エッチング処理された部分にのみCuめっきを形成した。前記無電解Cu層の厚みは0.5μmとした。これにより、得られたサンプル(ABS基板)は、UV照射されていて、かつ化学エッチング処理された部分にのみ導電層(無電解めっき層、導体回路)を有する。
【0179】
(6)密着性の確認
前記パターン形成された導体回路に対して、テープ剥離試験を行い、基材に対する導体回路の密着性を評価した。結果、実施例のめっき物では、基材に対して、導体回路部分の剥離は見られなかった。
【0180】
本発明の触媒層を用いると、マスキング技術により、その触媒層は絶縁性と成り、良好に、パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物を提供できる。本発明のマスキング技術により、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成することができ、より微細な回路配線を形成するめっき物(回路部品、回路基板)を作製することができると、評価できる。
【0181】
<比較例1>
めっき物の製造(回路基板)
・本発明の(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する組成物(触媒組成物)から成る層(触媒層)
・UV光処理無し
・レーザーエッチング処理によるパターンの形成
【0182】
(1)金属粒子と分散剤との複合体を含有する層を形成するインキを調整する工程
金属粒子と分散剤との複合体、有機溶媒及びエポキシ樹脂を混ぜ合わせたインキを調整した。前記のインキに、添加剤として平均粒径10nmのシリカ1.25重量部を加え、分散させた。
【0183】
(2)基材(基板)の表面に、Pd触媒を含有する塗膜(触媒層)を形成する工程
回路基板として、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS)基板を用いた。このABS基板の表面に(1)にて調整したインキをスプレー塗布することにより、Pd触媒を含有する塗膜(触媒層)を形成した。
【0184】
(3)エッチング処理する工程
前記触媒層が形成されたABS基板の表面をパターン形状にレーザーエッチング処理した。エッチング処理は、エッチングの幅が1mmのパターン形状をもつ。
【0185】
(4)パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成する工程
前記パターン形状のエッチング処理された触媒層付き基板を、アルカリ脱脂処理を行った後に、無電解Cuめっき液(奥野製薬社製OPCカッパーHFS)に40℃×10分浸漬したところ、(2)の工程にて形成した塗膜の部分全てにCuめっきを形成した。
【0186】
UV光処理が無ければ、導電層のパターンを形成することができない。
図1