(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】紫外線励起を用いた切削
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20240701BHJP
G01N 1/30 20060101ALI20240701BHJP
G01N 1/06 20060101ALI20240701BHJP
G02B 21/16 20060101ALI20240701BHJP
G02B 21/34 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G01N1/30
G01N1/06 A
G01N21/64 E
G02B21/16
G02B21/34
(21)【出願番号】P 2021526504
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(86)【国際出願番号】 US2019061765
(87)【国際公開番号】W WO2020102698
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-01
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511248249
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ ヒューストン システム
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】メイリッチ,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】エリクセン,ジェイソン
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/160629(WO,A1)
【文献】特表2017-519200(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0137715(US,A1)
【文献】特表2008-523376(JP,A)
【文献】特表2017-534846(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0310829(US,A1)
【文献】特開2018-063291(JP,A)
【文献】米国特許第04960330(US,A)
【文献】笠井淳司,'Cracking the Brain's Code'を加速する構造と機能の全脳イメージング,神経科学,2018年,Vol.57 No.1,pp.3-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62-21/74
G01N 1/00-1/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dイメージングのための方法であって、
サンプルを調製するステップであって、該サンプルを少なくとも1種の造影剤で処理または染色して、処理されたサンプルを生産する、ステップ;
支持マトリックス中に処理されたサンプルを包埋して、包埋されたサンプルを生産するステップ、ここで、支持マトリックスは
UV吸収剤がドープされてUVを吸収するものであり、それによって、軸方向のPSF(点広がり関数)が低減され、UV侵入の深さがおよそ10μmまたはそれ未満に限定される;
該包埋されたサンプルを、イメージングのために位置決めするステップ;
該包埋されたサンプルの露出した表面をUV源で励起するステップであって、該包埋されたサンプルは、該UV源によって望ましい角度で斜めに励起される、ステップ;
該露出した表面の領域の1つまたはそれより多くのイメージを捕獲するステップであって、該1つまたはそれより多くのイメージは、該露出した表面の全体を表すイメージのセットを形成する、ステップ;
捕獲するステップでイメージングされた該包埋されたサンプルの層を切断するステップであって、該層は、イメージングされた後に除去されたフラットな平面の層である、ステップ;および
前の切断するステップによって露出させた次の露出した表面のために、捕獲および切断するステップを繰り返すステップ;
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種の造影剤が、マルチチャネルイメージングのために利用される複数の造影剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
捕獲するステップが、前記マルチチャネルイメージングのためのフィルターなしで実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の造影剤が、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、Hoesch 33342(HO342)、エオシン、GFP、蛍光インク、蛍光樹脂、アクリル性インク、vasQtec UV-イエロー、vasQtec PU4ii、フルオレセイン、イソチオシアネート(FITC)、ローダミン、量子ドット(QD)、UV27、またはエポリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記支持マトリックスが、ワックス、パラフィンワックス、ヒドロゲル、樹脂、またはグリコールメタクリレートである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記包埋されたサンプルが立方体である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記支持マトリックス
が、第2の造影剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルが、血管の形態のイメージング、腐食標本、または免疫染色のために調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
捕獲するステップが、第1の領域の第1のイメージを捕獲すること、該包埋されたサンプルまたはカメラをシフトして、該第1の領域に隣接する次の領域の次のイメージ捕獲すること、および該露出した表面の全体がイメージングされるまでシフトと捕獲を繰り返すことによって、該露出した表面の全体をカバーする複数のイメージをモザイク化して、捕獲するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
2Dイメージのセットから、組織サンプルの3Dイメージをアセンブルするステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
UV源アタッチメントおよび精密ステージアタッチメントを含む3Dイメージングキットであって、
ここで、UV源アタッチメントは、組織サンプルの領域を励起するようにアレンジされており、該組織サンプルが、少なくとも1種の造影剤で処理または染色され、支持マトリックス中に包埋され、包埋されたサンプルを生産し、ここで、支持マトリックスは
UV吸収剤がドープされてUVを吸収するものであり、それによって、軸方向のPSF(点広がり関数)が低減され、UV侵入の深さがおよそ10μmまたはそれ未満に限定され、該UV源アタッチメントは、
UVシグナルを作成することが可能なUV源、
該UV源アタッチメントをマウントするマウント、および、
x、y、および/またはz方向での該UV源の調整を可能にする調整コンポーネント、
を含み、ここで、UV源は、包埋されたサンプルを望ましい角度で斜めに励起するようにされており、
精密ステージアタッチメントは、UV源によって励起される露出した表面の領域の1つまたはそれより多くのイメージを捕獲するためのものであり、この精密ステージアタッチメントは、
該包埋されたサンプルの1つまたはそれより多くのイメージを捕獲するためのカメラであって、該1つまたはそれより多くのイメージは、該露出した表面の全体を表すイメージのセットを形成する、カメラ、および
該1つまたはそれより多くのイメージを捕獲するために、包埋されたサンプルに近い位置に該カメラを固定する支持体、
を含む、上記キット。
【請求項12】
前記包埋されたサンプルの層を切断するためのブレードアセンブリをさらに含み、該ブレードアセンブリは、
前記包埋されたサンプルを設置するための場所を提供する試料プレーン;
ブレード;および
該ブレードをx、y、および/またはz方向に正確に動かして、フラットな平面の層を切断するための、ブレード作動装置;
を含み、
該ブレードアセンブリは、イメージング後に前記包埋されたサンプルのフラットな平面を除去して、前記次の露出した表面を出現させる、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記カメラが、マルチチャネルイメージングのためのフィルターを有さない、請求項11に記載のキット。
【請求項14】
前記カメラが、第1の領域の第1のイメージを捕獲すること、該包埋されたサンプルまたはカメラをシフトして、該第1の領域に隣接する次の領域の次のイメージ捕獲すること、および該露出した表面の全体がイメージングされるまでシフトと捕獲を繰り返すことによって、該露出した表面の全体をカバーする複数のイメージを捕獲するようにされている、請求項11に記載のキット。
【請求項15】
UV源アタッチメント、精密ステージアタッチメント、および/またはブレードアセンブリの操作を自動化するための処理装置をさらに含む、請求項12に記載のキット。
【請求項16】
前記少なくとも1種の造影剤が、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、Hoesch 33342(HO342)、エオシン、GFP、蛍光インク、蛍光樹脂、アクリル性インク、vasQtec UV-イエロー、vasQtec PU4ii、フルオレセイン、イソチオシアネート(FITC)、ローダミン、量子ドット(QD)、UV27、またはエポリンである、請求項11に記載のキット。
【請求項17】
前記支持マトリックスが、ワックス、パラフィンワックス、ヒドロゲル、樹脂、またはグリコールメタクリレートである、請求項11に記載のキット。
【請求項18】
前記包埋されたサンプルが立方体である、請求項11に記載のキット。
【請求項19】
前記支持マトリックス
が、第2の造影剤を含む、請求項11に記載のキット。
【請求項20】
前記サンプルが、血管の形態のイメージング、腐食標本、または免疫染色のために調製される、請求項11に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
[0001]本出願は、参照により本明細書に組み入れられる2018年11月15日付けで出願された米国仮特許出願第62/767,620号の利益を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する陳述
[0002]本発明は、米国国立科学財団I/UCRC脳センター(National Science Foundation I/UCRC BRAIN Center)からの認可番号1650566;テキサスがん予防研究所(Cancer Prevention and Research Institute of Texas:CPRIT)#RR140013、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)/および米国国立心臓・肺・血液研究所(National Heart, Lung, and Blood Institute:NHLBI)#R01HL146745および米国国立癌研究所(National Cancer Institute:NCI)#1R21CA214299に基づく政府支援を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
発明の分野
[0003]本発明は、紫外線励起を用いた切削(MUVE)に関する。より特定には、3次元イメージングおよび/または顕微鏡法を用いたMUVEに関する。
【背景技術】
【0004】
[0004]背景に関して、参照によりその全体が本明細書に取り入れられる、2018年2月28日付けで出願された、臓器全体の表現型解析のためのSALT(表面アブレーションレーズ断層撮影法)システムおよび方法(SALT (Surface Ablation Lathe Tomography) Systems and Methods for Whole Organ Phenotyping)という表題のWO2018/160629(またはPCT/US2018/020114)で論じられた先行の研究を特記する。
【0005】
[0005]3次元生物学的サンプルの分析は、組織の機能および疾患のメカニズムを理解するために重要である。神経変性疾患やがんのような多くの慢性的な状態は、2次元の組織学を使用して調査することが難しい複雑な組織の変化と相関する。共焦点およびライトシート顕微鏡法などの3次元技術は十分に確立されているが、これらは時間がかかり、高価な機器を必要とし、小さい組織体積に限定される。したがって、3次元顕微鏡法は、臨床条件において非現実的であり、主要な調査機関におけるコア施設に限定されることが多い。細胞レベルの分解能で大きい3次元組織体積を機械作業でイメージングする能力臨床医と研究者に提供することは、莫大な利益があると予想される。
【0006】
[0006]神経変性疾患およびがんは、組織構造、タンパク質分布、および基礎となる化学における複雑な変化を介して、周囲の組織の表現型に影響を与えるが、これらは、顕微鏡スケールで患者によって著しく変動し得る。残念なことに、これらの変化は、従来の組織学を使用して薄い切片(通常4~6μm)で正確に定量することが難しいかまたは不可能である。現在、研究者や病理医は、複数の化学的チャネルにわたりマイクロメートルの分解能で大きい組織体積を調査することを可能にする総合的な手法を必要としている。
【0007】
[0007]共焦点顕微鏡法や多光子顕微鏡法などの3次元の方法は、生物学的サンプルにおいて一部の構造的な状況を提供するトレンドの技術であるが、これらの技術は、極めて遅く、薄い(<1mm)サンプルに限定される。LSMの使用は、共焦点に特有な時間の制約を軽減するが、サンプルはまた小さい体積に制限される。集光レーザービームで組織を蒸発させること、およびミクロトームを使用して組織を裁断することを含む、イメージング後の組織のアブレーションによって厚さの制約を克服するために、いくつかの試みがなされてきた。しかしながら、これらの技術は、大きいサンプルまたは臓器全体を機械作業でイメージングするには、非常に高額であり、時間がかかる。上記で参照したWO2018/160629における以前の研究では、これらの制約は、ナイフエッジスキャン顕微鏡法(knife-edge scanning microscopy:KESM)として公知のハイスループットイメージングシステムのアップデートされたバージョンを使用して緩和され、数時間で、マイクロメートル未満の分解能で、1cm
3のサンプルの自動イメージングを可能にする。しかしながら、KESMを使用したイメージングは干渉性切片を必要とし、現状では単一チャネルイメージングに限定される。これらの問題に取り組むために、生物学的サンプルにおけるラージスケールの3次元マルチチャネルイメージを収集するために、紫外線(UV)励起下での連続的なブロックフェイスイメージングを実行するMUVEと呼ばれるプロトタイプのイメージングシステムを開発した(
図1a)。
【0008】
[0008]紫外線表面励起での顕微鏡法(MUSE)は、UVで励起可能なマーカーで染色された新鮮な組織のイメージングを可能にする。MUSEにおける主要な特徴は、UV光侵入が、組織サンプルに向かっておよそ5μmに限定されることであり、これは、ラスタースキャニングを必要せずとも組織表面のイメージを平行して収集することを可能にする。加えて、これはまた、ガラス光学機器は効果的にUV波長を侵入させず、それゆえにダイクロイックミラーまたは特定のフィルターが使用されないため、組織表面で同時に励起された複数の蛍光チャネルの同時獲得も可能にする。MUSEは、標準的なサンプルでの迅速なイメージ収集を提供する一方で、これらのイメージは、組織表面上の薄いスライスに限定される。WO2018/160629の先行の研究は、組織全体の体積を表すイメージのスタックを収集するものであり、これは、表面を環状に連続してアブレーションして、イメージングした組織を除去し、より深い層を露出させるために使用されるミクロトームブレードを含む。これは、3次元組織構造と接続性を再構築するための機械加工可能な媒体に包埋された大きいサンプルの連続的な自動化されたイメージングを可能にすると予想されるが、3Dイメージを再構築するために複雑な処理を必要とすることから、そのようなものとしてさらなる改善が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0009]本明細書で提唱されるシステム、キット、および方法は、現行の組織学的なパイプラインに容易に統合することができる迅速で廉価な3次元イメージングを可能にするイメージング手法を提供する。この方法は、紫外線励起を使用するパラフィン包埋サンプルのブロックフェイスイメージングに頼る。次いでイメージングされた表面をアブレーションして、イメージングのために次の組織切片またはスライスを出現させる。次いで最終的なイメージのスタックをアライメントし、再構築して、現行の3次元イメージングシステムで達成可能な深さおよび分解能を超える組織モデルを提供する。これは、2D組織学に匹敵する迅速な獲得速度での3Dイメージング、無制限のサンプルの厚さまたはサイズ、軸方向に沿って回折限界を超える分解能、および簡単で低コストの構築をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0010]一実施態様において、紫外線励起を用いた切削(MUVE)のためのシステムおよび方法が提唱される。提唱される機器は、連続的なアブレーションを利用し、光学的方法に特有な全ての深さの限界を克服する。一部の実施態様において、3Dイメージングのための方法は、造影剤で処理または染色しようとするサンプルを調製するステップ、および支持マトリックス中にサンプルを包埋するステップを含む。得られたサンプルは、サンプルの露出した表面をUV源で励起することによるイメージングのために利用することができる。スライスが一旦イメージングされたら、これを切断して、次のスライスのイメージングを可能にすることができる。スライスをイメージングし、切断するプロセスは、要求に応じて繰り返してもよい。集められた2Dスライスをアセンブルして、サンプルの3Dイメージを作成することができる。
【0012】
[0011]さらに別の実施態様において、3Dイメージングのための方法は、造影剤で処理または染色されたサンプルを調製するステップ、および支持マトリックス中にサンプルを包埋するステップを含んでいてもよい。サンプルの露出した表面は、UV源で励起し、イメージングすることができる。スライスが一旦イメージングされたら、それを切り取って、次のスライスをイメージングできるようにすることができる。スライスをイメージングし、切断するプロセスは、要求に応じて繰り返してもよい。集められた2Dスライスをアセンブルして、サンプルの3Dイメージを作成することができる。
【0013】
[0012]前述の内容は、以下に記載された特許請求の範囲および詳細な説明をよりよく理解できるように、本発明の開示の様々な特徴をかなり概略的に概説したものである。本開示の追加の特徴および利点を以下に説明する。
【0014】
[0013]本発明の開示とその利点をより十分に理解するために、本開示の具体的な実施態様を記載した添付の図面と併せて以下の説明をここに記載する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】[0014]
図1A~1Cは、MUVEイメージングシステムまたはキットの実施態様を示す。
【
図1B】[0014]
図1A~1Cは、MUVEイメージングシステムまたはキットの実施態様を示す。
【
図1C】[0014]
図1A~1Cは、MUVEイメージングシステムまたはキットの実施態様を示す。
【
図2】[0015]
図2は、一般的な蛍光色素の励起(破線)および放出スペクトルを示す。
【
図3】[0016]
図3A~3Bは、MUVEを使用したパラフィンファントムのデジタル複製を示す。
【
図4】[0017]
図4A~4Bは、MUVEを使用したマルチチャネルイメージングを示す。
【
図5】[0018]
図5A~5Cは、MUVEのさらなるマルチチャネルイメージングを示す。
【
図6】
図6A~6Fは、UV27でドープされたパラフィンワックス中に包埋した異なるマウス臓器のMUVEイメージングを示す。
【
図7-1】
図7A~7Iは、層状の均一な基板における吸光度に対する、結合波理論を使用した共焦点およびMUVE点広がり関数のモンテカルロシミュレーションを示す。
【
図7-2】
図7J~7Lは、層状の均一な基板における吸光度に対する、結合波理論を使用した共焦点およびMUVE点広がり関数のモンテカルロシミュレーションを示す。
【
図8】
図8A~8Eは、広視野蛍光顕微鏡(a、d)およびMUVE(c、e)を使用したマイクロスフェアの中央のプロファイリングを示す。
【
図9】
図9A~Fは、3D顕微鏡法としてのMUVEイメージングの利点を示す。
【
図10】
図10A~10Dは、墨で染色されたマウス中脳のコロナルMUVEイメージングを示す。
【
図11】
図11A~11Bは、マウス大脳皮質微小血管系(a)およびセグメンテーション(b)を示す。
【
図12】
図12A~Dは、墨およびチオニンで染色されたマウス視床のコロナルMUVEイメージングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0020]ここで図面を参照するが、描写された要素は、必ずしも一定の縮尺で示されておらず、同様の、または類似のエレメントはいくつかの図面にわたり同じ参照番号によって指定される。
【0017】
[0021]図面全体を参照すれば、図解は、本開示の特定のインプリメンテーションを記載する目的のためのものであり、それらに限定することを意図しないことが理解されるであろう。本明細書において使用される用語のほとんどが、当業者に認識可能であると予想されるが、明示的に定義されていない場合、用語は、当業者により現在容認された意味を採用するものと解釈されるものとすることが理解されるものとする。本明細書で論じられる例示的な例は、実際の実験または実験の構成に対応し得るが、非限定的な例であることが理解されるものとする。
【0018】
[0022]前述の一般的な説明と以下の詳細な説明はいずれも単に典型的で説明的なものにすぎず、特許請求される発明を限定しないことが理解されるであろう。本出願において、単数形の使用は、複数形を含み、特に別段の規定がない限り、言葉「1つの(a)」または「1つの(an)」は、「少なくとも1つの」を意味し、「または」の使用は、「および/または」を意味する。さらに、用語「含む(including)」、加えて他の形態、例えば「含む(includes)」および「含まれる」の使用は、非限定的である。また「要素」または「コンポーネント」などの用語は、特に別段の規定がない限り、1つの単位を含む要素またはコンポーネントと、1つより多くの単位を含む要素またはコンポーネントの両方を包含する。
【0019】
[0023]紫外線励起を用いた切削(MUVE)は、本明細書においてさらに論じられる通り、大きい3次元サンプルのハイスループットマルチプレックスイメージングを実現する。提唱されている機器は、共焦点顕微鏡法やライトシート顕微鏡法(LSM)などの現行の最先端3次元顕微鏡法に特有ないくつかの制約を克服する。MUVEは、同時にピクセルの2次元アレイを収集することによって、共焦点顕微鏡法よりはるかに速いスループットを提供する。提唱されている機器はまた、連続的なアブレーションも利用し、共焦点やLSMなどの光学的方法に特有な全ての深さの限定を克服し、顕微鏡レベルの分解能での真の臓器全体のイメージングのための機会を提供する。MUVEは、既存の方法より著しく安価であり、イメージを獲得するときに、より大きい空間分解能の可能性を提供する。
【0020】
[0024]本明細書では、マクロスケールのファントムおよび生物学的サンプルのイメージングに基づくMUVEシステムおよび方法を支える基礎的な原理をさらに論じる。
[0025]イメージングの原理:蛍光のUV励起
[0026]MUVEイメージングを支える重要な原理は、蛍光励起である。多くの一般的なフルオロフォアが、その従来の放出周波数を誘発するUV波長において励起ピークを有する。
図2は、一般的な蛍光色素sの励起(破線)および放出スペクトルを示す。UV励起の使用は、大きいストークスシフトを有する広帯域の蛍光発光を提供し、放出帯域幅を占有しない。従来の対物レンズなどのガラス光学機器はUVを通さないため、励起光から生じるシグナルを排除するための放出フィルターは必要ではなく、全ての収集されたシグナルが最終的なイメージに寄与する。これは、複数の蛍光色素で染色または処理された生物学的サンプルにおけるマルチチャネルの同時獲得を可能にする。
【0021】
[0027]UV励起の限定的な侵入深さ
[0028]UV励起の主な利点は、組織におけるUV侵入が吸収および散乱によって限定され、放出体積を、直接照明下でおよそ10μmまたはそれ未満に著しく最小化することである。これは、従来の組織切片の厚さに匹敵する。したがって、UV侵入深さは、ミクロトームブレードなどによって切除された切片の厚さに厳密に一致していてもよい。しかしながら、MUSEにおける斜めのシス形の照明の適用は、深紫外線がより厳格な光学焦点を有するため、励起厚さを劇的に低減させることができる。さらなる調査により、より高い入射角または水浸照明を使用して、励起厚さをさらに調整できる(およそ50%の低減)ことが実証されているが、照明強度との妥協点を有する。
【0022】
[0029]組織の連続的な切片化
[0030]ブロックフェイス顕微鏡法と、連続的なアブレーションとを統合して、軸方向の分解能およびイメージ深さを強化するためのいくつかのアプローチが提唱されている。初期の研究は、全てが光学的なイメージングおよびアブレーションを頼っており、これは、時間がかかるが多様な組織に適用可能である。連続的なブロックフェイス走査電子顕微鏡(SBF-SEM)は、アブレーションのためにミクロトームブレードを使用しており、硬質のポリマーに包埋されたサンプルのナノメートルスケールの分解能を提供する。代替アプローチでは、集束イオンビームを使用して類似の結果が達成されている。しかしながら、これらの方法は、極小のマイクロメートルスケールのサンプルに限定され、分子特異性を欠いている。
【0023】
[0031]ラージスケールのイメージングのために、ミクロトームでの切片化と光学的アプローチとの統合が提唱されている。しかしながら、これらの機器は、構築するのに非常に費用がかかり、維持が難しい。例えば、ナイフエッジスキャン顕微鏡法(KESM)は、高精密ステージおよび時間がかかるサンプルプロトコール、干渉性切片化、および再構築のための複雑なイメージ処理を必要とし、一方で2光子断層撮影法は、費用がかかる2光子イメージングシステムを必要とする。
【0024】
[0032]対照的に、本明細書で論じられるシステムおよび方法は、サンプルの切片化、ブロックフェイスイメージングの前にイメージングを実行でき、複雑なイメージ処理を必要としないを必要としない。
【0025】
[0033]PSFの特徴付け
[0034]本システムおよび方法は、蛍光色素、例えばDAPI、Hoesch、エオシン、緑色蛍光タンパク質(GFP)などを使用した、パラフィン浸透後のサンプルの標識付けを可能にする。UVドーピング材料の使用は、点広がり関数を改善し、これは、他の複雑なアプローチの代わりにブロックフェイスイメージングを使用することを可能にする。MUVEの点広がり関数(PSF)を特徴付け、従来の共焦点顕微鏡法を比較するために、回折サイズ化蛍光ビーズ(コスフェリック(Cospheric)1~5μmポリスチレンマイクロスフェア)をパラフィンで1000倍に希釈して、理想的な点源に近づけた。
【0026】
[0035]従来の蛍光顕微鏡法と同様に、MUVEの横方向分解能は、主としてレイリーの式に基づく対物レンズによって決定される。0:25の開口数(NA)を有する対物レンズの場合、横方向分解能は、およそ1:26μmである。
【0027】
[0036]本システム、キット、または方法のPSFの利益は、以下の2つの形態(
図7A~7Lおよび8A~8E):(1)物理的なアブレーションは、サンプルの前の層が除去されたため、短縮化された非対称の放出スポットを生じること、および(2)ドープした包埋媒体の吸光度が、PSFの半分の侵入を占めることをもたらす。これは、光学的な切片化を使用して遮断された要素(例えば球体の下の部分)の再構築を可能にする。
【0028】
[0037]機器
[0038]本明細書で論じられるMUVEシステム、キット、および方法は、顕微鏡とミクロトームの両方として同時に機能するように設計され、UV顕微鏡、ブレード、および試料ステージで構成される。UV顕微鏡は、UV源および対物レンズを含んでいてもよい。試料ステージは、サンプルを支持することができ、ミクロトームは、サンプルを切断するためのブレードアセンブリを含む。イメージ獲得は、カメラを含むカスタマイズされたMUVEシステムによって達成することができる。
図1A~1Cは、本明細書のさらなる詳細で論じられるイメージングシステムおよび方法MUVEの図解的な概念を示す。
【0029】
[0039]
図1Aは、ミクロトームとUV顕微鏡の両方として同時に機能するように設計されたMUVEシステムまたはキットの説明に役立つ例である。示される例は特注の解決策であるが、一部の実施態様において、MUVEシステム、キット、および方法は、あらゆる好適な既存のミクロトーム、クリオトームなどとの使用に好適なUVおよび/または精密ステージアタッチメントとして設計することができる。既存のミクロトームは、一般的に、それによりサンプルを置いたりまたは固定したりできる試料またはサンプルプレーンを提供する。ブレードは、サンプルの平面スライスを手作業または自動のいずれかで切断することを可能にする。
【0030】
[0040]
図1Aで示されるように、本システムまたはキットは、手作業または自動のいずれかでサンプルの望ましい部分(例えばθ
i=70°)に焦点が合うように調整可能なUV源アタッチメント30を含んでいてもよい。UV源アタッチメント30は、望ましいUVシグナルを生じさせることが可能なUV源32、アタッチメントをミクロトームにマウントするのに好適なマウント34、および必要に応じて、要求通りにUV源を調整することを可能にする任意選択の調整コンポーネント36を提供することができる。制御された深さまでのサンプルのドーピングが信頼されているため、あらゆるUV源32を利用することができ、切片の厚さのチューニングは、UV源のチューニングを必要とせずとも容易に実行することができる。マウント34は、要求通りに、アタッチメントを、例えば既存の/特注のミクロトーム、クリオトーム(cyrotome)、好適な塩基などにマウントするためのあらゆる好適な手段であり得る。非限定的な例として、UV源32は、マウント34によってミクロトームのベースに固定されたブーム上でスライド可能なアームにピボタルにマウントされる。自動的に調整される例において、マウント34はさらに、x、y、および/またはz方向でのUV源32の調整を可能にする任意選択の調整コンポーネント36、例えば、要求通りにUV源に焦点が合うように好適なコントローラーによって制御される、電気モーター、サーボなどを提供することができる。
【0031】
[0041]さらに、一部の実施態様において、本システムまたはキットはまた、サンプルのスライスをイメージングするために、カメラ60を要求通りに位置決めすることを可能にする精密ステージアタッチメント10を含んでいてもよい。精密ステージアタッチメント10は、要求通りに、あらゆる好適な手段によって、例えば既存の/特注のミクロトーム、クリオトーム(cyrotome)、好適な塩基などにマウントすることができる。精密ステージアタッチメント10は、イメージスライスを捕獲するのに好適なサンプルに近い位置に、カメラ60、加えて、必要に応じてあらゆる任意選択のレンズ50または対物レンズ40を固定する支持体12を提供する。さらに、支持体12は、サンプルをイメージングするために、要求通りに支持体およびカメラをx、y、および/またはz方向で調整することを可能にする調整メカニズムを含んでいてもよい。自動的に調整される例において、精密ステージアタッチメントはさらに、要求通りにカメラの位置を調整するように好適なコントローラーによって制御される、電気モーター、サーボなどを提供することができる。一部の実施態様において、カメラは、露出した表面の全体を表すサンプルの1つまたはそれより多くのイメージを捕獲する。一部の実施態様において、複数のイメージは、露出した表面を表すイメージのセットを形成する。次の露出した表面が出現したら(すなわちイメージングしたスライスが切り取られた後に)、カメラは、次の露出した表面の1つまたはそれより多くの次のイメージを捕獲することができる。このプロセスは、サンプル全体がイメージングされるまで、または望ましいイメージングが完了するまで繰り返すことができる。その後、3Dイメージは、集められた2Dイメージからアセンブルされる。
【0032】
[0042]さらに別の実施態様において、システムまたはキット全体は、これまでに上記で論じられたミクロトームコンポーネントおよびアタッチメントを含めて特注製作であってもよい。UV源および精密ステージアタッチメントは、これまでに論じられた実施態様のいずれかに対応していてもよい。示される実施態様において、本システムまたはキットはまた、ブレードアセンブリ70を含んでいてもよい。一部の実施態様において、ブレードアセンブリとしては、試料プレーンまたはステージ20を含んでいてもよく、これらは、イメージングしようとするサンプルを設置できる好適な場所を提供する。プレーン20は、サンプルを、精密ステージアタッチメント10およびUV源アタッチメント30の近くに位置決めすることを可能にする。これまでに論じられたように、ステージおよび源アタッチメントは、イメージングしようとするサンプルとの正確なアライメントのために調整可能であってもよい。示される実施態様において、ブレードアセンブリ(またはミクロトームアセンブリ)70はまた、望ましい場合に(例えばθs=10°)ブレードをx、y、および/またはz方向に正確に動かして、サンプルのフラットな平面スライスを切断するための好適なコンポーネントを含む、ブレードおよびブレード作動装置も含む。一部の実施態様において、サンプルカットのフラットな平面スライスの厚さは、サンプルのイメージングされた部分の厚さに相当する。さらに別の実施態様において、プレーン20は、サンプルの切断が容易になるように調整が可能である。一部の実施態様において、サンプルは、本明細書でさらに論じられるもの、またはWO2018/160629で論じられたものなどのあらゆる好適な方式で調製することができる。非限定的な例として、サンプルは、造影剤、例えば蛍光剤または他の薬剤で処理または染色してもよく、支持マトリックス(例えばワックス、パラフィンワックス、ヒドロゲル、樹脂など)中に包埋されていてもよい。包埋されたサンプルは、あらゆる好適な形状であってもよく、例えば長方形の形状であるか、正方形の形状であるか、立方体であるか、または長方形の立方形である。そのようなものとして、イメージングされ、後に切断されるフラットな平面スライスは、均一のサイズを有する。さらに、イメージングしたスライス(および切断されたスライス)は、2Dの長方形または四角形であり得る。
【0033】
[0043]示される実施態様は、単一の視野(FOV)に限定されるように見えるが、他の実施態様は、3軸のUV源アタッチメント、精密ステージ、および/またはブレードアセンブリを利用でき、それによって、本システム、キット、または方法が多軸FOVを提供することが可能になることが理解されるものとする。
【0034】
[0044]一部の実施態様において、本システムまたはキットは、CPU、プロセッサー、マイクロプロセッサーなどをさらに含んでいてもよい。プロセッサーは、UV源アタッチメント、精密ステージアタッチメント、および/またはブレードアセンブリとカップリングされていてもよい。さらに、プロセッサーは、本明細書で論じられる方法の様々なステップの間にこのようなアタッチメントまたはアセンブリの制御に関与するものでもよい。これまでに論じられたように、UV源の調整、カメラ、および/またはブレードは、一部の実施態様において、自動的に実行することができる。さらに、あらゆるイメージを捕獲するステップはまた、一部の実施態様において、自動的に実行することもできる。一部の実施態様において、ブレードアセンブリの操作は、包埋されたサンプルのイメージングしたスライスを切り取り、持ち上げるように自動化することができる。一部の実施態様において、ストレージは、このような望ましい機構を自動化するために、ファームウェア、ソフトウェア、またはプログラミングを提供することができる。非限定的な例として、プロセッサーおよび/または添付のソフトウェアは、UV源アタッチメントの自動操作、励起、および/もしくは調整;精密ステージアタッチメントおよび/もしくはカメラの操作、調整、および/もしくはイメージ捕獲;またはブレードアセンブリの操作、切断、および/もしくは調整に利用することができる。
【0035】
[0045]
図1Bは、UVの限定的な組織侵入を示すイメージング領域のクローズアップ図を示す。入射角が高いほど(θ
2>θ
1)、斜めの照明で、より浅い侵入深さ(d
2<d
1)が生じることは当業者には明らかであろう。高分解能イメージングのために入射角が制御された斜めの深紫外線照明の構成を適用した。加えて、UV侵入の望ましい深さをチューニングするために、他の因子も利用することができる。一部の実施態様において、UV源は、斜めに包埋されたサンプルを励起する。一部の実施態様において、UV侵入の深さは、サンプルからのスライスカットの厚さに概ね一致するようにチューニングされる。一部の実施態様において、補助(例えば液体界面)は、任意選択で、より均一のUV励起を提供するために望ましい場合があるが、このような補助は必須ではなく、全面的に任意選択である。
【0036】
[0046]非限定的な例において、励起光を、UV光源、例えば、280nmでピーク発光波長および300mWで最大出力パワーを有する発光ダイオード(LED)源(例えばフォセオン(Phoseon)のFireEdge FE200)によって提供した。蛍光性の光子を、電荷結合素子(CCD)カラーカメラ(例えばソーラボ(Thorlabs)1501C-GE)を使用して、対物レンズ、例えば、0:4のNAを有する20Xアクロマット(Achromat)対物レンズ(例えばオリンパス(Olympus)RMS20X)、好適なチューブレンズ、例えば、180mmの焦点距離を有するレンズ(オリンパスU-TLU)、および好適なカメラアダプター(例えば0.5XオリンパスU-TV0.5XC-3)を介して収集した。ナイフ(例えばダイヤモンド)を固くマウントして、組織表面のフレーム収集を終えた後に個々の切片を切断する手段を提供した。この目的を達成するために、滑らかな切断に加えてラージスケールのスキャンを実現するために、ブレードおよびブレードアセンブリにカップリングされたアセンブルされた精密ステージが構築される。ステージ、ブレード、および/またはブレードアセンブリは、イメージング後、組織サンプルのフラットな平面スライスを連続的にアブレーションすることを可能にする。
【0037】
[0047]例えば、一部の実施態様において、組織サンプルのフラットな平面スライスまたは切片のUV励起およびイメージングの後、スライスをアブレーションし、次いでイメージングしてもよく、次のフラットな平面スライスのアブレーションを実行することができる。このプロセスは、組織サンプル全体がイメージングされるまで繰り返してもよい。注目すべきことに、フラットな平面スライスがアブレーションされるが、それに対してSALTは、放射状のスライスのアブレーションを含む。これは、切片化には従来のミクロトームが使用されるため、組織をさらなる組織学的目的のために維持することを可能にする。様々な切片のイメージングが一旦完了したら、切片を組織サンプルの3Dイメージにアセンブルすることができる。平面スライスがイメージングされるため、3Dイメージのアセンブリは、大幅に簡易化される(放射状のシェルまたはスライスのイメージングは、3Dイメージへのイメージングを処理するための複雑なアルゴリズムを必要とする)。一部の実施態様において、捕獲されたフラットな平面のイメージは、本質的に、アセンブルして3Dイメージを作成することができる2Dイメージである。2Dスライスの使用は、小さいサンプルのための、より著しく高い帯域幅を提供することができる。MUVEは、切片厚さを制限するために、高い指数関数的な吸光度に頼っており、そのため、MUVEは、3D再構築のためのデコンボリューションアルゴリズムに、より適したものになっている。これは、視野が制限される可能性があるため、望ましい場合があり、例えばそれが0:89784mm×0:6708mmの枠に制限された例において望ましい。
【0038】
[0048]非限定的な例において、正確な3次元の動作を提供するために、2つの異なる精密ステージをスタックすることによって、2軸の機械式ステージ(エアロテック(Aerotech)ANT130-XY)およびエアベアリング式のステージ(エアロテックANT130-L-Z)を含む試料ステージを構築した。全てのステージの制御およびカメラのファイアリングアプリケーションをC++でプログラム化したことで、人の協力がなくても大きい組織体積の自動獲得が可能になった。
【0039】
[0049]方法:パラフィンファントムまたはサンプルの調製
[0050]本方法のための最初のステップは、イメージングのためにサンプルを調製することである。一部の実施態様において、サンプルを少なくとも1種の造影剤、例えば蛍光剤または他の薬剤で処理または染色して、処理されたサンプルを生産することができる。一部の実施態様において、造影剤は、例えばマルチチャネルイメージングが望ましい場合、サンプルを処理または染色するのに利用される複数の造影剤を含む。造影剤の非限定的な例としては、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、Hoesch 33342(HO342)、エオシン、GFP、蛍光インク、蛍光樹脂、アクリル性インク、vasQtec UV-イエロー、vasQtec PU4ii、フルオレセイン、イソチオシアネート(FITC)、ローダミン、量子ドット(QD)、UV27、エポリン(epolin)などを挙げることができる。加えて、サンプルはまた、包埋されたサンプルを生産するために、例えばワックス、パラフィンワックス、ヒドロゲル、樹脂、グリコールメタクリレートなどの支持マトリックス中に包埋されていてもよい。一部の実施態様において、形成された包埋されたサンプルは、あらゆる好適な形状であってもよく、例えば長方形の形状であるか、四角の形状であるか、立方体であるか、または長方形の立方形である。一部の実施態様において、任意選択で、UVを吸収する支持マトリックス(例えばグリコールメタクリレート)を利用するか、または支持マトリックス中に、例えばこれまでに上記で論じられた薬剤のいずれかの造影剤を含むことが望ましい場合がある。好適なサンプル調製の非限定的な例は、同様にWO2018/160629にも見出すことができる。
【0040】
[0051]MUVEイメージングの基礎的な原理を非限定的な例で実証するために、短時間での切断およびイメージングのための蛍光ファントムを製作することを可能にする3ステップのファントム調製プロトコールを開発した。一部の実施態様において、イメージングは、5分またはそれ未満で可能であり得る。一部の実施態様において、組織サンプルは、パラフィンモールド中に包埋されていてもよい。例えば、まずミリメートル未満の機構を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)マスターモールドを設計し、一般的な成形プロセスに従って製作した。現行のUV断層撮影法と適合性の機械加工可能な媒体中に包埋された蛍光標識したファントムを製作するために、パラフィンワックスを、キャスティングおよび包埋のために使用した。しかしながら、一般的なパラフィンは、効果的にUVを吸収しない可能性があるため、一部の実施態様において、UV吸収剤(例えばEpolightUV27)をパラフィンにドープして、UV吸収を強化し、励起体積を低減することが望ましい。それゆえに、ファントムを、マスターモールドを使用して、蛍光標識された(例えばUV27ドープした)パラフィンと共にキャスティングした。硬化したキャストをUV27ドープしたパラフィンに包埋し、次いで、切断およびイメージングのために従来のカセットにマウントした。ここで留意すべきことに、ファントムサイズに応じた変形を回避するために、キャストをパラフィンの薄層でコーティングする必要がある場合がある。
【0041】
[0052]
図3A~3Bは、MUVEを使用したファントムの実際の、およびデジタル複製ならびに吸収スペクトルを示す。
図3Aは、表面に特徴を有する完全な4つの辺を持つダイ(上)を正確にキャスティングし、イメージングし、再構築したこと(下)を示す。
図3Bにおいて、UV27の吸収スペクトルは、深紫外線波長に大きな吸収を有し、可視波長を効果的に透過させることが観察することができる。このスペクトルは、UV/可視分光光度計(島津(SHIMADZU)UV-1800)を使用して獲得された。(a)SB=1mm。
【0042】
[0053]パラフィン組織の調製
[0054]一部の実施態様において、サンプルは、造影剤での処理または染色に加えて、造影剤での処理または染色を補助するための特定の方式で加工することができる。一部の実施態様において、任意選択で、血管の形態、微小血管のイメージング、腐食標本、または免疫染色のためにサンプルを加工することが望ましい場合がある。一部の実施態様において、任意選択で、en blocでの灌流を介してサンプルを加工すること、例えば血管の形態のイメージングまたは腐食標本化を補助することが望ましい場合がある。さらに別の実施態様において、任意選択で、サンプルを経心臓的に加工することが望ましい場合がある。一部の実施態様において、任意選択で、固定のために血管壁の抵抗を増加させるために、サンプルを処理することが望ましい場合がある。非限定的な例として、サンプルは、血管壁の抵抗を増加させるための、ホルムアルデヒドまたは他のあらゆる好適な選択肢で処理されていてもよい。一部の実施態様において、任意選択で、サンプルを浸軟および/または脱水することが望ましい場合がある。一部の実施態様において、システムおよび方法がマルチチャネルイメージングに好適である場合、第1の造影剤での処理または染色するに加えて、少なくとも1つの追加の造影剤でサンプルを処理または染色することが望ましい場合がある。一部の実施態様において、任意選択で、免疫染色のための蛍光マーカーでサンプルを処理することが望ましい場合がある。蛍光マーカーの非限定的な例としては、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、Hoesch 33342(HO342)、エオシン、GFP、蛍光インク、蛍光樹脂、アクリル性インク、vasQtec UV-イエロー、vasQtec PU4ii、フルオレセイン、イソチオシアネート(FITC)、ローダミン、量子ドット(QD)、UV27、エポリンなどを挙げることができる。
【0043】
[0055]en blocでの灌流:en blocでの灌流は、パラフィンベースのイメージングのために血管の形態の複写を作成するために広く使用されている。灌流に使用される2つの一般的な材料:インクおよび樹脂がある。先行の研究において、墨(india-ink)を灌流して、KESMデータにおいてコントラストを増加させたが、墨は非蛍光性であることが多いため、蛍光イメージングにとって問題を引き起こすことになったであろう。しかしながら、蛍光インクはこの問題を回避することから、蛍光インクは、血管の標識付けに使用することができる。
【0044】
[0056]この目的を達成するために、非限定的な例において、CO2を使用してマウスを深く麻酔し、20mLの室温(25℃)の中性リン酸緩衝食塩水(pH7.4)を用いて経心臓的に灌流して、循環系から血液を除去した。次いでマウスを20mLの室温のホルムアルデヒドで灌流して、固定のために血管壁の抵抗を増加させた。固定のすぐ後に、マウスを10mLの蛍光インク(例えばデーラー&ラウニー(Daler & Rowney)アクリル性インク)で、最適な速度で灌流し、体をホルマリン中で室温にて24時間浸軟させた。24時間後、全ての臓器を収集し、合計8時間にわたり70%から100%の範囲の一連の段階的なエタノール、続いて3時間にわたりキシレン代用品(シグマ(SIGMA)A5597)を介して脱水し、次いで58℃の流動パラフィン中に2時間浸漬させた。組織処理装置(例えばライカ(Leica)TP1020)の助けのもとにパラフィン処理プロセス全体を実行した。最終的に、パラフィン処理した臓器を、切断およびイメージングのためにパラフィンブロック中に包埋した。
【0045】
[0057]腐食標本のために、マウスを深く麻酔し、上述したものと同じプロトコールに従って固定した。蛍光標識した(例えばvasQtec UV-イエロー)樹脂(例えばvasQtec PU4ii)を、重合のために経心臓的に灌流し、体を室温で48時間貯蔵した。重合完了後、全ての臓器を収集し、周囲組織を腐食させて取り除くために15%水酸化カリウム(KOH)中で12時間浸軟させた。最終的に、切断およびイメージングのために、キャスティングサンプルをUV27でドープされたパラフィン中に包埋した。
【0046】
[0058]免疫染色:マルチチャネルイメージングを実証するために、灌流したサンプルを、例えばDAPI、Hoesch、エオシン、GFPなどの別の蛍光マーカーで染色した。ただしこれらの蛍光シグナルは、パラフィン処理ではそれほどよく保存されない。しかしながら、パラフィン処理した組織におけるDAPI染色は、ある程度保存することができた。この目的のため、パラフィン処理したサンプルをDAPI溶液(例えばフルオロ-ゲルII(Fluoro-Gel II))中に、サンプルのサイズに応じて48時間浸漬した。組織サイズに応じて、染色深さは、1週間の浸軟後も1mmもの深さであり得る。
【0047】
[0059]
グリコールメタクリレート組織の調製
[0060]一部の実施態様において、パラフィンより樹脂中にサンプルを包埋することが望ましい場合がある。非限定的な例として、グリコールメタクリレート(例えばテクノビット(Technovit)7100)は、光学顕微鏡法のための代替の包埋樹脂であり、パラフィンを超えるいくつかの利点を有する。テクノビット7100は透明な機械加工可能な媒体としてふるまうだけでなく、紫外線も吸収する(
図3B)。グリコールメタクリレート組織の調製のために、灌流した臓器をまず上述した段階的な脱水アプローチを使用して脱水し、続いて無水エタノールをテクノビット7100ベーシック溶液と等しく混合することによって調製されたプレ浸透溶液(pre-infiltration solution)中に2時間浸漬した。次いでサンプルを、100mLのテクノビット7100ベーシック溶液中に1gのテクノビット7100硬化剤1を溶解させることによって作製した浸透溶液中に室温で24時間浸漬した。浸透させた後、重合溶液で充填したプラスチックモールド中にサンプルを慎重に位置決めし、重合のために室温で2時間シールした。15mLの浸透溶液で1mLのテクノビット7100硬化剤2を希釈することによって重合溶液を調製した。
【0048】
[0061]本明細書では、肉眼で見えるファントムイメージングに基づくプロトタイプMUVEイメージングシステムを支える基礎的な原理を立証し、実証した。複数のマウス臓器にわたる生物学的サンプルのイメージングによる生物学的な調査におけるMUVEの実際の使用も本明細書において実証した。
【0049】
[0062]マクロスケールのサンプルまたはファントムイメージング
[0063]上記で論じられた実施態様のいずれかを介してサンプルが一旦調製され支持マトリックス中に包埋されたら、包埋されたサンプルは、これまでに論じられたMUVEシステムおよび方法を利用してイメージングすることができる。一部の実施態様において、包埋されたサンプルは、試料プレーン上に要求通りに位置決することができる。UV源は、必要に応じて、包埋されたサンプルの露出した表面を適切に励起するように調整することができる。一部の実施態様において、包埋されたサンプルは、UV源によって、望ましい深さに対応する望ましい角度で斜めに励起される。UV源は、イメージングしようとする包埋されたサンプルのフラットな平面の領域を励起する。一部の実施態様において、深さは、10μmまたはそれ未満であり得る。一部の実施態様において、深さは、5μmまたはそれ未満であり得る。同様に、カメラはまた、必要に応じて、例えば精密ステージによって調整することもできる。カメラは、包埋されたサンプルの露出した表面の1つまたはそれより多くのイメージを捕獲し、この場合、1つまたはそれより多くのイメージは、包埋されたサンプルの露出した表面の全体を表すイメージのセットを形成する。捕獲されたイメージは、露出した表面に対応するフラットな平面の層またはスライスを表す。一部の実施態様において、露出した表面全体は、単一のイメージで捕獲することができるが、大きい包埋されたサンプルは、露出した表面全体をカバーするために、複数のイメージの捕獲を必要とする場合がある。一部の実施態様において、UV源は、複数の蛍光チャネルを励起することができる。一部の実施態様において、フィルターは、特に関心のあるチャネルをカメラによって捕獲できるようにするために利用することができる。他の実施態様は、フィルターなしの、またはマルチチャネルイメージの捕獲が可能になるように、フィルターなしでもよい。
【0050】
[0064]露出した表面の全体をカバーするための複数のイメージの捕獲は、本明細書ではモザイク化(mosaicking)と称する場合がある。一部の実施態様において、モザイク化は、UV源によって励起される露出した表面の第1の領域の第1のイメージを捕獲すること、次いで、サンプルまたはカメラを徐々にシフトして、第1の領域に隣接するUV源によって励起される次の領域の次のイメージを捕獲することを含む。このプロセスは、例えばサンプルが単一のイメージで捕獲するには大きすぎる場合、露出した表面全体のイメージが捕獲されるまで繰り返してもよい。一部の実施態様において、捕獲されたモザイクイメージは、アセンブリデータ、例えば、イメージの2Dイメージへのアセンブリを補助する位置または配列情報を含んでいてもよい。その後、露出した表面またはスライス全体の完全な2Dイメージを、収集したイメージからアセンブルすることができる。さらに別の実施態様において、本明細書で論じられる方法およびシステムは、包埋されたサンプルの表面または2Dのフラットな平面の表面全体の捕獲を可能にし、それによって、モザイク化の必要性を回避することができる。
【0051】
[0065]一旦露出した表面またはスライスのイメージが捕獲されたら、包埋されたサンプルのイメージングしたスライスは、ブレードアセンブリによって切断することができ、必要に応じて持ち上げることができる。ブレードアセンブリによって切り取られたスライスは、フラットな平面のイメージングされたスライスに対応し、または言い換えれば、ほぼ同じ厚さを有するか、またはイメージング深さよりわずかに薄い。一部の実施態様において、スライスカットの厚さは、10μmまたはそれ未満であってもよい。一部の実施態様において、スライスカットの厚さは、5μmまたはそれ未満であってもよい。上記のイメージング、捕獲および切断するステップは、包埋されたサンプル全体がイメージングされるまで、または包埋されたサンプルの望ましい部分がイメージングされるまで繰り返してもよい。例えば、UV源は、調整され(必要に応じて)、前の切断するステップによって露出させた包埋されたサンプルの次の層を励起し、次いでカメラは、調整され(必要に応じて)、この包埋されたサンプルの新たに露出した表面のイメージを捕獲する。次いで、要求通りにプロセスを繰り返すことができるように、または包埋されたサンプル全体がイメージングされるまで、このイメージングされたスライスは、切り取ることができる。切り取られたスライスは、従来のミクロトームで見られるスライスに似ている場合があるため、スライスは、必要に応じてさらなるイメージングまたは検査のために維持することができる。したがって、本プロセスは、非破壊的であるか、または包埋されたサンプルをさらなるイメージングまたはプロセシングに使用不可能にしない。
【0052】
[0066]包埋されたサンプルからのスライスのイメージ捕獲およびの繰り返しが完了したら、捕獲されたイメージは、サンプルの3Dイメージを作成するのに利用される。モザイク化を含む実施態様において、2Dイメージは、モザイクイメージセットが捕獲された後に、または包埋されたサンプル全体のイメージングが完了した後にアセンブルされる捕獲されたモザイクイメージセットに基づいてアセンブルすることができる。サンプルの3Dイメージを作成するために、2Dイメージのセットは、3Dイメージを作成するために統合される。一部の実施態様において、アライメントアルゴリズムは、操作中のブレードアセンブリの切断軸へのあらゆる変化を補うのに利用することができる。一部の実施態様において、2Dイメージは、3Dアセンブリデータ、例えば、イメージの3Dイメージへのアセンブリを補助するスライス位置または配列の情報を含んでいてもよい。一部の実施態様において、本明細書で論じられるシステム、キット、または方法は、回折限界を超える軸方向の分解能を提供することができる。一部の実施態様において、本明細書で論じられるシステム、キット、または方法は、10μmまたはそれ未満の横方向の分解能を提供することができる。一部の実施態様において、本明細書で論じられるシステム、キット、または方法は、5μmまたはそれ未満の横方向の分解能を提供することができる。一部の実施態様において、本明細書で論じられるシステム、キット、または方法は、1μmまたはそれ未満の横方向の分解能を提供することができる。
【0053】
[0067]MUVEの概念を検証するために、4つの辺を持つダイを含む非限定的な例を成形し、パラフィン中にそれを包埋した。多重的に特徴化するために(multi-featuring)、ミリメートル未満のポリスチレンビーズ(例えば蛍光性のコスフェリック500~600μmポリスチレンマイクロスフェア)もパラフィンブロック中で希釈した。キャストを10μmの横方向の分解能でイメージングし、5μmの切片に切断した。イメージの等位面のレンダリングは、全体構造、数、および懸濁したマイクロスフェアを含む完全な複製を示す(
図4A)。これはまた、MUVEのラージスケール(およそ1cm
3)の3次元イメージング能力も実証する。
【0054】
[0068]
図4A~4Bは、MUVEを使用したマルチチャネルイメージングを示す。
図4Aは、10Xフルオリート(Fluorite)対物レンズ(ニコン(Nikon)N10X-PF、NA=0:3)を備えた倒立顕微鏡を使用したテクノビット7100切片(20μm)のイメージングを示す。マルチチャネルイメージングのために異なるフィルターを使用した。
図4Bは、MUVEを使用したフィルターなしのマルチチャネルイメージングである。(a~b)SB=100μm。
【0055】
[0069]生体組織のイメージング
[0070]別の非限定的な例において、蛍光インクで灌流した肺組織を0:7μmの横方向の分解能でイメージングし、1:0μmの切片に切断した。
【0056】
[0071]
図5A~5Cは、MUVEのさらなるマルチチャネルイメージングを示す。
図5Aは、ニコン10X(NA=0:3)対物レンズを備えた倒立顕微鏡を使用した、インクおよびDAPIで標識されたパラフィン包埋肺組織のイメージングを示す。異なるフィルター立方体(左および右はそれぞれFITC-およびDAPI-フィルター)を使用して、異なる波長で放出される蛍光シグナルを収集した。
図5Bは、MUVEで使用されるUV励起が、特定のフィルターを用いずにマルチチャネルイメージングを可能にすることを示す。
図5Cは、アミーラ(Amira)を使用した再構築された肺組織の3次元ボリュームレンダリングを示す。(a~c)SB=100μm。
【0057】
[0072]MUVEイメージングシステムは、3次元の生物学的データの作成において他の技術より優れた実現性のある選択肢であることが実証された。
【0058】
[0073]MUSE切削
[0074]非限定的な例としての、本明細書で論じられる実証のために利用される簡易化したMUVEシステムは、改善されたMUSE切削と称することもでき、最初にこれを予備的な検証のために構築した。この機器を、UV顕微鏡を単に市販のミクロトーム(サーモフィッシャー(ThermoFisher)HM355S)にマウントすることによって構築した。励起光を、マウントされたLED(ソーラボM280L3)によって、280nmでの基準の発光波長および30mWでの典型的な出力パワーを用いて提供した。このLEDをLEDドライバー(ソーラボDC4100)に連結して、350mAでの定電流を用いたLEDを供給した。モノクロームCCDカメラ(ソーラボ1500M-GE)を使用して、広視野スキャンレンズ(ソーラボLSM02)を介してイメージを捕獲した。表面全体のイメージを収集するとき、組織をミクロトームによってアブレーションして、連続的なイメージングのために、より深い層を露出させた。しかしながら、ミクロトームはそのデフォルト位置の周りでわずかに振動して、切断軸に沿って顕微鏡のオフセットを引き起こす可能性があるため、補正のためにアライメントアルゴリズムをインプリメントした。
【0059】
[0075]ステージの制御およびカメラのファイアリング
[0076]動きの制御アプリケーションをA3200コントローラーを使用してインプリメントし、全てのコマンドを、A3200Cライブラリーを使用してC++でプログラム化した。カメラのファイアリングも、ソーラボのサイエンティフィックイメージングSDKを使用してC++でコードした。一般的に、イメージ獲得は、2段階:モザイク化および切片化を含んでいてもよい。組織表面のモンタージュが最小のアーチファクトでアセンブルできるように、サンプルを全域スキャンにわたり最大の増加量で連続的にシフトした。次いでサンプルをブレードによって切片化し、z軸に沿って1μmごとに持ち上げた。
【0060】
[0077]本明細書で論じられる実施例は、本発明の開示の特定の形態を実証するために含まれる。実施例に記載される方法は単に本開示の例示的な実施態様を表すにすぎないことは、当業者であれば理解しているものとする。当業者は、本発明の開示に照らして、記載された具体的な実施態様に多くの変化をなすことができ、それでもなお本発明の開示の本質および範囲から逸脱することなく似た、または類似の結果を得ることができることを理解していると予想される。
【実施例】
【0061】
[0078]実験的な実施例
[0079]MUVE機器:プロトタイプのMUVEイメージングシステム(例えば
図1A~1C)は、自動化された0.5から100μmの切片化が可能なHM355S電動ミクロトーム(サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific))をベースとする。改変は、280nmを中心とする最大300mWの放出が可能なFireEdge FE200LED(フォセオンテクノロジー(Phoseon Technology)、オレゴン州ヒルズボロ)を含む。UV源の焦点をサンプルのブロックフェイスにおける1mmのスポットに合わせるため、特注のUV光学機器を設計した。特注の顕微鏡を横方向にマウントして、ブロックフェイスを観察する。この顕微鏡の光路は、単に10X対物レンズ(オリンパスのプランフルオリート(Plan Fluorite)対物レンズ、0.3NA)、チューブレンズ(オリンパスU-TLU)、および0.5Xカメラアダプター(オリンパスU-TV0.5XC-3)で構成される。ソーラボCNS500対物レンズターレットを使用して、追加の対物レンズを支持する。3色/ピクセルで、1392×23Hz≒32000ピクセル/秒の理論上のスループットを提供するラインスキャンカラーカメラ(ソーラボ1501C-GE)を使用して、放出された蛍光を検出したところ、およそ96kB/秒のスループットを得た。この顕微鏡を、を位置決めと焦点合わせのために2軸翻訳ステージ(ソーラボXYT1)に固くマウントした。
【0062】
[0080]材料および方法
[0081]組織の収集および標識付け:アメリカ獣医協会(American Veterinary Medical Association:AVMA)によって提供されたガイドラインに基づいてマウスをCO2を使用して安楽死させた。次いでマウスを20mLの室温のリン酸緩衝食塩水(PBS)溶液(pH7.4)、続いて20mLの室温10%中性緩衝ホルマリン(pH7.4)を用いて経心臓的に灌流した。PBSおよびホルマリンでの灌流は、循環系から血液を除去し、組織を固定する。
【0063】
[0082]次いでマウスを、10mLの希釈していない墨で、およそ1mL/秒の速度で灌流した。ポリウレタン樹脂(vasQtec PU4ii)および蛍光タトゥーインク(スキンキャンディー(Skin Candy))を含む複数の血管染色剤を試験した。どちらの蛍光標識も、ブロックフェイスイメージングを使用して優れたコントラストを提供した。しかしながら、vasQtec樹脂は、灌流の前、脱水中にアルコールによって分解された(エタノールおよびイソプロピルアルコールの両方を試験した)。蛍光タトゥーインクは包埋後も残ったが、色素はおよそ1μmの蛍光粒子で構成されていたことから、結果として毛細血管の標識付けを妨げる閉塞を引き起こした。本発明者らは、インドインク(ヒギンズ(Higgins))がMUVEイメージングに十分な灌流およびコントラストを提供したことを見出した。
【0064】
[0083]次いで臓器を取り出し、10%の中性緩衝ホルマリン中で24時間固定し、最終的に70%エタノール(C2H5OH)中で貯蔵した。任意選択で、蛍光イメージングのためのDAPI、ヘキスト(Hoechst)、およびエオシン、ならびにネガティブコントラストのニッスル染色のためのチオニンなどの、細胞のコントラストを提供するために様々な化合物を使用しても組織サンプルを染色した。
【0065】
[0084]
図6A~6Fは、UV27でドープされたパラフィンワックス中に包埋した異なるマウス臓器のMUVEイメージングを示す。(a)HO342でのみ染色されたマウス肺のシングルプレックス(Singleplex)イメージング。(b)インドインクで灌流され、DAPIで処理されたマウス小脳のデュープレックス(Duplex)イメージング。(c)エオシンおよびHO342で染色されたマウス腎臓のデュープレックスイメージング。(d)HO342でのみ染色されたマウス睾丸のシングルプレックスイメージング。(e)墨で灌流され、HO342で処理されたマウス肝臓のデュープレックスイメージング。(f)エオシンおよびHO342で染色されたマウス脾臓のデュープレックスイメージング。
【0066】
[0085]試料の調製および包埋:臓器を、イメージングのためにパラフィンワックス中に包埋した。最大14%のUV27色素(エポリン)で溶融パラフィンをドーピングすることによって、UV侵入を制御した。全範囲のドープしたパラフィン浸透については、類似のプロトコールに従った。臓器切片を、8時間の期間にわたり一連の段階的なエタノール(70から100%)を介して脱水し、続いて3時間にわたりキシレン代用品(シグマA5597)でクリーニングした。標準的なパラフィンワックス(ティシュー・テック(Tissue-Tek)パラフィン)を、60℃で、UV27で選択的にドープし、サンプルを、選択された混合物中に2時間にわたり浸漬して浸透させた。組織処理装置(ライカTP1020)の助けによってパラフィン処理プロセスを実行した。ここで留意すべきことに、パラフィン処理手順中に組織の縮みが常に予測され、縮みの程度は、脳組織の場合、体積の最大40%に到達し得る。これは、グリコール-メタクリル酸樹脂(エレクトロンマイクロスコピーサイエンス(Electron Microscopy Sciences)のテクノビット7100)またはウレタンゴム(スムースオン(Smooth On)のクリアーフレックス95(Clear Flex 95))などの縮みが少ないアーチファクトを有するマトリックスを使用して回避される可能性がある。特定には、本発明者らは、テクノビットは、高度にUV不透過性であるが、より著しく切削が難しいことを見出した。
【0067】
[0086]
図7A~7Lは、層状の均一な基板における吸光度に対する、結合波理論を使用した共焦点およびMUVE点広がり関数のモンテカルロシミュレーションを示す。全てのシミュレーションは、左から右に伝搬するx偏光コヒーレント光を示し、強度は、各イメージにつき正規化される。輪郭線は、最大強度の(最も暗い色から最も明るい色へ)1%、10%、および30%の閾値を示す。(a~c)0.4NA(左)、0.8NA(中心)、および1.0NA(右)対物レンズを使用した、理想的な(すなわちクリアにした)サンプルにおけるイメージングのための共焦点PSF。MUVEイメージングにおいて、励起の指数関数的な吸光度は、軸方向のPSFを説明する優勢な要因である。(d~f)付帯的な深紫外線は、低NA(およそ0.25)の対物レンズを使用してサンプルに付帯的であることが示される。包埋化合物をドーピングすることによってモル吸光度を変化させることによって侵入が低減されて、より小さい軸方向のPSFが生じる。UV透過性サンプル(左)は、後方散乱光からの顕著な寄与を示す。しかしながら、UV27(中心、右)でのドーピングは、最高仕様の共焦点イメージングを超える著しい改善をもたらす。(g~i)サンプルの励起された領域は、侵入UV PSFと対応しているが、アブレーションは、左半分の断ち切りを引き起こす。(下)共焦点およびMUVEの軸方向のPSFプロファイル間の比較を示す(j~l)。横方向の分解能は、MUVEと共焦点との間で理論上同一である。
【0068】
[0087]
図8A~8Eは、広視野蛍光顕微鏡(a、d)およびMUVE(c、e)を使用したマイクロスフェアの中央のプロファイリングを示す。マイクロ-ビーズ(およそ4μm)の軸方向の測定値を、光学的および物理的な切片化の両方につき、1.0μmの切片化サイズで収集した。白色の矢印によって示された切断方向に沿って中心線にわたり強度プロット(b)を測定した。大きいビーズ(およそ500μm)の3Dボリュームレンダリングは、光学的切片化顕微鏡法に関与する影(黒色の矢印によって示される)などのイメージングアーチファクトを示す。
【0069】
[0088]
図9A~Fは、3D顕微鏡法としてのMUVEイメージングの利点を示す。(a)DAPI励起(390nm)で広視野蛍光顕微鏡を使用したパラフィン包埋脳(上)およびUV27でドープされたパラフィン包埋脳(下)のブロックフェイスイメージング。組織における近可視の侵入は、どちらのケースにおいても大きいことから、微小血管の3D構造を再構築することを不可能にしている。(b)MUVEを使用したパラフィン包埋脳(上)およびUV27でドープされたパラフィン包埋脳(下)((a)で示されるのと同じ領域)のブロックフェイスイメージング。組織における深紫外線の侵入は、近可視の侵入より著しく短く、UV27浸透は励起体積をさらに低減させる。(c)パラフィン包埋脳(上)の等位面レンダリングは、均一でない血管表面の再構築を示し、それに対してUV27でドープされたパラフィン包埋脳(下)の等位面レンダリングは、鋭く滑らかな血管表面の再構築を示す。
【0070】
[0089]
図10A~10Dは、墨で染色されたマウス中脳のコロナルMUVEイメージングを示す。(a)高密度に連結した微小血管ネットワークを示すデータセット全体のボリュームレンダリング(389×241×2134μm)。(b)1つの完全な断面図(z軸位置は黄色の矢印によって示される)と半分にわたり重複させた最大強度投影(MIP)。(c、d)小さい領域(128×128×128μm)のクローズアップ図であり、これは、様々なサイズを有する微小血管を解像するほど十分にMUVEのサンプリング分解能が大きいことを示す。
【0071】
[0090]
図11A~11Bは、マウス大脳皮質微小血管系(a)およびセグメンテーション(b)を示す。
[0091]他の核染色剤、例えばDAPIおよびヘキスト(HO342)は、インドインク灌流と適合する。これらの染色剤はパラフィン浸透の間に脱色に晒されるが、パラフィン処理したサンプルはDAPIおよびヘキストで染色でき、侵入は、溶液中で3日後に、最大1mmであったことが見出された。例えば、HO342ストック溶液(サーモフィッシャー(Thermo Fisher)ヘキスト33342)を1×PBSで1:2000に希釈することによって、ヘキスト溶液を調製した。これはまた、1~5μmの包埋組織の染色も可能にする(
図6A~6F)。イメージングの前に、ブロックフェイスを溶液で2~3分カバーすることによって染色を実行した。
【0072】
[0092]イメージ収集:従来のミクロトームブレード(デュラエッジ(DURAEDGE)ロープロファイル(Low Profile))を、10°の切断角度での切断に使用した(
図1B)。ミクロトームの単回ストローク操作モードを半自動化獲得のために使用した。ナイフのチャターなどのアーチファクトの補強を防止するために、切断回転数をランダム化した。しかしながら、ミクロトームの静止位置は、その中央の位置の周りでわずかに振動して、切断方向に沿ってオフセットを引き起こす。補正のために、OpenCVで入手可能な自動化アライメントアルゴリズムを適用した。カメラのトリガーは、外部のTTLシグナルを使用して制御されたイメージ獲得ソフトウェアパッケージ(ソーラボThorCam)を使用した。40のデジタルゲインを用いて100msの露光を使用してイメージを獲得し、ImageJを使用して、イメージ修正を実行して、白色度およびコントラスト調整した。各スライスにつきおよそ4秒を要した:切断に2秒、ステージ安定化に1秒、およびイメージ捕獲に1秒。このプロセスは、2,000枚のスライスを収集するのにおよそ2時間を要した。このプロトタイプシステムは市販のミクロトームを使用する一方で、完全自動システムは、3次元サンプルのための3Dカラー組織に類似したデータ速度を達成することができた。
【0073】
[0093]結果
[0094]点広がり関数の特徴付け:MUVEの横方向の分解能は、回折によって制限され、蛍光顕微鏡法と同様に、発光波長および対物レンズ開口数(NA)によって決定される。USAF1951分解能試験標的(エドモンド・オプティクス(Edmund Optics))を使用して横方向の分解能を検証した。本明細書で提供されるイメージは、40Xニコン対物レンズ(0.6NA)を使用して獲得された。本発明者らのMUVEプロトタイプの水平の構築は、浸漬対物レンズの使用を妨げたが、以前の研究は、MUSEの水浸光学機器との適合性がすでに実証されている。
【0074】
[0095]MUVEの軸方向の分解能は、包埋媒体の指数関数的な吸光度に偏っている(
図7A~7L)。提示されたプロトタイプは、エア対物レンズのNAにおける限界に起因する回折限界を超える軸方向の分解能を提供する。他のイメージング媒体における実用的なPSFを決定するために、さらなる研究を実行してもよい。
【0075】
[0096]MUVE分解能の利益を、UV27でドープされたパラフィンワックスに1000倍に希釈された1~5μm蛍光性の緑色ビーズ(コスフェリックポリエチレンマイクロスフェア)(em.515nm)で構成されるファントムをイメージングすることによって検証した。MUVEを、390nm(DAPI励起)での従来の励起を使用した広視野蛍光顕微鏡法(ニコンのエクリプス(Eclipse)TI-E倒立顕微鏡)と比較した。MUVEの軸方向のPSFは、広視野顕微鏡の従来のパターンを超える著しい改善を示す(
図8A~8E)。MUVEのPSFの利益は、2つの形態をとる:(1)物理的なアブレーションが、サンプルの前の層が除去されるため、短縮化された非対称放出スポットをもたらすこと、および(2)ドープした包埋媒体の吸光度が、PSFの侵入半分を左右すること。これは、光学機器による切片化を使用して閉塞した要素(すなわち球体の下の部分)の再構築を可能にする。
【0076】
[0097]
図12A~Dは、墨およびチオニンで染色されたマウス視床のコロナルMUVEイメージングを示す。(a)組織は暗赤色であるが、細胞核は暗褐色であり(矢印)、UV照明下で血管は黒色であり(破線矢印)(左)、細胞と血管構造の両方をセグメント化するのに十分なコントラストが提供される(右)。(b)データセット全体のボリュームレンダリングは、微小血管系の密度および組織化を周囲の細胞の詳細と共に示す。(e)小さい領域(100×100×100μm)のボリュームレンダリングは、それらに付随する細胞(d)に沿った一連の連結された微小血管(c)を示し、別々のチャネルは、詳細な細胞および血管構造を示す。
【0077】
[0098]蛍光サンプルのブロックフェイスイメージング:脳、腎臓、肝臓、肺、脾臓、および睾丸を含むマウス臓器をUV27でドープされたパラフィンワックス中に包埋し、DAPIでの包埋後に染色した。個々の細胞本体を解像するのに十分なMUVEの軸方向の分解能およびそのクロマチン分布。例えば、2つのタイプの肺細胞は、肺イメージにおいて区別可能であり(
図6A)、肝臓においてクッパー細胞および肝細胞も区別可能である(
図6E)。顆粒内の小脳ニューロンも、それらのクロマチン構造と共に明確に決定される(
図6B)。斜めのUV照明の使用は、強化されたコントラストで組織の局所的な情報を明らかにし、これは、これまでに公開されたMUSEイメージと一致する。例えば、腎臓尿細管の表面プロファイルは、エオシンを使用して可視化される(
図6C)。
【0078】
[0099]UV27ドーピングの有効性は、従来の顕微鏡法(
図9A、D)、MUSE(
図9B、E)およびMUVE再構築(
図9C、F)を使用して示される。ある程度のUV吸収を導入する従来のパラフィン包埋と、UV27でドープされたパラフィン包埋組織との間の、光の侵入および再構築挙動における直接の比較。例えば、パラフィン包埋組織の3D再構築は、大きく粗い微小血管構造を示すが、それに対してUV27でドープされたパラフィン包埋組織の3D再構築は、微細で滑らかな毛細血管を示す。
【0079】
[0100]微小血管のイメージング:UV励起は、吸収(ネガティブ)染色に適合し、ここでコントラストは、周囲組織および包埋化合物において自動蛍光を励起することによって提供される。これは、墨を使用した微小血管再構築のために特に有用であり(
図10A~D)、レクチンなどの高価な蛍光性の代替物への必要性を軽減する。このデータセットを、0.37μmの横方向のサンプル間隔および2.0μmの切断インターバルを用いてイメージングした。このような空間分解能は、最も小さい毛細血管およびそれらの表面プロファイルを再構築することが可能である。
【0080】
[0101]様々な血管厚さは、ボリュームビジュアライゼーションでギャップを導入できるが(
図10D)、イメージは、特に高いコントラストであり、既存のアルゴリズムを使用したセグメント化に適応しやすい。この利点をよりよく実証するために、目立った微小血管パターンを有するマウス大脳皮質の領域を、墨で灌流したマウス脳から選択した。1.29μmの有効な分解能で、3.0μmの切片サイズでイメージを収集した。このデータセットに自動化セグメンテーションアルゴリズムを適用して、皮質微小血管ネットワークのおよそ8,000のエッジおよび100,000の頂点を含む明示的なグラフモデルを得て(
図11A~B)、これをパラビュー(ParaView)(キットウェア(Kitware))を使用して可視化した。このアルゴリズムはまた、推測された半径も提供するが、より正確な方法が、処理後ステップとして使用できる可能性がある。ここで留意すべきことに、このサイズのネットワークは、光学的切片化では、サンプルの深さに伴い光散乱が増加するために再構築が難しい。
【0081】
[0102]微小血管および核のイメージング:最後に、インドインク灌流と共にチオニンを使用して、脳中の微小血管系と核の両方の組合せ染色を調査した(
図12A~E)。0.37μmの横方向の分解能で、1.0μm軸方向の切片を用いてマウス視床の領域をイメージングして、細胞核を解像した(
図12B)。これは、多くの神経変性疾患と関連する細胞-血管の関係を研究する可能性を実証する。このデータセットを、アミーラ(サーモフィッシャー)における多重閾値化機能を使用して手作業でセグメント化し、ボリュームレンダリングを使用して可視化した(
図12C~E)。
【0082】
[0103]ハイスループットイメージング手法は、低コストでのマイクロメートル未満の分解能で、ラージスケールのサンプルのマルチプレックスイメージングのために導入される。MUSE切削は、高密度に相互連結した微小血管ネットワークをイメージングすることが可能であり、それにより、疾患進行中に一般的な毛細血管の変化の簡単な獲得および定量化の機会を与え、インビトロの疾患モデルの製作をガイドする。提唱されている技術は、多様な既存の目的に適合し、浸漬ベースのイメージングシステムに統合して、既存の蛍光技術と同等の横方向の分解能を提供することができる。MUSE切削は、サンプル深さに対する制約をなくすと同時に、包埋化合物の追加のUVドーピングの改善は、さらなる低減を提供し、軸方向の分解能を定量することができる。最終的に、提唱されている方法は、2D蛍光イメージングに匹敵する速度を提供し、自動化ミクロトームを使用して2時間以内に深い微小血管ネットワーク(およそ2mm)を生じさせることが可能になった。プロトタイプは単一視野(FOV)に限定されているが、3軸ステージを使用する特注のミクロトームは、ほとんどの実験室での構築と維持が簡単なコスト効率の高い技術を提供することができる。
【0083】
[0104]本明細書に記載される実施態様は、本発明の開示の特定の形態を実証するために含まれる。本明細書に記載される実施態様は単に本開示の例示的な実施態様を表すにすぎないことは、当業者であれば理解しているものとする。当業者は、本発明の開示に照らして、記載された実施態様の異なる要素、コンポーネント、ステップ、特徴などの様々な組合せを含む記載された具体的な実施態様において多くの変化をなすことができ、それでもなお本発明の開示の本質および範囲から逸脱することなく似た、または類似した結果が得られることを認識していると予想される。前述の説明から、当業者であれば、この開示の本質的な特徴を容易に確認でき、それらの本質および範囲から逸脱することなく、本開示を様々な使用および条件に適合させるために様々な変更および改変を施すことができる。上記で説明した実施態様は、単に例示目的で記載されたものであり、本開示の範囲の限定として解釈されないものとする。
[1] 3Dイメージングのための方法であって、
サンプルを調製するステップであって、該サンプルを少なくとも1種の造影剤で処理または染色して、処理されたサンプルを生産する、ステップ;
支持マトリックス中に処理されたサンプルを包埋して、包埋されたサンプルを生産するステップ;
該包埋されたサンプルを、イメージングのために位置決めするステップ;
該包埋されたサンプルの露出した表面をUV源で励起するステップであって、該包埋されたサンプルは、該UV源によって望ましい角度で斜めに励起される、ステップ;
該露出した表面の領域の1つまたはそれより多くのイメージを捕獲するステップであって、該1つまたはそれより多くのイメージは、該露出した表面の全体を表すイメージのセットを形成する、ステップ;
捕獲するステップでイメージングされた該包埋されたサンプルの層を切断するステップであって、該層は、イメージングされた後に除去されたフラットな平面の層である、ステップ;および
前の切断するステップによって露出させた次の露出した表面のために、捕獲および切断するステップを繰り返すステップ
を含む、上記方法。
[2] 前記少なくとも1種の造影剤が、マルチチャネルイメージングのために利用される複数の造影剤を含む、[1]に記載の方法。
[3] 捕獲するステップが、前記マルチチャネルイメージングのためのフィルターなしで実行される、[2]に記載の方法。
[4] 前記少なくとも1種の造影剤が、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、Hoesch 33342(HO342)、エオシン、GFP、蛍光インク、蛍光樹脂、アクリル性インク、vasQtec UV-イエロー、vasQtec PU4ii、フルオレセイン、イソチオシアネート(FITC)、ローダミン、量子ドット(QD)、UV27、またはエポリンである、[1]に記載の方法。
[5] 前記支持マトリックスが、ワックス、パラフィンワックス、ヒドロゲル、樹脂、またはグリコールメタクリレートである、[1]に記載の方法。
[6] 前記包埋されたサンプルが、長方形の形状であるか、四角の形状であるか、立方体であるか、または長方形の立方形である、[1]に記載の方法。
[7] 前記支持マトリックスが、UVを吸収するか、または第2の造影剤を含む、[1]に記載の方法。
[8] 前記サンプルが、血管の形態のイメージング、微小血管のイメージング、腐食標本、または免疫染色のために調製される、[1]に記載の方法。
[9] 捕獲するステップが、第1の領域の第1のイメージを捕獲すること、該包埋されたサンプルまたはカメラをシフトして、該第1の領域に隣接する次の領域の次のイメージ捕獲すること、および該露出した表面の全体がイメージングされるまでシフトと捕獲を繰り返すことによって、該露出した表面の全体をカバーする複数のイメージをモザイク化して、捕獲するステップを含む、[1]に記載の方法。
[10] 2Dイメージのセットから、組織サンプルの3Dイメージをアセンブルするステップをさらに含む、[1]に記載の方法。
[11] 3Dイメージングキットであって、
組織サンプルの領域を励起するようにアレンジされたUV源アタッチメントであって、該組織サンプルが、少なくとも1種の造影剤で処理または染色され、支持マトリックス中に包埋され、包埋されたサンプルを生産し、該UV源アタッチメントは、
UVシグナルを作成することが可能なUV源であって、該包埋されたサンプルは、該UV源によって望ましい角度で斜めに励起される、UV源、
該UV源アタッチメントをマウントするマウント、および
x、y、および/またはz方向での該UV源の調整を可能にする調整コンポーネント
を含む、UV源アタッチメント;ならびに
UV源によって励起される露出した表面の領域の1つまたはそれより多くのイメージを捕獲するための、精密ステージアタッチメントであって、
該包埋されたサンプルの1つまたはそれより多くのイメージを捕獲するためのカメラであって、該1つまたはそれより多くのイメージは、該露出した表面の全体を表すイメージのセットを形成する、カメラ、および
該1つまたはそれより多くのイメージを捕獲するために、サンプルに近い位置に該カメラを固定する支持体
を含む、精密ステージアタッチメント
を含み、
次の露出した表面が出現したら、該カメラは、次の露出した表面の1つまたはそれより多くの次のイメージを捕獲し、3Dイメージは、該1つまたはそれより多くのイメージおよび該1つまたはそれより多くの次のイメージからアセンブルされる、上記キット。
[12] 前記包埋されたサンプルの層を切断するためのブレードアセンブリをさらに含み、該ブレードアセンブリは、
前記包埋されたサンプルを設置するための場所を提供する試料プレーン;
ブレード;および
該ブレードをx、y、および/またはz方向に正確に動かして、フラットな平面の層を切断するための、ブレード作動装置
を含み、
該ブレードアセンブリは、イメージング後に前記包埋されたサンプルのフラットな平面を除去して、前記次の露出した表面を出現させる、[11]に記載のキット。
[13] 前記カメラが、マルチチャネルイメージングのためのフィルターを有さない、[11]に記載のキット。
[14] 前記カメラが、第1の領域の第1のイメージを捕獲すること、該包埋されたサンプルまたはカメラをシフトして、該第1の領域に隣接する次の領域の次のイメージ捕獲すること、および該露出した表面の全体がイメージングされるまでシフトと捕獲を繰り返すことによって、該露出した表面の全体をカバーする複数のイメージを捕獲する、[11]に記載のキット。
[15] UV源アタッチメント、精密ステージアタッチメント、および/またはブレードアセンブリの操作を自動化するための処理装置をさらに含む、[12]に記載のキット。
[16] 前記少なくとも1種の造影剤が、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、Hoesch 33342(HO342)、エオシン、GFP、蛍光インク、蛍光樹脂、アクリル性インク、vasQtec UV-イエロー、vasQtec PU4ii、フルオレセイン、イソチオシアネート(FITC)、ローダミン、量子ドット(QD)、UV27、またはエポリンである、[11]に記載のキット。
[17] 前記支持マトリックスが、ワックス、パラフィンワックス、ヒドロゲル、樹脂、またはグリコールメタクリレートである、[11]に記載のキット。
[18] 前記包埋されたサンプルが、長方形の形状であるか、四角の形状であるか、立方体であるか、または長方形の立方形である、[11]に記載のキット。
[19] 前記支持マトリックスが、UVを吸収するか、または第2の造影剤を含む、[11]に記載のキット。
[20] 前記サンプルが、血管の形態のイメージング、微小血管のイメージング、腐食標本、または免疫染色のために調製される、[11]に記載のキット。
【符号の説明】
【0084】
10 精密ステージアタッチメント
12 支持体
20 ステージ
30 UV源アタッチメント
32 UV源
34 マウント
36 調整コンポーネント
40 対物レンズ
50 レンズ
60 カメラ
70 ブレードアセンブリ
70 ブレードアセンブリ(またはミクロトームアセンブリ)