(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】心室支援装置を人体サイクルに接続するシームレスなインフローカニューラアセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61M 60/174 20210101AFI20240701BHJP
A61M 60/232 20210101ALI20240701BHJP
A61M 60/416 20210101ALI20240701BHJP
A61M 60/861 20210101ALI20240701BHJP
【FI】
A61M60/174
A61M60/232
A61M60/416
A61M60/861
(21)【出願番号】P 2023541970
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 US2022020414
(87)【国際公開番号】W WO2022197725
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-07-11
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521359346
【氏名又は名称】スリーアール ライフ サイエンシズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】ツィ、スティーヴン シー ラップ
(72)【発明者】
【氏名】リュー、パンジュ
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-242143(JP,A)
【文献】国際公開第2018/104605(WO,A1)
【文献】特表2008-509740(JP,A)
【文献】特表2010-524649(JP,A)
【文献】国際公開第2012/018917(WO,A1)
【文献】仏国特許発明第01514319(FR,A)
【文献】国際公開第2020/176170(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/036060(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0078592(US,A1)
【文献】国際公開第2019/224478(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/174
A61M 60/232
A61M 60/416
A61M 60/861
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心室と心室支援装置(ventricular assist device。 VAD)の間に血液を輸送インフローカニューラアセンブリであって、
ベルマウス(bellmouth)の入り口を有し、心室に入れられる第一端と、フランジ斜面(flange ramp)を有する第二端と、前記第一端と前記第二端を一体化に接続するカニューラの流路本体と、を含む変形可能なポリマー材質のカニューラと、
ネジで互いにロックされており、前記カニューラに係止されている一対の雄
バックル及び雌バックル(male
fastener and female fastener)と、
心室支援装置(VAD)カプラと、
心室支援装置(VAD)インレットアダプタと、を含み、
前記第二端は、前記心室支援装置VADインレットアダプタに接続するインターフェースを有し、
前記VADカプラは、前記第二端と前記心室支援装置VADインレットアダプタとを接続し、前記心室支援装置VADカプラは、フランジベース(flange base)と、前記フランジベースに固定された一対のロックリング(collar)とを含み、前記ロックリングには、フランジベースを受け入れ圧縮し、挟持するように少なくとも一つの内部スロット(grooved slot)があり、前記カニューラのフランジ斜面と前記心室支援装置VADインレットアダプタのくちばし状フランジとが接合されており、
前記心室支援装置VADインレットアダプタは、前記第二端とインターフェースになる楔形くちばし(wedge-shaped beak)を含み、前記くちばし状フランジは、前記心室支援装置VADカプラ及び前記心室支援装置VADと一体化された台座で受け入れられることを特徴とする、
インフローカニューラアセンブリ。
【請求項2】
前記ベルマウスの肉厚はベルマウスの先端に向かって徐々に薄くなり、前記先端は楔形の縁であることを特徴とする、
請求項1に記載のインフローカニューラアセンブリ。
【請求項3】
心臓の心筋に接触するように配置された前記カニューラの表面部分は、細胞と組織の内側への成長を促進させるように粗面化されまたは多孔質材料で覆われていることを特徴とする、
請求項1に記載のインフローカニューラアセンブリ。
【請求項4】
前記雌バックルは、心壁外膜に接触して細胞と組織の内向き成長を促進させ、止血と固定の目的を達成するように配置されている雌バックルキャップを有し、前記雌バックルキャップに多孔質材料が付着していることを特徴とする、
請求項1に記載のインフローカニューラアセンブリ。
【請求項5】
前記雌バックルキャップはニッケルチタン合金ステント(Nitinol stent)で支持されており、心壁外膜にロックされた時に弾性負荷が発生し、前記雌バックルキャップを常に前記心壁外膜に付着させるようにすることを特徴とする、
請求項4に記載のインフローカニューラアセンブリ。
【請求項6】
前記心室支援装置(VAD)インレットアダプタの前記くちばし状フランジは、前記フランジ斜面に接続されたくちばし状インターフェースを有し、
前記くちばしの内径は前記カニューラの流路本体の内径よりやや大きく、かつ、前記フランジ斜面は前記カニューラの中心線に向かって30~60度傾いていることを特徴とする、
請求項1に記載のインフローカニューラアセンブリ。
【請求項7】
前記心室支援装置(VAD)カプラは、デカップリング防止ラッチとロックリング輪郭を含み、
前記ロックリング輪郭は、前記ロックリングが閉鎖している間、同期に前記カプラの前記フランジベースの全周縁を抱き込んで、血液接触面に最小の不連続性を持つ接続特性を実現することを特徴とする、
請求項1に記載のインフローカニューラアセンブリ。
【請求項8】
前記カニューラの壁に
嵌め込まれたステン
トを更に含むことを特徴とする、
請求項1に記載のインフローカニューラアセンブリ。
【請求項9】
当該ステントはニッケル-チタン合金材料(Nitinol material)で作られていることを特徴とする、
請求項8に記載のインフローカニューラアセンブリ。
【請求項10】
前記ステントはジグザグ状(zig-zag)の環状構造を有し、
前記ステントは前記ベルマウスと前記カニューラの流路本体の領域に分布していることを特徴とする、
請求項8に記載のインフローカニューラアセンブリ。
【請求項11】
前記ステントは少なくとも一つのジグザグ状の環状配列を含み、カニューラ壁に管状形状を有するジグザグ状の環状配列が配置され、ベルマウス壁にテーパ状のジグザグ状の環状配列が配置されていることを特徴とする、
請求項8に記載のインフローカニューラアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフローカニューラアセンブリに関わり、特に変形可能なカニューラを含むカニューラアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
機械サイクル支援システム、例えば心室支援装置(ventricular assist device。 VAD)、特に左心室支援装置(left ventricular assist device。 LVAD)は、末期心不全を治療する標準的なケア方式に発展した。
現在、VAD治療が必要な心不全患者は薬物治療に反応しない患者であり、心臓埋め込みや機械サイクルの支援を受けていない場合、彼らは終末期心不全に分類され、差し迫った死亡の脅威にいつでも直面する。
これまで、Heartmate 2、Heartmate 3、HVADを含む連続フロー、長期的なLVAD(ロータリーポンプ)の埋め込みが承認されて以来、世界で25000件以上のVAD埋め込みケースが登録されている。
予想できることは、VAD技術の進歩に伴い、LVADを末期心不全の治療としてもっと広く受け入れられることである。
【0003】
VADの埋め込みは通常、インフローカニューラとアウトフローカニューラを構築し、VADを患者の原生サイクルシステムに直列または並列に接続する必要がある。並列に接続されるものは、解剖学的、血液動力学的な優位性があるため、VAD埋め込みで広く受け入れられている。
この人工流動回路を構築するために、インフローカニューラを埋め込み、その第一端を心室または心房に接続し、第二端をVADインレットアダプタに接続する。そのため、血流は心臓(心室または心房)から抽出され、ポンプアクチュエータに入り、ポンプアクチュエータによって運動エネルギーが供給され、最終的にアウトフローカニューラを介して補助サイクルを受ける大動脈に戻る。
手術中、LVADインフローカニューラの確立は最も侵入性と技術的依存性があり、通常、心室の先端壁に大きな孔(直径20~30mm)をコアリング(apical coring)し、その後、コアリングした後の心筋壁の周囲にインフローカニューラを固定して密封するように、入念に計画された時間のかかる縫合工程を行う必要がある。
縫合部位の術中駆出と空気塞栓(air embolization)は通常外科医の吻合術の技能と経験と関繋がある。
手術期(perioperative)や術後に血液ポンプの位置ずれや変位が発生することも、インフローカニューラの設計、導入計画、実行に関係がある。
カニューラ埋め込みに関連する不具合には、手術期に発生する手術出血と術後のインレット閉塞と血栓合併症(thrombotic complications)があるが、これらに限らない。
通常、このカニューラによる合併症は破壊的な術後血液ポンプ血栓形成(postoperative pump thrombosis)、血栓塞栓(thromboembolism)、臓器梗塞(infarction)、そして重度の脳卒中や神経損傷(neurological injury)・脳機能障害(cerebral dysfunction)を引き起こす可能性がある。
【0004】
図1A~1Cは代表的な例であり、心室支援装置(VAD)10、特に遠心ロータリーポンプ(centrifugal rotary pump)が左心室(left ventricle; LV)に埋め込まれていることを示している。
一般的に、この心室支援装置(VAD)10の特徴は、回転式血液ポンプが、インフローカニューラ11、アウトフローカニューラ15、永久磁石を植込む回転子(rotor)またはインペラー12、電線で巻き付けられた固定子(stator)13、およびコントローラ14を備える、指定された血流搬送能力になるように回転子の速度を調節できることである。
回転子12の回転に伴い、血行動態に吸引力(hemodynamic suction)が発生し、左心室(LV)に貯留された血液が排出され、インフローカニューラ11を通じて心室支援装置(VAD)10に入る。
この血液ポンプのインレット流は、羽根車による機械的エネルギー変換によって運動エネルギーを与え、羽根車を通って渦形ケーシング(volute)16に集中し、最後にアウトフローカニューラ15から大動脈Aoに送られてサイクルを補助する。
同様に、他のタイプのロータリーポンプは、軸流方向または対角流動設計を採用しても、同様のインレットとアウトフローカニューラ設計を有し、人工的に作られたバイパス流路に血流を流す。
図1A-1Cに示すLVAD埋め込みでは、まず左心室の先端をコアにして心筋壁にコア貫通孔(through-hole)61を形成し、次にアンカー保護具(sleeve anchor)111を挿入してコア貫通孔61の周囲に縫合し、アダプタとしてLVADのインフローカニューラ11を突き合わせる。
このインフローカニューラ11の作成にはいくつかの術中手術リスクと術後カニューラによる合併症が含まれており、以下の通りである。
【0005】
血液ポンプアクチュエータ設計に比べて、インレットと流出の流動場特性及びカニューラ設計の研究が少ない。
インフローカニューラ設計の経験則によると、まず、心室壁の心壁内膜より突出するべきであり、次に、
図1Aに示すように、二尖弁膜(mitral valve)を指し、心室中隔(interventricular septum)62と平行でなければならない。
第一のガイドラインは過去の経験に基づいて提案されたもので、即ち、インターフェースが心壁内膜より低いインフローカニューラ11(
図1B参照)は心筋組織63がインフローカニューラ11内に内側に成長し、パンヌス)が過度に成長し、インレット路を閉塞する。また、原位置凝血塊(in-situ clot)は、内向き成長組織63の頂部に形成され、ポンプでアシストされる血流中に脱落(dislodged into)し、脳機能障害、脳卒中、臓器梗塞など、血栓塞栓に関連する合併症の源となる。
第二のガイドラインは、心室中隔62へのインフローカニューラの傾斜を防ぐことを目的としており、不適切に実施すると、インレット輸送(inflow entrainment)が阻害され、支援効果が損なわれ、ポンプに有害な低速流が発生し、ポンプ血栓が形成される。
実は、この2つのカニューラの設計基準は互いに反発している。長いインフローカニューラ11は最初の心壁内膜より突出する基準を満たすことができるが、カニューラの角度が少しずれていると、流れを塞ぐという不利な結果を招く可能性がある。
【0006】
臨床では、罹患した心臓は通常、肉厚分布が不規則であるため、形状が不良であったり、病気で合理的に拡張して線維化や脆弱化組織に変化したりする。そのため、埋め込み時には、インフローカニューラ11の作成が困難になることが多い。
通常、カニューラを挿入する推奨位置と実際のポンプ埋め込みの向きは、元の計画と誤差がある可能性がある。
また、仮に計画通りにインフローカニューラ11を配置するとしても、変更された心室内の形態(心室中に突出するカニューラ)は、天然の渦巻き構造(vortex structure)を破壊(dismantle)したり、突出カニューラの根元付近に低速域や逆流域を生じたりする可能性がある(
図1C参照)。
言い換えれば、インフローカニューラ11の配置と対応する手術方法またはカニューラによる心室の乱れた血流は血液ポンプの血栓形成とその血栓合併症を引き起こす原因である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高度な技能性縫合術に頼ることなく、埋め込み過程をより簡単かつ安全にすることができるとともに、既存のLVADインフローカニューラ設計に関連する上記のような装置による血栓合併症を軽減するために、同時に心室内の血行動態を改善する新しいインフローカニューラを設計することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来の心室支援装置(ventricular assist device。 VAD)インフロー血液の動力特性が不十分なことを解決するために、本発明の一実施例は、心室と心室支援装置VADとの間で血液を輸送するためのインフローカニューラアセンブリを提供する。
変形可能なポリマー材質のカニューラ、一対の雄雌バックル(male and female fastener)、心室支援装置(VAD)カプラ(coupler)及び心室支援装置(VAD)インレットアダプタを含む。
このカニューラは、ベルマウスを有し、心室に入れられる第一端と、フランジ斜面(flange ramp)を有し、その界面がこのVADのインフローインターフェースに接続する第二端と、カニューラの流路本体とを含む。
前記第一端と第二端はこのカニューラの流路本体を介して互いに接続され、かつこのカニューラの流路本体の内側表面全体が滑らかでステッチレスである。
この雄雌バックルはねじで互いに接続されており、その雄バックルはこのカニューラに固定されている。
この心室支援装置VADカプラは、この第二端とこの心室支援装置VADインレットアダプタを接続する。
この心室支援装置VADカプラは、フランジベースと、このフランジベースに固定された一対のロックリングとを含み、このロックリングには、このカニューラのフランジ斜面及びこの心室支援装置VADインレットアダプタのくちばし状フランジ(beak flange)に接合するように、フランジベースを受け入れ圧縮し、挟持するための内部スロット(grooved slot)があり、サンドイッチ構造になる。
この心室支援装置VADインレットアダプタは、この第二端に接続する楔形くちばし(wedge-shaped beak)を含み、このくちばし状フランジは心室支援装置VADカプラ、及びこの心室支援装置VADと一体化された台座で受け入れられる。
【0009】
いくつかの実施例では、このベルマウスは先端に向かって徐々に薄くなる肉厚を有し、この先端に楔形の縁(wedge-edged)を有する。
【0010】
いくつかの実施例では、このカニューラのコアリングした心筋(a cored myocardium)と接触するカバー部分は粗面化され、細胞と組織の内側への成長を促進して止血と固定の目的を達成する。
【0011】
いくつかの実施例では、多孔質材料を心壁外膜に接触する雌バックルに付着させ、細胞と組織の内側への成長を促進して止血と固定の目的を達成する。
【0012】
いくつかの実施例では、この心室支援装置VADインレットアダプタのこのくちばしとこのカニューラのこの第二端がこのフランジ斜面に結合されており、このくちばしの内径はこのカニューラの流路本体の内径よりわずかに大きく、このフランジ斜面はこのカニューラの中心線に向かって30~60度傾いている。
【0013】
いくつかの実施例では、この心室支援装置VADカプラは、デカップリング防止ラッチとロックリング輪郭を含み、前記ロックリングが閉じている間、同期にこのカプラのこのフランジベースの全周縁を抱き込んで、血液接触面に最小の不連続性を持つ接続特性を実現する。
【0014】
いくつかの実施例では、このインフローカニューラアセンブリは、このカニューラ内にもうけられているステントのインサートをさらに含む。
【0015】
いくつかの実施例では、このステントはニッケルチタン合金材料(Nitinol material)で作られている。
【0016】
いくつかの実施例では、このステントはジグザグ状(zig-zag)の環状構造を有し、このステントはこのベルマウスとこのカニューラの流路本体の領域に分布している。
【0017】
いくつかの実施例では、このステントは少なくとも1つのジグザグ状の環状配列を含み、管状形状を有するジグザグ状の環状配列がこのカニューラ壁に配置され、テーパ状のジグザグ状の環状配列がこのベルマウス壁に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】左心室先端から上行大動脈へのバイパス経路を有する埋め込みロータリーポンプVADの模式図である。
【
図1B】ロータリーポンプのインフローカニューラが心筋に接続され、且つこのカニューラの取り付け位置が心壁内膜より低いことを示している。成長組織と原位置凝血塊の形成を説明し、術後のインフロー閉塞及び全身性血栓塞栓とその合併症の根本原因を示した。
【
図1C】突出型インフローカニューラが心筋に接続されている模式図である。血栓性新生内膜と凝血塊は突出したカニューラの根元周辺に形成される可能性がある。
【
図2A】この一体化されたインフローカニューラアセンブリがロータリーポンプVADに取り付けられている。
【
図2B】ロータリーポンプVADに取り付けられたこの一体化されたインフローカニューラアセンブリの断面図である。
【
図3A】本発明の一実施例としてのポリマーインフローカニューラの側面図である。
【
図3B】本発明の一実施例としてのポリマーインフローカニューラの断面図である。
【
図4A】本発明の好ましい実施例であるニッケル-チタン合金(Nitinol)ステントによって補強したインフローカニューラの透明図である。
【
図4B】
図4Aに示すカニューラに組み込まれたニッケル-チタン合金ステントを使用する側面図を示す。
【
図4C】
図4Aに示すカニューラに埋め込まれたニッケル-チタン合金ステントを使用する図を示す。
【
図4D】
図4Cのニッケル-チタン合金ステントのインサートが拡張前に平面で展開された模式図を示す。
【
図6B】雌バックルアセンブリの正面図及び背面図である。
【
図6C】
図6Aで説明した雌バックルのデザインのバリエーションを示し、その保護具はニッケルチタン合金ステントに別途支持されている。
【
図6D】
図6Bに説明した雌バックルのデザインのバリエーションを示し、その保護具はニッケルチタン合金ステントに別途支持されている。
【
図7】このカニューラの発明の一実施例に関わる一体バックルとベルマウス及びカニューラ本体とがロック位置にある断面図である。
【
図8B】VADインレットアダプタの断面図である。
【
図9B】カプラがラッチされておらず、開いている状態の図である。
【
図9C】ラッチが、ロック状態でのカプラの図である。
【
図10】カプラがロック位置でカニューラ、カップフランジベース、VAD導入器のアダプタの3者を連結する断面図であり、わかりやすくするため、カニューラのフェルトは表示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に補助装置のインフローカニューラの実施例の制作と使用について詳しく検討している。しかしながら、実施例は多くの適用可能な発明概念を提供しており、これらの概念は様々な特定の状況で実現できることが理解されるべきである。議論される特定の実施例は、実施例を作成し使用する特定の方法を説明するだけであり、本発明の開示の範囲を限定するものではない。
【0020】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。一般的な辞書に定義されている各用語は、本開示の内容に適合する相対的な技能と背景または状況の意味を有すると解釈されるべきであり、特に定義されていない限り、理想化または正式すぎる方法で解釈してはならないことを理解されたい。
【0021】
本願の用語のいずれかが、本願で要求されている優先権、または参照を通じて本願に組み込まれている出願/文書で使用されている用語と矛盾する場合は、本願で使用されている用語または定義されている用語に基づく説明が優先的に適用されるものとする。
【0022】
図2A及び
図2Bは、この一体化されたインフローカニューラアセンブリがロータリーポンプVADに取り付けられた正面図及び断面図であり、このインフローカニューラアセンブリ(Cannula Assembly CA)の一実施例は心室支援装置(ventricular assist device。 VAD)を心臓60に接続されることである。
このインフローカニューラアセンブリは、変形可能なポリマー材質のカニューラ20と、一対の雄雌バックル31、32と、心室支援装置(VAD)カプラ40と、心室支援装置(VAD)インレットアダプタ50とを含む。
図2Aには、ロータリーポンプのインフローカニューラ20をどのように左心室に接続されるかを模式的に示しており、
図2Bには、遠心式(centrifugal type)VAD内部に接続されたインフローカニューラアセンブリとその流路を説明する断面図が示されている。
【0023】
遠隔出口(distal orifice)は、接続された心室支援装置VAD10から見て相対的に遠いカニューラ端として定義され、カニューラ20が伸びて形成され、その直径が錐体のように徐々に増加するベルマウス21(カニューラの第一端)として設定される。
ベルマウス21のテーパ角とカニューラの流路本体22の回転軸とのなす角は通常30~75度である。
カニューラ20の中段部分は軸対称の横断面分布を持つカニューラの流路本体22である。前記の漏斗状のカニューラ20は、心臓60の心室壁にコア貫通孔(cored through-hole)61を挿入される際に幾何学的ロック機構を構成する。
カニューラ20を挿入する前に、コア貫通孔61の元の直径は通常10~15mmの範囲であり、これは基本的にカニューラの流路本体22に挿入される外径よりも小さい。そのため、本発明のカニューラの変形性は不可欠であり、カニューラ20を、コア貫通孔61への挿入を容易にするように、より小さな事前梱包搬送形式に巻縮する(crimped into)ことができる。
ベルマウス21を左心室に挿入し、巻縮の拘束を解放すると、押圧されたカニューラ20は元の形状に戻り、その流路がコア貫通孔内径を超えてコア貫通孔61に密着される。
同様に、巻縮の拘束から解放されたので、ベルマウス21が自己展開するため、
図2Bに示すように、接触した心壁内膜に対する変位防止アンカーが構成される。
【0024】
いくつかの実施例では、現代の回転式血液ポンプに関する剛性壁インフローカニューラ(直径20~30mm)と比較して、このカニューラ20の埋め込みに必要なコア貫通孔のサイズ(直径10~15mm)が大幅に縮小されることができる。心壁から比較的少量の組織を切除することは手術と解剖に有利な構造である。
これは収縮筋の永久的な喪失を減らすだけでなく、乳突筋(papillary muscle)と腱索(chordae tendineae)の受傷のリスクを軽減することができ、これらは、房室弁(atrio-ventricular valve)の開放と閉鎖、及び収縮期に弁閉鎖不全による血液逆流(valve flow regurgitation)を担当する。
【0025】
左心室内には大動脈弁(aortic valve)と二尖弁(mitral valve)という2つの心臓弁があり、心室に出入りする一方向流を調節するために用いられる。
注意すべきことは、大動脈弁逆流(aortic valve regurgitation)はVADの支援効果を損ない、心室内血栓形成(intraventricularthrombusformation)を引き起こす可能性がある。
一方、二尖弁逆流(mitral valve regurgitation)は肺うっ血(pulmonary congestion)と高血圧を引き起こし、肺水腫(pulmonary edema)と死亡に危険を及ぼす可能性のある右心不全を引き起こす。
近年、血液ポンプの速度調節戦略を利用してロータリーポンプ血栓合併症(rotary pump thrombosis complication)を効果的に消滅した。
ポンプ速度を下げると弁が間欠的に開閉できるため、正常に作動する(開く/閉じる)弁は非常に重要である。
コアリングによる(coring-induced)腱索と乳突筋損傷は弁機能に悪影響を及ぼし、それに伴う弁逆流(valve flow regurgitation)は支援効果を損ない、上述のような弁関連合併症を引き起こす可能性がある。
したがって、本発明が達成しようとしている目的のように、左心室先端周囲コアリングした組織量を減らすことは、VAD埋め込みの安全性と有効性を著しく向上させ、術後血栓事件率を下げることができる。
【0026】
この漏斗状のカニューラ20の2つの実施例をそれぞれ
図3Aに示し、本発明の一実施例であるポリマーインフローカニューラの側面図を示す。ここでは、便宜上、カニューラの流路本体上のフェルトは図示していない。
図3と
図4は、本発明の好ましい実施例であるニッケル-チタン合金(Nitinol)ステントで補強するインフローカニューラの透明図である。
これらの実施例では、材料としてシリコーン樹脂やポリウレタンなどのポリマーエラストマーを用いることができる、カニューラ20は変形可能なポリマー材料であるため、カニューラ20のカニューラの流路本体22、ベルマウス21の先端は楔形の先端27で、心壁内膜に付着することができ、幾何学的不連続性が最も小さい。
また、ベルマウス21の先端27の先端周辺の壁面の厚いが徐々に薄くなるため、ベルマウス21の剛性(rigidity)は先端27に向かう肉厚に比例して低下し、心壁内膜に向かって押圧すると、ベルマウス21に柔軟性と形状の共形性(shape-conformal)が現れる。
カニューラの流路本体22の中間領域には、雄バックル31への接合をロックできるように突出する複数の突出座26が設けられている。
【0027】
図3Bに示すように、コアを取った後の心筋に接触するカニューラの流路本体22のカバー部分28を粗面化することで、傷の癒合時の組織の内側への成長を促進することができる。
カバー部分28の表面は、適当なポロシティ(porosity)を付着させたフェルト(felt)または堆積膜から作られるポリマーのフィラメント(例えば、静電紡糸)から作ることができる。
このような粗いカバー部分28は、埋め込みされたカニューラ20を組織内に成長させて固定または密封するのに役立ち、術後に長期的な止血効果を維持することができる。
【0028】
別の実施例は、
図4Aに示すように、前の実施例)
図3A、Bをステント70またはステント形補強材に植込むことである。
いくつかの実施例では、ステント70は可撓性であり、超弾性ニッケルチタン合金材料(Nitinol material)のような金属材料を有する。
ステント70をカニューラ20の壁内に嵌め込むことにより、カニューラ20の外径(ベルマウス21とカニューラの流路本体22とを含む)を小さいするために、カニューラ壁の厚さをさらに薄いすることができる。
そのため、内嵌ステント式カニューラの埋め込み性が向上し、カニューラの流路本体22の内径25が主導する血行動態上の性能に影響を与えることがない。
また、ステント70は、カニューラの流路本体22にかかる脉動圧負荷を多く分担することができる、カニューラの耐久性と安全性が向上する。
機械的性質上、ステント70は構造的な降伏(structural yielding)を生じることなく大きな変形量に耐えることができるため、本カニューラ20の折り畳み性の要求を満たす。
【0029】
代表的なNi-ti系ステントのインサートの側面図と
図4-2は、それぞれ
図4-1に示すカニューラに組み込まれたNi-ti系ステントを使用する側面図と
図4-2に示すカニューラに組み込まれたNi-ti系ステントを使用する側面図を示す。
ステント70はジグザグ状の環状構造を有しており、少なくとも一つの配列のジグザグ状リング71、73と連結部材72とを備えているが、本実施形態では複数配列のジグザグ状リング71、73と連結部材72とを採用していることはいうまでもない。
【0030】
配列されたジグザグ状リング71、73はラジアル負荷に抵抗する役割を担い、連結部材72は配列されたリング71、73を軸方向の引っ張り力に抵抗するようにグループ化する。
具体的には、この配列のジグザグ状リング71は管状でカニューラの流路本体22の壁に埋め込まれ、この配列のリング73はテーパ状でベルマウス21の壁に埋め込まれている。
薄肉のベルマウス21では、錐体径が遠隔先端27に向かうにつれて径方向の強度が徐々に弱くなる。
なお、ベルマウス21が雌バックル32に係止する場合、ベルマウス21の径方向の強度が不足すると、構造の屈曲や形状の共形性が失われ、使用時に大量の駆出を招くおそれがある。
ステント70のやぶは、ベルマウス21の肉厚を厚くすることなく、十分な屈曲抵抗力を提供することで、このような高分子材料の強度を向上することができる。
【0031】
ステント70の製造では、まず薄肉ニッケルチタン合金直管からレーザーカッターを用いて、配列され、連結されたジグザグ状リング構造71、73を切り出す。
この管状のジグザグ配列構造を平らなビューで
図4Bに示し、
図4Cのニッケル-チタン合金ステントのインサートが拡張前に平面で展開されている様子を示す図である。
管状配列アセンブリ71、73は、標準的な拡張と熱処理の過程に従って、ベルマウスを有するステント70に段階的に固定する。
その後、熱処理時にステント70の表面に形成する酸化層を表面研磨と電解研磨で除去する。
最終製品は
図4Aに示すように、ステント70とシリコーン樹脂(silicone)またはウレタンエラストマーの金型から共射出されて完成する。
【0032】
従来のインフローカニューラ接続デザインとは異なり、従来の手術では、LVADを心臓60に接続するために、通常10-12本の縫合針を必要とし、コア貫通孔61の周囲の円周上に並んで配置されていたが、本発明は縫合なしの固定方法で完成できるステッチレスなインフローカニューラアセンブリを革新した。
伝統的な縫合固定は緊張してアンカーされた縫合糸によってロープに生じる張力に依存する。
対照的に、本無縫合血液ポンプ接続は雄雌バックル対31、32から提供される全く異なる固定と力発生機構を採用している。
この新しい接続設計は同時にインフローカニューラ20を心筋上の接続部位にロックし、密封する。
カニューラ20の接触心筋への無縫合固定は一対の雄雌バックル31、32によって行われ、
図5Aは雄バックルアセンブリの断面図、
図5Bは雄バックルアセンブリの断面図、
図6Aは雌バックルアセンブリの断面図、
図6Bは雌バックルのデザインのバリエーションをそれぞれ示し、その保護具は他のニッケル-チタン合金ステントに支持され、
図6Aに示す。
【0033】
図5Aと
図5Bは雄バックル31の断面図と図である。
ねじ34は雄バックル31の最初から最後までの外面に刻まれており、カニューラの流路本体22には、カニューラの流路本体22の外壁から突出する複数の突出座26があり、雄バックル31のほぼ中間領域には、この突出座26にそれぞれ対応する複数の貫通溝33があり、突出座26と貫通溝33とは互いに噛合している。
雄バックル31の内径はカニューラの流路本体22の外径29とほぼ等しく、両者の間には小さな隙間がある。
カニューラ20に取り付けると、カニューラの流路本体22の突出座26が貫通溝33に接合し(
図7から分かる)、雌バックル32とのねじ止めに必要な軸方向と横方向の反力を与える支持ベースとなる。
【0034】
図6Aと
図6Bを参照し、雌バックル32は漏斗状の遠隔キャップ36を有するナット(lock nut)であり、心壁外膜に押し付けられてロックとシールの目的で使用される。
漏斗状の遠隔キャップ36の角度はベルマウス21の角度とほぼ等しい。
雄雌バックル31、32のねじ締めを行うと、圧縮力が発生し、漏斗状の遠隔キャップ36とベルマウス21の間に挟まれた心筋に均一に分布する。
そして、ベルマウス21の錐体は、心壁内膜形態(terrain)に密着するようにわずかに変形し、密封(出血の予防)とカニューラ固定の機能を同時に果たす。
漏斗状の遠隔キャップ36の外縁の周囲には、手術用フェルト(felt)で作られたテーパ状の軟質保護具(cuff)35が接続されている。
フェルトが提供したソフトコンタクト、多孔性特性はもう一つの止血の保証である。組織または細胞は術後の傷の癒合過程に伴い、テーパ状の軟質保護具35の多孔性空隙まで内側に成長することができる。急性癒合中にロックされた雌バックル32と心壁外膜の固定をさらに助けるために、保護具の縁の周りに留置縫合(stay suture)を置くことができる。
【0035】
このステッチレスカニューラを埋め込みした後、締結接続箇所に術後の組織萎縮(tissue atrophy)が発生する可能性がある。
このような組織萎縮は密封の有効性を危うくし、接続箇所の出血を招く可能性がある。
図6Cと6Dに、この萎縮による術後駆出を軽減するための別の雌バックル32の別の実施例を示す。
軟質保護具35は、
図4B、
図4Cに示すように、カニューラのベルマウス21に埋設されたジグザグ状リング73と類似し、テーパ状のニッケルチタン合金ステント35Nによってさらに支持することができる。
雌バックル32が心壁外膜に圧縮されたとき、変形した超弾性ニッケルチタン合金ステント35Nは弾性接触負荷を提供して、傷の治癒過程で軟質保護具35が常に心壁外膜に付着することを確保し、術後萎縮による血液漏れリスクを回避する。
【0036】
図7は、このカニューラの発明の一実施例に関わる一体化されたバックルとベルマウス及びカニューラ本体とがロック位置にある断面図であり、明確化のためにカニューラでのフェルトは示されていない。
図7は、カニューラ20に取り付けられた一体化された雄雌バックル31、32を示している。
実際に、材料の弾力性の考慮は現在のデザインに慎重に組み込む必要がある。
これらのバックルをカニューラに取り付ける際には、カニューラ20の変形能力が必要な前提条件である。
カニューラ20の近位端または第二端24は、第二端24がリング状の雄雌バックル31、32を順次通過するように、小さい輪郭(profile)に巻き取られるべきである。
雄バックル31は先に取り付けられ、巻き縮み輪郭の解放に伴い、バックル壁にある貫通溝33を通してカニューラの流路本体22にある複数の突出座26との噛み合いがカニューラの流路本体22にロックされる。
カニューラの第二端24が捲縮した後、雌バックル32が挿入され、カニューラの第二端24が解放された後、雌バックル32が雄バックル31にネジ止めされる。
【0037】
所定の圧縮力で心壁外膜に接触するまで前に雌バックル32を押すことによってカニューラ20と心臓60との固定が完了する。
成功にロック固定と漏れ防止シールに必要な適切な圧縮力は外科医が決定するか、トルクレンチ(torque wrench)を使用して制御することができる。
【0038】
機構的には、雄雌バックル31、32をネジ締めることによって、ベルマウス21と雌バックル32の漏斗状の遠隔キャップ36をコア貫通孔61の両側から挟圧された心筋(sandwiched myocardium)をクランプして、固定と漏れのない要求を満たす。
注目すべきは、ベルマウス21と心壁内膜は、圧縮時に形状共形(shape-conformal)である。
半剛性(弾力性のある)状態のベルマウス21は、心壁内膜形態(terrain)に適応し、血液漏れの問題を避けるための密封バリアを形成することができる。
しかし、バックル対中の雄バックル31は、カニューラの流路本体22の突出座26に係止され、発生したロック力を相殺する支持ベースとして機能する。
【0039】
さらに、このステッチレス接続は出血を抑製するために構築された正のフィードバックメカニズムを持っている。
心室収縮と心室血圧の増加に伴い、ベルマウス21に作用する圧力が増加し、接続されたカニューラ20がより良好に密封される。
そのため、高血圧出血の心配は実際には排除された。
この順方向フィードバック効果は、
図1Aから
図1Cに示すように、縫合手段の伝統的な固定では不足している。
従来の縫合固定では、通常、外科医はカニューラ20の吻合口の縫合が完了した後、薬物による一時的な高血圧に基づいて縫合出血状況を検査しなければならない。
図2Bは、本発明がどのように接続された心室壁とロック位置にあるかを示す断面図である。
圧縮型ロック機構は、クランプされた心筋に接触する領域の周囲に平均的に分布するロック力を加えることができる。
ベルマウス21と漏斗状の遠隔キャップ36とのソフトな接触は心筋を縫合することによる縫合糸切りの伝統的な問題を回避し、高血圧時に縫合針孔が拡大された出血を引き起こすことが多い。
心筋は特に伝統的な縫合吻合術に関連するワイヤカットの影響を受けやすく、この問題は外科医の縫合技能の習得に大きく依存している。
【0040】
カニューラ20の第二端24の周囲において、血液に接触する内面は、接続されたVAD 10の入り口に几何学的に滑らかに移行する配置を有する。
図8A、
図Bに示すように、心室支援装置VADインレットアダプタ50は、楔形くちばし(wedge-shaped beak)51、くちばし状フランジ(beak flange)53、台座54を含む回転体である、心室支援装置VAD入口ハウジングの延長を形成している。
台座54には、心室支援装置(VAD)インレットアダプタ50と心室支援装置(VAD)10とをリンクするための多数のミシン目(eyelet)58が穿設されている。
楔形くちばし51と接続された血液ポンプまたは心室支援装置(VAD)インレットアダプタ50の最先端部分は、内径52がカニューラ20の内径25よりわずかに大きい。
図3Bを参照して、インターフェースで発生する段差不連続性(step discontinuity)に関する耐障害性を高めるために、フランジ斜面23の界面表面は傾斜角外径29で流れ方向(stream direction)に傾斜している。
このような傾斜面のインターフェース設計により、製造精度の制限や、従来の突合せに関連する一致同心度によってフランジ斜面23のインターフェース表面に生じる段差や隙間を回避することができる。
しかし、このようなテーパ状のフランジ斜面23は、接続物との同心中心線合わせを実現する上で固有の欠点を有する。
そして、この問題は特殊カプラの設計によって以下の通りに解決される。
【0041】
図9Aは、カニューラの第二端24を心室支援装置)インレットアダプタ50に接続する際の血流動態と抗血栓要件を満たすように設計されたカプラ40の構成部品の分解図、
図9Bは系カプラの非ロック、開放状態の図、
図9Cカプラのロック、ロック状態の図である。
図9Aに、完全機能心室支援装置(VAD)カプラ40を構成するアセンブリ心室支援装置)VAD)を示す。
カプラ40は、フランジベース42と、一対のロックリング43と、ロックリング43とフランジベース42とを連結するヒンジ44とを含む。
スプリングコイル45はヒンジ関節46に配置され、ロックリング43を非ロック時に開放位置に保持する(
図9B)。
ロックリング43は、
図9A、
図9Bに示すように、内部に溝を有する。
ロックリング43には、フランジベース42、パイプ20のフランジ斜面23、インレットアダプタのくちばし状フランジを受け入れ圧縮して挟むための内部スロット(grooved slot)431がある。
【0042】
クイックコネクトタイプのロックは、
図9Cに示すように、ロックリング43によって簡単に行なわれ、不用意にロックを開放する心配はない。
板バネ式ラッチ47は、板バネ式ラッチ47の頂部にプレート471を溶接続することにより、所要のばね力が得られるようにロックリング43の先端に固定させる。
ロック中、板バネ式ラッチ47が他方のロックリングの斜面49を摺動すると曲がる。
板バネ式ラッチ47が(clear)斜面49の頂部を通過するとき、弾性復元力によって前記斜面49の底部まで降下し、長期使用時のポンプ振動や揺動による不意なラッチの解錠やロックリングの開放を防止する安全対策となる。
ポンプの取り外しや交換の際、アセンブリの結合開放が必要な場合、板バネ式ラッチ47は特定の工具によって曲げられ、上方に持ち上げられ、ロックリング43を回転させて開放し、心室支援装置10とカニューラ20とを分離することができる。
【0043】
剛性のある楔形くちばし51と半剛性のある(弾性のある)カニューラ20のフランジ斜面23とを同心に接続できる心室支援装置(VAD)カプラ40の設計では、フランジベース42の全周縁を同時に挟み込む(catching)ことが重要である。
挟み込み/ロック噛合が同時に完了しないたびに、最初に挟持されたカニューラのフランジ斜面23に他の自由部分よりも多くの歪みが発生し、不均一に接触する斜面の表面が傾いたり変位したりする傾向が生じて、ポンプの接続が偏心してしまう。
このような偏心接続は通常、インターフェースに段差や隙間が生じ、血栓形成の原因となる。
この欠点を補う方法は心室支援装置(VAD)カプラ40の遠隔フランジのロックリング輪郭41をすべての円周接触領域に同時にロック噛合できるように配置されることである。
ロックすると、金属楔形くちばし51の縁が制御された深さで圧縮されたシリコーン樹脂(silicone)斜面23にわずかに沈み込み、血流にさらされるとインターフェースの不連続性がさらに低減される。
従って、少量の抗凝固治療案を与えることで、伝統的なインターフェース血栓を大幅に減少または解消することができる。
【0044】
カニューラ20と心室支援装置10との結合はクランプ機構を介して行われ、変形した後のカニューラ20の第二端24をそれぞれ接続された剛性材質のフランジベース42と心室支援装置(VAD)カプラ40のくちばし状フランジ53及び心室支援装置(VAD)インレットアダプタ50との間の「ガスケット」とする。
図10は、心室支援装置(VAD)カプラ40によってカニューラ20と心室支援装置10の心室支援装置(VAD)インレットアダプタ50をロックする完全な連結関係を示している。
血液ポンプとカニューラの間にある本インターフェースのリンク設計はinsitu血栓形成を減らす面で二つの血行動態学上の利点がある。
まず、通常の突合せで観察されるような、明らかな段差や隙間型不連続接合部の発生は実際にはない。
次に、くちばし前縁56インターフェースでの停滞流(flow stasis)を最小化することができる。
そのため、インターフェースを流れる血流は高速を維持し、ドッキングの欠点、すなわち、インターフェースに存在する前方(forward-facing)または後方(backward facing)の段差は、流れを停滞させ、原位置と血流中の血栓不良事件を引き起こす。
【0045】
本発明のインフローカニューラ20の埋め込み及び前記カニューラ20と心室支援装置10との接続について、まとめると以下のとおりである。
このようなインプラント(Implant)でのステップの分割手順を説明する。
【0046】
1. カニューラ20を圧着機または手で小さな輪郭に折り、この折りたたまれたカニューラ20の近位端24及び遠隔27の周囲を、コードで拘束し、又はコイルを介して、それぞれ締め付ける。
【0047】
2. 心筋壁(心室または心房)にコア貫通孔61をコアリングする。
【0048】
3. 巻縮したカニューラをコア貫通孔61を通して心室(または心房)に挿入する。
カニューラ針(trocar)はカニューラ20の挿入を補助するために用いることができる。
挿入後カニューラ針を取り出す。
【0049】
4. 雄バックル31と雌バックル32を取り付け、カニューラの近位端24から進入した後、巻縮したカニューラの流路本体22に取り付ける。
【0050】
5. 遠隔27のコードによる拘束を開放し、ベルマウス21を自己拡張されて元に戻す。
【0051】
6. 近位端24のコードによる拘束を開放し、カニューラ20を元に戻す。
【0052】
7. カニューラの流路本体22における突出座26に雄バックル31を係止する。
【0053】
8. 心壁外膜に指定された圧縮力に達するまで、雌バックル32をネジ締めする。
トルクレンチは圧縮力を制御するために使用できる。
【0054】
9. 心室支援装置(VAD)カプラ40をカニューラの近位端24からカニューラ20に取り付けられる。
【0055】
10. 空気を排出するためにヘパリン塩水(heparin saline)を血液ポンプに注入する。
【0056】
11. 心室とカニューラ20の内部にヘパリン塩水を注入して内部の空気を除去する。
【0057】
12. 心室支援装置(VAD)カプラ40を閉鎖するロックリング43を介して、血液ポンプ心室支援装置(VAD)インレットアダプタ50とカニューラの近位端24を接続する。
ポンプとカニューラ20を接続する際に塩水を注入し、空気が巻き込まれないようにする。
【0058】
以上説明ように、本開示の一実施例によれば、心室と心室支援装置(ventricular assist device; VAD)との間で血液を輸送するためのインフローカニューラアセンブリを提供する。
変形可能なポリマー材質のカニューラ、一対の雄雌バックル、VADカプラ(coupler)及びVADインレットアダプタを含む。
このカニューラは、心腔壁をロックするためのベルマウスを有する第一端と、フランジ斜面を有る第二端と、カニューラの流路本体とを含む。
この第一端と第二端はこのカニューラの流路本体を介して互いに接続され、かつこのカニューラの流路本体の内面全体が滑らかでステッチレスである。
この雄雌バックルはねじで互いに接続されることによって、雄バックルはこのカニューラに係止されている。
この心室支援装置VADカプラは、この第二端とこの心室支援装置VADインレットアダプタを接続する。
この心室支援装置VADカプラは、フランジベースと、このフランジベースに固定された一対のロックリングとを含み、このロックリングには、フランジベース、このカニューラのフランジ斜面及びこの心室支援装置VADインレットアダプタのくちばし状フランジを受け入れ圧縮し、挟持するために用いられる内部スロット(grooved slot)があり、この心室支援装置VADインレットアダプタは、この第二端と互いにインターフェースになる楔形くちばしを含むので、VADカプラは、このくちばし状フランジを受け入れ、VADの台座に取り付けられる。
【0059】
要求アイテムにおいて、「第一」、「第二」、「第三」などの序数用語を使用して要求アイテム要素を修正すること自体は、ある要求アイテム要素の他の要求アイテム要素に対する優先度、優先度、または順序を意味するものではなく、方法の動作を実行する時間的順序を意味するものでもなく、特定の名前を持つ要求アイテム要素と同じ名前を持つ別の要素を区別するためにラベルとして使用されるだけである。ただし、序数の使用には使用される
【0060】
明らかなように、当業者は、本発明において様々な修正および変更を行うことができる。その意図は、基準および実例は単なる例示と見なされ、開示された実施形態の真の範囲は、以下の請求項およびそれらの均等物によって示されるということである。
【符号の説明】
【0061】
10:心室支援装置(VAD)
11:インフローカニューラ
12:回転子/インペラー
13:固定子
14:コントローラ
111:アンカー保護具
15:アウトフローカニューラ
16:渦巻ケーシング
20:カニューラ
21:ベルマウス
22:カニューラの流路本体
23:フランジ斜面
24:第二端/近位端
25:内径
26:突出座
27:第一端/先端/遠隔
28:カバー部分
29:外径
31:雄バックル(male fastener)
32:雌バックル(female fastener)
33:貫通溝
34:ネジ
35:軟質保護具
35N:(ニッケルチタン合金)ステント
36:漏斗状の遠隔キャップ
40:心室支援装置(VAD)カプラ
41:ロックリング輪郭
42:フランジベース
43:ロックリング
431:内部スロット
44:ヒンジ
45:スプリングコイル
46:ヒンジ接合関節
47:板バネ式ラッチ
471:プレート
49:斜面
50:心室支援装置(VAD)インレットアダプタ
51:楔形くちばし
52:内径
53:くちばし状フランジ
54:台座
56:くちばし前縁
58:ミシン目
60:心臓
61:コア貫通孔
62:心室(間)中隔
63:(心筋/内側成長)組織
70:ステント
71、73:ジグザグ状リング
72:連結部材
Ao:大動脈
CA:インフローカニューラアセンブリ
LV:左心室
RV:右心室