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特許7511957ビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法
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  • 特許-ビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20240701BHJP
   H01Q 15/14 20060101ALI20240701BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20240701BHJP
   H04B 7/145 20060101ALI20240701BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20240701BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20240701BHJP
【FI】
H04B7/06 960
H01Q15/14 Z
H04B7/08 810
H04B7/145
H04W16/28
H04W64/00 120
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023545826
(86)(22)【出願日】2022-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 CN2022086405
(87)【国際公開番号】W WO2023077724
(87)【国際公開日】2023-05-11
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】202111311635.X
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502041886
【氏名又は名称】▲東▼南大学
【氏名又は名称原語表記】SOUTHEAST UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.2 Sipailou,Xuanwu Nanjing,Jiangsu 210096 China
(74)【代理人】
【識別番号】100167184
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲曽▼勇
(72)【発明者】
【氏名】丁丁▲楊▼
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼迪
(72)【発明者】
【氏名】金石
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼瑞
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112866904(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111641955(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02-7/12
H04L 1/02-1/06
H01Q 15/14
H04B 7/145
H04W 16/28
H04W 64/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ側の位置情報を入力とし、当該位置に対応する基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームペアを出力とする、ビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法であって、
実際の地理的環境及び信号伝搬環境に基づく最適なビーム情報を取得し、位置情報をインデックスとする最適なビームデータベース、即ちビームインデックスマップを構築するステップS1と、
構築されたビームインデックスマップに基づいて、複数種の測位システムを利用してユーザのリアルタイムの地理的位置情報を取得し、ビームインデックスマップによって当該位置における候補ビームペアセットを取得し、候補ビームペアセットにおける異なるビームペアの出現回数に基づいてビームペアを直接選択するか、又は候補ビームペアセットに対してビーム走査を行って最適なビームペアを選択し、基地局側及びインテリジェント反射面側が、設定された時間長内に、選択されたビームペアを使用してユーザと通信するステップS2とを含み、
当該ビームインデックスマップは、位置情報に基づく基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームインデックスを記憶するデータベースを構成し、マップの使用時間長が制限時間Tを超えるか、又はマップに対応する実際の地理的環境もしくは信号伝搬環境に一定の変化が生じた場合、ステップS1の操作を実行してマップを更新し、
基地局側とユーザ側が厳重に遮断されるシーン、即ち、基地局側が主にインテリジェント反射面を介してユーザ側と通信する場合について、相対的に低い頻度で基地局側の最適なビームを更新し、相対的に高い頻度でインテリジェント反射面側の最適なビームを更新する、ことを特徴とするビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法。
【請求項2】
ステップS1において、地理的環境情報及び信号伝搬環境情報に基づいて、オフラインレイトレーシングシミュレーション計算、実地測定及びオンライン測定の方法により、ユーザ位置情報に対応する基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームペアを取得し、ビームインデックスマップを構築する、ことを特徴とする請求項1に記載のビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法。
【請求項3】
ステップS2は、具体的には、
基地局側がユーザ側と通信する必要がある場合、測位システムによってユーザのリアルタイムの地理的位置情報を取得するステップS201と、
ユーザ位置情報に基づいて、ビームインデックスマップからユーザ位置に最も近いK個の測定点の位置を見つけ、ビームインデックスマップにおけるK個の測定点の位置に対応する最適なビームペアを利用して候補ビームペアセットを構築するステップS202と、
候補ビームペアセットにおいて出現回数が最も多いビームペアを当該ユーザ通信用の最適なビームペアとして直接選択し、候補ビームペアセットにおいて出現回数が最も多くかつ等しいビームペアが複数ある場合、異なるビームペアに対応する測定点の位置から当該ユーザ位置までの距離の逆数の和を計算し、対応する距離の逆数の和が最も大きいビームペアを当該ユーザ通信用の最適なビームペアとして選択するステップS203と、
基地局側とインテリジェント反射面側は、候補ビームペアセットに対してビーム走査を行い、ユーザが受信した信号対雑音比の大きさに基づいて最適なビームペアを選択するステップS204と、
基地局側とインテリジェント反射面側は、次の時間長がtである時間内に、ステップS203又はS204で得られた最適なビームペアを使用してユーザと通信するステップS205と、
時間tが終了すると、基地局側又はユーザ側は、通信が終了したか否かを判断し、通信が終了していれば、当該プロセスは終了し、通信が継続していれば、通信が終了するまでステップS201~S205を繰り返すステップS206とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法。
【請求項4】
ビームインデックスマップにおける各測定点の位置に対して、異なる時間に異なる最適なビームペアが存在し、データベースにおいて各測定点に複数の最適なビームペアを記憶する、ことを特徴とする請求項1に記載のビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法。
【請求項5】
各ユーザ位置の候補ビームペアセットにおけるK値は、選択可能なビームペアの数に対応し、後続のビーム選択過程における計算とトレーニングのオーバーヘッドに比例する、ことを特徴とする請求項1に記載のビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法。
【請求項6】
信号伝搬環境が安定している場合は、ステップS203によりユーザ通信用のビームペアを取得し、信号伝搬環境の変化が速い場合は、ステップS204により最適なビームペアをユーザ通信用のビームペアとして選択する、ことを特徴とする請求項3に記載のビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信標準化プロセスの分野に関し、特にビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2030年に向けて第6世代(6G)移動通信ネットワークは、きわめて高いスペクトル効率とエネルギー効率、広範囲の無線カバレッジとマクロアドレスアクセス、及び超高信頼性と低遅延通信をサポートする必要があるが、従来の5G技術ではこれらの要件を完全に満たすことが困難である。より多くの基地局、アクセスポイント、中継点などのアクティブノードを追加して通信距離を短縮することにより、ネットワークカバレッジエリアと容量を拡大することはできるが、同時にエネルギーとハードウェアオーバーヘッドが高くなり、干渉がより複雑かつ激しくなるなどの問題が起きる。より多くのアンテナを使用して大規模なMIMOゲインを取得することにより、信号処理の複雑性も増す。ミリ波ひいてはテラヘルツ周波数帯などのより高い周波数帯を用いて通信を行うことにより、その伝搬損失が大きいという欠陥を補うために、より多くのアクティブノード及びアンテナが必要となる。
【0003】
上記課題に対して、近年、低コスト、低複雑性、低エネルギー消費の新型通信技術であるインテリジェント反射面通信技術が学界から提示されている。インテリジェント反射面は、大量の受動型反射ユニットからなる平面であり、各ユニットは、独立して入射信号に制御可能な振幅と位相変化を与えることができる。無線ネットワークにインテリジェント反射面を密に配置し、必要に応じて反射信号を柔軟に制御することにより、チャネルフェージングと干渉の問題を根本的に解決し、無線通信の容量と信頼性を大幅に向上させることができる。インテリジェント反射面技術には、次の利点がある。(1)配置コストが低い。(2)全二重モードで動作することができる。(3)従来の通信システムと互換性があり、統合が容易である。
【0004】
インテリジェント反射面が信号伝搬環境を柔軟に制御する能力を十分に発揮するために、基地局側とインテリジェント反射面側のビームを正確に選択する必要があり、従来のビーム選択方法としては、主に以下のいくつかの方法がある。
【0005】
(1)ビームトレーニングに基づく方法は、基地局側とインテリジェント反射面側が通信前に自身のコードブックにおける全てのビームをそれぞれトラバースし、最後にユーザ側の受信信号対雑音比が最大のビームペアを選択して通信を行う。当該方法は、トレーニングオーバーヘッドが大きく、有効な通信時間長が短いため、通信効率が低くなる。トレーニングオーバーヘッドを減少させるために階層的コードブックに基づく方法が研究者から提案されているが、コードブック設計が複雑であり、かつトレーニングオーバーヘッドを根本的に回避していない。
【0006】
(2)パイロットトレーニングに基づく方法は、基地局側が通信前にまずユーザ側にとって既知のパイロットシーケンスを送信し、次にユーザ側は、受信した信号と既知の信号とを比較してチャネルを推定し、推定したチャネルに基づいてビームを選択する。しかしながら、インテリジェント反射面ユニットは受動型であるため、パイロット信号を送受信する能力がない。また、インテリジェント反射面は大量の反射ユニットから構成され、推定すべきチャネル係数が多く、チャネル推定に大量のパイロットオーバーヘッドが必要であるため、通信時間を占有し、通信速度を低下させる。研究者は、インテリジェント反射面ユニットをグループ化してチャネルを推定し、基地局側からインテリジェント反射面側までのチャネルと、インテリジェント反射面側からユーザ側までのチャネルを異なる時間スケールでそれぞれ推定し、ミリ波チャネルのスパース性を利用して圧縮センシングの方法でチャネル推定を行うなどの方式によって、トレーニングオーバーヘッドを減少させることを提案している。しかし、これらの方法に必要なパイロット数は、基地局側のアンテナ数とインテリジェント反射面側の反射ユニット数と共に増加する。
【0007】
(3)統計モデルに基づく方法であり、当該方法は、主にいくつかのチャネルパラメータ(チャネルゲイン、シャドウフェージング、見通しリンクの有無)の確率分布又は周囲環境の情報(建物位置及び高さ)などに基づいてチャネルをモデリングするものであるが、このような方法は、大まかな送受信機位置情報及び信号伝搬環境情報を利用するだけで、実際の通信過程における環境要素を無視しており、得られた推定チャネルと実際のチャネルとの間に大きな偏差がある。
【0008】
上記3つの従来のビーム選択方法の分析から分かるように、将来のインテリジェント反射面通信システムにおいて、環境センシングと低オーバーヘッドを両立できるビーム選択方法の確立が急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする技術的課題は、背景技術において提示された欠陥に対して、ビームインデックスマップを利用してユーザ側の位置と基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームペアとのマッピング関係を確立することができ、ビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記技術的課題を解決するために以下の技術的解決手段を使用する。
【0011】
本発明は、ユーザ側の位置情報を入力とし、当該位置に対応する基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームペアを出力とする、ビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法を提供する。
【0012】
この方法は、実際の地理的環境及び信号伝搬環境に基づく最適なビーム情報を取得し、位置情報をインデックスとする最適なビームデータベース、即ちビームインデックスマップを構築するステップ(1)と、
構築されたビームインデックスマップに基づいて、複数種の測位システムを利用してユーザのリアルタイムの地理的位置情報を取得し、ビームインデックスマップによって当該位置における候補ビームペアセットを取得し、候補ビームペアセットにおける異なるビームペアの出現回数に基づいてビームを直接選択するか、又は候補ビームペアセットに対してビーム走査を行って最適なビームペアを選択し、基地局側及びインテリジェント反射面側が、設定された時間長内に、選択されたビームペアを使用してユーザと通信するステップ(2)とを含む。
【0013】
さらに、本発明に係るビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法によれば、ステップ(1)において、地理的環境情報及び信号伝搬環境情報に基づいて、オフラインレイトレーシングシミュレーション計算、実地測定及びオンライン測定の方法により、ユーザ位置情報に対応する基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームペアを取得し、ビームインデックスマップを構築する。
【0014】
さらに、本発明に係るビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法によれば、ステップ(2)は、具体的には、
基地局側がユーザ側と通信する必要がある場合、測位システムによってユーザのリアルタイムの地理的位置情報を取得するステップ(201)と、
ユーザ位置情報に基づいて、ビームインデックスマップからユーザ位置に最も近いK個の測定点の位置を見つけ、ビームインデックスマップにおけるK個の測定点の位置に対応する最適なビームペアを利用して候補ビームペアセットを構築するステップ(202)と、
候補ビームペアセットにおいて出現回数が最も多いビームペアを当該ユーザ通信用のビームペアとして直接選択し、候補ビームペアセットにおいて出現回数が最も多くかつ等しいビームペアが複数ある場合、異なるビームペアに対応する測定点の位置から当該ユーザ位置までの距離の逆数の和を計算し、対応する距離の逆数の和が最も大きいビームペアを当該ユーザ通信用のビームペアとして選択するステップ(203)と、
基地局側とインテリジェント反射面側は、候補ビームペアセットに対してビーム走査を行い、ユーザが受信した信号対雑音比の大きさに基づいて最適なビームペアを選択するステップ(204)と、
基地局側とインテリジェント反射面側は、次の時間長がtである時間内に、ステップ(203)又は(204)で得られた最適なビームペアを使用してユーザと通信するステップ(205)と、
時間tが終了すると、基地局側又はユーザ側は、通信が終了したか否かを判断し、通信が終了していれば、当該プロセスは終了し、通信が継続していれば、通信が終了するまでステップ(201)~(205)を繰り返すステップ(206)とを含む。
【0015】
さらに、本発明に係るビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法によれば、当該ビームインデックスマップは、位置情報に基づく基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームインデックスを記憶するデータベースを構成し、マップの使用時間長が制限時間Tを超えるか、又はマップに対応する実際の地理的環境もしくは信号伝搬環境に一定の変化が生じた場合、ステップ(1)の操作を実行してマップを更新する。
【0016】
さらに、本発明に係るビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法によれば、基地局側とユーザ側が厳重に遮断されるシーン、即ち、基地局側が主にインテリジェント反射面を介してユーザ側と通信する場合について、相対的に低い周波数で基地局側の最適なビームを更新し、相対的に高い周波数でインテリジェント反射面側の最適なビームを更新する。
【0017】
さらに、本発明に係るビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法によれば、ビームインデックスマップにおける各測定点の位置に対して、異なる時間に異なる最適なビームペアが存在し、データベースにおいて各測定点に複数の最適なビームペアを記憶する。
【0018】
さらに、本発明に係るビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法によれば、各ユーザ位置の候補ビームペアセットにおけるK値は、選択可能なビームペアの数に対応し、後続のビーム選択過程における計算とトレーニングのオーバーヘッドに比例する。
【0019】
さらに、本発明に係るビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法によれば、信号伝搬環境が安定している場合は、ステップ(203)によりユーザ通信用のビームペアを取得し、信号伝搬環境の変化が速い場合は、ステップ(204)により最適なビームペアをユーザ通信用のビームペアとして選択する。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以上の技術的解決手段を使用し、従来技術に比べて、以下の技術的効果を有する。
【0021】
(1)本方法は、ビームインデックスマップによって提供される位置及び対応する最適なビーム情報を十分に活用することができ、これらの情報は、実際の地理的環境及び信号伝搬環境をある程度反映し、選択されたビームの正確性及び環境適応性を保証する。
【0022】
(2)本方法は、従来の基地局ビーム走査方法を十分に利用することができ、ステップ(204)における軽量トレーニングに基づくビーム選択方法は、実際にビームインデックスマップによって元のビーム走査範囲を縮減することにより、ビーム走査のオーバーヘッドを減少させる。
【0023】
(3)本方法は、異なる通信シーン及び必要に応じて異なるビームインデックスマップを選択し、異なる候補ビームペアセットの大きさを決定することができ、異なるビーム選択方法は、柔軟性が高く、適用範囲が広い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例に係るビームインデックスマップ構築の概略図である。
図2】本発明の実施例に係るビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択例の概略図である。
図3】本発明の実施例に係るビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、例示的な実施例について詳細に説明し、その例を図面に示す。
【0026】
当業者であれば理解できるように、特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。なお、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、従来技術の文脈上で有する意味と一致する意味を有するものと理解されるべきであり、本明細書で定義されていない限り、理想化された意味又は過度に形式的な意味に解釈されることはない。
【0027】
本発明は、ビームインデックスマップを利用してユーザ側の位置と、基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームペアとのマッピング関係を確立することができ、サービスエリア内の各ユーザ位置に対して、ビームインデックスマップは、記憶された位置及び対応するビームインデックス情報に基づいて基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームペアを提供することができる。それにより、トレーニングオーバーヘッドを大幅に減少させる一方で、ビームインデックスマップに記憶された情報が実際の通信環境情報をある程度反映できるため、提供されるビームの正確性及び環境適応性を保証している。
【0028】
これにより、本発明は、オフラインレイトレーシングシミュレーション計算、実地測定又はオンラインリアルタイム測定などの方法により、実際の地理的環境及び信号伝搬環境に基づく最適なビーム情報を取得し、位置情報をインデックスとする最適なビームデータベースを構築する、ビームインデックスマップに基づくインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法を提供する。構築されたビームインデックスマップに基づいて提供される新型のインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法は、北斗衛星導航系統、GPS、5G、レーザレーダなどの測位システムを利用してユーザ位置情報を取得し、ビームインデックスマップによって当該位置における候補ビームペアセットを取得し、候補ビームペアセットにおける異なるビームペアの出現回数に基づいてビームを直接選択するか、又は候補ビームペアセットに対してビーム走査を行うことにより、チャネルトレーニング不要又は軽量チャネルトレーニングのビーム選択を実現しており、インテリジェント反射面の通信ビームを選択するオーバーヘッド及び複雑性を低減し、有効な通信速度を向上させる。
【0029】
図3に示すフローチャートに示すように、本発明に係るインテリジェント反射面の通信ビーム選択方法は、以下の主なステップa)~h)を含む。
【0030】
ステップa)では、地理的環境情報及び信号伝搬環境情報に基づいて、オフラインレイトレーシングシミュレーション計算、実地測定及びオンライン測定の方法により、ユーザ位置情報に対応する基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームペアを取得し、ビームインデックスマップを構築する。
【0031】
ステップb)では、基地局側がユーザ側と通信する必要がある場合、GPS、北斗衛星導航系統、セルラーネットワーク、レーザレーダなどの測位システムによってユーザのリアルタイムの地理的位置情報を取得する。
【0032】
ステップc)では、ユーザ位置情報に基づいて、ビームインデックスマップからユーザ位置に最も近いK個の測定点の位置を見つけ、ビームインデックスマップにおけるK個の測定点の位置に対応する最適なビームペアを利用して候補ビームペアセットを構築する。
【0033】
ステップd)では、候補ビームペアセットにおいて出現回数が最も多いビームペアを当該ユーザ通信用のビームペアとして直接選択し、候補ビームペアセットにおいて出現回数が最も多くかつ等しいビームペアが複数ある場合、異なるビームペアに対応する測定点の位置から当該ユーザ位置までの距離の逆数の和を計算し、対応する距離の逆数の和が最も大きいビームペアを当該ユーザ通信用のビームペアとして選択する。
【0034】
ステップe)では、基地局側とインテリジェント反射面側は、候補ビームペアセットに対してビーム走査を行い、ユーザが受信した信号対雑音比の大きさに基づいて最適なビームペアを選択する。
【0035】
ステップf)では、基地局側とインテリジェント反射面側は、次の時間長がtである時間内に、ステップd)又はe)で得られた最適なビームペアインデックスに対応するビームペアを使用してユーザと通信する。
【0036】
ステップg)では、時間tが終了すると、基地局側又はユーザ側は、通信が終了したか否かを判断し、通信が終了していれば、当該プロセスは終了し、通信が継続していれば、通信が終了するまでステップb)~g)を繰り返す。
【0037】
ステップh)では、マップの使用時間長が制限時間Tを超えるか、又はマップに対応する実際の地理的環境もしくは信号伝搬環境に大きな変化が生じた場合、ステップa)の操作を実行してマップを更新する。
【0038】
当該ビーム選択方法は、ユーザ側の位置情報を入力とし、当該位置に対応する基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームペアを出力とし、従来のGPS、北斗衛星導航系統、セルラーネットワーク、レーザレーダなどの測位技術及び開発中の他の測位技術は、いずれもユーザ側の位置情報の取得に適用することができる。
【0039】
当該ビームインデックスマップは、地理的環境情報及び信号伝搬環境情報に基づいて、実際の信号伝搬環境に注目し、オフラインレイトレーシングシミュレーション計算、実地測定及びオンライン測定などの方法により、ユーザ位置情報に対応する基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームペアを取得し、ビームインデックスマップを構築する。
【0040】
基地局側のアンテナ配置、インテリジェント反射面の反射ユニットの配置、天気状況、タスクの要件などに基づいて、同一サービスエリアの複数種のビームインデックスマップを構築することができ、実際の通信シーンにおいて、異なる基地局側とインテリジェント反射面側の配置、天候状態、タスクの要件などに基づいて、異なる種類のビームインデックスマップを呼び出すことにより、ビームインデックスマップの適用性と正確性を向上させる。
【0041】
当該ビームインデックスマップは、位置情報に基づく基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームインデックスを記憶するデータベースを構成する。ビームインデックスマップのサービスエリアに大きな環境変化の発生を監視したとき、ステップa)を実行してマップを更新する。基地局側とユーザ側が厳重に遮断されるシーン、即ち、基地局側が主にインテリジェント反射面を介してユーザ側と通信する場合について、基地局とインテリジェント反射面との間のチャネルは、インテリジェント反射面とユーザとの間のチャネルよりも変化が遅いため、低い周波数で基地局側の最適なビームを更新し、高い周波数でインテリジェント反射面側の最適なビームを更新することができる。
【0042】
ビームインデックスマップにおける各測定点の位置に対して、異なる時間に異なる最適なビームペアが存在する可能性があり、複数の最適なビームペアを記憶することにより、環境変化に対する適応性をある程度向上させることができる。
【0043】
各ユーザ位置の候補ビームペアセットの大きさKは、選択可能なビームペアの数を決定するだけでなく、後続のビーム選択過程における計算及びトレーニングのオーバーヘッドに関係する。環境変化が遅い又は機器の処理性能が限られている場合は、小さいK値を選択し、環境変化が速い又は機器の処理性能が優れている場合は、大きいK値を選択することができる。
【0044】
ステップd)において、異なるビームペアの出現回数に基づいて基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームペアを直接選択する方法は、追加のトレーニングオーバーヘッドを必要とせず、信号伝搬環境が安定するシーンに適用される。ステップe)において、狭い範囲のビーム走査によって基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームペアを選択する方法は、軽量トレーニングオーバーヘッドを必要とし、信号伝搬環境の変化が速いシーンに適用される。
【0045】
ステップd)又はe)において、ユーザ位置情報に基づいてビームインデックスマップによってオンラインでリアルタイムに取得された基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームペアは、マップ構築更新システムにオンラインでリアルタイムにフィードバックされてもよいし、まず基地局側、ユーザ側にバッファリングされ、適切な時期又は一定のデータ量に達してから、マップ構築更新システムにオフラインでフィードバックされてもよい。
【0046】
前記方法は、単一のユーザ、単一のインテリジェント反射面の簡単なシーンに適用されるだけでなく、複数のユーザ、複数のインテリジェント反射面の複雑なシーンにも適用され、異なるシーンに応じて異なるタイプのビームインデックスマップを選択し、さらに基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームペアを選択することができる。
【0047】
図1は、例示的な実施例に示す本発明に係るビームインデックスマップのデータソース及び構築方法を示す。
【0048】
図2は、例示的な実施例に示すビームインデックスマップに基づいてインテリジェント反射面の通信ビームを選択する実際のシーン及び効果を示す図である。異なるユーザ位置に応じて、基地局側とインテリジェント反射面側は、ビームインデックスマップに基づいて異なる最適なビームを選択してユーザと通信する。
【0049】
ビームインデックスマップ構築段階において、Qは測定点位置セットを表し、qは各測定点位置を表し、Fは位置qに対応する基地局側の最適なビームインデックスを表し、Vは位置qに対応するインテリジェント反射面側の最適なビームインデックスを表す。情報取得段階において、qは取得されたユーザ位置情報を表す。ビーム選択段階において、Wは候補ビームペアセットを表し、Kは候補ビームペアセットにおける要素の数を表す。tはチャネルのコヒーレントタイムスロットを表し、Tはビームインデックスマップの使用周期を表す。
【0050】
以上の定義に基づいて、提案された方法の例示的な実施例の具体的な実現ステップは、以下のようにまとめられる。
【0051】
(1)ビームインデックスマップ構築段階。まず、ビームインデックスマップにおける測定点の位置セットQ=[q、q、…、q]を決定し、次に、Qの各位置q(i=1、2、…、N)に対して、オフラインの実地測定、レイトレーシングシミュレーション又はオンライン測定などの方法を用いて、対応する基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームペアを取得し、コードブックにおけるそれらのインデックス(F、V)を記憶してデータベースを構成する。
【0052】
(2)情報取得段階。通信前に、基地局側がユーザ側を測位することによりユーザ側の位置情報qを取得するか、又はユーザ側がGPS、北斗衛星導航系統、セルラーネットワーク、レーザレーダなどの測位システムによって位置情報を取得して、当該位置情報qを基地局側に送信する。
【0053】
(3)ビームインデックスマップ選択段階。基地局側は、機器の配置、天候要因、タスクの要件などの要素を分析することにより、対応するビームインデックスマップを選択する。
【0054】
(4)候補ビームペアセット構成段階。基地局側は、(2)で取得されたユーザ側の位置情報qに基づいて、ビームインデックスマップにおいてqに最も近いK個の測定点及びそれらに対応する基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームペアインデックスを見つけ、候補ビームペアセットWを構成する。
【0055】
(5)ビーム選択段階。候補ビームペアセットWにおける異なるビームペアの出現回数を計算し、出現回数が最も多いビームペアを当該ユーザと通信するビームペアとして選択する。候補ビームペアセットWにおいて出現回数が最も多くかつ等しいビームペアが複数ある場合、各ビームペアに対応する測定点位置からqまでの距離の逆数の和をそれぞれ計算し、そのうちの最大値に対応するビームペアを当該ユーザと通信するビームペアとして選択する。
【0056】
(6)ビーム選択段階。基地局側とインテリジェント反射面側は、候補ビームペアセットWに基づいて、そのうちの異なるビームペアをトラバースし、ユーザ側が受信した信号対雑音比の大きさに基づいて最適なビームペアを当該ユーザと通信するビームペアとして選択する。
【0057】
(7)通信段階。次の時間帯t内に、基地局側及びインテリジェント反射面側は、(5)又は(6)で得られた最適なビームペアを使用してユーザ側と通信する。
【0058】
(8)ビーム再選択段階。時間tの終了後、基地局側又はユーザ側は、通信を継続する必要があるか否かを判断し、通信を継続する必要がない場合は、通信過程全体を終了する。通信を継続する必要がある場合は、通信が終了するまでステップ(2)~(7)を繰り返す。
【0059】
(9)マップ更新段階。マップの使用時間が使用周期Tに達したか、又はマップのサービスエリアの環境に大きな変化が生じたことを監視した場合、ステップ(1)を実行してマップを更新する。
【0060】
上記方法において、オフライン実地測定、レイトレーシングシミュレーション及びオンラインリアルタイム測定などの方法により、異なる測定点位置に対応する基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームを取得し、ビームインデックスマップを構築する(ステップ(1))。当該ビームインデックスマップに基づいて、チャネルトレーニング不要又は軽量チャネルトレーニングのビーム選択方法により、そのサービス範囲内の全ての空間位置に対して基地局側及びインテリジェント反射面側の最適なビームインデックスを提供することができる(ステップ(2)~(7))。本方法は、その精度と持続可能性を向上させるために、ビームインデックスマップの更新をさらに含む(ステップ(9))。
【0061】
以上より、本発明は、環境をセンシングするビームインデックスマップを構築して使用し、日々高精度化かつ多様化する測位方法を組み合わせることにより、インテリジェント反射面の通信チャネルの推定が難しく、従来のビーム走査方法におけるトレーニングオーバーヘッドが大きく、トレーニングプロセスが煩雑であるなどの課題を解決するとともに、リアルタイムビーム選択プロセスを簡略化することにより、チャネルトレーニング不要又は軽量チャネルトレーニングの環境センシング通信を実現し、有効な通信速度を大幅に向上させる。
【0062】
以上の説明は、本発明の一部の実施形態に過ぎず、なお、当業者であれば本発明の原理から逸脱することなく、さらに複数の改善及び修正を行うことができ、これらの改善及び修正も、本発明の保護範囲内にあると考えられる。
図1
図2
図3