(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
F01M 11/10 20060101AFI20240701BHJP
G01M 13/04 20190101ALI20240701BHJP
G01M 15/04 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
F01M11/10 Z
G01M13/04
G01M15/04
(21)【出願番号】P 2024009273
(22)【出願日】2024-01-25
【審査請求日】2024-01-25
(31)【優先権主張番号】202310404676.6
(32)【優先日】2023-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517141650
【氏名又は名称】哈爾浜工程大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145470
【氏名又は名称】藤井 健一
(72)【発明者】
【氏名】趙濱
(72)【発明者】
【氏名】郭懐謙
(72)【発明者】
【氏名】李玩幽
(72)【発明者】
【氏名】盧熙群
(72)【発明者】
【氏名】馬旋
(72)【発明者】
【氏名】史修江
(72)【発明者】
【氏名】率志君
(72)【発明者】
【氏名】郭宜斌
(72)【発明者】
【氏名】王東華
(72)【発明者】
【氏名】徐含章
(72)【発明者】
【氏名】李宏亮
(72)【発明者】
【氏名】董烈▲い▼
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第114611433(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114611226(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113503197(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113779720(CN,A)
【文献】特開平05-306743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/10
G01M 15/04
G01M 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムの回転に伴って回転するローラの内周面と、プランジャーに固定配置されるとともに、前記ローラに挿通され固定具となるローラピンの外周面との間に配置される浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法であって、
前記二層油膜潤滑は、前記浮動ブッシュと、前記ローラピンの間の層に形成される浮動ブッシュ内層油膜の油膜潤滑と、前記浮動ブッシュと、前記ローラの間の層に形成される浮動ブッシュ外層油膜の油膜潤滑を示し、
カムの回転中に、各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さ及び
浮動ブッシュ外層油膜厚さを決定し、及び各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位を決定するステップと、
前記各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位に基づいてそれぞれローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡を決定するステップと、
前記ローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡が共に首尾閉鎖している場合、前記各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さと
浮動ブッシュ外層油膜厚さに基づいてそれぞれ浮動ブッシュ内層油膜の最小値と
浮動ブッシュ外層油膜厚さの最小値を決定するステップと、
浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値と
浮動ブッシュ外層油膜厚さの最小値の二つのうちどちらかがプリセット油膜厚さの閾値より小さい場合、二層油膜潤滑に異常があることを判定するステップと、を含み、
ここで、各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さ及び
浮動ブッシュ外層油膜厚さを決定するのは、
ローラ、浮動ブッシュ、ローラピンを備える第2の複合構造の構造パラメータに基づいて浮動ブッシュの現在時刻における
浮動ブッシュ内層油膜厚さと
浮動ブッシュ外層油膜厚さを計算するステップと、
前記ローラの変位及び浮動ブッシュの変位に基づいて現在時刻におけるローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡を決定し、ローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡の二つのうちどちらかが首尾閉鎖していないと、次の時刻における第2の複合構造の構造パラメータを取得するステップと、
前記次の時刻における第2の複合構造の構造パラメータに基づいて次の時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さと
浮動ブッシュ外層油膜厚さを決定するステップと、を含むことを特徴とする浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法。
【請求項2】
各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さ及び外層油膜厚さを決定するのは、具体的には、
カム及びローラを備える第1の複合構造の構造パラメータを取得するステップと、
前記第1の複合構造の構造パラメータに基づいてローラの時変回転数を計算するステップと、
ローラ、浮動ブッシュ、ローラピンを備える第2の複合構造の構造パラメータを取得するステップと、
前記第2の複合構造の構造パラメータに基づいて浮動ブッシュの現在時刻における内層油膜厚さ及び外層油膜厚さを計算するステップと、
前記ローラ時変回転数、内層油膜厚さと外層油膜厚さに基づいて内外二層油膜の平均Reynolds方程式を解き、圧力が収束すると、現在時刻における浮動ブッシュ内層油膜圧力及び外層油膜圧力を得るステップと、
前記内層油膜圧力及び外層油膜圧力に基づいてそれぞれ浮動ブッシュ内層弾性変形及び外層弾性変形を決定するステップと、
前記内層弾性変形及び外層弾性変形を油膜厚さ方程式に代入し、弾性変形が収束し、浮動ブッシュ内外層が熱平衡条件に達すると、前記現在時刻における浮動ブッシュ内層油膜圧力及び外層油膜圧力を出力するステップと、
現在時刻におけるローラの変位と浮動ブッシュの変位を決定するステップと、
前記ローラの変位と浮動ブッシュの変位に基づいて現在時刻におけるローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡を決定するステップと、
ローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡の二つのうちどちらかが首尾閉鎖していないと、次の時刻における第2の複合構造の構造パラメータを取得するステップと、
前記次の時刻における第2の複合構造の構造パラメータに基づいて次の時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さと外層油膜厚さを決定するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法。
【請求項3】
前記第1の複合構造の構造パラメータに基づいてローラの時変回転数を計算するのは、具体的には、
カムプロファイルのパラメータに基づいてカムの圧力角とカムの曲率半径を計算するステップと、
前記カムの圧力角とカムの曲率半径に基づいてカムの表面速度を計算するステップと、
前記カムの表面速度に基づいてローラの表面速度を計算するステップと、
前記ローラの表面速度に基づいてローラの時変回転数を計算するステップと、を含むことを特徴とする請求項2に記載の浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法。
【請求項4】
各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位を決定するのは、具体的には、
カムとローラを備える第1の複合構造の構造パラメータを取得するステップと、
前記第1の複合構造の構造パラメータに基づいてローラ時変荷重を計算するステップと、
前記ローラ時変荷重、ローラと浮動ブッシュの間の運動学方程式に基づいて各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位を決定するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法。
【請求項5】
前記ローラ時変荷重は、ローラに対するばねの作用力、慣性力、プランジャー油圧を含むことを特徴とする請求項4に記載の浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法。
【請求項6】
前記プリセット油膜厚さの閾値が0.8マイクロメートル~1.2マイクロメートルの範囲内の任意値であることを特徴とする請求項1に記載の浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法。
【請求項7】
カムの回転に伴って回転するローラの内周面と、プランジャーに固定配置されるとともに、前記ローラに挿通され固定具となるローラピンの外周面との間に配置される浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析システムであって、
前記二層油膜潤滑は、前記浮動ブッシュと、前記ローラピンの間の層に形成される浮動ブッシュ内層油膜の油膜潤滑と、前記浮動ブッシュと、前記ローラの間の層に形成される浮動ブッシュ外層油膜の油膜潤滑を示し、
カムの回転中に、各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さ及び
浮動ブッシュ外層油膜厚さと、各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位を決定するための第1パラメータ決定モジュールと、
前記各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位に基づいてそれぞれローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡を決定するための運動軌跡決定モジュールと、
前記ローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡が共に首尾閉鎖しているときに、前記各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さ及び
浮動ブッシュ外層油膜厚さに基づいてそれぞれ浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値と
浮動ブッシュ外層油膜厚さの最小値を決定するための第2パラメータ決定モジュールと、
浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値と
浮動ブッシュ外層油膜厚さの最小値の二つのうちどちらかがプリセット油膜厚さの閾値より小さい場合に、二層油膜潤滑に異常があることを判定するための二層油膜潤滑分析モジュールと、を含み、
ここで、各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さ及び
浮動ブッシュ外層油膜厚さを決定するのは、具体的には、
ローラ、浮動ブッシュ、ローラピンを備える第2の複合構造の構造パラメータに基づいて浮動ブッシュの現在時刻における
浮動ブッシュ内層油膜厚さと
浮動ブッシュ外層油膜厚さを計算するステップと、
前記ローラの変位及び浮動ブッシュの変位に基づいて現在時刻におけるローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡を決定し、ローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡の二つのうちどちらかが首尾閉鎖していないと、次の時刻における第2の複合構造の構造パラメータを取得するステップと、
前記次の時刻における第2の複合構造の構造パラメータに基づいて次の時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さと
浮動ブッシュ外層油膜厚さを決定するステップと、を含むことを特徴とする浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析システム。
【請求項8】
メモリ、プロセッサー、および前記メモリに記憶されておりかつ前記プロセッサーで実行可能なコンピュータープログラムを含む電子機器であって、
前記プロセッサーは、前記プログラムを実行する際に、請求項1~6のいずれか1項に記載の浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法を実現することを特徴とする電子機器。
【請求項9】
コンピュータープログラムが記憶されている非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムがプロセッサーによって実行される際に、請求項1~6のいずれか1項に記載の浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法を実現することを特徴とする非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はディーゼルエンジンの技術分野に関し、特に浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ローラー浮動ブッシューローラピンから構成された構造は、ディーゼルエンジン給油機構における重要な部分として、その潤滑性能はディーゼルエンジンの信頼性と耐用年数に直接影響する。作業中、カムはローラを回転させ、ローラピンは固定具であるのに対して、ブッシュは浮動し、浮動ブッシュの内外は二層耐荷重油膜を形成でき、耐荷重能が強いとともに、浮動ブッシュは一定の回転数を有し、ローラとローラピンの間の相対移動速度を低下させることにより、摩耗散逸パワーと摩擦熱を低下させることができる。そのため、従来のディーゼルエンジン給油機構の比較的典型的な低速高負荷の場合、単層油膜潤滑のローラ?ローラピン構造に比べて、ローラー浮動ブッシューローラピンの構造は耐荷重能が強く、摩擦温度上昇が小さいなどの利点がある。しかし、実際の作業では、浮動ブッシュに異常なロッキングや、摩損などの潤滑故障が発生し、給油機構の信頼性に影響を与えることがよくあるが、現在、給油機構ローラー浮動ブッシューローラピンの潤滑状態に対して安定したモードに認識されているいため、より完全なローラー浮動ブッシューローラピンの瞬間的な潤滑モデルを構築し、カムーローラの運動学及び運動学関係と、ローラー浮動ブッシューローラピンの瞬間的な潤滑とを結合し、それに基づいてより正確なローラー浮動ブッシューローラピンの二層油膜潤滑分析を実現する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
従来技術に存在する問題に対して、本願は浮動ブッシュの二層油膜潤滑状態に対してより正確な分析判断を行うことができる浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法及びシステムを提供する。
【0004】
第1態様として、本願は、浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法を提供し、
カムの回転中に、各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さ及び外層油膜厚さを決定し、及び各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位を決定するステップと、
前記各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位に基づいてそれぞれローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡を決定するステップと、
前記ローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡が共に首尾閉鎖している場合、前記各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さと外層油膜厚さに基づいてそれぞれ浮動ブッシュ内層油膜の最小値と外層油膜厚さの最小値を決定するステップと、
浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値と外層油膜厚さの最小値の二つのうちどちらかがプリセット油膜厚さの閾値より小さい場合、二層油膜潤滑に異常があることを判定するステップと、を含む。
【0005】
好ましくは、カム及びローラを備える第1の複合構造の構造パラメータを取得するステップと、
前記第1の複合構造の構造パラメータに基づいてローラの時変回転数を計算するステップと、
ローラ、浮動ブッシュ、ローラピンを備える第2の複合構造の構造パラメータを取得するステップと、
前記第2の複合構造の構造パラメータに基づいて浮動ブッシュの現在時刻における内層油膜厚さ及び外層油膜厚さを計算するステップと、
前記ローラ時変回転数、内層油膜厚さと外層油膜厚さに基づいて内外二層油膜の平均Reynolds方程式を解き、圧力が収束すると、現在時刻における浮動ブッシュ内層油膜圧力及び外層油膜圧力を得るステップと、
前記内層油膜圧力及び外層油膜圧力に基づいてそれぞれ浮動ブッシュ内層弾性変形及び外層弾性変形を決定するステップと、
前記内層弾性変形及び外層弾性変形を油膜厚さ方程式に代入し、弾性変形が収束し、かつ浮動ブッシュ内外層が熱平衡条件に達すると、前記現在時刻における浮動ブッシュ内層油膜圧力及び外層油膜圧力を出力するステップと、
現在時刻におけるローラの変位と浮動ブッシュの変位を決定するステップと、
前記ローラの変位と浮動ブッシュの変位に基づいて現在時刻におけるローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡を決定するステップと、
ローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡の二つのうちどちらかが首尾閉鎖していないと、次の時刻における第2の複合構造の構造パラメータを取得するステップと、
前記次の時刻における第2の複合構造の構造パラメータに基づいて次の時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さと外層油膜厚さを決定するステップと、を含む。
【0006】
好ましくは、前記第1の複合構造の構造パラメータに基づいてローラの時変回転数を計算するのは、具体的には、
カムプロファイルのパラメータに基づいてカムの圧力角とカムの曲率半径を計算するステップと、
前記カムの圧力角とカムの曲率半径に基づいてカムの表面速度を計算するステップと、
前記カムの表面速度に基づいてローラの表面速度を計算するステップと、
前記ローラの表面速度に基づいてローラの時変回転数を計算するステップと、を含む。
【0007】
好ましくは、各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位を決定するのは、具体的には、
カムとローラを備える第1の複合構造の構造パラメータを取得するステップと、
前記第1の複合構造の構造パラメータに基づいてローラ時変荷重を計算するステップと、
前記ローラ時変荷重、ローラと浮動ブッシュの間の運動学方程式及び浮動ブッシュの回転数方程式に基づいて各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位を決定するステップと、を含む。
【0008】
好ましくは、前記ローラ時変荷重は、ローラに対するばねの作用力、慣性力、プランジャー油圧を含む。
【0009】
好ましくは、前記プリセット油膜厚さの閾値が0.8マイクロメートル~1.2マイクロメートルの範囲内の任意値である。
【0010】
第2態様として、本願は浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析システムを提供し、
カムの回転中に、各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さ及び外層油膜厚さと、各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位を決定するための第1パラメータ決定モジュールと、
前記各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位に基づいてそれぞれローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡を決定するための運動軌跡決定モジュールと、
前記ローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡が共に首尾閉鎖しているときに、前記各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さ及び外層油膜厚さに基づいてそれぞれ浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値と外層油膜厚さの最小値を決定するための第2パラメータ決定モジュールと、
浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値と外層油膜厚さの最小値の二つのうちどちらかがプリセット油膜厚さの閾値より小さい場合に、二層油膜潤滑に異常があることを判定するための二層油膜潤滑分析モジュールと、を含む。
【0011】
第3態様として、本願は電子機器を提供し、メモリ、プロセッサー、および前記メモリに記憶されておりかつ前記プロセッサーで実行可能なコンピュータープログラムを含み、前記プロセッサーは、前記プログラムを実行する際に、前記浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法を実現する。
【0012】
第4態様として、本願は非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を提供し、該非一時的なコンピュータ可読記憶媒体にはコンピュータープログラムが記憶されており、前記コンピュータプログラムがプロセッサーによって実行される際に、前記浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法を実現する。
【発明の効果】
【0013】
本願はカムの回転中に、各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さ及び外層油膜厚さを決定し、及び各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位を決定し、各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位に基づいてそれぞれローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡を決定し、ローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡が共に首尾閉鎖している場合、各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さと外層油膜厚さに基づいてそれぞれ浮動ブッシュ内層油膜の最小値と外層油膜厚さの最小値を決定し、浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値と外層油膜厚さの最小値の二つのうちどちらかがプリセット油膜厚さの閾値より小さい場合、二層油膜潤滑に異常があることを判定する。すなわち、本願はカムとローラとの間の運動学及び運動学関係を利用し、ローラ、浮動ブッシュとローラピンとの間の瞬間的な(各時刻)潤滑パラメータ(油膜厚さの相関パラメータ)を結合して浮動ブッシュの二層油膜潤滑状態のリアルタイム異常分析を行い、より正確な浮動ブッシュ二層油膜潤滑異常分析判断を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本願または先行技術における技術的態様をより明確に説明するために、以下に実施形態または先行技術の説明において使用する必要がある図面を簡単に説明する。明らかに、以下の説明における図面は本願のいくつかの実施形態であり、当業者にとっては、創造的な労働を払わずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【
図1】本願の浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法の第1のフローチャートである。
【
図2】本願の浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法の第2のフローチャートである。
【
図3】本願のカムとローラとの間の動力学モデルの概略図である。
【
図4】本願のカムとローラとの間の運動学モデルの概略図である。
【
図5】本願の浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析システムのブロック図である。
【
図6】本願により提供される電子機器の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願の目的、請求項及び利点をより明確にするために、以下に、本願における請求項を、本願における請求項に関連して明確に、完全に説明する。明らかに、説明された実施形態は、すべての実施形態ではなく、本願の一部の実施形態である。本願における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を行うことなく取得した他のすべての実施例は、本願の保護の範囲に属する。
【0016】
次に、
図1から
図4に関連して、本願の浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法を説明する。
図1に示すように、浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法であって、下記のステップを含み、
ステップ101、カムの回転中に、各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さ及び外層油膜厚さを決定し、及び各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位を決定する。
【0017】
ここで、各時刻において時刻ごとに一定の時間ステップが間隔され、時間ステップはプリセット値である。各時刻における第1の複合構造(カムとローラを備える)の構造パラメータに基づいて、各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位を決定する。現在時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さと外層油膜厚さに基づいて内外二層油膜の平均Reynolds方程式を解き、圧力が収束すると、現在時刻における浮動ブッシュ内層油膜圧力及び外層油膜圧力を得て、内層油膜圧力及び外層油膜圧力に基づいてそれぞれ浮動ブッシュ内層弾性変形及び外層弾性変形を決定し、内層弾性変形及び外層弾性変形を油膜厚さ方程式に代入し、弾性変形が収束し、かつ浮動ブッシュ内外層が熱平衡条件に達すると、現在時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さ及び外層油膜さを得た後、現在時刻におけるローラの変位と浮動ブッシュの変位を計算し、現在時刻におけるローラの変位と浮動ブッシュの変位に基づいて現在時刻におけるローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡を決定し、ローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡の二つのうちどちらかが首尾閉鎖していない場合、次の時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さと外層油膜厚さを決定し、このように類推して、各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さと外層油膜厚さを得る。
【0018】
ステップ102、前記各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位に基づいてそれぞれローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡を決定する。
【0019】
ステップ103、前記ローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡が共に首尾閉鎖している場合、前記各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さと外層油膜厚さに基づいてそれぞれ浮動ブッシュ内層油膜の最小値と外層油膜厚さの最小値を決定する。
【0020】
ステップ104、浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値と外層油膜厚さの最小値の二つのうちどちらかがプリセット油膜厚さの閾値より小さい場合、二層油膜潤滑に異常があることを判定する。
【0021】
カムの回転がローラの回転を動かすことができるため、かつローラ、浮動ブッシュ、ローラピンは1つの連動機構を構成したことにより、本願はカムの回転中に、各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さと外層油膜厚さを決定し、各時刻におけるローラの変位と浮動ブッシュの変位を決定することができる。前記各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位に基づいてそれぞれローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡を決定する。前記ローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡が共に首尾閉鎖している場合、前記各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さと外層油膜厚さに基づいてそれぞれ浮動ブッシュ内層油膜の最小値と外層油膜厚さの最小値を決定する。浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値と外層油膜厚さの最小値の二つのうちどちらかがプリセット油膜厚さの閾値より小さい場合、二層油膜潤滑に異常があることを判定する。即ち、本願はカムとローラとの間の運動学及び運動学関係を利用し、ローラ、浮動ブッシュとローラピンとの間の一時的な(各時刻)潤滑パラメータ(圧力及び温度の相関パラメータ)を結合して浮動ブッシュの二層油膜潤滑状態のリアルタイム異常分析を行い、より正確な浮動ブッシュの二層油膜潤滑異常分析判断を実現することができる。
【0022】
1つの具体的な実施例において、上記ステップ101~104の具体的な計算過程は
図2に示すように、主にカムとローラ間の動力学と運動学の計算過程と、ローラ、浮動ブッシュとローラピンに基づく二層油膜瞬間的な潤滑分析過程2つの部分を含む。
【0023】
まず、動力学と運動学の計算過程は、ローラ時変荷重の計算とローラの時変回転数の計算を含む。
【0024】
ローラ時変荷重に対して、力の合成作用に基づいて計算する必要がある。
【0025】
1つの具体的な実施例において、カムとローラとの間の動力学モデルは
図3に示すように、ローラ時変荷重の具体的な計算過程は以下を含み、
機構を剛体とし、ローラにかかる時変荷重Fは、数1によって表される。
【0026】
【0027】
式中において、FCはばね復元力がローラに換算された量であり、即ちローラに対するばねの作用力である。
【0028】
【0029】
式中において、Foはばねのプリロード(N)であり、c’はばねの剛性(N/m)であり、s(α)はローラの揚程(m)であり、αは揚程角である。
【0030】
【0031】
式中において、ω1はカムの回転数(rad/s)であり、Mはカムに駆動される質量(kg)であり、その計算式は数4によって表される。
【0032】
【0033】
式中において、Maはばねの質量(kg)であり、Mbはカム機構におけるプランジャばね、ローラ以外の関連部品の質量(例えば駆動されるラックなど)(kg)であり、Mcはプランジャばねの質量(kg)であり、Mdはローラの質量(kg)である。
【0034】
FPはプランジャー油圧であり、油圧の最小値と最大値が知られており、線形補間方法によりプランジャー油圧の変化状況を得ることができる。
【0035】
【0036】
式中において、dはプランジャーの直径(kg)であり、p1は最小油圧(MPa)であり、p2は最大油圧(MPa)であり、smaxはローラ揚程最大値である。
【0037】
ローラ時変回転数の計算については、まず第1の複合構造(カムとローラを備える)の構造パラメータ、運転モードなどのパラメータを取得した後、カムプロファイルのパラメータに基づいてカムの圧力角と曲率半径を計算し、さらにカムの表面速度を計算し、最後にカムとローラの間の2つの表面速度関係を用いてローラの表面速度を計算し、最後にローラの表面速度に基づいてローラ時変回転数を計算する。
【0038】
1つの具体的な実施形態において、カムとローラとの間の運動学モデルは
図4に示すように、
図4はカム機構におけるカムの曲率半径、圧力角などの運動学パラメータを示し、ローラ時変回転数の具体的な計算過程は以下式を含む。
【0039】
給油カムの曲率半径は、数6によって表される。
【0040】
【0041】
式中において、g(α)=R0+R2+s(α)、αは揚程角であり、R1はカムの曲率半径(m)であり、R0はカムの基礎円半径(m)であり、R2はローラ外輪半径(m)である。
【0042】
カムとローラペアの結合曲率半径は、数7によって表される。
【0043】
【0044】
第1の複合構造(カム及びローラを備える)の圧力角Φは、カムの回転角の変化に応じて異なり、数8によって表される。
【0045】
【0046】
式中において、eは偏心距離(m)であり、sはローラ揚程(m)である。
【0047】
カムとローラ両表面間の速度関係が数9に満足する。
【0048】
【0049】
ここで、u1、u2はそれぞれカム表面線速度、ローラ表面線速度であり、ω1はカム時変回転数(rad/s)であり、α0は揚程角であるため、ローラ時変回転数ω2は、数10によって表される。
【0050】
【0051】
次は、ローラ、浮動ブッシュ、ローラピンに基づく二層油膜潤滑分析過程は、以下の通り、
第2の複合構造(ローラ、浮動ブッシュ、ローラピンを備える)の構造パラメータ、初期仮定位置及び初期熱変形量、弾性変形量に基づいて初期時刻(t=1)における浮動ブッシュ内外層油膜厚さを計算する。
【0052】
1つの具体的な実施形態において、浮動ブッシュ内、外層油膜厚さの方程式は、それぞれ数11、数12によって表される。
【0053】
【0054】
【0055】
式中において、h1、hoはそれぞれ浮動ブッシュ内、外層油膜厚さであり、Ri、Roはそれぞれ浮動ブッシュ内、外輪半径であり、Rb外ローラ内輪半径であり、εi、εoはそれぞれ浮動ブッシュ内、外層偏心率であり、Φi、Φoそれぞれ浮動ブッシュ内、外層偏位角であり、Rjはローラピン半径であり、δTi、δToはそれぞれ内、外層の熱変形によるギャップ変化量であり、δPi、δPoはそれぞれ浮動ブッシュ内、外層弾性変形量である。
【0056】
浮動ブッシュ内、外層油膜厚さを得た上で、得られたローラ時変回転数を基礎として、有限差分法を用いて内、平均Reynolds方程式を求め、圧力収束が満たされるまで循環反復を行い、内、外層油膜圧力を得た。ここで、その中で、循環反復過程において、圧力境界条件はReynolds境界条件を採用する。
【0057】
1つの具体的な実施形態において、内、外二層油膜の平均Reynolds方程式はそれぞれ数13、数14によって表される。
【0058】
【0059】
【0060】
式中において、θは周方向座標であり、yは軸方向座標であり、pi、poはそれぞれ浮動ブッシュ内、外層油膜圧力であり、ωrは浮動ブッシュの回転数であり、ω2はローラ回転数であり、φx、φyは圧力流量因子であり、φcは接触因子であり、φsはせん断流量因子であり、σi、σoはそれぞれ内、外層表面の総合粗さであり、pは潤滑油の密度であり、μi、μoそれぞれ粘度の温度依存性を考慮した内、外層潤滑油の粘度である。
【0061】
変換行列法を用いて、内、外層油膜圧力に基づいて浮動ブッシュ内、外層の各ノードの弾性変形を対応に計算し、内、外層弾性変形量を浮動ブッシュ内、外層油膜厚さ方程式にそれぞれ代入し、弾性変形収束判断を行い、収束条件を満たすと循環から飛び出し、収束条件を満たさないと弾性変形量を更新し、それまでの油膜圧力計算を繰り返す。
【0062】
1つの具体的な実施形態において、変換行列法を用いて、浮動ブッシュ内、外層の各ノードの弾性変形を計算し、それぞれ数15、数16によって表される。
【0063】
【0064】
【0065】
ここで、,δpi(θ,y)、δpo(θ,y)はそれぞれ浮動ブッシュ内、外層がノード(θ ,y)における弾性変形量であり、pi(θ ,y)、po(θ ,y)はそれぞれ浮動ブッシュ内、外層がノード(θ ,y)における油膜圧力であり、次式(数17)は、浮動ブッシュ内、外層の変換行列であり、即ち表面(θ′,y’)ノードに単位圧力をかかり、(θ ,y)ノードに発生した弾性変形である。
【0066】
【0067】
内、外層油膜熱平衡方程式を用いて内、外層油膜平衡温度を計算し、すなわち摩擦熱と端放熱が等しい条件を満たすかどうかを判断し、満たさなければ、内、外層油膜温度を更新し、さらに更新後の内、外層油膜温度に基づいて内、外層熱変形量を計算し、初期熱変形量を更新する。満足すれば、ローラ時変荷重を基礎として、差分法を用いてローラ、浮動ブッシュ運動学方程式と浮動ブッシュ回転数方程式を解き、次の時刻におけるローラの変位、浮動ブッシュの変位と浮動ブッシュの回転数が得られる。
【0068】
各時刻が循環反復を行う場合、現在時刻における計算結果が判断条件を満たすと、現在時刻に一定の時間ステップを加えて、次の時刻を得る。各時刻間の間隔の時間ステップは固定され、時間ステップはプリセット値である。例えば、t=1の場合、内外膜の熱平衡条件を満たすと、t=1に一定の時間ステップを加えてt=2を得、t=2が内外膜熱平衡条件を満たす場合、t=2に一定の時間ステップを加えて、t=3を得て、このように類推する。
【0069】
1つの具体的な実施形態において、内、外層油膜の熱平衡方程式はそれぞれ数18、数19によって表される。
【0070】
【0071】
【0072】
式中において、cpは潤滑油の比熱容量であり、pは潤滑油の密度であり、ΔTi、ΔToはそれぞれ内、外層温度上昇であり、Qi、Qoはそれぞれ内、外層端の漏れ容量であり、計算式はそれぞれ数20、数21によって表される。
【0073】
【0074】
【0075】
式中において、y=Li、y=Loはそれぞれ浮動ブッシュ内層端側位置、外層端側位置を表す。
【0076】
ωi、ωoはそれぞれ内、外層摩擦損失であり、それぞれ数22、数23によって表される。
【0077】
【0078】
【0079】
1つの具体的な実施形態において、内、外層熱変形量は、それぞれ数24、数25によって表される。
【0080】
【0081】
【0082】
式において、δTiは内層熱変形量であり、δToは外層熱変形量であり、αJ、αR、αBはそれぞれローラピンの熱膨張係数、浮動ブッシュの熱膨張係数、ローラの熱膨張係数である。
【0083】
具体的な実施形態において、ローラ運動学方程式は、数26によって表される。
【0084】
【0085】
浮動ブッシュ運動学方程式は、数27によって表される。
【0086】
【0087】
浮動ブッシュの回転数方程式は、数28によって表される。
【0088】
【0089】
式中において、m1はローラ質量であり、m2は浮動ブッシュ質量であり、Fはローラが受ける時変荷重であり、Pxi、Pyiは浮動ブッシュ内層水平、垂直方向の油膜支持力であり、Pxo、Pyoは浮動ブッシュ外層水平、垂直方向油膜支持力であり、Γi、Γoはそれぞれ内、外層油膜摩擦トルクに対応し、I2は浮動ブッシュの慣性モーメントであり、次式(数29)は浮動ブッシュの角加速度であり、次式(数30)それぞれローラ水平、垂直加速度に対応し、次式(数31)はそれぞれ浮動ブッシュ水平、垂直加速度に対応する。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
各時刻におけるローラの変位、浮動ブッシュの変位及び浮動ブッシュの回転数に基づいてそれぞれローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡が得られ、ローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡が共に首尾閉鎖している場合、すなわち、軌跡が安定している場合、循環を飛び出し、浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値、外層油膜厚さの最小値を出力する。浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値と外層油膜厚さの最小値の二つのうちどちらかがプリセット油膜厚さの閾値より小さい場合、二層油膜潤滑に異常があることを判定する。ローラの運動軌跡と浮動ブッシュの運動軌跡の二つのうちどちらかが首尾閉鎖していないと、ローラの初期変位、浮動ブッシュの初期変位、浮動ブッシュの初期回転数を更新し、反復を継続する。
【0094】
1つの具体的な実施形態において、本願はまた、カム回転角が360°回転するごとに対応して得られたローラの運動軌跡と浮動ブッシュの運動軌跡が安定しているかどうかを判断することによって、循環を飛び出す必要があるかどうかを判断し、両者の軌跡が閉鎖している場合(すなわち安定している)、循環を飛び出し、浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値、外層油膜厚さの最小値を出力する。浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値と外層油膜厚さの最小値の二つのうちどちらかがプリセット油膜厚さの閾値より小さい場合、二層油膜潤滑に異常があることを判定する。ローラの運動軌跡と浮動ブッシュの運動軌跡の二つのうちどちらかが首尾閉鎖していないと、ローラの初期変位、浮動ブッシュの初期変位、浮動ブッシュの初期回転数を更新し、反復を継続する。
【0095】
具体的な実施形態において、プリセット油膜厚さの閾値が0.8マイクロメートル~1.2マイクロメートルの範囲内の任意値である。
【0096】
本願が提供する実施形態によれば、本願は以下のような技術的効果も開示し、
第1、本願は浮動ブッシュ内外層の熱弾性変形、及び浮動ブッシュ内外層の油膜混合潤滑効果を考慮し、より実際の潤滑状態に合致するので、これに基づいて二層油膜潤滑状態の判断を行うことはより正確である。
【0097】
第2、本願はカムとローラ間の運動学、動力学関係とローラ、浮動ブッシュ、ローラピン間の二層油膜過渡状態混合熱弾流潤滑を結合し、ローラの時変回転数と時変荷重を考慮し、各時刻のローラ、浮動ブッシュとローラピンの動作状態をより正確に反応させ、これに基づいて浮動ブッシュ二層油膜潤滑状態分析の正確さを高めることができる。
【0098】
次に、本願が提供する浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析システムについて説明する。以下に浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析システと、上述の浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法とは互いに対応して参照可能である。
【0099】
図5に示すように、浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析システムであり、
カムの回転中に、各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さ及び外層油膜厚さと、各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位を決定するための第1パラメータ決定モジュール501と、
前記各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位に基づいてそれぞれローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡を決定するための運動軌跡決定モジュール502と、
前記ローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡が共に首尾閉鎖しているときに、前記各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さ及び外層油膜厚さに基づいてそれぞれ浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値と外層油膜厚さの最小値を決定するための第2パラメータ決定モジュール503と、
浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値と外層油膜厚さの最小値の二つのうちどちらかがプリセット油膜厚さの閾値より小さい場合に、二層油膜潤滑に異常があることを判定するための二層油膜潤滑分析モジュール504と、を含む。
【0100】
図6は電子機器の実体構造の概略図を示し、
図6に示すように、該電子機器は、プロセッサー(processor)610、通信インターフェース(Communications Interface)620、メモリ(memory)830、および通信バス640を含み、ここで、プロセッサー610、通信インタフェース620、メモリ630は通信バス640を介して相互間の通信を完了する。プロセッサー610は、フローティングブッシュに基づく二層油膜潤滑解析方法を実行するためにメモリ630内の論理的な命令を呼び出すことができる。該方法は、
カムの回転中に、各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さ及び外層油膜厚さを決定し、及び各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位を決定するステップと、
前記各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位に基づいてそれぞれローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡を決定するステップと、
前記ローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡が共に首尾閉鎖している場合、前記各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さと外層油膜厚さに基づいてそれぞれ浮動ブッシュ内層油膜の最小値と外層油膜厚さの最小値を決定するステップと、
浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値と外層油膜厚さの最小値の二つのうちどちらかがプリセット油膜厚さの閾値より小さい場合、二層油膜潤滑に異常があることを判定するステップと、を含む。
【0101】
また、上述したメモリ630内の論理的な命令は、ソフトウェアシステムの形態で実現され、独立した製品として販売または使用される場合には、コンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよい。このような理解に基づいて、本願の技術的手段は、本質的に、または先行技術に寄与する部分、または技術的手段の部分を、記憶媒体に格納されたソフトウェア製品の形態で具現化することができ、1台のコンピュータ装置(パーソナルコンピュータ、サーバ、またはネットワーク装置などであってもよい)が本願の様々な実施形態に記載された方法のすべてまたは一部のステップを実行するためのいくつかの命令を含む。前述の記憶媒体は、Uディスク、外付けハードディスク、読み取り専用メモリ(ROM,Read?Only Memory)、ランダムアクセスメモリ(RAM,Random Access Memory)、磁気ディスクまたは光ディスクなど、プログラムコードを記憶できる各種媒体を含む。
【0102】
別の態様として、本願はコンピュータプログラム製品をさらに提供し、前記コンピュータプログラム製品はコンピュータプログラムを備え、コンピュータプログラムは非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に記録され、前記コンピュータプログラムがプロセッサーによって実行される際に、浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法を実行するためのコンピュータの実行が可能である。該方法は、
カムの回転中に、各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さ及び外層油膜厚さを決定し、及び各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位を決定するステップと、
前記各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位に基づいてそれぞれローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡を決定するステップと、
前記ローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡が共に首尾閉鎖している場合、前記各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さと外層油膜厚さに基づいてそれぞれ浮動ブッシュ内層油膜の最小値と外層油膜厚さの最小値を決定するステップと、
浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値と外層油膜厚さの最小値の二つのうちどちらかがプリセット油膜厚さの閾値より小さい場合、二層油膜潤滑に異常があることを判定するステップと、を含む。
【0103】
さらなる別の態様として、本願はコンピュータープログラムが記憶されている非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を提供し、前記コンピュータプログラムがプロセッサーによって実行される際に、浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法を実現する。該方法は、
カムの回転中に、各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さ及び外層油膜厚さを決定し、及び各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位を決定するステップと、
前記各時刻におけるローラの変位及び浮動ブッシュの変位に基づいてそれぞれローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡を決定するステップと、
前記ローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡が共に首尾閉鎖している場合、前記各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さと外層油膜厚さに基づいてそれぞれ浮動ブッシュ内層油膜の最小値と外層油膜厚さの最小値を決定するステップと、
浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値と外層油膜厚さの最小値の二つのうちどちらかがプリセット油膜厚さの閾値より小さい場合、二層油膜潤滑に異常があることを判定するステップと、を含む。
【0104】
上述した装置の実施形態は単なる例示であり、前記分離手段として説明された手段は物理的に分離されていてもよく、または物理的に分離されていなくてもよく、手段として表示された手段は物理的に分離されていなくてもよく、すなわち1つの場所にあってもよく、または複数のネットワーク要素に分散されていてもよい。本実施形態の目的は、実際の必要に応じてその一部または全部のモジュールを選択して実現することができる。当業者は、創造的な労働をすることなく、理解し、実施することができる。
【0105】
以上の実施形態の説明により、当業者は、各実施形態がソフトウェアに必要な汎用ハードウェアプラットフォームを追加することによって実現可能であり、もちろんハードウェアによっても実現可能であることを明らかにすることができる。このような理解に基づいて、上述の技術案は本質的に、あるいは先行技術に貢献した部分は、ROM/RAM、磁気ディスク、光ディスクなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶することができ、1台のコンピュータ装置(パーソナルコンピュータ、サーバ、またはネットワーク装置などであってもよい)が各実施形態または実施形態の一部に記載された方法を実行するためのいくつかの命令を含む。
【0106】
最後に、以上の実施例は、本発明の技術的態様を説明するためにのみ使用され、それを制限するのではなく、前述の実施形態を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者は、前述の各実施形態に記載された請求項を修正したり、その一部の技術的特徴を同等に置き換えたりすることができ、これらの修正または置換は、対応する技術案の本質を本願の各実施形態の技術案の精神と範囲から逸脱させるものではない。
【要約】 (修正有)
【課題】浮動ブッシュに基づく二層油膜潤滑分析方法及びシステムを提供する。
【解決手段】カムの回転中に、各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さ、外層油膜厚さ、ローラの変位及び浮動ブッシュの変位を決定するステップと、ローラの変位及び浮動ブッシュの変位に基づいてそれぞれローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡を決定するステップと、ローラの運動軌跡及び浮動ブッシュの運動軌跡が共に首尾閉鎖している場合、各時刻における浮動ブッシュ内層油膜厚さと外層油膜厚さに基づいてそれぞれ浮動ブッシュ内層油膜の最小値と外層油膜厚さの最小値を決定するステップと、浮動ブッシュ内層油膜厚さの最小値と外層油膜厚さの最小値の二つのうちどちらかがプリセット油膜厚さの閾値より小さい場合、二層油膜潤滑に異常があることを判定するステップと、を含む。本願はより正確な二層油膜潤滑異常分析を実現することができる。
【選択図】
図1