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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】配電機器調査システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20240701BHJP
   H02B 1/40 20060101ALI20240701BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20240701BHJP
【FI】
G06Q10/20
H02B1/40 A
G06Q50/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020141358
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037301
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出原 侑昌
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-165321(JP,A)
【文献】特開2017-016549(JP,A)
【文献】特開2019-126149(JP,A)
【文献】特開2010-094022(JP,A)
【文献】特開2010-061830(JP,A)
【文献】特開2000-188054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電機器の画像を入力する画像入力手段と、
画像内に表示されている文字を読み込む文字読み込み手段と、
文字組み合わせ情報及び機器仕様データを記憶するデータベースと、
文字情報に関してデータベースと通信を行うデータベース通信手段と、
文字情報とデータベースの文字組み合わせ情報とから文字情報をグループ化するグループ化手段と、
グループ化された文字情報とデータベースの機器仕様データとから配電機器を特定する機器特定手段と、
選ばれた配電機器だけでは規定に適合しない場合に、規定に適合できるようにするために、その配電機器に対して付加可能な機能の付加を提案する付加機能提案手段と、
を備えた配電機器調査システム。
【請求項2】
寸法を演算可能な寸法演算手段を備え、
画像入力手段で入力された分配電盤の筐体の画像の情報を用いて、寸法演算手段が筐体の寸法を演算可能である請求項1に記載の配電機器調査システム。
【請求項3】
寸法演算手段は、筐体に取り付けられた配電機器の寸法、筐体に取り付けられた配電機器の外形の画像情報、筐体外形の画像情報を用いて筐体の寸法を演算可能である請求項2に記載の配電機器調査システム。
【請求項4】
機器特定手段により特定された配電機器の情報とデータベースの機器仕様データを用いて特定された配電機器と交換可能な配電機器を選定可能である機器選定手段を備えた請求項1乃至3の何れかに記載の配電機器調査システム。
【請求項5】
グループ化手段は、データベースに記憶された配電機器の型式に関する文字組み合わせ情報と照らし合わせることにより画像内の文字情報をグループ化可能であり、
機器特定手段は、グループ化手段によりグループ化された文字情報と合致するデータベースの配電機器の型式情報を参照することにより配電機器を特定可能である請求項1乃至4の何れかに記載の配電機器調査システム。
【請求項6】
グループ化手段は、データベースに記憶された定格電流、定格感度電流、定格不動作電流の少なくとも一つに関する文字組み合わせ情報を用いて、画像内の文字をグループ化可能であり、
機器特定手段は、グループ化手段によりグループ化された文字情報と合致するデータベースの機器の型式情報と、定格電流、定格感度電流、定格不動作電流の少なくとも一つの情報との組み合わせを参照することにより配電機器を特定可能である請求項5に記載の配電機器調査システム。
【請求項7】
グループ化手段は、データベースに記憶された製造社が認識可能なデザインもしくは文字組み合わせ情報により、画像内のデザインもしくは文字の組み合わせをグループ化可能であるとともに、データベースに記憶された定格電流、定格感度電流、定格不動作電流の少なくとも一つに関する文字組み合わせ情報を用いて、画像内の文字の組み合わせをグループ化可能であり、
機器特定手段は、グループ化手段によりグループ化されたデザインもしくは文字情報から特定可能な製造社に関する情報と、定格電流、定格感度電流、定格不動作電流の少なくとも一つの情報との組み合わせを参照することにより配電機器を特定可能である請求項1乃至4の何れかに記載の配電機器調査システム。
【請求項8】
特定した複数の配電機器の定格電流が最大の配電機器を主幹ブレーカと判定し、他の配電機器を分岐ブレーカと判定するブレーカ判定手段を備えた請求項1乃至7の何れかに記載の配電機器調査システム。
【請求項9】
中性線欠相保護機能もしくは漏電遮断機能を唯一備える配電機器を主幹ブレーカと判定し、他の配電機器を分岐ブレーカと判定するブレーカ判定手段を備えた請求項1乃至7の何れかに記載の配電機器調査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電機器調査システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一度設置した分配電盤も、長期間使用すると交換が必要となる。分配電盤の更新の際には、有識者が現場で既設の分配電盤の情報を確認し、製品選定を行っていた。具体的には、特許文献1や2に記載されているように、既設の回路遮断器などの表面上に設けられた銘板に表示された型式や定格などを確認し、交換可能な機器を選定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-61830号公報
【文献】特開2000-188054号公報
【0004】
このように専門知識を持った有識者が現場まで赴き、交換する機器を選定するようにすると、人件費や選定時間などの負担が大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、有識者が既設の配電機器を確認しに現場に赴かなくても、交換可能な配電機器を選定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、配電機器の画像を入力する画像入力手段と、画像内に表示されている文字を読み込む文字読み込み手段と、文字組み合わせ情報及び機器仕様データを記憶するデータベースと、文字情報に関してデータベースと通信を行うデータベース通信手段と、文字情報とデータベースの文字組み合わせ情報とから文字情報をグループ化するグループ化手段と、グループ化された文字情報とデータベースの機器仕様データとから配電機器を特定する機器特定手段と、を備えた配電機器調査システムとする。
【0007】
また、寸法を演算可能な寸法演算手段を備え、画像入力手段で入力された分配電盤の筐体の画像の情報を用いて、寸法演算手段が筐体の寸法を演算可能である構成とすることが好ましい。
【0008】
また、寸法演算手段は、筐体に取り付けられた配電機器の寸法、筐体に取り付けられた配電機器の外形の画像情報、筐体外形の画像情報を用いて筐体の寸法を演算可能である構成とすることが好ましい。
【0009】
また、機器特定手段により特定された配電機器の情報とデータベースの機器仕様データとから交換可能な配電機器を選定可能である機器選定手段を備えた構成とすることが好ましい。
【0010】
また、グループ化手段は、データベースに記憶された配電機器の型式に関する文字組み合わせ情報と照らし合わせることにより画像内の文字情報をグループ化可能であり、機器特定手段は、グループ化手段によりグループ化された文字情報と合致するデータベースの配電機器の型式情報を参照することにより配電機器を特定可能である構成とすることが好ましい。
【0011】
また、グループ化手段は、データベースに記憶された定格電流、定格感度電流、定格不動作電流の少なくとも一つに関する文字組み合わせ情報を用いて、画像内の文字をグループ化可能であり、機器特定手段は、グループ化手段によりグループ化された文字情報と合致するデータベースの機器の型式情報と、定格電流、定格感度電流、定格不動作電流の少なくとも一つの情報との組み合わせを参照することにより配電機器を特定可能である構成とすることが好ましい。
【0012】
また、グループ化手段は、データベースに記憶された製造社が認識可能なデザインもしくは文字組み合わせ情報により、画像内のデザインもしくは文字の組み合わせをグループ化可能であるとともに、データベースに記憶された定格電流、定格感度電流、定格不動作電流の少なくとも一つに関する文字組み合わせ情報を用いて、画像内の文字の組み合わせをグループ化可能であり、機器特定手段は、グループ化手段によりグループ化されたデザインもしくは文字情報から特定可能な製造社に関する情報と、定格電流、定格感度電流、定格不動作電流の少なくとも一つの情報との組み合わせを参照することにより配電機器を特定可能である構成とすることが好ましい。
【0013】
また、特定した複数の配電機器の定格電流が最大の配電機器を主幹ブレーカと判定し、他の配電機器を分岐ブレーカと判定するブレーカ判定手段を備えた構成とすることが好ましい。
【0014】
また、中性線欠相保護機能もしくは漏電遮断機能を唯一備える配電機器を主幹ブレーカと判定し、他の配電機器を分岐ブレーカと判定するブレーカ判定手段を備えた構成とすることが好ましい。
【0015】
また、機器選定手段により選定された配電機器に対して付加機能を提案する付加機能提案手段を備えた構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、有識者が既設の配電機器を確認しに現場に赴かなくても、交換可能な配電機器を選定できるようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態における調査システムの利用の流れの例を表すフローである。
図2】保護板が取り付けられている分電盤の正面図である。
図3図2に示す分電盤の保護板を外した状態を表す正面図である。
図4】主幹ブレーカに備えられた銘板の例を表す図である。
図5図4に示すうちのいくつかの部分がグループ化されたことを表す図である。
図6】調査システムで行う配電機器の特定の流れの例を表すフローである。
図7図2に示す分電盤と置き換えられた分電盤の正面図である。
図8図7に示す分電盤の保護板を外した状態を表す正面図である。
図9】ブレーカの一つの例における正面図である。
図10】ブレーカに備えられた銘板の一つの例を表す図である。
図11】ブレーカの一つの例における正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に発明を実施するための形態を示す。本実施形態の配電機器調査システムは、配電機器の画像を入力する画像入力手段と、画像内に表示されている文字を読み込む文字読み込み手段と、文字組み合わせ情報及び機器仕様データを記憶するデータベースと、文字情報に関してデータベースと通信を行うデータベース通信手段と、文字情報とデータベースの文字組み合わせ情報とから文字情報をグループ化するグループ化手段と、グループ化された文字情報とデータベースの機器仕様データとから配電機器を特定する機器特定手段と、を備えている。このため、有識者が既設の配電機器を確認しに現場に赴かなくても、交換可能な配電機器を選定することが可能となる。
【0019】
調査対象となる配電機器は、配電に使用されるための機器であればよく、分配電盤も配電機器であるし、分配電盤に取り付けられる配電に使用されるための機器も配電機器である。典型例でいえば、主幹ブレーカ11や分岐ブレーカ12は配電機器である。分配電盤は筐体状であっても、筐体状で無くても構わない。実施形態では、筐体状の分配電盤の内部に主幹ブレーカ11などが取り付けられている。なお分配電盤とは、分電盤10と配電盤の双方を含む概念である。
【0020】
配電機器を特定するための例を図1に示すフローに沿って説明する。この例では図2及び図3に示す例から理解されるように、保護板13を備えた既設の分電盤10の筐体の中に主幹ブレーカ11や分岐ブレーカ12が取り付けられているものとして説明する。先ず、誰かが既設の配電機器が設置された現場で配電機器を撮影する。そして、撮影することにより得られた画像の情報を画像入力手段に入力する(ST001)。例えば、分配電盤(筐体+内部機器)の写真を撮影し、配電機器調査システムに入力する。なお、撮影は静止画を取得するものであっても動画を取得するものであっても構わないが、以下では、写真撮影で静止画を取得するものとして説明する。
【0021】
この際、図2に示すように、保護板13を外さない状態で内部に取り付けられた配電機器の写真を撮影し、その結果を画像入力手段に入力するものとしても良い。保護板13を外すことは資格を持った技術者でないとできないが、保護板13を外さない状態での撮影で得られた情報を利用できるならば、特別な資格が無い者でも必要な情報を得ることができるため、利便性が高い。なお、保護板13の取り外しなどは資格を持った技術者が行わないといけないが、図3に示すように、保護板13がない状態での写真を撮影することも考えられる。
【0022】
写真は基本的に分配電盤の真正面から撮影されることが好ましい。ただし、画像解析機能により真正面から撮影した場合と同等となるように情報を変換できる状況であるならば、斜めから撮影することで得られる情報であっても利用できる。なお、写真は筐体の外形と内部機器の文字情報が共に写っているように撮影するのが好ましいが、筐体の外形と内部機器の文字情報が各々別の写真に写っているように撮影することも可能である。
【0023】
入力された既設の配電機器の画像は、光学文字認識(OCR)などの文字読み込み手段により文字情報が読み込まれる(ST002)。読み込まれた文字情報は文字の位置情報とともにサーバに送信される。
【0024】
読み込まれた文字情報は、その意味合い毎にグループ化手段を用いてグループ化される(ST003)。典型的には、複数の文字組み合わせ情報である文字組み合わせ情報と比較され、グループ化される。例えば、撮影により図4に示すような部分が画像情報として得られた場合、グループ化された部分は図5で囲いを付している部分である。
【0025】
例えば、グループ化は型式などを表す文字情報が、文字読み込み手段により読み込まれた文字情報の中に存在するか否かを確認することにより行われる。例えば、型式を表す特定のアルファベットと数字の組み合わせが見つかれば、その文字情報は一つのグループとして扱われる。
【0026】
同様に、定格電流を表す「定格電流 50A」や「50A」といった文字情報が確認されれば、その文字情報は一つのグループとして扱われるし、定格感度電流を表す「定格感度電流 30mA」や定格不動作電流を表す「定格不動作電流 15mA」や遮断時間を表す「高速形」や「時延形」といった文字情報が確認されれば、その文字情報は一つのグループとして扱われる。
【0027】
データベースに記憶されている文字同士の組み合わせは、どのようなものであっても良いが、いずれにしても、OCRにより読み込まれた文字情報などを基に、グループ化できるものを探し、グループ化する。
【0028】
その後、グループ化された文字情報と合致するデータについてデータベースの記録情報を参照する(ST004)。
【0029】
グループ化された文字情報とデータベースの記録情報から既設の配電機器を特定する(ST005)。この際、例えば、図6に示すフローに沿って配電機器の特定を行う。この例では、型式を読み込む(ST101)。その結果、既設の配電機器の特定が可能であるか否かを判定する(ST102)。判定できれば配電機器の特定ができたとする(ST114)。なお、型式は通常、アルファベットと数字の組み合わせで記載されている(「GK58N」など)。なお、配電機器の特定とは、型式、メーカ名、機器名、最大定格電流、定格感度電流、配電方式、極数・素子数、対応周波数、定格遮断容量、遮断時間、単3中性線欠相保護機能の有無等の情報を特定することである。
【0030】
ST102において既設の配電機器の特定が可能であると判定できなければ、定格電流(電動機等の電気機器で、製造業者が宣言した機器の入力電流値。使用時に流しても問題ない電流値)を読み込む(ST103)。その結果、既設の配電機器の特定が可能であるか否かを判定する(ST104)。
【0031】
同様にして、漏電遮断器や漏電リレーが必ず漏電トリップする漏電電流値である「定格感度電流」や、地絡電流や漏洩電流があっても漏電トリップしない電流値(通常、定格感度電流の半値)である「定格不動作電流」や、「高速形(定格感度電流における漏電引外し動作時間が0.1秒以内)」や「時延形(定格感度電流における漏電引外し動作時間が0.1秒を超え2秒以内)」といった「遮断時間」や、製造社(メーカー名)を表すデザインや文字(商標などの標章)といった色々な情報を利用して、既設の配電機器の特定に努める。あらかじめ設定された判定に必要な情報をすべて利用しても、既設の配電機器の特定ができない場合、エラー判定を行う(ST113)。ST113又はST114に至ったら、一連の判定作業は終了する。
【0032】
型式のみで配電機器の仕様を判別できる場合が多いので、グループ化手段は、データベースに記憶された配電機器の型式に関する文字組み合わせ情報と照らし合わせることにより画像内の文字情報をグループ化可能であり、機器特定手段は、グループ化手段によりグループ化された文字情報と合致するデータベースの配電機器の型式情報を参照することにより配電機器を特定可能であるように構成することが好ましい。効率よく配電機器を特定することができる。また、型式のみで配電機器を特定するものとする場合、データベースのデータ蓄積量を最小限とすることができる。
【0033】
また、グループ化手段は、データベースに記憶された定格電流、定格感度電流、定格不動作電流の少なくとも一つに関する文字組み合わせ情報を用いて、画像内の文字をグループ化可能であり、機器特定手段は、グループ化手段によりグループ化された文字情報と合致するデータベースの機器の型式情報と、定格電流、定格感度電流、定格不動作電流の少なくとも一つの情報との組み合わせを参照することにより配電機器を特定可能であるように構成することが好ましい。型式に関する文字情報が不鮮明である場合や、型式情報のみでは複数選択肢が残る等の場合に、正確に配電機器を特定することができる。
【0034】
ところで、ST101で型式が読込できなかった場合には、「製造社の情報」と、「定格電流、定格感度電流、定格不動作電流、遮断時間のうち少なくとも1つ」を組み合わせて配電機器を特定するようにしても良い。
【0035】
この場合、グループ化手段は、データベースに記憶された「製造社が認識可能なデザインもしくは文字組み合わせ情報」により、画像内のデザインもしくは文字の組み
合わせをグループ化可能であるとともに、データベースに記憶された「定格電流、定格感度電流、定格不動作電流の少なくとも一つに関する文字組み合わせ情報」を用いて、画像内の文字の組み合わせをグループ化可能であり、機器特定手段は、グループ化手段によりグループ化されたデザインもしくは文字情報から特定可能な「製造社に関する情報」と、「定格電流、定格感度電流、定格不動作電流の少なくとも一つの情報」との組み合わせを参照することにより配電機器を特定可能である構成とすることが好ましい。このようにすれば、型式の読込ができない場合でも、配電機器を特定できるようにすることができる。
【0036】
ST005における配電機器の特定は、図6に示すような例である必要は無い。例えば、型式のみで配電機器が特定できない場合は、その他の判定要素との組み合わせにより配電機器を特定するようにしても良い。具体的には、「型式」+「定格電流」+「定格感度電流」などの組み合わせを例示できる。また、図6に示す例では順に判定要素を確認しているが、そのような態様ではなく、複数の判定要素を同時に判定して配電機器を特定するものとしてもよい。
【0037】
図1に示す例では、ST005の後、二手に分かれている。ここでは、主幹ブレーカ11や分岐ブレーカ12の選定のように、主にその機器の性能などに重みをおいて、既設の配電機器と交換される配電機器の選定をする場合(ST006)と、分電盤10の筐体の選定のように、主にその機器の寸法に重みをおいて、既設の配電機器と交換される配電機器の選定をする場合(ST009)に分けている。なお、ST005の後のステップはST006だけに進んでもST009だけに進んでも、その双方に進んでも良い。
【0038】
ST006では、機器特定手段により特定された配電機器と交換可能な配電機器を選定する。この際、基本的に、同じ仕様(定格電流や定格感度電流など)のものを選定する。この際、特定された種類(型式など)の配電機器が古い型式であるなどの理由により、入手が困難な場合がある。このような事態に対応できるようにするため、他の種類の配電機器から同等の性能を満たすことが可能な仕様となるものを選定できるようにするのが好ましい。同じ仕様のものが無い場合などには、既設の仕様を満足できる範囲で過剰とならない仕様のものを選定する。
【0039】
それに加え、機器選定手段により選定された配電機器に対して付加機能を提案する付加機能提案手段を備えた構成とすることが好ましい。自動的に選定機器に対して付加可能な機能を提案するようにすれば、提案漏れを抑制できる。例えば、既設の分配電盤が設置された時の配電機器に関する規定と現在の規定が異なっている場合があるので、現在の規定に適用できるようにするための付加機能を追加するよう提案するようにしても良い。提案する付加機能は、いかなるものであっても良いが、感震装置、放電検出装置、漏電検出装置、中性線欠相保護装置、SPD、電流/電力監視装置などが代表的なものとして例示できる。
【0040】
例えば、ST006に進んだ場合、ブレーカの性能などは選定できるが、各々のブレーカはどのような位置づけで使用されているものであるのか(主幹ブレーカ11として使用されているものであるのか、分岐ブレーカ12として使用されているものであるのか)については判定していない。このため、いずれのブレーカが主幹ブレーカ11の役割を果たし、いずれのブレーカが分岐ブレーカ12の役割を果たしているのかを判定している(ST007)。
【0041】
ST007では、特定した複数の配電機器の定格電流が最大の配電機器を主幹ブレーカ11と判定し、他の配電機器を分岐ブレーカ12と判定することが例示できる。このようにすれば、文字情報から主幹ブレーカ11や分岐ブレーカ12を特定できる。また、主幹ブレーカ11の負荷側に分岐ブレーカ12が接続される結線情報もわかる。
【0042】
ブレーカの位置づけの判定方法は、このような例に限る必要が無いことは勿論であり、例えば、中性線欠相保護機能もしくは漏電遮断機能を唯一備える配電機器を主幹ブレーカ11と判定し、他の配電機器を分岐ブレーカ12と判定してもよい。このようなことができる構成としても、文字情報から主幹ブレーカ11や分岐ブレーカ12を特定できるのは同様である。
【0043】
このフローでは、各々のブレーカの役割が判定できれば、電気的にどのようにつながるのかが推定できるため、結線の判定を行うようにしている(ST008)。このようにすれば、主幹ブレーカ11と分岐ブレーカ12をセットした分電盤10のシステムを顧客に提案することができる。
【0044】
ところで、このフローではST007の次に、ST008にも後述するST010にも進むことができるが、どのように進むのかは状況により決定すればよい。例えば、ST005の次にST006とST009の両方に進んだ場合で、すべての配電機器の外形を画像から把握できる場合(保護板13がない場合など)にはST007からST008だけに進めばよい。結線の自動判定が必要ない場合など、ST008が必要ない場合には、ST010にだけ進むようにすれば良い。ST008にもST010にも進む例については後述する。
【0045】
実施形態においては、ST008の結線判定では、主幹ブレーカ11と分岐ブレーカ12の関係から結線を自動で判定する。この際、主幹ブレーカ11の2次側に分岐ブレーカ12を接続する。分岐ブレーカ12同士はx軸とy軸で表される位置関係のように、横方向と縦方向の位置関係により、列などを決定している。
【0046】
機器選定手段により交換する配電機器を選定するために寸法の情報が必要な場合がある。撮影された配電機器群の中に寸法を特定できる配電機器があると、その配電機器の寸法と画像の情報を基に他の配電機器の寸法が分かる場合がある。ST009以下では、そのようにして交換する配電機器である筐体の選定を行う例を示している。この例では、ST005で既設機器の特定ができているため、特定した配電機器の寸法を特定することができる(ST009)。この例では、特定された配電機器の寸法(x、y)情報は、データベースに記憶されている情報から入手できる。
【0047】
例えば主幹ブレーカ11がこのような配電機器であるとする。図2及び図3に示すことから理解されるように、通常、主幹ブレーカ11は、筐体から露出する部分の横の長さと主幹ブレーカ11自体の横の長さは略一致する。このため、筐体全体と主幹ブレーカ11の露出している部分が撮影されるように正面から写真を撮ると、主幹ブレーカ11の横の長さのデータに対して、主幹ブレーカ11の横の長さと筐体の横の長さの比を掛ければ筐体の横の長さが分かる。また、筐体の横の長さと縦の長さの比は画像から判定できるため、筐体の縦の長さも分かることになる。このように、ST009で特定された寸法をその配電機器と他の配電機器が撮影された画像に対して適用させ(ST010)、その値を、他の配電機器の寸法を決める基準に適用させ(ST011)、その結果得られた既設の筐体の寸法を参考に、既設の筐体と交換する筐体を選定する(ST012)。
【0048】
実施形態におけるST010では、画像認識機能により画像に表れている特定された配電機器のエリアを判定し、配電機器の横幅A(x)を特定する。横方向の特定は、認識された文字の並ぶ方向から特定できる。
【0049】
なお、実施形態の分電盤10には導電部を外部から保護する保護板13が設けられている。保護板13でカバーされている状態では、図2に示された分岐ブレーカ12のように画像上では外形が把握できない場合もあるが、主幹ブレーカ11に関しては、横幅A(x)が主幹ブレーカ11自体の横幅と略一致している場合が大多数である。このため、実施形態では、画像上で見える範囲の主幹ブレーカ11の横幅A(x)を特定対称とし、外形として認識させる。このようにすれば、だれでも行うことができる作業の範囲で寸法を特定することができるため、使い勝手が良い。もちろん、有資格者が作業するのであれば、図3に示すように保護板13を外した状態で写真を撮影することで、配電機器の外形をより明確にさせて撮影することが好ましい。
【0050】
ところで、実施形態のST010では、主幹ブレーカ11の情報が必要となる。このフローでは、ST007で配電機器の中から主幹ブレーカ11を特定できるようにしていることを利用できる。具体的には、ST007で主幹ブレーカ11と判定された配電機器について、データベースにある情報から寸法情報を参照すれば、当該配電機器の横幅の長さが分かるため、その情報を画像に適用すれば、その画像の実際の寸法との関係を導かせることができる。このように、ST010で利用するためにST007から情報がもたらされる場合でも、ST007の後にST008に進むことは可能である。ST008とST010では、互いにST007で利用された情報を異なる目的で利用するため、必要に応じて適切なステップに進めばよい。
【0051】
ST010の後に行われるST011の実施形態においては、画像認識機能により画像に表れている筐体のエリアを判定し、画像上の横幅B(x)と縦幅C(y)を特定する。そして、ST010で判定した寸法が適用された配電機器の外形画像の情報と筐体の外形画像の情報とから筐体の寸法を導き出す。より具体的な例を次に記す。画像上で配電機器の横幅A(x)と筐体の横幅B(x)の比が1:10で、且つ配電機器の横幅A(x)が7cmであることが判明している場合、筐体の横幅B(x)は7cm×10で70cmと導出することができる。筐体の縦横比が画像から1:2である場合、筐体の縦幅C(y)は70cm÷2で35cmと導出することができる。
【0052】
このようなことを可能とするため、寸法を演算可能な寸法演算手段を備え、画像入力手段で入力された分配電盤の筐体の画像の情報を用いて、寸法演算手段が筐体の寸法を演算可能である構成することが好ましい。設置されている筐体のサイズを容易に判別することができる。なお、寸法演算手段は、筐体に取り付けられた配電機器の寸法、筐体に取り付けられた配電機器の外形の画像情報、筐体外形の画像情報を用いて筐体の寸法を演算可能であるように構成することが好ましい。
【0053】
ST012で行われる筐体の選定においては、基本的にST011で求められた筐体の寸法以上の寸法の筐体を選定する。また、筐体周辺の障害物を避けた筐体を選定するようにしてもよい。その場合、写真情報から障害物を判定し、その障害物を避けることができる筐体を選定するのが好ましい。実施形態では図7及び図8に示すような筐体を選定した。
【0054】
また、機器特定手段により特定された配電機器の情報とデータベースの機器仕様データを用いて特定された配電機器と交換可能な配電機器を選定可能である機器選定手段を備えた構成とすることが好ましい。このようにすれば、有識者でなくても自動で交換可能な配電機器を選定することができる。この際、特定された種類(型式など)の配電機器とは異なる種類の配電機器から同等の性能を満たすことが可能な仕様となるものを選定できるようにするのが好ましい。なお、配電機器の情報とは、型式、メーカ名、機器名、最大定格電流、定格感度電流、配電方式、極数・素子数、対応周波数、定格遮断容量、遮断時間、単3中性線欠相保護機能の有無等の情報のことである。
【0055】
上記例では、筐体の選定を行っているが、筐体の選定だけに限ることは無いのは勿論のことである。例えば、更新するブレーカの選定に本システムを使用しても良い。なお、図4、9、10、11に示すことから理解されるように、各配電機器により、選定に使用される文字群などは、位置や字の形、得られる情報量は一律ではないため、それらの違いに対応できるものとすることが好ましいが、一部対応できないものがあっても、有識者が現地に赴かなくてはならないか否かの判定に使用することができるため、人件費や選定時間などの負担は軽減できる。
【0056】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、配電機器は、配電に使用される機器であればよいため、ブレーカや分電盤に限らない。感震装置、放電検出装置、漏電検出装置、中性線欠相保護装置、SPD、電流/電力監視装置なども配電機器である。
【0057】
判定に用いられる要素としては、実施形態で記載したものである必要は無い。例えば、「衝撃波不動作形(漏電ブレーカが、雷サージを漏電と認識して誤動作しないような機能)」、「定格遮断容量(I.C)(例:5kA)(定格遮断容量)=短絡事故で発生する大電流に対して、ブレーカの接点溶着や破壊などせず、支障なく遮断できる電流)」、「機器名(例:漏電ブレーカ)」、「配電方式(例:「1φ3W=単相三線」、「極数、素子数(例:3P2E=3極2素子 極数=電極の数 素子数=過電流を検知できる端子数)」)」、「最大定格電流(回路遮断器の物理的外形寸法がある範囲の定格電流に対して共通であるもので、グループの最大の定格電流に相当する電流をアンペアで示す。ある型式の製品は外形寸法が共通で定格電流が30,40,50Aの場合があるので、最大定格電流は50AFとなる)」、「対応周波数(例:50/60Hz)」、「単3中性線欠相保護(単相3線式配線では、万一中性線が欠相状態になると負荷電圧が不平衡となり、100V機器に異常電圧が印加され、焼損事故を招く恐れがある。それを回避するために回路を遮断する機能。)」としても良い。
【0058】
方向軸については、本実施形態ではx、yのみ考慮しているが、奥行き幅(z)も同様に判定してもよい。その場合は、写真も分電盤の奥行き方向を撮影しておく必要がある。
【0059】
寸法演算手段の演算方法は実施形態に記載したものに限らない。例えば、距離計等により自動で筐体の寸法を求めることができるようなシステムであってもよい。
【0060】
データベース通信手段は、外部にあるクラウドなどと外部通信を行うものであってもよいし、アプリ内等にあるデータベースなどと内部通信を行うものであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 分電盤
11 主幹ブレーカ
12 分岐ブレーカ
13 保護板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11