(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール、太陽電池モジュール作製方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/05 20140101AFI20240701BHJP
H01L 31/048 20140101ALI20240701BHJP
【FI】
H01L31/04 570
H01L31/04 560
(21)【出願番号】P 2019158901
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】入川 淳平
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-534288(JP,A)
【文献】特開2015-118956(JP,A)
【文献】国際公開第2013/069680(WO,A1)
【文献】特開2019-140301(JP,A)
【文献】特開2018-133468(JP,A)
【文献】特開2012-009681(JP,A)
【文献】特開2019-041090(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109786492(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108963020(CN,A)
【文献】特開2017-216421(JP,A)
【文献】実開平05-067017(JP,U)
【文献】特開2011-077103(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090521(WO,A1)
【文献】特開2016-027640(JP,A)
【文献】国際公開第2012/060086(WO,A1)
【文献】特開平05-190882(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0325282(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
H10K 30/00-30/57
H10K 30/80-39/18
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反対を向いた第1面と第2面とを有する第1太陽電池セルと、
互いに反対を向いた第1面と第2面とを有し、前記第1太陽電池セルの前記第1面側から見た場合に前記第1太陽電池セルに一部重複して配置される第2太陽電池セルと、
前記第1太陽電池セルの前記第1面に接続されるとともに、前記第2太陽電池セルの前記第2面に接続される配線材とを備え、
前記第1太陽電池セルの前記第1面の一部と、前記第2太陽電池セルの前記第2面の一部は、重複部分において前記配線材を挟んで対向し、
前記重複部分において前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間には樹脂が存在し、前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間に存在する前記樹脂は、前記配線材の第1表面に接して存在し、
前記重複部分において前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間には樹脂が存在し、前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間に存在する前記樹脂は、前記配線材の第2表面に接して存在し、
前記第1表面と前記第2表面は、前記配線材の表面において互いに異なった部分であり、
前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間に存在する前記樹脂と、前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間に存在する前記樹脂とは、前記配線材の前記第1表面と前記第2表面との境界で接触し、
前記配線材は、前記第1太陽電池セルの前記第1面における前記重複部分以外の部分にも配置され、前記第2太陽電池セルの前記第2面における前記重複部分以外の部分にも配置されることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記重複部分において、前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間の距離は、前記第1太陽電池セルの中心側部分よりも前記第1太陽電池セルの端部において広がり、前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間に存在する前記樹脂の量は、前記第1太陽電池セルの中心側部分よりも前記第1太陽電池セルの端部において多くなることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記重複部分において、前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間の距離は、前記第2太陽電池セルの中心側部分よりも前記第2太陽電池セルの端部において広がり、前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間に存在する前記樹脂の量は、前記第2太陽電池セルの中心側部分よりも前記第2太陽電池セルの端部において多くなることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記重複部分における前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間に存在する前記樹脂と、前記重複部分における前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間に存在する前記樹脂の少なくとも一方は、50%以上のゲル分率を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記重複部分における前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間に封止部材が存在し、
前記第2太陽電池セルの前記第2面は、前記第2太陽電池セルの裏面であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記重複部分における前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間に存在する前記樹脂と、前記重複部分における前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間に存在する前記樹脂では、材質が異なることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記重複部分における前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間には、2種類以上の前記樹脂が含まれ、
前記第1太陽電池セルの前記第1面は、前記第1太陽電池セルの受光面であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記重複部分における前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間に存在する前記樹脂と、前記重複部分における前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間に存在する前記樹脂は、互いに接するとともに架橋されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
前記重複部分における前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間に含まれる前記樹脂は白色に着色され、
前記第1太陽電池セルの前記第1面は、前記第1太陽電池セルの受光面であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項10】
前記重複部分において前記第1太陽電池セルの端部あるいは前記第2太陽電池セルの端部が非配置の部分には、前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材と前記第2太陽電池セルの前記第2面とが直接接続されている部分が含まれることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項11】
前記重複部分における前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間と、前記重複部分における前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間との少なくとも一方には、前記樹脂と隙間が存在することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項12】
前記重複部分における前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の接続部分の面積が、前記重複部分における前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の接続部分の面積よりも大きく、
前記第2太陽電池セルの前記第2面は、前記第2太陽電池セルの裏面であり、
前記第1太陽電池セルの前記第1面は、前記第1太陽電池セルの受光面であることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項13】
前記重複部分における前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の非接続部分の面積が、前記重複部分における前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の接続部分の面積よりも大きく、
前記第1太陽電池セルの前記第1面は、前記第1太陽電池セルの受光面であることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項14】
前記重複部分において、前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材とが非接続であり、
前記第1太陽電池セルの前記第1面は、前記第1太陽電池セルの受光面であることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項15】
前記重複部分において、前記第1太陽電池セルの前記第1面と第2太陽電池セルの前記第2面のどちらとも前記配線材に非接続であることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項16】
前記重複部分において前記第1太陽電池セルの端部が配置される部分には、前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間に前記樹脂が存在しており、前記第2太陽電池セルの端部が配置される部分には、前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間に前記樹脂が存在することを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項17】
前記重複部分における前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記第2太陽電池セルの前記第2面との間では、前記樹脂の体積が前記配線材の体積よりも大きいことを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項18】
前記第1太陽電池セルの前記第1面が前記配線材に向かって平行移動した場合に前記第1太陽電池セルの前記第1面が前記配線材と接触する第1面積と、前記第2太陽電池セルの前記第2面が前記配線材に向かって平行移動した場合に前記第2太陽電池セルの前記第2面が前記配線材と接触する第2面積とが異なっており、
前記重複部分において前記第1太陽電池セルの端部と前記第2太陽電池セルの端部が配置される部分では、前記第1面積が前記第2面積よりも小さい場合に、前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間に存在する前記樹脂の量は、前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間に存在する前記樹脂の量よりも多く、前記第2面積が前記第1面積よりも小さい場合に、前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間に存在する前記樹脂の量は、前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間に存在する前記樹脂の量よりも多いことを特徴とする請求項1から17のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項19】
前記第1太陽電池セルの前記第1面が前記配線材に向かって平行移動した場合に前記第1太陽電池セルの前記第1面が前記配線材と接触する第1面積と、前記第2太陽電池セルの前記第2面が前記配線材に向かって平行移動した場合に前記第2太陽電池セルの前記第2面が前記配線材と接触する第2面積とが異なっており、
前記重複部分において前記第1太陽電池セルの端部と前記第2太陽電池セルの端部が配置される部分では、前記第1面積が前記第2面積よりも小さい場合に、前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間に存在する前記樹脂の体積は、前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間に存在する前記樹脂の体積よりも大きく、前記第2面積が前記第1面積よりも小さい場合に、前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間に存在する前記樹脂の体積は、前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間に存在する前記樹脂の体積よりも大きいことを特徴とする請求項1から18のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項20】
前記重複部分における前記第1太陽電池セルの端部での前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材のうちの前記第1面に最も近い面との角度と、前記重複部分における前記第2太陽電池セルの端部での前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材のうちの前記第1面に最も近い面との角度とが異なることを特徴とする請求項1から19のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項21】
前記重複部分における前記第1太陽電池セルの端部での前記第1太陽電池セルの前記第1面に対する前記配線材の接触面積と、前記重複部分における前記第2太陽電池セルの端部での前記第2太陽電池セルの前記第2面に対する前記配線材の接触面積とが異なることを特徴とする請求項1から20のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項22】
互いに反対を向いた第1面と第2面とを有する第1太陽電池セルと、
互いに反対を向いた第1面と第2面とを有し、前記第1太陽電池セルの前記第1面側から見た場合に前記第1太陽電池セルに一部重複して配置される第2太陽電池セルと、
前記第1太陽電池セルの前記第1面に接続されるとともに、前記第2太陽電池セルの前記第2面に接続される配線材とを備え、
前記第1太陽電池セルの前記第1面の一部と、前記第2太陽電池セルの前記第2面の一部は、重複部分において前記配線材を挟んで対向し、
前記重複部分において前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間には樹脂が存在し、前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間に存在する前記樹脂は、前記配線材の第1表面に接して存在し、
前記重複部分において前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間には樹脂が存在し、前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間に存在する前記樹脂は、前記配線材の第2表面に接して存在し、
前記配線材は、前記重複部分において、前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記第2太陽電池セルの前記第2面とに接続されないことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項23】
互いに反対を向いた第1面と第2面とを有する第1太陽電池セルと、
互いに反対を向いた第1面と第2面とを有し、前記第1太陽電池セルの前記第1面側から見た場合に前記第1太陽電池セルに一部重複して配置される第2太陽電池セルを、前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記第2太陽電池セルの前記第2面を配線材で接続することによってストリングを作製するストリング作製工程と、
前記ストリングを、保護部材
と封止部材とで挟んで前記封止部材の温度が100℃以上になるようラミネートする工程とを含み、
前記ラミネートする工程によって、
前記第1太陽電池セルの前記第1面の一部と、前記第2太陽電池セルの前記第2面の一部は、重複部分において前記配線材を挟んで対向し、
前記重複部分において前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間には樹脂が存在し、前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間に存在する前記樹脂は、前記配線材の第1表面に接して存在し、
前記重複部分において前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間には樹脂が存在し、前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間に存在する前記樹脂は、前記配線材の第2表面に接して存在し、
前記第1表面と前記第2表面は、前記配線材の表面において互いに異なった部分であり、
前記第1太陽電池セルの前記第1面と前記配線材の間に存在する前記樹脂と、前記第2太陽電池セルの前記第2面と前記配線材の間に存在する前記樹脂とは、前記配線材の前記第1表面と前記第2表面との境界で接触し、
前記配線材は、前記第1太陽電池セルの前記第1面における前記重複部分以外の部分にも配置され、前記第2太陽電池セルの前記第2面における前記重複部分以外の部分にも配置される太陽電池モジュール作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽電池モジュールに関し、特に太陽電池セルを含む太陽電池モジュール、太陽電池モジュール作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールの製造を簡易にするために、ワイヤによって相互接続された2つのフィルムが使用される。2つのフィルムのうちの1つは、太陽電池セルの受光面に取り付けられ、受光面との間にワイヤを挟む。また、2つのフィルムのうちの別の1つは、別の太陽電池セルの裏面に取り付けられ、当該裏面との間にワイヤを挟む(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
隣接した2つの太陽電池セルを接続する際に、各太陽電池セルの一部を重ね合わせることによって、2つの太陽電池セルの間の隙間がなくなる。これにより、セル充填率が向上する。しかしながら、各太陽電池セルの一部が重ね合わされるので、耐荷重性および温度サイクル耐性が低下するおそれがある。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、隣接した2つの太陽電池セルの一部を重ね合わせて配置する場合でも耐荷重性および温度サイクル耐性の低下を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の太陽電池モジュールは、互いに反対を向いた第1面と第2面とを有する第1太陽電池セルと、互いに反対を向いた第1面と第2面とを有し、第1太陽電池セルの第1面側から見た場合に第1太陽電池セルに一部重複して配置される第2太陽電池セルと、第1太陽電池セルの第1面に接続されるとともに、第2太陽電池セルの第2面に接続される配線材とを備える。第1太陽電池セルの第1面の一部と、第2太陽電池セルの第2面の一部は、重複部分において配線材を挟んで対向し、重複部分において第1太陽電池セルの第1面と配線材の間には樹脂が存在し、第1太陽電池セルの第1面と配線材の間に存在する樹脂は、配線材の第1表面に接して存在し、重複部分において第2太陽電池セルの第2面と配線材の間には樹脂が存在し、第2太陽電池セルの第2面と配線材の間に存在する樹脂は、配線材の第2表面に接して存在し、第1表面と第2表面は、配線材の表面において互いに異なった部分であり、第1太陽電池セルの第1面と配線材の間に存在する樹脂と、第2太陽電池セルの第2面と配線材の間に存在する樹脂とは、配線材の第1表面と第2表面との境界で接触し、配線材は、第1太陽電池セルの第1面における重複部分以外の部分にも配置され第2太陽電池セルの第2面における重複部分以外の部分にも配置される。
本開示の別の態様もまた、太陽電池モジュールである。この太陽電池モジュールは、互いに反対を向いた第1面と第2面とを有する第1太陽電池セルと、互いに反対を向いた第1面と第2面とを有し、第1太陽電池セルの第1面側から見た場合に第1太陽電池セルに一部重複して配置される第2太陽電池セルと、第1太陽電池セルの第1面に接続されるとともに、第2太陽電池セルの第2面に接続される配線材とを備える。第1太陽電池セルの第1面の一部と、第2太陽電池セルの第2面の一部は、重複部分において配線材を挟んで対向し、重複部分において第1太陽電池セルの第1面と配線材の間には樹脂が存在し、第1太陽電池セルの第1面と配線材の間に存在する樹脂は、配線材の第1表面に接して存在し、重複部分において第2太陽電池セルの第2面と配線材の間には樹脂が存在し、第2太陽電池セルの第2面と配線材の間に存在する樹脂は、配線材の第2表面に接して存在し、配線材は、重複部分において、第1太陽電池セルの第1面と第2太陽電池セルの第2面とに接続されない。
【0007】
本開示のさらに別の態様は、太陽電池モジュール作製方法である。この方法は、互いに反対を向いた第1面と第2面とを有する第1太陽電池セルと、互いに反対を向いた第1面と第2面とを有し、第1太陽電池セルの第1面側から見た場合に第1太陽電池セルに一部重複して配置される第2太陽電池セルを、第1太陽電池セルの第1面と第2太陽電池セルの第2面を配線材で接続することによってストリングを作製するストリング作製工程と、ストリングを、保護部材と封止部材とで挟んで封止部材の温度が100℃以上になるようラミネートする工程とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、隣接した2つの太陽電池セルの一部を重ね合わせて配置する場合でも耐荷重性および温度サイクル耐性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例に係る太陽電池モジュールの構造を示す平面図である。
【
図2】
図1の太陽電池モジュールの構造を示す断面図である。
【
図3】
図2の太陽電池モジュールにおいて使用されるワイヤフィルムの構造を示す斜視図である。
【
図4】
図4(a)-(b)は、
図2の太陽電池セルに取り付ける前の第1フィルムと第2フィルムの構造を示す断面図である。
【
図5】
図5(a)-(b)は、
図1の太陽電池モジュールの構造を示す部分断面図である。
【
図6】
図6(a)-(b)は、
図1の太陽電池モジュールの第1変形例の構造を示す部分断面図である。
【
図7】
図1の太陽電池モジュールの第2変形例の構造を示す部分断面図である。
【
図8】
図8(a)-(b)は、
図1の太陽電池モジュールの第3変形例の構造を示す部分断面図である。
【
図9】
図9(a)-(b)は、
図1の太陽電池モジュールの第4変形例の構造を示す部分断面図である。
【
図10】
図10(a)-(b)は、
図1の太陽電池モジュールの第5変形例、第6変形例の構造を示す部分断面図である。
【
図11】
図11(a)-(d)は、
図1の太陽電池モジュールのさらに別の変形例の構造を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を具体的に説明する前に、概要を述べる。本開示の実施例は、複数の太陽電池セルがマトリックス状に配置された太陽電池モジュールに関する。太陽電池モジュールでは、受光面側から裏面側の方向に第1保護部材、第1封止部材、第2封止部材、第2保護部材が順に並べられ、第1封止部材と第2封止部材との間に複数の太陽電池セルが封止される。隣接した2つの太陽電池セルは、インタコネクタである配線材によって接続される。その際、隣接した2つの太陽電池セルを離間させると、その間の部分には太陽電池セルが配置されず発電がなされない。セル充填率を向上して変換効率を改善するために、隣接した2つの太陽電池セルの一部を厚み方向で重ねるペイビング技術が使用される。このようなペイビング技術では、太陽電池セルの厚み方向に荷重が加わった場合、太陽電池セル/配線材/太陽電池セルとなる部分に応力が集中し、太陽電池セルに割れが発生するおそれがあるので、耐荷重性の低下が予想される。一方、隣接した太陽電池セル間に隙間が存在せず、配線材の応力緩和部が存在しないので、温度サイクル耐性の低下が予想される。
【0011】
ペイビング技術を使用する場合においても耐荷重性および温度サイクル耐性の低下を抑制するために、本実施例に係る太陽電池モジュールでは、2つの太陽電池セルが重ねられる重複部分において、太陽電池セルと配線材との間に樹脂が存在する部分が含められる。このような樹脂により、荷重印加および温度サイクルによるセル/配線材/セル部分への応力の集中が抑制され、太陽電池セルにおける割れの発生が防止される。その結果、耐荷重性および温度サイクル耐性の低下が抑制される。以下の説明において、「平行」、「垂直」は、完全な平行、垂直だけではなく、誤差の範囲で平行、垂直からずれている場合も含む。また、「略」は、おおよその範囲で同一であるという意味である。
【0012】
図1は、太陽電池モジュール100の構造を示す平面図である。
図1に示すように、x軸、y軸、z軸を含む直交座標系が規定される。x軸、y軸は、太陽電池モジュール100の平面内において互いに直交する。z軸は、x軸およびy軸に垂直であり、太陽電池モジュール100の厚み方向に延びる。また、x軸、y軸、z軸のそれぞれの正の方向は、
図1における矢印の方向に規定され、負の方向は、矢印と逆向きの方向に規定される。太陽電池モジュール100を形成する2つの主表面であって、かつx-y平面に平行な2つの主表面のうち、z軸の正方向側に配置される主平面が受光面であり、z軸の負方向側に配置される主平面が裏面である。以下では、z軸の正方向側を「受光面側」と呼び、z軸の負方向側を「裏面側」と呼ぶ。
図1は、太陽電池モジュール100の受光面側からの平面図であるといえる。
【0013】
太陽電池モジュール100は、太陽電池セル10と総称される第11太陽電池セル10aa、・・・、第45太陽電池セル10de、ワイヤ14、渡り配線材16、終端配線材18、フレーム20と総称される第1フレーム20a、第2フレーム20b、第3フレーム20c、第4フレーム20dを含む。
【0014】
第1フレーム20aは、x軸方向に延び、第2フレーム20bは、第1フレーム20aのx軸の正方向側端からy軸の負方向に延びる。また、第3フレーム20cは、第2フレーム20bのy軸の負方向側端からx軸の負方向に延び、第4フレーム20dは、第3フレーム20cのx軸の負方向側端と第1フレーム20aのx軸の負方向側端とを結ぶ。フレーム20は、太陽電池モジュール100の外周を囲んでおり、アルミニウム等の金属で形成される。ここで、太陽電池モジュール100は矩形状を有するが、太陽電池モジュール100の形状はこれに限定されない。
【0015】
複数の太陽電池セル10のそれぞれは、入射する光を吸収して光起電力を発生する。特に、太陽電池セル10は、受光面において吸収した光から起電力を発生するとともに、裏面において吸収した光からも光起電力を発生する。太陽電池セル10は、例えば、結晶系シリコン、ガリウム砒素(GaAs)またはインジウム燐(InP)等の半導体材料によって形成される。太陽電池セル10の構造は、特に限定されないが、ここでは、一例として、結晶シリコンとアモルファスシリコンとが積層されている。また、太陽電池セル10は、x-y平面において、四角形の形状を有するが、その他の形状、例えば、八角形の形状を有してもよい。
図1では省略しているが、各太陽電池セル10の受光面および裏面には、互いに平行にy軸方向に延びる複数のフィンガー電極が備えられる。フィンガー電極は集電極である。
【0016】
複数の太陽電池セル10は、x-y平面上にマトリックス状に配列される。ここでは、x軸方向に5つの太陽電池セル10が並べられる。x軸方向に並んで配置される5つの太陽電池セル10は、前述の配線材あるいはインタコネクタであるワイヤ14によって直列に接続され、1つのストリング12が形成される。例えば、第11太陽電池セル10aa、第12太陽電池セル10ab、・・・、第15太陽電池セル10aeが接続されることによって、第1ストリング12aが形成される。また、第2ストリング12bから第4ストリング12dも同様に形成される。その結果、4つのストリング12がy軸方向に平行に並べられる。ここでは、x軸方向に並べられる太陽電池セル10の数が、y軸方向に並べられる太陽電池セル10の数よりも多い。ストリング12に含まれる太陽電池セル10の数は「5」に限定されず、ストリング12の数は「4」に限定されない。
【0017】
ストリング12を形成するために、ワイヤ14は、x軸方向に隣接した太陽電池セル10のうちの一方の受光面側のフィンガー電極と、他方の裏面側のフィンガー電極とを接続する。例えば、隣接した第11太陽電池セル10aaと第12太陽電池セル10abとを接続するための5つのワイヤ14は、第11太陽電池セル10aaの受光面側のフィンガー電極と第12太陽電池セル10abの裏面側のフィンガー電極とを電気的に接続する。ワイヤ14の数は「5」に限定されない。ワイヤ14と太陽電池セル10との接続については後述する。
【0018】
渡り配線材16は、y軸方向に延びて、互いに隣接する2つのストリング12を電気的に接続する。例えば、第1ストリング12aのx軸の正方向側端に位置する第15太陽電池セル10aeと、第2ストリング12bのx軸の正方向側端に位置する第25太陽電池セル10beは、渡り配線材16によって電気的に接続される。さらに、第2ストリング12bと第3ストリング12cは、x軸の負方向側において渡り配線材16によって電気的に接続されるとともに、第3ストリング12cと第4ストリング12dは、x軸の正方向側において渡り配線材16によって電気的に接続される。その結果、複数のストリング12は、渡り配線材16によって直列に接続される。
【0019】
第1ストリング12aのx軸の負方向側端における第11太陽電池セル10aaには、渡り配線材16が接続されておらず、その代わりに終端配線材18が接続される。第4ストリング12dのx軸の負方向側端における第41太陽電池セル10daにも終端配線材18が接続される。各終端配線材18には、図示しない取出し配線材が接続される。取出し配線材は、複数の太陽電池セル10において発電した電力を太陽電池モジュール100外に取り出すための配線材である。
図1では、太陽電池モジュール100の構成を簡略化して示しているが、バイパスダイオードを入れるために、片側に渡り配線材16が複数本存在してもよい。
【0020】
図2は、太陽電池モジュール100の構造を示すx軸に沿った断面図であり、
図1のA-A’断面図である。太陽電池モジュール100は、第12太陽電池セル10ab、第13太陽電池セル10ac、ワイヤ14、第1保護部材30、第1封止部材32、第2封止部材34、第2保護部材36、第1フィルム40、第2フィルム42を含む。
図2の上側が受光面側に相当し、下側が裏面側に相当する。ここでは、第12太陽電池セル10ab、第13太陽電池セル10acが示されるが、他の太陽電池セル10に対しても同様の構造である。
【0021】
第1保護部材30は、太陽電池モジュール100の受光面側に配置されており、太陽電池モジュール100の表面を保護する。また、太陽電池モジュール100は、x-y平面において、フレーム20に囲まれるような矩形状を有する。第1保護部材30には、透光性および遮水性を有するガラス、透光性プラスチック等が使用される。第1保護部材30によって太陽電池モジュール100の機械的強度が高くされる。
【0022】
第1封止部材32は、第1保護部材30の裏面側に積層される。第1封止部材32は、第1保護部材30と太陽電池セル10との間に配置されて、これらを接着する。第1封止部材32として、例えば、ポリオレフィン、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、PVB(ポリビニルブチラール)、ポリイミド等の樹脂フィルムのような熱可塑性樹脂が使用される。熱硬化性樹脂が使用されてもよい。第1封止部材32の詳細は後述する。第1封止部材32は、透光性を有するとともに、第1保護部材30におけるx-y平面と略同一寸法の面を有するシート材によって形成される。
【0023】
第12太陽電池セル10ab、第13太陽電池セル10acは、第1保護部材30の裏面側に積層される。各太陽電池セル10は、z軸の正方向側に受光面22を向け、z軸の負方向側に裏面24を向けて配置される。受光面22を「第1面」と呼ぶ場合、裏面24は「第2面」と呼ばれる。また、受光面側から見た場合に、第13太陽電池セル10acは、第12太陽電池セル10abに一部重複して配置される。具体的には、第12太陽電池セル10abの受光面22のx軸の正方向側部分に、第13太陽電池セル10acの裏面24のy軸の負方向側部分が重ねられる。隣接した2つの太陽電池セル10が重ねられる部分は重複部分200と呼ばれる。太陽電池セル10の受光面22には、ワイヤ14、第1フィルム40が配置され、太陽電池セル10の裏面24には、ワイヤ14、第2フィルム42が配置される。第1フィルム40、第2フィルム42はフォイルとも呼ばれる。ここでは、太陽電池セル10に対するワイヤ14、第1フィルム40、第2フィルム42の配置を説明するために、
図3を使用する。
【0024】
図3は、太陽電池モジュール100において使用されるワイヤフィルム90の構造を示す斜視図である。ワイヤフィルム90は、太陽電池モジュール100の製造とは別に予め製造されている。ワイヤフィルム90は、ワイヤ14、第1フィルム40、第2フィルム42、第1接着層44、第2接着層46を含む。第1フィルム40は、隣接した2つの太陽電池セル10の一方、例えば、第12太陽電池セル10abの受光面22側に配置される。第1フィルム40における第12太陽電池セル10ab側の面には第1接着層44が配置され、第1接着層44には複数のワイヤ14が配置される。第1接着層44は、第12太陽電池セル10abの受光面22に第1フィルム40および複数のワイヤ14を接着可能である。第1フィルム40と複数のワイヤ14の配置の関係は後述の
図4(a)に示される。例えば、第1接着層44の厚みは数~数十μm、第1フィルム40の厚みは50~100μm程度、第12太陽電池セル10abの厚みは50~180μm、ワイヤ14の直径は100~500μm程度である。
【0025】
第2フィルム42は、隣接した2つの太陽電池セル10の他方、例えば、第13太陽電池セル10acの裏面24側に配置される。第2フィルム42における第13太陽電池セル10ac側の面には第2接着層46が配置され、第2接着層46には複数のワイヤ14が配置される。第2接着層46は、第13太陽電池セル10acの裏面24に第2フィルム42および複数のワイヤ14を接着可能である。これにより、複数のワイヤ14は、第12太陽電池セル10abの受光面22に接続されるとともに、第13太陽電池セル10acの裏面24に接続される。その結果、各太陽電池セル10のフィンガー電極(図示せず)が複数のワイヤ14によって接続される。第2フィルム42と複数のワイヤ14の配置の関係は後述の
図4(a)に示される。
【0026】
例えば、第1フィルム40のサイズが第12太陽電池セル10abの受光面22のサイズよりも小さくされると、第12太陽電池セル10abの受光面22における第13太陽電池セル10ac側の部分には第1フィルム40が存在しない。また、第2フィルム42のサイズが第13太陽電池セル10acの裏面24のサイズよりも小さくされると、第13太陽電池セル10acの裏面24における第12太陽電池セル10ab側の部分には第2フィルム42が存在しない。その結果、
図2に示されるように、重複部分200において、第12太陽電池セル10abの受光面22の一部と、第13太陽電池セル10acの裏面24の一部はワイヤ14を挟んで対向する。例えば、重複部分200では、第1フィルム40あるいは第2フィルム42のないワイヤ14を挟んで第12太陽電池セル10abの受光面22と、第13太陽電池セル10acの裏面24とが重ねられる。第12太陽電池セル10abから第13太陽電池セル10acに向かう方向における重複部分200の長さ、つまり重なり幅は例えば、0.2~0.5mmにされる。
【0027】
ここでは、
図3に示された第1フィルム40と第2フィルム42との構造をさらに説明する。
図4(a)-(b)は、太陽電池セル10に取り付ける前の第1フィルム40と第2フィルム42の構造を示す断面図である。特に、
図4(a)は、
図2の第12太陽電池セル10abの近傍をy軸に沿って切断した場合の断面図であり、かつ第12太陽電池セル10abに第1フィルム40と第2フィルム42とを貼り付ける前の断面図である。
図2に示されるように、
図4(a)に示される第1フィルム40と第2フィルム42は、互いに異なったワイヤフィルム90に含まれる。
【0028】
第1フィルム40は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタラート)等の透明な樹脂フィルムで構成される。第1フィルム40は、x-y平面において、太陽電池セル10の大きさ以下となる大きさの矩形状を有する。第1フィルム40の裏面側に配置される第1接着層44には、例えば、ポリオレフィンが使用されるが、EVAが使用されてもよい。第1接着層44は、x-y平面において、第1フィルム40と同等の形状を有する。第1接着層44の裏面側には、複数のワイヤ14が配置される。
【0029】
図4(b)は、
図4(a)と同一方向におけるワイヤ14の断面図である。ワイヤ14は円筒形状で延びており、円形の断面を有する。ワイヤ14は、100~500μm、好ましくは300μmの直径を有するので、太陽電池モジュールに一般的に使用されるタブ線の幅1~2mmよりも細い。ワイヤ14は、例えば銅を含んで構成される。ワイヤ14の外周には、厚みが5μmから30μmの半田層50によるコーティングがなされる。半田層50は、融点の低い半田により形成されており、例えば、当該半田は、スズ-銀-ビスマスの組成を有する。その場合、半田層50の融点は約140℃である。ここで、太陽電池セル10のフィンガー電極とワイヤ14の半田層50が接続している場合もある。
図4(a)に戻る。ここでは、一例として、5本のワイヤ14が示されるが、一般的にワイヤ14の本数は10~20本とされ、太陽電池モジュールに一般的に使用されるタブ線の数本よりも多い。
【0030】
第2フィルム42は、第1フィルム40と同様に透明な樹脂フィルムで構成される。ここで、第2フィルム42は、非透明の樹脂フィルム、例えば、白色の樹脂フィルムで構成されてもよい。第2フィルム42は、x-y平面において、太陽電池セル10の大きさ以下となる大きさの矩形状を有する。第2フィルム42の受光側に配置される第2接着層46には、第1接着層44と同様に、例えば、ポリオレフィンまたはEVAが使用される。第2接着層46は、x-y平面において、第2フィルム42と同等の形状を有する。第2接着層46の受光面側には、複数のワイヤ14が配置される。ワイヤ14の構造は
図4(b)のように示される。
図2に戻る。
【0031】
他の太陽電池セル10に対しても第1フィルム40と第2フィルム42が接着されることによって、
図1に示すようなストリング12が形成される。第2封止部材34は、第1封止部材32の裏面側に積層される。第2封止部材34は、第1封止部材32との間で、複数の太陽電池セル10、ワイヤ14、渡り配線材16、終端配線材18、第1フィルム40、第2フィルム42等を封止する。つまり、第1封止部材32は、第1接着層44によりワイヤ14が接着された受光面22側から太陽電池セル10を封止し、第2封止部材34は、第2接着層46によりワイヤ14が接着された裏面24側から太陽電池セル10を封止する。第2封止部材34には、第1封止部材32と同様のものを用いることができる。また、ラミネート・キュア工程における加熱によって、第2封止部材34は第1封止部材32と一体化される。
【0032】
第2保護部材36は、第1保護部材30に対向するように、第2封止部材34の裏面側に積層される。第2保護部材36は、バックシートとして太陽電池モジュール100の裏面側を保護する。第2保護部材36としては、PET、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVF(ポリフッ化ビニル)等の樹脂フィルム、Al箔をポリオレフィン等の樹脂フィルムで挟んだ構造を有する積層フィルムなどが使用される。
【0033】
以下では、ペイビング技術を使用する場合においても耐荷重性および温度サイクル耐性の低下を抑制するための構造を
図5(a)-(b)を使用しながら説明する。
図5(a)-(b)は、太陽電池モジュール100の構造を示す部分断面図であり、特に、
図5(a)は、
図2における重複部分200の周辺を示す部分断面図である。
図2に示されるようにワイヤ14が延びる方向はx軸に対してずれている。しかしながら、以下では、説明を明瞭にするために、ワイヤ14が延びる方向をx軸と示す。
【0034】
重複部分200において、第12太陽電池セル10abの受光面22とワイヤ14の間には、第2封止部材34が存在する部分が含まれる。特に、重複部分200において、第12太陽電池セル10abの第1端部210が配置される部分には、第2封止部材34が存在する。これは、第12太陽電池セル10abとワイヤ14とが接触した場合における第12太陽電池セル10abに加わる荷重を第2封止部材34により緩和させるためである。また、重複部分200において、第13太陽電池セル10acの裏面24とワイヤ14の間には、第1封止部材32が存在する部分が含まれる。特に、重複部分200において、第13太陽電池セル10acの第2端部220が配置される部分には、第1封止部材32が存在する。これは、第13太陽電池セル10acとワイヤ14とが接触した場合における第13太陽電池セル10acに加わる荷重を第1封止部材32により緩和させるためである。
【0035】
ここで、第12太陽電池セル10abの受光面22における第1端部210側の部分と、第13太陽電池セル10acの裏面24における第2端部220側の部分は、欠けているように示されている。しかしながら、第12太陽電池セル10abの受光面22とワイヤ14との間、第13太陽電池セル10acの裏面24とワイヤ14との間における第1封止部材32、第2封止部材34等の回り込みを明瞭に示すために、欠けているように示されているだけであり、実際には欠けていない。また、実際には、回り込んだ第1封止部材32、第2封止部材34等の体積分だけ、第12太陽電池セル10abと第13太陽電池セル10acが外側に曲がっている。第13太陽電池セル10acは、図中の点線の形状であってもよい。これは以下の図においても同様である。
【0036】
第1封止部材32と第2封止部材34は透明充填材であり、前述の材料で形成される。第1封止部材32と第2封止部材34は、ラミネート加工により一体化されてもよく、互いに接している。第1封止部材32と第2封止部材34には架橋性、柔軟性、高流動性をもつものが望ましい。柔らかい架橋充填材は、耐荷重性および温度サイクル(TC:Thermal Cycling)耐性維持に効果があるからである。また、所望の場所に充填材を配置するには、高流動性が必要である。そこで、第1封止部材32と第2封止部材34は、架橋性として、キュア後に50%以上のゲル分率を有する。また、第1封止部材32と第2封止部材34は、柔軟性として、20MPa以下(好ましくは15MPa以下、さらに好ましくは10MPa以下)となる室温での貯蔵粘弾性を有する。また、第1封止部材32と第2封止部材34は、高い流動性として、0.5MPa以下(好ましくは0.1MPa以下、さらに好ましくは0.01MPa以下)となる100℃での貯蔵弾性率を有する。
【0037】
第1封止部材32と第2封止部材34は、異なった材質であってもよく、第2封止部材34は白色に着色されていてもよい。例えば、第1封止部材32はポリオレフィンであり、第2封止部材34はEVAである。このような第2封止部材34においても、架橋性、高流動性が求められる。このような第2封止部材34は、受光面側から見えないように複数の太陽電池セル10に隠れるように配置される。
【0038】
図5(b)は、
図5(a)のB-B’断面図である。これは、重複部分200において、第12太陽電池セル10abの第1端部210および第13太陽電池セル10acの第2端部220が配置される部分以外の部分での断面図である。重複部分200において、第12太陽電池セル10abの受光面22とワイヤ14とが非接続であるとともに、第13太陽電池セル10acの裏面24とワイヤ14とが非接続である。これにより、ワイヤ14の移動の自由度が大きくなり、第12太陽電池セル10abと第13太陽電池セル10acに加わるワイヤ14による応力が低減される。
【0039】
架橋性の樹脂で囲まれていることによって、次の3つの効果が得られる。1つ目は、樹脂の柔らかさにより荷重による応力が低減されることである。これは、間に柔らかいものがあることによりクッションの役割が果たされるためである。2つ目は、非接続による温度サイクル時の応力が緩和されることである。これは、ワイヤ14と太陽電池セル10が全領域で接続されている場合に比べ伸縮の逃げ場があるためである。3つ目は、樹脂が架橋されていることにより温度サイクル時の伸縮応力が低減されることである。これは、架橋していない樹脂は激しく伸縮する原因となるためである。
【0040】
重複部分200において第12太陽電池セル10abの第1端部210と第13太陽電池セル10acの第2端部220が配置される部分において、ワイヤ14と第1封止部材32と第2封止部材34の高さの和は、ワイヤ14と導電性物質(図示せず)の高さの和よりも大きくされる。導電性物質は、例えば、ワイヤ14と太陽電池セル10とを接続するための半田である。重複部分200における第12太陽電池セル10abの受光面22と第13太陽電池セル10acの裏面24との間では、第1封止部材32と第2封止部材34の体積がワイヤ14の体積よりも大きくされる。
【0041】
ペイビング技術を使用する場合においても耐荷重性および温度サイクル耐性の低下を抑制するための構造は、
図5(a)-(b)に限定されない。
図6(a)-(b)は、太陽電池モジュール100の第1変形例の構造を示す部分断面図であり、特に
図6(a)は、
図2における重複部分200の周辺を示す部分断面図である。ここでは、これまでの構造との差異を中心に説明する。
図6(a)では、第13太陽電池セル10acの裏面24に取り付けられる第2フィルム42が重複部分200にも配置される。そのため、重複部分200における第12太陽電池セル10abの受光面22とワイヤ14の間には、2種類の樹脂が含まれる。2種類の樹脂は、第2封止部材34と第2フィルム42である。重複部分200における第12太陽電池セル10abの受光面22とワイヤ14の間に2種類以上の樹脂が含まれてもよい。第2フィルム42の架橋性は、第1封止部材32と第2封止部材34の架橋性よりも低い。そのため、第1封止部材32と第2封止部材34のゲル分率は、50%以上であり、第2フィルム42のゲル分率は、50%以下である。
【0042】
図6(b)は、
図6(a)のC-C’断面図である。これは、第12太陽電池セル10abの第1端部210における断面図である。ここでは、これまでの構造との差異を中心に説明する。導電性物質60は、第13太陽電池セル10acの裏面24にワイヤ14を電気的・機械的に接続する。導電性物質60は例えば半田、導電性接着剤等である。導電性物質60によってワイヤ14が取り付けられた裏面24をz軸の負方向側から覆うように第2フィルム42が配置される。また、第2フィルム42と受光面22との間には、第2封止部材34が配置される。このように柔軟性および架橋性の異なる2種類の樹脂が使用されるので、1種類の樹脂が使用される場合よりも、耐荷重性および温度サイクル耐性の低下が抑制される。
【0043】
図7は、太陽電池モジュール100の第2変形例の構造を示す部分断面図であり、特に
図7は、
図2における重複部分200の周辺を示す部分断面図である。ここでは、これまでの構造との差異を中心に説明する。
図7では、第12太陽電池セル10abの受光面22に取り付けられる第1フィルム40が重複部分200にも配置される。そのため、重複部分200における第13太陽電池セル10acの裏面24とワイヤ14の間には、2種類以上の樹脂が含まれる。2種類の樹脂は、第1封止部材32と第1フィルム40である。第1フィルム40の架橋性と、第1封止部材32と第2封止部材34の架橋性との関係は、前述の第2フィルム42の架橋性と、第1封止部材32と第2封止部材34の架橋性との関係と同様である。ここで、第1封止部材32と第2封止部材34は、異なった材質であってもよく、第2封止部材34は白色に着色されていてもよい。
【0044】
図8(a)-(b)は、太陽電池モジュール100の第3変形例の構造を示す部分断面図であり、特に
図8(a)は、
図2における重複部分200の周辺を示す部分断面図である。ここでは、これまでの構造との差異を中心に説明する。
図8(a)では、重複部分200において第12太陽電池セル10abの第1端部210あるいは第13太陽電池セル10acの第2端部220が非配置の部分Pには、第12太陽電池セル10abの受光面22とワイヤ14と第13太陽電池セル10acの裏面24とが直接接続されている部分が含まれる。つまり、受光面22、ワイヤ14、裏面24とが樹脂を介さずに配置される。受光面22、ワイヤ14、裏面24とが樹脂を介さずに配置されるので、電気抵抗が小さくなる。そのため、太陽電池モジュール100の変換効率が向上する。
【0045】
図8(b)は、
図8(a)のD-D’断面図である。ここでは、これまでの構造との差異を中心に説明する。第1導電性物質60aは、第12太陽電池セル10abの受光面22にワイヤ14を電気的・機械的に接続し、第2導電性物質60bは、第13太陽電池セル10acの裏面24にワイヤ14を電気的・機械的に接続する。第1導電性物質60a、第2導電性物質60bは、前述の導電性物質60と同様である。
【0046】
図9(a)-(b)は、太陽電池モジュール100の第4変形例の構造を示す部分断面図であり、特に
図8(a)は、
図2における重複部分200の周辺を示す部分断面図である。ここでは、これまでの構造との差異を中心に説明する。重複部分200において、第12太陽電池セル10abの受光面22とワイヤ14の間との間には、第2封止部材34が存在する部分が含まれ、第13太陽電池セル10acの裏面24とワイヤ14の間には、第1封止部材32が存在する部分が含まれる。これは、
図5(a)と同様であり、
図9(a)ではさらに、重複部分200における第13太陽電池セル10acの裏面24とワイヤ14の間には、第1封止部材32に加えて隙間70も存在する。隙間70は、太陽電池モジュール100を製造する際に、第1封止部材32が流し込まれなかった空間である。隙間70は、重複部分200における第12太陽電池セル10abの受光面22とワイヤ14の間に存在してもよい。隙間70が形成されることにより、応力が緩和され、耐荷重性および温度サイクル耐性の低下が抑制される。また、隙間70でワイヤ14が動く余地があるので、耐荷重性および温度サイクル耐性の低下が抑制される。
【0047】
図9(b)は、
図9(a)のE-E’断面図である。ここでは、これまでの構造との差異を中心に説明する。第13太陽電池セル10acの裏面24に接するように隙間70が配置される。また、第12太陽電池セル10abの受光面22と第13太陽電池セル10acの裏面24との間において、隙間70以外の部分には、ワイヤ14、第2封止部材34が配置される。
【0048】
図10(a)-(b)は、太陽電池モジュール100の第5変形例、第6変形例の構造を示す部分断面図であり、特に
図10(a)は、
図2における重複部分200の周辺を示す第5変形例の部分断面図である。ここでは、これまでの構造との差異を中心に説明する。重複部分200において、第12太陽電池セル10abの受光面22とワイヤ14とが接する部分は第1接続部分230と示される。また、第13太陽電池セル10acの裏面24とワイヤ14とが接する部分は第2接続部分232と示される。ここでは、第1接続部分230の面積と第2接続部分232の面積が異なる。具体的には、第2接続部分232の面積が第1接続部分230の面積よりも大きい。
【0049】
また、重複部分200において、第12太陽電池セル10abの受光面22とワイヤ14とが接しない部分は非接続部分234と示される。非接続部分234は、重複部分200における第12太陽電池セル10abの受光面22のうち、第1接続部分230以外の部分である。ここでは、第1接続部分230の面積と非接続部分234の面積が異なる。具体的には、非接続部分234の面積が第1接続部分230の面積よりも大きい。第1フィルム40と第2フィルム42は
図7と同様に配置される。そのため、第2変形例であってもよく、第5変形例であってもよいので、構造の自由度が向上する。
【0050】
図10(b)は、
図2における重複部分200の周辺を示す第6変形例の部分断面図である。ここでは、これまでの構造との差異を中心に説明する。
図10(b)は、
図8(a)と
図10(a)との組合せに相当する。
図10(a)と同様に、第13太陽電池セル10acにおける第2接続部分232の面積が、第12太陽電池セル10abにおける第1接続部分230の面積よりも大きい。また、
図10(a)と同様に、第12太陽電池セル10abにおける非接続部分234の面積が、第12太陽電池セル10abにおける第1接続部分230の面積よりも大きい。さらに、重複部分200において第12太陽電池セル10abの第1端部210あるいは第13太陽電池セル10acの第2端部220が非配置の部分Pでは、第12太陽電池セル10abの受光面22とワイヤ14と第13太陽電池セル10acの裏面24とが直接接続される。そのため、第3変形例と第5変形例が第6変形例のように組み合わされてもよいので、構造の自由度が向上する。
【0051】
これまで、ワイヤ14は円筒形状で延びており、円形の断面を有している。ワイヤ14の形状はこれに限定されない。
図11(a)-(d)は、太陽電池モジュール100のさらに別の変形例の構造を示す部分断面図である。これらは
図6(b)等と同様に示され、重複部分200における第12太陽電池セル10abの第1端部210、あるいは重複部分200における第13太陽電池セル10acの第2端部220が配置される部分での断面図である。特に、
図11(a)は第2端部220、
図11(b)は第1端部210における断面図であり、その間の領域でワイヤ14が60°回転している。ワイヤ14は、三角柱形状で延びており、三角形の断面を有する。断面は、例えば正三角形であるとする。
図11(a)において、ワイヤ14は、導電性物質60によって第12太陽電池セル10abの受光面22に取り付けられる。三角形の断面を有するワイヤ14は、太陽電池セル10との接触面積を広く取りつつ入射光をワイヤ14で斜めに反射することによって、光を太陽電池セル10に入射させることができる利点を有する。しかしながら、三角形の断面を有するワイヤ14をそのまままっすぐ使用すると裏面24で頂点側が接してしまい、接触面積が小さくなる。これを防ぐために、
図11(b)のように受光面22に接する部分では、ワイヤ14を60°回転させている。
【0052】
ワイヤ14において、第12太陽電池セル10abの受光面22に最も近接する面の面積が第1面積240と示され、第13太陽電池セル10acの裏面24に最も近接する面の面積が第2面積242と示される。ここで、第1面積240は、第12太陽電池セル10abの受光面22がワイヤ14に向かって平行移動した場合に、ワイヤ14と接触する面積と一致する。同様に、第2面積242は、第13太陽電池セル10acの裏面24がワイヤ14に向かって平行移動した場合に、ワイヤ14と接触する面積と一致する。三角形の断面を有するワイヤ14の場合、第1面積240と第2面積242とは異なる。ここでは、第1面積240よりも第2面積242の方が小さい。このような構造により、第1面積240側よりも第2面積242側の方に多くの第1封止部材32と第2封止部材34とが存在する。これは、第2面積242側に存在する第1封止部材32と第2封止部材34の体積が、第1面積240側に存在する第1封止部材32と第2封止部材34の体積よりも大きいことに相当する。
【0053】
2つの太陽電池セル10がワイヤ14に接するように変形した場合に、第12太陽電池セル10abの受光面22がワイヤ14に接触するときの第1面積240と、第13太陽電池セル10acの裏面24がワイヤ14に接触するときの第2面積242とが異なり、後者の方が小さい。接触面積が小さいので、第13太陽電池セル10acの裏面24に加わる単位面積あたりの荷重は、第12太陽電池セル10abの受光面22に加わる単位面積あたりの荷重よりも大きくなるが、第1封止部材32と第2封止部材34により裏面24の破損が防止される。
【0054】
図11(b)において、ワイヤ14は、導電性物質60によって第13太陽電池セル10acの裏面24に取り付けられる。
図11(b)において、第2端部220と第1端部210間の領域でワイヤ14が60°回転しているため、第13太陽電池セル10acの裏面24に対して、ワイヤ14のうちひとつの面が接している。このため、ワイヤ14と第13太陽電池セル10acの接触面積を大きくすることができる。
【0055】
前述のごとく、ワイヤ14において、第12太陽電池セル10abの受光面22に最も近接する面の面積が第1面積240と示され、第13太陽電池セル10acの裏面24に最も近接する面の面積が第2面積242と示される。ここでも、第1面積240は、第12太陽電池セル10abの受光面22がワイヤ14に向かって平行移動した場合に、ワイヤ14と接触する面積と一致する。同様に、第2面積242は、第13太陽電池セル10acの裏面24がワイヤ14に向かって平行移動した場合に、ワイヤ14と接触する面積と一致する。一方、第2面積242よりも第1面積240の方が小さい。このような構造により、第2面積242側よりも第1面積240側の方に多くの第1封止部材32と第2封止部材34とが存在する。これは、第1面積240側に存在する第1封止部材32と第2封止部材34の体積が、第2面積242側に存在する第1封止部材32と第2封止部材34の体積よりも大きいことに相当する。
【0056】
2つの太陽電池セル10がワイヤ14に接するように変形した場合に、第12太陽電池セル10abの受光面22がワイヤ14に接触するときの第1面積240と、第13太陽電池セル10acの裏面24がワイヤ14に接触するときの第2面積242とが異なり、前者の方が小さい。接触面積が小さいので、第12太陽電池セル10abの受光面22に加わる単位面積あたりの荷重は、第13太陽電池セル10acの裏面24に加わる単位面積あたりの荷重よりも大きくなるが、第1封止部材32と第2封止部材34により受光面22の破損が防止される。
【0057】
図11(c)は第2端部220、
図11(d)は第1端部210における断面図である。
図11(c)は、これまでと比較してワイヤ14の形状が異なる。ワイヤ14は、複数の凸凹形状を備えた断面を有する。
図11(c)において、ワイヤ14は、導電性物質60によって第12太陽電池セル10abの受光面22に取り付けられる。
【0058】
ワイヤ14において、第12太陽電池セル10abの受光面22に最も近接する面の面積が第1面積240と示され、第13太陽電池セル10acの裏面24に最も近接する面の面積が第2面積242と示される。ここでも、第1面積240は、第12太陽電池セル10abの受光面22がワイヤ14に向かって平行移動した場合に、ワイヤ14と接触する面積と一致する。同様に、第2面積242は、第13太陽電池セル10acの裏面24がワイヤ14に向かって平行移動した場合に、ワイヤ14と接触する面積と一致する。ここでは、第1面積240よりも第2面積242の方が小さい。このような構造により、第1面積240側よりも第2面積242側の方に多くの第1封止部材32と第2封止部材34とが存在する。これは、第2面積242側に存在する第1封止部材32と第2封止部材34の体積が、第1面積240側に存在する第1封止部材32と第2封止部材34の体積よりも大きいことに相当する。
【0059】
2つの太陽電池セル10がワイヤ14に接するように変形した場合に、第12太陽電池セル10abの受光面22がワイヤ14に接触するときの第1面積240と、第13太陽電池セル10acの裏面24がワイヤ14に接触するときの第2面積242とが異なり、後者の方が小さい。接触面積が小さいので、第13太陽電池セル10acの裏面24に加わる単位面積あたりの荷重は、第12太陽電池セル10abの受光面22に加わる単位面積あたりの荷重よりも大きくなるが、第1封止部材32と第2封止部材34により裏面24の破損が防止される。
【0060】
図11(d)において、ワイヤ14は、導電性物質60によって第13太陽電池セル10acの裏面24に取り付けられる。
図11(a)-(d)の構造において、第1面積240と第2面積242のうちの小さい方側に存在する第1封止部材32、第2封止部材34の室温での貯蔵弾性率が、大きい方側に存在する第1封止部材32、第2封止部材34の室温での貯蔵弾性率よりも小さくされてもよい。また、導電性物質60は樹脂でもよく、充填材の室温での貯蔵弾性率の方が導電性物質60の室温での貯蔵弾性率よりも小さくされていてもよい。
【0061】
以下では、太陽電池モジュール100の製造方法について説明する。まず、隣接した2つの太陽電池セル10を接続するために、
図3に示されるワイヤフィルム90が用意される。隣接した2つの太陽電池セル10の一方にワイヤフィルム90の第1フィルム40を重ね合わせるとともに、隣接した2つの太陽電池セル10の他方にワイヤフィルム90の第2フィルム42を重ね合わせることによって、ストリング12が生成される。その際、隣接した2つの太陽電池セル10の一部が重ねられる。また、複数のストリング12は渡り配線材16等によって接続される。z軸の正方向から負方向に向かって、第1保護部材30、第1封止部材32、複数のストリング12、第2封止部材34、第2保護部材36が順に重ね合わせられることによって、積層体が生成される。これに続いて、積層体に対して、ラミネート・キュア工程がなされる。この工程では、積層体から空気を抜き、加熱、加圧して、積層体を一体化する。ラミネート・キュア工程における真空ラミネートでは、温度が前述のごとく、50~140℃程度に設定される。さらに、第2保護部材36に対して、端子ボックスが接着剤にて取り付けられる。
【0062】
本実施例によれば、重複部分200において、第12太陽電池セル10abとワイヤ14の間と、第13太陽電池セル10acとワイヤ14の間との両方に樹脂が存在する部分が含まれるので、耐荷重性および温度サイクル耐性の低下を抑制できる。また、重複部分200において、第12太陽電池セル10abとワイヤ14の間と、第13太陽電池セル10acとワイヤ14の間との両方に樹脂が存在する部分が含まれるので、製造性を確保しつつ信頼性を向上したペイビングモジュールを製造できる。また、重複部分200において、第12太陽電池セル10abとワイヤ14の間に存在する樹脂と、第13太陽電池セル10acとワイヤ14の間に存在する樹脂の少なくとも一方が20MPa以下となる室温での貯蔵弾性率を有するので、耐荷重性を保持できる。また、重複部分200において、第12太陽電池セル10abとワイヤ14の間に存在する樹脂と、第13太陽電池セル10acとワイヤ14の間に存在する樹脂の少なくとも一方が50%以上のゲル分率を有するので、架橋性を保持できる。
【0063】
また、重複部分200において、第12太陽電池セル10abとワイヤ14の間に存在する樹脂と、第13太陽電池セル10acとワイヤ14の間に存在する樹脂では材質が異なるので、さまざまな樹脂を使用できる。また、重複部分200における第12太陽電池セル10abとワイヤ14の間には2種類以上の樹脂が含まれるので、さまざまな樹脂を使用できる。また、重複部分200において、第12太陽電池セル10abとワイヤ14の間に存在する樹脂と、第13太陽電池セル10acとワイヤ14の間に存在する樹脂は互いに接するとともに架橋されるので、温度サイクル耐性の低下を抑制できる。また、重複部分200における第12太陽電池セル10abとワイヤ14の間に含まれる樹脂は白色に着色されるので、太陽電池セル10を透過した光を太陽電池セル10の方に反射できる。また、太陽電池セル10を透過した光が太陽電池セル10の方に反射されるので、変換効率を向上できる。
【0064】
また、重複部分200において第1端部210あるいは第2端部220が非配置の部分には、第12太陽電池セル10abとワイヤ14と第13太陽電池セル10acとが直接接続されている部分が含まれるので、電気抵抗を低減できる。また、電気抵抗が低減されるので、変換効率を向上できる。また、重複部分200において、第12太陽電池セル10abとワイヤ14の間と、第13太陽電池セル10acとワイヤ14の間との少なくとも一方に樹脂と隙間が存在するので、応力が緩和され、耐荷重性および温度サイクル耐性の低下が抑制される。また、重複部分200において、第13太陽電池セル10acとワイヤ14の接続部分の面積が、第12太陽電池セル10abとワイヤ14の接続部分の面積よりも大きいので、構造の自由度を向上できる。また、重複部分200において、第12太陽電池セル10abとワイヤ14の非接続部分の面積が、第12太陽電池セル10abとワイヤ14の接続部分の面積よりも大きいので、構造の自由度を向上できる。
【0065】
また、重複部分200において、第12太陽電池セル10abとワイヤ14とが非接続であるので、ワイヤ14の移動の自由度を向上できる。また、ワイヤ14の移動の自由度が向上するので、第12太陽電池セル10abに加わる応力を低減できる。また、重複部分200において、第13太陽電池セル10acとワイヤ14とが非接続であるので、ワイヤ14の移動の自由度を向上できる。また、ワイヤ14の移動の自由度が向上するので、第13太陽電池セル10acに加わる応力を低減できる。また、第1端部210と第2端部220が配置される部分には、第12太陽電池セル10abとワイヤ14の間と、第13太陽電池セル10acとワイヤ14の間との両方に樹脂が存在するので、耐荷重性および温度サイクル耐性の低下を抑制できる。また、重複部分200における第12太陽電池セル10abと第13太陽電池セル10acとの間では、樹脂の体積がワイヤ14の体積よりも大きいので、耐荷重性および温度サイクル耐性の低下を抑制できる。
【0066】
また、第1面積と第2面積のうちの小さい方側に樹脂が存在するので、耐荷重性および温度サイクル耐性の低下を抑制できる。また、第1面積と第2面積のうちの小さい方側に存在する樹脂の体積が、第1面積と第2面積のうちの大きい方側に存在する樹脂の体積よりも大きいので、耐荷重性および温度サイクル耐性の低下を抑制できる。また、第1面積と第2面積のうちの小さい方側に存在する樹脂の室温での貯蔵弾性率が、第1面積と第2面積のうちの大きい方側に存在する樹脂の室温での貯蔵弾性率よりも小さいので、耐荷重性の低下を抑制できる。また、三角柱ワイヤを用いた場合に重複部分でワイヤの角度が変化し、セル端で接触面積が大きくなることにより耐荷重性を保持できる。また、表裏非対称の配線材を角度を変えずに接続した場合、第12太陽電池セル10abに対するワイヤ14の接触面積と、第13太陽電池セル10acの裏面24に対するワイヤ14の接触面積とが異なる。ワイヤ14が同じ向きのまま第12太陽電池セル10abと第13太陽電池セル10acに接続されているので、製造が容易になる。
【0067】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の太陽電池モジュール(100)は、互いに反対を向いた受光面(22)と裏面(24)とを有する第12太陽電池セル(10ab)と、互いに反対を向いた受光面(22)と裏面(24)とを有し、受光面(22)側から見た場合に第12太陽電池セル(10ab)に一部重複して配置される第13太陽電池セル(10ac)と、第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)に接続されるとともに、第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)に接続されるワイヤ(14)とを備える。第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)の一部と、第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)の一部は、重複部分(200)においてワイヤ(14)を挟んで対向し、重複部分(200)には、第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)とワイヤ(14)の間と、第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)とワイヤ(14)の間との両方に樹脂が存在する部分が含まれる。
【0068】
重複部分(200)における第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)とワイヤ(14)の間に存在する樹脂と、重複部分(200)における第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)とワイヤ(14)の間に存在する樹脂の少なくとも一方は、20MPa以下となる室温での貯蔵弾性率を有してもよい。
【0069】
重複部分(200)における第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)とワイヤ(14)の間に存在する樹脂と、重複部分(200)における第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)とワイヤ(14)の間に存在する樹脂の少なくとも一方は、50%以上のゲル分率を有してもよい。
【0070】
重複部分(200)における第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)とワイヤ(14)の間に封止部材が存在してもよい。
【0071】
重複部分(200)における第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)とワイヤ(14)の間に存在する樹脂と、重複部分(200)における第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)とワイヤ(14)の間に存在する樹脂では、材質が異なってもよい。
【0072】
重複部分(200)における第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)とワイヤ(14)の間には、2種類以上の樹脂が含まれていてもよい。
【0073】
重複部分(200)における第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)とワイヤ(14)の間に存在する樹脂と、重複部分(200)における第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)とワイヤ(14)の間に存在する樹脂は、互いに接するとともに架橋されていてもよい。
【0074】
重複部分(200)における第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)とワイヤ(14)の間に含まれる樹脂は白色に着色されていてもよい。
【0075】
重複部分(200)において第12太陽電池セル(10ab)の第1端部(210)あるいは第13太陽電池セル(10ac)の第2端部(220)が非配置の部分には、第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)とワイヤ(14)と第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)とが直接接続されている部分が含まれていてもよい。
【0076】
重複部分(200)における第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)とワイヤ(14)の間と、重複部分(200)における第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)とワイヤ(14)の間との少なくとも一方には、樹脂と隙間が存在してもよい。
【0077】
重複部分(200)における第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)とワイヤ(14)の接続部分の面積が、重複部分(200)における第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)とワイヤ(14)の接続部分の面積よりも大きい。
【0078】
重複部分(200)における第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)とワイヤ(14)の非接続部分の面積が、重複部分(200)における第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)とワイヤ(14)の接続部分の面積よりも大きい。
【0079】
重複部分(200)において、第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)とワイヤ(14)とが非接続であってもよい。
【0080】
重複部分(200)において、第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)とワイヤ(14)とが非接続であってもよい。
【0081】
重複部分(200)において、第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)と第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)のどちらともワイヤ(14)とが非接続である領域を含んでもよい。
【0082】
重複部分(200)において第12太陽電池セル(10ab)の第1端部(210)が配置される部分には、第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)とワイヤ(14)の間に樹脂が存在しており、第13太陽電池セル(10ac)の第2端部(220)が配置される部分には、第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)とワイヤ(14)の間に樹脂が存在してもよい。
【0083】
重複部分(200)における第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)と第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)との間では、樹脂の体積がワイヤ(14)の体積よりも大きい。
【0084】
第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)がワイヤ(14)に向かって平行移動した場合にワイヤ(14)と接触する第1面積(240)と、第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)がワイヤ(14)に向かって平行移動した場合にワイヤ(14)と接触する第2面積(242)とが異なっており、重複部分(200)において第12太陽電池セル(10ab)の第1端部(210)と第13太陽電池セル(10ac)の第2端部(220)が配置される部分では、第1面積(240)と第2面積(242)のうちの小さい方側に樹脂が存在してもよい。
【0085】
第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)がワイヤ(14)に向かって平行移動した場合にワイヤ(14)と接触する第1面積(240)と、第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)がワイヤ(14)に向かって平行移動した場合にワイヤ(14)と接触する第2面積(242)とが異なっており、重複部分(200)において第12太陽電池セル(10ab)の第1端部(210)と第13太陽電池セル(10ac)の第2端部(220)が配置される部分では、第1面積(240)と第2面積(242)のうちの小さい方側に存在する樹脂の体積が、第1面積(240)と第2面積(242)のうちの大きい方側に存在する樹脂の体積よりも大きい。
【0086】
第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)がワイヤ(14)に向かって平行移動した場合にワイヤ(14)と接触する第1面積(240)と、第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)がワイヤ(14)に向かって平行移動した場合にワイヤ(14)と接触する第2面積(242)とが異なっており、重複部分(200)において第12太陽電池セル(10ab)の第1端部(210)と第13太陽電池セル(10ac)の第2端部(220)が配置される部分では、第1面積(240)と第2面積(242)のうちの小さい方側に存在する樹脂の室温での貯蔵弾性率が、第1面積(240)と第2面積(242)のうちの大きい方側に存在する樹脂の室温での貯蔵弾性率よりも小さい。
【0087】
重複部分(200)における第12太陽電池セル(10ab)の第1端部(210)でのワイヤ(14)の角度と、重複部分(200)における第13太陽電池セル(10ac)の第2端部(220)でのワイヤ(14)の角度とが異なってもよい。
【0088】
重複部分(200)における第12太陽電池セル(10ab)の第1端部(210)での第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)に対するワイヤ(14)の接触面積と、重複部分(200)における第13太陽電池セル(10ac)の第2端部(220)での第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)に対するワイヤ(14)の接触面積とが異なってもよい。
【0089】
本開示の別の態様は、太陽電池モジュール作製方法である。この方法は、互いに反対を向いた受光面(22)と裏面(24)とを有する第12太陽電池セル(10ab)と、互いに反対を向いた受光面(22)と裏面(24)とを有し、受光面(22)から見た場合に第12太陽電池セル(10ab)に一部重複して配置される第13太陽電池セル(10ac)を、第12太陽電池セル(10ab)の受光面(22)と第13太陽電池セル(10ac)の裏面(24)をワイヤ(14)で接続するストリング作製工程と、該ストリングを、第1保護部材(30)、第2保護部材(36)と、室温での貯蔵弾性率が20MPa以下、100℃での貯蔵弾性率が0.5MPa以下の第1封止部材(32)、第2封止部材(34)とで挟んで第1封止部材(32)、第2封止部材(34)の温度が100℃以上になるようラミネートする工程と、を含む。
【0090】
以上、本開示について、実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、また、そうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0091】
10 太陽電池セル、 12 ストリング、 14 ワイヤ、 16 渡り配線材、 18 終端配線材、 20 フレーム、 22 受光面、 24 裏面、 30 第1保護部材、 32 第1封止部材、 34 第2封止部材、 36 第2保護部材、 40 第1フィルム、 42 第2フィルム、 44 第1接着層、 46 第2接着層、 50 半田層、 60 導電性物質、 70 隙間、 90 ワイヤフィルム、 100 太陽電池モジュール、 200 重複部分、 210 第1端部、 220 第2端部。