(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】シート巻取軸
(51)【国際特許分類】
B65H 18/04 20060101AFI20240701BHJP
B65H 18/10 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B65H18/04
B65H18/10
(21)【出願番号】P 2019164164
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2021-09-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000234122
【氏名又は名称】萩原工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有角 幸三
【合議体】
【審判長】藤本 義仁
【審判官】殿川 雅也
【審判官】門 良成
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-18939(JP,A)
【文献】国際公開第02/055418(WO,A1)
【文献】特開2001-240276(JP,A)
【文献】特開平10-35958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 16/00 - 16/10
B65H 18/00 - 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯にシートを巻き取るためのシート巻取軸であって、
前記シート巻取軸は、基軸にエアフリクション単位ユニットが装着されたものであり、
前記基軸は、圧縮流体を流通させる第1流体路及び第2流体路を有し、
1つの前記エアフリクション単位ユニットは、
前記基軸と相対回転可能な状態で前記基軸に外嵌させた巻取部と、
前記基軸に固定した状態で前記基軸に外嵌させたシリンダリングと、
前記シリンダリングに内蔵され、前記第1流体路から流入した圧縮流体によりスライドする巻芯着脱ピストンと、
前記シリンダリングに内蔵され、前記第2流体路から流入した圧縮流体によりスライドする回転トルク調節ピストンとを備え、
前記巻取部は、
前記巻取部の周方向に配置され前記巻芯着脱ピストンのスライドにより前記巻芯の前記巻取部への固定及び固定の解除を行うチャック機構と、
前記巻芯着脱ピストンが当接する当接部と、
前記回転トルク調節ピストンと対向する摩擦部とを備えており、
前記周方向に配置された前記チャック機構を
1周分備え
た前記巻取部を1つの巻取部とすると、
前記1つの巻取部に対応する前記
巻芯着脱ピストン及び前記回転トルク調節ピストンは、前記圧縮流体の流入によるスライド方向が同一であり、
前記当接部と前記摩擦部は、前記基軸の外周面からの高さが異なった2段構造になっており、
前記巻芯着脱ピストンと前記回転トルク調節ピストンは、前記巻芯着脱ピストンが前記当接部に対応し、前記回転トルク調節ピストンが前記摩擦部に対応するように、前記基軸の外周面からの高さが異っていることを特徴とするシート巻取軸。
【請求項2】
先端の向きの異なる前記巻芯着脱ピストンを、それぞれ第1の巻芯着脱ピストン、第2の巻芯着脱ピストンとし、先端の向きの異なる前記回転トルク調節ピストンを、それぞれ第1の回転トルク調節ピストン、第2の回転トルク調節ピストンとし、
異なる位置にある前記当接部を、それぞれ第1の当接部、第2の当接部とし、異なる位置にある前記摩擦部を、それぞれ第1の摩擦部、第2の摩擦部とすると、
前記シリンダリングの軸方向の両側のうち、一方の側において先端が前記
第1の当接部に向いた前記
第1の巻芯着脱ピストン及び前記一方の側において先端が前記
第1の摩擦部に向いた
前記第1の回転トルク調節ピストンと、他方の側において先端が前記
第2の当接部に向いた前記
第2の巻芯着脱ピストン及び前記他方の側において先端が前記
第2の摩擦部に向いた
前記第2の回転トルク調節ピストンを内蔵することにより、1つの前記エアフリクション単位ユニットに2つの前記巻取部を備える請求項1に記載のシート巻取軸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻芯にシートを巻き取るためのシート巻取軸に関する。
【背景技術】
【0002】
細幅にスリットした紙やフィルム等のシートを巻き取るためにシート巻取軸が用いられており、例えばエアフリクション巻取軸と呼ばれる巻取軸が知られている。エアフリクション巻取軸は、基軸に複数の巻取部を外嵌し、これらを相対回転可能にし、基軸の回転を回転トルク調節部材を介して巻取部に伝える構造である。巻取部には巻芯(例えば紙管)が固定され、巻取部に固定された巻芯にスリットしたシートが巻き取られる。
【0003】
この回転トルクを巻取部に伝える構造を備えず、基軸上に複数の巻芯を固定し、同一回転させてシートを巻き取ると、シートの厚みムラ等に起因して僅かに外径が大きくなった巻取製品に張力が集中し、各製品毎の巻取張力に大きな差異が生じ、巻取製品の巻き不良の原因になる。
【0004】
これに対し、エアフリクション巻取軸は、シートの厚みムラ等に起因して生じる僅かに外径が異なる巻取製品に対しても同じ回転トルクを伝えることができ、僅かに外径の大きい巻取製品に張力が集中することを避けることができる。また、回転トルク調節部材に流入する空気圧を制御することで巻取製品の巻取径に応じた回転トルクを巻芯にかけることができ、結果として外径に応じた最適な巻取張力をシートに与えることができる。このシート巻取軸ではより精密に巻取張力が調整でき、巻芯同士の巻取張力差が少ないことが求められる。
【0005】
そこで、本願発明者は特許文献1に記載のシート巻取軸を発明した。特許文献1に記載のシート巻取軸は、回転トルク調節ピストンが基軸の軸方向にスライドすることで、厳密な巻取張力の調整ができ、バラツキの少ない巻取張力でシートを巻き取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のシート巻取軸は、巻芯着脱ピストン及び回転トルク調節ピストンが基軸の軸と平行な異なる軸上で逆方向にスライドするものが例示されている。特許文献1の例のように巻芯着脱ピストン及び回転トルク調節ピストンが逆方向にスライドする場合、シリンダリングの幅は巻芯着脱ピストンまたは回転トルク調節ピストン自身の長さ以上の幅が必要である。また、巻取部の異なる軸方向部位にそれぞれ巻芯着脱のための機構と、回転トルク調節のための摩擦部位を含む機構がシリンダリングを挟む形で必要で、更にベアリング幅も必要とするため、巻取部の幅を狭くする範囲には限度があった。巻取部の幅を狭くするには、特許文献1に記載されているような別の巻取部の隣接面を摩擦部にすることも考えられるが、大幅には狭くならない上に異物を挟んでしまう問題等もあり、さらなる改良が必要であった。
【0008】
本発明は前記のような従来の問題を解決するものであり、回転トルク調節ピストンを基軸の軸方向にスライドさせる機構を備えることで精密な巻取張力の調整が実現できるシート巻取軸でありながら、細幅巻取製品の巻取に適したシート巻取軸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明のシート巻取軸は、巻芯にシートを巻き取るためのシート巻取軸であって、前記シート巻取軸は、基軸にエアフリクション単位ユニットが装着されたものであり、前記基軸は、圧縮流体を流通させる第1流体路及び第2流体路を有し、1つの前記エアフリクション単位ユニットは、前記基軸と相対回転可能な状態で前記基軸に外嵌させた巻取部と、前記基軸に固定した状態で前記基軸に外嵌させたシリンダリングと、前記シリンダリングに内蔵され、前記第1流体路から流入した圧縮流体によりスライドする巻芯着脱ピストンと、前記シリンダリングに内蔵され、前記第2流体路から流入した圧縮流体によりスライドする回転トルク調節ピストンとを備え、前記巻取部は、前記巻芯着脱ピストンのスライドにより前記巻芯の前記巻取部への固定及び固定の解除を行うチャック機構と、前記巻芯着脱ピストンが当接する当接部と、前記回転トルク調節ピストンと対向する摩擦部とを備えており、前記圧縮流体の流入による前記巻芯着脱ピストン及び前記回転トルク調節ピストンのスライド方向が同一であり、前記当接部と前記摩擦部は、前記基軸の外周面からの高さが異なっていることを特徴とする。
【0010】
前記本発明のシート巻取軸によれば、当接部と摩擦部の2段構造を基軸の軸方向における同じ位置に実現することができる。このことにより、当接部及び摩擦部の基軸の軸方向における配置範囲を、最小限に抑えられるので、巻取部の幅を小さくでき、幅の小さいシートの巻き取りに適したものとなる。このとき、巻芯着脱ピストン及び回転トルク調節ピストンの基軸の外周面からの高さは異なるとは限らない。すなわち、当接部と摩擦部に対応させて巻芯着脱ピストン及び回転トルク調節ピストンを、基軸の外周面からの高さが異なるように、シリンダリング内に配置させてもよいが、巻芯着脱ピストン及び回転トルク調節ピストンの基軸の外周面からの高さは同じにして、当接部と巻芯着脱ピストンの間、摩擦部と回転トルク調節ピストンの間にアダプターリンクを設けて、各ピストンを当接部及び摩擦部に対応させることもできる。
【0011】
また、本発明は幅の狭いシートの巻き取りだけでなく、幅の広いシートの巻き取りにも適しており、巻取部の幅を狭くできることにより、複数の巻芯について、個々の巻芯をそれぞれ複数のカラーに跨って装着する場合に、個々の巻芯に対応するカラーの数の違いによって生じる各巻芯毎の巻取トルクの差を抑えることができ、各巻芯において生じる巻取状態のムラを抑えることができる。
【0012】
前記本発明のシート巻取軸においては、1つの前記チャック機構を備えたことにより、1つの前記巻芯を着脱可能な前記巻取部を1つの巻取部とすると、前記シリンダリングの両側のうち、一方の側に先端が向いた前記巻芯着脱ピストン及び回転トルク調節ピストンと、他方の側に先端が向いた前記巻芯着脱ピストン及び回転トルク調節ピストンを内蔵することにより、1つの前記エアフリクション単位ユニットに2つの前記巻取部を備えることが好ましい。この構成によれば、より幅の狭い巻取部を備えるシート巻取軸を実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果は前記のとおりであり、要約すれば、当接部と摩擦部の2段構造を実現することができ、エアフリクション単位ユニットの基軸の軸方向における配置範囲を最小限に抑えられ、巻芯を把持するカラーのピッチを狭くできるので、幅の狭いシートの巻き取りに適したものとなる。また、本発明は幅の広いシートの巻き取りにも適しており、カラーのピッチ幅を狭くできることにより、複数の巻芯について、個々の巻芯をそれぞれ複数のカラーに跨って装着する場合に、個々の巻芯に対応するカラーの数の違いによって生じる各巻芯毎の巻取トルクの差を抑えることができ、各巻芯において生じる巻取状態のムラを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシート巻取軸を備えたスリッタの一例についての概略構成を示す模式図。
【
図2】本発明の一実施形態に係るシート巻取軸の外観斜視図。
【
図4】
図3のEE線における断面図であり、巻芯の固定状態を示す断面図。
【
図6】本発明の一実施形態において、巻芯の固定解除状態を示すシート巻取軸の断面図。
【
図7】
図3のFF線における断面図であり、巻取部に基軸の回転が伝わる状態を示す断面図。
【
図9】(a)図は
図3の部分拡大図であり、(b)図は
図8の回転トルク調節ピストン近傍の拡大図であり、(c)図は
図5の巻芯着脱ピストン近傍の拡大図。
【
図10】本発明の一実施形態において、基軸に複数のカラーが設けられたシート巻取軸の平面図。
【
図11】(a)図は
図2のAA線における断面図であり、(b)図は
図2のBB線における断面図。
【
図12】(a)図は
図2のCC線における断面図であり、(b)図は
図2のDD線における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るシート巻取軸を備えたスリッタの一例についての概略構成を示す模式図である。スリッタ40には、広幅シート41が巻回されたロール42が装着されている。広幅シート41は、繰り出されながらローラ44等を経て、所定の細幅シート43にスリットされ、シート巻取軸1に装着された紙管等の巻芯(
図4の符号10参照)に巻き取られる。
【0016】
図2は、本発明の一実施形態に係るシート巻取軸1の外観斜視図である。
図3は
図2に示したシート巻取軸1の正面図であり、
図2のa矢視図である。
図4はシート巻取軸1の内部構造を示す断面図であり、
図3のEE線における断面図である。
図5は
図4の要部の拡大図である。
図2において、円柱状の基軸2にエアフリクション単位ユニット50が装着されている。
図2のエアフリクション単位ユニット50は1つ分であり、1つのエアフリクション単位ユニット50は、少なくとも1つの巻芯を脱着可能な最小限の独立した構造体である。
【0017】
図2に示したように、エアフリクション単位ユニット50は2つの巻取部3を有しており、
図4に示したように、エアフリクション単位ユニット50は2つの巻取部3が1つのシリンダリング13を介して基軸2に外嵌されている。
図4において、基軸2及び巻芯10を除く部分は全てエアフリクション単位ユニット50の構成部品である。一方、巻取部3はエアフリクション単位ユニット50に含まれるが、巻取部3は下記のとおり基軸2と相対的に回転可能であり、基軸2と相対的に回転可能な部分が巻取部3である。
【0018】
詳細は後に説明するが、
図5に示したように、巻取部3はチャック機構9を有しており、チャック機構9により、巻芯10の着脱を行うことができる。本実施形態では、1つのチャック機構9を備えたことにより、1つの巻芯10を着脱可能な巻取部3を1つの巻取部という。前記のとおり、
図2の例では、エアフリクション単位ユニット50は2つの巻取部3を有しており、後に
図11を参照して説明するとおり、巻取部3は、2つのチャック機構9(符号9a及び符号9b)を有している。
【0019】
図4において、基軸2とシリンダリング13は相対回転が不能で、基軸2と巻取部3は相対的に回転可能になっている。
図4に示したように、シリンダリング13は巻取部3に囲われている為、
図2では直接見えない位置にある。巻取部3は円環状のカラー11で外観を構成しており、カラー11の周方向において、所定間隔で爪5が配置されている。カラー11からは爪5が突出し、爪5による係合により巻取部3に巻芯(
図4の符号10参照)が固定される。巻芯にはスリットしたシート(
図1の符号43参照)が巻き取られる。説明の便宜のため、2つのカラー11を符号11aと符号11bとで区別している。
【0020】
図2において、カラー11aとカラー11bのそれぞれに別の巻芯(計2つ)が固定されていてもよく、カラー11aとカラー11bの両方に跨るように1つの巻芯(計1つ)が固定されていてもよい。このことは、カラー11が3つ以上であっても同様である。本実施形態の
図4に示す例では、エアフリクション単位ユニット50は2つの巻取部3を有しており、それぞれにカラー11を有しており、1つのエアフリクション単位ユニット50の2つの巻取部3に別の2つの巻芯10を装着した例を図示している。
図2では、図示の便宜のため、1本の基軸2に1つのエアフリクション単位ユニット50が外嵌されたものを示しているが、1本の基軸2に複数のエアフリクション単位ユニット50を直列的に取り付けてもよい。
【0021】
図3では、後の説明の便宜のため、巻取部3の内部に配置された巻芯着脱ピストン15及び回転トルク調節ピストン24を図示している。巻芯着脱ピストン15a及び回転トルク調節ピストン24aは、先端が
図2のカラー11bからカラー11aに向かう方向に向いて配置されており、これとは逆に巻芯着脱ピストン15b及び回転トルク調節ピストン24bは、先端が
図2のカラー11aからカラー11bに向かう方向に向いて配置されている。
図5及び
図8で示す当接部71と摩擦部22は、基軸2の外周面からの高さが異なった2段構造になっており、対応する巻芯着脱ピストン15a及び回転トルク調節ピストン24aも基軸2の外周面からの高さが異なっている。巻芯着脱ピストン15bと回転トルク調節ピストン24bとの関係についても同様である。
【0022】
以下、シート巻取軸1について具体的に説明する。
図4において、円柱状の基軸2に巻取部3がベアリング4を介して外嵌されている。エアフリクション単位ユニット50は、両端の側板39と側板39間に配置された円環状のカラー11とで外観の要部を構成している。カラー11aから突出した爪5による係合により巻取部3に巻芯10が固定される。
【0023】
以下、
図5を参照しながらシート巻取軸1の構造について具体的に説明する。チャック機構9は、巻取部3への巻芯10の固定及び固定解除を行うものであり、爪5、爪5が一体になったチャックチップ6、スライドリング7及び付勢手段であるスプリング8を備えている。チャック機構9の主要部はカラー11aの内側(開口12内)に埋設されている。
図4に示したように、基軸2の上下に巻芯着脱ピストン15aが配置されており、チャック機構9は、巻取部3の周方向において所定間隔をあけて配置されている。
【0024】
図5において、スプリング8は、トルク伝達リング20に形成された孔21とスライドリング7との間に収納されている。スライドリング7には、チャックチップ6が磁力により固定されている。トルク伝達リング20は環状であり、内周面がベアリング4の外輪側に固定され、一端が側板39に固定されている。これらの構成によれば、トルク伝達リング20がベアリング4の外輪と一体に回転すると、これと一体に側板39、カラー11及びチャック機構9が回転する。
【0025】
図5において、基軸2の外周を囲むように、環状のシリンダリング13がシールリング14を介して基軸2に固定されている。詳細は後に説明する通り、巻芯着脱ピストン15aが当接部71を当接する往復運動により、チャック機構9が作動し、爪5が開口12の内部に退避した状態と、爪5が開口12から突出した状態とに切り換えることができ、巻芯10の固定及び固定解除を行うことができる。
【0026】
以下、
図4~6を参照しながら、巻芯10の固定及び固定解除について説明する。
図4及び
図5に示したシート巻取軸1の内部部品の配置は、巻芯10を固定するときの状態を示している。
図5において、スプリング8の伸長により、スライドリング7は巻芯着脱ピストン15a側に移動している。前記の通り、チャックチップ6とスライドリング7は、傾斜面同士が磁力で当接しており、スライドリング7が巻芯着脱ピストン15a側へ移動したことにより、チャックチップ6が持ち上がり、チャックチップ6と一体の爪5がカラー11の外周面から突出している。したがって、巻取部3に装着した巻芯10の内周面に爪5が係合し、巻取部3に巻芯10が固定される。この状態では、巻取部3の回転と一体に巻芯10が回転するので、巻芯10にシートを巻回することができる。
【0027】
図4において、基軸2には圧縮流体を流通させる第1流体路30が形成されており、第1流体路30の途中に接続孔31が分岐している。
図5において、シリンダリング13には、巻芯着脱ピストン15aを収納する第1シリンダ室18が形成されている。第1シリンダ室18は巻芯着脱ピストン15aにより、ボトム側空間16とロッド側空間17とに区画される。また、シリンダリング13には、流体給排路19が形成されている。流体給排路19は、一端が基軸2側に開口しており、他端はボトム側空間16と繋がっている。
【0028】
図5の状態では、第1流体路30と流体給排路19とが接続孔31を介して繋がっている。この状態で、第1流体路30に空気等の圧縮流体を流通させると、圧縮流体は接続孔31を経て流体給排路19に流入し、続いてボトム側空間16に流入する。このことにより、巻芯着脱ピストン15aは第1シリンダ室18内を前進し、巻芯着脱ピストン15aの先端が当接部71を当接する。
【0029】
図6は、巻芯10の固定解除状態を示すシート巻取軸1の断面図である。本図は、
図4及び
図5の状態から第1流体路30に空気等の圧縮流体を流通させた状態を示している。前記のとおり、第1流体路30に圧縮流体を流通させると、巻芯着脱ピストン15aの先端が当接部71に当接する。この当接状態において、圧縮流体の流通が継続していると、巻芯着脱ピストン15aがスプリング8の反発力に抗して前進し、スライドリング7が巻芯着脱ピストン15aの反対側へ移動する。
図6は巻芯着脱ピストン15aが前進し切った状態を示している。
【0030】
図6において、チャックチップ6とスライドリング7は、前記の通り傾斜面同士が磁力で当接しており、スライドリング7が巻芯着脱ピストン15aの反対側へ移動したことにより、チャックチップ6が沈降し、チャックチップ6と一体の爪5が開口12内に退避する。この状態では、爪5と巻芯10の内周面との係合が解除されるので、巻芯10を巻取部3から取り外すことができる。
【0031】
図4~
図6に示した構造は、巻芯10の固定の解除をするときに第1流体路30に圧縮流体を流通させ、巻芯着脱ピストン15aで当接部71を押圧する構造であるが、本発明では、巻芯10の固定及び固定解除のうち少なくとも一方に圧縮流体が利用されていればよい。本発明では巻芯10を固定する場合に巻芯着脱ピストン15が当接部71を押圧する構造も採り得るが、シートを巻き取るときに巻芯着脱ピストン15aがスライドリング7を押圧していると、巻き取りを行っている最中に圧縮流体の供給が何らかの理由で停止することがあった場合にシートの巻芯が巻取部からずれてしまうおそれがある。そのため、
図4~
図6で示すように、巻芯10の固定の解除をするときに巻芯着脱ピストン15aが当接部71を押圧する構造である方が好ましい。
【0032】
また、シートを巻き取っているときに、巻芯着脱ピストン15aとスライドリング7が接触すると巻取張力のバラツキにつながる可能性があるため、シートを巻き取る直前に第1流体路30内を真空吸引して減圧状態とし、巻芯着脱ピストン15aと当接部71を完全に離隔させることがより好ましい。
【0033】
なお、本発明のチャック機構は、圧縮流体を利用してスライドリング7を移動させることで、チャックチップ6の上げ下げができればよく、
図4~
図6の例では、傾斜面を利用しているが、これに限るものではない。例えば、チャックチップ6とスライドリング7を連結ロッド等で連結してチャックチップ6を上げ下げしてもよい。また、傾斜面を利用する場合でも、
図4~
図6の例では傾斜面同士を磁力で当接させているが、ゴムリングやコイルバネ等の付勢手段を用いてチャックチップ6を押さえることで当接させてもよい。
【0034】
以上、巻芯10の固定及び固定解除について説明したが、シート巻取軸1で巻芯10にシートを巻き取るときは、基軸2の回転を巻取部3に伝達させて巻き取るために、その機構が必要となる。シート巻取軸1においては、基軸2の回転を巻取部3に伝達する上で、摩擦を利用し、その摩擦状態を制御することで巻取張力を調節する。例えば、低い巻取張力でシートを巻き取るときは、その摩擦状態を弱めることになる。他方、巻取張力が不要なとき、具体的には巻取部3に巻芯10を装着するときや巻取部3から巻芯10を取り外すとき等は、摩擦が働いていない状態にし、基軸2と巻取部3とが相対的に回転可能な状態にしてもよい。
【0035】
以下、
図7及び
図8を参照しながら、基軸2の回転を巻取部3に伝える機構について説明する。
図7は
図3のFF線における断面図であり、
図8は
図7の要部の拡大図である。
図7において、基軸2の外周を囲むように、環状のシリンダリング13がシールリング14を介して基軸2に固定されている。シリンダリング13は、
図4及び
図5におけるシリンダリング13と同一物であるが、
図7に示したシリンダリング13の断面構造は、
図4及び
図5に示したシリンダリング13の断面構造とは異なっている。
【0036】
詳細は後に説明するとおり、回転トルク調節ピストン24aの押圧力を変化させることにより、回転トルクを調節する。巻取部3の回転速度は巻取材料の速度と巻取径で決まり随時変化するが、基軸2及び基軸2と一体なって回転するシリンダリング13は巻取部3より常に早い回転速度で回転させており、回転トルク調整ピストン24aとトルク伝達リング20は回転速度差分だけ常に摩擦部22で摩擦している。
【0037】
図8において、トルク伝達リング20は、
図5におけるトルク伝達リング20と同一物であるが、
図8に示したシリンダリング13の断面構造は、
図5に示したシリンダリング13の断面構造とは異なっている。前記の通りトルク伝達リング20は巻取部3を構成する部材であり、回転トルク調節ピストン24aと対向しており、回転トルク調節ピストン24aの先端と対向する摩擦部22を備えている。
図8では摩擦部22は、基軸2の直径方向の断面と平行な平面をなしている。回転トルク調節ピストン24aの先端と摩擦部22が共に平面をなし、これらの平面同士が対向していることで、回転トルク調節ピストン24aの先端と摩擦部22が当接したときに、均一かつ安定した接触が可能になる。
【0038】
本発明においては、回転トルク調節ピストン24aの先端と摩擦部22の面同士が対向していればよく、摩擦部22が直径方向の断面と平行である構成に限らないが、回転トルク調節ピストン24aがシリンダリング13内で回転した場合でも安定して摩擦部22に接触することと、多少の摩耗が生じても平行が保たれることの観点では、摩擦部22が直径方向の断面と平行であることが好ましい。
【0039】
回転トルク調節ピストン24aや摩擦部22の材質は適宜選択されるものであるが、後述の通り、シートの巻き取りを行っているときは、その間ほぼ摩擦が発生しているため、摩耗が生じにくい材質であることが好ましく、回転トルク調節ピストン24a又は摩擦部22のいずれか一方は、グラファイトや摩擦材に適した合成樹脂等の複合材から選択し、他方を金属で形成することが好ましい。また、摩擦部22が摩耗すると平面に溝が形成される観点では、摩擦部22を金属で形成し、一層摩耗しにくくすることがより好ましい。
【0040】
図8において、基軸2が回転すると、基軸2に固定されているシリンダリング13も一体に回転する。他方、基軸2はベアリング4の内輪に固定されており、トルク伝達リング20はベアリング4の外輪に固定されており、トルク伝達リング20を含む巻取部3と基軸2とは独立して相対的に回転可能になっている。
【0041】
図8の状態は、回転トルク調節ピストン24aの先端が摩擦部22を押圧している状態であるが、回転トルク調節ピストン24aに摩擦部22を押圧する力がほとんど働いていない状態ならば、基軸2の回転は巻取部3にほとんど伝わらないため、基軸2の回転を巻取部3に伝えないときに、回転トルク調節ピストン24aの先端と摩擦部22の間は必ずしも離隔させることは必要ない。
【0042】
以下、巻取部3に基軸2の回転を伝える状態について具体的に説明する。
図7において、基軸2には圧縮流体を流通させる第2流体路32が形成されており、第2流体路32の途中に接続流路33が分岐している。
図8において、シリンダリング13には、回転トルク調節ピストン24aを収納する第2シリンダ室25が形成されている。第2シリンダ室25は回転トルク調節ピストン24aにより、ボトム側空間26とロッド側空間27とに区画される。また、シリンダリング13には、流体給排路28が形成されている。流体給排路28は、一端が基軸2側に開口しており、他端はボトム側空間26と繋がっている。
【0043】
この状態で、第2流体路32(
図7参照)に空気等の圧縮流体を流通させると、圧縮流体は接続流路33を経て流体給排路28に流入し、続いてボトム側空間26に流入する。このことにより、回転トルク調節ピストン24aの先端が摩擦部22を押圧する。本実施形態において、基軸2の軸方向とは、基軸2の軸と完全に平行な方向だけでなく、略平行な方向も含んでいる。
【0044】
回転トルク調節ピストン24aの先端が摩擦部22を押圧したことにより、回転トルク調節ピストン24aを介してシリンダリング13とトルク伝達リング20とが接続される。この状態で、基軸2及びこれと一体のシリンダリング13が回転すると、回転トルク調節ピストン24aと摩擦部22との間で摩擦が生じているので、巻取部3が回転する。この場合、巻取部3に固定した巻芯10も回転するので、巻芯10にシートが巻き取られる。
【0045】
回転トルク調節ピストン24aが摩擦部22を押圧する力を制御することによって、回転トルク調節ピストン24aと摩擦部22との間で生じる摩擦力が制御されることになり、その結果、巻き取りに係る回転トルクが制御され、巻取張力が調整されることになる。一般に、巻芯10にシートを巻き取るときの巻取張力は、巻き取られたシートの巻取径の大きさに応じて変更することが適切であり、巻き取りにおける回転トルクをシートの巻取張力と巻取径に対応して制御する。
【0046】
図8において、回転トルクを高めるには、基軸2内の第2流体路32(
図7参照)に圧縮流体を流入させて圧力を増やし、回転トルク調節ピストン24aが摩擦部22を押圧する力を高め、回転トルク調節ピストン24aと摩擦部22との間で発生する摩擦力を高める。逆に回転トルクを弱めるには、圧縮流体圧力を制御し、回転トルク調節ピストン24aが摩擦部22を押圧する力を弱め、回転トルク調節ピストン24aと摩擦部22との間で発生する摩擦力を弱める。すなわち、
図8における回転トルクの制御は、回転トルク調節ピストン24aと摩擦部22との間の摩擦力の制御によるものであることに加え、巻き取りが行われている間は摩擦が制御されるものであることから、回転トルクを精密に制御するには、摩擦のムラが発生しにくいことが肝要である。
【0047】
本実施形態においては、回転トルク調節ピストン24aは基軸2の軸方向に摩擦部22を押圧するので、回転トルク調節ピストン24aの先端と摩擦部22の接触状態が安定しやすく、摩擦が安定するため、巻取張力を精密に調整することができる。その上、同じシート巻取軸1で複数の巻芯10を装着してシートを巻き取る場合でも、巻芯10間の巻取張力差が少なくなり、複数の巻芯10に均一にシートを巻き取れる。
【0048】
ここで、前記のとおり、本発明のシート巻取軸1は当接部71と摩擦部22の、基軸2の外周面からの高さが異なっている。本実施形態においては当接部71及び摩擦部22に対応する巻芯着脱ピストン15a及び回転トルク調節ピストン24aも基軸の外周面からの高さが異なっており、この点について
図9を参照しながら説明する。
【0049】
図9(a)~
図9(c)は、
図3の部分拡大図であり、
図9(b)は
図8の回転トルク調節ピストン24a近傍の拡大図であり、
図9(c)は
図5の巻芯着脱ピストン15a近傍の拡大図である。
図9(b)と
図9(c)とでは、シリンダリング13の形状は異なっているが同一物である。以下、
図2のカラー11a側における巻芯着脱ピストン15aと回転トルク調節ピストン24aとの関係について説明するが、
図2のカラー11b側における巻芯着脱ピストン15bと回転トルク調節ピストン24bとの関係についても同様である。なお、巻芯着脱ピストン15a及び回転トルク調節ピストン24aの圧縮流体の流入によるスライド方向は同一である。
【0050】
図9(b)と
図9(c)は、基軸2の外周面の高さ方向の位置を合わせて図示している。
図9(b)において、回転トルク調節ピストン24aの中心軸は基軸2の外周面から高さh1の位置にあり、
図9(c)において、巻芯着脱ピストン15aの中心軸は基軸2の外周面から高さh1よりも高い高さh2の位置にある。
【0051】
すなわち、本発明のシート巻取軸1は当接部71と摩擦部22の基軸2の外周面からの高さが異なっているため、それに対応する巻芯着脱ピストン15aと回転トルク調節ピストン24aの高さも異なり2段構造を実現することができる。このような2段構造によれば、当接部71及び摩擦部22の基軸2の軸方向における配置範囲を、最小限に抑えられ、巻芯を把持するカラーのピッチを狭くできるので、幅の狭いシートの巻き取りに適したものとなる。
【0052】
2段構造は、少なくとも当接部71及び摩擦部22が2段構造になっていればよく、巻芯着脱ピストン15a及び回転トルク調節ピストン24aは2段構造でなくてもよい。巻芯着脱ピストン15a及び回転トルク調節ピストン24aの基軸2の外周面からの高さが同じであっても、当接部71と巻芯着脱ピストン15aの間、摩擦部22と回転トルク調節ピストン24aとの間にアダプターリンクを設けて、各ピストンを当接部71及び摩擦部22に対応させることができる。
【0053】
カラー11の幅に制限はないが、特に20~50mmの細幅であることが好ましい。例えば
図4のように1つのカラー11に対して1つの巻芯10を対応させた場合、巻き取るシートの幅をカラー11の幅に応じて細幅にすることが可能である。
【0054】
カラー11の幅を狭くできることは、幅の狭いシートの巻き取りだけでなく、幅の広いシートの巻き取りにも適している。この点について、
図10を参照しながら説明する。
図10は、基軸2に複数のカラー11が24mmピッチで設けられたシート巻取軸1の平面図を示している。本図では、巻芯10a及び巻芯10bは同一の大きさの幅広(例えば132mm)の巻き芯であり、巻芯10aには6つのカラー11が対応し、巻芯10bには5つのカラー11が対応している。
【0055】
以下、巻き芯幅132mmの場合で説明し、幅132mm当たり132Tのトルクが適切な場合で説明する。カラーピッチが24mmの場合はカラー11の1つ当たりのトルクを24Tとすると、巻芯10の位置により巻芯10a側については144T(24T×6)、巻芯10b側については120T(24T×5)となり、トルクの差は適切値から+9.1%、-9.1%となる。一方、カラー11が幅広でカラーピッチが50mmの場合、巻芯10aに対応するカラー11が3つで、巻芯10bに対応するカラー11が2つとなり、1つのカラー11が分担するトルクを50Tとすると、巻芯10a側については150T(50T×3)、巻芯10b側については100T(50T×2)となり、トルクの差は適切値から+13.6%、-24.2%となり、カラーピッチが24mmの場合よりも大きくなる。
【0056】
すなわち、カラー11の幅を狭くできることにより、複数の巻芯10について、個々の巻芯10をそれぞれ複数のカラー11に跨って装着する場合に、個々の巻芯に対応するカラー11の数の違いによって生じる各巻芯10毎の巻取トルクの差を抑えることができ、各巻芯10において生じる巻取状態のムラを抑えることができる。
【0057】
以上、本実施形態の基本構造について説明したが、前記のとおり、本実施形態に係るシート巻取軸1は、
図2において1つのエアフリクション単位ユニット50に2つのカラー11を有しており、2つの巻芯を装着することができる。
図4における2つの巻取部3は、1つのシリンダリング13で動作できるものである。
【0058】
図11は巻取部3の周方向における異なる部位の断面図であり、
図11(a)は
図2のAA線における断面図であり、
図11(b)は
図2のBB線における断面図である。
図11において、説明の便宜のため、2つのチャック機構9を符号9aと符号9bとで区別し、2つの巻芯着脱ピストン15を符号15aと符号15bとで区別し、2つの巻芯10を符号10aと符号10bとで区別し、2つのカラー11を符号11aと符号11bとで区別している。
【0059】
図11(a)と
図11(b)とにおいて、シリンダリング13は同一物であり、1つのシリンダリング13について、基軸2の周方向の異なる位置に、巻芯着脱ピストン15aと巻芯着脱ピストン15bとがロッド34の向きが反対になるように配置されている。より具体的には、シリンダリング13の両側のうち、一方の側に巻芯着脱ピストン15aの先端が向いており、他方の側に巻芯着脱ピストン15bの先端が向いている。この構成において、
図11(a)においては、カラー11aの下部に配置されたチャック機構9aでカラー11aに巻芯10aが固定されており、
図11(b)においては、カラー11bの下部に配置されたチャック機構9bでカラー11bに巻芯10bが固定されている。
【0060】
図12についても巻取部3は周方向における異なる部位の断面図であり、
図12(a)は
図2のCC線における断面図であり、
図12(b)は
図2のDD線における断面図である。
図12において、説明の便宜のため、2つの回転トルク調節ピストン24を符号24aと符号24bとで区別し、
図11と同様に、2つの巻芯10を符号10aと符号10bとで区別し、2つのカラー11を符号11aと符号11bとで区別している。
【0061】
図12(a)と
図12(b)とにおいて、シリンダリング13は同一物であり、1つのシリンダリング13について、基軸2の周方向の異なる位置に、回転トルク調節ピストン24aと回転トルク調節ピストン24bとがロッド35の向きが反対になるように配置されている。より具体的には、シリンダリング13の両側のうち、一方の側に回転トルク調節ピストン24aの先端が向いており、他方の側に回転トルク調節ピストン24bの先端が向いている。
【0062】
図12では、回転トルク調節ピストン24aと回転トルク調節ピストン24bとが基軸2の周方向の異なる位置に配置されているが、両ピストン24a、24bの長さを短くして、両ピストン24a、24bの中心軸が同一直線上にあるように配置してもよい。この場合、両ピストン24a、24bについて、第2シリンダ室25を軸方向に貫通させ共有してもよいし、ぞれぞれ独立した第2シリンダ室25を設けてもよい。
【0063】
図11及び
図12の構成によれば、着脱ピストン15a、15b及び回転トルク調節ピストンを24a、24bを1つのシリンダリング13に内蔵することにより、1つのシリンダリング13で、それぞれチャック機構9a、9bを有する2つの巻取部3を備えることができ、簡単な構造で2つの巻取部を備えるシート巻取軸を実現できる。
【0064】
以下、シリンダリング13の回り止め機構について説明する。
図8において、シリンダリング13はシールリング14を介して基軸2に固定されているが、固定をより確実にするには、シリンダリング13と基軸2とを機械的な回り止め機構で結合することが好ましい。このため、
図8では、基軸2の表面に、回転防止ピン36を差し込む差込溝37を備え、回転防止ピン36の突出部がシリンダリング13に形成された差込溝38に係合するようにして、シリンダリング13の基軸2に対する回転を規制している。
【0065】
回転防止ピン36の素材、形状は適宜設計すればよく、構造の簡素化、組み立ての容易さを考慮すると、ドライバーなどの工具を用いることなく、電気配線等も必要としない単体で取り付けられるものが好ましい。本実施形態のように構成部品を軸上で順に組み立てる構造の場合には、例えば
図8の右側巻取部3、シリンダリング13、回転防止ピン36、左側巻取部3の順で基軸2に挿入組立てすることでL字型の回転防止ピン36を差込溝37、38に係合させることができる。
【0066】
回り止め機構の構造は、前記のようなピン構造に限るものではなく、キー、球、カラー等の任意の構造を採用できるが、細幅シートを巻き取るためには、細幅機構を阻害しないよう小さな構造が好ましい。また、できるだけ簡素な構造が好ましい。基軸2に巻取機構を数多く装着する場合には、回り止め機構の装着に要する手間やコストを抑えることが望まれるからである。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらは一例であり、適宜変更したものであってもよい。例えば、巻芯着脱ピストン15及び回転トルク調節ピストン24の個数については適宜設定すればよい。
【符号の説明】
【0068】
1 シート巻取軸
2 基軸
3 巻取部
5 爪
6 チャックチップ
7 スライドリング
8 スプリング
9 チャック機構
10 巻芯
11 カラー
13 シリンダリング
15,15a,15b 巻芯着脱ピストン
20 トルク伝達リング
22 摩擦部
24,24a,24b 回転トルク調節ピストン
30 第1流体路
32 第2流体路
50 エアフリクション単位ユニット
71 当接部