(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】放射線治療支援装置、放射線治療システム及び放射線治療支援方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240701BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
A61N5/10 P
A61N5/10 H
A61B6/03 A
A61B6/03 Z
(21)【出願番号】P 2020018100
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2019020486
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 悟
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0289181(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0061607(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0275709(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0071561(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0216623(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0236267(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
A61B 6/03
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の腫瘍領域における放射線抵抗性を表す活性度パラメータの分布を表す活性度分布を取得する取得部と、
前記活性度分布に基づいて、前記腫瘍領域内を放射線抵抗性に応じて区分された複数の領域を特定する特定部と、
前記活性度分布に応じて、前記腫瘍領域への放射線投与線量が当該腫瘍領域内で変化する第1の治療計画を生成する生成部と、
を具備し、
前記特定部は、前記複数の領域として、前記腫瘍領域のうちの活性度パラメータの値が第1の閾値に比して高く、放射線抵抗性が低い活性領域と、前記腫瘍領域のうちの活性度パラメータの値が第2の閾値に比して低く、放射線抵抗性が高い非活性領域とを特定し、
前記生成部は、前記活性領域及び前記非活性領域の各々について前記放射線投与線量を変更する、
放射線治療支援装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記被検体に関し、予め生成された第2の治療計画を取得し、
前記生成部は、前記活性度分布に応じて、前記第2の治療計画を変更することにより前記第1の治療計画を生成する、
請求項1記載の放射線治療支援装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記活性度分布に応じて前記腫瘍領域内に照射するスポットの分布を変更することにより前記放射線投与線量を変更する、請求項2記載の放射線治療支援装置。
【請求項4】
前記生成部は、前記活性度分布に応じて前記腫瘍領域内に照射する放射線の照射方向を変更することにより前記放射線投与線量を変更する、請求項2記載の放射線治療支援装置。
【請求項5】
前記生成部は、前記複数の領域各々について放射線抵抗性が高くなるにつれて前記放射線投与線量を減らし、放射線抵抗性が低くなるにつれて前記放射線投与線量を増やす、請求項2記載の放射線治療支援装置。
【請求項6】
前記生成部は、前記複数の領域各々について放射線抵抗性が高くなるにつれて前記放射線投与線量を増やし、放射線抵抗性が低くなるにつれて前記放射線投与線量を減らす、請求項2記載の放射線治療支援装置。
【請求項7】
前記特定部は、前記第2の治療計画による放射線治療の後に、前記腫瘍領域における活性領域及び非活性領域を再特定し、
前記生成部は、前記再特定された活性領域に照射する線量が前記再特定された非活性領域に照射する線量より高くなるように第3の治療計画を生成する、
請求項2記載の放射線治療支援装置。
【請求項8】
前記第1の治療計画に使用した医用画像を表示し、前記照射した放射線の総線量を前記医用画像に重畳する表示部をさらに備える、請求項7記載の放射線治療支援装置。
【請求項9】
前記第1の治療計画に使用した医用画像を表示する表示部を更に備え、
前記生成部は、放射線治療毎の放射線分布に前記活性度分布を掛け合わせて治療効果値分布を生成し、
前記表示部は、前記治療効果値分布を前記医用画像に重畳する、
請求項7記載の放射線治療支援装置。
【請求項10】
前記第1の治療計画に使用した医用画像を表示する表示部を更に備え、
前記生成部は、放射線治療毎の放射線分布に前記活性度分布を掛け合わせて治療効果値分布を生成し、前記治療効果値分布を照射ビームの特性と組織ごとの感度で補正し、
前記表示部は、前記補正された治療効果値分布を前記医用画像に重畳する、
請求項7記載の放射線治療支援装置。
【請求項11】
前記生成部は、前記特定された活性領域又は前記再特定された活性領域について、照射された放射線の総線量が予め決められた線量になるまで放射線治療が繰り返される前記第1の治療計画を生成する、請求項7記載の放射線治療支援装置。
【請求項12】
前記活性度パラメータは、還流情報であり、
前記活性度分布は、前記腫瘍領域における前記還流情報の分布である、
請求項1記載の放射線治療支援装置。
【請求項13】
前記還流情報は、PET装置、PET-CT装置、SPECT装置、X線CT装置、超音波診断装置又はMRI装置によって計測された情報を含む、請求項12記載の放射線治療支援装置。
【請求項14】
前記活性度パラメータは、代謝情報であり、
前記活性度分布は、前記腫瘍領域における前記代謝情報の分布である、
請求項1記載の放射線治療支援装置。
【請求項15】
前記代謝情報は、PET装置、PET-CT装置、SPECT装置、X線CT装置、超音波診断装置又はMRI装置によって計測された情報を含む、請求項14記載の放射線治療支援装置。
【請求項16】
前記取得部は、前記腫瘍領域の第一の活性度分布と前記腫瘍領域の周辺にある正常組織の第二の活性度分布とを取得し、前記第二の活性度分布を用いて前記第一の活性度分布を正規化する、請求項1記載の放射線治療支援装置。
【請求項17】
前記第1の治療計画に使用した医用画像を表示し、前記活性度分布を前記医用画像に重畳する表示部をさらに備える、請求項1記載の放射線治療支援装置。
【請求項18】
前記生成部は、前記腫瘍領域内の前記放射線投与線量の分布が放射線抵抗性の経時変化に応じて変化する前記第1の治療計画を生成する、請求項1記載の放射線治療支援装置。
【請求項19】
前記生成部は、前記腫瘍領域内において、深さ方向に沿って複数の拡大ブラッグピークが形成されるような前記放射線投与線量の分布を有する前記第1の治療計画を生成する、請求項18記載の放射線治療支援装置。
【請求項20】
被検体の腫瘍領域における放射線抵抗性を表す活性度パラメータの分布を表す活性度分布を取得する取得部と、
前記活性度分布に基づいて、前記腫瘍領域内を放射線抵抗性に応じて区分された複数の領域を特定する特定部と、
前記活性度分布に応じて、前記腫瘍領域への放射線投与線量が当該腫瘍領域内で変化する第1の治療計画を生成する生成部と、
前記第1の治療計画に基づいて前記腫瘍領域に放射線を照射する照射部と、
を具備し、
前記特定部は、前記複数の領域として、前記腫瘍領域のうちの活性度パラメータの値が第1の閾値に比して高く、放射線抵抗性が低い活性領域と、前記腫瘍領域のうちの活性度パラメータの値が第2の閾値に比して低く、放射線抵抗性が高い非活性領域とを特定し、
前記生成部は、前記活性領域及び前記非活性領域の各々について前記放射線投与線量を変更する、
放射線治療システム。
【請求項21】
放射線治療システムが実行する放射線治療支援方法であって、
被検体の腫瘍領域における放射線抵抗性を表す活性度パラメータの分布を表す活性度分布を取得し、
前記活性度分布に基づいて、前記腫瘍領域内を放射線抵抗性に応じて区分された複数の領域を特定し、
前記活性度分布に応じて、前記腫瘍領域への放射線投与線量が当該腫瘍領域内で変化する第1の治療計画を生成すること、を具備し、
前記特定することは、前記複数の領域として、前記腫瘍領域のうちの活性度パラメータの値が第1の閾値に比して高く、放射線抵抗性が低い活性領域と、前記腫瘍領域のうちの活性度パラメータの値が第2の閾値に比して低く、放射線抵抗性が高い非活性領域とを特定し、
前記生成することは、前記活性領域及び前記非活性領域の各々について前記放射線投与線量を変更する、
放射線治療支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、放射線治療支援装置、放射線治療システム及び放射線治療支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重粒子線や陽子線等の粒子線を用いた放射線治療が研究されている。重粒子の例としては炭素、シリコン、アルゴン等のイオンが挙げられる。粒子線治療の特徴は、ブラッグピーク(Bragg peak)によって腫瘍領域のみに線量を集中させることにある。同一照射方向で深さ方向にブラッグピークを変化させながら粒子線を照射することにより拡大ブラッグピーク(SOBP:Spread-Out Bragg Peak)を形成することができる。しかし、拡大ブラッグピークの幅が大きくなると、腫瘍より手前側の線量が腫瘍領域の線量に近づいて来る。
【0003】
一方、X線を用いた放射線治療では、ブラッグピークを形成できず、一方向だけからでは腫瘍領域のみに線量を集中することが難しい。そのため近年強度変調放射線治療(IMRT:Intensity-Modulated RadioTherapy)や強度変調回転照射法(VMAT:Volumetric Modulated Arc Therapy)が主流になりつつある。IMRTは複数方向からそれぞれ線量形状を最適化したX線を照射する方法である。VMATはガントリを回転速度と線量率を変化させながら回転させ、同時に強度変調したX線照射を行うことで腫瘍への線量集中性を高めることができる。
【0004】
このような先進の放射線治療を用いても、腫瘍の再発はある頻度で発生する。その一つの原因と言われているのが腫瘍組織の低酸素状態である。腫瘍領域の内部には、血流を十分に得ることができない、低酸素状態の細胞が存在する。このような中、腫瘍領域内の低酸素状態のがん組織は、放射線治療の効果が低いことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2015-533581号公報
【文献】特開2013-233233号公報
【文献】特開2017-176056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、放射線治療における放射線の利用効率を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る放射線治療支援装置は、取得部と生成部とを備える。取得部は、被検体の腫瘍領域における放射線抵抗性を表す活性度分布を取得する。生成部は、前記活性度分布に応じて、前記腫瘍領域への放射線投与線量が当該腫瘍領域内で変化する第1の治療計画を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る放射線治療システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の放射線治療支援装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1の放射線治療システムにおいて実施される活性度パラメータに応じた放射線治療の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4A】
図4Aは、
図1の放射線治療計画装置の立案した当初の放射線治療計画による計画標的体積の一例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、
図4Aにおける矢印が示す深さ方向の期待される投与線量分布の一例である。
【
図4C】
図4Cは、
図4Bの放射線治療計画による期待される投与線量分布を実現する複数の粒子ビームの一例である。
【
図4D】
図4Dは、
図4Cの複数の粒子ビームにより形成される拡大ブラッグピークの一例である。
【
図5】
図5は、
図3の放射線治療において実施される活性度パラメータに応じた放射線治療計画の変更の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る治療計画用CT画像上に活性度パラメータが重畳された重畳画像の一例を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、
図6の活性領域の分布に基づいて決定された時間的計画標的体積の一例を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、
図7Aにおける矢印が示す深さ方向の期待される投与線量分布の一例である。
【
図7C】
図7Cは、
図7Bの活性領域の分布に基づく期待される投与線量分布を実現する複数の放射線ビームの一例である。
【
図7D】
図7Dは、
図7Cの複数の放射線ビームにより形成される拡大ブラッグピークの一例である。
【
図7F】
図7Fは、
図7Eの照射方向D1及び照射方向D2での、期待される線量投与分布と複数の放射線ビームとを重ね合わせた図である。
【
図7G】
図7Gは、
図7Fの複数の放射線ビームにより形成される拡大ブラッグピークの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図3の放射線治療において実施される活性度パラメータに応じた放射線治療計画の変更に係る流れの別の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係る治療計画用CT画像上に総投与線量が重畳された重畳画像の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、
図7Aにおける矢印が示す深さ方向の期待される投与線量分布の別の一例である。
【
図11】
図11は、X線治療に関する治療計画の変更の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る放射線治療支援装置、放射線治療システム及び放射線治療支援方法を説明する。なお、以下の説明において、既出の図に関して前述したものと同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表されている場合もある。
【0010】
本実施形態に係る放射線治療支援装置、放射線治療システム及び放射線治療支援方法は、X線や粒子線等の放射線を用いた放射線治療に提供される。放射線治療支援装置、放射線治療システム及び放射線治療支援方法は、粒子線を用いた放射線治療を提供する場合、粒子線治療支援装置、粒子線治療システム及び粒子線治療支援であるとする。ここで、粒子線は陽子線と重粒子線の総称であるとする。
【0011】
一般に、細胞の放射線感受性は、細胞の種類や分裂周期、pH値や温度、酸素量等の細胞周辺の環境条件、放射線の線質、線量率等により変化することが知られている。ここで、細胞の放射線抵抗性は、細胞の放射線に関する感受性の低さであるとする。つまり、細胞の放射線感受性が高いとき細胞の放射線抵抗性は低く、放射線投与によって影響を受け易い。細胞の放射線感受性が低いとき細胞の放射線抵抗性は高く、放射線投与によって影響を受け難い。放射線感受性は、細胞の活性度により影響される。つまり、活性度は高い時は放射線感受性が高く、活性度は低い時は放射線感受性が低い。
【0012】
このような放射線抵抗性の時間的変化は以下の3つの要因で引き起こされると言われている。一つが短い時間での変化、2つ目が中間の時間での変化を、3つ目が長い時間での変化を引き起こす。
【0013】
細胞が分裂を行うとき、分裂してから次の分裂までを細胞分裂周期という。この細胞分裂周期には、DNA(Deoxyribonucleic Acid)が複製されるDNA合成期(S期)と、それを2つの細胞に振り分ける分裂期(M期)と、分裂のあとS期までの間のG1期と、S期からM期までのG2期と、分裂を一時中止した時期及び分裂を終えた時期である休止期(G0期)とが含まれる。このような細胞分裂周期において、細胞の活性度は、M期で高くなり、S期、G0期で低くなるといわれている。このように、腫瘍領域の放射線抵抗性は、例えば細胞の分裂周期に応じて時間変化する。これは放射線抵抗性の短い時間での時間変化を起こす。
【0014】
一方、がん細胞は栄養血管から酸素や栄養などを取得する。しかしがんが大きくなると、栄養血管から取得する酸素や栄養などが足らなくなり、一部のがん細胞には十分な酸素や栄養が供給できなくなる。このような状態になったがん細胞は生き延びるために先ずは自身の活性度を下げ、そして同時に血管新生(Angiogenesis)を引き起こして自身に十分な酸素や栄養などが供給されるようにする。このような活性度が下がった状態は低酸素状態(Hypoxia)にあると言われ、放射線抵抗性が高いことが知られている。十分な酸素や栄養などが取得できるようになったら、自身の活性度を上げる。この時、十分な酸素や栄養などが取得できるようになったがん細胞の代わりに、十分が酸素や栄養などが取得できなくなったがん細胞が存在する。このがん細胞は同様に自身の活性度を下げ、そして同時に血管新生を引き起こして自身に十分な酸素や栄養などが供給されるようにする。このようにがん細胞の活性度がダイナミックに変化することにより、放射線抵抗性の変化が起こる。この変化は前述の短い時間での変化に比較して、少し長い時間で起こることが知られている。
【0015】
さらに、例えば放射線治療により、放射線抵抗性が低い腫瘍細胞に対して致死効果が生じたとする。このとき、低酸素状態の腫瘍細胞は血流を奪われることがなくなるため、低栄養状態や低酸素状態の環境下にいた腫瘍細胞の環境が血流の改善により大幅に改善し、腫瘍細胞の再活性化が起こるといわれている。この変化は2番目の時間での変化に比較して、さらに長い時間で起こることが知られている。
【0016】
そこで、本実施形態では、細胞周期や周辺環境に応じて腫瘍領域の放射線抵抗性が時間変化するとの観点から、放射線治療計画装置が立案した放射線治療計画を腫瘍領域の放射線抵抗性に関するパラメータに応じて変更する放射線治療支援装置を例として説明をする。なお、以下の説明では、腫瘍領域の放射線抵抗性に関するパラメータを、活性度パラメータと記載する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る放射線治療支援装置8及び放射線治療装置9を含む放射線治療システム100の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、放射線治療システム100は、互いにネットワークを介して接続されたPET(Positron Emission Tomography)装置1、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置2、PET-CT(PETとコンピュータ断層撮像が可能な一体型)装置3、MRI(磁気共鳴イメージング)装置4、超音波診断装置5、治療計画用X線CT装置6、放射線治療計画装置7、放射線治療支援装置8及び放射線治療装置9を有する。
【0018】
PET装置1、SPECT装置2、PET-CT装置3、MRI装置4、超音波診断装置5及び治療計画用X線CT装置6は、患者に関する3次元医用画像を生成する医用モダリティである。
【0019】
PET装置1は、患者内に蓄積された放射性核種から発生される陽電子と当該放射性核種の周囲に存在する電子との対消滅に伴い発生する511keVの一対のガンマ線を同時計数回路により同時計数し、同時計数回路からの同時計数信号に基づいて、当該放射性核種の空間分布を表現する3次元のPET画像を生成する。
【0020】
SPECT装置2は、患者内に蓄積された放射性核種から発生される単光子ガンマ線を放射線検出器により検出し、放射線検出器からの検出信号に基づいて、当該放射性核種の空間分布を表現する3次元のSPECT画像を生成する。
【0021】
PET-CT装置3は、PET装置及びCT装置が一体に形成された医用モダリティである。PET-CT装置3は、例えば、PET画像及びCT画像を生成し、PET画像及びCT画像の重ね合わせ画像(融合画像)を生成する。PET-CT装置3において、PET画像は、例えば機能的情報のデータとして用いられる。また、CT画像は、例えば形態的情報と減弱補正用のデータとして用いられる。
【0022】
MRI装置4は、例えば、RFコイルからRFパルスを照射して、静磁場内に載置された患者内に存在する対象原子核を励起させ、当該対象原子核から発生されるMR信号をRFコイルにより収集する。そしてMRI装置4は、RFコイルからのMR信号に基づいて当該対象原子核の空間分布を表現する3次元のMR画像を生成する。
【0023】
超音波診断装置5は、例えば、超音波パルス反射法を用いて、生体軟部組織の断層像を表現する超音波画像を生成する。
【0024】
治療計画用X線CT装置6は、例えば、X線管とX線検出器とを保持する回転フレームを高速で回転させながらX線管から患者にX線を照射し、患者を透過したX線をX線検出器により検出する。そして治療計画用X線CT装置6は、X線検出器からの投影データに基づいて、当該X線の透過経路上にある物質のX線減弱係数の空間分布を表現する3次元の治療計画用CT画像(治療計画用医用画像)を生成する。治療計画用X線CT装置6は、患者が固定具により寝台等に固定された状態で、治療計画用CT画像を撮像する。固定具は、マスクのように患者の体の一部を上から覆うようにして固定するものであってもよいし、患者の体形(形状)に適合する形状を有する寝台上に固定されたものであり、上に患者が寝ることで患者を固定するものであってもよい。治療計画用X線CT装置6の天板は、CT撮像時と放射線治療時との間で患者の体勢が変化しないようにするために、放射線治療装置9の天板と同様にフラットな形状を有している。なお、治療計画用CT画像の撮像時には、予め決められた条件の管電圧が設定される。
【0025】
なお、放射線治療システム100は、治療計画用X線CT装置6を有するとしているが、本実施形態はこれに限定されない。すなわち、放射線治療システム100は、患者の治療計画用の3次元医用画像データ(治療計画用医用画像データ)を生成できる医用画像診断装置であれば、治療計画用X線CT装置6の代わりに、あるいは補完的にコーンビームCT装置や磁気共鳴イメージング(MRI)装置、核医学診断装置等を有してもよい。しかしながら、以下の説明を具体的に行うため、放射線治療システム100は、患者の治療計画用の3次元医用画像データ(治療計画用医用画像データ)を生成できる医用画像診断装置として治療計画用X線CT装置6を有するものとする。
【0026】
放射線治療計画装置7は、3次元医用画像を利用して当該患者の放射線治療計画を立案するコンピュータである。放射線治療計画情報は、放射線治療支援装置8に供給される。放射線治療計画装置7は、治療計画用X線CT装置6で得られたCT画像に基づいて、CT値を電子密度あるいは物理密度に変換する。放射線治療計画装置7は、電子密度あるいは物理密度の分布に基づいて、目標の体内線量分布を実現するように放射線治療計画を作成する。
【0027】
放射線治療支援装置8は、放射線治療のスケジュール情報や放射線治療計画情報、医用画像等を管理する情報システムを兼ねる。このような情報システムとしては、例えば、OIS(oncology information system)が知られている。放射線治療支援装置8は、例えば、放射線治療装置9に放射線治療計画情報を供給する。
【0028】
放射線治療装置9は、放射線治療計画に従い患者内の標的腫瘍等に放射線を照射することにより、患者を治療する装置である。放射線治療装置9は、陽子線治療装置や重粒子線治療装置などの粒子線治療装置を含む。粒子線治療において、患者に照射された粒子ビームのエネルギーの大部分は、エネルギーに応じて患者内の一定の深さで多く放出される。つまり、粒子ビームは、粒子線のエネルギーによって特定の深さでピーク(ブラッグピーク)を有する。深さは、粒子線のビーム軸に沿う体表からの距離を指す。また、患者の体内において腫瘍領域等を含む計画標的体積は、深さ方向に厚みを有する。このため、粒子線治療においては、エネルギーの異なる複数の粒子ビームにより、深さ方向において当該厚みに応じた幅の概ね均一な吸収線量範囲(拡大ブラッグピーク:SOBP)が形成される。放射線治療装置9は、電子を加速する図示しない加速器と、電子を衝突させX線を生成するターゲット、生成したX線を所望の角度から照射するための図示しない回転ガントリと、患者が横臥し、位置決めに使用される図示しない患者位置決め装置とを有する。放射線治療装置9が粒子線治療装置の場合は、粒子を加速する図示しない加速器と、加速器で加速した粒子を導く図示しないビームラインと、粒子ビームを所望の角度から照射するための図示しない回転ガントリと、患者が横臥し、位置決めに使用される図示しない患者位置決め装置とを有する。なお、粒子ビームの照射方式としては、複雑な線量分布を実現できるスキャニングが適している。
【0029】
なお、SOBPは、リッジフィルタ(Ridge Filter)により形成されてもよいし、粒子ビームのエネルギーを変更しながら粒子ビームの重ね合わせにより形成されてもよい。なお、粒子ビームのエネルギーの変更には、加速器で加速するスピードをコントロールして所望のエネルギーの粒子ビームを出射する方法と、加速器で一定エネルギーの粒子ビームを出射し、エネルギー減衰器で粒子ビームのエネルギーを変更する方法がある。前者の方法は加速器がシンクロトロンの場合に可能であり、後者の方法は主に加速器がサイクロトロン、シンクロサイクロトロンの場合に採用される。また、シンクロトロンで離散的なエネルギーの粒子ビームを生成し、減衰器で細かいエネルギーを調整するハイブリッドな方法もある。
【0030】
なお、放射線治療システム100には、X線アンギオ装置やPACS(picture archiving and communication systems)等がさらに含まれていてもよい。一方で、活性度パラメータは、放射線治療システム100の外部から取得されてもよい。つまり、放射線治療システム100は、PET装置1、SPECT装置2、PET-CT装置3、MRI装置4及び超音波診断装置5を備えていなくてもよい。同様に、放射線治療装置9が放射線治療システム100の外部に設けられていてもよい。つまり、本実施形態に係る放射線治療システム100は、放射線治療計画の立案や変更を行うためのシステムであってもよい。
【0031】
図2は、
図1の放射線治療支援装置8の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、放射線治療支援装置8は、放射線治療装置9による放射線治療を支援するためのコンピュータである。
図2に示すように、放射線治療支援装置8は、演算回路81、画像処理回路82、通信回路83、表示回路84、入力回路85及び記憶回路86を有する。演算回路81、画像処理回路82、通信回路83、表示回路84、入力回路85及び記憶回路86は、互いにバスを介して通信可能に接続されている。
【0032】
演算回路81は、放射線治療支援装置8の全体の動作を制御する。演算回路81は、放射線治療支援に関するプログラム(以下、放射線治療支援プログラムと呼ぶ)を実行して、放射線治療装置9による腫瘍領域の放射線抵抗性に応じた放射線治療の支援を行う。演算回路81は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。
【0033】
本実施形態に係る演算回路81は、放射線治療支援プログラムにより、パラメータ取得機能811、表示制御機能812、活性領域特定機能813及び治療計画変更機能814を実行する。
【0034】
パラメータ取得機能811において演算回路81は、活性度パラメータを取得する。活性度パラメータは、例えば、腫瘍領域における還流情報又は代謝情報の少なくとも一方を含む。パラメータ取得機能811において演算回路81は、例えば、放射線治療システム100の有する医用モダリティから活性度パラメータを取得する。換言すれば、演算回路81は、腫瘍領域の放射線抵抗性を表す活性度の分布を取得する。上述したように、腫瘍領域における活性度の分布は、腫瘍領域内の腫瘍細胞の分裂周期や周辺環境等により経時変化する。このため、パラメータ取得機能811において演算回路81は、所定のタイミングで活性度パラメータを再取得する。所定のタイミングは、治療回ごとであってもよいし、例えば3日ごと等、複数の治療回ごとであってもよい。活性度パラメータが再取得される所定のタイミングは、予め設定され、例えば記憶回路86に記憶されている。
【0035】
例えば、パラメータ取得機能811において演算回路81は、PET装置1、SPECT装置2、PET-CT装置3、MRI装置4、超音波診断装置5又は治療計画用X線CT装置6から、活性度パラメータとして、計測された還流情報又は代謝情報を取得する。例えば、パラメータ取得機能811において演算回路81は、PET装置1、SPECT装置2又はPET-CT装置3から、活性度パラメータとして、計測された代謝情報を取得する。計測された代謝情報に定量性がない場合、パラメータ取得機能811において演算回路81は、取得した活性度パラメータを正規化する。 なお、活性度パラメータが再取得される所定のタイミングは、治療回や経過日数に基づいたタイミングに限らず、細胞の分裂周期等の活性度の変化要因に応じて決定されてもよい。また、活性度パラメータが再取得される所定のタイミングは、活性度パラメータに関する計測値の変化に応じて決定されてもよい。例えば、各治療回で活性度パラメータが計測されるとともに、活性度パラメータの値や分布が監視され、活性度パラメータの変化量や変化した領域の大きさに応じて、計測値を活性度パラメータとして再取得するか否かが決定されてもよい。
【0036】
なお、活性度パラメータは、放射線治療システム100の外部の医用モダリティにより計測されてもよい。例えば、パラメータ取得機能811において演算回路81は、放射線治療システム100の外部のX線CT装置により計測された還流情報を、活性度パラメータとして取得する。あるいは、パラメータ取得機能811において演算回路81は、高精細X線CT装置により画像化された微小血管からの距離に応じて活性度パラメータを計算しても良い。
【0037】
なお、活性度パラメータは、各種の医用モダリティにより計測された計測値に限らず、各種の推定値であってもよい。例えば、パラメータ取得機能811において演算回路81は、活性度パラメータを予測する。当該予測は、例えば、前回の計測値と、細胞の分裂周期と、前回の計測からの経過日数とに基づいて行われればよい。また、活性度パラメータが相対値として取り扱われるとき、当該予測は、例えば、細胞の分裂周期と、前回の計測からの経過日数とに基づいて行われてもよい。
【0038】
表示制御機能812において演算回路81は、表示回路84の動作を制御する。表示制御機能812において演算回路81は、表示回路84に表示させる画像データを生成する。当該画像データは、例えば、活性度パラメータ、腫瘍領域における放射線感受性に関する区分又は腫瘍領域における各領域に関する粒子線投与量(線量)の累計値が重畳された治療計画用CT画像データ(治療計画用医用画像データ)を含む。当該画像データは、例えば操作画面を表示するための画像データ等を含む。
【0039】
活性領域特定機能813において演算回路81は、活性度分布に基づいて、腫瘍領域を放射線抵抗性に応じて区分された複数の領域を特定する。具体的には、演算回路81は、放射線抵抗性が比較的低い活性領域と、放射線抵抗性が比較的高い非活性領域とを、活性度分布に基づいて特定する。活性領域は、腫瘍領域における放射線に関する感受性が高い領域である。活性領域の特定は、取得された活性度パラメータに基づいて行われる。活性領域の特定は、例えば活性度パラメータが取得された後のタイミングで行われる。
【0040】
治療計画変更機能814において演算回路81は、活性度分布に応じて放射線治療計画を変更する。具体的には、演算回路81は、活性度パラメータに応じて放射線治療計画を変更する。放射線治療計画が変更されるとき、治療計画変更機能814において演算回路81は、特定された活性領域の分布に応じて、放射線を照射する計画標的体積を決定する。治療計画変更機能814において演算回路81は、決定された計画標的体積に応じて期待される投与線量分布を決定する。治療計画変更機能814において演算回路81は、期待される投与線量分布に基づいて放射線投与のシミュレーションを行うことにより、投与線量分布を決定する。上述したように、腫瘍領域における活性度の分布は経時変化する。このため、治療計画変更機能814において演算回路81は、例えば、活性度パラメータが取得されたり、活性領域が特定されたりするごとに放射線治療計画を変更する。放射線治療計画の変更は、変更後の放射線治療計画の生成と同義である。
【0041】
なお、演算回路81は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)により実現されてもよい。また、演算回路81は、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)又は単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)により実現されてもよい。
【0042】
なお、各機能811~814は単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能811~814を実現するものとしても構わない。
【0043】
画像処理回路82は、ハードウェア資源として、CPU、GPU、MPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。画像処理回路82は、3次元の医用画像に種々の画像処理を施す。例えば、画像処理回路82は、3次元の医用画像にボリュームレンダリングや、サーフェスレンダリング、画像値投影処理、MPR(Multi-Planar Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理を施して表示用の2次元の医用画像を生成する。なお、画像処理回路82は、上記画像処理を実現可能なASICやFPGA、CPLD、SPLDにより実現されても良い。
【0044】
通信回路83は、図示しない有線又は無線を介して、放射線治療システム100を構成するPET装置1、SPECT装置2、PET-CT装置3、MRI装置4、超音波診断装置5、治療計画用X線CT装置6、放射線治療計画装置7及び放射線治療装置9との間でデータ通信を行う。
【0045】
表示回路84は、種々の表示情報を表示する。表示回路84は、例えば、表示制御機能812を実現する演算回路81によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。表示回路84としては、種々の任意の1又は2以上のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。例えば表示回路84として、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ又はプラズマディスプレイが適宜利用可能である。表示回路84は、例えば、図示しない操作室の壁に設置される。
【0046】
なお、表示回路84は、操作室の如何なる場所に設けられてもよい。あるいは表示回路84は、図示しない治療室の如何なる場所に設けられてもよい。また、表示回路84は、デスクトップ型でもよいし、無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、表示回路84として、1又は2以上のプロジェクタが用いられてもよい。
【0047】
入力回路85は、放射線診療技師や医師等の放射線治療従事者からの各種指令を受け付ける。入力回路85としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力回路85は、受け付けた各種指令に対応する出力信号を、バスを介して演算回路81に供給する。
【0048】
記憶回路86は、種々の情報を記憶するHDD(hard disk drive)やSSD(solid state drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、記憶回路86は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)-ROMドライブやDVD(Digital Versatile Disc)ドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。また、記憶回路86の保存領域は、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。例えば、記憶回路86は、放射線治療計画装置7から供給された放射線治療計画や治療計画用CT画像、線量分布(放射線強度分布)、各モダリティで計測された活性度パラメータ等を記憶する。
【0049】
ここで、放射線治療計画の変更に係る各部の動作について、図面を参照して詳細に説明する。
図3は、
図1の放射線治療システム100において実施される活性度パラメータに応じた放射線治療の流れの一例を示すフローチャートである。
【0050】
ステップS101において、治療計画用X線CT装置6は、腫瘍部周辺に関して、治療計画用のCT画像を撮像する。なお、治療計画用CT画像の撮像は、患者が固定具により寝台等に固定された状態で、予め決められた管電圧の条件が設定されて行われる。取得された治療計画用CT画像は、放射線治療計画装置7へ転送される。
【0051】
ステップS102において、放射線治療計画装置7は、放射線治療計画を立案する。放射線治療計画は、患者に関する情報から空間的線量分布を作成し、さらにその時間的配分を検討して、最適な治療機器、照射方法及び照射条件等を決定することである。
【0052】
まず、放射線治療計画装置7は、治療計画用CT画像のCT値を電子密度データあるいは物理密度データに変換する。この変換には、例えば予め取得されたCT値と電子密度データあるいは物理密度データとの変換テーブルが用いられる。変換テーブルは、例えば放射線治療計画装置7内の記憶回路等に記録されている。その後、放射線治療計画装置7は、電子密度データあるいは物理密度の分布に基づいて、放射線治療計画を立案する。放射線治療計画の立案に係る処理は、前処理及び計画処理を含む。
【0053】
前処理において、放射線治療計画装置7は、治療計画用CT画像において肉眼的腫瘍体積(gross tumor volume)を同定する。放射線治療計画装置7は、同定した腫瘍領域に、患者動き、治療装置の不確かさ等を鑑みたマージンを加えて、計画標的体積(planning tumor volume)を決定する。ここでは先ず、放射線治療装置9として、粒子線治療装置を使用する場合について説明する。
図4Aは、粒子線治療計画装置7の立案した当初の粒子線治療計画による計画標的体積(planning tumor volume)IA1の一例を示す図である。
図4Aに示す例では、肉眼的腫瘍体積(gross tumor volume)は、実線で囲まれている領域であり、当初計画による計画標的体積(planning tumor volume)IA1は、破線で囲まれている領域である。また、粒子線治療計画装置7は、当初計画による計画標的体積(planning tumor volume)IA1の近くに、被ばくによって副作用が発生するリスクが高い臓器があるとき、その臓器をリスク臓器として同定する。その後、粒子線治療計画装置7は、当初計画による計画標的体積(planning tumor volume)への期待される線量、リスク臓器への被ばく上限等を決定する。
図4Bは、
図4Aにおける矢印が示す深さ方向の期待される投与線量分布の一例である。
図4Bは、粒子線治療計画による期待される投与線量分布の一例であるとも表現できる。粒子線治療計画装置7は、例えば計画標的体積(planning tumor volume)IA1に所定の線量で粒子線が投与されるように、期待される投与線量分布を決定する。
図4Bに示す例において、100%の線量は、時間的に配分された治療回あたりの期待される投与線量分布であるとする。
【0054】
計画処理において、粒子線治療計画装置7は、粒子線治療計画を作成する。粒子線治療計画は、粒子ビームに関するシミュレーションを含む。粒子ビームに関するシミュレーションは、
図4Bの期待される投与線量分布に基づいて行われる。粒子線は、ある目的の深さにブラッグピークと呼ばれる電離ピークを有する。粒子線のエネルギーを変更することにより、粒子線のブラッグピークの深さが変更される。このような中、照射領域内を均等に照射するために、互いにエネルギーの異なる複数の粒子ビームを用いることにより、照射領域の大きさや深さに合わせて拡大されたブラッグピーク(拡大ブラッグピーク:SOBP)を形成することができる。つまり、粒子ビームに関するシミュレーションは、期待される投与線量分布を実現するために照射される複数の粒子ビームの数及びエネルギーを決定するものであると表現できる。
図4Cは、
図4Bの粒子線治療計画による期待される投与線量分布を実現する複数の粒子線ビームの一例である。
図4Dは、
図4Cの複数の粒子ビームにより形成される拡大ブラッグピークの一例である。
【0055】
なお、粒子線治療計画は、フォーワードプランニングによって作成されてもよいし、インバースプランニングによって作成されてもよい。フォーワードプランニングによって粒子線治療計画が作成されるとき、計画者は、照射方向や粒子線照射強度等の照射条件を照射方向ごとに決定する。粒子線治療計画装置7は、決定された照射方向ごとの照射方向や粒子線照射強度等に基づいて、放射線線量分布を計算する。計画者は、得られた放射線線量分布に基づいて粒子線治療計画装置7上の照射方向や粒子線照射強度等のパラメータを変更する。粒子線治療計画装置7は、変更した照射方向や粒子線照射強度等に基づいて、再度、放射線線量分布を計算する。粒子線治療計画装置7は、所望の放射線線量分布を得るまで、これらの処理を繰り返すことにより、照射条件を決定し、粒子線治療計画を作成する。一方、インバースプランニングによって粒子線治療計画が作成されるとき、粒子線治療計画装置7は、計画標的体積への線量やリスク臓器への線量上限、リスク臓器以外の正常組織への線量上限等の照射条件を取得する。粒子線治療計画装置7は、各種パラメータを変更しながら、取得された照射条件を満たす粒子線治療計画を作成するまでシミュレーションを繰り返す。
【0056】
その後、作成された粒子線治療計画、放射線線量分布及びDVH(Dose Volume Histogram)等は、計画者及び医師によりチェックされる。DVHは、例えば粒子線治療計画及び放射線線量分布から作成される。チェックの結果、問題ないと判断されたとき、作成された粒子線治療計画等は承認され、粒子線治療支援装置8に転送される。粒子線治療支援装置8の記憶回路86は、上述のようにして立案された粒子線治療計画や治療計画用CT画像等を記憶する。
【0057】
ステップS103において、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、活性度パラメータを収集するか否かを判定する。本判定は、例えばユーザの入力に応じた入力回路85の出力に基づいて行われる。その後、活性度パラメータを収集すると判定された場合はステップS104(活性度パラメータの収集)へ進み、判定されなかった場合はステップS108へ進む。
【0058】
なお、本判定は、予め設定された周期であるか否かに基づいて行われてもよい。予め設定された周期は、例えば2日ごと、3日ごと、一週間ごと等であってもよい。また、本判定は、線量の累計値や腫瘍領域の大きさの変化量、腫瘍領域の形状の変化量が所定の閾値を超えたか否かに基づいて行われてもよい。判定に用いられる閾値等は、予め設定されて記憶回路86等が記憶していればよい。なお、予め粒子線治療計画を変更する周期やタイミングが決定されている場合には、本判定は行われなくてもよい。
【0059】
ステップS104において、活性度パラメータを収集する。治療対象となる腫瘍領域への粒子ビームの照射は複数回行われる。この回数は30回が代表的な回数である。1回目の治療では、過去の活性度パラメータがないため、活性度パラメータを収集することが推奨される。活性度パラメータは、例えば、腫瘍領域における還流情報又は代謝情報の少なくとも一方を含む。計測された還流情報又は代謝情報は、腫瘍領域の活性度と関係している。
【0060】
腫瘍領域における還流情報は、例えばPET装置1を用いたパフュージョン検査により計測される。なお、腫瘍領域における還流情報は、SPECT装置2を用いた血流シンチグラフィ検査により計測されてもよいし、PET-CT装置3、MRI装置4又は超音波診断装置5を用いたパフュージョン検査により計測されてもよい。また、パフュージョン検査は、治療計画用X線CT装置6を用いて行われてもよい。あるいは高精細X線CT装置により画像化された微小血管からの距離に応じて還流情報を推定しても良い。
【0061】
腫瘍領域における代謝情報は、例えばPET装置1を用いた酸素代謝イメージングにより計測される。なお、腫瘍領域における代謝情報は、PET装置1を用いた糖代謝イメージング(例えばFDG-PET検査)により計測されてもよい。また、腫瘍領域における代謝情報は、SPECT装置2を用いた脂肪酸代謝イメージングにより計測されてもよいし、PET-CT装置3を用いた酸素代謝イメージング又は糖代謝イメージングにより計測されてもよい。また、上述に限らず、アミノ酸等の他の製剤を用いた代謝イメージングであってもよい。
【0062】
計測された活性度パラメータは、粒子線治療支援装置8に転送される。パラメータ取得機能811を実現する演算回路81は、上述のようにして計測された活性度パラメータを取得する。取得された活性度パラメータは、例えばPET画像データやCT画像データ、超音波画像データ、MRI画像データ等の画像データ又は当該画像データの解析により得られた画像データを含む。例えば、X線CT装置によって脳に関する還流情報が取得されたとき、活性度パラメータは、脳血流量(Cerebral Blood Flow: CBF)、脳血液量(Cerebral Blood Volume: CBV)、平均通過時間(Mean Transit Time: MTT)又はTTP(Time to Peak)のマップを含む。
【0063】
なお、活性度パラメータは計測された還流情報又は代謝情報に限らない。例えば、パラメータ取得機能811を実現する演算回路81は、過去に計測された活性度パラメータに基づいて細胞分裂周期あるいは血管新生を予測することにより、活性度パラメータを推定してもよい。上述したように、細胞分裂周期あるいは血管新生は、細胞の放射線感受性の周期と相関がある。なお、過去に計測された活性度パラメータは、同一の患者に関して計測されたものであってもよいし、他の患者に関して計測されたものであってもよい。
【0064】
ステップS105において、パラメータ取得機能811を実現する演算回路81は、取得した活性度パラメータを正規化する。一般に、例えばMRI装置4又は超音波診断装置5を用いたパフュージョン検査の計測値は、定量的な数値ではない。また、X線CT装置を用いたパフュージョン検査の計測値は定量的な数値であると言われているが、当該計測値は細胞に対する還流情報ではない。このため、腫瘍領域内の組織に対する還流情報に係る定量的な数値として当該計測値を取り扱うことができない場合がある。このようなことから、パラメータ取得機能811を実現する演算回路81は、腫瘍領域の周辺の正常部位の活性度パラメータ(還流情報及び/又は代謝情報)をさらに取得する。パラメータ取得機能811を実現する演算回路81は、腫瘍領域の活性度パラメータを、正常部位の活性度パラメータにより正規化する。このように、パラメータ取得機能811を実現する演算回路81は、正常部位の活性度パラメータに対する相対的な数値として、腫瘍領域の活性度パラメータを算出する。なお、計測された腫瘍領域の活性度パラメータが定量的な値であるとみなせる場合には、本ステップは行われなくてもよい。
【0065】
その後、ステップS106において、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、活性度パラメータを比較する。比較するパラメータは、ステップS104において新たに収集した活性度パラメータと、過去に収集した活性度パラメータあるいは治療計画の中の時間的計画標的体積である。1回目の治療では、過去の活性度パラメータがないため、収集した活性度パラメータと、治療計画の中の計画標的体積とを比較する。計画標的体積内の活性度が略一定で、活性度が低い領域がない場合は、ステップS108に進む。活性度が低い領域がある場合は、ステップS107に進む。一方、活性度パラメータの収集が2回目以降である場合は、新たに収集した活性度パラメータと前回収集した活性度パラメータとを比較する。2つの活性度パラメータを比較して、計画標的体積内に一定レベル以上の変化がない場合は、ステップS108に進む。計画標的体積内に一定レベル以上の変化がある場合は、ステップS107に進む。また、計画標的体積内以外に一定レベル以上活性度が高い領域がある場合は、腫瘍が転移している可能性もあるので、ワーニングメッセージを表示する。なお、活性度や活性度の変化の閾値等、活性度パラメータが前回から変化しているか否かの判定に用いられる各種の閾値は、例えば予め設定されて記憶回路86に記憶されている。
【0066】
ステップS107において、活性度パラメータに応じて粒子線治療計画が変更される。
図5は、
図3の粒子線治療のステップS107において演算回路81により実施される活性度パラメータに応じた粒子線治療計画の変更の流れの一例を示すフローチャートである。
【0067】
ステップS201において、表示制御機能812を実現する演算回路81は、治療計画用CT画像データ(治療計画用医用画像データ)上に活性度パラメータを重ね合わせることにより、重畳画像データを生成する。なお、活性度パラメータだけでなく、同時に照射領域、リスク臓器を重ねて表示するとより分かり易い。表示制御機能812を実現する演算回路81は、生成した重畳画像データを、表示回路84へ出力する。表示回路84は、重畳画像データに基づいて、重畳画像を表示する。つまり、表示回路84は、治療計画用CT画像データ上に活性度パラメータの分布を重畳表示する。
図6は、治療計画用CT画像(治療計画用医用画像)上に活性度パラメータが重畳された重畳画像の一例を示す図である。
図6に示す例では、ドット状のハッチングの密度により活性度パラメータの値が模式的に表現されている。ドット状のハッチングの密度の高い領域は、活性度パラメータの値が高い領域であるとする。
図6に示すように、活性度パラメータは、腫瘍領域の外側において高く、腫瘍領域の内側において低いとする。
【0068】
重畳画像データの生成において、表示制御機能812を実現する演算回路81は、活性度パラメータの分布と、治療計画用CT画像との位置合わせを行う。例えば、活性度パラメータがPET画像データ又は超音波画像データであるとき、位置合わせは、抽出した臓器形状に基づいて行われればよい。活性度パラメータがCT画像データであるとき、位置合わせは、CT画像同士が比較されて行われればよい。また、位置合わせのために、超音波診断装置5は、例えば位置センサを有していてもよい。位置センサは、例えばプローブに配置される。活性度パラメータの計測に先立って、超音波診断装置5においてジオメトリの位置補正が行われる。ジオメトリの位置補正は、例えば既知の人体構造を治療計画用CT画像上と超音波画像上とで指定することにより行われる。このような構成であれば、より簡易に位置合わせが可能である。また、活性度パラメータがMRI画像データであるとき、位置合わせは、抽出した臓器形状に基づいて行われればよい。ただし、MRI画像には歪みが存在する。このため、位置合わせ及び重ね合わせは、歪み補正が施されたMRI画像に基づいて行われてもよい。歪み補正のために、MRI装置4において、歪み分布計測用のファントムを用いた同一条件のスキャンが、活性度パラメータの計測に先立って行われればよい。歪み補正は、当該スキャンにより生成された画像から抽出した分布に基づいて行われる。
【0069】
なお、関心はあくまで腫瘍領域であることから、腫瘍の形状に基づいて、治療計画用CT画像と、その他の医用モダリティにより生成された画像との位置合わせが行われてもよい。このとき、腫瘍領域以外は、多少ずれても構わないため、活性度パラメータがMRI画像データであっても、歪み補正は不要となる。
【0070】
ステップS202において、活性領域特定機能813を実現する演算回路81は、活性度パラメータの分布に基づいて、腫瘍領域の各領域の活性度を特定する。つまり、活性領域特定機能813を実現する演算回路81は、例えば
図6に示すように、腫瘍領域TAにおける活性領域TA1及び非活性領域TA2を特定する。これは、活性領域特定機能813を実現する演算回路81は、腫瘍領域TAを活性領域TA1と非活性領域TA2とに分割するとも表現できる。
図6に示す例では、活性領域TA1は、斜線のハッチングが付されている領域であり、非活性領域TA2は、活性領域TA1の内側の領域である。
【0071】
活性領域TA1は、腫瘍領域TAの各領域のうち活性度パラメータの高い領域である。例えば活性領域TA1は、腫瘍領域TAのうち還流情報及び/又は代謝情報の値が所定の閾値よりも高い領域である。活性領域TA1は、腫瘍領域TAのうち粒子線に関する感受性が高い領域と表現されてもよいし、腫瘍領域TAのうち粒子線に関する放射線抵抗性が低い領域であると表現されてもよい。
【0072】
一方で、非活性領域TA2は、腫瘍領域TAの各領域のうち活性度パラメータの低い領域である。例えば非活性領域TA2は、腫瘍領域TAのうち活性領域TA1以外の領域である。例えば非活性領域TA2は、腫瘍領域TAのうち還流情報及び/又は代謝情報の値が所定の閾値よりも低い領域である。非活性領域TA2は、腫瘍領域TAのうち粒子線に関する感受性が低い領域であると表現されてもよいし、腫瘍領域TAのうち粒子線に関する放射線抵抗性が高い領域であると表現されてもよい。活性領域TA1と非活性領域TA2との分割に関する所定の閾値は、例えば、記憶回路86等に予め設定されて記憶されていればよい。
【0073】
なお、本ステップは、ステップS201に先立って行われてもよい。つまり、重畳画像において、腫瘍領域TAにおける活性領域TA1と非活性領域TA2との区分は、
図6の例のように明示されていてもよいし、明示されていなくてもよい。
【0074】
ステップS203において、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、特定された活性領域TA1の分布に基づいて、時間的計画標的体積IA2を決定する。具体的には、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、特定された活性領域TA1に、患者動き、治療装置の不確かさ等を鑑みたマージンを加えて、時間的計画標的体積IA2を決定する。
図7Aは、
図6の活性領域TA1の分布に基づいて決定された時間的計画標的体積IA2の一例を示す図である。
図7Aに示す例では、活性領域TA1に応じた時間的計画標的体積IA2は、破線と破線の間の領域である。時間的計画標的体積IA2は活性領域TA1に患者動き、治療装置の不確かさ等を鑑みたマージンを加えて決定される。また、
図7Aに示す例では、時間的計画標的体積IA2は、斜線のハッチングが付されている領域であり、時間的非標的体積IA3は、照射対象限定領域IA2の内側の領域である。
【0075】
ステップS204において、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、特定された活性領域TA1に応じた時間的計画標的体積IA2に基づいて、投与線量分布を決定する。
【0076】
まず、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、例えば時間的計画標的体積IA2に粒子線が投与されるように、期待される投与線量分布を決定する。
図7Bは、
図7Aにおける矢印が示す深さ方向の期待される投与線量分布の一例である。
図7Bに示す例において、100%の線量は、時間的に配分された治療回あたりの期待される投与線量分布であるとする。
【0077】
次に、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、
図7Bの時間的計画標的体積IA21の分布に基づく期待される投与線量分布に基づいて、粒子ビームに関するシミュレーションを実行する。当該シミュレーションは、例えばステップS102において粒子線治療計画装置7が実行する粒子ビームに関するシミュレーションと同様である。
図7Cは、
図7Bの時間的計画標的体積IA2の分布に基づく期待される投与線量分布を実現する複数の粒子ビームの一例である。
図7Dは、
図7Cの複数の粒子ビームにより形成される複数の拡大ブラッグピークの一例である。
【0078】
このように、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、例えば時間的計画標的体積IA2に粒子線が投与されるように、期待される投与線量分布を実現する複数の粒子ビーム、すなわち投与線量分布を決定する。つまり、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、時間的計画標的体積A2に照射する線量が所定の線量となり、時間的非標的体積IA3に照射される線量が低くなるように投与線量分布を決定する。
図4D及び
図7Dの比較から示されるように、活性度パラメータに基づいて粒子線治療計画を変更することにより、粒子線治療計画装置7の立案した粒子線治療計画と比較して、腫瘍領域の手前に位置する正常組織への投与線量を低減できる。
【0079】
投与線量分布の変更は、粒子ビームの投与線量、照射回数(スポット回数)及び照射方向(照射角度)等の照射条件を変更することにより行われる。例えば、
図7A-
図7Dに示すように、時間的非標的体積IA3へのスポット照射を無くすことにより、投与線量分布を変更してもよい。この場合、各照射における粒子ビームの投与線量や照射方向等の他の照射条件を変更する必要はなく、治療計画の変更箇所が少なくて済む。
【0080】
なお、照射回数を変更するだけでなく、投与線量や照射方向を変更することにより、より最適な投与線量分布を生成することができる。
図7Eは、
図7Aと同一の時間的計画標的体積IA2を示す図である。
図7A-
図7Dは、
図7Eの照射方向D1の粒子ビームによる治療計画を例示していた。この場合、
図7C及び
図7Dに示すように、時間的計画標的体積IA2よりも深さが浅い領域にも粒子ビームの重なりにより線量が蓄積されてしまう。このような場合、
図7Eに示すように、もともとの照射方向D1とは異なる方向D2からも粒子ビームが照射されるように治療計画が変更されるとよい。
【0081】
以下、照射方向D1と正反対の照射方向D2とから粒子ビームを照射するように治療計画を変更する場合を例に説明する。この場合であっても、腫瘍領域TA、活性領域TA1、時間的計画標的体積IA2及び時間的非標的体積IA3は
図7Aと
図7Eとで同一であるので、期待される投与線量分布は
図7Bと同一である。
【0082】
図7Fは、
図7Eの照射方向D1及び照射方向D2での、期待される線量投与分布と複数の粒子ビームとを重ね合わせた図である。
図7Fに示すように、照射方向D1から見て手前側の時間的計画標的体積IA21と照射方向D2から見て手前側の時間的計画標的体積IA22とに投与線量を集中させるように治療計画が変更される。具体的には、時間的計画標的体積IA21には、照射方向D1からの複数の粒子ビームにより拡大ブラッグピークが形成され、時間的計画標的体積IA22には、照射方向D2からの複数の粒子ビームにより拡大ブラッグピークが形成される。
【0083】
図7Gは、
図7Fの複数の粒子ビームにより形成される拡大ブラッグピークの一例を示す図である。
図7Gに示すように、照射方向を分散することにより、一方向D1から粒子ビームを照射する
図7Dに比して、時間的計画標的体積IA21の手前側の領域TB1への投与線量を減少させることができる。また、時間的計画標的体積IA21及び時間的計画標的体積IA22の双方から見て深部にある時間的非標的体積IA3への投与線量も大幅に減少させることができる。
【0084】
なお、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、例えば時間的非標的体積IA3に粒子線が投与されないように投与線量分布を決定するとも表現できる。例えば、
図7Dに示すように、変更された粒子線治療計画による投与線量分布では、計画標的体積IA1内の一部領域に対する投与線量が低下している。しかし、当該領域は、時間的非標的体積IA3に相当する領域である。つまり、当該領域は、粒子線を照射してもがん細胞への効果が少ない非活性領域TA2が支配的な領域であると考えることができる。
【0085】
ステップS205において、変更された投与線量分布等は、ステップS102と同様にして計画者又は粒子線治療計画装置7によりチェックされる。変更された粒子線治療計画のチェックは、粒子線治療支援装置8において行われてもよい。チェックにおいて承認された後、粒子線治療支援装置8の記憶回路86は、変更された粒子線治療計画と変更された投与線量分布を記憶する。また、粒子線治療支援装置8は、変更された粒子線治療計画を粒子線治療装置9へ転送する。その後、活性度パラメータに応じて行われる粒子線治療計画の変更は終了する。終了後、
図3のステップS108へ進む。
【0086】
ステップS108において、立案された粒子線治療計画、変更された粒子線治療計画又は追加の粒子線投与計画に基づいて、粒子線治療装置9を用いた粒子線治療が行われる。追加の粒子線投与計画については後述する。粒子線治療では、各治療回に先立って、尿や排便のコントロール等が行われる。
【0087】
なお、変更された粒子線治療計画に基づいて実施される粒子線治療では、計画標的体積IA1のうち時間的非標的体積IA3には十分な線量の粒子ビームが投与されていない。しかし、複数回実施される粒子線治療の間に、計画標的体積IA1における活性領域TA1及び非活性領域TA2の分布は変化する。また、上述の通り、粒子線治療計画は、計測された活性度パラメータに応じて治療ごとに変更され得る。つまり、本技術によれば、計画標的体積IA1のうちいずれの領域であっても、複数の粒子線治療の間に非活性領域TA2から活性領域TA1へと変化した時点で十分な粒子ビームを投与するように粒子線治療計画が変更される。
【0088】
具体的には、パラメータ取得機能811を実現する演算回路81は、粒子線治療計画に基づいて複数回の粒子線治療が実施される前に、経時変化した活性度パラメータに応じて活性領域及び非活性領域を再特定する。治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、計画標的体積IA1の中の領域毎の累積線量が目標線量とほぼ一致するように投与線量分布を決定する。つまり、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、活性度(感受性)の時間的な変化に応じて、複数日に亘る放射線治療において、腫瘍領域における拡大ブラッグピークの位置や幅を変える。治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、腫瘍領域における拡大ブラッグピークの位置や幅を変えることにより、計画標的体積に照射する粒子線の線量分布(拡大ブラッグピークの形状)を変化させる。具体的には、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、計画標的体積において、複数の拡大ブラッグピークが形成されるように線量分布を変更する。なお、複数の拡大ブラッグピークは、複数のピークを有する拡大ブラッグピークと表現されてもよい。活性度(感受性)の時間的な変化は、例えば、還流情報及び/又は代謝情報を含む活性度パラメータを再計測することにより取得される。なお、活性度(感受性)の時間的な変化は、例えば、過去の取得値や経過日数、細胞の分裂周期等に基づいて予測されることにより取得されてもよい。当該予測は、同一の患者(被検体)に関するデータに基づいて行われてもよいし、複数の患者に関するデータに基づいて行われてもよい。なお、予測に用いられるデータは、例えば、部位や症例、年齢、放射線の線質等と関連付けて蓄積されていればよい。
【0089】
ステップS109において、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、各回で投与された線量を患者体内の各領域に関してそれぞれ累計し、投与線量の累計値(総投与線量)を算出する。あるいは演算回路81は、各回で投与された線量に各領域での活性度パラメータを乗算したものを患者体内の各領域に関してそれぞれ累計し、治療効果の累計値(総治療効果値1)を算出してもよい。さらに演算回路81は、各回で投与された線量に、各領域での照射ビームの特性と組織ごとの感度によって決まる生物学的効果比(RBE:Relative Biological Effectiveness)をさらに乗算したものを患者体内の各領域に関してそれぞれ累計し、先ほどとは別の治療効果の累計値(総治療効果値2)を算出してもよい。表示制御機能812を実現する演算回路81は、患者体内の各領域に関して算出された総投与線量、総治療効果値1及び総治療効果値2のどれか一つ、あるいは組み合わせを治療計画用CT画像(治療計画用医用画像)上に重畳した重畳画像データを生成する。表示制御機能812を実現する演算回路81は、生成した重畳画像データを、表示回路84へ出力する。表示回路84は、重畳画像データに基づいて、重畳画像を表示する。つまり、表示回路84は、治療計画用CT画像データ上に患者体内における各領域に照射された粒子線の総線量、総治療効果値1及び総治療効果値2のどれか一つ、あるいは組み合わせを重畳表示する。医師等のユーザは、重畳画像を確認することにより、計画標的体積IA1の各領域に十分な線量が投与されているか否かを確認することができる。
【0090】
なお、本ステップで表示される重畳画像には、活性度パラメータの分布及び/又は活性領域TA1の分布がさらに含まれていてもよい。また、同時に照射領域やリスク臓器を重ねて表示するとよりさらに分かり易い。但し、全ての情報を同時に表示すると分かり難いので、例えばラジオボタンのようなもので選択された情報のみを重畳表示すると分かり易い。
【0091】
ステップS110において、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、所定の回数分粒子線治療が完了した後、追加の粒子線投与計画を立案するか否かを判定する。本判定は、例えばユーザの入力に応じた入力回路85の出力に基づいて行われる。医師等のユーザは、ステップS109において表示された重畳画像に基づいて追加の粒子線投与計画を立案するか否かを判断することができる。医師等のユーザは、例えば総投与線量、総治療効果値1又は総治療効果値2が低い領域があったときは、その情報を元にして追加の投与計画を立案すると判断する。その後、追加の粒子線投与計画を立案すると判定された場合はステップS111へ進み、判定されなかった場合はステップS112へ進む。なお、ここでは追加の粒子線投与計画を立案するか否かは、所定の粒子線治療が行われた後としているが、粒子線治療が任意の回数済んだ後で、追加の粒子線投与計画を立案するか否かを検討しても良い。
【0092】
あるいは所定の回数分粒子線治療が完了した後、粒子線追加投与をせずにフォローアップを行うケースがあっても良い。例えば粒子線治療中、活性度パラメータが一度も高くならなかった領域は、今後も活性化しないケースも考えられる。そのような場合は、例えば最初は1週間に1度、数ヶ月後には数週間に1度、1年後には数ヶ月に1度、というように活性度パラメータが高くなっていないかどうかをチェックすれば良い。活性度が高くなければ、腫瘍細胞が急激に増殖することは考えられないので、活性度パラメータが変化してから治療すればよい。
【0093】
なお、本判定は、粒子線治療計画による計画線量と、計画標的体積IA1の各領域に関して算出された総投与線量との比較に基づいて行われてもよい。例えば、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、総投与線量の計画線量に対する割合が所定の閾値未満であるとき、追加の粒子線投与計画を立案すると判定してもよい。当該割合に関する所定の閾値は、例えば、記憶回路86等に予め設定されて記憶されていればよい。なお、ここでは総投与線量と計画線量との比較に基づいて行われる例について説明したが、総治療効果値1や総治療効果値2と計画総治療効果値1や計画総治療効果値2との比較に基づいて行われてもよい。ただし、総治療効果値1や総治療効果値2については全く新しい概念なので、今後経験を積み重ね、適切な計画総治療効果値1や計画総治療効果値2を同定する必要がある。
【0094】
ステップS111において、粒子線治療計画装置7又は粒子線治療支援装置8は、例えばステップS102又はステップS107と同様にして、追加の粒子線投与計画を立案する。追加の粒子線投与計画は、例えば総投与線量が低い領域に粒子線が投与されるように立案される。その後、ステップS108へ戻り、追加の粒子線投与計画に基づいて粒子線治療等が行われる。
【0095】
ステップS112において、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、粒子線治療を終了するか否かを判定する。本判定では、例えば計画標的体積IA1における各領域の総粒子線投与量(総線量)が予め決められた線量に達したとき、粒子線治療を終了すると判定される。換言すれば、粒子線治療計画は、計画標的体積IA1における各領域の総線量が予め決められた線量になるまで粒子線治療が繰り返されるように変更される。その後、粒子線治療を終了すると判定された場合は粒子線治療計画の変更に係る処理を終了し、判定されなかった場合はステップS103へ戻る。
【0096】
なお、本判定は、ユーザの入力に応じた入力回路85の出力に基づいて行われてもよいし、予め設定された周期やタイミングであるか否かに基づいて行われてもよい。粒子線治療は、複数回実施される。粒子線治療は、例えば1日1回実施される。粒子線治療は、例えば平日のみ週5回実施される。粒子線治療は、例えば6週間継続して実施される。つまり、粒子線治療は、例えば計30回実施される。なお、1回線量、回数、総線量等は、各症例等に応じて適宜設定され得る。判定に用いられる閾値等は、予め設定されて記憶回路86等が記憶していればよい。なお、予め粒子線治療計画を変更する周期やタイミングが決定されている場合には、本判定は行われなくてもよい。
【0097】
このように、本実施形態に係る粒子線治療支援装置8において、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、活性度パラメータに応じて、粒子線治療計画装置7が立案した粒子線治療計画を変更する。この構成によれば、活性度パラメータの分布に応じて、粒子線治療における粒子線の照射領域及び投与線量分布を変更することができる。活性度パラメータは、計画標的体積IA1の放射線抵抗性に関するパラメータや腫瘍領域の粒子線に関する感受性に係るパラメータであるとも表現できる。例えば、活性度パラメータは、計画標的体積IA1における各領域の還流情報及び/又は代謝情報を含む。つまり、本技術によれば、計画標的体積IA1のうち粒子線に関する感受性が高い活性領域に集中して粒子線を投与することができるため、粒子線治療における粒子線の利用効率を向上させることができる。換言すれば、計画標的体積IA1のうち粒子線に関する感受性が低い非活性領域については、投与される線量が低くなるように粒子線の線量分布が変更されるため、投与されたもののがん組織への影響が低い粒子線の線量を低減できる。この低減により、計画標的体積IA1周辺の正常部位、特にビーム入射点から計画標的体積IA1までの正常部位への線量も低減できる。また、粒子線治療計画の変更は、活性度パラメータが再取得される所定のタイミングで行われる。つまり、本技術によれば、腫瘍領域における活性領域の経時変化に応じて、粒子線の照射領域及び投与線量分布を更新することができる。
【0098】
なお、CT画像あるいはMR画像等より患者体形や腫瘍形状を同定し、計画時の体形あるいは腫瘍形状との変化を元に治療計画を変更することが広く行われている。この計画変更に基づいた治療は、Adaptive放射線治療(ART:Adaptive Radiotherapy)と呼ばれる。Adaptive放射線治療は、本実施形態に係る技術が適用された治療においても行われることが推奨される。なお、本実施形態に係る技術が適用された治療は、Adaptive放射線治療が行われる前であっても、つまり、腫瘍形状が変化していない場合であっても有効である点で、本実施形態に係る技術が適用されないAdaptive放射線治療とは大きな相違がある。ちなみに、本実施形態に係る技術が適用された治療には、Adaptive放射線治療と比較し、以下のようなメリットがある。
【0099】
本実施形態に係る技術によれば、放射線抵抗性に関するパラメータに応じて、放射線抵抗性が高い領域、つまり粒子ビームを照射してもがん組織への影響の少ない領域への照射を抑えることにより、正常部位への線量を下げることができる。
【0100】
本実施形態に係る技術によれば、放射性抵抗性が低い領域に線量を集中させることで、腫瘍を効率的に、つまりAdaptive放射線治療より低い線量で治療することができる可能性がある。また、本実施形態に係る技術によれば、放射性抵抗性が高い領域については、放射性抵抗性が低くなった時点で治療する。この治療戦略により、トータルの線量を抑えた治療ができる可能性がある。
【0101】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本実施形態に係る放射線治療計画装置、放射線治療装置及び放射線治療計画方法を説明する。ここでは、主に第1の実施形態との相違点について説明する。なお、以下の説明において、実施形態と同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。 例えば粒子線治療により、非活性領域TA2の周りの活性領域TA1の腫瘍細胞に対して致死効果が生じたとする。このとき、活性領域TA1であった外側の領域で血流を奪われることがなくなるため、非活性領域TA2であった内側の領域において、血流が増え、細胞の活性度が急激に高まる。例えば活性度パラメータが還流情報を元に同定されていた場合、この状態で活性度パラメータが再度計測されると、粒子線照射後に活性領域となった内側の領域が高い活性度領域として特定される。しかし同時に、この内側の領域へのパスとして、既に十分な線量の粒子線が投与された外側の領域が、依然として活性度の高い活性領域として特定される可能性がある。つまり、活性領域に致死効果が生じている細胞が含まれる可能性がある。
【0102】
そこで、本実施形態では、細胞周辺環境の変化により腫瘍領域TAの放射線抵抗性が変化するとの観点から、活性領域TA1の分布に加えて、腫瘍領域TAの各領域に関して算出された総投与線量に応じて粒子線治療計画を変更する粒子線治療支援装置を例として説明をする。
【0103】
図8は、
図3の粒子線治療のステップS107において実施される活性度パラメータに応じた粒子線治療計画の変更に係る流れの別の一例を示すフローチャートである。
【0104】
ステップS301、ステップS302及びステップS306は、それぞれ
図5に示すステップS201、ステップS202及びステップS205と同様である。
【0105】
ステップS303において、本実施形態に係る表示制御機能812を実現する演算回路81は、例えば
図3のステップS109と同様にして、患者体内の各領域に関して算出された総投与線量を治療計画用CT画像上に重ね合わせることにより、重畳画像データを生成する。また、表示回路84は、重畳画像データに基づいて、重畳画像を表示する。
図9は、本実施形態に係る治療計画用CT画像上に総投与線量が重畳された重畳画像の一例を示す図である。
図9に示す例では、ドット状のハッチングの密度により総投与線量の値が模式的に表現されている。ドット状のハッチングの密度の高い領域は、総投与線量の値が高い領域であるとする。また、
図9に示す例では、活性領域TA1は、斜線のハッチングが付されている領域であり、非活性領域TA2は、活性領域TA1の内側及び外側の領域である。
図9に示す例では、活性領域TA1の内部に、総投与線量が低い活性領域TA11及び総投与線量が高い活性領域TA12が存在している。
【0106】
ステップS304において、本実施形態に係る治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、活性領域TA1のうち総投与線量の値が所定の閾値以下の領域に基づいて、時間的計画標的体積IA4を決定する。具体的には、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、総投与線量が低い活性領域TA11に、患者動き、治療装置の不確かさ等を鑑みたマージンを加えて、時間的計画標的体積IA4を決定する。
【0107】
なお、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、総投与線量が高い活性領域TA12が検出されたとき、医師等のユーザに警告するように構成されていてもよい。警告は、アナウンスや警告音等の音声によって行われてもよいし、表示によって行われてもよい。
【0108】
なお、活性領域TA1の総投与線量が低い活性領域TA11と、総投与線量が高い活性領域TA12とへの分離は、腫瘍領域の各領域に関する総投与線量が重畳された重畳画像を見た医師等の判断により行われてもよい。
【0109】
なお、本ステップで表示される重畳画像には、活性度パラメータの分布がさらに含まれていてもよい。
【0110】
ステップS305において、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、
図5のステップS204と同様にして、特定された活性領域TA1及び総投与線量に応じた時間的計画標的体積IA4に基づいて、投与線量分布を決定する。
【0111】
このように、本実施形態に係る表示回路84には、各治療回における粒子線治療の前に、治療計画用CT画像上に患者体内の各領域に関して算出された総投与線量が重畳された重畳画像が表示される。また、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、例えば計画標的体積IA1のうち総投与線量の値が所定の閾値より大きい活性領域(総投与線量が高い活性領域TA12)に粒子線が投与されないように、粒子線治療計画を変更する。換言すれば、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、例えば計画標的体積IA1のうち総投与線量の値が所定の閾値より小さい活性領域(総投与線量が低い活性領域TA11)に粒子線が投与されるように、粒子線治療計画を変更する。この構成によれば、上述の効果に加えて、例えば当初の計画線量等、治療に必要な線量が既に投与された領域を、医師等のユーザが治療前に簡易に把握できるという効果がある。このため、医師等のユーザは、仮に活性度パラメータが高い状態であっても、治療に必要な線量が既に投与された領域に対する投与を中止することができる。また、既に腫瘍細胞が死滅している領域への粒子ビームの照射を抑制することにより、腫瘍部位の手前(照射側)に位置する正常部位に対する粒子線の余剰な投与を抑制できる。なお、実施例2では主に総投与線量に応じて粒子線治療計画を変更する事例について説明した。しかし総治療効果値1あるいは総治療効果値2に基づいて粒子線治療計画を変更しても良い。
【0112】
(第1の変形例)
以下、図面を参照しながら本変形例に係る放射線治療計画装置、放射線治療装置及び放射線治療計画方法を説明する。ここでは、主に第1の実施形態との相違点について説明する。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0113】
第1の実施形態では、腫瘍領域TAを活性領域TA1と非活性領域TA2との2つの領域に分離し、非活性領域TA2には粒子ビームをできるだけ投与しないように粒子線治療計画を変更する粒子線治療支援装置8を例として説明した。しかしながら、活性度パラメータに応じた粒子線治療計画の変更は、これに限らない。腫瘍領域TAにおける各領域の粒子線に関する感受性、すなわち活性度には色々なレベルがあり得る。そこで、本変形例では、活性度のレベルに応じて非活性領域TA2には粒子ビームをできるだけ投与しないように粒子線治療計画を変更する粒子線治療支援装置8を例として説明する。
【0114】
本変形例に係る粒子線治療支援装置8において、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、当初の粒子線治療計画により規定される各治療回における計画線量に対する期待される投与線量の割合を決定する。当該割合は、活性度パラメータに応じて決定される。治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、計画線量及び当該割合に基づいて、期待される投与線量分布を決定する。
【0115】
ここで、本変形例に係る粒子線治療計画の変更の流れについて、
図5を参照して説明する。なお、ステップS201乃至ステップS203及びステップS205は、第1の実施形態と同様である。
【0116】
ステップS204において、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、特定された活性領域TA1に患者動き、治療装置の不確かさ等を鑑みたマージンを考慮した時間的計画標的体積IA1に基づいて、投与線量分布を決定する。
【0117】
まず、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、当初の粒子線治療計画における計画線量に対する期待される投与線量の割合を決定する。
図10は、
図7Aにおける矢印が示す深さ方向の期待される投与線量分布の別の一例である。
【0118】
例えば、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、時間的計画標的体積IA2に関する当該割合は、100%であると決定する。つまり、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、
図10に示すように、例えば時間的計画標的体積IA2には、当初の計画線量の100%の粒子線が投与されるように、期待される投与線量分布を決定する。
【0119】
一方で、例えば、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、時間的非標的体積IA3に関する当該割合は、活性度パラメータの値に応じて、0~100%の間であると決定する。つまり、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、
図10に示すように、例えば時間的非標的体積IA3には、当初の計画線量の0~100%の活性度パラメータの分布に応じた線量で粒子線が投与されるように、期待される投与線量分布を決定する。
【0120】
次に、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、
図10の期待される投与線量分布に基づいて、第1の実施形態と同様にして投与線量分布を決定する。
【0121】
なお、時間的非標的体積IA3に限らず、時間的計画標的体積IA2に関しても、活性度パラメータに応じて当初計画の線量に対する割合が決定されてもよい。また、時間的計画標的体積IA2に関しては当初計画の100%の線量とする場合について説明したが、当初計画の100%以上の線量となるように、時間的計画標的体積IA2に関する当初計画の線量に対する割合が決定されてもよい。
【0122】
なお、活性度パラメータの分布に応じた2つ以上の複数の区分に時間的計画標的体積IA2が分離されることにより、活性度パラメータに応じた投与線量分布が決定されてもよい。このとき、例えば、活性領域特定機能813を実現する演算回路81は、時間的計画標的体積IA2を2つ以上の複数の区分を用いて分離する。治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、複数の区分の複数の割合に応じて、期待される投与線量分布等を決定する。
【0123】
このように、本変形例に係る粒子線治療支援装置8は、時間的計画標的体積IA2の各領域の活性度に応じた線量で粒子線が投与されるように、粒子線治療計画を変更する。例えば、粒子線治療支援装置8は、
図7Bに示す例では当初計画の0%の線量であった時間的非標的体積IA3に関して、
図10に示すように、活性度パラメータの値に応じて当初計画の0~100%の間の線量を投与するように粒子線治療計画を変更する。この構成によれば、粒子線治療における粒子線の利用効率をさらに向上させることができる。
【0124】
なお、本変形例に係る技術は、第1の実施形態に限らず、第2の実施形態に係る技術と組合せ可能である。
【0125】
(第2の変形例)
以下、本変形例に係る放射線治療計画装置、放射線治療装置及び放射線治療計画方法を説明する。ここでは、主に第1の実施形態との相違点について説明する。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0126】
第1の実施形態では、時間的計画標的体積IA2に対して優先的に粒子線が投与されるように粒子線治療計画を変更する粒子線治療支援装置8を例として説明した。しかしながら、活性度パラメータに応じた粒子線治療計画の変更は、これに限らない。本変形例では、時間的非標的体積IA3に対して優先的に粒子線が投与されるように粒子線治療計画を変更する粒子線治療支援装置8を例として説明する。
【0127】
本変形例に係る治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、特定された時間的非標的体積IA3の分布に基づいて、照射対象領域及び投与線量分布を決定する。具体的には、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、時間的非標的体積IA3の腫瘍細胞に対して致死効果が生じるように、照射対象領域及び投与線量分布を決定する。
【0128】
このような構成によれば、粒子線抵抗性の高い時間的非標的体積IA3に関しては腫瘍細胞に対して致死効果が生じる程度に高い線量で粒子線を投与しつつ、粒子線感受性の高い時間的計画標的体積IA2に関しては投与線量を抑制することができる。つまり、本技術によれば、時間的非標的体積IA3への線量を増加させることにより、従来よりも短時間で治療できるという効果が得られる。但し、計画標的体積IA1周辺の正常組織への線量は増えてしまう危険性もあるので、計画標的体積IA1周辺にリスク臓器がない場合にのみ適用可能である。
【0129】
なお、本変形例に係る技術は、第1の実施形態に限らず、第2の実施形態に係る技術と組合せ可能である。
【0130】
なお、上述の各実施形態及び各変形例では、粒子線治療支援装置8において粒子線治療計画の変更が行われる場合を例として説明したが、これに限らない。例えば、演算回路81が放射線治療支援プログラムを実行することにより実現する各機能の一部又は全部は、活性度パラメータを計測する医用モダリティや粒子線治療計画装置7、粒子線治療装置9、粒子線治療システム100の外部に設けられたサーバ等において実現されてもよい。つまり、演算回路81の一部又は全部は、活性度パラメータを計測する医用モダリティや粒子線治療計画装置7、粒子線治療装置9、粒子線治療システム100の外部に設けられたサーバ等に設けられていてもよい。ここで、演算回路81の一部又は全部が設けられた粒子線治療装置9は、立案された粒子線治療計画や変更された粒子線治療計画に基づいて、腫瘍領域に粒子線を照射する照射部を備えるとも表現できる。これらの構成であっても、上述と同様の効果が得られる。例えば、演算回路81の全部が粒子線治療システム100の外部に設けられたサーバ等に設けられているとき、計測された活性度パラメータは、当該サーバへ送信される。例えば粒子線治療計画装置7は、当該サーバから治療計画用CT画像(治療計画用医用画像)上に活性度パラメータが重畳された画像データを取得することにより、上述の各実施形態又は各変形例と同様にして、当該画像データに基づいて画像を表示することができる。また、粒子線治療装置9は、当該サーバから変更された粒子線治療計画を取得することにより、上述の各実施形態又は各変形例と同様にして、当該変更された治療計画に基づいて粒子線治療を行うことができる。
【0131】
なお、上述の各実施形態及び各変形例において粒子線治療支援装置8は、活性度パラメータに応じて粒子線治療計画装置7が立案した粒子線治療計画を変更することにより、計画標的体積IA1における粒子線投与量(線量)の分布を最終的に決定するものとした。しかしながら、上述の各実施形態及び各変形例はこれに限定されない。例えば、粒子線治療計画装置7及び粒子線治療支援装置8は、一体に構成されていてもよい。また、粒子線治療支援装置8は、粒子線治療計画の変更によらずとも、計画標的体積IA1における活性度パラメータの分布に応じて計画標的体積IA1における線量の分布を決定してもよい。この場合、計画標的体積IA1における線量の分布は、粒子線治療計画装置7により決定されてもよいし、粒子線治療装置9により決定されてもよいし、他のコンピュータにより決定されてもよい。例えば、時間的計画標的体積IA2へは100%の線量を投与し、さらに時間的非標的体積IA3へは線量を極力投与しないようにするには、計画標的体積IA1に対する粒子線治療計画の各種条件をリセットして再計画を行うと良い結果が得られる。しかし、例えば再計画を行わないで、元々の治療計画の中で時間的非標的体積IA3へピークを有する陽子線ビームの照射を止め、その陽子線ビームのピークの手前領域にある時間的計画標的体積IA2への陽子線ビームの強度を調整してやるだけで、目的の条件に近い線量分布を実現できる。この場合、再計画は必要ないため、計画変更の時間を大幅に節約できる。これらの構成において、粒子線治療支援装置8は、計画標的体積IA1における活性度パラメータの分布に応じて計画標的体積IA1における線量の分布を決定し、粒子線治療計画を立案する治療計画部を備えると表現できる。これらの構成であれば、計画標的体積IA1に対する総粒子線投与量(総線量)の計画と、活性度パラメータの分布とに応じて、粒子線治療計画を立案することができる。当該立案された粒子線治療計画は、上述の各実施形態及び各変形例における変更された粒子線治療計画に相当するものであり、計画標的体積IA1における線量の分布を含む。なお、計画標的体積IA1に対する総線量の計画は、症例等に応じて適宜設定されればよい。つまり、上述と同様の効果に加えて、粒子線治療計画の立案を簡単化できるという効果がある。
【0132】
なお、上述の各実施形態及び各変形例において粒子線治療支援装置8は、計画標的体積IA1内の活性度パラメータの分布に応じて、時間的計画標的体積IA2と時間的非標的体積IA3とを決定するものとした。しかしながら、上述の各実施形態及び各変形例はこれに限定されない。粒子線治療支援装置8は、活性度パラメータが高い領域には100%の線量を、低い領域には0%の線量を、その間には活性度パラメータに応じて投与する線量を決めることもできる。
【0133】
なお、上述の各実施形態及び各変形例において粒子線治療支援装置8は、計画標的体積IA1内の活性度パラメータの分布に応じて、粒子線の照射領域や線量分布を決定するものとした。しかしながら、上述の各実施形態及び各変形例はこれに限定されない。粒子線治療支援装置8は、複数の臓器に亘って取得された活性度パラメータに応じて、粒子線の照射領域や線量分布を決定してもよい。この構成であれば、複数の臓器に分布する複数の腫瘍領域に対して粒子線治療を行うことができる。また、例えば第2の実施形態に係る技術によれば、特定された活性領域のうち、リスク臓器を除くように照射領域及び線量分布を決定することもできる。
【0134】
なお、上述の各実施形態及び各変形例に係る粒子線治療支援装置8において、照射対象領域や投与線量分布は、予め設定されたパターンから選択されてもよい。例えば、記憶回路86には、予め設定された複数の活性領域パターン及び複数の投与線量分布が記憶されている。複数の活性領域パターンは、例えば計画線量や活性領域の形状、活性領域の大きさ等に応じて用意されているとする。また、複数の活性領域パターンの各々は、事前に算出された複数の投与線量分布とそれぞれ関連付けて記憶されているとする。例えば照射対象領域の決定において、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、特定された時間的計画標的体積IA2の分布に類似する活性領域パターンを選択する。治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、選択された活性領域パターンに応じた投与線量分布に基づいて粒子線治療計画を変更する。このとき、治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、選択された活性領域パターンに応じた投与線量分布を修正してもよい。投与線量分布の修正は、例えば、特定された時間的計画標的体積IA2の大きさと、選択された活性領域パターンの大きさとの比や差分に応じて行われる。投与線量分布の修正は、例えば、当初の粒子線治療計画による計画線量と、選択された活性領域パターンに関連付けられている計画線量との比や差分に応じて行われる。このような構成であれば、上述の効果に加えて、粒子線治療計画の変更における計算負荷を軽減できるという効果がある。
【0135】
なお、上述の各実施形態及び各変形例に係る粒子線治療支援装置8において、粒子線治療計画の変更は、さらに複数の活性度パラメータの結果に応じて行われてもよい。例えば、パラメータ取得機能を実現する演算回路81は、治療計画用X線CT装置6からパフュージョンに基づく活性度パラメータを取得し、PET装置1又はPET-CT装置3からFDG-PETによるバイアビリティに基づく活性度パラメータを取得する。治療計画変更機能814を実現する演算回路81は、パフュージョンに基づく活性度パラメータの分布と、バイアビリティに基づく活性度パラメータの結果とに応じて、照射対象領域や投与線量分布を決定する。この構成であれば、計画標的体積IA1の各領域に関して、2つの活性度パラメータの値に基づいて治療計画を変更できるため、変更した計画の信頼性を向上させ、粒子線治療における粒子線の利用効率をさらに向上させることができる。
【0136】
なお、上述の各実施形態及び各変形例に係る粒子線治療支援装置8において演算回路81は、腫瘍領域のpH値や温度等の環境条件を制御する感受性調整機能をさらに実行できるように構成されていてもよい。例えば、感受性調整機能を実現する演算回路81は、腫瘍領域の粒子線に関する感受性を制御するための制御信号を生成する。このとき、粒子線治療システム100は、当該制御信号に応じて動作する感受性調整装置をさらに備える。感受性調整装置は、例えば粒子線の投与に同期して腫瘍領域を加熱する温熱処理を実行できるように構成されている。感受性調整装置は、温熱処理により腫瘍領域の温度を例えば43℃~45℃程度に加熱する。温熱処理は、腫瘍領域の大きさや深さ(体表からの距離)に応じた方法によって実行されればよい。なお、感受性調整装置は、例えば粒子線の投与に同期して腫瘍領域の細胞のpH値を下げることができるように構成されていてもよい。この構成であれば、活性領域の大きさや非活性領域が活性領域へ変化するタイミング等を調整可能となる。つまり、活性度パラメータに応じて粒子線治療計画を変更するとともに、粒子線治療計画に応じて活性度パラメータを制御することもできるため、粒子線治療における粒子線の利用効率をさらに向上させることができる。
【0137】
上記の実施形態及び変形例においては、放射線治療の一例として粒子線治療を例に挙げて説明した。しかしながら、本実施形態に係る放射線治療は高エネルギーのX線でもよい。高エネルギーのX線を照射する放射線治療装置としては、例えば、LINAC(linear accelerator)が用いられればよい。
【0138】
X線は、粒子線とは異なり、患者体内に入射した直後に電離強度のピークをむかえ、距離が進につれて電離強度が低減する。すなわち、X線はスポット照射に適さない。X線治療において投与線量分布を変更する場合、X線の照射方向を変更する方法がとられる。以下、X線の照射方向を変更する例を説明する。なお、以下の説明においては、活性領域に限定してX線を照射する方針が採られているものとする。
【0139】
図11は、X線治療に関する治療計画の変更の一例を示す図である。
図11に示すように、X線治療の一日目(DAY 1)は照射方向D3が計画されているものとする。X線照射対象の腫瘍領域TAには活性領域TA1と非活性領域TA2が含まれる。非活性領域TA2を極力避けつつ、活性領域TA1にできるだけX線が照射されるように照射方向D3が設定され、斜線部分に限定してX線が照射される。なお、この時活性領域TA1に患者動き、治療装置の不確かさ等を鑑みたマージンを加えて照射領域は決定される。
【0140】
前述のように、活性領域TA1と非活性領域TA2とは時間経過につれて変化する。活性領域TA1と非活性領域TA2との位置に応じて、非活性領域TA2を極力避けつつ、活性領域TA1にできるだけX線が照射されるように照射方向D3が変更される。例えば、
図11に示すように、X線治療のN日目(DAY N)においては、照射方向D3の場合、非活性領域TA2に線量が投与されてしまう。従って、非活性領域TA2を極力避けつつ、活性領域TA1にできるだけX線が照射されるように、例えば、照射方向D4が設定され、斜線部分に限定してX線が照射される。このように、本実施形態は、粒子線治療ではなく、X線治療にも適用可能である。ちなみに、ここでは説明を簡単にする目的で、1方向のみから照射するとして説明したが、複数方向から照射する方が活性領域TA1への線量集中性を高め、且つ非活性領域TA2への線量を減らすことができる。
【0141】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、放射線治療における放射線の利用効率を向上させることができる。
【0142】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(Programmable Logic Device:PLD)等の回路を意味する。PLDは、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)を含む。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。プログラムが保存された記憶回路は、コンピュータ読取可能な非一時的記録媒体である。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、プログラムを実行するのではなく、論理回路の組合せにより当該プログラムに対応する機能を実現してもよい。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1及び
図2における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0143】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0144】
1…PET装置
2…SPECT装置
3…PET-CT装置
4…MRI装置
5…超音波診断装置
6…治療計画用X線CT装置
7…放射線治療計画装置
8…放射線治療支援装置
9…放射線治療装置
81…演算回路
82…画像処理回路
83…通信回路
84…表示回路
85…入力回路
86…記憶回路
100…放射線治療システム
811…パラメータ取得機能
812…表示制御機能
813…活性領域特定機能
814…治療計画変更機能