(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ホース固定構造
(51)【国際特許分類】
F16L 33/025 20060101AFI20240701BHJP
F16L 35/00 20060101ALI20240701BHJP
F16B 2/24 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
F16L33/025
F16L35/00 A
F16B2/24 B
F16B2/24 C
(21)【出願番号】P 2020021122
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】西 佳彦
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-108981(JP,A)
【文献】特開平09-152078(JP,A)
【文献】特開2012-107670(JP,A)
【文献】特開平08-145264(JP,A)
【文献】特公昭45-002278(JP,B1)
【文献】特開平10-110881(JP,A)
【文献】特開2001-349481(JP,A)
【文献】特開2003-314763(JP,A)
【文献】特開2002-031282(JP,A)
【文献】特開昭51-018319(JP,A)
【文献】特開2012-211684(JP,A)
【文献】特開2002-357295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 33/025
F16L 35/00
F16B 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホースの内側に挿通されるノズル部と、
前記ノズル部を包囲する筒状をなして、基端部が前記ノズル部の基端部又は前記ノズル部を支持する部材に取り付けられている筒形カバーと、
前記筒形カバーの先端開口から内側に収容され、クリップにより拡径変形された状態で前記ノズル部を包囲するホースクランプと、
前記筒形カバーの先端部に嵌合し
、その先端部が突き当てられる蓋部と、前記ホースが貫通
しかつ嵌合するホース挿通孔
とを有し、前記ホースクランプを抜け止めするキャップと、を備え、
前記ノズル部に挿入される前記ホースにより、前記クリップが前記ホースクランプから外されて前記ホースクランプが縮径変形し、前記ホースを締め付けるホース固定構造において、
前記キャップには、前記筒形カバーの先端部の内側に重なる内側嵌合部と、前記筒形カバーの先端部の外側に重なる外側嵌合部とが備えられているホース固定構造。
【請求項2】
ホースの内側に挿通されるノズル部と、
前記ノズル部を包囲する筒状をなして、基端部が前記ノズル部の基端部又は前記ノズル部を支持する部材に取り付けられている筒形カバーと、
前記筒形カバーの先端開口から内側に収容され、クリップにより拡径変形された状態で前記ノズル部を包囲するホースクランプと、
前記筒形カバーの先端部に嵌合して前記ホースクランプを抜け止めすると共に前記ホースが貫通するホース挿通孔を有するキャップと、を備え、
前記ノズル部に挿入される前記ホースにより、前記クリップが前記ホースクランプから外されて前記ホースクランプが縮径変形し、前記ホースを締め付けるホース固定構造において、
前記キャップには、前記筒形カバーの先端部の内側に重なる内側嵌合部と、前記筒形カバーの先端部の外側に重なる外側嵌合部とが備えられ、
前記ホースクランプが、前記キャップと前記筒形カバーで挟持されるホース固定構造。
【請求項3】
前記内側嵌合部及び前記外側嵌合部のうち少なくとも一方は、前記筒形カバーの先端部に嵌合する筒状をなしている、請求項1又は2に記載のホース固定構造。
【請求項4】
前記内側嵌合部及び前記外側嵌合部の少なくとも一方と、前記筒形カバーの先端部分とには、互いに凹凸係合して前記キャップを前記筒形カバーに抜け止めするキャップ抜止係合部が備えられている、請求項1又は2に記載のホース固定構造。
【請求項5】
前記キャップ抜止係合部は、前記内側嵌合部及び前記外側嵌合部とが前記筒形カバーを挟んでいる位置に配置されている、請求項4に記載のホース固定構造。
【請求項6】
前記キャップ抜止係合部は、前記ノズル部の軸方向で前記ノズル部の先端と基端との間に位置する、請求項4に記載のホース固定構造。
【請求項7】
前記ノズル部の先端面と、前記キャップのうち前記ホース挿通孔が開口している外面とが面一になっている、請求項6に記載のホース固定構造。
【請求項8】
前記ノズル部の軸方向における、前記内側嵌合部及び前記外側嵌合部の長さが異なっている、請求項1又は2に記載のホース固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホースをホースクランプで締め付けてノズル部に固定するホース固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のホース固定構造として、ノズル部に取り付けられた筒形カバー内に、クリップにより拡径変形された状態でノズル部の先端を外側から囲むホースクランプが収容され、ノズル部にホースが挿入されるとクリップが外れてホースクランプが縮径変形し、ホースがノズル部に固定されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-108981号公報(段落[0050]~[0056]、
図7~9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のホース固定構造では、ホースがノズル部に挿入されたときに、ホースクランプが傾いて、ホースに対する締め付けが不安定になることがあり、ホースに対して締め付けが安定するホース固定構造が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、ホースの内側に挿通されるノズル部と、前記ノズル部を包囲する筒状をなして、基端部が前記ノズル部の基端部又は前記ノズル部を支持する部材に取り付けられている筒形カバーと、前記筒形カバーの先端開口から内側に収容され、クリップにより拡径変形された状態で前記ノズル部を包囲するホースクランプと、前記筒形カバーの先端部に嵌合して前記ホースクランプを抜け止めすると共に前記ホースが貫通するホース挿通孔を有するキャップと、を備え、前記ノズル部に挿入される前記ホースにより、前記クリップが前記ホースクランプから外されて前記ホースクランプが縮径変形し、前記ホースを締め付けるホース固定構造において、前記キャップには、前記筒形カバーの先端部の内側に重なる内側嵌合部と、前記筒形カバーの先端部の外側に重なる外側嵌合部とが備えられているホース固定構造である。
【0006】
発明の第2態様は、前記内側嵌合部及び前記外側嵌合部のうち少なくとも一方は、前記筒形カバーの先端部に嵌合する筒状をなしている、第1態様に記載のホース固定構造である。
【0007】
発明の第3態様は、前記内側嵌合部及び前記外側嵌合部の少なくとも一方と、前記筒形カバーの先端部分とには、互いに凹凸係合して前記キャップを前記筒形カバーに抜け止めするキャップ抜止係合部が備えられている、第1態様又は第2態様に記載のホース固定構造である。
【0008】
発明の第4態様は、前記キャップ抜止係合部は、前記内側嵌合部及び前記外側嵌合部とが前記筒形カバーを挟んでいる位置に配置されている、第3態様に記載のホース固定構造である。
【0009】
発明の第5態様は、前記キャップ抜止係合部は、前記ノズル部の軸方向で前記ノズル部の先端と基端との間に位置する、第3態様又は第4態様に記載のホース固定構造である。
【0010】
発明の第6態様は、前記ノズル部の先端面と、前記キャップのうち前記ホース挿通孔が開口している外面とが面一になっている、第5態様に記載のホース固定構造である。
【0011】
発明の第7態様は、前記ノズル部の軸方向における、前記内側嵌合部及び前記外側嵌合部の長さが異なっている、第1態様から第6態様の何れかの態様に記載のホース固定構造である。
【0012】
発明の第8態様は、前記外側嵌合部の外面は、前記筒形カバーの先端から離れるに従って前記外側嵌合部の内面に徐々に接近するように傾斜している、第7態様に記載のホース固定構造である。
【発明の効果】
【0013】
発明の第1態様のホース固定構造では、筒形カバーの先端部に取り付けられるキャップに、筒形カバーの先端部の内側に重なる内側嵌合部と、筒形カバーの先端部の外側に重なる外側嵌合部とが備えられている。このように、本開示のキャップは、内側嵌合部と外側嵌合部とで筒形カバーの先端部の内側と外側の両面を挟んで嵌合するので、ホースが挿入されたときに筒形カバーの先端部が変形することを抑制することができる。これにより、キャップが筒形カバーの先端部から外れることを抑制することができる。つまり、キャップの筒形カバーへの固定強度を高めることによって、ホースクランプが傾くことを抑制し、ホースクランプのホースに対する締め付けを安定させることができる。ここで、発明の第2態様のように、内側嵌合部及び外側嵌合部のうち少なくとも一方は、筒形カバーの先端部に嵌合する筒状をなしていれば、さらにキャップの筒形カバーへの固定強度を高めることができる。
【0014】
発明の第3態様のホース固定構造では、内側嵌合部及び外側嵌合部の少なくとも一方と、筒形カバーの先端部分とには、互いに凹凸係合してキャップを筒形カバーに抜け止めするキャップ抜止係合部が備えられている。これにより、キャップと筒形カバーとの嵌合がより強固となり、キャップの固定強度を高めることができる。
【0015】
さらに、発明の第4態様の構成のように、キャップ抜止係合部を、内側嵌合部及び外側嵌合部とが筒形カバーを挟む位置に配置することで、キャップ抜止係合部の係合を外れにくくすることができ、キャップの筒形カバーへの固定強度を高めることができる。
【0016】
また、発明の第7態様の構成のように、内側嵌合部及び外側嵌合部は、ノズル部の軸方向の長さが異なっていてもよい。この構成にすることで、内側嵌合部及び外側嵌合部のうち長い方の側面を案内面とし、筒形カバーを案内面に宛がいながら奥まで差し込むことができるので筒形カバーとキャップとを容易に嵌合させることができる。
【0017】
また、発明の第8態様の構成のように、外側嵌合部の外面を、筒形カバーの先端から離れるに従って外側嵌合部の内面に徐々に接近するように傾斜している構成とすることで、異物への引っ掛かり等を防ぐことができ、作業者の作業の邪魔にならない。
【0018】
発明の第5態様のホース固定構造では、キャップ抜止係合部は、ノズル部の軸方向でノズル部の先端と基端との間に位置する。このように、ノズル部の先端面が、キャップ抜止係合部より先端側に配置されることで、ホース差込時におけるノズル部の先端部分とホースクランプとの干渉を軽減でき、ホースクランプが傾くことを抑制することができる。これにより、ホースクランプのホースに対する締め付けが安定する。このとき、ノズル部の先端面と、キャップのうちホース挿通孔が開口している外面とが面一になっていてもよい(発明の第6態様)し、キャップの蓋部から突出していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示のホース固定構造を有する第1実施形態に係るホース継手10の斜視図
【
図4】ホースクランプの(A)斜視図、(B)縮径変形状態の正面図、(C)拡径変形状態の正面図
【
図6】ホースクランプに装着されたクリップの(A)側面図、(B)平面図
【
図7】ホースクランプから外れる時のクリップの側面図
【
図11】キャップが嵌合されたホース固定部の側断面図
【
図13】ホース差込時における筒形カバーの先端部の変形を説明するための(A)ホース継手の側断面図(B)キャップの拡大側断面図
【
図14】ホース差込時における筒形カバーの先端部の変形を説明するためのホース継手の側断面図
【
図15】他の実施形態に係る基端側から見たキャップの正面図
【
図16】他の実施形態に係るホース継手の拡大側断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、
図1~
図14に基づいて第1実施形態のホース継手10について説明する。
図1に示されるように、第1実施形態のホース継手10は、ホース90と、図示しないパイプ、タンクその他の流体機器と、を接続するためのものであって、
図2に示すように、ホース90に接続されるノズル部11と、流体機器に接続される接続筒部20と、ホース90をノズル部11に固定するためのホースクランプ50と、ホースクランプ50に装着されるクリップ60と、ノズル部11とホースクランプ50とクリップ60を外側から覆う筒形カバー30と、筒形カバー30の先端部に嵌合されるキャップ70と、を備える。なお、第1実施形態では、ホース継手10において、ホース90が挿入される側を先端側、流体機器が接続される側を基端側と、呼ぶことにする。
【0021】
接続筒部20は、その先端部にノズル部11が連結され、外面における軸方向の中間部に断面形状が正六角形のフランジ部20Fを備えている。また、接続筒部20の外面のうち、フランジ部20Fより基端側は、流体機器に接続されるネジ部20Nになっていて、フランジ部20Fより先端側は、ノズル部11と嵌合するノズル連結部21になっている。
【0022】
ノズル連結部21には、第1拡径部22と第2拡径部23が先端側から順に形成されている。ノズル連結部21のうち第2拡径部23より先端側の部位はノズル部11に内挿され、第2拡径部23の先端側を向く面がノズル部11に突き当てられる。なお、第1拡径部22より先端側の外周面とノズル部11の内周面との間は、Oリング80によってシールされる。
【0023】
ノズル部11は、基端側を段付き状に拡径する段差部を有し、その段差部より先端側の小径部11Aの外側にホース90が挿入され、その段差部より基端側の大径部11Bの内側に、接続筒部20におけるノズル連結部21の先端部が回転可能に嵌合されている。また、大径部11Bの基端部の内面には係止爪11Kが突設されている。係止爪11Kは、接続筒部20においてノズル連結部21の第1拡径部22と第2拡径部23との間に形成される環状溝と嵌合する。これにより、ノズル部11が接続筒部20に固定される。なお、小径部11Aの内径は、ノズル連結部21の内径と略同じか小さくなっている。
【0024】
また、
図3に示すように、ノズル部11の小径部11Aの外面には、ホース90の内面に係止するための複数の環状突部12A,12B,12Cが形成されている。環状突部12A~12Cは、先端側を向いたテーパ面を有する。これら環状突部12A~12Cのうち環状突部12A,12Bは、ノズル部15の中心軸に対して斜めになった楕円状に形成されている一方、環状突部12Cは、ノズル部15の中心軸と直交する円状に形成されている。また、
図2に示すように、環状突部12Aと12Bは、ノズル部11の中心軸方向でホースクランプ50がホース90を締め付ける範囲内に収まるように設けられ、環状突部12Cは、ホースクランプ50がホース90を締め付けたときに、ホースクランプ50よりも基端側に配置される。なお、小径部11Aの先端部は、先端側へ向かうにつれて徐々に小径となるテーパ状に形成されている。
【0025】
ここで、環状突部12Cは、環状突部12A及び12Bよりもノズル部11(詳細には小径部11A)の外面からの突出寸法が小さく形成されている。これにより、ホース90をノズル部11に挿入する際に、挿入荷重が増加することを防止できる。また、ホースクランプ50がホース90を締め付けた際に、環状突部12Cがホース90の内面に食い込むことで、ホースクランプ50とホース90との固定強度を高めることができる。
【0026】
ホースクランプ50は、弾発的な締付力を有し、
図2に示されるように、ノズル部11の小径部11Aを外側から囲む。
図4(A)に示すように、ホースクランプ50は、帯状板金を環状に丸めて形成され、周方向の1箇所に切れ目52を備えるリング本体51と、帯状板金の一端部が、該帯状板金の他端部に形成された切欠部51Kに受容されてなる1対の摘まみ部53と、からなる。
【0027】
1対の摘まみ部53は、通常は、
図4(B)に示されるように、リング本体51の弾発力によって、互いに離れる方向に付勢されている。そして、
図4(C)に示されるように、1対の摘まみ部53がリング本体51の弾発力に抗して挟み付けられると、リング本体51が拡径される。1対の摘まみ部53の挟み付けが解除されると、リング本体51が縮径すると共に、1対の摘まみ部53が離れる。なお、以下では、
図4(B)に示されるホースクランプ50の状態を縮径変形状態、
図4(C)に示されるホースクランプ50の状態を拡径変形状態と、呼ぶことにする。
【0028】
図9に示されるように、ホースクランプ50は、1対の摘まみ部53をクリップ60によって拡径変形状態に保持されて筒形カバー30内に収容される。クリップ60は、ホースクランプ50に対してノズル部11の小径部11Aの基端側に配置される。クリップ60は、
図5及び
図6(A)に示されるように、支持ベース61と、支持ベース61からノズル部11の小径部11Aの先端側へ突出した1対の挟持片62と、支持ベース61からノズル部11の中心軸側へ突出した被押圧片63と、を有している。なお、クリップ60は、板金の加工品であって、支持ベース61は、1対の挟持片62及び被押圧片63と同じ厚みのプレート状に形成されている。
【0029】
1対の挟持片62は、
図6(B)に示されるように、ホースクランプ50の1対の摘まみ部53を挟持している。また、被押圧片63は、支持ベース61から離れた側の端部が、ノズル部11の小径部11Aの外周面に沿った円弧状に切り欠かれていて(
図5参照)、
図6(A)に示されるように、差し込まれたホース90の差込端(断面)が当接するようになっている。そして、ホース90がさらに押し込まれると、
図7に示すように、クリップ60がホース90に押されて支持ベース61を中心に回動し、1対の挟持片62による1対の摘まみ部53の挟持が解除される。これにより、ホースクランプ50はリング本体51の弾発力によって1対の摘まみ部53は互いに離れる方向に移動することでホース90を締め付ける。
【0030】
筒形カバー30は、
図2に示すように、その基端側に、ノズル部11の大径部11B及び接続筒部20のノズル連結部21と嵌合する円筒状の継手固定部32を備え、先端側に、継手固定部32から軸方向に延びて、継手固定部32の周壁の1箇所を外方へ箱状に迫り出させてなる膨出部37を有するホース固定部31が備えられている。そして、ホース固定部31の内部に、ノズル部11の小径部11Aと、クリップ60が装着されたホースクランプ50が収容される。
【0031】
継手固定部32は、その基端部の内面に、係止爪32Kが突設されている。係止爪32Kは、接続筒部20においてノズル連結部21の第2拡径部23とフランジ部20Fとの間に形成される環状溝と係合する。これにより、筒形カバー30が接続筒部20に取り付けられる。また、継手固定部32の内面には、係止爪32Kに継手固定部32の先端側から対向し、基端側を拡径する段差面32Tが形成されている。段差面32Tは、係止爪32Kとの間に、接続筒部20の第2拡径部23とノズル部11の大径部11Bの一部とを挟む。このように、第1実施形態では、接続筒部20の第2拡径部23とノズル部11の大径部11Bの一部が、継手固定部32の係止爪32Kと段差面32Tに挟まれることで、接続筒部20とノズル部11とが安定的に連結される。
【0032】
ホース固定部31の内面には、軸方向の中間部に、ノズル部11の径方向に突出した軸方向移動規制部38が形成されている。軸方向移動規制部38は、ホース固定部31の内面から突出したリブにより構成され、膨出部37を構成しない部分に、周方向に沿って連続して延びている。軸方向移動規制部38は、ホースクランプ50のリング本体51の基端側端面が突き当てられる。
【0033】
また、ホース固定部31の内面には、
図2に示すように、先端寄り位置にキャップ当接部39が形成されている。キャップ当接部39は、ホース固定部31の先端部分の内面を先端まで拡径する段差により構成されていて、
図8に示されるように、膨出部37を構成しない部分に周方向に沿って連続して延びている。キャップ当接部39は、キャップ70の基端側端面が突き当てられ、軸方向移動規制部38とキャップ当接部39との間に形成された位置決め溝30Mに、ホースクランプ50のリング本体51が受容され、この状態がホースクランプ50の正規位置となっている。
【0034】
そして、
図9に示すように、ホース固定部31には、膨出部37を構成しない部分の先端寄り位置で、かつキャップ当接部39より先端側に、ホース固定部31の周方向に間隔をあけて1対の貫通孔31Aが設けられている。
【0035】
キャップ70は、
図2に示すように、筒形カバー30のホース固定部31の先端部を閉塞する蓋部71と、蓋部71から基端側に延びた外側嵌合部72及び内側嵌合部73と、を備えている。なお、第1実施形態では、外側嵌合部72の方が内側嵌合部73よりも基端側に長く延びている。
【0036】
蓋部71は、その基端側を向く面にホース固定部31の先端部が突き当てられて、内部に収容されているホースクランプ50を抜け止めする。また、蓋部71は、ホース90が貫通するホース挿通孔71Aを有していて、ホース挿通孔71Aの開口縁は、丸みを帯びた状態に面取りされて、先端に向かって拡径している。
【0037】
第1実施形態では、外側嵌合部72は、
図10に示すように、蓋部71の外縁部から基端側に延びた筒状に形成され、その内面が筒形カバー30のホース固定部31の先端部の外面に重ねられる(
図2参照)。なお、外側嵌合部72の外面は、ホース固定部31の先端から離れるに従ってその内面に徐々に接近するように傾斜している。
【0038】
第1実施形態では、内側嵌合部73は、
図10に示すように、蓋部71のうち基端側を向く面から基端側に延びた筒状に形成され、その外面が筒形カバー30のホース固定部31の先端部の内面に重ねられる(
図2参照)。また、内側嵌合部73には、ホース固定部31の内面のうち膨出部37を形成しない部分に重ねられる第1内側嵌合部73Aと、ホース固定部31の膨出部37に重ねられる第2内側嵌合部73Bと、両者を仕切る仕切壁74が設けられている。
【0039】
仕切壁74は、第1内側嵌合部73Aと共に、差し込まれたホース90に嵌合する円筒状のホース嵌合壁75を構成する。ホース嵌合壁75は、ホース挿通孔71Aに連通し、その内径は、ホース90の外径と略同径となっている。なお、ホース嵌合壁75の厚みは、第2内側嵌合部73Bの厚みよりも大きくなっている。
【0040】
第1内側嵌合部73Aには、周方向に間隔をあけて1対の突起76が突出形成されている。1対の突起76は、
図11に示すように、ホース固定部31の1対の貫通孔31Aに差し込まれる。突起76は、基端側へ向かうにつれてホース嵌合壁75の厚み方向に狭くなる三角形状に形成されている。そして、突起76のうち先端側を向く面と基端側を向く面が、それぞれホース固定部31の貫通孔31Aの内面に係止することでキャップ70が筒形カバー30に固定される。第1実施形態の1対の突起76と1対の貫通孔31Aとが、特許請求の範囲の「キャップ抜止係合部」に相当する。
【0041】
なお、外側嵌合部72には、周方向で突起76と対向する位置で、かつノズル部11の中心軸方向における突起76よりも先端側の位置に、突起76がアンダーカット形状になることを避けるための型抜き孔72Aが形成されている。
【0042】
さらに、第1内側嵌合部73Aの基端側を向く端面には、
図10に示すように、ノズル部11の中心軸方向に突出して周方向に延在する突当部77が開口縁に沿って複数設けられている。突当部77の基端側を向く面と、仕切壁74の基端側を向く面、及び第2内側嵌合部73Bの基端側を向く面と、は面一となっている。
【0043】
ここで、第1実施形態のホース継手10では、ホースクランプ50は筒形カバー30の先端側から挿入されるが、このとき、筒形カバー30の基端側は、接続筒部20が取り付けられ、ノズル部11も連結された状態となっている。そして、ホースクランプ50が筒形カバー30内に挿入されたあとで、筒形カバー30の先端部にキャップ70が取り付けられてホースクランプ50が抜け止めされる。
【0044】
そして、上述したように、ホース固定部31内面のキャップ当接部39に、キャップ70の基端側端面が突き当てられた状態がホースクランプ50の正規位置となっている。詳細には、
図12に示すように、キャップ70の第1内側嵌合部73Aの基端側を向く端面のうち突当部77が設けられていない部分がキャップ当接部39に突き当てられる。このとき、ホースクランプ50のリング本体51の先端側端面に、突当部77及び仕切壁74が突き当てられる。
【0045】
そして、キャップ70がホース固定部31の先端部に嵌合されたとき、ノズル部11の先端面は、1対の突起76と1対の貫通孔31Aとの係合部分よりも先端側に配置される。第1実施形態では、
図11に示すように、ノズル部11の先端面と蓋部71の先端面とが、面一になっている。
【0046】
第1実施形態の構成に関する説明は以上である。次に、第1実施形態の作用効果について説明する。第1実施形態のホース継手10では、筒形カバー30のホース固定部31の先端部からホース90が差し込まれ、ノズル部11にホース90が挿入されたときに、クリップ60がホースクランプ50から外れてホースクランプ50がホース90をノズル部11に締め付ける。このとき、ホースクランプ50は、リング本体51が位置決め溝30Mに受容された正規位置で縮径変形することで、ホース90に対する締め付けが安定する。
【0047】
ここで、ホース90が差し込まれ、ホースクランプ50がホース90を締め付けた後に、ホース90が曲げられた場合について説明する。もし仮に、
図13(A)に示されるように、外側嵌合部72が備えられず、内側嵌合部73だけが備えられたキャップ70Uがホース固定部31に嵌合されていたとする。このようなホース継手10Uの場合、ホースクランプ50でホース90を締め付けた後にホース90が過度に曲げられると、キャップ70Uがホース固定部31の先端開口から外れて浮いてしまうことがある。これにより、ホースクランプ50のリング本体51が位置決め溝30Mに受容されず、正規位置から外れて傾いてしまう。このような状態になるとホースクランプ50のホース90の締め付けが不安定になる。
【0048】
これに対して、第1実施形態のホース継手10では、キャップ70に外側嵌合部72を備えた構成となっているので、外側嵌合部72がホース固定部31の外面に重ねられることでホース固定部31の先端部の変形を抑制することができる。これにより、ホース90が曲げられても、キャップ70がホース固定部31の先端部から外れて浮くことが抑制され、ホースクランプ50のリング本体51は正規位置に留まり、ホース90に対する締め付けが安定する。
【0049】
さらに、ホース固定部31の先端部は、貫通孔31Aが設けられた部分が最も変形しやすく、外側嵌合部72が備えられていないキャップ70Vを有するホース継手10Vでは、
図13(B)に示すように、内側嵌合部73の突起76が貫通孔31Aから抜け出す虞がある。これに対して、第1実施形態のホース継手10では、突起76と貫通孔31Aとの係合部分(以下、「キャップ抜止係合部」という)に、外側嵌合部72が重ねられるので、突起76が貫通孔31Aから抜け出しにくくなり、キャップ70の筒形カバー30への固定強度を高めることができる。
【0050】
そして、これは、内側嵌合部73が備えられず、外側嵌合部72だけが備えられているキャップ70Wに場合についても同様であり(
図14参照)、筒形カバー30の外側にだけ嵌合部が備えられている構成では、ホース90が曲げられたときに、キャップ70Wのホース固定部31への固定強度が弱く、ホースクランプ50を正規位置に留めることができない。しかしながら、第1実施形態のキャップ70では、筒形カバー30の外側及び内側の両面を間に挟んで嵌合する構成となっているので、筒形カバー30の先端部が変形することを抑え、キャップ70がホース固定部31の先端部から外れて浮くことを抑制して、ホースクランプ50を正規位置に留めることができる。
【0051】
さらに、第1実施形態では、外側嵌合部72及び内側嵌合部73の両方が筒状をなして、ホース固定部31の先端部の内側及び外側の両面の全周に重ねられているので、より効果的に筒形カバーの先端部が変形することを抑制することができる。
【0052】
しかも、外側嵌合部72の方が内側嵌合部73よりも基端側に長く延びているので、ホース固定部31の先端部にキャップ70を嵌合させるときに、外側嵌合部72の内面を案内面とし、ホース固定部31の外面を外側嵌合部72の内面に宛がいながら、蓋部71に突き当たるまで差し込むことができるのでホース固定部31とキャップ70とを容易に嵌合させることができる。
【0053】
また、外側嵌合部72の外面が、ホース固定部31の先端から離れるに従って筒形カバー30の外面に徐々に接近するように傾斜しているので、異物への引っ掛かり等を防ぐことができ、作業者の作業の邪魔にならない。
【0054】
さらに、第1実施形態のホース継手10では、ノズル部11の先端面は、キャップ抜止係合部よりも先端側に配置される。もし仮に、ノズル部11の先端面がキャップ抜止係合部よりも基端側に配置される構成であった場合(
図13(A)参照)、ノズル部11の先端面とホースクランプ50とがノズル部11の中心軸方向で近づいた構成となってしまい、ホース90が差し込まれたときに、ノズル部11の先端部分とホースクランプ50とが干渉して、ホースクランプ50が傾く虞がある。これに対して、第1実施形態のように、ノズル部11の先端面が、キャップ抜止係合部より先端側に配置されることで、ホース90の差込時におけるノズル部11の先端部分とホースクランプ50との干渉を軽減でき、ホースクランプ50が傾くことを抑制することができる。また、第1実施形態のように、ノズル部11の先端面が蓋部71の先端面と面一である構成とすることで、ノズル部11の先端面の破損を防止することができる。
【0055】
また、第1実施形態のホース継手10では、ノズル部11に、ホースクランプ50に締め付けられない位置で、かつホースクリップ60の被押圧辺63と環状突部12Bとの間に、環状突部12Cが備えられている。ホース90の内面を環状突部12Cで更に支持することで、ホースクランプ50がホース90を締め付ける力が増し、両者の固定強度を高めることができる。
【0056】
しかも、ノズル部11の先端面をキャップ70の蓋部71の先端面まで延ばしてノズル部11をホース90の内面に係止する部分を増やすことで、ホース90を曲がりにくくすることができる。さらに、延長されたノズル部11とキャップ70の嵌合壁75との間にホース90が挟まれるため、ホース90をより曲げにくくすることができる。これにより、ホース固定部31の先端部の変形を抑えると共に、ホースクランプ50の傾きを軽減することができる。
【0057】
[他の実施形態]
(1)上記第1実施形態では、内側嵌合部73に突起76が設けられていたが、外側嵌合部72に突起76を設けて、外側嵌合部72とホース固定部31の貫通孔31Aとの間で凹凸係合する構成であってもよい。この構成であれば、突起76はホース固定部31の外側から内側に向かう方向に突出するので、ホース固定部31の先端部が変形したときに、突起76が貫通孔31Aに食い込みやすくなり、キャップ70とホース固定部31との嵌合がより強固となり、キャップ70の固定強度を高めることができる。
【0058】
(2)上記第1実施形態では、外側嵌合部72及び内側嵌合部73の両方が筒状をなして、ホース固定部31の先端部の内面及び外面の両面の全周に重ねられていたが、例えば、内側嵌合部73だけが筒状をなしてホース固定部31の先端部の内面の全周に重ねられ、外側嵌合部72は、蓋部71から延びた突片で構成されて、ホース固定部31の先端部の外面の一部に重ねられる構成であってもよい。また、外側嵌合部72だけが筒状をなしてホース固定部31の先端部の外面の全周に重ねられ、内側嵌合部73は、蓋部71から延びた突片で構成されて、ホース固定部31の先端部の内面の一部に重ねられる構成であってもよい。
【0059】
このとき、突片状の外側嵌合部72は、ホース固定部31を挟んで内側嵌合部73の突起76と対向する位置だけに設けられていてもよい。
【0060】
又は、突片状の外側嵌合部72は、ホース固定部31を挟んで内側嵌合部73の突起76と対向しない位置だけに設けられていてもよい。
【0061】
(3)上記第1実施形態では、第1内側嵌合部73Aが、仕切壁74と共に、ホース嵌合壁75を構成していたが、
図15に示すように、キャップ70Sは、内側嵌合部73Sとホース嵌合壁75Sとが別個に形成されていてもよい。
【0062】
このとき、ホース嵌合壁75Sが形成されていなくてもよい。
【0063】
また、内側嵌合部73Sは筒状ではなく突片状で形成されていてもよい。
【0064】
(4)上記第1実施形態及び上記他の実施形態では、外側嵌合部72及び内側嵌合部73の少なくとも一方が筒状をなしていたが、どちらも突片状で形成されていてもよい。
【0065】
このとき、外側嵌合部72及び内側嵌合部73は、ホース固定部31を挟んで外側嵌合部72又は内側嵌合部73に備えられた突起76と対向するように形成されていてもよいし、ホース固定部31を挟んで突起76と対向しないように形成されていてもよい。
【0066】
(5)上記第1実施形態では、キャップ70に突起76が設けられて、ホース固定部31に設けられた貫通孔31Aと係合する構成であったが、ホース固定部31に突起が設けられて、外側嵌合部72又は内側嵌合部73に貫通孔が設けられた構成であってもよい。
【0067】
(6)上記第1実施形態では、突起と、貫通孔とが係合する構成であったが、
図16に示すホース継手10Tのように、キャップ70Tに設けられた突起76Tがホース固定部31Tの先端部に備えられたフランジ部31Bと係合する構成であってもよい。
【0068】
(7)上記第1実施形態では、ノズル部11の先端面が蓋部71の先端面と面一であったが、ノズル部の先端面が蓋部71の先端面より基端側に配置されていてもよいし、蓋部71の先端面から突出していてもよい。
【0069】
(8)上記第1実施形態では、外側嵌合部72の方が内側嵌合部73よりも基端側に長く延びた構成であったが、内側嵌合部73が外側嵌合部72よりも基端側に長く延びた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 ホース継手
11 ノズル部
30 筒形カバー
50 ホースクランプ
60 クリップ
70 キャップ
71A ホース挿通孔
72 外側嵌合部
73 内側嵌合部
90 ホース