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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】産業用マニピュレータのためのグリッパ
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240701BHJP
   B25J 15/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B25J15/08 C
B25J15/00 Z
B25J15/08 D
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020032506
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2020142364
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】102019000003031
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】515189966
【氏名又は名称】ジマティック エセ.エッレ.エレ.
【氏名又は名称原語表記】GIMATIC S.r.l.
【住所又は居所原語表記】Via Enzo Ferrari 2/4 25030 Roncadelle (BS) Italia
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100181021
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 剛輝
(72)【発明者】
【氏名】ベランディ ジュゼッペ
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-119596(JP,A)
【文献】特開平06-106491(JP,A)
【文献】特開平06-031673(JP,A)
【文献】特開2019-059003(JP,A)
【文献】特開2010-120155(JP,A)
【文献】特開平11-320472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用マニピュレータのためのグリッパ(1、1’)であって、
- 少なくとも2つの顎(G1、G2)であって、前記2つの顎(G1、G2)の少なくとも一方は、前記グリッパ(1、1’)を開放及び閉鎖させるように移動可能な可動顎である、少なくとも2つの顎(G1、G2)と、
- 取り外し可能に互いに組み付けられ得る2つの部分(11、12)を含むグリッパ本体(10)であって、第1の部分(11)は、前記グリッパ(1、1’)のアクチュエータ装置(2)を少なくとも部分的に収容するように意図され、且つ第2の部分(12)は、前記少なくとも2つの顎(G1、G2)を支持するように意図される、グリッパ本体(10)と、
- 少なくとも1つのピン要素(P1、P2)であって、
- 前記少なくとも1つの可動顎(G1、G2)の枢動軸線(XG1、XG2)を画定するか、又は
- 前記少なくとも1つの可動顎(G1、G2)と前記アクチュエータ装置(2)との間に動作可能に介在する少なくとも1つの伝達要素(F1、F2)の枢動軸線(XF1、XF2)を画定する、少なくとも1つのピン要素(P1、P2)と
を含み、前記少なくとも1つのピン要素(P1、P2)は、組立状態において前記グリッパ本体(10)の前記第1の部分(11)と前記第2の部分(12)とを互いに係止するための係止ピン(P1、P2)としても作用する、グリッパ(1、1’)において、
前記少なくとも1つのピン要素(P1、P2)は、少なくとも1つの周方向溝(P11、P21)を有し、
前記グリッパ(1、1’)の組立状態では、前記少なくとも1つの周方向溝(P11、P21)は、前記枢動軸線(XG1、XG2;XF1、XF2)に対して直交方向に作用する予圧弾性力であって、前記グリッパ本体(10)の前記第1の部分(11)と前記第2の部分(12)とを相互に離れて移動させるために前記グリッパ本体(10)内に予め配置された予圧弾性手段(21)によって生成される予圧弾性力の作用下において、
前記グリッパ本体(10)の前記第2の部分(12)に形成された接触縁部(B1、B2)に係合するか、又は
前記少なくとも1つの伝達要素(F1、F2)の支持要素(30)であって、駆動のために前記第1の部分(11)から前記第2の部分(12)に伸びる前記アクチュエータ装置(2)のロッド(202)上に装着されている前記支持要素(30)に形成された接触縁部(310、320)に係合する、
ことを特徴とする、グリッパ(1、1’)。
【請求項2】
前記グリッパ(1、1’)の組立状態では、前記少なくとも1つのピン要素(P1、P2)は、前記グリッパ本体(10)の前記2つの部分(11、12)の少なくとも一方又は前記グリッパ本体(10)の内側に収容された構成要素(30)とのアンダーカットを形成する、請求項1に記載のグリッパ(1、1’)。
【請求項3】
前記グリッパ本体(10)の前記第1の部分(11)は、それぞれの中心軸線(XA1、XA2)を有する少なくとも1つの第1の貫通孔(A1、A2)を含み、且つ前記グリッパ本体(10)の前記第2の部分(12)は、それぞれの中心軸線(XB1、XB2)を有する少なくとも1つの第2の貫通孔(B1、B2)を含み、前記グリッパ本体(10)の前記第1の部分(11)及び前記第2の部分(12)の組立状態では、前記少なくとも1つの第1の貫通孔(A1、A2)及び前記少なくとも1つの第2の貫通孔(B1、B2)の前記中心軸線(XA1、XA2、XB1、XB2)は、互いに且つ前記枢動軸線(XG1、XG2;XF1、XF2)の1つと整合されるか又は整合され得る、請求項1又は2に記載のグリッパ(1、1’)。
【請求項4】
前記アクチュエータ装置(2)は、戻しばね(21)を備えた空圧ピストン(20)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のグリッパ(1、1’)。
【請求項5】
前記予圧弾性手段(21)は、前記空圧ピストン(20)の前記戻しばね(21)によって構成される、請求項4に記載のグリッパ(1、1’)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの可動顎(G1、G2)は、直線的に平行移動され得る、請求項4又は5に記載のグリッパ(1)。
【請求項7】
少なくとも1つの可動顎(G1、G2)と前記アクチュエータ装置(2)との間に動作可能に介在する少なくとも1つの伝達要素(F1、F2)を含み、前記少なくとも1つの伝達要素(F1、F2)は、前記少なくとも1つのピン要素(P1、P2)を中心に枢動され得るロッカレバー(F1、F2)として設計され、且つ前記アクチュエータ装置(2)に係合するように意図された第1のアームと、前記少なくとも1つの可動顎(G1、G2)に係合するように意図された第2のアームとを有する、請求項6に記載のグリッパ(1)。
【請求項8】
前記ロッカレバー(F1、F2)は、支持要素(30)であって、前記空圧ピストン(20)に属する前記ロッド(202)上において、前記ロッド(202)自体に対して軸方向に移動可能であるように装着された支持要素(30)上に枢動可能に支持され、前記空圧ピストン(20)の前記戻しばね(21)は、前記空圧ピストン(20)の頭部(201)と前記支持要素(30)との間で前記ロッド(202)の周囲に装着される、請求項7に記載のグリッパ(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの可動顎(G1、G2)は、枢動され得る、請求項4又は5に記載のグリッパ(1’)。
【請求項10】
前記空圧ピストン(20)は、前記少なくとも1つの可動顎(G1、G2)を枢動させるために前記少なくとも1つの可動顎(G1、G2)の接触部分(G12、G22)と接線方向に協働するように意図された少なくとも1つの傾斜表面が設けられた作動端部(204)を有するロッド(202)を含む、請求項9に記載のグリッパ(1’)。
【請求項11】
前記空圧ピストン(20)の前記戻しばね(21)は、前記空圧ピストン(20)の頭部(201)と、前記グリッパ本体(10)の前記第2の部分(12)の当接部分(125)との間で前記空圧ピストン(20)のロッド(202)の周囲に装着される、請求項9又は10に記載のグリッパ(1’)。
【請求項12】
産業用マニピュレータのためのグリッパ(1、1’)であって、
- 少なくとも2つの顎(G1、G2)であって、前記2つの顎(G1、G2)の少なくとも一方は、前記グリッパ(1、1’)を開放及び閉鎖させるように移動可能な可動顎である、少なくとも2つの顎(G1、G2)と、
- 取り外し可能に互いに組み付けられ得る2つの部分(11、12)を含むグリッパ本体(10)であって、第1の部分(11)は、前記グリッパ(1、1’)の空圧ピストン(20)を少なくとも部分的に収容するように意図され、且つ第2の部分(12)は、前記少なくとも2つの顎(G1、G2)を支持するように意図される、グリッパ本体(10)と、
- 少なくとも1つのピン要素(P1、P2)であって、
- 前記少なくとも1つの可動顎(G1、G2)の枢動軸線(XG1、XG2)を画定するか、又は
- 前記少なくとも1つの可動顎(G1、G2)と前記空圧ピストン(20)との間に動作可能に介在する少なくとも1つの伝達要素(F1、F2)の枢動軸線(XF1、XF2)を画定する、少なくとも1つのピン要素(P1、P2)と
を含み、前記少なくとも1つのピン要素(P1、P2)は、組立状態において前記グリッパ本体(10)の前記第1の部分(11)と前記第2の部分(12)とを互いに係止するための係止ピン(P1、P2)としても作用する、グリッパ(1、1’)において、
前記少なくとも1つのピン要素(P1、P2)は、少なくとも1つの周方向溝(P11、P21)を有し、
前記グリッパ(1、1’)の組立状態では、前記少なくとも1つの周方向溝(P11、P21)は、
[i] 前記枢動軸線(XG1、XG2)に対して直交方向に作用する予圧弾性力であって、前記グリッパ本体(10)の前記第1の部分(11)と前記第2の部分(12)とを相互に離れて移動させるために前記グリッパ本体(10)内に予め配置された予圧弾性手段(21)によって生成される予圧弾性力の作用下において、前記グリッパ本体(10)の前記第2の部分(12)に形成された接触縁部(B1、B2)に係合するか、又は、
[ii] 前記枢動軸線(XF1、XF2)に対して直交方向に作用する予圧弾性力であって、前記グリッパ本体(10)の前記第1の部分(11)と前記第2の部分(12)とを相互に離れて移動させるために前記グリッパ本体(10)内に予め配置された予圧弾性手段(21)によって生成される予圧弾性力の作用下において、前記少なくとも1つのピン要素(P1、P2)を介して前記少なくとも一つの伝達要素(F1、F2)を支持するとともに前記空圧ピストン(20)のロッドに取り付けられ支持要素(30)に形成された接触縁部(310、320)に係合する、
ことを特徴とする、グリッパ(1、1’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用マニピュレータのためのグリッパ、特に空圧作動式線形又は角度グリッパに関する。
【背景技術】
【0002】
産業自動化の分野では、操作すべき物体を把持するために、通常、グリッパを組み合わせたロボットマニピュレータの使用が知られている。
【0003】
産業用マニピュレータのためのグリッパは、概して、グリッパ本体上に装着される2つ以上の顎、すなわちグリッパ指を設けられる。操作すべき加工物に顎がいかなる圧力も加えない開位置、すなわち解放位置と、加工物の取り扱い中に加工物が偶然に解放されないことを確実にするために、操作すべき加工物に顎が十分な圧力を加える閉位置、すなわち把持位置との間で顎を互いに離れて又は接近して移動させ得る。
【0004】
顎の移動のタイプに応じて、顎がそれぞれの案内部内又は上で直線的に移動する線形グリッパと、顎がそれぞれの枢動軸線を中心に枢動する角度グリッパとに区別される。
【0005】
通常、グリッパ本体の内側に収容された空圧式、油圧式又は電気式のアクチュエータ装置によって顎を移動させる。
【0006】
典型的には、顎及びアクチュエータ装置がグリッパ本体上/内に装着されることを可能にするために、グリッパ本体は、ねじ、接着剤、ブラケットなどによって互いに組み付けられ得る2つ以上の部品で作製される。
【0007】
既知のグリッパの機能性能は、概して、申し分のないものであるが、グリッパは、多くの場合、組み立てるべき比較的多数の構成要素及び接続要素又は固定要素を有する。これは、グリッパの動作及び組立時間、結果としてグリッパの製造コストに悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、改良された構造、特に構成要素のより容易且つ迅速な組み立て、したがって同じタイプの既知のグリッパに関するより経済的な製造を可能にする構造を有する、上で説明したタイプの産業用マニピュレータのためのグリッパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1による産業用マニピュレータのためのグリッパによって達成される。このグリッパの好ましい態様は、それぞれの従属請求項の主題である。
【0010】
特に、本発明は、産業用マニピュレータのためのグリッパであって、
- 少なくとも2つの顎であって、2つの顎の少なくとも一方は、グリッパを開放及び閉鎖させるように移動可能である、少なくとも2つの顎と、
- 取り外し可能に互いに組み付けられ得る2つの部分を含むグリッパ本体であって、第1の部分は、グリッパのアクチュエータ装置を少なくとも部分的に収容するように意図され、且つ第2の部分は、少なくとも2つの顎を支持するように意図される、グリッパ本体と、
- 少なくとも1つのピン要素であって、
- 少なくとも1つの可動顎の枢動軸線を画定するか、又は
- 少なくとも1つの可動顎とアクチュエータ装置との間に動作可能に介在する少なくとも1つの伝達要素の枢動軸線を画定する、少なくとも1つのピン要素と
とを含む産業用マニピュレータのためのグリッパに関する。
【0011】
少なくとも1つのピン要素は、組立状態においてグリッパ本体の第1の部分と第2の部分とを互いに係止するための係止ピンとしても作用する。
【0012】
少なくとも1つの可動顎のための若しくは顎とアクチュエータ装置との間に介在する伝達要素のための枢動ピンとして、又はグリッパ本体の第1の部分と第2の部分との間の係止ピンとしてのいずれかの同じピン要素を使用することにより、グリッパ本体の2つの部分、例えばねじ、ブラケット、接着剤などの安定した係止を確実にするための専用の係止手段なしで済ませることが可能である。
【0013】
少なくとも1つのピン要素は、少なくとも1つの周方向溝を有し、グリッパの組立状態では、この周方向溝は、グリッパ本体の第2の部分又は少なくとも1つの伝達要素の支持要素のいずれかに形成された接触縁部に係合する。上で説明した係合は、前記枢動軸線に対して直交方向に作用する予圧弾性力の作用下で生じる。弾性力は、グリッパ本体の第1の部分と第2の部分とを相互に離れて移動させるためにグリッパ本体内に予め配置された予圧弾性手段によって生成される。
【0014】
有利には、グリッパ本体の第2の部分又はグリッパ本体の内側に収容された構成要素のいずれかに形成された接触縁部に周方向溝が係合したとき、上で説明したアンダーカットが得られる。したがって、少なくとも1つのピン要素は、グリッパ本体内に強固に係止され、部分的にもグリッパ本体から偶発的に抜け出ることができない。これらの全ては、ピン要素がグリッパ本体に完全に挿入されたとき、予圧力の作用下でスナップ嵌めによって自動的に行われる。
【0015】
このスナップ結合のため、ピン要素は、抜け出る可能性なしに係止されたままであり、それにより使用中でもグリッパが正しく組み立てられたままであることを確実にする。
【0016】
上で説明した本発明のグリッパの構造は、2つの利点を有する。すなわち、一方では、グリッパ構成要素の総数が低減され、他方では、グリッパ本体内への少なくとも1つの可動顎又は伝達要素のいずれかの枢動ピンの組み付けと、グリッパ本体の2つの組立部分の係止とを組立技術者によって同時に実行できるため、組立工程を簡単且つ迅速にする。
【0017】
ねじ、ナット、ワッシャなど、比較的小さい大きさの接続要素の操作が回避又は低減されるため、組み立てが更に簡素化され且つまた迅速化される。
【0018】
更に、本発明のグリッパの組み立て、特にそれぞれの座部へのピン要素の挿入は、ねじ回し装置などの工具を使用せずに完全に実行することができる。
【0019】
前述の全ての態様は、本発明のグリッパの製造コストを有利に低減することに寄与し、そのため、本発明のグリッパは、動作及び性能の点で同様である既知の技術のグリッパと比べて低い単価で販売することができる。
【0020】
好ましくは、グリッパの組立状態では、少なくとも1つのピン要素は、グリッパ本体の2つの部分の少なくとも一方又はグリッパ本体の内側に収容された構成要素とのアンダーカットを作成する。
【0021】
このように、少なくとも1つのピン要素は、有利には、ピン要素が座部から偶発的に抜け出ないようにピン要素の座部内に強固に係止される。この結果は、アンダーカット結合のため、プレス又は万力によって少なくとも1つのピン要素自体をリベット締めするか又は変形させる必要なしに達成され、したがってグリッパの組み立ての簡素化及び速度にかなり有利に作用する。
【0022】
好ましくは、少なくとも1つのピン要素の挿入を可能にするために、グリッパ本体の第1の部分は、それぞれの中心軸線を有する少なくとも1つの第1の貫通孔を含み、且つグリッパ本体の第2の部分は、それぞれの中心軸線を有する少なくとも1つの第2の貫通孔を含み、グリッパ本体の第1の部分及び第2の部分の組立状態では、少なくとも1つの第1の貫通孔及び少なくとも1つの第2の貫通孔の前記中心軸線は、互いに且つ前記枢動軸線の1つと整合されるか又は整合され得る。
【0023】
好ましくは、グリッパは、グリッパ本体の第1の部分及び第2の部分のそれぞれの結合表面が相互に当接したときに前述の軸線の整合が達成されるように設計される。グリッパ本体の第1の部分と第2の部分との間に作用する予圧力がない場合、この状態は、単にグリッパ本体の部分を互いに接近させるのみで、例えばグリッパ本体の部分を手で互いに接近させることで達成される。予圧弾性手段がグリッパ本体の第1の部分と第2の部分との間に介在し、これにより第1の部分と第2の部分とを相互に離れて移動させる予圧力を生成する場合、組み立てられているが、依然として係止されていないグリッパ本体の部分に、予圧力に対して反対方向に力を一時的に加えることにより、結合表面間の当接状態、したがって軸線の整合を動的に達成することができる。
【0024】
実際には、ピン要素が内部に挿入される孔の整合が達成されるまで、グリッパ本体の2つの部分をより接近させて、予圧弾性手段が及ぼす推力を克服することにより、グリッパを手で組み立てることができる。2つのグリッパ部分を解放することにより、予圧弾性手段は、グリッパ本体の第2の部分又はグリッパ本体の内側の構成要素のいずれかに形成された接触縁部がピン要素の周方向溝に挿入されることに起因して、少なくとも1つのピン要素を係止するのに十分な程度だけ、グリッパ本体の2つの部分を僅かに例えば0.5ミリメートルだけ離れて移動させる。
【0025】
グリッパは、容易に分解することもできる。すなわち、予圧弾性手段が及ぼす推力を克服し、ピン要素の座部を画定する孔を再び整合させ、且つグリッパ本体の第2の部分又はグリッパ本体の内側の構成要素のいずれかに形成された接触縁部を少なくとも1つのピン要素の周方向溝から解放することにより、グリッパ本体の2つの部分を再び互いに当接させるのみでよい。この時点で、ピン要素自体に平行な推力を加えることによって少なくとも1つのピン要素を容易に引き抜くことができ、グリッパ本体の2つの部分を互いに分離させることができる。
【0026】
好ましくは、アクチュエータ装置は、戻しばねを備えた単動空圧ピストンを含む。
【0027】
空圧ピストン、特に戻しばねを備えた単動式空圧ピストンは、グリッパの構造簡素化及びコスト効率を優先すべき場合に特に好適な選択である。
【0028】
この場合、便宜上、グリッパは、上で説明したようにグリッパ本体の2つの部分間に予圧力を生成するためにグリッパ本体内に設けられた予圧弾性手段が空圧ピストンの戻しばねと一致するように設計される。有利には、この選択は、グリッパ構成要素の数を低減するのに役立つ。
【0029】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの可動顎は、直線的に平行移動され得る。換言すれば、この場合、グリッパは、線形グリッパとして設計される。
【0030】
この実施形態では、グリッパは、好ましくは、少なくとも1つの可動顎とアクチュエータ装置との間に動作可能に介在する少なくとも1つの伝達要素を含む。
【0031】
伝達要素は、好ましくは、少なくとも1つのピン要素を中心に枢動され得るロッカレバーとして設計され、且つアクチュエータ装置に係合するように意図された第1のアームと、少なくとも1つの可動顎に係合するように意図された第2のアームとを有する。
【0032】
好ましくは、ロッカレバーは、支持要素であって、空圧ピストンのロッド上において、ロッド自体に対して軸方向に平行移動できるように装着された支持要素上に枢動可能に支持され、空圧ピストンの戻しばねは、空圧ピストンの頭部と支持要素との間でロッドの周囲に装着される。
【0033】
そのように設計された伝達部では、便宜上、最小数の要素からなり且つ組み立てが容易である簡単な構造と、ロバストで信頼性の高い動作とが組み合わされる。
【0034】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの可動顎は、枢動され得る。換言すれば、この場合、グリッパは、角度グリッパとして設計される。
【0035】
この実施形態では、少なくとも1つの可動顎は、好ましくは、グリッパのアクチュエータ装置、この場合も好ましくは戻しばねを備えた単動空圧ピストンによって直接作動される。
【0036】
特に、空圧ピストンは、好ましくは、前述のピン要素によって画定された枢動軸線を中心に少なくとも1つの可動顎を枢動させるために少なくとも1つの可動顎の接触部分と接線方向に協働するように意図された少なくとも1つの傾斜表面が設けられた作動端部を有するロッドを含む。
【0037】
好ましくは、空圧ピストンの戻しばねは、空圧ピストンの頭部と、グリッパ本体の第2の部分の当接部分との間で空圧ピストンのロッドに同軸に装着される。
【0038】
この場合にも、そのような構成は、最小数の構成要素からなり且つ組み立てが容易である特に簡単な構造と、ロバストで信頼性の高い動作との両方をグリッパに与える。
【0039】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の図面を用いて、単なる図示の目的で描かれ、限定的ではない、本発明の好ましいが排他的ではない実施形態の以下の詳述の検討からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明による産業用マニピュレータのためのグリッパの第1の実施形態の分解斜視図を概略的に示す。
図2】部分組立状態にある図1のグリッパの部分断面分解斜視図を概略的に示す。
図3】完全組立状態にある図1のグリッパの斜視図を概略的に示す。
図4】完全組立状態にある図1のグリッパの部分断面斜視図を概略的に示す。
図5】部分組立状態にある、本発明による産業用マニピュレータのためのグリッパの第2の実施形態の部分断面分解斜視図を概略的に示す。
図6】完全組立状態にある図5のグリッパの概略斜視図を概略的に示す。
図7】完全組立状態にある図5のグリッパの部分断面概略斜視図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1図4は、概して参照番号1で表される、本発明による産業用マニピュレータのためのグリッパの第1の好ましい実施形態を示す。
【0042】
グリッパ1は、グリッパ本体10と、顎、すなわち把持指G1、G2の対とを含む。
【0043】
顎G1、G2は、両方ともそれぞれグリッパ1を開放及び閉鎖させるためにグリッパ本体10に対して互いに離れて又は接近して移動可能である。
【0044】
特に、図1図4に示す実施形態では、グリッパ1は、平行な顎を備えた線形グリッパとして設計される。そのため、顎G1、G2によって実行される運動は、直線的であり且つ互いに対して平行である。
【0045】
この場合、グリッパ本体10は、略直方体形状を有し、且つ取り外し可能に互いに組み付けられ得る2つの部分11、12を含む。第1の部分11は、主に、以下により詳細に説明する、グリッパ1のアクチュエータ装置2を収容するように且つそれぞれのマニピュレータ(本発明の一部ではないため、図示しない)へのグリッパ1の結合を可能にするように設計される一方、第2の部分12は、主に、2つの顎G1、G2を移動可能に支持するように設計される。
【0046】
特に、形状が略直方体であり、好ましくはモノリシックである、グリッパ本体10の第1の部分11は、アクチュエータ装置2を収容するための収容座部113を設けられる。収容座部113は、グリッパ本体10の第2の部分12に結合されるように意図された第1の部分11の一面において外方に開口している。
【0047】
同じく略直方体形状、好ましくはモノリシック形状を有する、グリッパ本体10の第2の部分12は、顎G1及びG2のそれぞれの案内部分G11、G21が形状結合によって内部に摺動可能に受け入れられる案内レール120を設けられる。案内レール120内に設けられた面に対向する、グリッパ本体10の第2の部分12の面は、グリッパ本体10の第1の部分11と結合されるように意図されている。この結合面は、アクチュエータ装置2と2つの顎G1、G2との間に動作可能に介在する伝達ユニット3を収容するように設計及び寸法決めされ、且つ以下により詳細に説明する、図2及び図4の視点では一部のみを視認することができる空洞121を有する。空洞121は、顎G1、G2の案内部分G11、G21を示す少なくとも1つの開口部を備えた底壁を有し、その結果、顎G1、G2を伝達ユニット3に動作可能に接続することができる。
【0048】
特に図1及び図2で分かるように、グリッパ本体10の第1の部分11と第2の部分12とが組立状態において強固に係止されることを可能にするために、フィン111、112の2つの対は、それぞれ第1の部分11の結合面に形成され且つ結合面から突出し、及び各々に貫通孔A1又はA2が設けられる。フィン111の対の貫通孔A1は、互いに整合される(すなわち貫通孔A1が共通の中心軸線XA1を有する)。同様に、フィン112の対の貫通孔A2は、互いに整合される(すなわち貫通孔A2が共通の中心軸線XA2を有する)。貫通孔A1、A2の対の中心軸線XA1及びXA2は、互いに且つ結合面110の表面に平行であり、及びグリッパ本体10の第2の部分12内における案内レール120の延在方向に直交する。
【0049】
相応に、互いに平行なそれぞれの中心軸線XB1、XB2を含み、且つ案内レール120の延在方向に直交する2つの貫通孔B1、B2は、グリッパ本体10の第2の部分12に形成される。
【0050】
グリッパ1が組み立てられたとき(図3及び図4を参照されたい)、第1の部分11のフィン111、112の対が第2の部分12の空洞121内に受け入れられるように、且つ第1の部分11の貫通孔A1、A2の対がそれぞれ第2の部分12の貫通孔B1、B2と整合されるか又は整合され得る(すなわち、中心軸線XA1、XA2は、それぞれ中心軸線XB1、XB2と一致するか又は一致させることができる)ように、グリッパ本体10の第1の部分11と第2の部分12とが互いに結合される。これにより、グリッパ本体10の第1の部分11と第2の部分12とを互いに強固に係止するために、2つのそれぞれのピン要素P1、P2を前述の孔に挿入することが可能となる。
【0051】
前述のように、本明細書に図示するグリッパ1の好ましい実施形態では、戻しばね21を備えた単動空圧ピストン20からなるアクチュエータ装置2がグリッパ本体10の内側に収容される。
【0052】
ピストン20は、収容座部113内を軸方向に移動可能であるように、グリッパ本体10の第1の部分11内に設けられたそれぞれの収容座部113内に収容され、且つ頭部201とロッド202とを含む。戻しばね21は、ピストン20の頭部201と伝達ユニット3との間でロッド202の周囲に同軸に装着される。グリッパ本体10の第1の部分11に形成された供給ライン114は、収容座部113の閉じた底壁とピストン20の頭部201との間の領域において、収容座部113内に圧縮空気が注入されることを可能にする。
【0053】
このような構成では、収容座部113内への圧縮空気の供給から生じるピストン20の能動的ストロークにより、顎G1、G2が互いに離れて移動し、すなわちグリッパ1が開く一方、圧縮空気の供給が停止したときの戻しばね21の作用に起因するピストン20の戻りストロークにより、顎G1、G2が互いに接近して移動し、すなわちグリッパ1が閉じる。そのため、圧縮空気の供給がない場合、ピストン20の戻しばね21は、グリッパ1を閉状態又は把持状態に保つ。
【0054】
上述のように、図1図4に示す実施形態では、グリッパ1は、アクチュエータ装置2と顎G1、G2との間に動作可能に介在する伝達ユニット3も含む。好ましくは、伝達ユニット3は、共通の支持要素30上に枢動可能に支持されたロッカレバーF1、F2の対を含む。
【0055】
各ロッカレバーF1、F2は、アクチュエータ装置2と係合するように意図された第1のアームと、顎G1、G2の一方と係合するように意図された第2のアームとを有する。特に、ロッカレバーF1、F2の第1のアームは、頭部201を支える端部とは反対側のピストン20の端部において、ピストン20のロッド202に得られた対応する横溝203に自由に係合される(図2及び図4を参照されたい)。ロッカレバーF1、F2の第2のアームは、グリッパ本体10の第2の部分12の空洞121の底壁に得られた少なくとも1つの開口部を通してアクセスできる、顎G1、G2の案内部分G11、G21に形成された対応する座部(図に示す視点では視認できない)に自由に係合される。
【0056】
ロッカレバーF1、F2は、それぞれピン要素P1、P2を挿入するための貫通孔C1、C2を有し、ピン要素P1、P2は、それぞれのロッカレバーF1、F2の枢動軸線XF1、XF2を画定する(図1及び2を参照されたい)。
【0057】
本発明のグリッパ1は、有利には、組立状態では、ロッカレバーF1の貫通孔C1が、グリッパ本体10の第1の部分11のフィン111の対における貫通孔A1の対及びグリッパ本体10の第2の部分12における貫通孔B1と整合され、且つロッカレバーF2の貫通孔C2が、グリッパ本体10の第1の部分11のフィン112の対における貫通孔A2及びグリッパ本体10の第2の部分12における貫通孔B2と整合されるように設計される。換言すれば、組立状態では、ロッカレバーF1の枢動軸線XF1は、貫通孔A1の対の中心軸線XA1及び貫通孔B1の対の中心軸線XB1とそれぞれ一致し、且つロッカレバーF2の枢動軸線XF2は、貫通孔A2の対の中心軸線XA2及び貫通孔B2の対のXB2とそれぞれ一致する。この構成のため、同じピン要素P1、P2は、ロッカレバーF1、F2のための枢動ピンと、グリッパ本体10の2つの部分11、12のための係止ピンとの両方として使用することができ、これにより、それらの機能を果たすピン要素の2つの別個の組の事前配置及び組み立てが回避される。
【0058】
特に図1及び図2に示すように、ロッカレバーF1、F2の支持要素30は、中央本体33の長手方向軸線に対して直交方向に延びる、横方向に対向する支持翼31、32の2つの対が設けられた環状本体33を含む。各支持翼31又は32は、ピン要素P1、P2を自由に回転可能に受け入れるための切り欠き310又は320を有する。
【0059】
組立状態では、支持要素30は、ピストン20に対して軸方向に移動可能であるようにピストン20のロッド202に同軸に装着され、且つピストン20の戻しばね21とグリッパ本体10の第2の部分12との間に介在して、空洞121の底壁において第2の部分12に当接する。
【0060】
この配置のため、ピストン20の戻しばね21は、グリッパ本体10の2つの部分11、12間、特に部分11と支持要素30との間に作用する予圧ばねとしても使用することができる。特に、グリッパ1は、組立状態では、戻しばね21が部分的に圧縮され、これによりロッカレバーF1、F2の枢動軸線XF1、XF2に直交する予圧弾性力、グリッパ本体10の第1の部分11から離れて移動するように、伝達ユニット3の支持要素30と、結果的にグリッパ本体10の第2の部分12とを付勢する力をより静的に生成するように設計することができる。
【0061】
有利には、ピン要素P1、P2とグリッパ1とのアンダーカット結合のために予圧弾性力を利用することができる。このアンダーカット結合は、貫通孔A1、B1、C1及び貫通孔A2、B2、C2によってそれぞれ形成されたピン要素P1、P2の座部内の適所にピン要素P1、P2を係止する。
【0062】
この目的のため、ピン要素P1、P2は、グリッパ本体10又はグリッパ本体10の内側の構成要素に画定された対応する接触縁部を、特に本明細書ではアンダーカットを作成するためにロッカレバーF1、F2の支持要素30の支持翼31、32の対の切り欠き310、320と係合するように意図される周方向溝P11、P21の対をそれぞれ含む。ピン要素P1、P2がグリッパ本体10に完全に挿入されたとき、それぞれの周方向溝P11、P21の対が溝310、320に軸方向に位置し、且つ戻しばね21により生成された予圧弾性力により、それらの切り欠き310、320の縁部分が溝P11、P21に押し込まれて、縁部分が溝P11、P21自体と強固に係合された状態に保たれる。
【0063】
上で説明した構造を備えたグリッパ1は、組立工具を必要とせずに特に容易且つ迅速な方法で組み立てることができる。
【0064】
まず、ピン要素P1、P2を除くグリッパ1の全ての構成要素が互いに組み付けられ、特に互いに積み重ねられる。続いて、それぞれの結合表面を互いに当接させるために、グリッパ本体10の第1の部分11及び第2の部分12が手で互いに押し付けられる。この状態では、貫通孔A1、B1、C1とA2、B2、C2とが整合される。加えて、ピストン20の戻しばね21は、部分的に圧縮されて、グリッパ本体10の第1の部分11と第2の部分12とを互いに離れて移動させ、且つレバーアームF1、F2の支持要素30を第2の部分12に向かって移動させる予圧力を生成する。この時点で、ピン要素P1、P2は、それぞれ貫通孔A1、B1、C1及びA2、B2、C2に手で挿入され、それによりロッカレバーF1、F2がグリッパ本体10内に枢動可能に支持されることと、グリッパ本体10の第1の部分11と第2の部分12とが互いに係止されることとが同時に得られる。ピン要素P1、P2がグリッパ本体10に完全に挿入されたとき、ロッカレバーF1、F2の支持要素30に作用する予圧力により、支持翼31、32の切り欠き310、320の対がそれぞれピン要素P1、P2の周方向溝P11、P21の対に自動的にスナップ嵌めされ、これによりピン要素P1、P2が所定の位置に強固に係止される。
【0065】
グリッパは、孔111-B1、112-B2を整合させてピン要素P1、P2を引き抜くために、顎が開かれた後、工具を用いて、ばね21の推力に反作用する推力を支持要素30に加えることによって分解することができる。
【0066】
図5図7は、本発明による産業用マニピュレータのためのグリッパ1’の第2の好ましい実施形態を示す。これらの図では、上に図示した第1の実施形態の要素と構造的又は機能的に同様の要素は、同じ参照番号で表し、且つそれらの要素が第1の実施形態との関連で説明した要素と異なる部分についてのみ以下に詳細に説明する。
【0067】
特に、図5図7に示すグリッパ1’は、2つの可動顎G1、G2をグリッパ本体10に対して枢動され得る角度グリッパとして設計されている。
【0068】
グリッパ本体10は、この場合、取り外し可能に互いに組み付けられ得る2つの部分11、12も含み、第1の部分11は、主に、グリッパ1’のアクチュエータ装置2を収容し、且つグリッパ1’がそれぞれのマニピュレータ(本発明の一部ではないため、図示しない)に結合されることを可能にするように設計される一方、第2の部分12は、主に、2つの顎G1、G2を支持するように設計される。
【0069】
好ましくはモノリシック構造を有するグリッパ本体10の第1の部分11は、取り外し可能にグリッパ本体10の第2の部分12と結合されるように1つの端部に二股状頭部116を備えた略細長円筒状本体115を含む。二股状頭部116は、略平坦形状を有し、且つ互いに平行であり(図5を参照されたい)、及びグリッパ本体10の第2の部分12の少なくとも一部が2つのステム116a、116b間に収められることを可能にする(図6及び図7を参照されたい)2つのステム116a、116bによって形成される。グリッパ1’のアクチュエータ装置2のための収容座部113は、グリッパ本体115の内側に得られ、且つ前述の二股状頭部116の外側に開口している。
【0070】
グリッパ本体10の第2の部分12は、平坦な構成を有し、その厚みにより、第1の部分11の二股状頭部116の2つのステム116a、116b間に第2の部分12が好ましくは隙間なしに自由に挿入されることが可能となる(図5図6を参照されたい)。好ましくは、第2の部分12は、正面図では、顎G1、G2の枢動運動に必要な空間を提供すると同時に、グリッパ1’の横方向の寸法を最小限に抑える略ランス又はハート形状を有する。その上、この場合、顎G1、G2の組み立てを容易にするために、第2の部分12は、好ましくは、互いに組み付けられ得る2つの半殻12a、12bによって形成される。
【0071】
特に、第2の部分12は、図5図7の視点では前壁の一方のみを視認できる実質的に平坦な2つの対向する前壁を有し、2つの部分は、少なくともある程度の周囲長さで側壁によって接合される。特に図5で分かるように、側壁は、顎G1、G2をグリッパ本体10の第2の部分12から取り出すために一方側に、且つグリッパ本体10の第1の部分11内に収容されたアクチュエータ装置2に対して顎G1、G2がそれぞれ動作可能に結合されることを可能にするために他方側に設けられた2つの開口部123、124によって分離される。
【0072】
顎G1、G2は、顎G1、G2のそれぞれの枢動軸線XG1、XG2を画定するピン要素P1、P2により、グリッパ本体10の第2の部分12内に枢動可能に装着される。特に、各ピン要素P1、P2は、顎G1、G2に形成されたそれぞれの貫通孔D1、D2と、グリッパ本体10の第2の部分12の前壁に対応して形成された貫通孔B1、B2の対とに自由に挿入され得る。
【0073】
グリッパ本体10の第1の部分11は、二股状頭部116のステム116a、116bにおいて、それぞれの中心軸線XA1、XA2を有する貫通孔A1、A2の対を設けられる。
【0074】
また、この実施形態では、グリッパ1’Rは、グリッパ本体10の第1の部分11の貫通孔A1、A2の対が、組立状態において、それぞれグリッパ本体10の第2の部分12の貫通孔B1、B2の対と、したがって顎G1、G2の貫通孔D1、D2と整合されるか又は整合され得るように設計される。換言すれば、組立状態では、顎G1、G2の枢動軸線XG1、XG2は、貫通孔A1、A2の対の中心軸線XA1、XA2と一致するか又は一致させることができる。そのため、この場合でも、同じピン要素P1、P2は、有利には、ここでは顎G1、G2のための枢動ピンと、グリッパ本体10の2つの部分11、12のための係止ピンとの両方として使用することができる。
【0075】
上で説明したグリッパ1の第1の実施形態と同様に、アクチュエータ装置2は、グリッパ本体10の第1の部分11のそれぞれの収容座部113内に移動可能に収容された、戻しばね21を備えた単動空圧ピストン20からなる。戻しばね21は、ピストン20のロッド202の周囲に同軸に装着されるが、この場合、アクチュエータ装置2と顎G1、G2との間に伝達ユニットがないため、ここでは、開口部124の周囲に延出したカラーであって、ピストン20の収容座部113に挿入できるような横方向の寸法を有するカラーによって画定された、グリッパ本体10の第2の部分12の当接部分125と、ピストン20の頭部201との間に介在する。
【0076】
図5図7の実施形態1’では、アクチュエータ装置2は、伝達ユニットの介在なしに顎G1、G2に直接作用する。頭部201を支える端部とは反対側のピストン20のロッド202の端部は、この場合、直径方向に対向する2つの平坦な対向する傾斜表面によって形成された楔形の作動端部204として設計され、且つ顎G1、G2を枢動させるために、顎G1、G2の、互いに面し且つ好適に形状決めされた特別な接触部分G12、G22間に挿入されるように意図される(図5)。
【0077】
グリッパ1’の動作原理は、図1図4の実施形態1に関して上で説明した動作原理と同様である。収容座部113内への圧縮空気の供給から生じるピストン20の能動的ストロークにより、ロッド202の作動端部204が顎G1、G3の2つの接触部分G12、G22間に押し込まれ、それにより接触部分G12、G22が互いに離れて枢動する、すなわち加工物を把持するようにグリッパ1’が閉じる。圧縮空気の供給が停止されたときの戻しばね21の作用に起因するピストン20の戻りストロークにより、ロッド202の作動端部204が顎G1、G2に対して係合解除される。この状態では、顎G1、G2は、互いに接近するように枢動し、これにより顎G1、G2自体間に動作可能に介在する圧縮ばね5又は他の均等な弾性手段によって生成された弾性復帰力に起因してグリッパ1’が開く(図5)。ピストン20を作動させていないとき、圧縮ばね5は、グリッパ1’を加工物が解放される開状態に保つ。
【0078】
また、この実施形態では、ピストン20の戻しばね21は、同時に、グリッパ本体10の2つの部分11、12間に作用する予圧ばねとして機能することができる。特に、グリッパ1’は、組立状態では、戻しばね21が部分的に圧縮され、それにより顎G1、G2の枢動軸線XG1、XG2に直交する予圧弾性力も静的に生成されるように設計することができる。また、この予圧弾性力は、有利には、ピン要素P1、P2がグリッパ本体10に完全に挿入されたときにピン要素P1、P2を適所に係止するために使用することができる。この状態では、ピン要素P1、P2のそれぞれの周方向溝P11、P21の対は、グリッパ本体10の第2の部分12の貫通孔B1、B2の対に軸方向に位置し、且つ戻しばね21によって発生する予圧弾性力により、これらの貫通孔B1、B2の縁部分が溝P11、P21に自動的に押し込まれる。こうして、ピン要素P1、P2を所定の位置に軸方向に係止するアンダーカットが作成される。
【0079】
グリッパ1’のこの第2の実施形態の組み立ては、第1の実施形態1に関して上で説明した組み立てと基本的に同じである。
【0080】
特に、組み立てのために、グリッパ1’の構成要素がまず互いに組み付けられる。次に、グリッパ本体10の第1の部分11及び第2の部分12は、グリッパ本体10の第1の部分11の二股状頭部116に挿入される、グリッパ本体10の第2の部分12の側壁を二股状頭部116自体の底部分に当接させるために手で互いに押し付けられる。この状態では、グリッパ本体10の第1の部分11の貫通孔A1、A2の対は、グリッパ本体10の第2の部分12の貫通孔B1、B2の対とそれぞれ整合され、次に、貫通孔B1、B2の対は、顎G1、G2の貫通孔D1、D2とそれぞれ整合され、且つピストン20の戻しばね21が部分的に圧縮され、それによりグリッパ本体10の第1の部分11と第2の部分12とを互いに離れて移動させる予圧力が生成される。この時点で、ピン要素P1、P2は、それぞれ貫通孔A1、B1、D1及びA2、B2、D2に手で挿入され、それにより顎G1、G2がグリッパ本体10内に枢動可能に支持されることと、グリッパ本体10の第1の部分11と第2の部分12とが互いに係止されることとが同時に得られる。ピン要素P1、P2がグリッパ本体10に完全に挿入されたとき、グリッパ本体10の2つの部分11、12間に作用する予圧力により、貫通孔B1、B2の縁部分が溝P11、P21に自動的にスナップ嵌めされ、それによりピン要素P1、P2が所定の位置に強固に係止される。
【0081】
偶然に係合解除されることを防止するために、グリッパ1’は、第2の部分12の2つの半殻12a、12bの少なくとも一方、好ましくは2つの半殻12a、12bの両方において、グリッパ1’が組み立てられたときに本体115の二股状頭部116に位置する対応する孔301にスナップ嵌めされる突起300を設けられる。特に、突起300は、それぞれの半殻12a、12bの可撓性部分に位置決めされる。そのため、グリッパ1’の種々の構成要素の組み立て中、突起300が設けられた部分が曲がり、それにより、突起300がそれぞれの孔301を塞いで孔301にスナップ嵌めされ且つ結合を達成する箇所までの、部分11への部分12の挿入を可能にする。分解を達成するには、突起300を孔301から取り外して、上で説明したように進めるために工具によって単に可撓性部分に圧力を加えるのみでよい。
【0082】
そのため、本発明は、少数の構成要素からなり、迅速且つ容易に組み立てることができる、産業用マニピュレータのためのグリッパ1、1’であって、そのため、低コストで製造できるグリッパ1、1’を提供する。
【符号の説明】
【0083】
1 グリッパ
1’ グリッパ
2 アクチュエータ装置
3 伝達ユニット
5 圧縮ばね
10 グリッパ本体
11 第1の部分
12 第2の部分
12a、b 半殻
20 ピストン
21 戻しばね
30 支持要素
31、32 支持翼
33 環状本体
110 結合面
111、112 フィン
111-B1、112-B2 孔
113 収容座部
114 供給ライン
115 グリッパ本体
116 二股状頭部
116a、116b ステム
120 案内レール
121 空洞
123、124 開口部
125 当接部分
201 頭部
202 ロッド
203 横溝
204 作動端部
300 突起
301 孔
310、320 切り欠き
A1、A2、B1、B2、C1、C2、D1、D2 貫通孔
F1、F2 ロッカレバー
G1、G2 顎
G11、G21 案内部分
G12、G22 接触部分
P1、P2 ピン要素
P11、P21 周方向溝
XA1、XA2、XB1、XB2 中心軸線
XF1、XF2、XG1、XG2 枢動軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7