(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】シート給送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 1/04 20060101AFI20240701BHJP
B41J 11/58 20060101ALI20240701BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240701BHJP
B65H 11/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B65H1/04 310A
B41J11/58
G03G15/00 401
B65H1/04 320A
B65H11/00 C
(21)【出願番号】P 2020054353
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 洋
(72)【発明者】
【氏名】中川 弘之
(72)【発明者】
【氏名】神成 勲
(72)【発明者】
【氏名】田岡 桂太朗
(72)【発明者】
【氏名】関口 肇
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-298509(JP,A)
【文献】特開2009-078894(JP,A)
【文献】特開2007-136974(JP,A)
【文献】特開2007-031093(JP,A)
【文献】実開平04-070844(JP,U)
【文献】米国特許第08925854(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00-11/70
B65H 11/00-11/02
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート
の第1面を支持する
第1支持面を有する第1支持部材と、
前記
第1支持面に支持されている前記シートに当接して前記シートをシート給送方向に給送する給送ローラと、
前記
第1支持面から上方に突出するように設けられ、前記シートの前記シート給送方向に垂直なシート幅方向の端部位置を規制する側端規制部材と、
前記第1支持部材の上方に配置された第2支持部材であって、前記シートの第1部分が前記第1支持
面に支持され、前記シートの前記第1部分よりも後端側
であり前記シートの後端を含む第2部分が前記第1部分の上方に位置するように前記シートが湾曲している状態で、前記シートの前記第2部分
における前記第1面の反対の第2面を支持する
第2支持面を有する第2支持部材と、を備え、
前記第1支持面と水平方向とのなす角度は、前記第2支持面と前記水平方向とのなす角度より大きく、
前記シート幅方向に見た状態で、前記第2支持部材の前記シート給送方向における上流側の先端部と、前記給送ローラが前記シートに接触する位置と、を結んだ線に対して、前記側端規制部材の、前記シートが給送される際に前記
第1支持面に沿って前記シートが移動する移動方向における上流側の上端部が、上方側に突出している、
ことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
シート
の第1面を支持する
第1支持面を有する第1支持部材と、
前記
第1支持面に支持されている前記シートに当接して前記シートをシート給送方向に給送する給送手段と、
前記
第1支持面から上方に突出するように設けられ、前記シートの前記シート給送方向に垂直なシート幅方向の端部位置を規制する側端規制部材と、
前記第1支持部材の上方に配置された第2支持部材であって、前記シートの第1部分が前記第1支持
面に支持され、前記シートの前記第1部分よりも後端側
であり前記シートの後端を含む第2部分が前記第1部分の上方に位置するように前記シートが湾曲している状態で、前記シートの前記第2部分
における前記第1面の反対の第2面を支持する
第2支持面を有する第2支持部材と、を備え、
前記第1支持面と水平方向とのなす角度は、前記第2支持面と前記水平方向とのなす角度より大きく、
前記シート幅方向に見た状態で、前記第2支持部材の前記シート給送方向における上流側の先端部は、前記側端規制部材の、前記シートが給送される際に前記
第1支持面に沿って前記シートが移動する移動方向における上流側の上端部より下方に位置する、
ことを特徴とするシート給送装置。
【請求項3】
前記第2支持部材の前記先端部は、前記移動方向に関して前記側端規制部材の前記上端部より上流側に位置する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記第2支持面は、前記シート給送方向の上流側に向かって延び
ており、
前記第2支持部材は、前記第2支持面に対して前記シート給送方向の上流側に隣接し、前記シート給送方向の上流に向かって前記第1支持部材の前記
第1支持面に近づくように前記
第2支持面に対して傾斜した
傾斜部を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記第1支持部材及び前記第2支持部材の各々は、前記第1支持部材から前記シート給送方向に送り出される前記シートを受け入れる筐体に対して、前記シート給送方向の上流側に突出している、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記第1支持部材は
、前記シートの先端側から後端側に向かって前記シート給送方向の上流側に延びている前記シートの前記第1部分
における前記第1面を支持し、
前記第2支持部材は
、前記シートの先端側から後端側に向かって前記シート給送方向の下流側に延びるように前記第1部分に対して折り返されている前記シートの前記第2部分
における前記第2面を支持する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項7】
前記シート幅方向に見た状態で、前記側端規制部材の前記上端部は前記第2支持面よりも下方に位置している、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載のシート給送装置と、
前記シート給送装置から給送されるシートに画像を形成する画像形成手段と、
を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを給送するシート給送装置及びシートに画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プリンタ等の画像形成装置において、シート搬送方向の長さが一般的な定型サイズよりも長い長尺シートを記録材として用いる場合がある。特許文献1には、長尺シートを給紙トレイにセットする場合に、シート後端部を給紙トレイの上方空間に折り返すようにシートを湾曲させて、給紙トレイの上方に設けた後端部保持部材にシート後端部を保持させることが記載されている。また、この給紙トレイには、シートの側端位置を規制するサイドガイドが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の構成において、後端部保持部材における搬送抵抗により、長尺シートの給送開始後に給送ローラと後端部保持部材との間でシートに張力が生じることで手差しトレイからシートが浮き上がる場合がある。このようなシートの浮き上がりによってサイドガイドからシートが逸脱すると、搬送不良や出力画像の傾き等につながるシートの斜行が発生する可能性があった。
【0005】
そこで、本発明は、シートの斜行が発生する可能性を低減可能なシート給送装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、シートの第1面を支持する第1支持面を有する第1支持部材と、前記第1支持面に支持されている前記シートに当接して前記シートをシート給送方向に給送する給送ローラと、前記第1支持面から上方に突出するように設けられ、前記シートの前記シート給送方向に垂直なシート幅方向の端部位置を規制する側端規制部材と、前記第1支持部材の上方に配置された第2支持部材であって、前記シートの第1部分が前記第1支持面に支持され、前記シートの前記第1部分よりも後端側であり前記シートの後端を含む第2部分が前記第1部分の上方に位置するように前記シートが湾曲している状態で、前記シートの前記第2部分における前記第1面の反対の第2面を支持する第2支持面を有する第2支持部材と、を備え、前記第1支持面と水平方向とのなす角度は、前記第2支持面と前記水平方向とのなす角度より大きく、前記シート幅方向に見た状態で、前記第2支持部材の前記シート給送方向における上流側の先端部と、前記給送ローラが前記シートに接触する位置と、を結んだ線に対して、前記側端規制部材の、前記シートが給送される際に前記第1支持面に沿って前記シートが移動する移動方向における上流側の上端部が、上方側に突出している、ことを特徴とするシート給送装置である。
【0007】
本発明の他の一態様は、シートの第1面を支持する第1支持面を有する第1支持部材と、前記第1支持面に支持されている前記シートに当接して前記シートをシート給送方向に給送する給送手段と、前記第1支持面から上方に突出するように設けられ、前記シートの前記シート給送方向に垂直なシート幅方向の端部位置を規制する側端規制部材と、前記第1支持部材の上方に配置された第2支持部材であって、前記シートの第1部分が前記第1支持面に支持され、前記シートの前記第1部分よりも後端側であり前記シートの後端を含む第2部分が前記第1部分の上方に位置するように前記シートが湾曲している状態で、前記シートの前記第2部分における前記第1面の反対の第2面を支持する第2支持面を有する第2支持部材と、を備え、前記第1支持面と水平方向とのなす角度は、前記第2支持面と前記水平方向とのなす角度より大きく、前記シート幅方向に見た状態で、前記第2支持部材の前記シート給送方向における上流側の先端部は、前記側端規制部材の、前記シートが給送される際に前記第1支持面に沿って前記シートが移動する移動方向における上流側の上端部より下方に位置する、ことを特徴とするシート給送装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シートの斜行が発生する可能性を低減可能なシート給送装置及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
まず、実施例1に係る画像形成装置1について
図1~
図3を用いて説明する。
図1は画像形成装置1の概略図である。画像形成装置1は、画像形成手段としての電子写真式の画像形成部10と、画像形成部10を収容する筐体としての装置本体1Aと、を備えたプリンタである。なお、「画像形成装置」には、プリンタ以外にも、例えば複写機や複合機が含まれる。
【0011】
画像形成部10は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色のトナー像を形成する画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kと、転写手段としての転写ユニット30と、を備える。画像形成部10は、外部の情報機器からネットワークを介して入力される画像情報に基づいて、画像形成ユニット10Y~10Kで作成したトナー像を転写ユニット30を介してシートPに転写することで、シートPに画像を形成する。記録材として使用可能なシートPには、普通紙及び厚紙等の紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート等のプラスチックフィルム、封筒やインデックス紙等の特殊形状のシート並びに布等の、サイズ・材質・表面加工等の属性が異なる多様なシート材が含まれる。
【0012】
各画像形成ユニット10Y~10Kの構成は、現像に用いるトナーの色が異なる以外は共通であるため、イエローの画像形成ユニット10Yを例に説明する。画像形成ユニット10Yは、ドラム状の電子写真感光体である感光ドラム11と、帯電手段としての帯電器12と、現像手段としての現像器14と、クリーニング手段としてのドラムクリーナ15と、を備える。画像形成部10に対して画像形成開始が指示されると、感光ドラム11が回転し、帯電器12が感光ドラム11の表面を一様に帯電させる。画像形成部10の下方に配置された露光手段としてのレーザスキャナ13は、画像情報に基づいて変調されたレーザ光を感光ドラム11に照射して、感光ドラム11の表面に静電潜像を書き込む。この静電潜像は、現像器14から供給されるイエローのトナーによって現像され、感光ドラム11の表面にイエローのトナー像が形成される。以上のプロセスは、各画像形成ユニット10Y~10Kにおいて並列的に実行され、各感光ドラム11の表面に各色のトナー像が形成される。
【0013】
各感光ドラム11に担持されているトナー像は、一次転写ローラ17によって中間転写ベルト31に一次転写される。このとき、各色のトナー像が互いに重なるように転写されることで、中間転写ベルト31の上にフルカラーのトナー像が形成される。中間転写ベルト31に転写されずに感光ドラム11に残った転写残トナー等の、感光ドラム11上の付着物は、ドラムクリーナ15によって除去される。中間転写ベルト31は、二次転写内ローラ34を含む複数のローラに張架されており、感光ドラム11の回転方向に沿った所定の回転方向に回転することで、トナー像を搬送する。
【0014】
上述の電子写真プロセスに並行して、画像形成装置1は、給送カセット20,21及び手差し給送部100のいずれかから1枚ずつシートPを給送する給送動作を実行する。給送カセット20,21は、装置本体1Aに対して引出可能に装着されており、主にA3サイズ等の定型サイズのシートPを収納するために使用される。手差し給送部100は、定型サイズだけでなく、定型サイズよりもシート搬送方向の長さが長いシートP等を使用する場合等、多目的に使用される。手差し給送部100については後述する。
【0015】
装置本体1Aには各給送カセット20,21に対応して給送ユニット22,22が設けられている。給送ユニット22は、給送カセット20又は21からシートPを送り出すピックアップローラと、ピックアップローラからシートPを受け取って搬送する分離ローラ対と、を備える。分離ローラ対は、ピックアップローラと同方向にシートPを搬送する搬送ローラと、搬送ローラに当接して配置され、搬送ローラと分離ローラの間のニップ部において摩擦力によってシートを分離する分離ローラと、を有する。分離ローラ対から1枚ずつ送り出されるシートPは、装置本体1A内の搬送路を介してレジストレーションローラ対23へ向けて搬送される。
【0016】
シートPの先端が停止状態のレジストレーションローラ対23に突き当てられることで、レジストレーションローラ対23のニップ部に倣ってシートPの斜行が補正される。その後、レジストレーションローラ対23は、画像形成部10における画像形成動作と同期してシートPを二次転写部に送り込む。
【0017】
二次転写部は、中間転写ベルト31を挟んで二次転写内ローラ34に対向する二次転写ローラ35と中間転写ベルト31との間に形成されるニップ部である。中間転写ベルト31に担持されているトナー像は、二次転写ローラ35が形成するバイアス電界により、二次転写部においてシートPに二次転写される。シートPに転写されずに中間転写ベルト31に残った転写残トナー等の、中間転写ベルト31上の付着物は、ドラムクリーナ15によって除去され、回収容器37に回収される。
【0018】
二次転写部を通過したシートPは、定着手段としての定着器40に送られる。定着器40は、シートPを挟持して加圧しながら搬送する定着ローラ対と、シートP上のトナー像を加熱するハロゲンランプ又はセラミックヒータ等の加熱手段とを有し、トナー像を加熱及び加圧する。これによりトナーが溶融し、その後固着することで、シートPに定着した定着画像が得られる。定着器40を通過したシートPは、排出ローラ対41によって装置本体1Aから排出され、排出トレイ50に積載される。
【0019】
なお、上述の画像形成部10は画像形成手段の一例であり、例えばインクジェット方式の印刷ユニットやオフセット印刷方式の印刷機構を画像形成手段として用いてもよい。
【0020】
[手差し給送部]
本実施例に係るシート給送装置である手差し給送部100は、装置本体1Aの側面部(
図1に示す画像形成時の主走査方向に見た状態で、水平方向における装置本体1Aの一方の側面部)に設けられている。手差し給送部100は、給送ユニット105と、手差しトレイ101と、後端支持トレイ103と、を含む。給送ユニット105は本実施例の給送手段であり、手差しトレイ101は本実施例の第1支持部材であり、後端支持トレイ103は本実施例の第2支持部材である。以下、給送ユニット105が装置本体1AにシートPを給送する際の搬送方向の(
図1の左方向)を「シート給送方向Fd」とする。特に断らない限り、シート給送方向Fdは鉛直方向及びシート幅方向に垂直な水平方向を指す。
【0021】
図2に示すように、手差しトレイ101は、装置本体1Aの側面1fに対してシート給送方向Fdの上流側(図中右側)に突出している。手差しトレイ101の上面101aは、シートPを支持する支持面であり、シート給送方向Fdの上流側に向かって鉛直方向上方に傾斜している。手差しトレイ101には、シート給送方向Fdに垂直なシート幅方向(
図2の奥行方向)に関するシートの端部位置(側端位置)を規制する側端規制部材として、シート幅方向に互いに対向する一対のサイド規制板102が設けられている。サイド規制板102は、手差しトレイ101の上面101aから上方に突出してシート給送方向Fdに延びる規制面を有し、規制面がシートPの側端と当接することで、手差しトレイ101におけるシートPのセット時の斜行及び給送途中での斜行を抑制する。
【0022】
給送ユニット105は、手差しトレイ101からシートPを送り出すピックアップローラ105aと、ピックアップローラ105aからシートPを受け取って搬送する分離ローラ対105bと、を備える。ピックアップローラ105aは、手差しトレイ101上のシートPの上面に当接して回転することでシートPをシート給送方向Fdに送り出す給送ローラとして機能する。分離ローラ対105bは、ピックアップローラ105aと同方向にシートPを搬送する搬送ローラと、搬送ローラに当接して配置され、搬送ローラと分離ローラの間のニップ部において摩擦力によってシートを分離する分離ローラと、を有する。なお、給送ユニット105はシートPを給送する給送手段の一例であり、例えばピックアップローラが省略され、搬送ローラが手差しトレイ101上のシートに当接して送り出す給送ローラとして機能する構成を用いてもよい。また、分離ローラはシートを分離する分離部材の一例であり、例えばパッド状の弾性部材を用いてもよい。
【0023】
分離ローラ対105bから1枚ずつ送り出されるシートPは、装置本体1Aの開口部108を介して装置本体1A内の引抜ローラ対106に搬送される。ここで、給送カセット20,21からのシートPの搬送経路と手差しトレイ101からのシートPの搬送経路とは、シート給送方向Fdにおける引抜ローラ対106の下流の合流部107で合流している。そのため、手差し給送部100から給送され、引抜ローラ対106から送り出されたシートPは、合流部107を経由してレジストレーションローラ対23へ向けて搬送される。
【0024】
後端支持トレイ103は、装置本体1Aの側面部に配置され、手差しトレイ101及びサイド規制板102の上方に設けられている。後端支持トレイ103は、ヒンジ104を介して装置本体1Aに回動可能に支持されている。以下、後端支持トレイ103が
図1に示す位置に保持されている状態を前提にして後端支持トレイ103の構成を説明する。
【0025】
図2に示すように、後端支持トレイ103は、装置本体1Aの側面1fに対してシート給送方向Fdの上流側に向かって突出するように設けられている。つまり、後端支持トレイ103は、上方から見て手差しトレイ101と重なるように手差しトレイ101の上方空間に張り出している。後端支持トレイ103の上面(面状でない部材の場合は上側の稜線部)は、手差しトレイ101の上面101aを第1の支持部としたときの第2の支持部として機能する。
【0026】
また、後端支持トレイ103は、装置本体1Aから遠い側の先端部に、手差しトレイ101に向かって傾斜した傾斜部1032が設けられている。本体部1031を第1領域としたときの第2領域である傾斜部1032は、後端支持トレイ103の主な支持面となる本体部1031に対してシート給送方向Fdの上流側に隣接している。傾斜部1032は、シート幅方向に見た状態で、本体部1031からシート給送方向Fdの上流側に引いた延長線の下方に向かうように本体部1031に対して屈曲形成された部分である。言い換えると、傾斜部1032は、
図2の状態でシート幅方向から見た場合に、シート給送方向Fdの上流に向かうほど手差しトレイ101に近づくように後端支持トレイ103の本体部1031に対して傾斜している。なお、本実施例の後端支持トレイ103は、本体部1031自身も、シート給送方向Fdの上流に向かうほど手差しトレイ101に近づくように、手差しトレイ101の上面101aに対して傾斜した方向に延びている。
【0027】
傾斜部1032は、シートPを給送する際に後端支持トレイ103の先端部103aにシートPが摺擦することによる接触痕の発生を抑制する作用がある。即ち、給送ユニット105による給送動作に伴って、シートPの折り返し部(先行部PLと後行部PTとの間でシートPが略U字状に湾曲している部分)の余裕が小さくなり、シートPは後端支持トレイ103の先端部103aと接触しながら移動する。このとき、シートPとして薄紙のような剛性が低いシートを使用している場合に、シートPが先端部103aと強く接触してシートPに接触痕が残る可能性が考えられる。これに対し、本実施例では、先端部103aだけでなく本体部1031と傾斜部1032との接続部である曲げ部103bにも摺擦負荷が分散するため、接触痕の発生が抑制される。
【0028】
本実施例の手差し給送部100は、定型サイズより長い長尺シートをセットする場合、
図1に示すようにシートPを折り返した状態で手差しトレイ101及び後端支持トレイ103に支持させる設計となっている。つまり、長尺シートのセット状態において、シートPの先端側の部分(第1部分)である先行部PLは手差しトレイ101に支持され、シートPの後端側の部分(第2部分)である後行部PTは、後端支持トレイ103に支持される。
【0029】
ここで、シートPの先端Paとは、シートPの周縁のうち、給送ユニット105によって給送されるときの先頭となる端部を指し、シートPの後端Pbとは、先端Paとは反対側の端部を指す。言い換えると、手差し給送部100からシートPが給送される場合、先行部PLは後行部PTに先行して装置本体1A内の搬送路に送り込まれる。なお、先行部PLと後行部PTの位置関係は相対的なものであり、先行部PLと後行部PTの面積の比率は特に定めない。
【0030】
本実施例では、長尺シートは先行部PLと後行部PTとの間で略U字状に折り返された状態で手差しトレイ101及び後端支持トレイ103に支持される。そのため、手差しトレイ101が支持するシートPの面(手差しトレイ101上におけるシートPの下面)を第1面とするとき、後端支持トレイ103はシートPの第1面とは反対の第2面を支持する。
【0031】
長尺シートの後行部PTを後端支持トレイ103に支持させることで、手差し給送部100は安定したシート給送動作を行うことができる。即ち、例えば長尺シートの後行部PTが手差しトレイ101から図中右側に垂れ下がっていると、シートPが重力によって落下又は斜行したり、給送時にシートPが手差しトレイ101の端部と擦れてジャム等の搬送不良が生じる可能性がある。長尺シートの後行部PTを後端支持トレイ103に支持させることで、セット時及び給送時における長尺シートの姿勢が安定し、上述したような不都合の発生が抑制される。
【0032】
[シート中腹部の浮上]
ここで、シート給送時に手差しトレイ101からシートの中腹部が浮き上がる現象について説明する。
図2に示す状態では、手差し給送部100には複数枚のシートP1,P2,…からなるシート束Pnがセットされ、手差しトレイ101上の最上位シートであるシートP1の給送が行われている途中の状態を示している。
【0033】
本実施例では、長尺シートは手差しトレイ101と後端支持トレイ103との間で略U字状に折り返された状態で手差しトレイ101及び後端支持トレイ103に支持される。そのため、手差しトレイ101における最上位のシートP1は、後端支持トレイ103においては最下位のシートとなり、他のシートの重量によって後端支持トレイ103に押し付けられている。
【0034】
そのため、シートP1が給送ユニット105によって手差しトレイ101からシート給送方向Fdに送り出されていくとき、シートP1の後端Pbは後端支持トレイ103から受ける摩擦力によってすぐには移動を開始しない場合がある。その代わりに、手差しトレイ101と後端支持トレイ103との間のシートP1の折り返し部の半径が小さくなるようにシートP1の形状が変化していく(矢印B)。これに伴って、手差しトレイ101においてはシートP1が手差しトレイ101の上面101aから離れるように浮き上がっていく。
【0035】
その後、シートP1の剛性により折り返し部が伸びようとする際にシートP1の後端Pbを図中右側に移動させようとする力が後端支持トレイ103からの摩擦力に打ち克つと、後端Pbが矢印Cの方向に移動を開始する。又は、折り返し部の半径が小さくなってシートP1が後端支持トレイ103の先端部103aに接触し、折り返し部を介して給送ユニット105の搬送力が後端側に伝わることで、後端Pbが矢印Cの方向に移動を開始する。シートP1の後端Pbが後端支持トレイ103の先端部103aを通過すると、後端Pbは手差しトレイ101に降下し、手差しトレイ101に沿ってシート給送方向Fdの下流に移動する。
【0036】
上記のように、長尺シートを手差しトレイ101から給送する場合に、給送動作の途中でシートP1の中腹部が浮き上がると、シートP1の側端がサイド規制板102の規制面から逸脱し、シートP1の斜行が生じる可能性があった。
【0037】
なお、シート束Pnの枚数が多く、また、シートが長いほど、シートP1と後端支持トレイ103との間に生じる摩擦力は大きくなるため、シートP1の中腹部の浮き上がりは生じやすくなる。このような場合、ピックアップローラ105aのシートP1に対する接触位置105aPと、後端支持トレイ103の先端部103aとの間でシートP1が直線状に張った状態となるまでシートP1が浮き上がることが考えられる。
【0038】
そこで、本実施例では、後端支持トレイ103の先端部103aとサイド規制板102を所定の位置関係とすることで、シートP1の浮き上がりが生じても斜行の発生を抑制できるようにしている。以下、シート幅方向から見た手差し給送部100の部材の位置関係を説明する。
【0039】
図2において、後端支持トレイ103の先端部103aと、ピックアップローラ105aのシートP1との接触位置105aPを結んだ仮想線より上方側の領域をE領域とする。本実施例のサイド規制板102は、規制面の上端がE領域に突出するように配置されている。言い換えると、サイド規制板102の規制面の内、手差しトレイ101上におけるシートP1の移動方向(矢印X)における上流側の上端部102aがE領域に位置する。手差しトレイ101上におけるシートP1の移動方向とは、手差しトレイ101の上面101aに沿ってシートP1が給送ユニット105に向かって移動する方向を指す。この構成により、仮にピックアップローラ105aの接触位置105aPと後端支持トレイ103の先端部103aとの間でシートP1が張った状態となっても、サイド規制板102のE領域に突出している部分がシートP1の側端位置を規制できる。従って、シートP1の浮き上がりによる斜行の発生を抑制可能である。
【0040】
また、
図2において、手差しトレイ101上におけるシートP1の移動方向(矢印X)に関して、後端支持トレイ103の先端部103aより下流側の領域をD領域とする。本実施例のサイド規制板102は、規制面の上端部102aがD領域に位置するように配置されている。この構成によると、サイド規制板102の上端部102aよりも上流側で、シートP1は後端支持トレイ103の先端部103aに抑え込まれながら搬送されるため、斜行の抑制作用が問題なく得られる。また、斜行を抑制するためにサイド規制板102を必要以上に長くする必要がないことから、手差しトレイ101の構成を簡略化することが可能である。
【0041】
また、本実施例では、後端支持トレイ103に本体部1031と傾斜部1032とを設けて、手差しトレイ101に近づくように傾斜した傾斜部1032の先端を先端部103aとしている。この傾斜部1032は、シートP1の接触痕を抑制する作用に加えて、シートP1の斜行を抑制することに貢献している。
【0042】
本実施例のようにシート幅方向に互いに対向する1対のサイド規制板102を使用する場合、各サイド規制板102の上端部102aが上述の位置関係を満たしていることが好ましい。
【0043】
なお、サイド規制板102を手差しトレイ101上におけるシートP1の移動方向の上流側に延長して、サイド規制板102の上端部102aが、後端支持トレイ103の先端部103aよりも上流(D領域とは反対側の領域)に位置する構成としてもよい。つまり、シート幅方向から見て、後端支持トレイ103の先端部103aがサイド規制板102の規制面とオーバーラップする構成である。この場合も、サイド規制板102の上端部102aがE領域に位置していれば、シートP1の浮き上がりが生じたとしてもシートP1の斜行を抑制できる。
【0044】
また、後端支持トレイ103として、傾斜部1032を有しておらず、シート幅方向から見て略直線状の部材を用いてもよい。その場合も、後端支持トレイ103の先端部がサイド規制板102の上端部102aに対して所定の位置関係を満たすように配置することで、シートの斜行を抑制することが可能である。
【実施例2】
【0045】
続いて、実施例2に係る手差し給送部100の構成を説明する。本実施例は、後端支持トレイ103の先端部103aとサイド規制板102の上端部102aとが満たすべき位置関係が異なっている。以下、実施例1と共通の符号を付した要素は、実施例1と実質的に同様の構成及び作用を有するものとして説明する。
【0046】
図3において、鉛直方向に関して後端支持トレイ103の先端部103aより上方側の領域をF領域とする。本実施例のサイド規制板102は、規制面の上端がF領域に突出するように配置されている。言い換えると、サイド規制板102の規制面の内、シ手差しトレイ101上におけるシートP1の移動方向(矢印X)における上流側の上端部102aがF領域に位置する。この構成により、仮にピックアップローラ105aの接触位置105aPと後端支持トレイ103の先端部103aとの間でシートP1が張った状態となっても、サイド規制板102のF領域に突出している部分がシートP1の側端位置を規制できる。従って、シートP1の浮き上がりによる斜行の発生を抑制可能である。
【0047】
また、
図3において、手差しトレイ101上におけるシートP1の移動方向(矢印X)に関して、後端支持トレイ103の先端部103aより下流側の領域をD領域とする。本実施例のサイド規制板102は、規制面の上端部102aがD領域に位置するように配置されている。この構成により、サイド規制板102の上端部102aよりも上流側において、シートP1が後端支持トレイ103の先端部103aによって手差しトレイ101に向かって抑え込まれながら搬送される。
【0048】
なお、実施例1と同様に、サイド規制板102を手差しトレイ101上におけるシートP1の移動方向の上流側に延長して、サイド規制板102の上端部102aが、後端支持トレイ103の先端部103aよりも上流に位置する構成としてもよい。
【0049】
(その他の実施形態)
上記の実施例1,2は、サイド規制板102と後端支持トレイ103が満たすべき位置関係が異なっているが、1つの手差し給送部100が実施例1,2の位置関係を同時に満たすことが可能である。
【0050】
上記の実施例1,2及びその変形例では、画像形成装置1の装置本体1Aの側面部に配置されるシート給送装置について説明したが、本技術は、他のシート給送装置にも適用可能である。例えば、画像形成部を収容した装置本体1Aに連結され、装置本体1Aに向けてシートを給送するオプションフィーダの筐体の側面部に上述した実施形態のシート給送装置を配置してもよい。この場合、シート給送装置から給送されるシートは、オプションフィーダの筐体に受け入れられ、筐体内のシート搬送路を介して装置本体1Aに給送される。
【符号の説明】
【0051】
1…画像形成装置/1A…筐体(装置本体)/100…シート給送装置(手差し給送部)/101…第1支持部材(手差しトレイ)/102…側端規制部材(サイド規制板)/103…第2支持部材(後端支持トレイ)/103a…先端部/1031…第1領域(本体部)/1032…第2領域(傾斜部)/105…給送手段(給送ユニット)/105a…給送ローラ(ピックアップローラ)/Fd…シート給送方向/PL…シートの第1部分/PT…シートの第2部分/Pa…シートの先端/Pb…シートの後端/X…移動方向