(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】水素ガス製造設備および水素ガス製造方法
(51)【国際特許分類】
C25B 15/00 20060101AFI20240701BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240701BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240701BHJP
【FI】
C25B15/00 302
C25B1/04
C25B9/00 A
(21)【出願番号】P 2020069711
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】安井 信一
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-056397(JP,A)
【文献】特開2004-192889(JP,A)
【文献】特開2015-113496(JP,A)
【文献】特開2020-007592(JP,A)
【文献】特開2019-210529(JP,A)
【文献】特開2019-203174(JP,A)
【文献】特開2011-225964(JP,A)
【文献】特開2019-148001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電気分解して水素ガスを発生する水電解装置部と、該水電解装置部を収容する収容空間を外部空間と区分する壁部とを有する水素ガス製造設備であって、
前記水電解装置部には運転時に発熱する少なくとも1つの発熱機器が備えられ、
前記壁部には、前記収容空間の空気を排気することによって該収容空間の熱を前記外部空間に排出するための換気口が設けられ、且つ、前記換気口には、第1換気口と、前記発熱機器からの距離が第1換気口よりも遠い第2換気口とが含まれており、
前記第1換気口からの排気によって前記収容空間と前記外部空間との換気が行われる第1の換気モードと、前記第2換気口からの排気によって前記換気が行われる第2の換気モードとに切り替えが可能であ
り、
保温対象水を備え
前記第2の換気モードでは、前記発熱機器から前記第2換気口へと向かう気流が形成され、前記保温対象水の少なくとも一部が該気流の通る位置に配される水素ガス製造設備。
【請求項2】
前記第1の換気モードと前記第2の換気モードとのそれぞれで前記収容空間を横切る気流が形成されるように構成されており、
前記第2の換気モードでは、前記第1の換気モードでの前記気流の向きとは逆向きの気流が前記収容空間に形成される請求項1記載の水素ガス製造設備。
【請求項3】
前記壁部が前記収容空間を挟んで対向する第1側壁と第2側壁とを備え、前記第1換気口が第1側壁に備えられ、前記第2換気口が第2側壁に備えられている請求項1
又は2に記載の水素ガス製造設備。
【請求項4】
前記水電解装置部には、電力が供給されて水が電気分解される電解セルと、該電解セルに供給する前記電力の整流が行われる整流器とが備えられ、
前記第2換気口よりも前記第1換気口に近い位置に設けられている前記発熱機器が前記整流器であ
り、
前記整流器が水冷式で、前記保温対象水の少なくとも一部が該整流器での熱交換によって加熱された冷却液で加熱されるように配される請求項1
乃至3の何れか1項に記載の水素ガス製造設備。
【請求項5】
水を電気分解して水素ガスを発生する水電解装置部と、該水電解装置部を収容する収容空間を外部空間と区分する壁部とを有する水素ガス製造設備であって、
前記水電解装置部には運転時に発熱する少なくとも1つの発熱機器が備えられ、
前記壁部には、前記収容空間の空気を排気することによって該収容空間の熱を前記外部空間に排出するための換気口が設けられ、且つ、前記換気口には、第1換気口と、前記発熱機器からの距離が第1換気口よりも遠い第2換気口とが含まれており、
前記第1換気口からの排気によって前記収容空間と前記外部空間との換気が行われる第1の換気モードと、前記第2換気口からの排気によって前記換気が行われる第2の換気モードとに切り替えが可能であり、
前記水電解装置部には、電力が供給されて水が電気分解される電解セルと、該電解セルに供給する前記電力の整流が行われる整流器とが備えられ、
前記第2換気口よりも前記第1換気口に近い位置に設けられている前記発熱機器が前記整流器で、
前記整流器が、前記第1換気口に向けて排気を行う第1排気口と、前記第2換気口に向けて排気を行う第2排気口とを備え、該第2排気口を開閉するシャッターをさらに備えてい
る水素ガス製造設備。
【請求項6】
水を電気分解して水素ガスを発生する水電解装置部と、該水電解装置部を収容する収容空間を外部空間と区分する壁部とを有する水素ガス製造設備で水素ガスを製造する水素ガス製造方法であって、
前記水電解装置部には運転時に発熱する少なくとも1つの発熱機器が備えられ、
前記壁部には、前記収容空間の空気を排気することによって該収容空間の熱を前記外部空間に排出するための換気口が設けられ、且つ、前記換気口には、第1換気口と、前記発熱機器からの距離が第1換気口よりも遠い第2換気口とが含まれており、
前記第1換気口からの排気によって前記収容空間と前記外部空間との換気が行われる第1の換気モードと、前記第2換気口からの排気によって前記換気が行われる第2の換気モードとを切り替え、且つ、前記第2の換気モードでの換気を前記第1の換気モードよりも前記外部空間の気温が低い状況で実施する水素ガス製造方法。
【請求項7】
前記第2の換気モードでの換気を複数のサブモードで実施し、
該複数のサブモードには、少なくとも1つのサブモードよりも単位時間当たりの換気量が多い高換気サブモードと、該高換気サブモードよりも単位時間当たりの換気量が少ない低換気サブモードとが含まれている請求項
6記載の水素ガス製造方法。
【請求項8】
前記低換気サブモードでの換気を、前記高換気サブモードよりも前記外部空間の温度が低い状況で実施する請求項
7記載の水素ガス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水が電気分解されて水素ガスが発生する水電解装置部を備えた水素ガス製造設備と、このような設備を利用して水素ガスを製造する水素ガス製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンなエネルギー源として水素ガスを利用する機会が広がっており、このような水素ガスを得るための方法としては、水を電気分解する方法が広く知られている。
このような水の電気分解を利用した水素ガスの製造設備について、従来、下記特許文献1、2に示されているように配管等での凍結を防止することが検討されている。
【0003】
下記特許文献1によって開示された発明では、加熱装置を用いて筐体内の空気の加熱が行われて凍結防止が図られている。
しかしながら、前記加熱装置は、本来、通常の運転時には不必要なものであり凍結防止のために多くのエネルギー消費が必要になるおそれがある。
【0004】
下記特許文献2(特に段落0032等参照)によって開示された発明では、エア排出配管がエアブロアでエアブローされることで該エア排出配管での凍結が防止されている。
該発明では、エアブロアの排熱が有効利用されているもののエア排出配管という特定部位での凍結防止以外には排熱を有効活用し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-210529号公報
【文献】特開2015-113496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、運転時に発生する熱を必要に応じて凍結防止に有効活用したりすることが可能な水素ガス製造設備を提供し、良好な環境で水素ガス製造設備を運転して水素ガスを製造することができる水素ガス製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本発明は、
水を電気分解して水素ガスを発生する水電解装置部と、該水電解装置部を収容する収容空間を外部空間と区分する壁部とを有する水素ガス製造設備であって、
前記水電解装置部には運転時に発熱する少なくとも1つの発熱機器が備えられ、
前記壁部には、前記収容空間の空気を排気することによって該収容空間の熱を前記外部空間に排出するための換気口が設けられ、且つ、前記換気口には、第1換気口と、前記発熱機器からの距離が第1換気口よりも遠い第2換気口とが含まれており、
前記第1換気口からの排気によって前記収容空間と前記外部空間との換気が行われる第1の換気モードと、前記第2換気口からの排気によって前記換気が行われる第2の換気モードとに切り替えが可能である水素ガス製造設備、を提供する。
【0008】
上記課題を解決すべく本発明は、
水を電気分解して水素ガスを発生する水電解装置部と、該水電解装置部を収容する収容空間を外部空間と区分する壁部とを有する水素ガス製造設備であって、
前記水電解装置部には運転時に発熱する少なくとも1つの発熱機器が備えられ、
該発熱機器で発生した熱によって加熱される熱媒体を有し、
前記熱によって加熱された前記熱媒体を冷却するための熱交換器として第1熱交換器と第2熱交換器とを含む複数の熱交換器を有し、
該複数の熱交換器の内、前記第1熱交換器が前記収容空間で熱交換して前記熱媒体を冷却し得るように配され、前記第2熱交換器は、前記収容空間における前記第1熱交換器とは異なる箇所で熱交換するか、又は、前記外部空間で熱交換して前記熱媒体を冷却し得るように配されており、
前記第1熱交換器によって熱交換する第1の熱交換モードと、前記第2熱交換器によって熱交換する第2の熱交換モードとに切り替えが可能である水素ガス製造設備、を提供する。
【0009】
上記課題を解決すべく本発明は、
水を電気分解して水素ガスを発生する水電解装置部と、該水電解装置部を収容する収容空間を外部空間と区分する壁部とを有する水素ガス製造設備で水素ガスを製造する水素ガス製造方法であって、
前記水電解装置部には運転時に発熱する少なくとも1つの発熱機器が備えられ、
前記壁部には、前記収容空間の空気を排気することによって該収容空間の熱を前記外部空間に排出するための換気口が設けられ、且つ、前記換気口には、第1換気口と、前記発熱機器からの距離が第1換気口よりも遠い第2換気口とが含まれており、
前記第1換気口からの排気によって前記収容空間と前記外部空間との換気が行われる第1の換気モードと、前記第2換気口からの排気によって前記換気が行われる第2の換気モードとを切り替え、且つ、前記第2の換気モードでの換気を前記第1の換気モードよりも前記外部空間の気温が低い状況で実施する水素ガス製造方法、を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水素ガス製造設備では、発熱機器の排熱が設備内の加温に有効利用されて凍結の防止が図られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る水素ガス製造設備の外観の状況を示した概略正面図。
【
図2】一実施形態に係る水素ガス製造設備の内部の装置類の配置を示した概略正面図。
【
図3】第1の換気モードで換気を行なう例を示した概略正面図。
【
図4】第1の換気モードで換気を行なう別の例を示した概略正面図。
【
図5】第2の換気モードで換気を行なう例を示した概略正面図。
【
図6】第2の換気モードで換気を行なう別の例を示した概略正面図。
【
図7】別の実施形態に係る水素ガス製造設備の内部の装置類の配置を示した概略正面図。
【
図8】蓄熱装置を備えた設備での態様(蓄熱時の状態(a)、蓄えた熱の利用時の状態(b))を示した概略図。
【
図9】蓄熱装置を備えた別の設備での態様(蓄熱時の状態(a)、蓄えた熱の利用時の状態(b))を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態に係る水素ガス製造設備および水素ガス製造方法について説明する。
まず、第1の実施形態に係る水素ガス製造設備について説明する。
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態の水素ガス製造設備は、水が電気分解されて水素ガスが発生する水電解装置部と、該水電解装置部を収容する収容空間を外部空間と区分する壁部とを有する。
本実施形態での水素ガス製造設備は、キャスターなどを備えた可搬型のものであっても、そのままの状態では移動できない据付型のものであってもよい。
水素ガス製造設備が可搬型である場合、前記壁部は、“筐体”などと称されるもので構成されてもよい。
水素ガス製造設備が据付型である場合、前記壁部は、“筐体”などと称されるもので構成されてもよく、建物の部屋を構成するコンクリート構造体などのようなものであってもよい。
【0014】
以下においては屋外設置される据付型の一例を示し、図を参照しつつ水素ガス製造設備の一例について説明する。
図1、2に例示している本実施形態の水素ガス製造設備100は、横長な直方体形状を有している。
なお、以下においては、
図1、2における左右方向(図中のX方向)を水素ガス製造設備100の“左右方向”、“幅方向”、“横方向”などと称することがある。
また、以下においては、上下方向(図中のY方向)を水素ガス製造設備100の“上下方向”、“高さ方向”、“垂直方向”などと称することがある。
さらに、以下においては、図中のX方向とY方向とのそれぞれに直交する
図1、2における奥行方向を水素ガス製造設備100の“奥行方向”、“前後方向”などと称することがある。
【0015】
本実施形態の水素ガス製造設備100の前記壁部10は、前記直方体形状の辺に沿って延在し、前記壁部10の骨組みとなるフレーム11と、該フレーム11に取り付けられた複数枚の壁パネル12とを備えている。
前記フレーム11は、直方体の底面を画定する長方形の4辺に対応するように配された4本の基礎梁11aと、前記底面の4つの角からそれぞれ立ち上る4本の柱11bと、直方体の上面を画定する長方形の4辺に対応するよう配されて前記柱11bの上端部どうしを連結する4本の天井梁11cとを備えている。
【0016】
前記底面を画定する長方形の長辺には、両端に配された2本の前記柱11bとは別に補助柱11dがさらに備えられている。
前記フレーム11で前記補助柱11dは、前後方向で対向する2本の前記長辺の途中位置において立ち上るように配されている。
前記補助柱11dは、前後方向で対になるように配されて、一又は複数の対をなして前記フレーム11に備えられている。
前記フレーム11には、2本の補助柱11dの下端部どうしを連結する補助梁11eと前記補助柱11dの上端部どうしを連結する補助梁(図示せず)とがさらに備えられている。
【0017】
前記壁部10における前記壁パネル12は、前記フレーム11に対して着脱自在となるように該フレーム11の外側に取り付けられている。
前記壁パネル12は、前記壁部10の側壁を構成する側壁パネル12aと、天井壁を構成する天井パネル12bと、底壁を構成する底パネル12cとを備えている。
【0018】
本実施形態の水素ガス製造設備100は、前記壁部10の内側に当該壁部10よりも一回り小さな横長直方体形状の前記収容空間を有している。
即ち、本実施形態の水素ガス製造設備100での前記収容空間は、水平方向における第1の方向(
図1、2のX方向)が長手方向となるように形成され、水平方向において該第1の方向と直交する方向(奥行方向)が短手方向となるように形成されている。
【0019】
前記側壁パネル12aは、前記収容空間の長手方向両端に位置し、該収容空間を挟んで対向する前記壁部10の第1側壁と第2側壁とをそれぞれ構成するサイドパネル12asを備え、前記収容空間の短手方向両端に位置し、該収容空間を挟んで対向する第3側壁と第4側壁とをそれぞれ構成するフロントパネル12af及びバックパネル12abをさらに備えている。
より詳しくは、前記側壁パネル12aは、
図1、
図2において正面視左側の第1側壁を構成する第1サイドパネル12as1と、正面視右側の第2側壁を構成する第2サイドパネル12as2とを備えている。
前記側壁パネル12aは、また、前記第3側壁を構成すべく前記フレーム11に前面側から取り付けられたフロントパネル12afと、前記第4側壁を構成すべく前記フレーム11に背面側から取り付けられたバックパネル12abとを備えている。
【0020】
該収容空間の長手方向両端に位置し、且つ、該長手方向において対向するように配された2つの前記サイドパネル12asのそれぞれには、前記壁部10の内側の前記収容空間と前記壁部10の外側の外部空間とを連通し、前記外部空間と前記収容空間との間での換気を行なうための換気口が設けられている。
即ち、本実施形態の前記壁部10には前記外部空間と前記収容空間との間で換気を行うために複数の換気口13が設けられている。
本実施形態での複数の換気口は、一換気口で排気することによって他換気口で給気が行われて前記換気が行われ得るように備えられている。
後述するように本実施形態の前記水電解装置部20には、運転状態にある際に発熱を生じる発熱機器が備えられている。
本実施形態の水素ガス製造設備100では、前記発熱機器によって収容空間に生じた熱が前記複数の換気口13での前記換気に際して前記外部空間に排出される。
【0021】
本実施形態の水素ガス製造設備100は、
図1、2での正面視左側の上部に設けられた第1換気口13aと、該第1換気口13aとは前記収容空間を介して反対側に設けられた第2換気口13bとを含む複数の換気口13を備えている。
即ち、前記第1換気口13aは、前記第1サイドパネル12as1に設けられており、前記第2換気口13bは、前記第2サイドパネル12as2に設けられている。
尚、前記第1換気口13aが第1サイドパネル12as1の上部側に配されているのに対して前記第2換気口13bは、前記第2サイドパネル12as2の下部側に配されている。
本実施形態の前記壁部10には前記第1換気口13aや前記第2換気口13bとは別に第3換気口13cがさらに設けられており、前記第3換気口13cは、前記第1換気口13aが設けられている前記第1サイドパネル12as1に備えられている。
【0022】
本実施形態の水素ガス製造設備100は、前記収容空間の気温を必要に応じて上昇させることができるようにエアコンデショナー30を備えており、前記第1換気口13a、及び、前記第3換気口13cが設けられている前記第1サイドパネル12as1には、前記エアコンデショナー30の吸気口と排気口とがさらに設けられている。
即ち、本実施形態のエアコンデショナー30は、収容空間の長手方向において前記第2換気口13bと対向する位置において収容空間の気温を上昇させ得るように配されている。
【0023】
本実施形態の水素ガス製造設備100の前記壁部10には、前記第1換気口13a、前記第2換気口13b、及び、前記第3換気口13cを開閉するシャッター14が備えられている。
具体的には、本実施形態の水素ガス製造設備100は、前記第1換気口13aを開状態と閉状態とに切り替え可能な第1シャッター14aと、前記第2換気口13bを開状態と閉状態とに切り替え可能な第2シャッター14bと、前記第3換気口13cを開状態と閉状態とに切り替え可能な第3シャッター14cとの3つのシャッター14を備えている。
【0024】
本実施形態の水素ガス製造設備100は、前記第2換気口13bを通じて外部空間の空気を設備内に取り入れるための第2送風ファン15bと、前記第3換気口13cを通じて外部空間の空気を設備内に取り入れるための第3送風ファン15cとを備えている。
本実施形態では前記第2送風ファン15bが前記第2換気口13bと隣り合うように配されており、前記第3送風ファン15cが前記第3換気口13cと隣り合うように配されている。
一方で前記第1換気口13aについては、隣り合うようにファンが配されてはいない。
【0025】
前記第2換気口13bと前記第3換気口13cとが前記収容空間の中で前記水電解装置部20を構成する装置類が占有しているスペース以外の余剰空間に対して前記壁部10の内側で連通しているのに対して前記第1換気口13aは、後述するように前記整流器21の排気口から延びるダクトDPが接続されており、該整流器21の内部空間を通じて整流器21の周囲の空間と連通した状態になっている。
【0026】
本実施形態の水素ガス製造設備100の前記壁部10には、前記水電解装置部20を構成する装置類の1つであって且つ前記発熱機器である整流器21が備えられている。
該整流器21は、冷却ファン21bを備えており、前記第1換気口13aからの排気に該冷却ファン21bを利用できるようになっている。
【0027】
本実施形態の水素ガス製造設備100の水電解装置部20は、整流器以外にも複数の装置類を備え、該装置類の多くが前記底パネル12cの上面に搭載される形で前記壁部10の内側に収容されている。
【0028】
前記水電解装置部20は、電力が供給されて水が電気分解され、陽極側で酸素ガスが発生するとともに陰極側で水素ガスが発生する電解セルを備えた電解装置22を有している。
本実施形態の水電解装置部20は、前記電解装置22に直流電力を供給するための前記整流器21、前記電解装置22に供給する純水を製造する純水製造装置23、該純水製造装置23で作製された純水を貯留する純水タンク24などを有している。
前記純水製造装置23は、原料水供給経路WLを通じて水素ガス製造設備100に外部から供給された水に含まれる不純物を除去するためのろ過装置やイオン交換器などを有している。
【0029】
前記整流器21は、空冷式であっても水冷式であってもよい。
尚、本実施形態での整流器21は、空冷式であり、水冷式のものを用いる事例については後段において説明する。
該整流器21は、筐体21aと、該筐体21aの内側に収容されている半導体素子(図示せず)と、前記筐体21aの内部に上向流となる気流を生じさせて前記半導体素子を冷却する冷却ファン21bとを備えている。
【0030】
前記筐体21aは、前記冷却ファン21bによって上向流が生じたときの吸気口となる複数のスリット21xを下端部に備えている。
前記筐体21aは、上端部に排気口を複数備えており、複数の前記排気口の内の第1排気口21yが前記第1サイドパネル12as1に向かって開口しており、第2排気口21zが前記第2サイドパネル12as2に向かって開口している。
前記整流器21には、前記第2排気口21zを開状態と閉状態とに切り替えるためのシャッター21zaが備えられている。
【0031】
前記整流器21の筐体21aに設けられた前記第1排気口21yは、前記ダクトDPによって前記第1換気口13aと接続されている。
前記ダクトDPの先に配された第1換気口13aが前記の通り前記第1シャッター14aによって開閉自在となっているため、本実施形態の整流器21は、前記上向流となって前記半導体素子を冷却した後の温暖な排気を、前記ダクトDPを通じて前記第1換気口13aから外部空間に排気する外部排気状態と、前記第2排気口21zを通じて設備内に排気する内部排気状態とに切り替え可能になっている。
【0032】
前記ダクトDPの長さが長くなると前記外部排気状態での圧損が大きくなる。
そこで、前記整流器21は、前記収容空間の長手方向の中央部よりも前記第1サイドパネル12as1に近い位置に配されている。
即ち、本実施形態の前記整流器21は、第1換気口13aに比べて第2換気口13bまでの距離が遠くなるように配されている。
前記ダクトDPは、例えば、その長さが2m以下とされる。
前記ダクトDPの長さは、1m以下であっても、50cm以下であってもよい。
【0033】
前記整流器21によって電力供給を受けて水の電気分解を行う前記電解セルは、陰極と陽極とを有し、前記電気分解によって陰極側に水素ガスを発生させるとともに陽極側に酸素ガスを発生させるものであり、陽極側に純水を流通させ、電解により酸素ガスと水素イオンとを生成し、水素イオンを当該陽極側から陰極側へと移動させ、陰極側にて水素ガスを発生させるよう構成されている。
従って、本実施形態における前記電解セルは、陽極側から相対的に大量の水とともに酸素ガスを排出し、陰極側から相対的に少量の水とともに水素ガスを排出するものとなっている。
【0034】
本実施形態の水素ガス製造設備100での前記水電解装置部20には、前記純水を陽極側で循環させるための水循環ポンプ25と、前記電解セルの陽極側から排出される酸素ガスと純水との気液混合液を気液分離するための気液分離器26と、前記水循環ポンプ25によって循環される純水に含まれているイオンを除去するためのポリッシャー27と、これらを通るように純水の循環経路を形成するための水配管L1などがさらに備えられされている。
【0035】
本実施形態の前記水電解装置部20には、前記電解装置22で製造された水素ガスから水分を除去するための装置類がさらに備えられており、前記電解セルの陰極側から排出される水素ガスを冷却して水蒸気の状態で含まれている水分を凝縮水とするための熱交換器28と、該熱交換器28で冷却された後の水素ガスから前記凝縮水などの水分を除去するための気液分離器29と、該気液分離器29で水分が除去された後の水素ガスからさらに水分を除去すべく吸着剤を使った除湿処理が行われる除湿装置DCとがさらに備えられている。
【0036】
前記除湿装置DCは、ゼオライトなどの水分吸着剤(図示せず)と、水分吸着剤を高温(例えば、200℃以上)に加熱して吸着した水分を水分吸着剤から放出させて水分吸着剤の再生を行うヒーター(図示せず)とを備えた吸着筒DCaを有している。
本実施形態の前記水電解装置部20には、陰極側の気液分離器29から前記除湿装置DCを通って設備外まで水素ガスを搬送するための水素ガス配管L2が設置されている。
【0037】
本実施形態の前記水電解装置部20には、陽極側の気液分離器26で分離された後の酸素ガスを設備外まで搬送するための酸素ガス配管L3がさらに備えられている。
【0038】
尚、本実施形態の水素ガス製造設備100は、前記水素ガス配管L2で壁部10まで搬送された水素ガスをユースポイントまで搬送するための水素排出経路HLと、前記酸素ガス配管L3で壁部10まで搬送された酸素ガスを系外に排出するための酸素排出経路OLと、前記電気分解を行うための水を外部から供給するための原料水供給経路WLとが接続された状態で屋外に据え付けられる。
本実施形態の水素ガス製造設備100では、冬期などにおける水の凍結を防止すべく前記整流器21の排熱が有効利用される。
【0039】
前記の通り、前記整流器21の第2排気口21zは、前記第2換気口13bを備えた第2サイドパネル12as2に向かって開口している。
そして、本実施形態の水素ガス製造設備100では、前記整流器21(第2排気口21z)と前記第2サイドパネル12as2(第2換気口13b)との間には、水やガスが流通する配管(水配管L1、水素ガス配管L2、酸素ガス配管L3)の少なくとも一部が配されている。
尚、本実施形態では前記第2排気口21zが前記第2換気口13bよりも高い位置に設定されており、前記配管の少なくとも一部は、前記第2換気口13bと前記第2排気口21zとの中間の高さに位置している。
【0040】
本実施形態における水素ガス製造設備100には、上記の通り電気分解を行うための水が備えられている。
水素ガス製造設備100には、電気分解後の水素ガスや酸素ガスにミストや水蒸気となって含まれている水も少量ではあるが存在する。
該水素ガスや酸素ガスに含まれている水は、通常、凝縮水として系外に排出されたり電気分解を行うための水として再利用されたりする。
また、水素ガス製造設備100の陰極側と陽極側とのそれぞれからは、上記のような凝縮水以外にも水が系外に排出される場合がある。
【0041】
上記の通り水素ガス製造設備100には、電気分解される水、及び、電気分解されずに系外(設備外)に排出される水が存在し、後段において詳述するように本実施形態の水素ガス製造設備100では、これらの水が凍結防止の対象となる対象水(以下「保温対象水」などともいう)となって前記排熱による凍結防止が行われる。
【0042】
該水素ガス製造設備100を用いた水素ガス製造方法について説明する。
本実施形態の水素ガス製造設備100では、外部より供給された電力が前記整流器21において直流となるように整流され、該整流された電力が前記電解装置22の電解セルに供給され、該電解セルでの電気分解によって水が分解されて水素ガスが製造され、該水素ガスに含まれている水が前記気液分離器29や前記除湿装置DCを経由することで取り除かれて十分露点の低い状態となった水素ガスが前記水素排出経路HLを通じてユースポイントへと供給される。
【0043】
本実施形態の水素ガス製造設備100では、電解装置22で水素ガスを発生させている時や、電解装置22が休転しているものの他の装置類が運転されている時などに所定の換気が実施される。
本実施形態の水素ガス製造設備100では、前記第1換気口13aから排気がされて前記収容空間において発生した熱の排出が前記第1換気口13aを使って行われる第1の換気モードと、前記第2換気口から前記熱の排出が行われる第2の換気モードとが切り替え可能になっている。
【0044】
本実施形態の水素ガス製造設備100では、前記整流器21の排熱を保温対象水の凍結防止に有効活用することが求められる場合には、第2の換気モードでの換気が行われる。
そのため、本実施形態の水素ガス製造方法では前記第2の換気モードでの換気を前記第1の換気モードよりも前記外部空間の気温が低い状況で実施する。
即ち、本実施形態では、一日の内で第1の換気モードでの換気が行われている期間の平均外気温と比べると、第2の換気モードでの換気が行われている期間の平均外気温の方が低くなる。
このような第2の換気モードでの換気においては、整流器21の第2排気口21zから整流器内の暖気を設備内に放出させ、該暖気が前記第2換気口から外部空間へと排出されるまでの間に前記暖気が有する熱で前記配管を加温して前記保温対象水に凍結が発生するのを防止することができる。
【0045】
本実施形態の水素ガス製造設備100では、前記整流器21の第2排気口21zと前記第2換気口13bとの間には、前記電解装置22、水循環ポンプ25、陽極側の気液分離器26、陰極側の気液分離器29などの内の一つ以上を配し、前記暖気でこれらにおける凍結防止をさせるようにしてもよい。
【0046】
本実施形態の水素ガス製造設備100には、前記の通りエアコンデショナー30を有するため、前記整流器21からの排気を内部排気状態にするだけでは凍結のおそれが十分解消されない場合でも、該エアコンデショナー30を使って収容空間の気温を上昇させることができる。
本実施形態においてはエアコンデショナー30が第2換気口13bの反対側に配されているため、第2の換気モードでエアコンデショナー30を作動させるとエアコンデショナー30で発生させた暖気を保温対象水の凍結防止に対して極めて有効に活用することができる。
本実施形態の水素ガス製造設備100は、前記配管の少なくとも一部を直接的に加熱して該配管の水が凍結することを防止するための凍結防止ヒーターをさらに備えてもよい。
【0047】
以下に、各換気モードについて詳しく説明する。
前記第1の換気モードでの換気は、整流器21の冷却ファン21bと、第2送風ファン15bとの内の一方、又は、両方を用いて実施することができる。
図3は、前記第1の換気モードでの気流の動きを模擬的に矢印にて示したもので、該第1の換気モードでの換気は、例えば、前記第1シャッター14a及び前記第2シャッター14bを開状態にし、前記第3シャッター14c及び整流器21のシャッター21zaを閉状態にしてダクトDPを通じて整流器21の筐体内の空気を冷却ファン21bで外部空間に向けて排気することによって実施できる。
このとき、冷却ファン21bよりも上流側(図での下側)では、下流側(図での上側)において排気が行われることによって負圧が加わることになるため、整流器21の筐体aの下端部に設けられたスリット21xから周囲の空気が筐体内に誘引される。
そして、筐体内に誘引される空気に代わる新たな空気が前記第2換気口13bを通じて収容空間に導入されることで
図3に示したような空気の流れが設備内に形成されることになる。
【0048】
この
図3に示した空気の流れは、冷却ファン21bを停止し、第2送風ファン15bのみを運転して該第2送風ファン15bで空気を送り込んで設備内を正圧とすることによっても形成させることができる。
なお、冷却ファン21bを用いない場合、
図4に示すように整流器21のシャッター21zaを開いて第2排気口21zから整流器内へ空気を誘引させるようにしてもよい。
さらに、このような場合は設備内を正圧するのに前記第3送風ファン15cを第2送風ファン15bと併用してもよい。
【0049】
この第1の換気モードでは、大きな発熱を伴う発熱機器である整流器21が気流の形成方向下流側に位置し、前記第1換気口13aの近くに位置するために設備内で生じた熱の多くを素早く排出させることができる。
【0050】
前記電解装置22は、水素ガスの製造時にジュール熱による発熱を伴う。
また、水素ガスを製造していないときでも、水素ガス製造設備100が前記吸着筒DCaで吸着剤を再生するような運転状態にあるときは、前記除湿装置DCでも熱が発生する。
このように本実施形態においては、整流器21の他に電解装置22や除湿装置DCなどの発熱機器が水素ガス製造設備100に備えられているが、
図3、
図4に示したような空気の流れが設備内に形成されることで、これらが過度に温度上昇してしまうことが抑制される。
尚、本実施形態においては、発熱機器の全てが第1換気口13aの近くに位置する必要はないが、発熱量の大きな整流器21については第1換気口13aの近くに位置していることが好ましい。
【0051】
水素ガス製造設備100では、予期せぬ理由によって水素ガスが漏洩する場合がある。
電解装置22や水素ガス配管L2などから水素ガスが漏洩した場合において当該水素ガスが設備内に蓄積されないようにする上において前記第1の換気モードでは、一定以上の換気量を確保することが好ましい。
【0052】
第1の換気モードでは、2回/h以上の換気回数を確保することが好ましく、3回/h以上換気回数が確保されることがより好ましい。
前記換気回数は、4回/h以上であることがさらに好ましく、5回/h以上であることが特に好ましい。
前記換気回数は、通常、15回/h以下とすることができる。
【0053】
前記換気回数は、1時間あたりに外部空間側から収容空間へと新たに導入される空気の量(V1)が収容空間の容積(V0)の何倍であるかを測定して求めることができる。
換気回数(回/h)=V1(m3/h)/V0(m3)
【0054】
尚、収容空間の容積(V0)は、壁部10の内壁面よりも内側の空間の容積を算出することで求めることができる。
本実施形態では、第1サイドパネル12as1から第2サイドパネル12as2までの距離を収容空間の長さ(L)、フロントパネル12afからバックパネル12abまでの距離を収容空間の奥行(D)、底パネル12cから天井パネル12bまでの距離を収容空間の高さ(H)とし、以下のようにして、収容空間の容積を求めることができる。
収容空間の容積(V0)=収容空間の長さ(L)×奥行(D)×高さ(H)
【0055】
収容空間へと新たに導入される空気の量(V1)は、各換気口での平均面風速を風速計などで求め、該平均面風速に換気口の開口面積を乗じて求めることができる。
【0056】
排熱の処理と水素ガスの蓄積防止との両方の観点から、第1の換気モードでは、給気箇所と排気箇所とが収容空間を介して対向する位置に設けられることが好ましい。
即ち、本実施形態の水素ガス製造設備100では、前記壁部10が、収容空間を挟んで対向する第1側壁と第2側壁とを備え、前記第1換気口13aが前記第1側壁に備えられ、前記第2換気口13bが前記第2側壁に備えられているため、第1の換気モードでの換気に際して新たに設備内に導入した空気を全体に行き渡らせ易くなり、設備内に暖気や水素ガスの滞留する箇所が形成され難くなる。
尚、この点に関しては第2の換気モードでの換気においても同じである。
【0057】
前記第1の換気モードによる換気において第2送風ファン15bや第3送風ファン15cで外部空間の空気を設備内に送り込むことは、これらのファンの排熱を収容空間に導入させることにはなるものの換気回数を増やすという観点では熱の排出に有利であり、換気回数が増えることで高い利得を得ることができる。
したがって、第1の換気モードによる換気では、換気の目的を排熱と水素ガスの蓄積防止とに置いた場合に第2送風ファン15bや第3送風ファン15cを利用することが有利になり得る。
【0058】
前記第2の換気モードでの換気は、例えば、
図5に示すように前記第2シャッター14b及び前記第3シャッター14cを開状態とし、第3送風ファン15cを用いて前記第3換気口13cより空気を設備内に導入させるような方法で実施できる。
該第2の換気モードでは、前記整流器21で加温された整流器21の近傍の空気が配管(水配管L1、水素ガス配管L2、酸素ガス配管L3)の傍らを通過し、前記第2換気口13bから排出されることになる。
したがって、前記第2の換気モードでの換気は、配管などで水が凍結するおそれがあるような状況において有効な換気方法であるといえる。
第3換気口13cを通じて第3送風ファン15cで設備内に空気を送り込むのに代えて第2換気口13bから設備内の空気を吸い出して第2の換気モードでの換気を実施することも可能であるが、その場合は、送風ファンの排熱が設備内に導入されないことになる。
即ち、第1の換気モードで、設備内の熱を素早く外部空間に排出することが求められるような場合は、前述のように送風機で外部空間への排気を行うことが有利となるが、第2の換気モードで凍結防止を行う場合は、送風機で収容空間への給気を行うことが有利となる。
【0059】
外部空間への排気と外部空間からの給気との両方を実施し得るように前記第2送風ファン15bや前記第3送風ファン15cは、プロペラファンであって、且つ、プロペラを正転させたり逆転させたりすることで正逆両方に送風可能なリバーシブルフローファン(双方向ファン)であってもよい。
【0060】
前記第2の換気モードでの換気においては、
図6に示すように整流器21のシャッター21zaを開状態とし、冷却ファン21bを運転させることにより、第2排気口21zから筐体21aの内部における暖気を排出させるようにしてもよい。
このとき、冷却ファン21bの風量は、第1の換気モードと同じであっても異なっていてもよい。
【0061】
水素ガスを製造しているときは、陽極側を循環する水、陽極で発生する酸素ガス、及び、陰極側で発生する水素ガスのそれぞれが電解セルで発生する熱によって加熱された状態になるため凍結の危険性が低く、漏洩した水素ガスが設備内に蓄積される危険性への対処の方が重要視される。
一方で、水素ガスを製造していないときは、水素ガスが設備内に蓄積される危険性が低下するが保温対象水が凍結する危険性が高まる。
そのため、前記第1の換気モードでの換気は、電解装置22で水素ガスを発生させている期間に実施されることが好ましく、前記第2の換気モードでの換気は、電解装置22で水素ガスを発生させていない期間に実施されることが好ましい。
電解装置22で水素ガスを製造していない状況では、通常、整流器21の内部発熱も僅かとなる。
そこで、第1の換気モードと第2の換気モードとでは、冷却ファン21bの風量を変更することが好ましい。
第1の換気モードでは、特段の制御を行わず、冷却ファン21bの風量を一定とすればよいが、第2の換気モードでは、設備内の気温や外気温などの情報に基づいて風量を制御することが好ましい。
【0062】
第2の換気モードでの換気量(換気回数)は、第1の換気モードと同じであっても異なっていてもよい。
設備内の水素ガスの蓄積防止について考えると第2の換気モードでの換気は第1の換気モードと同じ風量(換気回数)で実施されることが好ましい。
【0063】
前記第2の換気モードは、複数のサブモードで実施されることが好ましく、該複数のサブモードには、少なくとも1つのサブモードよりも単位時間当たりの換気量が多い高換気サブモードと、該高換気サブモードよりも単位時間当たりの換気量が少ない低換気サブモードとが含まれていることが好ましい。
【0064】
上記のような複数のサブモードでの換気が可能になっていると、例えば、一日の運転を終える段階で電解セルへの給電をストップしてしばらくの間は、第1の換気モードと同程度の換気回数となる高換気サブモードで換気を実施し、その後、前記低換気サブモードへと移行して外部空間からの空気の導入によって設備内の温度が低下することを抑制させることができる。
【0065】
ここで、夜間休転していた水素ガス製造設備100を朝に立ち上げて日中水素ガスを製造した後に再び夜間は休転するような水素ガスの製造サイクルをモデルにして望ましい換気の方法についてより具体的に説明する。
【0066】
水素ガスの製造を開始する朝の時点では、まず、水素ガス製造設備100の水循環ポンプ25を駆動させ、陽極側において純水を循環させ、次いで、整流器21により電解装置22に給電して水の電気分解を始める。
それと同時に整流器21の冷却ファン21bを運転させて第1の換気モードで換気を行なう。
この時点では、整流器21の内部の温度もさほど高温ではないため第1換気口13aより排出される排気の温度は設備内の気温に比べてわずかに高い程度となる。
その後、時間経過とともに整流器21の筐体内の温度は上昇し、日中、この筐体内の温度はピークに達する。
そして、夕刻になると外気温が低下するため、第2換気口13bより誘引される空気の温度が低下し、整流器21の筐体内の温度も低下し始める。
第1の換気モードから第2の換気モードへの切り替えは、この時点で行ってもよく、整流器21の筐体内の温度が一定以下になった時点(以下、「時点A」ともいう)で行ってもよい。
その後、電解装置22への給電を停止して新たな水素ガスの発生をさせないようにすると、整流器21では排熱が殆ど生じなくなるため、筐体内の温度低下の勾配が大きくなる。
第1の換気モードから第2の換気モードへの切り替えは、この時点で行ってもよく、整流器21による給電を停止した時点(以下、「時点B」ともいう)で行ってもよい。
電解装置22への給電が停止された後でも除湿装置DCなどが運転されていると吸着筒の加熱再生による熱の一部が設備内の温度低下を防ぐことになる。
しかし、除湿装置DCの運転も停止した時点(以下、「時点C」ともいう)では、外気温の低下と相俟って設備内の温度低下が加速されることになる。
第1の換気モードから第2の換気モードへの切り替えは、この「時点C」において行ってもよい。
そして、深夜から明け方に向けては外気温が大きく低下するため換気による設備内の温度低下が激しくなり、冬期においては凍結のおそれが生じてくる。
設備の設置個所が寒冷地であれば冬期に限らず凍結のおそれが生じる。
したがって、最終的には、前記換気を第2の換気モードで実施し、しかも、この第2の換気モードを低換気サブモードで実施することが好ましい。
【0067】
前記「時点A」で第2の換気モードへ切り替える場合は、
図6に示したような形で換気を行なうことが望ましく、冷却ファン21bでの空冷を実施しながら換気を行なうことが望ましい。
前記「時点B」で第2の換気モードへ切り替える場合は、
図6に示したような形で換気を行なう必要性はなく、
図5に示したような形で換気を行ってもよい。
「時点B」で換気のモードを第1の換気モードから第2の換気モードへ切り替える場合は、
図5に示したような態様で換気を実施すると整流器21がしばらくの間は蓄熱された状態となる。
したがって、第2の換気モードを
図5に示したような態様で開始し、設備内の温度が規定値以下に低下した際に
図6に示したような態様に切り替えると凍結防止によりいっそう効果を発揮する。
また、
図6に示したような気流に切り替える際に、高換気サブモードから低換気サブモードへの切り替えを行ってもよい。
【0068】
第1の換気モードから第2の換気モードへ切り替え、高換気サブモードから低換気サブモードへの切り替えは、具体的には、時刻、外気の温度、設備内の気温や水温、整流器21の内部温度などの内の1以上の情報に基づいてそのタイミングを設定することができる。
【0069】
上記のようにして本実施形態では凍結などの問題によって設備の運転を意図せず停止しなければならなくなる事態を回避しつつ水素ガスを製造することができる。
なお、本実施形態の水素ガス製造方法は、上記に例示したものに限らず、種々の態様とすることができる。
【0070】
(第2実施形態)
以下に本発明の第2の実施形態について説明する。
この第2実施形態に係る発明も、排熱を有効利用して凍結防止が行われる点においては第1実施形態と共通している。
第1実施形態においては、整流器が空冷式である場合を例示しているが、この第2実施形態に係る発明では整流器が
図7に示すような水冷式のものであってもよい。
図7に示した水素ガス製造設備100では、水冷式の整流器21’を備えているため、これまでに例示の空冷式の整流器21のように冷却ファン21bが備えられていない。
そこで、
図7に示した水素ガス製造設備100では、第1換気口13aに冷却ファン21bに代わる第1送風ファン15a’が設けられている。
水冷式の整流器21’では、冷却液を循環させた冷却用パイプ21p’で半導体素子を冷却する冷却機構21e’を有すため、整流器21’の周囲の温度は、運転時に上昇するものの空冷式の整流器21の場合ほど温度が高くはならないが、
図7に示した水素ガス製造設備100では、第1送風ファン15a’で整流器21’の周囲の暖気を外部空間に排出して第1の換気モードでの換気を行ない得るようになっている。
【0071】
上記のように本実施形態の水素ガス製造設備100は、発熱機器である整流器21’で発生した熱によって加熱される熱媒体として前記冷却液が利用されている。
図7に示した水素ガス製造設備100では、後述するように、整流器21’で発生した熱によって加熱された前記熱媒体(冷却液)を冷却するための熱交換器として第1熱交換器と第2熱交換器とを含む複数の熱交換器を有している。
【0072】
図7に示した水素ガス製造設備100では、整流器21’の内部の温度が空冷式の整流器21の場合ほど高くはならないため筐体内の暖気を排出するための第1排気口21yや第2排気口21zが整流器21’に設けられていない。
一方、水冷式の整流器21’を備えた水素ガス製造設備では、半導体素子で加熱された冷却液を前記保温対象水の凍結防止のための熱源として有効活用できる。
例えば、整流器21’との熱交換によって加熱された冷却液で前記配管(水配管L1、水素ガス配管L2、酸素ガス配管L3)の加熱が行われるようにしてもよい。
【0073】
前記保温対象水の内、陽極側での循環経路を流れる水は、活発な流動を生じているために凍結し難い環境にあると言える。
また、活発な流動を生じていない水でも純水タンク24に貯留されている水のような比較的大量の水は、全体的な熱容量が大きいために凍結し難い環境にあると言える。
一方で陰極側や陽極側のガスラインで発生した凝縮水(結露水)については、量が比較的少量である上に流動状況もさほど活発にはならないため、排熱による加熱が優先的に実施されることが好ましい。
即ち、水素ガス配管L2及び酸素ガス配管L3は、好適な加熱の対象となり得る。
【0074】
水冷式の整流器21’を備えた水素ガス製造設備100についてより詳しく説明すると、
図7に示した水素ガス製造設備100は、水冷式の整流器21’の内部(半導体素子)で発生した熱を冷却液を媒体として整流器21’の外部へ伝達し得るように構成されている。
該水素ガス製造設備100は、整流器21’で発生した熱によって加熱された冷却液を整流器外で熱交換して冷却するための熱交換器として、第1熱交換器と第2熱交換器とを含む複数の熱交換器を有している。
本実施形態での前記第1熱交換器は、前記保温対象水を加熱するための加熱コイル21f’となっている。
即ち、本実施形態においては、冷却用パイプ21p’を筐体21a’の外部まで延設して水配管L1の周囲に巻回して該水配管L1を加熱するための加熱コイル21f’を形成させ、ポンプP’によって加熱コイル21f’と冷却機構21e’との間を前記冷却液が循環されるようにして前記水配管L1などの凍結防止が図られている。
【0075】
本実施形態の水素ガス製造設備100は、前記冷却液が前記保温対象水の加熱に用いられない期間(例えば、第1の換気モードでの換気が行われる期間)などにおいて該冷却液を前記収容空間の空気で空冷する空冷機21G’を備え、前記第2熱交換器が当該空冷機21G’での放熱コイル21g’を構成している。
本実施形態における水素ガス製造設備100では、前記整流器21’で加熱された冷却液の供給先を前記第1熱交換器(加熱コイル21f’)と前記第2熱交換器(放熱コイル21g’)とに切り替え可能になっている。
言い換えると、本実施形態の水素ガス製造設備100は、電気分解に利用される水、及び、電気分解されずに系外に排出される水の内の少なくとも1つを凍結防止の対象となる対象水とし、整流器の熱を伝達して前記対象水を加熱するための第1熱交換器と、整流器の熱で収容空間の空気を加熱するための第2熱交換器を有している。
このことにより本実施形態における水素ガス製造設備100は、設備内の全体を第2熱交換器で加熱する状態と、設備内の特定部分を第1熱交換器で加熱する状態とが切り替え可能となっている。
【0076】
前記空冷機21G’は、前記冷却液を冷却することで温度が上がった空気を直接外部空間に放出するように配されてもよい。
また、当該空冷機21G’は、壁部10の内側の収容空間ではなく壁部10よりも外側の外部空間に配されてもよい。
【0077】
この第2実施形態に係る水素ガス製造設備100は、上記のように水を電気分解して水素ガスを発生する水電解装置部20と、該水電解装置部20を収容する収容空間を外部空間と区分する壁部10とを有する水素ガス製造設備100であり、前記水電解装置部20には運転時に発熱する少なくとも1つの発熱機器が備えられている点において第1実施形態に係る水素ガス製造設備100と共通している。
【0078】
この第2実施形態に係る水素ガス製造設備100は、発熱機器で発生した熱によって加熱される熱媒体を有し、前記熱によって加熱された前記熱媒体を冷却するための熱交換器として第1熱交換器と第2熱交換器とを含む複数の熱交換器を有し、該複数の熱交換器の内、前記第1熱交換器が前記収容空間で熱交換して前記熱媒体を冷却し得るように配され、前記第2熱交換器は、前記収容空間における前記第1熱交換器とは異なる箇所で熱交換するか、又は、前記外部空間で熱交換して前記熱媒体を冷却し得るように配されている。
そして、この第2実施形態に係る水素ガス製造設備100は、前記第1熱交換器によって熱交換する第1の熱交換モードと、前記第2熱交換器によって熱交換する第2の熱交換モードとに切り替えが可能である。
【0079】
第2実施形態に係る水素ガス製造設備100は、上記のように第2熱交換器を外部空間への排熱に有利な位置に配することで、第1実施形態に係る水素ガス製造設備100と同様に運転時に発生する熱を必要に応じて素早く排出したり第1熱交換器を使って凍結防止に有効活用したりすることができる。
即ち、前記第1の熱交換モードは、保温対象水の直接的又は間接的な加熱のために実施されることが好ましい。
前記第2の熱交換モードは、設備内での発熱を外部放出するために行われることが好ましい。
上記のような効果を顕著に発揮させる上において、前記第2熱交換器は、前記外部空間で熱交換して前記熱媒体を冷却し得るように配されていることが好ましい。
【0080】
本実施形態においては、例えば、前記冷却液が第1の換気モードにおいて空冷機21G’での熱交換によって冷却され、第2の換気モードにおいては前記冷却液が直接又は間接的に保温対象水と熱交換して当該保温対象水の加熱(凍結防止)が行われる。
本実施形態においては、第1の熱交換モードと第2の換気モードとが並行して実施され得る。
また、本実施形態においては、第2の熱交換モードと第1の換気モードとが並行して実施され得る。
【0081】
本実施形態においては、冷水を作製するためのチラーを前記空冷機21G’に代えて設置するようにしてもよく、冷水が整流器21’とチラーとの間を循環するようにしてもよい。
この場合、チラーから排出される排熱は、収容空間を温めるために用いても、外部空間に放出するようにしてもいずれでもよい。
【0082】
冷却液で前記配管を加熱する場合、空気で加熱する場合と違って特定箇所に熱を集中させることが容易であるため、凍結が起こりそうな箇所をピンポイントに加熱することができる。
また、冷却用パイプ21p’を分岐させて複数箇所に加熱コイル21f’を形成させてもよく、その場合、複数箇所の加熱コイル21f’のいずれに加熱された冷却液を流通させるかを切り替える切り替え機構を設けるようにしてもよい。
即ち、本実施形態においては、さらに第3熱交換器を設けて前記保温対象水を複数箇所で同時に加熱できるようにしてもよい。
そして、このような場合も、整流器に遠い位置に設けられた第2換気口13bから排気が行わることで整流器21’の周囲の暖気を凍結防止に活用できる点においては変わりがない。
【0083】
本実施形態の水素ガス製造設備100は、前記整流器21’で発生した熱によって加熱された冷却液で前記保温対象水を加熱する熱交換器の他に前記保温対象水を加熱するための加熱装置としてサブヒーター21h’を有している。
サブヒーター21h’は、加熱水蒸気(スチーム)や系統電力などの外部から水素ガス製造設備100に供給されるエネルギーによって前記保温対象水を加熱するように構成され得る。
即ち、本実施形態の水素ガス製造設備100は、前記保温対象水を加熱するための加熱装置として第1の加熱装置(加熱コイル21f’)と第2の加熱装置(サブヒーター21h’)とを含む複数の加熱装置を備えている。
サブヒーター21h’は、加熱コイル21f’に隣接するように設けられてもよく、加熱コイル21f’とは離れた位置に設けられてもよい。
【0084】
本実施形態の水素ガス製造設備100では、エネルギー消費を節約する上においてサブヒーター21h’での加熱に先行して加熱コイル21f’(第2熱交換器)での保温対象水の加熱を実施し、該加熱コイル21f’だけでは凍結を防止するための熱量が不十分であると判断される場合にサブヒーター21h’での加熱が実施されることが好ましい。
【0085】
サブヒーター21h’での加熱の要否は、収容空間の気温、外部空間の気温、或いは、電気分解に利用される水の水温などを基準に判断されることが好ましく、これらの内の基準となる温度が基準値を下回る際に実施されることが好ましい。
即ち、本実施形態の水素ガス製造設備100は、電気分解に利用される水、及び、電気分解には利用されずに系外に排出される水の内の少なくとも1つを凍結防止の対象となる対象水とし、整流器21’の熱を伝達して前記対象水を加熱コイル21f’で加熱する第1の加熱と、該第1の加熱とは別の加熱方法(サブヒーター21h’)で前記対象水を加熱する第2の加熱とが実施可能であり、少なくとも前記第2の加熱が、収容空間の気温、外部空間の気温、及び、電気分解に利用される水の水温の少なくとも1つを基準にして実施されることが好ましい。
【0086】
上記のように水冷式の整流器21’は、空冷式の整流器21に比べて熱を特定箇所に集中させ易いため、例えば、
図8に示すように蓄熱装置HTを収容空間に配して凍結防止の必要性が低い状況下で生じる排熱を蓄熱装置HTに蓄えるようにしてもよい。
より具体的には、前記空冷機21G’や前記チラーのように整流器21’から排出される加熱状態の冷却液を冷却するための冷却装置と整流器21’との間に冷却液を循環させるための循環経路を設け、前記冷却装置よりも上流側に前記蓄熱装置HTを配置してもよい。
そして、そのような態様においては、保温対象水の凍結を防止するために加熱する加熱対象物Zと前記蓄熱装置HTとの間に熱媒TLを循環供給できるようにし、該加熱対象物Zを加熱する必要性が低い場合は、
図8(a)に示すように専ら前記蓄熱装置HTに熱を蓄えるようにし、加熱対象物Zを加熱する必要性が生じたときに
図8(b)に示すように蓄熱装置HTから熱媒TLを加熱対象物Zに供給することで凍結防止が図られる。
【0087】
前記蓄熱装置HTは、単に整流器21’で加熱された状態の冷却液を一次貯留するだけの水槽であっても、整流器21’で発生した熱を蓄える顕熱蓄熱材や潜熱蓄熱材などを備えたものであってもよい。
前記蓄熱装置HTは、大きな蓄熱量を確保し易い上において潜熱蓄熱材を備えていることが好ましい。
前記潜熱蓄熱材としては、例えば、5℃~50℃の範囲に相転移温度を有するパラフィン系蓄熱材や、水和物系蓄熱材が挙げられる。
収容空間における可燃物の量の低減を図る上において前記潜熱蓄熱材はとしては、水和物系蓄熱材が好ましい。
【0088】
該水和物系蓄熱材としては、例えば、硫酸ナトリウム10水塩系蓄熱材(相転移温度:10℃~32℃)、トリメタノールエタン3水塩系蓄熱材(相転移温度:13℃~30℃)、塩化カルシウム6水塩系蓄熱材(相転移温度:27℃)、酢酸ナトリウム3水塩系蓄熱材(相転移温度:40℃~57℃)、チオ硫酸ナトリウム5水塩系蓄熱材(相転移温度:48℃)などが挙げられる。
【0089】
水冷式の整流器21’での半導体素子の冷却に用いる冷却液は、系外から導入するようにしてもよい。
例えば、
図9に示すように系外から工業用水などの冷媒CLを整流器21’に供給する給水経路を設けるとともに整流器21’を冷却した後の冷媒CLを系外に排出する排水経路を設けて半導体素子の冷却を行ってもよい。
このとき、
図8での例示と同様に、加熱対象物Zを加熱する必要性が低い場合は、
図9(a)に示すように専ら前記蓄熱装置HTに熱を蓄えるようにし、加熱対象物Zを加熱する必要性が生じたときに
図9(b)に示すように蓄熱装置HTから加熱対象物Zに熱媒TLを供給することで凍結防止が図られる。
【0090】
図8、
図9に示した態様においても蓄熱装置HTを熱源とした加熱装置以外に
図7に例示したようなサブヒーター21h’を別途設けてもよい。
蓄熱装置HTから加熱対象物Zへの熱媒TLの供給は、サブヒーター21h’の駆動と同様に収容空間の気温、外部空間の気温、或いは、電気分解に利用される水の水温などを基準にその要否を判断させることができる。
このことにより、凍結防止をより確実なものとすることができる。
尚、整流器21’とは別に水冷式の装置類が水素ガス製造設備に設けられている場合は、蓄熱装置HTに蓄える熱をそのような装置類からの排熱としてもよい。
【0091】
図8、
図9に示した態様においては、蓄熱装置HTを備え、第1の換気モードにおいて発熱機器が発する熱を蓄熱装置HTに蓄え、第2の換気モードにおいて蓄熱装置HTに蓄えた熱を保温対象水に伝達して当該保温対象水の凍結防止を図ることができる。
このような態様においては、保温対象水に伝達する熱量を比較的多く確保できるとともに伝達する熱量の大小もコントロールし易いため、より確実に凍結防止を図ることができる。
【0092】
以上のように、本発明での一つ実施形態に係る発明においては、
水素ガス製造設備が、
水を電気分解して水素ガスを発生する水電解装置部と、該水電解装置部を収容する収容空間を外部空間と区分する壁部とを有し、
前記水電解装置部には運転時に発熱する少なくとも1つの発熱機器が備えられ、
前記壁部には、前記収容空間の空気を排気することによって該収容空間の熱を前記外部空間に排出するための換気口が設けられ、且つ、前記換気口には、第1換気口と、前記発熱機器からの距離が第1換気口よりも遠い第2換気口とが含まれており、
前記第1換気口からの排気によって前記収容空間と前記外部空間との換気が行われる第1の換気モードと、前記第2換気口からの排気によって前記換気が行われる第2の換気モードとが切り替え可能であるため、発熱機器の熱を外部空間に排出することが容易であるとともに発熱機器の排熱を凍結防止に有効活用することができる。
【0093】
本実施形態での好ましい態様によれば、
水素ガス製造設備の前記壁部が、収容空間を挟んで対向する第1側壁と第2側壁とを備え、前記第1換気口が前記第1側壁に備えられ、前記第2換気口が前記第2側壁に備えられている。
そのため、本実施形態の水素ガス製造設備では、第1の換気モードや第2の換気モードで換気を行なう際に第1換気口と第2換気口との内の一方を排気口、他方を給気口とすることができ、給気口より導入した新たな空気を設備内全体に行き渡らせ易く、暖気や水素ガスが滞留する箇所の形成を抑制することができる。
【0094】
本実施形態での好ましい態様によれば、
前記水電解装置部には、電力が供給されて水が電気分解される電解セルと、該電解セルに供給する前記電力の整流が行われる整流器とが備えられ、
前記第2換気口よりも前記第1換気口に近い位置に設けられている前記発熱機器が前記整流器である。
水素ガス製造設備の中でも整流器は、特に多くの熱を発生する発熱機器であるため、この好ましい態様によれば、凍結防止に特に高い効果を得ることができる。
【0095】
本実施形態での好ましい態様によれば、
前記整流器が、前記第1換気口に向けて排気を行う第1排気口と、前記第2換気口に向けて排気を行う第2排気口とを備え、該第2排気口を開閉するシャッターをさらに備えている。
この好ましい態様によれば、整流器の排熱の放出方向を第1排気口と第2換気口とに切り替えることが容易であり、外部空間への熱の排出と、収容空間での熱の有効利用との切り替えが容易に実施され得る。
【0096】
本実施形態での好ましい態様によれば、前記第2排気口は、垂直方向における位置が前記発熱機器の上端よりも低くなるように配されている。
この好ましい態様によれば、第2の換気モードにおいて発熱機器の周囲の暖気を前記第2排気口に向けて斜め下向きに誘引できるため、床上付近の凍結が発生し易い箇所を温め易くなる。
【0097】
本実施形態での好ましい態様によれば、
前記第2の換気モードでの換気が複数のサブモードで実施され、
該複数のサブモードには、少なくとも1つのサブモードよりも単位時間当たりの換気量が多い高換気サブモードと、該高換気サブモードよりも単位時間当たりの換気量が少ない低換気サブモードとが含まれている。
そして、本実施形態でのさらなる好ましい態様によれば、前記低換気サブモードが、前記高換気サブモードよりも前記外部空間の温度が低い状況で実施される。
このような好ましい態様によれば、外部空間からの空気の取り込み量(換気回数)を調整できる。
そのため、このような好ましい態様によれば、外部空間の温度が低くて設備内で水の凍結が起こり得る状況下などにおいても設備内を適切な温度に維持することができる。
【0098】
本実施形態での好ましい態様によれば、水素ガス製造設備が前記収容空間の気温を上昇させるエアコンデショナーをさらに備えている。
また、本実施形態での好ましい態様によれば、水素ガス製造設備が、前記電気分解される前の水、又は、前記電気分解された後の水の流通する配管を備え、該配管を加熱する凍結防止ヒーターをさらに備えている。
このような好ましい態様によれば、換気方法だけでは凍結が防ぎ切れないおそれがあるような想定外の状況においても凍結防止をさせることができる。
【0099】
本実施形態での好ましい態様によれば、水素ガス製造設備が、前記電気分解される前の水、又は、前記電気分解された後の水の流通する配管を備え、前記整流器が水冷式で、該整流器での熱交換によって加熱された冷却液で前記配管の加熱が行われる。
このような好ましい態様によれば、冷却液で配管を直接的に加熱できるため、凍結が起こりそうな場所をピンポイントに加熱することも容易に実施できる。
【0100】
本発明での他の実施形態に係る発明においては、
水を電気分解して水素ガスを発生する水電解装置部と、該水電解装置部を収容する収容空間を外部空間と区分する壁部とを有する水素ガス製造設備であって、
前記水電解装置部には運転時に発熱する少なくとも1つの発熱機器が備えられ、
該発熱機器で発生した熱によって加熱される熱媒体を有し、
前記熱によって加熱された前記熱媒体を冷却するための熱交換器として第1熱交換器と第2熱交換器とを含む複数の熱交換器を有し、
該複数の熱交換器の内、前記第1熱交換器が前記収容空間で熱交換して前記熱媒体を冷却し得るように配され、前記第2熱交換器は、前記収容空間における前記第1熱交換器とは異なる箇所で熱交換するか、又は、前記外部空間で熱交換して前記熱媒体を冷却し得るように配されており、
前記第1熱交換器によって熱交換する第1の熱交換モードと、前記第2熱交換器によって熱交換する第2の熱交換モードとに切り替えが可能であるため発熱機器の熱を外部空間に排出することが容易であるとともに発熱機器の排熱を凍結防止に有効活用することができる。
【0101】
本実施形態での好ましい態様によれば、前記第2熱交換器が前記外部空間で熱交換して前記熱媒体を冷却し得るように配されていることで発熱機器の熱を外部空間に排出することがより確実に、且つ、より容易に実施可能となる。
【0102】
尚、本発明の水素ガス製造設備や水素ガス製造方法は上記のような好ましい態様のものに限定されるものでもない。
即ち、本発明の水素ガス製造設備は、上記例示に何等限定されるものではなく、本発明の効果が著しく損なわれない範囲において上記例示に対して各種変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0103】
10:壁部、11:フレーム、12:壁パネル、13:換気口、13a:第1換気口、13b:第2換気口、14:シャッター、15a’:第1送風ファン、15b:第2送風ファン、15c:第3送風ファン、20:水電解装置部、21,21’:整流器、21a,21a’:筐体、21b:冷却ファン、21za:シャッター、22:電解装置、23:純水製造装置、24:純水タンク、25:水循環ポンプ、26:(陽極側)気液分離器、27:ポリッシャー、28:熱交換器、29:(陰極側)気液分離器、30:エアコンデショナー、100:水素ガス製造設備、DC:除湿装置、DCa:吸着筒、DP:ダクト、HL:水素排出経路、L1:水配管、L2:水素ガス配管、L3:酸素ガス配管、OL:酸素排出経路、WL:原料水供給経路