(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】心臓アブレーション処置を改善するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
A61B18/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020081802
(22)【出願日】2020-05-07
【審査請求日】2023-03-22
(32)【優先日】2019-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】マティ・アミット
(72)【発明者】
【氏名】ベニー・ディルマネー
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/130976(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0087086(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0090029(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0027649(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0070436(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0160768(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0090029(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓アブレーション処置を改善するためのシステムであって、
以前に
複数の患者に対して実行された心臓アブレーションに関する情報を含むデータベースを含むクラウドサーバと、
第1のネットワークを介して前記クラウドサーバに通信可能に結合されたローカルサーバと、
第2のネットワークを介して前記ローカルサーバに通信可能に結合された外科用システムと、
を備え、
前記クラウドサーバが、
前記ローカルサーバを介して、前記外科用システムから
前記心臓アブレーション処置を受ける患者の心臓の電気的データ及び解剖学的データを受信することと、
機械学習を利用して、前記心臓の前記電気的データ及び解剖学的データと前記データベース
の前記情報
のうち前記患者の前記心臓と状態及び形態が類似している全ての以前の患者に対して実行された心臓アブレーションに関する前記情報との比較を実行することと、
前記比較に基づいて前記心臓のための外科的治療計画を生成することであって、前記外科的治療計画が、前記心臓のグリッドを含む、ことと、
前記ローカルサーバを介して、前記外科的治療計画を前記外科用システムに送信することと、
を行うように構成されている、システム。
【請求項2】
前記外科用システムの1つ以上のパラメータが、前記
外科的治療計画に従って変更される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記クラウドサーバは、前記心臓アブレーション処置が実行されている間に、前記外科用システムから前記患者の前記心臓の前記電気的データ及び解剖学的データを受信する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記心臓アブレーション処置が
、前記心臓を複数
回アブレーション
することを含み、前記クラウドサーバが、各アブレーションの後に、前記患者の前記心臓の前記電気的データ及び解剖学的データを前記外科用システムから受信する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記クラウドサーバは、
前記
心臓アブレーション処置が実行された後に、前記心臓の更なる電気的データ及び解剖学的データを受信し、
前記更なる電気的データ及び解剖学的データに基づいてアブレーションスコアを生成する、
ように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記グリッドが、前記心臓全体の画像に重ね合わされ、
前記外科的治療計画が、前記グリッド内に複数のアブレーション予定位置が表示されたグラフィック表現を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記外科的治療計画が、各アブレーション予定位置におけるアブレーションの持続時間及び/又は強度を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記クラウドサーバは、
実際に前記心臓アブレーション処置が実行された位置に基づいて、前記複数のアブレーション予定位置のうち少なくとも1つのアブレーション予定位置を修正する、
ように更に構成されている、請求項6に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、心臓アブレーション処置を改善するためのシステム、装置及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
心臓アブレーションは、患者の心臓内の組織を瘢痕化又は破壊することによって患者の心調律異常を治療する外科的処置である。心臓アブレーションは、心房細動、心房粗動、心室性頻拍及びウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群などの心不整脈を治療するために使用されることが多い。心臓アブレーションは、心調律異常が心臓を通って移動することを防止することができる。心臓アブレーション処置では、心臓の電気的測定は、カテーテルを使用して行われる。測定に基づき、外科医は、熱(高周波)、極低温(冷凍アブレーション)又はレーザーを使用して、電気的異常が発生している心臓の領域を破壊する。
【0003】
従来の心臓アブレーション処置は、アブレーションを実施する場所及び方法を決定するために、外科医の主観的なスキルにのみ依存している。従来の方法では、患者間、外科医間、病院間などでの臨床転帰のばらつきが大きい。
【図面の簡単な説明】
【0004】
添付の図面と共に一例として与えられる以下の説明から、より詳細な理解が可能になる。
【
図1】本開示の1つ以上の特徴を具現化することの可能な例示的なシステムの図である。
【
図2A】心臓アブレーションデータの分析を実行するプロセスを示す。
【
図2B】いくつかの実施形態による心臓アブレーション治療計画を生成するためのプロセスを示す。
【
図3】いくつかの実施形態による心臓アブレーション治療を実行するためのプロセスを示す。
【
図4】人工知能システムのグラフィック描写を示す。
【
図5】
図4の人工知能システムにおいて実行される方法を示す。
【
図10】例示的なサポート・ベクター・マシンを示す。
【
図13】例示的なアンサンブル学習アルゴリズムを示す。
【
図15】ハードウェアベースのニューラルネットワークを示す。
【
図16】本開示の主題の1つ以上の例示的な特徴を具現化することの可能な例示的なシステムの図である。
【
図17】いくつかの実施形態による心臓アブレーション治療を採点するためのプロセスを示す。
【
図18】いくつかの実施形態によるAR/VRシステムを使用した心臓アブレーションを行うために外科医を訓練するプロセスを示す。
【
図19A】外科用システムによって生成され得るマッピングの一例を示す。
【
図19B】外科用システムによって生成され得るマッピングの一例を示す。
【
図19C】外科用システムによって生成され得るマッピングの別の一例を示す。
【
図20A】RFインデックスのShure-pointのディスプレイを示す。
【
図20B】時間に基づいてアブレーションポイントを特定するディスプレイを示す。
【
図20C】RFインデックス詳細表現の安定性を示すディスプレイを示す。
【
図20D】使用中の医師に更なるパラメータの表示を提供する更なるディスプレイを示す。
【
図20E】使用中の医師に更なるパラメータの表示を提供する更なるディスプレイを示す。
【
図21A】心臓アブレーション治療計画のグラフィック表現である。
【
図21B】実施された第1のアブレーションの位置のグラフィック表現である。
【
図21C】第1の修正された心臓アブレーション治療計画のグラフィック表現である。
【
図21D】第2のアブレーションの位置のグラフィック表現である。
【
図21E】第2の修正された心臓アブレーション治療計画のグラフィック表現である。
【
図21F】第3のアブレーションの位置のグラフィック表現である。
【
図21G】第3の修正された心臓アブレーション治療計画のグラフィック表現である。
【
図21H】第4のアブレーションの位置のグラフィック表現である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、機械学習及びビッグデータ分析の進歩を利用して、心臓アブレーション処置の臨床技術を改善する。本発明の実施形態は、複数の患者、複数の外科医及び複数の病院から収集されたデータを使用して、心臓アブレーション治療計画を生成することができる。本発明の実施形態は、心臓アブレーション処置が実行されている間に動的に適合されるシステム及び方法を提供することによって、臨床転帰を更に改善する。本発明の実施形態は更に、1996年の米国健康保険の相互運用性と説明責任に関する法律(HIPAA)及び欧州連合一般データ保護規則(GDPR)の遵守を維持しながら、改善された臨床転帰を得ることが可能である。
【0006】
心臓アブレーション処置を改善するためのシステム及び方法が含まれる。システム及び方法は、以前に実行された心臓アブレーションに関する情報を含むデータベースを含むクラウドサーバと、第1のネットワークを介してクラウドサーバに通信可能に結合されたローカルサーバと、第2のネットワークを介してローカルサーバに通信可能に結合された外科用システムとを含み、クラウドサーバが、ローカルサーバを介して外科用システムから患者の心臓の電気的データ及び解剖学的データを受信することと、心臓の電気的データ及び解剖学的データとデータベース情報との比較を実行することと、比較に基づいて心臓のための外科的治療計画を生成することであって、外科的治療計画が心臓のグリッドを含む、ことと、ローカルサーバを介して外科的治療計画を外科用システムに送信することと、を行うように構成されている。システム及び方法は、治療計画に従って変更される外科用システムの1つ以上のパラメータを含み得る。クラウドサーバは、心臓アブレーション処置が実行されている間に、外科用システムから患者の心臓の電気的データ及び解剖学的データを受信することができる。クラウドサーバは、アブレーション処置が実行された後に心臓の更なる電気的データ及び解剖学的データを受信し、更なる電気的データ及び解剖学的データに基づいてアブレーションスコアを生成するように更に構成されてもよい。アブレーション処置が複数のアブレーションを含んでもよく、クラウドサーバは、各アブレーションの後に、患者の心臓の電気的データ及び解剖学的データを外科用システムから受信する。
【0007】
外科医の心臓アブレーション訓練のためのシステム及び方法が含まれる。システム及び方法は、以前に実行された心臓アブレーションに関するデータベース情報を含むクラウドサーバと、第1のネットワークを介してクラウドサーバに通信可能に結合されたAR/VRシステムと、を備え、AR/VRシステムが、訓練アブレーションを定義するパラメータの入力を受信することと、仮想患者の電気的データ及び解剖学的データをクラウドサーバから受信することであって、仮想患者の電気的データ及び解剖学的データが、入力をデータベース情報と比較することによって求められる、ことと、仮想患者の電気的データ及び解剖学的データに基づいて、患者の心臓の仮想シミュレーションを作成することと、仮想シミュレーションで心臓アブレーション処置を実行している被訓練者の技能を測定することと、被訓練者の技能を採点することと、を行うように構成されている。
【0008】
図1は、本開示の1つ以上の例示的な特徴を具現化することの可能な例示的なシステム100の図である。システム100では、離散型外科用ネットワーク101A~101Nとして表される複数の離散型ネットワークが、パブリックネットワーク150によってクラウドベースのプラットフォーム160に接続されている。いくつかの場合には、クラウドベースのプラットフォーム160は、Amazon Web Services又はMicrosoft Azureなどのパブリック・クラウド・コンピューティング・プラットフォーム、HP Enterprise OneSphereなどのハイブリッド・クラウド・コンピューティング・プラットフォームあるいはプライベート・クラウド・コンピューティング・プラットフォームによって実装される。
【0009】
離散型ネットワーク101A~101Nは、例えば、別個の複数の病院又は別個の複数の医療提供者ネットワークなどの物理的境界又はエンティティ境界を越えて、単一のエンティティネットワーク内の単一の物理的位置内に配置され得る。
【0010】
一実施形態では、離散型ネットワーク101のそれぞれは、ローカルサーバ120に接続された1つ以上の外科用システム110を含む。1つ以上の外科用システム110は、患者の心臓の解剖学的及び電気的測定値を取得し、心臓アブレーション処置を実行することが可能である。システム100で使用され得る外科用システムの例は、Biosense Webster(登録商標)によって販売されているCarto(登録商標)3システムである。いくつかの場合には、外科用システム110は、測定値を、患者を一意に識別するために使用できる固有の患者識別情報(ID)又は他の情報と関連付けることができる。
【0011】
外科用システム110はまた、及び任意選択的に、超音波、コンピュータ断層撮影(computed tomography、CT)、磁気共鳴映像法(magnetic resonance imaging、MRI)、又は当該技術分野において既知の他の医療撮像技術を使用して、患者の心臓の解剖学的測定値又はその他の患者に関する測定値を得ることができる。外科用システム110は、カテーテル、心電図(electrocardiogram、EKG)、又はその他の心臓の電気特性を測定するセンサなどを使用して電気測定値を得ることができる。次いで、解剖学的及び電気的測定値を外科用システム110のローカルメモリに記憶し、プライベートネットワーク105を使用してローカルサーバ120に送信してもよい。いくつかの場合には、電気的測定値及び解剖学的測定値は、取得直後にローカルサーバ120に送信される。
【0012】
次いで、外科用システム110は、電気的測定値及び解剖学的測定値を組み合わせることによって患者の心臓のマッピングを生成する。患者の心臓のマッピングを外科用システム110のローカルメモリに記憶し、プライベートネットワーク105を使用してローカルサーバ120に送信してもよい。いくつかの場合には、マッピング及び/又は測定値を生成直後にローカルサーバ120に送信してもよい。
【0013】
一実施形態では、外科用システム110は、外科医が心臓アブレーション処置を行うことを可能にする。いくつかの場合には、心臓アブレーション処置は、コンタクトフォース技術及び灌注アブレーション技術を利用することができる。心臓アブレーション処置の間、外科用システム110は、患者の心臓及びアブレーション処置に関する情報を取得し、記憶する。例えば、記憶された情報が、不整脈、処置の持続時間、使用したカテーテル、アブレーションセッションの数及び位置、マッピングの持続時間、アブレーションの持続時間、アブレーション電力並びにその他の通常収集される測定可能なパラメータ及び設定、又は特定の心臓アブレーションに関して収集され得る任意のパラメータ若しくは設定を含んでもよい。加えて、アブレーション処置に関する情報が、処置を行った医師に関する情報、処置が行われた特定の手術室に関する情報及び、処置を補助した支援スタッフを識別するための情報を含んでもよい。外科用システム110は、ローカルメモリ内のアブレーション処置に関する情報を保存することができ、プライベートネットワーク105を使用してローカルサーバ120に情報を送信することができる。いくつかの場合には、アブレーション処置に関する情報は、処置中にローカルサーバ120に送信されるが、他の場合には、情報がアブレーション処置の完了時に送信されてもよい。
【0014】
プライベートネットワーク105は、イントラネット、ローカル・エリア・ネットワーク(local area network:LAN)、広域ネットワーク(wide area network:WAN)、メトロポリタン・エリア・ネットワーク(metropolitan area network:MAN)、直接接続若しくは一連の接続、セルラ電話ネットワーク、又は外科用システム110とローカルサーバ120との間の通信を容易にすることが可能な任意の他のネットワーク若しくは媒体などの、当技術分野で一般的に知られている任意のネットワーク又はシステムであり得る。プライベートネットワーク105は、有線、無線、又はこれらの組み合わせであってもよい。有線接続は、イーサネット、ユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus、USB)、RJ-11、又は当該技術分野において概して既知の任意の他の有線接続を使用して実装することができる。無線接続は、Wi-Fi、WiMAX、及びBluetooth、赤外線、セルラーネットワーク、衛星、又は当該技術分野において概して既知の任意の他の無線接続方法を使用して実装することができる。更に、いくつかのネットワークは、プライベートネットワーク105内の通信を容易にするために、単独で又は相互に通信して動作することができる。
【0015】
ローカルサーバ120は、電気的測定値及び解剖学的測定値、マッピング並びにアブレーション処置に関する情報をローカルデータベースに受信する。いくつかの場合には、ローカルデータベースは、受信されたデータを固有の患者識別可能情報と関連付ける。これらの場合には、ローカルサーバ120は、この「個別に識別可能な健康情報」を、1996年の医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(Health Insurance Portability and Accountability Act of 1996:HIPAA)に準拠して保存してもよい。
【0016】
加えて、又は代替的に、データ匿名化又はデータ合成を使用してもよい。データ匿名化又はデータ合成は、元の実データ又は実データスキーマに基づいて、あるいはランダム生成を使用して合成データを提供することによって、新しいデータを生成をするプロセスである。合成データは、元のデータセットと比較して、より大きいか又はより小さい分析的有用性を有するように構成されてもよい。合成データはまた、元のデータセットと比較して、より大きいか又はより小さいプライバシー、再識別又は開示リスクを有するように構成することもできる。一実施形態では、合成データは、僅かにランダムに修正された単一の患者データに基づいてもよい。別の一実施形態では、合成データは、合成データセットを生成するために平均化された、(特定のデータセット、特定の医師、特定の病院又は特定の状態から)具体的に選択された、又はランダムに選択された複数の患者からのデータであってもよい。本教示の範囲内で合成データセットを生成することの可能な多くの方法があることが当業者に理解されよう。一般に、あらゆるデータ合成技術の分析的有用性とプライバシーリスクとの間にはトレードオフが存在する。合成データは、実データが利用可能できない場合、使用が望ましくない場合又は適切でない場合に使用することができる。
【0017】
いくつかの場合には、ローカルサーバ120は、物理サーバとして実装されている。他の場合には、ローカルサーバ120は、例えば(Amazon Web Services(AWS)(登録商標)などの)パブリック・クラウド・コンピューティング・プロバイダを介した仮想サーバとして実装されてもよい。
【0018】
いくつかの場合には、ローカルサーバ120は、機械学習又は他の人工知能技術を使用して、ローカルデータベースに記憶されたデータを分析する。ローカルサーバは、機械学習を使用して、1)心臓の状態及び形態が類似している全ての以前の患者及び関連するアブレーション処置並びに以前の患者から得られた最良の転帰を考慮して、実施対象の心臓アブレーションの最適な治療計画を推奨し、2)心臓アブレーションが行われている間に、前述の以前の患者及びアブレーションデータを考慮して治療計画を修正し、アブレーション処置中に医師に具体的な推奨を行い、及び/又は、3)心臓アブレーションを実施した外科医の技能を、治療計画及び患者転帰を考慮して評価することができる。このようにして、医師は、アブレーション処置の計画、治療及び評価の際に全ての以前の患者及び心臓処置の経験の蓄積を役立てることにより、最良の患者転帰を達成することができる。
【0019】
別の一実施形態では、ローカルサーバは、電気的測定値及び解剖学的測定値、マッピング並びにアブレーション処置に関する情報を匿名化して、匿名データを形成してもよい。次いで、ローカルサーバ120は、匿名データを、HIPPA規制又はGDPR規制に違反することなくパブリックネットワーク150を介してクラウドベースのプラットフォーム160に送信することができる。匿名データを使用すると、パブリックネットワーク150上で医師が使用できる経験データベースが大幅に拡張される。当業者は、データを匿名化するための多くの標準的な技術があり、そのような手順の詳細な説明は本説明の範囲外であることを理解するであろう。
【0020】
特定の処置に関するデータの収集及び分析が、患者ごとに利用可能であり、処置の特定の部分ごとに分類された処置に関する統計を含んでもよい。このことは、任意のパラメータが他のパラメータに与える影響を医師及び研究者が測定するのに役立ち得る。一例では、このようなデータの収集及び分析により、研究者らは、心臓カテーテル処置に導入される、例えば新しいカテーテル、Carto(登録商標)ソフトウェアの新しいバージョンなどの任意の変更を評価することが可能となる。このことは、これらの変更が患者転帰を改善するか否かを研究者らが判定することを可能にし得る。
【0021】
パブリックネットワーク150は、インターネット、イントラネット、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、メトロポリタン・エリア・ネットワーク(MAN)、直接接続若しくは一連の接続、セルラ電話ネットワーク、又は離散型ネットワーク101A~101Nとクラウドベースのプラットフォーム160との間の通信を容易にすることが可能な任意の他のネットワーク若しくは媒体などの、当技術分野で一般的に知られている任意のネットワーク又はシステムであり得る。パブリックネットワーク150は、有線、無線、又はこれらの組み合わせであってもよい。有線接続は、イーサネット、ユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus、USB)、RJ-11、又は当該技術分野において概して既知の任意の他の有線接続を使用して実装することができる。無線接続は、Wi-Fi、WiMAX、及びBluetooth、赤外線、セルラーネットワーク、衛星、又は当該技術分野において概して既知の任意の他の無線接続方法を使用して実装することができる。更に、いくつかのネットワークは、パブリックネットワーク150内の通信を容易にするために、単独で又は相互に通信して動作することができる。
【0022】
クラウドベースのプラットフォーム160は、離散型ネットワーク101A~101Nの各ローカルサーバ120から匿名データを受信し、受信した情報を匿名データベースに記憶する。いくつかの場合には、ローカルサーバ120は、機械学習又は他の人工知能技術を使用して、ローカルデータベースに記憶されたデータを分析する。ローカルサーバは、機械学習を使用して、1)心臓の状態及び形態が類似している全ての以前の患者及び関連するアブレーション処置並びに以前の患者から得られた最良の転帰を考慮して、実施対象の心臓アブレーションの最適な治療計画を推奨し、2)心臓アブレーションが行われている間に、前述の以前の患者及びアブレーションデータを考慮して治療計画を修正し、アブレーション処置中に医師に具体的な推奨を行い、及び/又は、3)心臓アブレーションを実施した外科医の技能を、治療計画及び患者転帰を考慮して評価することができる。このようにして、医師は、アブレーション処置の計画、治療及び評価の際に全ての以前の患者及び心臓処置の経験の蓄積を役立てることにより、最良の患者転帰を達成することができる。
【0023】
多くの場合、クラウドベースのプラットフォーム160は、匿名データベースに記憶されたデータをサードパーティ140がパブリックネットワーク150を介してクエリするためのポータルも提供する。いくつかの場合には、サードパーティ140は、標準的なインターネットブラウザを使用して、クラウドベースのプラットフォーム160のポータルにアクセスすることができる。他の場合には、サードパーティ140がクラウドベースのプラットフォーム160のポータルにアクセスするためには、専用のアプリケーションが必要である。
【0024】
クラウドベースのプラットフォームは、匿名データベース内の情報へのアクセスを、拡張現実(augmented reality:AR)/仮想現実(virtual reality:VR)システム130に提供することもできる。AR/VRシステム130は、実際の心臓アブレーションの際に収集されたデータに基づいて、外科医が心臓アブレーション処置を訓練することを可能にする。
【0025】
AR/VRシステム130は、ユーザが目的の訓練を行うことを可能にする。標準的なディスプレイはシステムの全体図を提示するが、AR/VRシステム130は、以下に説明するように、より多くの情報を収集することが重要な領域にアルゴリズムを提供することを可能にする。AR/VRシステム130は、例えば、超音波カテーテルビームを特定の領域に配向し、及び/又は、マッピングシステムを定義して対象領域内のマップの解像度を修正し、1mm~0.5mm又は0.1mmの点密度として領域の表示を可能にするなど、特定の診断要素に焦点を当てることを可能にする。
【0026】
図2Aは、データを収集し、遡及的分析を使用してより良好な将来の治療を可能にする分析を実行するプロセス200Aを示す。ステップ210で、患者が心臓アブレーション治療を受ける前に、患者の心臓の電気的測定値及び解剖学的測定値が、外科用システム110を使用して記録される。ステップ220で、心臓アブレーション処置中に収集された利用可能な治療データが、外科用システムによって記録される。
【0027】
ステップ230で、初期データ分析が、ステップ210の間に記録された電気的測定値及び解剖学的測定値並びにステップ230の間に収集された治療データに基づいて実行される。初期データ分析では、臨床パラメータに基づいて「類似の患者」を特定するため及び、どの程度の距離でアブレーションエネルギーが供給されたかなどの治療方法の特性を電気解剖学的パラメータに基づいて特定するために使用可能な情報を含む処置パラメータを特定することができる。
【0028】
ステップ240で、患者に関する更なる情報を取得することができる。例えば、EMRから、患者のフィードバックから及び心臓監視装置からなどの患者の病歴及び患者のケアの継続性が、例えばフォームに記入することなどによって手動で、又は他のシステムへの接続を介して受け取られる。
【0029】
ステップ250で、ステップ230、ステップ220及びステップ210から収集された情報に基づいて更なる分析が行われ、「仮想患者」特性、治療アプローチ及び「予想される転帰」が定義される。ステップ260で、類似の「仮想患者」のグループが特定される。類似の「仮想患者」のグループは、ステップ250で定義された「仮想患者」を以前に定義された仮想患者と比較することにより、ステップ260で特定される。
【0030】
ステップ270で、短期、中期及び長期転帰のタイムフレームを含む利用可能な長期臨床転帰に基づいて、治療が採点される。ステップ280で、ステップ270で計算されたスコアに基づいて、類似の「仮想患者」のグループに対して推奨される治療。次いで、ステップ290で、患者に関する更なる長期治療データが収集される。長期治療データは、開始スコア、1年の継続症例データに基づく結果及び3年の継続症例データに基づく再採点後の結果を含んでもよい。収集された場合のこの更なるデータは、次に治療スコアを更新するためにステップ270で使用される。
【0031】
図2Bは、いくつかの実施形態による、心臓アブレーション治療計画を生成するためのプロセス200Bを示す。ステップ205で、患者の心臓の電気的測定値が外科用システム110によって取得される。ステップ220で、外科用システム110は、患者の解剖学的測定値を取得する。外科用システム110は、ステップ205及びステップ220で取得された電気的測定値及び解剖学的測定値に基づき、ステップ225で患者の心臓のマッピングを生成する。
【0032】
ステップ235で、患者の心臓のマッピング、患者の心臓の解剖学的測定値及び電気的測定値は、以前の心臓アブレーション処置で収集されたデータと比較される。そのような異なる種類のデータについては、以下で詳細に述べる。差及び相関が求められ、次いで心臓アブレーション処置の治療計画がステップ245で生成され、ステップ255で外科用システム110によって表示される。
【0033】
任意選択的に、ステップ265で、外科用システム110のパラメータは、ステップ245で生成された治療計画に従って心臓アブレーションを実行するように自動的に構成される。構成可能な外科用システム110のパラメータには、アブレーションの強度、持続時間、数及び位置が含まれる。アブレーションが医師によって行われる場合、医師は治療計画を処置のガイドとして利用する。あるいは、アブレーションが外科用ロボットによって全体的又は部分的に支援又は実行される場合、治療計画は、自動外科用ロボットシステムのためのロードマップであってもよく、すなわち、各アブレーションの位置及び持続時間が自動外科用ロボットシステムに入力され、治療計画が実行される。そのような外科用システムは、カリフォルニア州レッドウッドシティのAuris Health社製のMonarch外科用ロボットシステムである。
【0034】
いくつかの場合には、ステップ235及びステップ245は、患者の心臓のマッピング、患者の心臓の解剖学的測定値及び電気測定値をローカルサーバ120に送信する外科用システム110によって実行されてもよい。ローカルサーバ120は、機械学習を利用して、外科用システムから受信した情報をローカルデータベースに記憶されたデータと比較することができる。次いで、ローカルサーバ120は、比較の結果をプライベートネットワーク105を介して外科用システム110に返送する。
【0035】
他の場合には、ステップ235及びステップ245は、患者の心臓のマッピング、患者の心臓の解剖学的測定値及び電気測定値をローカルサーバ120を介してクラウドベースのプラットフォーム160に送信する外科用システム110によって実行されてもよい。ローカルサーバ120は、情報をクラウドプラットフォーム160に送信する前に、任意の「個々に識別可能な健康情報」を削除する。クラウドベースのプラットフォーム160は、次いで、機械学習を利用して、外科用システムから受信した情報を匿名データベースに記憶されたデータと比較する。クラウドベースのプラットフォーム160は、比較の結果を、パブリックネットワーク150及びローカルサーバ120を介して外科用システム110に返送する。
【0036】
システムが、処置中に処置に関する多数の情報を収集してもよく、これらが分類され、後で評価段階の間に医師によって分析されてもよい。
【0037】
図3は、いくつかの実施形態による心臓アブレーション治療を実行するためのプロセス300を示す。ステップ310で、心臓アブレーション治療計画が外科用システム110によって受信される。多くの場合、心臓アブレーション治療計画はプロセス200を使用して生成される。ステップ320で、外科医は、外科用システム110を使用し、治療計画に従って心臓アブレーションを行う。ステップ330で、外科用システム110は、治療計画に基づいて更なるアブレーションが必要であるか否かを判定する。
【0038】
更なるアブレーションが必要でない場合、外科用システム110は、ステップ370で患者の心臓のアブレーション後の電気的測定値及び解剖学的測定値を取得する。任意選択的に、ステップ370において、アブレーション後の電気的測定値及び解剖学的測定値が外科用システム110によって表示される。ステップ390で、アブレーション後の電気的測定値及び解剖学的測定値並びにアブレーション処置に関する情報が、プライベートネットワーク105を介してローカルサーバ120に送信される。
【0039】
更なるアブレーションが必要な場合、外科用システム110は、ステップ340で患者の心臓の更なる電気的測定値及び解剖学的測定値を取得する。次に、ステップ350で、更なる電気的測定値及び解剖学的測定値が治療計画と比較される。比較に基づき、ステップ360で治療計画が修正される。ステップ320で実行された特定のアブレーションでのエラー又は不正確さ、あるいは患者の生理機能の変化により、治療計画の修正が必要になる場合がある。任意選択的に、ステップ365で、外科用システム110のパラメータは、ステップ360で生成された修正後の治療計画に従って心臓アブレーションを実行するように自動的に構成されてもよい。外科用システムのパラメータには、アブレーションの強度、持続時間、数及び位置が含まれる。外科医は、ステップ320で、修正後の治療計画に従って更なるアブレーションを行うことができる。そのような方法で、システムは、医師に「実況で」改善又は代替案を提案し、処置の間に予期しない困難が生じた場合に医師に治療のための複数の選択肢を与えることができる。システムが、処置の各部分を評価し、医師に一定のフィードバックを提供してもよい。例えば、治療計画が位置Xでのアブレーションを必要とし、医師がその計画から少しでも逸脱している場合、偏差からの修正されたアブレーションスキームが必要になる場合がある。
【0040】
別の一実施形態では、システムは、心臓上に詳細な「グリッド」を提供することにより、医師が特定のスポットに高精度で案内されることを可能にしてもよい。例示的なグリッドは、本明細書で後述する
図6Bに示されている。このようなグリッドが、患者全体の心臓のマッピングの比較及び分析を容易にすることにより、局所興奮到達時間(local activation time:LAT)マッピング、サイクル長(cycle length:CL)マッピング及びリップル周波数の提案を可能にし、これらを組み合わせて実行中の治療計画の成否を判定することを可能にしてもよい。図示されているグリッドは、説明のために大幅に簡略化されているが、実際のアブレーションに利用されるグリッドは、粒状性がより高く、したがってより解像度がより高くなることに留意されたい。しかしながら、マッピングの粒状性にかかわらず、同じ概念が適用される。
【0041】
加えて、システムは、長期データについては、例えばホルタ/レコーダを介してフォローアップ情報を記録し、検討することを可能にすることにより、プロセス及び処置を良好な患者転帰と相関させることができる。
【0042】
このシステムでは、患者の心臓生理機能に特に関連しない可能性がある患者に関する更なる情報を収集するために、患者の「フォーム」を含めることを可能にする。フォームの機能及び情報が、例えば、患者の年齢、体重、薬剤などを判定するための医療履歴フォームを含んでもよい。これらのフォームが、例えば12週間などの短期間、例えば1年間などの中期間及び/又は、例えば3~5年間以上などの長期間にわたるケアの継続性情報の収集及び推奨を可能にしてもよい。
【0043】
このようなデータ及びAI/機械学習アルゴリズムを利用して、システムは、人、条件などの様々な「カテゴリ」に基づいて予測アルゴリズムを開発することができる。いくつかの場合には、ステップ340及びステップ350は、更なる電気的測定値及び解剖学的測定値をローカルサーバ120に送信する外科用システム110によって実行される。ローカルサーバ120は、機械学習を利用して、外科用システムから受信した情報をローカルデータベースに記憶されたデータと比較することができる。次いで、ローカルサーバ120は、比較の結果をプライベートネットワーク105を介して外科用システム110に返送する。
【0044】
他の場合には、ステップ340及びステップ350は、更なる電気的測定値及び解剖学的測定値をローカルサーバ120を介してクラウドベースのプラットフォーム160に送信する外科用システム110によって実行される。この場合、ローカルサーバ120は、情報をクラウドプラットフォーム160に送信する前に、任意の「個々に識別可能な健康情報」を削除する。クラウドベースのプラットフォーム160は、機械学習を利用して、外科用システムから受信した情報を匿名データベースに記憶されたデータと比較してもよい。次いで、クラウドベースのプラットフォーム160は、比較の結果を、パブリックネットワーク150及びローカルサーバ120を介して外科用システム110に返送する。
【0045】
図4は、本明細書に開示される実施形態による人工知能システム400のグラフィック描写を示す。システム400は、データ410、マシン420、モデル430、複数の転帰440及び基盤となるハードウェア450を含む。システム400は、複数の転帰440を予測できるようにするモデル430を構築しながら、データ410を使用してマシン420を訓練することによって動作する。システム400が、ハードウェア450に対して動作してもよい。そのような構成では、データ410がハードウェア450に関連してもよく、例えば外科用システム110に由来してもよい。例えば、データ410は、進行中のデータ又はハードウェア450に関連する出力データであり得る。マシン420は、ハードウェア450に関連するコントローラ又はデータコレクタとして動作してもよく、あるいはこれに関連付けられていてもよい。モデル430は、ハードウェア450によって達成される転帰を予測するために、ハードウェア450の動作をモデル化すると共に、ハードウェア450から収集されたデータ410をモデル化するように構成され得る。ハードウェア450は、予測される転帰440を使用して、ハードウェア450からの所定の望ましい転帰440を提供するように構成され得る。
【0046】
図5は、
図4の人工知能システム500において実行される方法を示す。方法500は、ステップ510でハードウェアからデータを収集することを含む。このデータは、ハードウェアからの現在収集されている履歴データ又は他のデータを含んでもよい。例えば、このデータは、外科的処置中の測定を含んでもよく、処置の転帰と関連付けることができる。例えば、心臓の温度を収集し、心臓処置の転帰と相関させることができる。
【0047】
方法500は、ステップ520でハードウェア上でマシンを訓練することを含む。訓練は、ステップ510で収集されたデータの分析及び相関を含み得る。例えば、心臓の場合、温度及び転帰のデータが、処置中の心臓の温度と転帰との間に相関又は関連が存在するか否かを判定するために訓練されてもよい。
【0048】
方法500は、ステップ530でハードウェアに関連するデータに基づいてモデルを構築することを含む。モデルの構築が、以下に説明するように、物理的ハードウェア又はソフトウェアモデリング、アルゴリズムモデリングなどを含んでもよい。このモデリングが、収集され訓練されたデータを表現することを目指してもよい。
【0049】
方法500は、ステップ540でハードウェアに関連するモデルの転帰を予測することを含む。この転帰の予測が、訓練されたモデルに基づいてもよい。例えば、心臓の場合、処置中の温度が97.7~100.2の時に処置から肯定的な転帰が得られると、所与の処置において、処置中の心臓の温度に基づいて転帰を予測することができる。このモデルは初歩的なものであるが、本発明の理解を深めるために例示的な目的で提供されている。
【0050】
本システム及び方法は、マシンを訓練し、モデルを構築し、アルゴリズムを使用して結果を予測するように動作する。これらのアルゴリズムを使用して、訓練されたモデルを解き、ハードウェアに関連する転帰を予測してもよい。これらのアルゴリズムは、一般に分類アルゴリズム、回帰アルゴリズム及びクラスタリングアルゴリズムに区分することができる。
【0051】
例えば、分類アルゴリズムは、予測される変数である従属変数が複数のクラスに分割され、所与の入力に対して1つのクラス、すなわち従属変数を予測する状況で使用される。したがって、分類アルゴリズムは、転帰を所定数の一定の事前定義された転帰から予測するために使用される。分類アルゴリズムが、単純ベイズアルゴリズム、決定木、ランダムフォレスト分類器、ロジスティック回帰、サポート・ベクター・マシン及びk近傍法を含んでもよい。
【0052】
一般的に、単純ベイズアルゴリズムは、ベイズ定理に従い、確率論的アプローチに従う。他の確率論に基づくアルゴリズムも使用可能であり、一般に、例示的な単純ベイズアルゴリズムについて以下に説明するものと同様の確率論の原理を使用して動作することが理解されよう。
【0053】
図6は、単純ベイズ計算の確率の例を示す。ベイズ定理の確率論的アプローチは、本質的には、データに直接ジャンプする代わりに、アルゴリズムがターゲットのクラスごとに事前確率のセットを持っていることを意味する。データが入力された後、単純ベイズアルゴリズムは、事前確率を更新して事後確率を形成してもよい。これは、以下の式:
【0054】
【0055】
この単純ベイズアルゴリズム及びベイズアルゴリズムは、一般に、入力がn個のクラスの所与のリストに属しているか否かを予測する必要がある場合に有用であり得る。n個全てのクラスの確率は非常に低いため、確率論的アプローチを使用することができる。
【0056】
例えば、
図6に示すように、ゴルフをプレーする人は、第1のデータセット610に示されている外の天気を含む要因に依存する。第1のデータセット610は、第1の列に天気を示し、第2の列にその天気に関連するプレーの結果を示す。頻度テーブル620では、特定の事象が発生する頻度が生成される。頻度テーブル620では、ある人が各気象条件においてゴルフをプレーするか又はプレーしない頻度が求められる。そこから、尤度テーブルがコンパイルされ、初期確率が生成される。例えば、天気が曇りである確率は0.29だが、プレーの一般的な確率は0.64である。
【0057】
事後確率が、尤度テーブル630から生成されてもよい。これらの事後確率を、気象条件及びゴルフがそれらの気象条件でプレーされるか否かについての質問に答えるように構成してもよい。例えば、外が晴れであり、かつゴルフがプレーされる確率は、ベイズ式:
P(はい|晴れ)=P(晴れ|はい)×P(はい)/P(晴れ)
によって表されてもよい。
【0058】
尤度テーブル630によると、
P(晴れ|はい)=3/9=0.33、
P(晴れ)=5/14=0.36、
P(はい)=9/14=0.64
である。
したがって、P(はい|晴れ)=.33×.64/.36又は約0.60(60%)である。
【0059】
一般に、決定木はフローチャートに似たツリー構造であり、各外部ノードは属性のテストを示し、各ブランチはそのテストの結果を表す。リーフノードは、実際の予測ラベルを含む。決定木は、ツリーのルートから始まり、リーフノードに到達するまで属性値が比較される。決定木は、高次元のデータを処理する場合や、データの準備に費やされた時間がほとんどない場合に、分類器として使用できる。決定木は、単純決定木、線形決定木、代数決定木、確定的決定木、ランダム化決定木、非確定的決定木及び量子決定木の形態をとることができる。例示的な決定木を、以下に
図7で示す。
【0060】
図7は、ゴルフをプレーするか否かを決定する際の、上記のベイズの例と同じ構造に沿った決定木を示している。決定木において、第1のノード710は、決定木を下に進むための選択肢として、天気が晴れ712、曇り714及び雨716である場合を調べる。天気が晴れである場合、木の枝は、気温を調べる第2のノード720に続く。この例では、ノード720の気温は、高722又は正常724であり得る。ノード720で気温が高722である場合、ゴルフ「いいえ」723の予測結果が発生する。ノード720で気温が正常724である場合、ゴルフ「はい」725の予測結果が発生する。
【0061】
更に、第1のノード710から、曇り714、ゴルフ「はい」715の結果が発生する。
【0062】
第1のノードの天気710から、雨716の結果として、(再び)第3のノード730が温度を調べる。第3のノード730で気温が正常732である場合、ゴルフをプレーする「はい」733となる。第3のノード730で気温が低734である場合、ゴルフをプレーしない「いいえ」735となる。
【0063】
この決定木から、あるゴルファーは曇天715の場合、正常の気温の晴天725の場合及び正常の気温の雨天733の場合はゴルフをプレーするが、このゴルファーは晴天の高温723又は降雨の低温735の場合はプレーしない。
【0064】
ランダムフォレスト分類器は、決定木のコミッティーであり、各決定木は、データの属性のサブセットを与えられ、そのサブセットに基づいて予測する。決定木の実際の予測値のモードが考慮され、最終的なランダムフォレストの回答が提供される。ランダムフォレスト分類器は一般に、スタンドアロンの決定木に存在する過剰適合を軽減することで、より堅牢で正確な分類器となっている。
【0065】
図8は、衣服の色を分類するための例示的なランダムフォレスト分類器を示す。
図8に示すように、ランダムフォレスト分類器は、5つの決定木810
1、810
2、810
3、810
4及び810
5(集合的に又は概略的に決定木810と呼ばれる)を含む。それぞれの木は、衣服の色を分類するように設計されている。個々の木は概ね
図7の決定木として動作するので、木及び決定の各々については説明しない。この図では、5つの木のうち3つ(810
1、810
2、810
4)が衣服が青色であると判断し、1つが衣服が緑色(810
3)であると判断し、残りの木は衣服が赤色(810
5)であると判断する。ランダムフォレストは、5つの木のこれらの実際の予測値を受け取り、実際の予測値のモードを計算して、衣服が青色であるというランダムフォレストの回答を提供する。
【0066】
ロジスティック回帰は、バイナリ分類タスクのもう1つのアルゴリズムである。ロジスティック回帰は、シグモイド関数とも呼ばれるロジスティック関数に基づいている。このS字曲線は、任意の実数値を取り、これを0と1との間でマッピングして、漸近的にこれらの限界に近づくことができる。ロジスティックモデルは、合格/不合格、勝ち/負け、生存/死亡又は健康/病気など、特定のクラス又は事象が存在する確率をモデル化するために使用できる。これを、画像に猫、犬、ライオンなどが含まれているかどうかの判定など、いくつかのクラスのイベントをモデル化するように拡張してもよい。画像で検出される各オブジェクトには、0と1との間の確率が割り当てられ、これらの確率の合計は1となる。
【0067】
ロジスティックモデルでは、「1」とラベル付けされた値の対数オッズ(オッズの対数)は、1つ以上の独立変数(「予測子」)の線形結合であり、独立変数はそれぞれ、バイナリ変数(インジケータ変数でコード化された2つのクラス)又は連続変数(任意の実数値)であり得る。「1」とラベル付けされた値の対応する確率は、0(確実に「0」の値)と1(確実に「1」の値)との間で変化する可能性があることから、このようにラベル付けされ、ロジスティック関数は、対数オッズを確率に変換する関数であることから、このように称される。対数オッズスケールの測定単位は、ロジスティック単位の別名であるロジットと呼ばれる。プロビットモデルなどの、ロジスティック関数の代わりにシグモイド関数が異なる類似のモデルも使用できる。ロジスティックモデルの特徴は、独立変数のうちの1つを増加させると、与えられた結果のオッズが一定の割合で乗法的にスケーリングされ、各独立変数がそれ自体のパラメータを有することである。バイナリ従属変数の場合、これはオッズ比を一般化する。
【0068】
バイナリロジスティック回帰モデルでは、従属変数には2つのレベル(カテゴリ)がある。3つ以上の値を持つ出力は、多項ロジスティック回帰によってモデル化され、複数のカテゴリが順序付けられている場合は、順序ロジスティック回帰(例えば、比例オッズ順序ロジスティックモデル)によってモデル化される。ロジスティック回帰モデル自体は、出力の確率を入力に関して単純にモデル化し、統計的分類を実行しない(分類器ではない)が、例えば、カットオフ値を選択し、確率がカットオフよりも大きい入力を1つのクラスとして、確率がカットオフ未満である入力を他のクラスとして分類することにより、分類器の作成に使用できる。これは、バイナリ分類器を作成する一般的な方法である。
【0069】
図9は、例示的なロジスティック回帰を示す。この例示的なロジスティック回帰は、変数のセットに基づいた結果の予測を可能にする。例えば、個人の成績点平均に基づいて、学校に受け入れられる結果を予測することができる。成績点平均の過去の履歴と合格との関係により、予測を行うことができる。
図9のロジスティック回帰は、成績点平均変数920の分析が、0から1によって定義される結果910を予測することを可能にする。S字曲線の下端930では、成績点平均920は、受け入れられないという結果910を予測する。S字曲線の上端940では、成績点平均920は、受け入れられるという結果910を予測する。ロジスティック回帰を使用して、住宅価値、保険セクタの顧客生涯価値などを予測することができる。
【0070】
サポート・ベクター・マシン(support vector machine:SVM)を使用して、2つのクラス間のマージンを可能な限り離してデータを並べ替えることができる。これは、マージン最大化分離と呼ばれる。SVMは、その目的のためにデータセット全体を使用する線形回帰とは異なり、超平面をプロットしながらサポートベクターを考慮することが可能である。
【0071】
図10は、例示的なサポート・ベクター・マシンを示す。例示的なSVM1000では、データは、正方形1010及び三角形1020として表される2つの異なるクラスに分類され得る。SVM1000は、ランダムな超平面1030を描画することによって動作する。この超平面1030は、超平面1030と各クラスからの最も近いデータポイント1050との間の距離(線1040で示される)を比較することによって監視される。超平面1030に最も近いデータポイント1050は、サポートベクターとして知られている。超平面1030は、これらのサポートベクター1050に基づいて描かれ、最適な超平面は、各サポートベクター1050からの最大距離を有する。超平面1030とサポートベクター1050との間の距離は、マージンとして知られている。
【0072】
SVM1000は、超平面1030とサポートベクター1050との間の距離が最大になるように超平面1030を使用することによって、データ分類に使用され得る。このようなSVM1000を、例えば心臓疾患を予測するために使用してもよい。
【0073】
k近傍法(k Nearest Neighbors:KNN)は、一般に基本的なデータ分散を想定しておらず、合理的に短い訓練フェーズを実行する一連のアルゴリズムを指す。一般に、KNNは複数のクラスに分割された多数のデータポイントを使用して、新しいサンプルポイントの分類を予測する。運用上、KNNは新しいサンプルで整数Nを指定する。新しいサンプルに最も近いシステムのモデル内のN個のエントリが選択される。これらのエントリの最も一般的な分類が決定され、その分類が新しいサンプルに割り当てられる。KNNは一般に、訓練セットが増加するにつれて記憶空間を増加させる必要がある。これは、推定時間が訓練ポイントの数に比例して増加することも意味する。
【0074】
回帰アルゴリズムでは、出力は連続量であるため、目標変数が連続的な変数である場合に回帰アルゴリズムを使用することができる。線形回帰は、回帰アルゴリズムの一般的な例である。線形回帰は、一貫した変数を考慮して、真の品質(住宅コスト、コール回数、全ての取引など)を測定するために使用可能である。変数と結果との間の関係が、最適な線を当てはめることによって求められる(このことから線形回帰と呼ばれる)。この最適線は回帰線として知られ、直接条件Y=a×X+bで表される。線形回帰は、次元数が少ないアプローチで最もよく使用される。
【0075】
図11は、例示的な線形回帰モデルを示す。このモデルでは、予測変数1110が測定変数1120に対してモデル化される。予測変数1110及び測定変数1120のインスタンスのクラスタは、データポイント1130としてプロットされている。次に、データポイント1130は、最適線1140に当てはめられる。次に、後続の予測で最適線1140を使用するが、測定変数1120が与えられている場合、線1140を使用して予測変数1110を予測する。線形回帰を使用して、金融ポートフォリオ、給与予測、不動産及び交通機関の到着予定時刻をモデル化及び予測することができる。
【0076】
クラスタリングアルゴリズムを、データセットのモデル化及び訓練に使用してもよい。クラスタリングでは、入力は、特徴の類似性に基づいて2つ以上のクラスタに割り当てられる。クラスタリングアルゴリズムは、通常、ガイダンスなしでデータからパターン及び有用な洞察を学習する。例えば、K平均クラスタリングなどの教師なし学習アルゴリズムを使用して、視聴者を興味、年齢、地理などに基づいて類似のグループにクラスタリングすることができる。
【0077】
K平均クラスタリングは、一般に、単純な教師なし学習アプローチとみなされる。K平均クラスタリングでは、同様のデータポイントを一緒にクラスタリングし、クラスタの形でバインドすることができる。データポイントを一緒にバインドする方法の1つは、データポイント群の重心を計算することによって行われる。効果的なクラスタの決定では、K平均クラスタ化で、各ポイントのクラスタの重心からの距離が評価される。データポイントと重心との間の距離に応じて、データは最も近いクラスタに割り当てられる。クラスタリングの目的は、一連のラベルなしデータの固有のグループ化を決定することである。K平均における「K」は、形成されたクラスタの数を表す。クラスタの数(基本的には、データの新しいインスタンスが分類され得るクラスの数)は、ユーザが決定できる。この決定は、例えば、フィードバックを使用し、訓練中にクラスタのサイズを見ることで行うことができる。
【0078】
K平均は主に、データセットに明確で十分に分離されたポイントがある場合に使用される。そうしないと、クラスタが分離されていない場合、モデル化によってクラスタが不正確になる可能性がある。また、データセットに大量の外れ値が含まれている場合、又はデータセットが非線形である場合には、K平均を回避することができる。
【0079】
図12は、K平均クラスタリングを示す。K平均クラスタリングでは、データポイントがプロットされ、K値が割り当てられる。例えば、
図12のK=2の場合、データポイントは、描写1210に示されるようにプロットされる。次に、ステップ1220で、ポイントが同様の中心に割り当てられる。クラスタの重心が、1230に示すように特定される。重心が特定されると、1240に示すように、データポイントと各クラスタの重心との間の距離が最小となるようにポイントがクラスタに再割り当てされる。次に、クラスタの新しい重心を描写1250に示すように定めることができる。データポイントがクラスタに再割り当てされると、クラスタの新しい重心が形成され、反復又は一連の反復が発生してクラスタのサイズを最小化し、最適な重心を決定することができる。次に、新しいデータポイントが測定されると、その新しいデータポイントが重心及びクラスタと比較され、そのクラスタで特定され得る。
【0080】
アンサンブル学習アルゴリズムを使用してもよい。これらのアルゴリズムは、複数の学習アルゴリズムを使用して、構成要素である学習アルゴリズムのいずれかのみから得られるよりも優れた予測パフォーマンスを実現する。アンサンブル学習アルゴリズムは、仮説空間を検索するタスクを実行して、特定の問題について適切な予測を行うのに適した仮説を見つける。仮説空間に特定の問題に非常に適した仮説が含まれている場合でも、適切な仮説を見つけるのは非常に難しい場合がある。アンサンブルアルゴリズムは、複数の仮説を組み合わせてより良い仮説を形成する。アンサンブルという用語は通常、同じ基本学習器を使用して複数の仮説を生成する方法で用いられる。複数分類器システムのより広い概念は、同じ基本学習器によって誘導されない仮説のハイブリダイゼーション(hybridization of hypotheses)も網羅する。
【0081】
アンサンブルの予測を評価するには、通常、単一のモデルの予測を評価するよりも多くの計算が必要になるため、アンサンブルは、多くの余分な計算を実行することにより、貧弱な学習アルゴリズムを補う方法と考えることができる。決定木などの高速アルゴリズムは、一般にはランダムフォレストなどのアンサンブル法で使用されているが、より低速のアルゴリズムでもアンサンブル法の恩恵を受けることができる。
【0082】
アンサンブルは、訓練後に使用して予測を行うことができるため、それ自体が監視付き学習アルゴリズムである。したがって、訓練されたアンサンブルは、単一の仮説を表す。ただし、この仮説は、それが構築されたモデルの仮説空間内に含まれているとは限らない。したがって、アンサンブルは、それらが表すことができる関数により多くの柔軟性を持たせることができる。この柔軟性により、理論的には、単一のモデルよりも訓練データを過剰適合させることができるが、実際には、一部のアンサンブル法(特にバギング)は、訓練データの過剰適合に関連する問題を軽減する傾向がある。
【0083】
経験的に、モデル間にかなりの多様性がある場合、アンサンブルアルゴリズムはより良い結果をもたらす傾向がある。したがって、多くのアンサンブル法は、それらが組み合わせるモデル間の多様性を促進することを目指している。直感的ではないが、(エントロピ削減決定木などの)非常に慎重なアルゴリズムよりも強力なアンサンブルを生成するために、(ランダム決定木などの)よりランダムなアルゴリズムを使用することができる。ただし、様々な強力な学習アルゴリズムの使用は、多様性を促進するためにモデルを簡略化しようとする手法を使用するよりも効果的であることが示されている。
【0084】
アンサンブルの構成要素分類器の数は、予測の精度に大きな影響を与える。このことは、オンラインのアンサンブル分類器の場合、アンサンブルのサイズとビッグデータストリームの量及び速度とを先験的に決定するために、更に重要となる。理論上のフレームワークは、理想的な数の構成要素分類器がアンサンブルに存在し、分類器がこの数より多いか又は少ないと精度が低下することを示唆している。理論上のフレームワークは、クラスラベルと同じ数の独立した構成要素分類器を使用すると、最も高い精度が得られることを示している。
【0085】
アンサンブルのいくつかの一般的なタイプには、ベイズ最適分類器、ブートストラップ集約(バギング)、ブースティング、ベイズモデル平均化、ベイズモデルの組み合わせ、モデルのバケット及びスタッキングが含まれる。
図13は、バギングが並行して実行されており(1310)、ブースティングが順次に実行されている(1320)例示的なアンサンブル学習アルゴリズムを示している。
【0086】
ニューラルネットワークは、ニューロンのネットワーク又は回路、あるいは現代的な意味では、人工ニューロン又はノードで構成される人工ニューラルネットワークである。生物学的ニューロンのつながりが、重みとしてモデル化される。正の重みは興奮性のつながりを反映し、負の値は抑制性のつながりを意味する。入力は重みで修正され、線形結合を使用して合計される。活性化関数が、出力の振幅を制御することができる。例えば、出力の許容範囲は通常0~1であるが、-1~1の場合もある。
【0087】
これらの人工ネットワークは、予測モデリング、適応制御及びアプリケーションに使用でき、データセットを介して訓練することができる。経験から生じる自己学習がネットワーク内で発生する可能性があり、複雑で一見無関係な一組の情報から結論を導き出すことができる。
【0088】
完全を期すために、生物学的ニューラルネットワークは、化学的に結合されたニューロン又は機能的に関連付けられたニューロンのグループから構成される。1つのニューロンが他の多くのニューロンに結合されていてもよく、ネットワーク内のニューロン及び接続の総数が広範囲にわたってもよい。シナプスと呼ばれる結合は、通常、軸索から樹状突起へと形成されるが、樹状突起間シナプス及び他の結合も可能である。電気的な信号伝達とは別に、神経伝達物質の拡散から生じる他の信号伝達形態がある。
【0089】
人工知能、認知モデリング及びニューラルネットワークは、生物学的神経システムのデータ処理方法に着想を得た情報処理パラダイムである。人工知能及び認知モデリングは、生物学的ニューラルネットワークのいくつかの特性をシミュレートしようとする。人工知能分野では、人工ニューラルネットワークが音声認識、画像分析及び適応制御にうまく適用され、(コンピュータゲームやビデオゲームにおける)ソフトウェアエージェントや自律ロボットが構築されている。
【0090】
ニューラルネットワーク(neural network:NN)は、人工ニューラルネットワーク(artificial neural network:ANN)又はシミュレートニューラルネットワーク(simulated neural network:SNN)と呼ばれる人工ニューロンの場合、情報処理に計算への接続論的アプローチに基づいて数学的モデル又は計算モデルを使用する、相互に関連する天然のニューロン又は人工ニューロンのグループである。ほとんどの場合、ANNは、ネットワークを通って流れる外部情報又は内部情報に基づいてその構造を変更する適応型システムである。より実際的には、ニューラルネットワークは非線形の統計データモデリングツール又は意思決定ツールである。これらを、入力と出力の間の複雑な関係をモデル化するため及びデータのパターンを見つけるために使用することができる。
【0091】
人工ニューラルネットワークは、処理要素と要素パラメータとの間の接続によって決定される複雑でグローバルな挙動を示すことができる単純な処理要素(人工ニューロン)のネットワークを含む。
【0092】
人工ニューラルネットワークの1つの古典的なタイプは、再帰型ホップフィールドネットワークである。人工ニューラルネットワークモデルの有用性は、観測から関数を推定し、それを使用するために使用できるという事実にある。教師なしニューラルネットワークは、入力分布の顕著な特徴をキャプチャする入力の表現の学習や、最近では、観測データの分布関数を暗黙的に学習できるディープラーニングアルゴリズムにも使用できる。ニューラルネットワークでの学習は、データやタスクの複雑さのためにそのような関数の設計を手作業では行えない用途において特に有用である。
【0093】
ニューラルネットワークは、様々な分野で使用可能である。人工ニューラルネットワークが適用されるタスクは、関数近似又は、時系列予測及びモデリングを含む回帰分析、パターン及び配列認識、新規性の検出及び逐次的な意思決定を含む分類、フィルタリング、クラスタリング、ブラインド信号分離及び圧縮を含むデータ処理を含む広いカテゴリにわたる傾向がある。
【0094】
ANNの適用領域には、非線形システムの識別及び制御(車両制御、プロセス制御)、ゲームのプレー及び意思決定(バックギャモン、チェス、レース)、パターン認識(レーダーシステム、顔識別、オブジェクト認識)、シーケンス認識(ジェスチャ、スピーチ、手書きテキスト認識)、医療診断、金融アプリケーション、データマイニング(又はデータベースでの知識発見、すなわち「KDD」)、視覚化並びに電子メールスパムフィルタリングが含まれる。例えば、オブジェクト認識のために訓練された写真から生じるユーザの興味のセマンティックプロファイルを作成することが可能である。
【0095】
図14は、例示的なニューラルネットワークを示す。ニューラルネットワークには、1410
1や1410
2などの複数の入力で表される入力層がある。入力1410
1、1410
2は、ノード1420
1、1420
2、1420
3、1420
4を含むものとして示されている隠れ層に供給される。これらのノード1420
1、1420
2、1420
3、1420
4は組み合わされて、出力層において出力1430を生成する。ニューラルネットワークは、単純な処理要素であるノード1420
1、1420
2、1420
3、1420
4の隠れ層を介して単純な処理を実行し、これらのノードは、処理要素と要素パラメータとの間の接続によって決定される複雑でグローバルな挙動を示すことができる。
【0096】
図14のニューラルネットワークがハードウェアで実装されてもよい。
図15を参照すると、ハードウェアベースのニューラルネットワークが示されている。
【0097】
心不整脈及び特に心房細動は、特に高齢者集団では、一般的かつ危険な病状として存続する。正常な洞律動を有する患者では、心房、心室、及び興奮伝導組織からなる心臓は、電気的に興奮して、同期的な、パターン化した形で拍動する。心不整脈を有する患者では、心組織の異常な領域は、正常な洞律動を有する患者のように、正常に伝導性である組織と関連する同期拍動周期に従わない。これに対して、心組織の異常領域では隣接組織への異常な伝導が行われ、これにより心臓周期が乱れて非同期的な心律動となる。こうした異常伝導は、例えば、房室(AV)結節及びヒス束の伝導経路に沿った洞房(SA)結節の領域、又は心室及び心房の壁を形成する心筋組織など、心臓の様々な領域で生じることがこれまでに知られている。
【0098】
心房性不整脈を含めた心不整脈は、心房の周りで散乱して、しばしば自己伝播する電気インパルスの複数の非同期的ループを特徴とする、マルチウェーブレットリエントラント型となる場合がある。マルチウェーブレットリエントラント型に代わって、又はそれに加えて、心不整脈はまた、心房の組織の孤立領域が、急速で反復的な様式で自律的に興奮する場合などの、局所的な起源を有する場合もある。心室性頻脈症(V-tach又はVT)は、心室のうちの1つにおいて起こる頻脈症又は高速な心律動である。これは、心室細動及び突然死につながり得るため、潜在的に致死性の不整脈である。
【0099】
不整脈の1つのタイプ、心房細動は、洞房結節によって生成される通常の電気インパルスが、心房及び肺静脈内で生じる無秩序な電気インパルスによって圧倒され、不規則なインパルスが心室に伝導する場合に発生する。結果的に不規則な心拍が生じ、これは、数分から数週間、又は更に数年間、持続する場合がある。心房細動(AF)は、多くの場合、脳卒中による場合が多い死亡のリスクの僅かな増加を招く、慢性的な症状である。リスクは年齢と共に増加する。80歳を超える人々の約8%が、ある程度のAFを有している。心房細動は、無症候性である場合が多く、それ自体は概ね致死性ではないが、動悸、脱力感、失神、胸痛及び鬱血性心不全をもたらす恐れがある。脳卒中のリスクはAFの間に増大するが、これは、収縮が不十分な心房及び左心耳内に血液が溜まって血栓を形成する可能性があるためである。AFに関する第一選択の治療法は、心拍数を減らすか、又は心律動を通常に戻す投薬治療である。更には、AFを有する患者は、脳卒中のリスクから守るために、抗凝血剤を与えられる場合が多い。そのような抗凝血剤の使用は、それ自体のリスクである内出血を伴う。一部の患者では、投薬治療は十分ではなく、その患者のAFは、薬剤不応、すなわち、標準的な薬理学的介入では治療不可能であると判断される。同期電気的除細動もまた、AFを通常の心律動に変換するために使用することができる。あるいは、AFの患者は、カテーテルアブレーションによって治療される。
【0100】
カテーテルアブレーションベースの治療に、心臓組織、特に心内膜及び心臓容積の電気的特性をマッピングすること、並びにエネルギーの印加によって心臓組織を選択的にアブレーションすることが含まれてもよい。例えば、心臓組織に沿った波動伝播の電位マップ(電圧マップ)、又は様々な組織が位置する場所までの到達時間のマップ(局所興奮時間(LAT)マップ)の生成などの心臓マッピングを用いて、心臓組織の局所的機能障害を検出してもよい。心臓マッピングに基づくものなどのアブレーションは、心臓のある部分から別の部分への不要な電気信号の伝播を停止又は修正することができる。
【0101】
アブレーション法は、非伝導性の損傷部を形成することによって望ましくない電気経路を破壊するものである。様々なエネルギー送達の様式が、損傷部を形成する目的でこれまでに開示されており、心臓組織壁に沿って伝導ブロック部分を形成するためのマイクロ波、レーザー、及びより一般的には高周波エネルギーの使用が挙げられる。マッピングに続いてアブレーションを行う2段階の処置においては、通常、1つ以上の電気センサ(又は電極)を収納したカテーテルを心臓の内部に前進させ、多数の点におけるデータを取得することによって、心臓内の各点における電気活動が感知及び測定される。次いで、これらのデータを利用して、アブレーションを実施すべき心内膜の標的領域が選択される。
【0102】
心房細動及び心室頻拍などの困難な疾患を医師が治療する際の心臓アブレーション及びその他の心臓電気生理学的処置は、ますます複雑化している。難治性不整脈の治療は現在、対象となる心腔の解剖学的構造を再構成するために、3次元(3D)マッピングシステムの使用に依存している。
【0103】
例えば、心臓病専門医は、心臓内EGM信号を解析して、非通常型心房粗動及び心室頻拍を含む様々な心臓疾患を治療するためのアブレーションポイントを決定するために、Biosense Webster,Inc.(Diamond Bar,California)製のCARTO(登録商標)3 3Dマッピングシステムのコンプレックス細分化心房電位図(CFAE)モジュールなどのソフトウェアに依存する。
【0104】
3Dマップは、これらの困難な不整脈の解剖学的及び機能的基質を表す、組織の電気生理学的特性に関する複数の情報を提供することができる。
【0105】
病因の異なる心筋症(虚血性、拡張型心筋症(DCM)、肥大型心筋症(HCM)、不整脈原右室異形成症(ARVD)、左心室緻密化障害(LVNC)等)は、識別可能な基質を有し、正常に機能している心筋細胞領域で囲まれている不健康な組織領域を特徴とする。
【0106】
図16は、本開示の主題の1つ以上の例示的な特徴を具現化することの可能な例示的なシステム1620の図である。システム1620の全て又は一部を使用して、訓練データセットの情報を収集することができ、かつ/あるいはシステム1620の全て又は一部を使用して、訓練済みモデルを具現化することができる。システム1620は、体内器官の組織領域を破壊するように構成されたカテーテル1640などの構成要素を含み得る。カテーテル1640が、生体データを取得するように更に構成されていてもよい。カテーテル1640は、ポイントカテーテルであるように示されているが、(例えば電極などの)1つ以上の要素を含む任意の形状のカテーテルが、本明細書に開示される実施形態を具現化するために使用され得ることが理解されよう。システム1620は、テーブル1629上に横になっている患者1628の心臓1626などの身体部分内へと医師1630によってナビゲートされ得るシャフトを有するプローブ1621を含む。複数の実施形態では複数のプローブが提供されてもよく、本明細書には簡潔さのために単一のプローブ1621が記載されているが、プローブ1621が複数のプローブを表してもよいことが理解されるであろう。
図16で示されるように、医師1630は、カテーテル1640の近位端部の近くの遠隔操作機1632及び/又はシース1623からの偏向部を使用して、シャフト1622の遠位端部を操作しながら、シース1623を通してシャフト1622を挿入することができる。差し込み
図1625に示されるように、カテーテル1640は、シャフト1622の遠位端部に取り付けられ得る。カテーテル1640は、折りたたまれた状態でシース1623を通して挿入され得、次いで、心臓1626内で拡張され得る。本明細書で更に開示されるように、カテーテル1640は、少なくとも1つのアブレーション電極1647及びカテーテル針1648を含み得る。
【0107】
例示的な複数の実施形態によれば、カテーテル1640は、心臓1626の心腔の組織領域をアブレーションするように構成されてもよい。差し込み
図1645は、心臓1626の心腔内部のカテーテル1640を拡大して示している。図示するように、カテーテル1640は、カテーテルの本体に結合された少なくとも1つのアブレーション電極1647を含むことができる。他の例示的な実施形態によれば、カテーテル1640の形状を形成するスプラインを介して複数の要素が接続されてもよい。アブレーションを行うか又は生体データを取得するように構成された任意の要素であり得、電極、トランスデューサ又は1つ以上の他の要素であり得る1つ以上の他の要素(図示せず)を設けることができる。
【0108】
本明細書に開示する実施形態によれば、電極1647などのアブレーション電極は、心臓1626などの体内器官の組織領域にエネルギーを供給するように構成されてもよい。エネルギーは、熱エネルギーであってもよく、組織領域の表面から始まって組織領域の厚さに延在する組織領域への損傷を引き起こしてもよい。
【0109】
本明細書に開示される例示的な実施形態によれば、生体データは、LAT、電気活動、トポロジー、双極マッピング、卓越周波数、インピーダンスなどのうちの1つ以上を含んでもよい。ローカル起動時間は、正規化された初期開始点に基づいて計算された、ローカル起動に対応する閾値活動の時点であってもよい。電気活動は、1つ又は2つ以上の閾値に基づいて測定され得る任意の適用可能な電気信号であってもよく、信号対ノイズ比及び/又は他のフィルタに基づいて、感知及び/又は拡張されてもよい。トポロジーは、身体部の物理的構造又は身体部の一部分に対応してもよく、身体部の異なる部分又は異なる身体部に対する物理的構造における変化に対応し得る。卓越周波数は、身体部の一部分で行き渡る周波数又は周波数の範囲であってもよく、同じ身体部の異なる部分において異なっていてもよい。例えば、心臓の肺静脈の卓越周波数は、同じ心臓の右心房の卓越周波数と異なっていてもよい。インピーダンスは、身体部の所与の領域における抵抗測定値であってもよい。
【0110】
図16に示すように、プローブ1621及びカテーテル1640は、コンソール1624に接続されてもよい。コンソール1624は、カテーテルに出入りする信号を送信及び受信するため、並びにシステム1620の他の構成要素を制御するための、好適なフロントエンド及びインターフェース回路1638を備える汎用コンピュータなどのプロセッサ1641を含み得る。いくつかの実施形態では、プロセッサ1641は、電気活動などの生体データを受信し、所与の組織領域が電気を伝導するかどうかを判定するように更に構成されてもよい。一実施形態によれば、プロセッサは、コンソール1624の外部にあってもよく、例えばカテーテル内、外部デバイス内、モバイルデバイス内、クラウドベースのデバイス内に位置付けられてもよく、又はスタンドアロン型プロセッサであってもよい。
【0111】
プロセッサ1641は、本明細書に記載されている機能を実行するためにソフトウェア内にプログラム化され得る汎用コンピュータを含んでもよい。ソフトウェアは、例えば、ネットワーク上で、汎用コンピュータに電子形態でダウンロードされ得るか、又は代替的に、又は付加的に、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上で提供及び/若しくは記憶され得る。
図16に示す例示的な構成は、本明細書に開示される実施形態を具現化するように修正されてもよい。本開示の実施形態は、他のシステム構成要素及び設定を使用して、同様に適用することができる。付加的に、システム1620は、電気活動、有線又は無線コネクタ、処理及びディスプレイデバイスなどを感知するための要素などの付加的な構成要素を含んでもよい。
【0112】
一実施形態によれば、プロセッサ(例えばプロセッサ1641)に接続されたディスプレイは、別個の病院又は別個の医療提供者ネットワークなどの遠隔場所に位置付けられてもよい。付加的に、システム1620は、心臓などの患者の器官の解剖学的測定値及び電気的測定値を取得し、心臓アブレーション処置を実行するように構成された外科用システムの一部であってもよい。かかる外科用システムの一例は、Biosense Websterにより販売されているCarto(登録商標)システムである。
【0113】
システム1620はまた、及び任意選択的に、超音波、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴映像法(MRI)、又は当該技術分野において既知の他の医療撮像技術を使用して、患者の心臓の解剖学的測定値などの生体データを得ることができる。システム1620は、カテーテル、心電図(EKG)、又はその他の心臓の電気特性を測定するセンサを使用して電気測定値を得ることができる。次いで、解剖学的測定値及び電気的測定値などを含む生体データは、
図16に示されるように、マッピングシステム1620のメモリ1642内に記憶されてもよい。生体データは、メモリ1642からプロセッサ1641に送信されてもよい。代替的に、又は付加的に、生体データは、ネットワーク1662を使用する、ローカル又は遠隔であり得るサーバ1660に送信されてもよい。
【0114】
ネットワーク1662は、イントラネット、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、メトロポリタン・エリア・ネットワーク(MAN)、直接接続若しくは一連の接続、セルラ電話ネットワーク、又はマッピングシステム1620とサーバ1660との間の通信を容易にすることが可能な任意の他のネットワーク若しくは媒体などの、当技術分野で一般的に知られている任意のネットワーク又はシステムであり得る。ネットワーク1662は、有線、無線、又はこれらの組み合わせであってもよい。有線接続は、イーサネット、ユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus、USB)、RJ-11、又は当該技術分野において概して既知の任意の他の有線接続を使用して実装することができる。無線接続は、Wi-Fi、WiMAX、及びBluetooth、赤外線、セルラーネットワーク、衛星、又は当該技術分野において概して既知の任意の他の無線接続方法を使用して実装することができる。更に、いくつかのネットワークは、ネットワーク1662内の通信を容易にするために、単独で又は通信して動作することができる。
【0115】
いくつかの場合には、サーバ1662は、物理サーバとして実装されてもよい。他の場合には、サーバ1662は、(Microsoft Azure、Amazon Web Services(AWS)(登録商標)などの)パブリック・クラウド・コンピューティング・プロバイダを介した仮想サーバとして実装されてもよい。
【0116】
制御コンソール1624は、ケーブル1639によって身体表面電極1643に接続され得、身体表面電極は、患者1628に貼り付けられた接着性皮膚パッチを含み得る。電流追跡モジュールと連動するプロセッサは、患者の身体部(例えば、心臓1626)内のカテーテル1640の位置座標を判定し得る。位置座標は、身体表面電極1643と、カテーテル40の電極1648又は他の電磁構成要素との間で測定されたインピーダンス又は電磁場に基づいてもよい。付加的に、又は代替的に、ロケーションパッドがベッド1629の表面上に配置されてもよく、かつベッド1629とは別個であってもよい。
【0117】
プロセッサ1641は、典型的には、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array:FPGA)として構成されているリアルタイムノイズ低減回路と、続いてアナログ-デジタル(analog-to-digital:A/D)ECG(electrocardiograph:心電計)又はEMG(electromyogram:筋電図)信号変換集積回路と、を含み得る。プロセッサ1641は、A/D ECG又はEMG回路から別のプロセッサへ信号を渡すことができ、及び/又は本明細書に開示された1つ以上の機能を実行するようにプログラムすることができる。
【0118】
制御コンソール1624はまた、入力/出力(input/output:I/O)通信インターフェースを含み得、これは、制御コンソールが、電極47から信号を伝達し、かつ/又はこれらに信号を伝達することを可能にする。
【0119】
処置中、プロセッサ1641は、ディスプレイ1627上の医師1630への身体部レンダリング1635の提示を容易にし、メモリ1642内の身体部レンダリング1635を表現するデータを記憶することができる。メモリ1642は、ランダムアクセスメモリ又はハードディスクドライブなどの任意の好適な揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリを備えてもよい。いくつかの実施形態では、医師1630は、タッチパッド、マウス、キーボード、ジェスチャ認識装置などの1つ以上の入力デバイスを使用して、身体部レンダリング1635を操作することが可能であり得る。例えば、入力デバイスは、レンダリング1635が更新されるように、カテーテル1640の位置を変更するために使用され得る。代替的な実施形態では、ディスプレイ1627は、身体部レンダリング1635を提示することに加えて、医師1630からの入力を受け取るように構成され得るタッチスクリーンを含んでもよい。
【0120】
実際の又は仮想的な処置の間、本システムは、処置に関連するデータの全体を収集することができる。これに、装置の全ての位置、全ての測定値及び、提供された全ての治療が含まれてもよい。加えて、システムは、処置の前又は処置の間に実行される分析に加えて、処置の発生後の任意の測定値を収集してもよい。これに、操作者に提示される分析及び、実行された任意の内部分析が含まれてもよい。例として、このデータは、カテーテル位置、記録された全てのECG、インピーダンス測定値、コンタクト情報、超音波画像、X線画像、印加前、印加中及び印加後の電力、生成された温度及びインピーダンスなどの情報を含む処置中に送達されるエネルギーに関する情報を含んでもよい。分析には、全てのマッピング、安定性パラメータ、提示された画像及び計算が含まれ得る。例えば、生体データは、LAT、電気活動、トポロジー、双極マッピング、卓越周波数、インピーダンスなどのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0121】
記録された全ての処置を含む各処置又は一連の処置を分析してもよい。分析が、処置のパラメータを調べて、処置をどのように改善することができるかを判定することを含んでもよい。これに、
図4~
図15の方法のいずれかを適用することが含まれてもよい。例として、改善の計算では、このステップは、乗車中の心拍数及びペダル速度を記録し、次に、データを分析して、どこで運動量を増加又は減少させれば電力を最適化し乗車の成果を改善することができるのかを判断するサイクリストと同じように実行できる。
【0122】
処置が広域円周アブレーション(wide area circumferential ablation:WACA)を改善するように設計されている特定の実施形態では、WACAは、多くのアブレーションポイントにおいて、静脈を隔離する段階及びギャップを閉じる段階で実施される。CARTOは、取得されたアブレーションポイント及びアブレーションインデックス値を提示する。分析の実施には、第1の経路内のポイントを識別するステップ、追加されたポイントを異なる色で提示するステップ、以前に取得されたポイントの詳細を表示するステップ、例えばその時間中にカテーテルが安定しておらず、かつ/又は力が一定ではなかったなどの、これらのポイントが十分に良好ではなかった理由を特定するステップ。この分析は、医師が患者の治療に注力する必要がある場合に、医師のアブレーション技術に寄与し得る。
【0123】
アブレーションにおける導電性ギャップである瘢痕内のチャネルの発見を改善するための別の特定の実施形態では、電圧及びLATを含むECGデータを記録し、CARTOにおけるようにマップを分析することによって、興奮速度を記録する。処置からオフラインでシステムを使用することで、各位置で時期尚早のビットが開始した場合に何が起こったかを模倣し、どこをアブレーションすることが重要であるのかを分析する手法について教え、より良好なアブレーション手法を引き出すシミュレーションを開始してもよい。
【0124】
このシステムでは、全てのデータが良好であり、どのデータが有用であるかを判定するために
図4~
図15を介した分析が必要である。可能な限り多くのデータを記録し、上記の手法による処置の後に分析アルゴリズムを展開することで、有用なデータを理解することができる。アルゴリズムが定義された後に、データの様々な局面に焦点を絞って、進行中のデータのサブセットの収集を可能としてもよい。
【0125】
図17は、いくつかの実施形態による心臓アブレーション治療を採点するためのプロセス1700を示す。ステップ1710で、特定のアブレーション処置に関する電気的測定値及び解剖学的測定値、マッピング並びに情報が取得される。いくつかの場合には、情報はクラウドベースのプラットフォーム160から取得され、他の場合には、情報はローカルサーバ120か取得され、更なる場合には、一部の情報がクラウドベースのプラットフォーム160及びローカルサーバ120のいずれか又は両方から取得されてもよい。
【0126】
ステップ1720で、この特定のアブレーション処置に関するアブレーション後の電気的測定値及び解剖学的測定値が取得される。ステップ1730で、特定のアブレーション処置に関するこれらのアブレーション後の電気的測定値及び解剖学的測定値、電気的測定値及び解剖学的測定値、マッピング並びに情報を以前に実行された処置と比較することによって、治療スコアが生成される。いくつかの場合には、比較は、ローカルデータベースに記憶されたデータに基づいてローカルサーバ120の機械学習を使用して実行される。他の場合には、比較は、匿名データベースに記憶された匿名データに基づいて、クラウドベースのプラットフォームの機械学習を使用して実施される。ステップ1740では、1740で計算された治療スコアが表示される。
【0127】
図18は、いくつかの実施形態によるAR/VRシステムを使用した心臓アブレーションを行うために外科医を訓練するプロセス1800を示す。ステップ1810で、被訓練者(例えば訓練中の外科医)は、練習対象の心臓に関するパラメータを入力する。例示的なパラメータとしては、特定の心臓異常又は患者の年齢及び性別を挙げることができる。これらのパラメータを、撮像(CT/MR)データ、ホルタデータを含む患者の医療記録から、また電気解剖学的データを含む処置の初期段階から得てもよい。
【0128】
ステップ1820で、クラウドベースのプラットフォーム160の匿名データベースが、パラメータに一致する心臓アブレーションについて照会され、特定の心臓アブレーションがクエリに基づいて選択される。ステップ1830で、選択されたアブレーションの電気的測定値及び解剖学的測定値がAR/VRシステムにロードされる。AR/VRシステムにロードされると、被訓練者は、仮想アブレーション計画に従ってステップ1840で心臓アブレーションを実行する。いくつかの場合には、被訓練者は、複数の仮想アブレーション計画の中から選択するように促されてもよい。ステップ1850で、AR/VRシステムは、被訓練者の技能を、選択された心臓アブレーションを行った外科医の結果と比較する。ステップ1860で、1850での比較に基づいて、AR/VRシステムによってスコアが計算され、表示される。
【0129】
図19Aは、外科用システム110によって生成され得るマッピング1900Aの一例を示す。前述のように、マッピング1900Aは、患者の心臓の詳細な解剖学的マップ及び電気マップから形成される。現在の患者のマッピングを他の患者のマッピングのライブラリと比較することによって、システムは、現在の患者のマッピングとライブラリ内のマッピングとの間の類似点及び相違点を特定することができる。次に、システムは、現在の患者の状態に類似した状態に対して最良の治療転帰を提供した、又はもたらした患者ライブラリ内のマッピングを特定する。この情報に基づき、システムは、特定された記憶されているマッピングを使用して、現在の患者の最良の治療計画を計算することができる。同様の方法で、現在の患者に対して治療計画が実行されると、システムはアブレーション治療を記録し、この情報を患者ライブラリに追加する。現在の患者の転帰が確認されると、転帰がライブラリに追加される。
【0130】
図19Aは、標準的なCARTO(登録商標)マッピング1900Aを示す。画像に示されている膨大な数のドットは、処置中にポイントが取得された位置、材料がアブレーションされた領域からの瘢痕(暗いスポット)及び、その他の陰影によって表される手術の進行状況を表している。
【0131】
図19Bは、外科用システム110によって生成され得るマッピング1900Bの一例を示す。前述のように、マッピング1900Bは、患者の心臓の詳細な解剖学的マップ及び電気的マップから形成される。マッピング1900Bは、処置からのアブレーションポイントの更なる詳細及びより高い解像度のビューを示す。アブレーションインデックスが示され、2つの肺静脈(LIPV及びLSPV)に関連する位置が提供される。左心耳(left atrial appendage:LAA)も図示されている。これらの詳細は、解剖学的構造に対するアブレーションの関係を提供する。
【0132】
図19Cは、外科用システム110によって生成され得るマッピング1900Bの別の一例の概略を示す。前述のように、マッピング1900Cは、患者の心臓の詳細な解剖学的マップ及び電気的マップから形成される。現在の患者のマッピングを他の患者のマッピングのライブラリと比較することによって、システムは、現在の患者のマッピングとライブラリ内のマッピングとの間の類似点及び相違点を特定することができる。
【0133】
マッピング1900Cは、患者の心臓1905の画像に重ね合わされる水平-垂直グリッド1910を含む。いくつかの場合には、水平-垂直グリッド1910内のセルのサイズは(例えば1mm×1mmに)固定されている。他の場合には、水平-垂直グリッド1910は、所定数のセルを含み、個々のセルのサイズは、患者の心臓のサイズに基づいてスケーリングされる。
【0134】
本明細書で説明するように、本システム10は、複数の病院から遡及的な匿名データを収集して、WACA内の潜在的なギャップを識別するように設計されたAIアルゴリズムを生成する機能を提供する。システム10は、訓練によってWACAの継続性を改善する。本システム10は、複数の医師がデータの詳細な分析を提供して、これらの医師の一人がどのように(及びどこで)改善を行うべきかを知ることを可能にする。改善の範囲に、第1の経路においてより良好なアブレーションを生成することを含む、WACAアブレーションの質の改善が含まれてもよい。システム10は、処置のやり直しの可能性を低減し、アデノシン刺激による試験後にギャップを閉じる必要性を低減することにつながり得る。
【0135】
システムは、例えば、発作性心房細動に対する最初の処置に加えて処置のやり直しが行われる一対の患者などの適切な状況でデータを受信する。AR/VRなどによって分析を見ることができ、理想的ではないアブレーションに至る、例えば安定性などの処置の局面を医師が可視化することができるようになっていてもよい。説明された例示的な状況では、医師は、安定性を改善することによる改善方法をこのようにして理解することができる。システムは、初期タグ付けを実行することなどによって、データのタグ付けをサポートしてもよい。タグ付けを変更するために、医師又は他のスタッフからの修正及び承認が必要であってもよい。
【0136】
収集されたデータを、上記の例示的なアルゴリズムで説明したように、医師及びアルゴリズムの試験及び訓練に使用してもよい。この訓練により、アブレーションの改善がWACAの継続性の改善に役立つ可能性がある位置を特定することができる。システム10は、データの分析を可能にし、アブレーションの視覚的分析を行うツールへのアクセスを提供する。他の医師や専門家がデータを吟味して結果を評価し、結果にタグを付けてタグ付けを改善又は修正することにより、データの理解を向上させることもできる。
【0137】
例示的なWACA分析ツールには、
図20Aに示すRFインデックスのShure-pointのディスプレイ2000Aが存在する。
図20Aに示すディスプレイ2000Aは、医師がCARTO処置で提示された値を見て、WACAでこれらのアブレーションポイントが使用されたことを確認することを可能にする。ドットは実行されたアブレーションを表し、ディスプレイはアブレーションのRFインデックス、すなわち、組織に供給されたと推定されるRFエネルギーの量を、送達されたエネルギー、コンタクトフォース及びエネルギーが送達された時間量に基づいて示す。
【0138】
図20Bは、時間に基づいてアブレーションポイントを特定するディスプレイ2000Bを示す。ディスプレイ2000Bは、医師がアデノシン刺激による試験後にギャップを閉じるために使用されたアブレーションを特定することを可能にする。医師は、ディスプレイ2000Bを見て、2つのWACAループ時間、第1の経路及び修正経路(いくつかのアブレーションポイント2020及びアブレーションポイント2022)を見ることができる。医師は、各WACAループ及び修正ポイントをマーク及び/又は確認することができる。やり直しが必要であるか又は望ましい状況では、医師は心房細動に対する最初の処置(画像には表示されていない)に加えてやり直しのアブレーションポイントを実行することが可能であってもよい。
【0139】
ディスプレイ2000Bでは、ドットは、最初のアブレーション時間がゼロとして指定されている場合の、アブレーションが作成された処置中の時間及びその後の時間を分単位で表す。ディスプレイ2000Bを使用すると、医師は、アブレーション中の複数のアブレーションポイントの順序と、試験を実行するために処置がいつ停止されたかを理解することができる。例えば、ループ試験のタイミングや、処置がループを修正したタイミングなど。例示的なディスプレイ2000Bでは、アブレーションポイント2020及び関連するアブレーションポイントがループの修正を表す。
【0140】
図20Cは、RFインデックス詳細表現の安定性を示すディスプレイ2000Cを示す。ポイントは空間内に位置し、不安定性マーキングの近くのポイントの量を特定する。医師が、各ポイントでのアブレーションの安定性を確認し、安定性とアブレーションを修正してギャップを閉じる必要があった位置との間に相関関係があるかどうかを知ることが可能であってもよい。
【0141】
ディスプレイ2000Cは、送達されたアブレーションを、マイクロサイト(ミリメートルごと)及び非アブレーションポイント(2~5mmまでの半径を有する全てのセッション)に基づいて表す。ディスプレイ2000Cは、カテーテルが安定していないことを示す。安定したカテーテルは、エネルギー送達量の累算が600~700の範囲のRFインデックスを含むポイントによって識別される。
【0142】
図20D及び
図20Eは、使用中の医師に更なるパラメータの表示を提供する更なるディスプレイ2000D及び2000Eをそれぞれ示す。これらの更なるパラメータには、インピーダンス降下、ベースインピーダンス、最高温度などが含まれる。加えて、医師は、分析を改善するために、パラメータごとにディスプレイをフィルタに切り替えることができる。ディスプレイ2000D及び2000Eは、RF発生器が供給したエネルギーをワットで表示する。医師は、ディスプレイ2000D及び2000Eを見て、後壁及び内壁の両方におけるエネルギーをプロトコルに従って理解することができる。
【0143】
図21Aは、心臓アブレーション治療計画2110のグラフィック表現2100Aを示す。心臓アブレーション治療計画2110は、患者の心臓1905に対して実施される複数のアブレーションを特定する。例えば、心臓アブレーション治療計画2110は、第1のアブレーション2101、第2のアブレーション2102、第3のアブレーション2103及び第4のアブレーション2104としてそれぞれ識別される4つのアブレーションを含むことが示されている。4つのアブレーションが示されているが、当業者であれば、任意の数のアブレーションが可能であることを理解するであろう。加えて、アブレーションを第1、第2、第3及び第4として特定することは、必ずしもこれらのアブレーションが実施される順序を表すものではなく、理解を容易にするために異なるアブレーションを表すことを意図している。
【0144】
心臓アブレーション治療計画2110は、水平-垂直グリッド1910のセルB1で実行される第1のアブレーション2101を含む。位置に加えて、心臓アブレーション治療計画2110は、第1のアブレーション2101の種類、持続時間及び強度を特定してもよい。心臓アブレーション治療計画2110は、水平-垂直グリッド1910のセルE2で実行される第2のアブレーション2102を更に含む。第2のアブレーション2102の種類、持続時間及び強度も、心臓アブレーション治療計画2110において指定されてもよい。心臓アブレーション治療計画2110は、セルD4で実行される第3のアブレーション2103と、水平-垂直グリッド1910のセルB4で実行される第4のアブレーション2104とを含むことが示されている。第3のアブレーション2103及び第4のアブレーション2104の種類、持続時間及び強度も、心臓アブレーション治療計画2110において指定されてもよい。
【0145】
図21Bは、心臓アブレーション治療計画2110に従って実施される第1のアブレーションの位置のグラフィック表現2100Bを示す。心臓アブレーション治療計画2110によれば、外科医は、第1のアブレーション2101を行っているべきである。しかしながら、外科医は実際にはアブレーション2111を行った。アブレーション2111は、アブレーションが実際に外科医によって行われた位置を含む。アブレーション2111が、患者の心臓1905に実際に送達されたアブレーションの種類及び強度に関する情報を更に含んでもよい。
【0146】
図21Cは、第1の修正された心臓アブレーション治療計画2120のグラフィック表現2100Cを示す。第1の修正された心臓アブレーション治療計画2120は、実際のアブレーション2111に基づいて再計算される。修正された心臓アブレーション治療計画2120は、計画2110から第2のアブレーション2120と比較して修正された第2のアブレーション2122、計画2110から第3のアブレーション2103と比較して修正された第3のアブレーション2123及び、計画2110から第4のアブレーション2102と比較して修正された第4のアブレーション2124を含む。修正された第2のアブレーション2122、修正された第3のアブレーション2123及び修正された第4のアブレーション2124はそれぞれ、各アブレーションの位置、種類、持続時間及び強度を含んでもよい。いくつかの場合には、第1の修正された心臓アブレーション治療計画2120は、心臓アブレーション治療計画2110とは異なる数のアブレーションを含んでもよい。
【0147】
図21Dは、第1の修正された心臓アブレーション治療計画2120に従って実施される第2のアブレーションの位置のグラフィック表現2100Dを示す。第2の修正された心臓アブレーション治療計画2130によれば、外科医は、第2のアブレーション2122を行っているべきである。しかしながら、外科医は実際にはアブレーション2132を行った。アブレーション2132は、アブレーションが実際に外科医によって行われた位置を含む。アブレーション2132が、患者の心臓2105に実際に送達されたアブレーションの種類及び強度に関する情報を更に含んでもよい。
【0148】
図21Eは、第2の修正された心臓アブレーション治療計画2130のグラフィック表現2100Eを示す。第2の修正された心臓アブレーション治療計画2130は、実際のアブレーション2111及び実際のアブレーション2132に基づいて再計算される。第2の修正された心臓アブレーション治療計画2130は、計画2120から第3のアブレーション2123と比較して更に修正された第3のアブレーション2133及び、計画2120から第4のアブレーション2124と比較して更に修正された第4のアブレーション2134を含む。更に修正された第3のアブレーション2133及び更に修正された第4のアブレーション2144はそれぞれ、各アブレーションの位置、種類、持続時間及び強度を含んでもよい。いくつかの場合には、第2の修正された心臓アブレーション治療計画2130は、第1の修正された心臓アブレーション治療計画2120とは異なる数のアブレーションを含んでもよい。
【0149】
図21Fは、第2の修正された心臓アブレーション治療計画2130に従って実施される第3のアブレーションの位置のグラフィック表現2100Fを示す。修正された心臓アブレーション治療計画2130によれば、外科医は、2133に従って第3のアブレーションを行っているべきである。しかしながら、外科医は実際にはアブレーション2143を行った。アブレーション2143は、アブレーションが実際に外科医によって行われた位置を含む。アブレーション2143が、患者の心臓1905に実際に送達されたアブレーションの種類及び強度に関する情報を更に含んでもよい。
【0150】
図21Gは、第3の修正された心臓アブレーション治療計画2140のグラフィック表現2100Gを示す。第3の修正された心臓アブレーション治療計画2140は、実際のアブレーション2111、実際のアブレーション2132及び実際のアブレーション2143に基づいて再計算される。第3の修正された心臓アブレーション治療計画2140は、計画2130の第4のアブレーション2134と比較して修正された別の第4のアブレーション2144を含む。更に修正された第4のアブレーション2144は、アブレーションの位置、種類、持続時間及び強度を含んでもよい。いくつかの場合には、第3の修正された心臓アブレーション治療計画2140は、第2の修正された心臓アブレーション治療計画2130とは異なる数のアブレーションを含んでもよい。
【0151】
図21Hは、第3の修正された心臓アブレーション治療計画2140に従って実施される第4のアブレーションの位置のグラフィック表現2100Hを示す。修正された心臓アブレーション治療計画2140によれば、外科医は、2144に従って第3のアブレーションを行っているべきである。しかしながら、外科医は実際にはアブレーション2154を行った。アブレーション2154は、アブレーションが実際に外科医によって行われた位置を含む。アブレーション2154が、患者の心臓1905に実際に送達されたアブレーションの種類及び強度に関する情報を更に含んでもよい。
【0152】
本明細書に記載される機能及び方法はいずれも、汎用コンピュータ、プロセッサ、又はプロセッサコアにおいて実施されることができる。好適なプロセッサとしては、例として、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、従来型プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと関連する1つ若しくは2つ以上のマイクロプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array、FPGA)回路、任意の他のタイプの集積回路(integrated circuit、IC)、及び/又は状態機械が挙げられる。このようなプロセッサは、処理されたハードウェア記述言語(hardware description language、HDL)命令及びネットリスト等の他の中間データ(このような命令は、コンピュータ可読媒体に格納することが可能である)の結果を用いて製造プロセスを構成することにより、製造することが可能である。このような処理の結果はマスクワークであり得、このマスクワークをその後半導体製造プロセスにおいて使用して、本開示の特徴を実施するプロセッサを製造する。
【0153】
本明細書に記載される機能及び方法はいずれも、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に組み込まれるコンピュータプログラム、ソフトウェア、又はファームウェアにおいて実装されて、汎用コンピュータ又はプロセッサによって実行されることができる。非一時的コンピュータ可読ストレージ媒体の例としては、読み取り専用メモリ(read only memory、ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、レジスタ、キャッシュメモリ、半導体メモリデバイス、磁気媒体、例えば、内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスク、磁気光学媒体、並びに光学媒体、例えば、CD-ROMディスク及びデジタル多用途ディスク(digital versatile disk、DVD)が挙げられる。
【0154】
本明細書の開示に基づいて多くの変更例が可能であることを理解されたい。特徴及び要素が特定の組み合わせで上に説明されているが、各特徴又は要素は、他の特徴及び要素を用いずに単独で、又は他の特徴及び要素を用いて若しくは用いずに他の特徴及び要素との様々な組み合わせで使用されてもよい。
【0155】
〔実施の態様〕
(1) 心臓アブレーション処置を改善するためのシステムであって、
以前に実行された心臓アブレーションに関する情報を含むデータベースを含むクラウドサーバと、
第1のネットワークを介して前記クラウドサーバに通信可能に結合されたローカルサーバと、
第2のネットワークを介して前記ローカルサーバに通信可能に結合された外科用システムと、
を備え、
前記クラウドサーバが、
前記ローカルサーバを介して、前記外科用システムから患者の心臓の電気的データ及び解剖学的データを受信することと、
前記心臓の前記電気的データ及び解剖学的データと前記データベース情報との比較を実行することと、
前記比較に基づいて前記心臓のための外科的治療計画を生成することであって、前記外科的治療計画が、前記心臓のグリッドを含む、ことと、
前記ローカルサーバを介して、前記外科的治療計画を前記外科用システムに送信することと、
を行うように構成されている、システム。
(2) 前記外科用システムの1つ以上のパラメータが、前記治療計画に従って変更される、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記クラウドサーバは、前記心臓アブレーション処置が実行されている間に、前記外科用システムから前記患者の前記心臓の前記電気的データ及び解剖学的データを受信する、実施態様1に記載のシステム。
(4) アブレーション処置が複数のアブレーションを含み、前記クラウドサーバが、各アブレーションの後に、前記患者の前記心臓の前記電気的データ及び解剖学的データを前記外科用システムから受信する、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記クラウドサーバは、
前記アブレーション処置が実行された後に、前記心臓の更なる電気的データ及び解剖学的データを受信し、
前記更なる電気的データ及び解剖学的データに基づいてアブレーションスコアを生成する、
ように更に構成されている、実施態様1に記載のシステム。
【0156】
(6) 心臓アブレーション処置を改善するための方法であって、
データベースを介して、以前に実行された心臓アブレーションに関する情報を受信することと、
ローカルサーバを介して、患者の心臓の電気的データ及び解剖学的データを外科用システムから受信することと、
前記心臓の前記電気的データ及び解剖学的データと前記データベース情報との比較を実行することと、
前記比較に基づいて前記心臓のための外科的治療計画を生成することであって、前記外科的治療計画が前記心臓のグリッドを含む、ことと、
前記ローカルサーバを介して、前記外科的治療計画を前記外科用システムに送信することと、
を含む方法。
(7) 前記治療計画に従って前記外科用システムの1つ以上のパラメータを修正することを更に含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記心臓アブレーション処置が実行されている間に、クラウドサーバを介して、前記外科用システムから前記患者の前記心臓の前記電気的データ及び解剖学的データを受信することを更に含む、実施態様6に記載の方法。
(9) 前記アブレーション処置が複数のアブレーションを含む場合、前記方法は、各アブレーションの後に、前記患者の前記心臓の前記電気的データ及び解剖学的データを前記外科用システムから受信することを更に含む、実施態様6に記載の方法。
(10) 前記アブレーション処置が実行された後に、前記心臓の更なる電気的データ及び解剖学的データを受信することを更に含む、実施態様9に記載の方法。
【0157】
(11) 更なる電気的データ及び解剖学的データに基づいてアブレーションスコアを生成することを更に含む、実施態様9に記載の方法。
(12) 外科医の心臓アブレーション訓練のためのシステムであって、
以前に実行された心臓アブレーションに関するデータベース情報を含むクラウドサーバと、
第1のネットワークを介して前記クラウドサーバに通信可能に結合されたAR/VRシステムと、
を備え、
前記AR/VRシステムが、
訓練アブレーションを定義するパラメータの入力を受信することと、
仮想患者の電気的データ及び解剖学的データを前記クラウドサーバから受信することであって、仮想患者の前記電気的データ及び解剖学的データが、前記入力を前記データベース情報と比較することによって求められる、ことと、
前記仮想患者の前記電気的データ及び解剖学的データに基づいて、前記患者の心臓の仮想シミュレーションを作成することと、
前記仮想シミュレーションで心臓アブレーション処置を実行している被訓練者の技能を測定することと、
前記被訓練者の前記技能を採点することと、
を行うように構成されている、システム。
(13) 前記クラウドサーバは、心臓アブレーション処置が実行されている間に、前記以前に実行された心臓アブレーションにおける前記心臓の前記電気的データ及び解剖学的データを受信する、実施態様12に記載のシステム。
(14) 以前に実行された心臓アブレーションが複数のアブレーションを含み、前記クラウドサーバが、各アブレーション後に前記患者の前記心臓の前記電気的データ及び解剖学的データを受信する、実施態様12に記載のシステム。
(15) 前記クラウドサーバは、
前記アブレーション処置が実行された後に、前記心臓の更なる電気的データ及び解剖学的データを受信し、
前記更なる電気的データ及び解剖学的データに基づいてアブレーションスコアを生成する、
ように更に構成されている、実施態様12に記載のシステム。
【0158】
(16) 外科医の心臓アブレーション訓練のための方法であって、
訓練アブレーションを定義するパラメータの入力を受信することと、
仮想患者の電気的データ及び解剖学的データをクラウドサーバから受信することであって、仮想患者の前記電気的データ及び解剖学的データが、前記入力をデータベース情報と比較することによって求められる、ことと、
前記仮想患者の前記電気的データ及び解剖学的データに基づいて、前記患者の心臓の仮想シミュレーションを作成することと、
前記仮想シミュレーションで心臓アブレーション処置を実行している被訓練者の技能を測定することと、
前記被訓練者の前記技能を採点することと、
を含む方法。
(17) 心臓アブレーション処置が実行されている間に、前記以前に実行された心臓アブレーションにおける前記心臓の前記電気的データ及び解剖学的データを受信することを更に含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記以前に実行された心臓アブレーションが複数のアブレーションを含む場合、前記方法は、各アブレーションの後に、前記患者の前記心臓の前記電気的データ及び解剖学的データを受信することを更に含む、実施態様16に記載の方法。
(19) 前記アブレーション処置が実行された後に、前記心臓の更なる電気的データ及び解剖学的データを受信することを更に含む、実施態様16に記載の方法。
(20) 更なる電気的データ及び解剖学的データに基づいてアブレーションスコアを生成することを更に含む、実施態様16に記載の方法。