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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ベンチレータ
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
B60H1/34 611B
B60H1/34 651B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020085682
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021178602
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】米山 陽二郎
【審査官】塩田 匠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0366807(US,A1)
【文献】特開平08-313042(JP,A)
【文献】特開2016-013828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
F24F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気吹出口の開口部に、風向を調整する少なくとも1つの可動フィンが回転可能に配される車両用ベンチレータにおいて、
前記可動フィンは、可動フィン本体部と、前記可動フィンの下流側端部に配される固定部とを有し、
前記固定部は、前記可動フィン本体部の回転軸に沿って配され、且つ、前記可動フィン本体部に前記回転軸に沿って接触する又は近接する形状を有し、
前記可動フィン本体部の前記回転軸上における一端部及び他端部は、前記固定部に回転可能に連結され、
不動に設けられる加飾フィンに対し、前記固定部を回転不能に連結する突出部が設けられ、
前記突出部は、前記可動フィン本体部の前記回転軸の軸線上に配される
ことを特徴とするベンチレータ。
【請求項2】
前記可動フィンにおける回転軸方向の少なくとも一端部が、前記加飾フィンに連結される請求項1記載のベンチレータ。
【請求項3】
前記加飾フィンに、加飾ガーニッシュが設けられ、
前記固定部は、前記加飾ガーニッシュに連続して配され、且つ、前記加飾ガーニッシュと同一の外観又は対応する外観を備える
請求項1記載のベンチレータ。
【請求項4】
前記可動フィン本体部の前記一端部及び前記他端部は、円柱状の連結ピンを介して、前記固定部に連結され、
前記固定部又は前記加飾フィンは、前記固定部が前記加飾フィンに対して回転不能に連結する前記突出部を有する
請求項1~3の何れかに記載のベンチレータ。
【請求項5】
前記可動フィン本体部の前記一端部又は前記他端部を連結するピン部材が、前記固定部に保持され、
前記ピン部材は、前記加飾フィンに対して前記ピン部材を回転不能に連結させる前記突出部を有する
請求項1~3の何れかに記載のベンチレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に取り付けられるベンチレータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2019-31192号公報(特許文献1)には、吹き出す空気の風向を調整可能なベンチレータが記載されている。この特許文献1のベンチレータは、幅方向に沿って並列に配される複数の下流側横フィンと、横フィンの上流側に高さ方向に沿って配される複数の上流側縦フィン(可動フィン)と、複数の上流側縦フィンを互いに連結するリンクと、上流側縦フィンの1つに取り付けられる操作ノブとを備えている。なお、幅方向及び高さ方向は、横方向及び縦方向と言うこともできる。
【0003】
特許文献1のベンチレータにおいて、下流側横フィンは枠部に不動に設けられており、上流側縦フィンは枠部に幅方向へ回転可能に支持されている。操作ノブは、下流側横フィン間に幅方向に移動可能に嵌められている。従って、特許文献1のベンチレータでは、操作ノブを幅方向に操作することによって、複数の上流側縦フィンを回転させて、ベンチレータから吹き出す風向を幅方向に調整できる。
【0004】
また、特開2016-117475号公報(特許文献2)及び特許第6454223号公報(特許文献3)には、ベンチレータから吹き出す風向を高さ方向に調整可能なベンチレータが記載されている。
【0005】
例えば特許文献2に記載されているベンチレータは、空気吹出口に幅方向に沿って配される複数の固定フィンと、各固定フィンの上流側に上下に回転可能に配される可動フィンとを有する。各固定フィンの上流側端縁部には、左右一対の凸部が設けられており、各凸部には、C型断面形状に形成されたホルダー挟装部が設けられている。各可動フィンの幅方向の両端部には、フィン枠に対して可動フィンを回転可能に連結する回転軸が設けられている。更に、各可動フィンの下流側端縁部には、固定フィンの凸部に対応する左右一対の凹部が設けられており、各凹部には、固定フィンのホルダー挟装部に保持される補助回動軸が設けられている。
【0006】
この特許文献2のベンチレータによれば、複数の可動フィンを上下方向に回転させて、ベンチレータから吹き出す風向を高さ方向に調整できる。また特許文献2には、ベンチレータの空気吹出口の開口幅が広くても、可動フィンの撓みを防止できる旨が説明されている。
【0007】
特許文献3に記載されているベンチレータは、ガイドフィン(可動フィン)を備えるエアアウトレットと、不動に設けられた装飾フィンを備える装飾装置とを有する。また、ガイドフィンは、下流端縁部に付設された回転軸を中心として装飾フィンに旋回可能に支承されている。特許文献3のベンチレータによれば、ガイドフィンを上下に回転させることにより、風向を高さ方向に調整できる。また特許文献3には、装飾装置からエアアウトレットへの移行部がほとんどわからないように、エアアウトレットが良好に自動車内装に統合可能であるとの利点を有する旨が説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-31192号公報
【文献】特開2016-117475号公報
【文献】特許第6454223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ベンチレータにおいて、ベンチレータを空気の吹出口側から見たときに、回転可能に配される可動フィンについて、各可動フィンの下流側端部が移動しないような外観が求められることがある。この場合、例えば特許文献2又は特許文献3に記載されているベンチレータを採用することが可能である。
【0010】
しかし、特許文献2のベンチレータの場合、可動フィンを上下に回転させるために、可動フィンの幅方向の両端部に設けられている回転軸がフィン枠に支持されており、且つ、可動フィンの補助回動軸が、固定フィンのホルダー挟装部に回転可能に保持されている。このため、ベンチレータの構造(特に、可動フィンを回転させる構造)が複雑であり、ベンチレータの組み立て作業も煩雑になる可能性がある。更に、可動フィンの円滑な回転を確保するためには、可動フィンの回転軸及び補助回動軸、回転軸を保持するフィン枠の凸状嵌合部、並びに、固定フィンに設けるホルダー挟装部を、それぞれ所定の位置に設ける必要があるが、このような部品の成形や加工は高い精度が求められるため、コストの増大につながる。
【0011】
一方、特許文献3のベンチレータは、各可動フィン(ガイドフィン)を回転させたときに、可動フィンの下流側端部は移動しないものの、当該下流側端部が可動フィンとともに回転する構造で形成されている。しかし、例えば自動車のデザイン性を高めたり、他の車との差別化を出したりするために、より向上した見栄えを備えたベンチレータが求められることもある。
【0012】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、可動フィンを回転させても可動フィンの下流側端部が移動しない構造を比較的簡単に形成可能で、また、より向上した見栄えを得ることが可能なベンチレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明により提供されるベンチレータは、空気吹出口の開口部に、風向を調整する少なくとも1つの可動フィンが回転可能に配される車両用ベンチレータにおいて、前記可動フィンは、可動フィン本体部と、前記可動フィンの下流側端部に配される固定部とを有し、前記固定部は、前記可動フィン本体部の回転軸に沿って配され、且つ、前記可動フィン本体部に前記回転軸に沿って接触する又は近接する形状を有し、前記可動フィン本体部の前記回転軸上における一端部及び他端部は、前記固定部に回転可能に連結され、不動に設けられる加飾フィンに対し、前記固定部を回転不能に連結する突出部が設けられ、前記突出部は、前記可動フィン本体部の前記回転軸の軸線上に配されることを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係るベンチレータでは、前記可動フィンにおける回転軸方向の少なくとも一端部が、不動に設けられる加飾フィンに連結されることが好ましい。
【0015】
この場合、前記加飾フィンに、加飾ガーニッシュが設けられ、前記固定部は、前記加飾ガーニッシュに連続して配され、且つ、前記加飾ガーニッシュと同一の外観又は対応する外観を備えることが好ましい。
【0016】
更に、前記可動フィン本体部の前記一端部及び前記他端部は、円柱状の連結ピンを介して、前記固定部に連結され、前記固定部又は前記加飾フィンは、前記固定部が前記加飾フィンに対して回転不能に連結する前記突出部を有することが好ましい。
また、前記可動フィン本体部の前記一端部又は前記他端部を連結するピン部材が、前記固定部に保持され、前記ピン部材は、前記加飾フィンに対して前記ピン部材を回転不能に連結させる前記突出部を有していてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のベンチレータによれば、可動フィンを回転させても可動フィンの下流側端部が移動しない構造を比較的簡単に形成でき、また、より向上した見栄えを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1に係るベンチレータを模式的に示す斜視図である。
図2図1に示したベンチレータが分解された状態を模式的に示す分解斜視図である。
図3図1に示したベンチレータの可動フィンを模式的に示す斜視図である。
図4】可動フィンにおける可動フィン本体部と固定部の連結部分を模式的に示す断面図である。
図5】可動フィンの幅方向に直交する断面を模式的に示す断面図である。
図6】上向きに風向を調整したときの可動フィンの断面を模式的に示す断面図である。
図7】下向きに風向を調整したときの可動フィンの断面を模式的に示す断面図である。
図8】本発明の実施例2に係るベンチレータが分解された状態を模式的に示す分解斜視図である。
図9図8に示したベンチレータの可動フィン及び加飾フィン間の連結部分を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0020】
図1は、本実施例1に係るベンチレータを模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示したベンチレータが分解された状態を模式的に示す分解斜視図である。なお、図2では、本発明の特徴を判り易くするために、ベンチレータに配される3つの可動フィンのうち、高さ方向の中央に配される可動フィンを示し、他の2つの可動フィンの図示が省略されている。
【0021】
図1に示した本実施例1のベンチレータ1は、例えば、自動車の車室内におけるインストルメントパネルやセンターコンソール等の図示しない内装部材に装着されるものであり、車両に備えられた空調装置に接続されることによって、空調装置から供給される空気を車室内に吹き出すことが可能な装置である。このようなベンチレータ1は、風向調整装置又は空気吹出装置とも呼ばれる。
【0022】
ここで、ベンチレータ1に関して、前後方向は、後述する可動フィン10がニュートラルの位置(中央位置)に保持されているときにベンチレータ1から吹き出される空気の吹き出し方向に沿った方向である。この場合、空気の流れの下流側を前方とし、上流側を後方とする。上下方向及び左右方向は、ニュートラルの位置に保持されている可動フィン10を水平な状態に保持してベンチレータ1を吹出口側から見たときにおける垂直方向(高さ方向)及び水平方向(幅方向)である。
【0023】
本実施例1のベンチレータ1は、供給される空気を流通させる図示しない流路部と、流路部の空気吹出口の開口部に配される複数の可動フィン10とを有する。本実施例1において、ベンチレータ1には3つの可動フィン10が配されており、3つの可動フィン10は、図示しないリンク部材によって、各可動フィン10の回転が連動するように互いに連結されている。
【0024】
可動フィン10の左右両側には、意匠面を形成する左右一対の加飾部材30が設けられている。左右の加飾部材30は、インストルメントパネル等の図示しない内装部材に不動に固定されており、各可動フィン10は、上下方向に回転可能に左右の加飾部材30に取り付けられている(連結されている)。
【0025】
本実施例1の可動フィン10は、上側に配される第1可動フィン10aと、中央に配される第2可動フィン(操作可動フィン)10bと、下側に配される第3可動フィン10cとを有する。以下、可動フィン10については、主に、図3に示す第2可動フィン10bを中心に説明する。
【0026】
第2可動フィン10bは、図2に示したように、左右方向に細長い板状の可動フィン本体部11と、可動フィン本体部11の前端部(下流側端部)に配される固定部12と、可動フィン本体部11及び固定部12に取り付けられる操作ノブ13と、第2可動フィン10bを左右の加飾部材30に連結する左右一対の円柱状の連結ピン14と、連結ピン14を付勢するコイル状のスプリング部材(付勢部材)15とを有する。
【0027】
可動フィン本体部11は、フィンベース部11aと、フィンベース部11aの前端部から前方に突出するフィン軸部11bと、可動フィン本体部11の左右側縁部に設けられる挿入凹部11cと、フィン軸部11bの左右の側端面から左右方向に沿って形成される第1収容孔部11dとを有する。
【0028】
本実施例1の可動フィン本体部11は、挿入凹部11c及び第1収容孔部11dが設けられている部分を除いて、幅方向に直交する断面が一定の形状を有するように形成されている。また、可動フィン本体部11は、左右対称的な形状を有するとともに、上下対称的な形状を有する。
【0029】
フィンベース部11aは、互いに平行に配される平坦な上面及び下面と、後方に向けて凸状に湾曲する後端面とを有する。フィンベース部11aの前端部には、フィン軸部11bに向けて厚さ(上下方向の寸法)を漸減させるように傾斜する傾斜面が形成されている。
【0030】
フィン軸部11bは、可動フィン本体部11の回転軸としてフィンベース部11aに一体的に形成されており、また、左右方向に沿ってまっすぐに設けられている。フィン軸部11bの外周面は、フィン軸部11bの幅方向に直交する断面を見たときに円弧状を呈する(図5図7を参照)。更に、フィン軸部11bは、円弧状の外周面が、回転軸を中心に180°を越える範囲に、好ましくは200°以上の範囲に設けられるように形成されている(図5を参照)。これにより、可動フィン本体部11を、固定部12に対して容易に回転させることができる。
【0031】
例えば本実施例1の場合、フィン軸部11bにおける円弧状の外周面が回転軸を中心に略240°の範囲に連続的に設けられている。これに対し、固定部12の後述する円弧状のカバー部12aは、カバー部12aの幅方向に直交する断面を見たときに略180°の範囲で形成されている。これにより、可動フィン本体部11を、固定部12に対して、ニュートラルの位置から、図6に示したように下方に向けて略30°まで回転させることができ、また、図7に示したように上方に向けて略30°まで回転させることができる。ここで、可動フィン本体部11を下方又は上方に回転させるとは、可動フィン本体部11の後端部が下側又は上側に移動するように可動フィン本体部11を回転させることを言う。
【0032】
可動フィン本体部11における左右の挿入凹部11cは、可動フィン本体部11の前端部に且つ左右の側縁部に、切り欠かれたように設けられている。また、挿入凹部11cは、前後方向に関して、フィン軸部11bの全体とフィンベース部11aの一部とに設けられている。
【0033】
第1収容孔部11dは、図4に示すように、連結ピン14及びスプリング部材15を収容して保持する円柱状の孔部である。この第1収容孔部11dは、フィン軸部11bの挿入凹部11cに向く左右の側端面に、幅方向の内側に向けてまっすぐに形成されている。この第1収容孔部11dには、スプリング部材15と、スプリング部材15よりも幅方向の外側に配される連結ピン14とが、第2可動フィン10bの回転軸に沿って収容される。なお図4では、スプリング部材15を判り易く図示するために、スプリング部材15を断面ではなく外観で示している。
【0034】
この場合、連結ピン14は、スプリング部材15で付勢されることによって、連結ピン14の一部がフィン軸部11bの側端面よりも外側に突出するように第1収容孔部11dに取り付けられている。また、連結ピン14は、スプリング部材15の付勢力に抗して幅方向の内側に向けて押圧されることによって、連結ピン14の全体が第1収容孔部11d内に収容可能に形成される。
【0035】
固定部12は、幅方向に沿って配されるカバー部12aと、カバー部12aの左右側端部に設けられる左右一対の軸受部12bと、軸受部12bにおける幅方向の内側面から幅方向に沿って形成される第2収容孔部12cと、軸受部12bにおける幅方向の外側面から幅方向に沿って突出する突出部12dとを有する。
【0036】
カバー部12aは、可動フィン本体部11の回転軸に沿って配されており、幅方向に直交する断面を見たときに(図5を参照)、カバー部12aの内周面及び外周面が可動フィン本体部11の回転軸を中心とする円弧状を呈する略C字状の形状を有する。この円弧状のカバー部12aは、上述したように、略180°の範囲で形成されている。カバー部12aの円弧状の外周面は、カバー部12aの幅方向の全体に亘って設けられている。
【0037】
また、カバー部12aの内周面は、フィン軸部11bの外周面に対応して形成されており、回転する可動フィン本体部11のフィン軸部11bを摺接可能な形状、又はフィン軸部から僅かに離間した近接状態を保持可能な形状を有する。特に本実施例1の場合、カバー部12aの内周面と可動フィン本体部11のフィン軸部11bとは、可動フィン本体部11の回転軸に沿って接触しており、また、フィン軸部11bの幅方向の全体に亘って接触している。
【0038】
左右の軸受部12bは、固定部12を可動フィン本体部11に取り付けたときに、可動フィン本体部11に設けた左右の挿入凹部11cに挿入される。第2収容孔部12cは、図4に示したように、固定部12を可動フィン本体部11に取り付けたときに、可動フィン本体部11の第1収容孔部11dに直接連通する。固定部12の第2収容孔部12cには、スプリング部材15で付勢される連結ピン14が挿入されて収容される。
【0039】
可動フィン本体部11の第1収容孔部11dと固定部12の第2収容孔部12cの両方に連結ピン14が挿入されることにより、連結ピン14を中心として、可動フィン本体部11が固定部12に対して回転可能に連結される。この場合、連結ピン14は、可動フィン本体部11の回転軸上に配置される。
【0040】
左右の突出部12dは、当該突出部12dを介して可動フィン10を加飾部材30に連結させたときに、固定部12が加飾部材30に対して回転しないように、幅方向に直交する断面が非円形(非真円形)を呈する形状で形成されている。例えば本実施例1の場合、突出部12dにおける幅方向に直交する断面は、前後方向に長い長円形を呈する。
【0041】
第2可動フィン10bの操作ノブ13は、幅方向に直交する断面がU字状を呈する形状を有する。操作ノブ13は、第2可動フィン10bの回転を阻害しないように可動フィン本体部11及び/又は固定部12に取り付けられている。この場合、操作ノブ13の内周部には、可動フィン本体部11の少なくとも一部と、固定部12とが収容される。
【0042】
本実施例1の第1可動フィン10a及び第3可動フィン10cは、第2可動フィン10bから操作ノブ13が排除された形態で形成されている。
【0043】
左右の各加飾部材30は、上下方向に延在する板状の加飾ベース部31と、加飾ベース部31から前方に突出する3つの加飾フィン32と、各加飾フィン32の前端部に取り付けられる加飾ガーニッシュ33とを有する。
【0044】
3つの加飾フィン32は、前後方向に沿って、互いに平行に配されている。加飾フィン32は、可動フィン本体部11よりも前後方向に長く形成されている。各加飾フィン32は、加飾フィン本体部32aと、加飾フィン本体部32aの前端部から前方に突出する取付部32bとをそれぞれ有する。加飾フィン本体部32aは、可動フィン本体部11のフィンベース部11aと同じ厚さで形成されている。また、加飾フィン32の可動フィン10に対向する側面には、可動フィン10の上述した突出部12dが挿し込まれて突出部12dを収容する連結孔部32cが設けられている。各連結孔部32cは、可動フィン10の突出部12dに対応して、幅方向に直交する断面が非真円形を呈する孔形状(具体的には、長円形を呈する孔形状)で形成されている。
【0045】
加飾フィン32の取付部32bは、取付部32bの幅方向に直交する断面が半円形を呈するように形成されている。この半円形の取付部32bに、加飾ガーニッシュ33が取り付けられる。なお、取付部32bに加飾ガーニッシュ33を取り付ける方法や手段は特に限定されない。
【0046】
加飾ガーニッシュ33は、幅方向に直交する断面を見たときに略C字状を呈する形状を有する。また、加飾ガーニッシュ33は、幅方向に直交する断面を見たときに、加飾ガーニッシュ33の外周面が可動フィン10のカバー部12aの外周面と同じ円弧状を呈する形状を有する。また、加飾ガーニッシュ33は、可動フィン10の固定部12と同じ材質又は類似する材質で形成されていることが好ましく、また、可動フィン10の固定部12と同じ又は類似する色や質感を備えていることが好ましい。それにより、可動フィン10の固定部12と加飾ガーニッシュ33とは、同一の外観、又は同じように見える対応した外観を備えることができるため、完成させたベンチレータ1の見栄えを良くすること又は外観品質を高めることができる。
【0047】
本実施例1のベンチレータ1を組み立てる場合、先ず、可動フィン本体部11に設けた左右の第1収容孔部11dにスプリング部材15と連結ピン14とを順番に挿入して収容する。続いて、第1収容孔部11dに挿入された左右の連結ピン14を、スプリング部材15の付勢力に抗して幅方向の内側に向けて押し込むことによって、連結ピン14の全体を第1収容孔部11dに収容する(隠す)。
【0048】
続いて、連結ピン14が第1収容孔部11dに隠されている状態で、可動フィン本体部11に固定部12を組み合わせる。具体的には、可動フィン本体部11の左右の挿入凹部11cに、固定部12の左右の軸受部12bを挿入する。これにより、連結ピン14がスプリング部材15の付勢力によって第1収容孔部11dから飛び出し、固定部12の軸受部12bに設けた第2収容孔部12c内に挿入される。これによって、可動フィン本体部11及び固定部12が、可動フィン本体部11を固定部12に対して回転可能な状態で組み付けられる。
【0049】
以上のような組立工程を行うことによって、第1可動フィン10a及び第3可動フィン10cが作製される。また、操作ノブ13を取り付ける工程を追加することによって、図3に示した第2可動フィン10bが作製される。
【0050】
第1可動フィン10a~第3可動フィン10cの作製後、得られた第1可動フィン10a~第3可動フィン10cの左右両側に、加飾フィン32を有する左右の加飾部材30を取り付ける。この場合、第1可動フィン10a~第3可動フィン10cが有する左右の突出部12dを、加飾部材30の加飾フィン32に設けた対応する連結孔部32cにそれぞれ挿し込んで固定することによって、第1可動フィン10a~第3可動フィン10cに左右の加飾部材30を連結して取り付けることができる。なお、可動フィン10の突出部12dを加飾部材30の連結孔部32cに連結する方法や手段は特に限定されない。
【0051】
これにより、図1に示したように左右の加飾部材30間に第1可動フィン10a~第3可動フィン10cが連結された本実施例1のベンチレータ1が製造される。この場合、図4に示したように、各可動フィン10の可動フィン本体部11と加飾部材30との間には、可動フィン10を回転させるときに可動フィン10と加飾部材30との干渉を回避するための間隙35が設けられている。
そして、製造された加飾部材30付きのベンチレータ1は、自動車の内装部材に装着される。
【0052】
以上のような可動フィン10及び加飾部材30を有する本実施例1のベンチレータ1は、可動フィン10の可動フィン本体部11を、図5図7に示したように、固定部12に対し、可動フィン10のフィン軸部11b及び連結ピン14に沿った方向を回転軸にして、ニュートラルの位置から上下にそれぞれ略30°まで回転させることが可能であり、それによって、ベンチレータ1から吹き出す空気の風向を上下に調整できる。なお、可動フィン10のニュートラルの位置とは、可動フィン10が加飾フィン32と平行に保持される位置を言う。一方、固定部12は、可動フィン本体部11を上下に回転させても上下方向及び前後方向に移動することはなく、また、固定部12自体が回転することもない。
【0053】
すなわち、本実施例1のベンチレータ1によれば、可動フィン本体部11と固定部12が組み合わされた可動フィン10を有するため、ベンチレータ1を空気吹出口側から見た場合、可動フィン10を回転させたときに可動フィン10の下流側端部(固定部12)が移動も回転もしないように見える特徴的な外観を、前述した特許文献2よりも簡単な構造で得ることができる。
【0054】
更に、図1に示したベンチレータ1では、各可動フィン10の固定部12と、左右の加飾部材30の加飾ガーニッシュ33とが、両者の間に隙間も段差も形成されることなく、幅方向に沿って一続きに連続しているため、一直線上に繋がって見えるように配されている。このため、3つの可動フィン10と左右の加飾部材30とが一体感を生じさせるような見栄えを得ることができるため、ベンチレータ1の外観品質を向上させることができる。
【実施例2】
【0055】
図8は、本実施例2のベンチレータが分解された状態を模式的に示す分解斜視図である。図9は、ベンチレータの可動フィン及び加飾フィン間の連結部分を模式的に示す断面図である。
【0056】
本実施例2のベンチレータ2は、後述する可動フィン20及び加飾フィン32間の連結部分の構造が前述した実施例1のベンチレータ1とは異なるものの、その連結部分の構造以外については、前述した実施例1と実質的に同様に形成されている。従って、本実施例2において、前述した実施例1のベンチレータ1と実質的に同じ構成を有する部分及び部材については、同じ符号を用いて表すことによって、その詳細な説明を省略する。
【0057】
本実施例2のベンチレータ2は、3つの可動フィン20(図示しない第1可動フィン、第2可動フィン20b、及び、図示しない第3可動フィン)を有する。本実施例2の第1可動フィン及び第3可動フィンは、第2可動フィン20bから操作ノブ13が排除された形態で形成されている。3つの可動フィン20は、図示しないリンク部材によって、各可動フィン20の回転が連動するように互いに連結されている。可動フィン20の左右両側には、加飾部材30が設けられており、各可動フィン20は、加飾部材30に対して上下に回転可能に連結されている。
【0058】
本実施例2の第2可動フィン20bは、可動フィン本体部21と、可動フィン本体部21の前端部に配される固定部22と、可動フィン本体部21及び固定部22に取り付けられる操作ノブ13と、第2可動フィン20bを左右の加飾部材30に連結する左右一対のピン部材24とを有する。
【0059】
本実施例2の可動フィン本体部21は、フィンベース部11aと、フィンベース部11aから前方に突出するフィン軸部11bと、可動フィン本体部21の左右側縁部に設けられる挿入凹部11cと、フィン軸部11bの左右の側端面から左右方向に沿って形成される第1収容孔部21dとを有する。本実施例2の可動フィン本体部21は、第1収容孔部21dの幅方向における長さを、前述の実施例1で設けた第1収容孔部11dよりも短くしたこと以外は実施例1の可動フィン本体部11と実質的に同様に形成されている。第1収容孔部21dは、ピン部材24の一部を収容する円柱状の孔部であり、フィン軸部11bの左右側端面から幅方向の内側に向けてまっすぐに形成されている。
【0060】
本実施例2の固定部22は、幅方向に沿って配されるカバー部12aと、カバー部12aの左右側端部に設けられる左右一対の軸受部22bと、軸受部22bに形成される第2収容孔部22cとを有する。カバー部12aは、前述の実施例1の場合と実質的に同様に形成されている。
【0061】
本実施例2の第2収容孔部22cは、ピン部材24の一部を収容する円柱状の孔部であり、軸受部22bの幅方向の全体に亘って、幅方向に沿ってまっすぐに形成されている。第2収容孔部22cは、可動フィン本体部21の第1収容孔部21dよりも大きな内径を有する。本実施例2では、可動フィン本体部21の第1収容孔部21dと固定部22の第2収容孔部22cの両方にピン部材24が挿入されることにより、ピン部材24を中心として、可動フィン本体部21が固定部22に対して回転可能に連結される。
【0062】
本実施例2のピン部材24は、可動フィン本体部21の第1収容孔部21dに収容される第1ピン軸部24aと、固定部22の第2収容孔部22cに収容される第2ピン軸部24bと、第2ピン軸部24bから第1ピン軸部24aとは幅方向の反対側に向けて突出する突出部24cとを有する。
【0063】
第1ピン軸部24a及び第2ピン軸部24bは、円柱状に形成されており、且つ、それぞれの中心軸が同一軸上に位置するように一体的に形成されている。第1ピン軸部24aは、第2ピン軸部24bよりも細く形成されている。突出部24cは、当該突出部24cを介して可動フィン20を加飾部材30に連結させたときに、固定部22が加飾部材30に対して回転しないように、幅方向に直交する断面が非真円形を呈する形状(例えば、前後方向に長い長円形)で形成されている。
【0064】
本実施例2のベンチレータ2を組み立てる場合、先ず、可動フィン本体部21の左右の挿入凹部11cに、固定部22の左右の軸受部22bを挿入して、可動フィン本体部21に固定部22を組み合わせる。続いて、固定部22の外側から固定部22の第2収容孔部22cに向けてピン部材24を挿入して、ピン部材24の第2ピン軸部24b及び第1ピン軸部24aを固定部22の第2収容孔部22c及び可動フィン本体部21の第1収容孔部21dにそれぞれ収容する。これによって、可動フィン本体部21及び固定部22が、可動フィン本体部21を固定部22に対して回転可能な状態で組み付けられる。この場合、ピン部材24の第2ピン軸部24bを、固定部22の第2収容孔部22cに固定してもよい。
【0065】
以上のような組立工程を行うことによって、第1可動フィン及び第3可動フィンが作製される。また、操作ノブ13を取り付ける工程を追加することによって、第2可動フィン20bが作製される。その後、3つの可動フィン20の左右両側に、加飾フィン32を有する左右の加飾部材30を前述の実施例1の場合と同様に連結させる。
これにより、本実例例2のベンチレータ2が製造される。
【0066】
以上のように製造された本実施例2のベンチレータ2では、固定部22を移動させることも回転させることもなく、可動フィン20の可動フィン本体部21を、固定部22に対して、ニュートラルの位置から上下にそれぞれ略30°まで回転させることが可能である。従って、本実施例2のベンチレータ2によれば、前述した実施例1のベンチレータ2と同様の効果が得られる。
【0067】
なお、前述した実施例1及び実施例2のベンチレータ1,2は、3つの可動フィン10,20を有するが、本発明において、ベンチレータに設ける可動フィンの個数は特に限定されず、ベンチレータの大きさやデザイン等に応じて可動フィンの設置数を変更可能である。また、実施例1及び実施例2のベンチレータ1,2には、可動フィン10,20が幅方向に沿って配されているが、例えば可動フィンを高さ方向に沿って設置してベンチレータを形成してもよい。
【0068】
また本発明のベンチレータには、実施例1や実施例2で説明したような幅方向に沿って配される可動フィン10,20に加えて、例えば前述した特許文献1に記載されているように、可動フィン10,20の上流側に、高さ方向に沿って配される複数の上流側縦フィンが設けられていてもよい。或いは、実施例1や実施例2の可動フィン10,20に加えて、可動フィン10,20の下流側に、高さ方向に沿って配される複数の下流側縦フィンが設けられていてもよい。更に、可動フィン10,20に追加して設けられる上流側縦フィン又は下流側縦フィンは、左右方向に回転可能に設置されていてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1,2 ベンチレータ
10 可動フィン
10a 第1可動フィン
10b 第2可動フィン(操作可動フィン)
10c 第3可動フィン
11 可動フィン本体部
11a フィンベース部
11b フィン軸部
11c 挿入凹部
11d 第1収容孔部
12 固定部
12a カバー部
12b 軸受部
12c 第2収容孔部
12d 突出部
13 操作ノブ
14 連結ピン
15 スプリング部材(付勢部材)
20 可動フィン
20b 第2可動フィン
21 可動フィン本体部
21d 第1収容孔部
22 固定部
22b 軸受部
22c 第2収容孔部
24 ピン部材
24a 第1ピン軸部
24b 第2ピン軸部
24c 突出部
30 加飾部材
31 加飾ベース部
32 加飾フィン
32a 加飾フィン本体部
32b 取付部
32c 連結孔部
33 加飾ガーニッシュ
35 間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9