(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20240701BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/16 103
(21)【出願番号】P 2020087065
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】仕田 知経
(72)【発明者】
【氏名】春日 邦章
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-161053(JP,A)
【文献】特開2010-191276(JP,A)
【文献】特開2014-013268(JP,A)
【文献】特開2006-065113(JP,A)
【文献】特開2009-031497(JP,A)
【文献】特開平08-220902(JP,A)
【文献】特開平09-236964(JP,A)
【文献】特開2017-211636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/16
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体からトナー像が一次転写される中間転写体と、
前記中間転写体から記録材にトナー像を二次転写する二次転写部を形成する二次転写部材と、
前記中間転写体に接触する導電部材と、
前記導電部材に電圧を印加する第1の電源と、
前記第1の電源の電流又は電圧の少なくとも一方を検知する第1の検知手段と、
前記二次転写部材に電圧を印加する第2の電源と、
前記第2の電源の電流又は電圧の少なくとも一方を検知する第2の検知手段と、
前記二次転写部に記録材がある時に、前記第2の検知手段により検知される電圧の絶対値が所定の電圧の絶対値以上の場合には電流が所定の電流となるように前記第2の電源の制御を行い、前記第2の検知手段により検知される電圧の絶対値が前記所定の電圧の絶対値より小さくなる場合には電圧が前記所定の電圧となるように前記第2の電源の制御を行う制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記第1の検知手段の検知結果に基づいて前記所定の電圧を設定することが可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1の検知手段の検知結果が示す前記中間転写体の電気抵抗が、第1の電気抵抗の場合の前記所定の電圧の絶対値よりも、前記第1の電気抵抗よりも小さい第2の電気抵抗の場合の前記所定の電圧の絶対値の方が大きくなるように、前記所定の電圧を設定することを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
環境に関する情報を検知する環境検知手段を有し、
前記制御手段は、前記環境検知手段の検知結果が示す重量絶対湿度が所定値以上の場合に、前記第1の検知手段の検知結果に基づく前記所定の電圧の設定を行うことを特徴とする請求項1
又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
記録材の種類に関する情報を取得する種類取得手段を有し、
前記制御手段は、前記種類取得手段により取得された記録材の種類が所定の種類の場合に、前記第1の検知手段の検知結果に基づく前記所定の電圧の設定を行うことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
環境に関する情報を検知する環境検知手段と、
記録材の種類に関する情報を取得する種類取得手段と、
少なくとも2つの異なる種類の記録材のそれぞれに対して、少なくとも2つの異なる環境ごとに求められた、複数の前記第1の検知手段の検知結果と前記所定の電圧との関係を記憶する記憶手段と、
を有し、
前記制御手段は、複数の前記関係のうち前記環境検知手段の検知結果及び前記種類取得手段の取得結果に基づいて選択した前記関係を用いて、前記第1の検知手段の検知結果に基づいて前記所定の電圧を設定することを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記導電部材は、前記像担持体から前記中間転写体にトナー像を一次転写する一次転写部を形成する一次転写部材であり、
前記制御手段は、前記一次転写部にトナー像がない時に検知された前記第1の検知手段の検知結果に基づいて、前記所定の電圧を設定することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記像担持体の表面を帯電処理する帯電手段と、
前記帯電手段に電圧を印加する第3の電源と、
を有し、
前記制御手段は、前記帯電手段により所定の電位に帯電処理された前記像担持体の表面が前記一次転写部を通過している際に検知された前記第1の検知手段の検知結果に基づいて、前記所定の電圧を設定することを特徴とする請求項
6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記像担持体の表面を露光する露光手段と、
前記第3の電源の電流を検知する第3の検知手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記露光手段により露光した前記像担持体の表面を前記帯電手段により帯電処理している際の前記第3の検知手段の検知結果に基づいて、前記像担持体の表面を前記所定の電位に帯電処理するために前記第3の電源が前記帯電手段に印加する電圧を設定することが可能であることを特徴とする請求項
7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記一次転写部材は、周回移動が可能な無端状の前記中間転写体の内周面に接触して前記中間転写体を前記像担持体に接触させ、前記中間転写体の移動方向に関して、前記像担持体と前記中間転写体との接触部と、前記中間転写体と前記一次転写部材との接触部と、は重ならないことを特徴とする請求項
6乃至
8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記一次転写部材は、金属ローラで構成されていることを特徴とする請求項
9に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式を用いた複写機やページプリンタなどの画像形成装置では、カラー化、高速化などの高機能化に対応するために、中間転写方式が広く採用されている。この画像形成装置では、感光体に形成されたトナー像が一次転写部で中間転写体に一次転写され、このトナー像が二次転写部で中間転写体から記録用紙などの記録材に二次転写される。一次転写、二次転写は、静電的な力を利用して行われる。中間転写体としては、複数の張架ローラに張架される無端状のベルトで構成された中間転写ベルトが広く用いられている。また、二次転写は、中間転写ベルトを介して複数の張架ローラのうちの1つに当接する二次転写部材に二次転写電圧が印加されることで行われることが多い。以下、主に中間転写体として中間転写ベルトを備えた電子写真方式の画像形成装置を例として説明する。
【0003】
二次転写電圧は、一般に、定電圧制御又は定電流制御される。二次転写電圧を定電圧制御する場合、二次転写部における記録材の外側の領域や、記録材上のトナー像が無い部分を流れる電流とは無関係に、記録材上のトナー像が有る部分に定電圧に応じた電流を流すことができる。しかし、二次転写部材や記録材の電気抵抗(以下、単に「抵抗」ともいう。)の変動によって、適切な二次転写電流を供給できる二次転写電圧が変わる。二次転写部材の抵抗は、製品ごとのばらつき、環境(温度又は湿度の少なくとも一方)、使用量の増加などによって変動する。記録材の抵抗は、記録材の種類や環境などによって変動する。そこで、二次転写電圧を定電圧制御する場合、連続画像形成の前や途中で二次転写部材の抵抗を検知し、その二次転写部材の抵抗に応じた電圧に記録材の種類などに応じた記録材分担電圧を加算した二次転写電圧を求める制御が必要になる。そのため、該制御のために連続画像形成の生産性が低下したり、該制御の前後で画像濃度が段階的に変化したりすることがある。
【0004】
一方、二次転写電圧を定電流制御する場合、例えば連続画像形成時に、複数の記録材のそれぞれに供給される二次転写電流が、連続画像形成中にリアルタイムで、二次転写部材や記録材の抵抗に応じて調整される。そのため、連続画像形成の生産性の低下を抑制することができる。また、複数の記録材間で画像濃度が段階的に変化することを抑制することができる。また、部品、画像形成装置の使用状況(累積の画像形成枚数など)、記録材の種類や吸湿状態などのばらつきに対処しやすい。しかし、二次転写電圧を定電流制御する場合、二次転写部における記録材の外側の領域や、記録材上のトナー像が無い部分といった、抵抗が低い箇所を選択的に電流が流れる。そのため、記録材上のトナー像が有る部分を流れる電流が不足し、トナー像が十分に記録材に転写されずに画像が抜けたようになる転写不良(以下、「転写ボソ」ともいう。)が発生することがある。
【0005】
特許文献1では、二次転写電圧に下限値(下限電圧)を設定し、二次転写部に記録材がある時に検知した電圧が下限電圧を下回る場合には二次転写電圧を下限電圧で定電圧制御する方法が提案されている。この方法では、二次転写部に記録材が無い時に検知した電圧(二次転写部材の抵抗)と、記録材の種類と、に基づいて、下限電圧を設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、二次転写部材の抵抗や記録材の抵抗が同等である場合でも、中間転写ベルトの抵抗によっては、良好な画質が得られる二次転写電圧が大きく異なる場合がある。具体的には、高温高湿環境や画像形成装置の使用状況(累積の画像形成枚数など)によって、中間転写ベルトの抵抗が低い場合には、トナー像が無い部分に電流がより集中し、トナー像を十分に転写するためにはより大きな二次転写電圧が必要となることがある。即ち、中間転写ベルトの抵抗の影響によっては、設定された二次転写電圧の値が不足することで転写不良が発生する場合がある。
【0008】
したがって、本発明は、中間転写体の電気抵抗による二次転写部における転写不良の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体からトナー像が一次転写される中間転写体と、前記中間転写体から記録材にトナー像を二次転写する二次転写部を形成する二次転写部材と、前記中間転写体に接触する導電部材と、前記導電部材に電圧を印加する第1の電源と、前記第1の電源の電流又は電圧の少なくとも一方を検知する第1の検知手段と、前記二次転写部材に電圧を印加する第2の電源と、前記第2の電源の電流又は電圧の少なくとも一方を検知する第2の検知手段と、前記二次転写部に記録材がある時に、前記第2の検知手段により検知される電圧の絶対値が所定の電圧の絶対値以上の場合には電流が所定の電流となるように前記第2の電源の制御を行い、前記第2の検知手段により検知される電圧の絶対値が前記所定の電圧の絶対値より小さくなる場合には電圧が前記所定の電圧となるように前記第2の電源の制御を行う制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記第1の検知手段の検知結果に基づいて前記所定の電圧を設定することが可能であることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中間転写体の電気抵抗による二次転写部における転写不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】画像形成部及び一次転写部の概略断面図である。
【
図3】一次転写部の中間転写ベルトの張架距離と抵抗との関係を示すグラフ図である。
【
図4】二次転写電流を説明するための模式図である。
【
図5】中間転写ベルトの抵抗と下限電圧との関係を示すグラフ図である。
【
図6】実施例1の画像形成装置の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。
【
図8】従来例と実施例1とでの二次転写電圧の設定を比較して示すグラフ図である。
【
図9】感光ドラムの特性の変化の一例を説明するためのグラフ図である。
【
図10】実施例2の画像形成装置の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。
【
図11】実施例2の制御のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0013】
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することが可能な、中間転写方式を採用したタンデム型のプリンタである。
【0014】
画像形成装置100は、複数の画像形成部(ステーション)として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラックKの各色のトナー像を形成する画像形成部1a、1b、1c、1dを有する。各画像形成部1a、1b、1c、1dにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾のa、b、c、dを省略して総括的に説明することがある。本実施例では、画像形成部1は、後述する感光ドラム2、帯電ローラ3、露光装置4、現像装置5、一次転写ローラ14、ドラムクリーニング装置6などを有して構成される。なお、ここでは、電圧の大小は、その極性に依らず、0からの電位差の大小(すなわち、絶対値の大小)で表す。電圧の極性は、トナーの正規の帯電極性に応じて変化するものである。本実施例では、トナーの正規の帯電極性は負極性であり、現像時のトナーは主に負極性に帯電している。
【0015】
像担持体としてのドラム状(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム2は、
図1中の矢印R1方向に所定の周速度Vdr(
図2(a))で回転駆動される。回転する感光ドラム2の表面は、帯電手段としてのローラ状の帯電部材である帯電ローラ3によって所定の暗部電位(帯電電位)VDに一様に帯電処理される。帯電処理時に、帯電ローラ3には、帯電電源D3により、所定の帯電電圧が印加される。帯電処理された感光ドラム2の表面は、露光手段としての露光装置(レーザスキャナユニット)4によって画像情報に応じて走査露光され、感光ドラム2上に各画像形成部1に対応する色成分の画像情報に応じた静電潜像(静電像)が形成される。ここで、暗部電位VDとは、帯電ローラ3により帯電処理され、露光装置4により露光される前の感光ドラム2の表面の電位を指す。感光ドラム2上に形成された静電潜像は、現像手段としての現像装置5によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム2上にトナー像が形成される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位が低下した感光ドラム2上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム2の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性に帯電したトナーが付着する(反転現像)。
【0016】
4つの感光ドラム2a、2b、2c、2dと対向するように、中間転写体としての無端状のベルトで構成された中間転写ベルト31が配置されている。中間転写ベルト31は、複数の張架ローラ(支持部材)としてのテンションローラ32と二次転写対向ローラ34とに掛け渡されて張架されている。テンションローラ32は、中間転写ベルト31に所定のテンションを与える。二次転写対向ローラ(内ローラ)34は、後述する二次転写ローラ25の対向部材(対向電極)として機能すると共に、中間転写ベルト31を駆動する駆動ローラとして機能する。中間転写ベルト31の内周面側には、各感光ドラム2a、2b、2c、2dに対応して、一次転写手段としてのローラ状の一次転写部材である一次転写ローラ14a、14b、14c、14dが配置されている。一次転写ローラ14は、中間転写ベルト31を感光ドラム2に向けて押圧し、感光ドラム2と中間転写ベルト31とが接触する一次転写部T1を形成する。中間転写ベルト31は、駆動ローラを兼ねる二次転写対向ローラ34が回転駆動されることで
図1中の矢印R2方向に所定の周速度Vb(
図2(a))で回転(周回移動)する。また、一次転写ローラ14は、中間転写ベルト31に当接して、中間転写ベルト31の回転に従動して回転する。なお、中間転写ベルト31の周速度Vbが画像形成装置100のプロセス速度に相当する。上記感光ドラム2上に形成されたトナー像は、一次転写部T1において、一次転写ローラ14の作用により、回転している中間転写ベルト31上に一次転写される。一次転写時に、一次転写ローラ14には、一次転写電源D1により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である一次転写電圧が印加される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム2上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト31上に重ね合わされるようにして順次一次転写される。
【0017】
なお、本実施例では、帯電電源D3、一次転写電源D1は、それぞれ画像形成部1ごとに独立して設けられているが、帯電電源及び一次転写電源のうちの少なくとも一方を複数の画像形成部で共通化してもよい。
【0018】
中間転写ベルト31の外周面側において、二次転写対向ローラ34と対向する位置には、二次転写手段としてのローラ状の二次転写部材である二次転写ローラ(外ローラ)25が配置されている。二次転写ローラ25は、二次転写対向ローラ34に向けて押圧され、中間転写ベルト31を介して二次転写対向ローラ34に当接して、中間転写ベルト31と二次転写ローラ25とが接触する二次転写部T2を形成する。上記中間転写ベルト31上に形成されたトナー像は、二次転写部T2において、二次転写ローラ25の作用により、中間転写ベルト31と二次転写ローラ25とに挟持されて搬送されている記録用紙などの記録材(転写材、シート)S上に二次転写される。二次転写時に、二次転写ローラ25には、二次転写電源D2により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である二次転写電圧が印加される。記録材Sは、記録材収容部としてのカセット11に収容されている。記録材Sは、カセット11から給送ローラ12などによって送り出され、レジストローラ13へと搬送される。この記録材Sは、レジストローラ13によって、中間転写ベルト31上のトナー像とタイミングが合わされて二次転写部T2に供給される。
【0019】
トナー像が転写された記録材Sは、定着手段としての定着装置15へと搬送される。定着装置15は、未定着のトナー像を担持した記録材Sを加熱及び加圧することによって、記録材S上にトナー像を定着(溶融、固着)させる。トナー像が定着された記録材Sは、画像形成装置100の装置本体110の外部に設けられたトレイ16へと排出(出力)される。
【0020】
一次転写時に中間転写ベルト31上に転写されずに感光ドラム2上に残留したトナー(一次転写残トナー)は、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置6によって感光ドラム2上から除去されて回収される。また、二次転写時に記録材S上に転写されずに中間転写ベルト31上に残留したトナー(二次転写残トナー)は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置33によって中間転写ベルト31上から除去されて回収される。
【0021】
本実施例では、各画像形成部1において、感光ドラム2と、これに作用するプロセス手段としての帯電ローラ3、現像装置5及びドラムクリーニング装置6とは、一体的にカートリッジ化されてプロセスカートリッジ7を構成している。プロセスカートリッジ7は、画像形成装置100の装置本体110に対して着脱可能とされている。プロセスカートリッジ7は、例えば、現像装置5に収容されたトナーが無くなった場合、あるいは感光ドラム2の使用量が所定の使用量に達した場合などに新品に交換される。
【0022】
また、本実施例では、画像形成装置100には、装置本体110の内部の温度及び湿度を検知する環境センサ(温湿度センサ)50が設けられている。環境センサ50は、画像形成装置100の内部又は外部の少なくとも一方の温度又は湿度の少なくとも一方を検知するための環境検知手段の一例である。環境センサ50は、装置本体110の内部の温度及び湿度の検知結果を示す信号を後述する制御部150へと出力する。
【0023】
2.制御態様
図6は、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。画像形成装置100には、画像形成装置100の制御を行うための電気回路が搭載された制御手段としての制御部150が設けられている。制御部150は、演算処理を行う中心的素子である演算制御手段としてのCPU151、記憶手段としてのRAM、ROMなどのメモリ(記憶媒体)152、制御部150と各部との信号の入出力を制御する入出力回路(図示せず)などを有して構成される。書き換え可能なメモリであるRAMには、制御部150に入力された情報、検知された情報、演算結果などが格納され、ROMには制御プログラム(アルゴリズム)、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。CPU151とRAMやROMなどのメモリ152とは互いにデータの転送や読込みが可能となっている。
【0024】
制御部150には、次に例示するような画像形成装置100の各部が接続されている。制御部150には、記録材Sの搬送に関する駆動源(図示せず)、中間転写ベルト31の駆動源(図示せず)、及び各画像形成部1の駆動源(図示せず)などの駆動制御回路(図示せず)が接続されている。また、制御部150には、一次転写電源D1、二次転写電源D2及び帯電電源D3などの高圧電源回路が接続されている。また、制御部150には、高圧電源回路に含まれていてよい後述する電流検知部(電流検知回路)、電圧検知部(電圧検知回路)が接続されている。また、制御部150には、環境センサ50などの装置本体110に設けられた各種センサが接続されている。また、制御部150には、装置本体110に設けられた操作部140が接続されている。操作部140は、制御部150の制御によりユーザやサービス担当者などの操作者に情報を表示するための表示部、及び操作者が制御部150に情報を入力するための入力部を有する。また、制御部150には、パーソナルコンピュータなどの外部装置200が接続されている。また、制御部150には、装置本体110に接続されるか又は設けられた画像読取装置(図示せず)が接続されていてよい。制御部150は、操作部140や外部装置200から入力されるジョブの情報や、各種センサからの信号に基づいて、画像形成装置100の各部の動作を統括制御し、画像形成動作を実行させる。
【0025】
ジョブの情報(画像形成信号)は、ジョブを実行するための画像データ及び制御指令を含む。本実施例では、ジョブの情報には、記録材Sの種類に関する情報が含まれているものとする。なお、記録材Sの種類に関する情報とは、普通紙、上質紙、光沢紙、コート紙、エンボス紙、厚紙、薄紙などの一般的な特徴に基づく属性(いわゆる、紙種カテゴリー)、坪量、厚さ、サイズなどの数値や数値範囲、あるいは銘柄(メーカー、品番などを含む。)などの、記録材Sを区別可能な任意の情報を包含するものである。なお、記録材Sの種類に関する情報は、記録材Sの種類の情報自体であってもよいし、ジョブの情報に含まれる、記録材Sの種類に対応して選択されるプリントモードの情報などの、記録材Sの種類に対応する情報であってもよい。また、ここでは図示を省略しているが、制御部150には、画像形成装置100と外部装置200との間での情報の授受や、外部装置200から受信した画像情報の処理などを行うプリンタコントローラを介して、ジョブの情報が入力されるようになっていてよい。
【0026】
なお、本実施例では、種類取得手段として機能する制御部150が、操作部140や外部装置200から入力される情報(信号)に基づいて記録材Sの種類に関する情報を取得するが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、画像形成装置100に記録材Sの種類を検知するための記録材種類検知手段を設け、制御部150がこの記録材種類検知手段の検知結果に基づいて記録材Sの種類に関する情報を取得するようにしてもよい。記録材種類検知手段としては、記録材Sの搬送経路上において記録材Sの厚さや表面粗さなどを検知する光学式の記録材種類センサ(メディアセンサ)を用いることができる。
【0027】
ここで、画像形成装置100は、1つの開始指示により開始される、単一又は複数の記録材Sに画像を形成して出力する一連の動作であるジョブ(プリントジョブ、印刷ジョブ)を実行する。ジョブは、一般に、画像形成工程、前回転工程、複数の記録材Sに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Sに形成して出力する画像の静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の一次転写、二次転写を行う期間であり、画像形成時とはこの期間のことをいう。より詳細には、画像形成時のタイミングは、上記静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の一次転写、二次転写の各工程を行う位置で異なり、感光ドラム2上や中間転写ベルト31上の画像領域が上記各位置を通過している期間に相当する。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Sに対する画像形成を連続して行う際(連続画像形成)の記録材Sと記録材Sとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置100の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。より詳細には、非画像形成時のタイミングは、感光ドラム2上や中間転写ベルト31上の非画像領域が、上記静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の一次転写、二次転写の各工程を行う各位置を通過している期間に相当する。なお、感光ドラム2上や中間転写ベルト31上の画像領域とは、記録材Sに転写されて画像形成装置100から出力される画像が形成され得る領域であり、非画像領域は画像領域以外の領域である。
【0028】
3.一次転写部の構成
図2(a)は、本実施例の画像形成装置100における画像形成部1の一部の要素を示す模式的な断面図(感光ドラム2の回転軸線と略直交する断面)である。
図2(b)は、
図2(a)に示す一次転写部T1の近傍を更に拡大して示す模式的な断面図(感光ドラム2の回転軸線と略直交する断面)である。
【0029】
本実施例では、感光ドラム2は、外径が24mmである。また、本実施例では、感光ドラム2は、アルミニウム製のドラム状の支持体の外周に、導電層と、下引き層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、表面層としての保護層と、がこの順に設けられて構成されている。本実施例では、感光ドラム2の最表層を構成する保護層は、アクリル樹脂を用いて形成されている。電荷輸送層の厚さ(膜厚)は、5~40μmであることが好ましい。保護層の厚さ(膜厚)は、0.5~20μmであることが好ましい。
【0030】
本実施例では、中間転写ベルト31は、周長が800mm、厚さが70μmの、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製の無端状のベルト(フィルム)である。本実施例では、中間転写ベルト31の材料としてPET樹脂を使用したが、中間転写ベルト31の材料はこれに限定されるものではない。例えば、熱可塑性樹脂であれば、次のような他の材料を使用してもよい。例えば、ポリイミド、PEEK、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などの材料及びこれらの混合樹脂である。また、本実施例では、中間転写ベルト31の材料は、導電剤を含有している。本実施例では、導電剤としてイオン導電性の導電剤を用いた。イオン導電性の導電剤としては、例えば多価金属塩や第4級アンモニウム塩などが挙げられる。第4級アンモニウム塩のカチオン部としては、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトライソプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオンなどが挙げられ、アニオン部としては、ハロゲンイオンやフルオロアルキル基の炭素数が1~10個のフルオロアルキル硫酸イオンやフルオロアルキル亜硫酸イオン、フルオロアルキルホウ酸イオンが挙げられる。また、中間転写ベルト31は、主としてポリエーテルエステルアミド樹脂を用い、これにパーフルオロブタンスルホン酸カリウムなどを併用して添加した構成とすることもできる。
【0031】
中間転写ベルト31は、上述のベルトで構成された基材(基層)の表面に保護層を設けるなどして、他の層を有していてもよい。すなわち、中間転写ベルト31は、イオン導電性の導電部材で形成された層を有していればよい。
【0032】
ここで、イオン導電性の導電剤を用いた部材は、電子導電性の導電剤を用いた部材と比較して、長期使用した場合の抵抗変動を抑制できる利点がある。一方、イオン導電性の導電剤を用いた部材は、電子導電性の導電剤を用いた部材と比較して、環境(温度又は湿度の少なくとも一方)による抵抗変動が大きい傾向がある。本実施例では、上述のように、中間転写ベルト31としてイオン導電性の中間転写ベルト31を用いており、中間転写ベルト31の抵抗は、低温低湿環境では上昇し、高温高湿環境では低下する傾向がある。電子導電性の導電剤を用いた部材は、イオン導電性の導電剤を用いた部材と比較して、環境による抵抗変動が小さい。しかし、電子導電性の中間転写ベルト31でも、例えば電子導電性の導電剤としてカーボンブラックなどを使用した場合、長期使用による劣化に伴い、局所的に電流が流れやすいリークサイトが増加して抵抗が減少する場合がある。この場合も、高温高湿環境において画質が低下する場合がある。このように、本実施例ではイオン導電性の中間転写ベルト31を用いたが、中間転写ベルト31として電子導電性の中間転写ベルト31を用いる場合でも本発明を適用することができ、以下で説明する本実施例の効果と同様の効果を得ることができる。
【0033】
図2(a)に示すように、本実施例では、一次転写ローラ14は、中間転写ベルト31の回転方向(表面の移動方向、搬送方向)に関して、感光ドラム2に対し下流側にオフセットされて配置されている。つまり、一次転写ローラ14は、中間転写ベルト31を内周面側から外周面側(感光ドラム2側)に押し上げて中間転写ベルト31を撓ませるように配置されて、中間転写ベルト31に接触させられる。中間転写ベルト31の回転方向に関して、感光ドラム2と中間転写ベルト31とは、接触開始位置38から接触終了位置39までの第1接触部NDにおいて接触する。また、中間転写ベルト31の回転方向に関して、一次転写ローラ14と中間転写ベルト31とは、接触開始位置40から接触終了位置41までの第2接触部NTにおいて接触する。そして、第1接触部NDと第2接触部NTとは、中間転写ベルト31の回転方向に関してずらされている。特に、本実施例では、中間転写ベルト31の回転方向に関して、第1接触部NDと第2接触部NTとが重ならないようになっている。したがって、中間転写ベルト31の回転方向に関して、感光ドラム2と中間転写ベルト31との接触終了位置39から、一次転写ローラ14と中間転写ベルト31との接触開始位置40までの間は、中間転写ベルト31が感光ドラム2と一次転写ローラ14とに張架された状態となっている。この中間転写ベルト31の回転方向に関する上記接触終了位置39と上記接触開始位置40との間の距離を「張架距離Dk」と定義する。本実施例では、張架距離Dkは、3.0mmに設定されている。
【0034】
本実施例では、一次転写ローラ14は、金属ローラで構成されている。より詳細には、本実施例では、一次転写ローラ14は、中間転写ベルト31に接触可能なローラ部、及び一次転写ローラ14の回転軸線方向に関してローラ部の両端部に設けられた回転軸部を含み、全体が金属で形成されている。特に、本実施例では、一次転写ローラ14は、ローラ部の外径が5.0mmのステンレス製の金属ローラである。一次転写ローラ14を構成する金属ローラの材料は、ステンレスに限定されるものではなく、アルミニウムや表面をめっき処理した鉄なども使用可能である。一次転写ローラ14として表面に弾性層を有していない金属ローラを用いることによるメリットとしては、一次転写ローラ14の抵抗の、製品ごとのばらつきや、使用量の増加による変動が、ほとんどないことが挙げられる。一方、一次転写ローラ14として表面に弾性層を有していない金属ローラを用いる場合、
図2(b)に示すクリアランスDcを十分に確保することが望まれる。クリアランスDcは、
図2(b)に示す断面における、感光ドラム2の回転中心と一次転写ローラ14の回転中心とを結んだ直線36上の、感光ドラム2と中間転写ベルト31との間隔、及び一次転写ローラ14と中間転写ベルト31との間隔の合計と定義する。クリアランスDcが小さすぎると、異物などが混入した場合に画像上に顕在化することがある。一般に、異物は大きくても0.1mm(最大径)であり、この点などを考慮して画像上への異物の影響を十分に抑制できるようにクリアランスDcを確保することが望ましい。これに限定されるものではないが、典型的には、クリアランスDcは、0.1mm以上、0.5mm以下程度とされる。
【0035】
また、張架距離Dkが大きくなると、一次転写部T1の抵抗が大きくなり、結果的に必要な一次転写電圧が大きくなる。そのため、張架距離Dkが大きすぎる場合には、特に低温低湿環境において異常放電に伴う画像不良のリスクが高まることがある。本実施例で用いた中間転写ベルト31の常温常湿環境における表面抵抗率は凡そ1.0×10
10Ω/□である。そして、本実施例で用いた中間転写ベルト31の常温常湿環境における張架距離Dkと一次転写部T1の抵抗との関係は、
図3に示すような関係となっている。
図3において、横軸は張架距離Dk、縦軸は一次転写部T1の抵抗値(同図中の例えば1.0E+08は1.0×10
8を意味する。他も同様。)を示す。本実施例の構成では、張架距離Dkが10mmを超えると、常温常湿環境でも一次転写電圧が3.0kVを超え、異常放電が発生しやすくなる。そのため、本実施例の構成では、張架距離Dkは10mm以下(0mmより大きい)とすることが望ましい。本実施例では、部品公差を考慮してもクリアランスDcが確保できる範囲で張架距離Dkが最短になるように、張架距離Dkは3.0mm、クリアランスDcは0.36mmに設定した。
【0036】
なお、中間転写ベルト31の電気的特性の測定は、例えば、Hiresta・UP MCP-HT450(三菱化学社製)を用いて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、印加電圧250Vで行う。
【0037】
本実施例では、
図6に示すように、一次転写電源D1は、電圧出力部121と、該電圧出力121の出力を制御する出力制御部122と、を有する。出力制御部122は、電流検知手段としての電流検知部(電流検知回路)123と、電圧検知手段としての電圧検知部(電圧検知回路)124と、を有する。電流検知部123は、一次転写電源D1が一次転写ローラ14(一次転写部T1)に電圧を印加している際に一次転写ローラ14(一次転写部T1、一次転写電源D1)に流れる電流の値を検知する。電圧検知部124は、一次転写電源D1が出力する電圧の値を検知する。電圧検知手段は、電圧出力部121の定電圧出力の設定値に基づいて電圧値を検知するものであってもよい。本実施例では、一次転写電源D1は、定電流制御された電圧を一次転写ローラ14(一次転写部T1)に印加することができる。つまり、出力制御部122は、電流検知部123により検知される電流の値が略一定となるように(目標電流値に近付くように)、電圧出力部121の出力を調整して、一次転写電源D1の出力の定電流制御を行うことができる。また、本実施例では、一次転写電源D1は、定電圧制御された電圧を一次転写ローラ14(一次転写部T1)に印加することができる。つまり、出力制御部122は、電圧検知部124により検知される電圧の値が略一定となるように(目標電圧値に近付くように)、電圧出力部121の出力を調整して、一次転写電源D1の出力の定電圧制御を行うことができる。また、電流検知部123、電圧検知部124は、検知結果を示す信号を制御部150へと出力できるようになっている。
【0038】
4.二次転写部の構成
本実施例では、接地電位に接続された二次転写対向ローラ34によって内側面を支持された中間転写ベルト31に対して、二次転写ローラ25が圧接させられることにより、中間転写ベルト31と二次転写ローラ25との間に二次転写部T2が形成される。そして、二次転写電源D2から二次転写ローラ25へ正極性の直流電圧が印加されることによって、二次転写部T2に転写電界が形成される。これにより、中間転写ベルト31に担持された負極性のトナー像が、二次転写部T2を通過する記録材Sへ二次転写される。
【0039】
本実施例では、二次転写対向ローラ34は、中間転写ベルト31を摩擦力によって回転駆動する駆動ローラを兼ねている。本実施例では、二次転写対向ローラ34は、芯金(芯材)としての外径が18mmのステンレス製のパイプの外周に、弾性層としての厚さ1mmの導電性ゴム層が形成されて構成されており、外径は20mmである。弾性層を構成する導電性ゴムとしては、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ウレタンなどにイオン導電性の導電剤を含有させたものを用いることができる。なお、弾性層は、電子導電性の導電剤を含有するものであってもよい。また、本実施例では、二次転写対向ローラ34の抵抗は、1×105Ω以下に調整されている。ここで、二次転写対向ローラ34の抵抗は、次のようにして測定した。二次転写対向ローラ34を10Nの圧力をかけて導電性の円筒部材に圧接させた。この導電性の円筒部材を回転させることによって、二次転写対向ローラ34を従動回転させた。そして、二次転写対向ローラ34を回転させながら、二次転写対向ローラ34の回転軸に50Vの電圧を印加したときに流れる電流を測定し、電圧値と電流値とから抵抗を求めた。また、本実施例では、二次転写対向ローラ34の表面硬度は、Asker-C硬度(荷重:4.9N)で70度である。
【0040】
本実施例では、二次転写ローラ25は、芯金(芯材)としての外径が6mmのステンレス製のローラ軸の外周に、弾性層としての厚さ5mmの導電性ゴムスポンジ層が形成されて構成されており、外径が16mmである。弾性層を構成する導電性ゴムスポンジとしては、スチレンブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ウレタンなどにイオン導電性の導電剤を含有させたものを用いることができる。なお、弾性層は、電子導電性の導電剤を含有するものであってもよい。また、本実施例では、二次転写ローラ25の抵抗は、1×107~1×108Ωに調整されている。ここで、二次転写ローラ25の抵抗は、次のようにして測定した。二次転写ローラ25を10Nの圧力をかけて導電性の円筒部材に圧接させた。この導電性の円筒部材を回転させることによって、二次転写ローラ25を従動回転させた。そして、二次転写ローラ25を回転させながら、二次転写ローラ25の回転軸に1kVの電圧を印加したときに流れる電流を測定し、電圧値と電流値とから抵抗を求めた。また、本実施例では、二次転写ローラ25の表面硬度は、Asker-C硬度(荷重:4.9N)で35度である。
【0041】
本実施例では、
図6に示すように、二次転写電源D2は、電圧出力部131と、該電圧出力131の出力を制御する出力制御部132と、を有する。出力制御部132は、電流検知手段としての電流検知部(電流検知回路)133と、電圧検知手段としての電圧検知部(電圧検知回路)134と、を有する。電流検知部133は、二次転写電源D2が二次転写ローラ25(二次転写部T2)に電圧を印加している際に二次転写ローラ25(二次転写部T2、二次転写電源D2)に流れる電流の値を検知する。電圧検知部134は、二次転写電源D2が出力する電圧の値を検知する。電圧検知手段は、電圧出力部131の定電圧出力の設定値に基づいて電圧値を検知するものであってもよい。本実施例では、二次転写電源D2は、定電流制御された電圧を二次転写ローラ25(二次転写部T2)に印加することができる。つまり、出力制御部132は、電流検知部133により検知される電流の値が略一定となるように(目標電流値に近付くように)、電圧出力部131の出力を調整して、二次転写電源D2の出力の定電流制御を行うことができる。また、本実施例では、二次転写電源D2は、定電圧制御された電圧を二次転写ローラ25(二次転写部T2)に印加することができる。つまり、出力制御部132は、電圧検知部134により検知される電圧の値が略一定となるように(目標電圧値に近付くように)、電圧出力部131の出力を調整して、二次転写電源D2の出力の定電圧制御を行うことができる。また、電流検知部133、電圧検知部134は、検知結果を示す信号を制御部150へと出力できるようになっている。
【0042】
なお、本実施例における二次転写対向ローラ34に対応するローラ(内ローラ)を二次転写部材として用いて、二次転写時にこのローラにトナーの正規の帯電極性と同極性の二次転写電圧を印加してもよい。この場合、本実施例における二次転写ローラ25に対応するローラ(外ローラ)を対向部材(対向電極)として用いて、このローラを電気的に接地すればよい。
【0043】
5.二次転写電圧制御の概要
二次転写ローラ25の抵抗(電気特性)は、製造時の製品ごとのばらつき、環境(温度又は湿度の少なくとも一方)の変化、使用量の増加などに伴って大きく変化する。また、記録材Sの抵抗(電気特性)も、記録材Sの吸湿や乾燥などによって大きく変化する。そのため、画像形成中に記録材Sに流れる二次転写電流を一定に保つためには、二次転写ローラ25に印加する二次転写電圧を定電流制御することが望ましい。そこで、本実施例では、二次転写部T2に記録材Sがある時に検知される電流が略一定となるように二次転写電圧を定電流制御する。
【0044】
本実施例では、二次転写電源D2は、可変の定電圧を出力することができる。また、本実施例では、二次転写電源D2は、二次転写ローラ25に流れる電流を検知することができる。そして、本実施例では、二次転写電源D2は、検知した電流がトナー像の転写に必要な目標電流になるように、二次転写ローラ25に印加する電圧を調整することができる。このような構成とすることで、定電圧制御と定電流制御とが混在した制御が可能であり、定電圧、定電流の設定値を任意に変更することができる。
【0045】
図4(a)、(b)は、記録材Sの搬送方向の上流側から見た、二次転写部T2における電流を示す模式図である。
図4(a)は常温常湿環境、
図4(b)は高温高湿環境における電流を示している。
図4(a)、(b)中の白抜きの矢印の太さは、記録材Sの搬送方向と略直交する方向に関する二次転写部T2の各部位を流れる電流の大きさを表している。また、
図4(a)、(b)において、記録材Sと中間転写ベルト31とは、トナー像Tiが無い部分において、実際には接触している。
【0046】
まず、
図4(a)に示す常温常湿環境において二次転写部T2に流れる電流について説明する。中間転写ベルト31から記録材Sへトナー像Tiを転写する際には、記録材S上のトナー像Tiが有る部分(画像部)に流れる電流を必要十分な範囲に確保する必要がある。トナー像Tiを記録材Sへ転写する際に、記録材Sの搬送方向と略直交する方向に関する二次転写部T2の端部では、記録材Sが無く、中間転写ベルト31と二次転写ローラ25とが直接接触している。この記録材Sが無い部分は、記録材Sが有る部分よりも、抵抗が低くなる。そのため、この記録材Sが無い部分は、記録材Sが有る部分よりも、二次転写電流の電流密度が高くなる。また、記録材S上のトナー像Tiが無い部分(非画像部)は、記録材S上のトナー像Tiが有る部分よりも、抵抗が低くなる。そのため、この記録材S上のトナー像Tiが無い部分は、記録材S上のトナー像Tiが有る部分よりも、二次転写電流の電流密度が高くなる。その結果、常温常湿環境でも、記録材S上のトナー像Tiが有る部分の電流密度は、二次転写部T2全体へ流れる二次転写電流の平均電流密度よりも低くなる。
【0047】
次に、
図4(b)を参照して高温高湿環境において二次転写部T2に流れる電流について説明する。高温高湿環境では、常温常湿環境よりも更に記録材S上のトナー像Tiが有る部分の電流密度は低くなる。記録材Sが吸湿して抵抗が小さくなっているため、記録材S上のトナー像Tiが有る部分とトナー像Tiが無い部分との抵抗の差が大きくなるからである。そのため、常温常湿環境では記録材S上のトナー像Tiが有る部分とトナー像Tiが無い部分とを流れる二次転写電流の差が小さく画質に問題が無い場合でも、高温高湿環境では、次のようになる。つまり、抵抗の低い記録材Sが無い部分や記録材S上のトナー像Tiが無い部分へ二次転写電流が集中し、記録材S上のトナー像Tiが有る部分に流れる二次転写電流の割合が小さくなる。その結果、高温高湿環境では、トナー像Tiを十分に記録材Sに転写できず、二次転写電流の不足による転写不良、すなわち、「転写ボソ」が発生しやすい。
【0048】
したがって、本実施例では、少なくとも高温高湿環境で画像形成装置100を使用する場合などの、トナー像の有無による抵抗の差によって定電流制御ではトナー像の転写性を確保できない条件では、二次転写電圧に下限値(下限電圧)Vlmtを設定する。そして、二次転写電圧を定電流制御している際に、所定の二次転写電流を流すために必要な二次転写電圧が下限電圧Vlmtを下回る場合に、二次転写電圧として下限電圧Vlmtを印加する定電圧制御に切り替える。つまり、二次転写電圧に下限電圧Vlmtを設定し、二次転写部T2に記録材Sがある時に検知した電圧が下限電圧Vlmtを下回る場合には二次転写電圧を下限電圧Vlmtで定電圧制御する。本実施例では、制御部150が下限電圧Vlmtを設定し、二次転写電源D2の出力制御部132が、制御部150の制御のもとで、電流検知部133、電圧検知部134の検知結果に基づいて、二次転写電圧の定電流制御から定電圧制御への切り替えを実行する。
【0049】
ここで、従来、下限電圧Vlmtの設定方法としては、次のような方法が知られている。つまり、下限電圧Vlmtは、環境(温度又は湿度の少なくとも一方)に関する情報、及び記録材Sの種類に関する情報に基づいて設定することができる。記録材Sが吸湿した場合の記録材Sの抵抗が、環境、及び記録材Sの種類によって異なるためである。概略、より高温高湿環境ほど(重量絶対湿度が大きいほど)、下限電圧Vlmtの設定値は大きくされる。また、概略、使用する記録材Sが吸湿によって抵抗がより低下しやすいほど、下限電圧Vlmtの設定値は大きくされる。
【0050】
また、下限電圧Vlmtは、二次転写ローラ25の抵抗に関する情報や、二次転写ローラ25の使用量に関する情報に基づいて設定してもよい。これは、次のような理由によるものである。つまり、二次転写ローラ25の抵抗が二次転写ローラ25の使用量の増加に伴って上昇し、二次転写部T2における二次転写ローラ25の分担電圧が二次転写ローラ25の使用量の増加に伴って大きくなることがある。これにより、結果的に、二次転写ローラ25の使用量の増加に伴って、記録材Sの分担電圧が小さくなることがある。そのため、二次転写ローラ25の抵抗に関する情報や、二次転写ローラ25の使用量に関する情報に基づいて下限電圧Vlmtを設定して、二次転写部T2における記録材Sの分担電圧を保つようにしてもよい。概略、二次転写ローラ25の抵抗がより高いほど、下限電圧Vlmtの設定値は大きくされる。また、概略、二次転写ローラ25の使用量がより多いほど、下限電圧Vlmtの設定値は大きくされる。二次転写ローラ25の抵抗に関する情報としては、二次転写ローラ25の抵抗と相関する任意の指標の情報を用いることができる。この指標としては、二次転写ローラ25に所定の電流を供給する際に発生する電圧の値、二次転写ローラ25に所定の電圧を印加した際に流れる電流の値、あるいはこれら電流値と電圧値とから求められる抵抗の値が挙げられる。また、二次転写ローラ25の使用量に関する情報としては、二次転写ローラ25の回転回数、回転時間などの、二次転写ローラ25の使用初期(新品時)からの使用量と相関する任意の指標の情報を用いることができる。
【0051】
なお、環境、記録材Sの種類、あるいは二次転写ローラ25の抵抗や使用量に応じた下限電圧Vlmtの設定方法自体は、例えば特許文献1に記載の公知の方法など、利用可能なものを適宜用いることができる。
【0052】
6.本実施例における下限電圧Vlmtの設定
次に、本実施例における二次転写電圧の下限値(下限電圧)Vlmtの設定について説明する。
【0053】
<課題>
まず、課題について更に詳しく説明する。前述のように、従来の設定方法により下限電圧Vlmtを設定した場合、転写ボソを十分に抑制できない場合があることがわかった。そして、これは、二次転写ローラ25や記録材Sの抵抗が同等でも、転写ボソの発生は、中間転写ベルト31の抵抗によっても大きく影響を受けるためであることがわかった。
【0054】
表1は、高温高湿環境における、二次色転写ボソ及び単色転写強抜けの発生状況と、二次転写電圧と、の関係の一例を示す。本実施例で用いた中間転写ベルト31の表面抵抗率は、常温常湿環境では1.0×1010Ω/□程度であるが、高温高湿環境では6.0×108~2.0×109Ω/□の範囲まで低下する。したがって、この高温高湿環境における抵抗のばらつきの範囲の上限及び下限の表面抵抗率を有する中間転写ベルト31をそれぞれ用いて、二次色転写ボソ及び単色転写抜けの発生状況を調べた。ここで、二次色転写ボソ及び単色強抜けのそれぞれに関して、表1中の「〇」は発生なし、「△」は発生するが比較的レベルが軽いため実用上問題なし、「×」は画像不良として認識され得るレベルで発生あり、をそれぞれ意味する。二次色転写ボソは、2色分のベタ画像を記録材Sに二次転写する際に2次転写電流が不足することで発生する画像不良(転写ボソ)である。二次色転写ボソは、単位面積当たりに2色分のベタ画像を転写する必要があることで、二次転写電流が不足することにより発生しやすい現象である。一方、単色転写強抜けは、単色のベタ画像を記録材Sに二次転写する際に2次転写電圧が大きすぎることで、トナー像のトナーの一部の極性が反転して転写されずに抜けたようになる画像不良である。単色転写強抜けは、単色のベタ画像に対して二次転写電流が過多になることで、かえって濃度が低下してしまう現象である。環境は、高温高湿環境の一例としての30℃/80%RH環境とした。記録材Sとしては、上記30℃/80%RH環境に96時間放置したXerox Vitality Multipurpose Paper 75g/m2紙を使用した。
【0055】
【0056】
表1から、高温高湿環境における中間転写ベルト31の抵抗のばらつきの範囲において、二次転写電圧と単色強抜け及び二次色転写ボソの発生状況との関係は次のようになっていることがわかる。つまり、抵抗の高い中間転写ベルト31では、二次転写電圧を800Vまで大きくすることで、単色強抜け及び二次色転写ボソの両方が発生しなくなる。一方、抵抗の低い中間転写ベルト31では、二次転写電圧を最低でも1400Vまで大きくしないと、単色強抜け及び二次色転写ボソの両方が問題ないレベルにはならない。また、二次転写電圧を望ましくは1600Vまで大きくすることで、単色強抜け及び二次色転写ボソの両方が発生しなくなる。
【0057】
本実施例の構成では、高温高湿環境において吸湿した記録材Sにトナー像を二次転写する際に定電流制御で印加される二次転写電圧は500V程度である。そのため、本実施例の構成では、高温高湿環境での中間転写ベルト31の抵抗のばらつきの範囲におけるいずれの場合でも、二次転写電圧は下限電圧Vlmtでの定電圧制御に移行するようにすることが望まれる。このとき、高温高湿環境での中間転写ベルト31の抵抗を検知できれば、その抵抗に応じて、下限電圧Vlmtを設定する(下限電圧Vlmtの設定を変更する)ことにより、より良好に画像不良(転写ボソ、強抜け)の発生を抑制することが可能となる。
【0058】
<中間転写ベルトの抵抗の検知>
次に、中間転写ベルト31の抵抗の検知について説明する。二次転写部T2の抵抗は、二次転写ローラ25、中間転写ベルト31、二次転写対向ローラ34の合成抵抗である。これらの部材のうち、二次転写対向ローラ34の抵抗は他の部材の抵抗よりも低い。また、中間転写ベルト31は、二次転写ローラ25のゴム部よりも薄い。これらのことから、二次転写部T2の抵抗は、二次転写ローラ25の抵抗の影響が非常に大きい。したがって、二次転写部T2の抵抗の検知結果から中間転写ベルト31の抵抗を正しく見積もることは困難である。
【0059】
本実施例では、中間転写ベルト31の抵抗に関する情報として、一次転写部T1の抵抗に関する情報を取得する。つまり、本実施例では、一次転写電源D1から電気抵抗検知部材(導電部材)として機能する一次転写ローラ14に電圧を印加する。そして、中間転写ベルト31を介して感光ドラム2の暗部電位VDと一次転写ローラ14の電位との間の電位差によって生じる電流を検知する。これにより、中間転写ベルト31の抵抗に関する情報として、1次転写部T1の抵抗に関する情報を取得する。
【0060】
本実施例では、一次転写ローラ14に金属ローラを用いていることから、感光ドラム2の表面電位が制御されていれば、一次転写部T1の抵抗は中間転写ベルト31の抵抗を示していると言える。本実施例では、感光ドラム2の最表層は、アクリル樹脂を用いて形成された保護層であり、その摩耗速度は感光ドラム2の1000回転当たり1~10nmである。本実施例では、感光ドラム2の寿命範囲(使用可能期間)を通じての最表層の厚さ(膜厚)の変化は1μm未満である。また、本実施例では、感光ドラム2の暗部電位VDの膜厚依存性はΔ8~10V/μm程度である。つまり、実質的に同一の帯電処理条件で比較した場合に、感光ドラム2の最表層の厚さが1μm減少するごとに、暗部電位VDは8~10V上昇する。そのため、本実施例では、感光ドラム2が寿命範囲内であれば、感光ドラム2の暗部電位VDの変化量は、一次転写ローラ14の電位(略+500V)と暗部電位VD(略-550V)との間の電位差(略1050V)に比べて十分に小さい。このように感光ドラム2の表面電位の変化が十分に小さい場合、比較的容易に一次転写部T1の抵抗の検知結果に基づいて中間転写ベルト31の抵抗を精度良く検知することが可能である。本実施例では、一次転写部T1の抵抗の検知結果を中間転写ベルト31の抵抗の検知結果と見なすが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、一次転写部T1の抵抗の検知結果に所定の係数をかけるなどの所定の処理を行った値を、中間転写ベルト31の抵抗の検知結果として用いてもよい。
【0061】
ここで、中間転写ベルト31の抵抗は、一次転写部T1に流れる電流とそのときに印加した電圧とから求められるものである。しかし、制御上は、一次転写部T1に流れる電流を一定値とするのに必要な電圧を、中間転写ベルト31の抵抗として代用するなどしても構わない。つまり、制御部150は、中間転写ベルト31の抵抗と相関する任意の指標の情報を用いて制御を行うことができる。この指標としては、所定の電流を供給する際に発生する電圧の値、所定の電圧を印加した際に流れる電流の値、あるいはこれら電流値と電圧値とから求められる抵抗の値が挙げられる。ここでは、これら電圧、電流、あるいは抵抗を、いずれも中間転写ベルト31の抵抗として説明することがある。特に、本実施例では、一次転写部T1に流れる電流を一定値とするのに必要な電圧を、中間転写ベルト31の抵抗として代用する。
【0062】
また、中間転写ベルト31の抵抗を検知するタイミングは、各部材の回転や各電源から印加される電圧が安定しており、かつ、トナー像が一次転写部T1に存在しない状態であればいつでもよい。上記各部材は、感光ドラム2、帯電ローラ3、中間転写ベルト31及び一次転写ローラ14を含む。また、上記各電源は、帯電電源D3及び一次転写電源D1を含む。典型的には、ジョブを実行する際に毎回、非画像形成時としての前回転工程や前多回転工程において下限電圧Vlmtを設定する際に後述するように必要に応じて中間転写ベルト31の抵抗の検知を実行する。ただし、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、例えば、非画像形成時としての紙間工程や後回転工程などで下限電圧Vlmtを設定する際に後述するように必要に応じて中間転写ベルト31の抵抗の検知を実行してもよい。なお、下限電圧Vlmtを設定する処理は、ジョブを実行する際に毎回行うことに限定されるものではない。例えば、画像形成装置100の電源投入後の最初のジョブを実行する際に実行し、その後は所定の画像形成枚数ごとにジョブの前回転工程や紙間工程などで実行することとしてもよい。
【0063】
また、中間転写ベルト31の抵抗は、複数の画像形成部1のうち少なくとも1つの一次転写部T1の抵抗の検知結果に基づいて検知することができる。例えば、中間転写ベルト31の抵抗は、複数の画像形成部1の全ての一次転写部T1の抵抗の検知結果に基づいて検知してもよいし、複数の画像形成部1のうち1つの一次転写部T1の抵抗の検知結果に基づいて検知してもよい。複数の一次転写部T1の抵抗の検知結果を用いる場合、例えばその平均値などの代表値(最大値、最小値、中央値などでもよい。)を用いることができる。
【0064】
本実施例では、制御部150は、ジョブの情報が入力された後、画像形成を開始する直前の前回転工程において、下限電圧Vlmtを設定する際に後述するように必要に応じてブラック用の画像形成部1dにおける一次転写部T1dの抵抗を検知する。そして、制御部150は、ジョブの最初の記録材Sが二次転写部T2に到達する前に、適宜一次転写部T1(中間転写ベルト31)の抵抗に応じて下限電圧Vlmtを設定することができる。これにより、ジョブの全ての記録材Sに対し、最適な下限電圧Vlmtを設定することができる。
【0065】
<下限電圧Vlmtの設定方法>
次に、本実施例における下限電圧Vlmtの設定方法について説明する。本実施例では、制御部150は、一次転写部T1に流れる電流を一定値とするのに必要な電圧を中間転写ベルト31の抵抗として代用し、その電圧に基づいて下限電圧Vlmtを設定することができる。特に、本実施例では、制御部150は、一次転写部T1に30μAの電流を流した際の検知電圧に基づいて、下限電圧Vlmtを設定することができる。
【0066】
なお、前述のように、従来、下限電圧Vlmtを、環境に関する情報、及び記録材Sの種類に関する情報に基づいて設定することが知られている。これに対し、本実施例では、制御部150は、高温高湿環境において、下限電圧Vlmtの設定を、環境に関する情報、及び記録材Sの種類に関する情報に加えて、中間転写ベルト31の抵抗に関する情報によっても変更できるようになっている。具体的には、以下で説明するように、高温高湿環境において、下限電圧Vlmtの設定を、環境と記録材Sの種類とに応じて予め求められた中間転写ベルト31と下限電圧Vlmtとの関係に基づいて、中間転写ベルト31の抵抗に応じて可変とする。
【0067】
図5(a)は、従来の設定方法と本実施例の設定方法とによる、高温高湿環境の一例としての30℃/80%RH環境における下限電圧Vlmtの設定値の差異を説明するためのグラフ図である。
図5(a)の横軸は、中間転写ベルト31の抵抗として代用する検知電圧(一次転写部T1に30μAの電流を流した際の検知電圧)であり、数値が大きいほど中間転写ベルト31の抵抗が高いことを示す。
図5(a)の縦軸は、下限電圧Vlmtの設定値を示す。なお、
図5(a)に示す下限電圧Vlmtの設定値は、記録材SとしてXerox Vitality Multipurpose Paper 75g/m
2紙を用いる場合を例としている。
【0068】
図5(a)に示すように、従来の設定方法では、中間転写ベルト31の抵抗のばらつきの範囲において、転写ボソ及び強抜けを一定の範囲に収めることを目的として、中間転写ベルト31の抵抗によらず、下限電圧Vlmtを一定値(950V)としていた。
【0069】
これに対して、本実施例の設定方法では、
図5(a)に示すように、中間転写ベルト31の抵抗が高いほど、下限電圧Vlmtの設定値を小さくしている。
【0070】
図5(a)において、従来の設定方法による下限電圧Vlmtの設定値を示すライン(破線)と、本実施例の設定方法による下限電圧Vlmtの設定値を示すライン(実線)と、が交わる検知電圧値(中間転写ベルト31の抵抗)をポイントPとする。従来の設定方法による下限電圧Vlmtの設定値では、上記ポイントPよりも中間転写ベルト31の抵抗が低い領域において、転写ボソが発生しやすくなる。下限電圧Vlmtが低すぎるために二次転写電流が不足しやすくなるからである。また、従来の設定方法による下限電圧Vlmtの設定値では、上記ポイントPよりも中間転写ベルト31の抵抗が高い領域において、強抜けが発生しやすくなる。下限電圧Vlmtが高すぎるために二次転写電流が過多となりやすいからである。
【0071】
これに対して、本実施例の設定方法による下限電圧Vlmtの設定値は、中間転写ベルト31の抵抗が高いほど小さい(中間転写ベルト31の抵抗が低いほど大きい)。そのため、上記ポイントPよりも中間転写ベルト31の抵抗が低い領域における転写ボソの発生を抑制することができ、上記ポイントPよりも中間転写ベルト31の抵抗が高い領域における強抜けの発生を抑制することができる。
【0072】
本実施例の構成では、27℃/70%RHの重量絶対湿度よりも重量絶対湿度が小さい環境(常温常湿環境、低温低湿環境)においては、下限電圧Vlmtの設定を中間転写ベルト31の抵抗に応じて変更(補正、調整)する必要はない。表1の結果からもわかるように、このような環境では、転写ボソ、強抜けの発生状況の中間転写ベルト31の抵抗に対する依存性は十分に低くなるからである。したがって、このような環境では、従来の設定方法と同様にして、例えば環境に関する情報及び記録材Sの種類に関する情報(更には二次転写ローラ25の抵抗や使用量に関する情報)に基づいて下限電圧Vlmtを設定することができる。つまり、それらの条件が実質的に同一の場合は中間転写ベルト31の抵抗によらずに下限電圧Vlmtを一定値とすることができる。
【0073】
また、
図5(b)は、本実施例の設定方法による、27℃/70%RH環境、28℃/75%RH環境、30℃/80%RH環境における下限電圧Vlmtの設定値を示す、
図5(a)と同様のグラフ図である。なお、
図5(b)に示す下限電圧Vlmtの設定値は、記録材SとしてXerox Vitality Multipurpose Paper 75g/m
2紙を用いる場合を例としている。本実施例では、27℃/70%RHの重量絶対湿度以上の重量絶対湿度の環境(高温高湿環境)では、
図5(b)に示すような関係で、中間転写ベルト31の抵抗に応じて下限電圧Vlmtを設定する。つまり、本実施例では、27℃/70%RH(重量絶対湿度15.9g/kg(DA))~30℃/80%RH(重量絶対湿度21.7g/kg(DA))の範囲において、中間転写ベルト31の抵抗と下限電圧Vlmtとの関係を次のようにする。該範囲において、いずれの環境でも、中間転写ベルト31の抵抗が低いほど、下限電圧Vlmtの設定値を大きくする(中間転写ベルト31の抵抗が高いほど、下限電圧Vlmtの設定値を小さくする)。また、該範囲において、高温高湿環境ほど(重量絶対湿度が大きいほど)、中間転写ベルト31の抵抗の変化量に対する下限電圧Vlmtの変化量(傾き)を大きくする。ここでは、高温高湿環境として上記いくつかの例示の環境における中間転写ベルト31の抵抗と下限電圧Vlmtとの関係を示したが、更に多くの環境における同様の関係を予め求めておくことができる。また、ここでは、上記例示の記録材Sを用いる場合の中間転写ベルト31の抵抗と下限電圧Vlmtとの関係を示したが、記録材Sの種類ごとに同様の関係を予め求めておくことができる。このような記録材Sの種類ごとの、環境に応じた中間転写ベルト31の抵抗と下限電圧Vlmtとの関係を示す情報は、例えばデータテーブルなどとして予めメモリ152に記憶される。
【0074】
なお、中間転写ベルト31の抵抗に応じた下限電圧Vlmtの設定の変更の要否を判断するための環境の境界(閾値)は、上記例示の環境に限定されるものではなく、例えば画像形成装置100の構成などに応じて適宜設定することができる。
【0075】
また、記録材Sの種類によっては、下限電圧Vlmtの設定を中間転写ベルト31の抵抗に応じて変更(補正、調整)する必要がない場合がある。例えば、吸湿により抵抗が低下しにくい記録材Sが用いられる場合は、転写ボソ、強抜けの発生状況の中間転写ベルト31の抵抗に対する依存性が十分に低くなることがある。このような記録材Sが用いられる場合には、下限電圧Vlmtの設定を中間転写ベルト31の抵抗に応じて変更する必要はない。したがって、この場合には、従来の設定方法と同様にして、例えば環境に関する情報及び記録材Sの種類に関する情報(更には二次転写ローラ25の抵抗や使用量に関する情報)に基づいて下限電圧Vlmtを設定することができる。つまり、それらの条件が実質的に同一の場合は中間転写ベルト31の抵抗によらずに下限電圧Vlmtを一定値とすることができる。
【0076】
また、フルカラーモード、モノクロモード(例えばブラック単色モード)といった、トナー像を形成する画像形成部1の数が異なるプリントモード間でも、下限電圧の設定を異ならせることができる。例えば、これらフルカラーモード、モノクロモードごとに、
図5に示すような環境と記録材Sの種類とに応じた中間転写ベルト31と下限電圧Vlmtとの関係を予め求めておくことができる。典型的には、フルカラーモードでは二次転写部N2で記録材Sに転写するトナー量がモノクロモードよりも多いため、フルカラーモードにおける下限電圧Vlmtはモノクロモードにおける下限電圧Vlmtよりも大きくすることができる。
【0077】
また、本実施例では、検知電圧値のダイナミックレンジを大きくするために、中間転写ベルト31(一次転写部T1)の抵抗を検知する際に一次転写部T1に流す電流(検知用電流)を、画像形成時の一次転写電流よりも大きい30μAとした。ただし、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、中間転写ベルト31(一次転写部T1)の抵抗を検知する際に一次転写部T1に流す電流は、画像形成時の一次転写電流に近い10~20μAとしてもよい。また、この電流は、プリントモードに応じて変更してもよい。例えば、普通紙モードの場合は30μAとし、普通紙モードよりもプロセス速度が遅い厚紙モードの場合は、感光ドラム2に流れる電流が過大となることを抑制するなどのために普通紙モードよりも小さい10~20μAとしたりすることができる。また、本実施例では、中間転写ベルト31(一次転写部T1)の抵抗を検知する際の感光ドラム2の暗部電位VDを、画像形成時の暗部電位VDと同等(本実施例では略同一)とした。ただし、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、中間転写ベルト31(一次転写部T1)の抵抗を検知する際の感光ドラム2の暗部電位VD(検知用暗部電位)を、画像形成時よりも大きくしたり、小さくしたりしてもよい。
【0078】
<下限電圧Vlmtの設定手順>
次に、本実施例における下限電圧Vlmtの設定手順について説明する。
図7は、該手順の概略を示すフローチャート図である。ここでは、制御部150が外部装置200から入力されるジョブの情報に基づいてジョブを実行する場合を例として説明する。
【0079】
制御部150は、ジョブの情報が入力されると、環境センサ50から環境の温度及び湿度の情報を取得し、ジョブの情報から記録材Sの種類の情報を取得する(S101)。次に、制御部150は、中間転写ベルト31の抵抗に応じた下限電圧Vlmtの設定の変更が必要か否かを判断する(S102)。前述のように、27℃/70%RHよりも重量絶対湿度が小さい環境や、中間転写ベルト31の抵抗に応じた下限電圧Vlmtの設定の変更が不要な記録材S(又は該記録材Sに対応するプリントモード)については、下限電圧Vlmtの設定の変更が必要ない。制御部150は、このような予め決められた条件に基づいて、下限電圧Vlmtの設定の変更が必要か否かを判断する。
【0080】
制御部150は、S102で中間転写ベルト31の抵抗に応じた下限電圧Vlmtの設定の変更が必要である(「Yes」)と判断した場合は、感光ドラム2が寿命範囲内か否かを判断する(S103)。つまり、本実施例では、制御部150は、感光ドラム2を駆動するごとに、感光ドラム2の使用量に関する情報をプロセスカートリッジ7が有する記憶手段としてのカートリッジメモリ71(
図6)に記憶させる。また、制御部150のメモリ152には、感光ドラム2の寿命に対応する感光ドラム2の使用量に関する情報の閾値の情報が予め記憶されている。制御部150は、カートリッジメモリ71から現在の感光ドラム2の使用量に関する情報を取得し、メモリ152から閾値の情報を取得する。そして、制御部150は、現在の感光ドラム2の使用量に関する情報が閾値に達している場合は感光ドラム2が寿命に達したと判断し、閾値に達していない場合は感光ドラム2が寿命範囲内であると判断する。感光ドラム2の使用量に関する情報としては、感光ドラム2の回転回数、回転時間、帯電処理量(帯電処理を行った感光ドラム2の回転回数や回転時間)などの、感光ドラム2の使用初期(新品時)からの使用量と相関する任意の指標の情報を用いることができる。ここで、感光ドラム2の使用量に関する情報は、プロセスカートリッジ7の使用量に関する情報と見なすことができ、感光ドラム2の寿命範囲はプロセスカートリッジ7の寿命範囲と見なすことができる。
【0081】
制御部150は、S103で感光ドラム2が寿命範囲内である(「Yes」)と判断した場合は、中間転写ベルト31の抵抗を検知する動作を実行する(S104)。つまり、制御部150は、帯電電源D3により帯電ローラ3に所定の帯電電圧を印加して、感光ドラム2の表面を所定の暗部電位VDに帯電処理する。また、その帯電処理された感光ドラム2上の領域が一次転写部T1を通過している際に、一次転写電源D1により一次転写ローラ14に定電流制御で電圧を印加する。つまり、一次転写電源D1の電流検知部123により検知される電流が一定値(本実施例では30μA)となるように一次転写電源D1の出力を定電流制御する。そして、制御部150は、その際に電圧検知部124により検知される電圧を中間転写ベルト31(一次転写部T1)の抵抗の情報として取得する。前述のように、本実施例では、この中間転写ベルト31の抵抗の検知を、ブラック用の画像形成部1dにおいて行う。次に、制御部150は、S102で取得した環境及び記録材Sの種類に対応する中間転写ベルト31の抵抗と下限電圧Vlmtとの関係(
図5)を用いて、S104で取得した中間転写ベルト31の抵抗に基づいて下限電圧Vlmtを決定する(S105)。前述のように、
図5に示すような記録材Sの種類ごとの環境に応じた中間転写ベルト31の抵抗と下限電圧Vlmtとの関係を示す情報は、予め求められてデータテーブルなどとしてメモリ152に記憶されている。
【0082】
一方、制御部150は、S102で中間転写ベルト31の抵抗に応じた下限電圧Vlmtの設定の変更が不要である(「No」)と判断した場合は、従来の設定方法と同様にして下限電圧Vlmtを設定する(S106)。また、制御部150は、S103で感光ドラム2が寿命範囲外である(「No」)と判断した場合、あるいは感光ドラム2の使用量に関する情報を取得できない場合は、従来の設定方法と同様にして下限電圧Vlmtを設定する(S106)。この場合は、感光ドラム2の暗部電位VDが保証されないことから、中間転写ベルト31の抵抗の検知精度が低下して、下限電圧Vlmtの設定の変更が正しく行われない可能性があるからである。なお、S106において、下限電圧Vlmtを予め設定された一定値に設定したり、下限電圧Vlmtを設定しないこととしたりすることもできる。
【0083】
抵抗の異なる2つの中間転写ベルト31と、抵抗の異なる2つの二次転写ローラ25と、を用いて、上述の手順により下限電圧Vlmtを設定する実験を行った。その結果、中間転写ベルト31の抵抗に応じた下限電圧Vlmtの設定の変更が必要な条件において、二次転写ローラ25の抵抗ではなく中間転写ベルト31の抵抗に応じて下限電圧Vlmtが設定されることが確認された。
【0084】
<効果>
次に、本実施例の効果を確認するために行った実験の結果について説明する。ここでは、5水準の異なる抵抗の中間転写ベルト31のそれぞれを用いて、高温高湿環境の一例として30℃/80%RH環境において、本実施例の制御により下限電圧Vlmtを設定し、画像形成を行った。記録材Sとしては、上記30℃/80%RH環境に96時間放置したXerox Vitality Multipurpose Paper 75g/m2紙を用いた。そして、ブラックベタ画像上の強抜け(単色転写強抜け)、及び二次色画像(ブルー、レッド又はグリーン)上の転写ボソ(二次色転写ボソ)の発生状況を調べた。結果を表2に示す。なお、表2中の転写強抜け、転写ボソのレベルの表示方法は、表1に示した結果の場合と同じである。また、表2中の検知電圧は、一次転写部T1に30μAの電流を流した際の検知電圧である。また、表2中の下限電圧は、その検知電圧に基づいて設定された下限電圧Vlmtである。
【0085】
【0086】
表2に示すように、本実施例の制御によれば、いずれの中間転写ベルト31を用いた場合も、トレードオフ関係にある転写ボソと強抜けとの両方が発生しなかった。このように、本実施例の制御によれば、高温高湿環境において、中間転写ベルト31の抵抗に応じて下限電圧Vlmtを設定することで、吸湿によって抵抗が低下しやすい記録材Sを用いる場合でも、転写ボソと強抜けとの両方の発生を抑制することができる。
【0087】
図8は、従来例と本実施例とにおける二次転写時に二次転写ローラ25に印加される二次転写電圧を比較して示すグラフ図である。
図8は、二次転写電圧が定電圧制御されるか定電流制御されるかによらず、画像形成装置100の使用環境と二次転写電圧の設定の大きさとの関係の一例を示している。また、
図8は、記録材Sとして用紙Aと用紙Bとを用いた場合の例を示している。用紙Aは、用紙Bよりも、吸湿により抵抗が低下しやすい用紙である。
図8において、用紙A、用紙Bのそれぞれの場合の27℃/70%RH(重量絶対湿度15.9g/kg(DA))よりも高温高湿環境の二次転写電圧の設定が、従来例と、本実施例(低抵抗ベルト、高抵抗ベルトのプロット)と、で異なる。
【0088】
環境によって部材や記録材Sの抵抗が変化するため、低温低湿環境では最も高い二次転写電圧を必要とする。そして、27℃/70%RH(重量絶対湿度15.9g/kg(DA))に向けて重量絶対湿度が大きくなるにつれて必要な二次転写電圧が低下する。一方、記録材Sが吸湿した場合でもトナー像を転写できるように、30℃/80%RH(重量絶対湿度21.7g/kg(DA))の高温高湿環境では、上記27℃/70%RH環境よりも高い二次転写電圧が印加されることが多い。
【0089】
ここで、従来例では、高温高湿環境における二次転写電圧は、環境と記録材Sとに応じて決定される。そのため、記録材Sによっては転写ボソと強抜けのいずれかが発生しやすくなることがある。例えば、
図8において、用紙Bを用いた場合は、中間転写ベルト31の抵抗の違いによる高温高湿環境における最適な二次転写電圧の差(用紙Bの低抵抗ベルトのプロットと高抵抗ベルトのプロットとの差)が小さい。一方、用紙Aを用いた場合は、中間転写ベルト31の抵抗の違いによる高温高湿環境における最適な二次転写電圧の差(用紙Aの抵抗ベルトのプロットと高抵抗ベルトのプロットとの差)が大きい。しかし、従来例では、環境と記録材Sとに応じて二次転写電圧が設定されるため、用紙Aを用いた場合には、高温高湿環境において良好な画質が得られる最適な二次転写電圧を設定することが難しい。これに対し、本実施例では、制御部150は、高温高湿環境において、下限電圧Vlmtの設定を、環境に関する情報、及び記録材Sの種類に関する情報に加えて、中間転写ベルト31の抵抗に関する情報によっても変更できるようになっている。具体的には、高温高湿環境において、下限電圧Vlmtの設定を、環境と記録材Sの種類とに応じて予め求められた中間転写ベルト31と下限電圧Vlmtとの関係に基づいて、中間転写ベルト31の抵抗に応じて可変とする。これにより、本実施例では、高温高湿環境において、中間転写ベルト31の抵抗が高い場合には二次転写電圧は小さく設定され、中間転写ベルト31の抵抗が低い場合には二次転写電圧は大きく設定される。したがって、本実施例では、高温高湿環境において良好な画質が得られる最適な二次転写電圧を設定することができる。
【0090】
このように、本実施例では、画像形成装置100は、中間転写体31に接触する導電部材14と、導電部材14に電圧を印加する第1の電源D1と、第1の電源D1の電流又は電圧の少なくとも一方を検知する第1の検知手段124と、を有する。また、画像形成装置100は、二次転写部材25に電圧を印加する第2の電源D2と、第2の電源D2の電流又は電圧の少なくとも一方を検知する第2の検知手段134と、を有する。また、画像形成装置100は、二次転写部T2に記録材Sがある時に、第2の検知手段(二次転写電圧検知部)134により検知される電圧の絶対値が所定の電圧の絶対値以上の場合には電流が所定の電流となるように第2の電源D2の制御を行い、第2の検知手段134により検知される電圧の絶対値が上記所定の電圧の絶対値より小さくなる場合には電圧が上記所定の電圧となるように第2の電源D2の制御を行う制御手段150を有する。そして、この制御手段150は、第1の検知手段(一次転写電圧検知部)124の検知結果に基づいて上記所定の電圧を設定することが可能である。本実施例では、制御手段150は、第1の検知手段124の検知結果が示す中間転写体31の電気抵抗が、第1の電気抵抗の場合の上記所定の電圧の絶対値よりも、第1の電気抵抗よりも小さい第2の電気抵抗の場合の上記所定の電圧の絶対値の方が大きくなるように、上記所定の電圧を設定する。
【0091】
また、画像形成装置100は、環境に関する情報を検知する環境検知手段50を有していてよい。この場合、制御手段150は、環境検知手段50の検知結果が示す重量絶対湿度が所定値以上の場合に、第1の検知手段124の検知結果に基づく上記所定の電圧の設定を行うことができる。また、画像形成装置100は、記録材Sの種類に関する情報を取得する種類取得手段(本実施例では制御部150)を有していてよい。この場合、制御手段150は、種類取得手段150により取得された記録材Sの種類が所定の種類の場合に、第1の検知手段124の検知結果に基づく上記所定の電圧の設定を行うことができる。また、画像形成装置100は、少なくとも2つの異なる種類の記録材Sのそれぞれに対して、少なくとも2つの異なる環境ごとに求められた、複数の第1の検知手段124の検知結果と上記所定の電圧との関係を記憶する記憶手段152を有していてよい。この場合、制御手段150は、複数の上記関係のうち環境検知手段50の検知結果及び種類取得手段150の取得結果に基づいて選択した上記関係を用いて、第1の検知手段124の検知結果に基づいて上記所定の電圧を設定することができる。
【0092】
特に、本実施例では、上記導電部材14は、一次転写部材であり、制御手段150は、一次転写部T1にトナー像がない時に検知された第1の検知手段124の検知結果に基づいて、上記所定の電圧を設定する。また、画像形成装置100は、像担持体2の表面を帯電処理する帯電手段3と、帯電手段3に電圧を印加する第3の電源D3と、を有する。そして、制御手段150は、帯電手段3により所定の電位に帯電処理された像担持体2の表面が一次転写部T1を通過している際に検知された第1の検知手段124の検知結果に基づいて、上記所定の電圧を設定する。また、本実施例では、一次転写部材14は、周回移動が可能な無端状の中間転写体31の内周面に接触して中間転写体31を像担持体2に接触させ、中間転写体31の移動方向に関して、像担持体2と中間転写体31との接触部と、中間転写体31と一次転写部材14との接触部と、は重ならない。特に、本実施例では、一次転写部材14は、金属ローラで構成されている。
【0093】
以上のように、本実施例では、高温高湿環境において、画像形成装置100の設置環境や使用される記録材Sに合わせて、中間転写ベルト31の抵抗の検知結果に応じて二次転写電圧の下限電圧Vlmtを変更する。これにより、高温高湿環境における二次転写電圧を最適化して、良好な画質を得ることができる。つまり、本実施例によれば、中間転写ベルト31の電気抵抗によらずに、トナー像が有る部分を流れる電流が不足しやすい状況で適切な二次転写電圧を設定することができる。したがって、本実施例によれば、中間転写ベルト31の電気抵抗による二次転写部N2における転写不良の発生を抑制することができる。より詳細には、本実施例によれば、高温高湿環境において、中間転写ベルト31の抵抗に応じて、吸湿して抵抗が下がった記録材Sに対して適正な下限電圧Vlmtを設定することができる。これにより、本実施例によれば、高温高湿環境においても良好な画質を得ることができる。
【0094】
<変形例>
本実施例の構成では、中間転写ベルト31の表面抵抗率と画質との相関性が高いため、一次転写部T1の張架距離Dkを十分に確保し、中間転写ベルト31の回転方向の抵抗を検知するのが望ましい。抵抗の検知結果のばらつきが大きい場合には、一次転写電圧が大きくなりすぎない範囲で張架距離Dkを大きくして、抵抗が大きく検知されるようにしてもよい。一方、中間転写ベルト31の厚さ方向の抵抗(以下、「体積抵抗」ともいう。)と画質との相関性が高い場合には、一次転写部T1の抵抗の検知において、体積抵抗の影響が大きくなるように張架距離Dkを小さくするとよい。前述の第1接触部NDと第2接触部NTとが中間転写ベルト31の回転方向において重なるようにしてもよい。例えば、厚さが1~2mm程度の、抵抗が低いゴム(表面の弾性層を構成するゴム層)で被覆した一次転写ローラ14を用いると、クリアランスDcが小さくても画像への異物の影響が出ないことから、張架距離Dkを小さくすることができる。この場合、例えば、第1接触部NDと第2接触部NTとが中間転写ベルト31の回転方向において重なるようにすることで、一次転写部T1の抵抗における中間転写ベルト31の体積抵抗の影響を大きくできる。本実施例の中間転写ベルト31の体積抵抗率は凡そ1.0×1010Ω・cmである。この場合、上述のようにゴムで被覆した一次転写ローラ14のゴムの体積抵抗率を1.0×107Ω・cm未満とする。これにより、上述のようなゴムの厚さの差がある場合でも、十分に一次転写ローラ14の抵抗の影響を小さくし、中間転写ベルト31の体積抵抗を精度良く検知できる。その結果、中間転写ベルト31の抵抗に応じた下限電圧Vlmtを設定することができる。
【0095】
また、画像形成装置100は、中間転写ベルト31の回転方向に関する感光ドラム2に対する一次転写ローラ14の相対位置(オフセット量)を変更する手段を有していてもよい。例えば、画像形成装置100に、一次転写ローラ14を移動させることで中間転写ベルト31の回転方向に関する感光ドラム2に対する一次転写ローラ14の相対位置を変更する移動機構を設けることができる。そして、制御部150は、少なくとも中間転写ベルト31(一次転写部T1)の抵抗を検知する際に、中間転写ベルト31の回転方向に関する感光ドラム2に対する一次転写ローラ14の相対位置を画像形成時と異ならせるように該機構を制御できる。例えば、上述のように張架距離Dkを大きくすることが望まれる場合には、中間転写ベルト31(一次転写部T1)の抵抗を検知する際に画像形成時よりも張架距離Dkを大きくするように一次転写ローラ14を移動させることができる。また、上述のように張架距離Dkを小さくする、あるいは第1接触部NDと第2接触部NTとが重なるようにすることが望まれる場合には、次のようにすることができる。つまり、中間転写ベルト31(一次転写部T1)の抵抗を検知する際に画像形成時よりも張架距離Dkを小さくするように、あるいは第1接触部NDと第2接触部NTとが重なるように、一次転写ローラ14を移動させることができる。
【0096】
また、前述したように、使用量の増加による劣化で抵抗が低下した電子導電性の中間転写ベルト31を高湿環境で用いる場合にも、本実施例の方法により中間転写ベルト31の抵抗に応じて良好な画質が得られる最適な下限電圧Vlmtを設定することができる。
【0097】
また、中間転写ベルト31の抵抗に関する情報を取得するための構成は、本実施例の構成に限定されるものではなく、画像形成装置100の構成、部材や画質の特性に応じて適宜選択することができる。本実施例では、中間転写ベルト31の抵抗に関する情報を、一次転写部T1の抵抗を検知することで取得したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。電気抵抗検知部材(導電部材)として専用の部材を中間転写ベルト31の内周面又は外周面に当接させるなどしてもよい。例えば、テンションローラ32などの電気的に接地された部材の近傍に、中間転写ベルト31の内周面又は外周面に当接可能な電気抵抗検知部材を配置する。そして、本実施例における一次転写部T1での検知と同様にして、電気抵抗検知部材とテンションローラ32との間で張架した中間転写ベルト31の抵抗を検知することができる。この電気抵抗検知部材としては、例えば本実施例における一次転写ローラ14と同様の金属ローラを用いることができる。
【0098】
また、本実施例では、二次転写電圧を定電流制御し、高温高湿環境においては下限電圧を設定して、必要に応じて定電圧制御に移行させる場合について説明したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。二次転写電圧を定電圧制御する場合でも本実施例で説明した技術を適用できる。二次転写電圧を定電圧制御する場合は、高温高湿環境において、本実施例における下限電圧Vlmtの設定と同様にして二次転写電圧の設定値を中間転写ベルト31の抵抗に応じて可変とする。これにより、二次転写電圧を定電圧制御する場合も、本実施例と同様の効果が得られる。つまり、制御手段150は、二次転写部T2に記録材Sがある時に、電圧が所定の電圧となるように第2の電源D2の制御を行うものであってよい。そして、この場合も、制御手段150は、第1の検知手段124の検知結果に基づいて上記所定の電圧を設定することが可能である。
【0099】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一または対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明を省略する。
【0100】
本実施例は、感光ドラム2の特性の変化を検知し、中間転写ベルト31(一次転写部T1)の抵抗を十分な精度で検知することが可能となるように、中間転写ベルト31(一次転写部T1)の抵抗を検知する際のプロセス条件を調整する点が、実施例1と異なる。本実施例では、露光装置4によって感光ドラム2の全面を露光した後、暗部電位VDに再帯電するのに必要な帯電電流Icを帯電電流検知手段により検知し、その検知結果に基づいて感光ドラム2の特性の変化を検知する。なお、感光ドラム2の全面を露光するとは、少なくとも感光ドラム2の回転軸線方向(露光装置4の主走査方向)に関する画像形成領域(トナー像を形成可能な領域)の全域を露光することを言う。感光ドラム2の表面の実質的に全てを露光してもよい。
【0101】
実施例1では、感光ドラム2の最表層に保護層を設け、感光ドラム2の耐摩耗性を向上させていた。これに対し、感光ドラム2の最表層に保護層を設けず、実施例1で用いた感光ドラム2の保護層と比較して摩耗しやすいポリカーボネートやアリレートなどの材料を用いて形成された電荷輸送層を最表層とした感光ドラム2も一般に使用されている。
【0102】
図9は、最表層が比較的摩耗しやすい感光ドラム2の使用初期(新品時)と摩耗後とでの特性の変化の一例を示すグラフ図である。図示の例では、感光ドラム2の最表層が1μm摩耗すると、帯電電位が10V程度変化する。上述のような摩耗しやすい材料を最表層に用いた感光ドラム2では、使用により最表層が15μm程度摩耗することがあり、帯電電圧が一定値の場合には、暗部電位VDは150V程度変化してしまうことがある。
【0103】
暗部電位VDが想定からずれると、一次転写部T1の抵抗の検知精度が低下し、中間転写ベルト31の抵抗の検知精度が低下する。そのため、感光ドラム2が摩耗しやすい場合でも、暗部電位VDを正確に把握できることが望ましい。
【0104】
本実施例では、感光ドラム2の最表層は、アリレートを用いて形成された電荷輸送層とされている。この感光ドラム2は、使用により最表層が10μm程度摩耗することがある。そこで、本実施例では、露光部電位VLから暗部電位VDに再帯電する帯電電流Icを帯電電流検知手段によって検知することで、その最表層の摩耗による感光ドラム2の特性の変化を検知する。本実施例では、露光部電位VLを得るための露光はベタ画像印字相当とし、帯電電流を検知するための主走査方向の画像幅は画像形成装置100の最大画像幅とした。特に、本実施例では、帯電電流Icを検知する際に、帯電電圧は-1050V、露光量は0.30μJ/cm2とした。また、本実施例では、感光ドラム2の使用初期(新品時)における暗部電位VDは-500Vである。
【0105】
本実施例で用いた感光ドラム2は、最表層が摩耗すると暗部電位VD及び帯電電流Icが増加する。実験によると、摩耗量1μm当たりの暗部電位VDの変化は+10.1V、帯電電流の変化は+2.2μAであった。また、帯電電流Icと現在の暗部電位VDnとの関係を導くと、下記式1で表されることがわかった。
VDn=-4.7×Ic-332 (式1)
【0106】
また、感光ドラム2の使用初期(新品時)の暗部電位をVDiとしたとき、暗部電位VDの変化量ΔVDは、下記式2で表される。
△VD=VDn-VDi (式2)
【0107】
本実施例では、少なくとも中間転写ベルト31(一次転写部T1)の抵抗を検知する際には、画像形成時の所定の帯電電圧(感光ドラム2の寿命期間を通して一定値)からΔVDを差し引いた値の電圧を抵抗検知用の帯電電圧として帯電ローラ3に印加する。これにより、中間転写ベルト31(一次転写部T1)の抵抗を精度良く検知することが可能となる。上記式1、式2の情報は、メモリ152に記憶されている。
【0108】
図10は、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。本実施例の画像形成装置100の制御態様は、
図6に示す実施例1の画像形成装置100のものと同様であるが、本実施例では帯電電流検知手段としての帯電電流検知部(帯電電流検知回路)160が設けられている。帯電電流検知部160は、帯電電源D3が帯電ローラ3に電圧を印加している際に帯電ローラ3に流れる電流を検知し、その検知結果を示す信号を制御部150へと出力することができる。
【0109】
図11は、本実施例における下限電圧Vlmtの設定手順の概略を示すフローチャート図である。ここでは、制御部150が外部装置200から入力されるジョブの情報に基づいてジョブを実行する場合を例として説明する。また、
図7に示す実施例1における下限電圧Vlmtの設定手順と同様の処理についての説明は適宜省略する。
【0110】
図11のS201、S202の処理は、
図7のS101、S102の処理と同様である。
【0111】
制御部150は、S202で中間転写ベルト31の抵抗に応じた下限電圧Vlmtの設定の変更が必要である(「Yes」)と判断した場合は、帯電電流Icの検知を行う(S203)。つまり、制御部150は、露光装置4により感光ドラム2の全面を露光させ、その露光された感光ドラム2上の領域を、帯電電源D3から帯電ローラ3に所定の帯電電圧(感光ドラム2の寿命期間を通して一定値)を印加して帯電処理させる。そして、制御部150は、その帯電処理を行っている際に、帯電電流検知部160によって検知される帯電電流Icを取得する。つまり、感光ドラム2上の全面露光された領域が帯電位置を通過している際の帯電電流Icを取得する。ここで、帯電位置は、帯電ローラ3による感光ドラム2の帯電処理が行われる位置である。本実施例では、感光ドラム2の回転方向に関して帯電ローラ3と感光ドラム2との接触部の上流側及び下流側に形成された帯電ローラ3と感光ドラム2との間の空隙のうちの少なくとも一方で生じる放電により、感光ドラム2の帯電処理が行われる。ただし、簡単のため、帯電ローラ3と感光ドラム2との接触部で帯電処理が行われるものと見なしてもよい。本実施例では、この帯電電流の検知は、中間転写ベルト31の抵抗の検知を行うブラック用の画像形成部1dにおいて行う。次に、制御部150は、今回検知された帯電電流Icと、カートリッジメモリ71に記憶されている使用初期(新品時)の感光ドラム2において検知された帯電電流Icと、の差分が所定の閾値(本実施例では5μA)を超えたか否かを判断する(S204)。なお、本実施例では、制御部150は、新品の感光ドラム2(プロセスカートリッジ7)の使用を開始する際に、上記同様にして帯電電流Icを検知して、カートリッジメモリ71に記憶させている。感光ドラム2の使用初期(新品時)に対応する帯電電流Icは、感光ドラム2(プロセスカートリッジ7)の使用の開始直後に取得したものに限定されず、感光ドラム2の最表層の摩耗量が十分に少ない(例えば1μm未満)間に取得したものであればよい。
【0112】
制御部150は、S204で上記差分が閾値を超えたと判断した場合は、上述の式1、式2に基づいた演算を行い、中間転写ベルト31(一次転写部T1)の抵抗を検知する際の帯電電圧の設定を補正(変更、調整)し、メモリ152に記憶させる(S205)。
【0113】
図11のS206、S207、S208の処理は、それぞれ
図8のS104、S105、S106の処理と同様である。ただし、S205で帯電電圧を補正した場合は、S206における中間転写ベルト31(一次転写部T1)の抵抗を検知する際に、メモリ152に記憶された補正後の帯電電圧の設定を用いて感光ドラム2の帯電処理を行う。
【0114】
実施例1で説明した実験と同様の条件で本実施例の効果を確認する実験を行ったところ、本実施例の制御を行った場合、本実施例の制御を行わなかった場合と比較して強抜け、転写ボソのレベルが改善することがわかった。
【0115】
また、使用により最表層が10μm程度摩耗した本実施例の感光ドラム2を搭載した画像形成装置100を用いて、実施例1の制御と本実施例の制御とでの効果を確認した。実施例1の制御を用いた場合、使用により最表層が10μm程度摩耗した感光ドラム2を使用した場合に、新品の感光ドラム2を使用した場合と比較して、強抜けのレベルが前述の「△」レベルまで低下することがあった。これに対し、本実施例の制御を用いた場合は、実施例1の制御を用いた場合よりも、使用により最表層が10μm程度摩耗した感光ドラム2を使用した場合の強抜けのレベルを改善できた。
【0116】
つまり、最表層が10μm程度摩耗した感光ドラム2では、新品の感光ドラム2と比較して、暗部電位VDが約-100V変化する。したがって、実施例1の制御では、中間転写ベルト31(一次転写部T1)の抵抗の検知結果としての検知電圧値は同じく約-100Vシフトすることになり、中間転写ベルト31(一次転写部T1)の抵抗は、実際よりも低く見積もられることになる。例えば、30℃/80%RHの環境においては、選択される下限電圧Vlmtは凡そ160V高くなってしまう。その結果、表1を参照して説明した下限電圧Vlmtと画像不良との関係からわかるように、強抜けに不利となってしまう。
【0117】
これに対し、本実施例では、帯電電流Icを検知することで、中間転写ベルト31(一次転写部T1)の抵抗を検知する際の感光ドラム2の表面電位を把握、制御することが可能である。これにより、本実施例では、中間転写ベルト31(一次転写部T1)の抵抗をより精度良く検知することができ、より適切な下限電圧Vlmtを設定することができる。したがって、本実施例によれば、感光ドラム2が摩耗した場合でも、転写ボソ及び強抜けの両方の発生を抑制することができる。
【0118】
このように、本実施例では、画像形成装置100は、像担持体2の表面を帯電処理する帯電手段3と、帯電手段3に電圧を印加する第3の電源D3と、像担持体2の表面を露光する露光手段4と、第3の電源D3の電流を検知する第3の検知手段(帯電電流検知部)160と、を有する。また、制御手段150は、帯電手段3により所定の電位に帯電処理された像担持体2の表面が一次転写部T1を通過している際に検知された第1の検知手段124の検知結果に基づいて、上記所定の電圧を設定する。そして、本実施例では、制御手段150は、露光手段4により露光した像担持体2の表面を帯電手段3により帯電処理している際の第3の検知手段160の検知結果に基づいて、像担持体2の表面を上記所定の電位に帯電処理するために第3の電源D3が帯電手段3に印加する電圧を設定することが可能である。
【0119】
なお、本実施例では、暗部電位VDを所定値に制御したうえで一次転写部T1の抵抗を検知する場合の例について説明したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。必ずしも一次転写部T1の抵抗を検知するために帯電電圧を調整する必要はない。感光ドラム2の摩耗に応じて変化した暗部電位VDと、一次転写部T1(一次転写ローラ14)と、の電位差から、一次転写部T1の抵抗を導出してもよい。
【0120】
また、今回検知した帯電電流Icと、今回よりも前(典型的には前回)検知した帯電電流Icと、の差分によっては、中間転写ベルト31の抵抗に応じた下限電圧Vlmtの設定の変更を行わないこととしてもよい。該差分によっては、感光ドラム2(プロセスカートリッジ7)の状態が想定範囲外の場合があり、中間転写ベルト31の抵抗を十分な精度で検知できない可能性があるからである。例えば、該差分が所定の閾値を超える場合には、中間転写ベルト31の抵抗に応じた下限電圧Vlmtの設定の変更を行わないこととすることなどが可能である。
【0121】
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0122】
上述の実施例では、中間転写体は複数の張架ローラに張架される無端状のベルトで構成されていたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。中間転写体は、例えば、枠体にシートを張設して構成されたドラム状のものなどであってもよい。
【0123】
また、上述の実施例では、電気抵抗検知部材(導電部材)としてローラ状の部材を例示したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。電気抵抗検知部材(導電部材)は、例えば、ブラシ状の部材、シート状の部材などであってもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 画像形成部
2 感光ドラム
3 帯電ローラ
4 露光装置
5 現像装置
14 一次転写ローラ
25 二次転写ローラ
31 中間転写ベルト
150 制御部