(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20240701BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20240701BHJP
G03G 9/093 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G03G9/097 368
G03G9/087 325
G03G9/093
G03G9/087
(21)【出願番号】P 2020095423
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 新太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 正健
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正道
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-096949(JP,A)
【文献】特開2016-200814(JP,A)
【文献】特開2020-016673(JP,A)
【文献】特開2017-122879(JP,A)
【文献】特開2018-060010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂を含有するコア粒子と、
無機微粒子及び有機ケイ素重合体を含有する表層と、
を有するトナー粒子を有するトナーであって、
該有機ケイ素重合体が、下記式(T3)で表される構造を有し、
R-Si(O
1/2)
3 (T3)
式中、Rは、炭素数1以上6以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、
該トナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分の
29Si-NMRの測定において、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する該式(T3)で表される構造に帰属されるピーク面積の割合が5.0%以上であり、
透過型電子顕微鏡を用いた該トナー粒子の断面の観察において、
該トナー粒子の重心を通り、かつ、該トナー粒子の断面の最長径を与える弦を長軸Lとし、
該長軸Lをその中点で分割した際の一方の線分を線分aとし、
該線分aを基準として、11.25°ずつずらして該長軸Lの該中点から該トナー粒子の表面まで引いた32本の線分をそれぞれArn(n=1~32)とし、
各線分の長さをRAn(n=1~32)とし、
該Arn(n=1~32)上における該表層の厚みをFRAn(n=1~32)としたとき、
下記式(1)で求められるDtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子の断面において、
(i)該表層の平均厚みDav.が、5.0nm以上100.0nm以下であり、
(ii)該FRAnが5.0nm以下である線分Arnの割合が、20.0%以下であり、
(iii)該表層における、該コア粒子に接する無機微粒子の数が、トナー1粒子当たり16個以上30個以下であり、
(iv)該Dtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子100個のうち、該表層に接さず、かつ、該コア粒子に存在する無機微粒子を1個以上有するトナー粒子の割合が、10%以下である
ことを特徴とするトナー。
Dtem=(RA1+RA2+RA3+RA4+RA5+RA6+RA7+RA8+RA9+RA10+RA11+RA12+RA13+RA14+RA15+RA16+RA17+RA18+RA19+RA20+RA21+RA22+RA23+RA24+RA25+RA26+RA27+RA28+RA29+RA30+RA31+RA32)/16 (1)
【請求項2】
前記無機微粒子が、カルシウム元素及びマグネシウム元素からなる群から選択される少なくとも一を含む、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記無機微粒子の一次粒径の個数平均粒径Dmが、50.0nm以上800.0nm以下である、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記透過型電子顕微鏡を用いた前記トナー粒子の断面の観察において、
前記表層のうち、Ar1とAr5で挟まれた領域、Ar5とAr9で挟まれた領域、Ar9とAr13で挟まれた領域、Ar13とAr17で挟まれた領域、Ar17とAr21で挟まれた領域、Ar21とAr25で挟まれた領域、Ar25とAr29で挟まれた領域およびAr29とAr1で挟まれた領域のそれぞれに前記無機微粒子が少なくとも1つ以上存在するトナー粒子の割合が、該Dtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子100個のうち90%以上である、請求項1~3のいずれか1
項に記載のトナー。
【請求項5】
前記透過型電子顕微鏡を用いた前記トナー粒子の断面の観察において、
該Dtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子100個のうち、
前記表層における前記コア粒子に接する無機微粒子の個数が16個以上30個以下存在するトナー粒子の割合が、90%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項6】
前記表層の平均厚みDav.と、前記無機微粒子の一次粒径Dmが下記式を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載のトナー。
Dav./Dm<1.00
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真法などの画像形成方法に使用されるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真画像形成装置には、より一層の高速化、長寿命化、省エネルギー化、小型化が求められており、これらに対応するために、トナーに対しても種々の性能のより一層の向上が求められている。高速化、長寿命化に対しては、現像機内のトナーが熱や衝撃などのストレスを受ける機会は増大していく傾向にある。そのため、多数枚画像出力時においても、使用環境によらず良好な画質を保つために、帯電性、耐久性を高いレベルで維持する高耐久トナーが求められる。
一方で、省エネルギー化に対しては、より低温定着性の高いトナーが求められているが、しばしば高耐久性とのトレードオフになる。そのため、高耐久性と低温定着性を高いレベルで両立できるトナーがより求められる。
【0003】
このような課題を解決する手段の1つとしてトナー粒子の表面を樹脂で覆う方法がある。
トナー粒子表面をケイ素化合物で覆う方法として、特許文献1には、反応系にシランカップリング剤を添加する重合トナーの製造方法が記載されている。
また、特許文献2には、ラジカル反応性有機シラン化合物の反応生成物の被膜を表面に有する重合トナーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平03-089361号公報
【文献】特開平09-179341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討の結果、特許文献1に記載されたトナーは、トナー表面へのシラン化合物の析出量が不十分であり、高速化・長寿命化による高耐久性と低温定着性の両立について改善の余地があるものであった。また、特許文献2に記載されたトナーは、有機官能基の極性が大きく、トナー粒子の表面へのシラン化合物の析出量やシラン化合物の加水分解及び縮重合が不十分であり、架橋度が弱い。そのため高速化・長寿命化を伴う高耐久性・低温定着性については不十分であり、改善の余地があるものであった。
【0006】
本開示は、画像形成装置の高速化、長寿命化に対しても、低温定着性と高い耐久性を有するトナーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、以下のトナーにより上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
本開示は、
結着樹脂を含有するコア粒子と、
無機微粒子及び有機ケイ素重合体を含有する表層と、
を有するトナー粒子を有するトナーであって、
該有機ケイ素重合体が、下記式(T3)で表される構造を有し、
R-Si(O1/2)3 (T3)
式中、Rは、炭素数1以上6以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、
該トナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分の29Si-NMRの測定において、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する該式(T3)で表される構造に帰属されるピーク面積の割合が5.0%以上であり、
透過型電子顕微鏡を用いた該トナー粒子の断面の観察において、
該トナー粒子の重心を通り、かつ、該トナー粒子の断面の最長径を与える弦を長軸Lとし、
該長軸Lをその中点で分割した際の一方の線分を線分aとし、
該線分aを基準として、11.25°ずつずらして該長軸Lの該中点から該トナー粒子の表面まで引いた32本の線分をそれぞれArn(n=1~32)とし、
各線分の長さをRAn(n=1~32)とし、
該Arn(n=1~32)上における該表層の厚みをFRAn(n=1~32)としたとき、
下記式(1)で求められるDtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子の断面において、
(i)該表層の平均厚みDav.が、5.0nm以上100.0nm以下であり、
(ii)該FRAnが5.0nm以下である線分Arnの割合が、20.0%以下であり、
(iii)該表層における、該コア粒子に接する無機微粒子の数が、トナー1粒子当たり16個以上30個以下であり、
(iv)該Dtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子100個のうち、該表層に接さず、かつ、該コア粒子に存在する無機微粒子を1個以上有するトナー粒子の割合が、10%以下であることを特徴とするトナーに関する。
Dtem=(RA1+RA2+RA3+RA4+RA5+RA6+RA7+RA8+RA9+RA10+RA11+RA12+RA13+RA14+RA15+RA16+RA17+RA18+RA19+RA20+RA21+RA22+RA23+RA24+RA25+RA26+RA27+RA28+RA29+RA30+RA31+RA32)/16 (1)
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、画像形成装置の高速化、長寿命化に対しても、安定した帯電性と高い耐久性を有するトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】透過型電子顕微鏡によって観測されたトナー粒子の断面画像の一例
【
図3】トナー粒子のTHF不溶分の
29Si-NMR測定例
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を詳細に説明する。
【0012】
本開示は、
結着樹脂を含有するコア粒子と、
無機微粒子及び有機ケイ素重合体を含有する表層と、
を有するトナー粒子を有するトナーであって、
該有機ケイ素重合体が、下記式(T3)で表される構造を有し、
R-Si(O1/2)3 (T3)
式中、Rは、炭素数1以上6以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、
該トナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分の29Si-NMRの測定において、有機ケ
イ素重合体の全ピーク面積に対する該式(T3)で表される構造に帰属されるピーク面積の割合が5.0%以上であり、
透過型電子顕微鏡を用いた該トナー粒子の断面の観察において、
該トナー粒子の重心を通り、かつ、該トナー粒子の断面の最長径を与える弦を長軸Lとし、
該長軸Lをその中点で分割した際の一方の線分を線分aとし、
該線分aを基準として、11.25°ずつずらして該長軸Lの該中点から該トナー粒子の表面まで引いた32本の線分をそれぞれArn(n=1~32)とし、
各線分の長さをRAn(n=1~32)とし、
該Arn(n=1~32)上における該表層の厚みをFRAn(n=1~32)としたとき、
下記式(1)で求められるDtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子の断面において、
(i)該表層の平均厚みDav.が、5.0nm以上100.0nm以下であり、
(ii)該FRAnが5.0nm以下である線分Arnの割合が、20.0%以下であり、
(iii)該表層における、該コア粒子に接する無機微粒子の数が、トナー1粒子当たり16個以上30個以下であり、
(iv)該Dtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子100個のうち、該表層に接さず、かつ、該コア粒子に存在する無機微粒子を1個以上有するトナー粒子の割合が、10%以下である
ことを特徴とするトナーに関する。
Dtem=(RA1+RA2+RA3+RA4+RA5+RA6+RA7+RA8+RA9+RA10+RA11+RA12+RA13+RA14+RA15+RA16+RA17+RA18+RA19+RA20+RA21+RA22+RA23+RA24+RA25+RA26+RA27+RA28+RA29+RA30+RA31+RA32)/16 (1)
【0013】
上記条件を満たすことで本開示の効果が得られる理由について、本発明者らは次のように考えている。
トナー粒子は、無機微粒子及び有機ケイ素重合体を含有する表層を有し、該有機ケイ素重合体は、R-SiO3/2(式(T3))で表される構造を有する。
式中、Rは、炭素数1以上6以下(好ましくは炭素数1~4、より好ましくは1~2)のアルキル基、又はフェニル基を表す。
式(T3)で表される構造は、ケイ素原子の4個の原子価について、1個はRで示される有機基と、残り3個は酸素原子と結合している。酸素原子は、原子価2個がいずれもケイ素原子と結合している状態、つまり、シロキサン結合(Si-O-Si)を構成する。有機ケイ素重合体としてのケイ素原子と酸素原子を考えると、ケイ素原子2個で酸素原子3個を有することになるため、-SiO3/2と表現される。すなわち、式(T3)で表される構造は下記式のような構造である。
【0014】
【0015】
この-SiO3/2構造は、多数のシロキサン構造で構成されるシリカ(SiO2)と類似しており、シリカと同様に硬いため、トナー粒子の表層の有機ケイ素重合体に-SiO3/2構造を含有させることで高耐久性を達成できると本発明者らは考えている。
【0016】
さらに、トナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分(以下、THF不溶分ともいう。)の29Si-NMRの測定において、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する式(T3)で表される構造に帰属されるピーク面積の割合が5.0%以上である。詳細な測定法は後述するが、これはトナー粒子の表層に含まれる有機ケイ素重合体の中で、R-SiO3/2で表される構造を取っているケイ素原子の割合が、有機ケイ素重合体の全ケイ素原子の5.0%以上であることと近似している。
前述の通り、ケイ素原子の4つの原子価のうち、3つが酸素原子と結合し、さらにそれら酸素原子が別のケイ素原子と結合することが、R-SiO3/2で表される構造の意味である。もし、そのうち酸素原子1つがシラノール基を構成するものであったとすると、その構造はR-SiO2/2-OHで表現される。この構造は、ジメチルシリコーンに代表される2置換シリコーン樹脂に類似している。
そのためR-SiO3/2で表される構造が多いほど、上記のようにトナー粒子の表層がシリカのような硬い性質を発現し始め、高耐久性を実現できると考えられる。一方、R-SiO3/2で表される構造が少ない場合は、例えばR-SiO2/2-OHで表される構造が多いほど樹脂的性質が支配的となり耐久性が低下し、SiO2で表される構造が多いほどシリカのような硬い性質が支配的となり定着性が低下する。
そのため、有機ケイ素重合体はR-SiO3/2で表される構造を5.0%以上有している必要がある。すなわち、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する式(T3)で表される構造に帰属されるピーク面積の割合が5.0%以上である必要がある。該ピーク面積の割合は、例えば85.0%以下とすることができる。
高耐久性の観点からは、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する式(T3)で表される構造に帰属されるピーク面積の割合は、20.0%以上85.0%以下であることが好ましく、40.0%以上80.0%以下であることがより好ましく、40.0%以上67.5%以下であることがさらに好ましい。式(T3)で表される構造のピーク面積の割合は、式(T3)の構造を形成させる際の反応温度や、反応時のpHにより制御することができる。
【0017】
また、透過型電子顕微鏡(以下、TEMともいう。)を用いたトナー粒子の断面の観察において、
該トナー粒子の重心を通り、かつ、該トナー粒子の断面の最長径を与える弦を長軸Lとし、
該長軸Lをその中点で分割した際の一方の線分を線分aとし、
該線分aを基準として、11.25°ずつずらして該長軸Lの該中点から該トナー粒子の表面まで引いた32本の線分をそれぞれArn(n=1~32)とし、
各線分の長さをRAn(n=1~32)とし、
該Arn(n=1~32)上における該表層の厚みをFRAn(n=1~32)としたとき、
下記式(1)、
Dtem=(RA1+RA2+RA3+RA4+RA5+RA6+RA7+RA8+RA9+RA10+RA11+RA12+RA13+RA14+RA15+RA16+RA17+RA18+RA19+RA20+RA21+RA22+RA23+RA24+RA25+RA26+RA27+RA28+RA29+RA30+RA31+RA32)/16 (1)
で求められるDtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子の断面において、
表層の平均厚みDav.は、5.0nm以上100.0nm以下であることにより、耐久性と定着性を高いレベルで両立することができる。該Dav.が5.0nm未満では耐久性が低下し、該Dav.が100.0nmを超えると定着性が低下する。該Dav.は、好ましくは10.0nm以上70.0nm以下であり、より好ましくは10.0nm以上50.0nm以下である。有機ケイ素重合体の表層の平均厚みDav.は、有機ケイ素重合体の含有量、有機ケイ素重合体の親水性基と疎水性基の割合、加水分解、付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒、およびpHなどによって制御できる。
【0018】
さらに、上記Dtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子の断面において、FRAnが5.0nm以下である線分Arnの割合が20.0%以下であることで、現像機内のストレスに耐えうる高耐久なトナーを得ることができる。FRAnが5.0nm以下である線分Arnの割合が20.0%を超えると、トナーの耐久性が低下し、現像ローラの表面のフィルミングが発生し、濃淡ムラが発生する。FRAnが5.0nm以下である線分Arnの割合は、好ましくは10.0%以下であり、より好ましくは5.0%以下である。FRAnが5.0nm以下である線分Arnの割合は低いほど好ましいが、例えば0.0%以上である。該数値範囲は任意に組み合わせることができる。
FRAnが5.0nm以下である線分Arnの割合は、有機ケイ素重合体の含有量、有機ケイ素重合体の親水性基と疎水性基の割合、加水分解、付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒、およびpHなどによって制御できる。
【0019】
一方で、シリカのような硬い性質を持つR-SiO3/2で表される構造を有する有機ケイ素重合体をトナー粒子の表層が含有することで定着性への影響が懸念されるが、本発明者らが鋭意検討した結果、表層における、コア粒子に接する無機微粒子の数が、トナー1粒子当たり16個以上30個以下であることで、定着性も両立できることがわかった。
無機微粒子は一般的に硬い性質を有するため、トナー粒子中に含有させると定着性を低下させると考えられる。しかし、かかる要件を満足することで、定着時に無機微粒子が表層を破壊し、トナーの溶融をアシストするため、定着性が良好になると考えている。
該無機微粒子の数が16個未満では、表層を十分に破壊することがでないため、定着性が低下する。また、該無機微粒子の数が30個を超えると、トナーの帯電性を低下させてしまうため、カブリが発生する。該無機微粒子の数は、好ましくは19個以上29個以下であり、より好ましくは20個以上24個以下である。
表層における、コア粒子に接する無機微粒子の数は、造粒工程中に追加で添加する分散安定剤としての無機微粒子の量などによって制御することができる。
【0020】
さらに、該Dtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子100個のうち、表層に接さず、かつ、コア粒子に存在する無機微粒子を1個以上有するトナー粒子の割合は、10%以下である必要がある。表層に接さず、かつ、コア粒子に存在する無機微粒子を有するトナー粒子の割合が10%を超えると、上述のように定着性を
低下させる要因となる。該トナー粒子の割合は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは2%以下である。該トナー粒子の割合は低いほど好ましいが、例えば0%以上である。該数値範囲は任意に組み合わせることができる。
表層に接さず、かつ、コア粒子に存在する無機微粒子を1個以上有するトナー粒子の割合は、造粒工程中に追加で添加する分散安定剤としての無機微粒子の量などによって制御することができる。
【0021】
該無機微粒子としては、公知の無機微粒子を特に制限なく使用することができるが、カルシウム元素及びマグネシウム元素からなる群から選択される少なくとも一を含むことが好ましく、カルシウム元素を含むことがより好ましい。
また、該無機微粒子における、カルシウム元素及びマグネシウム元素からなる群から選択される少なくとも一(好ましくはカルシウム元素)の含有量は、50質量%~100質量%が好ましく、85質量%~100質量%がより好ましい。
【0022】
該無機微粒子の一次粒径の個数平均粒径をDmとしたとき、Dmは50.0nm以上800.0nm以下であることが好ましい。Dmが50.0nm以上であることにより、定着時に表層が破壊されやすくなり、定着性がより向上する傾向にある。Dmが800.0nm以下であることにより、トナーの帯電性への影響を抑制することができ、カブリがより発生しにくくなる傾向にある。Dmは、より好ましくは90.0nm以上200.0nmである。該Dmは、追加添加する分散安定剤としての無機微粒子を作製する際の温度、撹拌の回転数などで制御することができる。
【0023】
前記TEMを用いた前記トナー粒子の断面の観察において、
表層のうち、Ar1とAr5で挟まれた領域、Ar5とAr9で挟まれた領域、Ar9とAr13で挟まれた領域、Ar13とAr17で挟まれた領域、Ar17とAr21で挟まれた領域、Ar21とAr25で挟まれた領域、Ar25とAr29で挟まれた領域およびAr29とAr1で挟まれた領域(以下、これらの領域を総称して、単に「表層を8等分した部分」ともいう)のそれぞれに無機微粒子が少なくとも1つ以上存在するトナー粒子の割合が、該Dtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子100個のうち90%以上であることが好ましい。
これにより定着時にトナー粒子の表層が全体的に破壊され、定着性がより良好となる。該トナー粒子の割合は、より好ましくは95%以上である。また、該トナー粒子の割合は高いほど好ましいが、例えば100%以下である。該数値範囲は任意に組み合わせることができる。
該トナー粒子の割合は、造粒工程中に追加で添加する分散安定剤としての無機微粒子の量、及び造粒工程時の撹拌の回転数などで制御することができる。
【0024】
また、前記TEMを用いた前記トナー粒子の断面の観察において、該Dtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子100個のうち、前記表層における前記コア粒子に接する無機微粒子の個数が16個以上30個以下存在するトナー粒子の割合は、90%以上であることが好ましい。これにより、定着時に有機ケイ素重合体表層の破壊が良好に行われるトナーが多くなるため、定着がより良好となる。より好ましくは、95%以上である。また、該トナー粒子の割合は高いほど好ましいが、例えば100%以下である。該数値範囲は任意に組み合わせることができる。
【0025】
さらに、表層の平均厚みDav.と、無機微粒子の一次粒径Dmが、Dav./Dm<1.00を満たすことが好ましい。Dav./Dm<1.00を満たすことにより、表層の平均厚みに対して無機微粒子の粒径が十分な大きさになるため、無機微粒子が表層を破壊しやすくなり、定着性がより良好となる。より好ましくはDav./Dm≦0.80である。
【0026】
以下に、本開示の実施形態に関して詳細に説明する。
有機ケイ素重合体を作製するための有機ケイ素化合物として、具体的に以下の化合物が挙げられる。例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルメトキシジクロロシラン、ブチルエトキシジクロロシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなど。これらの有機ケイ素化合物は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
一般的に、ゾルゲル反応では、反応媒体の酸性度によって生成するシロキサン結合の結合状態が異なることが知られている。
具体的には、媒体が酸性である場合には、水素イオンが一つの反応基(例えばアルコキシ基)の酸素に親電子的に付加する。次に、水分子中の酸素原子がケイ素原子に配位して、置換反応によってヒドロシリル基になる。水が十分に存在している場合には、H+ひとつで反応基(例えばアルコキシ基)の酸素をひとつ攻撃するため、媒体中のH+の含有率が少ないときには、ヒドロキシ基への置換反応が遅くなる。よって、シランに付いた反応基のすべてが加水分解する前に重縮合反応が生じ、比較的容易に、一次元的な線状高分子や二次元的な高分子が生成し易い。
一方、媒体がアルカリ性の場合には、水酸化物イオンがケイ素に付加して5配位中間体を経由する。そのため全ての反応基(例えばアルコキシ基)が脱離しやすくなり、容易にシラノール基に置換される。特に、同一シランに3個以上の反応基を有するケイ素化合物を用いた場合には、加水分解及び重縮合が3次元的に生じて、3次元の架橋結合の多い有機ケイ素重合体が形成される。また、反応も短時間で終了する。
従って、有機ケイ素重合体を形成するには、アルカリ性の下でゾルゲル反応を進めることが好ましく、水系媒体中で製造する場合には、具体的には、pH8.0以上、反応温度90℃以上、反応時間5時間以上で反応を進めることが好ましい。これによって、より強度の高い、耐久性に優れた有機ケイ素重合体を形成することができる。
【0027】
また、上記懸濁重合の際に用いられる媒体が水系媒体の場合には、重合性単量体組成物の粒子の分散安定剤として以下の無機微粒子を使用することができる。リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウムなど。
【0028】
トナー粒子を製造するための製造方法は、どのような製造方法であってもよいが、懸濁重合法であることが好ましい。
以下、懸濁重合法によるトナー粒子の製造方法を例にとり、トナー粒子の製造方法を詳細に説明するが、トナー粒子の製造方法は以下の方法によって何ら限定されるものではない。
懸濁重合法とは、重合性単量体及び必要に応じて着色剤を含有する重合性単量体組成物を水系媒体に加え、水系媒体中で重合性単量体組成物を造粒し重合性単量体組成物の粒子を形成し、重合性単量体組成物の粒子に含まれる重合性単量体を重合してトナー粒子を得る製造方法である。
以下、懸濁重合法によるトナー粒子の製造方法について工程毎に説明する。
【0029】
(重合性単量体組成物の準備)
重合性単量体及び有機ケイ素化合物、並びに必要に応じて着色剤を含む重合性単量体組成物を調製する。重合性単量体組成物が着色剤を含有する場合、該着色剤は予め媒体撹拌ミルなどで重合性単量体中に分散させた後に他の組成物と混合してもよいし、その他の組
成物と同時、または、その他の組成物を混合した後に分散させてもよい。
【0030】
(造粒工程)
前述した分散安定剤として用いる無機微粒子を含む水系媒体に重合性単量体組成物を投入し、分散させることにより水系媒体中に重合性単量体組成物の液滴を造粒することによって重合性単量体組成物の液滴を得る。
造粒工程では、該重合性単量体組成物の液滴表面に無機微粒子が付着する。そして、重合性単量体組成物が極性樹脂を含有する場合、液滴表面に付着した無機微粒子によって該極性樹脂が界面に引き寄せられる。この効果によって元々その極性によって該重合性単量体組成物の表面に存在し易かった極性樹脂が、より一層表面に存在しやすくなる。
造粒工程は例えば高剪断力を有する撹拌機を設置した竪型撹拌槽で行うことができる。高剪断力を有する撹拌機としてはULTRA‐TURRAX(IKA社製)、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業社製)、T.K.フィルミックス(特殊機化工業社製)、クレアミックス(エム・テクニック社製)、キャビミックス(大平洋機工社製)などの市販のものを用いることができる。また、撹拌機を縦型撹拌槽内で、撹拌槽下部から一部プロセス液を抜き出し再度撹拌槽へ戻す循環機構を有し、循環機構内にインライン式の高剪断力を有する分散機を用いることもできる。インライン式の分散機としてはコロイドミル(IKA社製)、キャビトロン(大平洋機工社製)、W・モーション(エム・テクニック社製)などの市販の分散機を用いることができる。また、造粒工程の間に分散安定剤となる無機微粒子を追加で添加することもできる。これにより、表層における前記コア粒子に接する無機微粒子を存在させやすくなる。
【0031】
(重合工程)
上述のようにして得られた重合性単量体組成物の分散液を重合工程に導入することにより、トナー粒子分散液を得る。重合工程には、温度調節可能な一般的な撹拌槽を用いることができる。
重合温度は40℃以上、好ましくは50℃~90℃で行われる。重合温度は終始一定でもよいが、所望の分子量分布を得る目的で重合工程後半に昇温してもよい。撹拌に用いられる撹拌羽根はトナー用原料分散液を滞留させることなく浮遊させ、かつ槽内の温度を均一に保てるようなものならばどのようなものを用いてもよい。撹拌羽根又は撹拌手段としては、パドル翼、傾斜パドル翼、三枚後退翼、プロペラ翼、ディスクタービン翼、ヘリカルリボン翼及びアンカー翼などの一般的な撹拌羽根、並びに、「フルゾーン」(神鋼パンテック社製)、「ツインスター」(神鋼パンテック社製)、「マックスブレンド」(住友重機社製)、「スーパーミックス」(佐竹化学機械工業社製)及び「Hi-Fミキサー」(綜研化学社製)などが挙げられる。
また、重合工程における温度とpHを上記範囲内に制御することにより、重合性単量体組成物中の有機ケイ素化合物をゾルゲル反応させて、無機微粒子および有機ケイ素重合体を含有する表層を形成させることができる。
【0032】
(蒸留工程)
必要であれば未反応の重合性単量体や副生成物等の揮発性不純物を除去するために、重合終了後に一部水系媒体を蒸留工程により留去してもよい。蒸留工程は常圧もしくは減圧下で行うことができる。
【0033】
(洗浄工程、固液分離工程及び乾燥工程)
重合体粒子表面に付着した余分な分散安定剤を除去する目的で、重合体粒子分散液を酸またはアルカリで処理をすることもできる。この後、一般的な固液分離法により重合体粒子は液相と分離されるが、酸またはアルカリおよびそれに溶解した余分な分散安定剤成分を取り除くため、再度水を添加して重合体粒子を洗浄する。この洗浄工程を何度か繰り返し、十分な洗浄が行われた後に、再び固液分離してトナー粒子を得る。得られたトナー粒
子は必要であれば公知の乾燥手段により乾燥される。
【0034】
(分級工程)
こうして得られたトナー粒子は、さらにシャープな粒度を要求される場合には風力分級機などで分級を行うことにより、所望の粒度分布から外れる粒子を分別して取り除くこともできる。
【0035】
上記重合性単量体として、以下に示すビニル系重合性単量体が好適に例示できる。スチレン;α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレンなどのスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2-ベンゾイルオキシエチルアクリレートなどのアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートなどのメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、ギ酸ビニルなどのビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン。
重合性単量体組成物中の上記重合性単量体の含有量は、50質量%~100質量%が好ましく、70質量%~100質量%がより好ましい。上記重合性単量体は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
また、重合に際して用いられ得る重合開始剤としては、例えば以下のものが挙げられる。2,2’-アゾビス-(2,4-ジバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系重合開始剤及びジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルパーオキシピバレートなどの過酸化物系重合開始剤。これらの重合開始剤の使用量は、重合性単量体100質量部に対して0.5質量部~30.0質量部が好ましい。また、上記重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
また、トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合に際して、連鎖移動剤を添加してもよい。好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.001質量部~15.0質量部である。
【0038】
一方、トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合に際して、架橋剤を添加してもよい。該架橋剤としては、例えば、架橋性単量体を使用することが
できる。
架橋性単量体としては、例えば以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA 日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに変えたもの。
多官能の架橋性単量体としては、例えば以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロキシ・ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルクロレンデート。
架橋剤の好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.001質量部~15.0質量部である。
【0039】
着色剤としては、特に限定されず、以下に示す公知のものを使用することができる。
黄色顔料としては、例えば、黄色酸化鉄、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には、例えば以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180。
橙色顔料としては、例えば以下のものが挙げられる。パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK。
赤色顔料としては、例えば、ベンガラ、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリラントカーミン3B、エオキシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキなどの縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、例えば以下のものが挙げられる。
青色顔料としては、例えば、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBGなどの銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などが挙げられる。具体的には、例えば以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66。
紫色顔料、例えばとしては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
緑色顔料としては、例えば、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGが挙げられる。
白色顔料としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛が挙げられ
る。
黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、非磁性フェライト、マグネタイト、上記黄色系着色剤、赤色系着色剤及び青色系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。
これらの着色剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの着色剤は、固溶体の状態で用いることができる。なお、着色剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100質量部に対して3.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましい。
【0040】
トナーには、トナー製造時に特定のpKaを有するイオン性官能基を有する樹脂以外の荷電制御剤を用いることができる。該荷電制御剤としては、公知の荷電制御剤が使用できる。これらの荷電制御剤の添加量としては、結着樹脂又は重合性単量体100質量部に対して、0.01質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。
【0041】
トナーは、トナー粒子をそのままトナーとして用いてもよく、必要に応じて、トナー粒子に各種有機微粉体又は無機微粉体を外添してトナーとすることもできる。該有機又は無機微粉体は、トナー粒子に添加した時の耐久性から、トナー粒子の重量平均粒径の1/10以下の粒径であることが好ましい。有機微粉体又は無機微粉体としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
(1)流動性付与剤:シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック及びフッ化カーボン。
(2)研磨剤:金属酸化物(例えばチタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化クロム)、窒化物(例えば窒化ケイ素)、炭化物(例えば炭化ケイ素)、金属塩(例えば硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム)。
(3)滑剤:フッ素系樹脂粉末(例えばフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム)。
(4)荷電制御性粒子:金属酸化物(例えば酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ)、カーボンブラック。
有機微粉体又は無機微粉体は、トナーの流動性の改良及びトナー粒子の帯電均一化のためにトナー粒子の表面を処理することもできる。有機微粉体又は無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
以下に、本開示に係る各物性値の測定方法について記載する。
<NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分の分離法>
トナー粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分は、以下のように分離した。
トナー粒子10.0gを秤量し、円筒濾紙(東洋濾紙製No.86R)に入れてソックレー抽出器にかける。溶媒としてTHF200mLを用いて20時間抽出し、円筒濾紙中の濾物を40℃で数時間真空乾燥を行って得られたものをNMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分とした。なお、トナー粒子に磁性体が含まれる場合には抽出時などに磁石を使って分離しておく。
【0043】
なお、外添剤などでトナー粒子の表面が処理されている場合は、下記方法によって外添剤を除去し、トナー粒子を得る。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL
入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20minで振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて3500rpm、30minの条件で分離する。この操作により、トナー粒子と外れた外添剤が分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラなどで採取する。採取したトナーを減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、トナー粒子を得る。
この操作を複数回実施して、必要量を確保する。
【0044】
(上記式(T3)で表される構造の確認方法)
トナー粒子に含有される有機ケイ素重合体における、上記式(T3)で表される構造の確認には以下の方法を用いる。
上記式(T3)中のRで表されるアルキル基又はフェニル基の有無は、13C-NMR及び29Si-NMRにより確認する。また、上記式(T3)で表される構造の詳細は、1H-NMR、13C-NMR及び29Si-NMRにより確認する。使用した装置及び測定条件を以下に示す。
(1H-NMRの測定条件)
装置:BRUKER製 AVANCEIII 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(上記NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れた。
当該方法にて、上記式(T3)中のRで表されるアルキル基又はフェニル基の有無を確認する。シグナルが確認できたら、上記式(T3)で表される構造は“あり”とする。
【0045】
(13C-NMR(固体)の測定条件)
測定核周波数:125.77MHz
基準物質:Glycine(外部標準:176.03ppm)
観測幅:37.88kHz
測定法:CP/MAS
コンタクト時間:1.75m秒
繰り返し時間:4秒
積算回数:2048回
LB値:50Hz
【0046】
(29Si-NMR(固体)の測定条件)
装置:BRUKER製 AVANCE III 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れる。
測定核周波数:99.36MHz
基準物質:DSS(外部標準:1.534ppm)
観測幅:29.76kHz
測定法:DD/MAS、CP/MAS
29Si 90°
パルス幅:4.00μ秒@-1dB
コンタクト時間:1.75m秒~10m秒
繰り返し時間:30秒(DD/MAS)、10秒(CP/MAS)
積算回数:2048回
LB値:50Hz
【0047】
[式(T3)で表される構造に帰属されるピーク面積の割合の測定方法]
トナー粒子のTHF不溶分の
29Si-NMR測定後に、トナー粒子の、置換基及び結合基の異なる複数のシラン成分をカーブフィッティングにて下記Q1構造、Q2構造、Q3構造、及びQ4構造にピーク分離して、ピークの面積比から各成分のモル%を算出する。
カーブフィッティングは、日本電子社製のJNM-EX400用ソフトのEXcalibur for Windows(登録商標) version 4.2(EX series)を用いて行う。メニューアイコンから「1D Pro」をクリックして測定データを読み込む。
次に、メニューバーの「Command」から「Curve fitting functinon」を選択し、カーブフィッティングを行った。その一例を
図3に示す。合成ピーク(b)と測定結果(d)の差分である合成ピーク差分(a)のピークが最も小さくなるようにピーク分割を行う。
Q1構造の面積、Q2構造の面積、Q3構造の面積、Q4構造の面積を求めて以下の式によりSQ1、SQ2、SQ3、SQ4を求める。
Q1構造:(R
1)(R
2)(R
3)SiO
1/2 式(2)
Q2構造:(R
4)(R
5)Si(O
1/2)
2 式(3)
Q3構造:R
6Si(O
1/2)
3 式(4)
Q4構造:Si(O
1/2)
4 式(5)
【0048】
【0049】
式(2)、(3)及び(4)中のR1、R2、R3,R4、R5、及びR6はケイ素に結合している有機基、ハロゲン原子、水酸基又はアルコキシ基を示す。
化学シフト値でシランモノマーを特定して、トナー粒子の29Si-NMRの測定において全ピーク面積からQ1構造の面積とQ2構造の面積とQ3構造の面積とQ4構造の面
積の合計を有機ケイ素重合体の全ピーク面積とする。
SQ1+SQ2+SQ3+SQ4=1.000
SQ1={Q1構造の面積/(Q1構造の面積+Q2構造の面積+Q3構造の面積+Q4構造の面積)}
SQ2={Q2構造の面積/(Q1構造の面積+Q2構造の面積+Q3構造の面積+Q4構造の面積)}
SQ3={Q3構造の面積/(Q1構造の面積+Q2構造の面積+Q3構造の面積+Q4構造の面積)}
SQ4={Q4構造の面積/(Q1構造の面積+Q2構造の面積+Q3構造の面積+Q4構造の面積)}
【0050】
有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する、下記式(T3)で表される構造のピーク面積は、5.0%以上である。すなわち、この測定方法において、R-SiO3/2で表される構造を示す値は上記SQ3である。この値が、0.05以上である。
R-Si(O1/2)3 (T3)
Q1構造、Q2構造、Q3構造及びQ4構造におけるケイ素の化学シフト値を以下に示す。
Q1構造の一例(R1=R2=-OC2H5、R3=-CH3):-47ppm
Q2構造の一例(R4=-OC2H5、R5=-CH3):-56ppm
Q3構造の一例(R6=-CH3):-65ppm
また、Q4構造がある場合のケイ素の化学シフト値を以下に示す。
Q4構造:-108ppm
【0051】
<透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー粒子の断面観察によって測定される、表層の平均厚みDav.及びFRAn(表層の厚み)が5.0nm以下である線分Arnの割合の測定方法>
トナー粒子の断面観察は以下の方法により行う。
トナー粒子の断面を観察する具体的な方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナー粒子を十分分散させた後、40℃の雰囲気下で2日間硬化させる。得られた硬化物からダイヤモンド刃を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出す。このサンプルを透過型電子顕微鏡(FEI社製電子顕微鏡Tecnai TF20XT)(TEM)で1万~10万倍の倍率に拡大し、トナー粒子の断面を観察する。
本開示においては、用いる樹脂と有機ケイ素化合物の中の原子の原子量の違いを利用し、原子量が大きいとコントラストが明るくなることを利用して、表層に有機ケイ素重合体が存在することを確認する。さらに、材料間のコントラストを付けるためには四酸化ルテニウム染色法及び四酸化オスミウム染色法を用いる。
TEMにてトナー粒子の表層の平均厚みのDav.及びFRAn(表層の厚み)が5.0nm以下である線分Arnの割合の測定の対象となるトナー粒子は、TEMの顕微鏡写真より得られるトナー粒子の断面から求めたDtemが、コールターカウンターを用いる後述の方法により求めたトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるものとする。
【0052】
[TEMの顕微鏡写真より得られるトナーの断面から求められるDtemの測定方法]
トナー粒子の断面の最大径である長軸Lと、長軸Lの中点を通りかつ垂直な軸L90との交点を中心にして、トナー粒子断面を均等に32分割する(
図2参照)。すなわち、該長軸Lの中点を通り、且つ、前記中点における交差角が均等(交差角は11.25°)になるように前記断面を横断する直線を16本ひくことにより、前記中点から前記トナー粒子の表面まで32本の線分を形成する。次に、該中心からトナー粒子の表層へ向かう線分(分割軸)をそれぞれArn(n=1~32)、各線分(分割軸)の長さをRAn、上記線分Arn上の表面層の厚みをFRAn(n=1~32)とする。
次いで、下記式に従って、TEMの顕微鏡写真より得られるトナーの断面から求められるDtemを求める。
Dtem=(RA1+RA2+RA3+RA4+RA5+RA6+RA7+RA8+RA9+RA10+RA11+RA12+RA13+RA14+RA15+RA16+RA17+RA18+RA19+RA20+RA21+RA22+RA23+RA24+RA25+RA26+RA27+RA28+RA29+RA30+RA31+RA32)/16
【0053】
[トナー粒子の表層の平均厚み(Dav.)の測定]
トナー粒子の表層の平均厚み(Dav.)は以下の方法で求める。まず、Dtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子1個について、表層の平均厚みD(n)を以下の方法で求める。
D(n)=(分割軸上における表層の厚みの32箇所の合計)/32=(FRA1+FRA2+FRA3+FRA4+FRA5+FRA6+FRA7+FRA8+FRA9+FRA10+FRA11+FRA12+FRA13+FRA14+FRA15+FRA16+FRA17+FRA18+FRA19+FRA20+FRA21+FRA22+FRA23+FRA24+FRA25+FRA26+FRA27+FRA28+FRA29+FRA30+FRA31+FRA32)/32
平均化するため、Dtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子100個のトナー粒子の表層の平均厚みD(n)(n=1~100)を求め、トナー粒子1個あたりの平均値を計算してトナー粒子の表面層の平均厚み(Dav.)とする。
Dav.={D(1)+D(2)+D(3)+D(4)+D(5)+・・・・・+D(100)}/100
【0054】
[FRAn(表層の厚み)が5.0nm以下である線分Arnの割合の測定方法]
まずDtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子1個について、該トナー粒子におけるFRAn(表層の厚み)が5.0nm以下である線分Arnの割合を以下の方法で求める。
[FRAn(表層の厚み)が5.0nm以下である線分Arnの割合]=〔{FRAn(表層の厚み)が5.0nm以下である線分Arnの数}/32〕×100
この計算を、Dtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子100個に対して行い、得られた100個の平均値を求め、トナー粒子のFRAn(表層の厚み)が5.0nm以下である線分Arnの割合とする。
【0055】
<表層におけるコア粒子に接する無機微粒子の個数、及び、該個数が16個以上30個以下存在するトナー粒子の割合の測定方法>
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー粒子の断面観察を行う際に、FEI社製電子顕微鏡Tecnai TF20XTを用い、加速電圧200kVでトナー粒子断面の明視野像を取得する。次にGatan社製EELS検出器GIF Tridiemを用い、Three Window法によりSi-K端(99eV)のEFマッピング像を取得し、各無機微粒子の元素を特定し、表層におけるコア粒子に接する無機微粒子の個数を数える。この測定を、Dtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子100個に対して行い、その平均値を表層におけるコア粒子に接する無機微粒子の個数とした。同様に、前記表層におけるコア粒子に接する無機微粒子が16個以上30個以下存在するトナー粒子の割合も求める。
なお、当該元素分析により、無機微粒子がカルシウム元素及びマグネシウム元素からなる群から選択される少なくとも一を含むかどうかを判別する。
【0056】
<表層に接さず、かつ、コア粒子に存在する無機微粒子を1個以上有するトナー粒子の割
合の測定方法>
前述の表層におけるコア粒子に接する無機微粒子の個数の測定方法と同様に、表層に接さず、かつ、コア粒子に存在する無機微粒子を観察することができる。この観察をDtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子100個に対して行い、表層に接さず、かつ、コア粒子に存在する無機微粒子を1個以上有するトナー粒子の割合を求める。
【0057】
<無機微粒子の一次粒径の個数平均粒径Dmの測定>
無機微粒子の一次粒径の個数平均粒径Dmは、前述のトナー粒子の断面観察において、その拡大写真を用いて100個以上の無機微粒子の粒径を測定し、算術平均から一次粒径の個数平均粒径Dmを求める。なお、粒径は、形状が球状の場合はその絶対最大長を、長径と短径を有する場合は長径を、粒径としてカウントする。
【0058】
<表層を8等分した部分のそれぞれに無機微粒子が少なくとも1つ以上存在するトナー粒子の割合>
表層を8等分した部分のそれぞれに無機微粒子が少なくとも1つ以上存在するトナーの割合は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー粒子の断面観察によって測定される、トナー粒子の表層の平均厚みDav.及びFRAn(表層の厚み)が5.0nm以下である線分Arnの割合の測定方法において、Dtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子100個当たり、前記表層のうち、Ar1とAr5で挟まれた領域、Ar5とAr9で挟まれた領域、Ar9とAr13で挟まれた領域、Ar13とAr17で挟まれた領域、Ar17とAr21で挟まれた領域、Ar21とAr25で挟まれた領域、Ar25とAr29で挟まれた領域およびAr29とAr1で挟まれた領域のそれぞれに少なくとも1つ以上無機微粒子が存在するトナー粒子の割合から求められる。
【0059】
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOMME)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ
」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例などに制限されるものではない。なお、実施例中及び比較例中で記載されている「部」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
【0061】
<ポリエステル系樹脂の製造例>
・テレフタル酸 :11.1mol
・ビスフェノールA-プロピレンオキシド2モル付加物:10.8mol
上記単量体をエステル化触媒とともにオートクレーブに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置をオートクレーブに装着し、窒素雰囲気下、減圧しながら、常法に従って220℃でTgが70℃になるまで反応を行い、ポリエステル系樹脂を得た。重量平均分子量(Mw)は8200、数平均分子量(Mn)は3220であった。
【0062】
<トナー1の製造例>
(追加添加用の分散安定剤を含む水系分散媒体の調整)
反応容器中のイオン交換水350部に、下記の材料を投入し、N2パージしながら60℃で60分間保温した。
リン酸ナトリウム 14.0部
10%塩酸 7.0部
T.K.ホモミクサー(特殊機化工業製)を用いて、12,000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水20部に8.0部の塩化カルシウムを溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、リン酸カルシウムを含む追加添加用の水系分散媒体を調製した。
【0063】
(造粒用の水系分散媒体の調整)
反応容器中のイオン交換水1000部に、下記の材料を投入し、N2パージしながら60℃で60分間保温した。
リン酸ナトリウム 14.0部
10%塩酸 7.0部
T.K.ホモミクサー(特殊機化工業製)を用いて、12,000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水20部に8.0部の塩化カルシウムを溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、リン酸カルシウムを含む造粒用の水系分散媒体を調製した。
【0064】
その後、以下の原料を用いて、重合性単量体組成物を作製したが、この工程を溶解工程と定義する。
・スチレン 75.0部
・n-ブチルアクリレート 25.0部
・ジビニルベンゼン 0.1部
・有機ケイ素化合物(メチルトリエトキシシラン) 15.0部
・銅フタロシアニン顔料(ピグメントブルー15:3) 6.5部
・ポリエステル系樹脂 6.0部
・離型剤〔べヘン酸ベヘニル〕 10.0部
上記原料をアトライター(日本コークス工業社製)で3時間分散させ、重合性単量体組成物とした。次に、この重合性単量体組成物を別の容器に移し、撹拌しながら63℃で5分保持し、その後、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート20.0部(トルエン溶液50%)を添加し、撹拌しながら5分間保持した(溶解工程)。
次に、該重合性単量体組成物を造粒用の水系分散媒体中に投入し、高速撹拌装置で撹拌しながら、5分間造粒した後、追加添加用の分散安定剤を含む水系分散媒体を30部添加し、さらに15分造粒を行った(造粒工程)。造粒時の攪拌は12000rpmで行い、造粒温度は60℃とした。
【0065】
その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に変えて、内温を70℃に昇温させた。昇温に要した時間は10分間であった。さらに、ゆっくり撹拌しながら5時間反応させた。pHは5.1であった。ここまでを、反応1工程と定義する。
【0066】
次に、1.0mol/LのNaOH水溶液を加えて10分以内にpH8.0に調整し、容器内の温度を85℃まで昇温した。昇温に要した時間は20分であった。その後、容器内を85℃で3.0時間維持した。ここまでを、反応2工程と定義する。
【0067】
反応2工程終了後、還流管を取り外し、留分を回収できる蒸留装置を取り付けた。次に、容器内の温度が100℃になるまで昇温した。昇温に要した時間は30分であった。その後、容器内温度を100℃にて5.0時間維持した。このときのpHは8.0であった。留分を回収できる蒸留装置を取り付けてから、100℃での5.0時間維持が終了するまでを、蒸留工程と定義する。また、維持する温度を蒸留温度とし、維持した時間を蒸留時間とした。この工程で、残存単量体やその他溶剤を除去した。
【0068】
蒸留工程後、30℃まで冷却し、容器内に希塩酸を添加してpHを1.5まで下げて、分散安定剤を溶解させ、さらに、ろ過を行った。ろ過後、得られたケーキを取りださずに、さらにイオン交換水700部を加えてもう一度ろ過し、洗浄を行った。
次いで、ろ過後のケーキを取り出し、30℃で1時間真空乾燥を行った。
さらに、風力分級によって微粗粉をカットした。ここで得られた粒子をトナー粒子1とした。トナー粒子1をそのままトナー1とした。トナー粒子1の製造条件および処方を表1および2に示し、トナー1の物性を表3に示した。
【0069】
<トナー2~6、8~22の製造例>
表1および2に示した製造条件及び処方に従い、それ以外は上記トナー1の製造例に従い、トナー2~6、8~22を作製した。得られたトナー2~6、8~22の物性を表3
に示した。
【0070】
<トナー7の製造例>
(追加添加用の分散安定剤を含む水系分散媒体の調整)
反応容器中のイオン交換水350部に、下記の材料を投入し、N2パージしながら60℃で60分間保温した。
水酸化ナトリウム 12.0部
10%塩酸 5.0部
T.K.ホモミクサー(特機化工業製)を用いて、12000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水20部に6.0部の塩化マグネシウムを溶解した塩化マグネシウム水溶液を一括投入し、水酸化マグネシウムを含む追加添加用の分散安定無機微粒子を含む水系媒体を調製した。
【0071】
(造粒用の水系分散媒体の調整)
反応容器中のイオン交換水1000部に、下記の材料を投入し、N2パージしながら60℃で60分間保温した。
水酸化ナトリウム 12.0部
10%塩酸 5.0部
T.K.ホモミクサー(特機化工業製)を用いて、12000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水20部に6.0部の塩化マグネシウムを溶解した塩化マグネシウム水溶液を一括投入し、水酸化マグネシウムを含む造粒用の水系媒体を調製した。
【0072】
造粒工程以降は、表1および2に示した製造条件及び処方に従い、それ以外は上記トナー1の製造例に従い、トナー7を作製した。得られたトナー7の物性を表3に示した。
【0073】
<トナー23の製造例>
(結着樹脂微粒子分散液1の調製)
スチレン80.0部、アクリル酸ブチル18.7部、カルボキシ基付与モノマーとしてアクリル酸1.3部を混合し溶解させた。この溶液にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4.0部をイオン交換水150部に混合した水溶液を添加して、分散させた。さらに10分間ゆっくりと撹拌しながら、過硫酸カリウム0.3部をイオン交換水10部に混合した水溶液を添加した。窒素置換をした後、70℃で6時間乳化重合を行った。重合終了後、反応液を室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで固形分濃度が20.0質量%、体積基準のメジアン径が0.2μmの結着樹脂微粒子分散液1を得た。
【0074】
(ポリエステル樹脂粒子分散液の調製)
コンデンサー、温度計、水滴下装置、アンカー翼を備えたジャケット付き3リットル反応槽(東京理化器械(株)製:BJ-30N)を水循環式恒温槽にて40℃に維持した。上記反応槽に酢酸エチル160.0部とイソプロピルアルコール100.0部との混合溶剤を投入し、これに非晶性ポリエステル樹脂(テレフタル酸とプロピレンオキサイド変性(2モル付加物)ビスフェノールAの縮合体 Mw:7800、Tg:70℃、酸価8.0mgKOH/g)を300.0部投入して、スリーワンモーターを用い150rpmで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に10.0質量%アンモニア水溶液を、滴下時間5分間で14.0部滴下し、10分間混合した後、更にイオン交換水900.0部を毎分7.0部の速度で滴下して転相させて、乳化液を得た。
すぐに、得られた乳化液800.0部とイオン交換水700.0部とを2リットルのナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレータ(東京理化器械(株))にセットした。ナスフラスコを回転させながら、60℃の湯バスで加温し、突沸に注意しつつ7kPaまで減圧し溶剤を除去した。溶剤回収量が1,100.0部になった時点で常圧に戻し、ナスフラスコを水冷して分散液を得た。得られた分散液に溶
剤臭は無かった。この分散液におけるポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は130nmであった。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20.0質量%になるように調製し、これをポリエステル樹脂微粒子分散液とした。
【0075】
(着色剤微粒子分散液の調製)
・銅フタロシアニン顔料(ピグメントブルー15:3): 100.0部
・アニオン性界面活性剤 ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム: 16.0部
・イオン交換水: 384.0部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて60分間分散して着色剤を分散させてなる着色剤微粒子分散液を調製した。着色剤微粒子分散液における着色剤微粒子の体積基準のメジアン径は130nm、着色剤微粒子濃度は20.0質量%であった。
【0076】
(離型剤微粒子分散液の調製)
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃): 100.0部
・アニオン性界面活性剤 ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 16.0部
・イオン交換水: 384.0部
上記各成分を混合し、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製、ゴーリンホモジナイザ)を用いて、内液温度120℃にて離型剤を溶解した。その後、分散圧力5MPaで120分間分散処理し、次に40MPaで360分間分散処理した後、冷却して、離型剤微粒子分散液を得た。この離型剤微粒子分散液中の微粒子の体積基準のメジアン径は、225nmであった。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20.0質量%になるように調整した。
【0077】
(樹脂粒子1の調製)
・結着樹脂微粒子分散液1: 500.0部
・ポリエステル樹脂微粒子分散液: 25.0部
・着色剤微粒子分散液: 40.0部
・離型剤微粒子分散液: 25.0部
・イオン交換水: 325.0部
・アニオン性界面活性剤 ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム: 10.0部
上記各成分を、温度計、pH計、攪拌器を具備した3リットルの反応容器に入れ、温度25℃にて、0.3mol/Lの硝酸を加えてpHを3.0にした。その後、ホモジナイザー(IKAジャパン(株)製:ウルトラタラクスT50)にて5,000rpmで分散しながら、塩化アルミニウム水溶液(0.3質量%)を130.0部添加して6分間分散した。
続いて、反応容器に攪拌器、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌されるように攪拌器の回転数を調整した。撹拌を継続しながら、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で90℃まで昇温し、90℃で180分間熱処理工程を行った。その後、冷却水にて容器を20℃まで冷却した。
冷却後のスラリーを、目開き15μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粉を除去し、メッシュを通過した樹脂粒子分散液に、硝酸を加えてpH6.0に調製した後、アスピレータで減圧ろ過した。ろ紙上に残った樹脂粒子を手でできるだけ細かく砕いて、温度30℃でトナー量の10倍のイオン交換水に投入し、30分間攪拌混合した後、再度アスピレータで減圧ろ過し、ろ液の電気伝導度を測定した。ろ液の電気伝導度が5μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、樹脂粒子1を洗浄した。
洗浄された樹脂粒子を湿式乾式整粒機で細かく砕いてから、35℃のオーブン中で36時間真空乾燥して、樹脂粒子を得た。
【0078】
(樹脂粒子分散液)
反応容器にイオン交換水400.0部を入れた。そこに界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)及び金属塩(塩化アルミニウム6水和物)を、界面活性剤濃度が1.0×100質量%、金属イオン濃度が40.0mmol/lとなるように加えた。そこに、100.0部の樹脂粒子を加え、温度25℃にて、ホモジナイザー(IKAジャパン(株)製:ウルトラタラクスT50)で5,000rpmで6分間分散した。その後、1.0規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0に調整し、樹脂粒子分散液を得た。
次いで、樹脂粒子分散液100.0部を反応容器に秤量し、撹拌しながら70℃まで昇温させた。そこに、1mol/LのNaOH水溶液でpH9.0に調整した18.0部のヘキシルトリエトキシシランの加水分解液を加え、240分間撹拌し、縮合工程を行った。
その後、桐山濾紙(No.5C:空孔径1μm)を用いてろ過し、粒子とろ液とを分離した。得られた粒子を、さらに100部のイオン交換水で洗浄し、25℃で24時間真空乾燥を行い、トナー23粒子を得た。トナー粒子23をそのままトナー23とした。得られたトナー23の物性を表3に示した。
【0079】
<トナー24の製造例>
<結着樹脂粒子分散液2の調製>
スチレン89.5部、アクリル酸ブチル9.2部、カルボキシ基付与モノマーとしてアクリル酸1.3部、n-ラウリルメルカプタン3.2部を混合し溶解させた。この溶液にネオゲンRK(第一工業製薬社製)1.5部のイオン交換水150部の水溶液を添加して、分散させた。さらに10分間ゆっくりと撹拌しながら、過硫酸カリウム0.3部のイオン交換水10部の水溶液を添加した。窒素置換をした後、70℃で6時間乳化重合を行った。重合終了後、反応液を室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで固形分濃度が12.5質量%、体積基準のメジアン径が0.2μmの結着樹脂粒子分散液2を得た。なお、結着樹脂粒子分散液2に含まれる樹脂は、アクリル酸に由来するカルボキシ基を有していた。
【0080】
<離型剤分散液の調製>
離型剤(ベヘン酸ベヘニル、融点:72.1℃)100部、ネオゲンRK15部をイオン交換水385部に混合させ、湿式ジェットミル JN100((株)常光製)を用いて約1時間分散して離型剤分散液を得た。離型剤分散液の濃度は20質量%であった。
【0081】
<着色剤分散液の調製>
着色剤として銅フタロシアニン顔料(ピグメントブルー15:3)100部、ネオゲンRK15部をイオン交換水885部に混合させ、湿式ジェットミル JN100を用いて約1時間分散して着色剤分散液を得た。
【0082】
次いで、結着樹脂粒子分散液2 265部、離型剤分散液 10部、着色剤分散液 10部をホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散させた。撹拌しながら容器内の温度を30℃に調整して、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=8.0に調整した(pH調整1)。凝集剤として、塩化カルシウム0.3部をイオン交換水10部に溶解した水溶液を、30℃攪拌下、10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、50℃まで昇温し、会合粒子の生成を行った。その状態で、「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定する。重量平均粒径が6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム0.9部とネオゲンRK5.0部を添加して粒子成長を停止させた。
ここに、追添金属化合物として塩化カルシウム1.0部を添加してから有機ケイ素化合物であるヘキシルトリエトキシシラン14.0部を添加し、1mol/Lの水酸化ナトリ
ウム水溶液を加えてpH=9.0に調整して(pH調整2)から95℃まで昇温した。95℃で撹拌保持して有機ケイ素化合物の加水分解、縮合を行いながら、会合粒子の融着と球形化を行った。平均円形度が0.980に到達した時点で降温を開始し、85℃まで降温してから1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=9.5に調整(pH調整3)して180分間撹拌して、縮合を更に進めてから冷却を行ってトナー粒子分散液を得た。
得られたトナー粒子分散液に塩酸を添加してpHを1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。得られたトナーケーキは気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業製)にて乾燥を行った。乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃、トナーケーキの供給速度はトナーケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。更にコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットし、トナー粒子24を得た。トナー粒子24をそのままトナー24とした。得られたトナー24の物性を表3に示した。
【0083】
【0084】
【0085】
【表3】
*1:有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する式(T3)で表される構造に帰属されるピーク面積の割合
*2:FRAnが5.0nm以下である線分Arnの割合
*3:表層に接さず、かつ、コア粒子に接する無機微粒子を1個以上有するトナー粒子の割合
*4:表層を8等分した部分のそれぞれに無機微粒子が少なくとも1つ存在するトナー粒子の割合
*5:表層における、コア粒子に接する無機微粒子の個数が16~30個存在するトナー粒子の割合
【0086】
<実施例1~18、比較例1~6>
トナー1~24において以下の評価を実施した。トナー1~24の評価結果を表4に示す。
【0087】
<現像ローラフィルミングの評価>
以下に現像ローラのフィルミングの評価方法及び評価基準を具体的に説明する。
画像形成装置としては、
図1のような構成を有するタンデム方式のレーザービームプリンタHP Color Laser Jet Enterprise CP4525dn(Hewlett Packard社製)の改造機および改造カートリッジを用いた。
この改造機は、内部のギアを変更することにより、プロセススピードが320mm/secとなるよう改造を行った。また、カートリッジ内部からは製品トナーを抜き取り、エアブローによって清掃した後、トナーを250g充填した。そしてそのトナーカートリッジを評価実施環境において24時間放置し、上記プリンターのシアンステーションに装着し、その他は、ダミーカートリッジを装着し、画像出力試験を実施した。
トナーの載り量が0.3mg/cm
2であるハーフトーン画像を2枚印刷するごとに1分休止する動作を繰り返し、50000枚の画像出力を行い、以下の方法で画像評価を行った。
(現像ローラのフィルミングの評価基準)
現像ローラのフィルミング評価は現像ローラ表面の目視及び画像で評価を行った。
25000枚印字後および50000枚印字後に、印刷したハーフトーン画像の1%印字画像部と非印字画像部で濃淡ムラが発生していないか目視で評価した。その後、現像ローラ表面のトナーをエアーで吹き、現像ローラ表面の観察を行った。
A:画像上に濃淡ムラの発生がなく、現像ローラ表面もフィルミングなし。
B:画像上に濃淡ムラの発生はないが、現像ローラ表面に若干のフィルミングが確認される。
C:現像ローラ表面にフィルミングが確認され、画像上に軽度な濃淡ムラが発生。
D:現像ローラ表面にフィルミングが確認され、画像上に顕著な濃淡ムラが発生。
【0088】
<カブリの評価>
カブリの評価は、現像ローラのフィルミングの評価と同様の画像出力試験を30.0℃、湿度80.0%RHの環境下で行い、以下の方法で評価を行った。
(カブリの評価基準)
25000枚、50000枚の画像出力の後、30.0℃/80.0%RHの環境において、該改造機及び該改造カートリッジを3日間放置した。放置後、白地部分を有する画像を出力し、「REFLECTMETER MODELTC-6DS」(東京電色社製)により測定した出力画像の白地部分の白色度と評価紙の白色度の差から、カブリ濃度(%)を算出し、画像カブリを評価した。カブリ濃度は、小数点第二位を四捨五入して求めた。フィルターはグリーンライトフィルターを用いた。
A:カブリ濃度が0.5%以下
B:カブリ濃度が0.6%以上1.5%以下
C:カブリ濃度が1.6%以上2.5%以下
D:カブリ濃度が2.6%以上
【0089】
<定着性の評価>
上述の改造機及び該改造カートリッジにおいて、常温常湿(25℃/50%RH)環境下にて、定着温度を5℃刻みで変更し、ベタ画像(トナーの載り量:0.40mg/cm2)を形成した。転写材は、普通紙(LETTERサイズのXEROX 4200用紙、XEROX社製、75g/m2)を用いた。
キムワイプ〔S-200(株式会社クレシア)〕を用い、75g/cm2の荷重をかけて定着画像を10回こすり、こすり前後の濃度低下率が5%未満になる温度及び10%未満になる温度で低温定着性の評価を行った。画像濃度は、反射濃度計(商品名:RD918、マクベス社製)で測定した。
(評価基準)
A:140℃以下
B:145℃
C:150℃
D:155℃以上
【0090】
【符号の説明】
【0091】
11 感光体、12 現像ローラ、13 トナー供給ローラ、14 トナー、15 規制ブレード、16 現像装置、17 レーザー光、18 帯電装置、19 クリーニング装置、20 クリーニング用帯電装置、21 撹拌羽根、22 駆動ローラ、23 転写ローラ、24 バイアス電源、25 テンションローラー、26 転写搬送ベルト、27 従動ローラ、28 紙、29 給紙ローラ、30 吸着ローラ、31 定着装置