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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】グラウト加温養生方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 40/02 20060101AFI20240701BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C04B40/02
B28B11/24
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020098513
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021191718
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 孝志
(72)【発明者】
【氏名】淵本 正樹
(72)【発明者】
【氏名】長田 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】乙藤 佳名子
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-027572(JP,A)
【文献】特開2009-079428(JP,A)
【文献】特開2001-260111(JP,A)
【文献】特開2014-163108(JP,A)
【文献】特開2002-303001(JP,A)
【文献】特開昭59-065164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 40/00-40/06
B28B 11/24
E04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリート部材間に形成された目地部に注入されるグラウト材を加温して養生する方法であって、
グラウト材を注入する前に目地部を養生枠で覆い、目地部と養生枠の間に加温空気を送り込んで目地部の内部を予め加温した後、グラウト材を注入し、その後、目地部と養生枠の間に加温空気または温水を送り込むことを特徴とするグラウト加温養生方法。
【請求項2】
プレキャストコンクリート部材間に形成された目地部に注入されるグラウト材を加温して養生する方法であって、
目地部を養生枠で覆い、目地部の内部を予め加温した後、目地部にグラウト材を注入し、その後、目地部と養生枠の間に温水を送り込んで養生することを特徴とするグラウト加温養生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート部材接合部のグラウト加温養生方法および養生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プレキャストコンクリート部材の接合部のグラウト注入後における初期強度発現は、気温により影響を受けやすく、特に冬季の場合は気温が低いため強度発現が遅く、次工程に影響することが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
グラウト材の強度発現を促進させる従来の方法として、例えば電熱マット等の加温シートをプレキャストコンクリート部材間の接合部(目地部)の表面に巻き付けて加温する方法などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-163108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来の方法は、プレキャストコンクリート部材間の目地部の表面のみが加温され、目地部の内部の温度は上がりにくいという問題があった。このため、安定した強度発現が得られないおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、プレキャストコンクリート部材間の目地部の表面から内部までグラウト材を加温することができるグラウト加温養生方法および養生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るグラウト加温養生方法は、プレキャストコンクリート部材間に形成された目地部に注入されるグラウト材を加温して養生する方法であって、グラウト材を注入する前に目地部を養生枠で覆い、目地部と養生枠の間に加温空気を送り込んで目地部の内部を予め加温した後、グラウト材を注入し、その後、目地部と養生枠の間に加温空気または温水を送り込むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他のグラウト加温養生方法は、プレキャストコンクリート部材間に形成された目地部に注入されるグラウト材を加温して養生する方法であって、目地部を養生枠で覆った後、目地部にグラウト材を注入し、その後、目地部と養生枠の間に温水を送り込んで養生することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るグラウト加温養生装置は、プレキャストコンクリート部材間に形成された目地部に注入されるグラウト材を加温して養生する装置であって、目地部を覆う養生枠と、目地部と養生枠の間に加温空気を送り込んで目地部の内部を予め加温する加温空気供給手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他のグラウト加温養生装置は、プレキャストコンクリート部材間に形成された目地部に注入されるグラウト材を加温して養生する装置であって、目地部を覆う養生枠と、目地部と養生枠の間に温水を送り込んで目地部の内部を加温する温水供給手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るグラウト加温養生方法によれば、プレキャストコンクリート部材間に形成された目地部に注入されるグラウト材を加温して養生する方法であって、グラウト材を注入する前に目地部を養生枠で覆い、目地部と養生枠の間に加温空気を送り込んで目地部の内部を予め加温した後、グラウト材を注入し、その後、目地部と養生枠の間に加温空気または温水を送り込むので、送り込んだ加温空気によって、プレキャストコンクリート部材間の目地部の表面から内部までグラウト材を加温養生することができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る他のグラウト加温養生方法によれば、プレキャストコンクリート部材間に形成された目地部に注入されるグラウト材を加温して養生する方法であって、目地部を養生枠で覆った後、目地部にグラウト材を注入し、その後、目地部と養生枠の間に温水を送り込んで養生するので、送り込んだ温水によって、プレキャストコンクリート部材間の目地部の表面から内部までグラウト材を加温養生することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係るグラウト加温養生装置によれば、プレキャストコンクリート部材間に形成された目地部に注入されるグラウト材を加温して養生する装置であって、目地部を覆う養生枠と、目地部と養生枠の間に加温空気を送り込んで目地部の内部を予め加温する加温空気供給手段とを備えるので、送り込んだ加温空気によって、プレキャストコンクリート部材間の目地部の表面から内部までグラウト材を加温養生することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他のグラウト加温養生装置によれば、プレキャストコンクリート部材間に形成された目地部に注入されるグラウト材を加温して養生する装置であって、目地部を覆う養生枠と、目地部と養生枠の間に温水を送り込んで目地部の内部を加温する温水供給手段とを備えるので、送り込んだ温水によって、プレキャストコンクリート部材間の目地部の表面から内部までグラウト材を加温養生することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明に係るグラウト加温養生方法および養生装置の実施の形態1を示す側断面図である。
図2図2は、本発明に係るグラウト加温養生方法および養生装置の実施の形態2を示す側断面図である。
図3図3は、図2に対応する写真図である。
図4図4は、本発明に係るグラウト加温養生方法および養生装置の実施の形態3を示す側断面図である。
図5図5は、図4に対応する写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るグラウト加温養生方法および養生装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
図1に示すように、本実施の形態1に係るグラウト加温養生装置100は、プレキャストコンクリート部材10間に形成された目地部12に注入されるグラウト材を加温して養生する装置であって、目地部12を覆う耐熱養生シート14(養生枠)と、目地部12と耐熱養生シート14の間に加温空気を送り込んで目地部12の内部を予め加温する加温空気供給手段16とを備える。本実施の形態では、プレキャストコンクリート部材10は直方体状であり、水平に延びる目地部12を挟んで上下に配置される場合を想定するが、本発明はこれに限るものではない。
【0018】
耐熱養生シート14は、目地部12の全周を帯状に覆う耐熱性のシートであり、側断面視で目地部12から外側に向けて凸状に膨らむように配置される。耐熱養生シート14は、目地部12の上下に位置する縁がバンド18でプレキャストコンクリート部材10の表面に固定される。耐熱養生シート14により、目地部12の周りに水平環状の空気通路20が形成される。耐熱養生シート14の対向する位置には、給気口22と排気口24が形成されている。給気口22は外部の空気を空気通路20に供給するためのものであり、排気口24は空気通路20の空気を外部に排出するためのものである。
【0019】
加温空気供給手段16は、温風(加温空気)を発生させる温風発生器26と、発生した温風を給気口22から空気通路20に送り込む温風供給管28とを含んで構成される。温風発生器26は電源式のものを使用することが好ましい。
【0020】
上記構成の動作および作用について説明する。
まず、グラウト材を注入する前、つまり目地型枠30を設置する前に目地部12を耐熱養生シート14で覆う。続いて、温風発生器26を稼働して温風を発生させ、温風供給管28から給気口22を通じて空気通路20に温風を送り込む。これにより、空気通路20から目地部12の内部に温風を送り込み、目地部12の内部を予め加温(予熱)する。こうすることで、プレキャストコンクリート部材10の接合部の内部中央まで加温養生することができる。予熱時間は24時間程度に設定してもよい。
【0021】
しかる後に、耐熱養生シート14を固定する上側のバンド18を一時的に緩めて、目地部12の表面に目地型枠30を治具32で固定し、目地部12にグラウト材を注入し充填する。その後、バンド18で耐熱養生シート14を固定してから、空気通路20に温風を送り込み、加温養生を継続する。グラウト材の注入が完了してから48時間が経過するまで加温養生を継続することが好ましい。
【0022】
この方法によれば、送り込んだ温風によって、プレキャストコンクリート部材10間の目地部12の表面から内部までグラウト材を安定して加温養生することができる。これにより、安定した強度発現を得ることができる。特に、冬季のグラウト工事における初期強度発現の遅延やそれに伴う工程の遅延、品質の確保に寄与することができる。
【0023】
上記の実施の形態において、グラウト材を注入した後、温風の代わりに温水を空気通路20に供給して加温養生を継続してもよい。このようにしても上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0024】
(実施の形態2)
図2および図3に示すように、本実施の形態2のグラウト加温養生装置200は、上記の実施の形態1において、耐熱養生シート14の代わりに断熱材一体木製枠34を用いたものである。
【0025】
断熱材一体木製枠34は、断熱材と木製枠が一体化した養生枠であり、目地部12の全周を覆うように設けられる。断熱材一体木製枠34は、側部36と、底部38と、蓋部40と、固定部42を備えている。側部36は、目地部12を含むプレキャストコンクリート部材10の表面に対向配置される壁板状のものである。側部36の対向する位置には、給気口22と排気口24が形成されている。底部38は、側部36の下端からプレキャストコンクリート部材10の表面に向けて配置され、固定部42に接続する底板状のものである。固定部42は、目地部12の下側のプレキャストコンクリート部材10の表面に固定される側板状のものである。蓋部40は、側部36の上端から目地部12の上側のプレキャストコンクリート部材10の表面に接続する蓋板状のものであり、開閉可能とされている。側部36と、底部38と、蓋部40によって、目地部12の周りに水平環状の空気通路20が形成される。
【0026】
上記構成の動作および作用について説明する。
まず、グラウト材を注入する前、つまり目地型枠30を設置する前に目地部12を断熱材一体木製枠34で覆う。続いて、温風発生器26を稼働して温風を発生させ、温風供給管28から給気口22を通じて空気通路20に温風を送り込む。これにより、空気通路20から目地部12の内部に温風を送り込み、目地部12の内部を予め加温(予熱)する。こうすることで、プレキャストコンクリート部材10の接合部の内部中央まで加温養生することができる。予熱時間は24時間程度に設定してもよい。
【0027】
しかる後に、断熱材一体木製枠34の蓋部40を一時的に開放して、目地部12の表面に目地型枠30を固定する。その後、目地部12へのグラウト材の注入を開始する。このグラウト注入作業中も空気通路20に温風を送り込むことで、加温養生を継続することができる。グラウト材の注入が完了してから48時間が経過するまで加温養生を継続することが好ましい。
【0028】
この方法によれば、送り込んだ温風によって、プレキャストコンクリート部材10間の目地部12の表面から内部までグラウト材を安定して加温養生することができる。これにより、安定した強度発現を得ることができる。特に、冬季のグラウト工事における初期強度発現の遅延やそれに伴う工程の遅延、品質の確保に寄与することができる。
【0029】
上記の実施の形態において、グラウト材を注入した後、温風の代わりに温水を空気通路20に供給して加温養生を継続してもよい。このようにしても上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0030】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
図4および図5に示すように、本実施の形態3に係るグラウト加温養生装置300は、上記の実施の形態2において、断熱材一体木製枠34の代わりに温水養生枠44を用いたものである。
【0031】
温水養生枠44は、断熱材と水密性の枠体が一体化した養生枠であり、目地部12の全周を覆うように設けられる。温水養生枠44は、側部46と、底部48と、蓋部50と、固定部52を備えている。側部46は、目地部12を含むプレキャストコンクリート部材10の表面に対向配置される壁板状のものである。側部46には、給水口54と排水口56が形成されている。底部48は、側部46の下端からプレキャストコンクリート部材10の表面に向けて配置され、固定部52に接続する底板状のものである。固定部52は、目地部12の下側のプレキャストコンクリート部材10の表面に固定される側板状のものである。蓋部50は、側部46の上端から目地部12の上側のプレキャストコンクリート部材10の表面に接続する蓋板状のものであり、開閉可能とされている。側部46と、底部48と、蓋部50によって、目地部12の周りに水平環状の温水通路58が形成される。
【0032】
このグラウト加温養生装置300は、温水供給手段60を備えている。温水供給手段60は、水が入った容器62と、容器62内に配置されたヒーター64および水中ポンプ66と、水中ポンプ66と給水口54を接続する給水管68と、容器62と排水口56を接続する排水管70を含んで構成される。ヒーター64は、例えば容器62に入れるだけで温水を作り出せる投げ込みヒーターを用いることができる。
【0033】
上記構成の動作および作用について説明する。
まず、温水養生枠44と目地型枠30を目地部12の周りに設置する。一方、水の入った容器62にヒーター64を投入して温水を準備しておく。
【0034】
その後、目地部12へのグラウト材の注入を開始する。グラウト材の充填前に目地部12に予熱は与えない。グラウト材の充填が完了した後、水中ポンプ66を稼働する。給水管68から給水口54を通じて温水通路58に温水を送り込み、排水口56を通じて排水管70から容器62に還水させることで、温水通路58に沿って温水を循環させ、目地部12の周辺を加温する。これにより、プレキャストコンクリート部材10の接合部の内部中央まで加温養生する。グラウト材の注入が完了してから48時間が経過するまで加温養生を継続することが好ましい。
【0035】
この方法によれば、送り込んだ温水によって、プレキャストコンクリート部材10間の目地部12の表面から内部までグラウト材を安定して加温養生することができる。これにより、安定した強度発現を得ることができる。特に、冬季のグラウト工事における初期強度発現の遅延やそれに伴う工程の遅延、品質の確保に寄与することができる。
【0036】
以上説明したように、本発明に係るグラウト加温養生方法によれば、プレキャストコンクリート部材間に形成された目地部に注入されるグラウト材を加温して養生する方法であって、グラウト材を注入する前に目地部を養生枠で覆い、目地部と養生枠の間に加温空気を送り込んで目地部の内部を予め加温した後、グラウト材を注入し、その後、目地部と養生枠の間に加温空気または温水を送り込むので、送り込んだ加温空気によって、プレキャストコンクリート部材間の目地部の表面から内部までグラウト材を加温養生することができる。
【0037】
また、本発明に係る他のグラウト加温養生方法によれば、プレキャストコンクリート部材間に形成された目地部に注入されるグラウト材を加温して養生する方法であって、目地部を養生枠で覆った後、目地部にグラウト材を注入し、その後、目地部と養生枠の間に温水を送り込んで養生するので、送り込んだ温水によって、プレキャストコンクリート部材間の目地部の表面から内部までグラウト材を加温養生することができる。
【0038】
また、本発明に係るグラウト加温養生装置によれば、プレキャストコンクリート部材間に形成された目地部に注入されるグラウト材を加温して養生する装置であって、目地部を覆う養生枠と、目地部と養生枠の間に加温空気を送り込んで目地部の内部を予め加温する加温空気供給手段とを備えるので、送り込んだ加温空気によって、プレキャストコンクリート部材間の目地部の表面から内部までグラウト材を加温養生することができる。
【0039】
また、本発明に係る他のグラウト加温養生装置によれば、プレキャストコンクリート部材間に形成された目地部に注入されるグラウト材を加温して養生する装置であって、目地部を覆う養生枠と、目地部と養生枠の間に温水を送り込んで目地部の内部を加温する温水供給手段とを備えるので、送り込んだ温水によって、プレキャストコンクリート部材間の目地部の表面から内部までグラウト材を加温養生することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明に係るグラウト加温養生方法および養生装置は、プレキャストコンクリート部材の接合部のグラウト材の養生に有用であり、特に、グラウト材の強度発現を促進させるのに適している。
【符号の説明】
【0041】
10 プレキャストコンクリート部材
12 目地部
14 耐熱養生シート(養生枠)
16 加温空気供給手段
18 バンド
20 空気通路
22 給気口
24 排気口
26 温風発生器
28 温風供給管
30 目地型枠
32 治具
34 断熱材一体木製枠(養生枠)
44 温水養生枠(養生枠)
60 温水供給手段
100~300 グラウト加温養生装置
図1
図2
図3
図4
図5